FAAが超音速機の商業飛行再導入に向けたフライトテストに関する規則を発表

米国連邦航空局(FAA)は超音速機の商業飛行の再導入へと道を開くための新たな最終規則を発表した。FAAは超音速機の飛行試験の承認を得ようとしている企業のためのガイダンスを提供しており、これにはサブスケールの超音速機のプロトタイプを完成させ、2021年中に飛行試験を開始したいと考えているBoom Supersonicのようなスタートアップも含まれている。

Boom Supersonicは5000万ドル(約52億円)の資金調達ラウンドの最終段階にあり、これまでの資金調達は約1億5000万ドル(約150億円)に達し、超音速デモンストレーターのXB-1を2020年10月に発表している。このテスト機は同社の超音速旅客機ことOvertureよりも小型だが、飛行に関する基本技術の実証に使用され、その後にBoomが提携航空会社と2025年の共同展開を目指しているOvertureの開発に利用される。

Hermeusを含む他のスタートアップ(未訳記事)も、商業利用のための超音速機を開発している。一方、SpaceX(スペースX)やVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)のような宇宙飛行に焦点を当てた他の企業は超音速飛行だけでなく、地球の大気圏外縁部での飛行を含むポイントツーポイント飛行でフライト時間を劇的に短縮し、長距離飛行をはるかに短いほぼ地域的な飛行に変える可能性を模索している。

FAAの規則の最終決定は、現在の米運輸長官のElaine Chao(イレーン・チャオ)氏がPete Buttigieg(ピート・バティジーグ)氏を次期大統領候補に選出するために退陣するときから水面下で準備されてきた。FAAの最終規則の全文はここで読むことができる。

関連記事:超音速旅客機の商用化を目指すBoom Supersonicがデモ機XB-1を披露

カテゴリー:モビリティ
タグ:FAA超音速機

画像クレジット:Boom Supersonic

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

飛行機から軌道上にロケットを打ち上げるVirgin Orbit2度目の挑戦は1月10日以降に

Virgin Orbitは2021年の新年を祝う暇もなく、フライトテストの再開に余念がない。軌道上実証飛行の次のデモンストレーション打ち上げの機会を得ており、それは米国時間1月10日から始まり、今月いっぱいまで続く。今回は2020年5月に行ったテストの続きだが、前回はLauncherOneロケットが軌道に到着する前、輸送機のCosmic Girlを離れた直後に終わった

このミッションは必ずしもVirgin Orbitが期待していたほどのものではなかったが、小さな衛星打ち上げ企業にとっては画期的な出来事であり、飛行中の機体性能に関する大量のデータ収集に役立った。LauncherOneは搭載されている安全装置が自動的に停止する前に、ロケットブースターに一時的に点火することができた。同社は2020年末までにこの2度目のテスト飛行を計画していたが、新型コロナウイルス(COVID-19)を含む問題のためにウェットドレスリハーサル(基本的には、燃料を満タンにした状態での飛行に至るまでのすべての過程を通したものだ)まで行うことができた。

次のミッションでは再び軌道上への打ち上げが試みられるが、今回はNASAという顧客のペイロードを実際に搭載するため、多少リスクが高くなります。搭載物にはいくつかの衛星に関する科学実験やデモを行うための小さな器具類が含まれており、特別にミッションプロフィール(打ち上げが失敗しても大きな損失にはならない)には選ばれているが、実際に目的地に到着すればみんなが幸せになるものでもある。

打ち上げ時期の性質上、Virgin Orbitはカリフォルニア州のモハーベ航空宇宙港から離陸する前に、可能な限り条件が良くなるのを待つことになるため、1月10日が最も可能性の高い打ち上げ時期であると考えていいだろう。成功すればVirgin Orbitは、これまで軌道上に到達した民間の小型打ち上げ機のエリートグループに仲間入りすることになる。そのため、Cosmic Girlが実際にLauncherOneを装着した離陸は、業界の注目を集めることになるだろう。

関連記事:Virgin Orbit初の軌道飛行テストは輸送機からの離脱直後に異常終了

カテゴリー:宇宙
タグ:Virgin Orbit

画像クレジット:Virgin Orbit

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

米国ヘルスケアインフラの「ラストワンマイル」を拡大するColorが172.2億円調達

ヘルスケアのスタートアップColor(カラー)は、シリーズDラウンドで1億6700万ドル(約172億2000万円)という巨額を調達したことを米国時間1月4日に発表した。調達後の会社評価額は15億ドル(約1547億1000万円)となる。これで同社の調達総額は2億7800万ドル(約286億7000万円)となり、今回の大型ラウンドで得た資金は2020年の記録的な成長を足場に全米を横断するヘルスケア基盤を構築するために使われる。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)ワクチンの「ラストワンマイル」配達もその1つだ。

Colorの最新調達ラウンドをリードしたのはGeneral CatalystおよびT. Rowe Priceが投資したファンドで、ほかにViking Global Investorsらが参加した。この資金調達に加えて、Colorは複数の上級幹部を招き、最高プロダクト責任者に元OptimizelyのClaire Vo(クレア・ヴォ)氏、戦略・事業担当VPに元Uberで同社のIPOプロセスの重要な役割を担ったEmily Reuter(エミリー・ロイター)氏、およびマーケティング担当VPに元StripeのAshley Chandler(アシュリー・チャンドラー)氏がそれぞれ就任した。

「この『新型コロナ』危機によってインフラストラクチャーの欠如が白日のもとにさらされました。PCR検査、抗体検査、そして今はワクチンと何度も起きています」とColorの共同ファウンダーでCEOのOthman Laraki(オスマン・ララキ)氏は私のインタビューで語った。「私たちが開発しているモデルは非常にうまくいっていて、本格的にスケーリングするチャンスだと感じています。私が思うに今起きているのは、テクノロジーファーストモデルから始まった国の公衆衛生インフラストラクチャーの構築であり、これは多くの業界で行われているような既存の流通や資源にテクノロジーを付け足すアプローチとはまったく異なるものです」。

2020年はColorにとって記録的な年だった。これにはサンフランシスコ市との提携によって医療従事者と住民の検査体制を確立したことが大きく貢献している。ララキ氏は私に、同社は前年比約5倍の売上を達成し、顧客から得た売上を元に持続可能な成長の準備を整える一方で、2021年以降に向けての野心的計画のために、今が新たな資金を得て成長を加速する最適のタイミングだと語った。

ララキ氏はColorのアプローチについて、会社にとってコスト効率が良いだけでなく、提携するヘルスケア提供者にとって大きなコスト削減になると説明している。同氏はこのアプローチを、小売業のオンライン販売へのシフトになぞらえる。中でもあの業界の巨人に。

「いつかはAmazon(アマゾン)を作ることになります。アクセスとスケールに最適化したテクノロジーファーストの仕組みです」とララキ氏は話す。「それこそが現在、私たちがヘルスケアでやろうとしていることだと思っています。たった今、一種の触媒作用を受けていると感じるのは、私たちがこれを新型コロナウイルス危機に適用できることに気づき、実際にそれを予防に利用する準備を始めたことです。今後ヘルスケアの巨大な領域に適用されるものと私は考えています。基本的に、緊急性のない、病院にいかなくてもよいすべてのヘルスケアが対象です」。

究極的にColorのアプローチは、ヘルスケアの供給を見直し「町や村の外れでも人々の命に直接関われる体制」を「低コスト」の「スケーラブルで多くの診療リソースを使わない」方法で提供することだとララキ氏は語る。これは現在行われている方法に関する多くの既存の知識に依存せず、問題を再評価すれば十分可能だと彼は指摘する。従来の無駄を廃して、本当に必要な結果を提供することだ。

ララキ氏は、この問題を容易に解決できるとは思っていない。むしろ2021年はヘルスケア産業にとって多くの面で2020よりも困難な年になることを認めている。そして我々はすでに、始まったばかりのワクチンの配給・配達の問題に直面している。それでもララキ氏は、こうした課題への取り組みを支援するColorの能力については楽観的であり、重要な医療の「ラストワンマイル」配達システムを作って利便性を高めるとともに、すべてが間違いなく適切な方法で行われるための努力を怠らない。

「一歩離れて見てみると、そもそも新型コロナの検査やワクチン接種は、何ら複雑な手続きではありません。手順は驚くほど単純です」と彼はいう。「難しいのはそれを大規模に、かつ個人にとってもシステムにとっても非常に安いコストで行うことです。それにはまったく異なる段取りが必要なのです」。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Color新型コロナウイルス資金調達

画像クレジット:Color

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

産業用センサー大手Teledyneが赤外線カメラのFLIRを約8300億円の現金と株式で買収へ

産業用センサー大手のTeledyneは、センサーメーカーのFLIRを株式と現金合わせて約80億ドル(約8300億円)での買収を予定しており、買収は年内に完了する見込みだ。Teledyneはプレスリリースで、FLIRの事業は既存の製品と競合するのではなく、補完的なものになると述べている。

FLIRのテクノロジーはiPhoneを含むモバイルデバイス向けに設計されたアドオンサーマルカメラを通じて、一般向け市場に登場した。これらは気密漏れや配管漏れを特定するのに役立つが、同社の主要なビジネスにはサーマルイメージ処理だけでなく、可視光イメージ処理やビデオアナリスト、脅威検出技術も含まれており、航空宇宙産業や防衛産業を含む潤沢な資金を持つ顧客にサービスを提供している。

TeledyneはNASAを含む航空宇宙産業や防衛産業、ヘルスケア、海洋、気候監視機関などの顧客にもサービスを提供している。同社の製品には地震センサー、オシロスコープ、その他の計測器、デジタルイメージングなどが含まれているが、FLIRの製品は現在Teledyne社が扱っていない、より専門的な分野もカバーしている。

関連記事:赤外線カメラのFLIRが、廃業したAria Insightsのドローン技術を買収

カテゴリー:ハードウェア
タグ: Teledyne TechnologiesFLIR買収

画像クレジット:FLIR

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

アマゾン、バークシャー・ハサウェイ、JPモルガンのヘルスケア合弁事業が正式に終了

やや漠然としているが、注目度が高く多額の資金を得られる可能性のあるジョイントベンチャーが終焉を迎えようとしている。CNBCの報道によると、Amazon(アマゾン)Berkshire Hathaway(バークシャー・ハサウェイ)、JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)の3社で設立されたジョイントベンチャーであるHavenは設立から3年が経過した現在、「解散」されようとしているという。主な理由の1つは、各パートナーがそれぞれのヘルスケアの課題に対して明らかに非常に異なる独自の戦略的アプローチを追求していたことであり、そもそもこの合弁事業はあまり 「共同」 ではなかったことだ。

Havenの広報担当者はCNBCに提供した声明の中で、プライマリケアへのアクセスの改善や従業員が把握しやすい保険給付パッケージなど、長年のパートナーシップから得られたいくつかの良い結果を強調した。一方アマゾンは、ワシントン州の施設の従業員のための社内ヘルスケアプログラムであるAmazon Careプログラム(未訳記事)で、独自に多くの成果を挙げた。

Amazon Careには、バーチャルと対面でのプライマリーケアの受診と処方箋の発行が含まれる。同社はこのサービスを他の事業にも拡大することを検討していると報じられており、これは当初のHaven JVと非常によく似た目的で、サービスを実際のビジネスにすることを目指していることがうかがえる。

正直にいうと、このジョイントベンチャーの設立に関する最初の発表では詳細があまり明らかにされておらず、非常に裕福な人々がクラブでキャビアや北極の氷から蒸留されたミネラルウォーターなどを飲みながら過ごしたカジュアルな午後に、共通の問題について話し合ったときに生まれるものの1つのようだったので、それが実践的なものにならなかったことは驚くに値しない。

関連記事:Amazon、JPモルガン、バークシャー・ハサウェイがヘルスケアへ――当面社員向けの福利厚生サービス

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タグ:AmazonBerkshire HathawayJPMorgan Chase

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

イーロン・マスク氏「SpaceXは発射台のアームでSuper Heavyブースターを回収する」

SpaceXはロケットブースターを回収、再利用するために現在と大幅に異なるアプローチを試みると創業者でCEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏は述べた。発射台のアームが打ち上げ前のロケットを支えて安定させている。マスク氏は開発中の大型ブースターをこのアームを利用してキャッチしようと考えている(Twitter投稿)。現在のFalcon 9ブースターはエンジンを逆噴射し、組み込みの脚を展開して着陸する。しかし極めて大きな次世代ロケットであるSuper Heavyでは脚を廃止するのが目標(Twitter投稿)だとマスク氏は述べた。

Super Heavyも減速のためにロケットを逆噴射するが、姿勢制御には本体上部に装備されているグリッドフィンを利用する。このフィンをブースターのキャッチに利用する。つまりブースターが着陸する寸前に発射台のアームをグリッドフィンに引っかけるわけだ。この方法では、非常に精密な姿勢制御が必要になる。Super Heavyから着陸脚を完全に省くことができればコストと重量の両方を大幅に節約できる。

マスク氏が指摘したもう1つの利点は、Super Heavyブースターがそのまま元の発射台に定置されることだ。ブースターの上段に新しいペイロードを搭載したStarship宇宙船をセットすれば「1時間以内(Twitter投稿)」に再飛行が可能になる(SpaceXは現在、Starship宇宙船の開発とテストを実施中)。

Starship宇宙船とSuper Heavyブースターの目標は、現在のFalcon 9(およびFalcon Heavy)と比べてさらに再利用を進めたシステムだ。Starshipをジェット旅客機のように定期的かつ頻繁に飛行させることをマスク氏は目標としている。地球上の2点間を結ぶ超高速飛行、地球軌道付近のミッション、月(や最終的には火星)への長距離ミッションなどだ。 火星に「維持可能な植民」を行うためにはこうした能力が必須となる。今回提案された新しい着陸方法はこうした目標を達成するためSuper Heavyで迅速な再飛行サイクルを確立するためのものだという。

Starshipのプロトタイプは現在、テキサス州ボカチカで建設およびテストされている。2019年、SpaceXはここでは試作宇宙船の飛行テストを繰り返してきた。同社はSuper Heavyブースターを開発中だが、マスク氏は同システムの各部分の飛行試験を数カ月以内に開始できるよう全力で取り組んでいると述べている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXイーロン・マスク宇宙船ロケット

画像クレジットSpaceX

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナ関連の研究も行うDNA分析の23andMeが約85億円調達

米証券取引委員会に提出された書類によると、DNAテストを行うテック企業23andMeが総株式額8500万ドル(約88億円)で新たに8250万ドル(約85億円)弱を調達した。Wall Street Journalが確認して報じた(Bloomberg記事)今回の資金調達にはSequoia CapitalやNewView Capitalといった投資家が参加した。23andMeがこれまでに調達した資金は累計8億5000万ドル(約880億円)となる。

Wall Street Journalに宛てた23andMeの声明によると、シリーズFラウンドに特定の意図はなく調達した資金は事業拡大に充てる。23andMeの事業は個人向けの在宅遺伝子テストキットの提供がメインで、このテストで個人は自身の健康について、そしてDNAに基づく家系図について知見を得ることができる。

健康増進と先祖や家系図についての情報獲得を個人向けに宣伝する一方で、同社は収集したデータに基づく研究にも注力してきた。自社による最近のデータ活用例としては遺伝子マーカーがいかに新型コロナウイルス(COVID-19)への感受性に影響を及ぼすか、というものがある。またサードパーティーの研究を支援するためにデータを使うこともある。ただし、データはそうした目的に限定し、集合・匿名化されたフォーマットで共有される、と同社は強調している。

23andMeは1月に従業員全体のおおよそ14%をレイオフしたことを認めた。ただしパンデミック、そして同様のグローバルな健康危機が将来起こりうるという可能性に直面する中で、新型コロナに関する2020年の取り組みで同社のプラッットフォームに新たな価値が見出された。

関連記事:米テック業界で続くレイオフ、遺伝子検査の23andMeでも

カテゴリー:ヘルステック
タグ:23andMe遺伝子資金調達

画像クレジット:ERIC BARADAT/AFP / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

Skyrootがインド初の民間固体ロケット発射実験に成功

ロケット開発スタートアップのSkyrootは、Vikram-Iロケットの開発プログラムにおける重要なマイルストーンで2020年を締めくくった。同社はVikramの製造に使用されるのと同じ技術のデモンストレーションとして、固体ロケットのテスト発射に成功したのだ。インドの民間企業が固体ロケット全体を設計、製作、テストしたのは今回が初めてで、2020年初めに行われた上段ステージのプロトタイプのエンジン燃焼試験(未訳記事)に続くものだ。

Skyrootは、製造プロセスを完全に自動化した炭素複合材構造を使用して、固体ロケットを製作したと述べている。これにより、固体ロケットの推進剤を収納するために一般的に使用されるスチールに比べて、最大5倍の軽量化を実現できる。また、Vikram-Iの最終バージョンの製造にも同じプロセスを使用することを目標としている。Vikram-Iは可動部品がないため故障の可能性が低い比較的単純な固体ロケットの信頼性というメリットに加えて、コスト面でも大きなメリットを実現する。

最終的なVikram-1の第3段ロケットエンジンは、この実証機の4倍の大きさになる予定だ。またSkyrootは他にも4基のテスト用固体ロケットモータを製造中で、これらのモータは推力が調整でき、今後数年の間テストを続けていく予定だ。

Skyrootはインド宇宙研究機構(ISRO)の支援を受けており、Vikram-Iの最初の打ち上げを2021年12月までに実施することを目指している。同社はこれまでに430万ドル(約4億5000万円)を調達しており、現在は1500万ドル(約15億5000万円)の調達を2021年にむけて進めている。インドが2020年初めに民間によるロケット打ち上げ事業を開放したことにより、Skyrootはインドの民間企業としては初めてロケットを製造・運営することになる。

カテゴリー:宇宙
タグ:Skyrootインド

画像クレジット:Skyroot

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

イーロン・マスク氏が2021年Starship開発テストを倍増すると発言、深宇宙探査用ブースター初飛行は「数カ月後」

SpaceX(スペースX)は2021年に向けて、Starshipの開発プログラムを大幅に強化する予定だ。同社のCEOであり創設者でもあるElon Musk(イーロン・マスク)氏は米国時間12月24日、同社がテキサス州ボカチカにある開発施設の2つの発射台を利用してプロトタイプロケットを打ち上げ、Super Heavyの飛行テスト(低高度の「ホップ飛行」から始まる)を「数カ月後」に開始する予定だとツイートした。

スペースXは最近、メキシコ湾にあるテキサス州のテスト施設のPad Bに、Starship(シリーズの9番目)のプロトタイプことSN 9を設置した。SN 9はその前身であるSN 8が高度約4万フィート(約12.19km)までの飛行に成功し、量産バージョンの動力着陸に利用される重要なベリーフロップマニューバを実行した後に、より積極的なテストを実施する予定だ。SN 8は予想以上に強く接地し壊れてしまったが、スペースXによれば飛行中のすべてのテスト目標が達成されたという。

SN 9は今後、地上試験を受けた後に独自の飛行試験を行う予定だ。これによりチームはさらなるテストを行うための貴重なデータを得ることができ、最終的にはプロトタイプを軌道に乗せることを目指している。マスク氏のツイートによると、ボカチカの発射台となるPad AとPad Bの両方で2つのプロトタイプが並んで設置され、スペースXのロケット製造のスピードに合わせて打ち上げペースが加速する可能性があるという。

一方、Super Heavyがまもなくテストを開始するかもしれないというニュースは、2021年のスペースXとStarshipにとって楽しみなものだ。Super Heavyは同社が宇宙船を軌道に乗せて打ち上げ、最終的には火星を含む深宇宙探査への打ち上げに利用するためのブースターだ。Super Heavyは高さが約240フィート(約73.15メートル)で、28基のRaptorエンジンを搭載し、貨物を積んだStarshipを地球の重力から離脱させるのに必要な推進力を提供する。

関連記事:SpaceXのプロトタイプロケットが着陸時に大爆発、しかし飛行テストは成功

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXイーロン・マスク

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

Voyager Space Holdingsが商用宇宙機器大手Nanoracksの過半数の株式を取得、宇宙サービスのポートフォリオ構築を進める

Voyager Space Holdingsは、Nanoracks(ナノラックス)の親会社であるX.O. Marketsの過半数の株式を取得し、戦略的な宇宙サービスのポートフォリオを構築し続けている。Nanoracksは長年にわたり商業宇宙サービスを提供しており、最近では国際宇宙ステーションに設置されたBishop Airlockを提供した。同装置は国際宇宙ステーション(ISS)に設置された初の商業用常設エアロックで、民間の小型衛星や研究用の軌道プラットフォームへのアクセスを提供するという点で、大幅な能力向上が期待される。

Voyagerによる大型買収は2020年で3度目で、以前には打ち上げを支援するサービスとハードウェアを提供し、Relativity、Firefly Aerospace、Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)などと提携しているLaunch Companyの株式の過半数を取得している。Voyagerは2020年に推進、燃料、ラピッドラピッドプロトタイピングなどに取り組む研究開発会社であるPioneer Astronautics(未訳記事)を、そして2019年にAltius Space Machinesをそれぞれ買収している。Altiusは、軌道上の衛星サービス技術に取り組んでいるスタートアップだ。

Nanoracksは、軌道上の研究やプラットフォームからの小型衛星の打ち上げ、他の軌道上および深宇宙ミッションなど1000以上のISSプロジェクトに携わってきたことから、今回の買収はおそらく同社にとって最も注目度の高いものとなるだろう。NanoracksはISSの外部に商業宇宙試験プラットフォームを作り、2021年のSpaceX(スペースX)ミッションでは、ロケットの使用済み上段ステージを軌道上の商用小型宇宙ステーションに変換する技術を実証する予定だ。

Voyager Space Holdingsは戦略的に新しい宇宙関連企業の買収を続けており、個別の企業を合わせたよりもはるかに多くの 「フルサービス」 ソリューションを顧客に提供できるポートフォリオを構築している。これらの契約の商業的な詳細は共有されていないが、専門的な方法で大規模な商業宇宙事業に取り組んでいる小規模な企業にとって、解決策への1つの道を示すことが多くなっている。

カテゴリー:宇宙
タグ:Voyager Space HoldingsNanoracks

画像クレジット:Nanoracks

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

ケネディ宇宙センターに商業打ち上げ客の利用を想定した新たな発射施設が完成

NASAは、フロリダにあるケネディ宇宙センターの新しい発射施設であるLaunch Complex 48(LC-48)の建設を完了した。この発射施設はSpaceX(スペースX)、SLS(スペース・ローンチ・システム)、ULAの打ち上げを実施しているLC-39A、B、またはSLC-41よりも小型のロケットで利用できる。また複数の事業者が利用できるように設計されており、恒久的な構造物がないため、使用する事業者に応じて柔軟な構成が可能だ。

KSCでシニアプロジェクトマネージャーを務めるKeith Britton(キース・ブリットン)氏がNASASpaceflight.comに語ったところによると、LC-48の目的は「非常に早いサイクルかつ低コストでの新しい打上げシステムへのニーズを満たす」ことにあるという。これは現在終了しているDARPAのコンペティションを想定し、小型ロケットを設計したAstraなどの企業によって開発およびテストされているモデルのいくつかと、非常によく似ている。

Virgin Orbit(ヴァージン・オービット)のような企業は、特殊な打ち上げ施設を不要とすることで、応答性と可搬性のある打ち上げ能力を実現することを目指しているが、垂直離陸の必要性を回避するという観点では、小規模な打ち上げのスタートアップとしては少数派だ。Astra、Firefly、Orbexそして新たに復活したVector Launchを含む多くの企業は、柔軟性と移動性を追加し現場で必要とされる人とインフラをスケールダウンできる小型ロケットに焦点を当てている。

LC-48では、まだ実際の打ち上げは予約されてない。NASAは多くの企業と協議中で、正式な顧客は獲得していない。しかし早ければ2021年には、新しい打ち上げ施設からいくつかのミッションが行われる可能性があると予想している。

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タグ:NASA

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

日本の宇宙開発スタートアップAstroscaleがスペースデブリ除去実証衛星を2021年3月のミッションに向け輸送

日本の宇宙開発スタートアップであるAstroscale(アストロスケール)は、カザフスタンのバイコヌール宇宙基地にELSA-d宇宙船を輸送し、2021年3月の打ち上げ(未訳記事)に向けてソユーズロケットに搭載する予定だ。このミッションはアストロスケールにとって特に重要なものであり、同社が提案している宇宙持続可能性サービス事業の基礎となるスペースデブリの除去技術を、初めて宇宙空間で実証することになる。

アストロスケールによるELSA-dは、軌道上のスペースデブリ除去に関する同社のビジョンを可能にする2つの主要な技術を実証する小型衛星ミッションだ。1つ目はGPSやレーザー測位技術を含む測位センサーを使用し、スペースデブリの位置を特定してドッキングするというものとなる。今回はいわゆる「捕獲機(サービサー)」衛星が、デブリの代わりになる同時に打ち上げられた「ターゲット」衛星を見つけて接続する。

アストロスケールはミッションの最中に何度も「サービサー」による「ターゲット」とのドッキングとリリースを行い、宇宙空間を漂う物体を識別して捕捉し、制御軌道へと離脱する技術を示そうと考えている。これにより、同社のビジネスモデルにおける技術の実現可能性を証明し、将来の商業運用に向けての準備することになる。

アストロスケールは2020年10月に5100万ドル(約52億8000万円)を調達したと発表しており、これまでの調達額は1億9100万ドル(約197億8000万円)となっている。また6月にはEffective Space SolutionsのスタッフとIPを取得(未訳記事)しており、ELSA-d宇宙船が実証するLEO事業に加えて、静止衛星サービス部門を構築するために使用する予定だ。

関連記事:Astroscaleが約54億円を調達、静止衛星長寿命化や軌道上デブリ除去など業務を多様化

カテゴリー:宇宙
タグ:Astroscale

画像クレジット:Astroscale

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter

民間による商用有人宇宙活動は思いのほか早く実現する

「宇宙で働く」という話を聞いたとき、SFの話をしているのだと感じたとしても無理はない。だが、地球の大気圏外で実際に働く人の数は、また人生の多くの時間を宇宙で過ごす人の数も、加速度的な割合で増え始めている。今はまだ人数がとても少ないので増加速度はゆっくりに感じられるが、間もなく目に見えてくるはずだ。人数を急速に増やすための計画も準備が整っている。

近々、これを中心的に牽引することになる企業は、宇宙ステーションでの民間向けサービスを提供し、ゆくゆくはステーションの運営も行おうというAxiom Space(アクシオム・スペース)だ。Axiomは、国際宇宙ステーション(ISS)での経験や専門知識を持つ人たちによって設立され、経営されている。同社はすでに、民間クライアントのためにISS上でNASAの宇宙飛行士の手を借りた研究開発ミッションを実施している。2021年からは、民間宇宙飛行士のISSへの送り迎え全般を取り仕切る計画を立てており、新しい商用宇宙ステーションの建造計画もある。これは、いずれISSが引退した後に、その役割を引き継ぐことになっている。

Axiomの最高ビジネス責任者Amir Blachman(アミア・ブラックマン)氏は、先週開催されたTC Sessions:Spaceのパネルディスカッションに登壇した。このディスカッションには、他にもNASAの探査およびミッション計画責任者のNujoud Merancy(ニュジャウド・メランシー)氏、Sierra Nevada Corporation(シエラネバダ・コーポレーション)上級副社長であり元宇宙飛行士のJanet Kavandi(ジャネット・カバンディ)氏、Space Exploration Architecture(スペース・エクスプロレーション・アーキテクチャー、SEArch+)共同創設者Melodie Yashar(メロディー・ヤシャー)氏も登場した。ここでは、公共と民間の団体が、地球の外で、または遠く離れて、過ごす時間が長くなる(比較的近い)将来の準備がどれだけ進んでいるかが集中的に議論された。

「今です。もう数年前から今です」とブラックマン氏は、実際に宇宙で暮らす人の数がNASAの宇宙飛行士を超えるのはいつかという質問に答えた。「Axiomは、独自のミッションでISSにクルーを送り込みます。同時に新しい商用宇宙ステーションを建造し、ISSが引退した後にその役割を引き継ぐ予定です。私たちの最初の有人ミッションは、今から12カ月後に予定している4人の宇宙飛行士の打ち上げです。この4人はすでに身体検査を行い、宇宙服の採寸を済ませています。またすでに、打ち上げを行う企業との医療とトレーニングのチームを統合を行いました。この4人は2021年に、別のクルーを2022年に、2023年に2人、2024年には4人を打ち上げ、その後は数を増やしていきます」。

バックマン氏とメランシー氏は、Axiomの将来の商用ステーションにも、NASAの将来の月面基地や月の軌道を巡り月ミッションの足場となるルナゲートウェイにも、自動化とロボットシステムが重要になると話していた。

「ISSは、人が常駐することを基本としています」とメランシー氏。「無人ステーションになることは想定していません。地上の管制官たちが実際にたくさんのオペレーションを行っていますが、ステーションの維持管理は人間が行う仕組みになっています。月の構造物やゲートウェイを計画する際には、そのような贅沢はいえません。ゲートウェイは、人がいるときだけ稼働します。月面基地に人が滞在するのも、次第に長くなりますが、最初は1週間程度です。しかしながら、人がいない間も、有用な科学調査や有用な探索が行える状態を維持しておかなければなりません。そこで、テレロボティクスや地上からのコマンドによる維持管理能力を持たせ、クルーが到着したときに、ハッチを開けて中に入ればすぐに仕事にかかれる環境になっているというのが理想です」。

「火星での、またそれ以前に月面での、そうした住居や重要インフラの建設においては、できる限り自立的に行うべきであり、またそのように考えで進めるべきだという想定の下で、私たちは作業を進めてきました」とヤシャー氏は続けた。「そのため私たちは基本的に、人を送り込む前の予備的ミッションの段階から、建設、材料、採掘、原料加工に至るほぼすべてのシステムと、私たちが目指している他のすべてのシステムが、多かれ少なかれ、できる限り自律的に行われることを期待してデザインしています」。

カバンディ氏も、現代の有人宇宙システムには大幅な自動化を導入すべきという点で、他のパネリストの考えに共鳴していた。それによって複雑性が増さないかとの私の質問に、彼女はむしろ反対の結果をもたらすと答えた。皮肉なようだが、宇宙の有人活動への道を拓くには、人の手をできるだけ減らすことが重要になるということだ。宇宙のインフラの運用と管理においてはなおさらだ。

「技術の進歩は、物事をより単純化する場合もあります」とカバンディ氏。「長年かけて私たちが能力を高めてきた過程で、たとえばコンピューターは、どんどん難しくなるのではなく、より簡単に使えるようになりました。目標は、クルーの拘束時間やクルーの維持管理の手間を削減して、どのようなミッションにおいても、研究やその他宇宙で本来行うべき仕事に専念できるようにすることです。インターフェイスを単純化するほど、自動化率は高まります。クルーは何か問題が起きたときだけ介入すればよくなります。しかし通常は物事が滞りなく進行し、クルーは何もしないで済むというのが理想のかたちです。そうなれば、本来宇宙で行うべき仕事に集中できる自由な時間が増えるのです」。

カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space民間宇宙飛行ISS

画像クレジット:Axiom Space

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(翻訳:金井哲夫)

新型コロナで絶好調のPelotonが業務用フィットネスマシンメーカーPrecorを434億円で買収へ

Peloton(ペロトン)は世界最大の業務用フィットネスマシンサプライヤーの1社であるPrecor(プリコー)を買収する意向を発表した(Pelotonリリース)。もしあなたがホテルや商業ジムで過ごしたことがあるのなら、Precorブランドを知っているはずだ。だからこそ、特殊な時期にあってホットになっている在宅ワークアウトブランドがPrecorを買収するのはかなり理に適っている。

Precor買収は、同社のバリュエーションを4億2000万ドル(約434億円)とするディールとして進められる。買収によって商業事業の拡大に加え、トレッドミルやバイクといったハードウェアに対する需要が新型コロナパンデミックのために、かつてなく大きくなっているまさにこの時に製造能力アップを図れる。Precorは米国ですでにかなりの製造オペレーション、専門のR&Dチーム、施設を展開している。Pelotonは、買収によってPrecorのノースカロライナ州ウィットセットとワシントン州ウッディンビルにある製造施設の計62万5000平方フィート(約5万8000平方メートル)が加わることになる、とプレスリリースで述べている。

承認が得られれば2021年にクローズする見込みであるこの買収は、短期的には顧客へのマシーン配達のスピードアップに役立ち、長期的には業務用マーケットが成長路線に戻ったときにPelotonが同マーケットでシェア拡大を図るのに貢献する。Pelotonの在宅用マシーンとフィットネスサブスクサービスがパンデミックの恩恵を受けたのは明らかだが、その一方でジムのチェーンやホテル経営は壊滅的なダメージを受けた。つまりこれはPrecorの主要事業が過去数カ月、大打撃を受けていることを意味する。

今回の買収はPelotonにとって過去最大となるが、比較的お買い得価格でPrecorを手に入れることは可能だ。PrecorのオーナーであるAnta Sports(アンタスポーツ)は約5億ドル(約517億円)でのPrecor売却を模索していると2020年11月に報道されていた。Pelotonは買収の一環として、Precorの会長Rob Barker(ロブ・バーカー)氏を業務部門のゼネラルマネジャーとして迎える。これは、人々がパンデミック後にジムに戻るようになったときに世界中の商業ジムへのコネクテッドマシーン浸透を加速させるのに大きな助けとなるはずだ。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:Peloton買収

画像クレジット:Peloton

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(翻訳:Mizoguchi

心でコンピュータを操作するNextMindの開発キットは技術に対する新鮮な驚きを与えてくれる

NextMind(ネクストマインド)は、2019年のCESでその開発キット用ハードウェアを初披露していたが、ようやくその発売が開始され、同スタートアップはお試し用として私に製品版を送ってくれた。NextMindのコントローラーは、脳の視覚野の電気信号を読み取るためのセンサーで、それを入力信号に変換して接続されたコンピュータに送るというもの。眼球運動や電気的インパルスを検出する革新的な入力ソリューションを開発する企業は多いが、NextMindは私が試してきた中でも、即座に、素晴らしく機能する初めての製品だった。コンピュータ利用におけるパラダイムが比較的成熟してきた現在となっては、滅多に出会える機会がなくなった本当の驚きを与えてくれた。

基本情報

NextMindの開発キットは、まさに、NextMindのハードウェアとAPIを利用するソフトウェアの開発に必要な一切合切を開発者に提供することを意図した製品だ。これには簡単なストラップ、Oculus VRヘッドセット、さらには野球帽などのさまざまなヘッドギアに装着できるNextMindのセンサー、パソコンで機能させるために必要なソフトウェアとSDKが含まれている。

画像クレジット:NextMind

NextMindが私に送ってくれたパッケージにはセンサー、布製のヘアバンド、エンジンがインストールされたSurface PC、同社がインストールしたデモの中の1つで使用するUSBゲームパッドが入っていた。

センサー自体は軽量で、1回の充電で連続8時間まで使用できる。充電はUSB-Cで行う。ソフトウェアはManとPCの両方に対応している。さらにOculus、HTC、Vive、Microsoft(マイクロソフト)のHoloLensにも対応している。

デザインと機能

NextMindのセンサーは、驚くほど小さくて軽い。本体は手のひらに収まる程度のサイズで、2つのアームがわずかにはみ出る感じだ。ほぼあらゆるものに取り付けられる汎用クリップマウントが付いていて、頭にしっかりと固定できる。装着の際には、2極が一対になった9組の電極センサーを肌に密着させる必要がある。NextMindの説明には、ヘッドバンドを頭にしっかりと装着してから、「櫛でとく」要領でセンサーを少し上下に動かせと書かれている(上下に動かすことで、挟まっている髪の毛をどかすわけだ)。

装着感は悪くないが、電極が肌に押しつけられている感じが伝わってくる。特に長時間着けていると、その感覚は強くなる。普通の野球帽にもクリップで取り付けられる仕様は、取り付けも装着も簡単にできてとても便利だ。Oculus RiftとOculus Questのヘッドストラップにも、簡単にすばやく取り付けられる。

画像クレジット:NextMind

セットアップは楽勝だった。私はNextMindの開発者たちからご教授をいただいたが、とてもわかりやすい説明書も付属している。最初に、パソコンに表示されるアニメーションを見ながら行う調整プロセスがある。NextMindに最適化されたソフトウェアを使うときに目的の操作が行えるよう、後頭葉から発せられる特定の信号を検知するためのものだ。

ここで、NextMindが「心を読む」方法を解説しておこう。基本的にセンサーは、脳が「アクティブな視覚焦点」と同社が呼ぶ状態に入ったことを検知する。これは、ソフトウェアのグラフィカルユーザーインターフェイスの操作対象の要素にオーバーレイされる共通の信号を使って行われる。そうすることで、特定のアイテムに視点を合わせると、それが「押す」や「掴んで動かす」といったアクションや、その他数々の対応可能な出力結果に変換できるようになる。

NextMindのシステムは、優美なまでにシンプルなコンセプトで成り立っており、力強い豊かな使用感はそこからくるのだろう。私は調整プロセスを済ませると即座にデモに飛びついたが、脳と連動して実際に幅広い操作を行えることがわかった。まずはメディアの再生とデスクトップのウィンドウの操作。次に音楽の作曲、テンキーパッドでPINコードの入力、いろいろなゲームもプレイした。あるゲームプラットフォームでは、USBゲームパッドの手の操作を心の操作が補うという、他の方法では決して味わえないまったく新しいレベルの楽しくて複雑なプレイが楽しめた。

これは開発キットなので、付属しているソフトウェアはNextMindで実際に何ができるかを体験するだけの簡単なサンプルに過ぎないのだが、これで開発者たちは、独自のソフトウェアを作れるようになった。驚いたのは、一部のサンプルはそれ自体が息を呑むほど素晴らしい内容であったことだ。それらは、あらゆる可能性を最高のかたちで表していて、大変に刺激的な体験を味合わせてくれる。NextMindのハードウェアがさらに小型化されて、コンピュータのあらゆる使用状況に溶け込んだ未来を想像してみてほしい。これまでの入力方法が、実にじれったいものになるはずだ。

まとめ

NextMindの開発キットは、まさに開発キットそのもの。同社のユニークで安全で便利なかたちのブレインマシンインターフェイスの利点を活かして独自のソフトウェアを生み出そうとする開発者のための製品だ。キットの価格は399ドル(約4万1000円)。すでに出荷が始まっている。NextMindは、ゆくゆくは消費者向け製品を出したいという計画があり、OEMと協力して実装を行いたいと考えているが、現在この段階ですでに、私たちの日常的なコンピュータ利用における大きなパラダイムシフトの一面を、非常に刺激的なかたちで覗かせてくれている。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:NextMind

画像クレジット:NextMind

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(翻訳:金井哲夫)

ロケット打ち上げスタートアップAstraのロケットが宇宙へ

ロケット打ち上げスタートアップAstra(アストラ)は、周回軌道に実際に達したエリート企業の一員となった。これは予想よりも随分速い達成だ。同社のRocket 3.2テストロケット(そう、「ロケット」と呼ばれるロケットなのだ)は、今日のアラスカ州コディアックからの打ち上げで、カーマンラインを超えた。カーマンラインとは地球の大気圏と宇宙空間の境界とされる海抜高度100キロメートル(62マイル)地点である。

今回は、Astraの軌道飛行テストシリーズの第2回目となる。同社は9月にRocket 3.1テスト機を打ち上げている。同社の定義によるとその飛行で大量のデータが得られたため、テストは成功とされているが、ロケットは宇宙に達することも軌道に乗ることもなかった。Astraによれば、Rocket 3.1も3.2も、3回に及ぶ打ち上げ計画の一環であり、3回目の試みが終わるまでには、軌道高度に達する予定という。

Astraは、カリフォルニア州イーストベイでロケットを作っている小型衛星打ち上げスタートアップだ。同社の工場は、最終的にはランチャーを大量生産できるように設計されている。同社のモデルはSpaceX(スペースX)やRocket Lab(ロケットラボ)のような既存オプションよりも小さな機体を使用しているが、比較的安価に反応性が高く短いターンアラウンドの打ち上げサービスを提供することを目標としている。宇宙行きのリムジンではなく、バスといったところだろうか。同社はVirgin Orbit(バージンオービット)のような企業とより直接的な競合関係にある。ちなみにVirgin Orbitはまだ打ち上げロケットで宇宙には行っていない

AstraのRocket 3.2第2段から見た宇宙

 

これはAstraのロケットプログラムにとって非常に大きな勝利でありマイルストーンだ。問題のあった9月の打ち上げ(同社ではオンボードガイダンスシステムの問題と結論付けている)から比較的短い期間で立て直しを実現させたのだから尚更だ。3か月以内に問題を修正し、精力的に打ち上げを成功させたことは、技術的に大変に素晴らしい功績だ。これは平常時でも目覚ましいことであるのに、同社においては新型コロナという課題に直面しているなかでの達成である。

同社はここまでの達成を予想していなかったという。同社は開発プログラムで軌道飛行に達するまでの7段階を定義していたが、今日は第1にカウントとリフトオフ、第2にマックスQ(地球の大気圏内での飛行で ロケットの動圧が最大に達するポイント)に達すること、そして第3に第1段の主エンジンの分離を達成することを予想していた。今日の打ち上げが成功と判断されるのはここまでであったのだが、CEO兼創業者のChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は打ち上げ後の電話で「ロケットはそのまま飛行し続けた」と語っていた。

Rocket 3.2は分離に成功し、第2段はカーマンラインを超えて大気圏外へ到達した。その後もさらに進み上段点火を達成したが、その6分後に上段エンジンが停止した。その後もロケットは目標軌道高度の390キロメートルに達した。だが速度は毎時7.2キロメートルで、起動速度に必要な7.68キロメートルにわずか0.5キロメートル足りなかった。

Astraは、この段階での推進剤の配合は宇宙での現場テストでしか見極めることができないと強調。残りの速度を達成するには、上段推進剤の混合比を調整するだけだと言及している。ケンプ氏は今後数か月以内でこれを実現させ、来年初めにはペイロードの再実験を開始できると自信を見せている。これにはハードウェアやソフトウェアの変更は不要で、変数を微調整するだけとのことだ。

画像クレジット:Astra担当John Kraus

 

ケンプ氏は、コスト削減のために膨大な量のオートメーションを採用することに焦点を当てた同社のアプローチが今回の成功の鍵だと付け加えている。

「私たちはまだ創業してから約4年の企業で、チームにはわずか100人程度しかいません」とケンプ氏。「このチームは、成功までの道のりで数多くの課題を克服してきました。コディアックに向かう際に、新型コロナに感染して隔離に入ったメンバーがいました。このためにチーム全員が隔離となり、代わりにバックアップチームがコディアックに向かいました」。これが実現できたのは、打ち上げチームがたった5名で構成されていたためだ。

「当社ではたった5人のチームで打ち上げサイト全体とロケットを準備し、ものの数日で打ち上げが可能です」とケンプ氏は言う。チームは文字通りたった5名で、ロケットの荷降ろしから組立まで、現場でのすべての作業がこの5人で行われる。残りはカリフォルニア州のミッションコントロールからクラウドを通してリモートで実施されるという。

ペイロードを搭載した最終軌道試験飛行を目前に、同社は現在カリフォルニア州に位置する同社工場にてRocket 3.3の調整を行っている。その後は設計と技術の急進的な進化を通じてコストを削減し、パフォーマンスを向上させることに重点を置いて、打ち上げたRocketの各バージョンを繰り返し適用し続けていく予定だ。

関連記事:ロケット打ち上げスタートアップAstraの最初の打ち上げは第一段階の燃焼失敗、あと2回のテスト飛行で軌道上を目指す

カテゴリー:宇宙
タグ:ロケット Astra

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(翻訳:Dragonfly)

2020年春の破産申請を乗り越えて通信衛星企業OneWebが36基の衛星をロシアで打ち上げ

積極的な打ち上げへの復帰において衛星コンステレーションオペレーターのOneWebは、軌道上の既存の宇宙船群に加えるため36個の新しい衛星を送り出した。2019年に6機、2020年の2、3月にそれぞれ34機の人工衛星を打ち上げ後における3回目となる同社の大規模打ち上げだった。前回の打ち上げ後、OneWebは財政難に陥り2020年3月に破産保護を申請したが、英国とBharti Globalが一部資金提供する契約のおかげで7月に破産から脱却した。これがOneWebにとってのこの1年間だ。

米国時間12月18日の打ち上げは、ボストチヌイ宇宙基地で行われ、ロシアのソユーズ2.1 bロケットが使用された。これはボストチヌイ宇宙基地で行われた最初の商業打ち上げになるが(以前、ロシアの国営宇宙開発企業Roscosmosが行っていた商業打ち上げはバイコヌール宇宙基地で行われていた)、OneWebの目標軌道との相対的な位置関係のため、34機ではなく36機の衛星を打ち上げることができた。

OneWebは、地球を拠点とするネットワークで使用するための広帯域接続を提供する低軌道衛星群を構築している。最終的には648基の衛星を軌道上に乗せることを目指しており、2022年までの目標達成に向けて打ち上げペースの加速を図り、顧客にグローバルなネットワークを提供できるようとしている。

OneWebが提供するサービスから収益を得られるようになるためには、運用を開始することが鍵となる。

同社はまた、SpaceX(スペースX)とAmazon(アマゾン)の両社が構築している資本力のある大規模なLEOネットワークとも競合している。しかし、先週行われた「TC Sessions:Space」で聞いたところによると、世界規模での高品質な接続性に対する需要には事欠かないため、LEOブロードバンド市場ではAmazonのDave Limpをはじめ複数の勝者が存在する余地は十分にあるという。

OneWebは英国とBharti Globalの提携で倒産から抜け出したが、、Bhartiのファウンダーで会長であるSunil Mittal(スニル・ミタル)氏は先週初め(SpaceNews記事)に、同社のコンステレーションを終えるためには総額25億ドル(約2580億円)を調達する必要があるだろうと述べている(その半分は英国とBhartiコンソーシアムから提供される)。

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倒産から再起したブロードバンド通信衛星企業OneWebが12月17日に打ち上げ再開
ソフトバンクが投資を止め破産申請中の通信衛星OneWebを英政府とインドのBharti Globalが買収し再建へ

カテゴリー:宇宙
タグ:OneWeb

画像クレジット:OneWeb

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(翻訳:TechCrunch Japan)

米国がモデルナの新型コロナワクチン緊急使用を承認、ファイザーに続き2例目

米食品医薬品局(FDA)はModerna(モデルナ)の新型コロナウイルス(COVID-19)ワクチンに対し緊急使用許可(EUA)を出した。今週初めに諮問委員会が許可を推奨していたことを受けてのものだ。EUAで米国での使用が認められたコロナワクチンは、Pfizer(ファイザー)とBioNTech(ビオンテック)が共同開発し、先週承認されたものに続き2例目となる。

Anthony Fauci(アンソニー・ファウチ)博士がNBC番組Todayでのインタビューで語ったところによると、Modernaのワクチンの接種は12月21日か22日には始まりそうだ。この承認から接種までのタイムラインは、PfizerのEUAから実際に最初の接種が先週始まるまでのものと同じだ。

Pfizerのワクチンと同様、ModernaのワクチンもmRNAタイプだ。つまり、ウイルスそのものは含まず、人体に特定のタンパク質をつくるよう伝える遺伝子情報だけを含んでいる。そのタンパク質は新型コロナウイルス感染症を引き起こすウイルスSARS-CoV-2が持つものとほぼ同じだ。Modernaのワクチンでは人体がそれ自体は無害なタンパク質を作るようにするだけで、免疫システムによる自然免疫能がタンパク質に反応してウイルス防御法を構築する。防御システムは体に記憶され、その一方でワクチンそのものはほどなくして自然に消失し、人に免疫だけを残す。

米国での使用はまだ承認されていないオックスフォード大学とAstraZeneca(アストラゼネカ)が共同開発したワクチンは、接種した人の体の中でタンパク質を急増させないよう弱毒化され、組み替えられた普通の風邪のウイルスを使っている。結果として人体は免疫反応をつくることができる。これはワクチン開発の過程でより確立されている方法だ。しかしModernaとPfizerのmRNAベースのワクチンは大規模なフェーズ3治験の予備データでかなりの有効性を示した。

カテゴリー:バイオテック
タグ:Modena、新型コロナウイルス、ワクチン、米国

画像クレジット: Konstantinos Zilos/SOPA Images/LightRocket

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(翻訳:Mizoguchi

NASAの有人飛行責任者がアルテミス月面着陸の2024年目標とクルー人選について語る

NASA(米航空宇宙局)の有人宇宙飛行責任者、Kathy Luders(キャシー・ルーダース)氏がTechCrunch SEssion:Spaceに参加し科学者でNetflixのホストでもあるEmily Calandrelli(エミリー・カランドレッリ)氏に、彼女のNASAでの仕事について話した。アルテミス計画の進捗や米国人宇宙飛行士を月面に再び送る話もあった。

NASAのアルテミス計画最初の月面着陸が2024年を目標としていることは、繰り返し同局が発言しており、現在のNASA責任者でバイデン新政権が誕生する2021年1月に任期を終えるJim Bridenstine(ジム・ブライデンスタシイン)長官も正式に表明している。しかし、このスケジュールには外部から多くの疑問が投げかけられていて、新型コロナウイルス対策の在宅命令とNASAの遠隔勤務措置による遅れによって、一層困難になったと見られている。

「商業乗員輸送開発プロジェクトを立ち上げた時の目標は2017年でした」とルーダース氏。「2017年には飛ばしませんでした、2017年を目指してありとあらゆる努力をしたのですが。その2017年というゴールは、私が2017年という時期だけを考えて愚かな決定を下したという意味ではありません。慎重に検討を重ねた決断でした。そして結局2020年に飛ぶことになりました。実際には2019年にミッションを達成し、それは当初2017年のゴールだったものでした。2024年は我々にとって重大な目標なので、誰もがそこにこだわっています。しかし、私は慎重にこれを進めるべきであることもわかっているので、みなさんに進捗状況を伝えながらやるつもりです。これはこれまでのあらゆるプログラムでしてきたことでもありす。そして、安全で効果的な方法で飛行するために必要なミッションの能力を備えて飛ぶ準備ができたとき、実行します」。

ルーダース氏は多様性、および局内の人種多様性、および同局にとっての重要性に関する問題にも言及した。、氏は人間探査および運用ミッション総局の副責任者を務める最初の女性であり、NASA全体の有人飛行活動を指揮している。

「みなさんには私たちが行っていることを自分の目で確かめてほしいと思っています。なぜなら、重要なのはNASAがこれをやっていることではないからです」と彼女はいった。「重要なのはみなさんがすること、みなさんにできることです。最も印象深いのは、私のことが発表された直後にインドの9歳の少女からもらった『あなたがその仕事を得たのだから、私もいつかNASAの責任者になれると思います』という手紙でした。そしてアルテミス計画のクルーの多様性を見ればわかるように、みんなが自分がそこにいるところをを見て欲しいのです」

ルーダース氏は、つい最近発表された NASAのArtemis宇宙飛行士クラスに見られる多様性(NASAリリース)と、その中から実際にアルテミス計画初の月面着陸クルーに選ばれる人の可能性についても語った。

「私の気に入っていることの1つ、それは女性2人でいけないのかどうか、私にはまだわからないことです」と彼女はいった。「適切な人を選ぶ必要があります」

カテゴリー:宇宙
タグ:NASAアルテミス計画

画像クレジット:NASA

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXによる米偵察衛星を打ち上げが12月19日に延期、ロケット上段の液体酸素タンクに異常見つかる

東部時間午前11時15分(日本時間12月18日午前1時15分)アップデート:SpaceX(スペースX)は米国時間12月18日のミッションを中止し、米国時間で12月19日午前9時(日本時間同日午後11時)から始まる3時間の打ち上げウィンドウで再度挑戦する予定だ。ロケット上段の液体酸素タンクにて異常に高い圧力が確認されたが、同社はこれを解決するために作業を進める。

SpaceXは米国時間12月18日、Falcon 9ロケットをケネディ宇宙センターから、米国東部標準時午前9時(日本時間同日午後11時)に打ち上げる予定だ。ミッションでは米国国家偵察局(NRO)の偵察衛星が搭載され、Falcon 9の一段目のブースターの回収も予定されている。

このFalcon 9の第1段ブースターはこれまでに4回飛行しているが、その中にはSpaceXがNASAのために国際宇宙ステーション(ISS)に向け実施した2回の民間補給ミッションやStarlink衛星の打ち上げ、そして8月にアルゼンチンの宇宙機関のための衛星打ち上げであるSAOCOM 1Bミッションなどが含まれる。

SpaceXはケープ・カナベラル宇宙基地の着陸地点への着陸を試みる予定で、これは海上の2隻のドローン着陸船の使用に比べると珍しいケースだ。同社の洋上着陸は、陸上への着陸に十分な燃料が搭載されていなかったロケットブースターの回収を可能にするために導入された。一方で今回のNROミッションでは「打ち上げ地点への着陸」を可能にする。

気象条件にもよるが気象条件にもよるが、通常打ち上げウィンドウが長くなるとSpaceXはの最初の時間での打ち上げを目指す。現在の状況であれば、上記のストリームは東部標準時の午前8時45分頃(ウィンドウの15分前)に開始されるはずだ。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX、翻訳:塚本直樹

画像クレジット:SpaceX

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(翻訳:塚本直樹 / Twitter