ブラジルのブラックシリコンバレーが南米のイノベーションの震源地に

著者紹介:

ヌネス氏はVale do Dendê(ヴァレ・ド・デンデ)およびAFAR Ventures(AFARベンチャーズ)の共同創設者である。AFAR Venturesは新興市場における多国籍ブランド、企業、投資家のための機会を見出すことを目的とした、グローバルで多様性のあるクリエイティブ&コンサルティングエージェンシーである。

コリア氏はアーリーステージのインパクト投資家で、経済開発、社会起業、インパクト投資の分野で15年以上の経験を持つ。オックスフォード大学の客員研究員としてインパクト投資や多様性、エクイティについて教え、執筆活動を行っている。

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過去5年間、ブラジルではスタートアップブームが起きている。

この国におけるスタートアップの主な拠点は、伝統的にはサンパウロとベロオリゾンテだったが、今ではPorto Digital(ポトデジタル)が拠点を置くレシフェやAcate(アカーテ)が拠点を置くフロリアノポリスなど新しい波が押し寄せてきており、独自のローカルスタートアップ・エコシステムが構築されつつある。さらに最近では、サルヴァドールで「ブラックシリコンバレー」が形成され始めている。

一般的に金融やメディア業界はサンパウロやリオデジャネイロに集中しているが、バイーア州にある人口300万人の都市サルヴァドールはブラジル文化の中心地の1つと言われている。

人口の84%がアフリカ系ブラジル人のこの街には、歴史、音楽、料理、文化などすべてに深く豊かなアフリカンルーツが息づいている。1500万人の人口を擁するバイーア州はフランスとほぼ同じ大きさだ。サンバやカポエイラ、その他様々な地元の郷土料理まで、ブラジルを代表するほとんどすべての文化遺産がこの土地にルーツを持っていると言うから、バイーア州の創造的遺産は明白なものである。

多くの人は、ブラジルがアフリカ以外で最大の黒人人口を抱えていると言う事実を知らない。米国や南北アメリカ大陸の黒人と同様に、アフリカ系ブラジル人は長い間社会経済的な公平性を求め苦闘してきた。また米国と同じく、ブラジルの黒人創業者は資本へアクセスできる機会が少ない。

米州開発銀行のMarcelo Paixão(マルセロ・パイシャオ)教授の調査によると、アフリカ系ブラジル人は白人に比べて3倍以上の確率で信用供与を拒否されている。また、アフリカ系ブラジル人の貧困率は白人ブラジル人の2倍以上であり、彼らはこの国の人口の50%以上を占めているにもかかわらず、立法の役職に就いているアフリカ系ブラジル人はほんの一握りである。言うまでもなく、上位500社の企業のトップレベルに彼らが占める割合は5%にも満たない。米国や英国などの国と比較すると、ブラジルの人口の50%以上がアフリカ系ブラジル人であることから、人種間の財源格差はさらに顕著になっている。

バイーア州はラテンアメリカのイノベーションの震源地となりうる

バイーア州の州都であるサルヴァドールは、ブラジルのブラックシリコンバレー発祥の地であり、地元エコシステムのバブであるVale do Dendêを中心に据えている。

Vale do Dendêは地元のスタートアップ、投資家、政府機関と連携して起業家精神とイノベーションを支援し、特にアフリカ系ブラジル人の創業者を支援することに重点を置いたスタートアップ促進プログラムを運営している。アクセラレーター組織であるVale do Dendêは、スタートアップや技術教育を主流の市場からこれまで十分なサービスを受けていないコミュニティーへと広げる革新的な活動を行っていることから、すでに国内外から注目を集めている。

約3年間でこの組織は、クリエイティブで社会的インパクトのあるセクターを持つ代表的な企業と共に様々な業界にまたがる90社の企業を直接支援してきた。ほぼ全ての企業が二桁成長を達成し、多くの企業がさらなる資金調達や企業の支援を受ける結果となっている。最初のポートフォリオ企業の1つであるデリバリーアプリのTrazFavela(トラズファヴェーラ)は、従来疎外されてきたコミュニティーの顧客と商品をつなぐことに焦点を当て、2019年にアクセラレーターの支援を受けている。ロックダウンがあったにもかかわらず、企業支援後の3月から5月の間に230%の成長を遂げ、最近ではGoogle(グーグル)ブラジルからの更なる支援と投資のための契約を締結した

これはアフリカ系ブラジル企業が認識されていると言う明確な証である。当初Vale do Dendêのメンタリングで支援を受けたもう1つの企業は、観光分野で黒人文化に焦点を当てた企業Diaspora Black(ディアスポラブラック)だ。同企業はFacebook(フェイスブック)ブラジルの支援を受け、2020年には770%の成長を遂げている。

低所得者層のコミュニティーに焦点を当てたヘルステック企業であるAfroSaúde(アフロサウ―デ)も同様で、ファヴェーラ(都市部のスラム街で黒人率が高い貧困街を指す言葉)で新型コロナ感染を予防するための新しいサービスを提供している。このアプリは現在プラットフォーム上に1000人以上の黒人医療従事者を擁しており、極めて人種差別化されていた健康危機問題に対処しながら雇用創出を行なっている。

ルネッサンス開花寸前のバイーア州

ブラジルの厳しい経済状況にもかかわらず、国内外の大企業や投資家がこのスタートアップブームに注目している。大手IT企業のQintess(キンテス)は、サルヴァドールが南米を代表するブラックテックのハブとなることを支援するため、主要スポンサーとして乗り込んでいる。

同社は今後5年間で約1000万レアル(約200万ドル、約2億1000万円)を黒人スタートアップへ投資する予定だと発表しており、その中にはVale do Dendêとの連携による約2000人の技術者の育成や、黒人創業者が率いる500社以上のスタートアップを加速させるプランも含まれている。またGoogleは9月にVale do Dendêの支援を受けて500万レアル(約100万ドル、約1億円)のBlack Founders Fund(ブラック・ファウンダーズ・ファンド)を立ち上げ、アフリカ系ブラジル人によるスタートアップのエコシステムを後押ししている。

スタートアップからイノベーションの新しい波が起きることは間違いなく、アフリカンディアスポラが重要な役割を果たすことになるだろう。世界最大のアフリカンディアスポラ人口を持つブラジルはこの面で主要なリーダーとなることが可能だ。Vale do Dendêはブラジルと南米を代表するより多くのスタートアップを創出し、創造的な経済エコシステムを形成するためのパートナーシップを構築しようと熱心に取り組んでいる。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:ブラジル 差別 中南米

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(翻訳:Dragonfly)

Facebookが陰謀論の隠れみのとして使われるQAnon懸念でハッシュタグ「save our children」の使用を制限

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月30日、ハッシュタグ「save our children(セーブ・アワー・チルドレン)」の使用を制限することを認めた。ここ数カ月、このフレーズはそれに近いものも含め、QAnon(Qアノン)につながるものになっていた。こうしたフレーズは人気のオンライン陰謀論の隠みのとして使われていた。

フェイスブックの広報担当は、子供の安全リソースはQAnonとつながりがあるかもしれないものよりも検索で優先されると述べ、ハッシュタグ使用制限の動きを認めた。

「今週初め、当社はページ、イベント、グループ上でQAnonに対しルールを適用することにしました」と広報担当はTechCrunchに語った。「本日(10月30日)から当社はハッシュタグ『save our children』の使用を制限します。このハッシュタグのコンテンツはQAnonとつながっていることを確認しました。このハッシュタグを検索すると、信頼できる子供の安全についてのリソースが表示されるようになっています」

フェイスブックはようやく、フェイスブックとInstagram(インスタグラム)上のQAnonコンテンツを禁止することで危険な陰謀論を削除するための行動を起こした。フェイスブックは以前、「潜在的な暴力について話し合った」QAnonのグループに対する禁止措置を発表したが、陰謀説がいかに普通のユーザーを引き込んで急進化するかを明確に理解し、禁止措置を拡大した。この措置は実際、これまでのところうまくいっていて、QAnon関連の投稿やアカウントが発見されたり広まったりするのをこれまでよりずっと難しくしている。

フェイスブックは今夏、「SaveTheChildren」のようなQAnon関連のハッシュタグの取り締まりを開始した。これまでのところ一時的にハッシュタグを阻止している。SaveTheChildrenという言葉は1世紀近く非営利の青年団体に関連するものだった。「低品質のコンテンツを表示するため、当社は一時的にこのハッシュタグを禁止しました」とフェイスブックは当時、報道機関に述べた。「その後ハッシュタグは復活しましたが、当社は引き続きコミュニティ基準を満たさないコンテンツの監視を続けます」。

ただし、そうした動きの前に、SaveTheChildrenの動きはすでにソーシャルメディアの域を出て実生活に入り込んだ。米国中や世界の一部で多くの参加者を得て集会が行われていた。主催者は、ハリウッドのエリートの人々の小児性愛からNetflixの映画「Cuties」に対する怒りまで、子供の搾取に反対すると偽った。

2020年8月に米国拠点のSave the Children Federationはそうしたトレンドとは関係がないことを明確にする声明を出した。「ハッシュタグにある我々の名称は異常に多く使用されていて、我々の支援者や社会を混乱せています」と同組織は書いている。「米国ではSave the Childrenは登録した商標『Save the Children』の唯一のオーナーです。我々組織の名称を異なる問題で主張するのにハッシュタグとして使用する人がいますが、我々はそうしたキャンペーンとは一切関係がありません」。

フェイスブックのQAnonと「#SaveTheChildren」コンテンツの取り締まりは、危険な陰謀説グループが何年もの間フェイスブックプラットフォームで盛んに活動することを許してきた後でのものだ。トランプ大統領、そしてQAnonと親しい何人かの共和党政治家が陰謀論を盛り立ててきた一方で、主要なソーシャルネットワークは、QAnon支持者が曖昧で往々にして過激なメッセージ、いわゆる「Qドロップ」と呼ばれているものを米国の政治界の中心に持ち込むのを許してきた。

一部のユーザーは陰謀論コンテンツを不意に見つけるが、フェイスブックやYouTube(ユーチューブ)のようなプラットフォームのアルゴリズムによって表示されるレコメンデーションは、QAnonのような陰謀論のようなものからかなり過激な核となる概念へとユーザーを導くことで知られている。熱心なQAnon信者は現実世界での数多くの暴力行為と関係しており、ここには武装した人物によるフーバー・ダム占拠事件も含まれる。橋の占拠がテロ行為だとして有罪となったMatthew Wright(マシュー・ライト)容疑者はビデオの中で、政敵を逮捕できずQAnon信者を落胆させたトランプ大統領の失敗に影響を受けたと説明した。2019年には29歳のQAnon信者が、QAnonフォロワーがしばしば夢中になっている「ディープ・ステート」の一味だと信じ込んだ人物を銃殺した。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:FacebookSNSQAnon

画像クレジット:Photo by Stephanie Keith/Getty Images) / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

イリノイ州がマスク着用啓発の広告費割り当てにデータサイエンスを活用

公衆衛生に役に立つターゲット広告の例がある。マスク着用を促すキャンペーンで、イリノイ州は新型コロナウイルス感染症のリスクが最も高い郡にデジタル広告費用を注いでいる。

これを実現するために、同州政府はDan Wagner(ダン・ワグナー)氏が設立した(未訳記事)データサイエンス企業Civis Analytics(シビス・アナリティクス)と協業してきた。ワグナー氏は以前、Barack Obama(バラク・オバマ)氏の2012年再選キャンペーンで最高アナリティクス責任者を務めた人物だ。デジタル広告キャンペーンは2020年8月に始まったが、同州はターゲットを絞るのに使っている週ごとのリスク評価を示すマップなど、この取り組みの詳細をいま明らかにしている(イリノイ州リリース)。

Civisでヘルスケアアナリティクスのディレクターを務めるCrystal Son(クリスタル・ソン)氏は、チームが郡レベルの最新の新型コロナウイルスデータをJ.B. Pritzker(J.B.プリツカー)知事のチームのために毎週まとめていると説明した。プリツカー知事はこのデータを、It Only Works If You Wear Itキャンペーン広告費をどこで重点的に使うべきかを決めるのに活用している。

知事のオフィスで管理・予算を担当する責任者Cameron Mock(キャメロン・モック)氏は「最も新型コロナリスクがあるエリアにメディア費用を集中させるための独自方式」を州政府は活用している、と声明文で述べた。

モック氏は「リスクを基にした独自方式は、郡を高リスク、中リスク、低リスクに分けるために新型コロナ新規患者の傾向と郡レベルのモビリティを活用しています。そしてリスクが最も高いエリアに最も多くの広告費を充てるために比例分配を採用しています」。

画像クレジット:State of Illinois

この独自方式では郡を5つに分ける。最もリスクの高い郡はティア1、最もリスクが低い郡はティア5だ。ティア4と5にはベーシックな広告費が配分され、ティア3の郡はより大きな額を受け取る。そしてティア1と2には最大額が分配される。

マスク着用キャンペーンはオンライン広告に限定されてはいないが、独自方式はデジタル面でのみ使われている。というのも、広告費を週単位で従来の広告チャンネルに振り分けるのは難しいからだ。

「各郡の新型コロナ状況はそれぞれ異なるため、我々はイリノイ州内102郡の各現場の状況に対応するキャンペーンになるようにデザインしました」とプリツカー知事の副報道官Alex Hanns(アレックス・ハンズ)氏は声明で述べた。「エリアのリスクが高まった時、公衆衛生に関するメッセージの頻度も増えます。パンデミックが続いて次の波が来るとき、イリノイ州は引き続き科学者の指摘に耳を傾け、住民の安全を守るためにデータを追跡します」。

ソン氏は新型コロナ対応で、最もリスクの高い地域への広告費投入を優先するのと同じようなモデルを使っているキャンペーンは他にはない、と話した。このモデルはうまくいっているのだろうか。特定のキャンペーンの効果はデータでは示されないが、カーネギーメロン大学によると、イリノイ州民の89%がマスクを着用していて、これは現在米国内で15番目に高いマスク着用率となっている。

将来は他の組織がヘルスケアのために「よりカスタマイズされたコミュニケーションアプローチ」を採用するようになることを願っています、とソン氏は述べた。

「各グループが同じように行動して考えるかのように、ヘルスケアにおいては各グループを同一扱いする習慣がまだあります。それぞれにカスタマイズされたアプローチは、マスク着用以外にも幅広く応用できます」と話した。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:データサイエンス新型コロナウイルス

画像クレジット:filadendron / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

米国の苦悩、新型コロナパンデミックが浮き彫りにしたデジタルデバイドへの対処法

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は、多くのデジタル技術の使用を加速した。この春には、K-12校(日本の小中高に対応)や大学の大半は、オンライン学習に移行した。そこでは教師が授業をオンラインでリードし、生徒たちが課題を電子的に提出している。

世界経済フォーラムによれば、パンデミックにより2020年は世界12億人の生徒たちが「教室の外に出された」と推計されている。一方米国では、5500万人以上の(Eucation Week記事)K-12校生徒が対面指導を受けていない。

遠隔医療とビデオ会議の使用も、新型コロナウイルスの結果として、医療相談のための主要なプラットフォームとなっている。例えばForresterの分析(CNBC記事)によれば、「今年の一般的な医療訪問数は、当初3600万人と思われていた数を大幅に上回り2億人を超える」と予測されている。バーチャルコネクションにより、患者はどこにいても助言を得ることができ、幅広い医療専門知識を活用できる。

消費者が小さな小売店や大型デパートから離れるにつれて、eコマースが増えている。業界調査によれば(Yahoo! Finace記事)、「2020年5月のオンライン支出総額は、2019年5月から 77%増えて、825億ドル(約8兆6000億円)に達した」ことが判明した。消費者がオンライン注文と宅配の利便性を理解するにつれ、今後数カ月でその数字はますます増加するだろう。

だがこのパンデミックは、テクノロジーへのアクセスとその利用に対する劇的な不公平さを顕にした。オンライン教育、遠隔医療、オンラインショッピングに必要な高速ブロードバンドを誰もが持っているわけではない。連邦通信委員会(FCC)は、ブロードバンド格差の大部分を埋めるためには400億ドル(約4兆2000億円)かかるだろう(FCCリリース)と予測している。しかし、それでもなお多くの人びとには、動画をストリーミングして新しいサービス提供モードを利用させるノートブック、スマートフォン、あるいはデジタルデバイスが不足している。

一部の人がオンラインの世界外にいるというだけでなく、デジタルアクセスはさまざまなグループに対して不平等に分散している。Education Week(エデュケーション・ウィーク)の調査(Education Week投稿)によれば、低所得者の生徒が多い米国の学校にいる教師と管理者の64%が、生徒たちがテクノロジーの限界に直面していると行っている。それに比べて、低所得者の生徒数が少ない学校の場合は、その数字はわずか21%だった。問題は、単にブロードバンドではなく、生徒たちがオンラインリソースを利用できるようにする機器やデバイスへのアクセスなのだ。

ここにも相当な人種格差がある。あるマッキンゼーの分析によると、米国のK-12校のアフリカ系米国人生徒の40%、ヒスパニック系の生徒の30%が、新型コロナウイルス感染症による学校閉鎖の期間中、オンライン指導を受けることができなかった。白人の場合この数字は10%である。オンライン教育とデジタルサービスへのアクセスにおけるこれらの格差は、すでに存在している教育上の大きな不平等を広げるが、それらを新たな段階へと導く。長期間にわたってこのことが継続した場合、このような差別によって、私たちの最も恵まれない生徒たちは、進歩への大きな障壁と将来の所得喪失や経済停滞の障害に晒されることになる。さらに悲惨なことに、この格差を回復できなくなる転換点があるかもしれない。

これらのタイプの不平等は、深刻な社会的経済的影響を招き、解消不能の格差を生み出す容認し難い不正義なのだ。上記に挙げたものに類する状況が、所得格差を増大させ、社会グループ間の機会格差を広げ、そうした人たちを低賃金雇用、健康保険のない一時的雇用、または完全な失業へと追い込んでいく。デジタルスーパーハイウェイにアクセスすることができないと、オンライン教育、遠隔医療、eコマースの機会が制限され、雇用への応募、政府給付の申請、必要な健康情報や教材へのアクセスがほぼ不可能になる。

現在必要なのは、デジタルインフラストラクチャへの投資と人種、収入、地理に基づく不公平な差異を排除できるデジタルアクセスの改善だ。例えば連邦通信委員会(FCC)は、貧困層のインターネットへの電話接続を促進するために設計された現在の「ライフライン」プログラム(Brookings研究所投稿)を、拡張する必要がある。多くのプロバイダーは、電話とインターネットの利用を組み合わせているため、インターネットサービスを含めない電話サービスの補助金を提供する理由はない。Voice over Internet Protocol (VoIP) を利用できるため、サービスが行き届いていない人たちに電話とインターネット接続を簡単に提供することができる。

またFCCは、ホームスクーリングと遠隔学習を含むように、「E-rate」と呼ばれている「Schools and Libraries(学校と図書館)」プログラムを拡張する必要がある。多数の教育機関が閉鎖され、オンライン教育を通じて指導を提供している中で、FCCは新型コロナのパンデミックが生み出した「宿題の格差」を埋めるために、未消化の資金から何百万ドル(数億円)規模の支出を行わなければならない。これは、貧しい学生がオンラインリソースやビデオ会議施設にアクセスするのに役立つだろう。

「The Department of Agriculture’s Rural Utilities Service」(農村施設サービス局)は農村地域におけるブロードバンドサービスを改善しようとしているが、規制によって、現在保有する資金を低速ブロードバンドを改善するために使用することはできない。多くの人が、オンライン教育リソース、遠隔医療またはビデオストリーミングにアクセスするのに十分な速度を欠いている現在、その資金の利用規制にはほとんど意味がなく、居住者のインターネットサービスをアップグレードできるように規制を変更する必要がある。

教育分野では、州と地方自治体はオンライン学習へのアクセスにおける人種および収入に基く格差が、K-12校の仕組みの中で永続的に固定されないようにしなければならない。この問題に対処するには、しばしば提唱されているような、単に貧しい学生に無料のラップトップを配布するよりことよりも、はるかに多くのことが行われなければならない。むしろ、生徒がラップトップを生産的に使用できるようにするブロードバンドアクセスを提供できるような余裕を家庭に持たせるようにして、教師は遠隔学習と教育プログラムに対して十分に訓練され、21世紀の経済に必要なスキルが若者に伝えられるべきなのだ。

未来に進むにつれて、ブロードバンドは高速道路、橋梁、ダムがかつてそうであったように、社会的、経済的に重要なものになるだろう。20世紀と同様に、アクセスの改善には国家計画と官民部門での投資が必要だ。実際、デジタルアクセスはユニバーサルヘルスケアへのアクセスと同様に、基本的人権の1つとして考えられるべきだ。高速ブロードバンドがなくては、デジタル経済やオンライン学習システムに参加することができない。

私たちが最近出版したAI関連書籍で述べたように、米国はデジタルインフラストラクチャに資金を提供し、人種や地理的な格差を軽減し、普遍的な医療保険を促進し、デジタル経済に向けて労働者たちを準備させる国家計画を必要としている。国家に差し迫る重要な課題には、デジタルデバイドの解消、デジタル経済における反不公正ルールの拡大、より公平な税制政策による包括的経済の構築、次世代の労働者の訓練などが含まれている。

新しいデジタルサービスや金融取引にかかる税金は、これらの問題に対処するために実施する必要があるプログラムに対して、資金を提供する役に立つ。100年前に米国が工業化された際に、国家指導者は必要なサービスを支えるために所得税を導入した。同様にデジタル経済に移行する中で、必要な支出のために支払われる新しいタイプの税金が必要になる。アフリカ系米国人、ヒスパニック、移民、貧しい人々への機会を拒否している教育と医療へのアクセスに対する現在の不平等を許すことはできない。もし私たちの国家が、すべての米国人に力を与えることで私たちの可能性を最大限に引き出す国だとするならば、デジタル経済が成長するなかで、こうした個人を置き去りにすることは、現実的な選択肢ではない。

データは多くの新興テクノロジーの鍵である。新しいサービスの開発、デジタルイノベーションの評価、現在の製品の先行きに対処するためには、偏りのない情報を持つことが不可欠なのだ。現在のデジタルデータの多くは、本質的に独占されている。そのため技術革新を改善し、デジタルディバイド(情報格差)を解消し格差解消問題に対処する軽減策を開発する研究者たちの能力が制限されている。連邦政府は、商業目的や研究目的で(プライバシーが守られるように匿名化された上で)使用できるようにすべきデータの宝庫の上にあぐらをかいている(Center for Data Innovationレポート)。国勢調査データによって研究、経済開発、プログラム評価が可能になるのと同様に、デジタルデータへの幅広いアクセスを行わせることで新製品やサービスへの拍車がかかると同時に、公平性問題への対応にも役立つだろう。

新型コロナに悩まされ続けている国の中で、米国人の大きなグループへの機会を拒否し、彼らがデジタル革命の便益を共有することを不可能にしている不公平さを取り除いていくことが不可欠だ。ポストコロナウィルスの世界を展望する中で、誰もがオンラインの世界に参加して利益を得ることができる包括的な経済を構築することが不可欠なのだ。

新型コロナウイルスによって引き起こされた根本的な変化は、ワクチンが開発されウイルスの影響が時間の経過とともに消えて行った後でも、速度が鈍ることはない。2020年に新型コロナによって生み出された技術動向のほぼすべてが、この先進行していく状況の大きな部分を占めることになるだろう。コンピュータのストレージと処理能力の進化、5Gネットワーク、データ分析の利用拡大により、技術革新は今後数年間で確実に加速するだろう。

デジタル環境の外に私たちの仲間の市民の大きな部分を取り残してしまうことは、継続的な人種的不公平、社会的紛争、経済的窮乏そして政治的分裂の温床となる。不信、不満、怒りが、今後何十年もの間、米国の社会的景観を特徴付けるものであることが確実になってしまうだろう。過去4年間は、米国社会における大規模な不平等が露呈されてきた。米国民の中の意図的な政治的分断によるものだけでなく、米国の多くの悪質な不平等の要素を固定してしまうことが事実上確実なデジタルデバイドによっても、その不平等は悪化してきてきた。

これは技術の問題ではなく、リーダーシップに対する挑戦だ。リーダーがすべての米国人の最善の利益のために技術を振るう意志を示すことによって、この国家的危機を解決することができる。次の政権は、これらの問題に正面から対峙し、デバイドを取り除く能力を持たなければならない。逆に、適切な措置を講じることができなければ、私たちの最も脆弱な市民たちを、さらに4年以上ネグレクトと不平等のもとに置くことになるだろう。

インクルーシブデザインの制作に役立つツールを提供するStarkが約1.6億円を調達

テクノロジーの世界では、ダイバーシティとインクルージョンは後回しにされてきた、あるいはさらに悪いことに考慮されていなかったが、この状況が徐々にゆっくりと動き出した。ダイバーシティとインクルージョンのあらゆる面が注目を集め始めていることを強調するために、米国時間10月27日、デザイナーや開発者が最終的な製品を視覚障がい者にとってアクセシブルにするためのツールを作っているスタートアップが資金調達について発表した。

ニューヨークに拠点を置くスタートアップのStarkは、デザインソフトを使って作業を行うデザイナーなどが自分のファイルをチェックし、異なる色覚特性を持つ人を考慮したガイドラインに合うように色の編集などの提案をするツールを提供している。このStarkが150万ドル(約1億6000万円)を調達した。

Starkは今回得た資金で、広く使われているデザインアプリとの統合を継続し、開発者のための統合も進めていく(コード上でガイダンスを提供する。次に予定されているのはGithubの統合だ)。ビジネス面では価格設定と利用区分を拡大して充実を図る。

現時点では、Figma、Sketch、Adobe XD用のStarkのプラグインで、コントラストチェッカー、スマートカラー提案、8種類の色覚のシミュレーション、色覚特性ジェネレータを利用でき、さらにAdobe XDではすぐにコントラストをチェックできる。

長期的にはエンド・ツー・エンドのプラットフォームを構築し、視覚障がい以外のニーズを包括的に解決する計画だ。また、アクセシビリティは物理的な形でも実現できるためソフトウェア以外についても検討し、自動で詳細を修正する方法も開発する予定だ。

Michael Fouquet(ミシェル・フーケ)氏とともにStarkを創業しCEOを務めているCat Noone(キャット・ヌーン)氏は、リモートワークのため現在はヨーロッパを拠点としている。ヌーン氏は「ソフトウェアのアクセシビリティにおけるGrammarlyになる」ことを強く望んでいるという。

このプレシードラウンドでは、幅広く興味深い支援者から資金を調達した。主導したのはDarling VenturesのDaniel Darling(ダニエル・ダーリング)氏とPascal Unger(パスカル・アンガー)氏、およびIndicator Venturesで、ほかにGithubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Kleiner Perkinsのスカウトファンド、Basecamp Venturesが参加した。個人では、Atlassianのアクセシビリティ担当の製品責任者、Culture Ampのデザイン&インパクトの公平性担当ディレクター、DuckDuckGoのデザインディレクター、Oracleの元ソフトウェア開発担当バイスプレジデントなども支援した。

Starkがこうした投資家からの注目を集めた理由の1つは、その牽引力だ。

同社のソフトウェアの初期バージョンは8カ月前にSketch、Adobe XD 、Figmaのプラグインとしてリリースされ、30万人のユーザーを獲得している。ユーザーの大半は3つのデザインプラットフォームを使うデザイナーやエンジニア、プロダクトマネージャーで、現在はMicrosoft(マイクロソフト)、Oscar Health、US Bank、Instagram、Pfizer、Volkswagen、Dropboxなどの従業員も利用している。

Slackなどのプラットフォーム上の「コミュニティ」には、単にプラグインを使うだけでなくStarkともっと直接関わりたい1万人の人々が集まり、ニュースレターを受け取ったりしている。

ダイバーシティとインクルージョンは2020年の大きな話題だった。これは良いニュースだ。話題になった理由は、マイノリティが警察からひどい扱いを受けているという良くないことではあったが。そうした事件とそれに続く抗議行動が報じられたこともあり、世界の多くの人々がダイバーシティ&インクルージョンの考え方を人種的インクルージョンと深く結びつけて考えるようになった。この話は続いているが(そして問題の解決に向けたポジティブで継続的な取り組みを望むが)、Starkが解決しようとしているダイバーシティとインクルージョンはこれとは別の話だ。

見落とされがちな分野であるが、当然必要なことだ。米疾病予防管理センターの2018年時点の推計によると、米国成人の4人に1人が何らかの障がいを持っているという(この数字に子供は含まれていない)。最も多いのは認知障がいだ。実際にはデザインの多く(そしてテクノロジー全般)がこうした多くの人々に向けて作られてはいないが、かなり大きな市場だ。

テクノロジーはしきりに悪者にされている。メンタルヘルスへの影響や身体の健康のほか、経済や環境、民事、法律への影響など、理由はたくさんある。こうした時代にインクルーシブなソフトウェアやハードウェアを設計することは、テクノロジーが社会に対して(そして社会の中で)生じさせてきたギャップの一部を埋める大きな効果があるかもしれない。

ヌーン氏は「我々は、米国で最も大きなマイノリティのグループに取り組んでいます。いまの時代に車いす用スロープのない建物を建てることはないでしょう。ではなぜ、ソフトウェアデザインでは障がいのある人々について考慮しないのでしょうか」と語る。

ヌーン氏とフーケ氏が最初にStarkのアイデアを思いついたのは、他の会社で高齢者向けの緊急サービスアプリを作っていたときだった。2人はその仕事で使うために、ツールのごく初期のバージョンを作った。それを他の人に見せたところ、その人たちも使いたいといってきた。「その後、それが雪だるま式に増えたのです」とヌーン氏はいう。

それから同氏は「デザインとアクセシビリティの世界につながるウサギの穴」に落ちていき、問題を解決するために作られたツールがなく、しかも「色以外にも問題はたくさんある」ことに気づいた(色はStarkの出発点であり、高い評価を受けている)。

大きな市場には、インクルーシブデザインのような興味深いアメとムチがある。ある人は遵守しなくてはならない問題と考え、ある人は正しいことをするという信念を持っているかもしれない。そしてまたある人は大切に思っているわけではなくむしろ冷淡だが、インクルーシプであれば格好がつくと思っているかもしれない。動機は何であれ、Starkを使うことで多くの人にとってインクルーシブなものを簡単に作ることができ、最終的にバリアを減らせるならそれは間違いなく良いことだ。

ダーリング氏は発表の中で次のように述べている。「すべてのソフトウェア製品は、不利な立場にあるマイノリティのユーザーを排除してはなりません。それはビジネスとして不適切で、社会にとっても不適切です。ソフトウェアのデザイナーや開発者、経営者の間で、ユニバーサルにアクセスできる製品を出荷しようという意識が劇的に高まっています。Starkは短期間で業界の信頼を獲得し、ソフトウェアインフラの重要な一部になりつつあります。すでに世界中のソフトウェア開発を改善しているミッションドリブンの企業と連携できることを、我々はたいへん喜んでいます」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Starkアクセシビリティインクルージョン資金調達

画像クレジット:Johannes Ahlmann / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(翻訳:Kaori Koyama)

金融機関は新型コロナで苦しむ人々を救うクラウドファンディングを支援できるはずだ

新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックが経済に与えた衝撃は、数百万の人々の経済展望にも悪影響を及ぼし、さらに数百万の人々に財政的困難をもたらし続けているが、こうした苦難の時代は、一方でこれまで以上に弾力的で機転の効く金融システムも生み出した。

クラウドファンディングという卓抜なアイデアは過去10年間で一番の「サクセスストーリー」(International Banker記事)と考えられており、新型コロナ支援に大胆で新しい取り組みが求められるこの決死のとき、銀行をはじめとする金融機関がクラウドファンディングプラットフォームと手を組み、彼らの取組みと影響を強化する理想的チャンスが訪れている。

新型コロンクラウドファンディング、人を助ける可能性の世界

金融機関がどのようにクラウドファンディングのキャンペーンを支援できるのかを考える前に、パンデミック下にこの金融施策から得られた多種多様な目覚ましい成果を見てみよう。人々が家賃を支払うか食料品を買うかを選び、他の無数の絶望的状況下にある中、私たちは企業や起業家や一般の人がクラウドファンディングを利用して、必要なお金がなく、借金も限度まで使い切り、政府の支援を受けられない消費者のために新型コロナウイルス感染症救済を提供する方法を考えるべきだ。

新型コロナクラウドファンディングの素晴らしい事例のいつくかを以下に紹介する。

新型コロナウイルスの時代にクラウドファンディングが提供する可能性は無限であり、金融機関は間違いなく支援の手を差し伸べられる立場にある。以下にその方法を挙げた。

1. クラウドファンディングは流行ではないことを認識する

クラウドファンディングは、あらゆる種類の企業、個人、製品にとって、極めて重要かつ意義のある資金調達手段だ。その経済への著しい寄与を否定することは、このパンデミック下のデジタル金融においては特に両目に眼鏡が必要なのに片眼鏡をかけるようなものだ。目先だけを見てはならない。すでにクラウドファンディングは生活に密着している。事実、無数のクラウドファンディング事業やプラットフォームが世界中の市場で大きな動きを見せている。例えばオーストラリアのParpera(Crowdfund Insider記事)はthe equity-crowdfunding platformsと連携してGoFundMeKickstarter and Indiegogoなどに対抗しようと目論んでいる。

2. クラウドファンディングキャンペーンへ積極的に投資する

こうしたキャンペーンの本来の主旨から外れるようにも思えるが、適切な金額(Crowdfund Insider記事)のシード資金を会社の目標に沿ったキャンペーンに注入することは、会社にとっても起業家や理念にとってもウインウインなものであり、絶望的困難にある現在は特にそうだ。

3. コミュニティとそのクラウドファンディングの取り組み取り組みに関与する

これは、あなたの金融機関コミュニティにいる小規模、中規模の企業があなたの助けを利用できる可能性がある、という意味だ。上記したようなクラウドファンディングキャンペーンへの投資を考慮してはどうだろう。あるいは、金融機関とクラウドファンディングのプラットフォームやキャンペーンき隙間を埋めて(PYMNTS.com記事)、小規模企業がこの困難な時期に生き残るために必要なチャンスを得られよようにできればもっと良い。

4. 持続可能な開発目標(SDGs)を掲げる

9月に国連開発計画(UNDP)は、デジタル金融は世界中の人々が金銭管理体験をカスタマイズ、パーソナライズすることで、自分たちの金融ニーズをより迅速かつ効率よく満たされるようにできることを宣言する報告書(UNDPサイト)を公開した。クラウドファンディングのプラットフォームやキャンペーンに協力する意志のある金融機関は、その目標をさらに前進させ、新型コロナウイルス不況の有害な影響の可能性に対する社会の一層強固な反発力を育てることができるだろう。

5. この比較的新しい業界に規制対策の専門知識を貸し出そう

他の国々では、クラウドファンディング金融分野を規制するよりよい方法をすでに考えられ始めている。例えば欧州連合(EU)のクラウドファンディング規制に対する最近の修正(Born2Invest記事)はこの秋発効する。歴史ある金融機関なら、この新型コロナウイルスパンデミック下の混迷の中であっても、クラウドファンディングのポリシーや標準的運用手順の決定を手助けできるはずだ。そうすることで、全員にとって公正で公平な金融が、少なくとも理論上は確保できる。

当初は状況、個人あるいは商品に応じて、慈善事業か新規技術導入のどちらかに使われていたクラウドファンディングは、政府や一部の銀行を含め他の組織が十分な支援を提供できていない中、新型コロナウイルス経済支援の信頼性の高い手段になりつつある。金融機関は自分たちの膨大な専門知識や知見、リソースを価値ある大義のために貸し出すべきだ。何といっても、目指すところは1つなのだから。

【Japan編集部】本稿の著者はScott Purcell(スコット・パーセル)氏。パーセル氏はAPI対応の革新的なB2Bオープンバンキング金融ソリューションを提供するPrime TrustのCEO兼最高信託責任者だ。

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テックパブリッシャーの連合がブラウザレベルのプライバシーコントロールを推進

Do Not Track(トラッキング拒否、DNT)機能を覚えているだろうか。トラッカー愛好家のアドテック業界は、ユーザーフレンドリなプライバシーコントロールをブラウザに組み込むという、10年以上にわたる不毛の試みのことはもう忘れてほしいと考えている。しかしプライバシーを重視するテック企業、出版社、権利擁護団体の連合がこのたび、インターネットユーザーに自分のデータを保護するための非常に簡単な方法を提供する、新たな標準の策定を推し進めることを発表した。

この取り組みは、個人データの販売を阻止するために、プライバシー保護のシグナル機能をブラウザに組み込むというもので、Global Privacy Standard(グローバルプライバシー標準、GPC)と名付けられ、FTCの元CTOであるAshkan Soltani(アシュカン・ソルタニ)氏とプライバシー研究者のSebastian Zimmeck(セバスチャン・ジメック)氏が中心となって進めている。

GPCに対しては、The New York Times(ニューヨークタイムズ紙)、The Washington Post(ワシントンタイムズ紙)、Financial Times(ファイナンシャルタイムズ紙)、WordPressで有名なAutomattic(オートマティック)、開発者コミュニティのGlitch(グリッチ)、プライバシー検索エンジンのDuckDuckGo(ダックダックゴー)、トラッキング対策ブラウザのBrave(ブレイブ)、FirefoxメーカーのMozilla(モジラ)、トラッカーブロッカーのDisconnect(ディスコネクト)、プライバシーツールメーカーのAbine(アビーン)、Digital Content Next(デジタル・コンテント・ネクスト)、Consumer Reports(コンシューマー・レポート)、デジタル著作権グループのElectronic Frontier Foundation(電子フロンティア財団、EFF)が、さっそく支持を表明している。

GPC運営団体はこの取り組みに関するプレスリリースの中で「最初の実験段階では、各ユーザーがAbineBraveDisconnectDuckDuckGoEFFのサイトからブラウザと拡張機能をダウンロードして『販売も共有もしない』という考えを、GPCに参加するパブリッシャーに伝えることができます」と述べている。

「さらに、GPCを多くの組織によってサポートされるオープンスタンダードに発展させることを目指しており、この提案の実現にふさわしい場所を見つけているところです」と付け加えた。

冒頭で触れた「DNT」に似ている今回の取り組みは、少なくとも当面はカリフォルニア州消費者プライバシー法(CCPA)に合わせて構築される。CCPAは、州内のインターネットユーザーに、自分のデータが販売されることをオプトアウトする権利を与えており、Prop24と呼ばれる11月の投票法案が可決されれば、その権利がさらに強化される可能性がある。

同法はまた、ブラウザからのシグナルによるユーザーのオプトアウト要求を尊重することを企業に義務付けている。これはDNTの支持者たちが常にDNTに対して望んでいた、衝突の少ないブラウザレベルのコントロールの可能性を復活させるものである。

GPC運営団体の目的は、個人データ販売のブラウザレベルでのオプトアウト要求に対してCCPAの対象企業が法的に対応せざるを得なくなるような標準を策定することである。ただし、そのためにはカリフォルニア州法の下で、この標準が法的拘束力のあるものとして認められることが必要となる。

GPCはプレスリリースの中で「カリフォルニア州のBecerra(ベセラ)司法長官と連携して、GPCの法的拘束力がCCPAの下で認められるようになる日を心待ちにしています」と述べている。

TechCrunchは、GPCによるこの発表に対するベセラ氏の反応を取材するために、同氏の事務所に問い合わせてみた。また、同氏はGPCの提案について「消費者が自分のプライバシー権をオンラインで簡単に行使できるようにする、意義のあるグローバルなプライバシーコントロールに向けた第一歩だと思います」と肯定的にツイートしている。

さらに「カリフォルニア州司法省は、テクノロジーコミュニティがCCPAおよび消費者のプライバシー権を促進するためにグローバルなプライバシーコントロールを開発するのを見て心強く思っています」と付け加えた。

それと同時に、そしてGPCの名前が示す通り、目標は欧州のGDPRフレームワークのように、他の国のプライバシー制度に合わせて柔軟に変更できる標準を策定することだ(ちなみに、欧州のGDPRフレームワークは市民に対してデータに関する一連の保護的権利およびアクセス権を提供するものであり、データ販売に対するCCPAオプトアウトとは少し異なる)。

「欧州のGDPRは現在、具体的にGPCのような仕組みの導入を目指しているわけではありません。しかしEUのDPA(データ保護機関)が、GPCのような仕組みを、消費者がGDPRの下で(販売への異議を含め)権利を行使する有効な手段として検討する可能性がある、と私は考えています」とソルタニ氏はTechCrunchに述べ、「またこの仕様は、法律がCCPAと若干異なる場合にも対応できるように設計されています(例えば、GDPR下での特定の用途に対してユーザーが異議を唱えることも可能です)。また、来月CPRA(Prop24)法案が通過して、新たな権利が生まれた場合にも対応できる設計になっています」と付け加えた。

この取り組みについては1つ、明白かつ大きな疑問点がある。それは、CCPAのオプトアウトシグナルを発信する手段として、なぜDNTを復活させないのかということだ。

DNTがユーザーに受け入れられるように、何年にもわたって多くの労力とリソースが費やされてきた。ブラウザメーカーから幅広い支持を得られたことを考えると、DNTはまったくの失敗だったとは言えない。しかし、法的強制力がなくコンプライアンスが欠如しているため、DNTは空中分解しつつある。

しかし(少なくとも欧州とカリフォルニア州においては)個人のデジタルデータを保護する強固な法制度が整った今、DNTを復活させ、今回は定着させる機会があるかもしれない(実際、EUの一部の議員は近年、EU eプライバシー規則の計画的な改革の一環として、データ処理への同意を表明するために「Do Not Track」設定を使用することを提案している。おそらく、GDPRコンプライアンスへの取り組みによって急増している乱雑な同意ポップアップを整理することを念頭に置いてのことだろう)。

しかし、なぜDNT 2.0ではなくGPCなのかという疑問の答えは、Do Not Trackの周りに蓄積された問題も関係しているようだ。 「Do Not Track(追跡しないで)」という、的を射たCTA(行動喚起)の表現は今なおアドテック企業の重役の背筋をぞっとさせることができるのだ(一方「Global Privacy Control」は、アドテックのロビイストが思いつきそうな、無味乾燥な名称であるため、業界をそれほど動揺させないかもしれない)。

さらに深刻なのは、カリフォルニア州議会がCCPAを策定するときに、オプトアウトのシグナルを示すためにDNTを使用する可能について議論し、業界からのフィードバックを集めたことである。しかし、州議会が受け取ったフィードバックは「ほとんどの企業が(そのシグナルを)無視している」というものだった。ということは、DNTを復活させても、引き続き無視されるだけだと思われる。

したがって、ユーザーのプライバシーを守る手段に法的拘束力を持たせるには、DNTよりも精密な仕組みが必要だ。

さらに、GPCはその取り組みにおいて、DNTをオプトアウトのメカニズムとして使用しようとしていたし、実際に使用できると期待していたようだ。しかし最終的には、コンプライアンスに関する懸念を考慮し、より幅広いDNTシグナルを発信しても企業がそれを無視するという問題を回避するにはCCPA固有のメカニズムが必要だと判断した。

ダックダックゴーのCEO兼創設者であるGabriel Weinberg(ガブリエル・ワインバーグ)氏は支持声明の中で次のように発表している。「オンラインでプライバシーを確保する方法はシンプルで誰もが利用できるものでなければなりません。Global Privacy Control(GPC)は、ユーザーがプライバシーに対する自身の希望を表明できるシンプルで普遍的な設定を構築することで、私たちをこのビジョンの実現に一歩近づけてくれます。ダックダックゴーはこの取り組みの創設メンバーであることを誇りに思います。そして本日より、GPCは当社のモバイルブラウザおよびデスクトップブラウザの拡張機能でローンチされ、1000万人以上の消費者がこの設定を利用できるようになります」。

また、モジラのFirefox Desktop(ファイアフォックス・デスクトップ)担当副社長であるSelena Deckelmann(セレーナ・デッケルマン)氏も次のように語っている。「モジラはGlobal Privacy Control構想を喜んで支持します。人々のデータ権利は認められ、尊重されなければなりません。この構想は正しい方向への第一歩です。当社は、他のウェブ標準コミュニティと協力して、このような保護機能をすべての人に提供できることを楽しみにしています」。

提案されているGPC標準の全文はこちらを参照のこと。

アップデート:Ron Wyden(ロン・ワイデン)上院議員も「企業が消費者データを追跡・販売するのを阻止するための、現実的で強制力のある方法を消費者に提供するときが来ています。My Mind Your Own Business Actはまさにそれを実現するものであり、このプロジェクトはそれが可能であることを示しています」と述べて、GPC構想への支持を表明している。

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タグ:プライバシー CCPA

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(翻訳:Dragonfly)

「万国共通デジタル広告透明化」が今すぐ必要だ

【編集部注:本稿はLaura Edelson、Erika Franklin Fowler、Jason Chaungによる共著】

Mr. Zuckerberg(ザッカーバーグ様)、Mr. Dorsey(ドーシー様)、Mr. Pichai(ピチャイ様)、Mr. Spiegel(スピーゲル様)。私たちには万国共通デジタル広告透明性化今すぐ必要です。

差別的な広告ターゲティングと配信の与える悪影響はよく知られている。誤情報や不正な利益を目的とする広告コンテンツも同様だ。こうした害悪の蔓延はわれわれの研究が再三明らかにしてきた。その一方で、大多数のデジタル広告主は、責任ある立場にありながら顧客とつながりビジネスを拡大することしか考えていない。

多くの広告プラットフォームが、デジタル広告における問題の深刻さを認識しているが、問題に対処する方法はまちまちだ。プラットフォームは広告主や広告の審査を強化し続ける必要があるとわれわれは信じているが、これは広告プラットフォームが自分たちだけで解決できる問題でないことは明白であり、それは彼ら自身も認めている。プラットフォーム単独で行われる審査は機能していない。あらゆる広告の透明化が必要だ。これには広告費やターゲティング情報も含まれ、そうすることで広告主には彼らがユーザーを欺いたり操ったりした場合の責任を課すことができる。

以下にわれわれの研究結果を示す。

  • 広告プラットフォームのシステム設計が、広告主による性別、人種、その他慎重に扱うべき属性に基づくユーザー差別を可能にしている。
  • プラットフォームの広告配信最適化は、広告主が包括的な広告対象設定を行おうとしたかどうかに関わらず、差別的な結果を招く可能性がある。
  • 広告配信アルゴリズムは両極化を起こす可能性があり、政治キャンペーンが多様な政治感をもつ有権者に届くのを困難にする。
  • スポンサーはデジタル政治広告に13億ドル以上費やしているが、情報開示は極めて不適切である。現在の自発的アーカイブはユーザーに対する意図的あるいは偶発的な詐欺行為を防ぐことができない。

広告のコンテンツ、ターゲティング、および配信の透明化は、厳格なポリシーや強制力を必要とすることなく、デジタル広告による潜在的被害の大部分を効果的に軽減できるとわれわれは信じている。大多数の最大手広告プラットフォームが同意している。Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Twitter(ツイッター)、Snapchat(スナップチャット)の各社は、何らかの形の広告アーカイブを持っている。問題は、こうしたアーカイブのほとんどが不完全かつ実装方法が悪く、研究者によるアクセスが困難であり、フォーマットやアクセス方法が大きく異なっていることた。われわれは、デジタル広告を配信する全プラットフォームが遵守しなくてはならない万国共通の広告情報開示を提案する。もし全プラットフォームがわれわれの提唱する万国共通広告透明化標準に同意すれば、それはプラットフォームと広告主には公平な競争の場が、研究者にはデータが、そしてすべての人々に安全なインターネットが提供されることを意味している。

デジタル広告の完全な透明化は大衆の権利である。われわれの提案がプラットフォームと広告主にとって大仕事であることは認識している。しかし、現在世界中のユーザーが受けている社会的被害は、万国共通広告透明化が広告プラットフォームと広告主に与える負担をはるかに上回っている。ユーザーには、毎日浴びせられている広告に関する真の透明化を求める権利がある。われわれはどのデータが透明化されるべきかについて詳しい解説を作り、ここに公開した

われわれ研究者はいつでも自分たちの役割を果たす用意ができている。今こそ万国共通広告透明化の時だ。

署名人:

Jason Chuang, Mozilla(モジラ、ジェイソン・チャング)
Kate Dommett, University of Sheffield(シェフィールド大学、ケイト・ドメット)
Laura Edelson, New York University(ニューヨーク大学、ローラ・エデルソン)
Erika Franklin Fowler, Wesleyan University(ウェズリアン大学、エリカ・フランクリ・ファウラー)
Michael Franz, Bowdoin College(ボウディン大学、マイケル・フランツ)
Archon Fung, Harvard University(ハーバード大学、アーコン・ファン)
Sheila Krumholz, Center for Responsive Politics(責任ある政治のためのセンター、シーラ・クルムホルツ)
Ben Lyons, University of Utah(ユタ大学、ベン・ライオンズ)
Gregory Martin, Stanford University(スタンフォード大学、グレゴリー・マーチン)
Brendan Nyhan, Dartmouth College(ダートマス大学、ブレンダン・ナイハン)
Nate Persily, Stanford University(スタンフォード大学、ネイト・パーシリー)
Travis Ridout, Washington State University(ワシントン州立大学、トラビス・リダウト)
Kathleen Searles, Louisiana State University(ルイジアナ州立大学、カスリーン・シールズ)
Rebekah Tromble, George Washington University(ジョージ・ワシントン大学、レベカ・トロンブル)
Abby Wood, University of Southern California(南カリフォルニア大学、アビー・ウッド)

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画像クレジット:Chainarong Prasertthai / Getty Images (画像は変更済み)

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

YouTubeがQAnonなどの陰謀論を流布する動画を禁止

YouTube(ユーチューブ)は10月15日、Facebook(フェイスブック)やTwitter(ツイッター)などのソーシャルメディアプラットフォームと同様にQAnon(Qアノン)などによる陰謀論(The New York Times記事)の流布を禁止するより直接的な行動に出た。

同社は声明で「現実世界における暴力を正当化する陰謀論を個人またはグループ向けに流す」動画を禁止するため、ヘイトおよびハラスメントのポリシーを拡大すると発表した。

YouTubeが特に対象とするのは、QAnonの支持者が流布する偽りの陰謀論に自らも加担していると主張し、誰かに嫌がらせや脅迫を加える動画だ。

YouTubeは、風変わりな陰謀論を助長する動画や記事を全面的に禁止する動きに関して他の主要なソーシャルメディアほどの措置を講じていない。YouTubeの措置は個人をターゲットにしているコンテンツに限定している。

「例によって文脈が重要となります。従い、そうした問題を扱うニュースやコンテンツが個人や『保護されたグループ』をターゲットとしていない限り特段の措置は講じません」と同社は声明で述べた。「当社は本日この新しいポリシーを施行し、さらに今後数週間でポリシーを強化していきます」。

これは、現実世界において暴力やテロとのつながりがますます深くなる偽情報や陰謀論の拡散に対抗するソーシャルメディアプラットフォームの取り組みの最新のステップだ。

FBIは2019年、QAnonのような陰謀論に加え、有名セレブや民主党政治家は秘密の悪魔的な児童性的虐待集団でありトランプ大統領を弱体化しようとしていると主張する陰謀論の支持者を国内のテロの脅威として初めて認定した。

Twitterは7月、陰謀論に関連する7000件のアカウントを禁止した。Facebookは先週、プラットフォーム上でのQAnon関連の資料やプロパガンダの流布を禁止すると発表した

ソーシャルメディアプラットフォームによるこうした動きは、小さすぎ、また遅すぎるかもしれない。陰謀論はすでに広く普及しており、ワシントンDCのピザ店への攻撃のような事件ですでに損害が発生している。同事件の銃撃者は刑務所入りした

YouTubeが取った最近の措置は、以前導入した陰謀論流布防止の取り組みに続くものだ。YouTubeは過去に、陰謀関連のコンテンツがお勧めに出ないようにアルゴリズムに変更を加えた

しかしTechCrunchが以前に指摘したように、それはQAnonの陰謀論が実際に根付いた2018年から昨年にかけてのことだった。

これもTechCrunchが以前に指摘したように、今では議会に候補者を出すほ(The Guardian記事)どになっており、主流の政治的信念体系になっているのは驚くべきことだ。

YouTubeは検索・発見システムからのビューが70%減少したと誇示しているが、その程度にすぎなかった。同社によれば、QAnonのコンテンツに関して、未登録チャンネルのお勧めからのビューが2019年1月から80%以上減少していることがわかった。

YouTubeは、現実世界の暴力につながる陰謀論と戦うため、今後さらに一歩踏み出す可能性があると指摘した。「陰謀論を推進するグループは常に進化しており戦術も変化しています。当社はこれに対応するためポリシーを現状に合うように更新し、責任を果たすため必要な措置を講じることにコミットし続けます」と同社は述べた。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:YouTube

画像クレジット:Photo by Stephanie Keith/Getty Images) / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

グーグルのアシスタント、マップ、検索が米大統領選の投票所を案内

投票日が近づいている。最寄りの投票所、あるいは投票ボックスの場所をまだ知らない? それならGoogle(グーグル)が手伝う。

同社は10月16日、Googleアシスタント、Googleマップ、Google検索でユーザーが投票場所についての情報を求めていると思われる時にサポートする機能の展開を始めた。

たとえばGoogle検索で「近くの投票ボックス」という言葉を入力すると、その情報を得るための専用ツールにスイッチする。そして投票登録された住所をタイプすると、投票ボックスや投票所の場所を探して表示する。「投票所の見つけ方」「投票場所」といった言葉での検索でも同じツールがポップアップで現れる。なので、割合フレキシブルに対応するようだ。

もしアシスタント対応のデバイス(Nest Mini、Nest Hub、Androidスマホ)が近くにある場合、「ヘイ、グーグル、どこで投票する?」と聞くと、アシスタントがユーザーの現在の位置情報に基づいて調べて案内する(返事の中で断るはずだが、アシスタントはユーザーの現ロケーションが投票のために登録した住所だと想定している)。

マップでの対応はやや限定的だが、それでも情報は得られる。Googleマップのモバイルアプリで「どこで投票するか」と入力すると、すぐさまウェブベースのGoogle検索結果に移動する。そして自分の投票所を見つけ、「道順」ボタンをタップすればマップアプリに戻る。

Googleは、Democracy Worksとの提携の一環として、Voting Information Projectからロケーション情報を引っ張ってきていると話す。選挙日に向けてさらに多くの投票所の情報を加え、全部で20万カ所超の投票所をシステムに取り込む見込みという。

自分の投票所についての詳細をGoogleから得たくない? あるいはダブルチェックしたい? Vote.orgというサイトもある。こちらでは有権者登録のステータス確認や投票所スタッフになるための情報も提供している。

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(翻訳:Mizoguchi

トランプ大統領の移民規制はこれからの米国企業、労働者に悪影響を及ぼす

私は移民だ。20年前にインドから米国にやって来た。以来、博士号を取得し、2つの会社を立ち上げて100人近くの雇用を生み出した。1つめの事業はGoogle(グーグル)に売却し、投資家に10倍超のリターンを還元した。

これまでアメリカンドリームの中で生きることができ、感謝している。光栄なことに米国市民になり、他の人に益をもたらしてきた。しかし問題がある。私はまさしく、トランプ大統領が追加した移民制限(Business Insider記事)の対象となるような種の人間なのだ。追加の移民規制では、まず米国民に就労機会を提供することを米国企業に求め、H-1Bビザに応募できる資格を狭めている。移民の流入を抑制するためのものだ。

多国籍企業が活用するLビザ、一部の学生が使うJビザとともに、H-1Bビザ応募の資格を厳しくする中で、トランプ政権は経済成長への扉を閉ざしつつある。H-1Bビザスキルワーカープログラムが雇用を生み出し、米国の大学を卒業した人の収入を増やしていることは多くの調査で示されている。実際、もしH-1Bビザの発行を一時停止するのではなく増やしていたら、130万人の新規雇用を生み(American Immigration Councilレポート)、2045年までにGDPを1580億ドル(約16兆6000億円)を押し上げていた、と経済学者は指摘する。

私のような人間を移住できないようにすることは、短期的には必要な人材を確保するのにすでに苦戦しているテック企業にカオスをもたらす。これは経済成長を鈍化させ、イノベーションの息を止め、雇用の創出を減らすことにつながる。移民を歓迎しない国にすることで、トランプ大統領令は世界で最も優秀な若い人を引きつけてとどまらせるという米国企業の能力に大きな打撃を与える。

私の話を参考にして欲しい。私はインドのMITとして知られるインド工科大学(IIT)で電気工学の学位を取った後に米国にやって来た。私がIITに入学した年は、わずか1万の募集枠に対し、数十万人の出願があった。MITよりもIITの方が入学競争は激しい。4年後に私は卒業し、周囲にいた成績優秀な仲間の多くとともに米国で学問を続けることに決めた。

それから、教育を継続し幸運を求めて米国に渡った優秀なインド青年に与えられる道を歩んだ。我々の多くが米国をテクノロジーイノベーションの頂点、そして真に実力主義の国だととらえていた。つまり、移民に正当なチャンスが与えられ、ハードワークが報われ、才能ある若い人が未来を築ける国だと考えていた。

私は10の大学から入学を許可され、トップクラスのコンピューターサイエンスプログラムを提供していたイリノイ大学で博士号のコースを履修することに決めた。すでに博士課程を終えていた学生として、私はコンピューターチップがオーバーヒートしないようにする新しい方法を開発した。いまでは世界中のサーバー企業で使われているものだ。その後、自身のテック企業を興す前にMcKinsey(マッキンゼー)でしばらく働いた。私が興した会社はAppurifyというアプリをテストするプラットフォームで、後にグーグルが買収して自社のクラウドサービスに統合した。

私はグーグルで何年か過ごしたのち、ゼロから何かを始めることが恋しくなり、2016年にatSpokeを立ち上げた。ITやHRのサポートを合理化するAIで作動する発券業務プラットフォームだ。2800万ドル(約30億円)を調達し、60人を雇用した。そしてClouderaやDraftKings、Mapboxといった企業がより効率的な職場を構築し、リモートワークへの移行を管理できるのをサポートした。

私のようなストーリは珍しいものではない。新しい国に移住することは楽観、野心、リスクの許容をともなう。これらすべての要因は多くの移民が自分で新たな事業を始める方向へと向かわせる。移民は、米国で生まれ育った人の2倍の割合で事業を興す。2016年の新規企業の約30%、米国のユニコーンスタートアップの半分以上が移民によるものだ。Procter & Gamble、AT&T、グーグル、アップルそしてBank of Americaなど現在ではアイコン的な存在の米国のブランドの多くが移民、もしくは移民の子供によって創業された。

米国が才能ある若者、特に重要なテクニカルスキルを持っている若者が選ぶ目的地であることは当然だと思う。しかし永遠に続くものはない。20年前に私が米国に到着して以来、インドのテックシーンは興隆を迎え、子供たちはインドを後にしなくても随分と簡単にチャンスを見つけることができるようになった。中国、カナダ、オーストラリア、欧州もまた若い移民が才能やスキル、往々にして米国で受けた教育を持ち込みやすくし、自国の労働力に加わってもらったり、事業を興してもらったりするためにグローバルの人材獲得競争を展開している。

雇用ベースのビザプログラム、短期的なものすら終わりにするのは、米国の経済が真に必要としているイノベーションと起業家精神を締め出すものだ。さらに悪いことに、そうすることで世界で最も優秀な若い人にアメリカンドリームを信じさせ、チャンス探しに駆り立てるのを難しくしている。トランプ大統領令の真のレガシー(遺産)は、米国の企業が今後数年間のうちにグローバル人材獲得で競争を展開するのを困難にすることだろう。それは究極的には雇用創出を阻み、経済を後退させ、米国の労働者が打撃を受ける。

【編集部注】著者であるJay Srinivasan(ジェイ・スリニバサン)氏はatSpokeの共同創業者でCEOだ。

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「Two Screens for Teachers」がシアトルの公立学校教師全員に2台目のモニターを寄贈

Two Screens for Teachers(先生に2画面を)は、ご想像の通り先生が2つ目の画面を自宅で使えるようにするための慈善組織だ。このほどシアトル公立学校制度内で必要としている全教員に新しいモニターを配布できるだけの資金を集めた。 これが他の地域でも地元教員に同様の支援を行うきっかけになることを同組織は望んでいる。

30人の生徒を相手にしながら、教材やさまざまな資料を1台のノートパソコンで扱うのは、考えただけでも不安になるが、それは何万人もの教員がこの数カ月間やっていることだ。

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Two Screens for Teachersは2台目のモニターが必要な教員(ほとんどがそうだ)と、彼らを支援したい人たちをつなぐ、という簡単なしくみで9月にスタートした。数万台のモニターがすでに配られたが、ウェイティングリストにはまだ2万人以上いる。先へ進めるためには(教員には足りない)時間または気前の良さが必要な規模だ。

幸いなことに、シアトルには気前が良くて少しばかりの現金を持つ人が十分いたようで、組織はシアトル公立学校の3000人ほどの教員に新しいモニターを買うための資金を集めた。もし、まだ受け取っていない人がいたら、 ここで登録して来週自分の分を手に入れよう!!

Walk Scoreの共同ファウンダー、Matt Lerner氏とMike Matthieu氏のふたりが最初に手を挙げ、その後シアトル拠点の多くの起業家が集まって学区全体をカバーするのに必要な約43万ドルを集めた。「Mark Torrance Foundationからの同額寄付に、Amazon、Microsoft、Redfinsのベテラン社員、Mandrona Venture GroupとPioneer Square Labsのベンチャーキャピタリストらが協力してくれました」と同組織は語った。

シアトルでの成功によって、困っている教員がたくさんいる全米の都市で同様の運動が起きることをLerner氏は願っている。

「ベイエリアやロサンゼルス、ニューヨーク、シカゴ、デンバー、ソルトレイクシティ、アトランタ、オースチン、ダラス、ピッツバーグ、ローリーダーラムなどのテック関係者に声をかけ、先生たちに教師の大切さを訴え、全米の生徒たちをネットにつなぐよう頼んでいます」とLerner氏がプレスリリースに書いた。もちろん他の都市の参加も歓迎しているが、名前の上がった都市にはLerner氏が直接挑戦をしかけている。

Two Screens for Teachersが仲介人としてモニターの大量割引購入を行い、地域の代表者が地元教員に配布するための資金を集める方法もいとわないとLerner氏が私に話した(始まりは個々の教員に個人が寄贈する形だった)。 この記事のハウツーセクションに、コストの見積もりと地元パートナーの探し方が書かれている。
友好的競争の精神で、Lerner氏は他の都市でもこの大変な時期に還元する方法を探している人たちが挑戦を受けて立ち、この大いに役立つツールを地域の教員たちに贈ることを期待している。

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社会正義のために行動することは企業使命から「気を散らす」ことにはならない

著者紹介:Eileen Burbidge(アイリーン・バーブリッジ)氏。ロンドンに拠点を置くアーリーステージテクノロジーベンチャー基金であるPassion Capital(パッションキャピタル)のビジネスパートナー。英国大蔵省フィンテック特使。

ーーー

ご存じかもしれないが、Coinbase(コインベース)のCEOであるBrian Armstrong(ブライアン・アームストロング)氏が、企業ブログで「Coinbase is a mission focused company(コインベースは使命に注力する企業)」という記事を書いた。この記事は賛否両論を巻き起こし、その議論はしばらく続いている。私はこの件について個人的にそれほど関心がなかった。

Twitterでリツイートを1回、リプライを2回行い、「いいね」を数回押した程度だ。しかしその次の日に、あるジャーナリストから、この件について記事を書いているのだが、そこに掲載できるコメントはないかと尋ねられたため、1、2行のコメントを送ることにした。だが結局、最後には次のような月並みな文に落ち着いた。

これは非常に敏感かつ微妙で、個人的な話題であり、よく考えずに軽率な意見を言うような無責任なことはしたくない。

実際、質問に回答しないことにより責任を回避することは非常に重要であると私は思う。

アームストロング氏の意図は理解しているつもりだ。テクノロジー企業として(またはその他の分野で)進歩的であると見なされることを除けば、コインベースがさまざまな意見を持つ人を尊重する包容力のある企業となることを望んでおり、政治運動や社会運動によって分裂した「気を散らされる」(本人の発言)ような職場にはしたくないということだ。

しかし、アームストロング氏の記事は、同氏が非常に恵まれた特権階級であることを印象付ける結果となった。コインベースのCEOとしての仕事が楽であるとか、人生で苦労していないとかということを言っているのではない。社会運動によって「気を散らされたくない」と考えていることを言っているのだ。人権に関心を持つこと、自分たちの周りで起こっていることが正義かどうか考えることによって気が散るというのだから。

つまり、アームストロング氏は、毎朝、目を覚ました時に、制度化された人種差別や組織的な迫害が自分に及ぼす影響について心配する必要などない類の人なのだ。テールライトが割れているからといって運転している車を問答無用で止められ、車内を物色され、車外に出るようにと命令される(場合によってはさらにエスカレートする)ような事態に自分が遭うとは夢にも思っておらず、性的嗜好について憶測されて嘲笑や身体的な危害を受ける人の気持ちもまったく理解できない。米国における白人至上主義の高まりによって、企業使命への「注力」に影響が出るなどとは考えてもいない。職場で無視されたり、中傷されたり、無礼に話に割り込まれたりすることを心配する必要がない類の人なのだ。

アームストロング氏の記事を読んで、夏のころに何人かの友人が話していたことを思いだした。友人たちは、米国のBlack Lives Matterの抗議活動に関して、警官による暴力行為の動画をいちいち見ないようにすると言っていた。確かに、私はそのような動画をいささか見すぎていたかもしれない。手助けしたり何かを変えたりできないことへのフラストレーションや無力感を募らせていただけだったのだから。それでも、友人たちは、次々に公開される動画を見なくてもよいのは一種の恵まれた特権だと認めていた。

そう、友人たちは動画を見なくてもよかった。もちろん、動画を見るように強制されている人は誰もいない。でも、友人たちにとって不公正や不公平は心に焼き付いた禍根ではなかったため、スイッチを切りさえすればそのことを忘れられたのだ。この特権を持つ人たちにとって、動画の中の出来事は他人事である。道を歩く際にも、警察と話す際にも、何ら影響はない。警官による暴力行為の犠牲者が家族や身近な友人、顔見知りの人なのではないかと心配することもなく、そもそもそんなことを考えもしない。

ブライアン・アームストロング氏は自分の発言の場やリーダーとしての地位を利用して政治的な談話を発表することはないと書いたが、これは同氏がこの特権を持っているから言えることである。他の人たちは、不公正への懸念や恐れから、自分自身や他の人、特に発言力の弱い人や声を上げられない人のために口を開くことを余儀なくされているのだ。

アームストロング氏は記事の中で、コインベースが、社会的偏見を受けている背景を持つ求職者を採用すること、無意識の偏見を減らすこと、社会的背景・性的嗜好・人種・性別・年齢などにかかわりなくすべての人が受け入れられる環境を促進することといった「企業使命の達成に役立つことに注力する」と繰り返し述べている。アームストロング氏がこのような分野の重要性を認識しているのは喜ばしいことであるが、この記載のすぐ後で同氏は、コインベースが「広範な社会問題」に関与したり政治運動を唱導したりすることはないと述べている。社会の最初の基本的な権利が独りでに出来上がった、とアームストロング氏は考えているのだろうか。

性的嗜好・人種・性別・年齢が異なる人の間での平等性を確立しなければならないということ自体がそもそも奇妙であるが、そのような平等性がこれまで常に労働法で保護されてきたわけではない。私は女性が妊娠を機に解雇されるのを何度も見てきた。これはまさに「広範な社会問題」に関係することである。これまでに法の下での公平と平等がある程度実現されてきたものの、この権利の基盤はいまだに信じられないほど脆弱である。アームストロング氏はこれまでに確立されてきた権利を擁護して支持するが、さらに積極的に関与する理由はないと述べたが、そのような主張は合理的と言えるだろうか。同氏の関心がある分野に関していえば、これまでの議論と運動によって権利が十分確立されており、残っているその他の分野については「気を散らす」ものだと言わんばかりである。

そして、その確立されている権利というのが、特権である。

もちろん、コインベースはアームストロング氏の会社であり、その会社にふさわしい「使命」や規則を決めるのは紛れもなく同氏の特権である。ある人たちはアームストロング氏の主張への同意を表明しており、「勇気を持って」この主張を行っている同氏を称賛するとまで言っている人もいる。私が懸念しているのは、アームストロング氏や同氏の支持者たちが自分たちの特権の限界を理解しておらず、テクノロジー企業・業界の最近の進展や積極的な論議に大きく逆行する可能性があるということだ。近年、立場を明確に表明するブランドや企業に消費者や購買力が引き寄せられている証拠を数多く見てきた。

雰囲気が良いだけ、単にノリが良いだけでは、ブランドが成り立たなくなっている。社会的不公正に対して口を閉ざしていると、消費者の声が聞こえなくなる。特定の人やグループに対する人種差別や迫害を助長したり許容したりする人と関わりがあるブランドであるということ自体、消費者がそのブランドの利用を再考する十分な理由となる。商品やTVコマーシャルで社会運動や人権を公に支援すれば、株価も上がる。商品やサービスがますますコモディティ化する中で、消費者は自分たちの思想を反映するブランドや製品を探すようになってきた。

企業やそのリーダーが政治には関与しないと言う風潮が、あまりにも長い間、許容されてきた。しかし最近、この風潮が変化している。例えば、英国におけるEU離脱の是非を問う国民投票や2016年の米国大統領選挙などの際に、企業やブランドの価値が試され、消費者からの評価が変わった。消費者やすべての株主にとって、このトレンドを逃すのは残念なことである。

企業のリーダーが社会活動によって「気を散らされたくない」といった意見を主張する場合は、その企業の投資家、株主、従業員が、対話や行動によって成し遂げられる影響の大きさを実証する一助となってほしいものである。

沈黙を守る人たちではなく、チームのメンバーや同僚を支えようとする人たちこそ、最高の仕事をして、最高のチームを形成する人たちなのである。

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タグ:コラム 政治 差別

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(翻訳:Dragonfly)

Facebookが方針転換してホロコースト否定コンテンツを禁止へ

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月12日に、同サイトにおけるホロコースト否定コンテンツに対する方針を大きく転換した。長年にわたり、フェイスブックは表現の自由を優先して著しく攻撃的なコンテンツを削除せず、伝統的出版社の果たしてきた責任から距離をおいている(Vox記事)ことを非難されてきた。10月12日に同社は立場を翻し、「ホロコーストを否定あるいは歪曲するいかなるコンテンツも禁止する」ようヘイトスピーチポリシーを変更した。

この決定は、オンラインヘイトスピーチ攻撃が増え続けている中、プラットフォーム全体でヘイトスピーチの蔓延と戦うフェイスブックの新たな取組みの一環であると同社は語った。

「私たちは250を超える白人至上主義団体を排除し、ポリシーを改定して武装集団とQAnon(キューアノン)に対処しました」とフェイスブックはコンテンツ担当副社長であるMonika Bickert(モニカ・ビッカート)氏が書いた発表文で説明した。「また当社は、世界中でその他の個人および団体も定期的に追放しているほか、2020年第2四半期には2250万件のヘイトスピーチを削除しました。最近当社は一年間にわたる外部専門家との協議を経て、世界やその主要な組織を動かしているとするユダヤ民族の団結力に対する反ユダヤ姿勢の投稿を禁止しました」と同社は述べている。

さらにフェイスブックは、この分野における同社の不作為が世界に与えた影響を如実に表す不穏な統計データを公表した。18~39歳の米国成人を対象とした最近の調査によると、1/4近くがホロコーストは作り話であるか、誇張されているか、あるいはよくわからないと答えたとフェイスブックは語った。

フェイスブックは、ホロコーストの研究と追悼に取り組むYad Vashem(ヤド・ヴァシェム)などの組織が、ホロコースト教育は反ユダヤとの戦いの鍵であると強調していることも指摘した。

憶えている人も多いだろうが、かつてフェイスブックのCEOであるMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、フェイスブックがプラットフォームに投稿された内容に介入すべきかどうか議論の一例としてホロコースト否定を取り上げた。2018年、Recodeのインタビューとその関連記事でザッカーバーグ氏は、ホロコースト否定は間違った考えであり個人的に「極めて不快」だと語ったが、フェイスブックはそのコンテンツを削除すべきではない、なぜなら「誤っている人は存在するものだから」と語った。

しかしこの問題とその賛否はフェイスブックにとって新しいものではなかった。ホロコースト否定コンテンツはこの会社にとって長年の問題であり、フェイスブックの表明する立場に反対している社員も少なくない(未訳記事)。2009年5月には、言論の自由の保護を優先し、それは否定的結果よりも重要であると主張した(未訳記事)ことさえあった。

その後フェイスブックは自社プラットフォーム上でホロコースト否定を許すだけでなく、積極的に推進した。2020年の英国拠点の反過激主義組織、Institute for Strategic Dialogue(ISD/戦略的対話研究所)の調査(The Guardian記事)でフェイスブックを検索したところ、フェイスブック上のホロコースト否定ページが候補に表示された。推奨されたリンクの中にはホロコースト修正主義者や否定主義者の書籍を販売している出版社も入っていた。

今夏、ADLおよびNAACP(全米黒人地位向上協会)やColor of Changeなどの人権擁護団体が1カ月にわたるフェイスブック広告ボイコット運動を行い、フェイスブックがヘイトスピーチ対策に力を入れ、何らかの措置をとることを促した。取組みには1000社以上の広告主が賛同(The New York Times記事)し、フェイスブックに方針転換のプレッシャーを与えた。

その後フェイスブックは、フェイスブックおよび初めてInstagramでも反ユダヤ陰謀論を全面的に禁止(Recode記事)し、一部に反ユダヤ的要素を含むQAnonの排除を開始した。しかし、ホロコースト否定の禁止までには至らなかった。

そして10月12日、ザッカーバーグ氏はフェイスブックの公開投稿で次のように述べている。

私は表現の自由の保護、およびホロコーストの恐怖を矮小化あるいは否定することによる危害という両者間の緊張に苦慮してきました。反ユダヤ暴力の増加を示すデータを見てきたことで私自身の考えが変化するとともに、ヘイトスピーチに対する当社のポリシーも変わっています。許される表現と許されないの正しい境界線を引くことは、ひと筋縄ではいきませんが、現在の世界の状況を踏まえると、これが適切なバランスだと私は信じています。

フェイスブックは、今回の決定によってプラットフォームからこの種のコンテンツが直ちに一掃されるわけではないといっている。

「こうしたポリシーの施行は一夜にしてなせるものではありません。ポリシーに反するコンテンツにはさまざまな種類があり、施行にあたって当社のレビュー担当者とシステムを訓練するための時間がしばらく必要です」とフェイスブックは説明した。

関連記事:Facebookは全プラットフォームで米国の陰謀論グループQAnonを締め出しへ

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タグ:Facebookホロコーストヘイトスピーチ

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Facebookがミシガン州ウィットマー知事誘拐計画に関わった民兵組織を排除

FBIのショッキングな宣誓供述書(The Detroit News記事)から「複数の州知事を対象とした暴力行為」を計画していたグループの摘発に関する詳細が明らかになった。これには、ミシガン州知事Gretchen Whitmer(グレチェン・ウィットマー)氏の誘拐または殺害計画も記されていた。この国内テロ集団は、Facebookのグループ、プライベートなイベント、さらにFBIは名指ししていないが少なくとも2つの暗号化チャットアプリを利用して組織されていた。

民主党選出のウィットマー氏は今年の初め、新型コロナウイルスの感染拡大を抑えようと外出制限を実施したことから、政治的右派の間に広がる反ロックダウン感情のはけ口として、格好の攻撃目標にされていた。宣誓供述書には、6月に対面で行われた会合で、グループのメンバーが「『暴君』の殺害または現職知事の『誘拐』について話し合っていた」と書かれている。この誘拐計画に関わった13人が起訴された(米司法省リリース)。

このグループでは、考え方が共通するミシガン州の民兵組織、いわゆるWolverine Watchmen(ウルヴァリン・ウォッチメン)が接触した時点からメンバーが増加している。6月、Facebookは、反政府運動「ブーガルー」に関連するグループの一斉排除を行った際(Vox記事)に、当時その名前は公表しなかったものの、ウルヴァリン・ウォッチメン・グループも同プラットフォームから削除(未訳記事)している。ウルヴァリン・ウォッチメンは、去年の11月から今年の6月までの7カ月間、Facebook上でメンバーを募集していた。

「本日、私たちは暴力的な米国の反政府ネットワークを危険組織に指定し、当プラットフォームから追放します」と当時Facebookは公表し、暴力的なブーガルー・グループと「緩やかに連携する」ブーガルー運動とを区別していた。

Facebookは、6カ月前に最初に法執行機関に通報するなど、FBIの捜査に「積極的」な役割を果たしたと話している。FBIは、この活動のことをソーシャルメディア上で知るようになり、グループ内の情報の収集もソーシャルメディアに依存したと述べている。

「私たちは、人や公共の安全に危険が差し迫っているとを確認した時点でコンテンツを削除し、アカウントを停止し、即座に法執行機関に通報しました」とFacebookの広報担当者はTechCrunchに語った。「我々は現在継続中の捜査の初期段階から、FBIに積極的に接触し、協力してきました」。

TechCrunchは、このミシガン州の民兵組織に参加した人は、Facebookグループに仲介されたのか否かを尋ねたが同社から返答は得られなかった。8月、Facebookはミシガン州の多数の民兵グループをFacebookとInstagram(インスタグラム)から排除しているが、その中にはMichigan Liberty Militia(ミシガン・リバティー・ミリティア)、Michigan Militia Corps(ミシガン・ミリティア・コープス)、さらにウルヴァリンを名乗るほかのグループも含まれていた。

このグループの主催者の一人と目されるAdam Fox(アダム・フォックス)氏は、今年の初め、プライベートなFacebookグループでライブストリーミング配信を行い、ミシガン州の規制によりスポーツジムの閉鎖が続いていると訴えていた。その動画でフォックス氏は、ウィットマー知事を「This tyrant bitch」(この暴君ばばあ)と呼び、「とにかく、なんとかしなければ」と呼び掛けていた。

4月、トランプ大統領は、バージニア州、ミネソタ州、ミシガン州の外出規制に抗議する人たちを称賛した(未訳記事)。この3つの州の知事は民主党所属だ。このような初期の活動の多くはFacebook上で組織されていたのだが、ウィットマー知事を嫌う感情は、他のソーシャルネットワークや従来メディア(Fox News記事)を通じて右派の間で急速に蔓延していった。

ドナルド・J・トランプ:私はミシガンが大好きだ。この忌まわしいパンデミックにあたり、彼らのために我々が大いなる仕事をしているのは、そのためでもある。だが諸君の知事、グレッチェン・間抜け・ウィットマーにはまったく困ったものだ。さっぱり理解できない。自分の能力不足の責任をキミたちに押しつけているのと同じだ。

同グループは、ミシガン州警察の施設を攻撃する考えでいたが、7月にはウィットマー氏を同氏が私的に所有する別荘か、夏用の知事公館から誘拐する計画に落ち着いた。この決定が下された同日に、フォックス氏はプライベートなFacebookページにこう書いている。「みんな、忙しくなるぞ。今が愛国心を示すとき。時間と金と地と汗と涙を捧げよう。これから始まる。準備せよ!」。

同グループは、ウィットマー氏を私的「裁判」にかけてその場で殺害する計画から、誘拐に切り替えた。その後の数カ月の間に、彼らはウィットマー氏の別荘を調査し、武器を揃え、誘拐のための詳細な兵站計画を立てた。近所の橋を爆破して警察の注意を逸らすなどといったアイデアも上がっていた。彼らはこうした計画の詳細を、暗号化チャットで話し合っていた。

宣誓供述書には「フォックスは数回にわたり、国政選挙投票日である2020年11月3日までにウィットマー知事を誘拐するとの意志と願望を表明している」と書かれている。

また宣誓供述書は、ウィスコンシン州とミシガン州の民兵組織が計画メンバーの訓練を実施したとの詳細も明らかにしている。そこには、「黒色火薬、風船、導火線、ボールベアリングを使用し」簡易爆弾を製作し、火器と戦闘の訓練も実施したと書かれていた。彼らはその技の写真と動画を「Facebookのディスカッション」で共有していたことも宣誓供述書は示している。

Facebookの変化

一部の過激派の活動に対するFacebookの態度は、この数カ月間で劇的に変化した。同プラットフォームでは武装政治グループが長期にわたり勢力を伸ばしてきたが、8月に「軍事化された社会運動」(Facebookリリース)と同社が呼ぶこの活動に対して厳しい態度に出た。そしてまさに今週、FacebookはQAnon(キューアノン)と呼ばれるトランプ支持の陰謀論グループを大幅に追放し、軍事用語を使って投票者を威嚇する行為を禁じるとの発表を行った。

同社のこのところの突然のポリシー変更が、このテロ計画の影響によるものなのかを尋ねたが、Facebookは直接の返答は得られていない。また、この国内テロ計画がFacebookグループを使ってメンバーを募りオンラインでつながっていたのか、またはすでに実生活で顔見知りのメンバー同士の連絡用に使われていたのかも、定かではない。

過激派に詳しい研究者たちは、ずっと以前からFacebookのアルゴリズムによる「おすすめ」がユーザーを危険な思想に、そして危険な行動に傾かせるとの懸念を表明してきた。

民兵組織もその他の国内の過激派グループも、近年Facebookで人を集める方法に長けてきた。ひとたびメンバーとつながり、公共の団体などを通じて身元が確認されたユーザーは、中核的な仲間に加えられる。それは時にプライベートなFacebookグループのかたちをとっている。白人至上主義者と結びついている暴力的な極右グループであるThe Proud Boys(ザ・プラウド・ボーイズ)は、こうした人集め戦略に長けた最たる例(未訳記事)だ。

ユーザーは、以前はグループの活動の横のボックスに表示されていたFacebookのアルゴリズによる「おすすめ」によって、これらの過激派グループに導かれる。Facebookページでは、そうしたおすすめは、今でもメインの投稿の脇に現れ、「関連するページ」にユーザーを導くかたちになっている。

Facebookは、2018年末にThe Proud Boysを追放した。しかし暴力を好むグループは、身を低くして活動を続け、2020年においても同プラットフォーム上で大きな存在感を維持している。州ごとに存在し、Facebookを通じて武器を手配したり戦闘訓練を行う数々の「愛国者」組織や反政府ブーガルー・グループ(Vox記事)などがそうだ。

6月にFacebookはブーガルー・グループの「暴力的なネットワーク」を禁止(未訳記事)したが、他のグループはブーガルー運動に関連した合言葉で組織され、生き残っている。TechCrunchが特定したブーガルー・ページは、「決してブーガルーではない」と自称しているが、今週の時点でもまだBoogaloo Boys(ブーガルー・ボーイズ)のワッペンを販売し、暴力的なネタを掲載していた。

この手の活動を追いかけている研究者と報道関係者にとって残念なのは、公開グループの参加人数を検索ページで簡単に調べられるオプションをFacebookが廃止してしまったことだ。

Facebookは先日、公開グループのリーチを拡大(未訳記事)して、より多くのユーザーの目に触れるようにする計画を発表した。「公開グループの投稿は、Facebook内外でより広く行き渡るようになり、より多くの人がそれを見つけ、会話に参加できるようになりました」とFacebookはそのお知らせに書いていた。

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タグ:ドナルド・トランプ、Facebook

画像クレジット:Photo by JEFF KOWALSKY/AFP via Getty Images / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

Facebookの投票者威嚇ポリシー改定でトランプ氏は「武装した」選挙立会人を募集できない

Facebook(フェイスブック)は米国時間10月7日の投稿で、今後同社は「軍事的」表現の使用、および「選挙管理者あるいは有権者に対する威嚇、支配、権力行使」を意図した選挙立会いを促すコンテンツを今後一切認めないことを表明した。Facebookは今回の規則改定について、ポリシー作成に関わった公民権運動専門家らを称えた。

Facebookのコンテンツ・ポリシー担当副社長を務めるMonika Bickert(モニカ・ビッカート)氏は記者会見で新ルールの詳細を説明し、改定規則が「Army」(軍隊)や「Battle」(戦争)などの単語を用いた投稿を禁止していることを挙げた。この単語の選択は、トランプ陣営が投票日の選挙立会いのために「Army for Trump」(トランプのための軍隊)を募集していることに直接狙いをつけたものと見られる。先月、ドナルド・トランプ・ジュニア氏はFacebookなどのソーシャルプラットフォームに投稿したビデオで「トランプ選挙防衛作戦」に「今すぐ参加せよ」と支援者に呼びかけた。

「新しいポリシーの下では、もしあのビデオが再び投稿されれば間違いなく削除します」とビッカート氏は明言した。「『組織的妨害』あるいは武器を携帯して投票所に行くことを求める呼びかけは以前から削除対象であり、拡張されたポリシーは投票者への脅威への対処をさらに完全にするもの」だと同氏。Facebookは拡張ポリシーを今後適用していくが、すでに掲載されているコンテンツは、トランプ・ジュニア氏の投稿を含めて影響を受けない。

選挙立会いは公正な選挙を保証するための正当な手続きだが「『不正投票』や『仕組まれた』選挙などという根拠のない主張の証拠探しのために立会人を武装させる」という話は前例がなく、むしろ投票者への威嚇行為に近い(ロイター記事)。選挙立会いの法律は州によって異なり(NSCL記事)、立会人の人数や身分証明の方法について制限を設けている州もある。

トランプ氏は、破れた時に選挙結果を受け入れるかどうかの発言を何度も拒んできた。これは米国における平和的な権力の移行に対する前例のない脅威をもたらす行為だ。投票日が近づくにつれ、ソーシャルメディア会社や投票の権利擁護団体が不安で目を離すことができない数多くの懸念の一つでもある。

「ドナルド・トランプは選挙の公正性に興味などない、興味があるのは投票者の抑圧なのです」と VoteAmericaの創業者であるDebra Cleaver(デブラ・クリーバー)氏がトランプ陣営の選挙立会いへの取組みを評してコメントしてている。「武装した自警団員を投票時に送り込むというのは存在しない問題を解決する方法です。肌の色が黒や茶色の人が投票することを問題だと信じているなら別ですが」とも続けた。

Facebookは政治広告に関する規則にも変更を加えている。同社は選挙直後の政治広告を許可しないこととした。混乱や虚偽の主張を避けるためだ。

「広告は意見を表現する重要な方法の1つですが、11月3日の選挙終了後、米国内での社会問題、選挙管理、および政治に関わる広告の掲載をすべて一時的に停止する予定です。これは混乱と乱用を減らすためです」とFacebookの公正性担当副社長を務めるGuy Rosen(ガイ・ローゼン)氏はブログに書いている。「これらの広告が再び許可されたときにはFacebookから広告主に知らせる」と同氏は付け加えた。

さらにFacebookは、いつもと異なる選挙日の夜に、同社アプリがどのように見えるかを見せてくれた。同社はInstagramとFacebookアプリのトップに、選挙の状況を示す通知を表示し、誤った主張の事実確認作業を強化する。

画像クレジット:Facebook

これらのメッセージは「開票作業が終わっていない」ことをユーザーに再認識させ、結果について信頼ある合意が得られたあと「勝者の当選が確実になった」メッセージに切り替える。今年は当日中に選挙結果が明らかになるかどうかわからないため、ユーザーは11月3日より後にもこれらのメッセージを見る可能性がある。もし候補者が早まった勝利宣言を行った場合、Facebookは警告ラベルを付加する。

Facebookは、現在同社がバイラル・コンテンツ審査システムを使用していることも話した。誤情報などの有害コンテンツが最終的に削除される前に何千回も閲覧されてしまうことを防ぐための対策だ。Facebookによると、同社は「選挙シーズンを通して」このツールを活用しており、同社がルールを破ったコンテンツを検出し、拡散を食い止めるための対策を講じるセーフティーネットとして役立てている。

選挙前最後の月に、Facebookは誤情報を始めとする有害な選挙コンテンツの監視に対するためらいがなくなっている。同社は10月6日、過去4年間蔓延していたQAnon(キューアノン)と呼ばれる親トランプ陰謀論のコンテンツを禁止することを発表した。またFacebookは、トランプ大統領が複数日の入院を終えた直後にCOVID-19(新型コロナウイルス感染症)はインフルエンザより「はるかに致死性が低い」と主張した投稿も今週削除した

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タグ:Facebook、ドナルド・トランプ、2020 Election

画像クレジット:Photo by Yasin Ozturk/Anadolu Agency via Getty Images

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Uberのソフトウェアエンジニアとしてギグワーカーに企業にとって都合のいいルールを押しつける住民投票事項22に反対する

私はUber(ウーバー)のソフトウェアエンジニアを2年続けてきたが、同時に配車サービスのドライバーもしていた。大学時代は定期的にLyft(リフト)のドライバーを務め、生業はUberのAndroid用アプリのプログラマーだが、今でもギグエコノミーの実態を知るために、自転車を漕いでそれらのアプリベースの企業で配達の仕事をしている。

そうした経験から、私はギグエコノミーの決定的な要素に気がついた。それは、Uberが成り立つのは安くて速いからというものだ。車を呼べば数分で到着するため、私たちは支配者になった気分で、一時的な満足感に浸れる。ボタンをワンクリックで、友だちの家や食品スーパーや空港へ行ける世界で一番便利なものだ。

だがこれは、無数のドライバーたちがプライベートな時間までも車の中で過ごしながら客待ちをしているからこそ実現できるものであり、まったく割りに合わないことが次第に明らかになってきた。ドライバーたちは、無償奉仕でそのサービスを補完しているのだ。

儲けのない仕事を強いられているようなものだと気づいた私は、雇い主に対して声を上げることにした。Uberに加わる前も、ディズニーランドのカスタマーサービスからピザの宅配まで、割りに合わない低賃金の仕事をしてきた。Uberは、カリフォルニア州のProposition22(ギグワーカーを保護するカリフォルニア議会法案5条に例外を設け、アプリベースの契約ドライバーを個人事業主扱いにして福利厚生の対象から外せるようにする提案の住民投票事項、Prop22)に資金援助をしている大手企業数社の1つだ。Uberはこのキャンペーンに、これまで4750万ドル(約50億円)を献金している。職場の管理職たちは、Prop22の承認は会社の利益にとって非常に重要だと私たちに訴える。だが、会社の利益が私の投票行動を左右することはないし、そうあるべきでもない。

Uberは、Prop22はドライバーにとって有利なものだと主張するが、それはUberが企業としてドライバーを大切に扱うか否かにかかっている。Uberのエンジニアとしての私の経験からすれば、そうなる見込みは非常に薄い。パンデミックが始まった当初、私たちはUberが一斉レイオフを計画していることを知った。数週間、私たちは仕事と健康保険を確保できるかどうかもわからず、無為に過ごさなければならなかった。

結局、Uberはパンデミックの最中に3500人を解雇した。それも3分間のZoomコールによる通達でだ。私たちの大半にとってこれは、クビにする人数のノルマをいいつけられた管理職が、適当に自己判断で人を選んだように感じられた。何の保証もなくドライバーを解雇するUberのやり方と矛盾しない。頑固なまでに従業員の面倒を見ないその企業文化は、エンジニアにまで及んでいる。私たちも使い捨てのリソースなのだと気づかされた。

ソフトウェアエンジニアとして、私はドライバーとはずいぶん違う経験をUberでしている。社員として分類された私は医療、退職金制度、制限付き株式報酬、有給休暇、病欠の権利といった福利厚生を付与された。Uberのドライバーには、このような福利厚生はない。なぜならUberは、彼らを個人事業主として不当に分類しているからだ。2020年1月1日から、ギグドライバーは社員に分類すべきだと法律に明記された。しかしUberはこの法律に従わず、自分たちに都合のよいルールを規定したいがためにProp22の承認を求めている。

Uberのドライバーは、全員がパートタイムだと誤解している人がいる。定年後のドライブを楽しんでいる人や、私のように大学の授業が終わってから数時間を仕事に当てている人もいるだろうが、Uberの事業を支えているのはフルタイムのドライバーたちだ。5月に発表されたサンフランシスコ市による調査(カリフォルニア大学サンタクルーズ校ニュースセンター記事)では、同市のギグドライバーの71%が少なくとも週30時間働いていることがわかった。客を運んでいるドライバーの大半は、彼らだ。カリフォルニア州は、少なくとも週30時間働いている従業員全員に福利厚生を付与するよう、雇用主に法的義務を負わせているため、71%の日勤ドライバーは、現在、州が定めた福利厚生の付与が拒否されているかたちになる。

Lyftで働いた経験がなければ、雇用主の主張を額面通りに受け取っていただろう。これは決して、業界がダメになるという話ではない。ビジネスモデルは、どの企業も同じだからだ。つまり、利益追及のためのコスト削減に手段を選ばない。私は幸いにも、Gig Workers Rising(ギグ・ワーカーズ・ライジング)という人権団体を運営するUberの素晴らしいドライバーたちに出会えた。サンフランシスコの生活費が高いことは周知の事実だ。彼らは、最低賃金を下回る報酬で働くこともある。車の中で寝泊まりしているドライバー(The Guardian記事)も知っている。1回医者にかかるだけで経済的に立ち行かなくなる人(Twitter投稿)や、命に関わる薬すら買えずにいる人(Twitter投稿)もいる。それを回避できる道はない。そんな彼らの権利を否定するために、企業はProp22に数百万ドル(数億円)も費やされている。

テック業界で働く人たち、そして広く世間一般の人たちに私が訴えたいのは、住民投票の提案事項について、自分でよく調べてみて欲しいということだ。会社にとって最良の道であるから賛成票を入れるようにと雇い主にいわれたら、その雇用主の利益は、あなたの利益とまたは社会の利益と一致していないかもしれないと疑って欲しい。

Uber、Lyft、DoorDashなどのギグエコノミー企業で働く人たちには、あなたが作るものを毎日使っているドライバーたちのことを、よく知って欲しい。みなさんの労働から巨万の富を得ている企業幹部とは違い、ドライバーたちとは非常に多くの共通点がある。

2020年11月、私たちは他の従業員たちの側に立ってProp22に反対するか、あるいは企業幹部や億万長者たちに寄り添って賛成票を投じるかの選択を迫られる。

労働者の側に立って、Prop22に反対しよう。

【編集部注】筆者のKurt Nelson(カート・ネルソン)はサンフランシスコを拠点に活動するUnberのモバイルエンジニア。この記事は同氏の個人的見解です。

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タグ:Uberギグワーカーギグエコノミー

画像クレジット:ArtMarie / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

トランプ米大統領の新型コロナ感染を受けて米株価が下落

トランプ大統領とその家族、主要スタッフのメンバーが新型コロナウイルスの陽性反応を受けたことを受け、米国株が売られている。このニュースは一夜にして出てきたもので、すべての主要な米国kの指数に重くのしかかっており、テック株も例外ではない。この記事を書いている時点で、この混乱の状況は以下のとおりだ。

  • ダウ工業株平均:先物は1.5%下落
  • S&P 500:先物は1.63%下落
  • ナスダック総合指数:先物は2.32%下落

ベッセマー・クラウド・インデックスのような小規模でより特定のバスケットの株式は市場前に同様の数字を発表しないため、このニュースとそれがもたらす可能性のある政治的不安定化が、最も高く飛んだハイテク産業の株式に与える正確な影響を見ることはできない。

周辺の関連情報を集めると、Datadogはマイナス2.9%。Salesforce(セールスフォース)はマイナス1.8%。Zoomはマイナス1.7%。Crowdstrikeはマイナス3.2%など。要するに、SaaSやクラウド株はテック株に比べてあまりいい結果にはなっていないようだ。

最近の直接上場銘柄であるPalantirはマイナス3.8%、Aasanaはマイナス3.4%となっている。そのほか最近のIPO銘柄も同様に下落しており、その中ではJFrogは取引開始前にマイナス5.8%、Snowflakeは市場前取引にマイナス4.6%だ。

トランプ大統領の診断を受けて株式市場が苦しんでいる理由は想像に難くない。すでに不安定な選挙が間近に迫っており、複雑な要因が投資家の信頼に悪影響を与えている。それは株にとって悪いことだ。完全に健康な大統領が 景気刺激策を実行に移すには絶好の機会となる。景気刺激策は、現在の混乱によって弱体化する可能性があるし、まだまだ続くかもしれない。

TechCrunchは日が続くにつれて市場に目を光らせるが、あなたの個人口座が日の初めよりも日の終わりのほうが良く見えることを期待しないでほしい。

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(翻訳:TechCrunch Japan)

Facebookは米国選挙結果の「非合法性を主張する」広告を受け付けない

米国時間9月8日の第1回大統領討論会で、2020年米国選挙に対する脅迫のひときわ陰湿で鮮明な態度が見られた後、Facebookは選挙関連広告に関する新しいルールをさらに明確化した。

Facebookは同サービスの政治広告規則を拡張し「選挙結果の非合法性を主張する」あらゆる広告を禁止した。「投票方法を不正あるいは誤っていると主張する、あるいは投票者の個別事象を取り上げて選挙結果の非合法性を主張する」行為もこれに含まれる。

Facebookのプロダクト管理責任者で同社の事業整合性チームを率いるRob Leathern氏が、Twitterでこの変更を宣言した。

Facebookは、ユーザーの投票意欲をそぐ広告、郵送による投票その他の合法的方法を攻する広告、不正投票が蔓延していると暗示する広告、偽の医療情報で安全な投票を脅かす広告、および結果が投票日の夜すぐにわからないから選挙は無効だと示唆する広告を禁止することも述べた。

TwitterとFacebookはいずれも、選挙結果前の勝利宣言の扱いについて 新たなガイドラインを最近発表した。しかしFacebookの規則は、そのような主張が広告の中でなされた場合だけに適用されるようだ。TechCrunchはFacebookに、広告以外に候補者の通常アカウントで発言された場合の扱い方について質問している。

Twitterが政治広告を全面禁止した(The Daily Beast記事)に対して、Facebookはどのような政治広告をいつ許すかについてルールを微調整している。Facebookは、選挙、社会問題、および政治に関する広告を10月27日以降受け付けないと以前発表したが、それ以前から掲載されている政治広告は継続が許される(Facebookビジネスヘルプセンター)。

関連記事:Twitterは「選挙結果前の勝利宣言」など権力の平和な移行に反するツイートも取り締まる

すでにFacebookは、トランプ大統領とその支持者に端を発する、11月米国選挙の完全性に対する攻撃の氾濫に取り組んでいる。29日夜の討論会でトランプ大統領は、郵送方式はすでに信頼があり不在者投票に広く用いられている郵送方式はすでに信頼があり不在者投票に広く用いられているが、郵送による投票に再び疑問を投げかけ(CNN記事)、もし負けたときに選挙結果を受け入れるかどうかを約束することを拒んだ。

前例のないパンデミックで移動が困難になる中、郵送による投票は新しい発想ではない。コロラド、オレゴンなど複数の州が郵便を利用した選挙をすでに実施しており、郵便による投票はすでに全国で行われている不在者投票の拡大バージョンにすぎない。


9月30日、トランプ大統領はニューヨーク州で業者の印刷ミスによる不完全な投票用紙が配布されたことに関する陰謀論の種(NPR記事)をまいた。州は投票用紙を再発行することを決めているが、トランプ氏はこの事象を郵便による投票が「ペテン」である証拠だと主張した。その証拠に裏付けはない。(未訳記事)。

トランプ大統領の米国選挙への攻撃は、ソーシャルネットワークにとって前例のない挑戦であるが、それは国全体にとっての挑戦でもあり、近代において行政権の平和的移行が現職大統領によって脅かされる事態は起きたことがない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

郵便投票のデジタル申請は殆どの州でアクセシビリティーではない

2020年の選挙が歴史上最大の郵便投票になることは間違いない。しかし障害を持つ人たちには投票の申請が困難かもしれない。Dequeの調査によると、ほとんどの州でアクセシブルなデジタル申請が用意されていない。

Deque(ディキュー)はアクセシブルなウェブアプリケーションや手続きの開発を支援する会社で、今般、各州の郵便による投票あるいは不在者投票(事実上同じもの)の申込みプロセスを調べた。残念なことに、43の州で「何らかのデジタル・インアクセシビリティ」が見つかった。

理由は多岐にわたるが、PDFの申込用紙を例に挙げよう。文書をアクセシブルにするためにはテキストがスクリーンリーダーで読める形式になっている必要があり、ユーザーは必要なフィールドを印刷してペンで書き込むことなく申請できなくてはならない。

1つのフォームを読み書き自由にするためには1時間か2時間あれば足りる。そこでDequeは自らそれを実践し、改訂版のフォームを各州に送った。ジョージア州、ロードアイランド州、オハイオ州、モンタナ州、ミズーリ州、メリーランド州、およびケンタッキー州はすぐに支援を受け入れた。ミシガン州とマサチューセッツ州はPDFに代わるアクセシブルなオンライン手続きを用意していた。そしていくつかの州では申請が不要だ。

残りの州には何らかの問題がある。それは視覚障害者や書くのが不自由な人たちは郵便投票用紙の請求がまったくできない、という意味ではないが、他の多くの州ほど容易ではなく、誰かの助けが必要になる場合もあり、助けはすぐに得られるとは限らない。 Dequeがほとんどの州のフォームをアクセシブルにしたリストがある(About Deque Systemsサイト)。

「投票は権利です。修正したPDFを無料の公共サービスとして提供することは容易な決断でした。誰もが郵便による投票という方法を選べるようになることを望んでいます」とDequeのCEO Preety Kumar氏が調査結果を発表したプレスリリースで語った。

ウェブ、そして通常の行政手続きをアクセシブルにして維持していくことはフルタイムの仕事であるべきだ。関係者が指摘していたように、はじめからアクセシビリティーをデザインする方が、あとからパッチを当てるよりはるかに簡単であり、優れている。

米国大統領選挙

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