米国が対ミャンマー貿易協定を停止、同国でのインターネットアクセスも不透明に

ミャンマー国軍が同国の大統領と事実上の指導者Aung San Suu Kyi(アウン・サン・スー・チー)氏率いる政権を転覆させるクーデターを起こしてから2カ月、ミャンマー国軍の攻撃に反対する抗議者少なくとも200人が殺された事態を受け、米政府はミャンマーとの貿易協定を停止した。

声明の中で、米通商代表部の代表Katherine Tai(キャサリン・タイ)氏は、貿易停止は「すぐに発効し」「民主的に選ばれた政府が復帰するまで」続くと述べた。

「米国は、ビルマの経済成長と改革の基礎だった民主的に選ばれた政府を取り戻そうとしているビルマの人々を支援します」とタイ氏は述べた。「米国はビルマの治安部隊の市民に対する残忍な暴力を強く非難します。平和的な抗議者、学生、労働者、労働運動の指導者、医師、子どもの殺害は国際社会の良心に衝撃を与えました。こうした行動は国の民主主義への移行、ビルマの人々が平和で豊かな未来を成し遂げるための取り組みに対する直接的な攻撃です」と声明にはある。

ミャンマー(ビルマとしても知られる)と米国は、スー・チー氏の党が選挙で圧倒的勝利を収め、米国が経済制裁が緩めたのちの2013年に貿易を開始した

貿易停止は独裁軍事政権をターゲットとしているが、米クラウド・インターネット企業が米政府の命令と争っているなかで、ミャンマー中の何百万人というインターネットユーザーを不確実な状態に陥れている。抗議者たちは軍事政権が国中のインターネットを遮断したことを受けてネット接続を確保するのに苦労している。

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ミャンマーはすでにFacebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)を「次に通知するまで」閉鎖する措置を取った。

制裁は他国への商品、金、特定のサービスの提供を防ぐためのものだ。米国で事業を展開している企業は米国の制裁に従うか、厳しい罰金に直面する。ZTEは2017年に、故意にプロダクトをイランに出荷して米国の対イラン制裁に違反したことを認め、10億ドル(約1098億円)近くの罰金を払うことに同意した。

しかしクラウド企業はグレーゾーンで、異なるルール解釈がある。Quartzは2016年、IBMが米国の制裁対象国シリア、キューバ、イランからのビジターは自社のサービスにアクセスできないようにしたため、そうした国のインターネットユーザーはIBMがホストするサイトにアクセスできなかった、とレポートした

他の大手クラウドプロバイダーRackspace(ラックスペース)とLinode(リノード)は制裁対象国のユーザーへのインターネットトラフィックをブロックはしていないが、その代わり制裁対象国のユーザーが自社サービスにサインアップできないようにした。

ミャンマーのインターネットユーザーは同国の人口の30%ほどの約1700万人だ。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

NFTに仮想通貨は不要だが仮想通貨にはNFTが必要

スクリーンショットでも保存できるデジタルアートに何億円も払うのは、観光に行ってビルが立ち並ぶ通りをうろうろするようなものだ、と感じるようなもので、ほとんどの人は理解できないだろう。Google(グーグル)の画像やストリートビューで簡単にアクセスできるのだから、魅力がないのも当然だ。

この例えは、非代替性トークン(NFT)が突然注目を集めていることにまつわる困惑について、大まかにではあるが適切に説明していると言える。ブロックチェーンで構築されるこのトークンは、デジタル資産に唯一無二の価値をもたらす。つまり、スクリーンショットで保存できる芸術作品でも、オリジナル作品を所有しているのは1人だけということだ。このようなことが実現したこともあり、デジタルアーティストであるBeeple(ビープル)は、自分の作品を数日前に6900万ドル(約75億円)で売却した。

このトピックがStartups Weekly(スタートアップ・ウィークリー)ニュースレターに掲載されるのは、このことが初期段階と後期段階にあるスタートアップの勢いが増している仮想通貨の動きに影響を与えるかもしれないためだ。私が今週Equity(エクイティ)で論じたように、NFTが普及することで、平均的なビットコイン保有者だけでなく仮想通貨にあまりなじみのない人でも、通貨の保有を検討するようになる可能性がある。NFTを販売するプラットフォームでは通常、仮想通貨(通常はイーサリアム)を使って購入することが必要になる。このことを、人間には所有している資産を保護して、その資産をずっと所有していたいという欲求が備わっている一方で、人生には何が起こるかわからないという事実と合わせて考えてみよう。デジタルアーティストのビープルが作品を売却して6900万ドル(約75億円)を手に入れたという出来事は、大きな金額が動くニュースとなったのは確かだが、これはつまり、仮想通貨の支持者と仮想通貨資産に関するトピックが、一般大衆の話題となったことを示しているのだ。

分散型ネットワークに活路を見いだすオーナーシップが主流になるというのはメタコミュニケーション的であるし、ブロックチェーンとNFTが同じように使いやすくなり、その実力を発揮するまでにはまだ時間がかかるということもはっきりさせておきたい。そうではあっても、NFTが普及するのかという点は考えたくなるものだ。

これはただのスクリーンショットの話ではない。画素の集合体であるデータが、非常に高い価値を持つ可能性があるのだ。ビルが立ち並ぶ通りではなく、ハリウッド・ウォーク・オブ・フェイムになるのだ。日常生活で触れるモノが持っている特有の一面を見いだすことは、消費者にとって魅力的であるとともに、クリエイターにとってもすばらしい話だろう。

このニュースレターの続く部分では、業界で優位に立っているCoupang(クーパン)の競争力の他、収益面をサポートするNASDAQ(NASDAQ)のような存在になることを目指しているスタートアップ、さらにはグーグルに立ち向かうグーグルの開発者について扱う。今週の私のコメントとテック関連のニュースについては、私のTwitterアカウント@nmasc_をフォローしていただければと思う。

「韓国のAmazon」が上場を果たす

韓国のAmazon(アマゾン)と呼ばれることもあるクーパンが、3月第2週から公開株式市場に上場し、取引が始まった。3月11日の時点で、同社の価値は920億ドル(約10兆円)と評価されている

クーパンは創設にあたり、韓国には米国のUPSやFedEx(フェデックス)のようなサードパーティー物流企業が存在していないことに気づいていた。競争がなかったわけではないが、エンド・ツー・エンドの物流企業を構築して膨大な価値を生み出す可能性を確かに存在していた。

収益面をサポートするNASDAQのような存在

Pipe(パイプ)が発するメッセージは魅力的だ。パイプはベンチャーキャピタルを避け、投資ラウンドに名前を付けることはしないが、目標は収益面をサポートするNASDAQのような存在になることだと語る。契約の年間価値に対して一定レートを支払う投資家とSaaS企業との間を同社が取り持つことで、企業が収益を事前に獲得する方法を整備することを最初から目標としていた。毎月継続的に発生する収益を、年間を通して継続的な収益にするものだ。

このスタートアップは3月第2週の資金調達イベントで5000万ドル(54億円)を調達したことは注目に値する。TechCrunchのMary Ann Azevedo(メアリー・アン・アセベド)によれば、2021年の第1四半期には数千万ドル(数十億円)がこのプラットフォームで取引されたという。

画像クレジット:Bryce Durbin

Googleの開発者がGoogleを打ち負かすことは可能か

今週当社が主催したメインのエクイティショーで、参加者3人はさまざまなニュースについて話し合った。その内容は、反トラストに立ち向かうスタートアップとの出会いで数カ月前に掲載した内容へと自然に発展していった。

Neeva(ニーヴァ)は、Googleの広告エンジンの作成者を含む元グーグル社員のチームが設立した注目のスタートアップだ。エピソードの内容は盛りだくさんで、私たちもベストを尽くしたので、ぜひプログラムを聴いて自分がナターシャやダニーを支持するのか、アレックスを支持するのかを考えてみて欲しい。

その他のニュース

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Dragonfly)

H&Mが新疆ウイグル自治区の綿花不買を理由に中国のアプリから削除される

新疆の綿花産業で強制労働が行われていると主張し、それに対する「深い懸念」を表明した声明を共産党の組織が激しく非難したことを受けて、H&Mは中国の主要なeコマースとサービスのアプリから削除された。消費者がオンラインショッピングに親しんでいる国において、オンライン攻撃はH&Mの収益に劇的な影響を与える可能性がある。

現地時間3月25日の朝「H&M」を検索してみたところ、AlibabaのTaobaoやJD.com、Pinduoduo、MeituanのショップリストアプリDianping、TencentとBaiduの地図アプリなど、中国の主なオンラインプラットフォームでの検索結果はゼロだった。

AlibabaのTaobaoマーケットプレイスで「H&M」を検索しても結果はゼロだった

自社アプリやウェブサイトを中心にオンライン販売を行っている一部の欧米諸国とは異なり、H&Mは、中国でサードパーティーのeコマースプラットフォームのネットワークに流通を利用しており、個別のアプリやウェブサイトに代わっていくつかの「スーパーアプリ」が大部分を占めている。例えば、多くの国際的なブランドは、淘宝網(タオバオ)を通じて独自の公式ストアを運営し、WeChat内で動作するライトアプリを持っている。

中国本土は、2020年のH&Mの売上高で四大市場の1つであり、中国の146都市で445の実店舗を運営していた。

水曜日、ネットキャンペーンに精通していることで知られている党の青年部である共産主義青年同盟はマイクロブログプラットフォーム「Weibo(微博)」に投稿し、H&Mが新疆ウイグル自治区に関する綿産業についてのうわさを流したと非難した。このソーシャルメディアへの投稿はインターネット上で広く怒りを呼び、1日に38万3000回も「いいね」が押され、何万人ものユーザーがH&Mのボイコットを呼びかけた。

2020年の新疆ウイグル自治区に関するH&Mの声明がなぜ復活したのか、中国のインターネット大手がH&Mのオンラインストアやオフライン情報の上場を取り消すよう政府の命令を受けたのかは不明だ。

中国政府は、反テロ対策の一環として、新疆ウイグル自治区での人権侵害の申し立てを繰り返し否定しており、少数民族のイスラム教徒が多数を占める最西端の省「職業教育訓練センター」を運営していると述べている。

関連記事:フェイスブックが中国ハッカーによる偽アカウントでの海外ウイグル人標的の不正行為を摘発

明らかなのは、中国と西側諸国との間の外交的緊張が今週、高まっているということだ。新疆は、他の問題とともに、近年の中国と米国の政治的駆け引きの中心にある。中国のいくつかの国営報道機関は、国内のインターネットプラットフォームによるH&Mの商品の撤去を引用した記事で、H&Mの全国的なボイコットを呼びかけた。

JD.com、Pinduoduo、Tencent、Alibaba、Baiduはこの件についてコメントを避けた。Meituanはすぐに連絡が取れなかった。

綱引き

新疆ウイグル自治区の人権問題をめぐり、英国、カナダ、欧州連合(EU)、米国が中国政府関係者への制裁措置を発表した数日後に、青年団のコメントは発表された。これに対して中国政府は、EUの企業や個人に対する広範な制裁措置を発表。これらの企業や個人は、中国との取引を禁じられている。

H&Mは物議を醸した声明を取り下げたようだ。オンライン上の騒動に対応して、スウェーデンのアパレル大手はWeiboに投稿し「世界中のサプライヤーが持続可能な開発の目標を遵守することを保証する」とし「いかなる政治的姿勢を示すものでもない」と述べている。

さらに「H&Mは常に中国の消費者を尊重しており、中国における長期的な投資と開発にコミットしている」と付け加えた。

持続可能な綿花生産を推進し、Nike、Adidas、IKEAなど多くの多国籍ブランドをメンバーとする「Better Cotton Initiative(ベターコットンイニシアチブ)」をインターネットユーザーがターゲットにするようになったことで、他の外国ブランドもH&Mと同様に注目を集めている。BCIは2020年10月、人権上の懸念を理由に、新疆ウイグル自治区から調達した綿の認可を一時停止すると発表した。米国政府は2020年に、新疆ウイグル自治区の綿花に対する制裁措置を開始している。

カテゴリー:その他
タグ:H&M中国eコマース

画像クレジット:Roman BalandinTASS/Getty Images

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(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

製造業を立て直すために米国は中小企業技術革新研究プログラムを強化せよ

本稿の著者Sean O’Sullivan(ショーン・オサリバン)氏はMapInfo(マップインフォ)の共同創設者であり、現在はHAX(ハックス)、IndeBio(インディーバイオ)、Chinaccelerator(チャイナクセラレーター)、 MOX(モックス)、dlab(ディーラボ)といったスタートアップ・アクセラレーターを運営するベンチャー投資企業SOSVの創設者にして業務執行ジェネラルパートナー。

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私はニューヨーク州北部の貧しい地域で育ったが、幸運なことにレンセラー工科大学に進むことができた。私は会社を立ち上げ、28歳のときに上場し、そこで得た富をスタートアップに投資してきた。

企業創設者が次々と成功する姿を見るのは爽快だったが、ニューヨーク州北部に帰り、ずっと閉鎖されたままの工場を見るにつけ、テクノロジー改革が決して届かない場所があることを思い知らされる。

そうした空虚な建物の背後にある数字を見ると、これ以上悲惨なものはないと感じる。2019年後半、新型コロナウイルスに襲われる以前、すでに米国の製造業はGDPの11%にまで落ち込んでいた。この72年間で最低の数値だ。私たちはその基盤のほとんどを低コストなライバルであった中国に譲ってしまったことで、2011年には中国は世界最大の製造王国となった。米国の繁栄の基盤として製造業を復活させるための時間は、もうあまり残されていない。そこで大きな役割を果たすのが、優秀でありながら、あまり注目されていない米連邦政府の取り組みだ。

私の会社SOSVでは、技術的に実現が難しいアイデアを持つ企業創設者を対象に、研究から製品化までサポートするプログラムを実施している。その多くの企業が、特に工業の自動化や脱炭素といった国家的な優先分野において、米国の未来を代表している。

こうしたスタートアップには、今すぐにでもベンチャー投資家から資金投入されるものと思われるだろうが、現実には、彼らに流れるベンチャー投資金はほんのわずかしかない。それは単に、SaaSや消費者向け分野に比べてリスクが大きいという理由からだ。

だからこそ、1982年、米国連邦議会はSmall Business Innovation Research(SBIR、中小企業技術革新研究)プログラムを設立した。その発起人であるRoland Tibbetts(ローランド・チベッツ)氏の言葉によれば「初期段階の優れた革新的アイデア、つまり有望でありながらベンチャー投資企業などの民間投資家にはリスクが高すぎるアイデアに資金を提供する」ことを主眼としている。

年間30億ドル(約3270億円)をわずかに超える契約や助成金が連邦政府機関によって分配された結果、SBIRは7万件の特許認定、ベンチャー投資企業による410億ドル(約4兆4600億円)の追加投資、700の企業の上場が達成された。

見事にデザインされたSBIRによって、何千というテクノロジー志向の起業家たちは、研究段階と製品化、新規市場とベンチャー投資の間に横たわる谷を渡ることができた。この先の10年間をかたちづくるためには、さらに才気溢れる科学者、技術者、起業家が何千人も必要となる。自宅のガレージで研究を開始することはできても、元手がなければ続かない。連邦議会は、現在SBIRに求められている極めて重要な3つの改良点を盛り込んだ「SBIR 2.0」の策定に今すぐ取りかかる必要がある。

第1に、SBIRが提供する資金を少なくとも10倍に増やして欲しい。300億ドル(約3兆2700億円)にしたところで、高々ワシントンの予算の丸め誤算の範囲内だ。例えば2020年の防衛予算は6930億ドル(約75兆4500億円)。また、2020年に1560億ドル(約17兆円)に到達した米国のベンチャー投資額のほんの数分の1に過ぎない。それでも、米国の産業を救うためには、間違いなく最も有効な対策だ。

第2に、SBIRの投資先を脱炭素や先進的製造技術などの決定的に重要な戦略的分野に集中することだ。脱炭素は、地球上の人類の未来を救うものだ。先進的製造技術は、ロボティクス、バッテリー技術、人工知能デバイス、積層造形といった重要分野の主導権を確立し、製造業投資における失われた世代を跳び越える力を与えてくれる。これ以上に注目すべき市場はあるだろうか?

そして最後に、審査と報酬のプロセスを高速化すること。良い例を1つ挙げるならば、米国空軍が2019年と2020年に実施した画期的な「ピッチデー」プログラムだ。わずか1分間で、最も優れたプレゼンを行った企業創設者(厳しい事前審査があるが)に助成金を贈るというものだ。物事がほぼ支障なく流れるこの才能の市場では、審査や資金の供給に時間をかけていては勝利は望めない。

バイデン政権が2021年2月末に発行した米国のサプライチェーンに関する大統領令から、ホワイトハウスがすでに精力的に政策づくりを行っていることが見てとれる。この政権の取り組みは、間違いなく数多くのアプローチにつながるはずだが、成功の鍵は、米国で使われずにいる大切な燃料、つまり創意工夫と国民の意欲に、絶え間なく焦点を当て続けることにある。

とにかく、この国の不景気にあえぐ地域を貧困から救い出すためには、当事者たちが起業家精神を持ち、自らの手で米国の製造業を再建できる手段を与えることだ。

【米TechCrunch注】TechCrunchの元CEOであるNed Desmond(ネッド・デスモンド)氏は、現在SOSVの上級業務執行ジェネラルパートナーを務めている。

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タグ:コラム製造業アメリカ

画像クレジット:elenabs / Getty Images

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(文:Sean O’Sullivan、翻訳:金井哲夫)

TechCrunchはまだ死んでいないよ

米国時間3月24日のAxiosの記事をご覧になった方もいると思う。記事によると、Verizon Mediaのプロダクトの多くが改名して、「Yahoo+」という新ブランドの一員になるという。これまで独自の魅力と個性のあるブランドを築いてこられた方々全員をお祝いしたいし、新しいプランの下で、多くの優れたコンテンツ資産とすばらしい人びとを指揮していかれることを期待したい。

しかし、記事の一部の文章と、Twitterに掲載されたTechmemeのタイトルを目にした方の中には、TecCrunchがYahooCrunchになったといった、新たな状況を信じたかもしれない。でも、それは正しくない。

TechCrunchは、劇的に変化し挑戦的な状況の中で、あらゆる困難にも耐えてきたブランドだ。それは創業者の大胆なアイデアのためでもあり、過去および現在の才能豊かで、寛大、経歴や肩書がとても多くて長く、毎日一緒に仕事をすることに大きな満足を感じるTCスタッフ全員の、たゆまぬ努力にも支えられている

TechCrunchはこれまでに何度も、さまざまな立場の人から、死んだと呼ばれる名誉にあずかってきた。しかし、調べてみたところ今回も無事なようだ。

では、明日もお会いしましょう。明日の明日も、そしてそのまた明日も。最後に、今日のような日のための私たちのモットーを、お知らせしておきましょう。

「Hard To Kill(ハード・トゥ・キル)」

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画像クレジット:Max Morse/TechCrunch

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中小企業向けに保険を提供するHuckleberryがバークシャー・ハサウェイと提携

中小企業向けにさまざまな保険を提供するインシュアテック企業のHuckleberryは、Berkshire Hathaway GUARD(バークシャー・ハサウェイ・GUARD)との提携を発表した。同スタートアップにとって、これはこれまでで最大規模の提携となる。

Bryan O’Connell(ブライアン・オコンネル)氏が共同設立したスタートアップであるHuckleberryは、この1年でいくつか大きな動きを見せた。同社は2017年に、オンラインポータルを介して中小企業に労働者災害補償保険と一般賠償責任保険を提供し、これらの企業が適切な保険を探し出す際の手間を大幅に削減した。

サンフランシスコを拠点とするHuckleberryは2020年、物理的な拠点を倍増させ、サイバー保険、自動車保険、アンブレラ保険など、5つの新しい保険を商品群に加えた。

さらにHuckleberryはニューヨークに移転し、オハイオ州コロンバスにもHQ2と呼ばれるオフィスを開設している。オコンネル氏によるとニューヨークへの移転は、フィンテック分野の人材が急増している同地域でこのスタートアップを位置づけるためだという。

この新しいパートナーシップと過去1年間のHuckleberryの成長により、新たなチームメンバーを迎え入れ、2022年初頭までに100人体制にする計画だ。さらに、Bill Kaper(ビル・ケイパー)氏がCTO(最高技術責任者)として就任した。ケイパー氏はRoot Insuranceでエンジニアリング担当バイスプレジデントを務め、200人以上のエンジニアからなるチームを監督していた。Huckleberryはまた、元JettyのBraden Davis(ブレーデン・デイビス)氏を最高保険責任者に指名した。

同社は2019年12月にシリーズAで1800万ドル(約20億円)を調達しており、これにはTribe Capital、Amaranthine、Crosslink Capital、Uncork Capitalなどが参加している。

新規雇用とバークシャー・ハサウェイとの提携による勢いで、Huckleberryはより高リスクな保険カテゴリーに進出できるだろう。

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タグ:Huckleberry保険Berkshire Hathaway

画像クレジット:Huckleberry

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(文:Jordan Crook、翻訳:塚本直樹 / Twitter

急成長する民間企業の取締役会で今、起きている5つのトレンド

本稿の著者はAnn Shepherd(アン・シェパード)氏とJocelyn Mangan(ジョセリン・マンガン)氏。シェパード氏はソーシャル・インパクト・ベンチャーであるHim For Herの共同ファウンダーであり、フィンテック・スタートアップのHoneyBook取締役。マンガン氏はソーシャル・インパクト・ベンチャー、Him For Herの共同ファウンダーでChowNowおよびPapa John’sの取締役だ。

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「取締役会は大きく変わります」。

Dunkin’とPapa John’sの取締役、元CEOのNigel Travis(ナイジェル・トラヴィス)氏は、CEOと意欲的な取締役会メンバーによるコーポレートガバナンス の将来に関する議論を、こう切り出した。

2020年、無数の企業の生き様が大きく変わったのと同じく、取締役会は重大かつ長期的な変革に直面している。2020年我々は500人以上のビジネスリーダーから話を聞き、300近い企業の取締役会を調べた。それに最近行った取締役会ベンチマーキング結果を加えて検討した結果、我々は米国で急成長中の非上場企業の取締役会に5つのトレンドがあることを発見した。

1.取締役会の多様化は不可欠

歴史的にみて、役員はすでに取締役会にいる人々の個人的ネットワークを通じて選ばれることが多い。このアプローチは信頼と利便性に最適化することで多様性を犠牲にしている。

取締役会の多様性に対する圧力が高まり、男性のみの取締役会のリスクが社会的問題として取り上げられる中、企業は役員構成に対するより包括的なアプローチを取り始めている。ネットワーク外に目を向けて女性や有色人種を指名するようになり、これがいわゆる「パイプライン問題」ではなくネットワークの問題であることを発見した。過去1年の間に、レイトステージ非上場企業で取締役会が男性のみの割合は60%から49%に減少した。

これは進歩ではあるが、豊富の資金を得ているベンチャーキャピタル支援企業の半数近くで取締役会に女性がいないという事実は、これから成すべき仕事の膨大さを物語っている。現在、高成長民間企業の取締役会に占める女性の割合はわずか11%であり、有色人種女性はわずか3%である。

しかし、人種・民族の多様性については、この先改善が進んでいくことが期待される。Him For Her(ヒム・フォー・ハー)への女性取締役候補紹介の要請は2020年第4四半期に前年同期比4倍に増え、指名された新取締役の4分の1は黒人・アフリカ系米国人だった。

2.候補者をCEO以外の経営幹部に広げる

社外取締役を探す時、取締役会はCEO経験者を優先する傾向がある。現在のCEOの性別不均衡を踏まえると、その選択志向は直ちに男性候補者に傾く。

女性登用を検討する中で、多くの取締役会は次期取締役の選考基準に戦略的アプローチを取ることの価値に気づいた。求めている資質の代用としてCEOの肩書に頼るするのではなく、取締役会はギャップ分析を行い、最も重要なコンピテンシーの組み合わせを考えるようになった。

その結果、戦略的展望と最先端のベストプラクティスを合わせ持つ経営幹部の太いパイプラインができあがる。今すぐ監査委員会を開けるCFOだけでなく、市場開拓能力のある幹部、イノベーションを進めることで知られたプロダクトリーダー、および企業カルチャーを構築する方法を知っている人材活用責任者を求めるリクエストが我々のもとに届いている。他に、顧客の声を取締役会に届けるために、ビジネスに強い医師や看護師、警察官などを探している企業を手助けしたこともある。

3.社外取締役は早期に

CEOが取締役会に多様性と経営経験をもたらそうとする際、その多くが早い段階で社外取締役を迎えている。どのくらい早く?「社外取締役を迎えるのに早すぎることはない」とRippleのCEOであるBrad Garlinghouse(ブラッドガーリングハウス)氏はいう。同社の最初の社外取締役は会社設立後わずか1年で任命された。

2020年、潤沢な資金を得ている民間企業で、社外取締役が少なくとも1人いる割合は71%から84%に増え、取締役会に社外取締役の占める割合は20%から25%へと増えた。2020 Study of Gender Diversity on Private Company Boardsによる。我々が取締役会調査を実施した非上場企業のうち40%以上がシリーズBまたはそれ以前だった。

4.Zoom取締役会の活用

パンデミックは取締役会を画面へと向かわせたが、多くの会社では、リスクが軽減された後も少なくとも一部でバーチャル会議は続けられるだろう。2020年、企業は物理的オフィスの役割を考え直し、物理的役員会議室の重要性は新たな監視の目に晒された。多くのCEOや役員は、正式な取締役会の対面参加を好むだろうが、リモート出席の新たな流れや臨時バーチャル会議の増加が予想される。

移動の減少とスケジューリングの容易さ以外にも、バーチャル会議には幹部らが活用すべき隠れた恩恵がある。出席者増による機会費用の減少である。「役員室に人が増える」ことによる影響は、長年にわたり幹部の取締役会参加に反対する理由の1つだった。バーチャル形式によって、CEOはより多くのリーダーが取締役会の議論に参加する機会を活用するだろうと我々は予想している。

その一方で、バーチャル会議では人間関係構築に意識的な努力が必要となる。取締役会はバーチャル会議の利便性と対面による親密な関係構築の価値の均衡をとって協調的意思決定を推進していく必要がある。

5.ステークホルダー資本主義の定着

公開市場における圧力の高まりと価値に基づく購入決定を行う消費者の増加に後押しされて、民間企業の取締役会は意思決定における持続可能性をあからさまに重視するようになった。BlackRockのCEO Larry Fink(ラリー・フィンク)氏は毎年恒例のレターで、業界のライバルをESG指数で上回る企業が「持続可能性特典」を得ている証拠を指摘した。上場企業がESG実績に関する指数を標準化、公表したことで、その規律は国際市場での競争を目論む企業の役員室へも拡大している。

民間企業は経済のほぼすべての分野でイノベーションを推進してきたが、取締役会は過去数十年間驚くほど変わっていない。2020年は会社の取締役会にとって転換点になると予想している。この時期の取締役会転換は、多様性・包括性の拡大および持続可能な価値創造のますますの重視によって定義されるだろう。こうした取り組みが定着すれば、恩恵を受けるのは企業と投資家だけでなく、従業員、顧客、サプライヤー、そして社会全体である。

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(文:Ann Shepherd、Jocelyn Mangan、翻訳:Nob Takahashi / facebook

不動産テックスタートアップのOfferpadがSPACとの合併により公開へ

Offerpad(オファーパッド)はSPAC(特別買収目的会社)との合併により公開する最新のプロップテック(不動産テック)企業だ。

アリゾナ州フェニックスに拠点を置く同社は米国時間3月18日、Supernova Partners Acquisition Companyと合併し、公開する計画を発表した。合併取引は30億ドル(約3270億円)で評価された。

取引は2021年第2四半期または第3四半期初めに完了する予定。合併後の社名はOfferpad Solutions。ニューヨーク証券取引所で「OPAD」のティッカーで取引される。

2015年創業のOfferpadは、主にiBuyer(オンラインでサインアップした売り手から住宅を購入)として始まり、その後住宅を売買したい人々のためのワンストップショップになるべくプラットフォームの進化を進めてきた。たとえば今では、住宅改修のための貸し付けだけでなく、所有権移転や住宅ローンのサービスも提供している。同社は、長年にわたって負債で調達してきた数億ドル(数百億円)に加え、LL Fundsなどの投資家から1億5500万ドル(約205億円)を株式で調達した。

Offerpadは創業以来3万件の取引を実行し、総取引額で70億ドル(約7630億円)近くを達成したと述べている。同社は売上高について、2020年の見込額である11億ドル(約1200億円)から、2021年は14億ドル(約1530億円)に増えると予測している。ちなみに2016年の売上高は1億ドル(約109億円)だった。またOfferpadは2016年以来「住宅あたりの貢献利益がプラス」であると述べている。

同社は野心的な目標を掲げており、2022年に24億ドル(約2620億円)、2023年に39億ドル(約4210億円)の売上高を予想している。現在、16の市場で活動しており、最近デンバーとナッシュビルをリストに加えた。

この取引のためにSPACを設立したSupernova PartnersはSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏が率いる。同氏はシリアルアントレプレナーでHotwire、Zillow、dot.LA、Pacasoを共同で設立し、ZillowではCEOをほぼ10年務めた。

PIPE(上場企業の私募増資)の投資家には、Black RockとZimmer Partners、全米規模の住宅建設業者であるTaylor Morrison HomeCorpなどが管理するファンドや会社が含まれる。

Offerpadは、Supernovaと提携して公開会社になることで、市場の「より多くを得るために成長を加速」できると述べた。同社は現在、全国の900以上の市や町で事業を展開しており、全国への拡大を計画している。

ラスコフ氏は、Offerpadがオンライン不動産市場での「巨大なピースをつかむのに非常に良い位置にいる」と信じている。

「iBuyingは、世界最大の規模をもつ市場の1つである不動産のほんの表面をなでているに過ぎません」と同氏は声明で述べた。「一般的に、食料品、自動車、製薬などの他の業界とは対照的に、不動産は引き続き極めてアナログですが、消費者はオンラインソリューションを求めています。消費者が多くの取引をオンラインで行うようになり、私たちはオンライン不動産全体が今後数年間で急速に成長する準備が整ったと信じています」。

Offerpadは、Opendoor、Redfin、Zillowなどの企業と競合している。

取引の一環として、既存のOfferpadの株主は、保有株式の100%がそのまま合併後の会社の株式となり、クロージング時に合併後の事業体の約75%を所有する予定だ。Offerpadの創業者でCEOのBrian Bair(ブライアン・ベア)氏は、合併後の会社の議決権の約35%を保有する多議決権株式を受け取る。

2021年3月初め、不動産テックのスタートアップであるDoma(以前はStates Titleとして知られていた)は、SPACのCapitol Investment Corp. Vとの合併により、債務を含めて30億ドル(約3270億円)の評価で公開すると発表した。

関連記事:ハイテク不動業のDomaもSPACブームに乗って3250億円の大型上場を目指す

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タグ:OfferpadSPAC不動産

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

リモートでの動画制作をシンプルにするOpenReelが20.7億円調達

OpenReelは、リモートで簡単に動画を記録できるというスタートアップだ。同社はこのほど、シリーズAで1900万ドル(約20億7000万円)を調達した。

CEOのLee Firestone(リー・ファイアストーン)氏とCTOのJoe Mathew(ジョー・マシュー)氏は最初、動画の代理店を始めたが、リモートでの制作を含む大きな仕事を任されると、既存のソリューションでは満足できず、結局、自分たちでその技術を作ろうという結論になり、開発に1年あまりを費やした。

もちろん、リモートのビデオプロダクションはすでにいろいろ存在しており、それぞれが独自のやり方で仕事をしていた。特に2020年、彼らは忙しかった。TechCrunchでも、カメラやライトをライターへ送り、その後、トラブルシューティングで大量の会話をする羽目になった。

しかしOpenReeの「リモートカメラ」技術は、そんな作業を大幅に単純化してくれる。さらにプロダクションのメンバーに、細かいコントロールができる。同社ソフトウェアを使うとリモートのディレクターが現場のウェブカメラやモバイルデバイスをコントロールすることが可能で、リアルタイムの音声とカメラはそれぞれ最大4人を配置できる。4K画質も可能なその動画はローカルに保存でき、撮影後に自動的にアップロードされる。テレプロンプターといった周辺機能もサポートしている。

「私たちの顧客に聞いてみるとわかりますが、彼らが自分でやると、いろいろな技術を自分たちで組み合わることになり、現場へ送るかどうかも自分で決めなければなりません。それがすべてうまくいったとしても、自分たちと相手で同じクオリティとシームレスなエクスペリエンスを揃えることができません」とファイアストーン氏はいう。

当然ながら、2020年には需要が急増。これまで1年に数千本の動画撮影をサポートしたが、その数は10倍か20倍になってしまったとファイアストーン氏はいう。

事実、OpenReeによるとDell、HubSpot、ViacomCBSそしてTechCrunchの親会社Verizon Mediaなどのクライアントが、マーケティングビデオ、社内コミュニケーション、顧客の証言などを記録するためにこの1年間で、年間経常収益は12倍に増加したという。200社以上のエンタープライズクライアントに加え、同社は「数百社」のSMB(中小企業)のお客様を抱えている。

「これらの組織では、コンテンツに対する潜在的な需要があります。私たちのテクノロジーは【略】そのロックを解除した」とファイアストーン氏はいう。また、パンデミック後には、対面での撮影がより安全になるとは考えていないとのこと。

シリーズAはFive Elms Capitalからのもので、これによりOpenReelの調達額は、融資も含めて2390万ドル(約26億円)になる。今回の資金は、メディアへの録画だけでなく、ライブストリーミングするといった新機能の開発に使いたいという。2020年はグローバル化も努め、125カ国でローンチしたが、このグローバルでの成長は今後も続けたいとのことだ。

Five ElmsのThomas Kershisnik(トーマス・ケルシスニック)氏は声明で「Five Elmsは、古いやり方を変えることにチャレンジしている企業を好んでいる。OpenReelは、まさにそれだ。同社はリモートテクノロジースタックの重要な一部であることを自ら実証し、多様なコンテンツ創作ツールを収めたツールボックスの中でも必須のツールとして、エンタープライズのコンテンツを強化し、さらに多くを作れるようにする」と語る。

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画像クレジット:OpenReel

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ブラジルの工場用機器監視技術TractianがY Combinatorの承認を取得

Igor Marinelli(イゴール・マリネッリ)氏とGabriel Lameirinhas(ガブリエル・ラメイリーニャス)氏は製造工場の周辺で育った。マリネッリ氏の父親はサンパウロ郊外のInternational Paperの工場で働き、ラメイリーニャス氏の父親はセメント工場で働いていた。

2人は自分たちの両親が工場の稼働に欠かせない重機のメンテナンスや監視が不十分だと訴えているのをずっと聞いていた。

そこで2人は、後にTractianの原型となる技術の開発に着手した。

サンパウロ大学時代からの友人であるマリネッリ氏とラメイリーニャス氏は、マリネッリ氏が米国で起業家としてのキャリアを積んだ後も連絡を取り合っていたが、同氏が立ち上げようとしていた慢性疾患の予測サービスBlueAIが破綻したことをきっかけに、ブラジルで再会した。

マリネッリ氏はしばらくの間、製紙工場で働き、その施設のソフトウェアエンジニアになった。そこで彼は、産業用監視ツールが置かれている粗末な状況を目の当たりにした。

そのため、ラメイリーニャス氏と一緒にもっと良い方法があるはずだと考えたのだ。ブラジルの工場には、、Siemens(シーメンス)やSchneider Electric(シュナイダー・エレクトリック)などの最新ソリューションで必要とされるWi-Fiやゲートウェイなどのネットワーク技術が備わっていない。マリネッリ氏によると、SAPなどの既存のエンタープライズリソースプランニングソフトウェアとの統合も、頭痛の種だという。

「巨大な資本を持つ企業でなければ、そのようなことはできません」とマリネッリ氏は語る。

Tractianのセンサーは、振動、温度、エネルギー消費量、機械の稼働時間時間を計測するホロメーターの4つを計測する。またセンサーから出力されるデータを分析して、マシンのメンテナンスが必要になる時期を予測するソフトウェアも開発した。

Y Combinatorは、このソフトウェアとハードウェアのパッケージに魅力を感じ、Soma Capital、Norte Ventures、Alan Rutledge、Immad Akhundなどのエンジェル投資家も同様に評価している。

Tractianの技術はセンサーに90ドル(約9800円)で、分析とソフトウェアはセンサーごとに月額60ドル(約6500円)かかる。マリネッリ氏によると、このサービスは2カ月未満で収益化できるという。同社はすでにAB InBevを最初の顧客として契約しており、合計約30人のバイヤーがTractianのセンサーを使用している。

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画像クレジット:Paolo Bona Shutterstock

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:塚本直樹 / Twitter

楽天も利用するECフルフィルメントの仏Cubynが欧州での事業拡大のために45.4億円を調達

パリを拠点とし、EC業者がフルフィルメントやロジスティクスをアウトソースできるようにする物流スタートアップのCubynは、新たに3500万ユーロ(約45億4000万円)の資金を調達した。

今回のラウンドはEurazeoとBpifrance Large Ventureが主導し、First Bridge VenturesとFuse Venture Partnersが参加した。既存投資家のDN Capital、360 Capital、Bpifrance Smart Cities fund、そしてBNP Paribas Développementもフォローオン投資を行った。

Cubynはこの資金調達により、2021年末までに85人のチームを170人以上に倍増させ、より国際的にサービスを展開していくという。まずはスペインとポルトガル(来月サービス開始)、続いてイタリア、英国、ドイツと展開していく予定だ。

印象的なのは、コストと配送時間の削減を目指して、今後数カ月のうちにパリ地区に2万5000平方メートルの「オートメーション化された」施設を開設することだ。

Cubynはもともと集配のみを行っていたが、1年半前、シリーズBで1200万ユーロ(約15億6000万円)の資金を調達した直後に「Cubyn Fulfilment」を立ち上げ、フルフィルメントにも参入した。

当時、「Cubynの倉庫に在庫を置くことも含め、フルフィルメントの全工程をカバーする完全な統合ソリューション」と説明されていたこの動きは、最近のパンデミックだけでなく、継続的なD2Cやマーケットプレイスのトレンドに促されたECブームを背景に、同社の成長を後押しした。例えばBack Market、楽天、Mirakl、FnacなどのマーケットプレイスがCubynを利用している。

その独自技術はマーチャントのロジスティクスを効率化することを目的としており、「ウェブアプリから、アルゴリズムや倉庫ロボティクスによる高度な最適化まで」とCubynはうたっている。その結果、完全に統合されたフルフィルメントソリューションを、業界標準の数分の一のコストで運用できるとしている。これにより、同社は流通取引総額(gross merchandise value、GMV)を3000万ユーロ(約39億円)から2020年には2億5,000万ユーロ(約324億5000万円)まで成長させている。

Cubynの共同創業者兼CEOであるAdrien Fernandez-Baca(アドリアン・フェルナンデス=バカ)氏はこう述べている。「Cubynは、従来のeコマースのサードパーティロジスティクス市場を根底からディスラプトし、より優れた、より速い、国境を越えたサービスを30%低い価格で提供しています。また、マーチャントの皆様には、新たな収益源を提供するだけでなく、国際的な展開により新たな市場を開拓するとともに、コストや配送速度の面で他の選択肢をはるかに凌駕しています」。

Bpifrance Large Venture FundのAntoine Izsak(アントワーヌ・イザーク)氏はこう述べた。「新型コロナウイルスは、信頼性、拡張性、技術力に優れたフルフィルメントソリューションを求めるマーチャントのニーズを加速させまし。Cubynと協力して、今後数ヶ月のうちにヨーロッパ全域でビジネスを拡大できることを楽しみにしています」。

フェルナンデス=バカ氏は次のように付け加えた。「現在、当社の出荷の85%はフランス国内、15%は国際配送です。今回の資金調達により、この比率は半々になると予測されます」。

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Aya Nakazato)

チーフコミュニティオフィサーは、いまやCMOとも言えるだろう

コミュニティは単体のSlackグループや、イベント、ニュースレターではない。コミュニティとはこれらのタッチポイント全ての寄せ集めであり、顧客、最終的に顧客になる人、一度限りのユーザーを含んでいる。あまりにも漠然とした状況にある現状だが、リモートワークやデジタルコミュニケーションが私達の生活を支える中、企業はさまざまなチャネルにさらに目を向けている。著者の最近のツイートでは、細分化した顧客ベースを対象にすることが多いエドテックのような分野でも、いかにコミュニティが調和をもたらすかという点を強調している。

著者は2021年2月、スタートアップが実際にコミュニティのために予算を確保し始めており、セールスやマーケティングチームに費用をかけるのではなく、有意義な方法でコミュニティに投資しているという話をする機会があった。

「チーフコミュニティオフィサーは、いまやCMOである」とある創設者が私に言った。FelicisとSeven Seven Sixが率いたCommsorの最近の資金調達、シリーズAの1600万ドル(約17億円)について、同社の創設者であるMac Reddin(マック・レディン)氏と話をしたばかりだったため、私はその言葉に特に興味をそそられた。

コミュニティのアイデアには驚かされ続けているが、Commsorはコミュニティマネージャー達がそういったものへの予算、そして成果を無駄にしていないということを示すのに役立つ解決策を提供している。同氏によると、Commsorはコミュニティのオペレーティングシステムであり、それぞれのコミュニティがどのように見え、感じるかを企業が抽出するための支援をし、最終的には企業のセールスリードや収益へとつなげていくという。Commsorは例えば「Googleにあなた方のプラットフォームを使用しているエンジニアが3人います。Googleにかけあってエンタープライズ契約を結ぶか聞いてみましょう」というような提案ができるわけだ。このようなスイートスポットや、ボトムアップのコミュニティ採用者を見つけることが、Commsorの仕事なのである。

Commsorはまだプライベート・ベータであるが、昨年はコミュニティ予算を持つスタートアップ企業が「大幅に増加」したか、コミュニティ予算が増加したという。まだ曖昧な分野の急発展を目指すスタートアップには独自の課題が伴うのも事実だ。

Commsorは取引を学びたいと熱意あるコミュニティマネージャーを支援するためのC Schoolと、当該分野の企業を支援するファンドを立ち上げた。 また、 コミュニティスペースを定義することへのコミットメントを示すため、Hopin、Lattice、Notionなどの会社からの署名を載せたメモを投稿している。

「10年前のカスタマーサクセスや、300年前の収益業務を行っているようなものです」とレディン氏は言う。「人々はそれを気にしており、そこには役割があるものの、定義すべきことや成長すべき点はまだたくさんあります」。

コミュニティツールの市場マップ。画像クレジット:Commsor

投資家は競合他社にお金を投じるか?

CBDグミ、金融の配管、P2Pカーシェアリングなどなんであれ、投資家がスタートアップを支援するとき、投資家はその企業がその分野での勝者となることを理想として考えている。そのため投資家が競合するスタートアップにも投資した場合、それは良からぬ兆候であり評判を落とすことにもなりかねない。

Alex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)氏からの情報:ソフトウェア市場が成熟するにつれ、投資の場が競合他社への投資に開いていくかもしれない。これを便利な補完的投資と呼ぼう。

スタートアップのOliveがAmazonと競合

野心的な創設者であれば、設立初期段階に投資家やジャーナリストから頻繁に聞かれる質問がある。Facebook、Apple、Amazon、Netflix、Googleがあなたのスタートアップを作ったらどうなるか?この質問の裏にあるのは、たとえ巨大企業が何百万ドルもの資金とエンジニアチームを投入したとしても打ち勝つことのできない、創業者独自のユニークな解決能力を見極めたいという考えだ。

Jetの共同創設者であるNate Faust(ネイト・ファウスト)氏からの情報:2016年に同氏は事業をWalmartに30億ドル(約3187億円)で売却し、現在は持続可能なEコマース事業でAmazonと競合している。Oliveは買い物客が購入した物を再利用可能なパッケージにまとめて、1週間に一度配送するというサービスを提供している。

ファウスト氏は、できるだけ早く商品を届けようと努めるAmazonや他のEコマースサービスの逆を同社が行っているという事実を認識しているものの、同スタートアップの消費者調査によると、買い物客は別のメリットを得るために少し長く待ってもかまわないと考えていることが判明したという。

パイプライン問題の俗説を打ち砕く

有力者から従業員まで、シリコンバレーにおける多様性の欠如がパイプラインの問題の原因だとされてきた。つまり役割を満たすのに十分な資格を持った多様性のある人材がいないという考えだ。しかし最近の研究が、このマインドセットがいかに古くて間違ったものであるかということを浮き彫りにしている。レポーターのMegan Rose Dickey(メーガン・ローズ・ディッキー)氏が、AI Now Instituteで人工知能におけるジェンダー、人種、権力の研究を主導するJoy Lisi Rankin(ジョイ・リージ・ランキン)博士をインタビューした。

ランキン博士からの情報

パイプラインはすべてをサイロ化してしまっており、「私達はもっと多くの黒人女性をテック分野に迎える必要がある」とは言うものの、「これらの企業は人種差別主義者、白人至上主義者、女性差別者であり、こういった組織や大規模な社会および世界的資本主義構造が根本から変わる必要がある」とは言うことがない。

ランキン氏は、雇用や人事採用の透明性を向上させることが偏見を減らし、大切な情報を人材に伝える助けになり得ると付け加えた。

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タグ:コミュニティ コラム

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

EUが「スタートアップに優しい法案」を加盟国に今週提案、何カ国が署名するのか?

米国時間3月19日の年次Digital Day(デジタル・デー)会議で欧州委員会(EC)は、EU Startup Nations Standard(SNS、EUスタートアップ国家標準)と名づけた「法律文書」を提示する。私の話が退屈で死にそうだと読者が思う前に言っておくと、SNSは「膨大な政治的取り組み」だ。その目的は、スタートアップを作る場所として、欧州連合(EU)を米国などのグローバルリーダーと比べて最も魅力的にすることだ。よって、その影響力を侮ることはできない。

目的は、EU加盟諸国がスタートアップ(その多くがすでにEU内に存在する)のために一連の「ベストプラクティス」政策を施行することであり、内容はスタートアップビザから企業法におけるストックオプションの扱いの改善など多岐にわたる。もし全EU加盟国がECの提案に署名すれば、スタートアップは今よりも有利な条件を得られるようになり、米国(今は英国も)に行くよりもEUに留まることが期待できる。またSNSは、加盟国間で周囲からの圧力が高まることによって、一連の条件が正しく適用されることも意味している。

欧州委員会に近い筋によると、この未公開のSNSは、広範囲に渡り、EU加盟国にいくつかのスタートアップ優遇政策の施行を呼びかけ、EU議長国をポルトガルが務めている期間中に定義される。ポルトガルは最近スタートアップが盛り上がっている国だ。この標準に署名した加盟国は、いくつかの分野で政策を実行することが求められる

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私はSNSがリークした草稿を見たが、そこには、最終案に残るとすれば間違いなく大きい提案になるものが複数あった。例えば署名国はストックオプションに関する国のルールを変更し、従業員の持ち株が現金化されるまでは資本利得税の対象にならないことを保証する必要がある。他にも、スタートアップが議決権のないストックオプションを発行できるようにする、手続きを迅速化して新会社を1日以内に100ユーロ(約1万3000円)で設立できるようにする、EU外のテック人材のためのビザ発給を早める、EUのテック人材を呼び戻すインセンティブを与えることなどが盛り込まれている。さらに7500億ユーロ(約97兆7000億円)の復興・回復ファシリティー(RRF)を利用したスタートアップ支援の奨励、官僚的手続きの減少、regulatory sandbox(対象者を限定した規制の一時緩和)もある。これらは多くのEU加盟国にとって、比較的実現が容易なはずだが、一部にとっては越えなくてはならない法の壁があるだろう。しかし、ほとんどの評論家がこれらの条項は機が熟しており必要なものだと述べている。

EU拠点の活動グループは全般的に、SNSを熱狂的に支持している。Allied For Startupsは「この提案の可能性に大きく期待しています」と私に語った。彼らによると、一連の対策は既存のベストプラクティスを集めたものであり、加盟国にさらなる努力と、やるかやらないかしかない「二者択一」(例えばスタートアップをオンラインで1日以内に立ち上げる)を迫るものだ。ただし彼らの望みがすべて叶うかどうかは不明だ。提案が骨抜きにならないか、どれだけの加盟国が署名するのか、彼らは息を殺して待っている。

他にも、大いに期待しているが懸念もあるというグループがある。Index Venturesが支援する政策イニシャティブのNot Optionalは今週、公開書簡を発行した。欧州の多くの有力投資家、スタートアップ団体、起業家が参加しStripe、Personio、Klarna、Wise、Trustpilot、UiPath、Alanなどのファウンダーが名を連ねた。

書簡はEUのStartup Nations Standardを歓迎し、中でも加盟国に対して「ストックオプションのルールを変更し、スタートアップが人材を惹きつけ、テックビザ発行を迅速化」することを推奨している点を高く評価した。

しかし同グループはEU加盟国に対して、勧告は実際の国家法へと変えることが重要であり、ECの法案のままにすることがないよう強く要求している。

Not Optionalは、EU諸国のストックオプション政策に関する独自のランキングを元に、EU加盟国間でこの件の扱いに驚くべき違いがあることを指摘した。例えばラトビア、エストニアおよびフランスが上位にランクされているのに対して、ドイツ、スペイン、ベルギーのファウンダーは社員の動機づけや人材獲得にストックオプションを使おうとすると未だに、障壁がある。

ブリュッセルのEU本部からは熱狂が伝わってくる一方で、私の情報源によると一部の国、たとえばドイツなどはSNSを何らかのかたちで骨抜きにすることを考えているという。具体的には、ドイツは「スタートアップを1日で」法案に怒りをぶつけている。身元確認に時間がかかる、というのが根拠だ。もっとも、つい最近までEU加盟国であった英国が、少なくとも10年間これを可能にしていることを踏まえると、ドイツの反論には無理があると思われる。

現地時間3月19日金曜日の発表に注目だ。

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タグ:EU欧州委員会

画像クレジット:Sean Gladwell / Getty Images

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

「パッシブコラボ(受動的協業)」がリモートワークの長期的成功の鍵となる

本稿の著者Mohak Shroff(モハック・シュロフ)氏はLinkedIn(リンクトイン)のエンジニアリング責任者。LinkedInの構築、規模拡大、保護を行うエンジニアリングチームを指揮している。

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1998年、Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)は「オープンワーク」プログラムを試験導入した。従業員のおよそ半数を、どこでも好きな場所で勤務できるようにするものだ。このプロジェクトには、新しいハードウェア、ソフトウェア、通信ソリューションが必要であり、準備に約24カ月間を費やした。

結果は大変に良好で、経費も企業としての炭素排出量も減らすことができた。だがこうした結果とは裏腹に、長期的なリモートワークがこれ以上広がることは決してなかった。それどころか、2010年代には人と人の対面によるコミュニティがイノベーションには欠かせないという理念のもと、オープンオフィス、出勤手当て、協業スペースなどの考え方が登場し、別の方向性が注目されるようになっていった。

2020年、規模の大小に関わらず、世界中のあらゆる企業は、新型コロナウイルスの蔓延にともないリモートワークへの転換を余儀なくされた。中にはすでに従業員を分散していたり、クラウドアプリやサービスを軸にすえていたり、以前から就業方針として柔軟な働き方を採り入れるなどして他社よりもうまくやれた企業もあるが、完全にリモートに移行するための調整は、誰にとっても大変に厄介な問題だ。最大手企業であっても、この時期を耐え抜くためには、自らを犠牲にして数々の難題に挑む、社員の英雄的な行動に依存しなければならないのが現実だ。

高画質のビデオ会議やクラウドなどのテクノロジーは、リモートワークの実現には欠かせない。しかし私たちはまだ、人が現場で行う仕事を完全に置き換えられる代替手段を手に入れていない。なぜなら、極めて重要なある分野に対処できるツールがないからだ。その分野とは、パッシブコラボ(受動的協業)だ。これに対して、仕事の大部分を占めるアクティブコラボ(積極的協業)は、バーチャル会議や電子メールでも行えるが、しばしば最大のイノベーションを生み出す原動力となり、パッシブコラボの基礎となる、思いがけない閃きを呼び起こす会話や偶然の出会いなどを可能にする手段は、まだ完全にはでき上がっていない。

コラボのアクティブとパッシブ

テック産業を知らない人たちは、ソフトウェア開発者はコンピューターと安全なインターネット接続環境さえあれば仕事ができると考えるだろう。しかし、1人で黙々とコーディングを行うエンジニアというステレオタイプは、とっくの昔に崩壊している。理想の開発作業は、1人ではできない。チームで話し合い、議論を戦わせ、ブレインストーミングを重ねるコラボレーションで可能になるものだ。ビデオ会議プラットフォームやチャットアプリは、アクティブコラボを可能にしてくれる。MicrosoftのVisual Studio CodeやGoogle Docsなどのツールは、専門的な非同期のコラボを可能にしてくれる。

しかし、現在の私たちに欠けているものは、何の気なしに出会って交わされるおしゃべりだ。それは私たちに活力を与え、そうした会話でなければ生まれ得ない新しいアイデアを思いつかせてくれる。パッシブコラボは創造性の醸成には不可欠であるため、このような人と人の関わりを長期間欠いた場合、イノベーションが被る負利益は計り知れない。

ホワイトボード

パッシブコラボとアクティブコラボの違いは、ホワイトボードを見ればよくわかる。私は先日、ある人から「テック業界の人とホワイトボードとの関係とは?なぜ、そんなに重要なのか?」と聞かれた。ホワイトボードはシンプルで「ローテク」な道具だが、私たちの業界の真髄とも呼べるものだ。だからこそ、それがエンジニアリングのためのマルチモーダルなコラボの源になっている。新型コロナ以前のことを思い返してみよう。エンジニアたちがホワイトボードを囲んでスクラムミーティングを行う様子をどれだけ見たり、または参加したことだろうか。

たまたま聞こえてきた話の断片が気になって、深く知りたくなったり意見を言いたくなったりして、ミーティングの場で足を止めたことがおありだろうか?または、ホワイトボードに書かれていた内容が目に留まり、それについて別の同僚と語り合い、それが問題解決につながっがりしたことはないだろうか?これはみな、パッシブコラボの瞬間だ。これはリアルタイムのアクティブコラボ用ツールでもあるホワイトボードによって、見事に導き出されたものだ。ホワイトボードは、新しいアイデアや観点を、抵抗なく会話に招き入れる手段となっている。これ以外の方法では、そうはいかない。

ホワイトボードは、パッシブコラボを促進する手段の1つだが、他にもある。休憩室で偶然に始まるおしゃべり、パーテション越しに聞こえてくる隣の会話、部屋の向こうで暇そうにしている人間に意見を聞くことなども、パッシブコラボの実例だ。こうしたやりとりが、みんなで一緒に働く場において極めて重要でありながら、リモートワーク環境での再現が最も難しいものでもある。自己中心的なソフトウェア開発工程がソフトウェアの品質に害を及ぼすように、パッシブコラボの欠如もまた有害だ。

そのためには、他の人たちが何をしているのかを、公式な会議や社内報のような肩ひじ張ったかたちではなく、ちょっと覗き見できるツールが必要だ。自由にオープンに交わされるアイデアからイノベーションは生まれる。しかし私たちはまだ、そのための最適なバーチャル空間を作る方法を知らない。

今後を見据えて

未来の仕事は、これまでになくチームが分散されたかたちで行われるようになる。つまり、2021年だけでなく、この先もパッシブコラボのための新しいツールが必要とされる。私たちが行った内部調査では、パンデミックが迫ってきたときは完全にリモートで仕事したいと望む社員もいたが、大半は、将来的にもっと柔軟なソリューションが欲しいと考えていることがわかった。

その答えは、会議やメールのスレッドをもっと増やすことでは決してない。昔ながらのホワイトボードのように機能し、協業による偶発的な閃きが起こり得るバーチャル空間を再考することだ。私たちはまだ、この課題を解決する鍵を探っている最中だが、LinkedInでは、手始めにチームの垣根を越えた会話やオープンなQ&Aで資源を共有する方法を模索している。

この数十年間、テック業界は、協業と生産性の摩擦をなくすための空間やメリットを創造し、従業員がイノベーションを生み出しやすくなる道を踏み固めてきた。今、私たちは、将来のハイブリッドな仕事環境を見据え、従業員の生産性と創造性のサポートを維持するための新しい方法を見つけ出さなければならない。パッシブ・コラボがバーチャルで完全に実現して初めて、リモートとハイブリッドの仕事環境の可能性がフルに引き出されるようになるのだ。

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タグ:リモートワークコラボレーションツールコラム

画像クレジット:Alistair Berg / Getty Images

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(文:Mohak Shroff、翻訳:金井哲夫)

アップルが5Gや未来のワイヤレス技術の研究開発のためにドイツで1300億円投資

Apple(アップル)が、ドイツにおける企業支出を増やす計画を発表した。特に、ドイツのミュンヘンに新たな施設を設立する計画が大きなものだ。European Silicon Design Center(欧州シリコンデザインセンター)いう名称のこの施設で、Appleは5Gならびに未来のワイヤレス技術に焦点を当てる予定だ。

同社によれば、ミュンヘンはすでに欧州最大のエンジニアリング拠点となっており、すでに1500人のエンジニアが働いているという。特に、Appleは独自のエンジニアチームを編成して、電源管理チップの開発に取り組んでいる。

関連記事:Appleは電力管理チップの内製を目指してドイツで設計チームを編成中

全体的に見れば、電源管理に取り組むAppleのエンジニアの半数はドイツ国内にいるのだ。そして、ドイツ国内のAppleのチームは、電源管理だけでなく他のチップ設計にも取り組むように拡大してきた。

現在、Appleは今後3年間で10億ユーロ(約1300億円)を新社屋や新しい研究開発に投資する計画だ。AppleはiPhone 12のラインナップに5Gモデムを搭載するためにQualcomm(クアルコム)と提携しているが、AppleはまたIntel(インテル)のスマートフォンモデム事業の大半を買収している。

関連記事:アップルがインテルのモバイル向けモデムチップ事業を約1000億円超で買収

Appleのチームは社内でのチップ開発に加えて、iPhone、iPad、Apple Watchなどのデバイスに、サードパーティー製のハードウェアを統合する作業も行っている。

また、Appleはこの発表を利用して、全体としてドイツ国内に多額の資金を投入していることも宣伝している。AppleはDELO(デロ)、Infineon(インフィニオン)、Varta(ファルタ)などの、ドイツの多くの部品メーカーと提携している。全体として、Appleは過去5年間で、ドイツ企業700社に対して150億ユーロ(約1兆9400億円)の支払いを行っている。

以下はミュンヘンのカールシュトラーセに建築される新しいビルの完成予想図だ。オープン予定は2022年後半となっている。

画像クレジット:Apple

カテゴリー:その他
タグ:Appleドイツ

画像クレジット:Apple

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

テレビ、映画、CM制作会社の給与支払いのDXを進める「Wrapbook」がシリーズAで29.4億円調達

Wrapbook(ラップブック)はテレビ、映画、CM制作会社の給与支払いを簡単にするスタートアップだ。このほどシリーズAで2700万ドル(約29億4000万円)調達した。ラウンドにはテック、エンターテインメント双方の世界から著名人が参加した。

リードしたのはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)でEqual VenturesとUncork Capitalも参加した他、エンターテインメント業界からDreamWorksとQuibiのファウンダー / 共同ファウンダーであるJeffrey Katzenberg(ジェフリー・カッツェンバーグ)氏率いる投資・持ち株会社WndrCoとCAAの共同ファウンダーであるMichael Ovitz(マイケル・オーヴィッツ)氏も出資した。

「今こそ制作会社の会計業務を21世紀にするときです」とカッツェンバーグ氏が声明で語った。「制作会社のますます複雑化する研修、給与、キャスト・クルー確保などの業務が新型コロナでさらに悪化する中、改善するためにはITソリューションが必要です。私はWrapbookが解決してくれると信じています」。

Wrapbookの共同ファウンダーでCEOのAli Javid(アリ・ジャビッド)氏は、エンターテインメントの給与支払いはほとんどが紙ベースで旧態依然としていて、1年に最大30回もプロジェクト間を移動するキャストやクルーを追跡するのは特に大変だと説明した。Wrapbookはそのプロセスをデジタル化によって簡略化する。必要な書類や署名は制作開始時に電子的に集め、給与処理自体を代行して支払い状況を追跡するダッシュボードを作り、必要な保険を簡単にかけられるようにする。

Wrapbookの共同ファウンダーであるキャメロン・ウッドワード氏、アリ・ジャビッド氏、Hesham El-Nahhas(ヘシャム・エル・ナハス)氏、Naysawn Naji(ネイソーン・ナジ)氏

スタートアップは2018年に設立されたが、ジャビッド氏によるとパンデミック中に制作が再開すると需要が劇的に増え、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)は業界のカルチャーを「根底から」覆し、制作会社に「おい、これを自宅でできる早くて簡単な方法はないのか、やってみようじゃないか」と言わしめた。

ジャビッド氏はWrapbookプラットフォームについて「業界で急速に成長しているバーティカルフィンテックソリューションで、我々は非常によく理解しているが考えてみたことのある人は多くない分野」だと説明した。実際、会社の売上は2020年に7倍に増えた。

また、Wrapbookの直接顧客は制作会社だが、共同ファウンダーでCMOのCameron Woodward(キャメロン・ウッドワード)氏(以前は映画製作保険とコマーシャル制作の仕事をしていた)は、同社プラットフォーム経由で給与を受け取っているキャストやスタッフのために良い経験を作り出すことにも力をいれていると語った。Wrapbookプロフィールを使って複数のプロダクションから支払いを受けている人も増えている(現在12%)。

画像クレジット:Wrapbook

スタートアップは以前シード資金360万ドル(約3億9000万円)を調達している。将来についてジャビッド氏とウッドワード氏は、Wrapbookのソリューションはいずれプロジェクト・ベースの他業界にも採用されるだろう、と語った。しかし現在は、エンターテインメント業界だけで十分成長を続ける余地があると見ている。現在この業界で年間2000億ドル(約21兆7500億円)の支払いが行われている、と彼らは推測している。

「まずエンターテインメント業界で顧客から依頼されたことを中心とした業務とものづくりに注力していくつもりです」とジャビッド氏は語った。「そのために、次の1年間で100人を新規雇用する計画です」。

関連記事:
10 VCs say interactivity, regulation and independent creators will reshape digital media in 2021

カテゴリー:その他
タグ:Wrapbook資金調達エンターテインメントDX

画像クレジット:Wrapbook

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(文:Anthony Ha、翻訳:Nob Takahashi / facebook

コロナ禍でも成長中の短期レンタルアパートCosiが約26億円を調達

ベルリンを拠点とし、ブティックホテルや短期滞在型管理アパートに代わる選択肢を提供するスタートアップのCosi Group(コシグループ)が、2000万ユーロ(約26億円)の新規調達を明らかにした。

ラウンドを支えたのはウィーンを拠点とするSoravia(ソラビア)。同社はドイツ語圏の国々の大手不動産グループだ。既存の投資家からCherry Ventures、e.ventures、Kreos Capital、Bremkeが参加し、また多くの個人投資家もそれに続いた。個人投資家にはFlixbus、Travelperk、ComtravoおよびCosi自身の創業者が含まれるとのことだ。

Cosiは新しい資本により欧州での国際的な拡大を加速し、新しいブランドを築き、まもなく「新しい戦略的ビジネスユニット」を立ち上げると述べている。

もともとは、上手く運営されているブティックホテルや伝統的な地元の管理アパートメントと競合する、テクノロジーを装備した、または「フルスタック」のホスピタリティサービスだと説明されていた。同社は不動産所有者と長期リース契約を締結し、アパートメントに家具を備えつけインテリアデザインエクスペリエンスをコントロールする。同社はプロセスをデジタル化し、可能な場合は自動化したと主張している。最初のコンタクトから顧客ロイヤリティまで、ゲストの旅を通してサービスの品質を拡大し維持するためだ。

CosiのCEOであるChristian Gaiser(クリスチャン・ゲイザー)氏は筆者に、このスタートアップはパンデミックの影響を緩和できただけでなく、実際に成長したと語っている。パンデミックの間に複数の国でフルロックダウンが実施されるなどして、旅行が大きく制限されたが、同社が成長できたのは、休暇の旅行や短期出張に依存しない「新しい需要チャネル」を切り開いたためだ。

「ミッドステイ」(1カ月以上滞在するゲスト)と呼ばれる例としては、ある都市に到着し、長期のアパートが見つかるまで1〜2カ月家が必要な人や、シェアアパートメントから離れる必要がある人(おそらくリスクがより少ないため、または自宅で仕事をするため)、もしくは家を建てたり改築したりしているがパンデミックのために建設の遅れに直面している家族などがある。

「このようにして90%以上の稼働率に達し、キャッシュフローがプラスのまま事業を運営することができました」とCosiのCEOは付け加えた。「私が学んだ教訓はこういうことです。ほとんどすべての需要チャネルが枯渇したとしても、コントロールできることに集中すれば多くのことができます。私たちは新しい需要チャネルを活性化しただけです」。

さらに、パンデミックは需要の好みの変化を加速させた。巨大なホテルは個人用のアパートメントスタイルの宿泊施設に比べて人気が低くなっているとゲイザー氏はいう。

一方、Cosiは「供給の大幅な増加」も目にしてきた。ホテル業界では、業績の悪いホテル物件について特に多くの買収の機会がある。また、オフィススペースの需要が大幅に縮小していることから、ミッドステイの宿泊施設として使用するためにオフィススペースから転換する提案も受けている。

「新型コロナ下における強力な業績のおかげで、私たちは不動産コミュニティの間で多くの信頼を築き、ますます多くのオファーを受け取っています」とガイザー氏はいう。「こうした要因により、都市によっては供給価格が大幅に下がることもあります」。

そのために、Cosiは現在750ユニットの契約を有しており、さらに1500ユニットについて交渉中だ。

「長期的な観点から、Cosiの成長を加速する最適なタイミングです。みんなが怖がっていたりショックを受けたりしているときに明確な計画があれば、大きな勝利を収めることができます。私たちのビジネスモデルは回復力があり、凪いだ海でも荒れた海でも船を航行させる能力があることを示したために、投資家はこの計画に賛成したのです」とCosiのCEOは語る。

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画像クレジット:COSI Group

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(文:Steve O’Hear、 翻訳:Nariko Mizoguchi

インドネシアのエンド・ツー・エンド物流スタートアップSiCepatがシリーズBで約185億円を調達

インドネシアのエンド・ツー・エンドの物流スタートアップ、SiCepatは1億7000万ドル(約185億円)のシリーズB資金調達を行ったと、現地時間3月5日に発表した。同社は2014年に小規模な小売店向けにラストマイル配送を提供するために設立されたが、後に大規模な電子商取引プラットフォームにもサービスを拡大してきた。現在では、倉庫保管やフルフィルメント業務、ミドルマイル物流、オンライン発送などのサービスも提供している。

SiCepatのシリーズBラウンドには、Falcon House Partners(ファルコン・ハウス・パートナーズ)、Kejora Capital(ケジョラ・キャピタル)、DEG(ドイツ開発金融機関)、Telkom Indonesia(テルコム・インドネシア)の投資部門であるMDI Ventures(MDIベンチャーズ)、Indies Capital(インディーズ・キャピタル)、Temasek Holdings(テマセク・ホールディングス)の子会社であるPavilion Capital(パビリオン・キャピタル)、Trihill Capital(トライヒル・キャピタル)、大和証券などの投資家が参加した。同社が前回資金調達を発表したのは、2019年4月、5000万ドル(約5440億円)のシリーズAだった

記者発表の中で、SiCepatの親会社であるOnstar Express(オンスター・エクスプレス)の創業者で最高経営責任者であるKim Hai(キム・ハイ)氏は、今回の資金調達が「SiCepatのインドネシア市場におけるエンド・ツー・エンド物流サービスの主導的プロバイダーとしての地位をさらに強化し、東南アジアの他の市場へ事業を拡大する可能性を模索するために使用される」と述べている。SiCepatはすでに利益を上げており、2020年には1日140万個以上の荷物を処理することができたという。

インドネシアの物流業界は非常に細分化されており、それは企業にとってコストが高くなることを意味する。同時に、新型コロナウイルス感染流行の影響もあり電子商取引が成長したことで、配送需要は増加している。

インドネシアにはSiCepatの他にも、サプライチェーンと物流インフラの効率を高めるために資金調達を行っているスタートアップ企業がいくつかある。例えば2021年3月初めには、サプライチェーンSaaSプロバイダーのAdvoticsが275万ドル(約3億円)の資金調達ラウンドを発表した。この分野で注目すべきスタートアップとしては、他にも元Uber Asia(ウーバー・アジア)の幹部が設立したKargoや、Waresixなどがある。

SiCepatは、特にeコマースやソーシャルコマース、つまりソーシャルメディアのネットワークを通じて商品を販売する人々に焦点を当てている。Kejora CapitalのマネージングパートナーであるSebastian Togelang(セバスチャン・トゲラン)氏は声明の中で、インドネシアの電子商取引市場は過去5年間に年平均21%成長し、2025年までに820億ドル(約8兆9100億円)に達する見込みだと語っている。

「電子商取引の巨大企業から、デジタル商取引経済全体において推定25%を占めている新進気鋭のソーシャルコマースプレイヤーまで、SiCepatはあらゆる顧客にサービスを提供するのに理想的な位置にあると、私たちは信じています」とトゲラン氏は付け加えた。

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画像クレジット:Fadil Aziz / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アフターコロナ見据えて観光産業の活性化目指すトラベルテック協会発足

トラベルテックで観光産業を盛り上げる

トラベルテックで観光産業を盛り上げる

観光事業をITテクノロジーで盛り上げようとトラベルテック協会が2020年12月15日、発足した。協会はトラベルテックを軸に、アフターコロナにおけるグローバルな観光需要の拡大と観光産業の活性化を目指す。地方創生ソリューション事業などを手掛けるエスビージャパンの中元英機代表が発起人で、協会の代表理事を務める。2021年2月までに、国内のスタートアップから海外事業者、大手旅行会社のエイチ・アイ・エス(HIS)まで計17社が入会した。次年度の2021年4月から活動が本格化する前に、中元代表理事に協会の役割やコロナ禍における観光業界などについて話を聞いた。

トラベルテック協会設立の背景

トラベルテックという言葉は新しい。協会はこのトラベルテックを「世界の観光や旅の分野において、最新のITテクノロジーを活用することで、旅行者の手間をなくし、シームレスな対応を推進する事業や取り組み」と定義する。

中元氏は「業界でもまだ浸透してはいないが、言葉は後から付いてくるもの。これまでにない手法や考えで観光事業に取り組むべきだという機運は、首都圏だけでなく地方部を含めて観光業界全体で高まっている。アフターコロナでトラベルテックは業界に大きく貢献するはず」と期待を込める。

オンライン取材のようす。中元代表理事

オンライン取材のようす。中元代表理事

協会発足の足掛かりとなったのは、エスビージャパン主催の無料ウェビナー「みんなの観光サミット」だ。サミットは2020年9月に始め、以降、毎月1回のペースで開催、主に自治体や観光業界の関係者に向けて、スタートアップらがサービスや取り組みをプレゼンする場となる。

サミットを続けるうちに参加者から「コロナ禍で新しい情報が入らない」と声が上がった。中元氏はアターコロナを盛り上げるためには、いち早くトラベルテックの情報を集めて発信する必要があると考え、考案から1カ月ほどで協会を立ち上げたという。

国内外のトラベルテックカンパニーが集結

協会員には国内だけでなく、シンガポールやカンボジア、台湾からトラベルテックカンパニーも参加している。

協会員のA2A town(Cambodia)は、カンボジアのキリロム国立公園で、エコツーリズム事業を展開している。また、敷地内では国内最難関のIT技術大学キリロム工科大学、高原リゾートの運営も行う。

台湾と香港、中国を中心としたアジア全域で約1億個のIDを保有するビッグデータカンパニーVpon JAPANや、繁体字圏(台湾・香港)向けに、訪日観光情報サイト「樂吃購(ラーチーゴー)!日本」を運営するジーリーメディアグループらも協会に賛同し、入会している。

中元氏は「観光業界には異なる規模の事業者や団体、組織などが集まる交流拠点は意外と少ない。協会員が交流する場としてはもちろん、トラベルテックの情報や活用方法などを得ることができ、相談も受ける場として協会を運営していく」と意気込む。

協会は、大手事業者もスタートアップもいるなかで国や規模などの垣根を越えて結び付け、トラベルテック領域の新たなソリューションを生み出して観光業界に還元する考えだ。

国内スタートアップ発のサービスを海外へ

協会は「トラベルテック領域の民間企業、スタートアップ・ベンチャー企業」を正会員の対象としている。年会費や入会費はなく、エントリーシートを審査した後、理事会承認で入ることができる。事業規模などは考慮せず、そのスタートアップが持つサービスやテクノロジー、プラットフォームが「おもしろいか」で判断しているという。

中元氏はその上で「国内スタートアップはもちろんだが、今後は海外からさらに協会員を集めたい。すでにアジア地域でいくつかの旅行系スタートアップに声を掛けている」と語った。将来的にはアジア地域との関係をより密にし、会員数は年内に50~60会員程度に増やす見通し。協会員は国内事業者5割と海外事業者5割の割合を目指す。

アジア地域を含めて事業者を呼び込む目的は2つある。海外で先行するトラベルテックのサービスやプラットフォームなどを、協会をハブにして日本に持ち込み市場を盛り上げることがひとつ。もう一点は海外事業者を通じて、国内スタートアップが海外市場へ踏み出していくことだ。

中元氏は「コロナ禍で海外の観光市場が停滞し、海外のプレイヤーも足止めを食っている。ここに大きなチャンスがあるため、海外展開も視野に入れたスタートアップと手を組みたい」と話した。

コロナ禍で見えてきたモノ

観光庁の調べによると、2020年4月の緊急事態宣言などによって、国内大手旅行会社の予約人員は同年4月、5月の海外旅行、国内旅行、訪日旅行すべてで、前年同月と比べて9割以上の減少となった。特に4月の海外旅行および訪日旅行は取り扱いがゼロになるなど市場は荒れた。

しかし、さまざまな業界が新型コロナで苦しんだ中、観光体験そのものを見直す動きも出てきた。政府の方針(観光白書)では、新型コロナを契機に特定の時期や場所に集中しがちな従来の旅行スタイルから転換し、「新しい生活様式」による旅行スタイルのあり方を探ることが求められている。

具体的には、コロナ禍では、現地ガイドが海外の観光地を案内しながら配信するといったオンラインツアーに注目が集まった。諸外国が新型コロナ感染防止のために入国制限を敷くなど、海外旅行ができない状況が人気に拍車をかけた。

協会員でもあるHISによると、同社は2020年4月からオンライン体験ツアーを始め、これまで72の国と地域で累計3500コース以上を催行し、体験者数は5万人を超えたという。

また、旅行会社だけでなく、地方自治体などもオンラインツアーで需要喚起や集客に取り組んだ。愛媛県の宇和島市観光物産協会では、宇和島伝統の闘牛大会をオンラインで生中継した。ただ映像を流すだけでなく、大会が始まる前にナビゲーターが闘牛についての紹介をしたほか、出場している闘牛の解説も行うなど工夫を凝らした。

この他、リモートワークが進められているいま、旅行需要の分散化にも期待が出てきた。2019年の日本人における旅行実施時期について月別旅行消費額をみると、ゴールデンウィークがある5月と、お盆休みなど長期休暇を取得する8月に偏りがあった。一年間を通して単月で旅行消費額が2兆5000億円以上あるのは5月と8月だけであり、多くの人が旅行時期を柔軟に選択できていなかった。

そのような中、観光地でテレワークをしながら休暇を楽しむワーケーション(workとvacationを組み合わせた造語)や、出張の仕事後に延泊して観光を楽しむといったブレジャー(businessとleisureを組み合わせた造語)など、仕事と観光が融合した新たな旅行スタイルの普及に政府も力を入れている。

「観光業界はこれまでの当たり前を変えていくことも必要だ。例えば、観光地にある多くの観光施設は平日に休館日が集中しているが、そういった足下の改革も必要なのではないか。新型コロナで観光産業が立ち止まったことは、古い商習慣でこれから本当に通用するかを考えるきっかけにもなった」と中元氏は2020年を振り返る。

協会をオープンイノベーションの場に

トラベルテック協会ロゴ

トラベルテック協会ロゴ

2021年4月以降、協会は地方自治体やスタートアップ、地域らとトラベルテック領域のオープンイノベーションの場としても動く。まず自治体や地域からの相談を協会が受け、協会員に共有して、各協会員が持つサービスで解決策を提案する。自治体らが実際に案を採用した場合、課題解決に向けた実証実験などを行う流れを作る。協会は、橋渡しの役割を担うカタチだ。

中元氏は「予算が付くことを前提にしたい。まずは次年度に年間1-3件ほど成功させたい。この一歩をいかに成功させるかが、我われ協会の頑張りどころだ。事例づくりが重要になる」と力を込める。

最後に今後のトラベルテックについて聞くと、中元氏は「確実に加速しているので、新型コロナの影響が一巡した後には、想像もしなかったサービスが生まれるかもしれない」と述べた上で、「もちろん、業界を一変させるようなトラベルテックが協会内から生まれれば、いちばん嬉しい」と笑顔で語った。

※2021年3月9日時点の協会員一覧(順不同)

新規資金調達を行ったMaisonette、ファッション意識の高いファミリー層の御用達ブランドへの道のりとは

ニューヨークを拠点とするMaisonetteが4年前に創業したのは、幼い子供がいる家族に必要なあらゆるものが手に入るキュレーション型ワンストップ・ショップを目指したことがきっかけだった。

その計画はうまくいっているようだ。同社は手始めにプレッピースタイルの子供向けアパレルを立ち上げ、家庭用装飾品、家具、おもちゃ、家庭用機器、アクセサリーといったカテゴリーを順調に展開してきた。同社によれば、昨年は顧客数が2倍に増え、収益は3倍になったという。コロナ禍で子供向けのおしゃれ着の売り上げはしばらくの間低迷し、同社のスタイルは下火になってもおかしくなかったにもかかわらず、DIYとSTEM教育玩具の売り上げが1400%増となったのだ。

同社は売上高を公表していないが、その成長振りは興味深い。特に、Amazonが衰えを知らない成長ぶりで2018年末頃にアメリカ国内トップのアパレル小売企業になったことを考えればなおさらだ。

こうして見ると、Maisonetteの魅力はこれまでに築き上げた顧客との信頼に負うところが大きい。顧客は、子供向け市場にいっそう注力しているGucciBurberryのようなラグジュアリーブランドと比べて、同社の商品をハイエンドでありつつも購入しやすいと考えている。

詳しく言うと、従業員数75人の同社には、独立ブランドと提携して他のどこにもないような商品を世に出すことを得意とするマーチャンダイジングチームがあるのだ。

また、Maisonetteは2年半ほど前に「Maison Me」という自社のアパレルブランドを立ち上げた。より手頃な価格で手に入る「高級なベーシック」をターゲットとして中国で生産される商品は、子供が大きくなったり服がだめになったりするたびに繰り返し商品を購入するファミリー層向けに、好調な売り上げを見せていると同社は言う。

Maisonetteの創業者たちがシックなスタイルの目利きであることも幸いしている。共同創業者のSylvana Ward Durrett(シルヴァナ・ワード・デュレット)氏とLuisana Mendoza de Roccia(ルイザナ・メンドーサ・デ・ロシア)氏が出会ったのは、デュレット氏が15年勤務していたVogueマガジンだった。デュレット氏はプリンストン大学卒業と同時に同社に入社し、イベント担当ディレクターとなった(同氏がファッション界での名声を獲得した仕事だった)。ロシア氏は同じ2003年にジョージタウン大学卒業と同時に同社に入社し、Vogueマガジンのアクセサリーエディターを務めて2008年に退職した。

興味がある人のために言うと、彼らの元上司だったのがAnna Wintour(アナ・ウィンター)氏で、2人の擁護者でもある。他にも強力な支持者がおり、中でもNEAの投資家のTony Florence(トニー・フローレンス)氏は、e-コマースの事情通であり、彼の会社を代表しJet、Goop、Casperへの投資を主導した人物である。

NEAはThrive Capitalやグロースステージ・ベンチャーキャピタルのG Squaredと並ぶMaisonetteの出資者だ。G Squaredは3000憶ドル(約31兆8400億円)のラウンドを主導することを発表したばかりだが、これでMaisonetteの資金調達総額は5000憶ドル(約53兆円)になる。

もう一人同盟関係にあるのがMarissa Mayer(マリッサ・メイヤー)氏だ。同氏は2009年にデュレット氏と出会ったが、当時はGoogle初の女性エンジニアにして最もファッショナブルな役員として知られていた。友情が長く続いているだけでなく(メイヤー氏は名前を気に入って、双子の娘のひとりにシルヴァナと名付たそうだ)、メイヤー氏はMaisonetteのボードメンバーでもある。おそらくは、同社が本来の強みを持つ非常に若い顧客層についても、データ戦略の洗練に力を貸したことだろう。

「データとe-コマースに関して非常に役立つことは、特定のライフステージにいる人たちを捕捉できることです」とメイヤー氏は説明する。「ウエディング・レジストリが好まれたのはそうした理由です。結婚して子供を持つと、小売企業は子供の年齢に応じて顧客のニーズと、2年後に欲しくなるものを推測し始めます。」

「サプライチェーンの予測という観点からいうと、在庫の選択や、その瞬間を逃さず捉えるためにも、これらのライフステージを洞察することは非常に重要でありかつ役立つのです」とメイヤー氏は言う。また、メゾネットは事業を拡大し続けているため、このようなシステムは大きな利益をMaisonetteにもたらしてくれる可能性があると同氏は述べた。

確かに、すでに多くのことが同社の思い通りに進んでいる。メイヤー氏の指摘について、ロシア氏によればMaisonetteの昨年の売り上げの半分以上がリピーター顧客によるものだという。さらに、同社からのメールを受信したりソーシャルメディアのチャンネルをフォローしている人々はすでに80万人にのぼる。(Maisonetteでは充実した特集コンテンツをウェブサイトで提供している)

Maisonetteは一部のeコマース事業とは違い、アセットライト戦略を取っている。以前にいくつかのポップアップストアをオープンし、より大規模な小売りへの移行を検討したこともあったが(デュレット氏によれば「今はいったん中止している」とのこと)、同社は自らが管理する倉庫を持たず、商品は同社のサイトが特集するさまざまな小売業者から直接消費者へ発送される。

おそらく最も重要なのは、同社が巨大な成長市場で競争していることだ。米国だけでも子供向けアパレル市場は340億ドル(約3兆6800億円)規模と推定され、世界規模では見ると6300億ドル(約66兆8900億円)にもなる。Maisonetteが現在販売しているのは米国の顧客のみだが、今回の資金の一部を使ってグローバル市場に進出することを計画していると、ロシア氏は語る。同氏はパンデミックの期間中、子供4人とともにミラノで生活しており、一方デュレット氏は自身の子供3人から少し離れ自分の時間を確保するため、1月からほとんど誰もいないブルックリンにあるMaisonetteの本社で仕事をしている。

事実、遠距離のZoomコールで彼らが長い時間話すのは、子供を持つ在宅勤務者が今すぐにも新しい仕事スペースを必要としていることや、バーチャル授業を受けている子供たちの部屋をアップデートすることについてだ。世界的な活動停止を望んだ人はいなかったはずだが、コロナのために家庭用装飾品は「注目されているカテゴリー」だとロシア氏は付け加える。

今2人が追っている他のトレンドについて尋ねた。たとえばMaisonetteは、近年大規模なビジネスになったママと子供のペアルックスタイルを打ち出している。ロシア氏によれば、世界的活動停止が起きていても、これは「巨大なトレンド」であり続けているという。「これは休日のパジャマから始まったのです。それが一大ムーブメントを引き起こして、今は水着やカジュアルウェアがペアルック関連ビジネスのかなりの部分を占めるようにもなりました。」

デュレット氏が気付いたトレンドについて、同氏は笑って「ラマはすごいですね。同社はラマの音楽プレーヤーを販売しているのですが、ホリデーシーズンに何回もサイトに再掲載しなければならないほどでした。」と語り、さらにこう続ける。「虹とユニコーンも。虹とユニコーンは手に入れるのが難しいもののメタファーでもありますが、文字通り在庫を維持しておくのが難しいですね。」

ユニコーンについて、同氏は「ユニコーンは、ユニコーンをモチーフにした商品のことですが」と付け加えた。

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タグ:ファッション 資金調達

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)