Twilioは巨額買収したSegmentをベースにした新ツールでマーケティングに深く切り込む

2020年、Twilioが32億ドル(約3649億円)という巨額でSegmentを買収した際、誰もが何かをやるなと思っただろう。米国時間10月20日、同社は顧客カンファレンスSignalで、Segmentをベースとする全チャネルマーケティングツール「Twilio Engage」を発表した。

SegmentのCEOであるPeter Reinhardt(ピーター・ラインハート)氏によれば、そのツールはSegmentを含む複数のTwilioプロダクトを利用して開発したまったく新しいクラウドマーケティングテクノロジー(MarTech)ツールだ。

「Twilio Engageは最新のグロースオートメーションプラットフォームであり、顧客データプラットフォーム(CDP)としてSegmentを、通信機能としてはTwilioの通信APIを、それぞれネイティブに使用している」とラインハート氏はいう。この新しいアプリケーションの目標は、マーケターが自分の顧客をもっとよく理解できるようになり、彼らがよりカスタマイズされたメッセージを届けられるようになることだ。

まずそれは、Segmentを利用して50あまりのデータソースから顧客情報を集める。次に、このツールの心臓部であるジャーニーオーケストレーションコンポーネントでマーケターは、各顧客のためのワークフローを定義する。そして彼らは、メールやSMSなどさまざまなコミュニケーションチャネルを利用してカスタマイズされたメッセージを作成、送付する。また、TwilioのコアコミュニケーションAPIを利用して、さまざまな外部ツールに接続することもできる。

多様なコミュニケーションコンポーネントは、ジャーニーワークフローのさまざまな特定条件をトリガーとして、カスタマイズされたテキストメッセージやメール、広告など、さまざまな形で配布される。これについてラインハート氏は「これからは前菜からデザートまで、キャンペーン全体をクリエイトできます。必要なコンテンツをすべて揃え、すべてのオーディエンスを作り、Twilio Engageの中ですべてのターゲティングを行えます」という。

例えば、あるスニーカーメーカーがランニングアプリを持っているとする。Twilio Engageを使えば、ユーザーが同社のアプリで100マイルを記録したときに始まるキャンペーンを設定することが可能だ。このマイルストーンをきっかけに、(TwilioのCommunications APIを使って)お祝いのメッセージをSMSで送ることができる。そのユーザーが既存の顧客である場合は、最初の目標達成を祝うメールを自動的に送信し、20%オフのクーポンを添付することもできる。ユーザーが顧客でない場合は、Facebook、Snapchat、Googleなどの異なる広告チャネルで、同様の割引とメッセージで再ターゲティングすることも可能だ。

Twilio Engageのワークフロー(画像クレジット:Twilio)

Futurum Researchの創業者で主席アナリストのDaniel Newman(ダニエル・ニューマン)氏によると、Twilioがマーテックに全面関与するのは新しいことだが、同社にはCDPという足場がすでにあり、もちろんメッセージングのプラットフォームもある。同社のデベロッパーコミュニティを有効に活用できれば、この新しい試みは成功できるだろうという。

「CDPとMarTechは競争が激しいが、Twilioとその忠実なデベロッパーコミュニティは今回の同社の新しい事業に魅力を感じるでしょう。なぜなら、デベロッパーにおいても、彼らの顧客のジャーニーの全行程を理解するという理想のような目標はますます複雑化しており、同時にそれは、マーケターや営業のトップにとっては達成可能な目標になりつつあるからです」とニューマン 氏はいう。

Twilioが、自らのプラットフォームと収益機会を、同社の基盤である中核的な通信API以外にも拡大したいと考えていることは明らかだ。ラインハート氏は、TwilioのCEOであるJeff Lawson(ジェフ・ローソン)氏と一緒に、両社のツールセットを組み合わせた場合の最適なユースケースがマーケティングであることが明らかになり、それが今回の賭けの理由であると述べている。

ラインハート氏によれば「現在、TwilioのメッセージングAPIとSegment上のデータをどのように利用しているのか、多くの顧客から話を聞きました。圧倒的に多いユースケースが、マーケティングでした。マーケティングなら、それを改善し改良する技術が私たちには十分にあります」。そこから、Twilio Engageが生まれた。

本日から、数社の協力によりパイロットが始まる。一般公開は2022年前半の予定だ。

画像クレジット:Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【コラム】包括的なマーケティングチャネル、ニュースレターを成長させるための実証済みの戦術

メールによるニュースレターほど包括的なマーケティングチャネルは他にはない。ニュースレターならオーディエンスとのダイレクトな通信ラインを所有できる。投資収益率は40倍(1ドルの投資で最大40ドルの利益)、拡張性はほぼ無限、コストはほぼゼロだ。

しかし、こうした利点を引き出すには、戦術が必要だ。この記事では、Demand Curveで使用している戦術を紹介する。この戦術により、Demand Curveでは、質の高い5万人を超える購読者を獲得し、開封率50%以上を維持している。

60%ルールを使用してポップアップによるコンバージョン率を上げる

ポップアップは侵襲的と考えられることが多いが、やはり機能する。平均でも、サイト訪問者の3%をコンバージョンする効果がある。戦略的で高パフォーマンスのポップアップならコンバージョン率は10%に達することもある。

コンバージョン率が高く侵襲性の低いポップアップにするには、60%ルールに従ってみるとよい。

  1. ポップアップを表示するページを選択する。コンバージョンを重視したページ(製品ページ、チェックアウト、サインアップなど)以外のページを選択するようにする。当社の調査ではコンテンツページが最適だ。コンテンツページは何か特定の情報を探しているページ訪問者にとって信号の役目を果たす。
  2. ウェブサイト分析ソフトウェアを起動して、そのページの平均滞在時間を確認する。
  3. そのページの平均滞在時間の60%が経過したらポップアップが表示されるよう設定する。

例えば平均滞在時間が50秒のページであれば、そのページに訪問者がランディングしてから30秒経過した時点でポップアップが表示されるように設定する。

なぜ60%なのか。読者は貴社のコンテンツに興味を示しているが、ページを離れるときが近づいている。そのタイミングでニュースレターを購読するよう促して、メールの代わりにより適切なコンテンツが表示されるようにすることは、適正だと受け止められるだろう。

ニュースレターのサンプルを掲載して品質の高さを示す

貴社のコンテンツを初めて見る訪問者に、ニュースレターの購読を勧めて成功すれば大きく前進する可能性はあるが、大半の新規訪問者はすぐには購読しない。新規訪問者と購読者の間のギャップを埋めるには、サインアップページにサンプルを掲載するとよい。最も魅力的なニュースレターをサンプルとして掲載して、コンテンツの質の高さを示すようにする。

最も魅力的なニュースレターを探すには、既刊号を開封率と返信でフィルタリングする。メールサービスプロバイダーにアクセスして、発行済みのニュースレターを開封率で並べ替えてみるとよい。これによりどのような件名のニュースレターが既存の読者に最も人気があるのかを特定できる。

次に、受信箱に移動して、ニュースレターに対する返信を並べ替えて、読者からの返信が最も多かったニュースレターを特定する。これは、その号が最も反響が大きく、無料サンプルとしてふさわしいことを示す良い証拠となる。

画像クレジット:Demand Curve

実在の人物からのメールのほうが開封率が高い

読者はサインアップした後のウェルカムメールを反射的に無視することが多い。しかし、ウェルカムメールを開く読み手のほうが、以降のニュースレターを毎回開く可能性が高い。

新規購読者がウェルカムメールを開くように促すには、購読に感謝するメールの配信を意識的に遅らせたり、送信者がはっきり分かるようにするなどして、ウェルカムメールのパターンを崩してみる。

ウェルカムメールの配信を45分遅らせる。これにより、サインアップ後数秒以内に配信されるメールを無視する新規購読者の反射的反応を回避できる。当社の調査によると45分が理想的だ。45分というのは従来のパターンを崩すには十分長い遅延であるが、ウェルカムメールが受信箱内に埋もれてしまうほど長くもない。

ウェルカムメールは、ビジネスアカウントからではなく、個人が送信するようにする。送信者を企業の創業者か確立されたオーディエンスを持つ人物にするととりわけ効果的だ。会社のロゴではなくその人物の写真を使うことで、メールが引き立つ。

送信者個人の受信箱があふれるのを防ぐには、メール送信専用に使用するウェブサイトのサブドメインを作成する。送信者のアカウントを作成し、以降ニュースレターの発行にはそのアカウントを使用する。これにより送信者の受信箱があふれるのを回避できるため、送信ドメインの健全性を維持できる。

画像クレジット:Demand Curve

新規購読者に特別号を送る

新規購読者は初回号の受信を楽しみにしている。新規購読者に確実に満足してもらうには、既刊号で特に良かったものを寄せ集めた初回特別号を作成するとよい。ただし、サインアップページにサンプルとして掲載したのと同じコンテンツは使わないように注意すること。

この初回特別号をウェルカムメールといっしょに送信して、新規購読者にニュースレターの価値(良さ)を分かってもらうようにする。これまでで最も良かった号を最初に送信しておけば、購読者は、以降の号も楽しみに待っていてくれる。

ウェルカムメールは長ったらしいものよりも簡潔でコンパクトにしたほうがよい。ウェルカムメッセージは簡潔にし、初回号は内容を充実させるようにする。ウェルカムメールと初回特別号が届いたら、以降は定期的な頻度で発行する。

画像クレジット:Demand Curve

発行回数を減らすことを検討する

Twitter上の2万4000人のマーケターたちを対象に「ニュースレター疲れ」で購読解除していないかというアンケートを実施したところ、

発行数が多過ぎるニュースレターは購読解除するという回答者が8割もいた。

購読者を疲れさせないためには、以下の点に注意する。

購読者がニュースレターの受信頻度を調整できるようにする:週1回の頻度で受信したい購読者もいれば、月1回で十分という購読者もいる。各号の末尾に、オプトアウト用のリンクを置いて、購読者がニュースレターの受信頻度をカスタマイズできるようにする。受信頻度は下がっても購読状態は維持されるようにすれば、その購読者とのつながりを保つことができる。完全に購読解除されるのは避けるようにしたい。

発行回数を減らす:四半期ごとの最大発行部数に制限をかけるようにすれば、必然的に、限られた部数のコンテンツを充実させようと努力するようになる。単に、購読者の受信箱に入り込むという目的のためだけに発行部数を増やしても、あなたも読み手も疲弊するだけだ。当社調査によると、発行部数とコンバージョン率の間には相関関係はないことが分かっている。

お堅い内容だけでなくおもしろい内容も含める

受信箱内の大半のメールはお堅い内容だ。目立つには、ウェブから収集した愉快なミーム、ジョーク、おもしろいリンクなどを含めるようにするとよい。

この戦術は毎号読者を楽しい気分にさせるという意味で、極めて効果的だ。毎号、すべての購読者の共感を呼ぶ内容を書くのは不可能だ。対照的に、ユーモアは何人にも通じる。おもしろい笑えるコンテンツを含めることで、すべての読者に満足感を与えることができる。

これはニュースレターを読む習慣の形成にも役立つ。毎号、少し内容が違っていれば、読者は、新しい号が届いたときに、どのような内容なのか分からない。ニュースレターの末尾に何かおもしろい内容を書くようにすると、読者にご褒美を与えることになって効果的だ。つまり、お堅いものを読んだ後に、笑えるものでご褒美を与えるというわけだ。

当社では毎号ミームを追加するようにしている。読者からはとてもおもしろかったという感想をいただいている。

画像クレジット:Demand Curve

他者への紹介をシームレスに行えるようにする

購読者が他者に紹介してくれれば、ニュースレターをコストなしで成長させることができる。購読者が他者に紹介してくれる可能性を高めるには、紹介プロセスを25秒以内に抑えるようにする。

毎号の終わりにニュースレターを他者に紹介できることを読者に知らせる。簡単なのは、興味を持ってくれそうな友人にメールを転送してもらう方法だ。ニュースレターの冒頭部分に、紹介された人が購読手続きを実行できるページへのリンクを含む短い文を含めるようにする。

もう少し高度な戦術として、紹介プログラムに対する購読者の一意なリンクを含めて、購読者が自分で紹介した人数を追跡できるようにする方法もある。メールやソーシャルメディア経由で共有するオプションも用意しておく。

毎号ウェブ版も用意して、メール以外でも簡単にコンテンツを共有できるようにしておく。大半のメールサービスプロバイダーはウェブ版を自動生成して、ソーシャルメディア等で拡散できるようにしている。また、コンテンツをコピーしてウェブサイトにブログ記事として投稿すれば、検索エンジンにも引っかかるようになる。

ニュースレターを紹介してくれた購読者に報酬を与えることを検討する。商品が紹介の動機となるのは、貴社のブランドが有名かかなり特殊な場合だけだ。当社は排他的コンテンツを使用して紹介を奨励することをお勧めしている。5人以上の友人を紹介してくれた購読者に毎月特別号をお送りする。これにより、コストを抑えながら、購読者により豊富な情報を提供できる。

紹介が効果を表すには購読者が最小必要人数を超えている必要がある。当社の調査によると、購読者約1万人がしきい値であることが分かっている。ただし、オーディエンスのエンゲージメントが非常に高いか、コミュニティがアクティブな場合は、無料の紹介プログラムを実装しても事実上不都合が生じることはない。

フォロワーを購読者に変える方法

購読者はソーシャルメディアを介して貴社のコンテンツを知るようになるかもしれないが、ソーシャルメディアのオーディエンスはそのメディアプラットフォームのものであり、貴社はそうした購読者と直接やり取りするためのチャネルを所有しているわけではない。フォロワーをニュースレターの購読者に変えることができれば、オーディエンスとダイレクトにやり取りして、関係を深めることができる。

フォロワーにニュースレターの購読を売り込むには、自分の略歴にリンクを含めるとよい。これは当たり前のように聞こえるかもしれないが、実際にそうしている人は少ない。あなたのソーシャルメディアのプロフィールを見た人に、ニュースレターにサインアップするよう呼びかけるのだ。そうしなければ、見た人は、貴社がニュースレターを運営していることさえ分からない。

ツイッターのスレッドやLinkedInの投稿を途中で切り上げて、すべてを読むにはニュースレターの購読をどうぞ、と呼びかけることもできる。

ニュースレター経由でしかアクセスできないオファーや独自のコンテンツを作成するのもよい。これにより、貴社のメーリングリストに参加して排他的なコンテンツや特殊なオファーを受け取るようフォロワーを動機づけることができる。

まとめ

新規購読者の獲得:自社のサイトで、適切なポップアップを購読の意志がある読者にのみ表示する。ニュースレターのサンプルを掲載して、貴社のニュースレターを購読すべき理由を示す。ウェルカムメールを目立たせ、初回号としてこれまでで最も良かった号を送る。

購読者の維持:購読者のもっと読みたいという気持ちを保つため、発行回数を抑える。ユーモアやおもしろいリンクを散りばめて、ニュースレターの購読を習慣にしてもらう。

ニュースレターの拡大:排他的なコンテンツやオファーを使って、貴社のソーシャルメディアのフォロワーにニュースレターを購読してもらうように仕向ける。購読者にニュースレターを他者に紹介してもらうことで購読者ベースの拡大を図る。

編集部注:本稿の執筆者Stewart Hillhouse(スチュワート・ヒルハウス)氏は、Demand Curveのシニア・コンテンツ・リードとして、実用的なグロース・マーケティングの洞察をまとめている。夜にはポッドキャスト「Top Of Mind」でマーケターやクリエイターにインタビューしている。マーケティングの世界に入る前は、セミプロの木こりだった。また、stewarthillhouse.comで執筆活動を行っている。

画像クレジット:Ihor Reshetniak / Getty Images

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(文:Stewart Hillhouse、翻訳:Dragonfly)

【インタビュー】2021年のグロースマーケティングにおけるマーケターの雇用とアウトソーシングの比較をMKT1に聞く

Emily Kramer(エミリー・クレイマー)氏とKathleen Estreich(キャスリーン・エストライヒ)氏は、戦略的なマーケティング会社MKT1(エム・ケー・ティー・ワン)の創設者であり、その活動は単にマーケティングだけには留まらない。前回のインタビュー記事でも触れたように、MKT1は、マーケティングコンサルティング、リクルートやメンタリングのワークショップの開催、エンジェルシンジケート(エンジェル投資家とスタートアップをつなぐ資金調達プラットフォーム)への投資など、さまざまなサービスを提供している。

この2人の創業者は現地時間7月20日、TechCrunchのマネージングエディターであるDanny Crichton(ダニー・クライトン)氏とともにTwitterスペースを利用して、グロースマーケティング業界について語った。両氏は、グロースマーケティングがエンジンであり、グロースマーケティングを構成する他の細分化されたマーケティングが燃料と考えるなど、いくつかの新しい視点を提供した。

マーケティングに関する見解などの会話を交わした後、質疑応答のセッションを設けたところ、インタビューを聴いていた創業者らからは、マーケターは雇うべきか、アウトソースするべきかなどの質問が寄せられた。

以下は、Twitterスペースでのインタビューの抜粋であり、長さとわかりやすさを考慮して編集している。

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グロースマーケティングとは何でしょうか。

エミリー・クレイマー氏:簡単な例えでいうと、マーケティングは、燃料とエンジンで構成されている。グロースマーケティングがエンジンであり、コンテンツマーケティング、プロダクトマーケティング、コミュニティ、イベントなどのすべては燃料となる。マーケティングオペレーションを構築し、トラッキングを行い、すべてを世に出せるようにすることに始まり、メール、広告、SEO(検索エンジン最適化)、そしてウェブサイト上で行っていることまで、すべてがエンジンを機能させる。そして、これらすべてを使って、オーディエンスをマーケティングファネルに取り込むのだ。

誰かにサインアップしてもらったり、セールスにつなげるためのクオリファイドリードを見つけることだけではない。カスタマーサクセスチームやプロダクトチームのサポートも含まれる。一対多の方法でオーディエンスとコミュニケーションをとることが、マーケティングの機能と考えている。特にグロースマーケティングは、通常、フルファネルであり、エンジンであり、絶えず変化している。

グロースマーケティングを含め、当社ではマーケティングにおいてあらゆるものに名前を付け、その数は5000にも及ぶ。トップダウン型の営業組織ではデマンドジェネレーションと呼ばれることが多いが、当社ではデマンドジェネレーションをグロースマーケティングのサブセットと考え、特にリードをセールスにつなげることに焦点を当てている。これがグロースマーケティングに対する考え方だ。しかし、マーケターによって考え方は異なるだろう。

2021年のグロースマーケティングの状況はどうか。2021年の夏、何に注目しているのか。

クレイマー氏:2つの大きな変化に注目している。1つは、コミュニティをグロースマーケティングの一部としてどのように考えるかということ、少なくとも、これまでに行われてきたことに対して「コミュニティ」という言葉を使っていることだ。「コミュニティ主導の成長」という言葉は明らかに強力なバズワードで、これは基本的に成長を推進するために人々を会話に参加させることを意味する。もう1つは「プロダクト主導の成長」という言葉で、これはまさにセルフサービスを表す言葉だ。

プロダクトグロース担当者やプロダクトグロースチームと連携するグロースマーケターと、1つの中心となるチームという構成が、過去10年間のトレンドだった。「プロダクト主導の成長」という言葉が、それらすべてに使われている。マーケターは、自分たちの役割さえもリブランディングするのが好きなようだ。

キャスリーン・エストライヒ氏:多くの企業が、グロースマーケティングについて早期から考え始め、1人目のマーケターを雇うことを考えている。以前はシリーズAで雇用していたが、資金調達ラウンドのレベルが全体的に幾分上がったこともあり、シードステージの企業の多くが、より早い段階で成長について考えるようになっている。

グロースマーケターのスキルセットの需要は非常に高まっている。今までもそうだったが、今はそれが顕著になっているように思う。多くの企業がより早く資金を調達し、より迅速に推進力を高めて評価額を上げようとしているため、そのニーズは非常に高いと考えている。当社が話を聞いたほとんどの企業が、マーケターを採用したいと考え、より早い段階で必要な成長の手段について検討している。

マーケターが過剰な分野、不足している分野はどこか。現在、需要が高い分野はどこか。十分に活用できていない分野はどこか。

エストライヒ氏:全体的に、マーケターの需要は非常に高い。特に、プロダクトマーケティングでの関心が高くなっている。プロダクトマーケティングを専門とするマーケターは多い。というのも、通常、スタートアップ企業の1人目のマーケターはプロダクトマーケティングの経験者であり、多くの企業がプロダクトマーケターを求め、そして、単に大企業の出身者というだけではなく、プロダクトマーケティングの経験を持つ人を見つけているためだ。

大企業のプロダクトマーケティングでは、製品ラインと密接に結びついていて、プロダクトマーケティングだけを行っていると思われる。しかし、アーリーステージのスタートアップでは、プロダクトマーケティングだけではなく、ディストリビューションを理解している人材が必要だ。そのため当社では、多くの企業に「π型マーケター」と呼ばれる人材を採用することを勧めている。つまり、マーケティングの2つの分野に深く精通している人材だ。

多くの場合、プロダクトマーケティングとグロースマーケティングの2つだが、そのような人材を見つけることは通常の市場では非常に困難だ。特に今の市場では、その役割を果たすのはかなり難しいといえるだろう。該当する人材を見つけるには、レベルや経験の面で多少の妥協が必要となるかもしれない。しかしそれでも、プロダクトマーケティングとグロースマーケティングの両方に精通した人材を見つけることができれば、マーケティングチームを立ち上げたばかりの企業の多くは、その恩恵を受けることができるだろう。

クレイマー氏:最近の数週間でも、いくつかのスタートアップ企業との会話の中で「ああ、当社の1人目のマーケターはコミュニティマーケターになるだろう」という声を聞いた。その役割は進化し、大きく変化している。スタートアップのマーケティングを始めた10年ほど前は、コミュニティといえばソーシャルメディアのことを指していたが、今ではまったくその意味はなくなった。そのため、以前にそういった役割を担っていた人材を見つけることは非常に難しくなっている。

コミュニティマーケティングというと、コンテンツやバーチャルイベント、カスタマーサクセスなどを多く手がけてきたという意味になる場合もある。そういう人々の場合、コミュニティマーケターには不適格、あるいは適格かどうかの判断がつかないということになるだろう。募集された役割と、実際に応募した人材とのミスマッチを目にすることもある。

それを踏まえた上でのマーケターへのアドバイスとしては、仕事の内容や職責をよく読み、自分がやってきたことと合っているか、あるいは自分がやるべきと考えている職責とあっているかを確認することだ。もしかすれば、自分ができることを教えたり、創業間もない企業での役割を定義する方法を教えたりする機会があるかもしれない。

グロースマーケターと仕事を始めるのに適した時期はいつでしょうか。

エストライヒ氏:「1人目のマーケターを雇うのにふさわしい時期はいつなのか」という質問はよく耳にする。エミリーと私が創業者たちによくいうことは「創業者チームが最初のマーケティングチームである」ということだ。初期のメッセージングやポジショニングの多くは、創業者が行っている。多くの場合、初期のビジョンを描き、それが資金調達の方法となるだろう。それを考える方法は、一旦一歩下がって「さて、ニーズは何だろうか。自分たちが成し遂げようとしていることは何だろうか」と問うことだ。そして、プロダクトマーケットフィットについて考えることだ。

通常、プロダクトマーケター、グロースマーケター、あるいはπ型マーケターを最初に迎えるべきと考えている。最初のマーケターを迎える前に、実際に市場に出す製品を用意しておくのが望ましい。もしそうでなければ、製品が世に出て一握りの顧客を獲得するまで待つ必要があるだろう。そこまで行けば、1人目のマーケターを誰にするか考え始めるべきかもしれない。

1人目のマーケターは、グロースマーケティングの経験を持つプロダクトマーケター、もしくはプロダクトマーケティングの経験を持つグロースマーケターのように、両方の経験を持つ人がよいだろう。初めにエミリーがいったように、ビジネスモデルの経験があり、即戦力になる人だ。なぜなら、アーリーステージの企業で最初に行うマーケティングの仕事は、多くの役割を兼ね、多くの仮説を検証し、多くの仕事をすることになるからだ。

そのためにも、仕事をしたくないような高齢の人は雇わないようにしたい。そういった人たちは、あなたがまだ準備できていないであろうチームを雇いたがるものだ。また、何をすればよいのかわからないような若すぎる人も雇わないようにしたい。バランスの取れた、ミドルレベルの人材を見つけることも重要になってくる。

クレイマー氏:プロダクトマーケターは、注力すべきニッチを見つけるサポートをしてくれるということだ。ある程度の顧客を確保し、スタート地点を決めておくべきだと考えている。プロダクトマーケターは、実際にはオーディエンスマーケターといったほうがいいのかもしれない。自分たちがやっていることを、特定のオーディエンスにどうやって伝えるかを見つけ出してくれるマーケターだ。何らかのアイデアがあった場合、彼らはチーム内で「他のオーディエンスに拡大すべきか、このニッチな分野にとどまるべきか、他のオーディエンスは何を必要としているのか、顧客とコミュニケーションがとれているか、顧客は何といっているか」といったことを考え続ける手助けをしてくれる。

彼らは、チームがオーディエンスについてすべてを把握し、また、新しいオーディエンスに手を広げ、テストするのを支援する責任がある。これはプロダクトマーケティングの重要な役割だ。しかし、製品の開発やリリースを犠牲にしてまで、そのような人材の早すぎる投入は、非常にリスクが高いことだといえる。

MKT1では、B2B企業や成長段階にある企業における特定のマーケティング機能について、フルタイムの雇用とアウトソーシングのバランスに何か傾向は見られるか。

クレイマー氏:創業者は初期の段階は「マーケティングに多くの時間を費やしているが、マーケターを雇う必要はない。コンテンツについては請負業者や代理店を雇えばいいし、SEM(検索エンジンマーケティング)やSEO(検索エンジン最適化)についても請負業者や代理店に頼めばいい」と考えるだろう。そうすると、多くの請負業者を抱えることになる。しかし、どんなに優れた請負業者であっても、依頼元に担当者やレビューアーは必要であり、やるべきことが明確に指示されていなければ、よい結果は得られない。また、多くのクライアントを相手にしているので、そのすべてにすばやく対応することはできない。

また、請負業者の管理にも手間はかかり、特にその分野の経験がない人は、業者とのやり取りに自分で仕事をするのと同じくらいかかることもある。多くの場合、マーケティングは、何かを引き渡せばよい他のビジネス領域に比べて反復的であり、特にクリエイティブな面では、自社のブランドを確立するために、その傾向は強くなる。つまり、やり取りが何度も必要になる。

ただし、代理店や請負業者にアウトソーシングした方が良い分野もいくつかあると考えている。その1つが有料検索だ。起業してしばらくの間はSEMのスペシャリストを雇う必要はないだろう。SEMは確かに専門的で、独特な厄介物であり、何が有効で何が無効なのか、よく変化する。その仕組みを理解し、一日中AdWords(アドワーズ、現在のGoogle広告)を見ていてくれる人がいると、本当に助かるので、人を雇うには良い分野だ。そのため、マーケティングチームの規模にかかわらず、当社は常に検索仲介業者に補強してもらっており、当社のチームに専任のサーチ担当者がいたとしても、彼らをサポートするために業者を利用している。これは常に必要なことだ。規模が大きくなると多種多様なことを行うようになるため、さまざまな代理店が必要になるだろう。

また、コンテンツの分野でも、コンテンツ担当者やプロダクトマーケターを補強するために請負業者を利用することは有効だと考えている。それでもやはり、請負業者に費用を払って大量のコンテンツを作らせる前に、コンテンツの内容、伝えたいメッセージ、自社の独自性、ブランディング戦略を明確に理解しておく必要がある。そうでなければ、結局は何も伝えられず、目標を達成できないコンテンツの山になってしまう。

そのため、コンテンツと有料検索は、常にアウトソーシングするのに適した分野だ。そして、規模が大きくなるにつれて、つまり最初はそうではなく、またビジネスのタイプにも依存するが、PR、つまりメディアとの関係もアウトソーシングが有効な分野だ。これについては、今話をしているTechCrunchの方がもっと詳しいだろう。しかし、メディアとの関係は規模の経済が大きく作用する分野だ。そのため、メディアに精通した代理店、あるいは多くのメディアとの関係のある代理店を持つことは、非常に意味のあることだが、それはもっと後の話だ。しかし、PR、コンテンツ、有料検索については、これらを管理する人材を社内に確保しておかないと、アウトソーシングが役に立つどころか弊害をもたらすことになりかねない。

画像クレジット:MKT1

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(文:Miranda Halpern、翻訳:Dragonfly)

【コラム】クリエイティブがグロースマーケティングの決定的なXファクター

今後、グロースマーケティングがプライバシー保護を重視した、ターゲットの曖昧なものに移行するとき、Facebook(フェイスブック)などの有料ソーシャルチャネル上のクリエイティブが最も強力な手段になるだろう。重宝しているiOS 14.5で特定機能が利用できなくなってこの傾向は加速されたが、さまざまなチャネルで広告プラットフォームの自動化に向けた取り組みが強化されている。

それで筆者は、シードステージのスタートアップであれ、Google(グーグル)のような巨大企業であれ、グロースマーケティングを推進する場合は常に、クリエイティブをテストする適切なフレームワークの準備を整えるべきだと思う。

筆者は、Postmates(ポストメイツ)で3年間働き、さまざまなスタートアップのためにコンサルティングをし、直近ではUber(ウーバー)で仕事をして、多くの点でマーケティングが変化する様子を見てきた。しかし、我々が今目にしているものは我々の制御を超えたファクターによって動いており、今まで見てきたどんなものとも異なる変化が始まっている。続いて、有料のソーシャルアカウントでクリエイティブが最も強力な手段として登場した。

基本

クリエイティブの力を活用し、有料のソーシャルマーケティングで成功を収めようと考えているなら、その考え方は正しい。必要なのは、クリエイティブをテストするフレームワーク、つまり新しいクリエイティブアセットをテストする構造化された一貫性のある方法である。

次に、クリエイティブをテストするフレームワークを成功させるために必要な基本要素を示す。

  • 決められたテストスケジュール
  • テーマを構造化したアプローチ
  • チャネルに特化した戦略

クリエイティブのテストは、決められたテストスケジュールに従った、持続的で反復的なプロセスにする。目標と構造は、毎週5つの新しいクリエイティブアセットをテストするシンプルなものにできる。逆に、複数のテーマとコピーバリエーションから成る60の新しいアセットをテストする複雑なものにもできる。

出費があまり多くないアカウントの場合、イベントシグナルが限られているのでクリエイティブのテストは比較的限定的なものにする。出費の多いアカウントの場合はその逆にする。最も重要なことは、次の「優れた」アセットを探す際、テストを継続して目ぼしいものを見つけることである。

4つのテーマ×テーマごとに3つの変化形×5つのコピーバリエーション=60のアセット(画像クレジット:Jonathan Martinez)

テストのスケジュールを設定したら、思いつきのアイデアを大量にテストするのではなく、ビジネスとバーティカル市場の主要なテーマを定義する。これは、コピーや、製品とサービスの主要な価値提案と同様に、クリエイティブアセットにも当てはまる。クリエイティブのデータ分析を始めると、この構造を活用してテストすることで、何を強化し、何をカットするか、簡単に決定できることがわかるだろう。これは、テストの過程を通じて拡張または縮小するワイヤーフレームと考えることができる。

MyFitnessPal(マイフィットネスパル)のようなフィットネスアプリの場合、次のように構造化できる。

  • テーマ(製品のスクリーンショット、製品を使っている人の画像、UGCのユーザーの声、事前・事後の画像)
  • メッセージ(セグメント化された価値提案、宣伝広告、FUD)

チャネルは、クリエイティブのベストプラクティスやテストの機能がそれぞれ異なるので、チャネルに特化したアプローチになっていることを確認することは非常に重要である。フェイスブックでうまくいくことが、Snapchat(スナップチャット)やその他多くの有料ソーシャルチャネルでもうまくいくとは限らない。クリエイティブのパフォーマンスがチャネルによって異なるとしてもがっかりすることはないが、筆者は等価性テストを推奨する。あるチャネル向けのクリエイティブアセットがすでにある場合、残りのチャネル向けにサイズ変更して体裁を整えても問題はない。

何が成功かを判断する

適切なイベント選択と、テスト全体を通じて守る統計的に有意なしきい値は、クリエイティブにとって等しく重要である。クリエイティブのテストに使うイベントを選択する際、CACのレベルによっては、必ずしも自社のノーススターメトリックを使えるとは限らない。例えば百単位のCACで高額のアイテムを売る場合、各クリエイティブアセットで統計的に有意な値に達するには、多額の出費が必要になるだろう。代わりに、ファネル上部寄りのイベントと、ユーザーの転換の可能性を示す信頼性の高い指標を選ぶことができる。

ファネル上部寄りのイベントを使うと、学習の迅速化につながる(画像クレジット:Jonathan Martinez)

使用する統計的に有意な割合を決める際、クリエイティブのテスト全体にわたって一貫した割合を選択することは重要である。経験上、筆者は80%以上の確実性を好む。それによって、十分な確認と決定の迅速化が可能になるからだ。Neil Patel(ネール・パテル)氏のA/Bテスト向け有意性計算ツールは、便利な(無料の)オンライン計算ツールである。

成否を分けるもの

ソーシャルフィードをスクロールしていて、光沢のあるゴールドのペンダントに目が留まったとしよう。しかし、メッセージはブランド名と製品の仕様だけである。注意を引かれはしたが、引き寄せられるものが何かあっただろうか。考えてみて欲しい。人の注意を引くだけでなく「クリエイティブ」、つまり有料のソーシャルグロースマーケティングで成否を分けるファクターを使って、引き寄せているだろうか。

iOS 14.5のデータロスを迂回する

iOS 14.5でユーザーデータがわかりにくくなり、モバイルキャンペーンにおいてクリエイティブのテストは厳しくなる一方だが、不可能というわけではなく、ただもっと賢くなる必要があるということである。クリエイティブのパフォーマンスに関する明瞭なインサイトを得るのに役立つアイデアはいろいろあり、長続きしないものもあれば、ずっと残るものもあるだろう。

プライバシー保護のための制限はたくさんあるが、膨大な数のAndroid(アンドロイド)ユーザーには依然としてアクセス可能であり、これを活用しない手はない。クリエイティブのテストをすべてiOSで実施する代わりに、インサイトを収集する明瞭な方法としてアンドロイドを使うことができる。プライバシー保護のための制限はまだアンドロイドデバイスに課されていないのだ。アンドロイドでのテストで収集されたデータは、次にiOSでのキャンペーンに適用できる。アンドロイドでのデータにも制限が課されるのは時間の問題でしかないので、iOSでのキャンペーンに情報を提供できるこの回避策を活用するのは今である。

アンドロイドでのキャンペーンが実行可能なオプションでない場合、手早く簡単な別のソリューションは、Webサイトのリードフォームを断念し、クリエイティブアセットから記入済みフォームへの転換率を測定することである。ユーザーエクスペリエンスは確かにエバーグリーンコンテンツと比べればまったく驚くほどのものではないが、これを使えば短期間でインサイトを得ることができる(しかも、予算のほんの一部で)。

リードフォームを作成する場合は、エバーグリーンエクスペリエンスの重要な指標となるイベントを完成させるユーザーを見極めて明らかにする質問を考えよう。ユーザーがリードフォームに記入し終えたら、コミュニケーションを取ってユーザーの転換を図り、広告費を有効に使うことができる。

アカウントステージに基づいて取り組む

クリエイティブアセットのタイプに応じたテストの取り組みはアカウントステージアカウントステージによって大きく異なり、模倣、反復、イノベーションの3つに分けることができる。

クリエイティブのテストのタイプは時間とともに変化する(画像クレジット:Jonathan Martinez)

アカウントステージが初期であればあるほど、クリエイティブの方向性が他の広告主によって有効であることが証明されたものに依存する度合いは大きくなる。それらの広告主は、アセットのパフォーマンスの証明に多くの出費をしてきており、そこから強力なインサイトを得ることができる。時間の経過とともに、他の広告主から導き出す速度をわずかに落とし、ベストパフォーマンスの反復に重点を置くことができる。筆者が割合を決めるとすれば、初期段階では取り組みの80%を模倣に置く。成功事例が明らかになるにつれて自然と反復の勢いが増し、イノベーションが大きく遅れて最後の柱になる。

これは、すばらしいアイデアがある場合でも初期段階ではイノベーションを試すことはできないということではが、一般に、十分に成長した企業の方が革新的なアイデアの検証に多額の出費をする余裕がある。また、社内にデザインチームがあるにしても、フリーランスのデザイナーと一緒に取り組むにしても、50の異なる革新的なアセットを考えてデザインするより、50のバリエーションを考える方がはるかに簡単である。模倣と反復により、初期のテストは大幅に効率的になる。

競合他社のインサイトを活用する

ブレインストーミングをして、最高に美しく、目を引いて、人を引き付けるクリエイティブを思い描くことは、必ずしも数秒でできることではなく、数分でも、数時間でもできるとは限らない。ここで、競合他社のインサイトを利用することが関係してくる。

最も充実したリソースはフェイスブックの広告ライブラリである。そこには、プラットフォーム全体であらゆる広告主が使っているすべてのクリエイティブアセットがある。実際のところ、この無料の強力なツールのことを知っている人がほとんどいないことに、筆者はいつも驚かされる。

このライブラリで競合他社やクラス最高の広告主を参照すると、広告主が長く使ってきた具体的なアセットに、優れたパフォーマンスのクリエイティブの証拠を見ることができる。どうしてそれがわかるかというと、便利なことに、広告主がクリエイティブを使い始めた日付のスタンプが各アセットにあるのだ。これは非常に役に立つ。筆者は、何時間でもクリエイティブアセットを調べていられる。それぞれの広告主が、情報とひらめきをさらに提供してくれる。

有料のソーシャルグロースマーケティングで努力を傾ける分野を考えるときは、クリエイティブをリストのトップに置く必要がある。データがますますわかりにくくなるにつれ、アイデアに富んだ考え方をする必要がある。そうした考え方が、成功と失敗の分かれ目になる。実行する戦略のタイプは時間とともに変わるが、変わらないのは、強力なクリエイティブ、つまり成功を左右するファクターの重要性である。

編集部注:本稿の執筆者Jonathan Martinez(ジョナサン・マルティネス)氏は、元YouTuberで、カリフォルニア大学バークレー校の卒業生であり、Uber、Postmates、Chimeをはじめとするさまざまなスタートアップ企業の成長を支援してきた成長マーケティングのオタク。

画像クレジット:MirageC / Getty Images

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(文:Jonathan Martinez、翻訳:Dragonfly)

Vungle傘下のモバイルマーケターが「Fontmaker」をApp Storeのトップに押し上げたカラクリとは

よくあることだろうか?TikTokをはじめとするSNSで話題になったアプリが、すぐにApp Storeのトップに躍り出て、その露出度の高さからさらに新規インストール数を増やしていく。最近、米国のApp Storeで1位になった定額制のフォントアプリ「Fontmaker」は、TikTokの動画やその他のSNS投稿による口コミの恩恵を受けていたようだ。しかし、ここで私たちが目にしているのは、App Storeマーケティングの新しい形であり、この分野で最も歴史のある企業の1つ、Vungleを巻き込んだものだ。

Fontmakerは、一見すると、大ヒットしたインディーズのアプリのように見える。

Mango Labsが開発したこのアプリは、ユーザーが自分の手書き文字を使ってフォントを作成し、それをカスタムキーボードで利用できるというもので、1週間あたり4.99ドル(約551円)というかなり高額な料金が設定されている。このアプリが最初に登場したのは7月26日だった。Sensor Towerのデータによると、約1カ月後には、米国のApp Storeで第2位のアプリとなった。8月26日には、さらに1つ順位を上げて1位になったが、その後、無料アプリ総合ランキングの上位から徐々に下がっていったという。

8月27日には15位となり、翌日には一時的に4位まで上昇したが、その後は再びランクダウンした。現在アプリは全体で54位、競争の激しい写真 / ビデオカテゴリーでは4位となっているが、主に若いユーザーをターゲットにした新しくてややニッチな製品としては、堅実な位置にある。Sensor Towerによると、このアプリは現在までに6万8000ドル(約750万円)の収益を上げている。

しかしFontmakerは、ボットではなく実際のユーザーからのダウンロード数の増加によってトップチャートにランクインしたにもかかわらず、真の純粋なサクセスストーリーとは言えないかもしれない。むしろ、モバイルマーケティング担当者がアプリのインストールを促進するために、インフルエンサーのコミュニティを活用する方法を見つけ出した一例と言えるだろう。また、インフルエンサーマーケティングによって流行ったアプリと、真の需要によってApp Storeのトップに躍り出たアプリとを区別するのは難しいということを示す例でもある。例えば、トランシーバーアプリのZelloは、ハリケーン「アイダ」の影響で最近1位になったという。

Fontmakerは、典型的な「インディーズアプリ」ではない。実際のところ、誰が作ったのかは不明瞭だ。そのパブリッシャーであるMango Labs, LLCは、実際には、モバイル成長企業JetFuelが所有するiTunesの開発者アカウントである。JetFuelは最近、モバイル広告・収益化企業のVungleに買収された。Vungleは長年この分野で活躍し、時には物議をかもした企業で、自身も2019年にBlackstoneに買収されている。

Vungleが主に関心を示したのは、JetFuelの主力製品であるインフルエンサー向けアプリThe Plugだった。

モバイルアプリの開発者や広告主はThe Plugを通じて、合計したInstagramのフォロワー数は40億人、TikTokのフォロワー数は15億人、Snapchatの1日の再生回数は1億回になる1万5000人以上の検証済みインフルエンサーが集うJetFuelのネットワークにアクセスできる。

マーケターは、これらのネットワークのそれぞれに組み込まれた広告ツールを使ってターゲット層にリーチしようと試みることもできるが、JetFuelの技術を使えば、Z世代のうち価値の高いユーザーにリーチするためのキャンペーンを迅速に展開することができるとしている。このシステムは、従来のインフルエンサーマーケティングよりも労力をかけずに済む場合がある。広告主は、アプリのインストールに対して、CPA(Cost Per Action)ベースで支払いを行う。一方、インフルエンサーはThe Plugをスクロールして宣伝したいアプリを見つけ、それを自分のSNSアカウントに投稿するだけで、収益を得ることができる。

The Plugのウェブサイト。インフルエンサーにプラットフォームの仕組みを紹介している

つまり、多くのインフルエンサーがFontmakerに関するTikTok動画を作成し、消費者にアプリのダウンロードを促していたかもしれないが、インフルエンサーはそれに対する報酬を得ていたのだ(また、Fontmakerのハッシュタグを見ていると、金銭的な関係を一切開示せずに動画を作成している場合が多く、これはTikTokで増加しているよくある問題であり、FTCも懸念している)。

厄介なのは、Mango LabsとJetFuel / Vungleの関係を整理することだ。App Storeを見ていると、Mango Labsは楽しい消費者向けアプリをたくさん作っているように見えるし、Fontmakerはその中でも最新のものだ。

JetFuelのウェブサイトがこのイメージの促進にも役立っている。

同社はMango Labsという「インディー開発者」のケーススタディと、同社の初期アプリの1つであるCaption Proを使い、インフルエンサーマーケティングの仕組みを紹介していた。Caption Proは2018年1月に配信された(App Annieのデータによると、2021年8月31日にApp Storeから削除されている)。

画像クレジット:App Annie

しかし、VungleはTechCrunchに対し「Caption Proアプリはもう存在しないし、長い間App StoreやGoogle Playにも載っていない」という(App Annieの記録には、Google Playにこのアプリが掲載されている記録は見つからなかった)。

また「Caption Proは、JetFuelになる前にMango Labsが開発したもの」であり、JetFuelの広告機能を強調するためにケーススタディを使用したのだとも話した(しかし、その関係を明確に開示することはなかった)。

「JetFuelが現在のようなインフルエンサーマーケティングプラットフォームになる前、同社はApp Store向けのアプリを開発していました。同社がマーケティングプラットフォームへと方向転換した後、2018年2月にはアプリの作成を中止しましたが、Mango Labsのアカウントを時折使用して、第三者機関と収益化パートナーシップを結んだアプリを公開し続けていました」とVungleの広報担当者は説明している。

つまりこの主張は、Mango Labsは元々、ずっと前に方向転換してJetFuelになった人々やCaption Proのメーカーと同一であったけれども「Mango Labs, LLC」の下で公開されている新しいアプリはすべて、JetFuelのチーム自身が作ったものではないということだ。

「App StoreやGoogle PlayでMango Labs LLCの名前で表示されているアプリは、実際には他社が開発したものであり、Mango Labsはパブリッシャーとしての役割しか果たしていません」と広報担当者はいう。

Mango Labsを「インディー開発者」と表現するJetFuelのウェブサイト

この主張が腑に落ちないのには理由があり、JetFuelのパートナーがMango Labsの名前に隠れて喜んでいるように見えるからだけではなく、Mango Labsが過去にJetFuelチームのプロジェクトであったからでもある。また、Mango LabsとTakeoff Labsが一連の同じアプリを提供していることも奇妙だ。Mango Labsと同じく、Takeoff LabsもJetFuelと関係がある。

この記事を書いている現時点で、Mango LabsはApp StoreとGoogle Playの両方でいくつかの消費者向けアプリを公開している。

iOSでは、最近のNo.1アプリFontmakerをはじめ、FontKey、Color Meme、Litstick、Vibe、Celebs、FITme Fitness、CopyPaste、Part 2などがある。Google Playでは、さらに2つのアプリ、StickeredとMangoを提供している。

画像クレジット:Mango Labs

App StoreにあるMango Labsのリストのほとんどは、アプリの「開発者のウェブサイト」としてJetFuelのウェブサイトを提示しており、VungleがいうJetFuelがアプリのパブリッシャーとして機能していることと一致している。

しかし奇妙なのは、Mango Labsのアプリ、Part2が、App StoreのリストでTakeoff Labsのウェブサイトにリンクしていることだ。

Vungleの広報担当者は当初、Takeoff Labsは「独立したアプリ開発会社」であると説明していた。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同創業者兼CEOのTim Lenardo(ティム・レナルド)や、JetFuelの共同創業者兼CROのJJ Maxwell(JJ・マックスウェル)など、JetFuelのリーダーたちで構成されたチームが表示されている。Takeoff LabsのLLC登記申請書は、レナルドによって署名されている。

一方、Takeoff Labsの共同創業者兼CEOのRhai Goburdhun(ライ・ゴバードハン)は、LinkedInとTakeoff Labsのウェブサイトを見ると、今も同社で働いているのだ。この関係について質問されたVungleは、ウェブサイトが更新されていないことに気づかなかったと答えており、今回の買収ではJetFuelもVungleもTakeoff Labsの所有権を持っていないとのことだ。

Takeoff Labsのウェブサイトには、JetFuelの共同設立者を含むチームが掲載されている

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社の「ポートフォリオ」として、Mango LabsがApp Storeで公開しているCeleb、Litstick、FontKeyの3つのアプリも紹介されている。

Google Playでは、Takeoff LabsはCelebsの他、VibeとTeal(ネット銀行)の2つのアプリの開発者となっている。しかしApp Storeでは、Vibeを公開しているのはMango Labsだ。

Takeoff Labsのウェブサイトでは、同社のアプリのポートフォリオが紹介されている

(さらに事を複雑にするわけではないが、RealLabsという企業もあり、同社はJetFuelやThe Plug、そしてMango LabsがGoogle Playで公開しているアプリMangoなどの消費者向けアプリを提供している。Labsという名前を付けたがっている人がいるようだ)。

Vungleによれば、この混乱は、同社がMango LabsのiTunesアカウントを使ってパートナーのアプリを公開していることと関係があり、これはApp Storeでは「よくあること」だと主張する。Vungleも混乱を招いていると認めており、Mango Labsで公開されているアプリを開発者のアカウントに移行するつもりだという。

またVungleは、JetFuelは「現在アプリストアで公開されているいかなる消費者向けアプリも作っておらず、所有していません。同社がMango Labsとして知られていた頃に作られたアプリは、ずいぶん前にアプリストアから削除されています」と主張している。

JetFuelのシステムは混乱しているが、今のところその目標は成功している。Fontmakerは、インフルエンサーマーケティングによってグロースハックが行われ、確かに1位になった。

しかし消費者としては、自分がダウンロードしているアプリが実際に誰によって作られたのか、そして自分が非公開の広告に「影響」されてダウンロードしたのかどうかを知ることができないということになる。

インフルエンサーによるプロモーションを通じてグロースハックによりトップに躍り出たのは、Fontmakerが初めてではない。夏に大ヒットしたPoparrazziも、同様の方法でApp Storeのトップに躍り出た。しかしPoparazziはその後、写真 / ビデオ部門で89位に沈んだ。

Fontmakerについては、手を回したインフルエンサーのおかげで1位を獲得したものの、トップチャートにいる時間は短いものだった。

関連記事:米App Storeトップに華々しく登場、作られた完璧さが並ぶInstagramのアンチを謳う新SNS「Poparazzi」

画像クレジット:Fontmaker

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(文:Sarah Perez、翻訳:Dragonfly)

迫るiOS 15リリースでマーケティング担当者が失うデータ、計画すべきDIYメトリクス戦略

Apple(アップル)は、米国時間9月20日(日本時間9月21日)に同社がリリースするiOS 15の一部として、重要なユーザーデータへの開発者のアクセスを排除することを計画しており、メールマーケティング担当者は、これからメトリクスをどのように把握していくかジレンマに陥っている。この問題に業界がどのようにアプローチしているのか、マーケティング担当者が収集したデータに基づいて行動することを支援するソフトウェア企業Movable InkのVivek Sharma(ヴィヴェック・シャルマ)CEOに話を聞いた。

このインタビューでは、8月に掲載されたExtra Crunch記事をベースに、メールマーケティング担当者がAppleのメールプライバシー保護の変更に備える方法を探っていく

今回のアップデートでメールマーケティング担当者にとってゲームチェンジャーなのは、AppleのMailのユーザーが自分のIPアドレスを隠すことができるようになった点だ。

マーケターたちはどのようにして戦術をピボットし、メトリクスを管理し続けられるのだろうか。シャルマ氏は、開封率ではなく、クリック数、コンバージョン数、収益といったダウンストリームメトリクスがより重視されるようになるだろうと考えている。「それはいいことのように聞こえますが、その分データは少なくなります。そして定義上、ファネルは狭くなり、その時点では人数が少ないので、何かがうまくいっているのか、うまくいっていないのかを知るのに時間がかかるかもしれません」。

シャルマ氏は、企業はゼロパーティデータに注目していると語る。「これには2つの要素があります。1つは指標としての『オープン』で、もう1つはオープン時に得られるIPアドレスや時間帯、推測される天候などの情報です。IPアドレスや日時などのような情報は、データ漏洩として認識されます。これらは、マーケターがアクセスできなくなるデータポイントのほんの一部です。そのため、彼らはすでに投資しているファーストパーティデータやゼロパーティデータを利用しています」。

シャルマ氏によると、課題は次のようなことになる。マーケターはどうすれば、ゼロパーティデータをおもしろく、視覚的に魅力的な方法で収集し、そのコンテンツをすべての顧客に対して大規模にパーソナライズできるのか?

以下に示したのは、Movable Inkがゼロパーティデータを収集した方法の1つだ。

「ゼロパーティデータ戦略」
世界的なアパレル小売企業が、ロイヤルティプログラムの導入時にゼロパーティデータを巧みに取り込みました。Movable Inkを利用したEメールでは、Movable Ink ExchangeのパートナーであるOracle CrowdTwistのデータを活用して、パーソナライズされたチェックリストのヒーロー画像を作成し、受信者のロイヤルティアカウントから主要なプロフィール質問を引き出し、完了までの進捗を表示し、回答ごとにポイントを提供しました。この合成画像は、Movable Inkが受信者の受信箱で消費したロイヤルティデータに基づいて自動的に生成され、1to1ユーザー体験を実現し、手動の制作プロセスを完全に回避しました。
​​レスポンス率149%アップ、ユニークCTR340%アップ(コントロール比)
画像クレジット:Movable Ink

シャルマ氏は次のように述べている。「ここにあるものはすべてアンケート調査の質問です。『ふだん何を買いますか』『靴のサイズは?』そして、そのお返しにポイントを付与するという、価値の交換が行われているのです。彼らは明確な方法であなたのことを知り、あなたが興味を持っているブランドと簡単に関わり合える方法を提供しているのです」。

データを手に入れたら、次の問題はそれをどのように利用するかだ。JetBlue(ジェットブルー)航空の例を見てみよう。

JetBlue パーソナライズド「イヤー・イン・レビュー」データ視覚化
2020年は旅行が困難な1年だったのを受けて、JetBlueはTrueBlueマイレージ会員を認識し、個々の乗客の旅行マイルストーンを紹介するために、一人ひとりパーソナライズされた、1年を振り返るデータビジュアライゼーションを提供したいと考えました。
Movable Inkは、JetBlueの記録システムからデータを抽出し、何十万通りもの組み合わせのクリエイティブアセットを各受信者の受信箱に直接自動生成することで、高価で時間のかかる手作業による制作を不要にしました。
画像クレジット:Movable Ink

シャルマ氏は、メールマーケティング担当者向けに、iOS 15での3つの重要なポイントを説明してくれた。

  1. クリック数やコンバージョン数などのファネル下部のメトリクスを重視すること。これこそが本当の意味でのエンゲージメントの指標となります。
  2. ゼロ・ファーストパーティデータ資産に投資する。真のパーソナライゼーションとは、人々が何を体験し、何を見るかということ。そのためには、ゼロパーティデータとファーストパーティデータを活用する必要があります。
  3. Eメールは、すでに投資されている成熟したチャネルであるため、顧客のエンゲージメントを高めるのに非常に有効です。Eメールは、顧客と一対一の関係を築くのにはすばらしいチャネルであり、それ以上の効果があります。この10年、15年の間に、Eメールはさまざまな変化を遂げてきました。この業界は進化し、プライバシーとパーソナライゼーションのバランスが取れたものになっていくでしょう。

画像クレジット:FeelPic

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(文:Miranda Halpern、翻訳:Aya Nakazato)

顧客体験のリアルタイムデータから企業の進むべき方向を探るClootrack

人の行動や要求は変わるから、顧客の心を知ることは難しい。しかしClootrackは、どうやらこの難題への答えを見つけたようだ。

同社はこのほど、Inventus Capital IndiaがリードするシリーズAのラウンドで400万ドル(約4億4000万円)を調達したことを発表した。これには、既存の投資家であるUnicorn India VenturesとIAN Fund、Salamander Excubator Angel Fund、そして個人の投資家としてJiffy.aiのCEOであるBabu Sivadasan(バブシ・バダサン)氏が参加した。共同創業者のShameel Abdulla(シャミール・アブドゥラ)氏によると、これで同社の総調達額は460万ドル(約5億円)になるという。

Clootrackは、顧客の体験をリアルタイムで分析し、なぜ顧客が定着しているのか、あるいは去ってしまったのかを把握できるようにする。創業者のシャミール・アブドゥラ氏とSubbakrishna Rao(サブバクリシュナ・ラオ)氏はどちらもIT出身だが、2015年に買収されたアブドゥラ氏の2つめの企業であるJiffstoreで数年前に出会い、2017年にClootrackを起こした。

画像クレジット:Clootrack

B2Cや消費者向けのブランドは、ネットプロモータースコア(Net Promoter Score、NPS)といった顧客満足度指数を使って顧客体験を理解しようとすることが多いが、アブドゥラ氏によると、現在の方法では、そうした体験の「why」がわからないし、遅くて費用が高く、しかもエラーが多い。

「チャネルの数が増えているため、現在の顧客は複数の場所でフィードバックを表現し、語っています。しかも今やその言葉の多くがデジタルであるため、調査をする者もオンライン販売の技術をよく理解していなければなりません」。

Clootrackは、ウェブサイトのフィードバックやチャットボットなど、すべてのファーストパーティおよびサードパーティのタッチポイントから得ることができるカスタマーエクスペリエンスデータを、粒度の高い定性的なインサイトに変換する。これによりブランド数カ月後ではなく数時間後に体験の推進要因がわかるようになるため、それらへの対応も早くなり、急速に変化するトレンドの波の頂点に常に立っていられるようになる。

アブドゥラ氏が指摘するデータによると、ブランド乗り換えの最大の要因は、顧客の体験そのものだ。そしてブランド乖離を5%減らすことができれば、利益は25%から最大で95%増加する。

今回得られた資金の多くは、すべての潜在的なタッチポイントからの顧客体験データを集められるように、プロダクトの能力を強化することに投じられる。彼の究極の目標は「B2Cプラットフォームのための唯一のプラットフォーム」になることだ。

現在の同社は、リテールやD2C、銀行、自動車、旅行、モバイルアプリによるサービスなど150社以上の顧客がいる。売上は前年比9倍で伸びている。主な市場はインドだが、米国とヨーロッパにも企業を立ち上げようとしている。

InventusのマネージングディレクターParag Dhol(パラグ・ドール)氏によると、彼はアブドゥラ氏を5年以上前から知っている。かつてアブドゥラ氏の企業に投資しようとしたが、InventusはシリーズAの投資家だったのでやめた。ドール氏によると、米国に比べて相当遅れているため、インドではマーケティングリサーチの改革が必要だという。

「シャミール(・アブドゥラ)は営業の経験が豊富で、連続起業家としても多くを学んでいるためCEOとして完璧だ。そして、サブバクリシュナ(・ラオ)は技術に強い。CMOたちは自分のデータベースにある顧客のレビューなど、非定型データの価値をよく知っているから、リアルタイムのフィードバックに魅力を感じる。だからこの2人は、今後この分野に大きな影響を与えるだろう」とドール氏はいう

画像クレジット:Mykyta Dolmatov/Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

TikTokのCreator Marketplace APIでマーケターは1次データのアクセスし自社に最適なクリエイターが探せる

TikTok(ティックトック)は、ブランドや広告代理店が同社のサービスを使ってインフルエンサーと連携しやすくするサービスを開始する。同社は、「TikTok Creator Marketplace API」(ティックトック・クリエイター・マーケットプレイスAPI)を新たに提供する。マーケティング会社がTikTokの社内向けインフルエンサーマーケティングプラットフォームであるCreator Marketplaceを直接統合できるようにするAPIだ。

2019年末に公開されたCreator Marketplaceウェブサイトを使って、マーケターは自社のブランドキャンペーンに最適なTitTokパーソナリティーを見つけて、キャンペーンの制作、管理、効果の追跡ができている。

新しいAPIによって提携マーケティング企業は視聴者層、成長トレンド、ベストパフォーマンスビデオ、キャンペーンのリアルタイムレポーティング(ビュー、いいね!、シェア、コメント、エンゲージメントなど)に関するTikTokのファーストパーティーデータ(1次データ)を初めてアクセスできるようになる。

取得したデータは自社のプラットフォームに持ち込んで、顧客に提供している将来予測の強化に利用できる。

TikTokは同APIを9月後半まで正式発表しないが、アルファパートナーには早期利用結果の公表を認めている。

パートナーの1社であるCaptiv8(キャプティブ・エイト)は、同社初のTikTokキャンペーンであるNRF top 50 retailer(NRF小売業トップ50)で新APIをテストした。小売業者は新しいキャンペーンに起用する多様で包括的なTikTokクリエイターを見つけること、さらには自社独自のTokTokチャンネルを作ることを希望している。Captiv8によると、ブランド付きコンテンツは1000万近いビューを獲得し、キャンペーンはいくつかの主要指標が「著しく増加」し、実績はNielsen(ニールセン)の平均を上回った。親密度(平均+4%)、購入意志(+7%)、推奨意志(+9%)などだ。

画像クレジット:TikTok Creator Marketplaceウェブサイト

現在Captiv8は、TikTokのAPIを使って視聴者層情報を取得することで、インフルエンサーの紹介と活性化を集約し、ブランド付きコンテンツの強化とキャンペーン実績のモニターを行うツールを提供している。実績のモニターに関して、同社はTikTok Creator Marketplace APIを使ってリアルタイム指標を取得できる。これは、Captiv8がTikTokのファーストパーティーデータをアクセスしている数少ない企業になった結果だ。

これも早期アルファパートナーであるInfluential(インフルエンシャル)も新API活用の情報を公開しており、視聴者層、成長トレンド、ベストパフォーマンスビデオなどのファーストパーティデータを利用して、同社顧客ベースのFourune 1000ブランドが自社、外部両方の広告キャンペーンに最適なクリエーターをみつける手助けをしている。

同社と仕事をしたパートナーの1社であるDoorDash(ドアダッシュ)は、Influentialの協力を得てTikTokでいくつかのキャンペーンを実施した。DoorDashはMcDonald’s USA(米国マクドナルド)が2021年実施予定のいくつかの新規キャンペーンにも協力する予定で、同チェーンの新製品、Crispy Chicken Sandwich(クリスピーチキン・サンドイッチ)や復活するSpicy McNuggets(スパイシー・マックナゲット)などが対象だ。

その他の早期アルファパートナーには、Whalar(ウェーラー)とINCA(インカ)がある。後者による統合は、2021年2月に発表されたTikTokのWPPとの国際パートナーシップの一環だ。この提携によってWPP代理店は新しい広告プロダクト・マーケティングAPIや新しいAR機能を早期利用できる。

クリエーターのマーケットプレイスは、大規模なインフルエンサーコミュニティをもつソーシャルメディアプラットフォームにはよく見られるようになり、オンライン消費者向け広告の標準的方法の1つになりつつある。若い世代に対しては特にそうだ。現在Facebook(フェイスブック)はBrands Collabs Manager(ブランドコラボマネージャー)をFacebookとInstagram(インスタグラム)向けに提供している。YouTube(ユーチューブ)にはBrandConnect(ブランドコネクト)があり、Snapchat(スナップチャット)は最近、ブランドとLens(レンズ)クリエーターをつなぐマーケットプレイスを発表した。この種の組織内プラットフォームは、ブランドのROI(投資利益率)にとって重要な指標の信頼できるデータを提供することでマーケターが幅広いインフルエンサーコミュニティの協力を得やすくする。インフルエンサー自身が報告するデータに頼ったり、マーケターが自分で収集する必要がない。キャンペーンが始まると、マーケターは提携クリエーターの成果を比較して将来の活動に活かすことができる。

TikTokは現時点でこの新APIの正式発表は行っておらず、まだテスト段階だとTechCrunchに語った。

「クリエイターは当社プラットフォームの生命線であり、私たちは彼らがブランドとつながり協力しやすくする方法を常に考えています。自社のメッセージを正しく伝えられる多様なクリエイターをブランドが発見して協力を得る手助けをする信頼できるパートナーのエリート集団と仕事ができることを大いに喜んでいます」とTikTokのエコシステム・パートナーシップ責任者Melissa Yang(メリッサ・ヤン)氏が選ばれたマーケティングパートナー向けに提供した声明で語った。

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画像クレジット:AaronP/Bauer-Griffin/GC Images / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

ライティングのプロに聞く、スタートアップのホームページのコンバージョン率を倍にする方法

編集部注:Nick Costelloe(ニック・コステロ)氏は、Demand Curveのコンテンツ責任者として、実用的なグロースマーケティングのインサイトを執筆している。

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私たちは、当社Demand Curve(デマンド・カーブ)と当社の代理店Bell Curve(ベル・カーブ)の仕事を通じて、ほぼすべての業界にわたり、スタートアップのために1000以上のウェブサイトのリライトを行ってきた。

これから紹介するコピーライティング戦術に従えば、サイト訪問者を顧客へと変えるコンバージョン率を倍にできるだろう。

アバブ・ザ・フォールド(Above the fold)のすべてを使って核心を伝える

ウェブサイトのトップページを開いて、スクロールせずに見ることができる画面領域を「アバブ・ザ・フォールド」、またはファーストビューという(紙媒体の新聞を考えてみよう。文字通りの折り目(フォールド)の上にあるものすべてが、その紙面で最も重要な情報である)。訪問者は、その画面領域に表示されるコンテンツを見て、スクロールして閲覧を続けるか、閲覧を終了するかを決める。

何をする会社なのか、自分の目的にかなう会社なのかどうかを、訪問者は数秒で判断しようとするということだ。

私たちは、スタートアップが犯しがちなある間違いに気づいた。それは、ファーストビューに表示されるコンテンツがおもしろくない、あるいはわかりにくいことだ。この間違いは多くの場合、マーケティング担当者がファーストビューにコンテンツを詰め込み過ぎることが原因である。

実のところ、ウェブサイトに掲載されている情報のほとんどは新しい訪問者とは無関係である。だからこそ、ファーストビューでは、新しい訪問者が抱える特定の問題を解決するためにその企業がどのように役立つかを説明すべきだ。

例えば、技術系ブログの最新記事を投稿したことをファーストビューで宣伝しても、その企業が何をしているかを知らない訪問者にとっては何の役にも立たない。

訪問者をさらに混乱させているのが、多くの企業がトップページに表示している、項目の多いナビゲーションバーだ。このナビゲーションバーを使えば、理論上は、ウェブサイト内の任意のページに簡単にアクセスできるようになるが、実際のところ、訪問者はナビゲーションバー内の項目を選ぶのに疲れてしまい、コンバージョン率も低下する。

その企業が何をしているのか、訪問者の目的にかなう企業なのか、という疑問に対して直接的に答えるコンテンツのみをファーストビューに表示し、それ以外はファーストビューから削除すべきだ。

ホームページのコンバージョン率を上げるには次の3つの方法がある。

  1. 「刺さる」ヘッダーを作る
  2. サブヘッダーを使ってヘッダーを補足する
  3. 意図を持ってデザインする

この記事では、上記の3つの分野を改善する戦術について取り上げる。

集団ではなく個人に訴求するヘッダーを書く

ヘッダーはウェブサイト上で最も大きなテキストだ。10ワード以内(推奨する最長の単語数。ただし、これは英語の場合)で、次の3つを達成する必要がある。

1.顧客が貴社の商品からどのように価値を得られるかを明らかにする。

これは最も重要な価値提案である。貴社の商品からどのように価値を得られるかを10ワード以内で説明できなければ、訪問者の注意を長く引き付けておくのは難しいだろう。

ここでは、貴社の主要な価値提案を明らかにする方法を説明する。

  • 貴社の商品を入手できないときに使用される質の悪い代替品にはどのようなものがあるか。
  • 貴社の商品が質の悪い代替品より優れている点は何か。
  • 最後のステップを行動ステートメントとして言い換えると、それが価値提案になる。

Airbnb(エアビーアンドビー)を例として考えてみよう。

  • 質の悪い代替品は、おもしろみのないホテルに閉じ込められ、本物の文化を体験できないことである。
  • Airbnbのサービスが質の悪い代替品よりも優れている点は、地元住民の家に滞在できる点である。
  • 2つ目の点を行動ステートメントとして言い換えると「初めての街での体験を、まるで住んでいるかのように楽しめる」という価値提案が得られる。

以下に、有名なスタートアップの例をいくつか紹介する。

画像クレジット:Demand Curve

2. 訪問者に読み続けてもらうための魅力的な仕掛けを組み込む

貴社がどんな会社かを訪問者に伝えられたらまずはひと安心だが、次は、貴社の商品に対してワクワクさせる必要がある。

多くのスタートアップは、ウェブサイトのコピーのせいで大きなチャンスを逃がしている。そのコピーが行動指向型ではないからだ。顧客が24時間いつでも買い物ができる世界では、訪問者が今すぐ行動を起こさなければならない緊急性はほとんどない。

フック(仕掛け)を組み込むことによって、訪問者が最初の訪問時に買い物をする可能性が高まる。

仕掛けを組み込むには次の2つの方法がある。

  • 大胆に宣言する:顧客が「へー。こんなことができるなんて知らなかった」と考えるように、極めて具体的な内容にする。

画像クレジット:Demand Curve

  • よくある反対意見に答える:訪問者がすでに考えている可能性の高い疑問や反論に答える。反論にすぐに対処するのは意外に感じるかもしれない。しかし貴社の弱点に注意を向けることによって、訪問者は貴社ブランドへの信頼感を高めるだろう。直販チームがいないため、コピーを駆使してできるだけ多くの疑問に対処する必要がある。

以下は、最も大きい反論に前もって対応している有名スタートアップの価値提案の例である。

画像クレジット:Demand Curve

3. 想定する顧客ペルソナに直接訴える

ヘッダーのメッセージで訪問者の心をとらえるには、顧客ペルソナに直接訴えるように価値提案を書き直す必要がある。

そのためにまず、上位2~3の顧客ペルソナをリストアップする。そして、商品の中でそのペルソナが最も重視する部分を取り上げるようなヘッダーに作り直す。業界用語ではなく、想定した顧客ペルソナが普段使う言葉で書くことが重要だ。顧客が貴社の商品のどこを気に入っているかをウェブサイトで示すには、1対1のインタビューを掲載するか、顧客の成功事例を簡潔に紹介するのが最も効果的だろう。

想定する顧客ペルソナに直接訴えるヘッダーを作成した後は、どのヘッダーがコンバージョン率を上げるかを判断するA/Bテストを実施したり、各ヘッダーを使用してカスタムのランディングページを作成し、さまざまなソースからのトラフィックを特定のページに誘導したりできる。

例えば、ゲストのブログ投稿に貴社のウェブサイトへのリンクを追加する場合、最も関連性の高いヘッダーが表示されるページにその閲覧者を誘導する。

以下は、同じスタートアップのために書かれた複数の価値提案の例である。

画像クレジット:Demand Curve

サブヘッダーを使用してヘッダーに書かれた内容の実現方法を説明する

あなたの時間の約50%をヘッダーの作成に、25%をサブヘッダーの作成に費やして欲しい。ヘッダーがおもしろくなければ、訪問者はわざわざサブヘッダーを読むことはないからだ。

サブヘッダーは次の2つのことを詳しく説明するために使用する。

  1. 貴社の商品の機能に関する正確な説明
  2. ヘッダーに記載した大胆な宣言の根拠となる機能・特徴

上位2~3つの機能・特徴を利用して、ヘッダーに書かれた内容を実現する方法を説明できる。

例えば、Airbnbのヘッダー「地元体験型の休暇をお楽しみください。最低滞在日数はありません」について考えてみよう。

この文の根拠を示すには「地元体験型の休暇」と「最低滞在日数なし」をどのように可能にするかを説明する必要がある。

サブヘッダーには「お住まいの地域にある何千もの短期賃貸物件を扱うオンラインマーケットプレイスです」などと書くことができる。

サブヘッダーやヘッダーには業界用語や技術用語を使用せず、小学校5年生の読者でも理解できる言葉を使用する。文章は短くすること。また、長い段落は読者の勢いをそいでしまう。

以下に、サブヘッダーを使用してヘッダーを説明している例をいくつか紹介する。

画像クレジット:Demand Curve

親しみやすく期待通りに機能するホームページを作る

高いコンバージョン率を持つホームページを作成する際に検討すべき最後の点はデザインだ。多くのハイテクスタートアップは、その独創性を見せつけるためにウェブサイトを利用している。

私たちの経験から言わせてもらえば、ウェブサイトは独創性を発揮する場所ではない。

ウェブサイトのデザインは独創的であるべきではない。独創的であるべきなのは商品である。ウェブサイトは商品の独創性を伝えるための一般的な媒体でしかないのだ。

機能性

他のウェブサイトでも広く利用されている使い慣れたボタンとナビゲーションを使用すると、訪問者がウェブサイトの機能を覚える手間が省ける。例えば、私たちはページの左上に「ホーム」ボタンがあるものだと思っている。右下に同じボタンを配置して独自性を出そうとすると、混乱が生まれ、おそらく顧客を失うことになるだろう。うまく機能しているものに忠実であるべきだ。

画像

ホームページに画像を追加するときは、次の目的を検討しよう。

  • 実際に動いている商品を見せることによって、不安要素を取り除く。GIFやループ動画は、スペースを取らずに商品の仕組みを示す優れた方法である。

画像クレジット:Judy

  • 物理的な商品を販売する場合は、画像を使って、素材や生地のさまざまな使用事例とクローズアップを示す。これにより訪問者は商品の品質を評価し、商品が自分たちにふさわしいかどうかを検証できる。

画像クレジット:Allbirds

行動喚起ボタン

行動喚起ボタン(CTA)は、ウェブページの訪問者をアクティブ顧客に変換する場所である。したがってCTAは、ヘッダーコピーの中に組み込んだ仕掛けの延長線上に配置しなければならない。

CTAボタンのコピーは、行動に焦点を置き、クリックしたら何が起きるかを訪問者に伝えるものにする。

以下に紹介するCTAボタンは、ヘッダーコピーからストーリーが続いているため違和感がない。

画像クレジット:Demand Curve

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(文:Nick Costelloe、翻訳:Dragonfly)

eコマースマーケティングのBluecoreはシリーズEで評価額が約1100億円、上場も視野に

パンデミックで、しかもロックダウンなら、およそあらゆる小売企業がオンラインのプレゼンスを作らなければならないし、しかも速くそれをする必要があった。大量の人びとがオンラインで買い物をするようになると、その体験を個人化することがなお一層重要になる。そのため、eコマースのマーケティングを個人化するプラットフォームであるBluecoreにとって、パンデミックは大きな転換期となり、今日は10億ドル(約1102億3000万円)の評価額によるシリーズEの1億2500万ドル(約137億8000万円)を発表する運びとなった。

これまでの投資家であるGeorgianがこのラウンドを仕切り、その他の既存の投資家FirstMarkとNorwest、そして新規の投資家Silver Lake Watermanが参加した。同社によると、これで同社の総調達額は2億2500万ドル(約248億円)になる。

BluecoreのCEOで共同創業者のFayez Mohamood(ファイズ・モハモッド)氏によると、これまでのリテールの行動範囲といえば、もっぱら多くの人流を物理店やウェブサイトに向けることだった。しかし多くの企業がオンライン化するにともなって、顔のない人流ではなく、個々の顧客との対話の仕方が重要になってきた。

モハモッド氏は次のように説明する。「この変化は本物であり、Bluecoreは今や、リテールに特化したマルチチャネルの個人化プラットフォームです。私たちは特に、基本的に3つのタイプのデータを結びつける。まず、顧客のアイデンティティ。そしてショッパー(買い物客)のビヘイビア。そして最も重要なのが、リテイラーの商品カタログだ。そしてそれを使って、さまざまなチャネルで個人化された体験を発動していきます」。

同社が創業されたのは2013年だが、その頃から個人化という概念を重視し進化させてきた。モハモッド氏によると、パンデミックでデジタルへの移行が決定的になり、そこは同社の土俵だ。そしてこの大きな流れがあるために、今回の調達を決意した。

「個人化は常に重要だったが、リテイラーがそれから得る価値はデジタル化の拡大とともに大きく加速されました。そしてそれは誰にとっても、収益のより大きな部分を占めるようになっています。特に2020年はその重要性が決定的になりました」とモハモッド氏は語る。

同社の成長は加速し、雇用も増えた。2020年5月にはBluecoreの従業員は236名だったが今は300を超え、年内に400を超えそうだ。モハモッド氏によると、会社が大きくなればなるほど、ダイバーシティとインクルージョンの重要性が増す。従業員たちが、彼らが仕える顧客のダイバーシティを反映していなければならないからだ。

「それは役員レベルから始まります。今私が誇りに思うのは、うちの役員チームが男女ほぼ半々であることです。私たちには、中心的な従業員を代表する委員会があって、常にダイバーシティと平等とインクルージョンをチェックしている。多様性と包容性のある職場といっても、考え方や発想のレベルだけでなく、毎日のアクションがそうなることが何よりも重要です。OKRって、そういうことだよね」とモハモッド氏は語った(OKR、具体的な成果と結果を重視する目標管理手法)。

今度のシリーズEで評価額が10億ドルになり、モハモッド氏の視野には上場がある。しかしそれは喫緊の目標ではなくて、今後もあくまでも利益より成長を追求していく。「私たちの考え方は、まずブランドの力というものがあって、それに支えられてプロダクトの改善や多様化に向けた投資が可能になります。そしてそれによって私たちの市場性が上がれば、上場も無理なく可能です。しかし私たちは、利益よりも成長を追っていくため、非上場のままの方が動きやすいかもしれません」とモハモッド氏はいう。

そして、手元に1億2500万ドルもあれば、そっちを選ぶ自由も十分にある。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Bluecore資金調達eコマースマーケティング

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

【インタビュー】競合他社に差をつけるには創業初日からストーリーの構築を始めよう

かつては独自の製品を持つことで、競合相手よりも少なくとも数カ月のリードタイムを得ることができていたが、そうした優位性はますます少なくなっているように思える。例えばTwitter Spaces(ツイッター・スペース)がClubhouse(クラブハウス)よりも先にAndroid(アンドロイド)版をリリースした例を考えてみるだけでそれがわかる。

関連記事:Twitterの音声ソーシャルネットワーク機能「Spaces」がClubhouseより先にAndroidで利用可能に

このように、競合他社が自社の優れた機能をコピーするのは時間の問題であるとわかっている状況下では、どうすれば競合他社の先を行くことができるだろうか?

その解決策は「メッセージ」だと、コンバージョン最適化の専門家であるPeep Laja(ピープ・ラジャ)氏はいう。コピーしたりコモディティ化が可能な機能や特徴とは異なり、戦略的なナラティブ(物語、ストーリー)は長期的なアドバンテージとなり得る。以下のインタビューでは彼が、スタートアップ企業が初期の段階から、なぜそしてどのようにナラティブに取り組むべきかを説明している。

ラジャ氏は、CXLSpeero(スピーロ)、Wynter(ウィンター)といったマーケティングおよびその最適化を行うビジネスを起業した人物だ。彼は最近Twitter(ツイッター)に投稿したスレッドで「これまでのやり方に挑戦する」「偉そうな態度をとる」といった、スタートアップ企業が使うことのできる共通のストーリーやナラティブを取り上げ、そうした戦術を採用している企業の例を紹介した。今回私たちは、そうした彼の考えやスタートアップの創業者への提言を改めて聞いてみた。

編集部注:このインタビューは、長さとわかりやすさのために編集されている。

あなたのサイトのキャッチフレーズでは、スタートアップに対して「製品による差別化は消えつつある」と告げ「メッセージで引きつけるべき」と伝えています。その理由を説明していただけますか?

この有名な言葉は、2017年にDrift(ドリフト)のCEOであるDavid Cancel(デビッド・キャンセル)によって口にされたものです。

大まかに言えば、どんなスタートアップも、イノベーションかメッセージか、そして理想的にはその両方で勝負しています。通常は、新しいこと、より良いことをするイノベーションから始めたいと思うものです。しかし、機能での勝負は一過性の優位性に過ぎません。誰もやっていないことをやっていてもその優位性は長続きしません。遅かれ早かれ、大手企業や他のスタートアップ企業にコピーされてしまうので、イノベーションだけでは不十分なのです。機能は、せいぜい2年程度しか続かない一過性の優位性で、それ以上続くことはほとんどありません。一方、適切なナラティブとメッセージを持てば、長期的な優位性を保つことができます。

ストーリーで勝負するスタートアップは、もしそれば大胆なものであれば大きな優位性を得ることができます。なぜなら、大企業は安全であることに最適化し、それはしばしば非常に退屈なものになりますが、誰もそれをいちいち指摘しないからです。それに対して、スタートアップは、勇気を出してわざと極端な方向に走ることもできます。

理想的なのは、イノベーションから始めながらも、同時にブランドの構築も始めることです。そうすればたとえ競合他社が機能で追いついてきたとしても、ブランドで自社を選んでもらえるようにすることができるのです。他人よりも客観的に良く見られる状態を維持することは難しいのですが、客観的により悪い状態になることは絶対に避けなければなりません。

あなたは、スタートアップが戦略的なストーリーを見つけ、それを検証するためのリサーチを支援なさっています。このコンセプトを説明してもらえますか?

スタートアップは、規模が大きくなるにつれて、機能や特徴ではなくストーリーで伝える必要があることに気づきます。彼らのナラティブは、より大きなコンセプトにつながる戦略的なものである必要があるのです。「世界はかつてこうだったが、今は変わってしまった。私たちのスタートアップは、この新しいコンテクストであなたを助けます」ということです。

架空の例として、マーケター向けのAIのコースを販売することを考えてみましょう。理想的なのは、AIについて話すのではなく、AIや機械学習はすべてを変えてしまうような止められないものであることを、ストーリーでまず説明することです。未来はすでに到来しているものの、まだ均等には手に届いていません。この列車を止めることは不可能です。それに飛び乗るか、置き去りにされるかのどちらかです。AIを導入した企業は他を圧倒することになるので、マーケターはAIを学んで適応して行く必要があります。こうすれば「マーケターのためのAI講座、7時間のビデオ、最高の講師陣」といった特徴で売るよりもずっと魅力的な商品にすることができます。

これは、私の会社であるWynterでも行っていることです。SaaSの世界をみると、10年前に比べて53倍もの企業が存在し、どのカテゴリーでも何百ものツールが提供されています。たとえばEメール・マーケティングを考えてみてください。そして、各カテゴリーの競合他社の特徴は「同じ」ということです。ほとんどが同じ機能を提供しているのです。つまり、機能による差別化はもう通用しないのです。ほとんどの会社が同じように見えて、同じようなことを言っています。現在「同一性」が多くの企業のデフォルトとなっています。この「同一性」とは、企業が提供するサービスが似すぎていたり、ブランディングで差別化ができていなかったり、コミュニケーションが不明瞭であったりすることによって引き起こされる複合的な影響です。おそらくみなさんは、最近の企業は差別化を重視していると想像なさっているでしょう。しかし興味深いことに、実態はその反対なのです。

機能面での差別化が一時的なものであることを考えると、企業はブランドで勝負すべきなのです。これが私たちの生きる新しい世界です。そしてそこで勝つためには、観客が何を求めているのか、自分が伝えていることがどのように観客に届くのかを知る必要があるのです。【略】「私の会社はこういうことをしていて、こういう風に売り込んでいるんだ」という具合に。おわかりのように、これは先ほど説明した「世界がどのように変化したかを示し、これまでのやり方では、現れ始めた新しい現実に適応できないことを説明する」というナラティブに沿っています。

創業者が自身のスタートアップを成功に結びつけるには、どのようにしたらよいでしょうか?

世界が変わったことをデータも用いて証明し、そこで勝つためには新しい戦略が必要であることを訴えましょう。そして、これまで使ってきた戦略に基づいた勝者と敗者の姿を示し、新しい世界に最も適しているものが何かという新たな証拠として利用するのです。例えばPLG(Product-led Growth、製品主導の成長)をアピールする場合には、GTM(go-to-market)戦略として、実際に利用されている例を示すことができます、なぜならお客様がすぐにその製品を使い始めたいという新しい世界に生きているからです。上手くいっている例を挙げ、それをご自分のスタートアップに結びつけることができます。

他の例としては、HubSpot(ハブスポット)のCTOであるDharmesh Shah(ダーメッシュ・シャー)氏が行っているコミュニティ主導の成長も参考になります。

また、リモートワーカーにハードウェアを提供するスタートアップFirstbase(ファーストベース)もあります。同社のCEOであるChris Herd(クリス・ハード)氏のTwitterのタイムラインは、私の言っていることをよく表しています。彼が自分の会社ではなく、ナラティブを売りこんでいるところをよく見てください。

つまり、何よりもまず、ナラティブすなわち世界に対する視点を売るのです。そしてこの新しい戦略を使って、あなたの会社がお客様の勝利に貢献できることを説明するのは、もっと後になってからで良いのです。語られるナラティブは、機能などに対する文脈を与えます。

関連記事:リモートワークに必要なツールとサポートを提供するFirstbaseが約14億円調達、フィンテックから方向転換

スタートアップがそうした道を間違えないようにするにはどうすればいいのでしょうか?

ナラティブが的はずれなものになってしまうのは、たとえば外部の世界の変化ではなく、会社の内部だけの変化を語るものであったり、あるいは実際には起きていない変化に投資して、その信憑性を高めることができなかったりするときです。ブランドに引きつけるためには、ナラティブの効果を測定する必要があります。

それはどうやってテストすれば良いでしょうか?ダイレクトセールスの場合なら、フィードバックを得ることはとても簡単です。私のセールスデモでは、デモに入る前にストーリーをお話しします。もし聞いていた人たちが資料を欲しがったら、私の話がツボを突いたことがわかります。同時に、質問があるかどうかを尋ねたり、人びとがうなずいているかどうかなどを観察したりします。もしこのようなセールスプロセスに関わっていない場合、たとえばPLG(製品主導の成長)に注力している場合には、メッセージテストを行う必要があります。これは1対1の場合もあれば、定性的な調査の場合もありますが、いずれにしても、実際のターゲット層を対象にテストを行っていることを確実にしなければなりません。

それがWynterで行っていることです。ここではメッセージテストや顧客調査を行うことができ、発信しているメッセージだけでなく、世界に対する人びとの認識についても調査することができます。これによって、ウェブサイトに置かれたセールストークの何がヒットしているのか、何がうまくいっていないのか、競合とはどのように比較できるのかなどを知ることができるのです。

スタートアップがメッセージに取り組み始めるべき時期はいつでしょう?

イノベーションは一過性のものなので、企業は開業初日からナラティブを堅持していなければなりません。いつまでもイノベーションで競争に勝ち続けることは非常に稀な出来事です。ブランドで勝つほうが、より達成しやすいことです。つまり、プロダクトマーケットフィット(PMF)の前に、メッセージマーケットフィット(MMF)が必要なのです。潜在的な顧客はそれを見ています。それは防衛のための堀にもなり得ます。自分を日用品として位置づけるのではなく(革新的でない機能で売り込むと日用品になってしまいます)、人びとが感情移入できるストーリーを開発するのです。競合他社よりも高い価格での販売が可能になれば、それは堀であることがわかります。これは機能では生み出すことはできません。機能はやがてコモディティ化し、当然のものだと思われるようになるからです。この問題は、ブランドを堅持できている場合には、はるかに少なくなります。

時間の経過とともに、ナラティブはどのように進化していくべきでしょうか?

世界の変化に合わせてナラティブも変化させていく必要があります。常に何が起きているのか、どのような背景があるのかに目を向けておく必要があるのです。リモートの台頭はその一例です。たとえばHR企業であるLattice(ラティス)が、1つの機能からより広範なサービスへと拡大していく中で、リモートに対応するようになりました。

これは、マスマーケットからより小さなクラスターへという、より大きなポイントにつながっていいます。例えばかつては皆が同じ番組を見ていましたが、現在はニッチなコンテンツが増えてきています。多くの場合、スタートアップ企業は最初からマスマーケットに向けてアピールする余裕はありませんから、これはスタートアップにとっては良いことです。しかし成長するにともない、そのナラティブも進化しなければならないかもしれません。また、ブランドナラティブと戦略的ナラティブが同時に存在することもありますが、後者は時間とともに進化していくものです。

ストーリーという意味では、Twitterのスレッドで紹介したものの中には、時代を超えて通用するものもありますが、永遠には通用しないものもあるでしょう。例えば力の弱いものが力の強いものを打ち倒す「ダビデとゴリアテ」のストーリーは、スタートアップがある程度のステージに達すると現実味がなくなります。また別の例としては「人々のために立ち上がる」と言って銀行の手数料を破壊することに注力していたWise(ワイズ)は、自分自身の首を締めることとなりつつあり、そのナラティブを変えなければならないかもしれなくなっています。当初のナラティブから離れなくてもいい企業もあれば、離れなければならない企業もあるのです。

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(文:Anna Heim、翻訳:sako)

日本で唯一Clubhouseアクセラレータファイナリストに選ばれた三木アリッサ氏が予期するP2Cの世界

2019年11月にロサンゼルスで開業した和菓子のD2Cを行うMISAKY.TOKYO(ミサキ・トウキョウ)。代表の三木アリッサ氏は、先日、Clubhouseのクリエイター向けアクセラレータープログラムに出場している。

日本の伝統技術を世界へ

三木氏の母親は、アーティストとして活動している。そのため三木氏は、アーティストがマーケティングや財政管理といった創作活動以外のこともしなければ成功が難しい現状に対して懸念を抱いていた。どうやったらクリエイターの広報活動を支援できるのだろうかと考え、三木氏は新卒でネスレへ入社し、同社初の新卒マーケターとしてCM制作などを学んだ。日本酒の会社やフローリストのマーケティング支援も経て、自らも日本発のラグジュアリーブランドを手がけるクリエイターになろうと思ったという。注目したのは日本の伝統技術。当時、グローバルで活躍している日本の伝統技術はほぼ見当たらなかった。起業の前に三木氏はイスラエルでグローバルローカライゼーションを学び、2019年の8月にロスへやってきたという。

三木氏は「事業を維持するには高額商品か高所得者層の顧客が必要。高額商品から手がけるのはハードルが高いため、まずは単価の低い食品を介して富裕層にリーチし、クロスセルしていく事業計画を立てました」という。宝石のような見た目の和菓子は、1粒8ドル(約880円)、送料込みだと約10ドル(約1100円)。ヴィーガン向けの和菓子は、病気が原因でグルテンを摂取できないという友人の悩みから着想を得て、グルテンフリーでもある。

三木アリッサ氏が創業したMISAKY.TOKYOの和菓子

彼女は、見た目にも華やかで健康にも良い和菓子に、グローバル市場での競争優位性を感じているという。Kim Kardashian(キム・カーダシアン)氏などセレブとのコラボレーションも実現。TikToの公式キャンペーンにも選ばれ、30社のみ参加可能なClubhouseアクセラレータに日本代表としてオーディションを勝ち抜き支援されることとなった。

「スター誕生」を目指すClubhouse

日本ではブームがひと段落したと見る人もいるClubhouseだが、英語圏ではTikTokをはじめ、個人による情報発信、マネタイズ可能なプラットフォームのユーザ数は伸びているという。

クリエイターファーストを掲げているClubhouse。「スター誕生」やNizi Projectのように、Clubhouseからスターを輩出するためのオーディションが2021年3月に実施された。全世界から応募があり、53組から20組に絞られる中で、彼女は日本人唯一の公式クリエイターに選ばれた。

MISAKY.TOKYOでの活動と平行して三木氏は、日英でスタートアップニュースを解説するというトークルームを運営している。このスペシャル版である「最新版デジタルアートの未来」では、日本から落合陽一氏、海外からは5分で3億円デジタルスニーカーを売り上げたRTFKTを招いた。5月16日に1時間の番組を実施し、海外のClubhouse評論家からも高い評価も得ている。

Clubhouseで番組を持つクリエーターのうち、1次選考に残った人々(画像クレジット:Clubhouse)

Clubhouseはオワコンなのだろうか。彼女は音声コミュニティの可能性を感じている。「今、Clubhouseのアクティブユーザー数が低下している理由は、クリエイター側がマネタイズできないからと考えています。多くのSNSの黎明期はこのような状態にあるものです」と三木氏はいう。今回のオーディションもクリエイター誕生の場としてClubhouseが育つ一助と考える。

「事業を開始する頃からも感じていましたが、Clubhouseのオーディションを通して、日本人であること、女性であることが、いかに世界でプレゼンスが弱いかを痛感しています。オスカーの前夜祭で選ばれるのも、その多くが白人男性。日本の伝統文化は質としてすばらしいものが多いので、世界でのプレゼンスを上げるために活動を続けたい。その一歩として、ファンを作るには、Clubhouseは有益なプラットフォームであると感じている」という。

P2Cの世界がやってくる

英語圏においては、D2Cはすでに過去のものとして認識されている。「今、期待されているP2C(Person to Customer)という概念です。米国ではTikTokなどを介して、個人が自身のプロデュースしたプロダクトを売っていくのが主流。D2Cも流行し、2020年には寝具のCasperがIPOしましたが、この先は続かないと考えられています」という。企業広告に疲れた消費者たちは、どうせなら好きなものにお金を落としたいという気持ちが強まっており、ファン心理をついたマーケティングが効果的になっていくという。

MISAKY.TOKYOのようなスタートアップにとっても、ファンをつないでくれるClubhouseのようなサービスは、これまで以上にとても重要なものになる。

「新型コロナウイルスの影響もあり、商品とのファーストコンタクトがデジタルシフトしつつある。現物の品質を確認できないため、中長期的ファン獲得に繋がるかはさておき、購入フックはオンライン上での訴求力となってきている」と語る。一個人への共感でものが広まる時代がやってきている。

関連記事:Clubhouseがクリエイター向けアクセラレータープログラム開始、スポンサー紹介もしくは月54.6万円の収入を保証

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タグ:MISAKY.TOKYOP2CClubhouse和菓子日本マーケティング

マーケターがドラッグ・アンド・ドロップで分岐を作り、よりきめ細かな顧客体験を作り出せるSegmentの新ツール

Twilio Segment(トゥイリオ・セグメント)は、マーケターが精緻化された顧客体験を作るためのツールを公開したことを発表した。これまでにも同社は、マーケターが顧客のペルソナを作ったり幅広いユーザーに対応する仕組みを提供していたが、新しいツールでは顧客とのやりとりをいっそう正確にコントロールできるようにする。

共同ファウンダーでCEOのPeter Reinhardt(ピーター・ラインハート)氏は、マーケターはもっとカスタマイズされた顧客体験を作れる機能を熱望してきたが、このツールはそれを実現するものだと語った。「これは基本的に、ペルソナやオーディエンスの中に存在するパワーを取り出し、そのすべてマーケターに渡すことで彼らが最高のデータを使ってあらゆるチャンネルにわたる夢の体験を作れるようにするものです」。

これを使うとマーケターはすべてのユーザーの体験をつなぎ合わせることが可能になる。「例えば誰かが入り口にやって来たらXをやりたいとします。その後これを枝分かれさせてXかYを使うようにすると、2つ別々のことをします。そうやって分岐とカスタマイズを体験全体を通じて続けていくことでサイト内のライフサイクル全体をカバーできます」。

ラインハート氏は、この機能はいくつかのツールで実現されているが、Twillio Segmentは、これをSegmentエコシステムの中の300種類以上のツールの中で使えるようにしたという。「本当にそれを実現して、一部のチャンネルだけでなく全チャンネルにわたって提供するのは初めてです」と彼は語った。

マーケターは部品をドラッグ・アンド・ドロップすることで分岐を作り、常連顧客か初めてかなど、あらゆる条件に応じてユーザーを異なる経路に振り分けることができる。この柔軟性こそが新ツール最大の特徴だとラインハート氏はいう。

同社はこの分野の大手であるAdobe(アドビ)やSalesforce(セールスフォース)などと競合しているが、この機能はTwillioがライバルを超えるのに間違いなく役立つとラインハート氏は信じている。「従来のプロダクトをよく見てもらえば、リアルタイムデータに基づいて作られていないことがわかるでしょう。つまり、マーケターが本当に使いたい興味深い行動データが使われていない、ということです」と彼は言った。

Segmentは2020年Twillioに32億ドル(約3500億ドル)で買収された。理由の1つは顧客エンゲージメントを向上させる機能だった。SegmentはTwillioに、顧客データプラットフォームを提供し、その上に他のコミュニケーションツールを構築できるようにした。今日の発表はその機能を拡張するものだ。

関連記事:Twilioによる3370億円でのSegment買収でデベロッパーはデータ活用アプリ開発が容易に

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SegmentTwilioマーケティング

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(文:Ron Miller、翻訳:Nob Takahashi / facebook

機械学習を活用してマーケッターのコンテンツ制作を自動化するSimplified

マーケティングに特化してCanvaに対抗しようとしているデザインソフトウェアのSimplifiedが、Craft Venturesが主導するシードラウンドで220万ドル(約2億4000万円)を調達した。このラウンドには他にSuperhumanのRahul Vohra(ラフル・ボーラ)氏とTodd Goldberg(トッド・ゴールドバーグ)氏、UberのCPOだったManik Gupta(マニック・グプタ)氏、Roomie創業者でPelican VenturesのAjay Yadav(アジェイ・ヤダブ)氏、Form Capital、8Bit Capital、Early Grey Capital、GFR Fund、MyAsia VCなども参加した。

Simplifiedは幅広いチャネルに向けて大量のコンテンツを作る必要に迫られているマーケッターをまさにターゲットにしている。このプラットフォームは機械学習を利用して、コピー、画像、フォーマット、サイズ調整などコンテンツ制作のプロセスを可能な限り自動化する。

例えばマーケッターがソーシャルメディアに心を動かすような引用を投稿したいとする。ソーシャルメディア向けのコンテンツであることを指定し、心を動かすような引用を見つけて、システムに対して適切な背景を自動で作るように指示する。その後はタイプフェイスや画像のトリミングなど何でも好きなように微調整すれば、すぐに公開できる。

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Simplifiedは組織全体で作品やアセットを共有する共同作業ツールも提供している。ストックフォトやストックビデオのサービスとも統合できる。

Canvaなどの製品ですでに単純化されているプロセスを、機械学習とGPT-3を利用して次のレベルへ引き上げるのが、この製品の基本的な考え方だ。

創業者のKD Deshpande(KD・デシュパンデ)氏は、とにかくスケールが重要だという。コンテンツを1つだけ作るのがこれまでより簡単になったとしても、量の問題は残る。Simplifiedは機械学習の自動化アルゴリズムを活用してコンテンツ制作のプロセスをスピードアップすることを目指している。

Simplifiedは、ここ数年デザイン分野が大幅に進化している中で登場した。InVisionやFigma、Canvaなどが、新世代のデザイナーやデザイン指向組織の要求に合う新鮮なデザインツールを提供して進化を引っぱっている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Simplified資金調達機械学習マーケティングGPT-3デザイン

画像クレジット:Simplified

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(文:Jordan Crook、翻訳:Kaori Koyama)

Adobeが自動化されたワークフローとカスタマーエクスペリエンスをWorkfrontで統合

5カ月前にAdobe(アドビ)は、マーケティング部門のワークフロー構築を支援するWorkfront(ワークフロント)を、15億ドル(約1625億6000万円)で買収した。米国時間4月27日、Adobeはその利用計画を公式に発表した。企業のマーケティング幹部たちが、顧客にカスタマイズされたエクスペリエンスを構築しながら、その戦略をクリエイティブプロセスに適用するためのバランスを取ろうとする際に、Adobe Experience Manager(AEM、アドビ・エクスペリエンス・マネージャー)にぴったりと組み合わされる何らかのマーケティングワークフローツールが必要とされていた。Workfrontはそこにうまく着地できたのだ。

かつてWorkfrontでCEOを務め、現在はAdobe WorkfrontのVPでGMを務めるAlex Shootman(アレックス・シュートマン)氏は、このツールをAEMの内部でマーケティング部門の記録を行うシステムとして捉えていると語った。この説明そのものにもマーケティングの要素が少なからず含まれているが、Workfrontのワークフローから得られるデータが、クリエイティブプロセスの記録として機能するのだ。

Adobeの一部として、彼らはExperience ManagerとCreative Cloud(クリエイティブ・クラウド)にフックを組み込んで、マーケティングのクリエイティブ作業が組織的かつ監査可能なプロセスを経て、何が起こったかを正確に知ることができるデータ証跡を残す、マーケティング記録システムを提供する。

シュートマン氏は、この記録システムがあることで、マーケティングチームはいろいろなことができるようになるという。まず第一に、戦略と実行を結びつけることができるようになる。彼は「あるCMOのことをを考えてみましょう、彼または彼女のチームは、年間または四半期の意思決定のための重要な優先事項を策定しています。私たちのツールを使うことで、そうした重要な優先事項を、マーケティング組織内の活動を推進するために役立てることができるのです」という。

そしてそのためには、変化に応じてチームが反復的に作業を再計画できるように、マーケティング部門の人材、プロセス、データを単一のシステムに統合する必要があるという。そこで活躍するのがWorkfrontだ。

CRM Essentials(CRMエッセンシャル)のリードアナリストであるBrent Leary(ブレント・リアリー)氏は、このアプローチは非常に理に適っているという。彼は「お客様のニーズの変化に合わせて、つながりを保ち続けるために、十分にパーソナライズされたコンテンツを大規模に作成していくのは、チームスポーツです。そこにはクリエイティブプロセス全体を通した緊密なコラボレーションが必要になります。AEM内部のWorkfrontは、そうしたクリエイティブプロセスに高度なプロジェクト管理機能をもたらすのです」という。

パンデミックに見舞われたことで、売上の大半がオンラインに移行したため、その対応が必須となった。そのため、速度と敏捷性の必要性が高まったのだ。このワークフローツールをAdobe Experience Managerに内蔵したことで、マーケティングチームが顧客向けのカスタマイズエクスペリエンスを構築できるようになるだけでなく、そうしたカスタマイズの裏側にあるワークフローを自動化することも可能になる。

実際の利用時には、まずマーケティングチームがキャンペーンを作成し、それでWorkfrontの中に展開するといった利用方法が考えられる。そうした展開を行うことで、クリエイティブ部門にタスクが割り当てられ、そのタスクがCreative Cloud上に表示される。割り当てタスクが完了すると、それは自動的にWorkfrontに戻され、そこでレビューが行われて、最終的に承認されてデジタルアセットマネジメント(DAM)ツール上に公開され、マーケティングチーム全体で使用できるようになる。

買収そのものが、どれほど成功したのかを知ることは難しい。しかし、Workfrontは特にAdobeのエコシステムに適しているように思える。それはクリエイティブプロセス全体に不足していた、ワークフローの自動化コンポーネントを提供し、マーケティング幹部が戦略の成果を正確に確認できるようにするツールなのだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AdobeマーケティングWorkfrontワークフロー

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(文:Ron Miller、翻訳:sako)

マーケティングテクノロジーに注力する投資会社Hawke Venturesが約6億円のファンドをクローズ

マーケティングコンサルタント会社Hawke Media(ホーク・メディア)の投資部門であるHawke Ventures(ホーク・ベンチャーズ)が、初のベンチャーファンドを560万ドル(約6億円)でクローズしたと発表した。

マネージングパートナーのDrew Leahy(ドリュー・リーヒ)氏は、同社が注力しているマーケティング・テクノロジーが、今のところ、他のベンチャーキャピタルの間ではあまり需要がないことを認めている。

「人々はmartech(マーテック)から逃げていますが、【略】それが我々の自信の輪になっています」と、リーヒ氏は筆者に語った。「世界の大企業を見てみると、今ではWalmart(ウォルマート)でさえ、結局のところすべてマーテック企業なのです」。

この表現には異議を唱える人もいるかもしれないが、インターネット上の最も大きなプラットフォームにおいては、マーケティングと広告が中心的な役割を果たしていることは否定でない。それをHawkeは戦略に結びつけた。リーヒ氏によると、同社は各投資先に10万ドルから25万ドル(約1080万円〜2700万円)の小切手を発行しており、追加投資を行う可能性もあるという。

SnapSuits.com(スナップスーツ)の共同設立者でCMOを務めていたリーヒ氏によれば、このファンドはHawke Mediaのために行っていた戦略的なエンジェル投資がルーツであり、最終的に同社のErik Huberman(エリック・ヒューバーマン)CEOとTony Delmercado(トニー・デルメルカード)COO
と連携して、より大きな賭けをするために資金を集めることになったという。

さらに同社では、小切手を切るだけに留まらず、ファンドに出資した51人のリミテッドパートナーのネットワークへのアクセスも提供できると、リーヒ氏は付け加えた。それらのLPには、Deathwish Coffee(デスウィッシュ・コーヒー)の創業者であるMichael Brown(マイケル・ブラウン)氏、MVMT Watches(ムーブメント・ウオッチズ)の創業者であるJack Kassan(ジェイク・カッサン)氏、VaynerMedia(ヴェイナーメディア)の元幹部であるJeff Nicholson(ジェフ・ニコルソン)氏、女優のHolly Robinson Peete(ホリー・ロビンソン・ピート)と元NFL選手のRodney Peete(ロドニー・ピート)夫妻、リアリティ番組「The Real Housewives of New York City(ザ・リアル・ハウスワイブス・オブ・ニューヨークシティ)」のJill Zarin(ジル・ザリン)氏、Video Genome Product(ビデオ・ゲノム・プロダクト)の創業者であるXavier Kochhar(ザビエル・コッチャー)氏、MarketShare(マーケットシェア)の創業者であるJon Vein(ジョン・ベイン)氏などが含まれている。

多くの投資会社が、次世代のFacebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)になる企業に資金を提供したいと言っているが、リーヒ氏は少し異なるところに焦点を置いているという。「私たちは異なるベンチャー企業を作ろうとしています。つまり、次の大きなアイデアは何かと考えるのではなく、自分たちで使える実際的な技術を構築することに力を入れる企業です」。

それは、この投資会社が主に中小企業で使用できる製品に焦点を当てているということでもある。

「私たちは大企業向けのマーテックファンドではなく、中小企業向けのマーテックファンドです」と、リーヒ氏はいう。「私たちは、数十万人のユーザーが関わることのできる技術を探しているのです」。

同社の初期の投資先には、SMSマーケティング会社のPostscript(ポストスクリプト)や、分析会社のYaguara(ヤグアラ)などがある。後者はChord(コード)に買収された

「Hawke Venturesは、Postscriptの初期の投資家の1つとして、設立当初から我々と一緒に仕事をしてきました」と、Postscriptの社長であるAlex Beller(アレックス・ベラー)氏は、声明の中で述べている。「Hawkeの組織全体が、初日から付加価値をもたらしてくれました。当社が会話型コマースの決定的なプラットフォームを構築するにあたり、Hawkeとのパートナーシップを継続できることを誇りに思います」。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:マーケティングHawke Venturesベンチャーファンド

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中小企業のマーケティングとセールスを自動化するActiveCampaignは評価額3200億円で260億円調達

世界に名前を知らしめようと各企業が新しいデジタルツールの導入を続けるなか、中小企業向けのセールスとマーケティングのためのプラットフォームを構築するスタートアップが大型ラウンドによる資金調達を発表した。ActiveCampaign(アクティブキャンペーン)は「顧客体験オートメーション」と同社が説明するシステムを構築し、デジタルキャンペーンのみならず、その後の処理を自動化してセールスとマーケティングの効率化を行う企業だ。同社は、2億4000万ドル(約260億円)の投資ラウンドをクローズした。このシリーズC投資により、シカゴに拠点を置くこのスタートアップの評価額は30億ドル(約3200億円)となった。

これを主導したのは、新規のビッグネーム投資企業Tiger Global。そこに新規の支援者としてDragoneerと、以前からの投資者であるSusquehanna Growth EquityとSilversmith Capital Partnersが参加している。

この資金調達により、ActiveCampaingは大きく飛躍することになる。同社は2020年1月に1億ドル(約108億円)を調達したばかりだ。それ以前は、2003年の2000万ドル(約22億円)が唯一の調達だった。

だが、他所でも多く見られたように、パンデミックにより、オンラインでもっといろいろな、ずっと多くのことができるという関心が企業間に広がった。特に大勢の人たちが家に引きこもるようになったこともあり、顧客の生活はインターネットに移行し、ActiveCampaingの顧客ベースは、16カ月前の9万件から14万5000件に拡大した。

これが示すのは、同社がパンデミック以前にかなりの急成長を遂げていたのもさることながら、むしろ多くの企業が新世界で事業を展開するためのツールを求めるようになった流れに、うまく乗ったということだ。

この成長は、ActiveCampaingが事業開発に大量の資金を投入した結果ではないと、創設者でCEOのJason VandeBoom(ジェイソン・バンデブーム)氏はいう。「それは成功を求める人たちによるネットワーク効果です。今でも、自発的な口コミが主原動力です」。

同社のツールは、ビジネス界の幅広いトレンド全体に適合するものだ。新しいクラウドベース技術の上に構築される自動化システムが、経営上の退屈な反復作業を肩代わりするものとして導入され始めている。

セールスの場面では、ActiveCampaingが提供するであろう事例として、ログイン中の(つまりすでにアカウントを持ちサインインしている)顧客が、すでに検索やクリックしていながら、さらにはカートに商品を入れながら、それを買うことなくサイトから「離れてしまう」の時期を特定するというものがある。このときは、顧客にその商品の追加情報を添えてリマインダーを送る。買う気が失せたか、考え直している場合なら、説得できる可能性があるからだ。

ユーザーはそれを拒否できるが、関連性のない大量のお知らせや、判断を迷わせる大量の選択肢など、商品を見て回るときの気持ちを散漫にさせるオンラインの本質を考えると、便利な点もある。実際ActiveCampaignは、850種類ものアプリを統合し、オンラインの世界がどれほど細分化されているか、注意力を散漫にさせる要因がいくつあるか、または視点によって注目度が変わるものがどれだけあるかを測定している。

放棄されたカートは企業の負担になる。積み重なれば、大きな損失となる。しかし、その追跡は、通常は貴重な人材を専任させてまで行うことではない。そこに、ActiveCampaingのような企業の出番がある。

セールスおよびマーケティングのキャンペーンでは、これに加えて500ほどの作業がある。バンデブーム氏は、これを「レシピ」と呼んでいるが、その一部はActiveCampaing自身のユーザーによって提供されており、それが同社のプラットフォームの基盤を形成している。

マーケティングとセールスの自動化市場は、現在、数十億ドル(数千億円)の価値があると見積もられている。ソーシャルメディアが台頭したおかげで、また単にオンラインで過ごせる場所が多く(そしてオンラインで過ごす時間も長く)なったことで、2027年には80億ドル(約8600億円)規模を超えると予測されている。そのため、収益性が高く、よく利用されているオンラインビジネス用ツールが強く求められるようになる。もちろん、そこに目を付けた企業は他にもある。例えば同じ問題に別の角度からアプローチするShopify(ショピファイ)などがそうだ。Shopifyは現在、ActiveCampaingの重要なパートナーになっていると、バンデブーム氏は私の質問に答えて話していた。

これはActiveCampaingにとってターゲティングを継続する大きなチャンスであるだけでなく、それ自体をターゲットにする可能性をももたらす。つまり買収だ。

もう1つ、ActiveCampaingの成長を支えた要素として注目すべき点に、顧客に関連するものがある。その顧客ベースには、地元シカゴの科学産業博物館のような有名どころも含まれているが、中小企業を重視する同社は、その他におよそ200カ国にわたり、およそ14万5000社の企業と取り引きがある。

中小企業は、世界のあらゆるビジネスの大部分を占める。これが集まって、彼らを顧客として捉えるテック企業に大成功をもたらしている。しかし伝統的に、中小企業は難しいセクターであることが知られている。その理由の1つに、非常に多くの垂直市場をカバーしているため、同業の大企業に比べて、いろいろな意味で価格に敏感である点がある。

そのためActiveCampaingは、多くの中小企業が納得できる価格を含め、大きなトラクションを得る方法を探り当てた。それはまた同社が、勝ち馬に乗ろうと目を光らせる投資家の興味を引く要因にもなったようだ。

同社は資金調達をする必要はなかったのだが、バンデブーム氏はこう話している。「垂直でもロケールでもなく、顧客体験のためのアイデアを意図的に追究することを投資家は好むと話すパートナーを、もっと増やせるチャンスだと見たのです」。

「私たちは、この旅が始まった当初から最前列の席に着けたのが幸いでした。まさに息を呑むような体験でしたが」とSilversmith Capital PartnersのマネージングパートナーTodd MacLean(トッド・マクリーン)氏はTechCrunchに宛てたメッセージで述べている。「他の急成長を遂げた企業と比較しても、その勢いと資本効率は類い稀です。しかし、ジェイソンは稀少な起業家であり、イメージどおりのチームを築き上げました。まだやるべきことは山積みですが、私たちは唯一、この市場機会の表面に爪を立てられたと信じています。ジェイソンとそのビジョンを強力に支援できることに、私たちは大きな喜びを感じています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ActiveCampaignTiger Global資金調達

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:金井哲夫)

eコマースマーケティングのスタートアップ企業Yotpoが約250億円調達、企業価値は約1524億円に

直近の資金調達の発表からわずか7カ月後、Yotpo(ヨットポ)はシリーズFラウンドでさらに2億3000万ドル(約250億円)を調達したことを明らかにした。これにより同社の企業価値(資金調達後)は14億ドル(約1524億円)となった。

「今回のラウンドは、私の目から見ると、eコマースの未来を祝福するものです」と、同社の共同創業者でCEOのTomer Tagrin(トマー・タグリン)氏は筆者に語った。「ブランドは、もうマーケティングスタックの接続について心配する必要がありません」。

従来の小売業における成功は「一に場所、二に場所、三に場所」によって決まっていたが、eコマースは「消費者の注目がすべて」だと、タグリン氏はいう。その注目を集めるために、平均的なブランドは10〜14種類のマーケティングアプリケーションを使用しており「かなりひどい体験」をしていると、同氏は推測している。そこで、2011年創立のニューヨークに本社を置くYotpoは、ブランドが必要とするすべてのeコマースマーケティングを、単一の統合されたプラットフォームで提供することを目指している。

これを説明するために、タグリン氏は「例えば、あるマーケターが、過去90日間に商品を購入して5つ星のレビューを残したユーザーだけにカスタマイズされたオファーを作りたいと考えているとします」と説明した。Yotpoでは「ボタンをクリックするだけ」でそれが可能だが「Yotpo以前には、そのような体験は実現できませんでした」と、同氏は述べている。

同社のプラットフォームは現在、Yotpo SMS Marketing、Yotpo Loyalty & Referrals、Yotpo Reviews、Yotpo Visual UGCという4つの主要製品で構成されており、これらは相互に統合されている。また、Shopify(ショッピファイ)、Salesforce Commerce Cloud(セールスフォース・コマース・クラウド)、Adobe(アドビ)傘下のMagento(マジェント)、BigCommerce(ビッグコマース)などのeコマース・プラットフォームとも連携できる。

Yotpoのトマー・タグリンCEO(画像クレジット:Yotpo)

タグリン氏によると、Yotpoには前回のラウンドで得た資金がまだ残っていたが、製品やマーケティングへの投資を継続するとともに、戦略的な買収のために追加の資金を調達することにしたという(同社は2020年初頭にSMSBumpを買収しており、完全な統合に向けて「70%ほど進んでいる」とタグリン氏は述べている)。中でも、カスタマー・コミュニケーションや、カスタマーライフタイムバリュー(顧客生涯価値)の測定に関する新製品の投入を計画しているそうだ。

Yotpoは現在、年間経常収益も1億ドル(約109億円)を超えており、2020年はSMS Marketingの収益が170%増加して、Loyalty & Referralsの収益も約2倍になったという。Patagonia(パタゴニア)やSteve Madden(スティーブ・マデン)などの大手ブランドがこのプラットフォームを利用しているが、Princess Polly(プリンセス・ポリー)のような新しいメーカー直販型ビジネスにも利用されていることをタグリン氏は指摘。全体で3万社の有料顧客を抱えているという。

「私が言いたいのは、Victoria’s Secret(ヴィクトリアズ・シークレット)は少しずつたくさん切られて死んでいくということです」と、タグリン氏は述べている。「たくさんのミニブランドがあり、それらは既存のブランドに取って代わろうとしている新鋭ブランドです」。

Crunchbaseによると、Yotpoは現在までに総額4億ドル(約435億円)以上の資金を調達している。今回のラウンドは、Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)とTiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Claltech Investment(クラルテック・インベストメント)、Coin Ventures(コイン・ベンチャーズ)、Hanaco(ハナコ)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Vintage Investment Partners(ビンテージ・インベストメント・パートナーズ)などが参加した。

「Tiger Globalは、小売業の未来を担うeコマースに長年にわたり強気で取り組んでおり、Warby Parker(ワービー・パーカー)やPeloton(ペロトン)などのディスラプター(破壊的)ブランドや、JD.comなどの大手企業、Stripe(ストライプ)やTwilio(トゥイリオ)など最高クラスのSaaS企業に投資してきました」と、Tiger GlobalのJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は声明で述べている。「統合されたマーケティング技術スタックを提供するYotpoのアプローチと、それによってブランドとオンラインショッパーに提供される価値に、我々は胸を躍らせています」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Yotpo資金調達eコマースマーケティング

画像クレジット:Christina Reichl Photography / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

オーディエンスエンゲージメント分析でマーケターを支援するTrufanがシード2.5億円調達

マーケターがSNSフォロワーを分析し、オーディエンスデータを収集するのを支援するツールを提供しているスタートアップのTrufanは、米国時間3月9日、230万ドル(約2億5000万円)のシード・ラウンドを調達したと発表した。

これまでの資金調達総額は比較的少額(410万ドル、約4億4000万円)であるにもかかわらず、Trufanはすでに2つの注目すべき買収を行っている。まず同社は2019年にSocialRankの製品と事業を買収し、ブランドに最も価値のあるSNSフォロワーを示す機能を提供できるようになった。そして昨年には、消費者がメールアドレスなどの情報を提供して応募する懸賞を主催し、マーケターがコンタクト情報を得るPlayr.ggを買収した

Trufanによると、同社の製品全体では1万人以上の無料ユーザーがおり、Netflix(ネットフリックス)、NBA、NFL、Sony Music、United Talent Agencyなどを含める600社以上の有料顧客がいるという。

同社は次は、2つの主要製品を統合し、プライバシー要件に準拠した顧客データ・オーディエンスエンゲージメントの総合プラットフォームを立ち上げ、新しいブランディングと価格設定を行うことを計画している。共同創業者兼CEOのSwish Goswami(スウィッシュ・ゴスワミ)氏は、規制当局が新たなプライバシー規制を導入したり、Apple(アップル)やGoogle(グーグル)がサードパーティのデータに基づく広告ターゲティングに新たな制限を加えたり、消費者が自分のデータがどのように使われているか敏感になったりする中で、このプラットフォームは特に魅力的なものになるはずだと話してくれた。

Trufan創業者のAanikh Kler氏とSwish Goswami氏。画像クレジット:Trufan

「人々は匿名で追跡されることを望んでいません」とゴスワミ氏はいう。「人々は自分のデータを(無断で)取り上げられることは望んでいませんが、そうした人々の多くは、データを共有することと引き換えに何かを得ることができれば、そのアイデアに惹かれます」。

ゴスワミ氏は、ソーシャルネットワークの限界を考えると、ブランドがファーストパーティの顧客データを構築することは特に重要だと付け加えた。「5000万人のフォロワーを持っていても、投稿するたびに5000万人に届くわけではありません。一方、5000万人のメールや電話番号を持っている場合、実際にそのほとんどの受信箱や電話に届くかもしれません」。

今回の新たな資金調達はMoneta Venturesが主導し、MonetaのパートナーであるSabya Das(サバイア・ダス)氏がTrufanの取締役会に加わる。GP Ventures、Protocol Ventures、Athlete Technology Group のほか、Innovative Fitnessの創設者Curtis Christophersen(カーティス・クリストファーセン)氏、NBAチームUtah Jazz(ユタ・ジャズ)のフォワードであるDerrick Favors(デリック・フェイバーズ)氏、同リーグChicago Bulls(シカゴ・ブルズ)のフォワードであるThaddeus Young(サデウス・ヤング)氏などのエンジェル投資家も参加している。

ダス氏は声明の中でこう述べた。「Trufan は、顧客データ領域における障害を認識し、その障害を取り除くという点で、他のはるか先を行っています。彼らは本当に素晴らしいチームを擁するオールスター創業者であり、ファーストパーティ・データの問題を解決する彼らの信念と能力を信じているため、当社は彼らを支援できることに興奮しています」。

関連記事:「マイクロインフルエンサー」マーケティングプラットフォームを日本でも展開する台湾のInfluenxioが2.2億円調達

カテゴリー:ネットサービス
タグ:マーケティング 資金調達

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(文:Anthony Ha、翻訳:Aya Nakazato)

「マイクロインフルエンサー」マーケティングプラットフォームを日本でも展開する台湾のInfluenxioが2.2億円調達

Influenxioのメンバー。中央が創業者でCEOのAllan Ko(アラン・コー)氏(画像クレジット:Influenxio)

「マイクロインフルエンサー」がマーケッターたちの間で影響力を持ち始めている。台北を拠点とするInfluenxioの創業者でCEOのAllan Ko(アラン・コー)氏は、マイクロインフルエンサーのフォロワーは1000人程度と多くはないが、特定のコンテンツに強くオーディエンスから注目と信頼を集めていると語る。Influenxioは同社のオンラインプラットフォーム上でInstagramのマイクロインフルエンサーと連携している。そのInfluenxioが現地時間3月8日、DCM Venturesが主導するプレシリーズAで200万ドル(約2億2000万円)を調達したことと、新しいサブスクリプションプランを開始することを発表した。

2018年に創業したInfluenxioは、シードインベスターのSparkLabs Taipeiなどからこれまでに300万ドル(約3億2500万円)を調達したことになる。同社は現在、台湾と日本で事業を運営しており、台湾では10万人、日本では25万人のInstagramクリエイターが同社のデータベースに登録されている。これまでに6000以上のブランドがInfluenxioのプラットフォームに登録し、1000件以上のキャンペーンを実施した。

Influenxioは今回調達した資金を人材の雇用と製品開発に使う計画だ。コー氏はTechCrunchに対し、サブスクリプションプランはこの分野では比較的新しいモデルで、目的の1つはこのモデルが有効かどうかを検証することだと述べた。他に日本のプラットフォームを増強し、さらに多くの国に拡大する計画もある。

Influenxioプラットフォームのスクリーンショット

Influenxioは過去のキャンペーンやパフォーマンスのデータ、クライアントからのレビューを分析してアルゴリズムを改良している。コー氏はTechCrunchに対し、インフルエンサーを見つけるところからインフルエンサーへの支払いまで、キャンペーン制作のプロセス全体をInfluenxio経由で実施するため、幅広いデータを集めてテクノロジーを磨くことができると説明した。

インフルエンサーには、キャンペーンに参加するごとに通常35〜40ドル(約3800〜4300円)が支払われる。Influenxioを利用しているブランドには、フード(レストランなど)、ファッション、ビューティー、生活サービスなどがある。

コー氏はInfluenxioを起業する前に、デジタルマーケティング業界で15年間働いていた。Yahoo!とMicrosoftのアカウントマネージャーを務めた後、香港と台湾のGoogleのオンラインパートナーシップグループで責任者を務めた。同氏はデジタルマーケティングについて学んだことを生かし、多くの企業にとって利用しやすいスタートアップを作ろうと考えた。

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大企業はInfluenxioを利用して、母の日やクリスマスなど特別なイベントのマーケティングキャンペーンを迅速に展開している。例えば台湾のある広告主は、Influenxioを利用して1週間で200人近くのインフルエンサーを動員し、製品を試用して投稿するように依頼した。Influenxioを利用している著名な企業には、資生堂、Shopee、iHerb、KKBoxなどがある。

しかしInfluenxioのクライアントの大半(およそ80〜90%)は中小企業だ。中小企業は通常、1カ月に数人のインフルエンサーと連携し、時間をかけて複数のキャンペーンを実施してブランドの認知度を上げるとコー氏は説明する。

Influenxioの新しいサブスクリプションプランは、このような中小企業のためのものだ。プランは1カ月100ドル(約1万800円)未満で、まず台湾でスタートしてから他の市場に展開される。コー氏は「プラットフォームを立ち上げた最初の年に、中小企業は専門家やアドバイスを求めていることがわかりました」という。マーケティングマネージャーがいない中小企業が多く、Influenxioのサブスクリプションプランはそうした企業におのずとマッチする。プランでは毎月新しいインフルエンサーに依頼し分析を提供するため、企業はキャンペーンの成果を知ることができる。

Influenxioは「マイクロインフルエンサーエコノミー」に進出している多くのスタートアップの1つで、他にはAspireIQ、Upfluence、Grinなどがある。

コー氏は、Influenxioの最大の特徴は中小企業に注目し、インフルエンサーキャンペーンを実施するためのワンストップのマーケットプレイスを提供していることだという。さらに同氏は「我々のプラットフォームにとって重要なのは、とても簡単でシンプルでなくてはならないということです。広告主がプラットフォームをスムーズに使えるようにすることに多くの時間を費やしました。インフルエンサーに対しては、もっと便利にしようと取り組んでいます。例えばインフルエンサーが報酬を受け取る方法を簡単にしたいと思っています」と述べた。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Influenxioマーケティングインフルエンサー台湾資金調達

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(文:Catherine Shu、翻訳:Kaori Koyama)