AIソーシャルリスニングの英Brandwatchをが480億円で買収、PR・マーケティングの巨大企業が誕生

メディアモニタリングとメディアコンタクトデータベースサービスで知られるCisionは、デジタルコンシューマーインテリジェンス(DCI)とソーシャルリスニングプラットフォームのBrandwatchを現金と株式合わせて4億5000万ドル(約480億円)で買収すると発表した。Brandwatchの主要幹部チームは留任するという。この動きにより、PRからマーケティング、オンラインカスタマーエンゲージメントまで、幅広いサービスを提供する2つの大手企業が統合されることになる。買収は2021年の第2四半期に完了すると予想されている。

Cisionは、約100万人のジャーナリストやメディアのコンタクトデータベースを持ち、同社によれば7万5000人以上の顧客がいるという。一方のBrandwatchは、「ソーシャルリスニング」として知られるマーケティング手法にAIと機械学習(ML)を応用している。

これまでに、Brandwatchは総額約6500万ドル(約69億円)を調達していた。Nauta CapitalによるシリーズAに続き、Highland Europeが主導したシリーズB、その後Partechが主導したシリーズCによるものだ。

Brandwatchの創業者兼CEOであるGiles Palmer(ジャイルズ・パーマー)氏は声明の中で次のように述べた。「我々は、常に野心を持ちBrandwatchを築いてきました。今こそ次のステップを踏み出す時です。スケールの大きい企業に加わり、世界的に重要なインパクトを与えられるビジネスと製品群を作っていきます」。

CisionのCEOであるAbel Clark(アベル・クラーク)氏は次のように述べている。「継続的なデジタルシフトとソーシャルメディアの普及は、ブランドや組織の顧客との関わり方を急速かつ根本的に変化させています。これによりPR、マーケティング、ソーシャル、カスタマーケアの各チームは、最近利用できるようになってきたユニークな洞察を、コンシューマー主導の戦略に完全に組み込むことが必須となっています。CisionとBrandwatchは共に、クライアントが彼らの顧客をより深く理解し、顧客とつながり、あらゆるチャネルで顧客エンゲージメントをスケールアップできるよう支援していく所存です」。

Brandwatchは、資金調達から買収、合併まで、まるでケーススタディのような道のりを歩んできたが、資金力のあるテック企業からすると珍しいのは、そのほとんどを英国南部の海辺の町、同社地元のブライトンで達成した点だ。

パーマー氏の資金調達の道のりは、2006年に受けたエンジェル投資から始まった。2010年には、Brandwatchはマーケティング・PR会社のDurrantsから150万ドル(約1億6000万円)を調達し、さらに同年、Nauta Capitalが出資してシリーズAラウンドを調達した。2014年にはHighland Europeが主導するシリーズBラウンドで2200万ドル(約23億4000万円)を調達し、その後、2015年にはPartech Venturesが主導するシリーズCで3300万ドル(約35億2000万円)を調達した。

Brandwatchはその軍資金で、2017年にはコンテンツマーケティングとインフルエンサー識別プラットフォームのBuzzSumoを非開示の金額で買収した。そして2019年には、同社は類似の事業であったCrimson Hexagonと合併し、約1億ドル(約106億円)のARR(年間経常収支)を持つ事業を生み出した。また、ロンドンに拠点を置くSaaS型リサーチプラットフォームQriouslyも買収した。

Brandwatchは最近、Forresterのソーシャルリスニングソリューションのバイヤー向けガイドで10社中トップのリーダーに選ばれた

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タグ:BrandwatchCision買収マーケティング

画像クレジット:Brandwatch

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

セールスとマーケティングを統合したB2BマーケティングプラットフォームのTerminusが96億円調達

セールスとマーケティングはビジネスプラン上、よく1つのカテゴリーと見なされる。だが皮肉なことに、それらの機能を支援するアプリとサービスを開発するときは通常別々の会社が行うことになる。企業の中でセールスとマーケティングに取り組むチームについても同様だ。しかし、アカウントベースのマーケティングを通じてセールスとマーケティングを統合して扱うプラットフォームを構築するTerminus(テルミナス)というスタートアップが資金調達と成長を米国時間2月25日に発表した。これは同社のアプローチが勢いを増していることを示している。

同社はシリーズCを9000万ドル(約96億円)でクローズした。TechCrunchは情報筋から、バリュエーションは約4億ドル(約430億円)との情報を得た。PitchBookのデータによると、これは前回2018年のラウンドでのポストマネーで9600万ドル(約103億円)というバリュエーションを大幅に上回った。

上昇の理由の1つは、特に2020年、デジタルマーケティングに注目が集まったことだ。パンデミックのため、従来の多くのチャネルが見えなくなってしまった。アカウントベースのマーケティングだけでも、2018年には4580億ドル(約49兆円)の市場機会と見積もられていた

特にTerminusに関心が集まるもう1つの理由は同社の顧客リストだ。IBM、Salesforce、Thomson Reutersなど約1000の法人顧客がいる。

「私たちは新しいマーケティングオートメーションを構築しています」とCEOのTim Kopp(ティム・コップ)氏はインタビューで述べた。「アカウントベースのマーケティングは、セールスソフトウェアに起こった最も重要なことだと思います。多くのチームが案件ベースのアプローチからアカウントベースのアプローチに切り替えています。私たちは現在、すべてのエンゲージメントポイントである最新のB2Bマーケティングクラウドに対応しつつあります」。

今回のエクイティラウンドはGreat Hill Partnersがリードした。既存の投資家からAtlanta VenturesとEdison Partners、そして新規の投資家としてHallet Capitalも参加した。この資金により、ジョージア州アトランタとインディアナ州インディアナポリスに共同本社を置くTerminusが調達した総額は約1億2000万ドル(約130億円)になる。

マーケティングの世界はインターネット消費の増加とデジタルサービスの急増により20年間で大きな変化を遂げ、現在では「マーテック」と総称されビッグビジネスを形成している。

Terminusが特に焦点を当てている分野は、アカウントベースのマーケティング。要するにこれは、B2Bの販売およびマーケティングチームが、ビジネスの潜在的なターゲットを個々にではなく集合的なグループとして捉える方法だ。組織全体で作業する、より統合された取り組みを意味する。複数の人に対し何かを売り込む方法を提供し、誰かとつながり、販売する機会を増やす。

Terminusのプラットフォームとアプローチは、CEOのコップ氏が指摘するように、基本的にセールスとマーケティングの機能を統合するものであり、作業を一方から他方に引き継ぐ必要はない(その一環として、グループ内のさまざまなソフトウェア間で作業する手間とコストを削減する)。

「マーケティングと販売の統合には圧倒的な機会があります」と同氏はインタビューで述べた。「マーケティング部隊が営業会議に参加し、営業部隊はクライアントの成功の一部となる。自社の顧客に対してマーケティングを行うわけです。これは顧客が腐るほどに余っている領域です。顧客は通常、セールスまたはマーケティングの一方からアプローチされるためです」。

現在のTerminusのプラットフォームは、セールスインテリジェンス、アカウント情報、その他のデータソースをまとめて、ターゲット候補のリストを作成するのに役立つ「データスタジオ」から構成されている。これに加え、広告、電子メールとWebキャンペーン、およびチャットボット管理を構築する機能を含むマーケティングエンジンも開発している。これらの一部は社内で開発され、一部は買収によってTerminusにもたらされた(例えばチャット機能は2020年4月のRambleの買収によって獲得した)。

この分野で活動している企業はTerminusだけではない。その他には、Adobe傘下のMarketo、6sense、Sendosoなどがある。Terminusのアプローチは、マーケティングとセールスのプロセスのさまざまな側面(分析、オーケストレーション、自動化、実行)を1つのプラットフォームに統合することだ。

同社の社名はアトランタの初期のニックネームにちなむ。顧客のさまざまなマーケティングおよびセールス活動の唯一の選択肢になるという目標を表すものとして採用された。

これが投資家らが同社を訪れる理由の1つだ。

「Terminusは、チームが市場に参入する方法を再定義し続け、企業がデジタルファーストの環境で収益を生み出す方法を革新します」とGreat HillのグロースパートナーであるDerek Schoettle(デレク・ショートル)氏は述べた。「私たちはこのチーム、同社の2020年の大幅な成長、継続的な製品革新、そして今後の巨大な市場機会に非常に感銘を受けました」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Terminus資金調達マーケティング

画像クレジット:Thinkhubstudio / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

まだまだ有効なダイレクトメールをデジタルで効果的に管理するLobが50億円を調達

Lobは、企業が従来の郵便物をもっと迅速に低費用で、しかも、もっと個人化(パーソナライゼーション)をともなって送るための手助けをする。

同社の推計によると、米国で各世帯に配達される郵便物の2つに1つは同社のサービスが使われているという。そして米国時間2月24日、同社は、シリーズCで5000万ドル(約53億3000万円)を調達したことを発表した。

CEOのLeore Avidar(レオーレ・アビダール)氏によると、彼はHarry Zhang(ハリー・チャン)氏とともに10年前にLobを作り「郵便物をプログラミングによって送ること」を目指した。その後同社はエンタープライズに特化するようになり、現在の8500社あまりの顧客の中にはTwitterやExpedia、Booking.comなどがいるが、中小企業向けのプロダクトを提供することは、ずっと念頭にあるという。

アビダール氏の説明では、デジタルの時代にはLobが顧客のためにサポートを続けるべき郵便物の種類が2つあるという。1つは、規制やコンプライアンスのために送られる郵便物で、企業はそれらを印刷物で送ることが法的に決められている。2つ目は、マーケティングとして送られるダイレクトメールだ。Avidarによると、現在、多くの企業がこのダイレクトメールを再発見しつつある。

「マーケティングは常に、訴求が有効に働くためのユニークなチャネルを探している。いろんなチャネルの中で、現在はソーシャルが高い。GoogleのAdWordsなどはとても高額だ。郵便であれば簡単に取り止めもできるし、どんなにダイレクトメールが読まれてもビュー単価などを支払う必要がなく、需給に応じて料金が上がることもない」とアビダール氏はいう。

Lobによると、同社はダイレクトメールキャンペーンの実行時間を95%減らし、90日から1日以内にすることができる。印刷や投函に関しては、国中に張り巡らしたパートナーのネットワークがある。またPostPilotやPostalyticsのように、Lobを利用するマーケティングサービスもある。

同社のこれまでの調達総額は8000万ドル(約85億3000万円)だ。今回のシリーズCはY CombinatorのContinuity Fundがリードした。LobはYCのアクセラレーターを受講したことがあり、またContinuity Fundは同社のこの前の投資ラウンドもリードしてている

アビダール氏によると、2021年は同社の扱い郵便物の量を従来の3倍にしたいという。そのために、今回の資金で同社のPrint Delivery Networkを継続的に拡張、社員数を260人以上に増やしたいとのことだ。

YCのマネージングパートナーでLobの取締役でもあるAli Rowghani(アリ・ロウガニ)氏は、声明で次のように述べている。「LobはダイレクトメールのDXを先導している。それは地球上のすべての企業が利用してきたビジネスプロセスだが、長年、ソフトウェアにとってアンタッチャブルだった。Lobは、ダイレクトメールの費用を下げて配達可能性と追跡、報告とROIを改善するため、世界最大の送り主たちが重宝している。ダイレクトメールの最も複雑高度な送り主にとっても、LobのAPI駆動のプロダクトはレガシーなアプローチよりもはるかに優れている」。

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カテゴリー:その他
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画像クレジット:Ron Watts/Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hiroshi Iwatani)

全国ブランドに地域に特化したマーケティングプラットフォームを提供するSOCiが約83億円調達

「ローカライズされたマーケティング」に焦点を当てたスタートアップのSOCiは、シリーズDで8000万ドル(約83億円)の資金を調達したと発表した。

Ace Hardware、Anytime Fitness、The Hertz Corporation(ハーツ)、Nekter Juice Barなどの米国内およびグローバル企業は、検索、ソーシャルメディア、レビュープラットフォーム、広告キャンペーンを通じたプロモーションを行う際に、個々の店舗をコーディネートするためにSOCi(発音は「ソーシー」)を利用している。同社によると、2020年には100以上の新規顧客を獲得し、約3万の新規店舗を代理しているという。

共同創業者兼CEOのAfif Khoury(アフィフ・クーリー)氏は、非常に多くの企業が「地元のオーディエンスとつながるための真のソリューションを見つけようと躍起になっている」中で、パンデミックは同社のプラットフォームにとって正念場だったと語った。

SOCiのアプローチの重要な利点の1つは、ナショナルマーケティングチームがコンテンツやアセットを共有し、各拠点が「全国的な企業の個性」に忠実でありながら、「地域性」を表現できるようにすることだとクーリー氏は述べている。パンデミック時には、企業は「どこが開いていて、開いていないか」といった基本的な情報を共有しながら、「全国的なマーケティングに欠けている要素である人間性を表現し、それに同情する」ことができたという。

「その結果、閉店を余儀なくされた店舗がグランドオープンした時には、人々はその店を応援したいと思うようになりました」と同氏は語った。「それは、うまくいけばずっと続く絆のようなものを生み出しました」とも。

クーリー氏はまた、「特にローカルレベルでは、誰も7つの異なるシステムに7つの異なるログインをしたがる人はいない」ため、企業がローカライズされたマーケティングをすべて管理するための包括的なプラットフォームを構築してきたことを強調した。

今回の新たな資金調達は、買収と統合の両方を通じて、より包括的なプラットフォームを構築することを可能にするだろう、と彼は述べている。「CRM、POS、リワードプログラムに接続し、それらのデータを検索、ソーシャル、レビューのデータと統合して、顧客のプロファイルを構築したいと考えています」。

SOCiはこれまでに、総額1億1000万ドル(約114億2000万円)を調達している。シリーズDはJMI Equityが主導し、Ankona Capital、SeismicのCEOであるDoug Winter(ダグ・ウィンター)氏、そしてクーリー氏自身が参加した。

「すべての兆候が、2021年の最初の数カ月は、レストランや地域社会に依存している他のビジネスにとって、軒並み困難な状況が続くことを示唆しています」とJMIのゼネラルパートナーであるSuken Vakil(スッケン・ヴァキル)氏は声明の中で述べている。「これは、全国的なブランドの価値観に沿いつつも、地域に特化したメッセージを提供するマーケティングキャンペーンが今後も必要とされることを意味しています。SOCiのマルチロケーション機能は現在、マルチロケーションのフランチャイズ/ブランドにとって必須のプラットフォームソリューションとして、競合他社をはるかに卓越するマーケットリーダーとしての地位を確立しています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:SOCiマーケティング資金調達

画像クレジット:Prasit photo / Getty Images

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(翻訳:Nakazato)

時間が経つほど開封されなくなるテキストマーケティングツールを改善するVoxieが約7億円を調達

多くのスタートアップは創業者自身が直面した問題を解決するために始まる。アトランタを拠点とするVoxieもそうだ。

Voxieの創業者でCEOのBogdan Constantin(ボグダン・コンスタンティン)氏の場合は、以前に同氏が創業したタキシードレンタルスタートアップのMenguinがそのきっかけだった(Menguinは最終的にGeneration Tuxに買収された)。Menguinでは6〜9カ月のサイクルで商品を売り込まなくてはならなかった。顧客は通常、結婚式のためにタキシードを検討するからだ。

コンスタンティン氏は、メールマーケティングは時間が経つほど開封されなくなっていくという。そこである日、登録した人全員に「Menguinであなたを担当するパーソナルスタイリスト」と自己紹介するテキストメッセージを送ってみた。すると当然のことながら、多くの反応があった。

多くの顧客とこのようなテキストメッセージのやり取りをするのはもちろん難しい。これが、このプロセスを自動化し管理するツールをVoxieが提供する理由だ。同社はシリーズAで670万ドル(約7億円)を調達した。

コンスタンティン氏は、他のテキストマーケティングツールと比べるとVoxieから送信したメッセージはリアルで相手に合わせた会話のように感じられるという。Voxieのメッセージは80〜90%が自動化されたもので、残りを人間が書いているにもかかわらずだ。また、Voxieを使う企業は通常の10桁の電話番号からメッセージを送信できる(マーケティングに多く使われているのは5桁の番号だ)。

画像クレジット:Voxie

Voxieはもともと大企業向けに作られたが、新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大により低価格版を構築したとコンスタンティン氏は説明する。低価格版は「まさに今、苦境と闘っている小売業、レストランのフランチャイズブランド、メインストリートブランド」に利用されている。

同氏はさらに「全国に数百の店舗があり顧客にもっとエンゲージしたいブランドと連携し、顧客の名前や子供の数を尋ねてその情報を個人プロフィールとして保存できるようにしています」とも述べる。

現在、LG、Danone、Massage Heights、Buff City SoapなどがVoxieを利用している。

資金調達はNoro-Moseley Partnersが主導し、Circadian VenturesとEngage Venturesのほか、アトランタのアントレプレナーのWain Kellum(ウェイン・ケラム)氏、Andy Powell(アンディ・パウエル)氏、David Cummings(デビッド・カミングス)氏、Fred Castellucci(フレッド・カステルッチ)氏が参加した。

Noro-MoseleyのJohn Ale(ジョン・エール)氏は発表の中で「Voxieはブランドが顧客とパーソナライズされた会話を大規模に交わせる唯一のプラットフォームとしてマーケットをリードしています。このことはポストコロナの世界で同社の顧客企業が成功するためのキーになると我々は見ています。企業はVoxieを気に入っています。重要な収益を短期間で向上でき、コンテンツをパーソナライズすることでメッセージの有用性や自社のニーズとの高い関連性を見いだせるからです」と述べた。

コンスタンティン氏は、今後テキストメッセージの会話から直接注文できる「返信して購入」機能を提供すると述べた。また、同社は現在はSMSに的を絞っているが、さらに大きなビジョンがあるという。「我々は適切なメッセージを、適切なタイミングで、適切な手段で届けられるようにしたいと考えています」とコンスタンティン氏はいう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Voxie資金調達マーケティング

画像クレジット:d3sign

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(翻訳:Kaori Koyama)

AdobeがB2B向け顧客データプラットフォーム開発を発表、2021年前半に製品化

顧客データプラットフォーム(CDP)の概念は比較的新しいものだ。これまでは、さまざまなチャネルから個々の消費者に関するデータをスーパーレコードとして収集することに主眼が置かれていたが、理論的にはこれらすべての詳細な情報に基づいて、より意味のあるコンテンツを提供したり、よりカスタマイズされた体験を提供したりすることができる。Adobe(アドビ)は米国時間11月24日、この手のデータ統合が不足している主要市場であるB2B(Business to Business)の顧客向けに、そのような製品を作成する意向を発表した。

実際、この製品を担当することになったアドビのMarketo Engage製品マーケティング担当ディレクターであるBrian Glover(ブライアン・グローバー)氏によると、この種の営業はより複雑で、B2Bの営業やマーケティングチームはCDPを渇望しているという。

「私たちはこの数年間、Marketo EngageをAdobe Experience Cloudに統合することに費やしてきました。現在、私たちが行っていることは、次世代の新しい補完的なB2B製品をExperienceプラットフォーム上に構築することであり、その第1弾がB2B向けのCDP製品です」とグローバー氏は話してくれた。

グローバー氏によると、B2B営業には通常、購買グループが関与しているため、CDPを適応させるには独自の難しさがあるという。つまり、その過程における様々な人々の異なる役割に合わせて、メッセージをカスタマイズする必要があるということだ。

個人消費者は通常、自分が欲しいものをわかっているので、購入の意思決定を促して購入を完了させることができる。しかしB2Bセールスは通常、異なるレベルの調達が関与し、より長く、より複雑なものになる。たとえばテクノロジーの販売では、最高情報責任者(CIO)をはじめ、そのテクノロジーを使用するグループ、部門、部署、財務部門、法務部門などが関与する場合がある。また提案依頼書(RFP)が必要な場合もあり、販売サイクルは数カ月から数年におよぶこともある。

アドビはこのような販売でも、またその過程が複雑ならなおのこと、個人向け販売で使用するのと同じカスタマイズされたメッセージングアプローチを使用することができるはずだ、と考えている。B2Bのマーケティング担当者はいま、組織内にデータが分散しているという点で、B2Cのマーケティング担当者と同じ問題に直面している。

「B2Bでは購買グループやアカウントが複雑になることで、データ管理の問題がさらに深刻になります。なぜなら最終的には顧客データに接続する必要があるだけでなく、アカウントデータにも接続して、2つのデータをまとめられるようにする必要があるからです」とグローバー氏は説明する。

購買サイクルにおける各個人のより完全なイメージを構築することで、グローバー氏がいうように、アカウント全体のパンくずをまとめ始めることができるというわけだ。

顧客関係管理(CRM)はこのような複雑性に向けて構築されたものではないので、B2Bのセールスとマーケティングをサポートするために構築されたCDPのような専門のツールが求められていると、グローバー氏は考えている。

アドビはこの製品について初期の顧客と協力して作業を行っており、2020年12月末までにはベータ版に移行し、来年前半にはGA版を完成させる予定だという。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AdobeマーケティングB2B

画像クレジット:happyphoton / Getty Images

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(翻訳:TechCrunch Japan)

セールス情報プラットフォームのSlintelが4.3億円を調達

パンデミックが蔓延する中で、企業は販売の最前線を探している。販売につながる可能性が最も高い顧客に関する、適切なデータを持っていることが、いまでは大きな促進手段になる可能性があるのだ。セールス情報ツールを構築する初期スタートアップ企業のSlintel(スリンテル)は、米国時間11月6日、420万ドル(約4億3000万円)のシードラウンドを発表した。

このラウンドは、Accelが主導し、Sequoia Capital Indiaや既存の投資家のStellaris Venture Partnersが協力している。同社は、2019年のプレシードラウンドを含めると、これまでに570万ドル(約5億9000万円)を調達したと報告している。

同社の創業者でCEOのDeepak Anchala(ディーパック・アンチャラ)氏は、企業のセールスチームやマーケティングチームが、幅広い市場をターゲットにしようとしているにもかかわらず、ほとんどの場合には、電子メールをはじめとする顧客とのコミュニケーション形式は変わらないままだと指摘する。この問題こそが、アンチャラ氏が、以前勤務していたスタートアップであるEightFold(エイトフォールド)とTracxn(トラクスン)のセールス担当者として、何よりも感じていた問題だったのだ。データの力を信じていた彼は、この問題を改善できると考えていた。そうして彼は、以前のポジションでは手に入らなかったセールスデータを提供するツールを構築するために、Slintelを起業したのだ。

「当社は、購入意欲の高い相手を特定することで、お客様のデータ不足を解決できるよう支援することに重点を置いています。例えば私たちはセールスチームやマーケティングチームに対して、製品やサービスを購入する可能性が最も高い相手が誰かを、そして今から2カ月または6カ月先ではなく『いま』製品を購入する可能性が最も高い相手が誰であるかを伝えることができるのです」とアンチャラ氏は説明した。

彼らは必ずしも明白ではない兆候をみることでこれを実現しているが、セールスチームに対して、相手企業の重要な情報や相手がすぐにでも購入する可能性があるかどうかを伝える。彼は、どんな企業でも技術的に追跡可能な足跡(フットプリント)を残しているのだと語る。例えばSECへの申告書、年次報告書、求人情報などのデータなどだ。

「現在は、企業が特定の製品を使用することによって、膨大な量の足跡がオンラインに残されていきます。そこで、当社のアルゴリズムは、約1500万社の企業で使われている製品を、私たちが特定できるさまざまなソースから割り出してマッピングしているのです。そのすべてを毎週追跡しています」と彼はいう。

現在、同社は45人の従業員を抱えているが、2021年末までにその数を倍増させる見通しだ。アンチャラ氏は会社を創り上げていく過程で、特に移民の創業者として、多様で包括的な組織を構築したいと考えている。

「現代の企業にとって、重要な成功の1つは、多様性があることだと思っています。私たちはグローバルにチームを抱えていますが、米国とインドのチームのそれぞれを活用したいと考えているのです。次の採用フェーズでは、より多様な候補者、より多くの女性従業員、異なる国籍の人びとを雇用することを検討しています」と彼はいう。

2018年に設立され、2019年にステルス状態から浮上した同社は、合計100社の企業顧客を抱えている。そのほとんどの顧客が、今年、新型コロナウイルスによってセールスプロセスをより効率的にすることを迫られた企業たちなのだ。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Slintel資金調達マーケティング

画像クレジット:Teera Konakan / Getty Images

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(翻訳:sako)

スモールビジネス向け支払およびマーケティングスタートアップFivestarsが約55億円調達

今は、控えめに言ってもスモールビジネスにとって大変な時期だ。Fivestars(ファイブスターズ)のCEO、Victor Ho(ビクター・ホー)氏によると、大手のデジタルプラットフォームの多くはたいして役に立っていない。

ホー氏は、デリバリーサービスやユーザーレビュー、マーケティングツールを提供するといったプラットフォームはすべて同じ基礎モデルがあると主張している。ホー氏は「そうしたプラットフォームはスモールビジネスの顧客ベースを乗っ取り、スモールビジネスの顧客との接触でお金儲けをしようとしている」と述べている。

スモールビジネスの支払とマーケティングをサポートするソフトウェアを開発したFivestarsも表面的には、似たようなものかもしれない。

だがホー氏は、実際には「全く逆」のアプローチをしていると述べている。Fivestarsは「壁に囲われた庭」の中にいる顧客を使って中小企業にアクセス料を請求するわけではないというのがその理由だ。中小企業はその代わりにソフトウェア料を支払い、自分たちの顧客のデータベースを作ることができる。顧客と接触するためにお金を支払う必要はないのだ。

「これで利益が一致する」とホー氏は言う。

画像クレジット:Fivestars

Fivestarsのプラットフォームには独自の支払製品、他社のPOSシステム(販売時点情報管理)との統合、顧客と6000万人におよぶ買い物客の幅広いネットワークにパーソナライズしたメッセージを届けるマーケティングオートメーションが含まれており、Fivestarsのさまざまな事業でクロスプロモーションが展開できる。

Fivestarsは米国時間10月16日、新しい資金5250万ドル(約55億円)を調達したことを発表した。シリーズDエクイティラウンドと借入れを合わせた合計資金調達は1億4550万ドル(約153憶円)になる。ラウンドにはSalt Partners(ソルトパートナーズ)を旗頭に、Lightspeed Venture Partners(ライトスピード・ベンチャー・パートナーズ)、DCM Ventures(DCMベンチャー)、Menlo Ventures(メンロ―ベンチャーズ)、HarbourVest Partners(ハーバーベスト・パートナーズ)が参加している。

Fivestarsは新型コロナのパンデミック前にラウンドをクローズしていたが、チームはその発表を遅らせることにしたとホー氏は語る。顧客の多くが苦境に直面している中で、同社の銀行口座を誇示するのは賢明ではないと判断したためだ。

同社はパンデミックの最中「記録的な利用」を目の当たりにした。毎月100万人の新規買い物客がネットワークに参加していたという。またホー氏は同時に、パンデミックによってFivestarsはその戦略を変更せざるを得なくなったことに気付く。当初資金調達の目的は「既存の製品を通じて加盟店のポートフォリオを拡大する」ことであったが、ホー氏は「この期間で我々にとって必要なことが大きく変わり、支払とネットワークに力を入れることと、中小企業がこれまで以上に必要としているものに重点を置くことが必要になった」と述べている。

またホー氏によると、このパンデミック期間に同社は100万ドル(約1億500万円)以上の価値があるクレジットを顧客に提供し、より多くの自社製品を無料にしたとのことだ。

「スモールビジネスに素晴らしい回復能力があることは明らかです」とホー氏。「体験というカテゴリーにおいては特にそうでしょう。パリに旅行して妻をPizza Hut(ピザハット)に連れて行きますか?チェーン店にはまず行かないでしょう」と続けた。

資金調達の発表の際、フォートローダーデールにあるヘルスフードストア Tropibowls(トロピボウルズ)のNatasha Teague(ナターシャ・ティーグ)氏は、Fivestarsのプラットフォームが「大きな助け」となっていると説明した。

「お客様とコミュニケーションを図り、リアルタイムで最新情報を共有できることは計り知れないほどの価値があります」とティーグ氏。「Fivestarsの膨大なネットワークと支払の技術のおかげで、当店の再開プロセスは円滑に進みました。またパンデミックによる新しいニーズに対応するうえでのライフセーバーになっています」。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:スモールビジネスマーケティング資金調達

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(翻訳:Dragonfly)

Freshworksが顧客関係管理サービスを「再」スタート、機械学習による的確な予測も可能に

顧客と従業員の関係管理(CRM)を行う企業Freshworks(フレッシュワークス)は、コールセンターとカスタマーサポートのためのソフトウェアから人事ツール、マーケティング自動化サービスなど幅広い製品を提供しているが、米国時間10月26日、最新サービスとなる「Freshworks CRM」をスタートさせた。これは同社が新しく立ち上げたFreshworks Neo(フレッシュワークス・ネオ)プラットフォーム上に構築されるサービスで、企業のセールスおよびマーケティング部門に、顧客ビューの理解に必要なあらゆるツールを提供する。また機械学習も少しだけ投入し、的確な予測を行う。

Freshworks CRMは、基本的には同社のFreshsales(フレッシュセールス)サービスに、Freshmarketer(フレッシュマーケータ)マーケティング自動化ツールの機能を追加してリブランディングしたものだ。

「Freshworks CRMは、FreshsalesとFreshmarketerの能力を1つのソリューションに統合し、あらゆる状況に対応した前例のない360度顧客ビューのための内蔵顧客データプラットフォームを強化します」と、同社の広報担当者は私に話した。

同社が約束するのは、この改良型のCRMソリューションが、同社のNeoプラットフォームが提供する統一されたビュー(および集計データ)により、さらに充実した(潜在)顧客ビューを提供できるということだ。

CRMユーザーの大半は、自ら選んだCRMサービスにたちまち幻滅してしまうと同社は主張する。その原因は貧弱なデータだ。そこで差別化が図れるとFreshworksは考えている。

「Freshworks CRMは、CRMの本来の役割に基づき提供されます。つまりAI駆動データ、見識、情報を統合した1つのソリューションです。そうして、事業の目標の前面と中心に顧客を据えます」と同社の最高製品責任者であるPrakash Ramamurthy(プラカシュ・ラママーシー)氏はいう。「私たちは、データのパワーを操り、直接的な価値を生み出すためにFreshwork CRMを作り上げました。使いづらいインターフェイスと不完全なデータのためにセールス担当者の力になれなかった旧来のCRMソリューションに対抗するものです」。

その理念は、各担当部署に、1つのダッシュボードを通じてセールスとマーケティングのデータとAIの支援による見識を提供することで担当者の意志決定能力が高まり、やがてそれが顧客体験の改善、そして売上げ向上につながるというものだ。このサービスでは、さまざまなシグナルに基づきユーザーが必要に応じてカスタマイズできる予測リードスコアリングと絞り込みが提供される他、SlackとTeamsの統合、潜在顧客にリーチできる録音可能な内蔵電話機能など、数々の機能が備わっている。その多くは、すでにFreshsalesにも備えられていたものだ。

「オンライン学習における課題は達成度です。これを高めるには、学生がそのコースを受講する『なぜ』を理解し、そしてそのための『何を』そして『どのように』組み立てればよいかを知ることで、学生の個別の必要性を満たし、個々のゴールを達成できるようにしなければなりません」と、Shaw Academy(ショー・アカデミー)の最高分析責任者Mamnoon Hadi Khan(マムヌーン・ハディ・カーン)氏は話す。「Freshworks CRMによって、Shaw Academyでは全学生のカスタマージャーニーの追跡が可能となり、当校の学生支援の専門家を通じて彼らとよりよい関係を築き、彼らの学習体験をAIによってパーソナライズできるようになりました。つまり、個々の目標に添えるようになったのです」。

Freshworks CRMの利用料は1ユーザーあたり月29ドル(約3000円)。より高度な機能を備えた完璧な企業向けプランでは、1ユーザーあたり月125ドル(約1万3000円)となる。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:FreshsalesCRMマーケティング

画像クレジット:Freshworks

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(翻訳:金井哲夫)