NASAの2台目の浮遊支援ロボットが作業を開始

近頃、国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗しているのは宇宙飛行士だけではない。NASAは今年初めにBumbleと呼ばれる浮遊型のロボットを導入し、今回新たにHoneyと呼ばれる新しい仲間が加わった。どちらも宇宙ステーションの宇宙飛行士のために作業する立方体形状のロボット・チームメイトことAstrobee(アストロビー)の一員で、実験だけでなく日々の活動にも役立つように設計されている。

この2つのロボットはすべての点で似ているが、Honeyは黄色の配色を特徴とし、Bumbleは識別のために青色になっている。Honeyは作業前にテストが必要だが、Bumbleと似ていることから時間はかからないはずだ。BumbleはすでにISSでの日本実験棟である「きぼう」モジュール内部をマッピングしており、Honeyはソフトウェアアップデートを通じてそのデータを受け取っているので、ゼロから作業を始める必要はない。

このペアのロボットは、Queenと呼ばれる第3のロボットが7月にISSに運ばれ、Honeyの後で稼働した後に、トリオのロボット編成となる。宇宙で活躍する自律ロボットの用途はこれだけではないが、これらのロボットは人間の宇宙飛行士と協力し、空間を共有し、無重力環境でも動作するように設計されている。

NASAは最終的に、このようなロボットが宇宙飛行士の仕事をより効率化し支援を提供したり、現在の仕事の一部を管理したりするするだけでなく、無人状態でも宇宙船やISSのメンテナンスを任せられることを期待している。Astrobeeとその後継ロボットは、月周辺やさらに遠方により永続的な人間のプレゼンスを確立するための、鍵となるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのスペースパレット構想は、月面にローバーを安価かつ簡単に着陸させる

月面に永続的な構造物を建造するということは、何度も月面着陸を繰り返すことが必要だということを意味している。そこでNASAの研究者たちは、そうした着陸を、できる限り信頼性高く安価に実現したいと考えている。この「パレット式着陸船」ロボットのコンセプトは、月着陸船と同時に月面に最大300kgまでのローバーや貨物を着陸させるための極めて単純な方法だ。

米国時間11月25日に発表された技術論文で詳述されているように、この着陸船はスペースパレット(荷台)の一種だ。将来のミッションで基本ユニットとして使用できる強力で基本的なフレームワークである。これはまだコンセプト段階であり、実際の名前が付いていないため、とりあえずこの記事の中では「スペースパレット」と呼ぶことにする。

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これは、「コストとスケジュールを最小限に抑え」つつ、ローバーをただ安全に月面に運ぶことだけを目的としたVIPERミッションの関連研究で生み出された、デザイン的進化である。普段なら(少なくとも理屈の上では)コストをパフォーマンスに優先させることは滅多にないのだが、論文の序文にはこう書かれている。

この着陸船のデザインは、従来のようなリスク、質量、および性能のトレードパラメータが、コストよりも低く評価される最小レベルの要件セットに基づいている。言い換えれば、チームは「より良い」または「最高に良い」にこだわって「とりあえず十分」を諦めることはしなかったのだ。

もちろん月着陸船の話をしているときには、「とりあえず十分」という表現を使っても、ぞんざいな仕事を意味しているということはあり得ない。それは単に5%強い引っ張り強度を持つが50倍高価な素材を調達することが、価値あるトレードオフとは判断されなかったといった程度の意味なのだ。まったく同じ理由で私達は通常の貨物パレットに黒檀やニレを使用したりはしない。代わりに、地上でテストされた、いわば堅い松の板に相当する宇宙飛行素材を使っている(チームは内容に少し推定が混ざっていることを認めているが、これは何よりもまず現実的なアプローチであることを強調している)。

このスペースパレットは、Falcon 9ロケットの上に載るDragonなどの商用打上ロケットを使って、宇宙に送り出される。打上ロケットはパレットとその積載物のローバーを、月に向かう軌道へと投入する。数日後、スペースパレットは必要な着陸操作を遂行する。姿勢制御、着陸場所選定、減速、そしてローバーのソーラーパネルを太陽に向けた形でソフトタッチダウンを行うのだ。

着陸したあとは、ローバーは(パレットから降りて)数時間のうちに目的に向かってまっしぐらに進んでいく。着陸船そのものはいくつかの月面写真を撮影し、地球上にいるチームのために周囲の情報を送り出したあと、8時間程後には永久にシャットダウンする。

「そのとおり、残念ながらスペースパレットは月の夜を生き延びる能力は持たされていない」と研究者は指摘する。月面に存在するものはどれも強力な資源となるが、月の数週間におよぶ寒くて空気のない夜を着陸機が乗り切れるような、電力と熱のインフラを提供するには費用がかかる。

それでも、この船には、後から他の人に役立つ可能性のある、控えめで自律動作できる科学実験装置やハードウェアを装備しておくことはできる。おそらくナビゲーション用のパッシブビーコンや、近隣の隕石衝突を検知するための間欠的地震センサーなどだ。

搭載される可能性のある科学機器や、このスペースパレットがコンセプト段階よりも先に進めない場合の代替策について、私はもう少し質問してみた。しかし、仮に先に進めなかったとしても、チームは論文の中で「これらの技術や他の派生技術は、他の着陸船の設計やミッションに拡張可能であることに注意しておくことが重要だ」と書いている。

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(翻訳:sako)

宇宙とトンネルと超音速旅客機と幻覚剤の将来性

11月13日にサンフランシスコで開催されたStrictlyVC(ストリクトリーVC)のイベントにおいて、私たちは、Future Ventures(フューチャー・ベンチャーズ)を設立した投資家であるMaryanna Saenko(マリアンナ・サエンコ)氏とSteve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏とともに登壇した。両名がそろって公の場に登場するのは、2億ドル(約217億円)の資金調達を公表して以来だ。まず手始めに、ジャーベットソン氏が古巣のDFJを去った話題の1件について聞いてみた。彼は「人生は、自分の仕事の転位を強要することがある。それによって私は、長い経歴の中で初めて投資家になった」と答えてくれた。

次に、2人がどのようにして出会い、他の企業よりも制約が少ない状況で、どこでショッピングをしているのかを聞いた。この話は、どちらもジャーベットソン氏が取締役会に加わっているSpaceXから、規模は小さいもののTeslaまで広範に及んだ。また私たちは、Future Venturesと利害関係のあるThe Boring Company(ボーリング・カンパニー)について、企業間(および国家間)のAI競争の深刻な危険性、さらに幻覚剤のアヤワスカ(またはそれに準ずるもの)に投資価値があるかについて語り合った。これらの中には、「見たこともない」とジャーベットソン氏が言う「最大の金儲けの機会」が潜んでいるという。

ここに、詳しい話の内容を紹介しよう。長さの都合で一部編集を加えさせていただいた。

TechCrunch(TC):お二人は投資期間が15年という新しいファンドを設立されましたが、二人の興味が大きく重なっていますね。マリアンナ、あなたはカーネギーメロン大学で学位を取得したロボット工学の専門家で、DFJに入る前はAirbus Ventures(エアバス・ベンチャーズ)に在籍して、後にKhosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)に移りましたね。お二人の得意分野は何ですか?

スティーブ・ジャーベットソン(SJ):「彼女はあらゆるものに長けている」というのが答えですが、私たちがペアを組むことで、より有能になれると思っています。小さなチームの利点は、一人でやるより大きな力を発揮できることです。最初からそれがわかっていたので、ひとりではやりたくないと思っていました。この20年以上の間、一緒に仕事をしてきた人たちは、私に大きな力を与えてくれました。DFJで私が実施した中で最高の投資は、その当時一緒に働いていたジュニア・パートナーに帰するところが大きいのです。一人だったら、あのような素晴らしい仕事はできなかったと思います。

貴重な意見を出してくれる尊敬できる人との弁証法的な対話であったり、意見交換話であったり、討論であったり、「あなたはこれ、私はこれ」と役割分担をするのではなく、「やりとり」が大切なのです。なので私たちは、定期会議だけでなく、常にパートナー会議を開いています。

たしかに、マリアンナはロボット工学と並んで、あらゆる航空宇宙関連分野での豊富な経歴の持ち主です。ちなみに、私が最初に彼女に面接したとき(そもそもジャーベットソン氏が彼女をDFJに雇い入れている)、彼女がすでに、量子コンピューターから人工衛星のためのフェイザーアンテナから(聞き取れなかったが宇宙関連のもの)といった特殊な分野に投資していることに仰天しました。

TC:もちろん、聞いたこともないようなものに投資するのですよね。

マリアンナ・サエンコ(MS):それはかならず意味を持ってきます。

TC:航空宇宙と言えば、お二人ともすでにSpaceXに投資されていますね。DFJもこの会社を支援していました。SpaceXは果たして公開企業になりますか?

SJ:最新の公式Twiterでは、火星への飛行が定期的に行われるようになったら株式公開すると言っていたと思います。

TC:それはいつ?

SJ:そう遠くないかも知れません。おそらく、私たちが行っている15年の投資サイクルの間でしょう。このビジネスは、今と比べてもっとずっと劇的になっているはずです。それは地平線の先の、大勢の興味を引く巨大な嵐のようなものですが、短期的にも、数十億ドル規模の収益が見込めます。利益を生むビジネスなのです。実は彼らは、私が生涯見たこともないような最大の儲けを生むビジネスを立ち上げようとしています。それは、ブローバンド衛星データ・ビジネスです(SpaceXが推進中の衛星インターネット通信を実現させる衛星コンステレーション「スターリンク計画」)。

なので、火星に着陸するまでの間にも、いいことがたくさん起きるのです。それは、あらゆる投資銀行を遠ざける手段でもあります。彼らは「いつ公開する?いつ公開する?」としつこく聞くばかりですから。

TC:SpaceXは17年目になりますが、投資家としてこれまでに利益は得られましたか?

SJ:もちろん。私たちの前の会社では、セカンダリーセールによって10億ドル(約1080億円)を超える利益に与っています。

TC:コンステレーション衛星が非常に明るいために、天文観測に支障が出るという科学者たちの心配をどう考えますか?SpaceXは色を塗ろうとしましたね。またSpaceXだけでなく、例えばAmazon(アマゾン)もコンステレーション衛星を打ち上げようとしています。しかし、あなたたちの会社はミッションドリブンですよね。これらの衛星が空を汚してしまうことは、心配しなくてもよいのでしょうか?

MS:テクノロジーに投資する際に、まず考慮すべきことの中に、今わかっている副作用と今の私たちの頭では想像ができない副作用には何があるかという問題があります。それらを全体像として考えなければなりません。

何よりも重要なのは、おっしゃるとおりSpaceXだけではないことです。今では多くの企業が、地球の低軌道や中軌道に、さらには増加傾向にある静止軌道にも、コンステレーション衛星を打ち上げようとしています。私たちはよくよく考え、科学コミュニティーとともに、こう言わなければなりません。「必要としているものは何なのか?」と。なぜなら、通信量は増加を続けていて、もし米国が打ち上げなければ、ヨーロッパやアジアの国々がやるという現実があります。なので科学コミュニティーは、「テクノロジーを宇宙に持ち込むな」と機械化反対運動的な言論に対して目を覚ます必要があると考えます。彼らは「私たちが共に前進を続ける上で、選択できる指標がこれだけあります」と提言すべきなのです。

私たち自身で、そのスペックを設定できるのが理想です。それを経ることで、明るく光り輝く道を発見し、先へ進むことができるのだと私は基本的に信じています。正直言って、楽しい未来は、低軌道を超えて月面基地の建設が始まるころにいろいろ見えてくるのだろうと私は考えています。そのとき、今日の数多くの問題が解決されるでしょう。

TC:前回のStrictlyVCのイベントでは、私たちは超音速ジェット旅客機の企業Boom(ブーム)を招いて話を聞きました。その分野で競合している企業もいくつかありますね。

MS:ええ、両手に余るほどあります。電動旅客機の企業だけでも、私は、おそらく200社から300社ある中の55社に会いました。その中で、超音速機を扱う企業は少数ですが、それでも数十社あります。

TC:そんなに?超音速旅客機の需要は再び高まっているのですか?

MS:復活組のエンジニアで科学者である私は、80年代に挑戦して断念したときよりも、今の方が理にかなったビジネスモデルに即しているかどうかを見ています。もし、「今回は頭のいいソフトウェアの申し子たちが航空宇宙関連デバイスを作るから、心配はいらない。飛行機の作り方ぐらいすぐにわかる」と言う人がいれば、そう思うようにはいかない理由を、私はいくらでも話せます。

電動飛行機の場合、バッテリーのエネルギー密度と、フライトの使命プロファイルとの比率が採算レベルになるのがいつかといった、答を出さなければならない疑問がたくさんあります。長距離の場合、私たちはSpaceXが2点間カプセルでやろうとしていることに注目できます。そこまでの段階に超音速旅客機がありますが、この領域に近いと思われるビジネスモデルに合致するエンジニアリング上の進路が、まったく見えてきません。なので、銀行がどう出るかは不明です。

SJ:それに、米連邦航空局の規制のサイクルは非常に長いのです。しかし、そうした理由の他に、このセクターに55社からおそらく200社の企業があると知った瞬間から、私たちの方針は大変に単純になりました。小型衛星の打ち上げや電動垂直離着陸航空機も同じですが、それはとても広大な領域です。このスペースに3つ以上の企業があるときは、何が起きているのかを理解できるようになるまでは、どの企業とも会いません。130位の小さな衛星打ち上げ企業に、誰が投資をするでしょうか。私たちなら、その時点で過去にない独創的な企業を探します。

TC:そう言えば、私が知る限り、地下方式の交通システム用トンネルを掘っている新興企業は、The Boring Companyひとつしかありません。そこにもフューチャー・ベンチャーズは投資してますね。それは役員の椅子とセットだったのですか?

SJ:いいえ、私たちは最初のラウンドの投資に加わっています。

TC:それって現実の企業なのですか?トンネルを1マイル掘るのに10億ドルかけていると何かで読みましたが。

SJ:どこを掘るかによります。それは最悪のケースでしょうが、それくらいの費用になることはあり得ます。The Boring Companyはラスベガスの短距離交通機関の工事を受注しましたが、競争入札では、たった1マイルで4億ドルなんてことにもなっていました。「ウソでしょ」って感じ。

SpaceXの航空宇宙全般にわたるパターン、テスラのモーターの問題、そして可能性として現在の建築、フィンテック、農業のことを思うと、長い間大きなイノベーションがなかった業界がいくつもあります。米国でトンネルを掘っている上位4社は、みな1800年代から続く企業です。The Boring Companyが違うのは、連続して掘れるようにディーゼルから電気に切り替え、ソフトウェアとシミュレーションの考え方ですべてを再構築したことで、スピードと経費削減において劇的な変化をもたらした点です。少なくとも2桁は安くなっています。

TC:スティーブ、以前あなたは、投資家人生全体を通じて行った投資のほとんどすべては、競合他社がないことが唯一のチェックポイントだったと話していました。しかし、未来にフォーカスすることを投資テーマとする企業が増えた今、他とは違う企業を探すのが難しくなっていませんか?

SJ:少し難しくなっています。複数のチェック対象があるときはいつも、新規市場の兆候を示すサインとして、それを利用しています。それがひとつのカテゴリーになっているとき、それに関するカンファレンスがあるとき、他のベンチャー企業がそのことを話しているときは、とっくに別の場所に移っているべきだったことを示す十分なサインです。

MS:また単純な事実として、業務用ソフトウェア、消費者向けインターネットなど、その業界がわずかなセクターにフォーカスしているときは、ひとつかふたつのエッジケースの投資を行っている素晴らしいファンドが存在していることがよくあります。それは良いことです。そうしたファンドは私たちも大好きで、一緒に仕事をしたいと思います。しかし、その軌跡が直線的で、基本的な主張が狭小なところでは、ファンドの数はとても少ないのです。

TC:ハイテク企業のCEOたち、ヘッジファンド、ベンチャー投資会社から2億ドルの資金を調達しましたが、他の企業と同じような制約はありますか?

MS:何に関しても特別に細かい制約があるとは思っていませんが、私たちの信念、言葉、品位については、私たち自身が制約を課しています。今回の資金調達に際して私たちが定めた制約のひとつに「人の弱みにつけ込まない」というものがあります。なので、中毒性の物質、ソーシャルメディアのインフルエンサーは扱いません。冷血なハンターにはなれないという理由だけではないのです。それは私たちの意図するところではありませんし、この世界に築きたいものでもないからです。

TC:AIにも興味をお持ちですね。それは何を意味していますか?創薬への投資をお考えで?

SJ:どこから聞いたんですか? ご明察です。

TC:何百という企業がAIを使って薬品の候補を見つけ出そうとしていますが、私が期待しているほど早くは進歩していないし、十分なレベルにも到達していないように思えます。

SJ:現在、それに関連する契約を進めているところです。面白いことに、私たちは10件の投資契約を交わしました。その他に3件が進行中で、2件が条件概要書にサインをした段階にあります。4件は、エッジインテリジェンスの分野です。

MS:私はよく、大変に重要な仕事をさせるために、このロボットをどうしたらこの世界に作り出せるかという観点から考えるのに対して、スティーブは、チップやパワーや処理に注目して、アルゴリズムをどのようにシリコンに埋め込むかという視点から考えます。その中間で、スタックを上下しながら、私たちはとても面白いテーマに辿り着くのです。そうして私たちは、エッジインテリジェンスチップの企業、Mythic(ミシック)の投資を決めたのですが、同時に、こうしたAIを世界に送り出すために、基本的にそれをエッジデバイスに焼き付けるというアイデアは最悪だと感じました。うまく機能しないからです。

問題の本質は、どこか知らない場所のクラウドの中で訓練されたAIをエッジデバイスに詰め込んで、後は知りませんというやり方にあります。しかし、次第に私たちは、リアルタイムで使用することで、それらのAIは継続的に改善されると考えるようになりました。そして、母艦のデータセンターにデータを送り返す方法に気を配るようになりました。私たちは継続的な改善と学習の加速化が可能になることを期待しています。そのスタックの上から下までの数多くの企業が、私たちのポートフォリオに入っています。私はそれに、ものすごく胸を踊らせています。

TC:大局と比較すると、それらすべてが心地よいほど平凡に聞こえます。そこでは企業の小さなグループが、AIを訓練するための豊富なデータを蓄積し、日ごとにパワーを増していく。スティーブが前に話してくれましたが、いつか企業の数が非常に少なくなって、収入の不均衡が増長されると心配していましたね。それが気候変動よりも深刻な社会問題になると。Facebook、Amazon、Googleなどの企業は解体すべきだと思いますか?

SJ:いえ、解体すべきだとは思いません。しかしそれは、企業内に、また企業間に「べき乗則」が作用するテクノロジー業界の避けられない流れです。資本主義と民主主義を保とうとすれば、自己矯正が効かず、事態は悪化の一途を辿ります。最後にこれを話した2015年当時と比較して、状況はずっと悪くなっています。データの一極集中も、その使い方も。

中国のセンスタイムを考えてみてください。現在のところ、地球上のどのアルゴリズムよりも正確に顔認証ができます。そこに、米国のべき乗則と、国家間のべき乗則が働きます。それは、AIと量子コンピューティングがエスカレートする中で生まれた新たなる価値の下落に他なりません。

そのため、テクノロジー業界のすべての人間と、そこへ投資する人間は、それが何を意味するのか、そして私たちが望む未来の起業家の道について、よくよく考える必要があります。ここからそこへ通じる道は、明確ではありません。市場は、ある程度は影響力を持つものの、そのすべてを操れるわけではありません。とても心配なことです。気候変動よりも深刻だと私が言ったのは、今後20年間に人類が存続できるか否かに、それが大きく影響するからです。気候変動は、今から200年後ぐらいには私たちの存続に影響してくるでしょうが、これは今後20年間という喫緊の問題なのです。

TC:巨大企業の分割は解決策にならないということですね。

それは、人間の知性を超えたAIを制御するという考えに近いものがあります。そんなものを、どう制御できると思いますか? 内部で何が行われているのかを想像できますか? つまり、自然独占は業界を支えるあらゆるものが作り上げたものなのに、その自然独占を規制で解体するという考えは、モグラ叩きと同じことなのです。

TC:答えはなんでしょう?身の回りにあるものでは、何に投資して人々に衝撃を与えようとしているのですか?幻覚剤のアヤワスカですか?その市場はありますか?すでにいたるところに存在しますが。

SJ:(驚いて見せて)2つの企業があります。ひとつには今朝、投資金を送金しました。もうひとつは条件概要書にサインしたところです。それらは、あなたの質問に関連しています。

MS:オフィスが盗聴されてないか、調べないとね(笑)。

SJ:たくさんのことが進められています。精神疾患の理療。代替療法など。

MS:最も大規模な世界的流行は、うつ病です。この10年間の米国での思春期の自殺者の増加率は300%です。私たちには、情報も、技能も、テクノロジーも、有資格療法士もいませんが、よく植物の蔓などから採れる医薬品化合物に、うつ病の治療抵抗性に驚くほどの価値を示しながら、中毒性も乱用の危険性もない物質があることを、私たちは知っています。その恩恵が受けられるれらのは、もっぱら社会の中の特別なグループの人たちだけであるため、いかにして心の健康のためにその利用を民主化するかです。

TC:待って、私の推測が当たってたなんて。あなたたちは、アヤワスカのスタートアップに投資するつもりですか?

SJ:惜しいけど、ちょっと違います(笑)。

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(翻訳:金井哲夫)

テスト中に爆発したSpaceXのStarship Mk1は次世代機へのステップになるか

SpaceXのStarshipのプロトタイプMk1は、米国時間11月20日、テキサスでの初期テスト中に爆発をともなう失敗に見舞われた。動画を見れば実際に何が起こったかを確認できるだろう。基本的には極低温テスト中に蓋が吹き飛んだというもの。これは機体が実際の使用環境で遭遇するような極低温に耐えられるかを確認するための標準的なテストだ。SpaceXに限らず、ロケットを製造する場合には、このような初期段階でのテストを地上で、制御された比較的安全な条件で行うのが普通だ。その理由は、まさにこういうことが起こりうるからだ。そうは言っても、これがSpaceXの楽観的なスケジュールを遅らせる可能性があることは否定できない。

計画の次のステップとしては、SpaceXがStarship Mk1から学んだことを糧として、次の世代のプロトタイプ宇宙船、Starship Mk3に進むことだと考えられる。「ちょっと待って、Mk2を飛ばしてない?」と思うかもしれない。そんなことはない。SpaceXは、フロリダの別の施設で今回破壊されたMk1と並行して、すでにMk2を製造中なのだ。

SpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏は、YouTuber(ユーチューバー)のEveryday Astronaut(エブリデイ・アストロノート)氏が、Starshipのテストの次のステップに関してTwitterで質問したのに対し、SpaceXはMk3に向けて前進する、Mk1の価値は主に「製造上の先駆者」となることだったとし、「実際に飛ばす機体の設計はまったく異なる」とすぐに答えている

これはこれまでとは異なった見解であり、今まで議論されてきたStarshipの開発に関する話とは違っている。これまでの話では、Startship Mk1と同Mk2は、高高度テスト飛行用の機体として設計されたものであり、先の尖っていないスケールダウンされたデモ機「Starhopper」(スターホッパー)の成功に続くべきものだった。Starhopperは、1基のRaptor(ラプター)エンジンを搭載したもので、SpaceXのテキサスのサイトで、何回か低高度の上昇と着地を繰り返した。

ただし宇宙開発事業は、特に打ち上げについてはスケジュールが流動的なものになりがちだ。またSpaceXは、その野心的な目標のほとんどについて非常に楽観的なスケジュールを設定している。それについては、マスク氏と、SpaceXの社長兼COOであるGwynne Shotwell(グウィン・ショットウェル)氏が公言してはばからない。それでも同社は、来年早々にもStarshipのプロトタイプによって軌道飛行を実現することを目指していると述べていた。この不都合なテスト結果が、そのスケジュールに影響するかどうかは、これからじっくりと見定める必要があるだろう。

SpaceXは、本日のテストに関して次のような声明を発表した。

今日のテストの目的は、システムを最大限に加圧することだったため、このような結果をまったく予期していなかったわけではありません。負傷者はいませんでした。また、これは深刻な後退につながるものでもありません。

イーロン(Elon)がツイートした通り、Mk1は製造のための貴重な先駆者として機能しましたが、実際に飛ばす機体の設計はまったく異なるものになります。同じ設計のテスト機は飛ばさないという決定はすでになされており、チームはすでに軌道周回用に設計したMk3の製造に集中しています。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

微小重力環境でバイオテックの基盤を作る新種の宇宙企業Luna

トロントに拠点を置くスタートアップであるLuna Design and Innovation(ルナ・デザイン・アンド・イノベーション)は、経済状況が変化し続けるこの巨大産業に次々に生まれては優位に立とうとする宇宙スタートアップを代表する企業と言える。CEOを務めるAndrea Yip(アンドリア・イエップ)氏が創設したLunaは、商用化された宇宙での新しい機会(それは何かまだ誰にもわからないが)から多くを得る立場にあるバイオテクノロジー企業の挑戦に火をつけようと目論んでいる。

「私はこれまで、医療業界の公開企業と非公開企業で、製品やサービスのデザインと改革に専念してきました」とイエップ氏はインタビューの中で私に話してくれた。「私は数年間、製薬会社で働いていましたが、製薬と宇宙とデザインが交わるところで仕事ができる道を本気で探そうと、2017年末に製薬業界を離れました。人類の医療の未来は宇宙にあると信じたからです」。

イエップ氏はその信念を現実のものにしようと、今年の初めにLunaを設立した。宇宙にしかない研究環境を利用可能にして、バイオテクノロジー分野にチャンスを与えることが狙いだ。

「私たちは、宇宙を研究プラットフォームだととらえ、その宇宙プラットフォームが、地球での医療上の問題の解決に寄与すると信じています」とイエップ氏は説明する。「なので私にとって、バイオテクノロジー分野と製薬分野に宇宙への道を拓き、そこを研究開発と画期的な発見のための研究プラットフォームとして使えるようにすることが、きわめて重要なのです」。

国際宇宙ステーションでは、製薬とバイオテクノロジーの実験を数多く受け入れてきた

NASAの宇宙活動は、乳房生検に使われるデジタルイメージング技術、子宮内の胎児の成長をモニターするトランスミッター、脳腫瘍手術のためのLEDなど、数多くのものを生み出すきっかけを与えた。また宇宙での医薬品の研究開発は、ずっと以前からMerck(メルク)やP&G(プロクター・アンド・ギャンブル)といった大手製薬会社が手を染めており、国際宇宙ステーション(ISS)で実験が行われてきた。今ではSpaceFarma(スペースファーマ)などの企業がミニ研究室をISSに設置して、クライアントの実験を代行している。しかし、利用されていない機会がまだまだ多い業界であり、イエップ氏によれば、可能性が山ほどあるという。

「残念ながらそこは、今のところ、ほとんど利用されていない研究プラットフォームだと思っています」と彼女は言う。「一部の物理学的現象と生命科学的現象は、宇宙、つまり私たちが微小重力ベースの環境呼ぶ場所では、異なる振る舞いを見せます」。

【略】

「例えばがん細胞は、微小重力下に短期間いた場合と長期間いた場合とでは、転移の仕方が変わることがわかっています。そのため、そうした種類の見識を得られるだけでも、またなぜに挑戦して理解するだけでも、たくさんの新発見が解き放たれ、がんの実際のメカニズムを理解できるようになります」。

【略】

そしてそうした見識を得ることが、新薬のよりよいデザイン、地上でのよりよい治療機会に、実際につながってゆくのです」。

Blue Originのロケット「New Shepard」 写真提供:Blue Origin

微小重力環境でのバイオテクノロジーの研究は、一部ではすでに行われているものの、「このイノベーションにおいては、私たちが最初の結論です」とイエップ氏。さらに、今後10年程度の間に旧態依然とした既存の大手製薬会社を破壊するのは、宇宙での研究開発にいち早く積極的に投資を行なった企業だと考えを述べた。

Lunaの役割は、宇宙での研究のための効果的な投資となる、最良のアプローチとバイオテクノロジー企業を引き合わせることだ。その目的のために早期に実現した成果として、Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の商用宇宙ロケットを打ち上げる企業、Blue Origin(ブルー・オリジン)との間でチャンネルパートナーという役割を獲得したことがある。この契約は、LunaがBlue OriginのNew Shepard(ニュー・シェパード)ロケットのセールスパートナーになることを意味し、Amazonの創設者であるベゾス氏のこのロケット企業のために、低軌道での宇宙実験をどうしたら実施できるか、またなぜそれが必要なのかを潜在顧客と考えてゆくことになる。

それは短期的な展望であり、この地球上にもっとも強いインパクトを与える方法を模索するためのものだ。しかし、もっと先の未来が握っているバイオテクノロジーの可能性は、現在の宇宙産業の針路を考えることで開花し始める。それは、NASAの次なるステップや、スペースXなどの民間企業による他の惑星の有人探査などだ。

「私たちは、2024年の月再着陸についても話し合っています」とイエップ氏は、NASAのアルテミス計画を示唆しつつ語った。「今後数年で火星に行くことを、私たちは考えています。そこには、私たちのために発見しなければならないものが大量にあります。そしてそれは、巨大なチャンスでもあります。他の惑星で何が発見できるのか、本当にそこへ人を送り込むのかは、まだ誰にもわかりません。なので私たちは、そのための準備と、必要な能力の構築に着手するのです」

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(翻訳:金井哲夫)

NASAが月への荷物運搬業務の入札企業リストにSpace XやBlue Originを追加

NASAはCommercial Lunar Payload Services (商業月ペイロードサービス、CLPS)プログラムの契約の入札に参加できる企業のリストに新たに5社を追加した。リストには以前の選定プロセスで選ばれた9社がすでに掲載されていて、ここに今回SpaceX、Blue Origin、Ceres Robotics、Sierra Nevada Corporation 、Tyvak Nano-Satellite Systemsを加えた。これら企業はすべて、月面へペイロードを運ぶNASAの案件に応札できる。

これは基本的に、Astrobotic Technology、Deep Space Systems、Draper Laboratory、Firefly Aerospace、Intuitive Machines、Lockheed Martin Space、Masten Space Systems、Moon Express、OrbitBeyondに加わった5社がNASAのミッションで月着陸船を建造して飛ばせることを意味する。NASAとの契約を受注するためにリストにある企業は競うことになる。契約には、NASAのアルテミス計画を支援するためのリソースや物資の月への運搬が含まれる。アルテミス計画では2024年までに人間を月に送ることを主要目標に掲げている。

「ローバーやパワーソース、そしてNASAが月で水を探すのに使うVIPER (Volatiles Investigating Polar Exploration Rover)のような化学実験のためのもの」を含む重いペイロードの運搬を行える企業が選ばれている。こうした機材は宇宙飛行士が月面で暮らしたり働いたりしながら月面に永久的に存在できる環境を確立したり、月居住を現実のものにする主要研究のために使用される。

Blue OriginのBlue Moonランダーのコンセプト

NASAは、コストを抑制し、また計画をスピーディーに実行に移すために自前で行うのではなく、企業と契約することを選んだ。そしてこうした企業がトータルコストを下げるためにNASAの機材と共に商業ペイロードを同時に運搬することを期待している。企業は2028年11月までの契約総額が26億ドル(約2800億円)となるこの案件に入札し、NASAはコストやテクニカル面での実行能力、いつ実現できるかといった点に基づいて1社を選ぶ。

Blue Originの創業者であるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は今年の国際宇宙会議で、エンド・ツー・エンドの着陸システムのためにDraperやLockheed Martin(ロッキード・マーティン)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)と提携する、と発表している。一方のSpaceXは、アルテミス計画の2024年月着陸をサポートするため、次の宇宙船Starshipを早ければ2022年にも月に着陸させる目標を掲げている。

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(翻訳:Mizoguchi)

初の宇宙旅行会社Virgin Galacticが最初の乗客に対し宇宙飛行士準備事業を開始

Virgin Galactic(バージンギャラクティック)が、同社の「宇宙飛行士準備事業」(Astronaut Readiness Program)を開始した。それは最初、Under Armour(アンダーアーマー)のグローバル本社で行われる。Under ArmourはVirgin Galacticのパートナーとして、同社の宇宙飛行士が着る公式の宇宙制服を作っている。初めてお金を払って宇宙を旅する旅人たちは、同社の最初の地球外への旅でその宇宙服を着る。

宇宙飛行士準備事業は、Virgin Galacticの旅客が同社の軌道外宇宙船VSS Unityに乗って旅する前に必ず受けなければならない準備的課程だ。そこではVirgin Galacticのチームメンバーによるガイダンスと教育が行われる。先生はチーフ宇宙飛行士インストラクターであるBeth Moses(ベス・モーゼス)氏やチーフパイロットのDave Mackay(デイブ・マッケイ)氏らだ。この二人は、Virginが2月に行ったデモ飛行で宇宙へ行ったから、彼らの相当な量の経験と専門知識だけでなく、同社の有料宇宙観光客が乗るのと同じ実機に乗った経験に基づく知見もシェアできる。とくにモーゼス氏は、宇宙船の正しい乗り方も教えるだろう。

Under Armourは、旅客が着る宇宙服以外でも協力する。まず、宇宙飛行士は準備段階でどんな栄養を摂り、どんなフィットネスやって宇宙の旅とアドベンチャーに備えるべきか。これらに関しては、Virgin Galacticの専属医療チームも旅客に個別にコンサルする。Virginの顧客はNASAの宇宙飛行士のような厳しい肉体的フィットネスを強いられることはないが、でも同社によると旅路における旅客の健康と元気を確保することにはフォーカスする。

Virgin Galacticの初期の顧客は、ボルチモアで行われるこのような訓練プログラムに参加するだけでなく、今後同社がこのプロセスの開発と磨き上げを行なっていくための貴重なデータも提供する。

Virgin Galacticのプレスリリースはこう言っている: 「今週のボルチモアからのフィードバックを利用して、そのモデルをベースに構築していきたい。これまでも弊社は、宇宙飛行を待っている者と経験者の両方にとって、教育訓練とコミュニティのベストの形を共に議論してきた」。

同社のこのSpaceShipTwoには、すでに600名の顧客の搭乗申し込みがある。そのカーゴジェットをカスタマイズした軌道外宇宙機は、1人25万ドル(約2700万円)のチケットで90分の飛行を行う。有料顧客のためのその最初の飛行は、来年の前半を予定している。

画像クレジット: Virgin Galactic

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXが有人宇宙船Crew Dragon打ち上げシステムの噴射テストを完了

SpaceXは、有人宇宙船カプセルCrew Dragonの打ち上げ脱出システムのスタティックファイアリングテスト(射点に固定したロケットを噴射する)を行ったと発表した。これは、同社にとって必須のテストであり、去る4月のテストでは爆発を起こして宇宙船が破壊されたことから特に注目を集めていた。調査の結果SpaceXとNASAは、試験失敗の原因を突き止め修正し、今日のエンジン噴射につながった。

今日のテストは前回よりずっとスムーズに進行したようで、計画された時間一杯テストは続き、現在同社の技術者とNASAチームはテストの結果と得られたデータを検討しているとSpaceXは語った。成功と認められるために必要な基準をテスト結果が満たしていれば、有人飛行システムの機内テストに移ることができる。Crew DragonがNASAの宇宙飛行士を乗せて飛び立つために必要な次のステップだ。

緊急脱出テストは、実際の有人ミッションの緊急時にSuperDracoの脱出システムがどのような振る舞うかを調べる重要なステップで、実際には誰も乗っていない。NASAは商業パートナーに対して、安全確保のため緊急時に有人カプセルを宇宙船から安全な距離まですばやく移動できることを示すよう要求している。イーロン・マスク氏は、予定通り進めば早ければ12月中旬に緊急脱出テストを行いたいと語った。

重要なテストがすべて計画通り進めば、来年の前半には最初の有人飛行ミッションを遂行できるとNASAとSpaceXは楽観視している。同じく商業有人飛行を請け負っているボーイングも同社のStarliner有人カプセルプログラムを同じようなスケジュールで進めている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ロケット・ラボの新しいRosie the Robotは、ロケット製造を大幅にスピードアップさせる

宇宙開発スタートアップのRocket Lab(ロケット・ラボ)は、フレキシブルなロケット打ち上げ能力の構築を目的としており、創設者兼CEOPeter Beck(ピーター・ベック)氏は、その目標にむけた最新の進歩を披露している。部屋サイズの製造ロボットこと、Rosieだ。

Rosieは、Rocket LabElectronロケットの炭素複合材部品の加工を任されている。これはロケットの飛行準備を整えることに関係しており、Beck氏によると通常は「何百時間もかかる」プロセスだ。では、Roseiではどれくらいかかるのだろうか。

12時間あたり1機のロケットを製造できる」と、Beck氏は動画で語っている。その中には「あらゆる印をつけたり、機械加工をしたり、ドリル加工したり」といった作業が含まれている。

 

 

この重要な新しいオートメーションツールは、高度にカスタマイズされたハンドメイドのものを、反復可能で迅速な製造工程に変える。これは、小型衛星を運用する顧客に高い頻度での打ち上げを提供するという、Rocket Labの目標を達成するために必要な要素だ。同社のニュージーランドの発射施設は最近FAA(連邦通信委員会)のライセンスを取得したが、72時間おきにロケットを発射することが認められたため、その野望の展開の助けになる。

Rosieのような革新的な技術にくわえて、Rocket Rabはロケットエンジンの部品に3Dプリント技術を使用しているため、従来の製造方法では数週間かかっていた部品生産が1日で完了する。同社は現在、ロケット回収のための野心的な計画にも取り組んでおり、ミッションごとに新規のロケットを製造する必要がなくなるため、高頻度での打ち上げ能力の提供に役立つはずだ。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが来年計画している有人の商用宇宙飛行をiOSとWebのアプリで疑似体験できる

商用の有人宇宙飛行を目指しているNASAが、モバイルアプリとWebアプリケーションでその簡単なシミュレーションを提供している。来年行われるその商用飛行にはSpaceX Crew DragonとBoeing Starlinerが使われるが、シミュレーションはその両方を疑似体験できる。

アプリはその飛行の各過程を順に追っていく。それは宇宙船の選択に始まり、ミッションのタイプを決め、乗員を選び、打ち上げ、ドッキングと進む。それぞれの部分に関するある種の教育が目的で、あらゆる細部がリアルなフライトシュミレーターではない。しかし国際宇宙ステーションへのドッキングは自動と手動の両モードがあり、手動はかなり難しくておもしろい。

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Crew DragonとStarlinerの両方とも、そして打ち上げ用ロケットに関しても、とても詳しい情報がある。あなたがその中から乗員を選ぶ10名の実在する宇宙飛行士については、人物像と履歴の情報がある。アプリをiPhoneで試したが、打ち上げ準備の部分にちょっとバグらしきものがある以外はとくに問題ない。その部分では、ブースターや乗員用カプセルなど、宇宙船の打ち上げの各要素が詳しく分かる。

この「Rocket Science: Ride 2 Station」と名付けられたアプリは無料でダウンロードでき、現在はiOS用がある。Webアプリケーションはここだ

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Techstarsが米国、オランダ、ノルウェーの軍や国防省と共同で商業宇宙産業向けアクセラレーターをローンチ

Techstarsは、宇宙開発に特化したStarburstプログラムの第一段階に続いて、米空軍、オランダ国防省、ノルウェー国防省、ノルウェー宇宙センターと共同で、新しいバーチャルアクセラレータープログラムを実施している。これはTechstars Allied Space Acceleratorと呼ばれ、商業宇宙産業におけるスタートアップ支援に特化している。

他のTechstarsのプログラムと違って、このプログラムでは企業は13週間のプログラム期間中に、物理的なハブを中心にする必要がない。ほとんどが遠隔地で実施され、プログラムの政府機関のスポンサーを1週間に3回訪問し、バーチャルな指導とガイダンスで補われる。

Techstarsはすでに、Techstars Air Force Acceleratorを通じて米空軍と協力した経験があり、この新しいプログラムによって起業組織や、国際的なパートナーと協力する機会を得ることができる。このような産業界との協力は、商業宇宙産業が国境や国際協力に対してどのように活動するかという点に関して、より明確で広く受け入れられたルールを確立するのに役立つだろう。

この最初のプログラムは2020年6月から9月まで実施され、米国時間11月13日から申し込みが始まり、新規申し込みの締め切りは2020年3月3日までとなっている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

毒針を持つアカエイにヒントを得た航空機が金星の大気を調べる

NASAの次の金星探査では、バッファロー大学(University of Buffalo、UB)が設計した、アカエイのように後尾に針のあるロボットが大気のサンプリングを行う。宇宙観測のための新しい革新的な設計コンセプトを追究しているNASAはその活動の一環として、ニューヨーク州立大学バッファロー校で航空宇宙機器の衝撃耐性を調べている研究所CRASH Lab(Crashworthinesss for Aerospace Structures and Hybrids laboratory)に、初期的な研究助成金を交付した。

そのアカエイの形をした宇宙船には、金星の上空の大気中の強風の中を飛べるための羽ばたく「翼」がある。UBによると、それによって飛行のコントロールが可能になり、効率的に飛行できる。その設計はBREEZEと呼ばれ、4日〜6日で金星を1周でき、2〜3日おきにその惑星の日照面にあるときには充電できる。

なお、金星は太陽のまわりを回る軌道が独特なため、その1日は地球の1年よりも長い。そこで探査用宇宙船は、他の自転周期の短い惑星の場合のように、推力を使って惑星の大気中に静止する設計にする必要がない(Wikipediaによると、金星の公転周期は224.7地球日、自転周期は243地球日)。

BREEZEが実際に金星の雲の中に出没するまでには、まだ長い時間がかかる。しかし、NASAから認められて補助金ももらったのだから大きな一歩前進だろう。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

SpaceXがFalcon 9ブースターの4回目の回収、フェアリングも再飛行と回収に成功

 SpaceXのStarlinkのミニ通信衛星衛星の大量打ち上げは計画どおり、60基を軌道に乗せることに成功した。今朝Falcon 9によって打ち上げられた60基は今年5月に打ち上げられた60基に続くものだ。前回までの打ち上げがテストだったのに対して、今回からは宇宙インターネット網を構成するStarlink衛星群の第一陣だ。

打ち上げは米国フロリダ州ケープカナベラルで実施され、Falcon 9の第1段ブースターは単なる「再」利用どころか、すでに3回打ち上げに用いられており、今回無事に地上回収に成功したことで4回目の宇宙飛行となった。これはSpaceX自身にとっても再利用回数の新記録だ。ブースターロケットについてSpaceXでは「最大10回の宇宙飛行に耐えるよう設計されている」と述べている。

今回SpaceXはペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングの回収にも成功した。これは大西洋を航行する回収専用船「Of Course I Still Love You」の船上に張り渡されたネットによってキャッチされた。SpaceXがファエリングの再飛行、再回収を試みたのはこれが最初だ(もちろん他の宇宙企業も試みていない)。前回のフェアリング回収は大型のFalcon Heavyによって中東上空をカバーする Arabsat-6Aを打ち上げた4月のミッションで実施された。 SaceXのCEOであるイーロン・マスク氏によれば、フェアリングの回収は1回ごと600万ドル(約6億5400億円)の節約となるという。

SpaceXでは当初からフェアリングの回収を図っていたが、最初の打ち上げでは海の状況やその他の理由で成功しなかった。

SpaceXは最終的に1万2000基程度の衛星によってStarlinkを構成する計画だ。この衛星コンステレーションは地球上のあらゆる場所でインターネットへのアクセスを可能にする。衛星群は軌道上を周回しながら次々に中継機能を別の衛星にスイッチしていく。これは地球の自転に同期する少数の大型静止衛星によって通信を行うのとはまったく異なるアプローチだ。赤道上空に静止する衛星によるカバー範囲は衛星の経度によって限定されるほか、高緯度地方では接続が困難になる。

今年、イーロン・マスク氏はStalinkを利用した最初のツイートを行っている。SpaceXでは今後6回の打ち上げによって米国とカナダのユーザーがStarlinkを利用できるにようにする計画だ。その後24回の打ち上げでサービスは全世界に拡大される。

【Japan編集部追記】打ち上げ、回収のライブビデオを含む記事はこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceX Falcon 9の打ち上げライブビデオ、ブースターは4度目の宇宙飛行へ

米国時間11月11日の朝、SpaceXは米国フロリダ州ケープカナベラル宇宙基地からビッグな打ち上げを行う。 Falcon 9にはイーロン・マスク氏が推進する衛星通信網であるStarlinkを構成するミニ衛星60基が搭載されている。

今回のStarlink衛星は実験ではなく、実用衛星の第1陣だ。SpaceXではこの通信網を広く一般ユーザーに開放し、世界のどこにいても高速インターネット接続が得られるようにする計画だ。

SpaceXは過去に2回の打ち上げで合計62基のStarlink衛星を軌道に乗せている。2018年にカリフォルニアのバンデンハーグ空軍基地からスペイン政府の地球観測衛星のPazを打ち上げる際に、Starlink衛星も2基搭載した。その後、今年5月には地上の通信システムのテストのために60基を打ち上げた。このときは衛星を操縦して意図のとおりに大気圏に再突入させて廃棄する実験も目的だった。60基のうち57基は現在も軌道を周回中だ。

今回さらに60基を打ち上げるミッションでは通信能力の拡大を実証すると同時に、Starlink衛星のdemisability、つまり衛星の運用寿命が尽きたときにロケットを燃焼させて大気圏に再突入させ、軌道上に宇宙ゴミとなって残らないようにする能力が100%作動することを確認するのも大きな目的だ。Starlinkのように大量のミニ衛星で地球をカバーする通信システムの場合、この能力は実用化に向けての必須の機能だ。【略】

Starlink網建設の重要な第一歩となるペイロードに加えて、Fakcon 9自身もも重要なミッションが貸せられている。SpaceXではFalcon 9の1段目となるブースターの再利用に力を入れているが、今回利用されるブースターはすでに過去3回飛行している。さらにペイロードを大気との摩擦から保護するフェアリングは今年のFalcon HeavyのArabsat-6A打ち上げの際に用いられている。SpaceXではブースターを地上回収すると同時に、大西洋上の専用船によってファエリングの回収も図る。発射と回収の模様は上のライブ中継で見ることができる。

【Japan編集部追記】このビデオは録画となっており、打ち上げシーンは19時57分でエンジンスタート、21時18分でマックスQ(最大空気抵抗)、22時42分でブースター切り離し。ブースターのグリッドフィン展開、ペイロードのフェアリング切り離しなどが続く。28時24分でブースター着陸、4度目の飛行成功。再利用に関しては別記事に解説がある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

イーロン・マスクが火星での都市建設は20年かかるとの見方を語る

SpaceXのCEOであるElon Musk(イーロン・マスク)氏が、火星到達、そして都市として機能して人口を有することができる持続可能な基地の建設について、タイムラインや必要とするロケットなど詳細を語った。結局のところ、それはマスク氏と彼の宇宙開発会社にとって、人間を複数の惑星にまたがって存続できる生き物にしようとする長期的なビジョンだ。ツイッターでファンに返信する形で11月7日にマスク氏が投稿したタイムラインは、見方によってはかなり素晴らしく、あるいは野心的なものだ。

先週初めに米国カリフォルニアで開催された米空軍のピッチデーイベントで、マスク氏はコメントに対する質問に答えるかたちで「Starshipの定期打ち上げ1回あたりのコストをわずか200万ドル(約2億2000万円)ほどにするのは必然であり、最終目標は『火星における単独で持続可能な都市』を建設することだ」と述べた。マスク氏の予測によると、その都市を現実のものとするにはSpaceXはStarshipを1000基ほど建造して飛ばす必要がある。都市建設のためには貨物やインフラ、人を20年ほどかけて火星に運ぶことになる。地球と火星の距離を考えたとき、火星へのフライトは2年かかるというのが現実的だからだ。

マスク氏はまたStarshipについて、地球軌道での移動でどれくらいのペイロードに対応できるかなどの見通しについても言及した。Starshipのデザインはできる限り再利用できるようになっている。実際、マスク氏は1日あたり3回打ち上げられるのが理想だと述べている。これに基づくとStarship1基あたり年間1000回超のフライトとなる。つまり、すでに建造した最大100トンの物資を運ぶ能力があるFalconロケットと同じだけ(約100基)のStarshipを持てば、年間ベースでSpaceXは1000万トンを軌道に打ち上げられることになる。

そうした観点から「もし現在使用されているすべての貨物搭載可能なロケットを頭数に数えたらペイロードキャパシティの総計は年間500トンとなる」とマスク氏は指摘する。その半分を占めるSpaceXのFalconロケットシリーズを含めての話だ。

これはかなりのペイロードだ。実際のところ、これはおそらく当面の需要を超えるものだ。しかし「より混雑する宇宙や貨物輸送のための地上施設、月での燃料給油、火星行きのロケットが宇宙への旅ができる状態にある」という将来をマスク氏が心に描いているのも確かだろう。

もちろん、永住できる持続可能な都市を火星に建設するには、まずは有人飛行を成功させなければならない。それからもう1つ経なければならないステップがある。宇宙飛行士の月面着陸だ。NASAは2024年にそれを達成する目標を立てている。そしてSpaceXは早くて2022年に着陸に備えてStarshipを月に送りたい、と述べている。過去にマスク氏は有人火星ミッションを2024年にも実施したいと語っていたが、それは今日の状況から見ると願望ということになりそうだ(マスク氏のタイムラインのほとんどがそうだ)。

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(翻訳:Mizoguchi)

北極圏での100Mbps衛星ブロードバンド接続に世界初成功

小型衛星のスタートアップであるKeplerは、これまで衛星によるブロードバンド接続としては誰も成し得なかったことに成功した。北極圏での高帯域幅接続だ。Keplerのナノ衛星は、ドイツの砕氷船に対して100Mbps超のネットワーク接続速度を達成するデモに成功した。この砕氷船は、MOSAiCの研究遠征の移動研究室として機能している。

画像クレジット:Stephan Hendricks

Keplerによれば、北極圏中央部の地上で高帯域幅の衛星ネットワークが利用できるようになったのは今回が初めてだという。また今回の接続は、単なる技術的なデモではなく、実際にMOSAiCチームの研究者が利用している。同チームには、数百人のメンバーがいて、船と陸地にある基地との間でデータをやり取りしている。この高速接続によって、チームが収集する大量のデータの処理に関して、あらゆる面が改善される。

バルクデータ転送は、北極や南極における科学探査にとって長年の課題だった。そうした場所では、地上波による高帯域ネットワークを利用するのは現実的ではなく、従来の衛星ベースのネットワークでは極地に対して、そのような速度での接続を実現することができなかった。Keplerは、極軌道上にある2機の低高度地球周回衛星を使って極地に対して独自のサービスを提供している。つまり、気候変動の影響について現場で研究する科学者にとってうってつけのサービスというわけだ。そうした研究は、気候変動の影響が最も深刻に、かつ早期に現れやすい極地において、多くの専門分野にまたがるチームによって実施されている。

砕氷船ともなっている調査船上で、Keplerは下りは38Mbps、上りは120Mbpsのリンクを実現した。これは偶然にもGoogleが最高品質のStadiaゲームストリーミング用として推奨している最大スペックを上回っている。ただし、これは科学のためのものであってゲーム用ではない。お間違えのないように。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

英宇宙局がVirgin Orbitの小型衛星打ち上げ施設に約10億円助成

Richard Branson(リチャード・ブランソン)氏の小型衛星打ち上げ会社であるVirgin Orbitは11月6日、英宇宙局(UKSA)から助成金735万ポンド(約10億円)の最終承認を得たと発表した。この助成金は、Virgin Orbitが英国南西部のコーンウォールに置く打ち上げ施設の建設に使われる。Virgin OrbitはSpaceport Cornwallという名称のコーンウォール空港ニューキーの一部になることが予定されている新たな打ち上げサイト建設について、助成金と建設の承認を待っていた。

このサイトはVirgin Orbitにとって英国での打ち上げ拠点となる。英国での打ち上げ、そして英国企業が建設から打ち上げまですべてを英国内で行うことを可能にする。Virgin Orbitはまた、移動式の「地上オペレーティグシステム」の開発にも取り組んでいる。これは本質的に、ロケットLauncherOneのミッションをサポートする地上職員を置くことができる牽引トレーラーだ。ロケットLauncherOneは小型ペイロードの高高度打ち上げを行う。

Virgin Orbitは、億万長者のブランソン氏が創設したVirginブランド宇宙開発企業2社の1つだ。もう1つのVirgin Galacticは投資会社Social Capital Hedosophiaとの合併を通じて公開企業となった。Virgin OrbitもVirgin Galacticも、高高度打ち上げプラットフォームとして中古の改造した航空機を利用する。高高度で打ち上げられたロケットはその後宇宙に到達する。Virgin Orbitの打ち上げシステムは小型衛星を軌道に乗せるためのもので、一方でVirgin Galacticの母船は、客が乗り込んだロケットを大気圏の端まで連れて行くようにデザインされている。

Orbitの商業展開は売上と儲けに直結する。というのも、SpaceXRocket Labを含む同業他社がオンデマンドで打ち上げる事業を構築していて、打ち上げの大半を小型衛星が占めるからだ。Spaceport Cornwallの建設が順調に進めば、Virgin Orbitは早ければ2021年に打ち上げる。

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(翻訳:Mizoguchi)

SpaceXの再使用可能ロケットは1回あたり約2億2000万円で打ち上げられる

SpaceX(スペースX)の目標は、真に再使用可能なロケットの打ち上げを実現することで、それには妥当な理由がある。それは、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が飛行機が乗客を移動させるのに例えて説明したように、使い捨てではない再使用ロケットによるコストの削減だ。彼らはその目標に向けて多くの進歩を遂げ、今ではFalcon 9ロケットの一部とDragon補給船が頻繁に再飛行しているが、宇宙船のStarshipはさらに再使用化が進むはずだ。

マスク氏は今週にロサンゼルスで開催された米空軍の年次ピッチデーにサプライズゲストとして登場し、SpaceXやその顧客がどれだけコストを節約できるかのアイデアを披露した。Space.comによると、同氏はイベントで米空軍中将のJohn Thompson(ジョン・トンプソン)氏と会話し、Starshipの打ち上げの燃料費は約90万ドル(約9800万円)、そして運用コストを考慮すれば1回の打ち上げ費用は約200万ドル(約2億2000万円)になるだろうと語った。「これは小型ロケットよりもはるかに安い」と同氏は付け加え、このシステムが「必然だ」と説明した。

Starshipは大容量のペイロードを輸送するためにゼロから設計されており、現在開発中のSuper Heavyブースターや軌道上での燃料補給と組み合わせることで、大量の物資や衛星を月の軌道、あるいは火星まで輸送する能力も備えている。Starshipは最終的にはSpaceXのすべてのロケットに取って代わることを期待されており、一度完成して飛行すれば、最終的にはFalcon 9やFalcon Heavyよりもはるかにコスト効率のいい運用ができるはずだ。

現在SpaceXはプロトタイプ機のStarship Mk1と同Mk2による、大気圏内での高高度制御による飛行と着陸を準備している。同社はまた、わずか6カ月以内に軌道試験が実施できると楽観的に考えている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

Rocket LabのNZロケット発射施設のバーチャルツアー動画

Rocket Lab(ロケット・ラボ)はロケットを打ち上げる非常に小さなスタートアップで、実際にペイロードを宇宙に輸送しており、すべてのロケットはニュージーランドの東海岸に位置する景色の良い半島から打ち上げられている。その理由は、高頻度の打ち上げに理想的な位置であることから、エレクトロンロケットによる打ち上げを拡大するのに役立つからだ。また別の利点として、実に素晴らしい景色が楽しめる。

今回のLC-1ツアーでは、カリフォルニア州ハンティントンビーチからオークランドまでで製造されるパーツが組み立てられる、Rocket Labの最終組み立て場を見学できる。燃料充填と打ち上げのためにロケットがどのように設置されリフトされるのか、あるいはRockst Labのロケット打ち上げの際に発生する、信じられないほどの大音量のノイズの一部をどのように軽減するのかについてのヒントがある。

最後に、Rocket Labが現在バージニア州ワロップス島に建設中の2番目のLC-2発射施設の簡単な紹介がある。これは同社初の米国の射場で同国の顧客向けに利用され、来年初旬に初打ち上げが実施される予定だ。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

ボーイングのStarliner宇宙船の発射台緊急脱出テストが成功

NASAの商業乗員輸送計画のパートナーであるBoeing(ボーイング)は、CST-100 Starlinerに実際に宇宙飛行士を搭乗させるための、重要なマイルストーンを達成した。発射台からの緊急脱出装置のテストは、宇宙飛行士をStarlinerに搭乗させる前に設置しておく必要がある、NASAが要求する重要な安全システムだ。

Starlinerのデモミッションでは、実際の有人打ち上げ時にULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)のAtlas Vロケットの上に、どのように設置するかをシミュレートすることから始まった。そして緊急脱出用のエンジンを点火すると、Starlinerとそのサービスモジュールはロケットから安全な距離まで飛行した。問題は3つあるパラシュートのうち2つしか展開されなかったことだが、NASAが定義する安全性設計はこのような可能性も範囲内として想定している。

このシステムの必要性は、ボーイングとNASAによって非常に「ありそうにもない」シナリオとして記述されているが、ボーイングとNASAは、ボーイングとSpaceX(スペースX)の新しい宇宙船における安全性を強調している。

宇宙船にはセンサーが設置されたテスト用のダミー人形が搭載されており、アクシデント時に緊急脱出装置によってStarlinerに搭乗した宇宙飛行士が、どのような衝撃を体験するのかについての、詳細なデータを両社に提供する。これは、第3のパラシュートが展開されなかった理由を調査することと同じく重要な情報である。

ボーイングは12月に、有人飛行の前段階として無人のStarlinerを初めてISS(国際宇宙ステーション)に打ち上げる予定だ。今後の予定は、テスト結果の調査にもとづいて決定される。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter