SpaceXのCrew Dragon宇宙船がISSとのドッキングに成功

米国時間5月31日にEndeavor(エンデバー)と名付けられたSpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船はISS(国際宇宙ステーション)に計画どおり無事ドッキングした。これにより商用有人宇宙飛行が可能であることが実証され、新しい時代の幕が開いた。SpaceXにとって初の有人宇宙飛行のテストパイロットに選ばれたのはNASAのDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベンケン)の二人の宇宙飛行士だ。民間企業が開発した機体で人間が宇宙に出たのはこれが史上初となる。

ドッキングは、Crew Dragon搭載のコンピュータによる自動制御で終始行われた。SpaceXのコンピュータシステムは、打ち上げ当初から地球帰還まですべてのプロセスをコントロールする。なおCrew Dragonは、ISSに新たに設置されたドッキングアダプタを利用できるよう設計されていた。旧システムはカナダ製のためにCanadarm-2と呼ばれるロボットアームをISS側で操作して宇宙船を捕獲して引き寄せる必要があったが、 新しいアダプターでは宇宙船が自動操縦でドッキングできる。

両宇宙飛行士を載せたCrew Dragonは、5月30日に米東部夏時間午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)に米国フロリダ州ケープカナベラルのケネディ宇宙センターから打ち上げられた。当初の予定は27日だったが悪天候のために延期されていたものだ。「Demo-2」と呼ばれるミッションはNASAとSpaceXによる商用有人飛行の可能性を実証するためのCrew Dragpmの打ち上げとして2回目だったが、実際に宇宙飛行士が搭乗したのはこれが最初だった。

今回のISSとのドッキング成功で、ミッションの前半は成功したといえる。 SpaceXは有人宇宙船を予定どおり軌道に乗せ、宇宙ステーションにドッキングさせる能力があることを示すことができた。また宇宙船のマニュアル操縦のテストにも成功している。

ISSのドッキングアダプターのハッチは米東部夏時間5月31日午後0:37(日本時間6月1日午前1時22分)に開かれ、Crew Dragon側のハッチも直後の午後1:02(日本時間6月1日午前1時47分)に開かれた。ベンケンとハーリーの両飛行士はISSに移乗して米国人2人、ロシア人1人のISS側クルーの歓迎を受けた。今後数週間にわたって両飛行士は、実験・研究など通常のクルー業務に従事する。その後はCrew Dragonに戻ってISSから離脱、地球へ帰還してDemo-2ミッションを完了させることになっている。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpaceX初の有人宇宙船「Crew Dragon」の内部、タッチスクリーンのコンパネやカスタム成形された座席を配備

SpaceX(スペースX)は歴史的な初の宇宙飛行士打ち上げに向けて準備を進めており、NASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏とBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏を国際宇宙ステーション(ISS)に送り、その有人宇宙飛行能力を実証するミッションを行う。この打ち上げは米国東部夏時間4時33分(太平洋夏時間1時33分)に予定されているが、同社はその間にCrew Dragonとその設計の詳細を公開した(編集部注:打ち上げは延期され、東部夏時間5月30日午後3時22分、日本時間5月31日午前4時22分に変更された)。

Crew Dragonは、SpaceXの貨物カプセルであるDragonの設計に基づいており、現在これはISSへの補給サービスを提供している。同社のデザインチームはタッチスクリーンによる制御システムからカスタム成形された座席まで、21世紀における現代的な乗り物のように感じられ、優れたユーザビリティとエクスペリエンスを保証することに重点を置き、快適に過ごせるようにDragonの改造に集中した。

記事執筆時点では宇宙飛行士とクルーが打ち上げ準備をすすめている最中で、打ち上げのライブストリームはこちらから視聴できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXによる初の宇宙飛行士打ち上げをライブ中継、打ち上げは5月31日延期へ

SpaceX(スペースX)は米国時間5月27日の遅くに、フロリダのケープ・カナベラルから初の有人宇宙飛行ミッションを実施し、自社の歴史の中で大きな節目を迎えようとしている。このミッションは、NASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーリー)とBob Behnken(ボブ・ベーンケン)を国際宇宙ステーション(ISS)に運ぶ、Crew Dragon宇宙船開発プログラムの集大成となる、「Commercial Crew Demo-2」である。

打ち上げは現在、ケネディ宇宙センターから東部夏時間5月27日午後4時33分(日本時間5月28日午前5時33分)に設定されているが、気象条件にも左右される。ここ数日の天候はあまり良くなかったが、SpaceXとNASAは打ち上げを遅らせるかどうかについて、打ち上げ予定時刻の約45分前に電話で協議する。もし今日の打ち上げが実施されなかった場合、5月30日と5月31日にも予備のウィンドウがある(編集部注:新たな打ち上げ日程は、東部夏時間5月30日午後3時22分(日本時間5月31日午前4時22分)。

これはSpaceXにとって初の有人宇宙飛行となり、2011年のスペースシャトル計画の終了後、アメリカからの初の有人ロケットの打ち上げとして、歴史に名を残すことになる。NASAは2010年にCommercial Crewプログラムを開始し、宇宙飛行士の打ち上げ能力を復活させるために官民のパートナーシップを模索し、最終的にはSpaceXとBoeing(ボーイング)の2社が有人飛行に適した宇宙船の設計・開発を行うことになった。SpaceXはこのプログラムで初めて、クルーを搭乗させた打ち上げを試みる。

Demo-2ミッションは、基本的にはCrew Dragonの最終テスト段階であり、その後は同宇宙船とそれを軌道に運ぶロケットのFalcon9が、定期的な宇宙飛行士輸送のための認証をNASAによって受けることになる。つまり、ISSへの宇宙飛行士の定期的な輸送サービスの提供を開始し、その移動手段としてロシアのSoyuzにくわわることを意味する。

一方、SpaceXはすでにCrew Dragonを民間人や科学者など、他の商業目的の乗客にも提供する計画を開始している。そもそもCommercial Crewプログラムの背景にあるのは、NASAが宇宙飛行士の輸送コストを下げるために、他の有料顧客に座席を提供して打ち上げや飛行にかかる費用を相殺することにある。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXとNASAの有人宇宙飛行「Demo-2」の詳細が明らかに、5月27日にライブ配信決定

NASAとSpaceXにとって宇宙開発の歴史を作る決定的な瞬間が今月末に迫ってきた。5月27日に実施されるDemo-2ミッションではSpaceXが初めて有人宇宙飛行に挑む。乗員はNASAの宇宙飛行士2名で、米国による有人飛行としては2011年に退役したスペースシャトル以来となる。

先週、SpaceXとNASAの代表がDemo-2の詳細を説明した。NASAの宇宙飛行士のBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏とDoug Hurley(ダグ・ハーリー)氏の2名はSpaceXのCrew Dragonに搭乗しFalcon 9でISS(国際宇宙ステーション)を目指す。

Demo-2というミッション名でも明らかなようにこのミッションはまだテストの一部だ。それでもSpaceXとNASAにとっては2名の宇宙飛行士を無事に帰還させることが至上命題であり、責任は重い。ちなみにDemo-1も今回同様Crew Dragon宇宙船をISSへ往復させるミッションだったが、飛行は無人で実施された

【略】

Demo-2は当初の計画されていたよりもかなり長くなる。NASAの発表によれば。ミッションは30日以上、最長で119日継続される。その期間内でで必要に応じて実際のスケジュールが決定される。NASAにとって現在最も重要な目標は、商業有人飛行ミッションであるCrew-1の実施だ。このミッションではNASA、JAXAなどからの4名を宇宙に運ぶ予定だ。

【略】

発表されたタイムラインによれば、Falcon 9の1段目のブースターが点火されて打ち上げプロセスが開始される。上昇後、ブースターが分離されCrew Dragonを搭載した2段目ロケットが作動する。ブースターは前後を入れ替えるフリップ動作を行い、ブーストバックと呼ばれる噴射により、着陸に向けた軌道に入る。ブースターは大西洋を航行するSpaceXの回収艀に着陸する予定だ。

一方、Dragonカプセルは2段目ロケットから分離してISSに向かう。到着までの時間は打上時のISSの位置により、最短で2時間、最長48時間かかる。

打ち上げ予定日前後のフロリダの天候は予測しにくい。またDemo-2が有人飛行であるためDemo-1のときよりも天候条件はシビアなものとなるだろう。直前でスケジュールに変更が加えられる可能性はあるが、打上に適した「窓」はその後も多数ある。

Crew Dragonは2段目から離脱して飛行を開始した後、ISSに近づくために何回かロケットエンジンを作動させる。ドッキングそのものは自動操縦となる。Crew Dragonは完全に自動化されたドッキング機能を備えている。従来はカナダ企業が開発したためCanadarmと呼ばれるロボットアームを使ってISS側のオペレーターがカプセルを捕獲する必要性があった。

ドッキングが完了すると、Crew Dragonは与圧され、宇宙飛行士がISSに移乗できる。 ISSでは、ベンケンとハーリーは実験やメンテナンスなどの業務を行う。その後2名はCrew Dragon戻り、ドッキングを解除、貨物コンパートメントを投棄して軌道離脱のためにロケットを作動させる。大気圏再突入後、十分に減速した段階でパラシュートを展開して大西洋に着水するという予定だ。ISS離脱からから着水までには約24時間かかる。

地上支援チームは5月16日からクルーの厳重な隔離を開始する。これは打上まで続く。打上施設のスタッフは新型コロナウイルス(COVID-19)感染拡大防止のためのソーシャルディスタンスのルールに従い、互いに常に2mの距離を取る。飛行司令ステーションもこのため改装されスタッフの配置も変更される。

ミッションは各段階ごとにみればさほど複雑には見えない。 しかしすべての段階が完璧な信頼性をもって実施されねばならず、これはSpaceXとNASAの長年のハードワークの集大成となる。2011年のスペースシャトル退役以後、米国は国産ロケットでISSにクルーを送ることができなかった。米国が有人宇宙飛行の舞台に復帰する瞬間が近づいている。5月27日の米国東部夏時間正午(日本時間5月28日午前1時)にジョン・F・ケネディ宇宙センターで行われる打ち上げは、ぜひともライブ配信で楽しもう。

画像:NASA

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

長期間の隔離を終え次期クルーが国際宇宙ステーションに到着

在宅勤務は楽な人もいれば難しい人もいるが、まったく不可能なのが国際宇宙ステーションだ。パンデミックがあろうとなかろうと、次のクルーはそこへ行くしかない。最新ミッションの宇宙飛行士たちは無事に打上げに成功して到着した、ただし、長期の隔離期間の後に。

念のために言うと、ISS乗組員はどのミッションでも、インフルエンザを持ち込むことがないように隔離されている。しかし、新型コロナ流行の中、いまは特別な状況だ。隔離は3月から始まり、乗組員の家族でさえ一緒に過ごすことはできなかった。打上げ時には必要最小限の関係者のみ立ち会いが許された。

私はNASA(米航空宇宙局)に、今回および将来のミッションについて、新型コロナに関連する特別な措置の詳細を尋ねている。

今回のミッション、Expedition 63は現行クルーと約一週間同時に滞在した後に交代する。その間のISSがかなり混雑することは間違いない。

本クルーには通常任務以外に、最初の商用有人飛行ミッションでやってくる宇宙飛行士たちを出迎えるという特別なしごとがある。彼らはSpaceX(スペースエックス)のCrew Dragon(クルードラゴン)カプセルに乗り、Falcon 9(ファルコンナイン)ロケットに打ち上げられてやってくる。このミッションもパンデミックの中、5月打上げに向けて計画通り進んでいる。

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ここ数年のミッションでは常に、ロシアの由緒あるソユーズ宇宙船が使われていた。ソユーズは何十年にもわたって改修され続けてきたが、「繰り返し飛行した実績」のあるテクノロジーであること以上のものはほとんどない。

有人ミッションのために最先端技術の宇宙船を作る取組みは何年も続いたあと、SpaceXとライバルのBoeing(ボーイング)がゴールに向かってホームストレッチを走っている。両社とも再度の遅延に悩まされてきたが、Boeingはほかにもいくつかのトラブルを抱え、打上げ時期は年末かそれ以降になりそうだ。一方のSpaceXは準備完了だ。

この商用有人ミッションは、来月であれ少々遅れるにせよ、何年にもわたる競争の集大成であり、アメリカ製宇宙船で宇宙飛行士が軌道に行くのはスペースシャトル引退以来初めてのことだ(民間宇宙旅行会社のVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)は自社の宇宙船を宇宙の端まで飛ばしたが、この有人宇宙船は軌道周回機ではない)。

すべてがうまくいけば、NASAのChris Cassidy(クリス・カシディー)氏、Rscosmos(ロスコスモス)のAnatoly Ivanishin(アナトリー・イワニシン)氏とIvan Vagner(イワン・ワグナー)氏の各宇宙飛行士は、近々ISSで歴史的ミッションを出迎えることになる。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

SpaceXの初期型Dragonカプセルが最後となる20回目のミッションを完了

SpaceX(スペースX)は2012年にNASAに代わって貨物輸送ミッションを開始し、それ以来国際宇宙ステーション(ISS)への補給を続けてきた。そして現在、最初のミッションから使用されているバージョンのDragonカプセルが、米国時間4月7日の火曜日午後に予定どおりISSから帰還して大西洋に着水、引退した。

これはCRS-20こと、スペースXによるNASAのための20回目となる商用補給ミッションが完了したことを意味する。Dragonは3月7日にケープ・カナベラルから打ち上げられた後、3月9日からISSにドッキングしていた。またこれは、ISSの宇宙飛行士が操作するロボットアームの補助によりDragonがドッキングした最後の機会となった。Crew Dragonを含む新しいDragonでは、ISSへのドッキングに自動プロセスが採用される。

今回使用されたDragonは帰還に先立ち、地上の研究者が調査するための実験材料や結果を積み込んでいた。このカプセルは以前にもCRS-10とCRS-16の2回のISSへの飛行ミッションを経験しており、今回の引退飛行は補給船にとってハットトリックとなっている。

スペースXの次のミッションは5月中旬から下旬に予定されている、初となる乗員を乗せたDragonによるISSへの飛行となるDemo-2だ。もちろん貨物輸送ミッションも継続され、次回は2020年10月に暫定的に予定されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

スペースXがDragon貨物船を使った最後のISSへの打ち上げをライブ配信

SpaceX(スペースX)は米国時間3月6日の夜、国際宇宙ステーション(ISS)への20回目の補給ミッションを打ち上げる。今回のミッションは、これまでのNASA向けミッションのすべてで使われてきたDragon貨物船を使用する最後のミッションとなる。2020年夏からは、その後継機が登場する。

今夜のミッションでは、これまでどおりISSにさまざまな物資や実験機器、新しいコンポーネントを輸送する。打ち上げは太平洋時間の午後8:50に予定されており、上の動画でその様子を確認できる。

Dragon貨物船とFalcon 9の第1ステージは、どちらも以前のミッションで使用されたもので、Dragon貨物船は今回が3回目の打ち上げで、今回が最後となる。

Dragon貨物船はCrew DragonとCargo Dragon(名称に2がつくこともある)という2機種の後継機を生み出し、当然ながら前者は最大の注目を集めている。しかし、改良されたドラゴン貨物船はより多くの利用を見込んでいる。

新旧のDragon貨物船の正確な違いは完全には明らかになっていないが、アビオニクス、電力システム、搭載ソフトウェアそして全体的な形状に大きな変更があることが判明している。当然のことながら、貨物船には生命維持装置や脱出システムは搭載されておらず、人員の輸送は意図されていない。

新しく改良されたCargo Dragonでは、最初の商用ミッションが2020年8月に予定されており、姉妹機のCrew Dragonもすべてが計画どおりに進めば、その前に打ち上げられるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

アディダスが国際宇宙ステーションで靴のソール製造実験へ

来る3月2日には、SpaceXとして20回目となるISS(国際宇宙ステーション)補給ミッションの打ち上げが予定されている。今回は、通常の補給品やちょっとしたお土産品に加えて、パートナーと有償の顧客から依頼された興味深い実験機材も含んでいる。さらに実験室として使われているヨーロッパのコロンバスモジュールを拡張するための資材も積まれる。

画像クレジット:SpaceX

中でも、奇妙に感じられるのは、Adidas(アディダス)の「BOOST in Space」(宇宙で増強)という試みだろう。同社は、数千もの小さな泡球を融合させることで靴のミッドソールを製造している。これは、もちろん通常は地球上で行われるので重力の影響が避けられない。そこで、それを宇宙で行うとどうなるのか実際に試して調査しようというのだ。

「微小重力状態では、ペレットの動きと位置に影響を与える要因を詳しく調べることができます。それが、製造プロセスや、製品の性能、快適性の向上にもつながる可能性があります」と、このプロジェクトは説明している。もちろん、これは素晴らしい見ものにもなるだろう。このトースターサイズのデバイスからもたらされる成果が、きっと優れた靴の開発につながるはずだ。

このような営利目的の業務については、たいていいつもそうなのだが、ちょっと変わったものであっても、そうした実験をISS上でやること自体が、かなりクールなものに感じられる。

微小重力状態は、引く手あまたの条件であり、宇宙空間での実験プロジェクトの多くは、実際それを求めてのものなのだ。たとえば、蛇口のメーカーであるDelta(デルタ)による商用実験は、水滴の形成について何らかのことが学べるのではないかと期待してのもの。それによって、より効率的なシャワーなどを作ることができるのではないかと考えている。

消化器組織は、通常はこのような青色ではないが、これについては微小重力環境の影響ではない

一方、Emulate(エミュレート)は、チップ上の臓器(正確に言えば腸組織)を宇宙に送り出し、「微小重力環境や他の潜在的な宇宙飛行によるストレス要因が、腸の免疫細胞と、感染症への感受性に、どのように影響するか」を解明するのに役立つことを期待している。また宇宙空間上で、幹細胞から心臓組織を生成することもテストする。これは、長期間の宇宙飛行に役立つ可能性がある。

ただし、今回運ばれる最大の貨物は、間違いなくBartolomeo(バルトロメオ)だ。Bartolomeoは、ヨーロッパのコロンバスモジュールに接続する新しい外部プラットフォームとなる。

貨物が取り付けられた左側。右側は見えていない。他の目的のための「腕」が突き出している

商用、その他のパートナーの貨物用に12のスペースが確保されている。理由はさまざまとしても、宇宙ステーションの外部へのアクセスが必要な大学や企業が利用できる。たとえば、地球の撮影、真空露出、放射線試験などが考えられる。仕様については、ここに書かれている。

すべてがうまくいけば、打ち上げは予定通り3月2日となる。その時点が近づいたら、ライブストリームを公開し、記事を更新する予定だ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceXの最初の有人宇宙飛行は早ければ5月にも実施へ

SpaceXのCrew Dragonは有人宇宙飛行の実現にごく近いところまで来ている。先月にIFAと呼ばれる飛行中に乗員を脱出させるテストに成功し、主要なテストをすべてクリアした。SpaceXと発注者のNASA.はDemo-2と呼ばれる有人飛行のテストに進む予定だ。

我々が得た情報では、SpaceXは今年の5月7日にこの有人宇宙飛行テストを予定しているという。この日時は仮のものだが、ニュースを最初に報じたArs TechnicaのEric Berger(エリック・バーガー)氏によれば、スケジュールは遅くなることも早まることもあり得るという。

これ以前にもSpaceXの宇宙船が実際の飛行に極めて近づいていることをわれわれはつかんでいた。先週のGAO(米国会計検査院)のレポートは商用有人宇宙飛行プログラムの進捗状況について詳しく説明しており、Crew Dragonカプセルの有人飛行テスト、Demo-2ミッションは「当初予定されたいたより3ヶ月早く完了するだろう」と述べていた。

Demo-2はその名のとおりCrew Dragonにとって昨年3月に行われたDemo-1に続く2回目の実証ミッションだ。昨年のミッションでは、Crew DragonカプセルはFalcon 9で打ち上げられ、ISS(国際宇宙ステーション)にドッキングして物資を補給した後、大西洋上に安全に着水した。ただしこのミッションではカプセルは無人で地上から遠隔操縦された。

Demo-2ではNASA の宇宙飛行士、Doug Hurley(ダグ・ハーリー)氏とBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏の2人が乗り込むことになっている。2人にとってはこれが3回目の宇宙飛行となる。Demo-2の飛行内容はCrew DragonでISSを往復することで、Demo-1とほぼ同内容だが、今回は有人飛行であることが大きな違いだ。NASAのJim Bridenstine(ジム・ブラデンスタイン)長官は最近、「宇宙滞在の期間を当初計画していた2週間よりも延長するかもしれない」と発表している。これは現在ロシアのソユーズを利用して行なっているISS乗員のローテーションをCrew Dragonで実施しようとするものだ。

宇宙計画では計画の変更は付き物だが、予想外の事態が起きないかぎり上に述べたようなスケジュールでDemo-2は実施されるものと思われる。

画像:SpaceX

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

クリスティーナ・コック氏が女性宇宙滞在記録を更新して地球に帰還

宇宙飛行士のChristina Koch(クリスティーナ・コック)氏は、ESAのLuca Parmitano(ルカ・パルミターノ)氏、ロシアのAlexander Skvortsov(アレクサンドル・スクボルツォフ)氏とともに、国際宇宙ステーション(ISS)から地上へと帰還した。米国東部標準時2月6日午前0時50分(日本時間2月6日午後2時56分)にISSにドッキングしたソユーズ宇宙船に搭乗し、予定どおりカザフスタンに米国東部標準時午前4時12分ごろ(アルマトイ時間同日午後3時12分、日本時間2月6日午後6時12分)に無事着陸した。

コック氏が米国人宇宙飛行士としてISSに328日連続で滞在し、世界で2番目に長い滞在期間となったことは意義深いものだ。これは340日間宇宙で過ごしたScott Kelley(スコット・ケリー)氏に次いで2番目に長い。また米国人女性のPeggy Whitson(ペギー・ウィットソン)氏の289日間を抜いて、公式には女性として世界最長の宇宙滞在となった。

NASAが指摘しているように、コック氏の宇宙滞在には5248回の地球の周回が含まれており、またISSが軌道上を移動した距離に換算すると、その総距離は1億3900万マイル(約2.2億km)であった。同氏はISS船外でもかなりの時間を過ごし、同僚の宇宙飛行士のJessica Meir(ジェシカ・メイア)氏とともに、女性だけによる史上初の宇宙遊泳となった、3回の女性だけによる宇宙遊泳を含む6回の宇宙遊泳を達成した。

コック氏と帰還した宇宙飛行士は全員、着陸時には健康なようだったが、定められた標準的な健康診断を受けることになる。ただし彼女の科学ミッションはこれで終わりではなく、同氏はNASAのArtemis(アルテミス)計画を含む、月や火星を含む太陽系での宇宙開拓への道を開く、長期宇宙滞在に関するNASAの研究に参加している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

LEGOが国際宇宙ステーションの公式キットを発売、スペースシャトルやロボットアームも付属

LEGOは国際宇宙ステーション(ISS)の公式キットを発売する。このキットには軌道プラットフォームのスケールモデル、ドッキング可能な小型スペースシャトル、展開可能な衛星、2人の宇宙飛行士のミニフィギュアが含まれている。ピースの数は864ピースだ。これはISSの20年以上の稼働を記念したキットで、LEGOファンのコミュニティからの要望を実現するLEGOのIdeasプラットフォームを通じて提案されたものとなる。

この新しいキットは2月に発売予定で、小売価格は69.99ドル(約7700円)。かなり複雑なもののようで、推奨年齢は16歳以上になっている。ファンのような大きな太陽光発電アレイや、スペースシャトルのミニモデルと貨物カプセルの両方に対応するドッキングステーションなどが含まれる。

前述したようにキットには衛星も含まれており、ロボットアームのCanadarmを使用して展開できる。また先日、クリスティーナ・コック宇宙飛行士とジェシカ・メイヤー宇宙飛行士がISSのバッテリーを交換したように、ISSがなんらかの修理を必要とする場合は、2人の宇宙飛行士のミニフィギュアが修理やアップグレードを行う。

実際のISSは、NASAとロシアのRoscosmos、ヨーロッパのESA、カナダのCSAそして日本による共同プロジェクトで、1998年に最初の打ち上げが行われ、宇宙飛行士とともに19年以上も継続的に運用されてきた(公式な20周年は2020年11月となる)。ISSは当初予定されていたミッション寿命を超えているが、計画の変更により、少なくとも2030年までは軌道上の科学実験施設としての役割を継続する予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXのドラゴン補給船が科学実験機器とともにISSから帰還

SpaceX(スペースX)は国際宇宙ステーション(ISS)への19回目の商用補給(CRS)ミッションを成功させ、使用されたDragon補給船が米国時間1月7日の朝早く、太平洋に着水した。今回使用されたDragon補給船は、SpaceXのCRSミッションで、すでに2回もISSを往復している。

12月5日にCRS-19ミッションで打ち上げられたDragon補給船は、12月8日にISSにドッキングし、約1カ月間係留されている間に宇宙飛行士が約5700ポンド(約2.6トン)の物資や実験機器を含む、その内容物を積み降ろした。そしてDragon補給船は、地上の研究者が研究するための実験素材を持ち帰っている。

その中には「ワムシ類」と呼ばれる微小な水生動物やマウスが含まれており、どちらも微小重力がさまざまな生物に及ぼす影響を研究するために利用された。またもう1つの実験は、宇宙飛行士が長期の宇宙滞在中に受ける、放射線被曝の解決策を科学者が開発するのを支援するというものだ。これはほんの一例にすぎず、学術機関やNASA、そして民間のパートナーによる、何百もの実験が行われている。

今後、Dragon補給船は太平洋から回収され、地上にて内容物が回収される。SpaceXは3月上旬にも補給ミッションを予定しており、ISSへの有人宇宙飛行を実現するためのCrew Dragonのミッションも継続している。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

SpaceXが再使用ドラゴンによる3回目のISS打ち上げに成功

SpaceX(スペースX)はNASAとの契約のもと、国際宇宙ステーション(ISS)への19回目の補給ミッションを打ち上げた。ミッションは東部標準時12時29分(日本時間12月6日2時29分)にフロリダ州ケープカナベラルから、約5200ポンド(約2.4トン)のペイロードを載せた、Dragon補給船を搭載したFalcon 9ロケットで行われた。

今回の打ち上げに使用されたドラゴン補給船 は、2014年と2017年に2回打ち上げられている。どちらのミッションでも、大西洋からブースターが回収され、メンテナンスが実施された。SpaceXはできるだけ再使用可能な打ち上げシステムを設計しており、宇宙ステーションで活動する宇宙飛行士からの荷物を積んでISSから帰還できるDragon補給船は、再使用ミッションのための完璧な宇宙船だ。

SpaceXはまた、今回の打ち上げに使用された最新型のFalcon 9の第1段ブースターを回収し、使用済みロケットを大西洋に浮かぶドローン船に着陸させた。今後、ドラゴン補給船は日曜日のランデブーに向けてISSへと向かう。そしてロボットアームのCanadarm2の助けを借りてステーションにドッキングし、約4週間ステーションに接舷して荷物を降ろした後、地球の研究者に向けた実験結果などの3800ポンド(約1.7トン)の荷物を積み込む。

今回のミッションで輸送されるペイロードには、Budweiser(バドワイザー)によるビール醸造装置、ミッションクリティカルなロボットのためにISS外部に設置される「ロボットホテル」、ロボット宇宙飛行士アシスタントのCIMONのアップデート版など、さまざまな実験装置が含まれている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXが「ロボットホテル」のISS打ち上げをライブ配信

SpaceX(スペースX)によるNASAとの契約のもとに実施される商業輸送ミッションこと、CRS-19の2回目が始まる。このミッションの目的は、補給物資、実験材料、その他の機器を国際宇宙ステーション(ISS)に送ることだ。ISSに届いた後は、宇宙飛行士によって積荷が降ろされる。

【編集部注】CRS-19の打ち上げが予定どおり実施され、成功した。

当初予定されていた打ち上げが強風のために中止された後、SpaceXはバックアップウィンドウの東部標準時の12月5日12時29分(日本時間12月6日2時29分)に打ち上げを予定している。なお、天候のために打ち上げが延期されることは珍しくはない。また、本日の打ち上げも延期される可能性があるが、現時点では次の打ち上げのためのバックアップは予定されていない。スペースXによる打ち上げのライブストリームは、打ち上げ時間の約15分前に始まり、実際の打ち上げは東部標準時12時14分ごろ(日本時間12月6日2時14分ごろ)となる。

今回のミッションでは、SpaceXが誇るロケットや宇宙船の再使用が継続され、Dragon補給船(5200ポンド=約2.4トンの荷物を積載する)は2014年と2017年に2回飛行したものだ。SpaceXはまた、Dragon補給船を打ち上げるFalcon 9ロケットの第1段ブースターの回収も予定している。

補給船内にはさまざまな科学実験装置が搭載されており、その中には宇宙でのビール製造の様子を解明するBudweiser(バドワイザー)の実験や、使われていない時にロボットを収納するロボットガレージといった、ISSの新しい装置が含まれている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAの2台目の浮遊支援ロボットが作業を開始

近頃、国際宇宙ステーション(ISS)に搭乗しているのは宇宙飛行士だけではない。NASAは今年初めにBumbleと呼ばれる浮遊型のロボットを導入し、今回新たにHoneyと呼ばれる新しい仲間が加わった。どちらも宇宙ステーションの宇宙飛行士のために作業する立方体形状のロボット・チームメイトことAstrobee(アストロビー)の一員で、実験だけでなく日々の活動にも役立つように設計されている。

この2つのロボットはすべての点で似ているが、Honeyは黄色の配色を特徴とし、Bumbleは識別のために青色になっている。Honeyは作業前にテストが必要だが、Bumbleと似ていることから時間はかからないはずだ。BumbleはすでにISSでの日本実験棟である「きぼう」モジュール内部をマッピングしており、Honeyはソフトウェアアップデートを通じてそのデータを受け取っているので、ゼロから作業を始める必要はない。

このペアのロボットは、Queenと呼ばれる第3のロボットが7月にISSに運ばれ、Honeyの後で稼働した後に、トリオのロボット編成となる。宇宙で活躍する自律ロボットの用途はこれだけではないが、これらのロボットは人間の宇宙飛行士と協力し、空間を共有し、無重力環境でも動作するように設計されている。

NASAは最終的に、このようなロボットが宇宙飛行士の仕事をより効率化し支援を提供したり、現在の仕事の一部を管理したりするするだけでなく、無人状態でも宇宙船やISSのメンテナンスを任せられることを期待している。Astrobeeとその後継ロボットは、月周辺やさらに遠方により永続的な人間のプレゼンスを確立するための、鍵となるかもしれない。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

初となる女性だけの宇宙遊泳、NASAがライブ配信

NASAの宇宙飛行士のChristina H Koch(クリスティーナ・H・コーク)氏とJessica Meir(ジェシカ・メイア)氏は米国時間10月18日の朝から、史上初の女性だけによる宇宙遊泳を実施している。2人は国際宇宙ステーション(ISS)の故障した電源制御装置の修理を予定しており、現地時間午前6時30分(日本時間23時30分)からライブ配信が始まり、7時50分(日本時間0時50分)にISSのエアロックを離れる。

この歴史的なミッションは、当初の予定から7カ月後に実施される。当時、ISSには2人の女性のうちの1人が必要とする中サイズの宇宙服がなかったため、宇宙遊泳が実施できなかったのだ。Anne McClain(アン・マクレイン)宇宙飛行士は当時、koch宇宙飛行士と一緒に宇宙遊泳を行う予定だったが、McClain宇宙飛行士の任務は6月に終わった。McClain宇宙飛行士は大きなサイズの宇宙服も試みたが、動きの制限が大きすぎた。

NASAは10月に2つ目の中サイズの宇宙服を送って、同じ問題が二度と起こらないようにしたが、複数の男性宇宙飛行士による宇宙遊泳が可能なのに、女性にはできるなかったという差別への批判に直面した。しかし、NASAは宇宙服に関する差別に真摯な関心を持っていたようで、アルテミス計画のために設計された宇宙服は、あらゆる体型と大きさの宇宙飛行士に最大限の機動性を提供するように設計されていることを強調した。

女性だけによる宇宙遊泳という今回のミッションは、NASAだけでなく、人類の宇宙探査史上においても重要な一歩だ。このエキサイティングかつ重大なイベントは、YouTubeでのライブ配信で閲覧できる。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

次期宇宙ステーションクルーのソユーズでの打ち上げがライブ配信

国際宇宙ステーション(ISS)の第61次長期滞在クルーとして参加するNASAのJessica Meir(ジェシカ・メイア)飛行士、ロシアのOleg Skripochka(アレグ・スクリポチカ)飛行士、そしてUAE(アラブ首長国連邦)として初となるHazza Ali Almansoori(ハザ・アリ・アルマンスオリ)飛行士が、Soyuz(ソユーズ)宇宙船に搭乗して打ち上げられる。

ソユーズは米国時間9月25日、東部夏時間の午前9時57分にカザフスタンから打ち上げられる予定で、打ち上げのおよそ6時間後、東部夏時間の午後3時頃にISSとドッキングする予定だ。これはスクリポチカ飛行士にとって3回目の打ち上げだが、UAEとRocscosmos(ロスコスモス、ロシアの国営企業)との契約で8日間のミッションに参加するアルマンスオリ飛行士や、メイア飛行士にとっては初めてのものだ。

ISSに到着すると、宇宙ステーションの滞在人数は合計9人となる。そしてメイアr飛行士とクリポチカ飛行士はともに、ISSで6カ月以上にわたり研究と実験を行う予定だ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

国際宇宙ステーションに商用ドッキングアダプターの取り付け成功

ISS(国際宇宙ステーション)は、民間宇宙企業が運用する有人ロケットによる訪問者の受け入れ準備OKとなった。NASAの宇宙飛行士、ニック・ハーグとアンドルー・モーガンの宇宙遊泳により、ISSには2つ目のIDA(国際ドッキングアダプター)が設置された。

このドッキングアダプターは2個目であるにもかかわらずIDA-3と呼ばれる。実はIDA-1はCRS-7ミッションのペイロードに含まれていたが、2015年6月28日のSpaeceXの打上失敗で失われてしまった。そのため2016年6月のSpaceX CRS-9ミッションに搭載されたIDA-2が最初のIDAとなった。

既存のIDA-2はすでに充分に有効性を実証している。今年3月3日にSpaceXのく有人ドラゴンの実験機、Demo-1がドッキングアダプターに自動操縦で結合し、実際にクルーが搭乗した状態での結合に重要な装置であるいことを示した。

IDA-3は自動操縦結合をサポートする2番目のドッキングアダプターだ。従来、ドッキングする機体はISSの至近距離に近づいて同一軌道を飛行し、ISSのロボットアーム、Canadarm2で慎重に引き寄せられる必要があった。新しいドッキングアダプターではプロセスが標準化され、マニュアル操縦なしにドッキングできるだけでなく、SpaceXの有人宇宙往還機、Crew Dragonからボーイングが計画しているCST-100など各種の機体と接続可能となっている。これによりISSへの人員、カーゴの搬入、搬出はきわめて容易となる。

ドッキングアダプターを設計、製造したのはボーイングで重量は521kg(1150ポンド)、サイズは高さ約1m(42インチ)、幅1.6m(63インチ)だ。つまりこのアダプターは普通の体格の男性にはやや狭い(SF映画で見るような立派な通路ではない)。

IDAの設置はISSが民間宇宙飛行の利用者を受け入れるために必須のステップの1つだったが、これでハードルがすべてクリアされたわけではない。まずは有人飛行によるドッキングを実証する必要がある。

【 Japan編集部追記】上のNASAの公式ビデオはライブ配信のためビデオの最後が現在。過去のシーンはタイムラインをスクラブして探す必要がある。今のところPDA-3の取り付けシーンはタイムラインの冒頭にある。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAは国際宇宙ステーショの「商用化」を宣言、民間宇宙飛行士の受け入れも

6月7日に開かれたイベントで、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)を地球の低軌道での商業活動のハブとする案を発表した。長い間、NASAは、宇宙での民間事業を支援する拠点としてISSを位置づける計画を練っていた。

「国際宇宙ステーションの商用利用の解禁をお伝えするために、私たちはここに来ました」と、NASAの首席報道官Stephanie Schierholzはカンファレンスの口火を切った。20の企業とNASAの職員がステージに上がり、この新たな商用化の発表と、その機会や計画に関する討論を行った。

計画には、民間宇宙飛行士がアメリカの宇宙船を利用してISSを訪問し、滞在することを許可する内容も含まれている。また、「宇宙での製造」、マーケティング活動、医療研究「などなど」、ISSでの民間事業の活動を許可するとNASAは話していた。

NASAは、5つの項目からなる今回の計画は、ISSの政府や公共部門の利用を「妨げるものではなく」、民間の創造的な、また利益追求のためのさまざまな機会を支持するものだと明言している。NASAの全体的な目標は、NASAが、ISSと低軌道施設の数ある利用者のなかの「ひとつ」になることであり、それが納税者の利益につながると話している。

NASAの高官から今日(米時間6月7日)発表された、5つの内容からなる計画は次のとおりだ。

  • その1:NASAは、国際宇宙ステーション商用利用ポリシーを作成した。搭乗員の時間、物資の打ち上げと回収の手段を民間企業に販売することなどを含め、初回の必需品や資源の一部を提供する。
  • その2:民間宇宙飛行士は、早ければ2020年より、年に2回まで短期滞在ができる。ミッションは民間資金で賄われる商用宇宙飛行とし、アメリカの宇宙船(SpaceXのCrew Dragonなど、NASA有人飛行計画で認証されたもの)を使用すること。NASAは、生命の維持、搭乗必需品、保管スペース、データの価格を明確に示す。
  • その3:ISSのノード2 Harmonyモジュールの先端部分が、最初の商用目的に利用できる。NASAはこれを、今後の商用宇宙居住モジュールの第一歩と位置づけている。6月14日より募集を受け付け、今年度末までに最初の顧客を選定し、搭乗を許可する。
  • その4:NASAは、長期の商用需要を刺激するための計画を立て、まずは、とくに宇宙での製造と再生医療の研究から開始する。NASAは、6月15日までに白書の提出、7月28日までに企画書の提出を求める。
  • その5:NASAは、長期にわたる軌道滞在での長期的な商業活動に最低限必要な需要に関する新たな白書を発表する。

商用輸送の費用を下げることは、この計画全体にとって、きわめて重要であり、その問題は繰り返し訴えられてきた。それは、費用を始めとするさまざまな問題を解決し、単に商用化を許可するだけでなく、実行可能なものにするための手助けを、民間団体に呼びかけているように見える。もうひとつの計画は、次の10年、さらにその先に及ぶ長期にわたり、民間団体からのISSへの投資を呼び込み、ISSを民間宇宙ステーションに置き換える可能性を開くというものだ。それは最終的に、寿命による代替わりの問題の解決につながる。

補給ミッション中のSpaceXのDragonカプセルがISSを離れるところ。

TechCrunchのJon Shieberが、4月、ISS米国立共同研究施設の次席科学官Michael Roberts博士をインタビューした際に、宇宙ステーションの商用化について話を聞いている。

Roberts博士は、ISSで民間団体が事業を行えるようになる可能性は一定程度あると明言していた。これには、たとえば、関心の高い製薬業界の前臨床試験や薬物送達メカニズムといった分野の「基礎研究」も含まれる。製造業界では、無重力や真空という環境を利用して、現在の製造方法の改善を目指す民間企業をRoberts博士は挙げていた。

重要な細目としては、ISSで許されるマーケティング活動の範囲の拡大がある。ISSに搭乗してるNASAのクルーは、マーケティング活動に参加できる(とは言え、カメラの前でいかにもクルーらしく振る舞う程度だが)。民間宇宙飛行士の場合は、広告や宣伝が許される範囲が大幅に柔軟化されるため、さらに大きな仕事ができるようになる。理論的には、もしこれがディストピアの方向に流れたならば、レッドブルの超絶エクストリームな宣伝活動がもっと増えるということだ。

NASAによれば、現在も50の民間企業がISSで実験を行っているとのことだが、今回の発表は、その機会を、より望ましい形と規模の枠組みに、時間をかけて整備させてゆくことを意味している。

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(翻訳:金井哲夫)

民間宇宙探査のパイオニアAnousheh Ansariは国際宇宙ステーションの商用化を歓迎

XPRIZEのCEOでProdeaの創設者であるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏は、イランで過ごしていた子供時代に宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし、ご想像のとおり、周りの人間はほとんどがその野心を理解してくれなかった。ところが2006年、彼女はロシア宇宙センターで私財を投じて訓練を受けてソユーズ宇宙船に乗り、個人資金で国際宇宙ステーション(ISS)を訪れた世界最初の民間女性となったのだ(しかもそれは、イランの民間人、そしてイスラム教徒の女性としても初だった)。

その当時NASAは、アンサリ氏が料金を支払ってISSに搭乗するというアイデアには興味がなく、むしろ明らかに嫌がっていた。それから13年が経った今週の初め、NASAは、ISSを「ビジネスに開放する」と公式に発表し、一晩の宿泊料を1人あたりおよそ3万5000ドル(約380万円)と提示した(これはあくまで宿泊料金。旅費は自分で考えないといけない)。今週、トロントで開かれているCreative Destruction Lab(創造的破壊研究所)イベントで、私はアンサリ氏に会い、今回の画期的な決定が宇宙ビジネスにどのような利益をもたらすのか、またこの分野での彼女の展望、さらに宇宙に特化したスタートアップ全般に与えられるチャンスについて話を聞いた。

「ほんと7年前の6日間、もっと長かったかも知れないけど、そのとき使っていたノートパソコンを持ってくればよかったわ。そこにはISSの賃貸化。それは現実になる!って書いてあったの。私には予知能力があったのね」とアンサリ氏は冗談を飛ばした。「でも、それは理に適っていると思います」。

宇宙ステーションを訪れ利用することで得られる商業的、個人的な利益に対するNASAの認識を考えるに状況が変化した理由はいくつもある。とりわけ大きな理由は、当初のミッションで設定されていた期間を超えて老朽化が進み、現実に機能上の寿命を迎えようとしていることだ。

「宇宙ステーションは【中略】、現在すでに寿命を延長した状態です」とアンサリ氏は言う。「なので、次世代への投資のために、(当初予定してたミッションに上乗せして)うまく利用して利益を生むことができるようになったのです」

最初に計画されていたミッションが事実上終了したとしても、まだしばらくの間は、民間企業がその施設を使うことで多大な恩恵を引き出せる。

「宇宙ステーションでの研究や実験には非常に大きな関心があるため、コストは劇的に下がると思います」と彼女は、NASAのガイドラインに提示された民間宇宙飛行士の費用に関して言い添えた。「とはいえ、それでもそこへ行くまでのコストはかかります。つまり、誰もが支払える額にはならないということです。しかし、一晩3万5000ドルの家賃を支払えば実験が行えるのです。それは驚きです」。

「多くの企業が、製薬、医療、健康などの本当にたくさんの企業が、それを利用して実験を行うと私は考えています」とアンサリ氏。「それに私はわくわくしています。実現してよかった」

5月15日、米国カリフォルニア州プラヤ・ビスタにて。写真に向かって左から、XPRIZEのCEOを務めるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏、XPRIZEの創設者で執行委員長を務めるPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏、Global Learningでエグゼクティブディレクターを務めるEmily Church(エミリー・チャーチ)氏。XPRIZEは、Global Learning XPRIZE財団大賞授与式のためにGoogleのプラヤ・ビスタ・オフィスを訪れた。(写真:Jesse Grant/Getty Images for Global Learning XPRIZE)

アンサリ氏にとって、宇宙の商用利用分野の成長は、XPRIZEの原点だ。彼女は昨年の10月から、この財団のCEOを務めている。アンサリ氏とその義理の弟であるAmir Ansari(アミー・アンサリ)氏が多額の寄付を行ったことでその名が冠された賞金1000万ドル(約11億円)のコンテストAnsari Xprizeは2004年に勝者が決まり、それが今日のSpaceXの事業の道筋を付けた。

「最初のコンテストは、2週間以内に2回宇宙に行くというもので、賞金は1000万ドルでした。繰り返しの打ち上げが可能であることを証明したかったのです。SFの話ではなく、商業的に可能だということを。しかも、妥当なコストで行えるということをです」とアンサリ氏は振り返る。「必須要件がありました。たしか、燃料の容積を除く95%が再利用可能であることです。2台のロケットを作って、ひとつを飛ばして、次にあっちを飛ばすとったやり方では主旨に合いません。それが本当にビジネスに利用できることを確かめられるよう、条件を整えたのです」。

そこで大切な要素は、民間企業でも手が届く投資レベルで商業的に実現可能な関心事になり得ることを、初めて実証することだった。もうひとつの大切な要素として、関係当局の認可のもとで、参加者が実際に打ち上げが行える環境を作ることがあった。

「私たちは規制当局と米連邦航空局(FAA)との協力のもとで、民間人の打ち上げがどうしたら可能になるかを探りました。FAAには、対処方法がわからなかったからです」とアンサリ氏。「彼らは、宇宙に何かを打ち上げたいという民間企業と関わったことがなかったのです。そこで私たちの働きかけと、NASAや規制当局と行ってきた実績から、彼らは門戸を開き、そのための部門を立ち上げました。今それは、FAA Office of Commercial Space Tranportation(民間宇宙輸送局)と呼ばれています」。

2017年から打ち上げられているSpaceXのCRS-11。SpaceXが民間ロケットを打ち上げられるようになったのも、XPRIZEが商用打ち上げ事業のガイドラインを確立したお陰だ

今日までの働きで、数多くの分野を開拓し、スタートアップのための道を切り開いてきたアンサリ氏だが、Creative Distruction Labの初日に行った基調講演で、参加していた起業家たちに対して、このチャンスに満ちた新しい分野についていくつかの要求を突きつけた。彼女は、「雲の上に存在するクラウドシステム」には多大な可能性があり、データ・ウェアハウス施設を宇宙で運用すれば、電力と熱管理の面で今すぐ恩恵が得られると指摘した。

彼女はまた、スタートアップに対して、自分たちが作るものの波及的な影響力を念頭に置くよう訴えた。具体例をあげれば宇宙デブリだ。より広義においては、急激な変化は自然に恐怖の反応を引き起こすことを忘れないで欲しいと話した。

「エンジニアは、おもちゃやテクノロジーで遊ぶのが、ただただ大好きなので、これは難しい問題です」と彼女は話した。「しかし、こうした考えを理解させるのは、ここに集った私たちの役目です」。

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(翻訳:金井哲夫)