薬を使わない便秘治療ピルを開発したイスラエルのVibrantが8.2億円調達

慢性的な便秘の治療のために使い捨て振動ピルを開発した医療テクノロジー企業Vibrant(ビブラント)は米国時間3月26日、750万ドル(約8億2000万円)のシリーズEラウンドを発表した。同社はテルアビブに拠点を置き、スタートアップのベテランLior Ben-Tsur(リオール・ベン−ツール)氏が率いている。2007年の創業以来、同社は累計2500万ドル(約27億4000万円)を調達した。今回のラウンドはUnorthodox Venturesがリードし、Sequoiaが参加した。

3回目で最終となる米食品医薬品局(FDA)の試験を実施中の同社は、2022年に米国で事業を立ち上げる計画だ。カプセルはマルチビタミンのサイズだとベン−ツール氏は話した。

「患者は毎日毎日薬を服用するのに慣れています。なのでそうした意味ではこのピルは異なる体験にはなりません。しかしピルは薬を一切含んでいません」と同氏は述べた。同氏は創業者ではないが、CEOとして10年前に同社に加わった。

American Gastroenterological Associationに掲載された論文によると、米国の成人の約16%が便秘に悩まされており、60〜101歳に限ってみるとこの割合は33.5%に増える。また、便秘は女性の方に多く、男性の1.5倍だ。

便秘の対処法として最も一般的なのが店頭で販売されている薬または処方薬の服用で、これらの薬は排便を促す大腸の神経をターゲットとする。しかしVibrant Capsuleは「一度飲み込むと、化学物質を使うことなしに腸壁の自然の活動電位を促進し、リラックスさせ、通じをよくします」と同社は声明で述べた。

同社によると、薬不要であるのに加えて、下剤を上回るVibrantの価値は排便がコントロールされることだ。一方の下剤は予期せぬ下痢や長期の副作用を引き起こす。また、下剤は日常的に服用するようになっているが、使い捨てのカプセルは週2〜5回でいい。カプセルは、服用したときに自動的に記録するアプリとつながっている。そして患者は排便があればアプリに記録し、月次レポートを医師に送る。そうすることで治療をモニターし、必要に応じて治療のプロトコルを調整することができる。

Vibrantが2019年に実施した臨床試験では、患者250人がダブルブラインドテストに参加した(133人がVibrant Capsule、117人が偽薬を服用)。結果は、Vibrant Capsuleを服用した患者の方に3時間以内に排便を経験した人が多かった。試験と結果はジャーナルNeurogastroenterology and Motilityに掲載された。

数年前に医師とエンジニアのグループが生きている豚の結腸でテストを行い、誤って結腸壁を挟んでしまった。その結果、豚はすぐに排便したことに気づいた。テストは実際には便秘とはまったく関係のないものについてで、偶然の発見だった。効果を再現するために、チームは3時間装着したときに排便を引き起こす振動ベルトを作った。

「問題は、排便を得るために誰も3時間揺さぶられたくないということでした」とベン−ツール氏は話した。そのことを念頭に、似たような結果をもたらしつつ振動は感じられない、人間の便秘の治療開発に着手した。Smart Pillなど、メカニカルカプセルはすでにマーケットに存在する。Smart Pillは消化管を通過しながら消化管全体の動きをレポートし、医師が消化管運動異常を診断できるようにする診断カプセルだ。なのでVibrantのチームは人々が安全にカプセルを飲み込んで排泄することができるとわかっていた。

ベン−ツール氏によると、過去20年、便秘の治療はほとんど変わっていない。治療プロトコルはずっと薬の服用にフォーカスしてきた。マーケットの規模、この分野におけるイノベーションの欠如、そして将来性を認識したとき、同氏はVibrantを率いたいと思った。

Vibrantは今回調達した資金を、初のマーケットとなる米国でのカプセル提供に使う計画だ。同社は現在、カプセルが立ち上げ当初から保険でカバーされるよう、ヘルスケアプロバイダー、そして保険会社と協議している。診断テストにしか使われないSmart Pillはまだ保険でカバーされておらず、患者が負担するコストは平均で約1400ドル(約15万3000円)だ。ベン−ツール氏とチームはアクセスしやすいプロダクトの提供を目指している。「当初から我々は既存の薬よりも高価になりそうなものは作らないことを使命としてきました」と同氏は述べた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Vibrant医療資金調達

画像クレジット:Vibrant

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(文:Marcella McCarthy、翻訳:Nariko Mizoguchi

モバイルゲームの現金トーナメントという未来に賭けるRyu Gamesが2.5億円調達

Ryu Gamesを利用すると、開発者は自分のモバイルゲームにキャッシュトーナメントを加えることができる。米国時間3月25日、同社は、シードラウンドで230万ドル(約2億5000万円)を調達した。投資者は多様な顔ぶれで、Side Door VenturesMGV CapitalVelo Partners、そしてCitta Venturesなどなどが参加した。

さらに、このラウンドには500 Startupsも参加した。アクセラレーターが投資ラウンドに参加するのは珍しいことではなく、TechCrunchがRyu Gamesを初めて知ったのは最近の500 Startupsのデモデーだった。そのとき私たちは、モバイルデバイスで他のプレイヤーと対戦プレイをしてお金になる、というアイデアに感動した。投資家たちも、同社に対する私たちの第一印象を支持しているようだ。

同社に対する肯定評価の主な理由は、eスポーツがクールであることだ。私はeスポーツといえばPCという世代だが、今の若者は、モバイルゲームのeスポーツを楽しんでいる。それは大いに結構なことだし、それに米国人が大好きなスポーツ賭博が混じると、強いカクテルができ上がるだろう。

Ryu Gamesの共同創業者でCEOのRoss Krasner(ロス・クラスナー)氏に話を聞いてみると、同社に対して私たちが最初に思い描いたeスポーツ的なイメージとは少々異なる。むしろプレイヤーは非同期で戦うことが多く、互いにゲームのハイスコアを賭ける。だからそれは対戦型の「StarCraft 2」ではない。しかも「StarCraft」は難易度が高く近寄りがたいが、モバイルゲームは単純で流行るという点が重要だ。

あなたの両親は、お金を賭けているソリテアのトーナメントだと知ると、あなたの会社の同僚と喜んで対戦するかもしれない。

お金の面は単純で、クラスナー氏はポーカーのトーナメントと同じだという。賭ける額を決め、それからプレイする。Ryu Gamesはホスティングの料金を取り、プレイヤーはゲームを始める。

Ryu Gamesは2021年に、数十試合に参加したいと考えている。しかし、採用を遅らせる可能性のある問題の1つは、提携しているゲームが、RyuのSDKを組み込んだバージョンのゲームを再ローンチする傾向があることだ。Ryu Gamesは、同社のシステムを使用するタイトルをクロスプロモーションすることで、パートナー開発者の手間を軽減している。つまり、サインアップすれば、収益を上げる以上のことができる。また、新しいユーザーを獲得することもできるかもしれない。

シードステージのスタートアップの多くがそうであるように、Ryu Gamesも新しいトレンドを証明するというよりも、未来に賭けている。特に、長い間私たちを閉じこめていたパンデミックから、ワクチンがより大きな影響を与えるようになってきていることもあり、今回の資本金でどこまでできるか見守っていこう。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Ryu Games資金調達

画像クレジット:AcidLabs/Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

長距離トラックの中継輸送から無駄な時間をなくすBatonが11.5億円調達

トラック業界では「休止と留置」の時間が効率と利益とドライバーの敵だ。トラックヤードで積替えのために過ごす休止時間と、スケジュールがずれた荷降ろしと荷積みの間に生ずる無駄な時間は、米国のトラック業界に年間20億時間あまりの損失を与えている。

8VCのインキュベーター事業から生まれたサンフランシスコのBatonは、このトラック業界の長年の問題を解決すると彼らが信じるビジネスを開発した。社名の「バトン」は、同社のビジネスモデルを表している。Batonは、混雑した都市部の郊外にドロップゾーンのネットワークを構築しており、パートナーから24時間設備をサブリースしている。長距離トラック運転手は、これらのドロップゾーンに荷物を積んだトレーラーを止めておくことができる。Batonは、クラス8の大型トラックを所有する地元の運送企業と契約して、そのトレーラーを届け先まで運ぶ。

Batonが開発したのは、トラックとドロップゾーンと倉庫と地元のドライバーを単一のAPIで調整するソフトウェアだ。顧客はそのAPIからの自動アップデートで、荷が届いたことをリアルタイムで知ることができる。

共同創業者のAndrew Berberick(アンドリュー・バーベリック)氏は、最近のインタビューで「長距離トラック輸送には無駄な時間がとても多い」と述べている。Batonの利点は、休止と留置で失われる大量の無駄な時間をなくし、さらに都心の渋滞で過ごす路上の時間も減らす。同社によると、米国のトラックドライバーの賃金は時間制ではなく距離制であるため、ドライバーの収入増にも貢献し、炭素排出量も減らす。

Batonの顧客は、CRSTのような長距離トラック輸送の企業だ。この非上場の運送企業は、Walmart のような米国最大の小売企業に荷物を運んでいる。また、さまざまな戦略的投資家たちも、Batonに投資している。最初の330万ドル(約3億6000万円)のシード資金は不動産企業のPrologisと8VCが2019年12月に投資した。そして現在はシリーズAでさらに資金と投資家を求めているが、そのラウンドをリードしているのは8VCとMaersk Growthだ。後者はロジスティクスの大手AP Moller-Maerskのベンチャー部門となる。

結局、BatonはシリーズAで1050万ドル(約11億5000万円)を調達し、共同創業者のNate Robert(ネイト・ロバート)氏とバーベリック氏によると、今の投資前評価額は5000万ドル(約54億6000万円)だったという。このラウンドに参加した投資家はPrologis、Ryder、Lineage Logistics、Project44のCEOであるJett McCandless(ジェット・マッキャンドレス)氏、KeepTruckinのCEOであるShoaib Makani(ショアイブ・マカニ)氏、Clarendon CapitalのオペレーティングパートナーJohn Larkin(ジョン・ラーキン)氏、I.S.Gの創業者Trace Haggard(トレース・ハガード)氏、そしてCooley LLCだ。

Batonのドロップゾーンはロサンゼルスに数カ所あり、同市における増設を計画している。ロバート氏とバーベリック氏によると、今後1年もしくは1年半で、アトランタとシカゴとダラスにも開設する予定だとのこと。

Batonの短期的な狙いは、人間が運転するトラック輸送の無駄の解消だが、ロバート氏によると、同社のビジネスモデルは、自動運転トラックにも適用できる初めてのアプリケーションになりうるという。「ただし、ハイウェイだけに限るべきだ。しかもそのためには乗り換えハブの全国的なネットワークが必要となる」とロバート氏は語る。

Batonはすでにこのアイデアのパイロット事業を行っており、ロバート氏はそれを「自動運転中継(autonomous relays)」と呼んでいる。この事業には、アリゾナとカリフォルニアの州境にある某自動運転トラック企業が協力している。

8VCのパートナーで共同創業者のJake Medwell(ジェイク・メドウェル)氏は次のように語っている。「ルートによっては、自動運転でしかも最終的には電動のトラックがスタンダードになるため、Batonのハブのネットワークとソフトウェアによる調整が中核的なインフラストラクチャーになるだろう。BatonによるDXで、トラック輸送業の自動化が可能になる」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Baton資金調達運輸トラック

画像クレジット:TSG Fleet Services

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ラッパーのキラー・マイクが支援するマイノリティ向けデジタルバンクGreenwoodに大手銀行がこぞって出資

黒人、ラテンアメリカ人の個人やビジネスオーナーをターゲットにしたデジタルバンキングサービスのGreenwood(グリーンウッド)は、初めての預金を受けつけるより早く4000万ドル(約43億7000万円)を調達した。設立からわずか数カ月後のことだ。

新しいチャレンジャーバンクを支援しようと集まったのは、米国7大銀行のうちの6行と、決済テクノロジーデベロッパーのMastercard(マスターカード)とVisa(ビザ)だ。

Bank of America(バンク・オブ・アメリカ)、PNC(ピーエヌシー)、JPMorgan Chase(JPモルガン・チェース)、Wells Fargo(ウェルズ・ファーゴ)、Truist(トゥルーイスト)という最大手銀行が、当時大統領候補だったBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員の応援演説で「私は革命を支持する。私は急進的政策を支持する」と宣言した人物が共同設立した銀行に出資した。

 

このラウンドで金融の巨人たちに合流するのが、舞台裏のフィンテックデベロッパー、FISそしてTTV Capital、SoftBankグループのSB Opportunity Fund、およびLightspeed Venture Partnersといったベンチャーキャピタル企業だ。スポーツ投資家のQuality ControlとオールプロのNFLランニングバックAlvin Kamara(アルヴィン・カマラ)氏もラウンドに参加した。

ジョージア州アトランタ拠点のGreenwoodは、2020年10月に元アトランタ市長のAndrew Young(アンドリュー・ヤング)氏、Bounce TV(バウンスTV)ファウンダーのRyan Glover(ライアン・グロバー)氏らをはじめとするグループが立ち上げた。

「平均的白人世帯の純資産は、黒人世帯の約10倍、ラテンアメリカ人世帯の約8倍です。この貧富格差は修復可能な不平等であり、それには共同作業が必要です」とGreenwoodの共同ファウンダーでチェアマンのグロバー氏は声明で述べた。「主要7銀行の6行と2大決済テクノロジー会社の支援を受けたことは、黒人・ラテンアメリカコミュニティが持つ現在の影響力の証です。私たちは顧客の得るべき世界水準のサービスを提供する上でいっそう適した状況になりました」。

社名の由来であるオクラホマ州タルサのグリーンウッド地区は、1921年の大量虐殺で破壊される前、Black Wall Street(黒人のウォール街)と呼ばれていた場所だ。新しいデジタルバンクは、誰かが口座を開設するごとに5人分の食事に相当する金額を食料不安に取り組む組織に寄付する。そして顧客がGreenwoodデビットカードを使う度に、銀行はUnited Negro College Fund(黒人大学基金連合)、Goodr(食料不安に取り組んでいる組織)、またはNational Association for the Advancement of Colored People(全米黒人地位向上協会)のいずれかに寄付する。

さらに、毎月1万ドル(約109万円)の報奨金を、同社の金融サービスを使用している黒人またはラテンアメリカ人の小企業オーナーに提供する。

「Truist Venturesは、黒人・ラテンアメリカ社会における銀行取引の信用を高めるGreenwoodの革新的取り組みのためにシリーズA調達ラウンドをリードすることで、よりよい生活と社会の着想と構築を支援いたします」とTruistのデジタル・顧客体験最高責任者でTruist Venturesの代表を務めるDontá L. Wilson(ドンタ・L・ウィルソン)氏が声明で述べた。「この卓越したファウンダーの方々とともに仕事をして学ぶ機会を得られたことに加え、Greenwoodへの投資は、少数派の十分なサービスを受けていない人々の経済力を高めるという当社の目的と誓約を反映しています」。

現在までに50万人がGreenwoodで口座を開設するための順番待ちに登録している。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Greenwood資金調達

画像クレジット:Greenwood

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook

デジタルバンキングソリューションプロバイダーのMenigaが12.9億円の追加調達、銀行の持続可能性などへの対応も支援

大手銀行にデジタルバンキング技術を提供するロンドンのフィンテックMenigaは、1000万ユーロ(約12億9000万円)の追加資金調達を完了した。

このラウンドをリードしたのはVelocity CapitalとFrumtak Venturesだ。またIndustrifonden、英国政府のFuture Fund、既存顧客のUniCredit、Swedbank、Groupe BPCE、Íslandsbankiも参加した

Menigaによると、調達した資金は研究開発への継続的な投資、特に炭素支出に関するグリーンバンキング商品のさらなる開発に使われる。また、営業チームとサービスチームを強化にも充てられる。

ロンドンに本社を置き、レイキャビク、ストックホルム、ワルシャワ、シンガポール、バルセロナにオフィスを構えているMenigaのデジタルバンキングソリューションは、銀行(およびその他のフィンテック企業)が個人金融データを使用して、オンラインおよびモバイルサービスを革新することを支援する。

同社のさまざまな製品には、銀行のレガシー技術インフラと最新のAPIとの間のギャップを埋めるソフトウェアレイヤーが含まれており、消費者に優しいデジタルバンキング体験の構築を容易にする。この製品群はデータアグリゲーション技術、個人および企業の財務管理ソリューション、キャッシュバック報酬、取引ベースのカーボンインサイトを網羅している。

MenigaがTechCrunchに語ったところによると、過去1年間で同社のデジタルバンキング製品とサービスに対する需要は大幅に増加したという。これにより、同フィンテック企業は17カ国で合計18のデジタルバンキングソリューションをローンチした。

画像クレジット:Meniga

このような需要に応えるために、銀行は持続可能性や気候変動への対応に関心を持つ世代の顧客を惹きつけ、維持する必要がある。そこで登場したのが、Menigaのグリーンバンキングソリューションだ。Carbon Insightと名づけられたこのソリューションは個人の金融データを活用して、モバイルバンキングを利用する顧客が二酸化炭素排出量を追跡し、理論的には削減することができる。

具体的には、ユーザーは一定期間の二酸化炭素排出量の推定値を追跡できる(特定の支出カテゴリーに分類可能) 。個々の取引の推定二酸化炭素排出量を追跡したり、自分の全体的な二酸化炭素排出量や支出カテゴリーの二酸化炭素排出量を他のユーザーと比較したりすることもできる。

Inslandsbankiは2021年2月、MenigaのCarbon Insightソリューションを自社のデジタルバンキングサービスに実装した最初の北欧の銀行となった。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Meniga二酸化炭素排出量資金調達

画像クレジット:Meniga

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(文:Steve O’Hear、翻訳:塚本直樹 / Twitter

新型コロナ需要で売上高が600%成長したオンライン公証のNotarizeが141億円調達

1年前に世界がバーチャルにシフトしたとき、とりわけ1つのサービスに需要が殺到した。電子公証サービスだ。

自宅から出ることなく文書を公証してもらえるというのは突然、贅沢というより必須のものになった。ボストン拠点のNotarize(ノータライズ)の創業者でCEOのPat Kinsel(パット・キンゼル)氏は、より多くの州の人々がリモートオンライン公証(RON)サービスを使えるようにするために、全米で適切な法案が可決されるよう取り組んだ。

その努力は報われた。売上高が前年比600%増だったNotarizeは米国時間3月25日、フィンテック専門のVCファームCanapi VenturesがリードしたシリーズDで1億3000万ドル(約141億円)を調達したと発表した。本ラウンドでのNotarizeの評価額は7億6000万ドル(約829億円)だった。この額は3500万ドル(約38億円)を調達した2020年3月のシリーズC時の3倍だ。最新のラウンドは、以前のラウンドすべての合計額を上回り、2015年の創業以来の累計調達額は2億1300万ドル(約232億円)となった。

本ラウンドには多くの投資家が参加した。Alphabetの独立グロースファンドCapitalG、Citi Ventures、Wells Fargo、True Bridge Capital Partners、そして既存投資家のCamber Creek、Ludlow Ventures、NAR(全米不動産業者協会)のSecond Century Ventures、そしてFifth Wall Venturesなどだ。

Notarizeは「ただの公証企業ではない」と主張する。むしろ(たとえばiBuyerなどの)事業の「ラストマイル」だとCanapi VenturesのパートナーであるNeil Underwood(ニール・アンダーウッド)氏は表現した。

Notarizeはまた「信頼とID承認」を事業所のプロセスにもたらすために進化してきた。

同社は2020年かなりの取引増を目の当たりにし、AdobeやDropbox、Stripe、Zillow Groupといった企業と新たに提携を結んだ。不動産、金融サービス、小売、自動車などの業界からの需要が激増した。

「2020年に世界はデジタル化を急ぎました。オンラインコマースは膨れ上がり、あらゆる産業の事業所は影響を免れるために基本的には1晩でデジタルに移行する必要がありました」とキンゼル氏は話した。「Notarizeはそうした事業所が信頼と利便性を確保しながら安全に取引を完了させられるようにサポートしてきました」。

同社は新たな資金をプラットフォームとプロダクトの拡大、そして「あらゆる規模の企業に対応」できるようにするのに使う計画だ。また、2022年は採用を倍増させる。

「Notarizeは時代遅れのビジネスモデルやテクノロジーをディスラプトしており、多くの企業が対面での取引に代わる安全なデジタル代替手法を提供する必要が出てくるにつれ、特に金融サービス分野で巨大な将来性があります」とアンダーウッド氏は話した。

Notarizeの成功は困難だった2019年に続くものだ。キンゼル氏によると、当時同社は「重要な資金調達」が失敗に終わり、従業員を解雇しなければならなかった。現状とはまったく逆の話だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Notarize資金調達

画像クレジット:z_wei / Getty Images

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

ドローンを使い建設、採掘現場での高精度3Dスキャンサービスを提供するSkycatchが27.3億円調達

Skycatchは米国時間3月25日、ADB VenturesとWaymakerが主導する2500万ドル(約27億3000万円)の資金調達を発表した。2013年に設立されたベイエリアを拠点とする同社は、主に建設現場や採鉱作業向けにセンチメートル級精度の3Dスキャンサービスを提供している。

創業者兼CEOのChristian Sanz(クリスチャン・サンズ)氏によると、このサービスはすでに世界中のさまざまな場所で展開されており、その数は1万箇所を超えているという。そのリストはチリ、コロンビア、ペルー、ブラジル、オーストラリア、カナダ、米国、日本など多岐にわたる。Skycatchは特に、移動が制限されている地点との連携を模索しているとのことだ。

「センチメートル単位の高精度データを生成するプロセスは非常に困難なことです。市場では一般的にレーザースキャンが利用されます」とサンズ氏は語る。「一般的に、ドローンはそのままではそれを実現できません。Skycatchの真の価値はインターネットに接続できないエッジ環境での運用だと考えています。当初はそこに最も需要があると考えていました。辺境で活動する鉱山会社がその例です」。

画像クレジット:Skycatch

Skycatchの技術は、DJI社製を含む既製のドローンに対応。3DマッピングソフトウェアとEdge 1と呼ばれるエッジプロセッサを搭載した基地局を提供する。また同社は市販のLiDAR(ライダー)企業と協力し、採掘現場の地下といったより困難な環境でのデータ収集をサポートしている。

アジア開発銀行(ADB)のDaniel Hersson(ダニエル・ハーソン)氏はTechCrunchに対する声明の中で「ADBは炭素排出量の削減、安全性および運用効率の向上につながるインフラプロジェクトにおいて、その技術を可能にする触媒的役割を果たすことを目指しています」と述べている。「高精度の3Dドローンデータを取り込み、処理し、分析するエンタープライズグレードのSkycatchの技術は、このミッションを達成するための重要な役割を担っています」。

この度の資金調達は、50人の従業員を擁する同社の営業およびマーケティングチームの拡大に充てられるが、これらのチームが同社の従業員に占める割合はかなり低い。

カテゴリー:ドローン
タグ:Skycatch資金調達

画像クレジット:Skycatch

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

オランダのブランド決済スタートアップRechargeが約13億円調達、Kreos Capitalがリード

オンラインブランド決済は現在、Spotify(スポティファイ)のバウチャー券、Netflixのバウチャー券、Neosurf、PaySafeカードなど、あらゆる分野を網羅している。消費者はさまざまなものの支払いにそれらを使う。そしてヨーロッパでは、彼らはますます大きなビジネスになっている。この度ヨーロッパのブランド決済企業のRecharge.comが、ロンドンに拠点を置く高成長企業向け成長負債プロバイダーのKreos Capitalが主導する資金調達ラウンドで、1000万ユーロ(約13億円)を調達した。2019年にはRecharge.comとRapido.comのブランドを所有するオランダのfintech Creative Groupは、Prime Venturesから2200万ユーロ(約28億円)の投資を受けている

Rechargeはまた、以前支払い会社のSmall WorldとAzimoそして英国のneobank Tandemを設立したMichael Kent(マイケル・ケント)氏を非常勤会長に任命した。

Recharge.comによると、調達した資金は同社のモバイル製品や製品ラインナップを拡大し、北米、ラテンアメリカ、GCCなどの地域での事業拡大を計画しており、2021年には4億5000万ユーロ(約580億円)の売り上げを目指している。

Recharge.comのCEOであるGüntherVogelpoel(ギュンター・フォーゲルポール)氏は声明で「私たちはオンデマンドで登場するタクシーから消費財の即日配送まで、瞬時に要望がが叶う世界に住んでいます。Recharge.comは必要不可欠な送金であれ、デジタル商品やサービスへのアクセスであれ、顧客の要望を満たすための迅速で安全かつシンプルな方法を提供します」と述べた。

ケント氏は次のようにコメントしている。「スーパーマーケットのギフトカードやスマートフォンによるトップアップの時代は終わりつつあります。世界的な金融不安の中、消費者が主流に代わるデジタル決済を求める中、ブランド決済は爆発的に増加しました。消費者は、オンラインでのブランド決済が安全で迅速、かつ便利であることを認識しています」。

RechargeはApple(アップル)、Google(グーグル)、Spotify(スポティファイ)、Xbox、PlayStationなどのブランドによるまざまなデジタルクーポンから、通話料やデータクレジットなどの国境を越えた送金を通じて、消費者の視点から市場を開拓している。

この分野で最大の企業は、プライベートエクイティグループのSilverlakeが所有するBlackhawkネットワークだ。同社は消費者に直接販売するモデルを持つ、ヨーロッパの大手企業と見なされている。

ケント氏はZoomで行ったTechCrunchの取材に対し、 「このビジネスの消費者サイドを世界中にコントロールしている企業がないので、これは大きなチャンスです」と述べている。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Recharge資金調達

画像クレジット:Recharge

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

加速するオンライン学習サービス、インドのEdTech大手Byju’sが評価額1.6兆円で近く654億円調達か

新型コロナウイルスパンデミックによってインドでオンライン学習サービスの浸透が加速したことを受け、2020年約10億ドル(約1091億円)を調達したインドのEdTech大手Byju’s(バイジュース)が新たな資金調達を開始させようとしている。

この件に詳しい2人がTechCrunchに語ったところによると、Byju’sは評価額150億ドル(約1兆6367億円)で新たに6億ドル(約654億円)超を調達することで交渉している。評価額は2020年後半に110億ドル(約1兆2002億円)、2019年7月は57億5000万ドル(約6274億円)だった。

関連記事:インドのオンライン学習大手Byjuが約530億円を調達、アプリ登録者6400万人超、有料購読者420万人超

共同創業者でCEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)氏は2021年2月、一部の既存投資家にかなりのサイズの新規調達を3月に行うことを告げた、と情報筋は話した。新規ラウンドの交渉はかなり進んでおり、いくつかの新規投資家がラウンドをリードすることが予想されているとのことだ。

Byju’sの広報担当は2021年2月と今週初め、コメントを控えた。

近年、インドの教育スタートアップが受け取った資金(Blume Venturesがまとめた画像とデータ)

同社は調達する資金をスタートアップのさらなる買収に使う計画だ。現在、米国拠点のスタートアップ(TechCrunchは社名を確認できなかった)と買収の話し合いをしており、インドの対面式コーチング機関Aakashを買収するためにデューディリジェンスを行っていると匿名希望の情報筋は語った。Byju’sは1年前に、インドと米国で学生にオンラインコーディングクラスを提供しているWhiteHat Jrを3億ドル(約327億円)で買収した

Byju’sは大学の学部や修士レベルのコースを学生が履修うできるように準備しており、近年は学校に通うすべての生徒にサービスを提供するためにコースを拡大してきた。Byju’sアプリでの個人指導はピザやケーキといった実社会のものを使って複雑な科目に取り組んでいる。

インド政府が数カ月にわたる全国規模のロックダウンと学校閉鎖を命令することになったパンデミックは、Byju’sそしてUnacademyやVedantuなどを含む他のオンライン学習スタートアップの成長を加速させた。

Byju’sはユーザー8000万人を抱え、うち550万人が有料のサブスクを利用している。GSV Venturesのマネージングパートナー、Deborah Quazzo(デボラ・クアゾ)氏は今週初めにインドのベンチャーファンドBlume Venturesが開催したセッションで、利益を上げているByju’sの2020年の米国での売上高は1億ドル(約109億円)超だったと話した。

スタートアップの幹部たちは最近開催されたUBSイベントで、Byjuの現在の収益ランレートは8億ドル(約874億円)で、今後12〜15カ月で10億ドルに達すると予想している。

Byju’sは現在、前回の資金調達で160億ドル(約1兆7473億円)と評価された金融サービスのPaytmに続くインドで2番目に価値のあるスタートアップになっている。

関連記事:インドの教育系スタートアップByju’sのCEOが将来の買収、新型コロナ影響、海外展開について語る

カテゴリー:EdTech
タグ:Byju’s資金調達インド

画像クレジット:Paul Yeung / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

VCたちが新たなRobloxを探す中、VRプラットフォームのRec Roomが約110億円調達

Robloxの大ヒットによる投資家の活発な需要は、この巨大ゲームに乗り遅れたベンチャーキャピタリストたちに競合プラットフォームへの投資を促している。

米国時間3月24日、Rec RoomはSequoiaとIndexから1億ドル(約110億円)を調達し、ラウンドにはMadrona Venture Groupも参加したことを発表した。今回の調達は2020年12月に完了した2000万ドル(約22億円)のシリーズCを含め、これまで5000万ドル(約55億円)以下しか調達していなかったRec Roomにとって、大きな資金流入だ。2019年に米TechCrunchは、同社が1億2600万ドル(約140億円)の評価額でシリーズBを調達したことを報じたが、今回の取引では同社の評価額は12億5000万ドル(約1400億円)となっており、Robloxの驚異的な成長を受けてゲーム分野に対する投資家のセンチメントがどのように変化したかを示している。

Rec RoomはVR専用プラットフォームとしてスタートしたが、ヘッドセットの販売が徐々に伸び悩む中、同社は従来のゲーム機、PC、モバイルを利用してリーチを拡大した。

本日の資金調達の発表に関するプレスリリースでRec Roomは、同社の 「ライフタイムユーザー数」 が1500万を超え、前年比で566%の収益増を達成したことを明らかにした。2020年12月、Rec RoomのNick Fejt(ニック・フェイト)CEOは米TechCrunchに対し、同社は過去12カ月でプレイヤー数を3倍に増やしたと語った。

Rec RoomはRobloxの先例に倣い、クリエイターのためのツールを構築し、ゲームクリエイターのためのオンプラットフォーム経済を構築しようとしている。Rec Roomによると、200万人のプレイヤーが同プラットフォーム上でコンテンツを作成しており、同社は2021年に100万ドル(約1億1000万円)以上を支払う予定だという。

関連記事:ソーシャルゲームプラットフォームのRec Roomの人気衰えず、シリーズCで20億円超を調達

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Rec Room資金調達

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(文:Lucas Matney、翻訳:塚本直樹 / Twitter

ベルリンの高級車配車サービスBlacklaneが約28億円調達、持続可能な移動手段として事業拡大を目指す

世界的にUber(ウーバー)の規模が拡大し続ける一方で、ドイツではより小規模なオンデマンド交通機関のスタートアップ企業が資金を調達し、特定のサービス分野をターゲットとするスタートアップにチャンスが残されていることを証明した。Blacklane(ブラックレーン)は、ベルリン、ロンドン、ドバイ、ロサンゼルス、ニューヨーク、パリ、シンガポールをはじめとする16都市で、オンデマンドの黒塗りの高級車による運転手サービスを提供しているベルリンのスタートアップで、この度2200万ユーロ(約28億円)の資金調達ラウンドを終了した。

Jaguar(ジャガー)が起ち上げてロンドンで運営している電気自動車を使った配車サービス「Havn」の株式の過半数を2月に取得したBlacklaneは、今回の資金調達を利用して、持続可能な移動への取り組みを継続的に拡大するとともに、より柔軟な乗車オプションを提供し、既存のビジネスを継続的に拡大していくという。

新型コロナウイルスとそれにともなう旅行の減少、特に狭い空間を他人と共有したいと思う人々が減ったことで、Blacklaneの2020年の月次収益は99%減少した。だが、アップラウンドの評価額で行われた今回の資金調達は、そんな1年を経て、同社がいかに成長の兆しを見せているかを示すものだ。

「世界の旅行業界とモビリティ業界は苦境に立たされており、いくつかのプレイヤーは大幅な削減、休眠、事業停止の間で苦闘しています。Blacklaneはこれを、旅行者の新たなニーズに応える機会と捉えています」と、Blacklaneの共同設立者でCEOを務めるDr. Jens Wohltorf(イェンス・ウォルトーフ博士)は声明の中で述べている。「今回の資金調達のおかげで、レイオフをすることなく、イノベーションを迅速に進めていくことができます」。

同社によると、今回の資金は、既存の投資家であるドイツの大手自動車会社Daimler(ダイムラー)、アラブ首長国連邦のALFAHIM Group(アルファヒム・グループ)、btov Partners(ビートゥブイ・パートナーズ)からのものだという。アップラウンドによるとのことだが、Blacklaneはいかなる数字も開示しておらず、評価額も明らかにしていない。これまでの支援者には、日本の大手人材派遣企業であるRecruit Holdings(リクルートホールディングス)の戦略的投資部門も含まれており、2018年には約4500万ドル(約49億円)のラウンドを行うなど、同社はこれまでに約1億ドル(約109億円)を調達している。

今回の資金調達は、新型コロナウイルスの影響から旅行・交通系スタートアップにとって非常に厳しい1年となった後に行われたものだが、Blacklane自身も2020年のパンデミック発生後に月次収益が99%減少したと述べている。

同業他社の中には、フードデリバリーや他の交通手段(自転車やスクーターなど)など、他の分野に多角化することで、より中核的な配車サービス事業を補うことができた企業もある。その一方で、配車サービスは公共交通機関よりも安全な移動手段とも捉えられている。しかし、Blacklaneは、自分たちを「すべての人々が利用する乗り物」とは位置づけておらず、その中心的なユースケースは、高級ハイヤーや空港への送迎(これも死に絶えていた)であった。そのため、人々の移動が止まると、Blacklaneのビジネスは急落した。

パンデミックの前には、集中的なビジネスモデルで利益を上げることができそうだったことを考えると、Blacklaneにとっては特に悪いタイミングだった(2020年の財務状況が明らかになるにはもうしばらく時間がかかるが、同社から発表された直近の決算では、2018年に約1800万ドルつまり20億円近い純損失を計上している)。

しかし、Blacklaneがアップラウンドで資金を調達できた理由は、別の側面にある。

2020年の夏、交通機関や旅行会社が少しずつ回復の兆しを見せ始めたとき、同様に回復の兆しを見せたBlacklaneは、それと同時に多様化に向けて一歩を踏み出した。

2021年3月初めには、22都市で、注文までのリードタイムを30分に短縮した「ショーファー・ハイヤリング」というオンデマンドサービスを追加した(従来のサービスはもっと事前に予約が必要だった)。また、収益の基盤となっていた空港送迎がまだほとんど戻ってきていないことから、短距離サービスの料金体系を競争力を高めるように変更した。

さらに、Blacklaneは、ジャガーが設立した電気自動車サービス「Havn」の株式の過半数を非公開で取得。すでに同社が運用していたTesla(テスラ)の車両と合わせて、より持続可能な移動手段への移行を先導している。「世界的な旅行規制は、我々にとって、安全で持続可能な旅行に対する可能性をリセットするための一度きりのチャンスです」と、ウォルトーフ博士は声明の中で述べている。「Blacklaneは責任を持って回復し、人と地球の両方に配慮しながら成長を続けていきます」。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Blacklaneドイツ資金調達電気自動車配車サービス

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

プライバシーとデータのコンプライアンスを自動化するKetchが約25億円を調達

Ketchは、オンラインのプライバシー規則とデータのコンプライアンスが複雑さを増す世界に対処しようとする企業を支援するスタートアップだ。同社はシリーズAで2300万ドル(約25億円)を調達したと発表した。

また、同社はステルスから正式に姿を現した。筆者は2020年に同社のPrivacyGraderツールについて記事を書いたが、ここにきて同社はさらに大きなビジョンや有料の製品を公表した。

関連記事:企業の情報開示を支援する無料ツールPrivacyGrader

Ketchを創業したのはCEOのTom Chavez(トム・チャベス)氏とCTOのVivek Vaidya(ヴィヴェーク・ヴァイディヤ)氏だ。2人は以前にデータ管理プラットフォームのKruxを創業し、2016年にSalesforceに買収された。ヴァイディヤ氏は筆者に対し、Ketchは自らに対する問いかけの答えだと語った。「どのようなインフラストラクチャを作れば、以前の自分たちはより良くなるだろうか?」。

チャベス氏は、Ketchは訪問者や顧客がどこにいても企業が常にデータ規則を遵守するためのプロセスを自動化できるように設計されていると語る。同氏は、ヨーロッパのGDPRのような地域ごとの規則があると最も厳しいルールにグローバルで従おうと考えてしまいがちだが、それは必要ではなく望ましくもないという。

「データを使って成長し、規則に従うことは可能です。我々のある顧客は、規則を守るためにデジタルマーケティングを完全に止めてしまいました。このような事態は防がなくてはなりません。【略】この顧客は責任感がたいへん強いのですが、複雑さに対処するツールを知らなかったのです」とチャベス氏は語る。

画像クレジット:Ketch

創業者の2人は、物事は考えているよりもさらに複雑だとも指摘する。真のコンプライアンスは「ハリウッドの正面入口」のようなプライバシーのバナーだけにはとどまらず、複数のプラットフォームにわたって顧客のリクエストを本当に実行することが求められるからだ。ヴァイディヤ氏は例として、誰かがメーリングリストを解除する際には「メールが今後確実に送られないように、そしてタイムリーに顧客の選択に応えるために必要な、複雑なワークフロー」が存在すると説明する。

チャベス氏は「顧客から『私のデータを削除して欲しい』と言われたのにマーケティングのメールやターゲティング広告がまだ顧客に届くとしたら、『弊社の社内では対応しました、それはマーケティングやメールのパートナー企業の問題です』と説明しても顧客は満足しないでしょう」と補足した。

同氏は、Ketchは既存のマーケティングや顧客データツールに代わるものではなく「企業が事業を運営している管轄区域に応じて規則に遵守するための設定をするもの」と説明する。資金調達の発表の中で、Patreonの法律顧問代理であるPriya Sanger(プリヤ・サンガー)氏はKetchについて「最短のエンジニアリング時間で我々のシステムに統合」し「同意管理とオーケストレーションシステムを簡単に設定し国際的に展開できた」と述べている。

シリーズAではCRV、super{set}(チャベス氏とヴァイディヤ氏が設立したスタートアップスタジオ)、Ridge Ventures、Acrew Capital、Silicon Valley Bankが支援した。CRVのIzhar Armony(イザール・アーモニー)氏とAcrewのTheresia Gouw(テレジア・ゴウ)氏がKetchの経営陣に加わる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Ketch、資金調達プライバシーPrivacyGraderコンプライアンス

画像クレジット:Ketch

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

センサーの追加なしでフィットネスバイクのケイデンスを測定するシステムのMotosumoが6.5億円を調達しPelotonに戦いを挑む

デンマークを拠点とするMotosumo(モトスモ)は、ロンドンのMagenta Partnersが主導し、従来の投資家が参加したシリーズAラウンドで600万ドル(約6億5000万円)を調達した。同社はこの資金で、ヨーロッパ、北米、アジア、オーストラリアでネットワークを組むスピンクラスのインストラクターを倍増し、技術部門とマーケティンングの強化を行う。

2015年に創設されたこのフィットテックスタートアップは、センサーを追加することなくフィットネスバイクのケイデンスを測定するシステムを開発した。ユーザーは、自分のスマートフォンやタブレットをフィットネスバイクに取り付けるだけで、運動の状態をリアルタイムでモニターできるようになる。Peloton(ペロトン)のような高価なネット接続式のフィットネスバイクを買う必要はない。屋根裏部屋で埃を被っている昔のフィットネスバイクを引っ張り出して、ストラップでスマホを縛り付けてペダルを漕ぐだけだ。

同スタートアップは、これまでどちらかというとB2Bに軸足を置き、リアルタイムのトラッキングでフィットネスの質の向上を図りたいと望むスピンクラスのインストラクターやジムに、ソフトウェアを販売してきた。だが今は、B2C事業にも乗り出した。新型コロナのパンデミックで人々がなかなかジムに通えない状況が続く中、家庭向けフィットネス事業にチャンスを見いだそうという考えだ。

「私たちはこのほど、B2C向け製品(Motosumo)の提供を開始しました」と、CEOのKresten Juel Jensen(クリステン・ジュエル・イエンセン)氏はTechCrunchに話した。「B2B製品(Momentum)には2万5000件を超えるユーザー数があり、2020年はダウンロード数が10万を超えました。そのB2CバージョンであるMotosumoのローンチにともない、私たちはユーザーをアクティブメンバーに導くための先行投資も行っています」。

「B2Cマーケティングは始まったばかりですが、初期メンバーのパフォーマンスはこの数カ月間で、セッションの平均的な評価は5を満点として4.9と非常に好調です。Motosumoのユーザーベースは、今後急速に伸びていくと期待しています」。

Motosumoは、モバイルベースのサイクリングトレーニングアプリに、ケイデンス、スピード、距離、カロリー消費量を測定する数量化技術を採り入れている。また、インタラクティブな3Dゲーム、チームチャレンジ、国際的なリーダーボードでモチベーションを高めてくれる。

「私たち独自の運動テクノロジーがあって初めて、Motosumoは実現しました。フィットネスバイクを持っているすべての人たちを、リーダーボードに名前が載るように、競争に参加するように、そしてインストラクターからの指導を受けるように鼓舞します」とジェンセン氏。「スマートフォンやタブレットに内蔵された加速度センサーとジャイロスコープを利用し、ケイデンス(1分あたりの回転数)、カロリー消費量、距離といった標準的なサイクリングの成績指標を計算します。専用ハードウェアやバイクのセンサーや心拍モニターなどには一切依存しません。

「これらのセンサーも、ユーザーが望む場合は接続して付加的なデータを取得することが可能ですが、なくても問題ありません。センサーなど備えていない20年前のフィットネスバイクでも、私たちのコミュニティのレースに参加してリーダーボードを駆け上ることが可能です。Motosumoのアルゴリズムは独自のもので、機械学習ループでトレーニングしています。現在の精度を出せるまでに数年かかりました。そこはバイク内蔵のセンサーと変わりません。これが新規競合他社を寄せつけない大きな砦となります」。

Motosumoはプラットフォームに独自のトラッキング技術を採り入れ、国際的なフィットネスインストラクターのネットワークが主催する一連のスピンクラスを生配信している。そのコンテンツに無制限アクセスできるコースの月額利用料は13ドル(約1400円)。Pelotonよりも安い。

そのフィットテックが(比較的)安価であることの他に、同社は他社のサービスとの差別化要素として、インタラクティブ性を挙げている。クラスの生配信では遅延ゼロを謳い、インストラクターは本当の意味でリアルタイムのフィードバックを送ることができる。現在同プラットフォームでは5人のコーチが指導を行っているが、ジェンセン氏によれば、6週間以内にさらに5人が増員されるという。

「Motosumoのライブフィットネス体験は、他社と大きく異なります」と彼は主張する。「ライブ体験によって、コーチたちは個人に合わせたワークアウトを指導できるようになり、ユーザーのコミュニティへの帰属意識が増し、体験のインタラクティブ性がさらに高まります」。

「Motosumoは、毎週40本以上のライブワークアウトを提供していますが、新しいコーチが加わりメンバーが増えれば、それに応じて増やしていきます。他社のプラットフォームは、ライブ配信と言っても、その多くは15〜60分のバッファーストリームです。私たちは不断の努力によって遅延を0.5秒にまで縮めました。これは、インストラクターが数字や絵文字や、いろいろなシチュエーションにその場でリアクションするという、実際にスタジオにいるような体験を提供するための投資です。ワークアウト1周年のお祝いを贈るといったことばかりではありません。それは私たちが使命としている、あらゆる面で本当にスタジオにいるようなライブ体験です」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Motosumoフィットネス資金調達

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(文:Natasha Lomas、翻訳:金井哲夫)

整理不要の情報共有ツール・社内Wiki「Nerve」を手がけるビヘイビアが3500万円を調達

整理不要の情報共有ツール・社内Wiki「Nerve」を手がけるビヘイビアが3500万円を調達

整理不要の情報共有ツール・社内Wiki「Nerve」を提供するビヘイビアは3月25日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資および融資による総額約3500万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はSkyland Ventures、個人投資家、また融資元は日本政策金融公庫など。調達した資金は、プロダクト開発およびマーケティング強化に用いる。

Nerveは、業種・職種を問わず活用できる、クラウドベースの社内向け情報共有ツール。誰でも・いつでも・どこでもノートを書いて共有でき、蓄積された情報はAIが自動で整理するため、整理整頓の手間もなく必要な時にすぐに見つけられるという。

整理不要の情報共有ツール・社内Wiki「Nerve」を手がけるビヘイビアが3500万円を調達

多くのツールが採用するフォルダー型管理は、ひとつのノートがひとつのフォルダーにしか所属できず混沌としがちという。Nerveが採用するネットワーク型管理では、ひとつのノートが複数の「リンク」を持つことができ、さらに自動分類が行われる。

整理不要の情報共有ツール・社内Wiki「Nerve」を手がけるビヘイビアが3500万円を調達

また、整理の手間はノート(情報)を書くことへの敬遠につながっており、整理が滞ると情報を探すことが難しくなっていた。このため自分だけの個人メモで済ませる人が増えてしまい、暗黙知が暗黙知のままになりがちという。

一方Nerveの場合、整理を気にせず書き始められるため、気軽にノートを書き合う文化が生まれるとしている。Nerveならチームの誰もが習慣としてノートを書くようになり、暗黙知の形式知化を加速できるとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達(用語)ビヘイビア(企業)日本(国・地域)

エンジニア採用時のコーディング試験サービス「HireRoo」が3600万円を調達、β版提供も開始

エンジニア採用時のコーディング試験サービス「HireRoo」が3600万円を調達、β版提供も開始

エンジニア採用時のコーディング試験サービス「HireRoo」(ハイヤールー)を提供するハイヤールーは3月25日、第三者割当増資による総額3600万円の資金調達を発表した。引受先は、プライマルキャピタル3号投資事業有限責任組合と富島寛氏(メルカリ共同創業者)。また、HireRooのβ版提供を開始した。

HireRooは、リモート採用下での候補者の技術評価に必要なツールをすべて兼ね備え、課題の自動採点やスクリーニングなどにより、優秀なエンジニア採用を促進するサービス。

調達した資金は、開発体制の強化とCS組織の立ち上げに活用する。今後はコーディング試験サービスであるハイヤールーを基軸に、優秀なエンジニアが集まるプラットフォームの形成や、エンジニア採用の課題に対するソリューションを展開する。

ハイヤールーによると、エンジニアの技術力の定量化は非常に難しく、採用プロセスにおいて大きな課題となっているという。また、技術力の評価だけでなく、指向性やコミュニケーション能力の評価や他の候補者との比較もエンジニア組織づくりには欠かせないとしている。

これら課題に応えるべく、HireRooではGAFAの実践しているエンジニア採用プロセスを低コストで導入できるようにしており、候補者の定量評価・比較・スクリーニングが行えるという。またリモート特化のUI・UXで高いCX(Candidate Experience。応募者体験)を実現しているとした。

またすでに複数社にてβ版の試験導入を実施しており、エンジニア採用に不可欠なサービスとなるべく機能開発・改善に取り組んでいるという。

候補者の技術力を定量化

企業は、用意されている問題を候補者に出題でき、候補者の提出コードについては自動採点のもとパフォーマンスを算出する。定性評価と組み合わせ候補者の技術力をより詳細に評価できるという。IDEと実行環境をすべて用意したオンライン完結型となっており、実施後は技術レポートとして使用可能。GAFAも実践している技術試験を既存選考フローに追加できるという。

エンジニア採用時のコーディング試験サービス「HireRoo」が3600万円を調達、β版提供も開始

採用コストを下げるスクリーニング

HireRooでは、複数の候補者に同じ問題を出題することによって、自動でレポートを作成し候補者の技術力をランキング化する。これにより従来エンジニアが行っていた、書類選考や時間がかかっていた技術チェックなどが不要となり、クリエイティブワーカーがよりクリエイティブな仕事に専念できる。

エンジニア採用時のコーディング試験サービス「HireRoo」が3600万円を調達、β版提供も開始

リモート採用特化UI/UXによる高いCX

HireRooは、リモート採用特化型のUI/UXを提供しており、面接官・候補者の両者にとって高いUXを実現する。ドロップインで始まる技術選考や、共同編集が可能なIDE、サーバーを用意する手間いらずのクラウド実行環境など、様々な機能によりCX向上に注力しているという。

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カテゴリー:HRテック
タグ:エンジニア(用語)資金調達(用語)ハイヤールー(企業)プログラミング(用語)日本(国・地域)

アマゾンも利用する定性的ユーザー調査のためのCRM「User Interviews」がシリーズAで10.9億円調達

Entrepreneurs Roundtable Acceleratorに支援され、製品研究チームがユーザーフィードバックを得るためのCRMを構築しているUser Interviews(ユーザーインタビューズ)が、1000万ドル(約10億9000万円)のシリーズAラウンドをクローズした。今回の資金調達はTeamworthy Venturesが主導し、Las Olas、Accomplice、FJ Labs、ERA、Trestle Partners、そしてValueStreamが参加した。

Basel Fakhoury(バーゼル・ファクホーリー)氏が共同で設立したこの会社は、ある意味では失敗から生まれた。元々User Interviewsのチームは、ホテル向けのアメニティ物流プラットフォーム「Mobile Suites」というプロジェクトからスタートしている。これは不発に終わり、Basel Fakhoury(バーゼル・ファクホーリー)氏、Dennis Meng(デニス・メン)氏、そしてBob Saris(ボブ・サリス)氏からなる3人のチームは、次の製品を決める前にもっとユーザーリサーチを行うことにした。

そのリサーチを集めようとしたとき、彼らは大きな問題にぶつかった。企業がユーザー調査を行うには、数週間どころか数カ月かかることが多いのだ。そこで同社は、調査対象者を迅速かつ効率的に調達するためのプラットフォームを構築することにした。このプラットフォームでは、アルゴリズムを使用して適格で熱心な参加者とクライアントを組み合わせる。

この製品は「Recruit」となり、アラカルトモデルで運営されることになった。Recruitを補完するために、チームはリサーチチームがパネルを管理するためのCRMおよびリクルートツールである「Research Hub」も立ち上げた。誤解のないようにいうと、User InterviewsはアンケートやABテストを自ら実施するのではなく、参加者の管理や調査のためのロジスティックスをサポートしている。

画像クレジット:User Interviews

最近User Interviewsはサブスクリプション層を追加し、企業がソフトウェアへのアクセスを使用量ベースではなく、年次ベースで購入できるようにした。ファクホーリー氏によると、この2つのモデルにより、企業は完全にコミットする前にプラットフォームを試すことができるとのこと。

User Interviewsによると同社は年間140%の成長を遂げており、パンデミックの際にはそれが加速したという。顧客リストにはAmazon(アマゾン)、Microsoft(マイクロソフト)、Colgate(コルゲート)、Spotify(スポティファイ)などが名を連ねている。

User Interviewsは今回の資金調達により、製品部門の人員を増やすとともに、ユーザーテストソフトウェアや顧客データ管理システムとの統合を進めていく予定だ。

現在のチームは約50名で、完全なリモートワークを行っており、従業員の約半数が女性だという。

ファクホーリー氏によると、同社にとって最大のチャレンジは、同時に2つのことを実行できるようにすることだという。

「当社はRecruitでこのレガシーな業界を破壊することと、Research Hubでカテゴリーを創造することを同時に行っています」と同氏は語る。「これらはやや異なる戦略とミッションであり、その両方を並行して行えるようにすることが、我々にとっての大きな課題です」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:User InterviewsCRM資金調達

画像クレジット:User Interviews

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(文:Jordan Crook、翻訳:Aya Nakazato)

フランスのVC「Breega」が約140億円の資金を調達

パリに拠点を置くベンチャーキャピタル(VC)のBreegaが、第3ファンドの最終クロージングを発表した。同社はこれまでに1億3000万ドル(約140億円)を調達している。

これはBreegaにとって3番目のファンドで、正式にはBreega Capital Venture 3と呼ばれている。Breegaの以前のファンドは2015年に4500万ユーロ(約58億円)でローンチした。

Breegaは特に垂直市場には焦点を当てていない。同社はマーケットプレイス、SaaS、アグテック、HRテクノロジー、ロボティクスなど、さまざまなカテゴリーに投資できるとしている。

投資チームはすでにBreegaの新しいファンド資金の一部を投入している。ポートフォリオのスタートアップにはStations-e、Trustpair、IoTerop、BeOp、Otodo、Humanity、Alice&Bob、Neobrain、Didomi、Ubble、Ponicode、reciTALが含まれ、いずれもシードあるいはシリーズAの段階で資金調達を行っている。

Breegaは投資先企業の運営を支援することができると考えている。同社は人事、事業開発、コミュニケーション、法務、財務に関して独自の専門家チームを保有している。

同ファンドのリミテッドパートナーには、起業家からビジネスエンジェルに転身した企業も含まれる。例えばFoodChériの共同創設者であるPatrick Asdaghi(パトリック・アスダギ)氏は、この新ファンドに投資している。FoodChériはSodexoに買収される前に、Breegaから資金を提供されていた。

その他のリミテッドパートナーにはBpifrance、European Investment Fund、Isomer Capital、そして複数の銀行や保険会社が含まれる。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Breegaフランス資金調達

画像クレジット:Breega

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

鉱山や港で利用されるLiDAR機器メーカーの豪Barajaが日立建機などから33.7億円調達

世界中のLiDAR企業がSPAC(特別買収目的会社)との合併に向かっているが、Baraja(バラジャ)は上場を急いではない。オーストラリアのLiDARメーカーは「ユニークで独創的」な画像システムの展開と開発を継続するためにシリーズBで3100万ドル(約33億7000万円)を調達した。本ラウンドには、お決まりのVC以外の参加もあった。

BarajaのLiDARは、同社が「SpectrumScan」と呼ぶものを活用している。これは光の方向づけは物理学に委ねられているというものだ。レーザーをプリズムに通すことで、異なる波長の光がさまざまな角度に向かい、そして跳ね返ってくるときは同じ道を通る。実際はそれ以上に複雑だが、もし興味があるなら筆者が2020年のCES時に書いた記事をチェックして欲しい。そこにより詳細に書いている。

LiDARの最もはっきりしている応用、つまり自動運転車両は正確には展開が始まったわけではないが、同社は2020年からじっとしていたわけではない。共同創業者でCEOのFederico Collarte(フェデリコ・コラルテ)氏は2020年に、LiDAR産業について「差異化を図らなければ、それまでです」と筆者に語った。そしてBarajaはテックだけでなくマーケットへのアプローチでもそのとおりに行った。

LiDARは、実際のところ多くの産業において有用であることがわかっている。しかし大半のLiDARユニットは、熱や寒さ、他の環境的要因に影響されるかなり複雑な機械要素を含む。しかしBarajaではそれほどではない。可動部は1カ所だけで(かなりゆっくりで安定していて、光学部のどこかにある)、厳しい条件に長期間耐えることができる。

過去2年における最大の顧客の1つは鉱業部門だったとカラルテ氏は説明した。なぜだかおわかりだろう。鉱山の正確な3D画像を作ることは、人間や通常のカメラにとって驚くほど難しいタスクだが、ほぼ特別な目的のために作られたLiDARにとってはそうではない。もしLiDARが熱、寒さ、採掘作業にともなう力に耐えることができればだ。

画像クレジット:Baraja

「鉱業では、鍵となるのは信頼性と耐久性です」とコラルテ氏は話した。「当社はオーストラリアの砂漠にある鉱山でユニットを2年間展開してきました。返品保証で1台戻ってきました。見てのとおり、当社のユニットは鋼青色ですが、そのペイントが完全にはげ落ちていました。金属が露出していましたが、まだ機能しました」。

センシティブなレーザーとレシーバーは機械のボディの奥深くに隠れていて、光ファイバー経由でヘッド部分にある「鈍い」レンズとプリズム要素につながっているため、デバイスは灼熱の砂の中で何年も生き延びることができた。市販されているLiDARでこうした性能を主張できるものは多くない。

日立建機との提携は、同社が投資を決めるほど成功的なものだった。

戦略的投資は財政的支援を多様化するコラルテ氏の計画の一環だった。「当社は長いタイムラインを持つような機関投資家を引き込もうとしています」と述べた。

ベンチャーキャピタルはまだ投資家に含まれているが、同氏は年金基金と思われる新規投資家のHESTAが、VCに加えて探しているタイプの投資家だと指摘した。とはいえ、以前の投資家のBlackbird VenturesやMain Sequence Venturesも今回のラウンドに戻ってきて、新たなVCとともに参加している。4000万豪ドルは換算すると3100万米ドル(約33億7500万円)になり、2018年の3200万米ドル(約34億7800万円)のシリーズAよりわずかに少ないが、規模が縮小したようには感じない。

コラルテ氏はR&Dプロセスの拡大としてだけではなく事業として展開することの重要性を強調した。

「もしテクノロジーだけに取り組んでいるのなら、それは構いませんが、今日顧客や売り上げを持つことはないでしょう」と同氏は述べた。「当社には売上や現実世界の応用があります。そうした筋肉を鍛えているのです。顧客サポート、設置、保証、故障モードを上手にこなせるようになっています。企業が繰り返し練習し、純粋なR&D以上になる必要があるすべてのエリアです」。

同氏は、オーストラリアの主要な港は自立性に向けた取り組みの一環としてBarajaのユニットを使っていたと話し、鉱業に加えて海運業もLiDARが過酷な状況に置かれる分野だと指摘した。

しかしR&Dはまだ同社の資金使途計画の大半を占める。短期的に大きな変更は、車両メーカーやサプライヤーが作業しやすいと感じるはずの統合された「ワンボックス」システムの提供だ。そして長期的にはシステムの基本的なアーキテクチャも同じく進化する。

「当社は通信分野の出身であり、巨大な光学(レンズ、プリズム、光ケーブル管束を意味する)から光工学と集積回路へと移行しました。我々は常にそれを心に留めていました」とCTOで共同創業者のCibby Pulikkaseril(キビー・プリカセリル)氏は述べた。「車両にある他のチップと違いはないようなので、これらをチップに搭載するというのが私のロードマップです」。

コラルテ氏は、誰にとっても小型化は難しい一方で、往々にして特定のサイズでなければならず、レーザーを正しく向けるために特定の円弧をカバーしなければならないLiDARのスキャニングメカニズムでは特に難しいと指摘した。Barajaはすでに「SpectrumScan」方式特有のソリューションに向けて順調に進んでいると、同氏は自慢げに述べた。

同社は、2022年がティア1サプライヤーや自動運転レベル4に向けて争っている他社にとって大きな年となると力説した。だからこそ多くのLiDAR企業がSPAC経由での上場を選んでいる。しかしそれは少なくとも現在Barajaが選ぶプランではない。

「当社もそれには目を向けています。しかし急いではいません」とコラルテ氏は話した。

前述のVCと日立建機に加え、Regal Funds Management、Perennial Value Management、InterValley Venturesもラウンドに参加している。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:BarajaLiDAR資金調達

画像クレジット:Baraja

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

暗号通貨ウォレットと取引所のBlockchain.comが約326.2億円調達、評価額は約5654.8億円に

Coinbaseが米国での株式公開を控えている中、別の仮想通貨関連企業が2021年第1四半期(1月〜3月)に話題となっている。人気の仮想通貨ウォレット、取引所、ブロックエクスプローラーなどを運営するBlockchain.comが、3億ドル(約326億2000万円)のシリーズCラウンドを調達した。

2021年2月にもBlockchain.comについて取り上げていたが、同社は当時、1億2000万ドル(約130億5000万円)の資金調達ラウンドを発表していた。つまり、Blockchain.comは前回の資金調達からわずか数週間後に再度資金調達を行っている。

今回の資金調達はDST Global、Lightspeed Venture Partners、VY Capitalがリードした。また、既存の投資家も参加している。米国時間3月24日の資金調達ラウンドの結果、同社のポストマネー評価額は52億ドル(約5654億8000万円)に達した。

もともとBlockchain.infoという名前だったBlockchain.comは、最初にブロックチェーンエクスプローラーを立ち上げた。ブロックチェーン業界に精通していない人のために説明すると、同エクスプローラーではブロックチェーン上で発生したあらゆる取引のハッシュを入力することで、詳細な情報を得られる。そしてトランザクションの取引額、確認回数、送信者と閲覧者のウォレットアドレスなどを取得できる。

Blockchain.comは、オープンソースのウォレットでよく知られている。同社は非保管ウォレットを提供しており、ユーザーは自分で秘密鍵を管理できる。Blockchain.comはユーザーの資金に直接アクセスできない。

3100万人のユーザーがBlockchain.comを利用している。アクティブユーザーの数は過去12カ月間で3倍になった。

Blockchain.comは時間とともに活動を多様化してきた。取引所を立ち上げ、Blockchain.comから直接仮想通貨を売買できるようにした。同スタートアップは機関投資家にもサービスを提供している。Blockchain.comは仮想通貨の売買、保管、大量の店頭取引などの際に役立つ。

収益に関しては「Blockchain.comは各ビジネスラインで高い収益性を誇っている」 と共同ファウンダーでCEOのPeter Smith(ピーター・スミス)氏はいう。新たな資金の流入は、後発の投資家と協力し急速に成長するためのものだ。例えばBlockchain.comによる買収も今後期待できる。

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Blockchain.com資金調達

画像クレジット:Dan Kitwood / Getty Images

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(文:Romain Dillet、翻訳:塚本直樹 / Twitter

破産した拡張現実のパイオニアBlipparがB2B事業で復活、約5.4億円の資金を調達

AR(拡張現実)分野のパイオニアであるBlippar(ブリッパー)は、初期の投資家が撤退したため、新たな投資家を募るという苦難の歴史を歩んできたが、AR分野のB2B企業として位置づけを見直す活動を18カ月間続けた結果、500万ドル(約5億4000万円)の資金調達を完了することができた。

このプレシリーズAラウンドは、Chroma Ventures(クロマ・ベンチャーズ)とWest Coast Capital(ウェストコースト・キャピタル)が共同で主導した。また、カナダの起業家であるAnthony Lacavera(アンソニー・ラカベラ)氏も自身の投資会社であるGlobalive Capital(グローバライブ・キャピタル)を通じて参加した。Chroma Venturesは、Paddy Burns(パディ・バーンズ)氏とChris van der Kuyl(クリス・ファン・デル・クイル)氏のゲーム会社である4J Studios(4Jスタジオ)の投資部門。West Coast Capitalは、スコットランドの起業家Sir Tom Hunter(トム・ハンター卿)とその家族のプライベート・エクイティ部門である。

これらの新たな投資家は、既存の株主であるCandy Ventures(キャンディ・ベンチャーズ)に加わる。同社は、Blipparの救済にあたった英国の不動産起業家、Nick Candy(ニック・キャンディ)氏が設立したマルチステージ投資会社だ。この新会社は、Blipparの資産を特許売却により取得し、Blipparの共同設立者で元CEOのAmbarish Mitra(アンバリッシュ・ミトラ)氏を引き留めた。もっとも、現在同氏は”チーフ・クリエイティブ・オフィサー”という地位に就いている。全盛期のBlipparは、1億3000万ドル(約141億円)の資金を調達し、15億ドル(約1627億円)の評価額を誇示して、消費者向けAR市場に参入しようとしていた。しかし、今ではSaaS型AR制作プラットフォームのBlippbuilder(ブリップビルダー)が、B2B市場への復活を可能にする資産となっている。

Blipparは、最盛期には340人の従業員を抱えていたが、現在はわずか30人に過ぎない。しかし、倒産以前のIPと資産がすべて残っており「日が照っているうちに干し草を作ろう」としているところだ。

AR技術は現在、ライブイベント(復活すれば!)、小売販売、FMCG(日用消費財)、自動車、医療、教育などの分野で利用されている。

噂されているApple(アップル)のARグラスや、モバイルの検索結果にARが含まれるようになることは、AR技術の普及を後押しするだろう。同様に、新型コロナウイルス流行によってソーシャル・ディスタンスを保つ必要性が続いていることも、その一因となっている。

大手テクノロジー企業はARツールを開発しているが、これらはプラットフォームに依存する。だが、Blipparが目指しているのは、プラットフォームを問わないARツールだ。

Blipparの市場参入には2つのルートがある。1つめはSaaSプラットフォームのBlippbuilderを介して、代理店、ブランド、ARコンテンツクリエーターがコミュニケーションやキャンペーンを作成できるようにすること。そしてもう1つは、社内チーム「Studio B」による注文制作の仕事である。

現在のBlipparでCEOを務めるFaisal Galaria(ファイサル・ガラリア)氏は次のようにコメントしている。「このようにすばらしい投資家の方々を迎えることができ、私たちはとても興奮しています。2020年はBlipparにとって変革の年となりました。収益は前四半期比で200%増加し、経営陣も引き続き強化され、OnePlus(ワンプラス)、Kellogg’s(ケロッグ)、Dr Pepper(ドクターペッパー)などの大手グローバルブランドに最先端のARキャンペーンを提供することができました。私たちは、AR分野における10年間の投資、実績、技術面でのリーダーシップを活用して、さらに集約し、引き締まった、これまで以上に優れた企業に生まれ変わりました」。

バーンズ氏とファン・デル・クイル氏は、Microsoft(マイクロソフト)、Sony(ソニー)、Nintendo(任天堂)の各ゲーム機にMinecraft(マインクラフト)を移植したことで知られている。ファン・デル・クイル氏は、声明の中で次のように述べている。「ARの没入感は、ゲーム業界にとって最も重要なユースケースの1つです。BlipparのAR技術は、私がここ数年見てきた中で最も先進的で革新的なものであり、ARで将来の究極のゲーム体験を支える大きな可能性を秘めています。私たちは今後のBlipparの発展に参加できることを楽しみにしています」。

加えて、技術系投資会社Northzone(ノースゾーン)のベンチャーパートナーであるJustin Cooke(ジャスティン・クック)氏も、今月Blippar社の取締役に就任した。英国政府は、新型コロナウイルスの影響で苦境に立たされているハイテク企業を支援するために設立されたFuture Fund(フューチャー・ファンド)と呼ばれるマッチ・ファンディング制度を通じて、Blipparに少数株主として出資している。

Blipparは、Niantic(ナイアンティック)、Unreal(アンリアル)、Unity(ユニティ)、8th Wall(エイスウォール)、Zappar(ザッパー)、Magic Leap(マジック・リープ)などの市場に参入し直そうとしている。しかし、ARが成熟するにつれ、適切な場所に戻ってくるかもしれない。

ブランドがBlipparのプラットフォームをどのように利用しているか、一例をご紹介しよう。

カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:Blippar拡張現実資金調達

画像クレジット:Blippar

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hirokazu Kusakabe)