アップルがApple MusicやApple Arcadeなど複数サービスのサブスクセット販売を計画中

Bloomberg(ブルームバーグ)によると、アップルはさまざまな定期購読(サブスクリプション)サービスのバンドルプランをリリースする準備を進めているという。「Apple One」 と呼ばれる可能性があるこのバンドルパッケージには、Apple Music、Apple Arcade、Apple TV+、Apple News+、iCloudなど同社のサービスが含まれており、それぞれを個別に購読するよりも安い料金で提供される。

ブルームバーグによると、この新バンドルサービスは新型iPhoneが発売される言われている10月に、早くも登場する可能性があるという。バンドルにはApple MusicとApple TV+を含むエントリーレベルのプランのほか、Apple Arcadeを追加するアップグレードオプション、Apple News+を含むオプションも存在する。記事によると、より高価なオプションとして追加のiCloudストレージもバンドルされるというが、これらの計画はリリース前に変更される可能性がある。

最終的な価格設定は報じられていないが、月額2ドルから5ドルの月額料金が節約できるとされている。またすべてのサブスクリプションは、既存のファミリープランで利用できる。つまり1世帯で最大6人の家族が、アップルのバンドルサービスにアクセスできることになる。

アップルはまた、新しいハードウェアの購入に無料サブスクリプションをバンドルする戦略を継続するといわれている。昨年にはApple TV+が発表され、最近リリースされたハードウェアを購入した顧客に1年間無料で提供された。

サービスサブスクリプションのバンドル化は、アップルがサービスプランへの投資を本格化して以来、アナリストらの多くが予測してきた。この戦略は非常に理にかなっており、特にアップルがほかのサービスほど人気があるとは限らないサービスの採用を促進するのに役立つ。これはまた、同社がより包括的で潜在的に安定した経常収益ビジネスを構築するための方法を提供するという意味で、Amazon Primeのようなものに似ている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

Apple watchOS 7をプレビュー

パブリックベータ版が届いた

Apple(アップル)が提供するオペレーティングシステムの中では、watchOSは最も影の薄い存在だ。 macOSが近年で最大の改修を受けるこの1年は、その傾向がますます強くなるだろう。概して、スマートウォッチのユーザーは新しいハードウェアセンサーの追加などに着目する傾向があるため、Apple Watchのソフトウェアは見過ごされがちだ。そんな中で、米国時間8月10日、数多くの重要な新機能と共にwatchOS 7のパプリックベータ版が公開された。どうやらAppleはスマートウォッチメーカーのリストの頂上に君臨していることに、安心しきってはいないようだ。

実際、Appleは特にHuawei(ファーウェイ)やSamsung(サムスン)といった海外勢による競争の激化を目の当たりにしている。おそらく、ソフトウェアの更新だけでは、スマートウォッチへの懐疑論者を引き込むには十分ではないだろう、しかしそれに加えてハードウェアのアップデートや低価格モデルに焦点を合わせる戦略を組み合わせれば、同社の優位な地位を保持する役には立つ。

今回のアップデートには、新しい手洗い支援機能、サイクリングナビ機能、新しいトレーニング機能などが含まれているが、中でも重要なのは数々の睡眠追跡機能が取り込まれたことだ。この最後の機能は、間違いなくWatchへの追加が最も要求されていたものだ。また同時に、Appleが競合他社に比べて遅れをとっていたカテゴリだったという意味で、それは同社にとって譲れない線だった。しかし、必要なハードウェア技術が不足していたからではない。今回提供される睡眠追跡機能は、既存のデバイスにすでに搭載されているセンサーとも連動し、多くのサードパーティソリューションとも組み合わせることができるものだ。

画像クレジット:Brian Heater

それは、Appleが今年後半に投入予定のWatch 6に、追加の睡眠追跡ハードウェアを導入しないという意味ではなく(実際追加される可能性は高いようだ)、これまでもっとも要求が多かった機能が、過去のシリーズ5,4,そして(2017年後半に発表され市場で200ドル(約2万1200円)ほどで取引されている)3のWatchで使えるようになるということだ。

睡眠追跡機能は多面的なものだ。もちろん、その中心となるのは標準的な追跡機能で、加速度計を使用してユーザーが眠りに落ちたタイミングを判断する、この中にはノンレム睡眠に入ったときに遅くなる呼吸の変化などの、微妙な手がかりも含まれている。得られる情報はまだそれほど詳細なものではないが、睡眠時間や心拍数などの重要な情報が含まれていて、それらはすべてAppleのHealthアプリに保存される。

パズルの最も目立つピースの1つはSleep Mode(スリープモード)だ。このモードに切り替えると、WatchがDo Not Disturb(起こさないでください)モードに入って、すべての通知がオフになり、手首が持ち上げられてもWatchのスリープが解除されなくなる。デジタルクラウンを回すことで一時的にモードは解除されるが、ユーザーが眠りに落ちると再びSleep Modeに切り替わる。

なんといっても、この機能はバッテリーを節約するのに役立つはずだ、それはAppleが睡眠に対して真剣になるにつれて、一層重要な課題になるだろう。Appleの説明によれば、現在Watchのバッテリーは18時間もつということだが、昼と夜の両方の追跡に使用したい場合には、これは問題となる。シリーズ6の注目点の1つはバッテリー容量の拡張だが、その一方で起床時には充電リマインダーがポップアップして、外出する前に充電するように促すようになる。また、就寝前に充電レベルが30%を下回った場合にも警告が行われる。

もう1つの大きな要素は、睡眠目標と、就寝時刻ならびに起床時刻を設定できるSleep Schedule(スリープスケジュール)機能だ。デフォルトでは、これは8時間に設定されている。これは、私自身の経験では少々長過ぎるように感じられるが、それが目標点なのだろう。Wind Down(ワインドダウン、鎮静)機能は、瞑想アプリやサウンドスケープなどを使って他のデバイスから離れて眠る準備をするようにデザインされた、就寝前活動の時間枠を設定できる。一方、Wake Up(ウェイクアップ、起床)機能は、iOSのベッドタイムアプリからサウンドを借用し、触覚フィードバックをアラームとして使用する。もしユーザーが設定した起床時刻の30分前に既に活動を始めていた場合には、Watchは目覚ましをキャンセルして一日の活動を始めるのかどうかを尋ねる。

画像クレジット:Brian Heater

手洗い機能の追加は、全くの偶然だ。以前の記事でも述べたように、この機能はAppleが長年取り組んできたものであり、たまたま誰もが手を清潔に保つべきこのタイミングに登場することになっただけだ。この機能はデフォルトではオフになっており、ユーザーが有効にする必要がある。オンにすることで、アニメーション化された泡の数で20秒のカウントが行われ、その時間中ずっと洗い続けることで、ちょっとしたお祝いの音が鳴る。

加速度計が感知する手の動きと、流水と石鹸の音を聞き取る内蔵マイクの組み合わせによって、手洗い動作が検出されて、自動的に機能がトリガーされるようになっている。どうやら手洗いの検出は驚くほど複雑のようだが、この機能は今回のベータバージョンでは、とても良くできている(まあ皿を洗っている時にときどき「偽陽性」で手洗いとして検出することもあったが)。

もう1つの重要な追加機能は、家に着いたときにポップアップするように設定できる手洗いリマインダーだ。これもまた、現在世界中で猛威を振るっている伝染性が高い感染ウイルスの時代に嬉しい追加機能だ。現段階では、独立した手洗いアプリは存在していないが、記録機能がヘルスアプリに直接組み込まれているため、履歴を後から参照することが可能だ。

新しくOSによって追跡されるようになったワークアウトのタイプは4種類存在している。それらはダンス、コアトレーニング、筋力トレーニング、そしてストレッチやその他のワークアウト後のアクティビティを含んだクールダウンの4種類だ。Appleは、Watchをより完全なフィットネストラッカーとして位置付けようとしているので、これらの追加機能は以前のものよりも多少詳細なものになっている。対応するiOSアプリも再設計され、すべてのアクティビティが1つのビューに統合されている。

また今回もいつも通り、新しいウォッチフェイスが追加されている。たとえばChronograph Pro(トップ画像)は、距離測定タキメーターから着想を得たデザインを採用している。私の好みからすると少々ごちゃごちゃしているが、決して見栄えの悪いデザインではない。またX-Largeはこれとは逆方向のものだ。画面の中央に大きくデジタルの時間表示があるだけだ。また、SMSを介して友人とウォッチフェイスを共有できる機能も加わった。

画像クレジット:Brian Heater

ところで最もクールな追加は、あまり時間をかけずに行われた以下の機能かもしれない。他のオペレーティングシステムと同様に、watchOSには翻訳機能が備わっている。Siriを呼び出して翻訳を依頼し、アラビア語、ドイツ語、スペイン語、フランス語、イタリア語、日本語、韓国語、ブラジルポルトガル語、ロシア語、中国語(北京語)から言語を選択する。単語を話すと、Watchが翻訳結果を音声で読み上げ、画面に表示する。そして、全く異なる文字体系を持つ中国語のような場合には、テキストは中国語とアルファベット表記の両方で表示される。

このプロセスには多少追加の操作が必要だが、昨年のアジア旅行中に携帯電話を相手に手渡したり戻したりを何度も繰り返した誰かさんには、間違いなく役立つ機能だ。特に、自分の電話を本当に誰にも手渡したくないときには役立つ。

その他の機能も名前だけでも挙げておこう。

  • Apple Mapsのサイクリングナビ
  • ヒアリングヘルス/ノイズ指標の改善とヘッドフォンの最大音量を制御する機能
  • iPhoneからインポートされるSiriショートカット

watchOS 7の最終バージョンは今秋にリリースされる予定だ。

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(翻訳:sako)

iOS 14の「News+」アプリは記事提供元のトラフィックを横取りする

Apple(アップル)の今ベータ状態のオペレーティングシステムでは、News+の会員がNews+のパブリッシャーのリンクをクリックすると、AppleのNewsアプリへ自動的にリダイレクトされるようになる。

つまり、News+のパートナーの有料記事のリンクをクリックしたりタップすると、iOS 14やiPadOS 14、そしてmacOS Big Surでは、そのリンクがパブリッシャー自身のウェブサイトを指しているようであってもNews+アプリの記事ページへ直行する。

広告のない会員制ニュースサービスScroll(未訳記事)を作ったTony Haile(トニー・ハイル)氏は米国時間8月10日朝に、この変化についてツイートしている。TechCrunchのこの記事は、彼のツイートの焼き直しのようなものだ。

例えば、New York Timesのアプリの読者もおなじみだろう。iPhoneなどでウェブのリンクをクリックすると、元記事でなくアプリの中のその記事のページへ遷移する。TechCrunchでは、有料でない記事でも、リンクをクリックするとNewsアプリを開くようにとアップルに促された。

Tony Haile:ワォ、Apple News+のパブリッシャーの内何社が、新しいiOS14とMacOS Big Surではデフォルトで、彼らのサイトへのトラフィックが横取りされてAppleのNewsアプリへ送られることを知っているのだろうか。

この方式は、News+の会員のフラストレーションの原因を1つ取り除く。月に9.99ドル払うと、The New YorkerやThe Wall Street Journalなどのパブリッシャーの有料記事を読めるが、それはパブリッシャーのウェブサイトではなく、Newsアプリからでないとアクセスできない。そのため、Google(グーグル)やTwitter(ツイッター)などで読みたいものを見つけても、それのリンクをクリックする代わりにNewsアプリを開いて記事を探し出すしかない。

最初は戸惑うかもしれないが、読者体験を相当改善してくれるだろう。対象となるのは、News+の会員でオプトインしている者だけだ。この設定を変更するには、Newsの設定で「Open Web Links in News」(ウェブリンクをNewsで開く)を無効にしなければならない。

しかし、ハイル氏が言うように、この変更はパブリッシャーにとってあまりうれしくないかもしれない。「Apple News+がチャンネルとオーディエンスの分離を表していた戦略的根拠はもはやどこにもない。これによってパブリッシャーの中核的購読者オーディエンス(オリジナルに対する読者)が直接、食われることになる」と語る。

アップルはNews+の会員数を公表していないが、記事はいくつかある。CNBCの2019年11月の記事は、このサービスが最初の48時間で20万のユーザーを獲得(CNBC記事)したあと、伸び悩んでいる、と示唆している。また、「パブリッシャーが売上の少なさに幻滅している(Digidayの記事)」と報じている記事もある。

アップデート:アップルのスポークスパーソンが以下のような声明を受け取った。

アップルには、Apple News+の会員のために最良の体験を創り出す責任があります。この変更は会員にNews+の会員制の一部であるNewsアプリやパブリッシャーのアプリのコンテンツに直接、シームレスなアクセスを提供し、またパブリッシャーには、Apple Newsにおけるエンゲージメントと売上の増加機会を提供します。News+の会員はNewsの設定で、リンクに関する好みを指定できます。

関連記事:macOS 11.0 Big Sur preview(未訳)

画像クレジット: TechCrunch

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

モバイルPASMOが2020年中にiPhoneとApple Watchに対応

PASMO協議会は8月6日、2020年中にApple Payに対応することを発表した。これにより、モバイルPASMOをNFC-F(FeliCa)搭載のiPhoneやApple Watchで使えるようになる。サービスの内容や開始日については、詳細が決まり追って公開するとのこと。

モバイルPASMOは現在Android端末のみ対応しており、東京メトロや都営地下鉄、首都圏の大手私鉄などで乗車券や定期券の代わりとして使えるほか、交通系ICカードでの決済に対応している全国の駅の改札や各種店舗で利用可能だ。

気になるのは、iPhoneやApple Watch上でモバイルSuicaと共存可能なのか、排他仕様になるのか。ちなみにAndroid端末でも、モバイルPASMOとモバイルSuicaを同一端末上で共存させられるのは、Pixel 4シリーズなど一部の端末に限られる。

アップルのマーケティングトップを長年務めたフィル・シラー氏が裏方へ後任はグレッグ・ジョスウィアック氏

30年以上におよびApple(アップル)を登りつめ、マーケティングのチーフを務めていたPhil Schiller(フィル・シラー)氏が同社で一歩退き、同社で長年プロダクトマーケティングを率いたGreg Joswiak(グレッグ・ジョスウィアック)氏にその役を譲った。

シラー氏は、Apple Fellowとしての新たな役割を引き受け、App Storeと同社のイベントの指揮を継続する、と同社のプレスリリースで述べられている。シラー氏は1987年からアップルに在籍し、20年あまり同社の役員チームに所属し、アップルのイベントでは頻繁にステージに立った。Apple Fellowに就任し、CEOであるTim Cook(ティム・クック)氏の直属になる。

シラー氏に代わって彼の仕事の大半を引き継ぐジョスウィアック氏は、アップルのプロダクトマーケティングのベテランで、最近はイベントやメディア発表に登場する機会も多く、アップルの新しい顔になっている。ジョスウィアック氏のワールドワイドマーケティング担当上級副社長への昇進は、アップルへの20年近くの在籍を踏まえている。

これによってシラー氏は、主にアドバイザー的な役割に移るようだ。特に現在、同社が米国のテクノロジー企業の反競争的行為をめぐる話し合いの最前線に立ち続けている中、シラー氏がApp Storeのメッセージングを引き続き担当するのは興味深いところだ。App Storeは、デジタルサービス上の収益共有モデルを批判されており、CEOのティム・クック氏は最近、他の大手テクノロジー企業のCEOらとともに米国下院の反トラスト委員会で証言した。

「フィルは、アップルの今日を築いた功績者の1人であり、彼の貢献は多様、広大そして深いものだった。新しい役割で彼は、すばらしい思想的パートナーシップと、彼が数十年間アップルでそうであったような指導力を発揮し続けるでしょう。一方プロダクトマーケティング部門におけるジョズの長年のリーダーシップは、今回の彼の新しい役割に完全に適しており、チームが重要でエキサイティングな仕事に取り組んでいる今この時に、シームレスな移行を確実にしてくれるでしょう。経営陣全員が、彼の協力とアイデア、活力に助けられると思うと、私もわくわくしています」とクック氏は声明で述べている。

画像クレジット:Apple

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルの新型27インチiMacはCPUとグラフィックが性能アップ

Apple(アップル)は前四半期にたくさんのMacを販売した。実際その実績はQ3の新記録で、対前年比21%の伸びだった。世界中のオフィスワーカーがリモート環境に移行している現状を踏まえると、この会社のデスクトップやノートパソコンがこうして飛躍的に伸びたのも不思議ではない。その理由だけをとっても、同社の人気ロングセラーのオールインワンを大きくリフレッシュするのに今ほど適した時期はないかもしれない。

米国時間8月4日午前、アップルは27インチiMacの最新バージョンを発表した。変更点はほとんどが見えない部分にあるが、以前iMac ProやMac Proを使って長年同社の屋台骨を支えてきたクリエイティブのプロたちに向けたアップデートがいくつかある。

最大の変更は、Intelが2020年4月に発表した第10世代プロセッサーのComet Lake(コメットレイク)の採用だ。標準は6または8コアバージョンで、10コアのi9にアップグレードが可能。これは、ローエンドのiMac Proの領域に迫る性能だ。アップルの発表した数字によると、CPU性能は65%アップで、LogicやFinal Cut Proなどプロクリエーター向けアプリでは特に違いが顕著だろう。

グラフィクスも当然強化され、AMDのRadeon Pro 5000シリーズの採用により、旧モデルより55%高速化された。16インチMacBook Proで使われているのと同じチップだ。RAMは最大DDR4 128GBまで拡張可能。SSDストレージはついに全iMacで標準になり、ベースが256GB、最大8TBまで増やせる。システム全体では、アップル独自のT2セキュリティーチップを搭載し、オプションで10GBイーサーネット接続にも対応した。

関連記事:アップルがARMベースのMac用独自プロセッサーの開発を正式発表

ディスプレイは実質的に旧モデルと変わらないが、アップルのTrue Toneテクノロジーにより、室内の周囲光に応じて今まで以上に自然なカラーバランスを実現する。アップルのPro Display XDRに採用されているナノテクスチャーテクノロジーもオプションとして用意されていて、反射を軽減する。これはビデオエディター、特に、現在照明の悪い環境での作業を強いられている人にはうれしい追加だろう。リモートワークに関しては、ウェブカメラとマイクロフォンシステムも改訂された。カメラは1080pで、マイクロフォンはMacBook 16インチと同様のシステムが採用され、1基が本体の「あご」に、もう1基が背面に設置されている。

様々な噂とは裏腹にデザイン変更はなかった。もちろん、大きな変更が進行中である可能性はある(あるいは高い)が、これについては待つ他はない。内製のARMベースチップも同様だ。もちろん、アップルはこの移行プロセスの完了には2年かかるだろうと以前発表している上、発売を控えていたIntel Macがまだあった。この27インチiMacがその最後になるかどうかは、まだわからない。

アップルは、Intel Macを「この先しばらく」サポートを継続することも公言しているが、多くのユーザーはどうしても必要でない限りアップグレードを控えることが容易に想像できる。在宅勤務がすぐには終わりそうにない現実を踏まえると、必要に迫られる人も数多くいるかもしれない(ちなみにGoogleは2021年7月までの延長を決定した)。

新しい27インチは本日発売開始で、価格は19万4800円(税別)から。なお、iMac Proは標準が10コア(以前は8コア)になり、価格は変わらず55万8800円(税別)。21.5インチiMacシリーズ(上記のとおりすべてSSD搭載)の価格は12万800円からとなっている。

関連記事:アップルが新27インチiMac発表、第10世代CoreとSSDを標準搭載、21.5インチはモデルチェンジなし

画像クレジット:Apple

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルが新27インチiMac発表、第10世代CoreとSSDを標準搭載、21.5インチはモデルチェンジなし

アップルは日本時間8月5日の未明に、27インチiMacの新モデルを発表した。すでにオンラインのアップルストアでは注文可能になっており、価格は税別19万4800円から。本稿執筆時点ではCTOなしの1部のモデルは2020年8月7日に出荷される。

プロセッサーが第10世Coreに進化し、ストレージは標準搭載でSSDなった。ちなみにこれまでのiMacは、HDDとSSDを組み合わせた独自のFusion Driveを標準搭載されてきた。ディスプレイには、同社の超高価格・高機能ディスプレイであるPro Display XDRに採用されているNano-textureガラスがオプションで用意される。同ガラスにより映り込みの軽減が期待できる。

標準構成は以下の3モデル。CTOでカスタマイズしてもWindowsマシンに比べるとグラフィック性能は劣り、おおむね中上位クラスとなる。

下位モデル
CPU:第10世代Intel Core i5(3.1GHz/最大4.5GHz、6コア)
メモリ:8GB(2666MHz DDR4メモリ)
ストレージ:256GB(SSD)
グラフィック:Radeon Pro 5300(4GB GDDR6メ‍モ‍リ)
主な拡張ポート:Thunderbolt 3ポート x 2、ギガビットイーサネット×1
ディスプレイ:5120×2880解像度のRetina 5K P3ディスプレイ(True Tone搭載)
税別価格:19万4800円

中位モデル
CPU:第10世代Intel Core i5(3.3GHz/最大4.8GHz、6コア)
メモリ::8GB(2666MHz DDR4メモリ)
ストレージ:512GB(SSD)
グラフィック:Radeon Pro 5300(4GB GDDR6メ‍モ‍リ)
主な拡張ポート:Thunderbolt 3ポート x 2、ギガビットイーサネット×1
ディスプレイ:5120×2880解像度のRetina 5K P3ディスプレイ(True Tone搭載)
入力デバイス:Magic Keyboard(日本語JIS)、Magic Mouse 2
税別価格:21万6800円

上位モデル
CPU:第10世代Intel Core i7(3.8GHz/最大5.0GHz、8コア)
メモリ:8GB(2666MHz DDR4メモリ)
ストレージ:512GB(SSD)
グラフィック:Radeon Pro 5500 XT(8GB GDDR6メ‍モ‍リ)
主な拡張ポート:Thunderbolt 3ポート x 2、ギガビットイーサネット×1
ディスプレイ:5120×2880解像度のRetina 5K P3ディスプレイ(True Tone搭載)
入力デバイス:Magic Keyboard(日本語JIS)、Magic Mouse 2
税別価格:24万9800円

全モデルとも、メモリはすべて注文時に最大128GBに変更可能だが、ユーザーによる後付け増設はできないので注意。また、プラス5万円でディスプレイをNano-textureガラスに変更可能だ。そのほか、ギガビットイーサネットをプラス1万円で10ギガビットイーサネットに変更できる。

付属の入力デバイスは、Magic Keyboard(日本語、JIS)とMagic Mouse 2だが、テンキー付キーボード(プラス3000円)や他言語配列のキーボード、Magic Mouse 2からMagic Trackpad 2への変更(プラス5000円)、Magic Mouse 2とMagic Trackpad 2のセット(プラス7800円)も選べる。

入力デバイスを含む上位モデルのハードウェア構成を最高価格のものにすると総額は以下のとおり。税別91万5600円なので、消費税込みだと100万7160円となる。

最上位モデル
CPU:第10世代Intel Core i9(3.6GHz/最大5.0GHz、10コア)
メモリ::128GB(2666MHz DDR4メモリ)
ストレージ:8TB(SSD)
グラフィック:Radeon Pro 5700 XT(16GB GDDR6メ‍モ‍リ)
主な拡張ポート:Thunderbolt 3ポート x 2、10ギガビットEthernet×1
ディスプレイ:5120×2880解像度のRetina 5K P3ディスプレイ(True Tone搭載、Nano-textureガラス搭載)
入力デバイス:Magic Keyboard(テンキー付き、日本語JIS)、Magic Mouse 2、Magic Trackpad 2
税別価格:91万5600円

なお、21.5インチモデルのスペック変更はなく、CPUは第7世代、第8世代のCoreシリーズ、グラフィックは内蔵グラフィックス、Radeon Pro 555Xもしくは560Xと全体的なアーキテクチャが古い。

アップルが四半期決算好調で株価上昇、新型コロナの影響受けず

新型コロナウイルスもApple(アップル)の進撃を止めることはなかった。同社はウォール街の低評価を粉砕、同社の第3四半期(2020年4〜6月期)に596億9000万ドル(約6兆2300億円)の売上を計上しアナリスト予測の522億5000万ドル(約5兆4550億円)を大きく上回った。1株当たり利益は2.58ドル、予測は2.04ドルだった。

新型コロナウイルスの感染拡大にもかかわらず、同社の売上は前年比11%近く上昇し、最近のテック株全般のブームを反映した。対前年比売上は、全地域、全製品カテゴリーで上昇した。同社の株価は時間外取引で最大5%高と、決算報告に対する投資家の動きを反映した。

同社CEOのTim Cook(ティム・クック)氏は「アップルの記録的な第3四半期は製品とサービスの両方がすべての地域で2桁成長したことによるものだ」と決算発表時の声明で語った。「不確実な時のこの業績は、顧客の生活におけるアップルの製品の重要な役割と、アップルのたゆまぬ革新の証である」と続けた。

決算報告に伴い、アップルは株式の4対1分割を行うことを発表した。これはすでに同社株を1株所有している投資家があと3株受け取ることを意味している。投資家にとって実質的な変化はないが、8月末にこの株式分割が行われた後は、アップルの1株を購入しやすくなることが約束される。同社の株式分割は初めてではなく過去数回、最近では2014年に実施された。

今期は新型コロナウイルスの蔓延により世界中で在宅を強いられ、店頭での小売が大きく変わった影響をフルに受けた最初の四半期だった。しかしこの重大な変化もアップル株に一切悪影響を与えることがなく、今月史上最高値を記録して時価総額2兆ドル(約208兆円)に向けて突き進んでいる。

夏の始めには、同社初となる完全オンラインのWWDCを開催し、次世代のオペレーティングシステムを発表した。例年のスケジュールどおりなら、来月以降新たなモバイルデバイスが数多く発表されるはずだ。

なお、米国時間7月29日にクック氏は、米議会の反トラスト法公聴会にZoomで招集され、ほかの大物テックCEOらと主に自社の反競争的慣行について質問を受けた。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

次期iPhoneは発売が数週間遅れる、アップルが異例の発表

今年もまた新しいiPhone を求めて長い行列が出来そうだがこの秋は例年よりも少し長く待つことになるようだ。

アップルは先ほど第3四半期の決算を発表(未訳記事)したが、このときCFO(最高財務責任者) のLuca Maestri(ルカ・マエストリ)氏は「今年の新iPhone11モデルのリリースは2019年と比べて数週間遅れる」という見通しを述べた。これは非常に異例なことだ。これまでアップルは製品発表のスケジュールについて一切触れようとしなかった。iPhoneは毎年アップデートされているのもかかわらず、直前になるまで何も認めようとしなかった。

もちろんこれまでもiPhone のリリースが遅れたことはある。例えば2017年のアップルのiPhone Xの発表は11月にずれ込んだ。iPhone の各種モデルがメインの製品発表の数週間後に個別のスケジュールでリリースされたことはたびたびある。しかしその場合でもiPhoneのリリースのスケジュールが事前に発表されたことはない。

今年アップルが発表するiPhone の一部のモデルは5Gネットワークをサポートするはずだ。

アップルが発表した第3四半期の決算は596億9000万ドル(約6兆2400億円)、対前年比で11%の収入アップとなり ウォールストリートの期待を上回った。新型コロナによるパンデミックもアップルの売上、ひいては株価をダウンさせることはなかった。しかし9月に新しいiPhone をリリースできないと認めたことは、サプライチェーンのパイプラインのどこかに障害が起きていることを示すひとつの兆候のようだ。

画像:Tobiasjo / Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

コネクティッドオーディオはよくない選択だった、私の忠誠心の問題もあるが

先週私は、自宅のオーディオシステム選考にかなりの時間を費やした。いま唯一言えるのは、次のシステムはスマートではないということだ。

過去5年の間に、私のシステムはそこそこの有線2.1 ch スピーカーから、ネットにつながるスピーカーの複雑な寄せ集めへと変わった。Google Home Maxを含む少なくとも5種類のGoogleアシスタント搭載スピーカーを始め、ネット接続可能ないくつかSonosスピーカーにHomePodが3台、Facebook Portal+、Chromecast Audio経由でつながった非スマートスピーカー、さらにはその数は神のみぞ知るAlexa内蔵スピーカーを体験してきた。総括すると、近頃私は非常にまずいオーディオの選択をしてきたとはっきり言える。

現行のシステムには山ほどの不満があったが、実際にはそれは、スマートスピーカー市場全体の問題だ。

  • 優れたオーディオ機器は永遠であるべきで、頻繁なファームウェアアップデートが必要で特定オペレーティングシステムを独自にサポートしていたり、統合のサポートがなくなるようなデバイスは論外
  • この手のスピーカーと組み合わせたホームエンターテイメントはとにかくひどいもので、同じメーカーが作った製品同士であってもそうだ。私のステレオHomePodをApple TVに繰り返し接続していると頭がおかしくなる
  • スマートアシスタントは1年前と比べてずっと野心がなくなっていて、イノベーションの天井は著しく下がってきた。サードパーティー製品との統合は期待には程遠く、果たしてこうしたボイスインターフェースに、テック企業がかつて願っていたような明るい未来あるのかどうか、かなり不安になってきた
  • 一時期、このアシスタントたちは自宅のオペレーティングになるはずだったが、今のスマートホーム体験はほとんど失敗としか感がられず、「アイアンマン」に登場するジャービスのようにインターネットにつながるデバイスと仲良く遊ぶ人工知能システムの夢は、まったくの絵空事だった

つまるところ、今私はこの先何十年でもちゃんと使えるシステムに投資する決断を下す時のようだ。

さて私の本当に間違いは「1つのエコシステムに忠誠を誓わなかったことだ」と言いたい人もいるだろう。それは間違いなく正しいが、正確に私のほしいものを提供するメーカーがあるとは思えない。それは、ひどくバラバラなアプローチをとっているからだ。堅牢なSonosのシステムに資金を投入するのがおそらく最も賢い忠誠の尽くし方だったのだろうが、私の忠誠心には問題があり、おそらくその一部はこの目で見てみたいという欲求だ。

新型コロナウイルスによる隔離生活の中、私はホームオーディオシステムと過ごす時間がたっぷりあり、非互換ハードウェアには大いに悩まされた。スピーカーごとに独自のオペレーティングシステムを使っていたり、あるスピーカーが私のお気に入りの音楽ストリーミングはうまくいくのに、ほかでは動かないというのはやめてほしい。長続きするものがほしいのだ。

いくつかのエコシステムを中途半端に使ってみたあと私はもう十分だと感じ、今はちょっといいオールドファッションの有線サラウンドサウンドスピーカーを探していて、ややスマートなAVレシーバーにつなぐつもりだ。私は来年出てくるどんなクールなオーディオガジェットにも手を出さない強い心を持ち、今後も強くいられるよう願っている。よいシステムをつくるアドバイスがあれば教えていただきたい。

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

アップルのクックCEOが他社のスクリーンタイムアプリを排除した理由を米独禁公聴会で弁明

昨年Apple(アップル)は、iOS 12の公開(未訳記事)に合わせて、初の自社製スクリーンタイム監視機能をリリースした。その直後、サードパーティー製のスクリーンタイム監視アプリとペアレンタルコントロールアプリをApp Storeから大量に排除した。米国時間7月29日に開催された米連邦議会による独占禁止法公聴会で同社のCEOであるTim Cook(ティム・クック)氏は、競争の制限が疑われるとしてその判断について問われた。

アップルが自社開発した一連のスクリーンタイム機能が発表されて間もなく、複数のサードパーティーのアプリ開発業者は、スクリーンタイム監視アプリをApp Storeで販売するための審査が突然厳しくなったことに気がついた。更新が認められなかったり、アプリ自体がApp Storeから削除される例も少なくなかった。この影響を受けたのは、公式な方法が存在しないため、いろいろな工夫をしてスクリーンタイムの監視を行ってきた開発業者だ。そこでは、バックグラウンドでの位置情報、VPN、MDM(モバイルデバイス管理)を利用したソリューションが用いられていた。これらを複数組み合わせたものもあった。

当時アップルは削除したアプリについて「デバイスの位置情報、アプリの利用状況、電子メールアカウント、カメラの使用権限などにアクセスする必要があり、ユーザーのプライバシーとセキュリティーを危険にさらす恐れがあった」と弁明していた。

だが米議会議員たちは、その多くのアプリが何年も前から市場に存在していたにも関わらず、なぜ突然、ユーザーのプライバシーに気を配るかのように見える態度に出たのかを同社に尋ねた。

ジョージア州選出で民主党のLucy McBath(ルーシー・マックバス)下院議員は質問の冒頭で、ある母親がアプリの削除を残念に思う気持ちをアップルに伝えた電子メールの一文を読み上げた。それには、同社の処置で「子どもたちの安全を守り、精神的な健康を保つために極めて重要なサービスの利用が制限される」と書かれていた。そしてマックバス議員はアップルに対して、独自のスクリーンタイム監視ソリューションをリリースした途端にライバルのアプリを削除した理由を尋ねた。

クック氏は「アップルは『子供のプライバシーとセキュリティー』を重視しており、それらのアプリに使われていた技術には問題があった」と昨年とほぼ同じ答弁を繰り返した。

「その当時使われていた技術はMDMと呼ばれるもので、子供が見ている画面を乗っ取り、第三者が覗くことができる。そのため、子供の安全に心を痛めていました」とクック氏は話す。

MDMを、ユーザーに知られずに遠隔操作ができる機能だと説明するのは、MDMの仕組みを正確に表現しているとは言えない。実際、MDM技術はモバイルエコシステムで合法的に使われており、今も変わらず利用されている。ただし、これは業務用として開発されたもので、一般消費者のスマートフォンではなく、例えば会社の従業員のデバイスを一括管理するといった用途に用いられる。MDMツールは、企業が従業員のデバイスの安全を守るための対策のひとつとして、デバイスの位置情報、アプリ使用の制限、電子メール、数々の認可にアクセスできるようになっている。

子供のデバイスの管理やロックを行いたい保護者にもこれが応用できると考えるのは、ある意味理解できる。一般向けの技術ではないのだが、アプリ開発者は市場の空白を見つけ、そこを自由に手に入るツールで埋める方法を編み出す。市場はそのようにして回るものだ。

アップルの主張は間違ってはいない。問題のアプリのMDMの使い方にはプライバシー上のリスクがあった。しかし、それらのアプリを完全に閉め出してしまうのではなく、代替策を提案してやるべきだったのではないか。つまり、ライバルをただ追放して済ませるのではなく、純正のiOSスクリーンタイム管理ソリューションのための開発者向けAPIを消費者向け製品とは別に準備すべきだった。

そんなAPIがあれば、アプリ開発者はアップルの純正スクリーンタイム管理とペアレンタルコントロールの機能を借りてアプリを製作できる。同社は、彼らのビジネスに引導を渡すのではなく、期限を区切って作り直させるべきだったのだ。そうすれば、開発者もその利用者も傷つけることはなかった。そうすることでサードパーティーのアプリで心配されるプライバシー問題にも対処できたに違いない。

「削除は、まったく同じタイミングだったように思えます」とマックバス議員は指摘した。「もしアップルが自社製アプリを売り込むためにライバルを傷つけようとしたのではないと言うならば、App Storeを運営するPhil Schiller(フィル・シラー)氏は、なぜライバルのペアレンタルコントロールアプリの削除を嘆くユーザーにスクリーンタイムアプリを勧めたのですか?」と同議員は質問した。

クック氏は、現在App Storeには30種類のスクリーンタイム管理アプリがあり「ペアレンタルコントロールの活気ある競争が展開されている」と答えた。しかしマックバス議員は、6カ月後には、プライバシー上の目立った変更もないままApp Storeに復活したアプリもあると指摘している。なお2019年6月、MDMアプリに関するアップルの新しい規約(アップル開発者サイト資料)が発効されている。

「6カ月とは、倒産に瀕した中小企業にとっては永遠とも言える時間です。その間に、ライバルの大企業に顧客を奪われていたとすれば、なおさら事態は深刻です」とマックバス議員は言う。

しかしマックバス議員の質問が、アップルのiBooksの外で独自のアプリを使って電子書籍を販売しようとしたRandom House(ランダムハウス)の方法を拒否した問題に移ってしまったため、クック氏にはスクリーンタイム管理アプリに関する質問へのそれ以上の弁明の時間は与えられなかった。

クック氏はRandom Houseの質問を、技術的な問題の可能性があると指摘しつつ、「アプリがApp Storeの審査を1回で通過できない理由はたくさんある」とかわした。

米下院公聴会
画像クレジット:Graeme Jennings-Pool / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

GAFAの全CEOが出席する米議会の反トラスト公聴会は東海岸時間7月29日に開催

議会とテック企業最大手数社のCEOによる公開対決というレアな出来事は、先週延期された後も順調に進んでいる。当初米国時間7月27日の月曜日に予定されていた下院司法委員会の公聴会は、東海岸時間7月29日正午(日本時間7月30日午前2時)に開催されることが決定した。日程変更は、人権運動のリーダーでジョージア州選出のJohn Lewis(ジョン・ルイス)下院議員の死去を受けたもので、同氏の葬儀は27日に議事堂で執り行われた(The New York Times記事)。

オンラインプラットフォームと市場支配力:Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、およびGoogle(グーグル)の支配力を検証する」と題された公聴会は、テック業界で最強のリーダーが勢揃いした異例の顔ぶれが議会と対峙する。

テック企業のCEO1人(未訳記事)だけでも(バーチャルであれ)ワシントンDCに呼び出すことは注目に値するが、29日の公聴会では4名のCEOが証言する。Amazon(アマゾン)のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏、Apple(アップル)のTim Cook(ティム・クック)氏、GoogleのSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏、およびFacebook(フェイスブック)のMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏が、各社のビジネス慣習、および反競争的行為がテック界の重要市場に負の影響を与えている懸念について質問を受ける。

この公聴会は下院司法委員会反トラスト小委員会が2019年に発表し、数多くのテック界最大最強企業に対して進めている反トラスト捜査(米国下院委員会リリース)の最終章である。

「6月以降、当小委員会は少数のデジタルプラットフォームの支配状況、および既存の反トラスト法と執行方法の妥当性を調査してきた」と下院司法委員会のJerrold Nadler(ジェロルド・ナドラー)委員長と反トラスト小委員会のDavid Cicilline(デビッド・シシリン)委員長は共同声明で語った。

「これらの企業が米国市民の生活で中心的役割を果たしている状況を踏まえると、各社のCEOが包み隠さず話すことは極めて重要だ。当初から述べてきたように、彼らの証言は我々がこの捜査を完了するために不可欠である」。

本誌は7月29日の公聴会を詳しく取材する予定だ。また当日、以下のリンクからストリーミング中継を見られるはずだ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

フォックスコンがインドでiPhone 11の製造を開始、すでに小ロットを出荷で生産増強に意欲的

Apple(アップル)の製造請負パートナーであるFoxconn(フォックスコン)は、インドのチェンナイ近くの工場で最新モデルiPhone 11シリーズの組立を開始した。情報筋がTechCrunchに明らかにしている。

インドで製造されたiPhone 11の小ロットはすでに小売店に出荷されたが、製造量は限られていると情報筋はいう。この話は非公式であるため、情報筋は匿名を希望している。情報筋によると、アップルはインドでの生産増強に意欲的とのことだ。

アップルはほとんどのiPhoneシリーズを製造している中国への依存を減らす方法を模索しており、iPhone 11の現地生産は世界第2位のスマホ市場であるインドへのアップルのさらなるコミットメントを示している。

アップルの請負製造パートナーである台湾拠点のWistron(ウィストロン)は、2017年にiPhoneの組立を開始した。しかしこれまでアップルはインドでiPhone最新モデルを製造するパートナーを確保できていない。

過去にバンガロールで古い機種のiPhone SE、iPhone 6s、iPhone 7モデルを組み立てていたWistronは、現在インドでiPhone XRを組み立てている。アップルはiPhone SEとiPhone 6sの現地製造を2019年に取りやめた、と情報筋は語った。

インドの商工大臣であるPiyush Goyal(ピユシュ・ゴーヤル)氏は7月24日、アップルがインドでiPhone 11モデルの組立を開始した、とツイートした。

インドでスマホを組み立てると、アップルを含めスマホメーカーはインド政府が輸入電子機器に課している20%の輸入税を回避できる。

Xiaomi(シャオミ)、 Vivo(ビボ)、Samsung(サムスン)、Oppo(オッポ)、OnePlus(ワンプラス)、その他のスマホ企業は、インドで販売するスマホの大半を現地で生産するために近年インド各地の請負製造業者と提携している。

2018年後半からインド市場でトップシェアを握っているXiaomiは2020年7月初め、同国で販売するほぼすべてのスマホはインドで製造されていると述べた。

アップルは何年もインドでの生産を増強する方策を模索しているが、安全性と品質の基準を守れる請負製造業者探しが難航している。

ニュースメディアのThe Informationは2020年3月に、アップルの他の請負製造業者がインド参入または業務拡大を試みたが、規制や現地の法律の問題にぶつかったと報じたBloombergによると、アップルの別の組立パートナーのPegatron(ペガトロン)はインドに子会社を置いてオペレーションを開始する計画だ

ロイターが2020年7月初めに報じたところでは、インドを最大のマーケットの1つとみなしているFoxconnは同国でのオペレーションに10億ドル(約1060億円)を投資する計画だ。インド政府は2020年6月にトップのスマホ製造業者を呼び込む66億ドル(約7000億円)の計画を発表した。

アップルはインドで数カ月内にオンラインストアを立ち上げ、2021年には初の販売店舗をオープンさせる計画だとCEOのTim Cook(ティム・クック)氏は2020年初めに発表した。パンデミックにも関わらずインドでのオンラインストア立ち上げは予定通りだと情報筋は話している。

インドのスマホ市場でのアップルのシェアは約1%だが、端末価格400ドル(約4万2000円)以上の高級スマホ部門を支配している1社だ。同社はまた、インドにおいて新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックの影響を最も受けていないスマホメーカーでもある。

画像クレジット:TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi

アップルがセキュリティ研究者や熟練ハッカーに脱獄済みの特別なiPhoneを提供開始

過去10年の間、Apple(アップル)はiPhoneを市場で最も安全なデバイスの1つにするべく努力を重ねてきた。そのソフトウェアを厳重に保護することによって、同社は20億人のiPhoneオーナーを安全に保っている。だが、セキュリティの研究者たちは、それが理由で実際に問題が発生したときに何が起こったかを把握することが難しくなっているという。

同社はかつて、自社のコンピューターにはウイルスは感染しない(Wired記事)と主張していたが、近年同社は、これまでにない方法でセキュリティ研究者やハッカーを受け入れ始めた。

昨年開催されたセキュリティカンファレンス「Black hat USA 2019」で、アップルのセキュリティ責任者であるIvan Krstic(アイバン・キルスティック)氏は、集まったセキュリティ研究者たちに対して、最も信頼できる研究者にデバイス深部へのかつてないアクセス(Forbes記事)を提供する特別なiPhoneを提供すると語った。このiOS Security Research Deviceプログラムの下に提供されるiPhoneを使うことで、アップルが修正できるセキュリティの脆弱性を発見・報告することが容易になる。

アップルは米国時間7月22日から、特別な研究用iPhoneをプログラムの適格性を満たす熟練し精査された研究者に対して貸し出し始める(Appleサイト)。

これらの研究用iPhoneには、SSHアクセスや、ソフトウェアへの最高のアクセス権を持つカスタムコマンドを実行するルートシェル、そしてセキュリティ研究者が自身のコードを実行して深部で何が起きているかを理解しやすくするデバッグツールなど、通常のiPhoneが持つことはない特別なカスタムビルドiOSが搭載されている。

アップルはTechCrunchに対してこのプログラムを「デバイスを送り出してお終いというわけではなく、コラボレーション主体のものにしたい」と述べた。研究デバイスプログラムに参加する研究者やハッカーたちは、より広範なドキュメントや、アップルのエンジニアが質問に答えたりフィードバックを得たりする専用のフォーラムにアクセスすることができる。

こうした研究デバイス自身は特に目新しいものではないが、これまで研究者たちに直接開放されたことはない。一部の研究者は、発見したセキュリティの問題点をテストするために、地下マーケットに赴いて、これらの内部的ないわゆる「dev-fused」(開発用特別仕様)デバイスを探し出し(Vice記事)て手に入れたことが知られている。そうした運に恵まれなかった者は、デバイスの内部にアクセスするためには、まず最初に通常のiPhoneを「脱獄」(ジェイルブレイク)することに頼らなければならなかった。しかし、これらの脱獄は最新のiPhoneではかなり難しくなっているため、ハッカーが自分が見つけた脆弱性が悪用可能なのか、それとも修正されているのかどうかを知ることはより困難になっている。

最高のハッカーたちに、通常のセキュリティ制限の一部を取り除いた、事実上最新で脱獄済みのiPhoneを提供することによってアップルは、信頼できるセキュリティ研究者やハッカーが、これまで見つかっていないソフトウェア深部の脆弱性を見つけやすくしたいと考えている。

しかし、これらの研究用携帯電話はハッカーに対して可能な限りオープンではあるものの、アップルは、個々のデバイスが紛失したり盗まれたりしても、他のiPhoneのセキュリティにはリスクが及ばないと説明している。

この新しいプログラムは、かつて非公開だったバグ報奨金プログラムをやっと1年前に公開した同社にとって、非常に大きな跳躍である。この動きはほかのほとんどのテック企業に比べると、はるかに出遅れ感がある。長い間、有名なハッカーの中には、最初にアップルに警告することなく発見したバグをオンラインで公開(未訳記事)するものがいた。なお、こうしたバグは、企業にパッチをする時間を与えないことから、ハッカーに「ゼロデイ」と呼ばれている。こうした振る舞いは、かつて非常に制限的だったアップルのバグ報奨金条件への不満に起因していた。

現在は、その報奨金プログラムの下で同社はハッカーにバグとセキュリティ問題を非公開で送信してもらって自社のエンジニアに修正させ、iPhoneを他国家からの攻撃や脱獄からさらに強力に保護しようとしている。その見返りに、ハッカーは、脆弱性の深刻度に基いて段階的に増額される報酬を受け取る。

アップルは、研究デバイスプログラムはバグ報奨金プログラムと並行して実施されると説明する。プログラムに参加するハッカーも、アップルにセキュリティバグレポートを提出することが可能で、最大100万ドル(約1億700万円)の報奨金を受け取ることができる。さらに、リリース前のソフトウェアにある最も深刻な脆弱性に対しては、最大50%のボーナスを追加で得られる。

新しいプログラムが示しているのは、アップルが以前よりも慎重さの度合いを下げ、ハッカーコミュニティをより受け入れている姿勢だ。たとえ遅くてもやらないよりはましだ。

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画像クレジット: Tobiasjo (opens in a new window)/ Getty Images

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(翻訳:sako)

ARMアーキテクチャMac登場前に知っておきたい、Macと仮想環境との長〜い歴史

いろいろな意味で、Macほど大きな変遷を経てきたパーソナルコンピューターはほかに類がない。CPUを含む内部のアーキテクチャも、度重なる変化を受けてきたし、それと呼応して、あるいはまったく独立に、外観のスタイルも多岐にわたるバリエーションを提示してきた。

またその過程で、さまざまなサブブランドの製品が生み出された。そして、サブブランドに分化した後も、それぞれ少なからぬ変化を経験している。例えば「iMac」という製品1つをとってみても、長期に渡ってどれだけ大きな変遷を経てきたことか。すべてを正確に思い出せる人は少ないかもしれないが、一部を思い浮かべてみるだけでも、そのバラエティの豊かさは驚異的なことに思える。

そして今また、Macの世界が大きく動き出そうとしている。言うまでもなく、そのきっかけとなるのは、MacのCPUがApple Siliconに変更されること。一般に普及しているパソコンのCPUの系列が大きく変更されて、直接実行可能な機械語コードに互換性がなくなる場合、その移行ができるだけスムーズなものとなるよう、さまざまな対策が必要となる。それは主に、CPUの変更を主導するメーカーとしてのアップルの仕事だ。サードパーティのデベロッパーやユーザーは、アップルが提供する施策を利用することで、CPUの変更による影響を最小限に留めることができると期待される。しかし中には、アップルが提供する方法では吸収できないような大きなインパクトを受ける種類のソフトウェアもある。その代表が、WindowsやLinuxなどのほかのOSや、その上のアプリをMacで利用可能にする仮想環境を実現するアプリだ。

ここでは、多岐にわたるMacの仮想環境ソフトウェアの歴史をざっとたどってみる。それが、今後のMac上の仮想環境がどのようなものになっていくのか、考えるヒントになるかもしれない。ただその前に、仮想環境にも大きな影響を与える、これまでのMacのCPUの変遷と、それに対してアップルが提供した施策について確認しておこう。

3回のCPU変更に3回とも判で押したように同じ手で対応

パソコンのCPUの移行期に有効な方策が、主として2種類あることは、拙稿の「Apple Siliconへの移行のキモとなるUniversal 2とRosetta 2とは何か?」で述べた。簡単に要約すると、1つのアプリが移行前後のCPU、両方に対応するコードを持てるようにするバイナリフォーマットを用意することと、旧CPU用のアプリのコードをその場で変換して新CPUで動かす機能を提供することだ。今回アップルは、前者にはUniversal 2、後者としてはRosetta 2と呼ばれるものを提供することを明らかにしている。

いずれも名前に「2」が付いていることからわかるように、これらの方策はほぼ同様のものを以前にも採用したことがある。つまり以前には、それぞれ「Universal Binary」と呼ばれるフォーマットと、「Rosetta」と呼ばれるコード変換機能を提供していた。具体的には、2006年にPowerPCからインテル系CPUへの変更を断行した際のものだ。

しかし、それだけではない。名前こそ異なるが、もっと以前、1994年に68K(68系)CPUからPowerPCに移行する際に、同様の方策を実施している。その際には、2つのCPUのコードを含むアプリのファイルフォーマットは「Fat Binary」、コードの自動変換実行機能は「Mac 68K emulator」と呼ばれた。いずれも面白みのない名前だが、当時は、その部分に何かしらのブランディングを適用しようという気はさらさらなかったのだろう。

以上に述べた3回のCPU変更と、それぞれの変更の際にアップルが提供してきた、そしてする予定の方策を図で確認しておこう。

現在までにMacが採用してきたCPUは3種類、そこにApple Siliconも入れれば4種類となる。そのいずれの時代にも、サードパーティが提供した一種の仮想環境ソフトウェアが存在した。もちろんApple Siliconを搭載したMacにも登場するはずだ。次に、その歴史をたどってみよう。

パーソナルコンピューター黎明期からあった野心的な試み

パソコンに限らず、コンピューターが搭載するCPUとは異なるCPUのプログラムをなんとかして動かしてみたいという欲求は、かなり昔からあったように思える。おそらくそれは、この世に存在するCPUというものの種類が1を超えた瞬間に発生したのではないかとさえ思われる。コンピューター自体の処理能力が今よりもずっと低く、使えるリソースも限られていた時代には、もっぱら「エミュレーター」として実現されることになる。この言葉には、なんとなく趣味の領域の匂いや、グレーゾーンの雰囲気も漂うが、それはある種の偏見だろう。業務上の用途でも重要な役割を果たしたものは少なくない。

MacがエミュレーターによってDOSやWindowsを動作させるようになったのは、CPUが当初の68系からPowerPCに移行してからのこと。確かにPowerPCのようなRISCプロセッサーは、少ないクロック数で実行できる単純な命令を備えているので、エミュレーターを実現するのに向いている。とはいえ、もちろん68KのようなCISCでエミュレーターが作れないわけではない。そのようなものの中で、おそらく史上初ではないかと考えられるのが「][ in a Mac」だ。名前から想像できるように、Mac上でApple IIのソフトウェアを動作させるもの。Macとしては正確に言うと2世代目だが、オリジナルMacのメモリ容量を128KBから512KBに増設しただけの、いわゆるFat Mac上で動作した。

Apple IIはカラー表示が可能だったので、初期のMacのモノクロディスプレイでは十分に表現できないソフトウェアも多かったが、CPUもアーキテクチャもまったく異なり、何の互換性もないApple IIのプログラムが、曲がりなりにもMacで動くというインパクトは強かった。

このようなことが可能だったのは、1MHzで動作するApple IIの8ビットCPUである6502よりも、約8MHzで動作する16/32ビットCPU(製造元のモトローラでは「MPU」と呼んでいた)の68000のほうが、大幅に処理能力が高かったからだ。仮にもしApple IIで何かのエミュレーターを動かすとすれば、常識的に考えて、それよりもさらに大幅に処理能力の低いCPUをターゲットにしなければ実用にならないと思われるだろう。

しかしここに1つの重要な例外がある。Apple IIのファームウェアの1つ、といってもたった6KBしかない整数BASICのインタープリタの一部として組み込まれていた「Sweet16」と呼ばれる仮想16ビットCPUのエミュレーターだ。これはApple IIの作者、スティーブ・ウォズニアク氏が、BASICインタープリタのコード量をできるだけ少なくする目的で開発したもの。16本の16ビットのレジスターを備え、16ビットの加減算が可能な、れっきとした16ビットCPUだった。

この仮想CPUのエミュレーターでの実行は、6502のネイティブコードを実行する場合に比べて10倍ほど遅かったそうだが、コード量を削減する効果は大きく、そのトレードオフの結果として導入したと考えられる。パーソナルコンピューターの原点の1つと考えられているApple IIに、最初からこのような機構が組み込まれていたのは、その後の発展を考えると非常に興味深い。

時代が前後したが、また話をMacに戻そう。68K時代のMacでは、CPUを搭載する他のコンピューターをソフトウェアでエミュレートするのは荷が重かった。上に挙げた][ in a Macのようなソリューションもあったが、初期のMacではカラー表示ができないという問題もあった。このことは、Apple IIという製品が、膨大なソフトウェア資産を市場に残しながら寿命を終えようとするころには、アップルとしても捨て置けない問題と考えられるようになった。

そこでアップルは1991年になって、自ら「Apple IIe Card」というハードウェア製品をMacintosh LCシリーズ用に発売した。これを装着することで、カラー表示が可能で、しかも低価格のMacが、最も普及したApple IIeとしても動作するようになったのだ。このカードは、Apple IIeのハードウェアそのものを、当時の技術を使って小さな基板上に縮小したようなもので、純正だけに高い互換性を実現していた。

引用:Wikimedia Commons

これと同じようなハードウェアによるソリューションは、実はPowerPCの時代になっても存在した。やはりアップルが1996年に発売した純正の「PC Compatibility Card」だ。これは、インテルのPentiumや、他社の80×86互換CPUを搭載した、ある意味本物のPCであり、拡張スロットを備えたPower Macに装着して、MS-DOSやWindowsをインストールして利用することができた。このころになると、少なくともアプリケーションの多彩さという点では、DOSやWindowsに対するMacの優位性もだいぶ陰りが見えていた。この製品は、PC用ソフトウェアを利用可能にすることで、ユーザーをMacに引き止めることを狙った、まさに苦肉の策だったと言える。

一方で、ソフトウェアだけで、PCのCPUとハードウェアのエミュレーションに果敢に挑んだ製品も、サードパーティから何種類も登場した。中でも最も有名なのは、Connectix(コネクティックス)社の「Virtual PC」だろう。これは、PCのハードウェアを忠実に再現するもので、後の仮想環境ソフトウェアの走りと見ることもできる。市販のWindowsパッケージは、もちろん、x86プロセッサーを搭載するPC用のさまざまなOSを、そのままインストールして利用することが可能だった。なお、このVirtual PCは、MacのCPUがインテルに移行してからはMicrosoft(マイクロソフト)に買収され、同社純正のWindows Virtual PCとしてWindows 7に組み込まれることになった。

ほかにも、当時かなり豊富に市場に出回っていたDOSゲームを主なターゲットとした、Insignia Solutions(インシグニア・ソリューションズ)の「Real PC」という製品もあった。もともとは、各社のUnixワークステーション上でDOSを実行するための小規模なものだったが、のちにMacだけでなく、NeXTSTEPにも移植された。このReal PCは、やがて「SoftPC」と名前を改め、DOSに加えてWindowsも実行可能になった。市販のWindowsパッケージをそのままインストールして使うことも可能だったが、特にSoftPC用にチューンして動作性能を向上させたWindowsの特別なバージョンをバンドルした「SoftWindows」という製品も登場した。

CPUの変更で再びチャレンジングな世界に踏み込む仮想化ソフト

MacのCPUがインテル系に変更されると、それまでエミュレーションの最大のターゲットだったWindows PCのアプリケーションを利用するために、CPUの機械語コードの変換やエミュレーションを実行する必要がなくなった。そこでもっぱら利用されるようになったのが、いわゆる仮想環境ソフトウェアだ。CPUのコードは同じだが、周辺のハードウェアの違いを仮想化することで吸収するためのソフトウェアということになる。機能としては、以前にPC Compatibility Cardを装着したMacに求められたものに近いのかもしれない。

そんな中で、最初にリリースされたのは、ドイツのInnotek(イノテック)がオープンソースソフトウェアとして開発した「VirtualBox」だった。Innotekは、その後Sun Microsystems(サン・マイクロシステムズ)によって買収され、さらにOracle(オラクル)がSunを買収したため、現在の正式な名称は「Oracle VM VirtualBox」となっている。同種の商用アプリのような派手な機能は少ないが、地道に開発が続けられている。

VirtualBox自体が動作するホストOSとして、macOSだけでなくWindows、Linux、Soraisと4種類がサポートされているのも大きな特徴だ。仮想化マシンを作成可能なOSのタイプとしては、Windows、Linux、Solaris、BSD、IBM OS/2、macOSなどをサポートする。MacがApple Siliconに移行すると、残念ながらこのアプリはMacでは動作しなくなり、サポートもなくなる可能性が高い気がする。

VirtualBoxより先に発表されながら、実際に製品としてリリースされたのは少し後になったのが、Parallels社の「Parallels Desktop」だった。少なくとも人的資源としては、PowerPC時代のVirtualPCを引き継ぐ部分もあって、基本的なユーザーインターフェースにもVirtualPC譲りの雰囲気が感じられる。現在では名実ともにMacを代表する仮想化ソフトウェアとなっている。WWDC20でも、いち早くApple Silicon上で動作するデモが取り上げられた。このソフトウェアが、今後どうなっていくかについては、少し後で再び考える。

製品の発売時期もParallels Desktopとさほど変わらず、その後も互いに速度と機能を競い合いながら発展してきた仮想化ソフトウェアにVMware(ヴイエムウェア)の「VMware Fusion」がある。ただし残念ながら、最近では開発にかける力が衰えてきたように感じられる。それは最近ではクラウド製品に注力しているVMwareの方針に沿ったものなのかもしれない。このアプリも、Apple Silicon以降どうなるのか、やはり残念ながら見通しは明るくないように思える。

以上挙げたようなアプリとしての仮想化ソフトウェアとは一線を画するものとして、国産の「vThrii Seamless Provisioning」も挙げておこう。これは数年前に、iMacとともに大量に東京大学の教育用計算機システムとして導入されたことで話題にもなった。いわゆるハイパーバイザー型(ベアメタル型とも呼ばれる)の仮想環境で、ソフトウェアのレイヤーとしてはかなり薄い。東大に納入されたシステムでは、iMacの起動時にOSとしてMac OS X(当時)かWindows 10を選択するようになっていたが、Mac OS Xですら仮想環境上で動作するという特徴的な機能を実現したもの。これについても、今後の展開は不明だが、MacのCPUが変更されれば、当然ながらこれまでと同じ構成で動作することはできなくなる。

こうして現在のMac上の仮想環境を見渡してみると、MacがApple Siliconを採用した後、少なくとも短期間で対応してくるのはParallelsだけではないかと思われる。それでも、今と同じような機能をサポートし、インテル用のWindowsを動作させるとしたら、内部はかなり変更せざるを得ない。WWDC20では、Parallels Desktop上でLinuxが動作するのをデモしていたが、おそらくはARM版のLinuxだろう。現状では、CPUの機械語コードの変換やエミュレーション機能を備えていないからだ。いくらアップルがRosetta 2をサポートしても、WindowsのようなOS全体を事前に変換するのには無理があるように思える。

ARM版Windows 10を搭載するマイクロソフトのSurface X

多くの人は、ほとんど記憶にないかもしれないがARM版のWindowsというものも確かにある。Windows 8の時代に「Windows RT」という名前で登場したバージョンだ。その名前なら聞き覚えがあるという人も多いかもしれない。Windows RTでは、インテル版Windowsとの互換性も考慮し、ARM系のコードだけでなく、x86、つまり32ビット版のインテル用Windowsアプリも動作させることができた。しかしWindows RTはパッケージや、ダウンロード版として販売されたものではなく、ARM系のCPUを搭載するモバイル系のマシンにライセンスによって搭載されただけ。つまり、マイクロソフトがApple Siliconを搭載したMac用にライセンスしない限り、Parallels Desktopのような仮想環境ソフトウェア上でも動かすことはできない。少なくとも製品化は無理だ。

しかし、それでParallelsが、64ビット版を含むインテル版WindowsをApple Silicon搭載Mac上で動かすことを諦めるとは思えない。正攻法としては、ソフトウェアによるエミュレーションでインテルCPUの機械語コードを動かすことになり、パフォーマンスの問題はしばらくつきまとうかもしれない。やがてそれも何らかの方策によって改善できるだろう。WWDC20のRosetta 2のデモを見れば、けっして期待の薄いこととは思えない。あるいは、他社からも含めて、まったく別のアプローチによる解決策が登場するかもしれない。MacのCPUの変更は、仮想環境にとっては1つの大きな試練には違いない。しかし無責任なユーザーの目で見れば、現在のソフトウェア技術が、それをどのように乗り越えるのか、見守る楽しみができたというものだ。

アップルは製品とサプライチェーンを含む事業全体を2030年までにカーボンニュートラルにすると発表

米国時間7月21日、Apple(アップル)は今後10年以内に同社の事業全体をカーボンニュートラルにする計画を発表した。これは完全にカーボンニュートラスな企業構造に向けた同社の取り組みに続くもので、製造サプライチェーンとその結果作られる製品をその構成要素に加えている。

本日公表された持続可能性へのロードマップは、同社が毎年発表するEnvironmental Progress Report(環境進捗報告)の一部だ(Appleリリース)。同社が販売するすべてのデバイスを気候変動への影響をゼロにすることは、2つのことを意味している。第一の関心事は製造工程からの排出を75%減らす方法を見つけることだ。そして残りは大気中の炭素を除去を支援する取り組みに集中することとなる。

同社ではすでに、製品のかなりの割合が再生素材で作られている。そのために活躍するのがiPhone分解ロボットのDaveとDaisyで、まるで「2001年宇宙の旅」に出てきそうなロボットだが、主に希土類磁石とタングステン、そして一部のスチールを回収している。またオースチンには同社のMaterial Recovery Lab(素材再生研究所)があり、カーネギーメロン大学の技術者たちが協力している。

アップルは70を超えるエネルギーサプライヤーと協力して、同社の生産センターが使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーにしようとしている。このパートナーシップによって減らせる炭素排出量は、車300万台1年分の排出量に相当する。同社はまた、ヨーロッパ最大のソーラーアレイを計画している。25%の炭素削減に関しては、アフリカと南米における森林の回復など、多くの取り組みがレポートで紹介されている。

また同社の人種的公平性と公正の一環としてマイノリティの企業への投資を目的とした「Impact Accelerator」の立ち上げも計画されている。副社長のLisa Jackson(リサ・ジャクソン)氏がプレスリリースで語っているところによると、この投資と持続可能性との関係は「社会全体に滲み付いている人種差別と気候変動は別々の問題ではないため、別々の解決策は通用しない。我々の世代には、より環境に優しくより公正な経済の構築を支援する機会があり、次世代に彼らが自分の故郷と呼ぶにふさわしい地球を遺すために、新しい産業を開発していかなければならない」という。

Appleは近年、その大規模なグローバル事業がもたらす影響を制限するための積極的な努力で、Greenpeace(グリーンピース)から高い評価を得ている

画像クレジット:Apple

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Googleマップがバイクシェアユーザーに借りるところ、返却する駐輪場を含む全行程のナビを表示

Googleマップが米国をはじめとした10の大都市で、バイクシェアのユーザーの便宜のために地図をアップデートした(Googleリリース)。Googleマップにはすでに、バイクシェアの駐輪場や、自転車のための2点間のナビ案内がある。今回のアップデートでは、徒歩と自転車のナビを統一し、複数の駐輪場間のルートを1回の指定で示せるようになった。

Googleマップはまず最も近いバイクシェアの駐輪場までの徒歩でのルートを案内し、次に目的地に最も近い駐輪場までの自転車による道順、さらにそこから目的地までの徒歩のルートを案内する。つまり「徒歩→最初の駐輪場→最後の駐輪場→目的地までの徒歩」となる。

これまでユーザーは、バイクシェアを利用するために3つの企画を行わなければならなかった。(1)最初のバイクシェアの駐輪場まで、(2)バイクシェア乗り捨てもしくは返却地点、(3)目的地までの3つだ。しかし今度からは、目的地を指定するだけでGoogleマップが最初から最後までの道順を教えてくれる。

また一部の都市では、Googleマップが適当と思われるバイクシェアサービスのモバイルアプリのリンクを表示する。さらにそのアプリから、利用登録や解錠もできる。

この機能は数週間前から10の都市で展開されている。そこでは交通情報サービスのIto Worldと、同社がサポートするバイクシェアサービスとパートナーしている。

  • シカゴ(米国) Divvy/Lyft
  • ニューヨーク(米国) Citi Bike/Lyft
  • サンフランシスコ ベイエリア(米国) Bay Wheels/Lyft
  • ワシントンDC(米国) Capital Bikeshare/Lyft
  • ロンドン(イギリス) Santander Cycles/TfL
  • メキシコシティ(メキシコ) Ecobici
  • モントリオール(カナダ) BIXI/Lyft
  • リオデジャネイロ(ブラジル) Bike Itaú
  • サンパウロ(ブラジル) Bike Itaú
  • 台北と新北市(台湾) YouBike

Google(グーグル)によると、同社は現在、パートナーを増やす努力をしており、数カ月後にはさらに多くの都市をサポートできるという。

この新機能でグーグルは、またApple Mapsをリードした。後者は最近、サイクリストのためにルートを最適化するオプションを加えてグーグルに追いつこうとした。Apple(アップル)の自転車用ナビは、険しい坂道の警告や近くの自転車修理店を表示できる。

Ito Worldは2020年3月にアップルのパートナーになり、Apple Mapsにバイクシェアのデータを統合した(Ito Worldリリース)。これによりiPhoneのオーナーは、179の都市でバイクシェアの場所を見つけることができる。

しかしバイクシェア情報の詳細さでは、相変わらずGoogleマップが上だ。グーグルはすでに数年前から、乗り捨てタイプのバイクシェアやLimeとのパートナーシップにより100以上の都市でのスクーターを統合し、そして一部の都市では、乗り捨てではない駐輪場に返却するタイプのバイクシェアのリアルタイム情報(Googleリリース)で、空き自転車の有無を教えてくれていた。

最近は新型コロナウイルス(COVID-19)のアウトブレイクで旅行や交通も変わりつつあるため、バイクシェアのナビ情報はマップサービスに差をつけるさらに大きな要素になってきた。例えば一部の人は、バスや地下鉄などの公共交通機関から、自転車に通勤手段を変更している。グーグルによると、最近は世界的に「近くの自転車修理店」といった検索が多く、2020年7月は2019年の倍にもなったこともあり、この傾向は世界的なものだという。

また、グーグルによると、アップデートされたバイクシェアのナビ機能は、今後数カ月間で展開されるとのことだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルが中国・北京に巨大ストアをリニューアルオープン、米中関係の悪化や米司法長官の非難の最中

米国時間7月17日にApple(アップル)は、中国に新しい超大型店をオープンしてその力を誇示している。場所は北京のショッピング街である三里屯(さんりとん)で、前からそこにあった中国初のアップルストアの巨大リフォームだ。最初のストアは2008年に、開店直後から一大センセーションを巻き起こし(Wall Street Journal事)たが、リニューアルした店舗は元の倍以上の広さだ。

このランドマーク的な建物は、ハードウェアの超大手であるアップルと中国との関係が米国で問題視されている最中に再オープンした。7月16日のスピーチで司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏は、アップルを含む米国の多くのテクノロジー企業を槍玉に挙げ、中国のルールでプレーしていると批判した。特にアップルに関しては「中国のコミュニストたちの言いなりになっている」と指摘した。

アップルは長年、製造のパートナーとしてだけでなく、ゲームなどApp Storeでの売上とiPhoneの全国的売上で中国に依存している。しかしそれでも近年は、6月にこれまでで最大のストアを開いたHuawei(ファーウェイ)をはじめ、中国のスマートフォンメーカーが、中国におけるアップルのマーケットシェアを徐々に奪ってきた。Counterpointの調査によると、アップルのシェアは約10%で、順位は5位だ。

バー氏がアップルを厳しく非難したのは、同社が中国政府のためにアプリを間引いているからだ。アプリを禁止する動機は、香港の抗議活動で使われた地図の場合のように政治的に問題のあるサービスを抑えるためだったり、規制の抜け穴を閉じるためなど、さまざまだ。ちなみに後者では、中国で許可されていない数千本のゲームが削除された

新しい店舗には中国の小売店では初めての屋根と一体化されたソーラーパネルがあり、世界中の再生可能エネルギーだけを使っているアップルの他の施設と同様に、その下のストアに電力を供給する。同社によると、それが中国で1年間にサポートするクリーンエネルギーの量は、45万世帯の家庭が使用する電力に等しい。

これまでの12年間で三里屯の店舗はスタッフが52名から185名に増え、2200万人以上のビジターを迎えた。

[原文へ]

(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

アップルが中国・北京に巨大ストアをリニューアルオープン、米中関係の悪化や米司法長官の非難の最中

米国時間7月17日にApple(アップル)は、中国に新しい超大型店をオープンしてその力を誇示している。場所は北京のショッピング街である三里屯(さんりとん)で、前からそこにあった中国初のアップルストアの巨大リフォームだ。最初のストアは2008年に、開店直後から一大センセーションを巻き起こし(Wall Street Journal事)たが、リニューアルした店舗は元の倍以上の広さだ。

このランドマーク的な建物は、ハードウェアの超大手であるアップルと中国との関係が米国で問題視されている最中に再オープンした。7月16日のスピーチで司法長官のWilliam Barr(ウィリアム・バー)氏は、アップルを含む米国の多くのテクノロジー企業を槍玉に挙げ、中国のルールでプレーしていると批判した。特にアップルに関しては「中国のコミュニストたちの言いなりになっている」と指摘した。

アップルは長年、製造のパートナーとしてだけでなく、ゲームなどApp Storeでの売上とiPhoneの全国的売上で中国に依存している。しかしそれでも近年は、6月にこれまでで最大のストアを開いたHuawei(ファーウェイ)をはじめ、中国のスマートフォンメーカーが、中国におけるアップルのマーケットシェアを徐々に奪ってきた。Counterpointの調査によると、アップルのシェアは約10%で、順位は5位だ。

バー氏がアップルを厳しく非難したのは、同社が中国政府のためにアプリを間引いているからだ。アプリを禁止する動機は、香港の抗議活動で使われた地図の場合のように政治的に問題のあるサービスを抑えるためだったり、規制の抜け穴を閉じるためなど、さまざまだ。ちなみに後者では、中国で許可されていない数千本のゲームが削除された

新しい店舗には中国の小売店では初めての屋根と一体化されたソーラーパネルがあり、世界中の再生可能エネルギーだけを使っているアップルの他の施設と同様に、その下のストアに電力を供給する。同社によると、それが中国で1年間にサポートするクリーンエネルギーの量は、45万世帯の家庭が使用する電力に等しい。

これまでの12年間で三里屯の店舗はスタッフが52名から185名に増え、2200万人以上のビジターを迎えた。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

7月第1週に2500本超のiOS用ゲームが中国App Storeから削除される

7月の第1週に2500本超のモバイルゲームが中国のApp Store(アップストア)から削除された。アプリストア調査会社であるSensor Towerの最新レポートで明らかになった。ライセンスのないゲームに対する計画通りの取り締まりで削除は予想されていた。しかしこれはアプリ経済への影響を示すデータとしては初めてのものとなる。

比較材料として、7月に削除されたアプリの数は4月第1週の4倍、5月第1週の5倍、6月第1週の4倍超だ。アプリ削除は、中国のゲーミング規則へのApple(アップル)の新たなコンプライアンスと関係がある。

今年初め、アップルはアプリのデベロッパーに6月30日までにモバイルゲームに関する中国の法律に則るよう案内した。2016年に施行されたこの法律では、有料ゲームとアプリ内課金のゲームを提供しているゲームデベロッパーに、中国の検閲団体の1つ、広報出版総局からライセンスを取得することを義務付けている。

何年もの間、iPhoneゲームデベロッパーは、ゲームをリリースした後にライセンス承認を待つことで法律を回避してきた。ライセンス承認は時間がかかる退屈なプロセスで、2018年にあったように審査作業の一時停止があれば数カ月以上もかかる。中国当局がポルノやギャンブル、暴力、その他の政府が不適切とみなすコンテンツを含んでいるゲームをさらに取り締まるために業務を見直した時、ライセンス発行が9カ月間止まった。

メジャーなAndroidアプリストアはすでに2016年ルールを適用していたが、アップルでは抜け道があり、モバイルゲーム業界は中国のiPhoneプラットフォームで何年も生き延びていた。

画像クレジット:Sensor Tower

アップルの対応から、App Storeで何千ものゲーム削除が7月に始まることが予想されていた(Engadget記事)。Sensor Towerのデータはそのときがきたことを示している。しかしSensor Towerのデータは、サブカテゴリーチャートを含むApp Storeのチャートにランクインするほどダウンロードが多かったゲームのみをとらえている。

削除された2500本あまりのゲームのうち、2000本のゲーム(80%)は2012年以来のダウンロードが1万回以下だったとSensor Towerは推定している。それらのゲーム合わせて計1億3340万回のダウンロードがあった。削除されたゲームの総売上高は合計で3470万ドル(約37億円)で、うち1つのゲームが1000万ドル(約11億円)超、そして100万ドル(約1億1000万円)超を売り上げたゲームは6つあった。

削除されたゲームの中で有名なものには、GluのContract Killer Zombies 2、ZyngaのSolitaire、Crazy LabsのASMR Slicing、FlaregamesのNonstop Chuck Norrisがある。直近では、SupercellのHay Dayも削除された。

ゲームマーケットへの変更、そしてアプリ経済への新型コロナウイルスの影響により、第2四半期におけるiOS消費者の消費額においては米国が再びトップとなっている。App Annieによると、第2四半期の米国iOS消費者の消費額は前年同期比30%増だった。

中国は世界で最も儲かるモバイルゲームマーケットだっただけに「ゲーム削除による長期的な影響がアップルの収支に表れるかもしれない」とSensor Towerは指摘した。2019年に中国のApp Storeのゲームは推定126億ドル(約1超3500億円)を売り上げた。これはアップルのマーケットプレイスでの昨年のグローバルゲーム支出の33.2%を占めるという。

画像クレジット: Sensor Tower

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(翻訳:Mizoguchi