長崎に世界からスタートアップを呼び込むためジャパネットとペガサスが約54億円の投資ファンドを設立

企業のスタートアップ投資ファンドの立ち上げを支援するPegasus Tech Ventures(ペガサステックベンチャーズ)は米国時間3月9日、日本最大級のテレビショッピング企業であるジャパネットとの新たな提携を発表した。両者は5000万ドル(約54億円)のベンチャー投資ファンドを設立し、長崎の大規模な地域新開発を含め、世界のスタートアップに投資する。

ジャパネットは、新たな分野への進出を支援するスタートアップを募集している。2024年にオープンする長崎のスタジアムシティという建設プロジェクトもその1つだ。これはスポーツスタジアムを中心にオフィス、商業施設、ホテル、イベント会場など、周辺の複合施設が含まれる。ジャパネットはまた、高齢者向けの新しいサービスや子どもたちへの教育支援にも力を入れていく計画だ。

ペガサステックベンチャーズのジェネラルパートナー兼最高経営責任者であるAnis Uzzaman(アニス・ウッザマン)氏がTechCrunchに語ったところによると、スタジアムシティは長崎経済の活性化を支援し、世界中からテックを含む新しい製品やサービスを同市に呼び込むことが目的だという。ジャパネットの計画は「初期段階のスタートアップと時間をかけてソリューションを共同開発することと、後期段階のスタートアップがスタジアムシティでローカライズして展開するのを支援することの両方を計画しています」と、ウッザマン氏は語った。

ペガサステックベンチャーズのチームは、ジャパネットが北米、イスラエル、ヨーロッパ、アジアを含む世界中のスタートアップをスカウトするのを支援する。同社は現在、15億ドル(約1630億円)の資産を運用している。同社が「Venture Capital-as-a-Service(ベンチャーキャピタル・アズ・ア・サービス)」プログラムを通じて協力してきた企業には、台湾のAsus(エイスース)や、日本ではジャパネットの他に、セガサミーホールディングス、サニーヘルス、インフォコム、アイシン精機などがある。同社の投資先には、SpaceX(スペースエックス)、23andMe、SoFi(ソーファイ)、Bird(バード)、Color(カラー)、App Annie(アップアニー)などのスタートアップが含まれる。

ジャパネットの投資ファンドによるアーリーステージのスタートアップに対する典型的な投資額は、10万ドル(約1090万円)から100万ドル(約1億900万円)の範囲となる。後期のスタートアップは、100万ドルから500万ドル(約5億4500万円)の間で投資を受ける。同ファンドの支援を受けたスタートアップ企業は、ジャパネットの他、三菱地所設計、JLLモールマネジメント、MSCクルーズジャパンなどの企業パートナーと綿密に連携することになる。

画像クレジット:ImpossiAble / Getty Images

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

2020年におけるアフリカのスタートアップの資金調達状況

アフリカのベンチャーキャピタル業界は着実に成長を遂げており、近年、国内外の投資家からの資金流入がかつてないレベルに達している。その成長度を示す具体的な数字を挙げると、アフリカのスタートアップが2015年に調達した資金はわずか4億ドル(約420億円)だったが、2019年にアフリカ大陸に流入した資金は20億ドル(約2100億円)に達する(アフリカに傾注するファンドPartech Africa(パーテックアフリカ)の調べによる)。

ただし、この数字だけが唯一の尺度というわけではない。 WeeTracker(ウィートラッカー)やDisrupt Africa(ディスラプトアフリカ)などのメディア刊行物は、アフリカのベンチャーキャピタル市場について異なる数字を公開している。TechCrunchでは、昨年の各社の数字を比較対照してみた。その調査の結果、集計手法の相違と類似性の詳細が明らかになった。

アフリカのスタートアップの2019年における資金調達額については、パーテックは20億ドル(約2100億円)、ウィートラッカーは13億ドル(約1400億円)、ディスラプトアフリカは4億9600万ドル(約525億円)と推定している。

この数字は2020年に増加すると予想されていた。ところが、パンデミックで投資環境は完全に混乱とパニックに陥った。投資家が戦略を練り直す中、企業は規模縮小を図り、2020年の最初の数か月はデューデリジェンスも低調だった。それでも、5月には予測が上向き、AfricArena(アフリックアリーナ)は、予想された通りの取引で、年末までに12億ドル(1300億円)~18億ドル(1900億円)の資金調達ラウンドを成功させた。

投資も上向き、7月になるとアフリカ大陸でのVCファンドは活況を呈し、それが12月まで続いた。2020年は、2019年のように大型投資が続くことはなく、投資総額が20億ドル(約2100億円)に達することもなかったが、買収にとっては良い年になった。主な例を挙げると、WorldRemit(ワールドレミット)がSendwave(センドウェーブ)を5億ドル(約530億円)で、Network International(ネットワークインターナショナル)がDPO Group(DPOグループ)を2億8800万ドル(約305億円)で、Stripe(ストライプ)がPaystack (ペイスタック)を2億ドル(約210億円)以上で買収した。

2020年のアフリカにおけるVCの投資状況を把握するため、パーテックアフリカ、ブリターブリッジ、ディスラプトアフリカの3社のデータを調べてみよう。

数字が表すもの

パーテックアフリカによると、2019年におけるアフリカのスタートアップへの投資総額は20億ドル(約2100億円)だったが、2020年には14億3000万ドル(約1510億円)まで低下したという。ブリターブリッジによると、アフリカのスタートアップへの投資総額は、2019年の12億7000万ドル(約1340億円)から2020年には(公開および未公開の両方を含め)13億1000万ドル(約1390億円)まで増加した。ディスラプトアフリカによると、この投資総額は2019年の4億9600万ドル(約525億円)から2020年には7億ドル(約740億円)まで増加したという。 

昨年同様、評価対象の取引タイプからアフリカのスタートアップの定義まで、集計手法が対照的であることが数字の違いにつながっている。 

パーテックのジェネラルパートナーであるCyril Collon(シリル・コロン)氏によると、同社の数字は20万ドル(約2100万円)を超える株式資本取引をベースにしているという。また、同社によるアフリカのスタートアップの定義は「運営または収益という観点で主要市場がアフリカにある企業を指し、本社や組織の場所に基づいて考えているわけではない」という。また、「こうした企業が成長してグローバルな事業展開を始めても、やはりアフリカの企業としてカウントする」。

ブリターブリッジも同様の集計方法を採用している。同社のディレクターであるDario Giuliani(ダリオ・ジュリアーニ)氏によると、同社の研究組織は、税金、顧客、知的財産、管理チームなどが企業アイデンティティーに寄与する要因であるとの認識に基づき、アフリカのスタートアップを定義する際に地理的な要素を考慮しないという。

ディスラプトアフリカの場合、報告書で取り上げるスタートアップは、創業7年以下で、まだ成長中であり、収益性を高める潜在性を備えている企業である。「大きな企業や組織からスピンオフされた企業や、当社の定義に照らしてスタートアップ段階を過ぎている企業」は除外しているという。

フィンテックとビッグ4の優位は変わらない

パーテックによると、アフリカのスタートアップの2020年における資金調達総額は前年と比べて低下しているものの、成功した調達ラウンドの数はむしろ増えている。同社によると、2019年に完了した調達ラウンドの数は250件であったが、2020年には347社のスタートアップが359件の調達ラウンドを成功させた。これには、シードラウンドが増加したこと(2019年と比較して88%増加)、およびパンデミックによるロックダウンの中、キャッシュが不足してブリッジラウンドが増加したことが関係すると考えられる。

3社の報告書ではどれも上位5業種にフィンテック、ヘルスケアテクノロジー、クリーンテクノロジーが入っている。ただし、予想どおり、アフリカのVC資本調達額においてフィンテックの割合が圧倒的に大きい。  

パーテックによると、フィンテックは昨年のアフリカにおける資金調達総額の25%を占めているという。その後に続くのは、アグリテック、ロジスティクスおよびモビリティ、オフグリッドテクノロジー、ヘルステクノロジーといった業種だ。

ブリターブリッジによると、昨年のVC資金調達総額のうちフィンテック企業が占める割合は31%で、その後に、クリーンテクノロジー、ヘルステクノロジー、アグリテック、データ分析が続く。

ディスラプトアフリカの集計では、フィンテック分野のスタートアップがアフリカのVC資金調達総額の24.9%を占めており、その後に、Eコマース、ヘルステクノロジー、ロジスティクス、エネルギーといったスタートアップが続く。

3つの報告書のうち少なくとも2つによると、ビッグ4と呼ばれる国が2020年の投資先の圧倒的多数を占めている。

パーテックが報告した上位5か国もやはり同様である。ナイジェリアがVCの投資先としてトップで、スタートアップの資金調達額は3億700万ドル(約325億円)だった。僅差の第2位はケニアで3億400万ドル(約322億円)だ。第3位はエジプトで2億6900万ドル(約285億円)、第4位は南アフリカで2億5900万ドル(約274億円)となった。パーテックによる2019年の集計で5位だったルワンダに代わってガーナが第5位になり、資金調達額は1億1100万ドル(約118億円)だった。

ディスラプトアフリカの集計では、上位5か国が2019年と変わらなかった。1位はケニアで、スタートアップの資金調達額は1億9140万ドル(約202億6000万円)だった。これに、1億5040万ドル(約159億2000万円)のナイジェリア、1億4250万ドル(約150億9000万円)の南アフリカが続く。僅差の4位はエジプトで、資金調達額は1億4140万ドル(約149億7000万円)だった。これに対し、ガーナのスタートアップによる資金調達額は1990万ドル(約21億1000万円)となっている。

ブリターブリッジは異なるアプローチを採用している。パーテックとディスラプトアフリカは企業の創業国および運営国ごとの資金調達活動に焦点を当てていたが、ブリターブリッジは資金調達額をスタートアップの組織または本社の所在地ごとに集計した。この前提によって、ビッグ4の顔ぶれが若干変わってくる。ブリターブリッジによると、1位は米国に本社を置くスタートアップで、資金調達総額は4億7180万ドル(約499億5000万円)だった。2位は南アフリカに本社を置くスタートアップで1億1970万ドル(約126億7000万円)、3位はモーリシャスに本拠地を置く企業で1億1000万ドル(約116億5000万円)となった。次いで英国およびケニアに本社を置くアフリカのスタートアップが続き、資金調達額はそれぞれ1億760万ドル(約113億9000万円)、7710万ドル(約81億6000万円)となっている。

ジュリアーニ氏は、ブリターブリッジがこの集計方法を採用した理由について、さらなる論議を展開する際の公平な起点として自社のデータを利用したいと考えているためだと説明している。そのようなデータがあれば、より良い政策、規制、ファイナンスの可用性といったより複雑なダイナミクスを調査していくことができるためだ。

この観点から見ると、会社の主たる所在地にナイジェリアが含まれていないのも納得できる。規制、ビジネス環境、納税条件などが企業にとって不都合であるという理由で、ナイジェリアのスタートアップはセイシェルやモーリシャスといったアフリカの国やアフリカ大陸外に本拠地を置くことが多くなってきている。外国のVCのほとんどは、アフリカのスタートアップがビジネスに好都合な投資法を完備した国に本拠地を置いてほしいと思っているため、こうした傾向は続くと考えられる。

地域と性別の多様性

アフリカのフランス語圏でのスタートアップの企業活動が増えているため、同地域におけるVC資金調達額も増えるという予想もあったが、そうはなっていない。セネガルはフランス語圏トップのVC出資先だが、2019年に1600万ドル(約17億円)だった資金調達額は、2020年に880万ドル(約9億3000万円)に低下している(パーテックの調査による)。アフリカ全体で9位のセネガルと10位のコートジボワールを合わせても、資金調達額はわずか650万ドル(約6億9000万円)に過ぎない。

ただし、良いニュースもある。パーテックのデータによると、2020年には、ビッグ4以外で22か国が資金を調達できたという。この傾向は続くのだろうか。もし続くのであれば、次に資金調達額が1億ドルを超えるのはどの国になるのだろうか。

パーテックアフリカのジェネラルパートナーTidjane Deme(ティージャン・デーム)氏は、次に1億ドルを超える国がガーナになると考えている。かつてはケニア、ナイジェリア、南アフリカがビッグ3として君臨していたが、そこにエジプトが支配的な勢力として登場した。同氏は、同じことが西アフリカの国でも起こると述べている。

「投資家がより多くの市場に進出するにつれ、明らかな分散化が発生している。たとえば、ガーナは、すでに1億ドル(約110億円)を超える投資を誘致している。もちろんこの調達ができるだけ早く実現することを願っているが、同時に、これが新しい市場に参入する投資家と資金調達の仕組みを学習する創業者の双方の学習プロセスであることも分かっている」。

ガーナはジュリアーニ氏の予測にも登場していた。同氏は、エコシステムを進化させつつあり、近いうちにグローバルな投資家たちが注目すると思われる準大国として、チュニジア、モロッコ、ルワンダといった国も挙げている。

ディスラプトアフリカの共同創業者Tom Jackson(トム・ジャクソン)氏が具体的な国名を挙げることはなかった。ただ、ビッグ4以外の市場にも積極的な要素がいくつかあるものの、ビッグ4が優勢な状況は続くと考えている。

「資金は他の市場にも少しずつ移行していくだろう。その点ではすでに良い兆候が見られる。しかし、アフリカのスタートアップ業界はどちらかというとまだ初期段階であり、ビッグ4の市場は圧倒的に有利なスタートを切っているため、今後数年間はそのリードを保ち続けるだろう」と同氏は言う。

看過できないもう1つの多様性として性別が挙げられる。インクルージョンについてあらゆる議論がされているが、ブリターブリッジによると、2020年に資金を調達したスタートアップのうち、創設者、共同創設者、経営幹部に女性がいるのは15%だったという。一方パーテックは、この割合を14%としている。この割合を上げるためにはまだ多くの努力が必要だが、より多くのアーリーステージ企業がこのギャップを埋めようとしてくるだろう。

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Dragonfly)

大手VCファンドが共同で250人以上のEU女性起業家にメンタリングを提供、投資家とツテなしAIマッチング

国際女性デーにちなんで、大手VCファンドのグループが、今年5月6日に欧州全域で250名以上の女性創業者を対象にリモートオフィスアワーを提供する。応募を希望する女性起業家は、こちらから詳細情報を参照し、こちらから応募することができる。

このイニシアチブは、「warm introduction(保証人・ツテによる紹介)」の必要性をなくすことを目指している。各創業者は、リモートオフィスアワー1時間を使って4人の投資家と会い、テックビジネスのアイデアについて話し合ったり、アドバイスを求めたり、投資を募ったり、メンターを探したりする機会を得られる。

このイベントは、Playfair Capital、Tech Nation、Google for Startupsが共同で開催する。参加企業は、Atomico(アトミコ)、Creandum(クリーンダム)、Dawn(ドーン)、Balderton(バルデントン)、EQT、Notion(ノーション)、LocalGlobe(ローカルグローブ)、Partech(パーテック)、そしてSequoia(セコイア)を含む。

Playfairの広報担当者によると、過去4回のイベントでは合計2000時間の個別メンタリングセッションが行われ、490人の起業家と105人の投資家が参加したという。これまでに、Organise、SideQuest、Paid、Freyda、そしてJunoの創業者を含め、18%の創業者がイベント参加後に資金調達に進んだ。

Playfairによると、このイベントでは起業家と投資家の間で「AIマッチング技術」を活用し、イベントからの資金調達の成果をさらに最適化していくという。

Playfair CapitalのマネージングパートナーであるChris Smith(クリス・スミス)氏はこのようにコメントしている。「エコシステムからのサポートは信じられないほどのもので、このイベントに力を注いでくれた投資家の方々には大変感謝しています。過去のイベントから出たサクセスストーリーを聞き始めるのは非常にエキサイティングなことであり、規模を拡大して長期的な視点で協力しあうことで、本当にインパクトを与えることができると早くも証明しています」。

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タグ:女性

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

DRONE FUNDが3号ファンドの追加調達を実施し清水建設やキャナルベンチャーズらが参画、総額約50億円に

DRONE FUNDが3号ファンドの追加調達を実施し清水建設やキャナルベンチャーズらが参画、総額約50億円に

「ドローン・エアモビリティ前提社会」の実現を目指すベンチャーキャピタルのDRONE FUND(ドローンファンド)は3月9日、2020年5月に目標調達額を100億円とする「DRONE FUND 3号投資事業有限責任組合」(3号ファンド)を設立し、2020年9月にファーストクローズを実施したと発表した。

3号ファンドでは、清水建設、キャナルベンチャーズなどを新たにLP投資家として迎え、ファーストクローズとあわせて総額約50億円の調達を実施した。ドローンファンドはファイナルクローズに向けて、今後も資金調達を続ける。

DRONE FUNDによると、ドローンやエアモビリティをはじめとする空のテクノロジーは、国土・インフラの保全、産業活動の効率化と発展、日々の暮らしを支えうるソリューションとして注目を集めているという。デジタル政策やグリーン政策の重点化や、全国でのスマートシティに関する機運の高まりも大きな追い風としている。

DRONE FUNDは、これらを背景にドローン・エアモビリティのさらなる社会実装を促進するべく、3号ファンドを設立。次世代通信規格5Gをはじめとする通信インフラの徹底活用などを通じ、フィールド業務の自動化やリモート化などの産業活動のDXを可能とし、ドローン・エアモビリティの社会実装に寄与しうるテクノロジー、ソリューションへの投資を展開するとしている。

DRONE FUNDが3号ファンドの追加調達を実施し清水建設やキャナルベンチャーズらが参画、総額約50億円に

2025年ごろ、ドローンによるラストワンマイル物流サービスのイメージ

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タグ:ドローン(用語)Drone FundDRONE FUND 3号投資事業有限責任組合日本(国・地域)

コロナに対抗する投資家たち:ギリシャ編(後半)

日本版編集部注:本稿は日本と同じようにコロナ禍で揺れるギリシャで投資を行うVCへのインタビューとその回答を掲載するシリーズ記事だ。前半はこちらで読める。

後半では、以下の投資家のインタビュー回答を掲載する。

Myrto Papathanou(ミルト・パパサノウ)氏、Metavallon(メタバロン)、創業パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

当社は主に、アーリーステージのB2B企業に投資していますが、セクターは選びません。当社のポートフォリオの80%以上は、主に機械学習、AI、クラウド、SaaS、アナリティクスを使った独自技術を開発している企業です。これまでの投資対象は、ヘルス、エネルギー、セキュリティ、ロジスティクス、メディア、法人向けソフトウェア/ツール関連の企業です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

ベルリン本拠のFly Ventures(フライ・ベンチャーズ)がリードする当社のポートフォリオ企業の1つBetter Origin(ベター・オリジン)の追加ラウンドをクローズさせたばかりです。ベター・オリジンはケンブリッジとアテネを本拠とするバイオ系スタートアップで、地域の食品廃棄物を、昆虫の幼虫の形をした高品質の動物飼料に変換する世界初の昆虫ミニファームを開発しています。このソリューションは、オートメーションとAIを組み合わせて自然のリサイクリングシステムを模倣するものです。顧客から上々の反応を得て今回の資金調達を成功させ、経営基盤を強化し、スケーラブルなソリューションを英国および世界中の数百の農場に展開しようとしています。ベター・オリジンの事業とその成長スピードには本当にワクワクしています。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

欧州、特にギリシャは、ディープテック企業を育むには素晴らしい場所です。質が高く誠実な労働力、バリュー・フォー・マネー・エンジニアリング、非希薄化ファイナンスの可用性と新しく導入された製品スキル、ビジネス感覚と企業家的野心などの条件が揃っているこの地は、B2Bスタートアップにとってエキサイティングな場所です。もっと多くのスタートアップがテクノロジーでエネルギーや持続可能性の問題に挑むのを見てみたいと思います。ここにはチャンスもあり、機運が熟していると思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

実現可能なビジネス感覚を備えた明晰かつ有能なエンジニアを求めています。業界に関する深い専門知識があり、その業界が抱える問題を自社のテクノロジーでディスラプトできる創業者を探しています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

当社はあまり投資していませんが、B2C分野では、極めて狭いニッチな問題に取り組んでいるチームが多数存在しているようです。これは私見ですが、そうしたチームは、たとえ成功したとしても、VCに支援された企業のように大きな利益を上げるのはかなり難しいのではないかと思います。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社はギリシャに注力していますが、ディアスポラ(海外在住ギリシャ人)にも大きなチャンスがあります。この10年で国を離れ、他国の市場で経験とノウハウを積んだ人にとって、今こそ母国でテック企業を起業するチャンスだと思います。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

アテネ発のUseberry(ユーズベリー)、Prosperty(プロスパティ)、Loctio(ロクティオ)に大きな期待を寄せています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ギリシャにおけるテクノロジー関連スタートアップとその投資環境は、ここ3年ほどで大きく様変わりしました。イグジットと未実現価値の額は2020年だけで4倍に跳ね上がり、その勢いは今も止まりません。アーリーステージVCが多数存在しているため、初期の資金調達、ビジネスモデルとそのスケーラビリティの評価、グローバルなビジネスの展望などが比較的容易に得られます。当社は、地元、地域、海外の20を超えるVCや、業界専門知識があり当社の企業ポートフォリオに戦略的関心がある40人を超えるエンジェル投資家と積極的に共同出資してきました。未開拓の分野はまだたくさんあります。過去10年の間に起業した企業の中には、事業を拡張し、製品やビジネスの開発、市場での販売活動など、以前は欠けていたスキルを導入するという好循環を生み出している企業もあります。欧州の東南地域は全体的に見過ごされている市場ですが、海外の投資家たちは今この地域に注目し始めています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、そう思います。理由は2つあります。第一に、世界は今や一枚岩であり、構築されたテクノロジーが地球規模で利用可能である場合、資本と人材のロケーションはあまり意味を持たなくなっています。パンデミックの影響でギリシャではちょっとした頭脳流入が起こっており、テクノロジーの専門家が母国に戻り、創業者、経営幹部、および投資家としてスタートアップの起業に関わっています。第二に、グローバルな人材活用と効率的なリモートワークにより、人的資本だけでなく、その周辺のプロフェッショナルサービス、さらには不動産にかかるコスト(つまり従来のハブで必要とされたコスト)を正当化するのが難しくなっています。ですから、これまで見過ごされてきた場所で起業する創業者が急増すると思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

ホスピタリティ業界と旅行業界は、パンデミックの影響を切り抜けるという意味では長期戦を強いられるでしょう。これらのセクターには、長期資本とビジネスプランの延長が必要です。当社のポートフォリオ企業の1つであるFerry Hopper(フェリー・ホッパー)には感銘を受けました。フェリーの予約サービスを稼働しているこの会社は、パンデミックの最中に、一夜にして経営方針を切り替え、旅行客ではなく、地元の顧客と通勤客にフォーカスするようになったのです。こうした企業には機敏な反射神経と順応性が必要です。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社はB2Cには注力していなかったため、投資戦略はほとんど影響を受けていません。ある意味、アーリーステージの投資はほとんど影響を受けていません。というのは、ほとんどの時間を、製品と、製品と市場の適合性の実現に費やしていたからです。創業者は最初ランウェイと資本調達について心配していましたが、その不安は杞憂に終わりました。B2B企業にとってはビジネスを開発する好機が開かれていると思います。顧客はかつてないほどの緊急感を持ってデジタル化、イノベーション、効率改善を進めたいと感じているからです。ポートフォリオ企業には、集中力を維持し、世論と顧客の声に耳を傾け、いつでも対応できるようにしておくようアドバイスしています。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

パンデミックの最初の2か月間を除き、リテンションと成長率はそれほど大きな影響を受けなかったようです。今見受けられるのは、B2Bの売上サイクルの長期化です。特に、業界の大手企業、健康医療、金融セクターの顧客でその傾向が強いようです。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

アテネで学校が再開されたことですね。

George Dimopoulos(ジョージ・ディモポロス)氏、VentureFriends(ベンチャーフレンズ)、創業パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

不動産テック、フィンテック、B2C、トラベル関連テック。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Spotawheel(スポッタウィール。オンライン中古車販売ビジネス)。このカテゴリーで2つ目(ギリシャとポーランド)の市場への拡大に成功した最初のチーム。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

フィンテック関連、とりわけインシュアテック関連のスタートアップがもっと増えてほしいですね。保険関連はとっくに急発展していてもよい分野です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

優れたチーム、巨大な市場、そして実際の問題を解決する製品やサービス、つまり「あったら良い」ではなく「なくてはならない」ソリューションを提供できる企業かどうかという点です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

ハードウェアスタートアップの場合は競争は難しいと思います。当社には必要な背景知識や専門知識がないからです。当社の目標は単に小切手を切ることだけではありません。当社のネットワーク、ノウハウ、過去の経験を、関わるすべての投資に活かしたいと考えています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社は海外にも関心を持っており、英国やポーランドといった他国のエコシステムにもチームのメンバーがいます。自国から出現した素晴らしい会社に投資する機会を逸したくはないので今後もギリシャのスタートアップを支援し続けますが、欧州全体、またできる範囲で欧州外にも投資していきたいと考えています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

当社はB2C企業に注力しています。ギリシャ人創業者たちは、ギリシャの市場で力量を試した後、海外のより大きな市場に進出することができることを実証してきました。例えば、最近の実例として、Blueground(ギリシャ、トルコ、UAE、米国)とSpotawheel(ギリシャ、ポーランド)の2社があります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

私は2011年にエンジェル投資家として初めて、ギリシャのスタートアップに投資しました。当時、20万ドル(約2100万円)のラウンド規模や1000万ドル(約10億5000万円)のイグジットといえば大きな案件でした。最近では、この程度の規模のラウンドや5000万ドル(約52億5000万円)以下のイグジットでは驚きもしなくなりました。ギリシャ人創業者の大志と自信は、大規模なラウンドとここ数年で起こった注目に値するイグジットに後押しされて劇的に変わりました。あと2、3年もすれば、ギリシャで最初のユニコーン企業が誕生すると確信しています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

そうは思いません。ギリシャのエコシステムでは、主要な2つか3つのハブがエキサイティングで興味深いギリシャ企業の大半を輩出し続けると思います。パンデミックは、1、2年も経てば、単なる嫌な記憶になるでしょう。エネルギッシュで有能な人たちがいる環境に身を置きたいというニーズと、それによってもたらされる明らかな利点があるかぎり、創業者と人材は、活気に溢れたスタートアップコミュニティが存在する都市にますます引き寄せられるでしょう。ギリシャの場合は、アテネ、テッサロニキ、パトラなどの都市です。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

トラベルテックには引き続き関心を持っています。ご想像どおり、旅行業界は昨年大きな打撃を受けました。ですが、ある程度の割合の人たちがワクチンの接種を受け、生活が元に戻れば、旅行も再開されると確信しています。最初はレジャー、そして最終的には企業の出張旅行も再開されると思います。2019年から2020年にかけての困難な時期を乗り切った人たちには、多くの利益がもたらされるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略は新型コロナウイルス感染症によってさほど大きな影響を受けていません。シードステージのスタートアップへの投資は長期投資であり、その会社と長期にわたって関わっていくことになります。現在の状況下で投資企業が困難に直面したとしても、それを理由に低評価を下すことはありません。そうではなく、その企業がより安定した環境や状態にあるときの業績がどうなるかを検討するのが、投資対象企業を評価する際の当社の方針です。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

どういうわけか当社のポートフォリオは投資先の分散を自然に達成しているようです。一部の企業が困難に直面しても、他方では毎月2桁成長を実現する企業があります。最も分かりやすい例がInstaShop(インスタショップ。オンデマンドの雑貨配達サービス)です。当社はこのUAE本拠スタートアップのギリシャ人創業者に投資したのですが、ほんの数か月で会社は3倍の規模にまで成長し、最終的には3億6000万ドル(約377億95000万円)でDelivery Heroに売却して、当初の計画より2~3年早くイグジットを達成しました。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

当社の今年のハイライトはInstaShopを3億6000万ドル(約377億95000万円)でDelivery Heroに売却してイグジットを達成したことです。このイグジットによって、当社はファンドとして一段階上のレベルに移行し、ギリシャのエコシステムにもある程度貢献できたと思います。というのは、このイグジットで現在および将来の創業者たちに先例を作ることができましたし、ギリシャのチームでも国際的に大きな成功を収めることができるという自信が固まったからです。

地元で成功を収めたスタートアップ業界の主要人物を挙げていただけますか。投資家や創業者だけでなく、弁護士、デザイナー、グロースエキスパートなど、スタートアップのエコシステムで別の役割を果たす人たちでも構いません。地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

Endeavor(エンデバー、起業家支援団体)の地元事務所は間違いなく、つながっておくべき人たちのグループですね。彼らはスタートアップのエコシステム全体、および従来型経済で活躍する人たちとも強いつながりがあります。従来型の企業人に接触する方法を探している若い会社には、価値のある団体だと思います。

George Karantonis(ジョージ・カラントニス)氏、Metavallon(メタバロン)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

当社は広範な分野に展開しているファンドで、B2Bビジネスモデルを深く理解しており、ギリシャと関連のあるチームに注力しています。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Biopix-T(バイオピクス・ティー)です。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

海洋経済学に関する幅広いセクターで活躍するスタートアップに投資してみたいと思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

経験豊富で積極的な市場拡張を見据えてしっかりした計画を立てているかどうかに注目します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

旅行・宿泊セクターは最近問題を抱えています。また大半のマーケットプレイスは顧客トラクションを維持するのに苦戦しています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

運用資本の性質のため地元のエコシステムへの投資が50%を優に超えています(80%はGR構造基金とEIFからの出資です)。例外は、ギリシャ人ディアスポラが海外で創業した企業です。彼らは、ギリシャでも事業展開したいと考えています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ロジスティクス、リモートコラボレーション、トレーニング、ヘルステック、フィンテックと関連のあるすべての企業に期待しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

初期の急成長ステージにあるエコシステムであり、高い技術スキルが特長です。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

合理的なシナリオだと思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行・宿泊、マーケットプレイスは対応に苦慮すると思います。創業者は真のニーズと問題にかつてないほど注力する必要があると確信しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

懸念しているのは、今のようなビジネス環境でラウンドをクローズさせるのがどのくらい難しくなるのかという点です。今までのところは、何とかクローズさせていますが、パンデミックが長引けば、さらに難しくなります。アドバイスとしては、できるかぎり早く資金調達を開始し、通常よりも高いリザーブ/ランウェイを確保することでしょうか。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。SaaS/クラウド企業、ヘルステック、デジタルプロダクション企業は良い業績を残しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

パンデミックの最中にエグジットを1件達成し、シードラウンドを1件、シリーズAラウンドを2件クローズできたことです。

TC:地元で成功を収めたスタートアップ業界の主要人物を挙げていただけますか。投資家や創業者だけでなく、弁護士、デザイナー、グロースエキスパートなど、スタートアップのエコシステムで別の役割を果たす人たちでも構いません。地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

Metavallonが他と違うのは、アーリーステージのテックスタートアップのみに出資する4~6つのファンドを初めて組成するようになったという点です。

Katerina Pramatari(カタリーナ・プラマタリ)氏、Uni.Fund(ユニ・ファンド)、創業パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

技術移転および広範なテック領域、小売テック、AI、アナリティクス、IoT、SaaS。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Kinvent(キンヴェント)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

気候関連、環境面の持続可能性。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

優れた知的資産を持つ情熱のあるチームで、(限定的でも)収益を生み出し市場をテストしているかどうか。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

特に旅行、観光、カルチャー関連分野のB2C。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

80%以上。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

小売、観光、海運、農業食品の各業界です。関心がある企業は、 Kinvent、BibeCoffee、Flexcar、ExitBee、Tekmon、BeSpot、Cyrus、Nanoplasmasの各社です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

勢いがありエコシステムが成長しています。可能性のある未開拓分野が多数あります。特に、大学と研究関連の分野には可能性があります。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、すでにそうした動きが見られます。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行・観光関連は対応に苦慮するでしょう。eコマースと新しいサービスモデルにはチャンスがあると思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社は、新型コロナウイルス感染症の拡大以前から「キャッシュフロー黒字を維持した成長」戦略に従ってきましたので、当社のポートフォリオにはパンデミックの影響はほとんどありませんでした。大きな打撃を受けた企業もありましたが、新しい収入源を開拓することでこの危機をチャンスに変えることができました。当社のポートフォリオ企業の創業者は総じて前向きでした。ポートフォリオの総収益は創業時の4倍となり、パンデミックの最中でも2倍になりました。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

2021年の当社ポートフォリオ企業の総収益は(主力企業6社のおかげで)5倍増になると予測しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

100万ドル(約1億500万円)以上の大型契約を2件締結したこと、100万ドル(約1億500万円)を超える条件規定書を却下したこと、バイアウトオファーを拒否したこと、多国籍コンサルティング企業に部分イグジットして高い評価額を実現したこと、米国市場に参入する大きなトラクションを獲得したこと、などです。

Apostolos Apostolakis(アポストロス・アポストラキス)氏、VentureFriends(ベンチャーフレンズ)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

活気に溢れた経済、高いユーザーエクスペリエンスとデータ駆動型フィンテック製品、eコマースイネーブルメントなどです。当社が注目しているセクターの中では、ペーパーレス、オートメーション、透過性の向上など、日常生活から摩擦を取り除くモデルに最も関心があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Influ2(エンタープライズB2Bマーケティング・プロセスを大幅に改善するウクライナ/米国本拠の企業)、Byrd(バード)、Spotawheel。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

欧州西部の市場に合わせて調整されたKuaishou(クアイショウ)はかなり興味深いものになる可能性があります。Popshop(ポップショップ)は米国市場に挑戦しています。住宅ローン分野は、良質な仲介業者(Habito(ハビト)など)は登場していますが、大きなイノベーションは起こっていません。理想としては、個人の財務状況、購入予定の資産を把握して、その人に合わせた金融商品を作成してくれるサービスがあればと思います。採用活動、仕事の応募、リテンション(人材の維持)には膨大な作業が費やされているにもかかわらず、人材の調達と管理を行うサービスはまだ存在しません。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

長期の参入障壁とスケーラビリティを構築しているかどうか。創業者と製品と市場の適合性。

当社は一般に、創業者を最も重視します。大それた野望と高い能力、強烈な個性を持ち合わせた創業者を探しています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

投資先の約50%が地元ギリシャのエコシステム、残りが欧州の他国です。当社のチームメンバーの1人はロンドンを本拠としています。ポーランドやスペイン、ポルトガルにもチームメンバーを配置したいと考えています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか?

創業者と彼らの意欲次第です。資本と経験はすでにあります。BluegroundとSpotawheelには大いに期待を寄せています。この2社は欧州で確固とした地位を築く可能性を秘めています。

TC:御社の投資先であるかどうかは別として、今後が楽しみだと思う企業や創業者を教えてください。

ソフトウェアスタートアップはどこでも起業できます。ローカル市場で試してみる必要がある場合、ギリシャはほとんどのケースでテスト市場として利用できるそこそこの規模を持ち合わせています。私がワクワクするいくつかのスタートアップと創業者は、BluegroundのAlexandros Chatzieleftheriou(アレクサンドロス・チャトジーレフセリオ)氏、PlumのVictor Trokoudis(ビクター・トロコウディス)氏、SpotawheelのCharis Arvanitis(チャリス・アルバニティス)氏、EpignosisのThanos Papangelis(サーノス・パパンジェリス)氏、SkroutzのGeorge Chatzigeorgiou(ジョージ・チャツィージョルジョ)氏などです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ギリシャのエコシステムは繁栄しています。教育レベルが高くたゆまず前進を続ける人たちはいつも存在していましたが、その人たちが今、スタートアップを立ち上げるリスクを冒そうとしています。大きな成功事例を紹介します。Instashop(インスタショップ)の3億6000万ドル(約377億95000万円、現時点でギリシャのスタートアップのイグジット最高額)での売却は間違いなく最も重要な出来事でした。このイグジットでエコシステムは1つの壁を突破し、創業者の期待も高まりました。また、Softomotive(ソフトモーティブ)をマイクロソフトに1億5000万ドル(約157億5000万円)で売却した案件、SkroutzへのCVC投資、およびThink Silicon(シンク・シリコン)のApplied materials(アプライド・マテリアルズ)への売却も急成長している市場にとって大きなプラス要因でした。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

一般に強固なスタートアップハブは、その魅力を維持し続けると思います。パンデミックが収束すれば、人々は同じ考えを持った人たちの側で生活し、働きたいと思うようになるでしょう。しかし、新しいスタートアップハブの出現を後押しする2つのトレンドがあります。1つは、一部の人たちにとっては今後も魅力的であり続けるであろうリモートワークです。リモートワークは、例えば南ヨーロッパに居を移してそこから働こうとする人たちの決意を後押しするトレンドです。それに加えて、活気のある地元のテックエコシステムを持つ都市が出現し続けています。バルセロナ、マドリード、リスボンなどの都市がそうです。最近では、アテネに、人材を惹き付けることができる有望なスタートアップが数多く生まれています。このように、地元のスタートアップの活動が活発化すると、例えば、アテネに移って、太陽と文化を満喫しながら、有望なスタートアップで同じ考えを持った人たちと一緒に働くというチャンスが生まれます。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

明らかに、旅行関連のスタートアップは苦労するでしょう。B2Bスタートアップにとっては、コンテンツ作成とデジタル販売で優位に立つ良い機会です。リモートワークとはつまり、プロセスと文化をリモートで管理する、ということです。これにより広範な問題に対処できます。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社はパンデミック中も積極的に投資を続けました。大きくかつ明白な問題を解決する優れた創業者に投資するのに悪い時期などありません。同様に、当社のポートフォリオに含まれるスタートアップに対するアドバイスとしては、このパンデミックによる短期間の中断の後に何が起こるのかを考えるようにすることでしょうか。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

間違いなくその兆しはあります。まだ痛手から回復していない旅行関連スタートアップはともかく、その他の大半の企業は成長軌道に復帰しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

本当に頭が下がる思いをしたのは、2020年春のコロナ危機で大変なときに打撃を受けたスタートアップで気概のある人たちを見たときです。もう1つは、ワクチンのおかげで正常に戻れる望みが出てきたことです。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

コロナに対抗する投資家たち:ギリシャ編(前半)

経営コンサルタント企業Found.ationがギリシャのスタートアップエコシステムについてまとめた最近のレポートによると、エンジェル投資家による投資は低調なままだが、ギリシャのベンチャーキャピタルとベンチャーデットは増え続けているという。

不思議なことに、2020年は最高の年となった。InstaShop(インスタショップ)がDelivery Hero(デリバリー・ヒーロー)に売却され、インスタショップの評価額は3億6000万ドル(約377億9500万円)となり、ギリシャで創業されギリシャ国内で事業を展開しているスタートアップとしては最大規模のイグジットを達成したのだ。

パンデミックのおかげで、ギリシャの投資家とスタートアップは、どこからでもリモートワークが可能で、どこからでも採用活動ができるなら、ギリシャは拠点を置くのに決して悪い場所ではないということを認識することになった。ギリシャのVC市場は、ディアスポラ(海外在住者)が西ヨーロッパの大都市から戻ってくるにつれて勢いを取り戻している。また、ギリシャのスタートアップエコシステムは、資本コストの低さ、教育レベルの高い労働力、リモートワーク/リモート採用への移行といった好条件に恵まれているため、国外の投資家も惹きつけている。

Bessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、Insight Venture Partners(インサイト・ベンチャー・パートナーズ)、およびFJ labs(FJラボ)はすべてギリシャのスタートアップを支援しており、マイクロソフトは昨年、ギリシャ企業を初めて買収した。

また、ギリシャのスタートアップと投資家は、キプロス、ルーマニア、アルバニア、ブルガリアといった近隣諸国とのコラボレーションも拡大させている。

TechCrunchの調査によると、投資家に人気があるのは、インフラストラクチャー、アグリテック、サイバーセキュリティ、不動産テック、効率向上ソフトウェア、再生可能テック、肉体労働職の回復支援を目指すプラットフォームなどのセクターだ。

ギリシャのVC市場には、史上最悪のパンデミックからの回復の兆しが現れつつあるが、回復の規模はまだ小さい。

投資家たちは、「地元のエコシステムを常に優先する」と言うが、一方で「ロケーションがあまり意味を持たなくなり、どこからでも働けるリモートワークが新しい標準となるにつれて」ギリシャ国外にも手を伸ばし始めている。

前半では、以下の投資家からのインタビュー回答を掲載する。

Panos Papadopoulos(パノス・パパドポロス)氏、Marathon Venture Capital(マラソン・ベンチャー・キャピタル)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

インフラストラクチャー、アグリテック、サイバーセキュリティ、効率向上ソフトウェア。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Hack The Box(世界最大のサイバーセキュリティプレイグラウンド)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

インフラストラクチャーソフトウェアは最適化には程遠い状態で、利用料金が非常に高額です。最新のハードウェアアーキテクチャを活用して運用コストを下げ、操作しやすくするには、やるべきことが山ほどあります。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

業界を改善しようとしている業界人であるかどうかを見ます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

データ管理/分析分野は飽和状態です。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

80%以上が地元のエコシステムへの投資です。当社は未開拓の市場に投資しているため、有利な価格設定の恩恵を享受しています。

TC:現在のポートフォリオに含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的な繁栄に適していると思われる業種、または適していないと思われる業種は何ですか。どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

海運業は当然期待しますが、この分野でベンチャーキャピタルが収益を得るのは難しいと思います。

当社のポートフォリオ企業Netdata(ネットデータ)はITモニタリングに変化をもたらしています。大規模なOSSANコミュニティがあり、これまでに、Marathon(マラソン)、Bain(ベイン)、およびBessemer(ベッセマー)の各VCから3000万ドル(約31億円)を調達しました。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

まず、人を知り、その人の文化的な背景を知ることです。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、その可能性は大いにあります。生活費の高い大都市からその周辺地域(正直あまり遠方ではないと思いますが)に頭脳が流出するでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界は間違いなく対応に苦慮します。

ソフトウェアの再構築、統合には多くのチャンスがあります。あまりに多くのソフトウェアが単に寄せ集められた状態で使われていますが、それを一本化するには費用がかかりますし、面倒です。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

特に変わったことはありません。創業者にはオンラインのサポートチャネルのみを使うようにしてほしいと思っています。ハードウェアコンポーネントを扱っている会社にはより厳しい状況ですが、それでもサポートには革新を起こす必要があります。それができれば、利益を出せるようになるでしょう。

スタートアップへのアドバイスとしては、調達できる資金はすべて調達せよ、というところでしょうか。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

リモートワークは機会を均一化する優れた仕組みになる可能性があります。少なくとも大規模ハブから離れた場所に住む人たちにより多くのチャンスを与えることができるでしょう。

Dimitris Kalavros-Gousiou(ディミトリス・カラブロス・ゴウシオウ)氏、Velocity Partners(ベロシティー・パートナーズ)、創業パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

未来の働き方、エンタープライズソフトウェア、エドテック、AI。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Intelligencia.ai(機械学習とビッグデータで新薬開発をサポートする企業)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

エドテック、とりわけバーティカル教育と非英語圏コンテンツは大きな未開拓市場です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

当社はプレシードステージとシードステージのスタートアップに投資しているため、独自の視点、市場に対する洞察力と理解を備えた創業者を常に探しています。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社はアテネを本拠としていますが、ロケーションにはこだわりません。当社のポートフォリオ企業の半分は海外、大半は英国を本拠としています。英国にはギリシャ人の居住者やディアスポラの強固なコミュニティがありますから。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

ギリシャの場合は、国内市場の規模が比較的小さいため、B2Bとエンタープライズソフトウェアベンチャーにはチャンスがあると思います。最近の大型イグジットとしてRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)スタートアップのSoftomotive(ソフトモーティブ)がマイクロソフトに売却された例(2020年5月)などはまさにその証しです。私が興味を持っているのは、Intelligencia.aiとNetdataの2社です。Intelligencia.aiは、大手製薬会社による新薬の臨床開発に関する予測と開発期間の短縮を支援する事業を展開しています。Netdataは、アプリケーション、サーバー、コンテナ、デバイスをリアルタイムで監視するオープンソースシステムです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ギリシャは最近、大きなトラクションを獲得し始めており、海外のメディアでも取り上げられるようになっています。先ほど触れたSoftmotiveのイグジットなどは地元のエコシステムにとっては良いニュースでした。TileDB(タイルディービー)やPlum(プラム)といったアテネ本拠のスタートアップによる調達ラウンドも実施されています。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

その可能性は大いにあります。ロケーションがあまり意味を持たなくなり、リモートワークが標準的になってくると、大都市以外の地域から起業する創業者が増えてくると思います。多くの人が母国に帰ってきているため、Brain-regain(海外在住ギリシャ人の母国帰還を推進する非営利団体Ellinikes Rizesのイニシアチブ)も大きな推進力になるでしょう。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

トラベルテックはパンデミックによって大きな打撃を受けています。回復までにどのくらいかかるのか、どの程度まで回復できるのかを語るのは時期尚早ですが、今後1年から1年半くらいの間は、起業チャンスはほとんどないと思います。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

収益後スタートアップへの投資の場合、キャッシュフローとそれがランウェイに及ぼす影響が最も大きな課題です。市場に出る前かつ収益前のスタートアップはあまり影響を受けていません。すべてのスタートアップにとって、次回の資金調達ラウンドが大きな懸案事項であり課題となります。必要に応じてモニタリングとコスト削減を継続するようにアドバイスしています。資金調達戦略としては、ランウェイを18~24か月は延長できるように、より多くの資金を調達するのが良いでしょう。理想的な資金調達シナリオの実行が難しくなっている場合は、市場がある程度安定するまで持ちこたえられる資金を調達できる小規模なラウンド(主に既存の投資家が緊急時の融資として行うもの)を提案しています。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

当社のポートフォリオ企業の中には、主力製品や注力する市場セグメントを一部方向転換して、興味深い成長分野を開拓した企業があります。地元の肉体労働者向けマーケットプレイススタートアップMyJobNow(マイジョブナウ)が良い例です。MyJobNowの初期のサービスは求人広告に応募する肉体労働者をターゲットにしていました。新型コロナウイルスのパンデミック発生直前に同社は2つ目のサービスを導入しました。配達とラストマイル輸送業務向けのオンデマンド人材派遣サービスです。ロックダウンによってラストマイル配達の需要が急増したため、小売り店舗やeコマースベンチャーからの需要が増え、このサービスは短期間で広く利用されるようになりました。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ほとんどの創業者たちは、パンデミックの最初の数か月で、優れた敏捷性、共感能力を示し、ビジネスについて明快に説明してくれました。

Aristos Doxiadis(アリストス・ドクシアディス)氏、Big Pi Ventures(ビッグ・パイ・ベンチャーズ)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

私が最も投資したいと思うのは、例えば、病気の予防、食料の供給、小企業の生産性の向上などの、非常に基本的な問題を根本的に改善するソリューションです。これは、第4次産業革命の社会的背景であり、今後10年間に素晴らしいサクセスストーリーが生まれる分野です。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

難しい選択ですが、2bull MeDiTherapy(トゥーブル・メディセラピー)を挙げたいと思います。この会社は、大動脈瘤の診断と予後のための独自の血液検査を開発しました。大動脈瘤は極めて患者数の多い「沈黙の殺し屋」とも呼ばれる病気で、現時点では、面倒で高価な画像処理技術でしか診断できません。この血液検査がEU加盟国の基準を満たせば、欧州と米国全体でスクリーニング手法として広く採用されるようになるのではと期待しています。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

アグリテックでは、荒れ地にある小農場で生産性を向上したり、品質を確保したり、特殊なニッチ品種を開発したりするテクノロジーはまだ登場していません。この分野は、地中海地域だけでなく多くの新興経済圏で大きな可能性を秘めています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

理想的には、複数の業界で生産の根本的なボトルネックを解消できるツールで、長年の研究に基づいており、強固な知的財産となっているものがあるかどうかに注目します。当社のポートフォリオ企業では、Navenio(ナヴェニオ)が該当します。Navenioは、大規模な屋内スペースにおける人と機器のロケーションソリューションを提供している企業です。しかも、インフラストラクチャーは不要で物理的なマッピングも必要ありません。病院、ショッピングモール、物流センター、鉄道の駅などで利用できます。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

eコマースとサービスマーケットプレイスのアプリケーションは供給過剰状態です。大半は模倣アプリケーションですが、たとえ、何か新しいコンセプトがあったとしても、ネットワーク効果と規模の経済性が生み出す参入障壁が高過ぎるため、ほとんどの新規参入組には圧倒的に不利です。

他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

当社では、社の方針により、ギリシャで大きな存在感のある企業のみに投資しています。ですので、通常、R&Dセンター製品開発チームが主な投資対象になります。特に当社の本拠地であるアテネの企業に優先的に投資しているわけではありませんが、大半の大型案件はアテネ本拠の企業に対するものです。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

ギリシャには、生物医科学の分野の強力な研究チームが存在しており、海外での経験やネットワークを持つ大勢の医師もいます。ヘルステックとメドテックは大きな成長が見込めるセクターだと思います。別の有望な分野としてHRテックがあります。Workable(ワーカブル。業界トップの求職者追跡システム)、Epignosis(エピグノーシス。法人ユーザー向けの学習テクノロジー)、Bryq(ブライク。偏見に左右されない新型の候補者査定プラットフォーム)はすべてアテネ発の企業です。最初の2社はすでに評価額1億ドル(約105億円)を達成しており、Bryqはまだ創業したばかりです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アテネや、ギリシャの他の都市が持つ最大の利点は、高いスキルを備えた30代のギリシャ人が大勢いることです。彼らはヨーロッパ諸国で技術職または研究職に就いており、いずれ母国に帰ることを考えています。彼らにとってエキサイティングで待遇の良いポジションをオファーすれば、テック企業はこうした人材を容易に惹きつけることができます。こうした経験豊富な人材は、国内の大学を卒業した技術系および科学系の多くの優秀な学生を教育することができます。当社のポートフォリオ企業の多くはそうしています。投資情勢は、特に知的産業では、現政府の下で急速に上向いています。その要因としては、さまざまな優遇税制だけでなく、研究コミュニティの企業への開放を促す政策があると思われます。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

はい、そう思います。その現象はすでにギリシャで起こっていると思います。ギリシャは、そうした創業者の流出元でもあり、費用が高く混雑した都会を離れる人材の行き先にもなっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界と医療業界は痛手を受けるでしょう。当社は(偶然にも)これらのセクターに大きな投資はしていませんが、そうした業界にはとても優れたチームがいました。ですがパンデミックの影響で、他のセクターに移らざるをえないチームもあるでしょう。高度なサービスをリモートで提供するセクター(医療業界、エンターテイメント業界、教育業界、および機器の保守や修理などの業界)には大きなチャンスが発生しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

企業の売り上げの回復は遅れていますし、ハードウェア製品のサプライチェーンの回復も遅れています。当社はランウェイの延長を支援するためにいくらかの資本を手元に残していますが、それ以外の点ではそれほど大きな影響はないと思っています。創業者へのアドバイスとしては、すべてのリソースを投入して目標の達成を目指し、次のラウンドで資本を調達できるようにする、ということでしょうか。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ギリシャ政府がこの大変な時期に新型コロナウイルスのワクチンの輸送システムを設計し実装したことは本当に良かったと思います。最も印象的なのは、ワクチン接種のための利用者にやさしい予約プラットフォームが用意され、それがスムーズに稼働していることです。ギリシャという国は、これまで非常に対応が遅く非効率的だったため、これは格段の進歩であり、将来の公共デジタルサービスにとっても良い前兆だと思います。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

2018年にEquifundから資金を調達した6つのVCチーム(Marathon、Venture Friends、Uni.Fund、Metavallon、Velocity、Big Pi)はすべて素晴らしい仕事をしていると思いますし、エコシステムを大きく進化させました。ギリシャ人ディアスポラの創業者たちは大きく貢献しています(TileDBのStavros Papadopoulos(スタブロス・パパドポロス)氏、IntelligenciaのVergetis(ベルゲティス)氏とSkaltsas(スカルタス)氏、SaphetorのMasouras(マゾーラス)氏など)。

Pavlos Pavlakis(パブロス・パブラキス)氏、VentureFriends(ベンチャーフレンズ)、プリンシパル

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

不動産テック、フィンテック、マーケットプレイスモデル。B2CとB2B、どちらのスタートアップにも関心があります。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Influ2(インフルトゥー。人ベースのマーケティングスタートアップ、B2B SaaS)。

TC:特定の業界で「こんなスタートアップがあったらいいのに」と考えることはありますか。現在、見過ごされていると感じるチャンスはありますか。

一部の投資家は、多額の借入による資金調達を必要とする資本集約モデルを避け、多くの投資家がB2B SaaSスタートアップに投資しています。当社はB2Cにも大いに関心を持っていますが、純粋なテック企業ではなく、経営能力の高いスタートアップにも興味があります。また、株式と並行して借入による多額の資金調達を必要とするモデルも問題なく受け入れています。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

スケーラブルなモデルをうまく運用し、グローバル展開への意気込みが感じられる創業者かどうかを見ます。特に重視する2つの点は、チームと市場規模です。加えて、競争、時期/市場トレンド、短期的および長期的な防御力/USPなどを検討します。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

多くの市場や分野が飽和状態にあるか、競争するには難しい状況だと思います。ただし、これは場所によって異なります。例えば、他のモデルの模倣であっても中南米では素晴らしいチャンスになったケースがいくつかあります。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

地元のエコシステムを常に優先します。また地元のスタートアップ以外にも世界中のギリシャ出身の創業者に注目しています。最近も米国本拠のギリシャの創業者に投資しました。ただし、当ファンドの規模と限られたビジネス機会に鑑みて、地元以外のエコシステムも対象とする場合があります。これまでは、50%以上が地元のエコシステム(企業または創業者)に対する投資でしたが、当社は国際的なVC(大半は欧州)であるため、地元のエコシステムでの投資もどんどん増えています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

Blueground(ブルーグラウンド)は良い例で、VentureFriendsの不動産テックポートフォリオ企業です。当社も大いに期待しています。ブルーグラウンドはギリシャの企業で、当社が最初の機関投資家になりました。同社はグローバル(米国、欧州、中東の13都市)に事業展開して、これまでに1億ドル(約105億円)以上を調達しています。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

アテネおよびギリシャ全体は、間違いなく有望な市場です。大きな成功を収める企業が年々増加しており、それが次世代の起業家の刺激となっています。複数のファンドが存在するため、資本の可用性はあまり大きな問題ではなくなっています。ギリシャには質の高い比較的安価な人的資本、そして何より、快適に過ごしやすい気候があります。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

必ずしもそうはならないと思います。つまり、大都市以外の地域の創業者が増えることはないように思います。ただし、ギリシャ人の人材は、前にも触れましたが、比較的安価で質が高く、リモートワークも広く普及しているため、需要は増大しており特定の業種(開発者など)では給与も上がっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

最も影響が大きかった業種は旅行テックです。チャンスという点では、既存業種でデジタルソリューションを提供するスタートアップであれば、通常ほとんどの業界でチャンスはあります。分かりやすい例をいくつか挙げると、エドテック、配送/物流ソリューション、eコマースなどがあります。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社の投資戦略には大きな変化はありません。少し変化したことといえば、旅行テックのビジネスチャンスを追求しなくなったことくらいでしょうか(ただし、ケースにもよります。実際、パンデミックの最中でも、当社は新しい旅行テックスタートアップに投資する寸前までいきました。その会社は素晴らしい業績を上げていました)。パンデミックの影響を受けたスタートアップに対するアドバイスとしては、運転資金の回転期間に注意しつつ、できるかぎり現状を維持し、時間の余裕がある今だからこそできること(メンテナンス、プロダクトなど)に取り組むことで嵐を乗り切るということくらいでしょうか。 

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

もちろん、大半とは言わないまでも、多くの企業で回復の兆しが見られます。旅行テック以外のすべてのスタートアップは、2020年に成長しており、パンデミックの第一波から回復しています。当社のポートフォリオには、(パンデミックの恩恵を受け)急成長を遂げた企業もあります。例えば、2020年に3億6000万ドル(約377億95000万円)でDelivery Heroへ売却されたInstaShopです。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

2020年は、健康と経済という点では最悪の年でしたが、それでも人生は続き、多くの友人が結婚し子どもを持ちました。私にも3人目の甥ができました。こんな状況でも人生には常に幸せで希望に満ちた部分があるものです。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

創業者を支援する投資家たちももちろん重要ですが、創業者がいなければ何も始まりません。Blueground、Beat、eFood、Workable、Softomotive、Skroutz、Epignosis、そしてもちろんInstaShopはいずれも素晴らしいスタートアップであり、そこにはエコシステムに刺激を与える重要な役割を果たした成功した創業者がいます。

Yorgos Mousmoulas(ヨーゴス・モウズモラス)氏、Metavallon(メタバロン)、パートナー

TC:どのようなトレンドに投資する時が一番ワクワクしますか。

データ/AI/アナリティクス、再生可能テック、大半はB2B。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

Valk(ヴォーク)です。Valkは、Cordaブロックチェーンで未上場資産を取引するための安全なプラットフォームを提供する企業です。

TC:次の投資を判断する際に、通常、どのようなことを検討しますか。

素晴らしいチームかどうか、防御可能な独占技術の有無、トラクションの最初の兆候。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資に慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

マーケットプレイス、B2C、食品配達など。

TC:他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べ、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、50%を超えていますか。50%未満ですか。

約50%です。ギリシャと何らかのつながりがある(例えば、創業者、投資家、アドバイザーがギリシャ人であるなど)スタートアップや、ギリシャがターゲット市場に含まれている欧州(および世界中)のスタートアップにも多額の投資をしています。

TC:御社が本拠とする都市やその周辺地域で、急成長する、あるいは長期的に伸びていくと思われる業界は何ですか。

海運業、データとアナリティクスに関連するあらゆる業界。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ここではエコシステムが急成長しており、昨年も多数のイグジットが達成されました(当社のポートフォリオ企業Think Silicon(シンクシリコン)がApplied Materials(アプライド・マテリアルズ)に買収された件を含む)。今、第一世代のサクセスストーリーと同じようなパターンの第二世代の創業者が出現してきています。世界中のディアスポラとのつながりも強みです。運営費や人件費が他都市と同品質で安いのも魅力です。

TC:今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増し、パンデミックや先行きへの不安、リモートワークが持つ魅力のために、スタートアップハブから人が流出する可能性があると思いますか。

ギリシャ人の多くのディアスポラが、どこにいても働けると分かって再度ギリシャに戻ってきています。また、気候が良い、コストが安い、などの理由で海外のテック労働者も惹きつけるようになっています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはありますか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような未曾有の時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行業界や、オンプレミスのプレゼンスを必要とする業界は対応に苦慮するでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。投資先のスタートアップ創業者はどんな点を最も心配していますか。御社のポートフォリオに含まれるスタートアップにはどのようにアドバイスしますか。

当社は同じペースで投資を継続してきました。ただし、パンデミックの影響を受けた、旅行や交通輸送などのセクターに対しては今までより慎重かつ選択的にはなりました。ポートフォリオ企業も必要に応じてブリッジラウンドなどで支援してきました。

TC:投資先の企業では、パンデミックに適応する中で、収益の増大や維持、その他の動きに「回復の兆し」が見られていますか。

はい。CreatorUp(クリエーターアップ)は、テック対応リモートビデオ教育事業を展開しており、この状況下でも収益が急増しています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

新型コロナウイルス感染症の影響にもかかわらず、当社のポートフォリオの中には継続的に加ラウンドを成功させている企業があります。旅行業界のように大きな打撃を受けたセクターにさえ、そのような企業があります。これは、当社のビジネスモデルの基本部分が安定している証しだと思います。

TC:地元で成功していると思われるスタートアップ業界の重要人物を挙げていただけますか。

ギリシャ国立銀行のNBGシードイニシアチブは、さまざまなイベントや集まりを開催している重要な主催者であり、アーリーステージのスタートアップが今後の展望を見きわめるのをサポートしています。このイニシアチブのイベントは主要な大都市以外でも開催されています。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)

欧州VCファンドがESGイニシアチブに関するコミュニティを構築

本稿の著者Johannes Lenhard(ヨハネス・レンハルト)博士は、マックスプランクケンブリッジ倫理・経済・社会変革センターのセンターコーディネーター。

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一般的にESGは「環境・社会・ガバナンス」の頭文字を取ったもので、多様性、取締役会の構成、労働者関係、サプライチェーン、データ倫理、環境への影響や法的要件といった問題に関する原則をまとめたものである。

ビジネスの(対外的な)効果に直接重点を置くインパクト投資とは異なり、ESGでは、ファンドとそのポートフォリオ企業をともに持続可能にするための内部的な慣習とプロセスを主に検討する。

バイアウトファンドから上場株式まで、他の資産クラスにおいて、ESGの格づけやイニシアチブが大きな影響を及ぼしているなか、ベンチャーキャピタルでのESG導入は立ち遅れていた。最近になって何か新しい動きがあったのだろうか。

過去数カ月間、相当数の欧州ファンドがイニシアチブを取ってESGに取り組んできた。例えば、2020年12月初旬に開催されたスタートアップイベントSlush(スラッシュ)で、Balderton(バルデントン)はSustainable Future Goals(持続可能な未来への目標)を大々的に発表した。同社の取り組みは内部的にはファンドに、対外的には投資の意志決定やポートフォリオの支援に重点が置かれている。内部開発のリーダーの1人で、Balderton社長のColin Hanna(コリン・ハンナ)氏に、今回のイニシアチブがどのような経緯で生まれたのかを聞いてみた。

この取り組みは新型コロナウイルス感染症の前に始めたものであるが、2021年、気候変動に関連する目標に対して実際に影響を及ぼすことが可能であることを確認した【略】オンラインの重役会が習慣になり、出張も減った。今後の課題は、世界が正常な状態に戻った際にも、現在の取り組みを続け、そういった取り組みを当社のポートフォリオ会社にも展開することだ。そのためには、フレームワークの構築が役立つだろう。

最近になって、25社ほどのVCが集まり、ESGに関するコミュニティをVCとして初めて設立したことからも、欧州ファンドのESGに対する積極性が窺える。GMG Ventures(GMGベンチャーズ)、およびLondon School of Economics(ロンドン・スクール・オブ・エコノミクス)と提携する新企業のHoughton Street Venture(ハウテン・ストリート・ベンチャー)がイニシアチブを取り、2020年12月にLocalGlobe(ローカルグローブ)、Latitude(ラチチュード)、Kindred Capital(キンドレッド・キャピタル)、バルデルトン、the Westly Group(ザ・ウエストリー・グループ)、Blisce(ブリス)の代表者たちと初めて顔合わせをした。このグループは、専門的知識を共有して底上げを図り、既存のフレームワークがあまり機能しない部分を補填することを目標として掲げている。

ベルリンに拠点を置く企業であるCherry Ventures(チェリー・ベンチャーズ)のパートナーであるSophia Bendz(ソフィア・ベンツ)氏は、今回のイニシアチブが今すぐに必要なものだったと述べている。

DEI(ダイバーシティ・インクルージョン・エクイティ)と気候の問題から話を始めるが、我々は非常に真剣にESGに取り組んでいる。ESGは大変重要な問題に関連しており、この分野において現時点でさらに行えることはつまるところ何か、時間をかけて学んでいかなければならない。ただし、知識が共有されていない状態では、真の影響力を発揮できないとも考えている。日常の役割の中で社会に与えられる影響を強化するために、互いに学び、支援し合えることはすばらしいと思う。この取り組みを心から支援している。

ESGの主な推進力

ESGコンサルタントのSusan Winterberg(スーザン・ウィンターバーグ)氏に、VCにおけるESGについて、とりわけ「今、必要なのはなぜか」について聞いてみた。同氏はつい最近までの2年間、ハーバード大学で特別研究員を務め、その期間中に画期的な論文を書き上げた。

大まかにいえば、投資家と企業のリーダーがESGを導入すべき理由が2つある。1つ目は、自分たちの活動が、気候変動や社会正義など、世界で起こっている外部の事象に対してどのような影響を与えるのかに関する意識の高まりに関係している。2つ目は、ESGを導入することによって、売上の増加や有能な人材の確保、運営リスクの軽減など、特定のビジネス目標をどのように促進できるのかに関する意識の高まりに関係している。

2020年は明らかに、これらの両方の理由に基づいて変化が促進された分岐点となる年だった。Black Lives Matter(ブラック・ライブズ・マター)に代表される人種的平等、新型コロナウイルス感染症などのヘルスケア、民主主義と表現の自由など、社会正義のさまざまな問題が明るみに出た。スタートアップのリーダーや投資家は、これらの社会運動の影響を受けると同時に、ESGがベンチャーキャピタルのビジネス目標をどのように促進できるのかに関する新しい研究結果にも触発された。CDC / FMO(オランダ開発金融公庫)Belfer Center(ベルファー・センター)から発表された2つの論文は、このことを証明する数多くの例の一部に過ぎない。

VCはどう考えているのか。変化はどのように起こったのか。ハンナ氏によると、Baldertonでは、ウィンターバーグ氏が言及した前述の要素が複合的に絡み合って変化が起こったとのことだ。

Balderton社内でも紆余曲折があった。この変化を提唱したのは当社の投資家とリーダーだったが、若い世代の社員もこの取り組みが重要だと考え、それを後押しした。全体的に見ると、我々は長年、気候変動や持続可能性について無頓着であったが、もはやそれが許される時代ではなくなったということだ。

HV Capital(HVキャピタル)は、St. Gallen(ザンクト・ガレン)を中心に展開するESGイニシアチブであるROSE(ローズ)と連携している。このHVキャピタルの創業パートナーであるMartin Weber(マーティン・ウェーバー)にとって、事の始まりはLeaders for Climate Action(リーダーズ・フォー・クライメート・アクション)だったという。「我々はESGについて十分に考えていなかった【略】自分たちとは違った視点が実際に必要で【略】時には、尻を叩いて動かされる必要があるものだ。リーダーズ・フォー・クライメート・アクションの我々に対する影響はそのようなものだった。小さな変化が、ESGに対する我々の意識と関わりを変える第一歩となったのだ」とウェーバー氏は認めた。

ESGでは、ファンドとそのポートフォリオ企業をともに持続可能にするための内部的な慣習とプロセスを主に検討する。

HVキャピタルのみならず、Westly Group(ウェストリー・グループ)のような米国のいくつかのファンドも、ESGの特定の分野への取り組みを開始している。ESGのEが表す環境に関する取り組みを優先するファンドもあれば、ESGのSとGに含まれるDEI(多様性・包括性・平等性)に関する取り組みを開始したファンドもある。

最近、英国を中心に展開するAllocate(アロケート)のカンファレンスでパネルのモデレーターを務めるLP数名と話す機会があった。資産オーナー間の風潮も「ビジネスを改善する」方向にかつてなく大きくシフトしているように感じる。とりわけ自己資産を運用するファミリーオフィスのオーナーは以前から率直な意見を述べているが、大規模な資産のオーナーもまたESGの重要性を認識し、それに関与するようになっている。

ハーバード大学の寄付金の投資運用会社であるHarvard Management Company(ハーバード・マネージメント・カンパニー)でコンプライアンスおよび持続可能な投資部門の担当責任者を務めるMichael Cappucci(マイケル・カプーチ)氏は「ESGの統合が投資家にとって価値があることなのかどうか『成り行きを見守る』時代はとっくに過ぎた」と考えている。詳細な背景情報についてはUNPRI(国連の責任投資原則)を参照のこと。

ただし、この分野では欧州に端を発する動きがかつてなく大きくなってきている。その結果、VCによるESGの導入を推奨する、先述のハウテン・ストリート・ベンチャーズやGMGベンチャーズのグループも、2月に開催される特別なワークショップにさらに多くのLPが参加するよう働きかけていることがわかった。こうしている間にも、LPを積極的に関与させようとする気風が高まっているということだ。

不足しているもの

個々のファンドやLPのレベルでは数多くの進展が見られ、業界全体としてESGを推進する点でもいくらかの前進が見られるが、まだいくつかの核心的要素が整っていない。5つの主な問題点として、ESGとインパクト投資との違いを明確にすること、説明のための適切な用語を定義すること、共通のフレームワークを確立すること、測定基準の同意に至ること、LPが実際に関与することを挙げることができる。

1.ESGとは何かを理解する:多くの投資家(およびLP)と話をすると、その人たちがインパクト投資とESGの違いをまだ本当に理解していないことに気づく。簡単に言えば、ESGの原則は(内部の)プロセス(ファンド、ポートフォリオ企業など)に関するものであるが、インパクト投資は結果(場合によっては持続可能な開発目標、SDGsによって運用可能となる)を考慮したものである。

インパクト投資が先の見通せるニッチな資産クラスに留まる可能性が高い中、ESGの原則はすべての投資家にとって有用な慣習を提供するはずである。

2.適切な用語を定義する:関連する点として、(インパクト投資に対して)ESGとは何かを説明するための適切な用語を見つけることは、違いをより明確にする上で役立つと考えられる。Omidyar Network(オミダイア・ネットワーク)のSarah Drinkwater(サラ・ドリンクウォーター)氏は、2020年9月に自身の投稿で、ベンチャーキャピタルやテクノロジーの世界におけるESGとは何かを的確に説明(および認知)するための言葉がない、と明確に述べた。

「原則に基づいた」「進歩的な」「公平な」といった言葉で表すことができるのだろうか。この問題についても「基準を設定」することが役立つと考えられる。

3.誰かが基準を設定する:ベンチャー業界で徐々に発展して展開されているESG(およびインパクト)のフレームワークはまだそこかしこにある。そのようなフレームワークは他のありとあらゆるフレームワーク(他の資産クラス、インパクト投資のような関連活動)の影響を受けており、大部分は個々のファンド自体が策定している。現状を放置すれば、確実に有名無実化してしまう危険がともなう。

(自称および自己報告の)マーケティングもそうだが、本当に業界の変化を望むのであれば、公共性のある権力機関が一歩踏み出すべきである。欧州で最も拠り所となる投資基金であるEuropean Investment Fund(欧州投資基金)が現時点までに行ったアンケート調査は、抽象的過ぎて十分とは言えない。では、例えば、UNPRIを各業界向けの原則まで具体化するのはどうだろうか。

4.何が測定されていないか:業界水準を上げる1つの方法は、広く受け入れられ、標準となる測定基準を設定することである。「アーリーステージとレイターステージのVCポートフォリオ企業にとって、最も重要な測定基準は何か」。ロンドンにあるファンドグループは、次に特に注力するのはこの具体的な問題であると発表したが、それもうなずける。だが、この問題もまた、どのように業界全体に受け入れられ、普及していくのか。これには、LPなど、また別の業界関係者が関与してくるかもしれない。

LPがGPに毎年ESGに関する報告を提出するよう要求したら、業界全体が確実に変化し、次世代のスタートアップはより公平で、責任感があり、ステークホルダーを重視するものとなるだろう。

5.LPが実際に介入する必要がある:これまでのところ、LPは実質的にESGに介入していない。一方で、最近資金調達したGPの多くは、通常、LPがESGについて聞いてくることはまだないと話していた。実際、数人のLP、特に米国のLPは、ESGが利益確保の障害になると信じている。いずれにせよ、ESGはまだ「なくてはならないもの」にはなっておらず、単に「できたら良いこと」に留まっている。

既存のEIFフレームワークのような、ESGに対するアンケート調査は、現在までのところ抽象的過ぎて、具体的とはとても言えない。欧州のEIFやBBB(商業改善協会)、または巨大財団法人や大学基金のような有数のLPが、新証券発行説明会でESGの検討を促せば、GPは全員それに従う必要がある。意思決定者としてのLPの影響力は、中期的にみると、VCの通常業務にESGを取り込む大きな要素となる。政府の資金が関係することを考えれば、市民の資金すべてが関連しているわけで、この一歩を進めるべきなのは考える余地がないほど明白なことだ。

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タグ:ESG

画像クレジット:Sarayut Thaneerat / Getty Images

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(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

新興国市場のファウンダーを資本、資源、人材と結びつけるケニアのPariti

Startup Genome(スタートアップ・ゲノム)によると、北京、ロンドン、シリコンバレー、ストックホルムとテルアビブは、世界最高水準のスタートアップエコシステムだ。データ・調査会社の同社は、企業の業績、資産、市場活動範囲、連結性、人材、知識などを使ってランキングを作っている。

中国とインドを除き、新興国市場のスタートアップは2020年のトップ40に入っていない。それらの地域が6つの要素全部で遅れを取っていることは周知の事実であり、上に挙げたエコシステムの基準に達するまでには数十年を要するかもしれない。

しかし、Yacob Berhane(ヤコブ・ベルハネ)氏とWossen Ayele(ウォッセン・アイル)氏の2人が設立したケニアのB2BマネジメントのスタートアップPariti(パリティ)は、6要素のうち3つのギャップ、資産、知識、および人材へのアクセスを埋めようとしている。

こうした課題、中でも資産利用のハードルはアフリカでは高い。例えばサブサハラアフリカ(サハラ砂漠より南の地帯)のアーリーステージスタートアップに投資される資金は、ラテンアメリカ、MENA(ミーナ)諸国、南アジア市場の半数以上の企業とと比べてわずか25%ほどでしかない。

「必要なリソースを得られないスタートアップの成功を手助けするソリューションを作りたかったのです」とCEOのベルハネ氏がTechCrunchに話した。「この問題は、生まれたばかりのアフリカ市場で特に急を要しています。そしてこのプラットフォームは、あらゆる新興国市場のファウンダーのために作られています。つまり、まだスタートアップエコシステムが成熟していないすべての地域ということです」。

では、Paritiのチームはどうやってこの問題を解決しようとしているのか?アイル氏は、ある意味でParitiはアンバンドルされていないアクセラレータのようなものだと語った。

一般的なアクセラレーターでは、ファウンダーは集中的なプログラムを通じて、スタートアップが成長していく過程で必要になるあらゆる情報を詰め込まれる。一方Paritiでは、ファウンダーがビジネスの次のステージへ行くために今すぐ必要な情報とリソースを手に入れることができる。

3種類のマーケットプレイス

ファウンダーが入学すると、Paritiはアセスメントツールで会社を評価する。そこでは各社が売り込み資料や会社情報を共有する。Partiは各社のチームや市場、プロダクト、経済などを70項目にわたって評価する。

それが終わると、Paritiはそれぞれの会社を他社と比較するベンチマークを行う。業界、プロダクトのステージ、売上、資金調達などが同レベルにある会社同士が比較対象になる。ファウンダーは自分たちの売り込み資料へのフィードバックや、基準となる数値の詳しい評価結果を受け取り、その後のビジネス構築や資金調達に役立てる。

「このアプローチによって、各社のビジネス内容、強み、弱点などを極めて詳細に見ることができるので、会社が特に必要としているリソースを配分するための順位づけが可能になります」とアイル氏はいう。

それだけではない。Paritiはファウンダーを自らが運営する世界のエキスパートコミュニティのメンバーに1対1で引き合わせる。専門家の経歴は、さまざまな分野における金融、マーケティングからプロダクト、テクノロジーにわたる。さらにParitiは、ファウンダーがプロダクト開発にもっと支援を必要としている場合、コミュニティの中から選りすぐりのエキスパートを雇用のために紹介することもある。

アイル氏によると、ファウンダーはこの後も評価を受け、フィードバックの実践、リソースと人材とのつながりを続けることができる。

その一方で、Paritiでは投資家もプラットフォームに登録して、欲しいデータを集めることができる。つまりスタートアップが資金を調達したいとき、Partitiは投資家のプロフィールと好みに応じて企業を紹介することができる。

「アルゴリズムに基づくマッチングプラットフォームを作り、関連のある出資情報をVC投資家と共有しています。投資家がファウンダーと接触する方法も簡単にしました。これまでこのエコシステムでは特に面倒だった部分です」とアイル氏は付け加えた。

Paritiの投資家プラットフォーム

要約するとParitiは、ファウンダーが手頃な人材とつながり、資本を入手し、ビジネスを開発する手助けをする。専門家は興味深いスタートアップに助言をして、一時的収入を得る機会を得られる。さらに彼らはアーリーステージ・エコシステムとの接触を増やし成長をみてスキルを確認することで収益の可能性を広げることができる。投資家は、独自の契約フロー、自動化されたフィルタリングによって非常に効率的な運用が可能になり、デューデリジェンス、調査、ポートフォリオ管理で専門家のオンデマンド・サポートを受けられる。

COOによると、同社はこのプラットフォームを通じてこれまでに膨大な価値を生んできたという。その証言の1つが、ケニアのフィンテック・スタートアップ、FIngo AfricaのファウンダーであるKiiru Muhoya(キイル・ムホヤ)氏が本誌に語った経験談だ。同プラットフォームは彼の会社がプリシードラウンドで25万ドル(約2700万円)調達するのに役だった。

ムホヤ氏は、予定していた資金調達の前にParitiの評価を受けたことで、自分がターゲットにしていた市場が小さすぎる事に気づいた、と語った。また、成功するためにはVCが何を見ているかをもっと学ぶ必要があった。

ムホヤ氏は、自分を反対の立場に置く決断を下した。Paritiの専門家プラットフォームに参加すると、各社の状況をみて他のファウンダーにアドバイスを与え始めた。こうして彼は数カ月のオフ期間を得て、自分のビジネスをParitiで最初に受けたフィードバックや専門家プラットフォームで学んだことに基づいてピボットするきっかけにした。自分の会社を再びプラッフォームの評価にかけ、プリシードラウンドを完了した。

Paritiは2019年のスタート以来著しい発展を遂げてきた。現在42カ国で500社以上の会社を抱え、100人のフリーランスエキスパートと60の投資家が同社のプラッフォームを使っている。さらにベルハネ氏は、現在5つのファンドがParitiのオペレーティングシステムを使って取引を管理していることを付け加えた。

私たちは、新興国市場でスタートアップが作られ、スケーリングするためのレールを敷いていると思っています。パートナーはラテンアメリカやインドを含むさまざまな新興国市場にいます。米国にも強い関心を持っており、そこは私たちのプラットフォームを本当に必要としている場所です」とベルハネ氏は語った。

投資家に対してはサブスクリプションモデルで課金しているが、ベルハネ氏は数字を明らかにしなかった。いずれファウンダーからもサブスクリプション料金を取る、と述べている。もう1つの収入源は、投資家やファウンダーがParityのフリーランスエキスパートをプロジェクトで使う際に支払う手数料だ。プラットフォーム上で資金調達が実行された場合も同様だ。

資金調達といえば、最近同社は金額非公開のプレシード資金を獲得している。500 Startups、Kepple Africa、Huddle VCらのエンジェルやVCが参加した。

しかし、Paritiにとってすべてが順調だったわけではない。ファウンダーや投資家と付き合う上で重要なのは信用だからだ。ベルハネ氏は、投資家と関わる上で経験した惨劇を語ったファウンダーがいる一方で、ファウンダーが虚偽の数字を報告したと話す投資家もいたことを明かした。

Paritiはこの問題に対処すべく、両者とNDAを結び、Paritiはファウンダーが希望するまでデータを投資家に公開しないことを約束した。そして、投資家はParitiが入念に吟味するまで契約できない。

ファウンダーは2人とも東アフリカ系(ベルハネ氏がエリトリア、アイル氏がエチオピア出身)で、現在一緒に働くようになるまで何度か顔を合わせたが、それぞれ別の道を歩んできた。

COOのウォッセン・アイル氏とCEOのヤコブ・ベルハネ氏(画像クレジット:Khadija M Farah & Rebecca Ume Crook)

アイル氏は東アフリカ各地にオフィスをもつコンサルティング会社でキャリアをスタートし、その後ロースクールに通うために米国に渡った。そこで初めてアーリーステージスタートアップの世界に接し、新興市場に特化したVCファンドの仕事に就いた。

「コミュニティを助けるためにテクノロジーとイノベーションが果たす役割を見つけることができました。誰もが利用できる金融から必要な品物やサービスの利用、ピラミッドの底辺の人々を市場とつなぐことまで」と彼は言った。

アイル氏は法律学校を卒業して訓練を終えるとナイロビに戻り、成長するアフリカのスタートアップエコシステムに関わり、ベルハネ氏とともに会社を設立した。

米国で金融と投資銀行業務を学んだCEOは、アフリカに戻ってパン・アフリカ・アクセラレーターを南アフリカ、ヨハネスブルグで起業した。ベルハネ氏はAfrican Leadership University(アフリカ・リーダーシップ大学)やAjuaなどの会社で管理職として働いたが、ほとんどの時間を会社の契約仲介業務に費やしていたことが後にParitiを立ち上げるきっかけとなった。

「企業が2000万ドル(約21億7000万円)以上の資金を調達するのを助け、そのお金が雇用創生や社員の上昇志向につながっていくのを見たことで、金融分野の中で自分が役に立つ道があることを知りました。これからも、スタートアップエコシステムにおける資本入手や人材、知識の不均衡の増加や、それに対処するためのインフラストラクチャーの欠如についてずっと考えてきました。Paritiは、私たちがそれを解決したいと考えている方法です」とベルハネ氏は語った。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Paritiアフリカケニア資金調達

画像クレジット:Khadija M. Farah & Rebecca Ume Crook

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:Nob Takahashi / facebook

投資家たちはいまだにソフトウェアが大好きだ

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

最近の市場の不安定さにもかかわらず、ここ数四半期の間にソフトウェア企業一般が享受してきた評価額は、すばらしいものだった。米国時間3月5日の記事では、なぜそうなったのか、そして評価額が他のものよりも少々バブル的になっている可能性があるのはどこなのかについて検討した。Battery Venturesの何人かの投資家が書いたレポートでは、その理由を、SaaS市場の中央部が評価額インフレーションのピークを迎えているからかもしれないとしている。

もしスタートアップの成長率が低下している場合に注意しなければならない。しかし、今回の記事では、私は失望や心配の材料の代わりに、いくつかの歴史的に注目すべきデータを持って来て、現代の良いソフトウェアスタートアップやその大規模な兄弟たちが、現在どのようにそのデータに当てはまるのかを示すことにする。

表の解読にあまり興味がない読者のために、時間の節約をすることにしよう。表の一番右上に示されているのは、現在年率10%未満で成長しているSaaS企業は、次の12カ月間の収益の平均6.9倍で取引されているということだ。

これが2011年の段階では、40%以上の成長率を持つSaaS企業の取引額は、次の12カ月の収益の6.0倍だった。景気は変わるが、ソフトウェアの評価額は例外のようだ。

Battery Venturesとの会話からもう1つ紹介しよう。その投資家であるBrandon Gleklen(ブランドン・グレックレン)氏は、ARR(年間経常収益)の定義と現代の市場におけるそのニュアンスについて、The Exchangeに言及した。より多くのSaaS企業が従来のSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)の価格設定を、従量型の価格設定に変更する中で、同氏はARRの定義について細かいことを書くことは避け、ソフトウェアの収益においてとにかく重要なのは、ソフトウェアの収益が長期的に維持され、成長するかどうかであると主張した。これで次の話題に移ることができる。

従量型とSaaS型の価格設定

ここ数週間、公開ソフトウェア企業の業績報告会に、何度も参加している。何度も繰り返し登場するテーマの1つが、従量型価格設定と従来のSaaS型価格設定の対比だ。利用量に基いた価格設定のソフトウェア企業の方が、平均よりも高い顧客定着率のおかげで、従来型の価格設定のソフトウェア企業よりも高い価格で取引されていることを示すデータもある。

しかし、話はそれだけではない。Fastly(ファストリー)のCEOであるJoshua Bixby(ジョシュア・ビクスビー)氏と同社の業績報告後に行ったチャットでは、私たちは従量型課金がより魅力的な場所とそうでない場所の間の、市場の興味深い区別を取り上げて話し合った。ビクスビー氏によれば、Fastlyは、大規模な顧客が従量型の価格設定を好むのは、変動に耐える余裕があり、請求をより密接に収益に結びつけることを好むからだと見ているという。とはいえ、より小規模な顧客は、従来のSaaS型の課金を好むとビクスビー氏は述べている。なぜならそちらは支払額をきっちり予測できるからだ。

私は最近この議論を、Open View PartnersのKyle Poyar(カイル・ポイヤー)氏に投げかけた(同氏は、ここ数週間TechCrunchにこのトピックについて書いているベンチャー業界人だ)。彼は、場合によっては逆のこともあるという、価格が固定されていないことで、開発者が大規模なコミットメントをしなくても製品をテストできることが多いため、中小企業にもアピールできるとの指摘だ。

そのため、おそらくソフトウェア市場では、小規模な顧客たちは、必要量を把握している場合にはSaaS型の価格設定を選択し、まず実験をしたい場合には従量型価格設定を選択するということになるのではないだろうか。また大企業では、支出が収益と連動している場合には、従量型価格への関心が高まる。

SaaSの価格設定の進化は遅々としたもので、決して完全なものにもならない。しかし、みんながそれを本当に考えている。Appian(アピアン)のCEOであるMatt Calkins(マット・カルキン)氏は、価格設定の一般的なテーゼとして、価格は提供される価値以下に留まるべきだと考えている。従量型とSaaS型のトピックを尋ねられて、彼は少しためらったが、現在の価格設定の行われかたについては「完全に満足している」わけではないと答えた。彼は「顧客価値をよりよく代表してくれる」価格設定を望んでいるが、それ以上の発言をすることは拒んだ。

もしこうしたことを考えないまま、スタートアップを運営しているとするなら、この先はどうするつもりだろうか?このトピックについてはこれからも、従量型的なShopify(ショッピファイ)よりも、SaaS型に賭けているBigCommerce(ビッグコマース)CEOとのインタビューのメモを含め、さらに多くの情報をお届けする予定だ。

Next Insuranceとその変化する市場

Next Insurance(ネクスト・インシュアランス)は先週、別の会社を買収した。今回買収したのはAP Intego(APインテゴ)で、このことによってデジタルファーストの中小保険会社であるNext Insuranceには、さまざまな給与計算会社が顧客として加わることになる。Next InsuranceについてはTechCrunchがその成長について何度か書いているので、お馴染みかと思う。例えば、同社は2020年にはプレミアムランレートを2倍の2億ドル(約216億7000万円)に引き上げている。

AP Integoの買収により、ネオ保険会社のNext Insuranceには1億8510万ドル(約200億5700万円)のアクティブプレミアムがもたらされる。つまり2021年の同社は、自然成長を計算にいれなくても、現時点ですでに急成長を遂げていることになる。このNext Insuranceの取引と目前に迫ったHippo(ヒッポ)のSPACは、非公開市場でのホットな話題ではあるが、一方インシュアテックの公開市場における熱は少々失われている。

Root(ルート)、Lemonade(レモネード)、MetroMile(メトロマイル)のような公開ネオ保険会社の株式は、ここ数週間でかなりの価値を失っている。そのため、Next InsuranceやHippoのような(急速なプレミアム成長を支えている多額の資本を持つ、未公開インシュアテックのスタートアップ)企業たちのエグジットの状況は、悪い方向へと変わりつつある。

HippoはSPACを使って公開を行うことを決めた。しかし私は、Next Insuranceは物事がスムーズに進むようになるまで、公開への道を急ぐとは思っていない。同社は2020年9月に2億5000万ドル(約270億9000万円)を調達しており、株式公開を急ぐ必要はない。

その他のことなど

さて他には?1億ドル(約108億円)ARR(年間経常収益)クラブの会員であるSisense(サイセンス)が新しいCFOを採用した。よって、私たちは彼らが今後4~5四半期以内には上場すると予想している。

そして、以下のチャートは、SPAC Alphaから出されて、NASDAQ(ナスダック)、そしてLux CapitalのDeena Shakir(ディーナ・シャキール)氏を経由して引用したものだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange保険SaaS

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

スクラムベンチャーズが日本企業とスタートアップをつなぐ新プログラムを開始

Scrum Studiosの社長である髙橋正巳氏(画像クレジット:Scrum Ventures)

サンフランシスコと東京に本社を置くScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)は、スポーツ、フード、スマートシティテックに特化したアクセラレータープログラムで知られている。米国時間3月5日、同社は日本企業とのビジネスパートナーシップからのスタートアップを支援する新しいインキュベータープログラムの立ち上げを発表した。

Scrum Studios(スクラムスタジオ)と呼ばれるこのプログラムは、Scrum Venturesから独立した事業体としてスタートし、WeWork Japanの戦略担当役員兼ゼネラルマネージャーを務めていた髙橋正巳氏が代表を務める。同氏は以前、日本でUber(ウーバー)のオペレーションを指揮していた。

髙橋氏はTechCrunchに、スクラムスタジオは現在のアクセラレータープログラムのスタートアップ(スポーツテック東京、SmartCityX、Food Tech Studio)に焦点を当てているが、将来的には特定の分野を中心とした新しいプログラムを立ち上げる予定だ。Scrum Studioを通じて、スタートアップは日本で子会社を設立したり、日本企業と合弁会社を設立したりできるようになる。

Scrum Venturesはすでに50社以上の日本企業と提携しており、その中にはあいおいニッセイ同和損害保険、エネルギー企業の出光興産、 Smart City Xの東日本旅客鉄道、Food Tech Studioでは不二製油ホールディングス、日清食品ホールディングス、伊藤園などと提携している。

「私たちは、今日の社会が直面している課題のいくつかを解決するのに役立つスタートアップやテクノロジーと一緒に仕事をしたいと考えています」と、高橋氏はメールで述べている。「これらには、都市やそこの市民の持続可能性、健康、安全、廃棄物削減、および効率化などが含まれていますが、これらに限定されるものではありません」。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Scrum Ventures日本

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

スクラムベンチャーズが日本企業とスタートアップをつなぐ新プログラムを開始

Scrum Studiosの社長である髙橋正巳氏(画像クレジット:Scrum Ventures)

サンフランシスコと東京に本社を置くScrum Ventures(スクラムベンチャーズ)は、スポーツ、フード、スマートシティテックに特化したアクセラレータープログラムで知られている。米国時間3月5日、同社は日本企業とのビジネスパートナーシップからのスタートアップを支援する新しいインキュベータープログラムの立ち上げを発表した。

Scrum Studios(スクラムスタジオ)と呼ばれるこのプログラムは、Scrum Venturesから独立した事業体としてスタートし、WeWork Japanの戦略担当役員兼ゼネラルマネージャーを務めていた髙橋正巳氏が代表を務める。同氏は以前、日本でUber(ウーバー)のオペレーションを指揮していた。

髙橋氏はTechCrunchに、スクラムスタジオは現在のアクセラレータープログラムのスタートアップ(スポーツテック東京、SmartCityX、Food Tech Studio)に焦点を当てているが、将来的には特定の分野を中心とした新しいプログラムを立ち上げる予定だ。Scrum Studioを通じて、スタートアップは日本で子会社を設立したり、日本企業と合弁会社を設立したりできるようになる。

Scrum Venturesはすでに50社以上の日本企業と提携しており、その中にはあいおいニッセイ同和損害保険、エネルギー企業の出光興産、 Smart City Xの東日本旅客鉄道、Food Tech Studioでは不二製油ホールディングス、日清食品ホールディングス、伊藤園などと提携している。

「私たちは、今日の社会が直面している課題のいくつかを解決するのに役立つスタートアップやテクノロジーと一緒に仕事をしたいと考えています」と、高橋氏はメールで述べている。「これらには、都市やそこの市民の持続可能性、健康、安全、廃棄物削減、および効率化などが含まれていますが、これらに限定されるものではありません」。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Scrum Ventures日本

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter

マイアミの投資家8人に聞く、米国最南端のテックハブの展望(後編)

サンフランシスコやニューヨークからの集団脱出が、ここ15年ほどで着実にテックハブへと成長してきたマイアミに大きな影響を与えている。私たちは今、マイアミにとって重要な「瞬間」を目撃しているが、多くの人はこれが一過性のブームではなくテック業界の傾向として定着することを望んでおり、そのために努力している。

1月下旬、SoftBank Group International(ソフトバンク・グループ・インターナショナル)は、マイアミで爆発的に成長しているテック業界を対象とした1億ドル(約104億円7000万円)のファンド設立を発表した。この記事で説明されているように、これはマイアミのテックブームが本物であることを裏付けている。この発表に先立ち、ソフトバンク・グループ・インターナショナルはTechCrunchに次のように語った。「ますます多くのスタートアップが拠点を置くようになり、マイアミは、増加する需要に素早く対応できるハブへと急成長している。新興分野であるエルダーテック(高齢者を対象としたテクノロジー)からバイオテックまで、マイアミは、起業家として商機を探す移民やマイノリティに唯一無二の機会を提供している魅力的な投資市場だ」。

パンデミックが変化を促進した。マイアミの住民たちは、サウスビーチに多くの人材が流入し、ひいては彼らの銀行口座も移動してくることを願いながら、新しい住人を歓迎し、彼らが新生活に慣れることができるようサポートした。TechCrunchは、マイアミの現状と今後の展望について、マイアミを拠点とする投資家にインタビューを行った。

後編では、以下の投資家からのインタビュー回答を掲載する(前編はこちらで読める)。

Kevin Cadette(ケビン・キャデット)氏、Black Angels Miami(ブラック・エンジェルス・マイアミ)、取締役

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

イノベーター、起業家、投資家の各コミュニティが急激な成長を経験して、互いのつながりをより深めていき、マイアミのエコシステムは拡張されていくでしょう。ひとつ言わせてもらえるとすれば、当社ブラック・エンジェルス・マイアミはコミュニティの基盤を固める重要な役割を担うと思います。マイアミやフロリダ州南部を拠点とするエンジェル投資家は現在でも数多くいますが、地域全体の人口増加に伴い、この傾向は今後も続いていくでしょう。ブラック・エンジェルス・マイアミは引き続き、投資機会を盛り立て、Black Angels U(ブラック・エンジェルス・ユー)のプログラムを通して新人投資家を教育し、加えて、ファンドのリミテッドパートナーになる機会を提供していく予定です。

マイアミは多様性に富む街です。エコシステムが成長してもこの多様性を確実に維持するために、多くの組織が積極的に動いています。マイアミのテック業界が現在の姿になるための基礎は何年も前から築かれてきました。例えば、ザ・ナイト・ファウンデーションはエコシステムの中でスタートアップをサポートする組織を牽引してきました。そのようにしてようやく、現在のような基盤ができあがったのです。

私たちが今見ているのは、マイアミが生み出すサクセスストーリーの表面的な部分にすぎません。マイアミは今後5年間に、起業家にとって重要な国内有数の都市として米国全土で認知されていくと思っています。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

リモートワークは既にくすぶっているテクノロジー革命に火をつけるでしょう。快適な生活ができる都市としての評判を確立していることは、リモートワークにおいても大きな強みとなります。誰もがマイアミに移住したいと思っています。他の都心地域と同様に、マイアミ都心部のオフィスは無くなるかもしれませんが、それでも企業はマイアミへ移転してきているのは事実です。マイアミとフロリダ州南部は、仕事と人生のどちらも妥協することなく両立できる場所であることを証明してきました。フロリダ州南部に移転してくる大企業や、そこで創業するスタートアップと地元投資家が増えるにつれて、マイアミのスタートアップシーンはますます力強く成長していくと思います。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

Black Angels Miami(ブラック・エンジェルス・マイアミ)はセクターにこだわりません。また、マイアミに限定することなく、全米各地で、アーリーステージのベンチャー企業を探しています。とりわけ、市場が未成熟で新規参入の余地が大きく、世界中の企業や個人に素晴らしい問題解決法を提案できる成長産業に注目しています。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

地元ならではの課題は、この街が提供する最大の好機の1つでもあります。それは、結束が固く、本質的に協調性の高い街という点です。マイアミは協力し合うことが普通になっているコミュニティで、誰かにEメールを送れば返信が戻ってきて、それが正しい道しるべとなる場合が多いです。皆が意識して助け合おうとしており、これが皆にとって上げ潮になっています。誰もがこのコミュニティからサクセスストーリーが生まれるのを見たいのです。ですが、ここで創業する場合は、まだこのコミュニティに属していないことが障害になるかもしれません。マイアミに移住してきたばかりの人には、既に地元のコミュニティに属している人と連絡を取ることをお勧めします。ここに拠点を置き、今までと同じ仕事をオンラインで続けることは簡単なのですが、それでは興味深い機会を得損なうことになります。マイアミのエコシステムは人間関係を重視しており、門戸は広く開放されています。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。   

このエコシステムにはいわゆる「立役者」が数多くいます。私はこの機会に、マイアミのテック業界に多大なサポートを提供し続けているザ・ナイト・ファウンデーションへの感謝の意を述べたい思います。これまで彼らがサポートしてきた人を見れば、ザ・ナイト・ファウンデーションがマイアミのテック業界の基礎を据えるのにどれほど貢献してきたかがわかるでしょう。

Mark Kingdon(マーク・キングドン)氏、Quixotic Ventures(クイクゾティック・ベンチャーズ)、創業者

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

マイアミはここ数年、多様な人々を惹きつけてきました。また、最近になってテック業界や金融業界の企業がさらに増加しました。このように集まってきた人や企業が、単なる寄り集まりであることを超えて、どのように発展していくと思いますか。今後5年間に、マイアミが大企業を生み出せる場所であることを証明するような、注目を集めるイグジットが増えると思います。エコシステムを築くには時間がかかります。数十年かかることもあります。投資家、起業家、スタートアップの社員がマイアミに魅了され、大きな影響力を及ぼすイグジットが行われ、資金が新しいスタートアップへと再利用される。これが好循環です。マイアミは今、アーリーステージの段階にあります。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

リモートワークはマイアミでも重要なトレンドです。ここは既にラテンアメリカにとって主要なハブになっており、今後も大きく拡大していきます。その重要性を増しています。ニューヨークからのアクセスも便利で、自分自身がまさにそうなのですが、ニューヨークから南部へ移住してきて、その後もニューヨークとマイアミの間を頻繁に行き来している人が多くいます。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

eコマースとeコマースのイネーブルメントに注目しています。注目する分野はあえて絞り込むようにしています。ガッツがあって、決断が早く、優れたアイデアを持ち、できればいくらかのトラクションを獲得している創業者は有望だと思います。Sktchy(スクッチー)にはガッツと決断力がありますね。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。 

雇用が今の課題だと思います。求職者の動き方がニューヨークとは異なります。金曜日に求人広告を出せば月曜日には応募者が10人集まる、ということはありません。マイアミでは採用までに時間がかかります。この課題に対処することは可能ですが、どんな人材が必要なのかを創業者が早期に特定し、主要なポジションの採用プロセスにはより時間がかかることを創業者が理解していることが前提になります。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。   

非常にたくさんの名前が思い浮かびますね。それがマイアミの素晴らしいところです。このコミュニティは大変友好的で、新しく移住してきた人のために時間を割くことを厭いません。これはとても素晴らしいことで、私は今までに経験したことがありませんでした。マイアミへ溶け込むのを手助けしてくれた人々の名前をいくつか挙げるとすると、Nico Berardi(ニコ・ベラルディ)氏、Juan Pablo Cappello(ジョアン・パブロ・カペッロ)氏、Melissa Krinzman(メリッサ・クリンズマン)氏、Matt Haggman(マット・ハッグマン)氏、Raul Moas(ラウル・モア)氏、Jesse Stein(ジェシー・ステイン)氏です。マイアミ・エンジェルスの役員として、私、Melissa Krinzman(メリッサ・クリンズマン)氏、Juan Pablo Cappello(ジョアン・パブロ・カペッロ)氏、Raul Moas(ラウル・モア)氏、Nico Berardi(ニコ・ベラルディ)氏、Tigre Wenrich(ティグレ・ウェンリッチ)氏、Marco Giberti(マルコ・ギバルティ)氏はマイアミを拠点とする50以上の企業に投資しています。このマイアミ・エンジェルスの役員会は非常に良いコミュニティで、他にも36以上の企業に投資しています。マイアミ・エンジェルスは新しい投資家をこのエコシステムに惹きつけ、彼らと地元コミュニティとをつなぐ点で、重要な役割を果たしてきたと思っています。

Ana González(アナ・ゴンザレス)氏、500 Startups(ファイブハンドレッド・スタートアップス)、パートナーファンド最高責任者

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

マイアミがこの地域の、さらには世界的なスタートアップハブになるための、唯一無二の機会が開かれています。マイアミは、公共部門や民間企業が何年にもわたって投資してきたエコシステムの基礎を足がかりにしてさらに成長し、世界にアピールできる独自性やブランドを形作っていくことことでしょう。コアとなる強みをさらに強化し、成長する見込みのある新たなアセットを特定できます。多様性に富む人材が充実しており、地理的に恵まれた場所に位置する上、素晴らしいクオリティ・オブ・ライフや優遇税制の恩恵を享受できます。この街にはまた、ヘルスケア、物流、輸送業、フィンテック、ブロックチェーン、仮想通貨など、強力な存在感を放ち、世界規模で拡大している成長産業があります。クライメートレジリエンス(気候変動の影響からの回復力)やスマートシティ、サステナビリティなどは、マイアミの未来を担う新しい産業です。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

2020年のパンデミックは、その前の数年間に台頭してきたトレンドを加速させたにすぎません。人々は以前よりもっと、勤務先の所在地に関係なく住む場所を選択できるようになりました。マイアミはこの流れの先端かつ中心に位置しています。この街では極めて高いクオリティ・オブ・ライフを楽しめることに気づく人が増え続ければ、移住してくる人や、さらに良いことに、定住するためにマイアミで起業する人が増えるでしょう。これは、ひいてはこの地の人材の質と密度を強化し、マイアミが生活と仕事の両面でますます魅力的になるという好循環を生み出します。新型コロナウイルス感染症のワクチンによって、会議やイベントを再び対面で開催できるようになっても、私たちは皆、(オンラインと対面の)ハイブリッド型という新しい方法で対人関係を築き、営業活動を行い、生活全般を営んでいくことを学ばなければならないでしょう。そういう意味では、マイアミは優れた革新者です。例えば、安全かつ興味深い方法で鑑賞できる斬新な野外劇場システムが既に導入されています。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

ファイブハンドレッド・スタートアップスでは、今までにないソリューションを考え出し、業界の明日を作っていくテック系シードステージのスタートアップを支援し、投資しています。分野は特に限定していません。マイアミでは、フィンテックやヘルスケア、輸送業や物流などの業界の成長に注目しています。コロナ後の世界でセキュリティ、旅行・宿泊、金融サービスなどの分野において必要になる非接触ソリューションを開発しているスタートアップもあります。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

マイアミの創業者は、アーリーステージ期の資金調達(エンジェル投資からシードラウンド、プレシリーズAラウンドを含む)と、特にエンジニア、グロースマネジメント、プロダクトマネジメントの役割を担える優れた人材の確保に苦労することが多いようです。新しいエコシステムの発展途上時にはよく見られる現象です。でもマイアミの場合は、発展が速いスピードで進んでいて、人材と出資者が次々と移住してきているので、これからが楽しみです。

マイアミが特に優れている点は、他のエコシステムとの結びつきです。ラテンアメリカとは以前から深いつながりがありましたが、今ではベイエリアやニューヨーク、ヨーロッパとも、ラテンアメリカ以上に密接につながっています。そのため、より多くの企業が、マイアミで事業を営みつつ、グローバルなネットワークを活用して、求める人材、資本、参入市場を見つけられるようになっています。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。   

マイアミでは、非常にたくさんの優れた人々が見事な仕事をしています。素晴らしいのは、ここの人々は純粋に、すべての人の役に立つものを築こうとしていることです。まずは以下の方々の名を挙げたいと思います。

Refresh Miami(リフレッシュ・マイアミ)のMaria Derchi(マリア・デルチ)氏、Beacon Council(ビーコン・カウンシル)のMatt Haggman(マット・ハッグマン)氏 、Knight Foundation(ナイト・ファウンデーション)のRaul Moas(ラウル・モア)氏、Miami Angels(マイアミ・エンジェルス)のRebecca Danta(レベッカ・ダンタ)氏、そしてThe Lab Ventures(ザ・ラボ・ベンチャーズ)のTigre Wenrich(ティグレ・ウェンリッチ)氏です。

Tom Wallace(トム・ウォレス)氏、Florida Funders(フロリダ・ファウンダーズ、タンパ)、マネージング・パートナー

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

ここ数か月の間に、成長著しいマイアミのテックコミュニティに関する数多くの話題が報じられましたが、マイアミとフロリダ州全体をテックハブへ変貌させようという計画はここ数年継続して行われてきた取り組みです。テックのロジーエコシステムを形成するのに必要なものは、人材と資金の2つに集約されます。フロリダには以前から多くの資本がありましたが、カリフォルニアやニューヨークとは異なり、そのほとんどはテック業界を源泉とするものではありません。

しかし、実際にフロリダで素晴らしいユニコーン企業のいくつかが成長し売却されたことが、エコシステムを有機的な成長を促しました。ユニコーン企業が現金化されると、数多くの億万長者が新たに生まれます。そして、その億万長者たちがまた自身の事業を創業するのです。シリコンバレーのHP(ヒューレットパッカード)、シアトルのMicrosoft(マイクロソフト)、 オースティンのDell(デル)などのように、テクノロジーエコシステムはこのようにして築き上げられていくものです。ですから、マイアミとフロリダ全体は今後5年で全米有数のテクノロジーエコシステムになる可能性を秘めています。 

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

当社がリモートワークのトレンドから恩恵を受けていることに疑問の余地はありません。当社はずっと以前から、この地に優秀な企業を設立するために動いてきました。マイアミでの生活は非常に快適ですので、人に勧めるのに困ったことはありません。リモートワークへの移行は、マイアミ以外の場所にある企業に勤務するスマートな人たちがマイアミへと移り住むトレンドを加速させています。そのような人たちは、ゆくゆくはマイアミで起業したり、マイアミの地元企業に転職したりするでしょう。

また、私はオフィスが完全になくなるとは考えていません。Blackstone(ブラックストーン)やGoldman Sachs(ゴールドマン・サックス)のようにマイアミやフロリダ州に移ってきた企業の事例を見ると、そのような企業は手頃な面積のオフィスを設けていることがわかります。オフィスの在り方は永久に変わり、多くの企業では引き続き自宅からのリモートワークが可能となるでしょう。ですが、Zoom(ズーム)で代替することのできない、対面的な要素を持つ仕事も常に存在します。特に、アーリーステージのテック企業にはこの種の仕事が確実にあると、私は考えています。実りのある会話や技術革新のためには、チーム全員が1つの部屋に集まり、ホワイトボードを使いながら問題の解決方法を模索するのが一番です。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

(マイアミが)ラテンアメリカへの架け橋である点が、圧倒的な訴求力を持っているとフロリダ・ファウンダーズでは考えています。ラテンアメリカのテック市場はまだアーリーステージの初期段階なのですが、マイアミはラテンアメリカの企業が米国に進出する際の窓口となっていて、そのまた逆も然りです。物流やマイクロレンディング(小口融資)のプラットフォームには非常に興味をそそられます。私が本気で注目し始めている2つ目の分野はフィンテックです。ゴールドマンサックスやブラックストーンなどの大手金融企業がマイアミにオフィスを構えたことで、革新的なフィンテック企業も彼らの後に続くことでしょう。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

人材、特にテックの発展に寄与する人材はフロリダでは常に不足していました。現在はリモートワークの増加に伴い、より良い人材が見つけやすくなっています。しかしながら、まだ先は長いと思います。ボストンやシリコンバレーのようなエコシステムには世界レベルの教育機関があり、優秀なテック人材を輩出しています。私の出身地であるピッツバーグですら、そうです。フロリダ州にはそのような教育機関がまだありません。ただ、University of Florida(フロリダ州立大学)とFlorida Polytechnic Institute(フロリダ州立工科大学)が教育関連の優れた取り組みを新しく始めることにより、人材不足を補おうとしています。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。   

フロリダ・ファウンダーズがフロリダ州での資金調達の面で重要な役割を果たしていることを、この場を借りてお伝えしたいと思います。マイアミには、コワーキングスペースのCIC(シーアイシー)や最新のMana Development(マイアミのダウンタウン地区開発プロジェクト)のような、物理的にスタートアップハブになった素晴らしい場所がいくつもあります。また、当社が依頼している法律事務所Greenberg Traurig(グリーンバーグ・トラウリグ)、特にパートナー弁護士のJaret Davis(ジャレット・デイビス)氏は、何年にもわたりコミュニティの支援に尽力してくださっています。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:インタビュー アメリカ

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(文:Marcella MaCarthy、翻訳:Dragonfly)

マイアミの投資家8人に聞く、米国最南端のテックハブの展望(前編)

サンフランシスコやニューヨークからの集団脱出が、ここ15年ほどで着実にテックハブへと成長してきたマイアミに大きな影響を与えている。私たちは今、マイアミにとって重要な「瞬間」を目撃しているが、多くの人はこれが一過性のブームではなくテック業界の傾向として定着することを望んでおり、そのために努力している。

1月下旬、SoftBank Group International(ソフトバンク・グループ・インターナショナル)は、マイアミで爆発的に成長しているテック業界を対象とした1億ドル(約104億円7000万円)のファンド設立を発表した。この記事で説明されているように、これはマイアミのテックブームが本物であることを裏付けている。この発表に先立ち、ソフトバンク・グループ・インターナショナルはTechCrunchに次のように語った。「ますます多くのスタートアップが拠点を置くようになり、マイアミは、増加する需要に素早く対応できるハブへと急成長している。新興分野であるエルダーテック(高齢者を対象としたテクノロジー)からバイオテックまで、マイアミは、起業家として商機を探す移民やマイノリティに唯一無二の機会を提供している魅力的な投資市場だ」。

パンデミックが変化を促進した。マイアミの住民たちは、サウスビーチに多くの人材が流入し、ひいては彼らの銀行口座も移動してくることを願いながら、新しい住人を歓迎し、彼らが新生活に慣れることができるようサポートした。TechCrunchは、マイアミの現状と今後の展望について、マイアミを拠点とする投資家にインタビューを行った。

前編では、以下の投資家からのインタビュー回答を掲載する。

Marcelo Claure(マルセロ・クラウレ)氏、Softbank Group Intl.(ソフトバンク・グループ・インターナショナル)、CEO

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

ますます多くのスタートアップが拠点を置くようになり、マイアミは、増加する需要に素早く対応できるハブへと急成長しています。新興分野であるエルダーテック(高齢者を対象としたテクノロジー)からバイオテックまで、マイアミは、起業家として商機を探す移民やマイノリティに唯一無二の機会を提供している魅力的な投資市場です。2012年から2018年にかけて、マイアミ・デイド郡のテック部門は40%の成長を遂げました。これは、堅調な成長軌道に乗っていることを示しています。今後数年はこの成長トレンドが続くと予想しています。

さらに、「まず始めること」が最大の難関であることも理解しています。本社機能が集まる都市になるための第一歩は、優秀な人材の確保です。マイアミには、生活費の低さ、ライフスタイル、成長に資する機会など、いくつもの魅力的な側面があります。ラテンアメリカとの文化的な交流が盛んなマイアミは、ラテンアメリカの企業や創業者が事業を米国へとシームレスに展開するための自然な架け橋となる立ち位置にあります。ソフトバンクは、今こそ飛躍のチャンスと考え、マイアミ市場でテック業界のエコシステムを支援することにしました。

マイアミは常に、当社にとって大切な場所でした。当社が50億ドルを投じて設立したLatam Fund(ラテンアメリカ・ファンド)はマイアミで誕生し、本部もここにあります。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

リモートワークが世界中でニューノーマル(新しい常態)として急速に浸透しています。これはつまり、人材と起業に関する地理的な障害がなくなるということです。マイアミには、州所得税がないこと、アートや文化の振興に積極的であること、活発なライフスタイルに適した気候に恵まれていることなど、他の市場よりもはるかに優れた強みがあります。フロリダ州にはテック分野と金融分野の人材が大挙して押し寄せています。2020年9月の発表では、1日あたり1000人がフロリダ州に移転しているとのことでした。これは驚異的な数です。

リモートワークは今後のビジネスを支える基盤の一部となりますが、それでも、企業風土を構築するうえで対面のやり取りに代わるものはありません。企業は、従来型のオフィススペースを多少削減するかもしれませんが、主要な本社機能を置けるコワーキングスペースまたはレンタルスペースを探し続けるのではないかと思います。そのため、全体的にみれば。市内に位置するオフィスの数は大幅な増加傾向が続くと見込んでいます。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

ソフトバンクは、フィンテックからアグリテック、教育分野に至るまで、さまざまな分野のテクノロジー企業へ投資していますが、とりわけ、これらの分野のデジタルトランスフォーメーションを担う起業家や会社に投資しています。また、そうした起業家が拠点とする都市の勢力図が、昨年大きく変化したことも認識しています。起業家が多く集まる地域は、長い間シリコンバレーとニューヨーク市が二強でした。しかし、今では、ダラスやオースティン、そしてもちろんマイアミにも起業家が多く集まってきています。これにはマイアミ市のSuarez(スアレス)市長のたゆまぬ努力が大きく貢献しています。そのおかげでマイアミはイノベーションとテック産業の最前線に立っているのです。

マイアミで頭角を現しているビジネスの多くが、当社の求める投資対象条件に合致します。当社は、ラテンアメリカ・ファンドを通して、ラテンアメリカ地域に重点を置く企業へ投資しています。VCコミュニティにおける多様性とインクルージョンという積年の問題に本気で取り組むため、黒人やラテン民族、アメリカ先住民の起業家に焦点をあて、1億ドル(約104億7000万円)のOpportunity Fund(オポチュニティ・ファンド)を立ち上げました。これまでのところ、700社以上の審査を実施し、マイアミで台頭しているヘルスケア、SaaS、フィンテック、ゲームなど多岐に渡る分野で約20件の投資を行い、合計2000万ドル(約21億1000万円)を投入しています。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

どの市場でも、その市場ならではの課題に直面するものですが、マイアミ、そしてフロリダ州は全体的に新規参入への障害がはるかに少ない市場です。実績があり多様性に富む地元の専門家たちのネットワークは、企業にとって非常に価値の高いリソースとなります。有名なテック企業やVCがマイアミに移転しており、後に続くよう他の企業にも促しています。

Keith Rabois(キース・ラボイス)氏がそのよい例です。ラボイス氏の今年の抱負は、シリコンバレーからマイアミへの大移動を支援することです。マイアミがテック業界におけるホットスポットであることをアピールする動きが増えています。ソフトバンクはマイアミと深いつながりがありますので、他の企業家をマイアミへ誘致できることをうれしく思っています。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

Emil Michael氏(エミル・マイケル氏、元Uber(ウーバー))、Shervin Pishevar氏(シェルヴィン・ピシェヴァー氏。元Uberで、Sherpa Capital(シェルパ・キャピタル)の創業者)、Martin Varsavsky氏(マーティン・ヴァルサフスキー氏。元Jazztel(ジャズテル)で、FON(フォン)の創業者)、 Alexis Ohanian氏(アレクシス・オハニアン氏、Reddit(レディット)共同創業者)。

German Fondevila(ジャーマン・フォンデヴィラ)氏、Clout Capital(クラウト・キャピタル)、投資マネージャー

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。マイアミはここ数年、多様な人々を惹きつけてきました。また、最近になってテック業界や金融業界の企業がさらに増加しました。このように集まってきた人や企業が、単なる寄り集まりであることを超えて、どのように発展していくと思いますか。  

私は、2016年にスペインのバルセロナからマイアミへ引っ越してきました。そして、この都市の持つ可能性に気づき、この地に留まることを決めました。まず留意すべきなのは、マイアミのエコシステムまだ形成途中で、発展途上だということです。今後数年の間に、スタートアップシーンにおけるマイアミの存在感はより強くなると思います。より多くの才能がマイアミに移り住み、それによってもっと多くの企業がこの地へ本拠地を移すことを私たちは望んでいます。マイアミは文化的にも豊かで刺激的ですし、他の都市に比べて笑顔にあふれていると感じます。

重要なのは、「誇大広告」に飛びつかないことです。この地は可能性に満ちていますが、だからといって「ローマは一日にしてならず」です。強固なスタートアップコミュニティを築くためには、いくつかの層を積み上げる必要があります。簡単に解決することのできない、さまざま要素を含んだ複数の問題が絡み合っています。これはいわば、長期間にわたるゲームなのです。そのことを理解して期待値を調整する必要があります。マイアミをサンフランシスコやニューヨークと比較する人がいますが、それは滑稽に思えます。30年前のサンフランシスコやニューヨークが、すでに今日のようなスタートアップハブになっていたでしょうか。そんなことはありません。足りないものがたくさんあったはずです。起業家精神を持つ人々は「作られている途中」の場所に引き寄せられるのです。その都市の未来を形作る役割を担うことができて、それが自分自身の未来にもつながるわけですから。

私たちはまた、もっと頻繁に集って話し合いの場をもち、より計画的にマイアミの成長を支えていく必要があります。マイアミに移住した当時、私は創業者でした。衝撃的だったのは、マイアミのエコシステムではお互いに協力し合う人があまりいないということでした。みんながそれぞれ自分のことをしているように見えました。私は常々、何らかの形の「スタートップ協議会」を設けるべきだと考えてきました。関連性の高い、適切なステークホルダーたちが集まり、組織的に動いてマイアミの強みを活用するのです。Francis Suarez(フランシス・スアレス)市長の近年の活躍は素晴らしいですが、スアレス市長がシグナルに含まれるノイズを識別できるよう、彼をサポートする存在が必要だと思います。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。 

私はここ数年、リモートワーク、具体的には労働力の分配という考え方と、それを支えるインフラを支持してきました。リモートワークとはパジャマ姿で自宅から働くか、もしくはカリブ海のどこかのビーチで仕事をすることだと人々は考えています(実は両方とも経験があるのですが)。人々は柔軟性を求めており、それを避けて通ることはできません。私たちはついに、産業革命型モデルの組織から、知的労働者タイプの組織へと変容しようとしているのです。

マイアミからオフィスが全て消え去るとは思っていませんが、ダウンタウン周辺のオフィスの密度と、都市開発の手法は変わっていくと思います。コワーキング型スペースの人気が再燃し、より広く普及していくでしょう。人々は仕事をするためにオフィススペースへ行きますが、いつも同じ会社の人と一緒にいるわけではない、というだけなんです。通勤時間を短縮するため、住宅地の周辺地域へ均等に広がっていくことでしょう。拘束時間の減少が、生活における幸福感の向上につながり、それが生産性へと還元されるようになります。

スタートアップではチームが各地に分散しているのは普通のことです。しかしながら、都市の垣根を越えて投資するという習慣が根付くには長く時間がかかります。多くの投資家は創業者が同じ都市にいることを好むのです。そういった意味で資本分散が一般化するまでには時間がかかります。投資家は群集心理によって動くものです。そのため、何人かのトップ投資家が公の場で現状に疑問を投げかけてやっと、変化が生じ始めます。Founders Fund(ファウンダー・ファンド)のキース・ラボイス氏がマイアミに拠点を移したことが、最近の良い例です。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

当社が新しく設立した6000万ドル(約62億9800万円)のファンドを通して、ラテンアメリカやフロリダでシリーズAの資金を調達する創業者と手を組んでいく予定です。また、機会があれば、シードラウンドの案件にも参加します。   

当社は製品主導型の企業に注目することが多いと思います。「二番煎じ」の製品を作ろうとしないだけではなく、正真正銘の知的財産や付加価値を有する製品またはビジネスモデルを持つ企業を発掘するのは、刺激的な経験です。主に、SaaS、エンタープライズソフトウェア、不動産テック、フィンテック、インシュアテックに注目していますが、これら以外の企業に対してもアンテナを張っています。最終的には優れたチームと提携できればと思っています。

マイアミには、数社だけ名を上げるのはフェアではないほど数多くの素晴らしいチームがあります。個人的に心が動かされるのは、応用AIとAIインフラ、決済とeコマースのイネーブルメントなど、未来の働き方を可能にするコラボレーションツールへの投資です。また最近では、消費者サブスクリプションについてもっと知りたいと思うようになっています。SaaSのリカーリングモデル(継続収益モデル)とB2Cビジネスが持つ巨大市場を融合させる手法に勢いを感じています。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

テック関連かどうかは問わず、有能な人材の獲得と資金調達が主な課題だと聞いています。マイアミへ人が流入していますし、リモートワークでの雇用がトレンドですから、人材確保はこの先障害ではなくなっていくでしょう。ここ数年の間に、より多くの大手企業がフロリダ州南部に支店を設け、それによってより広範囲でスタートアップの発展段階をサポートできるようになりましたから、以前より資金調達状況は改善されています。私はこの傾向がこの先も続いていくと見込んでいます。

マイアミは、あらゆる人を惹きつけて楽しませる魅力を持つ都市です。私は人々に「マイアミの好きなところを一つだけ選ぶとしたらどこですか」と尋ねるのが好きです。マイアミには、面白い背景や経歴を持つ、非常に賢い人々がたくさんいるのですが、そういう人はおそらくWet Willies(ウェットウィリーズ。凍ったカクテルで有名なバー)で飲んだり、シャンパンを片手にゴージャスなライフスタイルについて語ったりはしていません。移住直後は特に、マイアミについての先入観を持たないようにすることをお勧めします。心をオープンにして、良い面も悪い面も両方受け入れる心構えが必要です。私はここに移住してきたばかりの人と知り合い、マイアミのありのままの姿を紹介するのが好きです。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。

スタートアップのエコシステムが発展途上である他の場所と同じく、マイアミにも重要な役割を担っているプレイヤーが大勢います。The Knight Foundation(ザ・ナイト・ファウンデーション)、Miami Angels(マイアミ・エンジェルス)、CIC(シー・アイ・シー)、Refresh Miami(リフレッシュ・マイアミ)、Wyncode(ウィンコード)、 Next Legal(ネクスト・リーガル)、PAG Law(ピー・エー・ジー・ロー)、The LAB(ザ・ラボ)、Secocha Ventures(セコチャ・ベンチャーズ)、Animo Ventures(アニモ・ベンチャーズ)、Las Olas VC(ラス・オラス・ベンチャー・キャピタル)、The Venture City(ザ・ベンチャー・シティ)をはじめとする数多くのステークホルダーが、マイアミのエコシステムの発展に尽力することを表明しています。私は、あまり「目立たない」企業ほど、関係を築く価値がある場合が多いことに気付きましたので、他の都市から移住してきた方は特に、表面的なグーグル検索を超えたリサーチを行うようお勧めします。

Tigre Wenrich(ティグレ・ウェンリッチ)氏、LAB Ventures(ラボ・ベンチャーズ)、CEO

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

最近のバズりは1999年と非常によく似ているように思います。あの時はむしろラテンアメリカからの移住者が多くて、カリフォルニアからの移住者はそれほど多くなかったですけどね。私もまだここには住んでいませんでした(メキシコに住んでいました)が、マイアミが「シリコン・ビーチ」になりつつあるという報道がヒートアップし始めて、たくさんのスタートアップが多額の経費をかけてリンカーン・ロードにオフィスを構えるようになったことは覚えています。2000年にインターネットバブルが崩壊した後、そのうちの大半が廃業したか、もしくは、非常に成功していたけれどマイアミではビジネスを展開していなかったMercadoLibre(メルカドリブレ)のように、ラテンアメリカへ戻りました。

私は用心深い楽天家なのですが、今回は違います。大手VCが州税を節約するためにマイアミに移転してくることは大歓迎ですし、スアレス市長が大変活発にマイアミを宣伝してきたことに拍手を贈りたいと思います。地元コミュニティの発展に寄与していきたいと積極的に公言している人もおり、大変素晴らしいことだと感じています。しかし、マイアミがいずれテックハブになると私が確信している理由は他にあります。

私が楽観視している本当の理由は、過去8年から10年の間に、地元のテックコミュニティがゆっくりと、だが着実に成長を続けてきたことにあります。今では、非常に大きなテック企業(例えば、Chewy(チューウィ)、Magic Leap(マジック・リープ)、Reef(リーフ))がいくつもフロリダ州南部に拠点を置いており、地元の人材プールが大きく拡充され、Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、 Uber(ウーバー)のような大手テック企業の重要な支社や、他分野の大企業(JetBlue(ジェットブルー)、Blackstone(ブラックストーン)など)もマイアミにテック関連の支社を開設するようになりました。そして最も重要なのは、イグジットを成功させることによって得た資金を投資し、新しいスタートアップの良き指導者となる起業家が、今は少なくても着実に増えていることです。

これは決して近年の現象ではありません。むしろ、2012年に私たちがマイアミにThe LAB(ザ・ラボ)を開設した時からずっと続いているトレンドです。コワーキングスペース、アクセラレーター、インキュベーター、学生起業家、コンピューターサイエンスプログラム、コーディングスクールなど、さまざまな組織が提供する起業サポートの増加は、長年にわたるプロジェクトの成果であり、次のシリコンバレーはマイアミだとツイッターマニアが盛り上がるようになりました。

シリコンバレーのようなテックハブは、それぞれの役割を果たすプレイヤーが互いに養い合い、増強し合うコミュニティという基盤があったからこそ成功したのです。昨今、食傷するほど多用されている「エコシステム」という言葉が使われているのはそのためです。20年前、いや10年前ですら、マイアミは、テックハブへと成長するためのクリティカルマスには達していませんでした。1999年の盛り上がりは一時的なものにすぎず、テックムーブメントではなかったのです。しかし現在は、飛躍的な成長への分岐点となるクリティカルマスに近づきつつあります。5年後には、マイアミがテックハブであることは現実のこととして受け入れられ、ハブになり得るかどうかという点は、議論の余地すらなくなると予想しています。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

私はマイアミからオフィスが消え去るとは思っていません。ですが、オフィスの利用の仕方は確実に変化していくでしょう、今後も全面的にリモートワークを続けていける職種も数多くありますが、弁護士、税理士、経営コンサルタント等、サービス業の多くは徒弟制を取っているためZoomなどでその形態を維持していくのは非常に難しいと思います。企業文化も、短期間でしたらリモートワークを通して維持することが可能ですが、新入社員にその文化を伝えることは困難でしょう。また、社会活動への欲求が強く抑圧されてきた反動で、ワクチンが普及し、安全が確認されたら、人々は急速にオフィスへ戻っていくと考えています。

ですが、未来のオフィスは今とは全く違った形になる可能性が高いでしょう。共有スペースやコラボレーションのためのスペースが増えると思います。固定オフィスが割り当てられることはめずらしくなり、週に2~3日はオフィス勤務で、残りの日にはリモートワークというような自由な勤務制度へ移行する人が増えます。このような変化が商用のオフィススペース需要に与える影響についてはまだはっきりしません。マイアミ都心部のオフィス密集地域は苦戦するかもしれませんが、郊外のオフィス需要は増加する可能性が高いです。また、2021年の後半には、コワーキングスペースへの需要が急速に戻ると予想しています。完全なリモートワーカーの拠点としての需要に加えて、通勤時間をかけてダウンタウンの「通常の」オフィスへ通いたくない人々の選択の一つとしての需要も増えるためです。自宅で非常に効率的に仕事をこなせる人もいますが、大半の人にとって自宅は気が散って集中しにくい環境ですからね。

パンデミックによって米国内の完全リモートワーカーの数は不可逆的に増加しました。どこに住んでもいいのなら、マイアミは明らかに魅力的な選択肢ですが、そのせいでマイアミの住宅価格が高騰しています。そのような理由で移住してくる人は地元コミュニティとの結びつきが比較的弱く、長期にわたって居を構える可能性は低いです。マイアミにとって本当の意味で好機となるのは、マイアミに事業拠点を移す企業が増え、それにともなって正規雇用枠が増えることであり、そうなることを目指すべきです。それに成功すれば、オフィス需要が減ることはなく、むしろ増えることでしょう。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

ラボ・ベンチャーズでは、マイアミだけでなく、世界中の不動産テック(不動産業や建築業界に特化したテック企業)に注目しています。

当社は、住宅用不動産の好機、とりわけ好調なシングル・ファミリー・ホーム市場に大きく期待しています。当社が投資する地元企業の中で、最も牽引力のある企業を挙げるなら、Beycome(ベイカム。消費者が自分で持ち家を売買し、本来は何十万円もかかるはずの手数料を節約するのを手助けするオンラインの不動産エージェント)やExpetitle(エクスパタイトル。不動産取引の最終的な決済の完全リモート化を実現した業者)などです。どちらもパンデミックの間にシードラウンドの資金調達を成功させ、堅調に成長し続けています。

建設テックもまた、確実な成長が見込める分野だと考えています。建設現場での労働時間追跡やプロジェクトマネージメントソフトウェア、オフサイトでのモジュール建設など、建設業界が抱える問題への解決法を提供しているいくつかの企業に投資しています。マイアミはそれらのテクノロジーを試すにはとても良い場所なのです。ここでは数多くの建設が活発に行われていて、技術革新に積極的な地元の業界関係者も多いためです。当社はまた、ラテンアメリカにも活路を見出しています。ラテンアメリカ地域のテクノロジーを米国に取り入れ、また米国の新しい革新的なテクノロジーをラテンアメリカの企業が取り入れる手助けをしています。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

他の皆さんが言われている通り、資金と地元人材の調達が(マイアミでの)実質的な二大チャレンジだと思います。ですが、どちらも改善に向かって大きく前進していますね。3つ目を足すとすれば、「詐欺師と変人の温床」というフロリダの評判でしょうか。客観的にみると、マイアミで不正行為に遭遇する頻度は他の場所より確かに高いのですが、文化の多様性とマイアミに浸透している移民精神が、クリエイティブで働き者の人材層を厚くしているのもまた事実なのです。また、マイアミのコミュニティは非常にオープンです。何しろ私たちの大半が元はよそ者ですから、新たな移住者を歓迎する雰囲気が他よりも強いと思います。地元のテックコミュニティはまだ規模が小さいので、何が起きているのかすぐに把握できます。

TC:マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、地元住民のみぞ知る注目すべきキーパーソンについて教えてください。   

たくさんの素晴らしい創業者たちがマイアミで重要な役割を担っていますが、あえて名を挙げるとすれば、次の方々でしょうか。

  • Aaron Hirschhorn(アーロン・ハーシュホーン)氏。アーロンはGallant(ギャラント。ペット向け幹細胞バンク事業)を立ち上げ、大手のベンチャー企業から巨額の資金を調達し、テレビ番組Shark Tank(シャーク・タンク)にも出演したことがあります。自身のスタートアップDogVacay(ドッグ・ベイケイ)をRover(ローバー)へ売却した後、数年前にマイアミへ移ってきました。     
  • Andres Moreno(アンドレ・モレノ)氏。経営するOpen English(オープン・イングリッシュ)に加えて、Endeavor Miami (エンデバー・マイアミ)の共同経営者であり、アーリーステージ期のスタートアップ(Longevo(ロンゲボ)とEscala(エスカーラ))に積極的に関わっています。
  • Maurice Ferré (マウリス・フェレ)氏。彼は、Paypalマフィアのマイアミ支部ヘルステック部門担当といったところでしょうか。マイアミではMako Surgical(メイコー・サージカル)を売却し、現在は本当に実力のある数多くのスタートアップに投資したり、相談に乗ったりしています。
  • Jose Rasco(ホセ・ラスコー)氏とJuan Calle(ジョアン・カレ)氏。2014年に.CO(ドットコー)を売却し、現在は、コワーキングスペースbuilding.co.(ビルディングドットコー)をはじめとする多くのプロジェクトに携わっています。
  • IronHack(アイロンハック)のAriel Quinones(アリエル・キノネス)氏。彼はマイアミを拠点としていますが、アイロンハックは欧州のマーケットリーダーで、先月また1000万ドル(約10億5000万円)の資金調達を行ったところです。何か大きな企画があるようです。
  • Felipe Sommer(フェリペ・ソマー)氏とEmiliano Abramzon(エミリアーノ・アブラムゾン)氏。Nearpod(ニアポッド)を設立しましたが、最近になって日々の管理業務からは退きました。彼らは近いうちに何か大きなことをやってくれると確信しています。
  • Marco Giberti(マルコ・ギバルティ)氏。マルコは創業者からエンジェル投資家へ転向した、「ビルダー型」もしくは「ベンチャースタジオ」モデルと呼ばれる手法の先駆者です。彼はLAB Ventures(ラボ・ベンチャーズ)の共同創始者で、イベントテックに関する著書を出版した経歴を持つ、イベントテックの専門家でもあります。
  • 法律事務所:PAG.LAW(ピーエージーロー)。マイアミのスタートアップ企業や、米国に支店や法人組織を持つ、もしくは今後持つことを考えているラテンアメリカのスタートアップの大多数の代理人を務めている法律事務所です。

Rebecca Danta(レベッカ・ダンタ)氏、Miami Angels(マイアミ・エンジェルス)、常務取締役

TC:今後5年間に、マイアミのスタートアップシーンはどのように変化していくと思われますか。

マイアミに移り住む人の数はますます増えると思います。現在盛りあがっているブームのいくつかは下火になっていくかもしれませんが、それでも、ここに住んで事業を営むことをことを積極的に選択する人が途切れることはないと思います。2020年より以前には、マイアミに住むということは、ライフスタイル面での選択であり、キャリア面では後退だとみなされることがありました。しかし、最近はそのようにみなされることはなくなってきています。今、この街はテック企業と投資家が繁栄する街へと確かな変貌を遂げているところです。数年前に創業したスタートアップが成熟し、拡大に伴って雇用を加速させ、そのうちに、それらの会社の社員たちが独立して自分の会社を興すようになるでしょう。

TC:リモートワークによって、グローバルな労働力が、まるで綱引きのように押し引きされています。つまり、さらに多くの企業がマイアミへ移転してきたとしても、「オフィス」自体が消失してしまうわけですよね。また同時に、マイアミ住民の多くが他の都市に拠点を置く会社のためにリモート勤務で働いていたりすることになります。このような要因は、マイアミのテック革命にどのような影響を与えると思いますか。

Pipe(パイプ)が先日発表したマイクロハブのように、パンデミック後の世界では、ハイブリッドな就労環境が不可欠になると思います。テック関連の業務や企業が100%リモートワークになるとは思いません(多くはそうなりますが)。同時に、100%オフィス勤務かつ週5日の対面業務に戻ることも絶対にないと思います。企業の本社機能をどこに置くか、創業者にはかつてないほどの選択肢があり、社員は仕事のために転居する必要はなくなります。創業者はクオリティ・オブ・ライフと就労環境の整えやすさの点で魅力的な街を選ぶでしょう。そして、マイアミを拠点にすれば、人材を容易に惹きつけることができると思います。

TC:マイアミでは(もしくはマイアミ以外でも)、どのような業界に注目していますか。今、マイアミで展開されているビジネスで、投資先として有望だと感じるものは何ですか。

当社マイアミ・エンジェルスは(アーリーステージのソフトウェア企業であれば)業界を特定していません。マイアミに拠点を置く企業への投資は2013年から始めましたが、マイアミの企業にのみに投資しているわけではありません。マイアミには大規模な学校や医療体制が整っているため、マイアミのエドテック業界とヘルスケアテック業界には常に注目してきました。また当社には、これらの分野に関する地元ならではの専門知識とイノベーションがあり、パンデミックによってその知識とイノベーションにさらに磨きがかかりました。当社は何年にもわたりそれらの分野に重点的に投資してきましたが、それは、その土地ならではの重要な分野に注力することが重要だと信じているためです。

TC:あなた自身が経験した、もしくは、周囲の創業者が苦戦した、地域特有の課題はありますか。もっと広い意味で言うと、マイアミでの雇用や投資、マイアミへの移住を検討している人は、この都市で事業を営むことについてどのように考えるべきですか。

既にいくつかのマイアミ発スタートアップが注目に値する成功を収めていますが、テック業界のエコシステムとしてはまだ発達途上の段階です。この街にあるスタートアップの大半はまだ小規模で、従業員数は50人以下です。つまり、大半の会社には、プロダクト、デザイン、エンジニアの大型チームがまだ形成されていないということです。地元の大学を卒業した優秀な人材はいますが、マイアミに、20歳そこそこのジュニアエンジニアを毎年採用できるスタートアップが増えない限り、それらの人材は他の都市へ流出するの止めることはできないでしょう。簡単に言えば、プロダクト、デザイン、エンジニアに関する最高峰の人材がまだこの街に集結していないということです。幸運なことに、マイアミはそのような人材を圧倒的に惹きつけることができる場所なのですが、重要なのは、創業者がそれを認識することです。

TC:投資家、創業者はもちろん、スタートアップのエコシステムを支える役割を担う弁護士、デザイナー、成長株の専門家など、マイアミの繁栄に最も影響を与えていると思うスタートアップ創業者を何人か挙げていただけますか。 

エコシステムの成功は全て創業者のおかげです。ですから、数年前にこの地にスタートアップを設立してマイアミに賭けた創業者たちこそ、特別な注目に値します。彼らは、外部の投資家から反対されながらも、マイアミを信じ、あえてマイアミで創業することを選びました。そのような創業者にはBlanket(ブランケット)のAlex Nucci(アレックス・ヌッチ)氏、WhereBy.Us(ウェアーバイ・アス)のChris Sopher(クリス・ソファー)氏、Rebekah Monson(レベッカ・モンソン)氏、Bruce Pinchbeck(ブルース・ピンチベック)氏、Nearpod(ニアポッド)のEmiliano Abramzon(エミリアーノ・アブラムゾン)氏とFelipe Sommer(フェリペ・ソマー)氏、 Caribu(カリブ)のMaxeme Tuchman(マキシム・タックマン)氏、Addigy(アディジー)のJason Dettbarn(ジェイソン・デットバーン)氏らが挙げられます。また、Kiddo(キドー)のEmma Harris(エマ・ハリス)氏、Kiddie Kredit(キディ・クレディット)のEvan Leaphart(エヴァン・リープハート)氏やDomaselo(ドマセロ)のEmil Hristov(エミール・フリストフ)にも注目しています。 

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(文:Marcella MaCarthy、翻訳:Dragonfly)

「シリコンバレー以外」の場所にあるシードステージ企業を支援するChicago Venturesが67.2億円を調達

ニュースのヘッドラインは、ともすると話題性のあるメガラウンドや知名度の高いIPOに独占されがちだ。しかし、それらの企業の多くは、かつてはアーリーステージでシードラウンドの資金調達に奔走していた。

シードステージのラウンドをリードすることが多いVCのChicago Venturesは米国時間3月1日、3つ目のファンドをクローズしたと発表した。この6300万ドル(約67億2000万円)の新ファンドは、同社によってすでに活用されている。

Chicago Ventures(無論、シカゴが本拠地)は、企業を支援する際に非常に特殊な基準を持っている。その一つは、前述の通り、シードステージのスタートアップ企業を支援するだけでなく、通常はそのラウンドをリードするということだ。同社は新しいファンドから25件の投資を目標としており、平均的な投資額は150万ドルから200万ドル(約1億6000万円から約2億1000万円)となるという。

その証拠に、同社はこの3つ目のファンドから11社にこれまで投資しており、そのうち10社のラウンドをリードしている。これらのスタートアップには、CognitOps、CoPilot、Forager、Interior Define、NOCD、OneRail、PreFix、Ureekaが含まれる。

同社はまた特に、シリコンバレーやニューヨークというような、伝統的な人気エリアから離れた場所にある企業への投資に注力している。最近の投資先は、シカゴを拠点とするスタートアップが6社、(最近オフィスを開設した)オースティンに2社、フロリダ州オーランドに1社、ロサンゼルスに1社となっている。

Chicago Venturesは、「見過ごされていた」企業を見いだして支援することに誇りを持っている。同社は、持続し得る企業は「いくつかのエリート市外局番」に限定されることなく、「どこでも」設立できるという根拠のもとに2012年に設立された。

同社は声明の中で次のように述べている。「シードラウンドを一貫してリードしているファンドはほんの一握りしかありません。今もなお、イノベーションの歴史が豊富な業界や地域に業界の注目は集中しがちです。当社はこのギャップを埋めます。我々は、(価値が)明らかになる前にシードラウンドをリードし、会社の創成期に、積極的に運営に関与するパートナーとしての役割を果たしています。当社は東西海岸を避けて投資を行っています」。

設立以来、同社の投資先企業は15億ドル(約1601億円)以上のフォローオン出資を受けてきた。うち17社は現在1億ドル(約107億円)以上の評価を受けており、その中にはCameo、ビジネスソフトウェア・マーケットプレイスのG2、ロジスティクスソフトウェア企業のproject44などが含まれている。

Chicago Venturesは2016年に、6000万ドル(約64億円)のメインファンドと600万ドル(約6億4000万円)のサイドカーファンドを含む、2つ目のファンドをクローズした。同社は今回のファンドでは、サイドカー手法を選択しなかった。

新しいファンドの設立と同時に、Chicago Venturesは、Peter Christman(ピーター・クリスマン)氏Lindsay Knight(リンジー・ナイト)氏をパートナーに昇格させたことも発表した。クリスマン氏は、旧式の企業ワークフローを再構築する企業や、介護や財政的健全性へのアクセスを拡大する消費者向け製品への投資をリードする。ナイト氏は、人材管理、ビジネス開発、機能的なベストプラクティスの共有など、投資後のオペレーションを指揮していく。

Chicago Venturesはさらに、新しいパートナーとしてJackie DiMonte(ジャッキー・ディモンテ)氏をチームに迎えた。ディモンテ氏は以前はHyde Park Venture Partnersで、アーリーステージの企業投資を率いていた。エンジニアとしての教育も受けているディモンテ氏は、Chicago Venturesが2015年から10件の投資を行っている、オースティンに拠点を置く。

2020年、シードステージの米国スタートアップ企業に投資された金額は、TechCrunchが以前の記事で検証したように、かなり浮き沈みがあった。また、激動のビジネス環境にもかかわらず、例年に見られたシード投資の規模が上昇するパターンは継続していた

関連記事:Foresite Capitalがヘルスケアスタートアップを対象とする約1033億円の投資ファンドを組成

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Aya Nakazato)

投資家たちはパンデミックをどのように評価しているのか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

ちょっとした近況報告から始めよう。Equityはより多くのことを提供するようになる。そして、TechCrunchは現在JusticeEarly-Stageイベントの開催を計画中だ。私は後者のためにZoomのCROにインタビューを行っている。また、このThe Exchange自体でも、来週には懸案の内容をお届けする予定だ。たとえば5000万ドル(約53億3000万円)と1億ドル(約106億6000万円)の年間経常収益(ARR)を達成した企業の話(Druva[ドゥルーバ]など)、消費ベースの価格設定と従来のSaaSモデルの比較(Fastly[ファストリー]、Appian[アピアン]、BigCommerce[ビッグコマース]のCEOたちが登場)などだ。ふう。

今週はDoorDash(ドアダッシュ)とAirbnb(エアビーアンドビー)の両社が上場企業として初めて収益を報告し、エグジットを果たしたユニコーンたちへの真の仲間入りを果たした。私たちは、いつものようにひっそりと収益サイクルに目を光らせているが、今回はスタートアップの世界に向けてお話ししたい、いくつかの学びがある。

いくつかの基本的なことから始めてみよう。第4四半期におけるDoorDashの売上高は、予想されていた9億3800万ドル(約999億5000万円)に対して9億7000万ドル(約1033億6000万円)となり、予想を上回る成長結果となった。この2つの数字のギャップは、部分的にはDoorDash株の新しさと、パンデミックの影響で予測が難しくなっていることに起因しているのだろう。飛躍的な成長にもかかわらず、DoorDashの株式は、業績報告の発表後にまず急落したが、米国時間2月26日金曜日には大きく回復した。

なぜ初めに下落したのだろうか?おそらく公開後最初の四半期における(GAAPによる)赤字が、大きなものになることは一般的なこととはいえ、投資家が予想していた数字よりも、同社の純損失が大きかったことが下落の原因ではないだろうか、その懸念が、業績報告会における同社のCFOからの「第4四半期と同様に1月にも12月に比べて注文量の成長が加速しています」という発表によって和らげられたのだろう。それは安心材料だ。一方で、同社のCFOは「第2四半期以降、顧客の中には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の行動への回帰が見られるようになるでしょう」と述べている。

要点:大企業たちは、新型コロナウイルス流行以前の行動が復活することを期待しているが、まだまだそれには遠い。新型コロナの恩恵を受けた企業たちは、現在厳しい吟味を受けている。そして、2021年さらに進んでいくにつれて、その追い風は徐々に弱まっていくだろうと彼ら自身も考えている。

そこで目に入るのがAirbnbだ。同社の株は週末前には16%ほど上昇している。何故かって?Airbnbは売り上げの予想値を上回った一方で、大金も失っている。Airbnbの2020年第4四半期の純損失はDoorDashの10倍以上の額だ。ではなぜ、DoorDashが沈んだのに、Airbnbが上昇したのだろうか?収益が予想を大きく上回った(予想されていた7億4800万ドル[約797億1000万円]ではなく、8億5900万ドル[約915億4000万円]だった)こと、そして将来の成長の可能性がその要因だ。投資家たちはAirbnbの現在の期待を上回る成長が、将来にのさらなる成長につながると期待しているのだ。

要点: 将来の成長についてしっかりとしたストーリーを持っていれば、投資家は大幅な損失を受け入れてくれるだろう。成長が続くなら、企業がすでに成長していたとしても、一層厳しくなる吟味を乗り越えられるだろう。

スタートアップたちにとって、評価額に対する重圧や浮力は、結局企業がパンデミックのどちら側にいるかにかかっているのかもしれない。すなわちその追い風に乗る側なのか(たとえばリモートワークに注力するSaaSとか?)、もしくは逆風を受ける側なのか(たとえばレストランテックとか?)。調達をする前に良く検討すべきものがあるのだ。

マーケットノート

資金調達ラウンドで熱い1週間だった。私が以前ジャーナリストとして在籍していたCrunchbase Newsは、2021年これまでに、どれだけの大規模なラウンドが行われたのかについてすばらしい記事を残してくれた。しかし、規模的には一歩も二歩も下がったレベルでも、資金調達活動は超多忙だった。

先週、カバーすることはできなかったが、私の目を引いたいくつかのラウンドには、Terminus(ターミナス)の9000万ドル(約95億9000万円)のラウンド(ABM、Account Based Marketingに特化したGTM、Go To Markertサービス企業だと思う)、Anchorage(アンカレッジ)の8000万ドル(約85億2000万円)のシリーズC(大金を扱うための仮想通貨ストレージ)、Foxtrot Market(フォクストロット・マーケット)の4200万ドル(約44億8000万円)のシリーズB(ヤッピーとズーマー向けの必需品の迅速な配送)などがある。

今ここに座って、ようやくそれぞれのことを少し書いているが、技術市場の広さを思い知らされている。Terminusは他の企業の販売を支援し、Anchorageは顧客のETH(イーサリアム)を安全に保存したいと考えており、Foxtrotは顧客が飲み物のない朝に困らないようにすばやくロゼワインを補充したいと思っている。驚くべき多様性だ。そしてそれぞれがVCに受け容れられるような成長をしていなければならない。単により多額の資金を調達するだけではなく、自身の成熟のためのより大きなラウンドを行うのだ(それはシリーズのステージによって測られるが、ラウンドの呼称は目安になるよりも、目くらましになる可能性がある)。

私は当ニュースレターのこの小さなセクションを冗談でマーケットノートと呼んでいるが、実際気になるマーケット全体のノートを書くことなんて可能だろうか?上の企業たちと最近の資本注入は、この点を改めて認識させてくれる。

その他のことなど

最後に、決算説明会からの覚え書きを2つ紹介する。1つ目は不可解なRoot(ルート)について、2つ目はBooking Holdings(ブッキングホールディングス)についてだ。

私はRoot Insurance(ルート・インシュアランス)のCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏と決算発表後に話をした。私はその結果に対する投資家の反応という意味ではあまり情報を持っていなかった。私は、Rootは多額の資金を持ち、かなり大規模な拡大計画を持っていると理解した。ティム氏は、会社の経営状況の改善(損失率と損失調整後の経費ベース、保険テックファンについて)と、パンデミック中の成長について陽気に語った。

しかしその後、その株式は16%下落している。アナリストの分析を読み解くと、Rootの経済的プロファイルに動きがあり(次の四半期における再保険料の変動に関して)、私の立場からは通年の成長を完全に把握することは難しい。しかし、Rootのビジネスは、いまでも脱皮と言っていいほどの変容を続けているようにみえる。同社は現在のような進化を続けて2022年に公開を行うこともできたかもしれない、だがそうする代わりに、同社は2020年途方もない額を調達して公開を果たした。

少し見渡してみると、似たような新しい保険プレイヤーであるLemonade(レモネード)の印象的な評価額は継続しているものの、MetroMile(メトロマイル)の株価も軟化しており、Rootの株価はIPOの時点から半分以下になっている。現在のような、一部の新しい保険プレイヤーの価格調整が続けば、このスペースへの民間投資の動きが鈍化する可能性がある。(このようなものが少なくなるのだろうか?) 2021年はこの傾向に注目したいところだ。

次は、Priceline(プライスライン)などの旅行会社を所有するBooking Holdings(ブッキング・ホールディングス)だ。Bookingが、ビジネス旅行の将来に関する手がかりを持っている可能性があることを考えて(私たちはリモートワークやオフィス文化がどうなるのかの手がかりや、スタートアップハブの場所からソフトウェアの販売までのすべてに影響を与えるものを気にかけている)、The Exchangeは即座に同社へ電話してみることにした。

Booking HoldingsのGlenn Fogel(グレン・フォーゲル)CEOは、前年に比べて大幅な減収だったにもかかわらず、同社が史上最高値で取引されていることについてコメントをしなかった。彼は、パンデミックが会話へ期待するものを再構成し、現在はビデオ通話で行われているような、会議のための短期出張が、将来も抑制される可能性があることに言及した。彼は将来のカンファレンスのための旅行や将来の旅行全般については強気だった(TechCrunchにとっては良いニュースだと思う)。

旅行という観点からは、まだ何もわかっていない。Booking Holdingsが多くを語らないのは、いつ事態が好転するかわからないからかもしれない。無理もない。おそらく、あと3カ月ほどワクチンが展開されれば、オールドノーマルへの部分的な復帰がどのようなものになるかを、もう少しはっきりと垣間見ることができるようになるだろう。

最後に、Apex Holdings(エイペックス・ホールディングス)のSPAC(特別買収目的会社)プレゼンテーションはこちらで、Markforged(マークフォージド)のプレゼンテーションはこちらで読むことができる。また、こちらでは先渡し後払い(BNPL、buy-now-pay-later)のビジネスについて書き、こちらでははRon Miller記者とDigital Ocean(デジタル・オーシャン)のIPOについて書き、そしてこちらではToast(トースト)の評価額とOlo(オロ)の公開について簡単に書いている

ではまた。

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タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

Foresite Capitalがヘルスケアスタートアップを対象とする約1033億円の投資ファンドを組成

ヘルスと生命科学を専門とする投資会社のForesite Capital(フォレサイトキャピタル)がLPからのコミットメントで計9億6900万ドル(約1033億円)という、同社にとって5番目となる新たな資金を調達した。これは同社最大のファンドであり、創業者でCEOのJim Tananbaum(ジム・タナンバウム)博士によると元々の目標を超える申し込みがあったという。資金調達のプロセスはパンデミック初期にゆっくりと始まったが、2020年秋ごろから急速に活気を帯び、最終的には予想を超えたと同氏は筆者に語った。

この最新のファンドは、実際にはForesite Capital Fund VとForesite Capital Opportunity Fund Vの2つの投資ビークルから構成されるが、資金は既存のアプローチに沿って投資されると同氏はいう。対象はアーリーステージからレートステージ、その中間にある会社まで含まれる。Foresiteのアプローチは企業を創業から(同社は社内にインキュベーターも抱えている)上場まで誘導し、そして上場後も面倒をみるというもので、これによって同社はユニークな位置づけとなっている。しかしForesiteはアーリーステージで見逃し、後に目についたスタートアップへの投資にもかなり関心がある、と同氏は述べた。

画像クレジット:Foresite Capital

「当社は数多くのヘッジファンドと競合する後期に参加し、有益でユニークなものを提供することもできます。なぜなら、当社が会社を立ち上げるのに使った付加価値のあるあらゆるリソースを持っているからです」とタナンバウム氏は話した。「ですので、レーターステージのディールでの競争で当社には優位性があります。そして資本市場において高度に機能できるという長所によってアーリーステージのディールでも競争上の優位性を持っています」。

同氏によると、Foresiteの他のアドバンテージは従来型のテック事業メカニクスとバイオテックが交差するところに長らく注力してきたことだ。この2つの間にあるギャップは狭まり続けていて、そうしたアプローチは近年特に成果をあげている。

「テクノロジー、そしてツールやデータサイエンス、機械学習、バイオテクノロジー、生物学、遺伝学、そうしたものが1カ所に集まるだろうと揺るぎない確信を持っていました」とタナンバウム氏は筆者に語った。「起業家のためにテックとバイオテックどちらの言語も本当に話すことができ、多様な人々をいかにしてまとめるかということを知っている組織はありませんでした。だからこそ、当社はそこに特化しており、テックオタクがバイオテックオタクに、そしてバイオテックオタクがテックオタクに話せるよう、多くのリソース、多くのクロスリンガルのリソースを持っています」。

ForesiteはこのアプローチをForesite Labsの立ち上げという会社のフォーメーションにも適用した。Foresite Labsは、スタートアップ起業の可能な限り早いステージで経験を生かすために2019年10月に設立されたインキュベーションプラットフォームだ。Alphabet(アルファベット)のヘルスサイエンス企業Verilyの共同創業者で最高科学責任者だったVik Bajaj(ヴィク・バジャジ)博士によって運営されている。

「過去数十年に、イノベーションサイクルはどんどん早くなってきました」とタナンバウム氏は話した。「ですので、公に本当に大きな勝利を収めている人々は『この真に大きな勝利はイノベーションと品質のサイエンスによってもたらされている。だから品質のサイエンスのもう少し上流の部門にいこう』とどこかの時点で話します」。

これは、テクノロジー全般の改善に支えられてヘルスケアプロダクトの開発サイクルがどんどん短くなっているのと相まっている、と同氏は付け加えた。同氏がForesiteを2011年に始めたとき、ヘルスケア投資のリターンの計画対象期間はかなり長く、ベンチャーエコノミクスの許容範囲を超えるものだった。しかしながら今では、ファンダメンタルな科学的進歩の場合でも一般的なテックスタートアップエコシステムにあるようなものにだいぶ近づいている。

Relay TherapeuticsのオフィスマネジャーStephanie Chandler(ステファニー・チャンドラー)氏が自社開発の新型コロナウイルス感染症検査の扱い方を新型コロナ検査室でデモンストレーションしているところ。2020年12月1日、マサチューセッツ州ケンブリッジ。がん治療開発会社である同社は手荷物部屋を従業員が週に1回検査を受ける部屋に変えた。定期的な検査導入の結果、100人超の従業員がオフィスに戻ってきた。RelayはForesiteのポートフォリオにある企業だ(画像クレジット:Jessica Rinaldi/The Boston Globe/Getty Images)

「基本的に、テック企業を見るのと同じようにバイオテックに目を向けている人々がいます。すぐには売上高にはつながらないかもしれないが、追って機能する中心となるマテリアルを与えるかもしれない浸透速度やその他のものについて、バイオテックに適用されるテックメトリックスがあります」

全体として、Foresiteの投資テーマは、臨床ステージの治療、自動化とデータ生成、そしてタナンバウム氏がいうところの「個人に合わせたケア」の3つのエリアの企業に出資することにフォーカスしている。これら3つはすべてテックに対応したヘルスケアのあるべき状態における連続体の一部で、究極的には「個人レベルで、自身の体質が病気になりそうな傾向にあることを理解できるようにする世界」となる。それはこの手の個人に合わせたケアが毎日のコンシューマーエクスペリエンスとなる、トランスフォーメーションだとタナンバウム氏は暗示した。以前スペシャリストの機能と能力だったテックが、一般の人々が広く利用できるようにしたのと同じだ。

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画像クレジット:Luis Alvarez / Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

海運業界の技術革新を支援する新ファンドMotion VenturesをRainmakingが起ち上げ

左からRainmakingの共同設立者Michael Pomerleau(マイケル・ポマーロー)氏、ディレクターShaun Hon(ショーン・ホン)氏、Wilhelmsenのオープンイノベーション担当副社長Nakul Malhotra(ナクル・マルホトラ)氏

シンガポール政府の支援を受け、海運業界の技術革新を支援する新しいファンドが発足した。Motion Ventures(モーション・ベンチャーズ)と呼ばれるこのファンドは、3000万SGD(約24億円)を目標としており、世界最大級の海事ネットワークを持つWilhelmsen(ウィルヘルムセン)と物流会社のHHLAがアンカー投資家として参加し、最初のクロージングを完了した。

Motion Venturesは、アクセラレータープログラム「Startupbootcamp」を運営するベンチャー構築・投資会社のRainmaking(レインメイキング)が起ち上げたもので、政府機関Enterprise Singapore(シンガポール企業庁)の投資部門であるSEEDS Capital(シーズ・キャピタル)と共同でスタートアップに投資する。

SEEDS Capitalは2020年6月、海運系スタートアップに5000万SGD(約40億円)を投資する計画を発表した。その目標は、より弾力性のあるサプライチェーンを構築し、新型コロナウイルス感染流行で強調された問題を修正することだ。

Motion Venturesのジェネラルパートナーで、RainmakingのディレクターでもあるShaun Hon(ショウン・ホン)氏がTechCrunchに語った話によると、同ファンドはAI、機械学習、自動化に注力している20社程度のアーリーステージのスタートアップに投資する計画で、投資額の規模は50万SGD(約4000万円)から200万SGD(約1億6000万円)の間であるとのこと。

「脱炭素化、サプライチェーンの回復力、安全性の向上など、我々は海事バリューチェーンにおける最大の課題のいくつかに目を向けています。ほとんどの場合、この業界の課題に対応する技術はすでに存在していますが、それらのソリューションを企業にどのように適用するかという工夫が欠けているのです」と、ホン氏はいう。

「Motion Venturesが目指しているのは、そこの対処です。業界で選出された者からなるコンソーシアムを結成し、プロセスの早い段階で起業家とつながることができれば、誰もが成功する可能性を最大限に高めることができます」。

Motion Venturesは、出資するだけでなく、Wilhelmsenのような老舗の海運会社と引き合わせ、スタートアップ企業の事業化とその技術をサプライチェーンに統合するための支援を行う計画だ。また、Motion Venturesのスタートアップは、Ocean Ventures Alliance(オーシャン・ベンチャーズ・アライアンス)からメンタリングを受けることもできる。Rainmakingが2020年11月に起ち上げたこのアライアンスには、現在40社以上の海事バリューチェーン業界のリーダーが参加している。

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タグ:Motion Venturesシンガポールベンチャーファンド海運業物流

画像クレジット:Rainmaking

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(文:Catherine Shu、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ベルリンのVC「MorphAIs」はアーリーステージファンドにAIアルゴリズムを活用する

MorphAIs(モーフ・エーアイズ)はベルリン発の新しいベンチャーキャピタル(VC)で、アーリーステージスタートアップへの投資判断にAIを活用することを特徴としている。ただし、1つ落とし穴がある。この会社はまだ出資したことがない。

会社を設立したEva-Valérie Gfrerer(エヴァ-ヴエレリー・グフレラー)氏は、以前フィンテックのスタートアップOptioPay(オプショペイ)でグロースマーケティングの責任者だった。行動科学と高度情報システムの経歴がある。

グフレラー氏は、MorphAIsをテック企業として立ち上げ、AIを使ってベンチャー投資を評価し、それをサービスとして販売していた。しかししばらくして、このプラットフォームを自家運用ファンドに適用できると気づき、資金集めの推進に使おうと考えた。

MorphAIは、複数の連続起業家からすでに資金提供を受けている。元Better PaymentとSumUpでFaugsterのCEOでファウンダーのMax Laemmle(マックス・レムリ)氏、元Groupon(CityDeal)とJP Moran ChaseでSumUpの共同ファウンダーであるMarc-Alexander Christ(マーク-アレクサンダーキリスト)氏、元GigasetとAOLのCEOでSmartFrogのCEOであるCharles Fraenkl(チャールズ・フレンクル)氏、およびawesome capital GroupのチェアマンファウンダーであるAndreas Winiarski(
アンドレアス・ウィニアスキー)氏などだ。

「ベンチャー資金を割り振るプロセスにはここ数十年間意味のあるイノベーションは起きていません。私たちは一連のプロセスを再発明し、業界が資金を精密に割り当て、バイエスを減らし、よりインクルーシブなスタートアップエコシステムに向かう後押しをしています」と彼女はいう。

彼女は、アーリーステージ向けVCファンドの80%以上は最低限期待されているリターンを投資家に戻していないと指摘する。それは真実だが、そもそもVC業界は多額の金銭を放り出すように作られており、その損失を全部帳消しにするような勝者を見つけることに望みをかけている。

現在、彼女はプレシード / シードファンドを計画中で、機械学習の専門家や数学者、行動科学者らからなるチームを擁して、MorphAIsのモデルは市場データに基づくリアルタイムの予測をした結果、16倍の利益率を得ているとしている。

グフレラー氏の共同ファウンダーでCTOのJan Saputra Müller(ヤン・サプトラ・ミュラー)氏は、askby.aiを含めいくつかの機械学習企業でCTOを務めた。

1つ問題がある。グフレラー氏のアプローチは独自ではない。例えば英国、ロンドン拠点のInReach Venturesはデータを用いてスタートアップを発掘することで大きな実績を挙げている。そして欧州のその他のVCも、多かれ少なかれ同じようなことをしている。

果たしてグフレラー氏は何か目覚ましい結果を出せるのか?それは今後を見据えるしかなさそうだ。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:MorphAIsドイツ

画像クレジット:MorphAIs

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nob Takahashi / facebook

SPACへの資金殺到が続く中、「市場はいつまで吸収できるのか」との疑問の声高まる

最近テクノロジー市場ではビッグニュースが続いたが、SPAC(特別買収目的会社)による上場方式は依然注目を集めている。SPACは資金を募って企業を設立、上場した後に未公開企業を買収し、結果的にそのスタートアップの上場を図る手法だ。事業目的を特定しないためSPACは白地小切手会社とも呼ばれる。一部の関係者はこの仕組に懐疑的になり始めているが、いわば「パーティーは始まったばかり」で会場には客が次々に詰めかけておりバンドは大音量で演奏している状態だ。なるほどパーティーはこれからますます盛り上がるのかもしれないが、誰かが部屋の隅でゲロ吐いているのではないか?

SPACがブームなのは確かだ。Facebookの(なにかと物議をかもした)共同ファウンダー、エドゥアルド・サベリン(Eduardo Saverin)氏が共同ファウンダーのベンチャーキャピタル、BCapitalは、SPACのための3億ドル(318億円)のSPACの上場を申請した。

フィンテック起業家のMike CagneyはSoFIのファウンダーで、最近ではホームエクイティとブロックチェーンの両方の分野にまたがるフィンテック企業、Figureを創立しているが、SPACのために2億5000万ドル(265億円)の資金を調達している。 マイケル・デルでさえ家族資産管理会社をつうじてSPACのために5億ドル(532億円)を調達することを発表した。

Renaissance Capitalよれば、最近16のSPAC企業が総額34億ドル(3600億円)を調達したという。上場にはSPACを利用したというパイプラインを通じて厖大ないキャッシュが流れこみ続けており、45のSPACが上場を申請している(従来方式の上場申請は10件だ)。 Yahoo Newsは「一部のSPAC投資家は火傷する可能性がある」という記事を載せていたが、理由があることだ。

INSEADのアシスタント・プロフェッサー、Ivana Naumovska(イバナ・ナウモフスカ)氏は、ハーバードビジネスレビューで「SPACバブルは間もなく崩壊する」と論じている。

Naumovska氏は「ある手法を採用するケースが増えれば増えるほど注目の度合いが高まり、正当化も進む。これによりその手法がますます普及することを示す研究がある」と指摘した。 しかし、一部の人が主張するようにSPACが問題ある手法なら、広く使用されるようになるにつれて外部の懸念と懐疑論も高ままる可能性もある。 つまりYahoo Financeの記事が生まれることになる。

重要だし、また納得できる点は、ネガティブな評価を受けてきた企業についてのSPAC上場の数が増えるにつれ懐疑的記事が増えてきたことだ。メディアがこうした逆買収による上場に注目すると同時に、規制当局も注目し、投資家、規制当局、メディアが互いにシグナルを送り合えばいかに盛大なパーティーでも急停止を余儀なくされる。

統計をとったわけではないが、現在のSPACに関する報道のほとんどは中立的だ。今のところ強く批判すべき状況にはなく、 たとえ記者個人がSPACに懐疑的であっても、電気トラックのスタートアップのNikolaニコラが詐欺で告発されたなどの例外的な場合を除いて、最終的な判断は保留している。

過去6か月間に資金調達を行ったSPACの多くは、特定の目標を発表していないため判断の材料がない(SPACSは、資金を調達してから目標とする買収を実行するまで2年の猶予がある。スタートアップの上場ができなかった場合は調達した資金は投資家に変換される)。

SPACの必要性を主張する議論は、企業評価額が10億ドルを超えるいわゆるユニコーン企業の多くは株式上場に適しているとする。これは非公開企業の市場に巨額の資金が流れこみきわめて肥大化していることを反映している。

一方、 2019年に上場された際、SPACブームの火付け役となった宇宙観光旅行企業、Virgin Galactなどの逆買収による上場は批判者の予想のような結果にはならなかった。

サー・リチャード・ブランソンは、2004年に低軌道を飛行して乗客に宇宙観光を体験させるためのスタートアップを設立し昨年SPAC経由で上場を果たした。しかしロケット動力による成層圏をわずかに超える弾道飛行の実行は、先週も含めて、何度も延期された。しかし1月以降、2倍以上になった同社の株価は、いわば成層圏上部にとどまっている。発表された決算によれば昨年の収入は事実上ゼロだったが時価総額は現在120億ドル(1.27兆円)だ。

もっとも他のSPACはそれほどうまくいっていない。健康保険のClover Healthは著名投資家、Chamath Palihapitiya(チャマス・パリハピティヤ)が組織したSPACを通じて、 Virgin Galactとほぼ同様の仕組みで上場された。しかしForbsの綿密な調査報道によれば「事業の存続を脅かすいくつもの脅威」に直面しているという。

同社に対する調査行っているのは司法省、証券取引委員会(SEC)。また空売りを専門とするHindenburg ResearchはCloverが投資家を誤解させるような発表を行ったとして非難している。これに対してCloverは反論しているもの、Forbesの報道によれば、Cloverは株式公開に先立って司法省の調査を受けていることを公表しなかったとして少なくとも三つの集団訴訟に直面している)。

SPAC懐疑派の Steve Jurvetson(スティーブ・ジャーベットソン)氏は先月、私(この記事の筆者)との会話で「(SPAC狂騒曲は)まったく理解できないね」と言っていた。Jurvetson氏は著名なベテランのベンチャーキャピタリストであり、SpaceXの取締役でもあるが、「SPACで上場した中にも良い会社はある。誤解しないでもらいたいがSPACがすべて詐欺だとは言っていない」とかたった。だがSPACを利用するのはアーリーステージのスタートアップであり、SECが株式上場で要求する安定した事業見通しという要件を満たすことができない。つまりSPACは出資者にとって事業見通しを示さないでスタートアップを上場させる抜け道になっている。「事業目的を示さないSPACならそれができるる…そういう怪しげな仕組みに利用されている」のだJurvetson氏は指摘した。

Jurvetson氏と同じことを考えているベンチャー・キャピタリストもいるだろうが、今のところ公に言うことを躊躇している。一つにはベンチャー・キャピタリストというものはSPAC経由を含め、どんな方法であろうとポートフォリオ企業を上場させたたるものだからだ。今のところ自分でSPACを創立していなくとも、将来そうする考権利は保留したいだろう。

ニューヨークのBoldstart VenturesのEd Sim (エド・シム)氏は、ここ数ヶ月ではっきり意見を言った数少ないVCの一人だ。質問に対してSim氏は「正直言ってSPACには全く興味がありません。2年後に私やlBoldstartがSPACと関わっているのを見た文句言ってください」と笑った。

多くの投資家は、SPACに関し重要なのは「誰が何を上場させようとしているのか」という個別ケースだと強調している。ディズニーの元幹部でTikTokのCEOとして知られているKevin Mayer(ケビン・メイヤー)がそうだ。 昨日の電話で話したが、Mayer氏は「10年前に比べて現在は企業上場ははるかに少ない。だから上場のための別の方法を提供する必要があります」と述べた。

Mayer氏はSPACに強い利害関係を持っている。 最近、ディズニーで元同僚だったTom Staggs(トム・スタッグス)氏とともに、2社目のSPAC利用上場計画を発表した。2月初めに最初のSPACを使用してデジタル・フィットネスに特化したBeachbodyの新規上場を発表している。ただしMayer氏はすべてのSPACを同じ基準で判断すべきでいないとも主張している。

「これはひどい。ネコもシャクシもSPACに殺到している。この分ではすぐに…風がモミガラを吹き飛ばし、それぞれのケースの真価がわかることnなるんではないか?」といいうところだ。

未公開企業を上場させる引き込む永続的な方法になるにはSPACはさまざまなハードルを乗り越える必要があるだろう。

SPACは熱狂的な支持者を獲得しているが、次第に明らかになっきつつある数字は楽観を許さない。

たとえば先週、法律問題の専門メディア、Bloomberg Lawは、2019年1月1日以降のSPACとの合併による企業上場についての分析を発表した(合併1か月の後までのパフォーマンスデータも利用可能だ )。これによれば、24社中14社が合併完了後1か月の時点で企業価値が下落しており、企業の3分の対前年比で価値の下落を見せている。

「スタートアップの合併後にSPACへの投資家が起こした訴訟の数も増加している」とBloomberg Lawは指摘している。

ともあれSPACが現在作り出されている速度は驚くべきものだ。多くの人々が「いつまで続くのだ?」と考え始めたのは自然だろう。

しかしNaumovska氏はすでにはっきりした予測を抱いているようだ

画像:Axelle/Bauer-Griffin/FilmMagic / Getty Images

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(文:Connie Loizos 翻訳:滑川海彦@Facebook

新型コロナに対抗する投資家たち、ポルトガル投資家にインタビュー(後編)

(日本版編集部注)本稿は日本と同じく新型コロナの脅威にさらされているポルトガルの投資家へのインタビュー内容をまとめた記事だ。記事の前段と5人の投資家へのインタビューは前編に掲載したので、そちらをご覧いただきたい。

ーーー

後編では以下の投資家へのインタビュー回答を掲載する。

マスタード・シード・メイズの共同経営者、アントニオ・ミゲル氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

シェアリングエコノミー(レンタルソリューションなど、循環性との関連が高い)、高齢者ケア、技能開発(ポストコロナの大規模な再教育)、フェムテックです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

フェムテック事業への投資です。投資先のフェムテック事業は、月経のある人に質の高い生理用品を提供し、テクノロジーを活用したプラットフォームを使用して月経期間中においてあらゆる面からサポートすることを目的としています。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

高齢者ケアは、何年もの間話題となっているにもかかわらず、混乱のときを迎えています。女性の健康に関する特定のトピック(更年期など)についても、もっと取り上げてほしいと思います。また、人々が今、意味のあるつながりをこれまで以上に求めていることを考えると、eコマースの環境フットプリントやオンラインからオフラインへの移行ソリューションといった分野の可能性が見過ごされていると思います。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

社会的・環境的インパクトの創出が売上の原動力であるべきという信念に基づいて、厳密にインパクトベースで判断しています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

持続可能な消費をサポートするアプリ、個人の二酸化炭素排出量を把握する技術、アーバンモビリティです。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

地元のエコシステムに50%、ヨーロッパ全域(EU加盟国および非EU加盟国)に50%です。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

大きな収益が十分に見込めるのは、 ブルーエコノミー関連ベンチャー、高齢者ケア関連ベンチャー、フードテックです。それほど収益が見込めないのは、 消費者向けビジネスです。期待している企業は、 Hopin(ホピン)、スチューデント・ファイナンスです。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ポルトガルは、優れた人材を低コストで見つけるのに絶好の場所であり、その規模、製品と市場の距離の近さ(すばやくフィードバックを得て製品に反映できる)、ユーザーの洗練度を考えると、ヨーロッパ企業にとって最初のセカンド市場とするのに絶好の場所です。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

間違いなくそうなる思います。 リスボンを例として挙げます。パンデミックの結果としてイギリスやドイツ、フランス、米国を離れ、リスボンに移住する創業者や投資家について毎週耳にしています。地元のエコシステムはかつてないほど国際的で多様になっています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

当社の戦略への影響はわずかです。当社の戦略は、社会問題や環境問題を解決しながら利益を上げていく企業が最終的に大きな成功を収める、という信念に主眼を置いて立てています。新型コロナウイルス感染症はそのような企業の必要性を裏付けているに過ぎません。影響があるとすれば、当社では、2020年の第2四半期と第3四半期の資金調達の性質を考慮し、通常より早期投資を増やしたことぐらいです。

TC:創業者の悩みは、不確実な時代の中での資金調達です。現在の資金調達能力は、時間的制約のあるトレンド(流通チャネルとしてのD2Cの復活など)の中で、将来どれほどの資金を獲得できるかを示すものです。

アドバイスとしては、何よりもまず行動することです。 特に上顧客、パートナー、投資家などのステークホルダーの管理を強化してください。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい、回復傾向にあります。そう言えるのはとりわけ当社が、社会的・環境的課題を解決することで収益を上げている企業のみを対象に投資しているからです。結果として、パンデミック中やパンデミック後には、これらの企業のソリューションに対する需要が高まっています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

Michael Seibel(マイケル・セイベル)氏の話を聞くと、社会貢献型投資は前回のYCバッチで見られた最大のトレンドだそうです。

インパクト・ナウ・キャピタルの共同経営者、ハイメ・パロディ・バルドン氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

私たちはインパクト投資とソーシャルイノベーションにフォーカスしています。 国連2030年持続可能な開発目標(SDGs)の中心となる課題に取り組むスタートアップです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

現在、最初のVCファンドの組成を行っており、2021年初頭には稼働する予定でいます。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

私たちは、ビジネス、インパクト、テクノロジーの交わるところに、ほどなくして必ず発展が起きると心待ちにしています。新興分野であるインパクトテックは、そうした発展の原動力となる可能性を秘めています。 今はまだ未熟な分野ですが、起業家や投資家の間で急速に認知度と評価が高まっています。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

私たちは、国連のSDGsアジェンダの中核にある問題を解決するための方法としてテクノロジーを開発しているスタートアップや、ソリューションの規模を迅速に拡大するための経路としてテクノロジーを活用しているスタートアップを探しています。こういったスタートアップは、収益を上げると同時に、社会的および環境的インパクトを生み出す必要があります。個人的には、AIやブロックチェーンがそうしたスタートアップの促進力なってくれることを期待しています。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

インパクトの分野にはまだまだ成長の余地が残されています。 地域に根差した取り組みの多くは持続可能ではなく、拡張の余地もありません。 そうした取り組みの事業化を(製品やサービスを通じて)専門的に行い、持続可能な(そして収益性のある)ものにすること、テクノロジーを取り入れて拡張可能なものにすることが求められています。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

イベリア(地元のエコシステムであるポルトガル、そしてスペインを含む)に50%、ヨーロッパとCPLP(ポルトガル語諸国共同体)に合わせて50%を投資することを予定しています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

ポルトガル政府は、ソーシャルイノベーションファンド(SIF)を通じて、社会革新を支援し、インパクトエコノミーを促進しています。 現在、ヘルスケアと福祉(SDG目標3)、教育(SDG目標4)、クリーンエネルギー(SDG目標7)、持続可能な都市とコミュニティ(SDG目標11)などの分野で大きな発展が見られます。また、責任ある消費と生産、気候変動対策、不平等の削減など、他の分野でも素晴らしい取り組みが行われています。 それでも、社会的・環境的な必要性を満たすにはまだまだ不十分です。 私たちは緊急感を持ち、これらの課題に手遅れになる前に取り組まなかった場合、どれだけ深刻な結果につながるかということを理解する必要があります。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

リスボンにはエキサイティングなスタートアップのエコシステムがあります。 他国の投資家はそのことに気づいており、この都市、そしてそのエコシステムと良好な関係を維持しています。 リスボンではウェブサミットを筆頭とした起業家や投資家向けの重要イベントが開催されています。 さらにソーシャルイノベーションファンドは、外国人投資家がポルトガルの影響力のあるスタートアップに投資する機会を生み出しています。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

パンデミックの間にリモートワークツールの導入が増えたことで、もともとあったリモートワークへの移行トレンドが加速しただけです。 リスボンはすでに起業家やデジタルノマド(ポルトガルのスタートアップで働く人だけでなく、海外のスタートアップで働く人も含む)のハブとなっていました。バーチャルコミュニティが広まる一方で、現在スタートアップのハブとして機能する大都市からは人々が流出していく可能性があります。

それにより、VC業界は大都市にこだわらず、投資範囲を広げていくことになるでしょう。 しかし私の考えでは、人と人との触れ合いは非常に重要で、物理的なイベントはコミュニティを作るうえで大きな役割を果たしているため、そういったイベントが再開されれば、すぐに人が集まってくると思います。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

今回のパンデミックにより、国連のSDGsアジェンダにすでに存在する課題のいくつかが、さらに大きくなりました。 新型コロナウイルス感染症の世界的な流行は、健康への壊滅的な被害を及ぼしたことは明らかですが、これまでの不平等を削減する取り組みの弱点を表面化させることにもなりました。またパンデミックによって、人間性の概念を再考する動きが起こり、人々にとって良いきっかけが生まれています。こうした動きの中では、コアバリュー、人々の連帯意識、グローバルな協調について盛んに取り上げられ、これらすべてを促進するうえでデジタルトランスフォーメーションとデジタルアダプションが活用されています。

国連のSDGsアジェンダは絶対に取り組まなければいけないものです。選択の余地はありません。スタートアップが中長期的に成功する大きなチャンスをつかむには、 SDGsの中核となる課題のいずれかに対処するために、収益性があり、拡張可能なビジネスモデルを実現する必要があります。短期的には、新型コロナウイルス感染症そのものに関連する問題の解決に焦点を当てた、限定的なミッションを遂行する一方、将来に向けてより広い視野を持ち続けるスタートアップが、急速な成長を見せるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

新型コロナウイルス感染症は、国連がすでに提起している問題の解決に向けて、これまで以上に緊急感をもたらしました。当社の投資戦略は変わっておらず、現在の状況を考慮してより一層強化しました。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

当社の投資先企業はまだ公開していませんので、この質問に十分にお答えすることはできません。 これまで私たちが見てきたところでは、先ほど述べたデジタルトランスフォーメーションやデジタルアダプションのおかげで、新規市場の創出と既存市場の拡大が見られます。 また、消費者の社会的・環境的課題に対する意識の高まりと、消費者の購買行動に対する責任感が合わさって、画期的な収益源が新たに生まれています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

ありきたりな表現になってしまうかもしれませんが、最近我が家に女の子が産まれたことで、より良い未来を築くためのエネルギーをたくさんもらっています。

インディコ・キャピタル・パートナーズの共同経営者、ステファン・モライス氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

SaaSソリューション、AIアプリケーション、デジタルヘルス、データ収益化、IoT SaaSプラットフォーム、人工生物学、マーケットプレイスです。

TC:最近、一番エキサイティングだと感じた投資はどの案件ですか。

ニュートリアムは、栄養管理を受ける80万人のユーザーにサービスを提供するデジタルヘルスプラットフォームです。このプラットフォームは、栄養士と患者を結びつけて、診察予約も管理できるようにし、その他ウェルネスデータ、製品、サプリメントなどに関してもサービスを提供することを目的としています。

TC:特定の業界で見てみたいと思っているものの、まだ登場していないスタートアップはありますか。今、見過ごされているチャンスは何かありますか。

デジタル化すべき伝統的な分野や産業がまだまだ多くあります。 AIの導入はほとんどの産業で初期段階にあるため、デジタイゼーションというこれまでずっと存在してきた、大きな可能性に対処する必要があります。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

私たちは、実際に優れたリーダーやCEOになることができる、卓越した創業者を探しています。ビジョンを持ち、市場機会を活用でき、そして、成功事例を生み出すうえで、避けては通れない障害を突破するために必要な粘り強さを持っている、そういう人です。さらに、高い技術力を持ったチームも必要です。

TC:新しいスタートアップにとって、現時点で飽和状態にある分野、あるいは競争が難しい分野は何ですか。投資するのに慎重になる、または懸念材料がある製品やサービスはありますか。

フードデリバリー、中小企業やスタートアップ向けのeコマースとSaaSの大半です。 広告分野の飽和状態や競合を考えると、ビジネスを軌道に乗せるために広告に依存するすべての分野が困難に直面しています。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

私たちは100%ポルトガルとスペインのみに投資しています。

TC:現在の投資先に含まれているかどうかに関わらず、御社の都市や地域で、長期的に大きな収益が見込める業種と、そうでない業種は何ですか。また、どの企業に期待していますか。有望だと思う創業者は誰ですか。

B2BのSaaS企業では、 アンバベル、InnovationCast(イノベーション・キャスト)、Infraspeak(インフラスピーク)、Onalytics(オナリティクス)。

AIおよびディープテックでは、 フィードザイ、Smartex(スマーテクス)、Cleverly.ai(クレバリー・エーアイ)、Sound Particles(サウンド・パーティクルズ)。

デジタルヘルスでは、 ニュートリアム、ゼンクラブ、スウォードヘルス、トニックアプ。

フィンテックでは、 スチューデント・ファイナンス、Switch Payments(スウィッチ・ペイメンツ)。

コンシューマーでは、 バーキン、EatTasty(イート・テイスティ)、PleasyPlay(プリージー・プレイ)。

伝統産業のデジタライゼーションでは、 BitCliq(ビットクリック)、ApisTech(アピステック)。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

ポルトガルのエコシステムにはまだ発展の余地があります。 ほとんどの投資機会は初期段階にあり、100万ユーロ(約1億2600万円)以下のラウンドが大半を占めています。 外国人投資家は早い段階で地元の企業と提携すべきです。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

ポルトガルは過去数年の間に海外企業を非常に惹きつけてきており、それらの企業は現地法人を設立し、高い技術力を持った現地の人材を活用しています。またポルトガルの安全性とライフスタイルは、ノマドやリモートワーカー、そして家族と一緒にここに移住したいと考えている上級管理職の人々にとっても魅力的な要素です。 リモートワークをする人が増えるにつれ、ポルトガルには一層、テックワーカーやスタートアップが集まると予想されています。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

旅行、ホスピタリティ、航空など一部の業界は明らかに苦境に陥っており、これらの分野に取り組む当社の投資先企業の一部も影響を受けています。 こうした状況は、今後数か月続くと予想しています。
一方で、オンライン配信、プロセスの自動化、チーム内の情報共有とコミュニケーションといったサービスを提供する分野が急成長しています。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

私たちはこの数か月間、来年に向けて投資先企業に十分なランウェイがあるかどうかを確認することに重点的に取り組みました。 資金が何よりも重要であることはわかっていますが、企業は今あるチャンスを利用して、自分たちのビジョンを実行していくことと、資金を確保することの間でバランスを取る必要があります。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

もちろんイエスです。 一部の分野では、社会の機能と企業の生産性を維持するうえで、テクノロジーが不可欠な要素になっています。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

米国で成功している企業はヨーロッパの創業者が設立したものが多く、中には母国に戻ってきている企業もあります。こうした企業は、非常に良い影響をもたらすでしょう! これから数年の間にヨーロッパから面白い企業が数多く出てくるでしょう。

ポルトガル・ゲートウェイのマネージングパートナー、ギャビン・ゴールドブラット氏

TC:概して、どのようなトレンドに投資するときが、一番ワクワクしますか。

エネルギーとフィンテック、特にモバイルマネー関連です。

TC:次の投資を判断する際に、通常検討することは何ですか。

国際展開の可能性を秘めた、実績のある経営陣と製品であるかどうかです。

TC:概して、地元のエコシステムへの投資が占める割合は、他のスタートアップハブ(または他の場所)と比べて、50%を超えていますか。それとも、50%未満ですか。

50%未満です。

TC:他の都市の投資家は、御社が拠点とする都市の全体的な投資環境とチャンスについてどのように考えるべきでしょうか。

リスボンは素晴らしいワークライフバランス、起業コストや生活費の安さに加え、スキルを持った人材の供給も充実しています。 ですから、新型コロナウイルス感染症がきっかけで、最近、企業が利点のそれほどない場所をベースにしたスタートアップハブから離れる動きがありますが、そうした動きも良い結果につながる可能性があります。

TC:パンデミックや長引く先行きの不安によりスタートアップハブが人手不足に陥っていることに加え、リモートワークが注目されています。今後、大都市以外の地域で起業する創業者が急増すると予想していますか。

はい。

TC:御社の投資先のうち、コロナ禍による消費者やビジネス行動の潜在的な変化への対応に苦慮すると予想される業界セグメントはどこですか。また、そのような変化の影響を他より強く受けると思われる業界セグメントはどこですか。このような前例のない時代にスタートアップが活用できるチャンスとは何でしょうか。

まだ判断を下すには早すぎます。 観光や多くのサービス業は明らかにマイナスの影響を受けていますが、ワクチンの供給完了後に状況が改善し、繰延需要が解放されれば、これらの分野においてさえも、イノベーターは混乱した状況から生まれるチャンスを利用して事業を首尾よく展開していけるでしょう。

TC:新型コロナウイルス感染症は投資戦略にどのような影響を与えましたか。御社が投資するスタートアップ創業者の最大の悩みは何ですか。今、御社が投資するスタートアップにアドバイスをお願いします。

驚くべきことに、大きな可能性が生まれており、純利益は投資先企業すべてでプラスとなっています。混乱と変化はチャンスをもたらします。

TC:御社の投資先のうちパンデミックに適応してきた企業では、収益の成長や維持、その他の機運に関して「回復の兆し」が見えてきたでしょうか。

はい。

TC:この1か月ほどの間に希望を感じた瞬間はありましたか。仕事上のことでも、個人的なことでも、あるいはその両方が関係していることでも構いません。

今年の投資がすべて、予算に見合う以上の結果を出し、期待を上回っていることです。

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(文:Mike Butcher、翻訳:Dragonfly)