投資家たちはパンデミックをどのように評価しているのか

スタートアップとマーケットの週刊ニュースレター「The TechCrunch Exchange」へようこそ。準備OK?ここではお金の話、スタートアップの話、IPOの噂話などをお伝えする。

ちょっとした近況報告から始めよう。Equityはより多くのことを提供するようになる。そして、TechCrunchは現在JusticeEarly-Stageイベントの開催を計画中だ。私は後者のためにZoomのCROにインタビューを行っている。また、このThe Exchange自体でも、来週には懸案の内容をお届けする予定だ。たとえば5000万ドル(約53億3000万円)と1億ドル(約106億6000万円)の年間経常収益(ARR)を達成した企業の話(Druva[ドゥルーバ]など)、消費ベースの価格設定と従来のSaaSモデルの比較(Fastly[ファストリー]、Appian[アピアン]、BigCommerce[ビッグコマース]のCEOたちが登場)などだ。ふう。

今週はDoorDash(ドアダッシュ)とAirbnb(エアビーアンドビー)の両社が上場企業として初めて収益を報告し、エグジットを果たしたユニコーンたちへの真の仲間入りを果たした。私たちは、いつものようにひっそりと収益サイクルに目を光らせているが、今回はスタートアップの世界に向けてお話ししたい、いくつかの学びがある。

いくつかの基本的なことから始めてみよう。第4四半期におけるDoorDashの売上高は、予想されていた9億3800万ドル(約999億5000万円)に対して9億7000万ドル(約1033億6000万円)となり、予想を上回る成長結果となった。この2つの数字のギャップは、部分的にはDoorDash株の新しさと、パンデミックの影響で予測が難しくなっていることに起因しているのだろう。飛躍的な成長にもかかわらず、DoorDashの株式は、業績報告の発表後にまず急落したが、米国時間2月26日金曜日には大きく回復した。

なぜ初めに下落したのだろうか?おそらく公開後最初の四半期における(GAAPによる)赤字が、大きなものになることは一般的なこととはいえ、投資家が予想していた数字よりも、同社の純損失が大きかったことが下落の原因ではないだろうか、その懸念が、業績報告会における同社のCFOからの「第4四半期と同様に1月にも12月に比べて注文量の成長が加速しています」という発表によって和らげられたのだろう。それは安心材料だ。一方で、同社のCFOは「第2四半期以降、顧客の中には、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)以前の行動への回帰が見られるようになるでしょう」と述べている。

要点:大企業たちは、新型コロナウイルス流行以前の行動が復活することを期待しているが、まだまだそれには遠い。新型コロナの恩恵を受けた企業たちは、現在厳しい吟味を受けている。そして、2021年さらに進んでいくにつれて、その追い風は徐々に弱まっていくだろうと彼ら自身も考えている。

そこで目に入るのがAirbnbだ。同社の株は週末前には16%ほど上昇している。何故かって?Airbnbは売り上げの予想値を上回った一方で、大金も失っている。Airbnbの2020年第4四半期の純損失はDoorDashの10倍以上の額だ。ではなぜ、DoorDashが沈んだのに、Airbnbが上昇したのだろうか?収益が予想を大きく上回った(予想されていた7億4800万ドル[約797億1000万円]ではなく、8億5900万ドル[約915億4000万円]だった)こと、そして将来の成長の可能性がその要因だ。投資家たちはAirbnbの現在の期待を上回る成長が、将来にのさらなる成長につながると期待しているのだ。

要点: 将来の成長についてしっかりとしたストーリーを持っていれば、投資家は大幅な損失を受け入れてくれるだろう。成長が続くなら、企業がすでに成長していたとしても、一層厳しくなる吟味を乗り越えられるだろう。

スタートアップたちにとって、評価額に対する重圧や浮力は、結局企業がパンデミックのどちら側にいるかにかかっているのかもしれない。すなわちその追い風に乗る側なのか(たとえばリモートワークに注力するSaaSとか?)、もしくは逆風を受ける側なのか(たとえばレストランテックとか?)。調達をする前に良く検討すべきものがあるのだ。

マーケットノート

資金調達ラウンドで熱い1週間だった。私が以前ジャーナリストとして在籍していたCrunchbase Newsは、2021年これまでに、どれだけの大規模なラウンドが行われたのかについてすばらしい記事を残してくれた。しかし、規模的には一歩も二歩も下がったレベルでも、資金調達活動は超多忙だった。

先週、カバーすることはできなかったが、私の目を引いたいくつかのラウンドには、Terminus(ターミナス)の9000万ドル(約95億9000万円)のラウンド(ABM、Account Based Marketingに特化したGTM、Go To Markertサービス企業だと思う)、Anchorage(アンカレッジ)の8000万ドル(約85億2000万円)のシリーズC(大金を扱うための仮想通貨ストレージ)、Foxtrot Market(フォクストロット・マーケット)の4200万ドル(約44億8000万円)のシリーズB(ヤッピーとズーマー向けの必需品の迅速な配送)などがある。

今ここに座って、ようやくそれぞれのことを少し書いているが、技術市場の広さを思い知らされている。Terminusは他の企業の販売を支援し、Anchorageは顧客のETH(イーサリアム)を安全に保存したいと考えており、Foxtrotは顧客が飲み物のない朝に困らないようにすばやくロゼワインを補充したいと思っている。驚くべき多様性だ。そしてそれぞれがVCに受け容れられるような成長をしていなければならない。単により多額の資金を調達するだけではなく、自身の成熟のためのより大きなラウンドを行うのだ(それはシリーズのステージによって測られるが、ラウンドの呼称は目安になるよりも、目くらましになる可能性がある)。

私は当ニュースレターのこの小さなセクションを冗談でマーケットノートと呼んでいるが、実際気になるマーケット全体のノートを書くことなんて可能だろうか?上の企業たちと最近の資本注入は、この点を改めて認識させてくれる。

その他のことなど

最後に、決算説明会からの覚え書きを2つ紹介する。1つ目は不可解なRoot(ルート)について、2つ目はBooking Holdings(ブッキングホールディングス)についてだ。

私はRoot Insurance(ルート・インシュアランス)のCEOであるAlex Timm(アレックス・ティム)氏と決算発表後に話をした。私はその結果に対する投資家の反応という意味ではあまり情報を持っていなかった。私は、Rootは多額の資金を持ち、かなり大規模な拡大計画を持っていると理解した。ティム氏は、会社の経営状況の改善(損失率と損失調整後の経費ベース、保険テックファンについて)と、パンデミック中の成長について陽気に語った。

しかしその後、その株式は16%下落している。アナリストの分析を読み解くと、Rootの経済的プロファイルに動きがあり(次の四半期における再保険料の変動に関して)、私の立場からは通年の成長を完全に把握することは難しい。しかし、Rootのビジネスは、いまでも脱皮と言っていいほどの変容を続けているようにみえる。同社は現在のような進化を続けて2022年に公開を行うこともできたかもしれない、だがそうする代わりに、同社は2020年途方もない額を調達して公開を果たした。

少し見渡してみると、似たような新しい保険プレイヤーであるLemonade(レモネード)の印象的な評価額は継続しているものの、MetroMile(メトロマイル)の株価も軟化しており、Rootの株価はIPOの時点から半分以下になっている。現在のような、一部の新しい保険プレイヤーの価格調整が続けば、このスペースへの民間投資の動きが鈍化する可能性がある。(このようなものが少なくなるのだろうか?) 2021年はこの傾向に注目したいところだ。

次は、Priceline(プライスライン)などの旅行会社を所有するBooking Holdings(ブッキング・ホールディングス)だ。Bookingが、ビジネス旅行の将来に関する手がかりを持っている可能性があることを考えて(私たちはリモートワークやオフィス文化がどうなるのかの手がかりや、スタートアップハブの場所からソフトウェアの販売までのすべてに影響を与えるものを気にかけている)、The Exchangeは即座に同社へ電話してみることにした。

Booking HoldingsのGlenn Fogel(グレン・フォーゲル)CEOは、前年に比べて大幅な減収だったにもかかわらず、同社が史上最高値で取引されていることについてコメントをしなかった。彼は、パンデミックが会話へ期待するものを再構成し、現在はビデオ通話で行われているような、会議のための短期出張が、将来も抑制される可能性があることに言及した。彼は将来のカンファレンスのための旅行や将来の旅行全般については強気だった(TechCrunchにとっては良いニュースだと思う)。

旅行という観点からは、まだ何もわかっていない。Booking Holdingsが多くを語らないのは、いつ事態が好転するかわからないからかもしれない。無理もない。おそらく、あと3カ月ほどワクチンが展開されれば、オールドノーマルへの部分的な復帰がどのようなものになるかを、もう少しはっきりと垣間見ることができるようになるだろう。

最後に、Apex Holdings(エイペックス・ホールディングス)のSPAC(特別買収目的会社)プレゼンテーションはこちらで、Markforged(マークフォージド)のプレゼンテーションはこちらで読むことができる。また、こちらでは先渡し後払い(BNPL、buy-now-pay-later)のビジネスについて書き、こちらでははRon Miller記者とDigital Ocean(デジタル・オーシャン)のIPOについて書き、そしてこちらではToast(トースト)の評価額とOlo(オロ)の公開について簡単に書いている

ではまた。

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:The TechCrunch Exchange

画像クレジット:Nigel Sussman

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:sako)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。