宇宙飛行士の作業をロボットで代替し作業コスト100分の1以下へ、GITAIが約4.5億円調達

1時間で約500万円(5万ドル)——。これは1人の宇宙飛行士が1時間宇宙で作業を行う際に発生すると言われているおおよそのコストだ。

ここ数年、世界的に宇宙開発の競争が加熱するに伴い宇宙での作業ニーズが高まっている。国際宇宙ステーション(ISS)の商業化が検討されているほか、米国民間企業を中心に宇宙ホテルや商用宇宙ステーションの建設が進められていることからも、今後さらにその需要は急増していく可能性が高い。

その際にネックになるのが冒頭でも触れた宇宙飛行士のコストや安全面のリスク。今回はこの課題に対して「地上から遠隔操作できる宇宙用作業代替ロボット」というアプローチによって作業コストを100分の1に下げる挑戦をしているスタートアップ・GITAIを紹介したい。

同社は8月20日、Spiral Ventures Japan、DBJ Capital、J-Power、500 Startups Japan(現Coral Capital)より総額で410万ドル(約4億5千万円)の資金調達を実施したことを明らかにした。

GITAIは2016年9月にエンジェルラウンドでSkyland Venturesから約1500万円、2017年12月にシードラウンドでANRIと500 Startups Japanから約1.4億円を調達していて、今回はそれに続くシリーズAラウンドという位置付け。

調達した資金はGITAIロボットの開発費用として活用するほか、2020年末に予定するISSへの実証実験機の打ち上げ費用に使う計画だ。

なお本ラウンドは6月末に実施したものであり、GITAI創業者兼CEOの中ノ瀬翔氏によると年内を目処に追加調達も検討しているとのこと。その場合はトータルで最大10億円規模となる見込みだという。

宇宙飛行士の「運用メンテナンス」の多くは代替できる

GITAIはユーザーがVR端末やグリップを装着することで、離れた場所にあるロボット(アバター)を自分の身体のように制御できる「テレプレゼンスロボット」を開発するスタートアップだ。

360度カメラを搭載したロボットの視界がディスプレイ越しに共有されるほか、ロボットの腕の動きや触覚の一部もグリップを通じて共有することが可能。前回「フレームレートと解像度を維持しながらユーザーとロボット感の遅延を抑える低遅延通信技術」を1つの特徴と紹介したが、最新の6号機ではそれに加えてデータ削減・圧縮技術や負荷低減技術を始め、専門性の高いメンバーが各分野の技術を結集させた高性能なロボットとしてパワーアップしている。

宇宙ステーションの限定的なネットワーク環境を前提に、スイッチ操作や工具操作、柔軟物操作など従来のロボットでは難しかった汎用的な作業を1台のロボットで実施できるレベルに至っているそう。このロボットをまずはISSへと送り込み、地球にいるオペレーターが遠隔制御することで宇宙飛行士が担ってきた汎用的な作業を代替しようというのがGITAIの取り組みだ。

「宇宙飛行士のコストの8割以上が交通費。つまりロケットの1回あたり打ち上げコスト×打ち上げ回数でここがほとんどを占める。(宇宙放射線の影響があるため)だいたい3ヶ月に1回くらいの頻度で地球と宇宙を人が行き来しているほか、その倍くらいの頻度で補給物資が送られている」(中ノ瀬氏)

この一部がロボットに変わるとどうなるか。まず宇宙ステーションに送り込むのが人からロボットに変わるだけで、安全の審査や訓練などが不要になり1回あたりの打ち上げコストを大きく抑えられる。加えてロボットの耐久性があることが条件にはなるが、放射線の影響も受けないので地球と宇宙の間を行き来する回数を減らせるのはもちろん、物資の補給回数も減らせるため全体の打ち上げ回数自体も削減できる。

生身の宇宙飛行士であれば1日に作業できる時間は約6.5時間と限られるが、ロボットであればオペレーターを交代制にすれば24時間働き続けることも可能。これらの組み合わせによって宇宙での作業コストを100分の1以下まで減らせるという。

もちろんこれはGITAIロボットが宇宙飛行士の作業を代替できることが前提だ。

「実は極めて重要な宇宙飛行士の作業時間の内、だいたい8割くらいの時間が掃除を始めとした『運用メンテナンス』に費やされている。その多くは人間じゃないとできない作業ではなくロボットでも代替できるもの。これが進めば科学実験や広報など、宇宙飛行士が人間にしかできない仕事にもっと多くの時間を使えるようにもなる」(中ノ瀬氏)

GITAIでは2018年12月にJAXAと共同研究契約を締結し、GITAIロボットによる宇宙飛行士の作業代替実験に取り組んできた。3月時点で主要作業18個のうち72%(13個)は代替に成功したと紹介したが、現在は部分的にではあるものの18個全てを代替できるようになった。

「現時点では人間が1分でできる作業をこなすのに3〜10分かかるようなものもあり、実用化できる段階までには達していない。少なくともそれを3分以内に、なおかつ100回やれば100回成功する精度まで上げていくことが必要だ」(中ノ瀬氏)

今は1秒間の遅延が発生しても人間が遠隔から制御した方がスムーズな作業が多いため、動作の約9割を遠隔から操作し、残りを自律化して対応しているそう。中ノ瀬氏の話では遠隔制御と自律化のハイブリッドが最もパフォーマンスが上がると考えていて、本番環境では半分くらいの作業を自律化することを見据えている。

量産化ではなく高単価一点物、人件費よりも交通費に着目

GITAIはもともと中ノ瀬氏の個人プロジェクトを法人化したものだ。最初から宇宙領域にフォーカスしていた訳ではなく、マーケットリサーチやユーザーヒアリングを進める中で「最もビジネスとして成立するチャンスがあると考え宇宙領域に絞った」(中ノ瀬氏)という。

技術的な観点では今の段階で性能の高い汎用的なロボットを実現するのは難しく、ましてや完全自律型となると世間で期待されているようなことはまだ全然できていない。それでもコストは数千万円規模になり量産化のハードルはものすごく高い。そのレベルではビジネスとして成立しないが、オペレーターが裏側いる『半遠隔・半自律型』であれば性能が上がり解決策として機能すると考え、このテーマでに取り組み始めた」(中ノ瀬氏)

その上で領域を絞るにあたり中ノ瀬氏が着目したのが「交通費」だ。ロボット企業の中にはロボットを人件費削減のソリューションとして期待するケースも多いが、性能が低く単価の高いロボットが今の段階で人を置き換えられる可能性は低い。むしろ交通費が非常に高い業界や、人間が行くにはとても危ない領域にロボットを持ち込めば人間が行く必要がなくなり、ビジネスになると考えたそうだ。

合わせて「量産化はしない」ことを決断。量産化を目指せば結局性能が下がってしまい、量産機のコストも数千万円規模になるのでビジネスとして成り立ちにくい。そうではなく高単価一点物で成り立つ領域に定めることにした。

「それらの条件に唯一合致したのが宇宙。もともと交通費が何百億とかかっているので、仮にロボットが1台1億円しても十分成立する。特に宇宙ステーションが民営化されていく流れがあり、民間の宇宙ステーションも増えている状況だったので、まずここに絞って半遠隔のロボットを投入すれば技術的にもビジネス的にも実現できると確信を持った」(中ノ瀬氏)

GITAIには今年の3月にSCHAFTの創業者で元CEOの中西雄飛氏が新たにCOOとして加わった。中西氏は同社をGoogleに売却後も継続して二足歩行ロボットの実用化に向けたプロジェクトに携わっていた人物。2018年末でSCHAFTはGoogle社内で解散となったが、新たなチャレンジの場としてGITAIを選んだ。

「中西自身もSCHAFTで自分たちと同じ結論にたどり着いた。彼はGoogle内で大規模な予算と優秀なメンバーとともに完全自律型の量産機の実現を目指したが、現在の技術水準では実用化に至らなかった経緯がある。でも裏にオペレーターがいてもよく、高単価一点物の領域であれば解決策になりうる。ちょうどタイミングが合ってオフィスに遊びに来てもらった時にGITAIの構想やチームに共感してもらい、一緒にチャレンジすることになった」(中ノ瀬氏)

中ノ瀬氏が「各領域に詳しい世界クラスのメンバーが集まっていて、チームの総合力の高さは1番の強み」と話すように、9人のフルタイムメンバーのうち6名は博士号の取得者。そのうち5名は東京大学情報システム工学研究室(JSK)の出身で、各自が磨いてきた技術を持ち寄り1台のロボット開発に取り組んでいる。

2023年を目処にISS内でサービスイン目指す

今後GITAIでは2020年末にISSへの実証実験機打ち上げを予定しているほか、2023年を目処にISS内での汎用作業代替ロボットサービスのリリースも計画中。まずは宇宙機関からスタートし、徐々に民間の宇宙ステーションにもターゲットを広げていく戦略だ。

「ビジネスモデルとしてはロボットを売るわけではなく、ロボットによる作業代行サービスを宇宙で提供する。1時間で500万円かかっていた作業を1時間50万円で実現するイメージだ。初期の顧客層はNASAを中心とした宇宙機関。宇宙飛行士の単純作業に多額の税金がかかっているので、それを民間にアウトソースする流れ自体はすでにある。まずはそこをロボットで代替していく」(中ノ瀬氏)

実用化に向けては「1秒遅延環境での自律化の推進」「無重力環境下でも動くための『脚』の開発」「2年間現地で働けるレベルの耐久性の実現」などクリアしなければならない課題も残っていて、引き続きプロダクトの改良を進めていくという。

宇宙市場は30兆円を超える巨大なマーケットであり、宇宙ステーションの中に限らず事業を拡大できるポテンシャルも大きい。GITAIでも宇宙ステーションの検査・修理、小型衛星の燃料補給、デブリ回収などの作業を代替するロボットや月面基地建設ロボットなど、宇宙領域での横展開も視野に入れているようだ。

「今宇宙では汎用的な作業ができるようなロボットが求めらているが、そこで必要とされるのはロボット技術者。自分たちの特徴はそこに強みを持つメンバーが中心となって開発していること。自分たちがやろうとしているのは地上の汎用的なロボット技術を宇宙に持っていくことであり、そういった観点から見るとやれることはたくさんあると感じている」(中ノ瀬氏)

米空軍の衛星打上選定はフェーズ2に、SpaceXがULAに先行

米国空軍は2022年から 2026年にかけて打ち上げられる安全保障用衛星の打ち上げ企業2社を選定する作業を進めている。現在この調達プロセスは「フェーズ2」に入り、SpaceX、Blue Origin、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)、Northrop Grumman(ノースロップ・グラマン)など米国を代表する民間宇宙企業のすべてが入札への参加を表明している。

この中で、Blue OriginとNorthrop Grummanは政府の衛星打上事業の分野では新顔だ。ロッキード・マーティンとボーイングの合弁事業であるULAと、イーロン・マスクのSpaceXは民間宇宙企業のトップであるだけでなく、安全保障衛星の打ち上げでも実績を積んでいる。両者を比べるとわずかだがSpaceXはULAに先行している。SpaceXのFalconが多数の衛星打上に成功している既存のロケットシステムであるのに対して、ULAが提案しているVulcan Centaurはまったく新しいシステムでそれぞれの打ち上げにテーラーメイドで対応できるが、認定も受けておらず打上実績がない。他社のシステムも認定を受ける段階に来ていない。

我々の取材に対し、SpaceXの社長で最高業務責任者(COO)であるGwynne Shotwell(グウェイン・ショットウェル)氏はメールで次のようにコメントしている。

SpaceX は衛星打上能力を長期的に提供するという点で空軍の期待に十分応えられると信じている。SpaceXのシステムはすでに認定を受け、現に稼働中のシステムであり、国家安全保障上必要とされるあらゆるミッションに対応した衛星打上が可能だ。

SpaceXは、Falconロケットが現在米空軍の衛星を打ち上げていることをライバルに対する優位性を確保するカギと見ている。同社は「(SpaceXを選定することが)米政府にとって打上の成功、コストなどを総合して最小のリスクとなる」と説明している。

米空軍が選定作業を完了し、2社を選定するのは2020年中の予定だ。

画像:Public Domain

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAとSpaceXが宇宙飛行士回収船を使ったクルードラゴンの脱出リハーサル

NASAとSpaceXは、SpaceXの海上輸送船GO Searcherでの緊急脱出難訓練を行い、SpaceXがNASAのために実施する最終的な有人ミッションへの共同準備を継続している。この船は、実際のミッションシナリオで宇宙船と宇宙飛行士を回収するために使用することを目的としたものである。そして今週実施されるリハーサルは、実際の有人SpaceXミッションに先立ち準備を万全に整えるために重要なものだ。

NASAとSpaceXのミッションチーム全員が揃って最初から最後まで行われた最終リハーサルの写真には、SpaceXの新しいクルースーツに身を包んだNASAの宇宙飛行士のDoug Hurley(ダグ・ハーレイ)氏とBob Behnken(ボブ・ベンケン)氏や、帰還したクルードラゴン宇宙船から脱出する必要が生じたときの模擬状況、そしてGO Searcherからケープカナベラル空軍基地へリコプターで移送する様子などが写されている。

誰の目から見ても、このリハーサルは成功であり、NASAならびにSpaceXの双方に満足できる結果を残したようだ。NASAによってリリースされた、リハーサルの様子を以下のスライドでチェックして欲しい。

  1. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    A quick moving storm passes as teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation onboard the GO Searcher ship, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  2. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    A quick moving storm passes as teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation onboard the GO Searcher ship, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  3. SpaceX Dragon Crew Extraction Rehearsal

    Teams from NASA and SpaceX gather at the Trident Basin in Cape Canaveral, Florida, on August 13, 2019 to rehearse extracting astronauts from SpaceX’s Crew Dragon, which will be used to carry humans to the International Space Station. Using the Go Searcher ship SpaceX uses to recover their spacecraft after splashdown and a mock-up of the Crew Dragon, the teams worked through the steps necessary to get NASA astronauts Doug Hurley and Bob Behnken out of the Dragon and back to dry land. Hurley and Behnken will fly to the space station aboard the Crew Dragon for the SpaceX Demo-2 mission. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  4. SpaceX Dragon Crew Extraction Rehearsal

    NASA astronauts Bob Behnken, left, and Doug Hurley board the SpaceX GO Searcher ship at the Trident Basin in Cape Canaveral, Florida, on August 13, 2019 to rehearse extracting astronauts from SpaceX’s Crew Dragon, which will be used to carry humans to the International Space Station. Using the Go Searcher ship SpaceX uses to recover their spacecraft after splashdown and a mock-up of the Crew Dragon, the teams worked through the steps necessary to get NASA astronauts Doug Hurley and Bob Behnken out of the Dragon and back to dry land. Hurley and Behnken will fly to the space station aboard the Crew Dragon for the SpaceX Demo-2 mission. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  5. SpaceX Dragon Crew Extraction Rehearsal

    NASA astronauts Doug Hurley, left, and Bob Behnken work with teams from NASA and SpaceX to rehearse crew extraction from SpaceX’s Crew Dragon, which will be used to carry humans to the International Space Station, on August 13, 2019 at the Trident Basin in Cape Canaveral, Florida. Using the Go Searcher ship SpaceX uses to recover their spacecraft after splashdown and a mock-up of the Crew Dragon, the teams worked through the steps necessary to get NASA astronauts Doug Hurley and Bob Behnken out of the Dragon and back to dry land. Hurley and Behnken will fly to the space station aboard the Crew Dragon for the SpaceX Demo-2 mission. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  6. SpaceX Dragon Crew Extraction Rehearsal

    NASA astronauts Doug Hurley, left, and Bob Behnken work with teams from NASA and SpaceX to rehearse crew extraction from SpaceX’s Crew Dragon, which will be used to carry humans to the International Space Station, on August 13, 2019 at the Trident Basin in Cape Canaveral, Florida. Using the Go Searcher ship SpaceX uses to recover their spacecraft after splashdown and a mock-up of the Crew Dragon, the teams worked through the steps necessary to get NASA astronauts Doug Hurley and Bob Behnken out of the Dragon and back to dry land. Hurley and Behnken will fly to the space station aboard the Crew Dragon for the SpaceX Demo-2 mission. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  7. SpaceX Dragon Crew Extraction Rehearsal

    NASA astronaut Doug Hurley, along with teams from NASA and SpaceX, rehearse crew extraction from SpaceX’s Crew Dragon, which will be used to carry humans to the International Space Station, on August 13, 2019 at the Trident Basin in Cape Canaveral, Florida. Using the Go Searcher ship SpaceX uses to recover their spacecraft after splashdown and a mock-up of the Crew Dragon, the teams worked through the steps necessary to get NASA astronauts Doug Hurley and Bob Behnken out of the Dragon and back to dry land. Hurley and Behnken will fly to the space station aboard the Crew Dragon for the SpaceX Demo-2 mission. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  8. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    Teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation onboard the GO Searcher ship, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  9. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    A helicopter equipped for air medical operations lands on the GO Searcher ship as teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  10. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    Teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation onboard the GO Searcher ship, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  11. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    A helicopter equipped for air medical operations takes off from the GO Searcher ship as teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  12. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    Teams from NASA and SpaceX practice procedures for medical emergency evacuation onboard the GO Searcher ship, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  13. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    The GO Searcher ship is seen from a helicopter during practice for a medical emergency evacuation, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. Teams from NASA and SpaceX gathered to refine procedures for emergency situations. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  14. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    The GO Searcher ship is seen from a helicopter during practice for a medical emergency evacuation, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. Teams from NASA and SpaceX gathered to refine procedures for emergency situations. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)
  15. SpaceX Dragon Crew Emergency Evacuation Rehearsal

    Teams from NASA and SpaceX practice medical emergency evacuations from the GO Searcher ship via helicopter, Friday, August 15, 2019 in the Atlantic Ocean off the coast of Cape Canaveral, Florida. The teams gathered to refine procedures for emergency situations. SpaceX will use the GO Searcher ship during the Demo-2 mission to recover NASA astronauts returning from the International Space Station in their Crew Dragon spacecraft. Photo Credit: (NASA/Bill Ingalls)

SpaceXとNASAは、クルードラゴンを使った最初の実際の有人飛行の発射を行うという目標に向けて働き続けているものの、4月の静的試験噴射の際に起きたクルードラゴン試験機の爆発などによって、その目標の達成が難しいかもしれない状況へ後退を余儀なくされている。

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(翻訳:sako)

Vectorの小型ロケット打ち上げビジネスが資金問題から危機に陥る

小型衛星打ち上げスタートアップのVector(ベクター)は「資金調達の大きな変化」を理由とし、期間を限定せず運営を停止したことを認めた。さらに、共同創設者兼CEOのJim Cantrell(ジム・キャントレル)氏は、今回の事態にあたり解雇された。

このニュースは宇宙関連スタートアップのコミュニティと、もちろんVectorの従業員にとって驚きだった。同社は昨年後半に7000万ドル(約74億円)の資金を調達し、DARPA’s Launch Challengeの認定コンテストに選定されたと発表していた。また、先週には米空軍と数百万ドル規模の契約を結んだばかりだ。

そして、最新の資金調達に問題があったことは明らかだ。しかし、その詳細はわからない。現在TechCrunchはこのラウンドのベンチャーファーム(Kodem、Morgan Stanley Alternative Investment Partners、Sequoia、Lightspeed、Shasta Ventures)と連絡をとっており、なにか声明があれば記事をアップデートする。

Vectorは以下の声明を発表し、キャントレル氏が代退社したことを認めた。資金調達の大きな変化を受け、Vectorは業務を一時停止せざるを得なくなった。コアチームは小型ロケットのVector Rの開発を完了させるための選択肢を検討しており、最新のASLON-45賞などのプログラムで米空軍や他の政府系エージェンシーを支援している。

TechCrunchはこのコアチームの規模と「休止」の一環としてVectorがレイオフしなければならない従業員の数について、問い合わせている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

ロッキード・マーティンCEOが米有人宇宙飛行計画をDisrupt SFで語る

TechCrunch最大のイベント、Disrupt SFは10月2日から4日かけてサンフランシスコで開催される。チケットの早割は今月一杯なのでチェックしておこう。

TechCrunchでは宇宙関連のビジネス、テクノロジーについてもたびたび取り上げているが、我々は米国が宇宙競争にカムバックするという情報をつかんだ。ただし当面、月よりもう少し近いところが目的地だ。

あの悲劇をきっかけにスペースシャトルが2011年に引退してから8年たつ。この空白を埋めるべく、アメリカ民間企業が有人衛星を打ち上げる計画を進めている。その1つがロッキード・マーティンだ。米国を代表する宇宙企業、ULA(ユナイテッド・ローンチ・アライアンス)は、ロッキード・マーティンとボーイングの合弁事業。ULAは宇宙開発の一環としてOrion有人宇宙往還機計画を進めている。この7月に開発計画を実施に移す準備が完了したと発表し重要な一歩を踏み出した。

この計画のまさに核心部分を担うのがロッキード・マーティンだ。同社のCEOであるマリリン・ヒューソン氏(写真)がTechCrunch Disrupt SF 2019に参加し、サンフランシスコでキーノート講演をしてくれることになった。ヒューソン氏はロッキード・マーティン社の事業だけでなく、NASAの努力も含めて、アメリカが有人宇宙飛行にカムバックする計画全般について話す予定だ。これには有人月旅行やそれ以後のビジョンも含まれる。

Orionスペースクラフトが最初の有人宇宙飛行(これは来年実施の予定)を実現した後、ロッキード・マーティンはさらに野心的な計画に取り掛かる。これは月軌道プラットフォームゲートウェイ(Lunar Orbital Platform-Gateway)と呼ばれる大型月周回衛星で、太陽光発電を行い、通信施設、科学実験区、短期居住区、探査車保管庫など各種の区画が設置される。ゲートウェイは各種の宇宙探査の恒久的な基地となる。フルスケールのゲートウェイを建造する前に、NASAではまず「初期ゲートウェイ」と呼ばれるプロトタイプを月軌道に投入する計画だ。

 

ロッキード・マーティンは1950年代から宇宙開発事業に携わってきたが、近年、宇宙ビジネスにおける民間企業の役割が飛躍的に増大している。 われわれはヒューソン氏からロッキード・マーティンの低軌道衛星事業を始め、近年ますます重要性を増している商用宇宙利用の実態を詳しく聞くことができるものと期待している。

Disrupt SF早割チケット購入はこちら

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

ULAが5機目となる米空軍の機密通信衛星を打ち上げ

Boeing(ボーイング)とロッキード・マーティンによって設立された民間打ち上げ企業のユナイテッド・ローンチ・アライアンス(ULA)は米国時間8月8日、衛星コンステレーションを構成する5機目のアメリカ空軍の通信衛星の打ち上げに成功した。コードネームでAEHF-5(5番目のAdvanced Extremely High Frequencyという意味)は、アメリカ空軍の地上施設と交信しており、ミッションが成功したことを示している。

これはULAにとって、これまで失敗なく100%成功しているアトラスVの90回目の打ち上げとなった。打ち上げは8月8日の早朝6時13分にケープ・カナベラル空軍基地から実施され、同施設から今週2回目(スペースXは人工衛星のAMOS-17を打ち上げた)の打ち上げ成功となった。

このミッションでは、アトラスVは551という構成が採用された。これは液体燃料ロケットの中央のコアブースターを囲んで、5基の固体燃料ブースターを装着したものだ。この構成により、約1万4000ポンド(約6.4トン)のAEHF-5を軌道へと投入するため、アトラスVは最大の打ち上げ能力を獲得した。

ロッキード・マーティンはアメリカ空軍のためにAEHF-5を製造し、メールにて静止トランスファ軌道への投入に成功しただけでなく、アメリカ空軍第4宇宙作戦飛行隊の計画通りに通信していることを確認した。現在稼働中の5機の衛星はすべて同社が製造し、今後は来年の6機目の打ち上げが予定されている。

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(翻訳:塚本直樹Twitter

Rocket LabのElectronロケットはヘリで空中回収して再利用

プライベートなロケット打ち上げのスタートアップでSpaceXのライバルのRocket Labは、米国時間8月6日に大きな計画を発表した。同社のElectronロケットの第1段を再利用するというもの。積荷を運んで周回軌道に入ったあと、管制着陸によって地球に戻すのだ。ただし、着陸のシーケンスはSpaceXのものとは異なっている。戻ってきた第1段ロケットを、ヘリコプターを使って空中でキャッチしようというのだ。

Rocket Labの創立者兼CEOであるPeter Beck(ピーター・ベック)氏が今回の発表で聴衆に語ったところによると、そうする理由は「推進力を使った再突入はしない」し、「着陸の際にも推進力を使うつもりはない」からだという。その代わり、地球への帰還にあたって、まず宇宙空間で転回してエンジンを燃焼させることで速度を落とし、その後パラシュートを開いてヘリコプターで捕獲できるほどまで、十分に減速する。

それを実現するには多くの手順が必要となるが、Rocket Labはすでにこれまでの数回の打ち上げの際に、そのために必要なすべてのデータを計測できるよう目指してきた。8回目の打ち上げにあたっては、計測装備をアップグレードしてさらに多くのデータを収集した。今後、10回目の打ち上げの際にはロケットを海に着水させてから回収し、そこからより多くのことを学べるようにする予定だ。そして、まだ何回目の打ち上げになるかは未定だが(ベック氏は、現時点では具体的な回数を明らかにしていない)、いずれは十分に再利用できる状態でロケットを回収できるようにするつもりでいる。

同じロケットを再び打ち上げられるようにすることには、明らかな利点がある。商用の打ち上げに対する非常に大きな需要を考えれば、それも自明のことだろう。

「このようなことを実現しようとする根本的な理由は、頻繁に打ち上げるためです」とベック氏は言う。「このロケットを1回完成させるだけで、実質的に稼働率を2倍にすることができます」。

またベック氏によれば、地球への帰還にあたって、ロケットを減速させるのが最も難しいのだという。その後に、ヘリコプターによってElectronロケットを回収する部分は、実は易しいそうだ。ベック氏自身、アマチュアのヘリ操縦士として訓練中だがその目で見ても難しくないという。

Rocket Labは、2006年にベック氏によって設立された。本社は、カリフォルニア州ハンティントンビーチにある。また、独自の打ち上げ基地をニュージーランドに持っている。地球の軌道を周回するElectronロケットの試験的な打ち上げは、2017年に始めた。2018年からは、顧客に対して商業的な打ち上げを提供している。また、2019年中には、米国のバージニア州でも打ち上げを実施する予定だ。

また同社は、今年初めに、Photon人工衛星プラットフォームを発表した。小規模な衛星事業者は、これを利用することで、自らの特徴的なサービスに専念できるようになる。既製品としてのPhotonを採用すれば、実際に人工衛星自体を設計、製造するステップを除外することができるからだ。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

SpaceXがFalcon 9ブースターの3度目の飛行に成功、フェアリングも洋上キャッチ

SpaceXはFalcon9で同一のブースターで3回衛星を打ち上げることに成功した。用いられた1段目ブースターは今年6月と昨年11月の2回の飛行を経験しおり、今回が3回目の飛行だった。

ペイロードはSpacecommのAMOS-17通信衛星でアフリカ上空の静止軌道に投入される。6.4トンと大重量の衛星のため、SaceXでは「使い捨てモード」で打ち上げた。つまり回収のための燃料を積む余裕がなく、噴射を終えたブースターはそのまま大気圏に落下する。

しかし3回の飛行ができたというのはSpaceXにって大きな成果だ。飛行済み機体が再利用できることは打ち上げコストの削減に寄与したはずだ。飛行ミッションそのものものも万事計画どおりに進行したようだ。AMOS-17衛星は静止遷移軌道に投入された。今後サハラ砂漠付近の赤道上空に静止し、中東とアフリカ大陸に複数バンドでテレビ放送を行う計画だ。
 
SpaceXは今回、大気圏でペイロードを保護するフェアリングの回収に成功した。何回か失敗に終わったが、今回は回収船、Ms. Treeに設置された巨大ネットが無事にフェアリングをキャッチする様子がビデオに収められている。今回、回収されたのは2分割のフェアリングの片方で、他方は洋上に落下したが、SpaceXではこちらも2隻目の専用船で回収を試みる予定という。

spacex fairing catch amos 17

SpaceXがMs. Treeの回収ネットで最初にフェアリング回収に成功したのは今年6月だった。上のビデオはFalcon Heavyの打ち上げで用いられたフェアリング回収の模様。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

2回再使用したFalcon 9が重量級衛星を打上げへ

SpaceXは巨大な通信衛星を搭載したFalcon 9ロケットを、米国東部夏時間の8月6日午後6時53分(日本時間8月7日午前7時53分)に打ち上げる。打上げウィンドウは午後8時21分まで設定されており、天候や他の要因により打ち上げはそのいずれかの時間で実施される可能性がある。また、ライブストリームは最初の打上げウィンドウの15分前から開始される。

打上げに利用されるFalcon 9の第1段は、昨年7月と11月に2回の飛行経験がある。そして今回のミッションがこのロケットにとっての最後ミッションとなり、着陸を行わない「使い捨てモード」での打ち上げが予定されている。

その理由は、Spacecommから委託された1万4000ポンド(約6.4トン)以上の重さとなる人工衛星のAmos-17にある。この打上げのためにFalcon 9はすべての燃料を使わなければならず、コントロールしたうえでの降下が行えないのだ。

しかしながら、今回の打ち上げでは人工衛星を保護するノーズコーン・フェアリングの回収が実施される。SpaceXは以前に、巨大なネットを備えた回収船ことMs. Treeにて、フェアリングの回収に成功している。Falcon 9のフェアリングの回収はブースターと同じく、SpaceXにとって大きなコスト削減に繋がり、また最終的に同社は100%のロケット再使用を目指している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

SpaceXがStarshipとSuper Heavyの打ち上げと着陸の詳細な計画を発表

SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの、間もなく実施される試験積載量での打ち上げのための環境評価準備書を整えた。環境評価の準備を行い完了させることは、完成間近なSpaceXの完全再利用型大積載量ロケットの第1弾となるSuper Heavyにとっても、このシステムの第2弾となる宇宙船コンポーネントであるStarshipにとっても、実際の打ち上げの可否を左右する重要な鍵となる。

すでにSpaceXは、Starshipのプロトタイプを飛ばす準備を進めている。SpaceXのCEOElon Musk(イーロン・マスク)氏の楽観的なスケジュールが合えば、「2〜3カ月後」の打ち上げられる予定だ。Starshipを小型化し、同機に搭載予定のRaptorエンジンのテスト用に作られたデモ機のStarHopperによる地上繋留なしの「ホップ」(跳躍)程度の低高度飛行試験は、先日、成功させた。しかし、SpaceXは、その打ち上げ計画の実施が周囲の環境に及ぼす影響を真剣に考慮していることも示す必要がある。

StarshipとSuper Heavyはフロリダから打ち上げられる、しかしSpaceXには、NASAから借り受けているFalcon 9とFalcon Heavyの打ち上げに使用しているケネディ宇宙センター第39発射施設に、2つ目の発射台を建設する計画もある。39A発射台から打ち上げられたStarshipは、今の予定では、ケープカナベラル空軍基地近く(フロリダ州、米東海岸)にあるFalconの第一段ブースターの着陸に現在使用しているゾーン1(LZ-1)に帰還することになっている。Super Heavyは、東海岸と西海岸の打ち上げミッションの条件にもよるが、飛行経路に沿って無人操縦の台船の上に着陸する。これは、SpaceXが現在使用している「Of Course I Still Love You」(もちろん今でも愛してる)と「Just Read The Instructions」(いいから説明書を読め)の2隻の双子の回収台船と同じようなものだ。

Starshipを打ち上げ場のずっと近くに戻したいSpaceXは、ゆくゆくは、第39発射施設内の39A発射台の近くに着陸場を建設したいと考えている。だがそのためには、その実現可能性と影響を詳しく研究して判断する必要があるため、SpaceXでは、今のところはその計画を先送りすることにしている。

「NASAが設計し、人類初の月面着陸を達成した39A発射台は、幅広いミッションに対応できるインフラを備えた、世界でもっとも有能な打ち上げ台のひとつです」と、SpaceXの広報担当者はTechCrunchに宛てた声明の中で述べている。「Starshipの開発を加速させつつ、SpaceXはパートナーたちと共同で、過去の偉業と進歩した新たな宇宙技術の上に、39A発射台の基盤設備を強化し続けます」。

環境評価準備書の中で、SpaceXは、StarshipとSuper Heavyの打ち上げと着陸を、ケープカナベラル空軍基地のSLC-40と、バンデンバーグ空軍基地(カリフォルニア州、米西海岸)のSLC-4打ち上げ場で行う可能性も検討していると述べている。しかし、SLC-40にはこれらを実施できるだけの広さがない。またSLC-4の場合は、打ち上げ場に戻るために長い道のりを移動しなければならない(巨大なロケットが陸路で米国を縦断することになる)。

最後にSpaceXは、将来的に「StarshipとSuper Heavyをテキサス州キャメロン郡の施設で建造し打ち上げる」考えも示した。テキサスの打ち上げ場には、SpeceXの要となるロケットとエンジンの開発施設に近いという利点がある。性能的に高度に安定した打ち上げと着陸が行える再利用型のシステムの開発に成功すれば、大きな水域から離れているという欠点は相殺されるだろう。ただしこれらの計画は、別物として考えるべきだ。そのため、近い将来、テキサスからStarshipのフルスケールの打ち上げがあると期待するのはまだ早い。

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(翻訳:金井哲夫)

LightSail 2がついに太陽の光だけによる飛行に成功

非営利で宇宙を探究しているThe Planetary Societyは米国時間7月31日、これまでの一連の勝利の最終的成果を祝った。クラウドファンディングにも助けられて打ち上げられた宇宙船LightSail 2がついに、太陽の光だけで飛ぶことに成功した。Falcon Heavyに乗って打ち上げられ、自分の補助エンジンで定位置に到達した同船は、その後軌道を上げ、マイラー製の帆の表面に当る太陽からの光子の力だけで、最初の軌道より約2km上へ上昇した。

これは、すごい成果だ。通常CubeSatと呼ばれるような小型の人工衛星の軌道の高度修正を、光の力だけでやることが、一般的に可能になったのだ。LightSail 2は、地球の軌道で太陽帆走が可能であることを示した最初の宇宙船になり、太陽帆走を行った宇宙船としても、日本の宇宙航空研究開発機構(JAXA)がまったく異なるミッションで2010年に行ったIkarosに次いで、やっと2機目だ。

LightSail 2の場合はあくまでもメインミッションとしての成功だが、まだその旅は終わっていない。太陽帆走による軌道の上昇は、軌道の遠地点(最高位置)を上げることを目指して今後も続行する。また、太陽帆走のパフォーマンスの改善にも取り組む。そのためには、「脱飽和」(Desaturation)と呼ばれる必要な処理の最適化が必要だ。それは、船体を目的とする太陽帆走の方向から一時的に逸らして、累積されている運動量を捨てる処理だ。

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今からほぼ1年後にLightSail 2は計画どおりに軌道を外れて地球の大気に入り、そこで燃え尽きる。

これは、宇宙探求のクラウドファンディングとしても大きな成果だ。ほぼ100カ国からの約5万名が資金を提供し、そのほかの団体や企業からの寄付も合わせると、宇宙船の開発と打ち上げのための資金として700万ドルの調達に成功した。

Planetary SocietyのCEOであるBill Nye氏は、帆走の成功を発表した米国時間7月31日のイベントで「私にとって、太陽の光による帆走は、とてもロマンチックなことです」とコメントした。

LightSail 2が集めたデータは、NASAなどほかの組織と共有される。NASA自身にも、地球近傍天体の調査を目的として独自の小さな太陽帆走人工衛星を打ち上げる計画がある。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASAの最新の惑星探索衛星が3つの新世界を見つけた

4月にSpaceXのFalcon 9ロケットに乗って打ち上げられたNASAの惑星探索衛星Transiting Exoplanet Survey Satellite(トランジット系外惑星探索衛星)が、太陽よりも小さくて低温の矮星を軌道を描いて周回する3つの新しい世界を見つけた

新たに見つかった惑星はサイズも温度もまちまちだが、どれも地球より大きく平均温度も高い。温度の計算は彼らが周回している星からの距離とそのエネルギー出力にのみ基づき、大気についてはまだ何も分かっていないので大気の影響はまったく含まれていない。温度が最も低いTOI 270 dは平均温度が摂氏66度で、地球の3倍に近い。

最も遠いTOI 270 dと、最も近いTOI 270 cは、どちらも主にガス状と考えられ、太陽系の中では海王星がそれらに一番似ている。「似ているとは言っても、とても小さいから太陽系には存在しない新しいタイプの惑星だ」とNASAの研究者たちは言っている。

どれも大きさが地球の1.5倍から2倍程度と小さく、惑星としては異例であることが研究者にとって関心の的だ。このTOI 270と呼ばれる矮星系は、今後のジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡からきわめて観測しやすい位置にあるので、この観測所が実働に入る2021年以降がさらに一層、研究の好機と見なされている。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

グリーンで小さくて強力な宇宙船用エンジンを作るTesseract

宇宙関連の推進装置の中でも、多くの注目を浴びるのは打ち上げロケットやその巨大なエンジンだが、打ち上げは宇宙の入口までの話に過ぎない。宇宙は広大だ。Tesseract(テッサラクト)は、宇宙船のための新型のロケットエンジンを開発した。それは小型で高効率であるばかりか、地上にいる我々にとって安全な燃料を使用するというものだ。

ロケットの推進装置は、この数十年間に進歩を続けてきた。しかし、ひとたび宇宙に出ると選択肢はかなり狭まる。窒素と水素の化合物であるヒドラジンは、シンプルでパワフルな燃料として50年代から使われていて、これ(または同類の自発火性推進剤)を使用するエンジンは、今日数多くの宇宙船や人工衛星の動力源になっている。

しかし、ひとつ問題がある。ヒドラジンは毒性と腐食性が大変に強いのだ。これを扱うには、専用の施設で防護服を身につけ、細心の注意を払わなければならない。しかも、それは打ち上げの直前に準備することになっている。毒性強い爆発物を、必要以上に長期間保管しておくのは危険だからだ。そのため、ロケットの打ち上げや宇宙船の数が大量に増えてコストも大幅に下がっても、ヒドラジンの取り扱いだけは、高コストで危険なものとして残されている。

関連記事:光の力で帆走する宇宙船「LightSail2」から届いたソーラーセイルの素晴らしい展開画像

それに代わる宇宙空間での推進装置の研究は、以前から続けられている。Accionのエレクトロスプレー・パネルホールスラスター(SpaceXのStarlink人工衛星が使用している)、ソーラーセイルなどがあるが、大多数のミッションや宇宙船にとって、実用的な選択肢は化学推進方式に絞られてしまう。残念ながら、毒性のない代替燃料の研究は、ほとんど成果を上げていない。しかし、Tesseractは、その時が来たと公言している。

「90年代にチャイナレイク海軍センターで初期の研究が行われていました」と話すのは共同創設者のErik Franks(エリック・フランクス)氏。しかし、予算の割り当てが変更になり、その研究は消滅してしまった。「時期も悪かったのでしょう。業界はまだ、飛行実績のある有毒な推進技術で満足している非常に保守的な防衛関連企業に牛耳られていましたから」。

TesseractのRigelエンジンの燃焼試験

しかし彼らは、軍のシステムの失効した特許によって、方向性を定めることができた。「私たちの挑戦は、あらゆる化学物質群を調べて、私たちの目的に適うものを見つけ出すことでした。そして、とてもいいものを発見しました。企業秘密なので何かは教えられませんが、とても安価で、非常に高性能です」。

これで顔を洗えるとまでは言わないが、密閉式の防護服を着なくても、ゴアテックスのつなぎで宇宙船に燃料補給ができる。肌に触れたとしても、ヒドラジンのように皮膚炎が一生残るようなことがない。

時代も変わった。今の宇宙でのトレンドは、何億ドルもの経費を使って静止衛星軌道に何十年間も留まる衛星から離れ、5年から10年程度の運用を想定した小型で安価な衛星に移っている。

数々の宇宙船を、いろいろな人たちが作るようになり、安全で環境にやさしいものに人気が集まるようになった。もちろん、取り扱いコストも低く、専用施設もあまり必要としないことから、製造から準備の工程がさらに民主化されている。だが、それだけではない。

ヒドラジンを推進剤として使いたくないと思えば、ホールスラスターのような電気式のエンジンに切り替えることができる。これは、電荷を帯びた粒子を放出することで、ごく小さな反作用を生じさせるというものだ。もちろん、1秒間に数え切れないほどの回数で放出される(その力が積み重なる)。

しかしこの推進方式は、高比推力(単位燃料あたりに得られる力の測定基準)ではあるものの、推進力はきわめて小さい。V6エンジンを搭載した従来の自動車から、時速8キロのソーラー電気自動車に乗り換えろと言うようなものだ。それでも目的地に行くことはできる。経済的でもある。しかし長い時間がかかる。

人工衛星は、ロケットなどで地球の低軌道に打ち上げられた後は、自力で目標の軌道にまで上昇しなければならない。おそらく、数百キロメートルほど上空になる。化学推進式のエンジンなら、数時間から数日で到達できるが、電気式では何カ月もかかるだろう。20年間も軌道に留まることが想定されている軍用の通信衛星なら数カ月の猶予はあるが、Starlinkなどが打ち上げを計画している数千基もの短命な衛星の場合はどうだろう。打ち上げから数カ月後ではなく1週間後に運用を開始できる衛星の場合は、寿命のかなりの部分を移動に割いてしまうことになる。

「従来型の推進装置で、性能を落とすことなく、毒物を排除して取り扱いコストを削減できるとしたら、新世代の人工衛星が選ぶべき最良の道は、グリーンな化学物質だと私たちは考えます」とフランクスは言う。そして、それがまさに彼らが作り上げと主張するものだ。もちろん、理論だけの話ではない。下の動画は、今年の初めに行われた燃焼試験の模様だ。

「寿命が尽きたときのことも重要です。長く、ゆっくりと螺旋を描きながら落下します。そのとき、他の衛星の軌道を何度も横切るため、衝突の危険性が劇的に増加します」と彼は話を続けた。「大規模な衛星コンステレーションの場合、責任ある運用を行うには、収拾の付かない宇宙デブリの問題を増大させないためにも、寿命が尽きた後は速やかに落下させることが大変に重要になります」

Tesseractには、フルタイムの従業員が7名しかいない。同社はY CombinatorのSummer 2017のクラスに参加していた。それ以来(それ以前からも)、彼らは、提案予定のシステムの開発と宇宙航空産業との関係構築に精を出してきた。

Tesseractの2つの主要製品の想像図。左がAdhara、右がPolaris。

彼らはシード投資で200万ドル(約2億1800万円)を調達した。ロケット科学者でなくても、この程度の資金で何かを宇宙に打ち上げるのは不可能であることぐらいわかる。幸いにも、彼らにはすでにいくつかの顧客がある。そのひとつは正体を明かしていないが、来年、月に宇宙船を飛ばす計画を立てている(この有力情報はしっかりとフォローするので乞うご期待)。その他に、Space Systems/Loral(SSL)がある。この企業は1億ドル(約108億8000万円)の基本合意書に署名した。

Tesseractが製造を計画している主要な製品が2つある。Polarisは“キックステージ”だ。打ち上げロケットなどで宇宙まで運ばれた衛星を、より遠くの軌道まで運ぶ短距離宇宙船だ。動力には、同社の大型エンジンRigelが搭載される。これは月への運行が想定されたプラットフォームだ。上の想像図では、右側で6Uキューブサットの塊を運んでいる。

SpaceXは60個の衛星を打ち上げ後にStarlinkの追加情報を公開(本文は英語)

しかしフランクスは、資金は別のところにあると考えている。「私たちが考えるシステムは、さらに大きな市場機会である、小型衛星向けの推進システムです」と彼は話す。2つめの製品Adharaは、小型の衛星や宇宙船のための乗り合いバスのようなもので、同社はひたすら、コンパクトで、もちろん、環境にやさしいことを心がけている(上の想像図では小さな装備として描かれている。スラスターの名称はLyla)。

「いちばん欲しいものは、完璧に、買ってすぐに使えるシステムだと顧客から聞かされました。昔ながらの衛星製造業者がずっとやってきたように、あちらこちらの業者から部品を買い集めて自分たちでシステムを一から組み上げるという形ではないのです」とフランクスは言う。それを実現するのがAdharaだ。「あくまでもシンプルに、ボルトで装着するだけで、目的の場所へ移動できるようになります」。

こうしてエンジンの開発は、当然のことながら簡単ではなかった。しかし、Tessaractは従来のものを根本的に作り変えたというわけではない。原理はこれまでのエンジンとほぼ同じだ。だから、開発経費は馬鹿みたいな額にはならなかった。

同社は、それが現時点で実用的な唯一のソリューションであるかのような言い方はしない。本当に小型で軽量な推進装置を求めるなら、目的の軌道まで1週間から1年かかっても構わないというなら、おそらく電気推進方式のほうが適している。また、高いデルタVが求められ、作業員の安全対策を十分に行える大規模ミッションなら、今でもヒドラジンが最有力だろう。しかし、今もっとも急速に成長している市場は、そのどちらでもない。そしてTesseractのエンジンは、効率的でコンパクトでずっと安全に扱える、その中間地点に腰を据えている。

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(翻訳:金井哲夫)

堀江貴文氏創業の宇宙開発スタートアップ・インターステラテクノロジズが12.2億円を調達

ロケットの開発や製造、打ち上げまでを手がけるインターステラテクノロジズは7月29日、総額12.2億円の資金調達を発表した。今回調達した資金は人工衛星軌道投入用ロケット「ZERO」の開発に必要な設備投資、人材採用、材料費などに活用する。同社は堀江貴文氏が創業者で、稲川貴大氏が社長を務める2003年5月設立の企業。

また、日本創生投資代表取締役の三戸政和氏を取締役に迎えて、今後はシリーズC以降での資金調達を進めていく。さらに海外展開を見据え、トレードシフトジャパン代表取締役の大久保紀章氏も取締役に就任する予定とのこと。シリーズBラウンドおける第三者割増資で引き受け先は以下のとおり。

  • 帯広信用金庫
  • 北洋銀行
  • ほっかいどう地方創生投資事業有限責任組合
  • 笠原健治氏(ミクシィ取締役会長)
  • 内藤裕紀氏(ドリコム代表取締役)
  • 田中修治氏(OWNDAYS代表取締役)
  • 古川健介氏(アル代表取締役)
  • 三戸政和氏(日本創生投資代表取締役)
  • 山本博士氏(スマレジ代表取締役)

同社は2016年にプロサッカー選手の本田圭佑氏、East VenturesなどからシリーズAラウンドで2億円を調達し、観測ロケット「MOMO」の開発を推進。5月4日に「MOMO3号機」の打ち上げが成功したことにより、同社としては観測ロケットとしては商業打上げのベースに乗ったことを確信、ZEROの開発を本格化できるフェーズに入ったと考えている。

なお、7月27日に打ち上げられた観測ロケット「ペイターズドリームMOMO 4号機」については残念ながら失敗となった。

打ち上げ約64.3秒後に機体に搭載したコンピュータが異常を検知したことでエンジンを自動で緊急停止させ、 警戒区域内の海面へ安全に落下したとのこと。打ち上げ結果は以下のとおり(暫定値のため今後の解析により変動する可能性あり)。

  • 打上時刻:7月27日16時20分00秒
  • 飛行時間:172 秒(2分52秒)
  • 最大高度:13.3km
  • 最大高度時刻:打上げから96 秒(1分36秒)後
  • 落下位置:射点より東南東9kmの海上

機上カメラからの静止画

  1. 20190728-165510

    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
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    提供:インターステラテクノロジズ
  12. 20190728-165309

    提供:インターステラテクノロジズ

SpaceXが地上係留なしでのStarHopperの「ホップ」飛行に初成功

SpaceX(スペースX)は今週、延期されていたCRS-18ミッションの打ち上げの後、米国時間7月25日の夜にはStarHopperのプロトタイプの初となる地上に係留されていない状態での低高度飛行に成功した。なお、今週には同プロトタイプ機体は打ち上げテストに失敗していた。

このテストでは、StarHopperは高度20mに到達し、わずかに動き回り自身をナビゲートした。その後StarHopperは予定どおりに着陸したことで、SpaceXのチームが意図した通りのテスト結果であったことを示唆している。

StarHopperは再使用可能な宇宙船ことStarshipの実物大の建設に先立ち、SpaceXが新しいRaptorエンジンの重要な準備試験を実施するのを支援するために設計された、小型版のテスト機である。そしてStarshipはSpaceXが開発中の次期ロケットで、完全に再使用が可能(現在のロケットは部分的にしか再使用や再打ち上げができない)となり、SpaceXでCEOをつとめるイーロン・マスク氏によれば、最終的には搭乗員と荷物の火星への輸送や、さらには同社のミッションのすべてを置き換える予定だ。準備が整い次第、SpaceXの「Super Heavy」と組み合わせることで軌道投入能力を得る。

係留なしでのホップ飛行はSpaceXの開発において重要なマイルストーンで、そのテストに数週間をかけている。マスク氏はすでに、フルサイズのStarshipのプロトタイプの飛行も視野に入れている。そして、Mark IとMark IIが米国テキサス州のボカ・チカとフロリダのSpaceXの施設で同時に開発中だ。マスク氏によると、SpaceXは同じ場所で約1週間後に、StarHopperによる200mとさらに高い高度でのホップ飛行を予定している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

夢しかない宇宙!地表形状や高度・変位を測定する衛星開発のSynspectiveが累計109億円調達

衛星データの解析や合成開口レーダー衛星の開発・運用を行うSynspective(シンスペクティブ)は7月26日、シリーズAラウンドとして第三者割当増資による86.7億円の資金調達を実施した。2018年2月の創業からの累積調達額は109.1億円で、同社によると1年5カ月で同額の調達は宇宙スタートアップ企業として世界最速であり、日本国内では最大規模とのこと。

関連記事:堀江貴文氏語る「日本が世界に勝てるのは宇宙とロボティクス、今が大チャンス」
今回の資金調達により同社は、SAR(Synthetic Aperture Rada、合成開口レーダー)衛星の開発・製造体制とソリューション開発を強化するとのこと。また、将来的に25機の衛星群を構築し、世界主要都市の日次観測を目指す。

同社は、衛星による観測データを活用したさまざまな事業を手がけるスタートアップ。内閣府「ImPACT」プロジェクトの成果を応用した独自の小型SAR衛星により高頻度観測を可能にする衛星群を構築。衛星から得られるデータの販売、および、それらを利用した政府・企業向けのソリューションを提供する。

SAR衛星は、自ら電波を発することで地表形状や高度・変位を測定できる衛星。通常の光学式衛星とは異なり、曇天や夜間でも地上を観測できるというメリットがある。同社よると、低コスト・小型のSAR衛星による衛星群を構築することで、天候や時間帯に依存しない観測データが広域・高頻度で取得可能になるという。

これらのデータがどのように生かされるのかは提供先次第だが、これまでにない天候や日照に影響を受けずに高頻度で取得するデータが貴重なものであるのは確かだ。

第三者割当増資引受先は以下のとおり。

  • スペース・エースタート1号投資事業有限責任組合
  • 清水建設
  • ジャフコ
  • 東京大学協創プラットフォーム開発
  • 慶應イノベーション・イニシアティブ
  • Abies Ventures
  • みらい創造一号投資事業有限責任組合(東工大関連VCファンド)
  • 三菱UFJ信託銀行
  • 芙蓉総合リース
  • 森トラスト
  • SBI AI&Blockchain 投資事業有限責任組合
  • みずほ成長支援第3号投資事業有限責任組合

SpaceXが再々使用のドラゴン補給船を打ち上げ国際宇宙ステーションへ

SpaceXが18回目の商用補給ミッションであるCRS-18を打ち上げた。これは NASAの依頼を受けて、実験用、研究用、そして補給物資を国際宇宙ステーション(ISS)に届けるというものだ。このミッションで運ばれる荷物にはISSに装着される第2世代自動ドッキングリングであるIDA-3も含まれている。

IDA-3が装着されることで、将来宇宙ステーションを訪れる商用宇宙船が人手を煩わせずに自動的にドッキングを行うことができるようになる。CRS-18はフロリダのケープ・カナベラルから米国時間7月25日の東部標準時午後6時01分(日本標準時7月26日午前8時01分)に離陸した。

今回のミッションのために打ち上げられたドラゴン補給船には、約5000ポンド(約2300kg)の貨物が搭載されていた。またCRS-18には、Techshot(テックショット)という名の会社による3Dバイオプリンティングに使用するための有機組織や、Goodyear(グッドイヤー)によるタイヤ材料製造実験への研究材料も運んでいる。それどころかNickelodeon(ニッケルオデオン)で有名なグリーンスライム(ご想像のとおり、あのグリーンスライムだ)も持ち込まれる。これはISS米国国立研究所の担当で、宇宙飛行士たちが学生たちに流体が微小重力の下でどのように振る舞うかを教えるために利用される。

SpaceXは、前回のISS補給ミッションCRS-17で使ったFalcon 9の第1段ロケットブースターを、今回のミッションで再利用した。これは再整備されたロケットの迅速な再利用であり、最終的な目標である完全な再利用打ち上げ能力の実現が着実に近づいていることを示すサインである。今回のミッションに使われているドラゴンカプセルも、2015年4月のCRS-6と、2017年12月のCRS-13の2回にわたって使われた実績がある。

crs 18ファルコン9打ち上げをスピードアップ

CRS-18のFalcon 9の着陸の様子(2倍速)

今回の打ち上げではFalcon 9の回収も目標とされており、予定どおりケープ・カナベラルの空軍基地にあるSpaceXのLZ-1着陸ゾーンに着陸した。1段目のブースターは予定通り2段目とドラゴン補給船から切り離され、制御された降下を行って無事に地表に着陸した。打ち上げられたFalcon 9が無事回収されたのは、これで44回目である。

ドラゴンカプセルに次に控えているイベントは、7月27日に行われる予定のISSとのドッキングだ。その後、宇宙飛行士によって貨物が降ろされ、3300ポンド(約1500kg)の戻り貨物が受け取られる。この戻り貨物ははドラゴンとともに地球に戻り、太平洋への着水でミッションが締めくくられる。

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(翻訳:sako)

日本の宇宙開発企業ispaceの子会社が欧州宇宙機関による月の水探査プロジェクトに参加

日本の宇宙開発企業のispace(中国のiSpaceとは別会社)の子会社でルクセンブルクを拠点とするispace Europeは、欧州宇宙機関(ESA)が2024年〜2025年に実施する南極での水探査ミッションことPROSPECTに参加する。

PROSPECTは「Pprospecting」(展望)のクールな言い回しであるだけではない。これは「資源観測パッケージおよび探査、商業利用および輸送のための現地調査(Package for Resource Observation and in-Situ Prospecting for Exploration、Commercial exploitation and Transportation)」を意味する。具体的には、ロシアのRoscosmosによる月ミッションを利用し、ESAのペイロードを輸送するというものだ。ESAのペイロードは、常に太陽光の当たらない極にある月の水からなる氷を探すことになるだろう。

ispaceの貢献は、ミッションが取得したデータの計画、運用、解釈を支援するために選ばれた3人のメンバーを通じて、才能を証明するという形をとる。ispace Europeの宇宙・地球鉱山計画エンジニアのCalros Espejel氏は、探査の観点から現場での資源探査(将来の月ミッションにて現地の資源を利用することになる)の調査と任務とするミッションを率いる。

2010年に東京で設立されたispaceは、2018年に1億ドル以上の資金を調達しており、2020年と2021年にSpaceX(スペースX)のFalcon 9ロケットを利用した2つのミッションを予定している。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

iSpaceが中国初となる衛星の民間打ち上げに成功

米国東部時間7月25日1時10分にゴビ砂漠からの打ち上げが成功したことで、中国のiSpace(あるいはStarCraft Glory Space Technology、日本のispaceとは別会社)は中国初の民間商業打ち上げ事業者となった。同社のSQX-1 Y1ロケットは2機の商業人工衛星を高度約300kmの軌道へと投入した。

打ち上げはiSpaceによって開発された固体ロケットのSQX-1 Y1によって実施され、4段式のこのロケットは重量6万8000ポンド(約31トン)で、260kgのペイロードが搭載できる。これは中国の宇宙産業にとって重要なマイルストーンであり、iSpaceはLandSpaceやOneSpaceといったまだ商業打ち上げ市場で成功していない強力なライバルを打ち負かした。

2016年10月に設立されたiSpaceは、CDH Investment、Matrix Partners China、Shunwei Capitalからの投資を含む、金額非公開のシリーズA資金調達ラウンドを6月に実施した。同社は以前、SQX-1 Y1ロケットの前モデルにて2018年に弾道飛行を成功させている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

光の力で帆走する宇宙船「LightSail2」から届いたソーラーセイルの素晴らしい展開画像

米国時間7月24日にクラウドファンディングによって資金が調達された宇宙船「LightSail 2」は、宇宙空間において効率的な飛行を可能にするために表面で光子を受け止める大きなシート状の反射素材である、マイラー(ポリエステルの一種)製のソーラーセイルを展開することに成功した。これまでは宇宙船から送られたデータによる観測だったが、LightSail 2が地上局の通信範囲に入った時に送信した新しい画像のおかげで、それが視覚的に証明された。

これらの画像と、魚眼カメラから撮影された一連の画像から生成されたアニメーションGIFは、ボクシングリング大のマイラー製セイルが展開される様子を示しており、GIF画像は実際にセイルが完全に展開された時間の100倍速となっている。これは重要なマイルストーンであり、先代のLightSaildでは達成できなかった偉業だ。今回のミッションではLightSail 2がCubeSatをソーラーセイルにより自力で推進するデモが予定されており、これは宇宙での研究におけるアクセシビリティと運用コストの両面で大きなメリットがある。

この宇宙船はジョージア工科大学の学生チームによって組み立てられ、6月のFalcon Heavyのミッションで打ち上げられた。宇宙船では展開前のテストが実施されており、惑星協会によれば戻ってきたデータは「クリップほどの重さ」と同等の太陽光の推進力により、セイルが押されていることを観測している。このわずかな力が蓄積されることで最終的には、計画通りにことが進めばLightSail 2の軌道を上昇させ、小型人工衛星に向いた推進方法の可能性を実証するだろう。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter