“声のブログ”として注目集める「Voicy」が16人の投資家から2800万円を調達

僕の周りにいるのは、比較的新しいアプリやWebサービスを試すのが好きな人が多いからなのかもしれない。周囲でボイスメディア「Voicy(ボイシー)」を使い始めたという話を聞く機会が増えた。実は僕も1年ほど前から始めて、今では移動中を中心にほぼ毎日何かしらのコンテンツを聞いている。

最近はインフルエンサーや著名な起業家も配信を始めて、一気にユーザー層が広がっているように思えるVoicy。同サービスを提供するVoicyは2月19日、16人の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、2800万円を調達したことを明らかにした。

今回同社に出資したのはヘイ代表取締役社長の佐藤裕介氏やDeNA共同創業者の川田尚吾氏のようにTechCrunchの記事でもたびたび個人投資家として登場するメンバーもいれば、ホリプロ代表取締役の堀 義貴氏のようにあまりスタートアップ界隈では名前を聞かないような起業家もいる。各投資家は事業メンターとしてVociyをサポートする予定だということだ。

なお同社は2017年3月にも12人の個人投資家から数千万円の資金を調達している(公開されている株主については末尾で別途紹介)。

「声と個性を楽しむこれからの放送局」というテーマで2016年の9月にリリースされたVoicy。当初は大手メディアや雑誌などから提供を受けた「活字」コンテンツを、音声に置き換えて届けるという色が強かったように思う。

ただ最近はこれまでになかった「声のブログ」として使われ始め、活字メディアをベースとはしない、自由な形式のコンテンツが増えてきた。配信者も多様化してきていて、ブロガーのはあちゅう氏やイケダハヤト氏、起業家の家入一真氏や佐藤裕介氏もチャンネルを開設する。

この点についてはVoicy代表取締役CEOの緒方憲太郎氏も「声のブログという世界観を年始に立ち上げて、家入さんやはあちゅうさんがはじめたところ『声で聞くとこんな感じなんだ!』と話題になった。発信者も思いを十分に届けることができるし、最後まで聞いてくれるリスナーはポジティブな人も多いので喜んでもらっている」と話す。

また今後スマートスピーカー市場が拡大を見込まれている点も同社にとっては追い風になるだろう。すでに「Google home」上ではニュースコンテンツの配信を開始。「Amazon Ehco」でもアルクの外国語教材の配信支援を行うほか、中京TVとの新しい音声体験の開発を進めているという。

Voicyでは今回調達した資金をもとに組織体制を強化し、「VoiceTechカンパニー」として成長する音声市場でさらなるサービス拡大を目指す。

なお、公開されているVoicyの株主陣は以下の通りだ。

  • 秋山勝氏(ベーシック代表取締役)
  • 伊藤将雄氏 (ユーザーローカル 代表取締役社長)
  • 川田尚吾氏 (DeNA 共同創業者)
  • 佐渡島庸平氏(コルク代表取締役社長)
  • 佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
  • 島田亨氏 (USEN-NEXT HOLDINGS 取締役副社長COO)
  • 高梨巧氏 (favy 代表取締役社長)
  • 為末大氏 (侍 代表取締役)
  • 千葉功太郎氏(個人投資家)
  • 平澤創氏 (フェイス 代表取締役)
  • 堀義貴氏(ホリプロ 代表取締役)
  • 松本大氏(マネックスグループ 代表執行役CEO)
  • 山田尚貴氏 (エニドア 代表取締役)
  • 柳澤大輔氏 (カヤック 代表取締役CEO)

AR砂遊びなどを楽しめる次世代テーマパーク運営のプレースホルダ、TBSらから6億円を調達

体験型のデジタルテーマパーク「リトルプラネット」を展開するプレースホルダは2月15日、TBS、インキュベイトファンド、みずほキャピタルを引受先とする第三者割当増資により、総額約6億円を調達したことを明らかにした。

リードインドベスターを務めたTBSは今回の出資によりプレースホルダ代表取締役の後藤貴史に次ぐ持分を保有し、プレースホルダは関連会社になるという。

リトルプラネットは「アソビがマナビに変わる」をテーマにした体験型のデジタルテーマパークだ。AR・VRやセンシング技術など最新のテクノロジーを取り入れて、子どもだけでなく大人でも楽しめる空間を提供している。

たとえば「SAND PARTY!」は砂場と映像を組み合わせた、“AR砂遊び”アトラクション。砂場の形状に応じて様々な演出が発生するほか、ARガジェットを使って宝箱を開けたり、見えない生き物を虫眼鏡でみるといった未来感のある体験を届ける。

ほかにも実際にはインクの出ないスプレーを使って壁やVR空間でラクガキができる「SPRAY PAINTING」や、リアル空間にデジタル積み木が融合するAR積み木「Little Builders」、ブロックを操作してキャラクターを目的地に導く過程でプログラミング脳を養える「WORD ADVENTURE」など、見ているだけでワクワクするアトラクションが並ぶ。

現在は東京都立川市にあるららぽーと立川立飛にて期間限定(2018年2月25日まで)でテーマパークを運営しているほか、7月20日からはハワイのワイキキ水族館でも展開する予定だ。

今後はパーク数の拡大のほか、TBSの持つエンターテインメントアセットを活用した新しいコンテンツ開発などにも取り組む方針。同社では「リトルプラネットを起点として、子どものやる気に火をつけ、創造力を駆使して新たな価値を作るきっかけを与えていけるエデュテインメント領域のリーディングカンパニーを目指します」としている。

なおプレースホルダは2016年9月の創業。代表取締役の後藤貴史氏はポケラボの創業者でもある、連続起業家だ。

水産業者間の流通をスマホで変革、広島発ポータブルが1.2億円を調達

水産業者間のマーケットプレイス「UUUO(ウーオ)」を開発するポータブルは2月15日、インキュベイトファンド、IF Lifetime Ventures、広島ベンチャーキャピタル、とっとりキャピタルを引受先とする第三者割当増資による総額1.2億円円の資金調達を実施したことを明らかにした。

調達は2017年8月から2018年2月にかけて行っていて、シードラウンドおよびプレシリーズAラウンドにあたるものだという。またインキュベイトファンドの代表パートナーである村田祐介氏が同社の社外取締役に就任したことも明かしている。

ポータブルが開発するUUUOは「スマホでつながる水産市場 」をコンセプトとした、産地と中央市場の水産事業者をつなぐプラットフォームだ。

出品時に必要なのはスマートフォンやタブレットで写真を撮って特徴を入力することだけ。サイズや魚種などはタブで選択することがほとんどで、作業に大きな手間がかからないことが特徴だ。購入時も数量を入力し、購入ボタンを押すだけで完了する。

また今後は購入者側の事業者が魚種や価格、サイズや産地など欲しい水産物の条件をリクエストできるようになる機能も追加する予定だという。

ポータブルは広島発の水産系スタートップで、2016年7月の創業。創業者で代表取締役の板倉一智氏は、松葉がにの産地として有名な「網代港」がある鳥取県岩美町の出身。親族や知人には漁業従事者も多く、この業界になじみがあったという。地元漁船の減少やセリの衰退など水産業の現状を知り、水産市場流通の活性化を目指すためにUUUO(旧サービス名:Portable)を立ち上げた。

同社は2017年5月にKDDI ∞LABO Demo Day 地方選抜企業に選出。同年8月にはインキュベイトキャンプ10thにも採択されている。

今回調達した資金で開発・営業面の人材採用を強化するほか、鳥取市に自社出荷拠点となるUUUO Base(ウーオベース)の開設を進め、サービスの拡充を図る。

あえてデザインのカスタマイズ機能を省く――個人事業主向けWebサイト作成サービス「MOSH」が資金調達

個人事業主向けのWebページ作成サービス「MOSH」を提供するMOSHは2月15日、ジェネシア・ベンチャーズと実名型グルメサービスのRettyを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は2000万円だ。

MOSHのメンバー。写真左より2番目が、代表取締役の藪和弥氏

最近では、個人として活躍するヨガインストラクターや英会話講師などの人々がSNSで自分のビジネスをPRすることも多くなったように思う。でも、SNSにはサービスの予約機能などはないから、これだけでビジネスができる、というツールではない。

今回2000万円を調達したMOSHは、そういった個人事業主向けに、情報発信のツールとしても使えるだけでなく、予約機能なども備えたWebページの作成サービスを展開している。

MOSHで作成したWebページ例

本日より正式リリースとなるMOSHを使えば、必要事項などを記入していくだけで簡単にWebページを作成することが可能。利用は無料だ。

Webページ上には自身が提供するサービスのメニューや予約ページを加えることができるほか、サービスを利用するユーザーが評価したレビューも溜まっていく仕組みだ。Instagramの投稿を自動的にMOSHに反映させる機能もある。

MOSHで作るWebページのデザインはとてもシンプルだ。また、それは完全にモバイルからの閲覧に特化したデザインでもある。

でも、MOSHではそのシンプルなデザインに手を加えることは不可能だ。代表取締役の藪和弥氏に聞けば、デザインのカスタマイズ機能は「あえて省いた」という。

WordPressでブログを作ったことのあるTechCrunch Japan読者なら分っていただけると思うが、デザインのカスタマイズは楽しい反面、それが逆に面倒くささや煩雑さを生みかねない。僕も、本来ならばコンテンツを充実させるべきなのに、デザインのカスタマイズに何日もかけて満足しちゃった、なんてことは何度もあった。

一方でMOSHは、HTMLやCSSの知識がまったくなくても、スマホだけで簡単に始めることができるという手軽さを追求した。その結果、カスタマイズ機能はあえてつけないと決断したという。とても理にかなった選択だと個人的には思う。

MOSHは2017年10月に同サービスのベータ版をリリース。これまでに約100件のWebページが作成されている。MOSH代表取締役の籔和弥氏によれば、ベータ版のユーザーの約半数はヨガインストラクターなのだそうだ。「ヨガインストラクターは個人で活動する人も多く、サービスの単価も高い。だから、ベータ版ではそのヨガインストラクターに的を絞ってマーケティングをした」(藪氏)

今のところMOSHにはまだ決済機能が備わっていないが、同社はその機能を導入後、Webページ上での決済ごとに手数料を受け取りマネタイズしていく。

MOSHは2017年7月の創業。今回のラウンドが同社初の外部調達となる。代表取締役を務める藪氏は、今回のラウンドにも参加するRettyに所属していた人物。彼が入社したのはRettyの従業員がまだ7人ほどしかいなかった頃だというから、かなり初期の段階で加わったメンバーの1人だ。

藪氏は、大学時代にはブレイクダンスに没頭していて、1年生の時には全国大会で優勝をしたこともある。そういった経歴をもっていることもあり、彼の周りには今でもクリエイティブ系の知り合いが多いという。

ただ、彼らのようなクリエイティブ人材が、「すごく努力をしているにも関わらず、経済的には上手くいっていない」(藪氏)という状況に藪氏は歯がゆさを感じていてもいた。その課題をサービスの力で何とか解決したいという想いで立ち上げたのがMOSHだ。藪氏は、「将来的には個人のWebページ作成サービスだけでなく、個人が自分のスキルを売買できるマーケットプレイスも作って行きたい」と今後の目標について語った。

人材紹介会社マッチングのgrooves、地銀系VCなどから1.8億円を資金調達——地方の人材不足解消を支援

有料職業紹介、つまり人材紹介を行う事業所は、日本全国で約2万カ所もある。実はそのうちの多くが、社員数名以下の中小零細規模だという。人材を探す側としては、優秀な人材を中途採用するなら、できるだけ多くの人材紹介会社と接点を持つ方が採用の成功確率は上がるが、小さな事業所1社1社と契約し、毎回募集内容を登録するのは手間がかかるため、大手エージェントに利用が流れがちだ。

groovesが運営する「Croud Agent(クラウドエージェント)」は、求人を1カ所に登録することでその手間を省きながら、複数の人材紹介会社が抱える人材とマッチングできるプラットフォームだ。

groovesは2月13日、いよぎんキャピタル、新潟ベンチャーキャピタル、北洋キャピタルが運営するファンドと、新生銀行を引受先として、総額1.8億円の第三者割当増資を実施したことを明らかにした。groovesでは、2017年2月に実施した大分ベンチャーキャピタル、広島ベンチャーキャピタルからの資金調達を皮切りに、地方銀行系ベンチャーキャピタル(VC)も含む地域金融機関からの資金調達と提携を進めている。今回の調達により、地域金融機関(地銀系VC含む)からの出資・提携は11行・社、資金調達額は累計4.5億円となった。

groovesが「社会課題を解決する意味もある」として取り組むのは、地方の人材不足に対する支援だ。地域に根ざす金融機関は、金銭面で地域の中小企業を支えることはできるが、事業をスケールさせる人材を実際に集めることは難しい。そこでCrowd Agentを運営するgroovesが金融機関と連携することで、人材確保の面で企業の支援を行っていく考えだ。

こうした「金融機関×人材紹介」の動きを後押しする動きも背景にある。1月23日、金融庁が明らかにした「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」の一部改正案では、銀行やその子会社などが、職業安定法に基づく許可を得た上で、人材紹介業務を行うことを認める内容となっている。

Crowd Agentは、人材紹介会社約500社に利用されており、そのメインは都市部のエージェントだ。しかし、都市部在住の地方出身者を紹介するケースでは、地域金融機関との連携で、実際にUターン・Iターン採用を果たした例も出ているという。groovesは「地域で、絶対数の少ない候補者の中から人材を探すのでは、思ったような人材の採用は難しい。その点でも、銀行だけではできないことをgroovesで支援していく」という。

groovesでは、地方企業が人材紹介会社を利用することの効果について「地方企業がウェブメディアに掲載されたとしても、都市部から転職しよう、とはなかなかならないもの。しかし人材紹介会社が、企業のメリットなどを細かくヒアリングして魅力を伝えることで、転職が起こりやすくなる」と説明する。「例えば、大分県に資本金1000万円未満のIoT関連スタートアップがある。普通に転職活動をしていたら、出身県だったとしても転職先候補には挙がりにくいし、気づかれない可能性がある。そうした企業でも、『大分ベンチャーキャピタルや行政からの支援も得て、IPOを目指しているんですよ』といった情報を人材紹介会社が説明することで、『それじゃあ、3年とか5年ほどそこで働いて、実績を上げてみるか』ということも起こりうる」(grooves担当者)

現在、Crowd Agentを使って求人を行う企業のうち、約25%が地方企業だそうだ。groovesは「人材紹介会社とのマッチングプラットフォームを、地方企業は高く評価してくれている」として、地域経済活性のための人材供給にさらに力を入れ、地域銀行との連携の拡大、47都道府県を網羅する全国の地域銀行との提携・開拓を目指す。

試験対策から生活情報まで、外国人留学生向けEラーニングのLincが1億円調達

外国から日本に留学する人材向けのオンライン教育サービスを提供するLincは2月14日、ジェネシア・ベンチャーズBEENEXTを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は1億円だ。

Lincの中心メンバーたち。写真左が代表取締役の仲思遥氏。ここに写る全員が外国籍の留学生だ。

近年、日本における外国人留学生数は右肩上がりで推移している。2007年には約12万人だった留学生数は、その10年後の2017年には約26万人にまで増えた。そういった人材が日本に来る際に障害となるのが、言語や文化の壁だ。Lincは同社のオンライン教育サービス「羚課日本留学」を通してその壁を取り払おうとしている(羚課はLincの中国語発音だ)。

現在、Lincが主に提供しているのが留学生向けの試験対策カリキュラムだ。外国人留学生が日本の大学に入学する場合、日本留学試験(EJU)を受験する必要がある。これは留学生版のセンター試験とも言えるもので、日本語能力のほか、地理、歴史、政治経済などの文系科目や、物理や化学などの理系科目などの基礎学力を評価するテストだ。

LincではこのEJU対策カリキュラムをオンライン授業という形で提供している。ただし、現在は歴史や数学などの科目の授業のみを提供。語学としての日本語を教える授業は提供していない。また、Lincは今のところ中国人向けにサービスを特化しているため、授業はすべて中国語で提供している。同社によれば、ターゲットとなる中国語圏の日本語学習者は約100万人ほどいるという。

羚課日本留学のオンライン授業には録画とライブ配信の2種類がある。科目授業など知識系の授業では録画形式で授業を行ない、日本に渡航したあとの生活についてレクチャーを行う授業では、受講者からの質問に対応するためにライブ配信で授業を行っている。この、日本の生活についてのレクチャーは、日本の慣習や文化に慣れない留学生にとって価値のある情報だ。

クレジットカードの審査で見られる信用情報(クレジットヒストリー)の履歴は、渡航した直後から蓄積される。留学生はその認識が低くなりがちで、渡航直後に公共料金の支払い遅延があったなどという理由でクレジットカードが発行されないケースもあるという。ライブ配信の授業ではこういった日本のルールについても学ぶことができる。「その人が育った国の常識に従えば良いのではなく、日本ではそういった遅延がのちのちトラブルにつながる可能性があることなどを教える」(Linc代表取締役の仲思遥氏)

こう話す仲氏自身、中国出身の外国人として日本の大学を卒業した元留学生だ。中国で生まれた仲氏は6〜12歳まで日本で暮らした。その後中国に戻ったが、「日本での生活が好きだった」という仲氏は進学先として日本の大学を選んだ。仲氏自身が日本での生活から学んだ“体験”を外国人留学生に伝えたいという。

現在のところ羚課日本留学では約680本の授業動画が提供されていて、総視聴回数は10万回を超えるという。単月ベースでの黒字化はすでに達成しているそうだ。羚課日本留学の利用料金は1年契約で10万円。日本語学校の中には日本留学試験の対策講座を行っている学校もあるが、それらの授業料は1年あたり約60〜70万円の費用がかかることもある。それに比べれば、羚課日本留学の利用料金はかなり安く設定されていると言えるだろう。

外国人が日本に留学しようと決意したとき、彼らの多くはまず留学エージェントに相談する。エージェントはバックマージン欲しさに日本語学校への入学を強く勧めるが、それが唯一の選択肢だと勘違いしてしまっている人もいる。その結果、授業料の支払いのために母国で大きな借金を抱えて来日する人たちもいる。仲氏は羚課日本留学について、「日本語学校以外の選択肢の1つとして見てもらいたい」と話す。

今回のラウンドで1億円を調達したLincは、今後カリキュラムの提供国を東南アジアにまで拡大する。また、将来的には、サービスを通して集めたユーザーデータをもとに外国人材の「信用」をスコア化し、それを利用して外国人向けの住宅探し、アルバイト探し、転職支援サービスなどにビジネス領域を拡大していきたいという。仲氏は今後、さまざまなライフイベントに関わるサービス群を提供していくことで「外国人版のリクルートを目指したい」と将来のビジョンを語った。

オーガニック農家と消費者をつなぐ「食べチョク」が4000万円を調達、好みの野菜が届く新サービスも

(写真上段左から)CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、アドイノベーション代表取締役の石森博光氏、エウレカ創業者の赤坂優氏(写真下段左から)ビビッドガーデンCOOの大河原桂一氏、ビビッドガーデン代表取締役CEOの秋元里奈氏

オーガニック農作物のC2Cマーケットプレイス「食べチョク」を提供するビビッドガーデン。同社は2月8日、エウレカ創業者の赤坂優氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、アドイノベーション代表取締役の石森博光氏、アカツキ代表取締役の塩田元規氏ほか1名の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額4000万円を調達したことを明らかにした。

ビビッドガーデンは2016年11月の設立で、外部からの資金調達は今回が初めて。調達した資金を基に人材採用やサービスの改善、拡張を進めていく方針。その一環として、本日よりユーザーの好みに合ったオーガニック野菜を定期的に届ける「食べチョクコンシェルジュ」の提供も始めている。

正式リリースから2ヶ月で登録農家が100件に

食べチョクについては2017年8月の正式リリース時にも紹介したが、同社の基準をクリアしたオーガニック農家のみが掲載されたマーケットプレイス。ユーザーと農家を直接つなぐC2Cのモデルだ。

農薬や肥料を使っていない生産物が、鮮度の高い状態で自宅に届く(最短で24時間以内)ことが特徴。時にはスーパーではあまり手に入らないような、珍しい野菜を購入できるという利点もある。

8月時点で60件ほどだった登録農家数は、メディア掲載や農家間の口コミの効果もあり2ヶ月で約100件まで増加した。

ビビッドガーデン代表取締役社長の秋元里奈氏によると、農家にとって食べチョクは「自分たちのこだわりをしっかりと理解してもらった上で販売できる、専用のホームページ」のような位置づけだという。新しい販路になりえるだけでなく、顧客と直接コミュニケーションをとれることをメリットに感じる農家が多いそうだ。

また中には野菜作りは得意でも、商品設計やマーケティングが苦手な人もいる。そこは食べチョクが商品の文言や紹介の仕方を細かくサポート。「風邪予防」などサイト全体で特集パッケージを組み、該当する農家を複数紹介することもやっているという。

秋元氏の実家は以前から農業を営んでいたものの、市場出荷のみで経営を維持することが難しくなり、遊休農地に。小規模農家の販路拡大という課題解決に向けてスタートしたのが食べチョクだ。ただ秋元氏自身がDeNAを経て企業していることをはじめ、チームや今回の投資家陣はIT業界のメンバーが中心。サービス設計や細かい施策などにはそのカラーも反映されている。

ユーザーの好みに合わせて最適な野菜が届く新サービス

一方ユーザー側についても、首都圏エリアで小さな子どもを持つ30代の主婦を中心に利用者が増加。特にリピート率が50%と予想より高い数字になっているという(新たにリリースする定期購入サービスなどを通して、この数値はさらに改善できる余地があるそう)。

「(小さい子は)食べ物の影響が出やすいため、食材に気を使う親御さんが多い。オーガニックということに加え、生産者の顔が見え直接やりとりできる点も安心につながる。他と比べて必ずしも安いわけではなくても、作り手から直接買いたいというニーズがあることがわかった」(秋元氏)

たとえば毎週土日に青山で開催されるファーマーズマーケットには約1万人が集まり、農家を含む生産者と消費者が直接やりとりしながら盛り上がるという。秋元氏いわく、食べチョクは「青山ファーマーズマーケットのオンライン版」のイメージに近いそうだ。

ただ農家や品数が増えるにしたがって、ユーザーからは「何を選んだらいいのかわからない」という声も届くようになった。そんな悩みを解決するためにリリースしたのが、食べチョクコンシェルジュだ。

同サービスでは最初にユーザーが食材の好き嫌いや、オーガニック志向性などを登録して注文する。するとその情報に合わせて最適な農家を運営側で選定し、農作物が届く。届いた作物の感想を送ることで、次回以降さらに好みにあったものが配送されるという「定期購入型」のオーダーメイドサービスだ。

プランはSプラン(税込、送料込みで月額2980円)、Mプラン(同3980円)、Lプラン(同4980円)の3つを用意。今回のサービスでは毎回農家を固定しない形をとるが、今後はAmazonの定期便のように、特定の農家から定期購入できる仕組みも検討するという。

農家にファンがつく“コミュニティ”目指す

秋元氏によると現在の食べチョクは「いろいろなテストを繰り返し、ノウハウを貯めている」フェーズ。そこで培ったナレッジを農家に提供したり、サービスの改善に活かしたりすることで、このプラットフォームを広げていく方針だ。

「将来的に目指しているのは、ECサイトではなくて農家と消費者がつながるコミュニティ。生産者に直接ファンがつくような場所を目指したい」(秋元氏)

たとえば今後は食材だけでなく、食べ方の提案を一緒にすることなども考えているという。現在でも中には自作のレシピを同封している農家もあり、ユーザーからの評判もいいそう。野菜の味を活かした食べ方を伝えることは、双方にとって大きなメリットがある。

ちょうど1月にクックパッドが運営するアクセラレータープログラムに採択されたこともあり、新たな取り組みを検討しているという。

「とはいえ(コミュニティの実現に向けては)超えなければいけない障壁もまだ多い。ITに慣れている農家ばかりではないので、まずはどんな人でも気軽にWebで発信できるような仕組みを整えていく必要がある。生産者と消費者の距離感が近づくような方向で、サービスを大きくしていきたい」(秋元氏)

アパレル業界特化の法人向けフリマサイト「SMASELL」運営が1億円を資金調達

アパレル業界特化型のBtoB向けフリマサイト「SMASELL(スマセル)」を運営するウィファブリックは2月7日、CROOZ VENTURESセプテーニ・ホールディングスKLab Venture PartnersSMBCベンチャーキャピタル池田泉州キャピタルを引受先とする、1億円の第三者割当増資を1月に実施していたことを明らかにした。セプテーニ・ホールディングスとは、業務での連携も検討しているという。

同社が運営するSMASELLは、法人間で在庫売買ができる繊維・ファッションのフリマサイトで、2017年7月にサービスを開始。アパレルで売れ残った不動在庫は従来、廃棄処分するか買取処分業者に安価で下取りしてもらうしかなかったが、在庫を処分したい人と買い取りたい人をマッチングすることによって、これを通常流通価格の30〜99%で売買できるようにした。

ウィファブリックは、2017年8月に行われたB Dash CampでSMASELLのピッチを行い、ファイナルラウンドに進出した。また同年9月のシードアクセラレーションプログラム、Incubate Camp 10thのピッチにも参加している。

リリースから6カ月となる現在、SMASELLには大手アパレル企業・商社・百貨店・リサイクルショップなどの企業が登録。2017年9月時点で150社だった登録社数は、350社超に拡大したそうだ。

ウィファブリックは、アパレル業界で10年以上の経験を持つ福屋剛氏が、2015年3月に設立。これまで、2016年11月にKLab Venture Partnersと日本ベンチャーキャピタルの運営するファンドから数千万円、2017年8月にリサイクルショップ運営のベクトル、KLab Venture Partners、レジェンド・パートナーズなどから約3000万円を資金調達している。

電話予約や紙のカルテが不要に――美容師のカルテ管理アプリ「LiME」が7000万円調達

美容師のカルテ管理サービス「LiME(ライム)」を提供するLiMEは2月7日、「@cosme」などを運営するアイスタイルを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は7000万円だ。

LiMEのメンバーら。写真一番左が代表取締役の古木数馬氏

腕の良さそうな美容院をネットで探し、電話で予約する。その際、「ご希望の担当は?」と聞かれるが、初めてで誰がよいのか分からないので、「空いている人で」と言い返す。そんなやり取りがなくなるかもしれない。

美容院で扱う顧客カルテとは、顧客の髪質や過去の髪型を書き留めておく書類のことだ。通常、そのようなカルテは紙で保管されており、人気の美容師であればあるほどその数は膨大になる。

LiMEを使うことで、美容師はその顧客カルテをスマホアプリで管理することが可能になる。アプリなので顧客の検索も簡単で、スマホで写真をとってアップロードすれば過去の髪型もすぐに見返すことができる。また、LiMEは予約管理ツールとしても機能する。受付のPCから予約情報を入力すると、美容師がもつアプリに搭載されたカレンダーにもリアルタイムで予定が反映される。

LiMEは今回調達した資金を利用して、美容師に通う一般ユーザー向けに予約アプリ「STEKiNA」の開発にも着手する予定だという。STEKiNAはLiMEの予約台帳は一元管理される予定で、このアプリが完成すれば、ユーザーはわざわざ美容院に電話連絡をしなくても、アプリ上のカレンダーにある「空き」の部分に予定を入力するだけで予約できる。

また、このアプリはお気に入りの美容師を見つけるための手段にもなる。美容師と一括りに言っても、それぞれが得意・不得意の分野をもっている。ある人はカラーやショートヘアーが得意な一方で、ある人はパーマやロングヘアーが得意といった具合だ。STEKiNAは美容師専門のSNSのような要素もあり、美容師が過去に手がけた髪型や日々の仕事の様子などを投稿することができる。それに加え、ユーザーからのレビュー機能も追加される予定だ。

ユーザーはそれを見て、自分がなりたい髪型が得意そうな美容師を見つけ、そのままアプリでその美容師のスケジュールをチェックし、予約することも可能になるという。

LiMEはフリーミアムのマネタイズモデルを採用。カルテ管理、予定管理、売上レポートなどの基本機能は無料で提供し、美容師間でのカルテの共有・閲覧、より詳細な売上レポートは月額7800円で提供する。

「ユーザーがInstagramを通して(美容室ではなく)美容師を探すという例が増えている。従来のサービスのように事業体である美容室に光を当てるのではなく、個人である美容師に力を与えるようなサービスを作りたかった」と、LiME代表取締役の古木数馬氏は語る。

美容師から起業家へ

ちなみに、古木氏は現役の美容師だ。平日は起業家としてサービスを開発するが、週末には今も美容師としてハサミをもつ。スタートアップ業界とは無縁だったという古木氏が起業するきっかけになったのは、彼が所属していた美容院にたまたま通っていた、ツクルバ代表取締役の村上浩輝氏との出会いだった。

古木氏は美容師として働くうちに、美容業界が抱える課題を認識するようになったという。しかし、その具体的な解決方法を見出すことはできずにいた。「浩暉さんの担当として髪を切っているとき、どんなわけか、僕が胸に抱えていたモヤモヤを話すことがあった。それを聞いた浩暉さんは、その解決策の1つとして『起業』という手段があることを教えてくれた。その言葉を聞いたのは、それが生まれて初めてだった」と古木氏は語る。

起業を決意した古木氏は、これから手がけるビジネスについてのイメージを固め、ピッチイベントにも参加した。でも結果は惨敗で、「ボコボコにされてしまった」(古木氏)。ビジネスについての知識の無さを痛感し、そこから猛勉強を重ねたという。

そして2016年4月、LiMEをリリースした。サービスリリースから約1年半がたった今、LiMEに登録した美容師の数は9000人に拡大している。古木氏は、LiMEはまだ大々的なPR活動を行っておらず、この数のユーザーを集められたのは美容師間の口コミの効果が大きいと話す。美容師である古木氏は、美容院の現場で実際に働く人々の目線でこのサービスを作った。だからこそ美容師たちに受け入れられ、口コミが生まれたのかもしれない。

保険を“シェアする”時代が来るか、justInCaseがP2P型の「スマホ保険」をリリース

テクノロジーを活用した少額保険サービスを提供するjustInCaseは2月7日、既存投資家の500 Startups Japanメルペイ代表取締役の青柳直樹氏を引受先とした資金調達を実施したことを明らかにした。調達金額は3000万円だ。

justInCase代表取締役の畑加寿也氏。写真はTechCrunch Tokyo2017で開かれたスタートアップバトルのもの

TechCrunch Tokyo 2017のスタートアップバトルにも出場したjustInCaseは、テクノロジーを活用した少額保険サービスを手がけるスタートアップ。同社代表取締役の畑加寿也氏は保険数理の専門家(アクチュアリー)だ。

スタートアップバトルに出場した当時、justInCaseはサービスリリースに向けて準備をしている最中だった。しかし今回、同社はスマホの画面割れなどの修理費用を保障する「スマホ保険」を、事前登録者限定の“先行サービス”としてテストリリースすると発表した。

スマホ保険の特徴は大きく分けて3つある。1つ目は、何かと面倒くさいイメージがある保険を身近に感じさせるようなUI/UXだ。

スマホ保険に加入するユーザーは、もちろんスマホの所有者。だから、justInCaseはスマホから簡単に申し込めるようなUI/UXの設計にこだわり、最短90秒程度で加入申し込みができるようにした。

2つ目は、「P2P保険」という新しい保険の仕組みだ。これは、友人同士などの限られたメンバーでグループを作り、そのグループメンバーが互いに保険料を拠出しあうというもの。メンバーの1人に保険金支払いの事由が発生した場合には、グループ内にプールされた保険料から保険金が支払われる。つまり、出しあったお金をメンバーでシェアするのだ。

また、保険期間満了時に保険金請求の額が少なく、プールに残高がある場合には、その残高は保険金請求を行わなかったメンバーにキャッシュバックされるという仕組みもある。保険料はスマホの機種などによって変わるものの、月額最低200円から加入可能だ。

AIが算出する“安全スコア”によって更新保険料の割引額が決まることもスマホ保険の特徴の1つだと言える。ユーザーのスマホから取得した端末の“扱いやすさ”や活動状況などのデータを分析することで安全スコアを算出。それをもとに故障リスクを判断し、それが低いと診断されたメンバーには更新時に割引というかたちで還元するという仕組みだ。

P2P型保険がもつメリットは、グループに加入するもの同士の顔が見えることから保険金詐欺やモラルハザードが起こりにくいという点や、キャッシュバックの仕組みにより保険金請求を行なわなかったユーザーは結果的に安い保険料で保障を受けられるという点だ。海外ではすでに先行事例があり、LemonadoFriendsuranceなどがサービスを提供している。

しかし一方で、日本の金融庁はP2Pという保険の仕組みを認可していない。また、現時点のjustInCaseは少額短期保険業者としての登録も完了していない。そのため、同社はプレスリリースのなかで、今回のテストリリースでは「保険業法の適用除外規定」を適用すると説明している。

保険業法では、ある一定の条件を満たすサービスは保険業法の適用範囲外とするという規定が定められている。その条件の1つが、保険を提供する相手方(ユーザー)が1000人以下であるというものだ。

そのため、justInCaseは先行サービスを事前登録者限定の招待制とし、保険を提供するユーザーの人数を1000人未満に制限することでサービスを開始する。また、今回先行サービスとしてリリースされるスマホ保険も、少額短期保険業者の登録が完了した段階でいったん提供中止となる。その後、P2Pの仕組みを排除した“正式版”がリリースされる予定だ。

justInCase代表取締役の畑氏は、これから金融庁と「長丁場で議論を重ねていく」としているが、同社がP2P保険の仕組みを正式なサービスとして提供できるかどうかは、まだ分からない。ただ、通常の保険もP2P型保険も「相互扶助」の精神をもつという点では同じだ。個人的には、このような新しい仕組みが保険業界に新しい風を吹き込んでくれると面白いと思う。

コインロッカー革命へ「ecbo cloak」がJRやメルカリとタッグ、1万店舗への導入と配送サービスの実現目指す

写真右がecbo代表取締役社長の工藤慎一氏、左が取締役の藁谷ケン氏

店舗の空きスペースを活用した荷物預かりシェアリングサービス「ecbo cloak(エクボ クローク)」を運営するecbo。同社は2月6日、事業会社とVC、複数の個人投資家から資金調達を実施したことを明らかにした。

今回ecboに出資したのはJR東日本、JR西日本イノベーションズ(JR西日本のCVC)、メルカリ、エウレカ創業者の赤坂優氏、元グルーポン・ジャパン取締役会長の廣田朋也氏、ラクスルやビズリーチの創業メンバーである河合聡一郎氏だ。調達金額は非公開。ただ関係者の話を総合すると数億円規模の調達ではないかとみられる。

ecboでは今回の調達を踏まえ、引き続き各地で荷物預かり拠点を増やしていくとともに、新たな配送サービスなど機能拡充を進め”荷物のない世界”の実現を目指す。 同社のプロダクトを踏まえると、JR東日本・西日本とタッグを組めた今回のラウンドは、今後のビジネス拡大に向けてかなり大きい意味を持つだろう。

主要地域の開拓、大手企業との提携を通じて導入店舗を拡大

ecboは2015年の創業。当初はオンデマンドの収納サービスを手がけていたが、代表取締役社長の工藤慎一氏が「渋谷駅で訪日外国人旅行客のコインロッカー探しを手伝ったこと」をきっかけに、コインロッカー不足の課題に直面。

店舗の遊休スペースを使った荷物預かりプラットフォームecbo cloakを開発し、2017年1月から渋谷や浅草エリアを中心に約30店舗からサービスを始めた。

3月にANRIや個人投資家の渡瀬ひろみ氏、千葉功太郎氏から数千万円を調達。それ以降は関西(京都と大阪)や福岡、北海道、沖縄など各地域への展開を推進。同時に他社との業務提携、インキュベーションプログラムの参加などを通じて、導入店舗の開拓に力を入れてきた。

「観光は日本全国が対象。荷物を預ける場所の問題も各地で起こっていて、それを解決したいというのは変わらない。コインロッカーの設置は簡単ではないし、企業が預かり事業をやるのもハードルが高い。ecbo cloakならサービスに登録さえすれば、その場所がすぐに荷物預かり所に変わる。その世界観を広めながら店舗の開拓を進めてきた」(工藤氏)

直近では三越TSUTAYAの一部店舗も加わったほか、アパマンショップの18店舗にて試験導入され、東京駅の手荷物預かり所でのサービス提供もテスト的に実施している。2月21日以降は東京、神奈川の一部郵便局でも実証実験(2月21日より5局、3月1日より合計31局で導入)を始めるなど、大手企業との協業も活発だ。

ecbo cloakは2018年1月にサービス開始1周年を迎えた。現在の導入店舗数は非公開だが、直近の取り組みや今回JRとタッグを組むことで、目標とする1万店舗に大きく近づくという

郵便局とは2018年7月頃を目処に荷物配送サービスの実証実験にも取り組む予定。これは2017年12月に工藤氏がピッチコンテスト「Launch Pad」にてプレゼンをしていた、「ecbo delivery」という新たな構想の一環だ。

僕はよくコインロッカーを使うけど、目的が済んだ後でいちいちロッカーまで荷物を取りに戻るのは正直面倒。せっかくなら預けた荷物をそのまま次の目的地まで運んでくれたら楽なのにと思うけれど、ecboが今後実現しようとしているのはまさにそんな世界観。

将来的には預けた荷物をボタン1つで配送手配することを目標に掲げ、実証実験ではまず郵便局からecbo加盟店への配送サービスとして始める予定だという。

鍵を握る「駅前の好立地」を開拓、今後は預けた物の配送サービスも

これまでは「利用できる店舗を1万店舗まで増やすこと」をひとつの目標として、導入店舗数の拡大に注力してきた。地方進出も進めてきたが、工藤氏によると現状では東京や大阪といった都市部の売り上げが高いそう。「まずはこのエリアをしっかりと押さえきること」が今後のポイントだという。

「店舗数はもちろん、いかに駅前の好立地を開拓できるかがユーザーの利便性に直結する。その点では(JR東日本、西日本とタッグを組めた)今回のディールはすごく大きい。ビジネス規模が広がるだけでなく、もし今後大手企業などが参入してきたとしても立地面では優位に立てる」(工藤氏)

JR東日本と共同で、東京駅の手荷物預かり所にてサービスを提供

JR西日本とは業務提携も締結。駅構内の拠点の利用や関西地区の預かり所の開拓などを進める。上述した配送サービスにも東日本、西日本双方と取り組んでいく方針だ。

また今回はメルカリからも出資を受けている。同社の組織構築力やシェアリングエコノミー型サービスの広げ方などの知見をサービス拡大に活用。事業提携も検討する。

ecboでは調達した資金をもとに人材採用やプロモーションに力を入れ、まずは「この領域で圧倒的No.1の存在を目指して」全国1万店舗での導入やアプリ開発などに着手。その先では荷物の“保管“に“配送“の要素を加えた、新たなプラットフォームの実現に取り組んでいく。

「去年1年間は主に訪日外国人向けの荷物預かりサービスだった。ただ自分たちがやりたいのは、単なるマッチングサービスを超えたもの。今後はテクノロジーを活用して『ボタン一つで荷物を保管し、運ぶ』ことができる革新的なプラットフォームを目指していく。今回のディールはその目標に近づくものだ」(工藤氏)

ロボット資産運用のウェルスナビが総額45億円を資金調達、預かり資産額は600億円超

アルゴリズムで自動化された個人向けの資産運用サービス、ロボアドバイザーの「WealthNavi」を提供するウェルスナビは2月5日、総額45億円の資金を調達したと発表した。調達の内訳は、未来創生ファンドグローバル・ブレイン、ソニーのCVCであるSony Innovation FundDBJキャピタルSMBCベンチャーキャピタルみずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資による15億円と、複数の金融機関からの融資などによる30億円。

ウェルスナビでは2015年4月の設立以来、2015年7月に5000万円のシード資金をインフィニティ・ベンチャー・パートナーズ(IVP)から調達し、以後、グリーベンチャーズ、IVP、SMBCベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタルおよびDBJキャピタルから2015年10月に約6億円を調達、SBIホールディングス、SBIインベストメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル、DBJキャピタル、IVPから2016年10月に約15億円を調達している。

2016年7月に一般公開されたロボアドバイザーサービスのWealthNaviは、富裕層や機関投資家が利用してきた資産運用アルゴリズムなどを使い、自動で国際分散投資を行う。クラウド経由で一般消費者でも知識や手間をかけずに、資産運用ができる仕組みだ。

またウェルスナビでは、2017年5月におつりで資産運用を始められるiOSアプリ「マメタス」をローンチしている。マメタスは、クレジットカードで支払った時のおつり分を計算し、毎月一定額をWealthNaviによる資産運用に回す仕組みとなっている。

日本のロボアドバイザーサービスには他に、お金のデザインが提供する「THEO(テオ)」、楽天証券が提供する「楽ラップ」、マネックス・セゾン・バンガードが提供する「MSV LIFE」などがあるが、預かり資産と運用者数ではWealthNaviが現状、頭一つ抜けている。1月24日時点で、申込件数7万口座、預かり資産額は600億円を超えるという。

ウェルスナビでは今回調達した資金について、経営基盤の拡大・強化、WealthNaviやマメタスの新機能拡充や機能改善、運用体制のさらなる強化、マーケティングおよびプロモーション活動の推進に充てる、としている。

“実はコンビニよりも数が多い”歯科医院向けCRMのDentaLightが1.6億円調達

歯科医院向けの予約・CRMサービス「ジニー」などを展開するDentaLightは2月5日、500 Startups Japanドーガン・ベータF VenturesBEENEXT、および千葉功太郎士、秦充洋氏、山口英彦氏ら複数の個人投資家を引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は約1億6000万円だ。

DentaLightのメンバー。写真中央が代表取締役の藤久保元希氏

DentaLightは歯科から予防医療に挑むことを目指し、歯科医院向けの予約・CRMサービスのジニーや、診察券代わりに利用できるアプリ「my Dental」などを提供するスタートアップだ。

ジニーでは、これまで紙で運用されることの多かった予約台帳をオンライン上で運用できるほか、予約の”うっかり忘れ”を防ぐために、診察日が近づいた患者に自動でリマインドメール(SMSかE-mail)を送ることができる。また、歯のメンテナンス時期が近づいた患者をリストアップすることも可能なので、医院からの能動的な集客にも役立てることができる。

DentaLight代表取締役の藤久保元希氏に聞けば、歯科医院には「サブカルテ」なるものがあるのだそう。これは、電子化が進む通常のカルテとは違い、医院ごとに独自のフォーマットで作られている紙の書類だ。そこには、「家族は何人」や「ホワイトニングに興味がある」など、今後の患者とのコミュニケーションや集客に役立ちそうな情報が雑多に書き記されているという。

なぜ、わざわざ別の資料にそういった情報を書くかというと、基本的に電子カルテには「どこどこの歯に治療を行った」など、その後の保険請求につながる事柄しか書かないからだ。しかも、そうして別資料として作られたサブカルテは患者ごとに分けられたクリアファイルに入れられ、そこに問診票、見積書のコピー、Web検索結果をプリントしたものなどが一緒に入れられているような状況だと藤久保氏はいう。そこをテクノロジーで置き換えるのがジニーの役割だ。

また、歯科医院は激しい競争にさらされている。日本歯科医師会の発表によれば、日本全国にある歯科医院の数は約6万8000軒。これは全国にあるコンビニの店舗数(2017年12月現在で約5万5000店舗)よりも多い数字だ。そういえば、僕の自宅近くにある古い商店街のなかだけでも3軒はある。ちなみにコンビニは1軒だけだ。

藤久保氏は、「競争が多い歯科医院は集客に苦労している。サブカルテに書かれた情報こそ、その後のアップセルやコミュニケーションにおいて重要な情報なのに、それがしっかりと管理されていない」と語る。自身がマーケッターでもあった藤久保氏は、サブカルテに書かれた情報をオンライン上で管理することができれば歯科医院の集客の助けになると考え、ジニーを開発した。

ジニーはフリーミアムの料金モデルを採用。予約機能だけを利用できる無料のフリープランと、患者のリストアップなどマーケティング機能も利用できる月額2万8000円のスタンダードプランが用意されている。同サービスはこれまでに50の歯科医院に導入されている。

ただ、正直に言うと、ジニーには個人的に残念と思う点もある。ジニーを使えば患者に予約のリマインドメールを送ることはできるが、そこから実際に予約するためには、メールに書かれた電話番号に電話をかける必要があるのだ。せっかく「myDental」というユーザー向けアプリもあるのだから、それを通して予約ができれば電話嫌いな僕としては助かるのだが。

それについて藤久保氏に聞くと、アプリを通した予約機能はもちろん実装を目指していたが、それに至るまでには大きな障害があったのだという。

医院が提供する治療のなかには、特定の医師でなければ提供できないものがある。また、治療には長く時間がかかるものもあれば短くて済むものもある。そのため、そのような事情を理解してスケジュールの前後を調整できる受付係が必要だという意見が歯科医院から多くあがったのだそうだ。つまり、医院側からすれば、アプリのスケジューラーに空きがあってもそこに“勝手に入れてもらっちゃ困る”というわけだ。

とは言え、ユーザー側からするとアプリから予約できた方が便利であるのは間違いない。アプリを通した予約機能について藤久保氏は、「導入前のヒアリングなどを通して医院ごとの事情を理解し、それをインプットとしてシステム上に反映することができれば、アプリを通した予約機能も実装できる」と話す。

DentaLightは2013年10月の創業。今回の資金調達が同社にとって初の外部調達となる。

資産管理業の自動化ソリューションを提供するロボット投信が4億円を調達

金融機関向けに資産運用業務の自動化ソリューションなどを提供するロボット投信は2月1日、インキュベイトファンドテックアクセルベンチャーズ三菱東京UFJ銀行SMBCベンチャーキャピタルカブドットコム証券みずほキャピタルを引受先とした第三者割当増資により、総額約4億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

ロボット投信は2016年9月にもインキュベイトファンドから1億円を調達。今回はそれに続くラウンドとなる。

同社が手がけるのは、いわゆる金融機関向けの「RPA(Robotic Process Automation)」サービスだ。ここ半年ほどでも複数の大手企業に対して、テクノロジーを活用した資産運用業の効率化、自動化ソリューションを提供している。

  • カブドットコム証券へ投資信託の信託報酬実額シミュレーションツールと基準価額変動要因分析ツールの提供(2017年7月、9月)
  • 三菱UFJモルガン・スタンレー証券へ「Amazon Alexa」に対応する情報配信サービス「投資情報」スキルの提供(2017年11月)
  • みずほ証券へ電話自動応答システムを用いた投資信託および市況概況情報のサービス提供(2017年12月)

これらのRPAソリューションに加えて、ロボット投信では投資信託データや株式データといった金融・経済データの提供、ロボアドバイザーエンジンの開発も行っている。

ロボアドザイザーといえば「THEO」のお金のデザインや、「WealthNavi」のウェルスナビなど、消費者向けのプロダクトを開発するスタートアップの活躍が目立つ。ロボット投信のように法人向けにロボアドバイザーエンジンを提供するスタートアップというのは、なかなか表に出てこない存在かもしれない。

今回調達した資金をもとに、今後はより幅広い事業領域で資産運用RPAソリューションの開発に着手。テクノロジーを活用した資産運用プラットフォームの構築を進めていくという。

世界中のクールなサーフィン動画を集めたアプリ「NobodySurf」、運営のreblueが2.3億円の調達

アプリを立ち上げれば、すぐに心地よい音楽とサーフィンの動画が流れ出す。数分の動画が終われば、また新しい音楽とサーフィン動画が続く。まるでSpotifyに代表されるようなサブスクリプション型の音楽配信サービスのプレイリストのように、クリエーターやサーファー、エリアごとの動画や、新作動画などが次々に再生されていく。reblue(リブルー)の手がける「NobodySurf」はサーフィン好きにはもってこいの動画サービスだ。現在スマートフォンアプリ(iOS/Android)のほか、ウェブサイト、Instagramをはじめとするソーシャルメディアで動画を配信している。

サービスを手がけるreblueは1月31日、グロービス・キャピタル・パートナーズ(GCP)およびアドウェイズ、Supership取締役で個人投資家の古川健介氏、元nanapi CTOの和田修一氏などを引受先とした総額2億3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした(GCPが2億円、その他投資家で合計3000万円)。同社はこれまでに、アドウェイズのほか、古川氏を初めとする個人投資家複数名から出資を受けており、本ラウンドまでの累計調達額は2億8000万円になる。

reblueの設立は2014年9月。代表取締役の岡田英之氏は伊藤忠商事の出身。13年間のキャリアのうち、後半の6年間はグループ企業であるエキサイトに在席。スマートフォンアプリの事業を担当したのちに起業した。

「インターネットの好きなところは2つ。『個をエンパワーすること』そして『国境を完全に越えていけること』。いいモノを作っているけれどもスポットライトが当たっていない人達がいて、それを伝えれないか、ということを考えていた」(岡田氏)

そこで事業に選んだのは、自身の趣味でもあるサーフィンだった。2016年9月にテスト版のNobodySurfをリリース。2017年6月にはアプリをバージョンアップし、本格的に運用を開始した。

「サーフィンは米国(本土)とハワイ、オーストラリアを除くと非常にニッチなアクティビティ。(サーフポイントも)世界中に点在しているが、それぞれのコミュニティ自体は離れているしニッチなので、例えいいサーフ動画を作っている人がいたとしても、よそでは知られていない。動画クリエーターも、動画を見て楽しめるサーファーどちらも世界に点在している状況。それを繋げる仕組みを、モバイルと動画、インターネットで作ろうとしたのがNobodySurfを作ったきっかけ」(岡田氏)

サーフィンには大きく分けて競技サーフィンとアクティビティとして楽しむフリーサーフィンがあるが、NobodySurfが扱うのはフリーサーフィン。ソーシャルメディアや動画配信サービスにアップロードされたフリーサーフィンの動画について、クリエーターに直接交渉、許諾を得た上でNobodySurf上で配信する。これまで4000件の動画を集めているという。

reblue代表取締役の岡田英之氏

サービスの特徴となるのは、動画へのタグ付けだ。クリエーター名やロケーション(国名、地域)、サーファー名、波のサイズなど、専用のCMSを使いつつ、人力でタグを付与している。

「メジャーなエンターテインメントであればデータ自体が充実しているが、(サーフィンのような)ニッチなところはできていなかった。だから動画が見つからなかったり、見ている動画に関連する最適なタグを紹介するといったことができなかった。今は世界でおそらく唯一のサーフィンデータベースになっている」(岡田氏)のだという。

ちなみに2017年の実績でアプリは54万ダウンロード。海外ユーザーが全体の75%で、100カ国にもおよぶ。動画再生回数は7100万回。世界のサーフィン人口は3500万人とも言われてるそうで、現状でも決して低くない数字ではないだろうか。SNSでの動画配信も好調で、特にInstagramが急成長している。ソーシャルでの動作再生回数は2017年12月時点で1000万回で、これまで中心となっていたFacebookの割合をInstagramが追い抜いたという。海外からのアクセスを意識してサイトは全面英語。加えて文字を極力読まなくても楽しめるデザインにした。

Instagram動画再生数の推移

reblueでは調達した資金をもとにサービスを拡大。機能強化や動画・クリエーターの発掘を進める。また同時に動画の保存機能などを拡張する課金サービスを2018年前半にもスタートする予定だ。将来的にはクリエーターへの収益の還元やポートフォリオ機能の強化も進めていくという。

「サーファーに特化したエンタメビジネスを展開していく。まだ先の未来のことを言えば……例えばNobodySurfを通じてイギリスにいるサーファーがメキシコの波について知り、そこに行くために旅行を予約し、現地のクリエーターが動画を撮影する、ということが起こっていくはず。そんな新しいサーファーの文化圏を作っていきたい」(岡田氏)

プレシード投資、5つの誤解

【編集部注】著者のAnamitra Banerjiは、Afore Capital共同創業者である。

ここ数ヶ月の間にプレシード投資(シードステージよりもさらに早い段階での投資)が増えてきている。創業者たちがシードステージで求めるものと、マーケットが提供するものの間にギャップが広がっているためだ。とはいえプレシードを巡る話題は、まだまだ初期投資に関わる会社や投資家に対する偏見と、誤った仮定に基いている。

こうした誤解を打ち破るために、プレシードに関して良く耳にする5つの誤解のリストをまとめた。明日の偉大な企業たちのアイデアを支える私たちの情熱が、どのようなものかを共有しておきたい。

誤解1。プレシード投資家はアイデアに投資する(その他はあまり気にしない)

プレシード投資という言葉は、簡単な取引という印象を与える。素晴らしい実績を持つ創業者がアイデアを思い付き、投資家が小切手を書く、そしてもし上手く行かなくてもあまり問題にならない、なぜならそれは実験だから…。

ここでの誤解は、企業が取引データを持っていないので、プレシード投資家たちは、調査する材料があまりなく、深い評価を行うことができない、というものだ。このようなまるでゾンビのような取引は、現実とはかけ離れている。

Aforeのようなプレシード機関が行うファンドは、プレシードを他の投資と同じものとして扱う。ステージに応じた固有のリスクがあり、それを緩和できると考えている。創業者の信頼性と市場機会を評価するだけでなく、私たちは製品と流通という2つの特定の分野に焦点を当てる。私たちが興味があるのは、ユニークな本質を備えた製品と、斬新な流通アプローチであり、両者が短期間のうちにどのように機能するかを知りたいのだ。私たちは、これまでに創業者たちがその仮説を検証するために、どのような実験を行ってきたのかを調査し、「知りません」という答にたどり着くまで調べ続けるのだ。プレシードはデータとしての魅力は持っていないかもしれないが、その思考には多くの魅力がある。

誤解2。プレシード企業は、実際のシードラウンドを行うことができなかった連中だ

また世の中にありがちな誤解は、プレシード投資を求める企業は、単純にシードラウンドを行うには力不足なので、より小規模なラウンドを行うために、そのプレゼンや野望を削らなければならない、というものだ。この誤解によって、投資家たちがプレシードに関わるチャンスが奪われている。こうした不利な選択をしているのは、企業がより大きなラウンドを狙うには力不足だということを知っているからだ、という誤ったメッセージが伝わってしまうのだ。

プリシード資金を調達することで、製品の製造と流通を助け、最小限の資金で早期の支援を提供する。創業者たちは、シード投資家たちが最初の小切手を書くのではないということを徐々に認識し始めている。多くのシードキャピタルが登場するのは、企業の設立後平均2.4年である。Aforeは、プロダクト/マーケットフィット(プロダクトとそれを必要とするマーケットが存在すること)を実現する前の企業に資金を提供する、新しい種類のプレシード投資家の一員だ。まだプロダクト/マーケットフィットがなく、規模拡大の能力も持っていないスタートアップたちは、シード資金に対応する準備が整っていない。

プレシード投資家たちは、これまではもっと遅くなってから機関資本の導入を行うようなケースに資金提供を行い、友人や家族からの資金調達を補完するような役割を果す。プレシード創業者たちは、50万ドルほどを調達するが、それは自己資金での開始よりは優れており、大きなシードラウンドを行う際の、高バリュエーションと希釈化の可能性を排除する。

誤解3。プレシード投資は、オプションを増やしているだけだ

また別の誤解は、これらの最も初期段階に対する企業後援者たちは、実際には、彼らが何をしているのかを知らず、自分の投資がどうなるのかも気にしないないような、カジュアルな投資家であるというものだ。オプションベット(還付額の決まった少額ギャンブル)と同様に、そうした投資家は複数のオプションにお金を分散することで、失うものを少なくしているということだ。

オプションベットの対象に選ばれたい創業者はいないし、創業者たちも自分たちを高優先度で扱わない投資家を選ぶべきではない。Aforeのようなプレシードファンドは、ポートフォリオの成功によって生死が決まるプレシードに集中する、積極的な投資家たちだ。プレシード投資は、シードやラウンドAを先取りするためのオプションベットではない。彼らにとっては生きるための糧なのだ。

プレシードは、Bee Partners、K9、Pear、Precursor、Notation、Wonderのようなプレシード投資会社を含む、深く思慮深いコミットメントを行う機関投資家たちで構成された、急成長中のセグメントである。PitchBookやNational Venture Capital Associationによれば、市場のニーズをさらに反映して、2011年以降での企業に対する100万ドル以下のファンディングは減っている。

誤解4。プレシード投資は流行に過ぎない

プレシード投資なんて一時の流行りで、すぐに標準的なシード投資に吸収されてしまうに違いないという声は多い。これは、プレシードが、強気な投資市場のせいで急に現れただけだ、という不正確な信念に基く考えだ。

プレシードステージの企業は、シーズステージの企業とはかなり異なって見える。なぜなら、彼らは多くの支持層を持たず、収益もなく、プロダクト/マーケットフィットも実現していないからだ。そしてシード投資家たちは、そのレベルのリスクは受け入れ難い。コホート分析、正確なLTV/CAC比率、および販売ファネルをしっかりと押さえている企業と比べてしまうと、支持も収益もない企業に投資することは難しい。このリンゴとオレンジの比較(本来比べられないものを比べること)の下では、シード投資家たちは、プレシードに投資することはできないのだ。

もう1つの要因は、シードファンドの規模が大きくなっていることだ。ファンドの大きさが拡大するにつれ、シード投資家たちはより大きな金額の小切手を切ることを強いられる。いまやシードラウンドの規模は500万ドルに近付いている。パートナーの時間は、ファンドの大きさと比例しては伸びないことを考えると(まあイーロン・マスクは一日30時間投資するそうだが!)、シードファンドにとってプレシードサイズの50万ドルの小切手を切るのは簡単ではない。よって彼らはその時間と注目を、彼らのサイズに相応しいものへ注ぐようになるのだ。

機関投資家たちが、プロダクト/マーケットフィットに先んじて「最初の小切手」を切る意欲、経験、そして能力がある限り、プレシードラウンドが必要となる。

誤解5。プレシードファンドは本物の資金調達を実行できなかった奴等だ

プレシードステージに焦点を当てたVCファンドについての誤解も非常に多い。きっとこうしたことを耳にしたことがあるだろう:プレシードファームが自分たちをそのように位置付けているのは、より大きな資金調達を行うことができないからだ。彼らは本当はシードやシリーズA資金調達を行いたいのに、そうすることができなかったのだ。あるいは、そのような早期ステージ企業に投資したのは、彼らの本当の望みではなかったのだ、などなど。

しかし私の経験はそうは言っていない。私たちと組むパートナーたちは皆、早期ステージファンド環境におけるギャップの出現と同様に、ベンチャートレンドを早期に捉え、起業家としてそれを活用している。

[原文へ]
(翻訳:sako)

医師や看護師にチャットで相談、“健康経営”推進プラットフォームのiCAREが1.5億円調達

従業員の健康管理サービス「Carely」を運営するiCAREは、Beyond Next VenturesインキュベイトファンドみずほキャピタルSMBCベンチャーキャピタルを引受先とする第三者割当増資を実施した。調達金額は1億5000万円だ。

iCAREが提供するCarelyは、従業員の健康状態を管理するための企業向けサービスだ。最近、「健康経営」というワードを耳にする機会が多くなった。これは、健康診断やストレスチェックなど、社員数に応じて義務付けられたものをただ遂行するだけでなく、それ以上に従業員の健康状態を重視することで生産性の向上を目指すという経営手法のことを指す。

「ストレスチェックで“高ストレス”と診断された従業員は、そうではない従業員に比べると2年後の離職リスクが3倍になる」と、iCARE取締役COOの片岡和也氏はいう。

ただ、健康診断結果や産業医との面談内容は紙やエクセルファイルなどでバラバラに保管されていることも多く、情報が横断的に確認できないことから、健康経営を推進するうえでの障害となっているそうだ。

一方のCarelyでは、勤怠データ、健康診断の結果、ストレスチェックの結果、産業医との面談内容などの労務情報を取り込んでオンライン上で一括管理することが可能。それらのデータを元に、どの従業員がどの程度の健康上のリスクを抱えているのかを可視化する。また、企業は法律で定められているストレスチェックをCarelyを通して実施することもできる。

それに加え、従業員がチャット形式で医師や保健師に直接相談できることもCarelyの特徴だ。現在、こういった相談に対応するCarelyのチャットチームは10名ほど。医療系の質問には医師や看護師などの有資格者が対応するが、フィットネス関連の質問には(必ずしも有資格者ではない)トレーナーなどが回答する場合もあるという。その中心メンバーはiCAREの社員であり、チャット対応も同社オフィスから行っている。

片岡氏は、「寄せられる相談の3割は(うつ病などの)メンタル系の内容だ。次に多いのが睡眠に関する相談で、なかには肩こりや腰痛の相談を頂くこともある」と話す。

Carelyの利用料金は従業員1人あたり月額300円。チャット機能はいらないからストレスチェックだけ実施したいという企業向けにはさらに低価格のライトプランもある。また、オプションとして、産業医紹介、健康診断代行、睡眠改善プログラムなども提供している。現在Carelyのユーザー企業数は80社(従業員総数1万5000人)だ。

iCAREは2011年6月の創業で、2016年3月には1億円の資金調達も実施している。

会話でニーズを“あっためる”、チャットボット広告のZEALSが4.2億円調達

チャットボットを利用した会話広告サービスを展開するZEALSは1月29日、JAFCOフリークアウト・ホールディングスを引受先とした第三者割当増資を実施した。調達金額は4億2000万円だ。

ZEALSが提供する「fanp(ファンプ)」は、チャットボットを利用した会話型の広告出稿サービスだ。通常では、Facebookに出稿したインフィード広告をクリックすると、より詳細な内容を説明するランディングページ(LP)に遷移することが多いと思う。

一方、fanpでは広告をクリックするとLPに飛ぶ代わりにFacebook Messengerのチャットボットが立ち上がる。ユーザーはそのチャットボットとの会話を通じ、広告を出稿した企業のサービスや商品の理解を深めるというわけだ。そのような会話内容の“設計”はZEALSが行う。

チャットボットとの会話は自然言語処理を駆使したフリー形式ではなく、あらかじめ用意された選択肢をタップして会話していくタイプだ。ZEALSは元々ロボットの向けの会話エンジンを作っていた企業なので、自然言語処理には長けている。しかし、ユーザーの離脱率をできるだけ低くするという目的から選択型のチャットボットに決めたそうだ。

「はじめは自然言語処理を利用したチャットボットもテストしたが、ユーザーがボットと2回も会話することなく離脱してしまうことが続いた。今は、個人情報の入力などを除き、ほぼすべての入力を選択形式にしている」(ZEALS代表取締役の清水正大氏)

fanpには顧客情報を管理するCRMもあり、ダッシュボードからユーザーの会話内容やデモグラフィック・データを確認することができるようにもなっている。

fanpのCRM機能

それでは、会話広告の威力とはいかほどのものなのだろうか。ZEALSが独自に調査したところによれば、インフィード広告とLPの組み合わせで出稿した場合のCVR(コンバージョン率)は0.8%だったのに対し、会話広告ではその約7倍にあたる5.7%だったという。

清水氏はこの結果について、「入力された検索語をもとに表示されるリスティング広告では、ユーザーのニーズが明確だ。一方、インフィード広告ではユーザーのニーズがまだ“あったまって”いない。会話広告では、まだ顕在化していないニーズをチャットボットとの会話と通してあっため、商品やサービスの理解を深めることができる」と語る。

また、一度ユーザーが離脱してしまったとしても、fanpはその後も継続してユーザーに働きかける。なかには、追加的な会話によって初回から半年後にコンバージョンした例もあるそうだ。

2017年5月にリリースしたfanpは、これまでに味の素キャリアデザインセンターインベスターズクラウドなど数十社を顧客として獲得している。業種としては、人材、保険、不動産など高単価サービスを提供する企業が多いのだという。よく考えてから購入を決めるタイプの商品・サービスと会話は(たとえそれがボットとの間のものでも)相性が良いのだろう。これまでに解析した会話データは4200万件を超す。

fanpを利用した広告出稿には、広告出稿費(最低150万円〜)、システム利用料、会話量に応じた従量課金料金がかかる。

ちなみに、ZEALSはもともと、メディア向けチャットボットサービスの「fanp」と企業向けの会話広告サービス「fanp Biz」の2つを提供していた。しかし、その後同社は会話広告サービスにリソースを集中させると決断。現在はかつてのfanp Bizをfanpという名称で提供している。やっぱり広告の方が儲かったのだろう。

ZEALSは今回調達した資金を利用して、チャットボットとユーザーの会話をデザインする「コミュニケーション・デザイナー」の採用を進めるという。TVCMや雑誌広告などは専門のクリエイターがクリエイティブの企画設計を行う。それと同じように、チャットボットやロボットとの会話の設計にも専門的な人材が必要になる社会がくる、というのが清水氏の考えだ。

ZEALSは2014年4月の創業。2017年5月には約8000万円の資金調達も実施している。

ZEALS代表取締役の清水正大氏

店舗が資金やファンを獲得できる“会員権”の取引所「SPOTSALE」、開発元のイジゲンが6200万円を調達

店舗が会員権を発行することで、資金やファンを獲得できるプラットフォーム「SPOTSALE(スポットセール)」。同サービスを開発するイジゲンは1月26日、ANRI、インフキュリオン・グループ、モバイルクリエイト、バリュープレス創業者の大木佑輔氏を引受先とした第三者割当増資により、総額6200万円を調達したことを明らかにした。

2013年設立のイジゲンは、受託開発やITコンサルティングに加えて、自社で位置情報を活用したポイントアプリ「AIRPO」やグループ向けの写真共有アプリ「guild」を展開する大分発のスタートアップだ。

同社で現在開発している新サービスが冒頭でも紹介したSPOTSALE。飲食店や美容室などの店舗が会員権を発行、販売することで資金を調達できる「お店の会員権の取引所」だ。

会員権にはたとえば「1000円以上の注文でドリンク1杯目が無料」「来店時に20%オフ」のような優待が設定される。これを通じて店舗が新規顧客の開拓や、中長期に渡って応援してくれるファンの獲得も目指せるのがウリだ。

購入した会員権については他のユーザーと売買することもできるため、イジゲン代表取締役CEOの鶴岡英明氏は「購入型のクラウドファンディングに(会員権を売買できるC2Cの)二次市場がくっついてるようなプラットフォーム」だと話す。

たしかに店舗が複数の個人から資金を調達できることに加えて、顧客の獲得手段としても活用できる点ではクラウドファンディングに近い。また会員権をユーザー同士で取引できる仕組みや、店舗がSPOTSALEを活用する際に「SPOTSALEに上場する」という表現が使われているあたりは、ICOに似ている点もある。

ただし株やICOにおけるトークンの取引とは違い、C2Cで会員権を売買する際のオファーや価格の設定などは完全に1対1で決める。鶴岡氏も「(株のように)そこまで頻繁に売買が発生するわけではない」という考えで、たとえば引っ越しや違う店舗に浮気してしまった際などに使ってもらうことを想定している。

「継続して長いスパンで(店舗とユーザー間の)関係性が構築されるサービスを作りたい。そこに愛が生まれると、単発の取引ではなくもっと深い特別な関係性ができる。特に地方はICOができずIPOをやる規模でもないが、いいお店や企業がたくさんある。そのような企業が応援される、評価される仕組みを作り、店舗から『SPOTSALEに上場すること』を目標にしてもらえるようなサービスを目指したい」(鶴岡氏)

SPOTSALEのリリースは2月の予定だが、現在Webサイト上で先行してユーザーと会員権の発行店舗を募集中。現時点で登録ユーザー数は2000人、店舗数は50店舗、会員権の購入に利用できるポイント(SPT)の発行総額は200万円分を超えた。

現時点では飲食店が多いが、コワーキングスペースなど場所の運営をしている企業からの登録もあるそう。今後はNPO向けのサービス展開も準備していくという。

今回の調達先のうち、インフキュリオン・グループとモバイルクリエイトとは業務提携も締結。グループ内および出資先がFintech系の事業を展開しているインフキュリオン・グループとは知見やノウハウの共有のほか、共同で事業開発にも取り組む。IoTサービスや決済事業を展開するモバイルクリエイトについても同様だ。

独自のスマホ用OS「SUNBLAZE OS」を開発するアメグミが2000万円を調達、快適で安価なスマホ実現へ

写真左から川田尚吾氏、アメグミ代表取締役社長の常盤瑛祐氏、本田謙氏

独自のスマホ用OS「SUNBLAZE OS」を開発するアメグミは1月24日、ディー・エヌ・エー共同創業者の川田尚吾氏とフリークアウト創業者の本田謙氏から総額2000万円を調達したことを明らかにした。

現在アメグミが取り組んでいるのは、「長期間に渡ってサクサク動作し、価格も安い」スマートフォンの実現に向けた独自のOS開発。主なターゲットはゲームや動画を利用する機会がほとんどなく、SNSや検索など一部のアプリさえ使えれば困らないという人たちだ。

アプリの審査を厳しくするなど余計なアプリを排除し、OSのアップデート回数についても、セキュリティー面など必要最小限に止めることで動作を軽減。「バッテリー交換を含めて最低5年間はサクサク使えるもの」 (アメグミ代表取締役社長の常盤瑛祐氏)が目標だ。

常盤氏によると2017年1月に市場調査でインドを訪れた際の体験が、プロダクトの構想につながっているそう。現地で約300人にモバイルに関するアンケートを取ったところ、10人のうち2人くらいの割合で「(現在使っている端末の)動作が重くて不満を抱えていることがわかった」という。

「スマホでは頻繁にOSのアップデートが行われるが、多機能を必要としない人にとっては過剰。特に低価格のスマホでは動作がすぐに重くなってしまう」(常盤氏)

機能面をシンプルにすることに加え、新たしい仕組みをつくることで低価格のスマホ端末を開発する。生産に関しては中国の受託生産工場(EMS)を活用し、まずはアジアやアフリカの新興国市場を中心に、約5000円程度で端末を提供することを目指していくという。

すでにSUNBLAZE OS のプロトタイプが完成。今後はOSの開発を進めるほか、端末の生産や販売に向けて通信キャリアや広告代理店、アプリ開発会社など大手企業とのアライアンスも進めていく方針だ。

アメグミは2016年10月の設立。これまでSkyland Venturesと個人投資家の山本真司氏から出資を受けている。