NEM流出事件でコインチェックに業務改善命令、金融庁は「9月までのBSは把握済み」

コインチェックが顧客から預かっていた580億円相当の仮想通貨「NEM」が1月26日に不正流出した件を受け、金融庁は1月29日に仮想通貨交換業者の行政対応に関する記者説明を行った。

関東財務局が同日発表した資料によれば、事件発生当日の26日、当局が今回の流出事件についての報告をコインチェックに求めた結果、「発生原因の究明や顧客への対応、再発防止策等に関し、不十分なことが認められた」という理由により、以下の業務改善命令を発令した。

  1. 本事案の事実関係及び原因の究明
  2. 顧客への適切な対応
  3. システムリスク管理態勢にかかる経営管理態勢の強化及び責任の所在の明確化
  4. 実効性あるシステムリスク管理態勢の構築及び再発防止策の策定等
  5. 上記1〜4までについて、2月13日までに、書面で報告すること。

また、金融庁の会見内容を伝えた「bitpress」のツイッターアカウントによれば、以下のような質疑があったという、

・金融庁は今後、業務改善命令に基づき、精査とフォローアップを行う。場合によっては立入検査の実施も検討中である。

・利用者保護の観点など総合的に判断し、業務停止命令を出さなかった。

・今回の流出事件を受け、コインチェックはハッキング被害にあった26万人に対し日本円で補填をするという旨の方針を発表している。補填総額は460億円相当で、同社はこの支出を自己資金で賄うとしているが、「9月時点での貸借対照表は把握しているものの、直近のものは現在確認中」

ここ数年で大きな盛り上がりを見せた仮想通貨だが、今回の流出事件により規制強化の対象になるのかはまだ分からない。金融庁は仮想通貨に対する規制を強化するか否かは現在、関係省庁全体で協議のうえ検討中だとしている。

コインチェック、流失したNEMの保有者約26万人に日本円での返金を発表

1月26日に約580億円に相当する仮想通貨「NEM(ネム)」の不正流出を発表していた、仮想通貨取引所を運営するコインチェック。

同社は28日、流出の影響を受けたNEMの保有者が約26万人であったことを報告。その上でNEMの保有者全員に、日本円でコインチェックウォレットに返金する形で補償することを明かした。

補償金額は88.549円×保有数となり、総額は日本円で約460億円。補償時期や手続きの方法については現在検討中で、返金原資については自己資金より実施する。

なお金額の算出方法については、NEMの取扱高が国内外含めて最も多い仮想通貨取引所Zaifの価格を参考にし、CoincheckにおけるNEMの売買停止時から本発表まで(2018/01/26 12:09〜2018/01/27 23:00 )の加重平均の価格で、日本円にて返金する。

【更新】仮想通貨取引所「コインチェック」が出金を一時停止、何らかのトラブル発生か

仮想通貨取引所 「コインチェック」が1月26日の午後から、日本円を含む取り扱い通貨全ての出金を一時中止するなど、大きな騒動となっている。

コインチェックでは同日12時過ぎに仮想通貨「NEM」の入金について制限したことを発表。そこから矢継ぎ早にNEMの売買、NEMの出金を一時停止。16時30分すぎに公式ブログにて「現在、JPYを含め、取り扱い通貨全ての出金を一時停止しております。大変ご迷惑をおかけしてりますが、ご了承くださいますようお願い申し上げます。」と発表した。

さらに17時すぎにはBTC以外(オルトコイン)の売買について、19時前にはクレジットカード、ペイジー、コンビニ入金による入金についても一時停止した。

Twitterを中心にSNSなどでは様々な憶測が広がり、大きな騒動となっている。20時の時点では本件に関する公式の発表は行われていないが、コインチェックのオフィス前にも、多数のユーザーとメディアが集まっている状況だ。

【1/26 21時10分 更新】: あくまでも現時点で公式発表はされていないが、今回NEMが盗まれたと言われている。NEM.io財団の代表ロン・ウォン氏も20時27分に本件についてTwitterで言及。ロン氏がシェアしたcryptonewsの記事では約5.2億XEMが盗まれたとしていて、記事内で同氏は「コインチェックがNEMのマルチシグを活用していなかったため、今回の事件が起こった」という旨のコメントをしている。

手数料ゼロの仮想通貨取引アプリRobinhood Crypto、米国でサービス開始。まずBitcoinとEthereumから

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手数料不要の株売買サービス Robinhood が、仮想通貨の取扱をはじめると発表しました。銘柄はBitcoinとEthereumで、取引手数料はもちろんゼロです。

他の取引所に比べて、手数料がゼロというのはRobinhoodがもつ明らかな強みです。米国で最も大きな仮想通貨取引所のCoinbaseは1.5~4%の手数料がかかります。

「我々は今すぐ収益を上げるつもりはありません。しばらくは損益分岐点上でも、新規顧客獲得と既存の顧客へのサービス向上に務めます」とRobinhoodは説明します。

仮想通貨取引用に用意されるアプリRobinhood Cryptoでは、相場価格そのものではなくまず銘柄の見積もり価格をユーザーに提示します。そして、ユーザーが売り買い注文を出せば、それら銘柄の取引所、販売所を横断検索し、最も好条件での売買を探し出します。もちろん仮想通貨は価格変動が大きいため、取引にはある程度のマージンが取られており、その幅を超えるような場合はユーザーにその注文を実行するか判断を委ねます。

取り扱う仮想通貨は、まずはBitcoinとEthereumだけではあるものの順次拡大予定で、対応予定リストにはBitcoin CashやEthereum Classic、Litecoin、Ropple、Dash、Zcash、Monero、Qtum、Bitcoin Gold、OmiseGo、NEO、Lisk、Dogecoinなどが並んでいます。

なお、Robinhood Cryptoアプリはすぐにどこでも使えるようになるわけではなく、まずはカリフォルニア、マサチューセッツ、ミズーリ、モンタナ、ニューハンプシャーの各州で2月から開始の予定。

仮想通貨はその価格変動の激しさから物を買ったりする”通貨”としての実用性は損なわれつつあるものの、Robinhoodのような株取引サービスの目線からはまだまだ魅力的なようです。

Engadget 日本版からの転載。

ラッパーの50 Centが、2014年のアルバムの売上でBitcoin長者になっていたことが判明

彼こそ究極のhodler(「Bitcoinを持っている人」という意味。holderのアナグラム)だ。2014年にBitcoinを受け取った、最初のミュージシャンの1人であるラッパーの50 Cent(別名Curtis Jackson)は、揮発性の暗号通貨でちょっとした幸運をかき集めたようだ。

TMZが最初に報告し、また彼自身も認めているようだが、50 CentはそのBitcoinの売上を、最近再び気が付くまで手付かずのままにしていたのだ。伝えられるところでは、彼は2015年6月当時、その5枚目のアルバムAnimal Ambitionで、700 bitcoinを手に入れた(TechCrunchは、この数字を確認するために問い合わせを行っている。回答があり次第更新する)。

そのアルバムの発売日の時点では、1ビットコインには657ドル相当の価値があった。彼の700 bitcoin分の売上という報告が正確ならば、50は46万ドル前後を当時稼いだことになる。まあ悪くない。

さて、今では同じ量のbitcoinには、809万ドルの価値がある(日本時間1月25日14時30分現在)。

50はそのニュースを、Instagramのキャプションで認めている「サウスサイド(ニューヨークの貧民地区)出身の身の上に起きたこととしては悪くないね。誇らしく思っているよ」。その後さらにこう続けている「そんなもの持っていたことなんて、全く覚えていなかったんだぜ(笑)」。その後のInstagramのポストでは、bitcoinの画像に「入ってくるカネならなんでも善いカネさ」というキャプションを添えている。

2015年に50はチャプター11破産申請を行い、財務整理を行った。そのときの合意では2300万ドルの負債を5年で返済する計画となった。伝えられるところでは、彼は昨年ある程度の和解金を受け取った後、2300万ドルを前倒しで払い終わったということである。2011年に、彼はその個人ブランドで販売された一連のヘッドフォンセットを発売し、彼自身のオーディオ会社であるSMS AudioのCEOに就任した

50が暗号ミリオネアになれたのは偶然だが、当時先行きが極めて不透明だった暗号通貨を受け入れたという、先見の明が損なわれるわけではない。それでも、暗号化の命運は瞬時に変わる可能性がある。私たちは彼がそれを換金するのか、あるいはこのまま#hodler生活を続けるのかに興味がある。

「50 centが億万長者に。Bitcoinよありがとう!!」

bitcoinが欲しい奴はいるか?(笑)。まあこんなこと言われても気分は良くないだろうな…悪いけど、全部貰っておくぜ #denofthieves pic.twitter.com/DCJu2thDr9

— 50cent (@50cent) January 23, 2018

[原文へ]
(翻訳:sako)

bitFlyerが欧州で事業開始、昨年のアメリカ進出に続きグローバル展開を加速

昨年11月にアメリカに進出した、bitFlyer。同社は次のステップとして今度は欧州連合(EU)で仮想通貨事業の展開をはじめるようだ。

仮想取引所「bitFlyer」を運営するbitFlyerは1月23日、本日よりルクセンブルクに拠点を構える子会社のbitFlyer EUROPEを通じて、EUで仮想通貨交換業を開始したことを明らかにした。

EU域内で仮想通貨交換業等など特定の金融事業を運営するには、加盟国のいずれかにおいてライセンスを取得する必要がある。同社はbitFlyer EUROPEがルクセンブルクにおいてPayment Institution Licenseを取得したことを発表。欧州では取引量の多いプロトレーダー向けサービスから取り組む。

まずはビットコインとユーロの取引に対応。2018年中に Litecoin、Ethereum、Ethereum Classic、Bitcoin Cashなどの取扱いを予定する。

bitFlyerは2017年9月に日本で仮想通貨交換業者として登録。アメリカでも2017年11月時点で、子会社のbitFlyer USAが42州での仮想通貨交換業運営の許可を取得している。今回の欧州進出はこれに続くもので、同社によると日本、アメリカ、EUにおける仮想通貨交換業のライセンス取得は世界初だという。

EUでの事業開始にあたってbitFlyer代表取締役の加納裕三氏は「bitFlyerは2014 年の創業当初から世界展開を目指しており、またビットコインと仮想 通貨業界の長期的な発展には規制導入が不可欠であると当時より考えていました。当社グループが日本・米国・EUにおいて仮想通貨交換業のライセンスを取得した世界で初めての事業者となったことを光栄に思います。この度のPayment Institution License 取得は当社グループやお客様だけでなく、仮想通貨業界に対してもポジティブなものになると考えています」とコメントしている。

Bitcoin、Ethereumその他ほとんど全ての暗号通貨が暴落

Bitcoinやその他の暗号通貨(仮想通貨)を持っているなら、今は目をつぶっていよう。もし投資しているなら、もうご存知のことかとは思うが、今日は暗号通貨市場全体が2桁以上下落した。

Bitcoinの価格は12月4日以来、初めて1万2000ドルを下回り15%暴落した。一方Eth​​ereumは、1000ドル近くまで20%以上下落し、Rippleは33%下落し1.23ドルになった(記事執筆時)。

価格の低下は大きな影響を与えてる。急速に人気価格チェッカーになったCoinmarketcap.comによれば、過去24時間のうち、価格トップ100の暗号通貨のうち、価格が下落しなかったのはわずか1つに過ぎない(その1つとはTetherだ)。

ビットコインが丁度1ヶ月前の12月16日に、2万ドル近くを記録したときとは大違いだ。

下落の渦中で、Ethereum、Ripple、およびそインターネットアルトコインたちの状況は、Bitcoinよりも大幅に悪いものになっている。

コイン市場総額に基くトップ10は…

11位から20位…

25位にやっと緑色が…

暗号通貨の価格に関連する他のすべてのものと同様に、この変動を起こしているものが何かは明確ではない。

昨日のブルームバーグの報道によると、中国は国内のインターネットユーザーたちが海外のBitcoin交換取引にアクセスするのを阻止する準備を進めているという。昨年中国は国内の取引所ICOを禁止している。

先週は、中央政府が中国内のbitcoinマイナーたちを追い出す動きを見せていることが明らかになった(中国のマイナーたちは、世界のマイナーの大部分を占めていると考えられている)。有力な業者は既にそれに備えて海外に展開を始めているが、そのニュースは市場を揺るがした。

韓国政府はbitcoinと暗号通貨取引に対する全面規制は計画していないと表明したが、同政府による暗号通貨規制計画をめぐる憶測は乱れ飛んでいる。

暗号がこじれて、別の(トンデモ)理論を唱える者もいる:

もちろん、こうしたことはこれまでにも起きている。こうしたニュースは見慣れたものだろう…

暗号通貨市場は、先月のクリスマス前にも大幅な下落を経験しているが、それ以降評価額は回復してきていた、これがこの世界の移ろいやすい性質の現れなのだ。そうした上昇が、今日の暴落に続いて起きる可能性はある。実際、ウォールストリートの銀行家たちが今週ボーナスを手にするため、金融市場の一部のウォッチャーたちは今週価格が急騰する可能性があると予測している。

注:著者は、ETHとBTCを含む少量の暗号通貨を所持している。

[原文へ]
(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: BRYCE DURBIN

メルカリが年内にも仮想通貨交換業の登録申請へ――フリマアプリ内での決済に対応

2017年11月に設立されたメルペイ。メルカリが金融関連の新規事業を行うために立ち上げた子会社だ。同社の代表取締役には元グリーCFOの青柳直樹氏が就任し、役員には元WebPayのCTOでLINE Pay事業を経験した曾川景介氏らが名を連ねるなど注目を集めている。

今まで事業の詳細については明らかになっていなかったが、年内にも仮想通貨交換業の登録申請をして、メルカリ内の決済手段としてビットコインを含む仮想通貨に対応していくようだ。

これについては最初にITproが報じている。同記事によるとメルカリではメルペイを通じて2018年中にも仮想通貨交換業の登録を目指し、主要な仮想通貨を決済手段としてフリマアプリに組み込む方針だという。ICOにも興味を示しているということだから、独自のトークン(コイン)を発行しメルカリ経済圏を広げていく狙いがあるのかもしれない。

メルカリ広報に今回の背景について聞いたところ「仮想通貨についてはまだ社会的なルールを整備している段階と認識している。ただ、メルペイでは新技術を取り入れ色々な可能性を検討したいので、申請しておこうと考えた。まずは簡単に使える環境づくりからと考えている」という回答があった。

本件については新たなプロダクトをリリースするのではなく、メルカリ内の決済手段として仮想通貨に対応する。また具体的な内容は検討中であるものの「国内で6000万強のダウンロード数を持つメルカリの顧客基盤と取引データを活かした金融サービスを展開する予定」(メルカリ広報)だという。

なお昨年12月26日時点で、bitFlyerやQUOINE、テックビューロなど16社が仮想通貨交換業者として登録が認められている。

仮想通貨の税金計算をサポート、取引履歴から売買損益を算出できる「G-tax」ベータ版公開

2017年の1年間で、ビットコインを始めとした仮想通貨の知名度は急上昇した。

以前から注目していた層や投資家はもちろん、大手取引所のテレビCMやマスメディアで取り上げられる機会が増えたこともあり、一般層にも広がってきている。VCやエンジェル投資家に2017年の振り返りと2018年のトレンド予想をしてもらっても、やはり仮想通貨に注目している投資家が多かった。

仮想通貨の取引を始める人が増える一方で大きな課題となりそうなのが、税金の問題だ。法整備が追いついていないことに加え、対応できる税理士も多くないのが現状。確定申告でどうしていいかわからず困っている人もいるだろう(仮想通貨の売却や使用により生じた利益は原則として雑所得に区分されるため、年間で20万円以上の所得を得た場合には確定申告が必要)。

この問題の解決に取り組むのがAerial Partnersだ。同社は1月6日、仮想通貨の売買損益を計算できる新サービス「G-tax」のベータ版をリリースした。まずは500人限定でユーザー登録を受け付け、順次拡大していく予定だという。

少数の取引所で売買だけを行う「ライト層」向けの利益計算サービス

G-taxは対応する取引所の取引履歴をアップロードすることで、仮想通貨の売買による利益金額を自動で計算するサービスだ。

現時点でZaifやbitFlyer、coincheckなど10の取引所に対応。海外の取引所で行った売買履歴の円貨換算、国税庁の「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」に示される方法に基づいて損益計算を行える。

TechCrunch Japanでは仮想通貨の税務問題に取り組むスタートアップとして、2017年11月にAerial Partnersを紹介した。同社は12月に税理士紹介・記帳代行サービス「Guardian」をリリース。ユーザーへ仮想通貨に詳しい税理士を紹介しつつ、税理士には税務計算をサポートする独自の計算システムを提供している。

G-taxはこの「独自の計算システム」の一部を切り出し、個人向けに無料で公開したものだ。Aerial Partners代表取締役の沼澤健人氏によると、今回G-taxのリリースに至った背景には「税務問題に悩む投資家からの問い合わせが想定以上に多かった」ことがあるという。

Guardianではこれまで2度ユーザーの募集を行っているが、100人の枠を設けた1次募集が30分、200人の枠を設けた2次募集も1時間で締め切りに達した。現在も問い合わせが続いていて、Guardian以外の解決策も検討。G-taxの開発に踏み切った。

「(取引所の口座開設数の状況や、投資家の方のサポートを通じて感じたことも踏まえると)確定数値ではないが、仮想通貨取引により確定申告義務が生じる人は数十万人単位にのぼると考えている。投資家の数が増えるとともに幅も広がり、少数の取引所で売買だけを行っている比較的ライトな層も多い印象。そのような投資家には自分で利益の計算ができるシステムを提供していくべきだと決断した」(沼澤氏)

税理士から断られる投資家も多い

仮想通貨に精通した税理士によるサポートがあり、マイニングなど売買以外もカバーするGuardianと違い、G-taxでできることは限られている。対応する取引所も一部のみで、損益計算は自動でできるが計算結果の正確性を税理士が検証、保証するものではない。そのためG-taxで算出した結果をもとに税理士に相談することを推奨しているという。

「これまで個人的に税務相談を受けた人や、Guardianの応募者の約半数は税理士から『受けられない』と断られた人たち。税理士側も仮想通貨の知識が必要な上に、各取引所ごとにデータの形式が異なるため、相談されても対応できないのが現状」(沼澤氏)

正確な取引データを集めて損益計算をするという工程が特にハードルが高いため、そこに焦点をあてたサービスとしてG-taxのリリースに至った。一方のGuardianは主にG-taxでは対応できないユーザーに向けて引き続き提供。利用価格を減額するとともに、電話対応や節税提案なども含めた上位プラン「Guardian+顧問」も始める。

Aerial Partnersではまず仮想通貨に関する「税金」の問題に取り組みながら、今後はポートフォリオ管理や取引管理など税金以外の領域への拡張も目指していくという。

マネーフォワード、ブロックチェーンや仮想通貨関連新サービス開発に向けてラボ立ち上げ

個人向け家計管理ツールの「マネーフォワード」や自動貯金アプリの「しらたま」などを提供するマネーフォワードは12月29日、ブロックチェーン技術や仮想通貨を活用した送金・決済領域の研究を目的とした「MF ブロックチェーン・仮想通貨ラボ」を設立したと発表した。

2012年に創業して以来、個人向けと企業向けにさまざまなタイプの金融サービスを提供してきたマネーフォワード。同社がこれまで注力してきたのは、“お金の見える化と経営の見える化“だった。そのうちに、マネーフォワードは「個人間および企業間の送金・決済領域において、既存の金融システムでは解決できない課題が存在している」ことに気づく。同社がその解決策として期待するのがブロックチェーン技術だ。

日本は全世界におけるビットコイン取引高の大部分を占めるなど、仮想通貨先進国として知られている。マネーフォワードは、「日本はFintechの市場規模では世界に遅れを取ってきたが、仮想通貨・ブロックチェーン分野では世界に先進できる可能性をもつ」と語る。

MF ブロックチェーン・仮想通貨ラボを設立することにより、マネーフォワードはブロックチェーン技術を活用した新サービスの開発に着手する。その具体的な内容はまだ分からないものの、同社から入手した資料によれば、個人間と企業間、そして国をまたぐ海外送金にかかる手数料を削減すること、そして、送金にかかるストレスを軽減することがこの新サービスの目標となるようだ。

写真左より、執行役員CTOの中出匠哉氏、執行役員 渉外・事業開発担当の神田潤一氏

研究開発の中心となるのは、2017年12月に執行役員と渉外・事業開発担当に就任した神田潤一氏、そして執行役員CTOの中出匠哉氏の2人だ。神田氏は日本銀行と金融庁を経てマネーフォワードに入社した人物。ブロックチェーン技術や仮想通貨の分野は規制がいまだ不十分という声も聞かれるなか、新サービス構築にあたって必要となるであろう各省庁との“会話”では神田氏がキーマンとなる。

同社は今回の研究機関設立にともない、ブロックチェーン技術に興味・関心をもつ人材の採用を進めるとともに、仮想通貨交換業者登録を検討するとしている。

ICO時代の新しい企業のカタチ「自壊企業」

【編集部注】筆者のEden SchochatはイスラエルのベンチャーキャピタルAlephのパートナー。

数々の投資家や起業家は、トークンを基点としたネットワークが企業の誕生や運営を左右する世界に突入しようとしている。ネットワークビジネス(ネットワークが根幹にあるビジネスの意。連鎖販売取引とは異なる)のモデルを根源から変えるこの変革についていけない企業は、いずれ取り残されることになるだろう。

ネットワークビジネスのなかでも、特にスケールやマネタイズが困難でこれまで広告に頼ることの多かったものは、一企業が顧客にサービスを提供するというモデルよりも、「トークンネットワーク」を活用した方が得るものが多い。このトークンネットワークによって、私たちのスタートアップの捉え方も、単に顧客がサービスに対して対価を支払う企業体のモデルから、経済の計画、構築、維持などに関する決定権を参加者が持つネットワークへと変わっていくだろう。さらにトークン経済においては、ネットワーク内で生み出された価値が、ファウンダーや開発者、顧客、サービスプロバイダー、投資家といったさまざまなステークホルダー(=トークンホルダー)の間でより効率的に共有できる可能性もある。

しかしここ最近、イニシャル・コイン・オファリング(ICO)には逆風が吹き荒れている。

相対するふたつの恐怖がトークンネットワークの普及を妨げているのだ。ひとつはガバナンスの欠如に対する恐れ、そしてもうひとつが規制に対する恐れ。

その一方でトークン時代の今、矛盾しているようにも見えるこのふたつの恐怖を同時に解消するような起業の手段がある。

その手段とは、企業を完全に崩壊させてしまうというものだ。まずは従来の企業のように株式と引き換えに資金を調達してから事業をスタートさせ、ある地点で企業という名の「殻」を破り、ガバナンス体制を非中央集権的なものへと転換させるというのがその概要だ。

ICOが抱える問題のひとつは、トークンネットワークの構築や資金調達に関するルールが現在作られている最中だということ。今年はICOを通じて何億ドルという資金を手にする企業が何社も生まれたが、ほとんどの場合、ICO時に確認できたのは笑顔のファウンダーの写真と、簡単には読みこなせないホワイトペーパーだけだった。

多くのICOが成功をおさめる背景となったのが、仮想通貨という近代史上類を見ない速度で価値が上昇した資産を通じて大金を手にしたクリプト・エンジェルの「金余り」状態だ。ビットコインやイーサリアムをはじめとする仮想通貨の過去10年間の値動きを見てみると、5000億ドルもの資産がたった10年未満で生まれたとわかる。しかもそのうち4500億ドルは過去1年(2017年12月22日現在)のうちに誕生したのだ。

ビットコインの驚異的な値上がりの様子

こうして生まれた資金が市場に流れこんだ結果、初期のICOにおいてはガバナンス体制など問題にならなかった。さらに、どんな分野であれ黎明期には詐欺行為が横行する。ペニーストック(1株当たり1ドル未満で取引される株式)のIPOが同じような道をたどったのを覚えている人もいるかもしれない。ペニーストックをめぐる詐欺行為が増えた結果、1930年代には何千万ドルという売上が上場の必須条件となった。歴史はそのまま繰り返すことはなくとも、このように時代を超えて同じパターンを目にすることはある。今日のICO周りの動きは、ペニーストックのそれに似ていると言っても過言ではないだろう。

さらに先日、米証券取引委員会(SEC)は初期にICOを行ったThe DAOに関する調査レポートを発表した。同レポートの焦点はプリンシパル・エージェント問題にあり、利害関係の一致しない少数のマネージャーによって管理されるネットワークの構造が、SECの調査のきっかけとなったのだ。これを受けて、現在規制強化に対する恐れが高まっており、実際にSECは最近何件かのICOをストップさせた。

規制当局がICOに関与しだしたことで、最近ではICOを検討している企業の代理人を何十万ドルという料金で務めようとする法律事務所を見かけることもある。同時に、以前は創業チームとビジネスアイディアだけを材料に積極的な姿勢を見せていた投資家の勢いもおさまり、既にトークンネットワークの構築を終えたような、ある程度成熟したプロジェクトに注目が集まるようになった。要するに、これまでのようにICOを実施するだけでは、大金を集められなくなりつつあるのだ。

これは、最初の資金作りにICOを活用するというモデルが、もはや(比較的最近ながらも)過去のものになろうとしている、と言い換えることもできる。この変化自体は必ずしも悪いこととは言えない。というのも、アイディア段階にあるにもかかわらず必要以上の資金を調達したスタートアップが失敗しがちということは、過去の例を見れば明らかだからだ。新しいテクノロジーが登場したところで、この傾向が変わる兆しはない。

そもそもトークンの価値とは、早い段階でどれだけの資金を調達できるかではなく、トークンネットワークが公開された時点でのバリューフローや生み出された価値によって決められるべきだ。プロダクトが完成する前にICOを実施するということは、多くの企業の存在を脅かすことにもつながる。もしもプロダクト完成前にトークンの価格が急騰すれば、ローンチ前にもかかわらず企業がトークンホルダーに提供しなければいけない価値も当然上昇する。これを望むファウンダーはいないだろう。

上記から、「トークンネットワークは起業において大きなメリットを持つ」そして「ICOで『上場』するというのは、ビジネスモデルとして成立し、資金調達上のメリットもあるが、ICOにかかるコストは上がってきており、投資家を保護しようとする規制当局の意向にも反する」ということがわかる。

SECによるThe DAOのレポートには、ポジティブな面があるということも忘れてはならない。トークンホルダーが資金使途を自分たちで決められるような、完全に非中央集権化したトークンネットワークでは、プリンシパル・エージェント問題が発生しえないため、(SECのような)中央集権的組織が不要になるのだ。しかし残念なことに、プロダクト開発の初期段階においては、非中央集権的な組織よりもむしろ中央集権的な組織の方が課題を乗り越える上で効率が良い。LinuxにはLinusがいたように、FacebookにはMarkが、イーサリアムにはVitalikが、ビットコインにはSatoshiがいたのだ。TravisなしにUberがこれほどまでに成長していたかどうか考えてみるといいだろう。

この点に関しては、興味深いことに、インターネットや自動運転車など今日のさまざまなテクノロジーの母とも言える米国防高等研究計画局(DARPA)から学べることがある。

DARPAは、当初の課題を解決した後も主導権を握り続ける「Kingdom Builders(王国の建国者)」になることを良しとしない。それを防ぐために、DARPAはプロジェクトを率いるプログラムマネージャーに対して、具体的な責任区分と時間制限を設けている。

そのため、各プログラムマネージャーはプロジェクトの成否にかかわらず、いずれは自分がプロジェクトから手を引かなければならないということを理解している。さらに任期はIDバッジにも明記されており、彼ら自身そして彼らの同僚も、大事な仕事を完遂するまでの時間は限られているということを意識せざるをえない。つまりプロジェクトマネージャーにとって、各プロジェクトはいずれ「消え去る」ものなのだ。実際にほぼ全てのOpen Sourceプロジェクトで、特定の創始者と協力者がいるフェーズを過ぎると、プロジェクトの運営主体がコミュニティへと変化していった。

もしも特定のネットワークを構築するという明確なミッションと、それを達成するまでの期間、そしてネットワークが完成した後は権限を移譲するということが予め定められた企業があったとしたらどうだろうか?

これこそが「自壊企業」のアイディアの根幹だ。

自壊企業のアイディアのもとでは、企業のライフサイクルを次の3つに分けることができる。まずはネットワーク構築に向け、企業が「ネットワーク主体」として機能する段階。この段階では、影響力のあるファウンダーが先頭に立ち、当局の認可を受けた投資家(ベンチャーキャピタルや仮想通貨億万長者のような人たち)からさまざまな形(株式、SAFEのようなコンバーチブルノート、SAFTのような将来的なトークン入手権など)で資金を調達するというモデルが考えられる。その次がトークンと株式が共存する第2段階だ。

第2段階はトークン経済のテストからスタートする。ファウンダーはネットワークを構築し、初期の顧客に対してトークンを「エアドロップ(無料配布)」したり、預入金に応じて配布(「預金者」に対してある種の資産を提供しつつも、トークンを販売しているわけではないので規制を避けられる)したりする。そうすることで、企業は規制対応にコストをかけず、将来についての意思決定ができる自己統制機能を備えた存在としての第一歩を踏み出せるのだ。そして最終段階として、予め決められた時期もしくはマイルストーンに到達した時点で、ネットワークはトークンだけで動きだすようになる。もともとネットワークの運営主体であった中央集権的な企業は、ICOを通じて権利をコミュニティに移譲し、設立当初に組み込まれた「時限爆弾」がその終わりを告げる。面白いことに、このステップをたどればICOがIPOに代わってレーターステージにおける資金調達の代替手段となりえるのだ。

最後にトークンオンリーの段階を設けることで、株主価値とトークン価格のどちらを最大化すればいいのかということについて、経営層の衝突を避けることができる。その一方で、株式とトークンが共存するハイブリッドな段階では、異なる(ときには衝突するかもしれない)利害関係が生まれることになる。

企業を解体するにはいくつかの方法が考えられる。そのうちのひとつが、ICO時に株式とトークンを等価交換するというもの。つまり株主は配当金のように株式の保有割合に応じてトークンを受け取るということだ。税金のことを考えると、保有割合に応じて各株主へのトークンの販売価格を割り引くという方法もありえるだろう。いずれにしろ、株式とトークンを交換する場合には、交換用のトークンが別途必要になる可能性があるため、経営陣はスマートコントラクトを作る前にこのステップについて十分に理解し、綿密な計画を練らなければいけない。

本稿で紹介したモデルには、何百年間もほぼ変わらずに生き続ける従来の企業構造と比較して以下のようなメリットがある。

  • プロジェクト開始時に必要な資金をトークン販売以外の方法で調達するため、規制環境をそこまで気にしなくてもよい
  • 各段階で重視すべき価値が明確化されるため、株主とトークンホルダーの板挟みにあわない
  • ベンチャーキャピタルの投資を受け、ファウンダーが旗振り役を担う企業であれば、ネットワークを十分なレベルまで成長させられるため、規制に準拠し自己統制ができるようになった段階でICOを迎えられるようになる
  • 自壊企業は最終的にトークンオンリーの構造へと変化することから、勝者が全てを獲得するネットワークの世界において、トークンホルダーがネットワーク効果を生み出し、口コミでバイラルにネットワークを広げるインセンティブを生み出せる

このように、自壊企業はネットワークをベースとしたビジネスモデルの未来にウィンウィンの状況をもたらす存在であるとともに、時代遅れの起業メカニズムを加速化させるトークンというエンジンの活用法としても魅力的なモデルなのだ。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

ビットコイン、遂に1万ドルを突破

ついにこのときが来た。ビットコインの価格が1万ドルを突破したのだ。

現地時間の11月28日午前に、ビットコインはまず国際市場(通常各国の現地市場に比べて価格が数%高い)でこのマイルストーンに到達し、CoinbaseやGeminiをはじめとするアメリカの取引所でもその後1BTCが1万ドルを超えた。

なお、ビットコインは8日前に8000ドル2日前に9000ドルを突破したばかりだった。

現代の金融市場でこれほどまでに急激な値上がりを記録した資産は存在しない。参考までに、過去1年間でビットコインの価格は1258%上昇し、仮想通貨全体の価格も2174%上昇(時価総額は3160億ドルに到達)した。ちなみに、ビットコインは仮想通貨市場の時価総額の54%を占めている。

過去1年間のビットコインの値動き(出典:coinmarketcap.com)

ビットコインの世界ではちょっとした混乱が起きている。というのも、歴史上(恐らくチューリップを除いて)、ここまで短期間にこれだけ価格が上昇した資産はなかった。前例もなく、さらには「簿価」を算出する方法もないことから、このニュースをどのように理解すればいいのか誰もわかっていないのだ。

ニュースを受けて、「1兆ドル市場誕生の前兆」や「インターネット誕生以来最大のニュース」、はたまた今後ビットコインが金や米ドル、さらには全ての通貨代替物の役割を担うようになると主張する人もいれば、これは史上最大の投機バブルで、明日にでもビットコインの価値はゼロになってしまうと言う人もいる。

そして、その中間くらいのことが起きるか、全く検討もつかないという人が大半だ。今後テクノロジーがどのように発展していくかを予想するだけでも難しいため、ビットコインのように市場で取引できる流動資産の価値を自力で考えるのは至難の業だ。

つまり、ほとんどの人が「次は何が起きるのか?」という疑問を胸中に抱えている。

しかし誰もその問いには答えられない。仮想通貨の熱狂的な支持者でさえ、現在バブル状態にあり、そのうち修正局面を迎える可能性が高いと考えている。もちろん、修正幅が20%になるのか2%になるのか、さらにはそもそも修正が起きるかどうかさえ誰もわからない。とはいえ現状を考えると、具体的な数値はわからないにしても、将来的に価格が下がる可能性は大いにある。

連日ビットコインに関するニュースをTwitterやCNBCで見聞きするが、実際のところ普及率はまだ低いままだ。アメリカ国民の多くは、未だにビットコインとは何なのか、そしてビットコインで何ができて、どこで買えるのかさえ知らない。この状況はウォール街でも同じで、過去1年間で仮想通貨に特化したヘッジファンドが100以上も立ち上げられたが、機関投資家の多くは未だにビットコインへの投資を控えている。

つまり、まだビットコインは黎明期にあるとも言えるし、すでに終焉を迎えつつあるとも言える。いずれにしろ、過去1年間の仮想通貨市場がどれだけ熱狂の渦に包まれていたかを振り返る上で、このニュースはちょうどいいきっかけになりそうだ。

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(翻訳:Atsushi Yukutake

仮想通貨の税務問題を解決する「Guardian」提供元が約5000万円を調達――Twitterで350件以上の相談を受け事業化

2017年はビットコインを筆頭に仮想通貨の注目度が高まった1年だった。投資の対象としてはもちろん、文字通り「通貨」として会計に使える店舗もでてきているし、仮想通貨を活用した新たなベンチャーファイナンスの枠組みとしてICOが話題になった。

個人で仮想通貨の取引を始めた人も一気に増えたことによって今後大きな問題となるのが税務、つまり確定申告だ。ビットコインに関しては9月に国税庁が課税の取り扱いについての見解を公表しているが、実際どうしたらいいのかわからないという人も多いのではないだろうか。

そんな仮想通貨の税務問題に取り組むのが、12月1日にリリース(一次申し込み開始)予定の税理士紹介・記帳代行サービス「Guardian」だ。

提供元のAerial Partnersはサービス公開に先立って、総額約5000万円の資金調達を実施することを明かしている。第三者割当増資の引受先は日本テクノロジーベンチャーパートナーズおよびCAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、3ミニッツ取締役CFOの石倉壱彦氏を含む複数の個人投資家。500 Startups Japanが公開する投資契約「J-KISS」による資金調達だという。

仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットで提供

Guardianは仮想通貨に詳しい税理士の紹介と記帳代行システムをセットにしたサービスだ。一見シンプルな税理紹介サービスに見えるが、Guardian側で複数取引所の情報整理や取引を時系列に並べる機能をもつ独自システムを開発し、税理士に提供することで税務業務をサポートしている。

「仮想通貨のロジックがわかっていても人間が手作業で全て対応するのは難しい。そこで申告者に税理士の先生を紹介するだけでなく、記帳代行をスムーズにするシステムを開発している」(Aerial Partners代表取締役の沼澤健人氏)

国内外の取引所10社を中心に、取引履歴照会のAPIを公開している取引所についてはAPI登録のみで自動で所得を集計。APIを公開していない取引所についてもCSVアップロードなどで所得が集計できる。

沼澤氏によると将来的にはこの独自システムをさらに改良した上で、SaaSとして外部に提供することも検討しているとのことだった。ただし現状は法制度も整備しきっていないこともあり、あくまでもGuardianを支えるツールとしての位置付けだ。

現在はむしろ税理士側の啓蒙活動などアナログな取り組みに力を入れているそう。たとえば日本仮想通貨税務協会を設立して仮想通貨に対する講習を実施。認定された税理士をGuardianで紹介していく予定だ。

Twitterアカウント開設後2ヶ月で350件以上の税務相談

Aerial Partnersのメンバー。写真中央が代表取締役の沼澤健人氏

沼澤氏はあずさ監査法人で3年間勤務した後に独立。現在はチャット小説アプリ「peep」を手がけるTaskeyの共同代表や法人向けの会計業務を行うAtlas Accountingの代表を務めている起業家だ。今回新たに仮想通貨に関する事業を始めた背景には、7月に開設したTwitterアカウント「2匹目のヒヨコ」を通じて、多数の仮想通貨に関する税務相談が寄せられたことがあるそうだ。

「個人的に1年半ほど仮想通貨の投資をやっていたが、今年に入って一気に利用者が拡大する中で所得税の計算が大変なことになるだろうなと思い、税務相談ができるTwitterアカウントを立ち上げた。仮想通貨と税務の知識がどちらもある人が界隈にいないこともあり、150人以上の方から370件ほどの相談を受けた」(沼澤氏)

沼澤氏が約1000人に行ったアンケートでは1つの取引所のみを使っているユーザーは全体の1割ほどで、4割が5つ以上の取引所を使っていると答えたそう。中にはアルトコインを使うために海外の取引所を利用するユーザーも多い。そうなると円建てで計算する必要が生じ、後々個人で対応するのは難しいという。

相談をしてくる人の中には税理士に相談したところ対応が難しいと断られ、解決策を探し求めた結果沼澤氏のTwitterにたどり着いたという人もいる。「10年ほど前にFXが注目された時も申告していないためにペナルティを受けた人が多発した。同じような状況にするわけにはいかない」(沼澤氏)

当初は個人的に無償でアドバイスを行ったり税理士の紹介をしていたそうだが(沼澤氏自身は税理士ではないため)、案件が増え個人では対応できなくなり、8月後半から事業化に向けて急ピッチで動き出した。

「3月になって地元の税理士事務所に駆け込んでも、ほとんどの税理士は対応できない。そもそも申告が必要だと知らない人もいるので、申告者と税理士双方への啓蒙活動を進めながら今年の確定申告期を業界全体で乗り越えていきたい」(沼澤氏)

BitTorrentの発明者が(ビットコインとは違って)環境に優しい仮想通貨Chiaを発表

ビットコインの1トランザクションには、今やアメリカの家庭の1週間分の電力が浪費されている。伝説のプログラマー、ブラム・コーエンが狙うのは、それをなんとかすることだ。そして、彼が広く用いられているBitTorrentピアツーピアファイル転送プロトコルの発明者であることを思えば、その動きは真剣に受け止める必要があるだろう。

コーエンは、Chia Networkという新しい会社を立ち上げたばかりだ。ビットコインの採用する電力浪費型のproofs of work方式ではなく、proofs of timeとproofs of storageという手法に基く仮想通貨を始めるためだ。本質的に、Chiaはハードドライブ上の安価で豊富な未使用のストレージスペースを利用して、ブロックチェーンを検証する。

「より良いビットコインを作り、中央集権化の問題を解決することが目標なんだ」とコーエンは私に語った。彼がビットコインで問題だと思っている2つの点は、地球環境への影響と、安価な電力にアクセスできる少数のマイナー(採掘者)たちが持つ巨大な影響力から生じる、不安定性である。

Chiaはこの両者を解決することを目指している。

BITCOINCHIAネットワークの動作原理
・全ての履歴とペンディング中のトランザクションの全てを保存しているノードたちが、ネットワーク上にある。それらのノードは自分の知る中で最も重い1つの3つの履歴を自分のピアに送信する。
・新しいブロックが生まれたときには、それは素早く全てのノードに送られて、マイナーたちファーマーたちは、それを使って計算を始める。1人のマイナーがファーマーが新しいブロックを発見したら、それをネットワークにパブリッシュする。ファーマーたちは彼らのもつ最高のproof of spaceを発見する。3つの最高のproofs of spaceが素早く全てのネットワークに送り出され、proofs of timeサーバーたちが、それらを用いて計算を始める。1つのproof of timeサーバーがproof of spaceのためのproof of timeを完了すると、それら全てを完全に検証済のブロックとしてネットワーク上にパブリッシュする。

ビットコインはブロックチェーンを検証するためにproofs of workという手法を用いる。これは、本物と同様の計算を行って、ニセのブロックチェーンを作成するのは非現実的なほど高価につくからだ。しかし、それは時間が経つにつれて、低コストの電力が手に入る場所や、マイニング装置を自然に冷やせる場所でビットコインをマイニングする者たちに、大きな優位性を与えることになった。

Chiaはその代わりに、人びとが多くの場合既に持っていて、追加費用なしで使うことができる、ファイルストレージを用いたproofs of spaceを利用する。そしてこれをproofs of timeと組み合わせる(こうすることで、proofs of spaceが受けやすい様々な攻撃を無効にするのだ)。

「私はこのアイデアを思いついた初めての人間ではないけどね」とコーエンは言う。しかし実際に実装するには彼が専門とするような先進的コンピューターサイエンスが必要とされるのだ。

2000年代初頭にtorrentの基礎を発明し、ValveのSteam(ゲームプラットフォーム)を暫く開発したあと、コーエンはライブビデオ配信のための新しいピアツーピアプロトコルの本格的開発のために、BitTorrentを設立した。しかし、ビジネス面での管理の失敗が会社を崩壊させた 。現在同社は非常に弱りきった状態であり、コーエンは「会社は私を毎日必要とはしない」と言うようになった。そこで、彼はまだ取締役会の一員ではあるものの、8月の初めに同社を去り、Chia Networkを始めたのだ。

Chia Networkの共同創業者ブラム・コーエン

コーエンは、ビットコインの初期からの交換所であるTradehillのCOOであるRyan Singerとチームを組み、Chiaの立ち上げと雇用のためのシードラウンドを行った。コーエンは、シードでの調達金額を明かさなかったが、笑いながら「現在いくら必要と言うべきかは良くわからないね、でもまあとてもホットなラウンドだったよ」と語った。目標は、2018年の第2四半期までにChiaの早期販売を開始して、2018年末までには仮想通貨として完全に立ち上げることだ。

コーエンは素晴らしい技術者だが、ビットコインからChiaへの切り替えを人びとに納得させるためには、それ以上のものが必要だ。彼は私にChiaでは「新規まき直しをするのだから、法的な位置付けをよりスマートなものにして、かつ膨大な技術的修正を行なう」計画だと語った。

これがどういうものであるかを推測するのは時期尚早だが、少なくとも、ただ不平を言うのではなく、仮想通貨の生態系への影響に対してアプローチしようとしている者が居るということは言える。コーエンは興奮しているように見えた。「これは技術的にとても野心的なことで、やるべきことがたくさんあるんだ。既に十分な資金は調達したし、人も雇った。後は実際にやるるだけさ」。

[画像クレジット:Michael O’Donnell]

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(翻訳:Sako)

YCはブロックチェーンを使って、誰もがスタートアップ投資に参加できるようになることを検討している

ICO(initial coin offerings)が、仮想通貨(cryptocurrency)ネットワークを通じて広範囲の投資家たちから資金を調達するための、新しいルートとして浮上している。そして現在、世界最大にして最も有名なアクセラレーターが仮想通貨ネットワークとブロックチェーンを使って、より多くの人びとが支援に参加しやすくすることを検討している。

Disruptの壇上で、アクセラレーターY Combinatorの代表であるSam Altmanは「私たちは、Y Combinatorのような企業が、ブロックチェーンを使って投資へのアクセスを、どう民主化できるのかに興味があります」と語った。「私たちはそれがどのようなものかをしっかりと見極める必要があるのです」。

とある情報源によれば、YCは実際にはそれよりも少し先に進んでいるということだ。デジタル通貨の世界へと飛び込むベンチャーグループの数が増えていることを受けて、同グループも投資家の母集団を拡大するために、仮想通貨を利用する方法を積極的に検討している。情報筋によると、まだ法的事項やその他の詳細が検討されている段階ということだ。

サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disruptカンファレンスで、Altmanは現在のハイテク業界におけるICOの役割についての、さまざまな図を描いてみせた。その全てがバラ色というわけではない。

AltmanはICOの働きについて、まだ解決されていない課題が沢山あることを強調した。その中には透明性合法性、そして効率性などに関わるものも含まれている。これらを非常に強い誇大宣伝の流れが相殺しようとしている。

「現在のICOは間違いなくバブルだと思います」と彼は言う。「しかしそこに何かが横たわっているために、スマートな人たちが魅了されているのです」。

そして彼はまた、政府がICOの運用に、より積極的に関与すべき理由を説明した。

「ICOを馬鹿げた屑のようなものだと思っているか、と聞かれたら、はい、もちろんと答えます」と彼は続けた。「しかしそこには、わずかながら重要なものはありますし、そしてブロックチェーンはさらに重要です…ICOは規制を受ける必要があるのです」。

Altmanの主導の下にほぼ指数関数的成長をしているにもかかわらず、YCはさらに大きな運用規模を目指す大いなる野心を抱いている。そんな彼らにとって、はるかに広い支援者たちに、YCを開放する可能性がある新たな投資形式を利用するという考えは、特に大きな変化だと考えられる必要はない。

同時に、それは初めて「認定」されていない投資家たちと一緒に働くことを意味する。すなわち富裕層の一般投資家たちが相手ということだ。これがAltmanにアピールするものの1つだ。

これまでY Combinatorは、世界で最も選り抜きの成功したスタートアップ企業たちと協力してきただけではなく、最も成功したベンチャーキャピタルや初期投資家たちとも協業してきた。そこにはSequoia Capital、SV Angel、そしてYuri Milner of DSTなどの名が含まれている。

一方YCは、アクセラレーター活動を継続的に強化し続けている。その中心的なYCプログラムに加えて、YCは、後期ステージ向けのY Continuity Fundを通じて、スタートアップを成熟させることにも焦点を当て始めた。また10週間にわたるオンラインのスタートアップスクールも運営している。そこでは一度に3000のスタートアップとの接触を保っている、とAltmanは語った。

それでもなお、Altmanはさらに多くのスタートアップを支援するという野心を持っており、スタートアップたちへのアクセスを広げたいと考えている。ステージ上で、昨年野心として口にしていたYCのサイズを倍にする計画はあるのか、と問われたAltmanは、微笑んでこう答えた「昨年の私たちはもっと野心的でしたね…ともあれ、もっと多くのスタートアップを興し、本当に彼らを支援する方法を見つけることができると考えています」。

ICOの魅力を、Altmanはこう付け加えた「人びとは、友人たちが本当にリッチになるのを見ていて、それが彼らを欲求不満にし、自分もリッチになりたいという気持ちにさせるのです」。

「シリコンバレーで私を悩ませている傾向の1つは」と彼は続けた「多くの人びとにとって、富を生み出すことがますます不可能になってきているということです。そして富の偏在が甚だしい現状は、とても悪いことだと考えています。もし新しいテクノロジーが、この富の偏在の民主化を、現実的に可能にできるのならば、それは本当に素晴らしいことだと思います」。

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(翻訳:Sako)

チケット売買もビットコインで——コインチェックがチケットキャンプに対応

8月12日に単位価格が4000ドルを超えたビットコイン。そのビットコインを決済に使える場面が、また増える。ビットコイン決済サービス「Coincheck Payment」を提供するコインチェックは8月17日、ミクシィグループのフンザが運営する「チケットキャンプ」にCoincheck Paymentを導入。ライブやイベントなどのチケットを、ビットコイン決済で購入することができるようになった。日本のチケット業界では初のビットコイン決済対応となる。

チケットキャンプは利用者数500万人を超える、チケット売買のサービス。チケットキャンプでのビットコイン決済は全世界のビットコインウォレットに対応し、PCブラウザ、スマートフォンブラウザで利用できる。チケットキャンプのiOS/Androidアプリにも、今後対応していく予定だという。コインチェックが提供する「Coincheckウォレット」ではシステム上から直接決済が可能。またCoincheckウォレット以外のウォレットを利用する場合は、支払い時に表示されるQRコードを読み込むことで決済ができる。

コインチェックでは、これまでにもCoincheck Paymentを国内外へ提供してきた。現在、Coincheck Paymentで決済可能なサービスには、DMM.comの各サービスや、寄付金の受付電気料金の支払いなどがある。7月にはAirレジ向け決済サービス「モバイル決済 for Airレジ」にも導入され、メガネスーパーなどでビットコイン決済対応を開始している。

コインチェックは2012年の設立。2014年8月から仮想通貨取引所「Coincheck」の運営を行ってきた。8月10日には、Fintechスタートアップへの投資育成プログラム「Coincheck investment program」を開始。ブロックチェーンや仮想通貨、Fintech事業を開発・運営する法人・個人を支援していくと発表している。

仮想通貨取引所のコインチェック、Fintechスタートアップへの投資を開始

仮想通貨取引所のコインチェックが「Coincheck investment program」と名付けた取り組みで、スタートアップへの投資を開始する。投資事業有限責任組合を使ったファンドの組成ではなく、コインチェックからの直接投資となる。

コインチェックは2012年8月設立のスタートアップ企業。なぜスタートアップがスタートアップ投資? という疑問符が頭に浮かぶ読者も多いだろう。コインチェック取締役COOの大塚雄介氏はTechCrunch Japanの取材に対して、仮想通貨・ブロックチェーンのユースケースを増やす目的があると語る。仮想通貨のユースケースが増えることが、取引所としてのコインチェックの事業拡大に繋がるからだ。

コインチェック取締役COOの大塚雄介氏

「自社だけでやるより他社を巻き込んだほうが速く仮想通貨市場全体が広がると考えています。ただ、これまでにも『ICOがやりたい』、『ブロックチェーンがやりたい』と言って起業しようという人たちが私のもとに相談に来ているのですが、法律面はどうなってるかと聞くと、特に若い人たちは『いや、とりあえず出してみようと思っています』という回答が多かったりするのが現実です」

「われわれも金融出身ではないので、初めのうちは苦労しました。だから分かるのですが、Fintechは技術に加えて金融や法律の知識も必要で、学習コストが高い。初期のスタートアップに対してそこを支援するのが狙いで、ファンド金額や投資額がどうというよりもハンズオンが重要だと思っています」

例えば、いきなり問題のあるICOプラットフォームを世に出して潰されてしまようなことがあると、当人たちにとっても社会的にも損失となる可能性がある、という。

投資はコインチェック本体から直接行い、期間や総額は決めていないものの、投資1件あたり数百万円から5000万円程度までを考えているという。特に2〜3人のスモールチームで、どういった法的懸念があり、誰に相談すれば良いのか知らないような、走り出したばかりのチームを想定しているという。

ちなみにコインチェック自体は7月の月間取引高がビットコインだけで2326億円(日本全体では4673億円)。売買手数料、レバレッジ、スプレッド、決済時の1%の手数料の4つの収益源で、すでに事業は黒字化しているという。コインチェックの決済はメガネスーパーやエアレジ導入店舗などで使える。

コインチェックは2012年の創業時にはレジュプレスという社名で、履歴書関連サービスを提供。後にビリギャルを生んだプラットフォーム「STORYS.JP」を運営していたが、仮想通貨サービス「coincheck」を2014年8月に開始。先日、2017年8月2日にはSTORYS.JP事業を1010株式会社へ事業譲渡して、今は仮想通貨サービスに注力している。今回の枠組みで、さまざまなアイデアに投資することを考えているものの、coincheck自体は今後も取引サービスを主幹業務としていく。法人需要の掘り起こしも検討しているそうだ。

フィスコが10億円、ほかVC2社が仮想通貨とCOMSAのICOトークンへ直接投資を開始

テックビューロがICOソリューション「COMSA」(コムサ)を発表したことはTechCrunch Japanで8月3日にお伝えしたとおりだが、このCOMSAが作り出そうとしている「ネットワーク」にリアルマネー(法定通貨)を投資する事業会社とVCがでてきた。

COMSA発表から1週間が経過した今日8月10日、金融情報提供サービスを運営するフィスコのほか、テックビューロの既存投資家であるVCの日本テクノロジーベンチャーパートナーズ、IoT関連スタートアップに投資しているアクセラレーターのABBALabの3社が、COMSA上で流通するICOトークン(CMS:単位はCOMSA)をはじめ、ビットコイン(BTC)やNEMプロジェクトの通貨である「XEM」への直接投資を開始したことを発表した

ビットコイン、NEM、COMSA、ICOトークンへ投資

「直接投資」を噛み砕いていえば、ビットコインやNEMの仮想通貨を日本円で買っていくということだ。買うのは既存の仮想通貨だけでない。10月2日に予定されているCOMSAのトークンセールで出てくる「COMSA」という新しいトークンについても投資予定だし、COMSAというICOプラットフォームで今後でてくるICO案件で発行されるトークンについても投資を予定している。ただ、ICOによるトークンは有価証券ではないので、投資家ではなくトークン購入者というほうが現実に近いのかもしれない。

既存仮想通貨やCOMSA、COMSAを使って今後でてくるICO案件それぞれの投資金額や比率は明らかにされていない。ただ、フィスコは全体で10億円規模となる仮想通貨専門の投資ファンド「FISCO Crypto Currency Fund(仮称)」を組成するとしている。

フィスコは株式、為替、金利などの金融情報を投資家向けに提供していて、すでに仮想通貨に関する情報提供も開始しているが、仮想通貨やICO市場を既存金融市場と比べたとき「合理的な市場は形成されていない」(フィスコ代表取締役狩野仁志氏、発表文からの引用)という。

確かに現在、仮想通貨に関する情報といえば、単に誤った情報というだけでなく、根拠のない断言やあからさまな嘘、煽りも横行している状況だ。世界のICOについて言えば、トークンセールの実施主体が発行するホワイトペーパーと、そのICOによって利益を得る関係者たちの証言だけが頼りということもある。今後、もしICOが資金調達手段として既存の資本市場を補完する存在になっていくのだとしたら、信頼できる情報に対するニーズが高まることは十分に予想されるところだ。

しかし、フィスコのような情報提供者が直接投資をするプレイヤーとなることに矛盾はないのだろうか? この点について前出のフィスコ狩野氏は、情報の透明性を高めることで「合理的な金融市場形成に寄与する」という同社の使命に言及しつつ、次のようにコメントしている。

「私たちがXEMをはじめとする将来有望な仮想通貨やICOトークンへ積極的に投資することで、他の投資家に対する超過利潤を得ることに何のためらいもありません。自らがプレイヤーとなり、そのパフォーマンスを実現し、市場に示していくことは、私たちがその使命を遂行する上でもっとも効率的かつ効果的な方法論であろうと考えています。今後の私たちの投資パフォーマンスに是非ご期待頂ければと思っています」

音楽にたとえると、IPOはクラシック、ICOはロック

ICOという新しい仕組みについて日本テクノロジーベンチャーパートナーズの村口和孝氏のコメントが興味深い。かなり長いコメントだが、あまりに面白いので以下に全文を引用しよう(改段落はTechCrunch Japan編集部による)。村口氏は日本の独立系VCの草分け的存在として、日本のVCの間では最も尊敬されている人物の1人だ。

「NTVPではこれまでDeNAなど日本のスタートアップ企業に対して株式を使って、投資を長期で実現して、発展を支援してきました。音楽でいえばクラシック音楽です。20世紀の株式による資本を増加する方法であるVC投資とIPOに対し、ICOは、ロックの登場です」

「ICOは21世紀のフィンテック時代における、事業実現に向けての新しい実に有効な資本調達手段だと考えています。NTVPはこれまでの株式のガバナンスを有効な支援方法とする方法に対し、ICOではトークン市場での会社発展エコシステムにトークンホルダーとしてVCとして事業発展に関与します。そこでは、NTVPは、トークンをいかに保有し、いかにトークン発行会社のICOで実現しようとしている事業ビジョンの実現を支援するかが、ICOに関与するVCとしての役割になるでしょう。もちろん、NTVPでは、従来のIPOを狙うスタートアップ企業に対するクラシック株式投資も継続しますし、それがすべてICOのエレキギターによるロックに置き換わる訳ではありません」

「21世紀はIPOクラシックとICOロックと2つのエコシステムが互いに協調しながら経済社会のフロンティア領域において、新しい経済のスターを生み出す2つのエンジンになる日が近いと考えています。ロックが最初不良の音楽とみなされたように、社会が受け入れるには十年くらいかかるかもしれませんが、ICOからエルビスプレスリーやビートルズ、さらにはマイケルジャクソンが誕生する日も近いとNTVPでは考えています」

ICOとは何なのかということについては、『FinTechの法律』(日経BP、2016)などの共著書がある増島雅和弁護士(森・濱田松本法律事務所)が7月に発表したスライドが現状のサマリーとして参考になるので、以下、一読をオススメしたい。増島氏はテックビューロのリーガルアドバイザーも務めている。

テックビューロが開発を進めるCOMSAは、複数のブロックチェーン間のゲートウェイとなるプラットフォームだ。テックビューロ創業者で代表取締役の朝山貴生氏はTechCrunch Japanの取材のなかで、その狙いを「プライベートチェーンとパブリックチェーンの境目をなくすのが目標」と語る。

ここでパブリックチェーンと言っているのは、NEM、Ethereum、Bitcoinのブロックチェーンのこと。プライベートチェーンといってるのは個々の企業が使用するmijinのブロックチェーンのことだ。境目をなくすと言うときカギとなるのは異なるチェーン上の価値を交換可能とする「ペッグ」という手法だ。

「COMSA CORE」と呼ぶクラウド上の9台のサーバーで稼働するmijinノードで稼働するブロックチェーンがパブリックブロックチェーン同士をペッグし、「COMSA HUB」というmijinのプラグインがそれらパブリックブロックチェーンと内部勘定のプライベートなブロックチェーンをペッグする。

COMSAでペッグさせるのは、既存仮想通貨や、新規発行するICOトークンと仮想通貨などの組み合わせがある。さらに法定通貨(円や米ドル)とペッグさせることも視野に入っている、という。法定通貨とのペッグは、直接的なやり方ではなく、法定通貨とペッグした仮想通貨(TetherやZEN)を使うことで行う。法定通貨の裏付けを持ったサービス提供主体がプライベートチェーンを運用し、これをパブリックチェーンにペッグすることで、円やドルと等価のトークンを仮想的にパブリックなNEMやEthereumのブロックチェーンで扱えるようになる。このことは、パブリックチェーン上で商取引が可能になることを意味している。テックビューロの朝山氏は「実経済の資金がさらにブロックチェーン上に乗って、潤滑油になってエコシステムが回りだす」と話している。

COMSAで扱うICO案件については、COMSA自体のICOのほか、2号案件として11月中旬に東証二部上場企業のプレミアムウォーターホールディングス、3号案件として11月下旬にCAMPFIREを予定している。取り扱うICO案件について朝山氏は「10社に9社はお断りしている状況」と話していて、引き合いが多いものの採用基準自体は厳し目にしているそうだ。

仮想通貨やICOは資本主義をどう変える?——CAMPFIRE、VALU、Timebankが語る

左からフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏

8月3日から4日にかけて北海道・札幌市で開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2017 Summer in Sapporo」。初日のセッション「仮想通貨がもたらす信用経済と新たなビジネス」には、CAMPFIRE代表取締役の家入一真氏、森・濱田松本法律事務所の弁護士・増島雅和氏、VALU代表取締役の小川晃平氏、メタップス代表取締役の佐藤航陽氏が登壇。ICOの可能性や評価経済のこれからについて語った。モデレーターはフリークアウト・ホールディングス代表取締役の佐藤裕介氏が務めた。

そもそも、ICO(Token Sales)とは何か?

最近ではTechCrunchの誌面でもよく見かける「ICO」というキーワード。Initial Coin Offering、つまり仮想通貨を発行することでの資金調達を指すこの言葉だが、実はまだその実情を理解できている人は少ないのではないだろうか。モデレーターの佐藤氏はまずそう語り、増島氏がICOの特徴を解説するところからセッションはスタートした。

ICO(増島氏はToken Salesとも表現した)はつまりトークン(独自の仮想通貨)を発行することで、資金を調達する手法。これを有価証券(株式)を使った資金調達と比較すると、次の図の通りだ。

増島氏が説明した有価証券とICO(Token Sales)の違い

株式でもトークンでも、特定の資金調達目的のために発行するが、その価値の基準は、株式での調達は事業体のキャッシュフローの割引現在価値を表す(ざっくり言えば、事業体が金を稼いでいるか、今後稼げるか)ことに対して、トークンでの調達はネットワーク全体の価値を表す(事業体が稼げるかだけでなく、ソーシャルグッドなアクションをすることで価値が高まることなども価値になる)という。

また株式はリアルな取引を行うため、流動性は低く国ごとの規制がかかる、トークンの取引はインターネットで完結するため、流動性が高く、国ごとの規制にはかからないという。流動性が高い分、ボラティリティも高くなるという。増島氏はICOについて、「やってることの本質は『グローバルな購入型のクラウドファンディング』だ」とまとめる。

ICO設計時の注意点

日本では昨日テックビューロがICOプラットフォーム「COMSA」を発表したばかりだが、世界を見ると、すでに直近12カ月(6月時点)でブロックチェーン関連企業がICOで調達した資金の総額が、VCからの調達額を上回っているのだという。

そのCOMSAの導入第3弾企業としてプレスリリースにも名前が挙がっていたのがCAMPFIREだ。家入氏は「早速株主から電話がかかってきて『どういうことだ』と聞かれた」と導入についてぼかして語った上で、クラウドファンディングとICOの関係について説明する。

「サービスを開始して6年、7年とやってきて、ICOの流れが急にやってきた。クラウドファンディングとしてこの波に対して“我関せず”のままではむしろ死んでしまう。自分たちに何ができるかを考えた結果、自分たちがICOをやろうかと。そう検討している中で(COMSAに)声をかけてもらった」(家入氏)

CAMPFIREが取り組むのはICOだけではない。ビットコインでプロジェクトを支援できる仮想通貨取引所の「FIREX」、プロジェクト終了後の資金ニーズを支援する融資サービス「CAMPFIREレンディング」なども展開している。家入氏は、「インターネットの本質は声を上げたくても上げられなかった人が声を上げられるという1点に尽きる。経済格差も広がっている中で、社会からこぼれ落ちてしまう人がいる」と語った上で、ICOが社会貢献的な領域の資金ニーズを解決できることがまだまだあるのではないかとした。

仮想通貨でプロジェクトを支援する「FIREX」

ここでフリークアウト佐藤氏は、ICOがIPO、つまり既存の証券取引所に上場することの代替になるのかを増島氏に尋ねる。

「まだ実証されていない領域なので試行錯誤ではあるが、現状トークンを出している上場企業があるかないかというとある。(東証JQGの)フィスコが『フィスココイン』をやっている。問題があるか、ないか、というと『ないはず』だと思っている。トークンと株の関係が論点になるかもしれないが、(トークンは)有価証券ではないので不明だ」(増島氏)

VALUのユーザーは想定の10倍に成長

テック業界から人気に火が付いたVALUは、ユーザーが自身を上場企業に見立てて、自分の価値を「VA」という単位でビットコインをつかって売り買いできるサービスだ。小川氏はVALUが直接的にICOであることを否定した上で、「個人をトレーディングカードのようにして上場させるサービス」だと説明する。

サービスのローンチは6月だが、ICOの隆盛といった追い風もあって、「想定していたユーザーは5000人くらい。だがそれが10倍ほど集まった。土日や夜9時以降のサービスは提供していなかったが、想定外の反響を集めている」(小川氏)と語る。サービス開始当初は取引の制限がなかったこともあって、価格が高騰するような事態にもなったが、その後はマンガ家やクリエーターなどが続々参入。コミュニティも形成されつつあるという。小川氏はVALUのミッションについて、「人の価値を発掘し、高める」ことにあると語る。

Timebankは個人の価値が大きい時代のためのサービス

メタップスが今秋提供予定のサービスは「Timebank」。これはスペシャリストの「時間」を時価で売買するというサービスだ。メタップスの佐藤氏はサービス提供の経緯について、「『空間』を売買することは『不動産』として以前からあるが、『時間』を売買できないのが不思議だった。時間こそ時価でやり取りすべきものではないか」と語る。

「Timebank」のイメージ

また佐藤氏は、Timebankがいわゆる「評価経済」の文脈から提供されているのではなく、中国のライブストリーミングなどに影響されて企画されたサービスだと語る。「中国の女の子たちが、働かないで(ライブストリーミングで)歌って投げ銭が来るとかそういうところからきた。まずは私の価値か会社の価値、どちらが大きいか試してみたい。個人的には個人の(価値が大きい)時代になって欲しいと思っている」(佐藤氏)

ところで、こういった新しい「価値」たちは、実際にどんな機能を果たしているのだろうか。小川氏はVALU上でのクリエーターの立ち位置についてこう語る。「今は画像しか投稿できないが、クリエーターやマンガ家さん、面白いことをやっている人はかなり人気になっている。フリーランスは社会的信頼は低いが、VALU内では人気を集めている」(小川)。これに対して、増島氏は、ネットワークを作るタイプのビジネスと、ICOや新しい価値の経済がマッチすると語る。

評価経済は資本主義をひっくり返す?

フリークアウトの佐藤氏は、最後にICOをはじめとした新しい価値の経済が広がれば、どんな世界が待ち受けているのかとパネリストに問いかけた。

「あまり中央集権化が重要ではなく、経済も自由に選べるようにしたい。選択肢が増えれば、勝ち組負け組もない。(今の経済での負け組は)『自分の経済が違う』となる。それをやっていきたい」(メタップス佐藤氏)

「色んなものが『価値化』されていくと思う。NPO法人などを、今のVCが支援してもいい。それをトークンで担保したりできる。生まれた時点で違う価値をどう評価するのか、そこに面白みを感じる」(小川氏)

「CAMPFIRE自体はいろいろ考えていかないといけないが、ICO的な手段がどうなっていくかというと、時代がやってくるのは分かっていて、その先にあるのが評価経済。『こいつだめだなあ』という人を助ける世界。今シェアハウスを作ろうとしているが、ICO的なものでできないか考えている」(家入氏)

シンガポールがアメリカに続いてICO規制に乗り出しか

米証券取引委員会(SEC)のICO規制に関する発表から1週間も経たないうちに、シンガポール当局も証券として考えられるトークンの規制を始めると発表した。

世界的な金融ハブとして知られているシンガポールは、TenX(調達額:8000万ドル)、Golem(860万ドル)、Qtum(1560万ドル)などの資金調達を経て、ICOのメッカのような存在になった。ICOという、これまでになかった資金調達方法について各国当局の対応に注目が集まる中、シンガポール金融管理局(MAS)は自国通貨の電子化に努めており、仮想通貨業界からはポジティブな声が集まっていた。

中にはシンガポールを「ICOヘイブン」のように考えている人もおり、3月のWiredの記事では、シンガポール当局は「このような電子トークンを証券とは考えていない」とまで書かれていた。

どうやらそれは違ったようで、本日(現地時間7/31)MASは、一部の(どうやら全てではないようだ)ICOを規制する旨の書簡を公開した。

6つのポイント沿ってまとめられた書簡の内容を要約すると、MASは今後シンガポールの証券先物法の対象になりそうな(つまり株式のような証券に近い)トークンの販売を規制していくということだ。さらにMASは、取引所をはじめとするICO後のトークン売買を可能にするサービスも規制対象になると記している。

シンプルな内容のようにも見えるが、何を「証券」とみなすかはMASの判断であり、その条件については現時点では明らかになっていない。

MASは妥当なアドバイスとして、シンガポールが関連したICOを考えている企業・個人は「関連法に照らして第三者機関からの法的なアドバイスを受け、必要に応じてMASとも相談するよう」促している。

ICOを行うシンガポール法人以外にも、シンガポール人やシンガポールに拠点を置く個人・法人からの出資を受けるICOも規制対象になる可能性がある。

だからといって悲観する必要はない。シンガポール当局は同国でICO人気が高まっているのを認め、規制をもってこの新たな資金調達方法に漂う法的な不透明さを払拭しようとしたのだ。今後はどのICOが証券取引として考えられるのか(そもそもそんなものが存在するのかを含め)、そして当局がそれにどう対応するかということに注目が集まる。

業界団体のACCESS(シンガポールの仮想通貨・ブロックチェーン企業から構成されている)は、既にMASの書簡を歓迎している。

「本日MASが公開した書簡の内容を喜ばしく感じています。当局は仮想通貨の多様さと共に、証券先物法の対象にならない通貨の存在も認めているのです。明確化された規制対象や仮想通貨に対するMASの新たな意見について知ることができありがたく思っています」とACCESSの広報担当者は語った。

MASは以前にも、ICOで使われることのあるビットコインやイーサリアムといった仮想通貨に関する勧告を発表したが、資金調達の手段として仮想通貨が利用され始めたことを受けて、今回の書簡を公開するに至った。

「海外の規制当局と同じように、MASも仮想通貨を規制しないというポジションをとっています。しかし最近では、ただの仮想通貨を超えたトークンの使い方が散見します。トークンが発行者の資産や所有物の所有権や担保権を表章するものとして使われている場合がその一例です」と書簡には記してある。

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(翻訳:Atsushi Yukutake