「僕には必勝パターンがある」、gumiがブロックチェーン特化の30億円ファンド設立

スマホゲームの開発などを行うgumiは5月30日、仮想通貨およびブロックチェーン技術に特化した投資ファンド「gumi Cryptos」を設立すると発表した。ファンド規模は3000万ドル、日本円にして約30億円だ。

「投資には、僕なりの必勝パターンがある」ーー gumi代表取締役の国光宏尚氏は、TechCrunch Japanの取材でこう語った。

gumiはこれまで、モバイル動画とVRの領域においてスタートアップ投資とインキュベーションを行ってきた。モバイル動画ではCandeedelyなどに出資を行い、VR領域ではインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」からInstaVRよむネコなどを輩出した。

モバイル動画とVR。それぞれ領域は違えど、gumiによるスタートアップ支援はきれいにパターン化されている。スタートアップにシード・アーリー期から深く関わることでコミュニティを作り、そのメンバー全員で、ある問いに対する答えを見つけるというものだ。

「まず、3〜5年後にくるであろう領域を見つける。それから、その領域で有望なスタートアップのインキュベーションやシード・アーリー期の投資を行う。僕は何についても“〇〇ファースト”なプロダクトやサービスが最後に勝つと思っている。だから、出資先の起業家たちとお互いの成功体験、失敗体験を共有しながら、『何がスマホファーストなのか、何がVRファーストなのか』というのを検証していくんです」(国光氏)

そして、このインキュベーションと投資によって得た知見を自社プロダクトの開発に活かす、というのが国光流必勝パターンの最終形態なのだという。VR領域で言えば、2017年3月に発表されたよむネコのグループ会社化などがその例だ。

そのgumiが、次の“3〜5年後にくる”と読んだのが仮想通貨とブロックチェーンの領域だ。gumiは米国の仮想通貨取引所「Evercoin」の創業者であるMiko Matsumura氏を共同事業者に迎え、2018年2月にgumi Cryptosを設立。3000万ドル(約30億円)規模のファンドを立ち上げた。合同会社であるgumi Cryptosの業務執行社員には、gumi Ventures(グループ傘下のVC)とMiko Matsumura氏が就任する。

同ファンドはすでに、ゲームの配信プラットフォームを開発するRobot Casheや動画配信プラットフォームのTheta(いずれも米国)など5社に出資を実施済みだ。1社への出資額は25万ドル〜100万ドルだという。

「この領域でも同じく、ブロックチェーンならではのモノとは何かを検証していく。その仮説の1つが、ブロックチェーン上ではデータがトレーダブルであり、かつコピー不可という特徴をもつという点だ。これまで、インターネット上のデータはコピーされてしまうものなので、価値を持たなかった。だから、Spotifyも音楽データを販売するのではなく、“音楽に囲まれた日常”というサービスを売ってきた。でも、これからは、ゲーム内のデータがコピー不可でユニークなものとなり、資産性を持つという世界になるかもしれない」(国光氏)

ちなみに、詳細はまだ不明ではあるものの、これまでのパターン通り、gumiはすでにブロックチェーン技術を活用した自社プロダクトの開発に着手しているようだ。

マネーフォワード、2018年内に仮想通貨取引所を開設

資産管理サービスなどを展開するマネーフォワード523日、金融機関とテクノロジーの融合をテーマにした「Fintech&マーケティングフォーラム2018」を開催。同社はそのクロージングセッションにおいて、ブロックチェーン領域のビジネスを行う新会社を設立したと発表した。

新会社名は「マネーフォワードフィナンシャル(以下、MFフィナンシャル)」。MFフィナンシャルでは、2018年よりブロックチェーン・関するメディアを開始するほか、2018年内に仮想通貨交換所の開設を目指すという。また、時期は未定であるものの、将来的に仮想通貨の送金・決済プラットフォームの構築も見据えている。新会社の代表取締役に就任するのは、「MFブロックチェーン・仮想通貨ラボ」の中心メンバーで、日本銀行出身の神田潤一氏だ。

マネーフォワードはこれまで、資産管理と確定申告に利用できるサービスを提供してきたが、仮想通貨に関して「知る(メディア)」、「交換する(交換所)」、「利用する(送金・決済)」を提供することで、仮想通貨の認知から確定申告まで一貫してマネーフォワードグループのサービスで解決できる世界を目指すという。

以上の発表に加え、マネーフォワードは資産管理サービス「マネーフォワード」が連携する仮想通貨取引所の数を現在の3社(bitFlyerCoincheckZaif)から約20社に拡大することも併せて発表。新しい連携先には、BTCBOXbitbankQUOINEXFISCOなど国内外の取引所が含まれる。また、今後はマネーフォワードで自動取得した仮想通貨の取引データをCryptactCryptoLinCG-taxなどの損益計算ツールとAPI連携を行うことで、計算結果をCSV形式でダウンロードできるようになる。そのファイルを確定申告用の「MFクラウド確定申告」にインポートすれば、申告書の自動作成も可能になる。

クロージンセッションに登壇した神田氏は、「世界中のユーザーにフリーでフェアなサービスを提供することが、MFフィナンシャルの使命。仮想通貨の取引をしないユーザーの47.3%がセキュリティに不安があるからと答えている結果(同社実施のアンケート結果)を受け、MFフィナンシャルの取引所ではセキュリティを最優先事項とする」と話した。

「これからはCurrency2.0の時代。場所・時間・手段からの自由、国境やイデオロギーからの自由、固定された価値からの自由を意味すると私たちは考えている」(神田氏)

MFフィナンシャルでは、3年後までに100名規模の採用と育成、ブロックチェーン技術の実用化に向けた研究開発、全国の金融機関との連携を進めていくという。

(アップデート:5月23日18:50)

以下、セッション後に開催された質疑応答の内容をまとめる。

MFフィナンシャルの仮想通貨取引所における取り扱い通貨について、神田氏は「比較的規模が大きく、ユースケースが明確な通貨をまずは取り扱う」とコメントした。セキュリティを最優先すると強調した同社だが、コールドウォレットとマルチシグによる運用は現在「検討中」(神田氏)。MFフィナンシャルはすでに仮想通貨交換業登録を申請中で、現在金融庁とビジネスモデルについての意見交換を行っている最中だという。

マネーフォワードの株主には、SBIやマネックスなど仮想通貨交換業への参入に興味を示す企業が名を連ねているが、神田氏は「各企業はそれぞれの考え方に基づいてビジネスを行っているが、そのなかで、連携できるところは連携を進め、ライバルとなる場合でも、お互いが切磋琢磨して業界全体のレベルを上げることが出来ればと考えている」と話した。

XRPエコシステム構築に向けて動き出したリップル

ついにこの時が来た。これまでの銀行・送金サービスへのフォーカスから一転し、リップルがそれ以外の分野へも自社の仮想通貨XRPを活用しようとしているのだ。

仮想通貨の代名詞とも言えるビットコイン、そして開発者から多大な支持を得ているイーサリアムに続き、XRPは世界第三位の仮想通貨だ。Coinmarketcap.comの情報によれば、その時価総額は5/14時点で287億ドルにのぼる。その一方で、これまでに発表されたいくつかのパイロットプロジェクトを除くと、XRPは実世界ではほとんど利用されていない。

しかしそれもすぐに変わるかもしれない。リップルはこの度、新たなイニシアティブ「Xpring(読みは『スプリング』)」を発表した。このイニシアティブの目的は、起業家や彼らのビジネスをXRP(仮想通貨とXRPレジャー)に誘致し、新たなエコシステムを構築すること。リップル自体は引き続き金融ビジネスにフォーカスしながら、投資や補助金、インキュベーションといった手段を使って企業を誘い込み、XRPの普及を図ろうとしているのだ。

同社は自分たちがXRPをコントロールしていないと言い張っている(同社はXRPの総発行量の60%を保有しているため、この点については熱い議論が交わされている)が、どうやら同通貨の発展には常に関心を持っているようだ。そして直近6ヶ月の様子を眺めても、XRPのユースケースの多様化が大きな課題であることは明らかだ。

昨年末から年初にかけて仮想通貨が高騰した際、2万ドル近い最高値を記録したビットコインと共にXRPの価格も急上昇し、ピーク時の時価総額は1280億ドル以上に達したものの、1月後半には価格を大きく戻した。さらに、XRPはこれまで銀行のためのツールと謳われていたが、実際には海外送金サービス目的の顧客しか獲得できておらず、実用性の観点からも避難を浴びていた。

リップルを越えて

そこでリップルは、これまでFacebookでディベロッパー・ネットワークのディレクターを務め、投資会社グレイロック・パートナーズの客員起業家(EIR)でもあったEthan Beardを社内に迎え、今後は彼がXpring、ひいてはリップルの開発者向けプログラムを率いていくことが決まった。

「イニシアティブのゴールは、XRPレジャーとシナジーがあると思われるビジネスをサポートすること」とリップルのビジネス・オペレーション部門のSVPを務めるEric van Mittenburgは語る。「”サポート”にはさまざまな形があり得る。投資、インキュベーション、さらには買収や補助金という可能性さえある。支援先は、リップルのレジャーとXRPを使って、真の意味で顧客の課題を解決できるような実績のある起業家に絞っていく」

さらにvan Mittenburgは、すでに「何年にも渡って」複数の起業家や企業からXRPを使ってビジネスをしたいという誘いを受けてきたが、リップルは金融サービスに特化しているため、具体的な話が出たことはなかったと語った。

また彼は「これまでの活動から勝機を感じており、今が攻め時だと判断した。直近の4〜6か月の間に(Xpringのアイディアが)かなり具体化した」と付け加えた。

2010年のLeWebに登壇したEthan Beard(写真:Adam Tinworth/Flickr

今年に入ってからのリップルの動向を追っていた人にとっては、今回のニュースはそこまで驚きではなかっただろう。

仮想通貨企業の多くが自分たちでファンドを立ち上げる(ファンドではなく企業として資金を調達するか、Ethereum Community Fundのように業界中から広く資金を募るかは別として)なか、リップルは密かに投資に力を入れていたのだ。

まず今年1月、2人のリップル幹部がベイエリアのOmniという企業への2500万ドルの投資に参加し、その後3月にはリップルCEOのBrad Garlinghouseが弊誌の取材に対し、リップルは現在の軸を保ったまま「もちろんXRPをさまざまな方法で活用しようとしている企業ともパートナーシップを結んでいく」だろうと語っていた。

すべてはXpringに絡んだ動きだったのだ。

ジャスティン・ビーバーも参画?

van MittenburgとBeardは、XRPとシナジーがありそうな分野として、トレードファイナンス、ゲーム、バーチャルグッズ、個人情報、不動産、メディア、マイクロペイメントを挙げる。

筆者がリップルはXRPの280億ドルという時価総額を正当化する理由を探しているだけではないのかと尋ねたところ、van Mittenburgは他の仮想通貨に比べればXRPの投機性はかなり低いと答えた。

「すでにXRPのユースケースは存在する。稼働中のブロックチェーンを運営する企業のなかでも、リップルは数少ないエンタープライズ向けのソリューションを提供している1社だ。さらにXRPとXRPレジャーはきっと他の企業にとっても有益なテクノロジーになるはずだと感じている」(van Mittenburg)

また彼は、「XRP以外のブロックチェーンを採用したものの満足していない」プロジェクトもリップルに関心を寄せており、Xpringを活用して”移住先”を探すプロジェクトの取り込みに注力することもできるだろうと付け加えた。ただし、ICO投資やトークンの購入、XRPブロックチェーン上でのICOの開催は考えていないという。

XRPを「近いうちに」マーケットプレイスに追加する予定のOmni以外にも、すでにXpringの支援先として目をつけている企業はいくつかある。ジャスティン・ビーバーのマネージャーとして有名なScooter Braunは、「XRPを使ってアーティストのマネタイズやコンテンツ管理を支援できるような方法を模索している」。

Braunが具体的にどんなアイディアに取り組んでいるのか(ブロックチェーンを使った著作権管理システムやストリーミングサービスの開発に取り組むプロジェクトはすでにいくつも存在する)までは、van MiltenburgとBeardは明言しなかったが、ふたりによれば少なくともBraunは安易に他者のまねをするような人物ではないとのことだ。

Braun自身は「エンターテイメント業界の中ではかなり早い段階でブロックチェーンと触れ合っており、今後に期待している」と定型的な返答をするに留まった。

「今後もXRPのユースケースを拡大していく予定なので、まだこれは始まりに過ぎない」(Braun)

Braunの他にも、現在はリップルのCTOながらも新企業Coilを設立し、マイクロペイメントサービスの立ち上げに取り組んでいるStefan Thomas(近いうちにCTOの座からは退く予定)とのパートナーシップが報じられている。また、XpringはベンチャーキャピタルのBlockchain Capitalに出資しているほか、TechCrunchのファウンダーMichael Arringtonは、最近立ち上げたファンドの資金をすべてXRPで調達した

リップルCEOのBrad Garlinghouseは以前からXRPを活用する企業とのパートナーシップについて語っていた(写真:Christopher Michel/Flickr

エコシステムの構築

ただし、Xpringが今後どのような動きをとるかについては未だハッキリと決まっていないようだ。

Beardは、Facebookのタイムラインやソーシャルグラフの力でSpotify、ZyngaそしてBuzzFeedといったスタートアップが主要テック企業へと進化していったように、次のイノベーションの波はブロックチェーン業界から起きると言う。さらに彼は、XpringとXRPは「新しいビジネスを立ち上げ、業界構造を変える」力を秘めていると考えているようだ。

van Mittenburgは具体的なゴールにはコミットしなかった。

「私たちが目指すのは、XRPレジャーとデジタルアセットのポテンシャルを最大限引き出すこと。リップルを含むさまざまな企業にとってメリットのある、健全で強力なXRPエコシステムを構築していきたい」(van Mittenburg)

提携企業へのインセンティブとして、リップルが提携先にXRPを配布していることはよく知られているが、Braunのような著名なパートナーにどのくらいのインセンティブを供与しているかや、Xpring全体の予算といった数字は明らかになっていない。

この点についてvan Mittenburgは「大きなチャンスがあればアグレッシブに攻めていくつもりだ。投資が必要なプロジェクトには多額の資金を投じることもいとわない」としか語らなかった。

おそらくXpringには多額の資金(XRP)が投じられていることだろう。何百という数の仮想通貨が共存する現在のシステムは持続可能とは言えず、今後は十分な価値を生み出しているものだけが生き残れるようになるはずだ。そういう意味では、リップルが目指す独自のエコシステムの構築は理にかなっている。世界第三位の仮想通貨としてXRPには大きな期待が寄せられているが、年初の大暴落が示す通り、その価値は上昇よりも早く下降する可能性がある。

そのため、リップルのコアとなる金融サービスとは毛色が違うながらも、Xpringはコミュニティの創造、そして最終的にはXRPのユースケース拡大を目指すなかで重要なポイントになってくるだろう。残された疑問は、スタートアップコミュニティがさまざまな投資オプションにどうアプローチしてくるかという点だ。

注:本稿の筆者は少額の仮想通貨を保有している。保有金額はテクノロジーについての理解を深められる程度ではあるものの、人生を変えるほどではない。

原文へ

(翻訳:Atsushi Yukutake

起業家の有安氏を含む6人のメンバー、ブロックチェーン特化のコワーキングスペース立ち上げへ

ブロックチェーン領域に特化したスタートアップのHashHub。同社は5月10日、会社の設立と仮想通貨とブロックチェーン領域に特化したスタジオ型コワーキングスペースを今年夏頃にも立ち上げることを発表した。設立メンバーは、仮想通貨領域のメディアの運営やウォレットの開発などを手がけてきた東晃慈氏(HashHubの代表取締役に就任)を中心とする6人。その中には、起業家でエンジェル投資家の有安伸宏氏も含まれる。

HashHubのコワーキングスペースは東京大学がある東京都本郷に設立される予定だ。ブロックチェーンを活用したビジネスを立ち上げたい個人やチームが対象となる。入居費用は月額3万5000円から。

HashHubは施設をコワーキングスペースとして開放する一方で、自社でもブロックチェーン技術を使ったプロダクトやサービスの開発を進める。入居者も巻き込みながら新しい事業の開発に取り組むという、“スタジオ型”のコワーキングスペースだ。また、HashHubはブロックチェーン技術がオープンソースで開発されることの重要性を認識しており、売上の一部をオープンソースでの開発支援にあて、開発者による勉強会やワークショップ、技術アドバイスを行っていくという。

設立背景について、代表取締役の東氏は「国内では仮想通貨の投機市場が大きく伸びたが、それ以外のビジネスが育っていない。この状況を打破しなければ、海外勢に遅れをとってしまうとの懸念からコワーキングスペースの運営に乗り出した」と語る。

また、有安氏は「『分散型の◯◯を作ります!』と意気込む起業家と会えるようになったのは、ここ最近のこと。しかし、従来のWebビジネスと比較すると、ブロックチェーン関連事業に必要なテクノロジーや法関係などのノウハウには、黎明期ならではの学びにくさがあります」と話し、ブロックチェーン領域でイノベーションをおこす起業家へのサポートの重要性を語った。

HashHubのコワーキングスペースは今年の夏頃にオープンする予定だ。入居申し込みや価格プランなどの詳細は、このWebページで確認できる。

「学習と人脈のハブ機能となる物理的な拠点の誕生は、エコシステムにとって王道的な布石。かつて、日本のWebビジネス黎明期に渋谷周辺が「ビットバレー」と名づけられ、多様なベンチャーが集積したように、様々なblockchain startupが日本でもポコポコと生まれてくることを期待している」(有安氏)

日本のICOファンド「B Cryptos」、韓国のブロックチェーン・プラットフォーム「ICON」と提携

左より、B Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏、B Cryptos代表取締役の本吉浩之氏、ICON Foundation創業メンバーのJH Kim氏

B Dash Venturesが設立したICOファンドのB Cryptosが、ブロックチェーン・プラットフォーム「ICON」を提供する韓国のICON Foundationとの戦略的パートナーシップを発表した。これにより、ICON Foundationの創業メンバーであるJH Kim氏がB Cryptosの投資委員会に参加し、主に海外の投資案件に対する助言を行うという。

2017年12月に設立したB Cryptosは、国内および海外の仮想通貨へ直接投資を行うICOファンドだ。B Cryptos代表取締役の本吉浩之氏によれば、「来月中にも本格的な投資活動を開始する」という。なお、当初は100億円規模のファンド設立を見込むと話していたB Cryptosだが、設立後に起きたNEM流出事件の影響からか、現時点ではその目標までには達していないという。具体的なファンド規模は非公開。

一方、B Cryptosが提携を発表した韓国のICON Foundationは、イーサリアムやNEOなどと同じく、分散型アプリケーションの構築や、異なるガバナンスをもつ独立したブロックチェーン・ネットワーク同士の連結を目的としたプラットフォーム「ICON」を提供している。また、韓国の証券コンソーシアム向けのブロックチェーンを活用した本人認証システムや、韓国の生命保険会社Kyobo Life Insuranceと共同の自動保険金請求システムなどの開発実績もある。

記事執筆時点では、ICONで使用される仮想通貨「ICX」の時価総額は約17億ドル(約1800億円)で世界20位。「C-rep」と呼ばれる代表者たちによってICXの発行枚数が決定されるシステムや、「SCORE」と呼ばれる独自スマートコントラクト技術をもつことなどで注目を集めている。また、イーサリアムなどの他のプラットフォームとは違い、サービス提供者とユーザーとの間で取引手数料の負担比率の調整が可能であることも特徴だ。

B CryptosとICON Foundationは今回の戦略的パートナーシップにより、今後ハッカソンやデモデイを共同で開催するほか、ブロックチェーン技術のインキュベーションプログラムを運営していくとしている。来月にも本格的な仮想通貨への直接投資を開始する予定のB Cryptosにとっては、JH Kim氏をはじめとするICON Foundationがもつ投資案件の“選球眼”を手に入れることになる。

なお、現時点ではB CryptosがICXへ投資するかどうかは「検討中」(本吉氏)だという。一方、JH Kim氏は「今後、日本のレギュレーションに沿ったかたちで、ICXを日本の仮想通貨取引所へ上場させることも目指す」と話した。

日本発の仮想通貨ウォレット「Ginco」がビットコインに対応、分散型サービスの入口となることを狙う

仮想通貨ウォレットアプリ「Ginco」を開発・提供するGincoは4月24日、同アプリをビットコイン(BTC)にも対応させ、本格リリースしたと発表した。BTCへの対応は、2月にリリースしたベータ版でのイーサ(ETH)、3月のアップデートによるイーサリアム上のトークンERC20系通貨9種への対応と、ブロックチェーンを使ったVR空間アプリケーション「Decentraland」内の仮想通貨MANAへの対応に続くもの。これで取引量上位2種のBTC、ETHを含む、12通貨に対応したことになる。

Gincoはスマートフォンで仮想通貨を管理するためのクライアント型ウォレットアプリ。日本語インターフェースで仮想通貨の入金・送金・管理が可能で、取引所から送金した仮想通貨の保管、飲食店やECサイトでの決済、個人間での仮想通貨のやり取りなどに利用できる。現在はiOS版がリリースされている。

ウォレット提供の背景について、Gincoでは「仮想通貨ユーザーの資産の正しい管理・保護」と「ブロックチェーン技術の本来の意味での活用」を目的に挙げている。同社代表取締役の森川夢佑斗氏は、3年ほど前からGincoとは別のウォレットアプリを開発してきたが、「日本では仮想通貨やブロックチェーン、ウォレットに関する知識、普及が遅れている」と話す。

「ウォレットは仮想通貨の入れ物というだけでなく、テクノロジーとして本来のあり方でブロックチェーンを生かす土台であるべき。『ブロックチェーン技術を使ったサービス上で仮想通貨を利用できる』ようなウォレットが必要だと考えてきた。Gincoは仮想通貨ユーザーの資産保護と、ブロックチェーン技術の本来の意味での活用の両面からウォレット開発を進め、ブロックチェーンを使った分散型社会を実現するイノベーションを届けることを目指している」(森川氏)

技術とデザインの力でウォレット普及を図る

2017年は日本の「仮想通貨元年」とも言うべき年になり、仮想通貨保有者は100万人を超え、200万人になったとも言われている。2018年3月には国内交換業者17社の現物取引顧客数が350万人となった(4月10日、日本仮想通貨交換業協会が発表)。一方でCoincheckのNEM不正流出事件などでも見られたように、多くのユーザーが取引所に仮想通貨を預けたままにしている実態もわかってきた。

資産として仮想通貨を管理・保護するのであれば、不正アクセスなどで狙われやすい取引所ではなく、秘密鍵を端末で管理するクライアント型ウォレットなどへ移し替えて管理した方が、より安全だ。だが、既存のウォレットは海外発のものが多く、日本のユーザーにとってわかりやすく使いやすいものが少ない。そのことが、日本でのウォレット普及を遅らせるひとつの要因ともなっている。

森川氏は「海外発のウォレットは英語インターフェースだけのものが多く、日本人にとってはユーザーフレンドリーではない。デザイン面でも、一般の人にはとっつきにくい。このため、バックアップやプライベートキー(秘密鍵)の管理などウォレット操作が難しくなっているが、これらの操作はウォレットで仮想通貨を正しく安全に扱うためには外せない。そこで我々のウォレットは、デザインとしてユーザーがわかりやすいものにしたいと考えた」と話している。

仮想通貨ウォレットの概念は難しく、とはいえ資産を守るためには、秘密鍵の使い方を他人に手取り足取り教えてもらうわけにもいかない。自分で仮想通貨を管理するには、相応のリテラシーが必要だ。Gincoでは、日本語でのバックアップの設定など、誤操作での資産損失がなるべく起こらないようなUI設計を行ったという。

「仮想通貨に詳しい人のブログなどを調べずに、初心者でも使えるようなウォレットは今までなかった。我々は技術とデザインをウォレットの“使いやすさ”に落とし込んで、ユーザーにアプローチしたい」(森川氏)

またGincoはセキュリティ対応に加え、外部APIに依存せずにウォレット機能を独自に実装したことで、自前でブロックチェーンにアクセスでき、正しい取引履歴情報に対応するスケーラビリティを備える。日本では外部APIに依存するウォレットが多いが、「それでは仮想通貨のインフラとして十分でない」との考えからだ。

現状ではGincoは、ブロックチェーンの仕組み上最低限必要な手数料だけで、上乗せ手数料なしで利用できる。「今はダウンロードしてもらうことに注力し、仮想通貨をより活用する場面が出てきたときに何かしらの形でマネタイズする」とGincoでは考えているようだ。リアルの銀行が口座ごとにいくら資産があるか、情報を持っていることを強みとしているように、仮想通貨の銀行、お金のハブとなることで集まる情報を使ってビジネスにしていくという。

Gincoは近いうちに、ビットコインキャッシュ(BCH)やライトコイン(LTC)などの主要な仮想通貨にも順次対応していくとのことだ。またAndrod版の開発なども進めていくという。

ブロックチェーン時代の「銀行」を目指して

Gincoは今後、DEX(Decentralized EXchange:分散型取引所)やDapps(Decentralized Applications:分散型アプリケーション)への接続機能を拡張していくことで、ブロックチェーン時代の銀行、分散化された社会を実現するためのインターフェースとなることを目指している。

現在利用されている、bitFlyerやZaif、Coincheckといった取引所は、管理主体がある中央集権型取引所だ。それに対し、DEXは取引を管理する主体がなくても機能する、ブロックチェーンを活用して個人同士で取引を行うことが可能な取引所である。

Dappsはブロックチェーンを用いた分散型アプリケーションの総称で、実はビットコイン自体も分散型の通貨アプリケーション、つまりDappsの一種である。現在、インターネット上にさまざまなウェブアプリケーションが存在しているように、さまざまな分散型アプリケーションがブロックチェーン上で開発されている。

分散型アプリケーションの代表的な例がゲームのCryptoKitties。過去にTechCrunchの記事でも紹介されているが、イーサリアム・ブロックチェーン上に構築されたトレーディングカードゲームのようなもので、バーチャルな子猫を売買したり、交配して新しいタイプの子猫を作り出すことができる。ガチャのように子猫のレア度をゲーム運営主体が調整することはなく、透明性が保たれている。また購入や交配で得た子猫は、中央集権型ゲームで運営会社が倒産すれば無価値になるキャラクターとは異なり、イーサリアム・ブロックチェーンがある限り資産となる。

森川氏は「中央集権型サービスと非中央集権の分散型サービスにはそれぞれ一長一短があるが、分散型のほうがメリットがあるサービスがDappsへ移行してくるのは確実」と話す。「その時に入口として必要になるウォレットをGincoで実現する」(森川氏)

Gincoでは、イーサリアム・ブロックチェーンベースのトークンでVR空間に土地が買えるDecentralandをはじめ、Dapps開発が盛んな海外のブロックチェーンカンパニーを中心にアライアンスを組み、Dappsとの接続を進めていくという。

森川氏は「仮想通貨をリアルな決済手段として浸透させて普及させる、というのは“ダウト”。結局は使われないのではないかと思っている」と話している。「SUICAなど、既存のバーチャルマネーは使える場面が多いから使われているわけで、場面が少なければ『使って何の得があるの?』となるだけ」(森川氏)

森川氏は、ブロックチェーンを利用した分散型のコンテンツプラットフォーム「Primas」を例に説明する。「Primasでは良いコンテンツを生産すれば、評価によって(仮想通貨の形で)返ってくる。今は円を仮想通貨、仮想通貨を円に替えるといった、わざわざボラティリティの高いことをやっているが、そうじゃなくて使ったサービスを通して仮想通貨を手に入れられなければ、仮想通貨経済は回らない」(森川氏)

「仮想通貨を仮想通貨として使うサービスやアプリ(Dapps)はまだ少ない。そこへアクセスするためのウォレットも少ない。そこでまずは海外のプレイヤーと組んで、ウォレットからDappsを使えるようにして、いずれは自分たちでもDappsを作っていこうと思っている」と話す森川氏。将来的にはDappsで得た仮想通貨がウォレットに入ってくるよう連携したり、ウォレット内で各種仮想通貨間の両替なども行えるようにしたいと語っている。

Dapps接続および通貨としての利用を見越して、Gincoではビットコインやイーサリアムなど、仕様の異なる複数のブロックチェーンプラットフォームに対応している。「現状ではイーサ(ETH)を使うDappsが多いが、BTC対応のものも出てきており、利用者の多さから対応は必須と考えている。ウォレット開発は、ブロックチェーンを使ったアプリケーションなどを展開するための足がかりとしてのステップ1だ」と森川氏は話す。

Gincoは2017年12月の設立。1月にはグローバル・ブレインが運営するファンドから、総額約1.5億円の資金調達を実施したことを発表している。

「日本仮想通貨交換業協会」が正式発足、ルール整備で信頼回復を目指す

この日開催した記者発表会には、仮想通貨交換業の登録を受けた16社のうちテックビューロを除く15社の代表が集まった。記者会見の質疑のほとんどは奥山会長が答え、技術的な内容の一部を加納副会長が補足した

2018年4月23日、金融庁から仮想通貨交換業の登録を受けた16社が集まり一般社団法人 日本仮想通貨交換業協会を設立した。業界団体として仮想通貨の取り扱いに関する各種ルールを整備し、金融庁から自主規制団体として認定されることを目指す。今年3月に新団体設立を目指すとの発表を行っているが(関連記事)、今回は正式な旗揚げということになる。

設立と同時に臨時社員総会および第1回理事会を開催。会長にはマネーパートナーズ代表取締役社長の奥山泰全氏、副会長としてbitFlyer代表取締役の加納裕三氏およびビットバンク代表取締役社長の廣末紀之氏が就任。また理事として、以上の3氏に加えSBIバーチャル・カレンシーズ代表取締役執行役員社長 北尾吉孝氏とGMOコイン代表取締役社長 石村富隆氏が選任された。

後手に回っていた自主規制作りを急ぐ

2018年1月に起きたコインチェックからの仮想通貨NEM大量盗難事件を受けて、金融庁は仮想通貨取引所/販売所を営む仮想通貨交換業への監督を強化した。事業者への立ち入り検査や行政処分が相次ぎ、登録を受けないまま事業を続けていた「みなし事業者」が撤退する事例も出ている。こうした状況のもと、新たな仮想通貨交換業者の認可やICO(Initial Coin Offering、トークン発行による資金調達)実施の取り組みなど仮想通貨ビジネスを推進する取り組みはほぼストップしている状況だ。

この状況を打開するには、金融庁が描いていた構図、つまり「業界団体による自主規制」の実態をいち早く整える必要がある。

仮想通貨取引所/販売所に求められる要件は数多い。マネー・ローンダリング及びテロ資金供与対策のための本人確認の強化、コインチェック事件で重要性が改めて認識されたサイバーセキュリティ対策、それに相場操縦やインサイダー取引などに対する自主規制も求められている。これに加えて、仮想通貨やブロックチェーン分野は技術の進化が速く、法整備と行政の指導を待っていては前に進みにくい構図がある。今回の団体には、進化が速い仮想通貨の分野で実効性がある自主規制ルールをいち早く作っていくことが期待されている。

まずは最低限必要なルールを大急ぎで整備し、業界各社でルールを遵守する実態を作り、それを金融庁が認めて自主規制団体として認定される必要がある。これが同団体の最初の目標ということになる。

奥山会長は記者会見の席上、「新規に参入する業者は多い方が望ましい」と発言した。その理由として、今の16社だけでは自主規制団体を運営する負担が大きいことを挙げた。自主規制団体は、業者を検査する能力や、ルール違反があった場合の処分を決める委員会などの機能を備える必要があり、予算規模もそれなりに大きくなるとした。

今回の団体による自主規制がうまく機能すれば、新規の仮想通貨交換業者の登録などが再開されて仮想通貨ビジネス全体が再び回転し始めると期待できる。奥山会長は「いち早く信頼を回復し、仮想通貨市場を発展させていきたい」としている。

日本仮想通貨交換業協会のメンバー16社の社名は以下のようになる。

  • マネーパートナーズ
  • QUOINE
  • bitFlyer
  • ビットバンク
  • SBIバーチャル・カレンシーズ
  • GMOコイン
  • ビットトレード
  • BTCボックス
  • ビットポイントジャパン
  • DMM Bitcoin
  • ビットアルゴ
  • Bitgate
  • BITOCEAN
  • フィスコ仮想通貨取引所
  • テックビューロ
  • Xtheta

仮想通貨Centraの創立者、3200万ドルを調達したICO詐欺で告発される

米国政府は、仮想通貨ICO詐欺を厳重に取締る約束を果たしている。金曜日(米国時間4/20)SEC(証券取引委員会)は、Centra Tech Inc.の第3の共同ファウンダーであるRaymond Trapaniを告発した。同社は昨年、DJキャレドとボクサーのフロイド・メイウェザーが推奨した派手なICOで、仮想通貨デビットカードを通じて3200万ドルを調達した。他の二人の共同ファウンダー、Sam SharmaとRobert Farkasは今月すでに告発、逮捕されている。

「われわれはCentraの共同ファウンダーらが、以前から有効な最先端技術を開発したかのような誤認識を与えていたと疑っている」とSECのサイバーユニットの責任者、Robert A. Cohenが語った。「投資家は、デジタル資産への投資に十分な注意を払う必要がある。うますぎる話は特にそうだ」

SECはTrapaniを、不正ICOスキームの黒幕と呼んでいる。Trapaniは、主要クレジットカードと提携していると称し、自社製品の説明を偽り、ファウンダーの経歴詐称やCentraトークン(CTR)の価格操作を行って投資家を誘惑していた。

SEC文書によると、これらのICO詐欺犯は現行犯で逮捕された。

被告人らがやりとりしたテキストメッセージから、不正の意志が露呈した。主要銀行から、Centraの宣伝資料に掲載されていた銀行名を外すよう停止勧告が送られてきたあと、SharmaはFarkasとTrapaniaとメッセージを交換し、偽書類をでっち上げるよう指示していた。

ニュヨーク南地区連邦検察局もTrapaniを証券詐欺罪および有線通信詐欺罪で告発し、金曜日午前に逮捕した。Trapaniは証券詐欺の謀議1件、有線通信不正の謀議1件、証券詐欺1件、および有線通信詐欺1件で告発された。4件中3件の罪に最大20年の禁固刑が規定されている。

「告発のとおり、Raymond Trapaniは共同被告人らと共に、自社製品に関する虚偽の申告および信用ある金融機関との虚偽の関係を主張することによって投資家らを誘引した」とRobert Khuzami連邦検事補が罪状を説明した。

「仮想通貨に投資することは合法だが、投資家を騙すために嘘をつくことは違う」

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

ヤフーが仮想通貨とブロックチェーン事業参入へ、子会社がビットアルゴ取引所東京へ資本参加

ヤフーは4月13日、100%子会社であるZコーポレーションを通じて、ビットアルゴ取引所東京へ資本参加することを明かした。

Zコーポレーションではビットアルゴ取引所東京からの第三者割当増資と、親会社であるシーエムディーラボからの株式譲渡を引き受ける。出資額は非公開だがZコーポレーションでは株式の40%を取得する方針。ビットアルゴ取引所東京は同社の持分法適用会社となる。出資時期は2018年4月中の予定だ。

ビットアルゴ取引所東京はすでに仮想通貨交換業者として登録を認められている企業の1社。ヤフーでは同社に資本参加することで、ブロックチェーン関連領域と仮想通貨事業に参入する。まずは同社が持つサービス運営やセキュリティのノウハウを活用して、ビットアルゴ取引所東京による取引所サービスを強固にしていく方針。サービスの開始は2018年秋の予定だ。

つい先日マネックスがコインチェックを36億円で買収したニュースを報じたばかり。GMOグループやDMMグループのようにすでに自社で事業を展開しているケースもあるが、一方では大企業が仮想通貨事業を運営するスタートアップへの資本参加を通じて、新たに参入してくるケースが増えていくのかもしれない。

なおZコーポレーションは、ヤフーの既存事業とは異なる領域へ挑戦するために設立された子会社。宮坂学氏が代表取締役を務めており、2018年3月にはシェアサイクル事業を展開するOpenStreetへ出資することも発表済みだ。

急増が続く国内の仮想通貨取引量、17年度は証拠金・信用・先物取引で56兆円超え

コインチェックのNEM流出騒動やマネックスによるコインチェックの買収を始め、2018年に入ってからも「仮想通貨」業界の話題は絶えない。直近では内部管理態勢の不備などを原因とした、事業者への行政処分も続いた。

このような状況も踏まえ金融庁では「仮想通貨交換業等に関する研究会」を設置し、仮想通貨交換業等に関する問題について制度的な対応を検討すると3月に発表。そして本日、その第1回目が都内で開催された。

本稿では公開されている説明資料のうち、日本仮想通貨交換業協会が発表した「仮想通貨取引についての現状報告」より国内の取引状況について一部紹介する。

証拠金・信用・先物取引が約2兆円から56兆へ急増

資料では国内17社における取引状況がまとめらている。内訳としてはBITOCEANとbitFlyerを除く(bitFlyerについては、預かり資産額の分布、顧客の入出金状況、スプレッドの状況のデータに関しては含まれていない)仮想通貨交換業者14社と、コインチェック、バイクリメンツ、CAMPFIREのみなし業者3社だ。

ここ4年ほどの取引状況についてはグラフをみると一目でわかるように、昨年1年間の伸びが凄まじい。実際は1年毎にかなりのペースで取引量が増大しているが、2017年度(平成29年)は現物取引が12兆円(18.39%)、証拠金・信用・先物取引は56兆円(81.61%)を超えた。

なお約56兆円の97.44%は証拠金取引が占める。これは一定額の証拠金を担保にして売買すること仕組みで、仮想通貨FXと呼ばれるものだ。なお通貨ごとにみると現時点ではビットコインが圧倒的な存在感を放っている。

取引の中心層は20代から40代

国内でアクティブに仮想通貨取引を行っているのはどの世代なのか。現物取引の場合は20代から40代が中心で、その世代が全体の約85%を占める。証拠金・信用・先物取引では20代から40代に加えて、50代の割合も高い。

預かり資産の分布をみると10万円未満が77%を占め、100万円未満の利用者まで含めると全体の95%ほどになることがわかる。

17年度の入出金は2兆円近くに

仮想通貨取引に対しては、ここ2年ほどで流入する資金が増加。特に2017年12月は単月で入金額が1兆円を超えている。2018年に入って入金額が減少、2月には出金額が入金額を上回ったが今のところ顕著な出金超とはなっていない。

マネックスG代表取締役の松本氏、「コインチェックには素晴らしいブランド価値がある」

4月6日、NEM流出事件の渦中にあったコインチェックを36億円で買収すると発表したマネックスグループ。同日、そのマネックスグループとコインチェックは合同で記者会見を行った。

コインチェックは、一時はTVCMを大々的に放映し、顧客口座数も170万件を超えるほどの勢いがあった。とはいえ、重大なセキュリティ不全による流出事故を起こしたコインチェックを買収し、仮想通貨交換業に参入するのには、もちろんそれなりのリスクがある。その買収を決断したマネックス代表取締役の松本大氏は、本日開催された記者会見でコインチェックのブランド価値と仮想通貨に対する熱い期待を語った。

松本氏は、「コインチェックには素晴らしいブランド価値がある」と強調する。その証拠に、マネックスグループは買収後も“コインチェック”という社名とサービス名を維持する考えだ。また、外部牽制が必要との考えから、コインチェックを将来的に上場するという将来像も明らかにしている。「リスクは管理できるもので、どんなリスクにも値段がある。ただ、コインチェックが築いてきたブランド価値や顧客基盤をイチからつくることは到底できない」と、買収を決断した理由について語った。

「今回の買収を伝える報道も、日本語だけでなく、スペイン語やロシア語でも報道されている。マネックスグループとしては、こんなことは過去にはなかった。それだけ、コインチェックのブランドには価値がある」(松本氏)

今回の買収は、コインチェックから持ちかけた話だった。約3年前からコインチェックのユーザーとして個人的に仮想通貨の取引を行っていた松本氏は、かねてからコインチェック代表取締役の和田晃一良氏とCOOの大塚雄介氏とは交流があったという。

NEM流出事件後、松本氏はすぐに和田氏たちに対して「何かできることがあれば教えてほしい」と連絡をしていたのだそうだ。その後、両社のコミュニケーションは途絶えたが、3月半ばごろ、コインチェック側からマネックスグループに対し、会社売却の打診があったという。コインチェックは、この打診をマネックスグループを含む複数社に対して行っていた。

仮想通貨に対する松本氏の期待は熱い。「仮想通貨の時価総額は、金(きん)の時価総額の5%にまで達した。時価総額が1兆円規模の資産はいつか衰えるかもしれないが、ひとたび時価総額が50兆円にまでなった資産は、これからも伸びていく」と松本氏は話す。「金だって、偽物かもしれない。金だって、盗まれるかもしれない。仮想通貨はその真正性を証明することは必要だが、金よりも軽い仮想通貨は支払い手段としてメジャーになっていく」。

しかし、今回の事件を期に、多くの人々が仮想通貨取引の安全性について疑問を持ち始めたのは間違いない。コインチェックという名前を聞くと、まず今回の事件を想起するという人もいるはずだ。そのため、コインチェックの看板を文字通りに引き継ぐマネックスグループは、経営体制の抜本的な見直しを行い、サービスの安全性を高め、それをユーザーにアピールする必要がある。既報にあるように、コインチェック創業者兼CEOの和田氏とCOOの大塚氏は、経営責任を取り、現職を退任することが決定している。

和田氏は、「一番重要なのは顧客資産を保護することだと考えている。内部管理体制の強化のためには、私が代表取締役を退任することは手段の1つ。それによって体制が強化されるのであれば、(コインチェックを手放すことに)躊躇はなかった」とコメントした。

コインチェックは、460億円にものぼるNEM保有ユーザーへの保障金をすべて自己資金で賄うと発表していた。その保障も買収が決まる以前にすでに完了していたという。その事実からも分かるように、流出事件が起きる以前のコインチェックはそれ相応の利益をあげるだけの実力があった。

今回の買収は、のちに“それだけの実力をもつビジネスをお買い得価格で買えた”と評価されるのだろうか、それとも失敗だったと評価されるのだろうか。それは、マネックスグループが培ってきた金融企業としての経験や知恵をコインチェックにどれだけ活かせるかにかかっている。

松本氏は、「ほんの25年ほど前まで、国債の取引の現場では、数百億円もの有価証券をアタッシュケースに入れて日銀の5番窓口まで持っていっていた。金融の世界でも、案外最近まで色々なリスクを内包させながらビジネスをやってきたということだ。しかし、私たち金融業界の人間がビジネスをあり方を改善してきて今がある。そのような経験は、コインチェックの今後の発展に活かすことができる」と話す。

新生コインチェックは、4月16日をもって新しい経営体制を確立。これまで継続してきた管理体制の強化を4月以降も行い、約2ヶ月後をめどに仮想通貨交換業登録の取得とサービスの全面再開を目指すという。

「今回のディスラプトはデカい」――仮想通貨とブロックチェーンでビジネスが変わる

3月15日から16日にかけて開催中の招待制イベント「B Dash Camp 2018 Spring in Fukuoka」。開幕セッションでは、仮想通貨業界の最前線で活躍する経営者が仮想通貨やブロックチェーンの未来を語った。セッションの登壇者は以下の通りだ。

モデレーターはB Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏が務めた。

過渡期を迎えた取引所ビジネス

この数年間、仮想通貨ビジネスの中心にいたのは取引所だった。コインチェックから580億円相当のNEMが流出した事件をきっかけに、世間から大きな注目も集めている。

メタップスは2017年11月、韓国の現地子会社を通して仮想通貨取引所の「CoinRoom(コインルーム)」を開設した。ICOを実施し、約11億円の資金も調達している。そのメタップスを率いる佐藤氏は、現在の日本の取引所ビジネスについて、FX業界の強いプレイヤーが参入してきており、手数料やレバレッジ倍率などもFX業界の慣習に近くなってきていると評した。FX業界の枠組みに、仮想通貨取引所を運営する新しいプレイヤーが飲み込まれてしまうといった危惧もあるという。

ステージ上にはGMOクリック証券を設立した高島氏もいる。同社はFX取引高が1兆円に達する、佐藤氏が言うところの“FX業界の強いプレイヤー”の1つだ。2006年に創業したGMOコインを通してFX業界から仮想通貨ビジネスに参入した高島氏は、現在の取引所ビジネスをどのように見ているのだろうか。

仮想通貨の取引所では、取り扱い通貨を増やすごとに別の管理システムを作らなければいけない点がFX業界との大きな違いだ、と高島氏は話す。異なるプログラムによって作られたビットコイン、イーサリアム、リップルなどの各通貨は、必要になる管理システムもまったく異なる。取り扱い通貨数の分だけ監理システムが必要だ。その取り扱いが雑になってしまうと、今回のコインチェックの流出事件のような問題につながりかねない。

こうした事件を受け、金融庁は仮想通貨交換業者に対する規制を強化するという姿勢を強めている。佐藤氏は、取引所ビジネスにはまだ伸びしろがあるが、通常のスタートアップが規制に対応できるだけの体力を備えられるかは疑問だと話す。「ファイナンス、人材など上場企業なみのものが求められている。それができるスタートアップは少ないだろう。(取引所ビジネスは)大人の戦いになってきたと感じる」(佐藤氏)。

規制強化を受け、取引所を運営するスタートアップは新しい生き残りの道を模索する必要があるのかもしれない。

ブロックチェーンは何を変えるか

急速な盛り上がりを見せた取引所ビジネスが変革を迎える一方、仮想通貨を支えるブロックチェーン技術があらゆるビジネスに影響をもたらそうとしている。セッションでは、今後2〜3年における有望な仮想通貨ビジネスの領域はなにかという質問が渡辺氏から飛んだ。

gumiの国光氏とメタップスの佐藤氏は、エンターテイメントが最も有望だろうと答えた。スマホ向けゲーム開発のgumiを率いる国光氏は、「インターネットの時代では、データというものはコピー自由なものだった。データそのものには価値がなかった。なので、SpotifyやNetflixなどもコンテンツではなくサービスを売っていた。対して、ビットコインはただのデータなのにそれが価値をもっている。それは、ビットコインはブロックチェーン上にあってコピーができないのでユニーク性が担保されており、かつトレーダブルだからだ。ゲームのアイテムなどがそれと同じような特徴を帯びるようになれば非常に面白いと思う」と話す。

それに関連して、佐藤氏は「これまでネイティブアプリをAppleやGoogleなどのプラットフォームで公開していた人たちが、ブロックチェーンのプラットフォームに流れてくる。そうなったときに、既存のプラットフォーマーがどのような対策を打つのかに興味がある」と語った。

DAS Capitalを通して仮想通貨領域への投資を行う木村氏は、「注力分野として考えているのは、仮想通貨、シェアリングエコノミー、人工知能。ユーザーを集める、というところ以外は、基本的にはすべてブロックチェーンでやれる。現在は20%や30%というプラットフォーム手数料はザラだけれど、そういう手数料は減っていくだろう」と話す。佐藤氏も、「これまでのモデルは場をつくって手数料を徴収するというモデルだったが、これからは通貨発行益を軸にしたモデルがどんどん生まれる」とコメントした。

GMOコインの高島氏は、「取引所が盛り上がる前、仮想通貨ビジネスは国際送金が一番伸びると言われていた」として国際送金ビジネスへの参入を示唆した。「外国に資金を送金するには、送金元と送金先の両国で銀行口座を持っている必要がある。為替手数料、取引手数料も高い。少額でも送りやすいビジネスをつくりたいと思っている」と自社の展望も交えながら注目分野について語った。

モデレーターを務めたB Dash Ventures代表取締役の渡辺洋行氏は、ブロックチェーンの破壊力を「今回のディスラプトはデカい」と表現した。ブロックチェーン技術の台頭は、現在ではすっかりインフラとなったインターネット黎明期以来のパラダイムシフトだと言う人もいる。もしかすると、今を生きる僕たちはそんな時代の移り変わりを見ているのかもしれない。

NEM保有者への補償は来週めど――2回目の業務改善命令を受けたコインチェックが会見

580億円相当のNEMが流出した事件で金融庁から業務改善命令を受けていたコインチェック。同社は3月8日16時より、「これまでの経緯及び今後の対応」を説明するとして記者会見を開いた。

会見に先駆けてコインチェックは同日午前11時、今回のNEM流出事件に関連し、金融庁から2度目の業務改善命令を受けたことも明らかにしている。そのプレスリリースによれば、コインチェックは金融庁に対し、3月22日までに業務改善計画を書面で提出するとともに、業務改善計画の実施完了までのあいだ、1ヶ月ごとの進捗・実施状況を翌月10日までに書面で報告するとしている。

コインチェックは流出事件が発覚したあと、自社および外部のセキュリティ会社5社による調査を実施した。同社は記者会見の中で発生原因の調査結果を明らかにした。以下はその概要だ。

今回の流出事件を起こした外部の攻撃者は、コインチェック従業員の端末にマルウェアを感染させ、外部ネットワークから当該従業員の端末経由で同社のネットワークに不正にアクセス。攻撃者は、遠隔操作ツールにより同社のNEMのサーバー上で通信傍受を行いNEMの秘密鍵を窃取したという。その秘密鍵を利用した不正送金を防げなかったのは、コインチェックがNEMをホットウォレットで管理していたのが原因だ。

コインチェック取締役の大塚雄介氏によれば、同社はセキュリティ強化策の一環として、以下を実施したという。

  • ネットワークの再構築:外部ネットワークから社内ネットワークへの接続に対する入口対策の強化および、社内から外部への接続に対する出口対策の強化。
  • サーバーの再設計及び再構築:各サーバー間の通信のアクセス制限の強化、システム及びサーバーの構成の見直しを実施
  • 端末のセキュリティ強化:業務に使用する端末を新規購入し、既存端末を入れ替え
  • セキュリティ監視:社内のモニタリング強化など
  • 仮想通貨の入出金等の安全性の検証:コールドウォレットへの対応など、安全に入出金などが行える技術的な検証を進める。

また、同社はこれらの技術的なセキュリティ対応に加えて、以下のシステムリスク管理態勢の強化を図る。

  • システムセキュリティ責任者の選定と専門組織の設置
  • システムリスク委員会を設置
  • 内部監査態勢の強化
  • その他経営体制の強化

これらの対応をとったうえで、同社は「一時停止中のサービスの再開に向けて全力を挙げて取り組むとともに、金融庁への仮想通貨交換業者の登録に向けた取り組みも継続し、事業を継続する」と述べている。

また、注目されていたNEM保有者への保障については、来週中をめどに実施することを明らかにした。補償総額を算出するNEMと日本円のレートは、先日同社が発表していた1 NEM = 88.549円となる。

当初、コインチェックは保証対象のNEM総数を5億2300万XEMとしていたが、同社は本日の会見でその総数が5億2630万10XEMとなることを発表。これに先ほどのレートをかけ合わせると、補償総額は約466億円となる。

現在、コインチェックの記者会見では質疑応答が進行中だ。詳細はのちほどアップデートしてお伝えする。

金融庁が仮想通貨交換業者7社に行政処分、FSHOとビットステーションには業務停止命令

流出やシステム不具合などの騒動が続く仮想通貨取引所だが、金融庁が3月8日、仮想通貨交換業者7社に対しての行政処分を発表した。

今回行政処分を受けたのは、コインチェック、テックビューロ、GMOコイン、FSHO、ビットステーション、バイクリメンツ、ミスターエクスチェンジの7社(発表順)。FSHOとビットステーションの2社には業務停止命令が、2社を含む全社に業務改善命令がそれぞれ出されている。コインチェックについては、1月のNEM流出に続き、二度目の処分がなされたことになる。

金融庁ではあわせて、「仮想通貨交換業等に関する研究会」の設置を発表。仮想通貨交換業等の諸問題についての制度的な対応を検討するべく、学識経験者や金融実務家、業界団体、関係省庁をオブザーバーにして話し合いを進めるとしている。

クリプタクト、税理士向けに機能を強化した仮想通貨税金計算サービス「taxpro@cryptact」

仮想通貨税金計算サービスを提供するクリプタクトは、2018年2月23日から税理士向けの有料サービス「taxpro@cryptact」の提供を開始した。複雑で煩雑な仮想通貨の損益計算を自動化する。税理士が業務で利用することを想定したサービスで、個人向けの無償サービス「tax@cryptact」のプロ版との位置づけである。

サービスの背景には、仮想通貨先進国となった日本特有の事情がある。日本では2017年4月、世界に先駆けて改正資金決済法(いわゆる仮想通貨法)で仮想通貨を法的に定義した。そして2017年9月、国税庁は仮想通貨による利益が雑所得に分類されることを公表。2017年12月には仮想通貨に関する課税のルールを定めた文書「仮想通貨に関する所得の計算方法等について」を公表した。

国税庁が公表したルールを見た個人投資家からは、一種の悲鳴にも似た反響があった。ひとつの理由は、株式の売却益などで用いられる分離課税が適用されないこと。仮想通貨の売買で得た利益は雑所得として総合課税の対象となり、税率は最大55%(所得税と地方税の合計)と高い。もうひとつの理由は、発表された損益の計算方法が非常に複雑で、取引量が多い投資家にとって計算が困難を極めることだ。2017年は、ビットコインが年初から最大約20倍の高騰を示すなど仮想通貨全般で活発な取引があり、その数十パーセントは日本円での取引だった。2017年には膨大な仮想通貨取引が行われており、そこに参加した多くの日本人はどのように税金計算をすればいいか困っている。

この状況を受けて仮想通貨の税務計算のためのWebサービスが複数登場している。個人が公開したツールである「BITCOIN TAX」もあれば、スタートアップによる税理士紹介・記帳代行サービスの「Guardian」(関連記事)や損益計算ツールの「G-tax」(関連記事)などだ。2018年1月創業のクリプタクトはむしろ後発組といえるが、同社のサービスは機能を急ピッチで充実させ、ユーザー数も急増している。

対応取引所、銘柄、ユーザー数でトップクラス

クリプタクトの創業メンバーは、仮想通貨向けの複雑な税金計算のツールにはニーズがあると見てサービスを開発、2017年12月に「tax@cryptact」として公開した。2018年1月24日には法人化したうえでサービスを正式にリリース。2月8日には、最大手の仮想通貨取引所bitFlyerと業務提携した。bitFlyerにも税金計算に関する問い合わせが相次いでおり、そこで推薦できるサービスとしてtax@cryptactを紹介する形としている。

複数のサービス、ツールが出回っている中で、tax@cryptactは、仮想通貨の「実現損益計算」を自動化するサービスとしての完成度を追求した。1月24日のサービス開始と同時に大手税理士法人のEY税理士法人と提携し、損益計算の方法に関する税務アドバイスを受けている。今では対応する取引所数が15、仮想通貨の銘柄が1680種類、ユーザー数が1万8000人となっている。

今回リリースしたプロ向けの有償サービスtaxpro@cryptactは、税理士が顧客の税金計算を業務として行うことを想定した。基本機能はtax@cryptactと同じだが、多数の顧客に対応可能なマルチアカウント管理の機能を持たせている。今後は、プロ向けの機能をアップデートしていく。対応する取引所、取引銘柄、取引形態を増やし、大量データ処理機能を追加する。また法人顧客向けの機能、例えば時価会計、財産債務調書作成支援、経費区分変更などにも対応する予定としている。料金体系は初期契約料が5万円、管理する顧客1名につき1万円(年間)。

一つ疑問がある。2017年の所得を対象とした確定申告は3月15日が期限だ。はたして間に合うのか。同社によれば、実はtax@cryptactは商用には使えない規約なのだが、すでにプロの税理士が使っており、彼らが業務に使いたいとのニーズを形にしたものが今回のtaxpro@cryptactなのだそうだ。

クリプタクトは会社設立からまだ1カ月ほど。全株式を創業メンバーが保有する。代表取締役のアズムデ・アミン氏はゴールドマン・サックス出身、金融分野のエンジニアおよび投資家の経歴を持つ。「仮想通貨分野は投資家サイドの環境が整っておらずビジネスチャンスがある」(アミン氏)と考え、その中でさしせまった必要性が高まっている税金計算用のサービスを作った。きっかけは、創業メンバー自身が仮想通貨に関する税金計算で困っていたことだ。

代表取締役のアミン氏は次のように語る。「tax@cryptactは、僕たちが持っていた金融業界のスタンダードとITを掛け合わせて作ったサービス。特にこだわったのは仮想通貨の所得計算という取引形態、計算手法、価格などがまだはっきり定義されていないあいまいな環境の中ですべてのデータを整理、定義して計算処理を確立すること。そして全データを開示できる高いレベルの透明性を実現すること」(アミン氏)。具体的には、実現損益計算の数字をすべて公開し、税理士や国税庁が検算できるようにした。「他のサービスでは、ここまで全ての数字を開示しているものはない。税理士にとっても使いやすいはず」。

仮想通貨を取り巻く状況は激動している。前述した2017年の法律や税務の制度作りも大きな出来事だったが、さらに2018年1月のコインチェックからのNEM盗難事件を受けて、仮想通貨取引所に対する金融庁の監督の強化や、業界団体による自主規制の整備などが進行中だ。既存プレイヤーにとっては厳しい状況だが、一方で新しい状況に適応した新たなビジネス機会を発見する会社も登場してくるだろう。クリプタクトも、今回のサービスだけでなく投資家向けの環境を整える新たな事業アイデアを暖めているとのことだ。

熊本電力が仮想通貨マイニングに参入、太陽光の余剰発電など活用

eng-logo-2015熊本県の新電力会社 熊本電力 が、仮想通貨マイニング事業への参入を発表しました。太陽光の余剰発電などを活用し、1kwhあたり10円台の安価な電力を採掘に利用できるとしています。

熊本電力は、太陽光発電所の建設・運用を担うTake Energy Corporation傘下の新電力会社です。電力自由化に伴い、主に九州・関東地方で電力の売買業務などを行っています。

仮想通貨マイニング事業への参入にあたり、関連会社のOZ(オズ)マイニングを設立。熊本電力の安価なエネルギー供給によるデータセンター型、およびコンテナ型のマイニング施設を構築し、顧客に販売するとのこと。また、複数マイナーが協力して採掘するクラウドマイニングシステムの販売にも取り組むとしています。

モルガン・スタンレーのレポートによると、仮想通貨マイニングによる電力消費は、2018年に世界全体の総消費電力の0.6%に達する公算があるとのこと。これは、アルゼンチン1国の総消費電力に匹敵します。

九州地区は太陽光発電が盛んなことでも知られており、九州電力管区では2017年5月に、昼の総電力需要の7割を太陽光がまかなったことでも話題となりました。一方で、太陽光発電所が増加し続けると昼間だけが過剰発電となるため、既存の発電所が出力調整に追われることになります。調整がうまくいかない場合は停電になることもあり、これを避けるために太陽光発電所への出力抑制が検討されています。

しかし、それではせっかく発電したエネルギーを有効活用しきれない点が問題となっています。熊本電力によると、仮想通貨マイニング事業は、これら自然エネルギーの過剰発電問題の解消にも繋がるとのことです。

見出しの写真は熊本電力親会社のTake Energy Corporationが運営するメガソーラー「水増ソーラーパーク」。写真は同社HPより

Engadget 日本版からの転載。

コインチェックが日本円の出金再開を正式に発表、2月13日から

今朝から一部報道で伝えられていたが、コインチェックは2月9日、日本円の出金を2月13日より再開することを正式に発表した。

同社ではNEMの流出騒動があった1月26日の16時30分すぎから、顧客の資産保護と原因究明のために日本円を含むすべての通貨の出金を一時停止していた。

今回の発表内で「日本円出金機能につきまして、外部専門家による協力のもと技術的な安全性の確認を完了いたしました」と説明。現在顧客の日本円の資産は金融機関の顧客専用口座内で安全に管理されている状況で、2月13日より出金を再開するという。

仮想通貨の出金や出金以外の機能についても技術的な安全性などの確認ができ次第、順次再開するとしている。

なお共同通信によると、流出したNEMは匿名性の高い「ダーク(闇)ウェブ」のサイトを介して、ビットコインなど他の仮想通貨に交換された疑いがあることがわかったという。現時点で交換された疑いがあるNEMは5億円分を超えたと報じられている。

VISAとMastercardが、Bitcoinを始めとする暗号通貨のクレジットカードによる購入を難しくした

【編集部注】著者のJustin Mauldinは、 Salient PRの創業者であり、暗号通貨の投資家である。

先週のいつごろからか、Bitcoinの投資家たちは銀行取引明細書に載せられた追加料金に気付き始めた。VISAとMastercardの両者がそのネットワーク上で、Bitcoinやその他の暗号通貨(仮想通貨)の購入方法を再分類することを決定(なんともはやお気軽なことだ!)したことが明らかになった。このような出来事は、暗号化業界に短期的な課題を課すだけでなく、既存勢力が如何にこの状況を恐れているかを示すものだ。

現在、Bitcoin、Ethereum、その他のアルトコインを即座に購入したい場合には、デビットカードまたはクレジットカードを使用することが唯一の選択肢だ。銀行からの振込は、手数料は安いものの、数日を必要とする。Coinbaseは、即時購入のためにデビットカードとクレジットカードの利用をずっと受け入れていたが、購入者に対して標準的な4%のクレジットカード取引手数料を課していた。

それが今、VISAとMastercardは、Coinbaseのクレジットカードによる購入がネットワーク上で処理される方法を、静かに再分類したようだ。現在Coinbaseの取引(そしておそらく、他のすべての取引所も同様に)は、「購入」ではなく「キャッシングサービス」とラベリングされるようになっている。手数料は取引所によって異なると思われるが、これが意味することは、クレジットカードを使用すると、既にCoinbaseによって課されていた4%のクレジットカード取引手数料に加えて、更に5%の手数料がクレジットカード業者によって課金されることになる。

さらに悪いことに、キャッシングサービスには、消費者が他のクレジットカードによる購入では期待できるような、標準的な無利息の猶予期間が与えられない。Coinbaseの購入が完了した瞬間に、取引は成立し日々利息が積み上がっていく。もしそれでも十分に悪くないと言うならば、キャッシングサービスになることによって利率が高くなるのだが、それはどうだろうか。あるケースではそれは驚くべきことに、25.99%にも達する。最後に、一部の消費者にとっては同じくらい重要だが、これらの購入はクレジットカードポイント獲得の資格を喪失しているのだ

たとえば、VISAやMastercardのクレジットカードを使用してCoinbaseで5000ドル分のBitcoinを即時購入すると、その結果およそ500ドルの手数料と利子が必要となる。ほとんどの人にとって、手数料で投資額の10%を失うということは、クレジットカードを使って暗号通貨を買うという手法が事実上終了したことを意味する。これによって、投資家が自らBitcoinやその他の暗号通貨を購入することは、更に難しくなるだろう。ACH(Automated Clearing House:米国の小口決済ネットワーク)を介して資金を移転するには、3〜5営業日かかる。暗号通貨の価格がどちらの方向にも大きく変動する可能性がある世界では、1週間は気の遠くなるほど長い時間だ。

昨夜、Coinbaseは、顧客への電子メールの中でこの変更を明記し「デジタル通貨購入のMCCコードが多数の主要なクレジットカードネットワークで変更されました」と書いた上で、この先銀行ならびにカード発行会社から「追加のキャッシングサービス手数料」がかかる可能性があると続けている。コメントを求められたMastercardの広報担当者は、このように述べている:「過去数週間に渡って、私たちは加盟店管理業者(アクワイアラーあるいは銀行)に対して、この種の取引(暗号通貨購入)に利用するための、適切なトランザクション、あるいはMCCコード(merchant category code)についての立場を明らかにして来ました。これにより、加盟店とイシュアーの両方に対して、この種の購入に対する一貫したビューを提供することができます 」。

何よりこの変更は、短期的には事態をさらに複雑にする可能性がある。当局も既に、Bitcoinが「何ものか」に関して混乱している:IRSは既にBitcoinは「通貨ではない」と明言し、それを課税対象財産として扱っているにもかかわらず、今やクレジットカード会社たちは、Bitcoinの購入がATMから現金を引き出す行為と同じだと言うのだ。

両者が同時に成り立つことはない。Coinbase(おそらく他のすべての取引所も同様)を再分類することで、VISAとMastercardは、人びとが暗号通貨に投資する行為を、より困難に、より遅く、そしてより高くつくものにするために、全力を尽くしているのだ。クレジットカード会社たちは、取引に追加の課金を行うことで、bitcoinへの投資の急増を押し止めることが、彼らの利益に叶う行為だと考えている。多くの点で、それは真実だ。Bitcoinや暗号通貨の将来的な増大は、最終的にはVISAやMastercardのような金融仲介者の崩壊に結びついているからだ。おそらく彼らは目を覚ましたのだ。

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(翻訳:sako)

FEATURED IMAGE: BRYCE DURBIN

金融庁がコインチェックへの立入検査、CAMPFIREなどみなし仮想通貨交換業者15社にも報告徴求命令

金融庁は2月2日、資金決済法に基づきコインチェックへ立入検査を行ったことを明らかにした。

1月26日に580億円に相当するNEMの流出が発覚してからちょうど1週間が経った。28日にコインチェックが保有者約26万人に日本円での返金を発表、翌29日には金融庁が同社に対し業務改善命令を発令したばかり。2月13日までに事実関係や原因の究明、顧客への適切な対応などを「書面で報告すること」ということだったが、それを待たずしての立ち入り検査となった。

金融庁では合わせて1日に同社以外の仮想通貨交換業者(16社)と、みなし仮想通貨交換業者(15社)に対しシステムリスク管理態勢に関する報告徴求命令を出したことも明かしている。

コインチェックは金融庁の審査待ちで「みなし仮想通貨交換業者」という扱いだったが、同じく現在審査中とされる15社の社名も公開された。

  • みんなのビットコイン
  • Payward Japan
  • バイクリメンツ
  • CAMPFIRE
  • 東京ゲートウェイ
  • LastRoots
  • deBit
  • エターナルリンク
  • FSHO
  • 来夢
  • ビットステーション
  • ブルードリームジャパン
  • ミスターエクスチェンジ
  • BMEX
  • bitExpress

なおbitFlyerやテックビューロなど仮想通貨交換業者16社については金融庁のサイトで公開されている。

 

 

仮想通貨ウォレット「Ginco」開発がグローバル・ブレインから1.5億円を資金調達

仮想通貨のウォレットアプリ「Ginco」を開発するGincoは1月31日、グローバル・ブレインが運営するファンドから、総額約1.5億円の資金調達を実施したと発表した。

同社は2017年12月の設立。代表取締役の森川夢佑斗氏は、京都大学在学中にブロックチェーン技術を活用したプロダクト開発やコンサルティングを行うAltaAppsを創業し、『ブロックチェーン入門』などの著書もある。

写真左:グローバル・ブレイン 代表取締役 百合本安彦氏、右:Ginco 代表取締役 森川夢佑斗氏

同社は「ブロックチェーン時代の新しい価値取引を実現する銀行を目指す」として、スマートフォンで安全に仮想通貨を管理するためのクライアント型のウォレットアプリ、Gincoを開発している。クライアント型ウォレットでは、秘密鍵をサーバーで集中的に保存する集中型ウォレットやウェブウォレットと比較すれば、外部からのハッキングなどで資産を失うリスクが低い。

また、1月26日に仮想通貨取引所「Coincheck」で起きた不正流出で問題となった、「取引所に預けたままの資産がハッキングによって流失するリスク」も避けられる。利用者同士で直接送金ができるため、取引所などを経由するよりスムーズに送金が可能だという。

Gincoではまず、2月初旬にEtheriem(イーサリアム)の基軸通貨ETH(イーサ)に対応した、iOS版ウォレットアプリのベータ版リリースを予定しており、現在事前登録を行っている。その後のアップデートで、イーサリアム上のトークンERC20やBTC(ビットコイン)、XRP(リップル)といった主要な仮想通貨に順次対応していく。

同社では「仮想通貨を利用する世界中の人に、Gincoを利用してほしい」として、今回の調達資金により、グローバルなマーケティングの準備をする予定。また、ブロックチェーン技術に精通した開発者の採用強化と育成を行っていく。