Rocket Labが再利用可能な衛星打ち上げ用大型ロケットを発表、最大積載量8トン

SPAC(特別買収目的会社)との合併による上場のニュースだけでは十分ではなかったようで、Rocket Labは米国3月1日、開発中の新たなクラスのロケットを発表した。Neutronと呼ばれるロケットは最大8トンを軌道へと運搬することができる。同社が現在使用しているロケットElectronの最大積載量300kgをはるかに超える。NeutronはSpaceXのFalcon 9ブースターと違って海上ランディングプラットフォームから打ち上げられるように設計されており、1段目部分は完全に再利用可能だ。

Neutronは大型のマルチ衛星コンステレーションを立ち上げる顧客からの増大する需要に応えるべくデザインされる、とRocket Labは話す。これまでよりも大きな積載量での運搬は、衛星コンステレーションをすばやく軌道に乗せるためにより多くの小型衛星を一度に打ち上げられることを意味する。同社によると、この積載容量だと現在予測されている2029年までの打ち上げの98%に対応でき、国際宇宙ステーションへの物資供給にも使える。同社はまた、有人宇宙ミッションにも使えるとし、これは同社にとって初の飛行士が乗り込める宇宙船を開発するという野心も示している。

NeutronはRocket Labの顧客ベースを大きく拡大することになりそうだ。そして効率と再利用性にフォーカスした設計のため、現在使用しているElectronよりもコストや経済性で優れる。Neutronはバージニア州ワロップス島にある同社の施設から打ち上げられる予定となっている。施設にはすでに発射台が設置され、2024年までに最初のNeutron打ち上げを実施できると予想している。ロサンゼルスにある本社とワロップス島の打ち上げ場に加え、Rocket Labは新しいロケットを大量生産するために米国にNeutron生産施設も建設する予定だ。

SpaceXのFalcon 9の打ち上げ能力には及ばないが、それでもNeutronはFalcon 9より少ないペイロードを月や宇宙のはるか向こうに運ぶことができるロケットとなるよう意図されている。民官の組織が今後10年でかなりの量、そしてさまざまな衛星コンステレーションを軌道に乗せるとの予測があり、現在、中型ロケットはかなり大きな関心を集めている。衛星コンステレーションはコスト、そして通信から地球観測までを網羅するという点でかなりメリットがある。別のロケット打ち上げスタートアップRelativity Spaceも、最初の小型ロケットを補うためにより大型のロケットを開発するという似たような計画を発表したばかりだ

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロケット打ち上げのRocket LabがSPAC合併で上場へ、企業価値4370億円に

SPAC(特別買収目的会社)の波が宇宙開発スタートアップにも押し寄せている。現在流行しているSPAC合併が広がる前、この業界のエグジットするペースは比較的緩やかなものだった。Rocket Labは最新のSPAC合併例となり、最も注目すべきものとなりそうだ。VectorというSPACとの合併によりティッカーシンボル「RKLB」でNASDAQに上場する。合併は2021年第2四半期に完了する見込みだ。

ニュージーランドで創業されたRocket Labは本社をロサンゼルスに移したが、それでもニュージーランドでロケットを打ち上げている。合併による形式上の企業価値は41億ドル(約4370億円)、VectorやBlackRockなどからの4億7000万ドル(約500億円)のPIPE(上場企業の私募増資)を通じて総現金残高は7億5000万ドル(約800億円)となる。Rocket Labの既存株主は合併会社の総株式の82%を保有する。

ロケット打ち上げ企業であるRocket Labは2006年に創業され、創業者のPeter Beck(ピーター・ベック)氏が率いてきた。2013年にカリフォルニアに本社を置き、同社にとって米国では初の打ち上げ施設をバージニア州ワロップス島に設置した。すばやく、フレキシブルな打ち上げオプションを念頭に、同施設は成長中の小型衛星マーケットに対応すべくデザインされている。

Rocket Labは、国家安全保障のペイロードなど米政府に代わってロケットを打ち上げてきた。同社の成長にとってこれは売上高を確保する主要な機会だ。現在、同社は受注残を抱えており、調整後で2023年には「EBITDA黒字」となる見込みで、2024年までにキャッシュフローは完全に黒字に、2026年までに売上高ランレートは10億ドル(約1070億円)を超えると予想されている。

同社はさまざまな方法で頻繁に打ち上げる能力を高めることに注力してきた。自動化された大規模なカーボンファイバー生産能力にフォーカスし、生産能力を着実に向上させている。同社はまた、前述のどおり米国に打ち上げ場を設置し、同社所有のニュージーランドの打ち上げ場に次ぐ2つ目の発射台として間もなく開所する。それから部分的に再利用可能なロケットElectronの製造にも取り組んでいる。「これはより早く打ち上げを行うのに貢献する」とベック氏はいう。

最後に、同社は8トンまでのペイロードを搭載することができるNeutronという従来のものより大型の打ち上げロケットも発表している

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

ロケット打ち上げのAstraがNASAの嵐観測衛星打ち上げ契約を獲得

カリフォルニア州アラミーダのロケット打ち上げ企業Astraは最近、SPACとの合併で上場する意図を発表したが、同社はこのほど、6基のキューブ状人工衛星(キューブサット)を打ち上げる契約をNASAと結んだ。この契約でNASAは同社に795万ドル(約8億5000万円)を支払う。これは、Astraの応答性の良いロケットの能力についての重要なテストとなり、その後の最長4カ月にはさらに3回の打ち上げが計画されている。現在、2022年1月8日から7月31日までのどこかが予定日になっている。

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衛星はNASAの「小型衛星のコンステレーションによる降雨構造と暴風の強度に対する時間分割観測(Time-Resolved Observations of Precipitation Structure and Storm Intensity with a Constellation of SmallSats、TROPICS)」ミッションに用いられ、それはハリケーンとその形成に関するデータを収集する科学ミッションだ。そこでは、気温や気圧、湿度などを観測することになる。ミッションの名前は極端に長く、頭字語をピックアップするのも困難だが、衛星の各サイズは靴箱ほどで、データは衛星の小さなコンステレーションで収集する

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Astraは2020年遅くに、最終的に軌道の達成を狙う3回の打ち上げ計画の2回目を完了し、宇宙に達して軌道の達成に近づいたという意味で、自己の予想を超えた。同社によると、ミッションで収集したデータによると実際に軌道を達成するための最後に残る壁は、すべてソフトウェアの変更で対応できるほど柔軟性がある。それに基づいてAstraのCEOで創業者のChris Kemp(クリス・ケンプ)氏は、すでに商用ペイロードを飛ばせる用意ができたと信じている、と述べている。

ケンプ氏はNASAのCTOだった人物で、これまでに多くのテクノロジー企業を共同で創業している。このNASAの最新ミッションは、同社の打ち上げ契約ではない。それどころか、すでに50を超える民間と政府さまざまな顧客のミッションを予定しており、総売上は1億5000万ドル(約159億9000万円)以上に達する。

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タグ:Astra衛星コンステレーション天気

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Relativity Spaceが完全再利用可能な新しい大型ロケットの建造計画を発表

Relativity Space(レラティビティー・スペース)は、2021年後半からの打ち上げを予定している小型ロケットTerran 1の次に計画しているものを明らかにした。それはTerran Rという、Terran 1の20倍の積載量を持つずっと大型の軌道投入ロケットだ。これにはもう1つ、小さな兄と違う点がある。完全に再利用可能といことだ。SpaceXのFalcon 9とは異なり、第1段から第2段まで、すべてが再利用型になる。

私はRelativity SpaceのCEOで創設者でもあるTim Ellis(ティム・エリス)氏に、Terran Rについて、またこの宇宙スタートアップの仕事にいつから就いているのかを話を聞いた。エリス氏は、Y Combinator(ワイ・コンビネーター)に参加していたときから、実際に大型ロケットやその他の構想があったと話す。

「5年前、Relativityを創設したとき、SpaceXのロケットの打ち上げと着陸、国際宇宙ステーションとのドッキングを見るたびに刺激を受けていました。また火星へ行くという考えは、人類の未来にとって極めて重要であり、地球やそれ以外の場所での人類の体験を大いに拡大させる可能性があります」とエリス氏は私に語った。「しかし、人類が宇宙船から火星表面に歩いて出た瞬間、すべてのアニメーションが暗転してしまいます。そこで、火星に産業基地を建設するためには、3Dプリント技術がどうしても欠かせないと私は確信したのです。そして、その未来を実現するためには、数十また数百の企業を触発する必要がありました」。

Relativity Spaceの長期的な目標は、常に変わらず「最終製品の3Dプリント企業」となることだ。軽量ロケットのTerran 1は、その理念に基づいて市場に送り出される最初の3Dプリント製品に過ぎない。

「3Dプリントは、航空宇宙のための私たちの新しい技術スタックです。これはこの60年間、基本的に変わっていないとみんなが感じているものを、大きく書き換えます」と彼は話す。「これは、工場設置型の工作機械、サプライチェーン、何百何千ものパーツ、手作業、遅い改良スピードに置き換わるオートメーションと、地球の未来に必要だと私が信じているものを提供します」。

20トン以上のペイロードを地球低軌道に打ち上げる能力を持つTerran Rも、地球上で使用するための宇宙航空向けの機器を含む数々の製品を生み出そうというRelativity Spaceの長期目標における「次なる論理的なステップ」に過ぎない。エリス氏によれば、地球低軌道までの最大積載量が1250キログラムというTerran 1への消費者からの強い需要と、現在打ち上げられている衛星の平均的なサイズを合わせて考慮すると、大型のローンチビークルは理に適っているという。いわゆる「小型」衛星への恩恵はあるものの、現在作られているコンステレーションは、1基で500キログラムを超えるものが多いとエリス氏は指摘する。Terran Rなら、拡大しつつあるそうした軌道上の宇宙船ネットワークのための衛星を、もっとたくさん同時に打ち上げられるようになるということだ。

Terran Rで使われる予定の高推力エンジンの燃焼試験(画像クレジット:Relativity Space)

「Terran 1とロケットの構造はほぼ同じで、同じ推進剤を使い、同じ工場の同じプリンターで、同じ航空電子工学を用いて、同じチームが建造します」とエリス氏は次期ロケットについて説明した。つまり、Terran Rの機能が現行の小型ロケットとは大きく異なり、特に完全に再利用型になるとしても、同社にとって新しい製造ラインの立ち上げは比較的簡単であることを表している。

前述のとおり、Terran Rは、第1段、第2段とも再利用可能となる。SpaceXのFalcon 9の第1段(液体燃料式のロケットブースター)は再利用型だ。それは宇宙に到達して第2段を切り離すなり、すぐに方向転換して大気圏に突入し、エンジンを噴射して着陸する。Falcon 9の第2段は使い捨て型、つまり基本的に宇宙用語でいうところのゴミであり、廃棄され、いずれ軌道から外れて大気圏に再突入して燃え尽きる。

SpaceXにも、Falcon 9の第2段を再利用型にする計画はあった。しかし、耐熱材を追加すれば重量が増し、目標とする経済性は得られないとわかった。Terran Rの仕様に詳しいエリス氏は、3Dプリントに対応する非常に珍しい素材をユニークなかたちで使うこと、ジェネレーティブデザインを控えめに採用すること、それらがRelativity Spaceのロケットの第2段を、持続可能な形で再利用できるようにすることを、それとなく話してくれた。

「これも完全に3Dプリントで建造するので、従来の製造方式では使えなかった特別な素材や幾何学的デザインを採用する予定です」とエリス氏。「見た目はとにかく非常に複雑で、Terran Rの設計を従来方式で作ろうとしたら、大変なことになります。しかしそれが、再利用性の高いロケットを生み出すのです。最高の再利用型ロケットの建造に大いに寄与してくれました」。

Terran Rには、Relativity Spaceが開発している第2段用の新型エンジンが使われる予定だ。これも現在のTerran 1のエンジンと比べるとユニークなものになる。やはり3Dプリントで作られるのだが、銅製のスラストチャンバーを採用して全体的な出力と噴射能力を高めるとエリス氏は言っていた。木曜日の夕方にエリス氏に話を聞いた時点で、同社はすでにこの新型エンジンの初の耐久テストを完全に成功させていた。本格的な建造への重要な一歩だ。

エリス氏は、年内にはTerran Rのもっと詳しい情報を公開する述べていたが、製造工場にある大型3Dプリンターは、すでに新型ロケットのサイズに合わせて調整してあるとも教えてくれた。「変えたのはソフトウェアだけです」と彼はいう。また、同社がエンジンテストのためにNASAと使用契約を結んでいるステニス宇宙センターの試験場は、Terran Rのサイズのロケットの試験が可能だとも話していた。どうやら、この新型ロケットの開発を彼は急いでいるように思える。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

日本の民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げるALE(エール)は2月26日、2019年9月5日に公表したシリーズAの追加ラウンドとして、第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は、宇宙フロンティアファンド(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー)、Horizons Ventures、THVP-2号投資事業有限責任組合(東北大学ベンチャーパートナーズ)、個人投資家など。

引き続き同追加ラウンドにおいて、既存投資家および新規投資家を引受先とする追加調達を検討しており、2022年4月までを目処に総額約22億円(今回の資金調達金額を含む)の調達を完了する予定。シリーズAを含む累計調達金額は総額約49億円となる。

ALEは、同追加ラウンドで調達する資金を基に、2023年に技術実証を予定している人工流れ星衛星3号機の開発、同年のサービス開始に向けた事業開発、2021年度に技術実証を予定しているEDT(導電性テザー)を利用したデブリ化防止装置の開発、さらには大気データ取得活動の要素技術開発およびその体制構築を着実に実行していく。

2011年9月設立のALEは、「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる民間宇宙スタートアップ企業。人工流れ星を始めとした宇宙エンターテインメント事業で宇宙の美しさや面白さを届け、人々の好奇心を刺激することで、さらなる宇宙開発のきっかけを作るとしている。

また宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指す。両者を有効利用し、人類の持続的な発展に貢献するとしている。

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再利用型ロケットを次の段階へ引き上げるStoke Spaceが9.7億円のシード資金調達

多くのロケット打ち上げ業者は、宇宙に人や物を運ぶ際のコストや遅延を減らす最良の方法が、再利用型のロケットだと考えている。SpaceX(スペースエックス)やRocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙の入口までペイロードを運搬するロケットの第1段を再利用型にしてみせた。そして今、Stoke Space Technologies(ストーク・スペース・テクノロジーズ)は、再利用可能な第2段を開発していると話す。これはペイロードを軌道やその先にまで運ぶものだ。同社はその実現に向けて、シード投資910万ドル(約9億6600万円)を調達した。

安全に地球に帰還できる第1段の設計だけでも決して簡単なものではないが、第1段は特定の高度と速度にまでしか到達できない。さらに速度を増して軌道にまで昇るようなことはしない。そのため、比較的単純な挑戦でもある。第1段が燃え尽きた後を引き継ぐ第2段は、ペイロードをさらに加速し目標の軌道へと導く。ということは普通に考えても、第2段を地球に戻すには、もっとずっと長い距離を、もっとずっと高速に移動させなければならない。

Stokeは、再利用可能な第2段の開発は可能であるばかりか、数十年にわたって宇宙産業に成長をもたらすには、低コストな宇宙経済の構築が欠かせないと考えている。同社のチームは、Blue Origin(ブルー・オリジン)でNew Glenn(ニューグレン)とNew Shepard(ニューシェパード)のロケット本体とエンジンの開発に関わった人物や、SpaceXでFalcon(ファルコン)9のためのMerlin(マーリン)1Cエンジンの開発に関わった人物などで構成されている。

「私たちの設計理念は、単に再利用可能であるばかりでなく、運用面でも再利用可能なハードウェアをデザインすることです。つまり、改修の手間を減らしてターンアラウンド時間を短縮するということです。そうした再利用性は、最初からデザインしておかなければなりません」と、Stokeの共同創設者であるCEOのAndy Lapsa(アンディー・ラプサ)氏はいう。

画像クレジット:Stoke Space Technologies

機体は弾道再突入の後に動力着陸を行うということ以外に、Stokeは重量が何トンにもなる精密機器である第2段ロケットを、400キロメートルの高さから時速2万8000キロメートルほどの速度で安全に下ろすという神業を実現させる、工学面の話も手法も公表していない(ただラプサ氏はGeekWireに対して「上質で高性能な安定したインジェクター」がエンジンの、さらにはその周辺のシステムの要になると話していた)。

そのような高速での再突入は大変に危険なため、着陸用の他に、減速用の燃料も残しておけばよいではないかと考えるのが普通だ。だがそれではペイロードを積む以前に機体の重量と複雑性が増してしまい、積載能力を落としてしまいかねない。

「再利用型システムは、本質的に使い捨てシステムよりも複雑になるのは事実です」とラプサ氏。「しかし、ミッションのコスト削減と可用性の向上が望めるなら、その複雑性にも価値はあります」

他の打ち上げ業者が指摘するとおり、再突入では大量の金が燃え尽きる。しかし今のところ最も安全な対策は、第1段を生かすことしかない。第2段も決して安くはないため、どの業者も、できれば再利用したいと考えているはずだ。もしそれがうまくいけば、打ち上げコストを劇的に下げることができる。

Stokeが約束しているのは、第2段を帰還させるだけではなく、それを持ち帰って翌日にはまた飛ばせるようにすることだ。「あらゆる打ち上げハードウェアは、飛行機と同等の頻度で何度も再利用できます。ゼロ改修で24時間ターンアラウンドです」。

打ち上げと着陸の際にロケットがどれだけ摩耗す損傷するかを考えれば「ゼロ改修」は夢物語だと感じる人も多いだろう。SpaceXの再利用型第1段はターンアラウンドがとても短いが、着陸地点で燃料を詰め替えて、すぐに発射ボタンが押せるというような簡単な話ではない。

しかもStokeでは、小型の低コスト人工衛星がよく投入される地球低軌道よりも高い場所まで飛べる、再利用型ロケットのサービスも目指している。静止軌道投入、月や他の惑星との往復も計画されている。

「静止トランスファー軌道、静止軌道への直接投入、月遷移軌道や地球脱出ミッションは、当初は一部再利用型や使い捨て型のロケットで行われますが、それらに使われる機体は、いずれは地球低軌道への完全再利用ミッションで使われたものと、まったく同じものが使われるようになります。将来の発展型モデルは、これらの(さらに他惑星への着陸)ミッションに応じてデザインを拡張できるようにして、完全再利用を実現します」とラプサ氏は話す。

野心的な主張だ。現在のロケット業界の動向がどうあれ、非現実的だといわれても仕方ない。だがこの業界は10年前に人々が想像していたよりもずっと速いペースで進歩してきた。その改革をもたらしたのは、非現実的な野心だったように思われる。

Stokeがシードラウンドで調達した9億6600万円は、これからのいくつかのステップを実現するために使われるが、この業界の事情に詳しい方なら、決められた時間内に開発とテストを行うには、もっとずっと大きな資金が必要になることはご承知だろう。

今回のラウンドはNFXとMaC Venturesが主導しYC、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏のSeven Seven Six、Joe Montana(ジョー・モンタナ)氏のLiquid2、Trevor Blackwell、Kyle Vogt、Charlie Songhurstその他が参加している。

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タグ:Stoke Space資金調達ロケット

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

ブルーオリジンがNew Glennロケットの初飛行を2022年第4四半期に延期

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏の宇宙開発ベンチャーBlue Origin(ブルー・オリジン)は、既存の準軌道宇宙ロケットであるNew Glennを補完するために開発している軌道ロケットのNew Glennの初飛行スケジュールを更新した。同社は現在、2022年第4四半期(10月〜12月)を打ち上げ目標としており、これまでのタイムラインである2021年末より約1年遅れたことになる。Blue Originによると主な原因は、Space Force(宇宙軍)が最近の契約入札の過程で、国家安全保障のペイロードを打ち上げるためにNew Glennを使用することを断念したことにあるという。

Blue Originはブログ記事で「Blue Originの商用顧客の需要に合わせてスケジュールが調整されています」と述べ、具体的には「最近の宇宙軍による国家安全保障宇宙打ち上げ(NSSL)のフェーズ2打ち上げサービス調達(LSP)にて、New Glennを選択しないという決定に従います」と述べている。この入札は2020年8月に発表され、落札企業にはBlue Originを破ったUnited Launch Alliance(ULA)とSpaceX(スペースX)、そしてNorthrop Grumman(ノースロップ・グラマン)もいる。この入札を構成する打ち上げサービス契約は2022年に始まので、Blue OriginがSpace Forceのニーズを満たすために、2021年末までにNew Glennの最初の打ち上げを推進していたのは理に適っている。

Blue Originによると、これらの契約にアクセスできなければプレッシャーを感じることもないかもしれないが、New Glennと今後開設されるフロリダ州ケープ・カナベラルの施設では「大きな進捗」があるという。同社はNew Glennのロケット工場、試験施設、Launch Complex 36などの進捗状況を示すツイートを共有し、最終的な打ち上げをサポートする施設とインフラに25億ドル(約2700億円)を以上を投入すると述べた。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

初の完全民間有人宇宙飛行の1座席はSalesforceマーク・ベニオフ氏らの審査委員会が決める

SpaceX(スペース・エックス)による初の完全民間有人宇宙飛行ミッションは、計画どおりに進めば2021年中にCrew Dragon(クルー・ドラゴン)カプセルを使って4人のクルーを軌道へと運ぶ。クルーの1人は審査委員会によって応募した起業家の中から選ばれる。委員会のメンバーは、Salesforce(セールスフォース)CEOのMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、Fast Company(ファスト・カンパニー)編集長Stephanie Mehta(ステファニー・メータ)氏、ユーチューバーのMark Rober(マーク・ローバー)氏、およびBar Rescue TVのホストJon Taffer(ジョン・タッファー)氏だ。多岐にわたる人々だが、この狂乱ぶりには理由がある。

この席は乗船する4人のうちの1人分だ。1つ目はコンテストとミッションのスポンサーであり、Shift4 Payments(シフト4ペイメンツ)のファウンダーで、このフライトを支援するためにわずかとはいえない金額を費やすことを選んだJared Isaacman(ジャレド・アイザックマン)氏に渡る。2つ目は、先にアイザックマン氏が明かした通り、 セントジュード小児研究病院の従業員で元がん患者のHayley Arceneaux(ヘイリー・アルセノー)氏に決まった。

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残る2つの席は、それぞれ別のコンテストによって決定される。1つは現在進行中の慈善募金活動を通じてセントジュード小児研究病院に寄付した米国市民全員に与えられる。もう1つは、審査委員会によって決定され、勝者はShift4のeコマースプラットフォームShift4Shop(シフト4ショップ)に店を持っている応募者の中から選ばれる。

そのとおり。このとてつもなく高額で開拓精神あふれる宇宙ミッションは、アイザックマン氏率いるShopifyライバルのグロースマーケティングキャンペーンでもあるのだ。ただし公正を期すために言っておくと、当選者の店は新しくなくてもよい。既存のShift4ユーザーも応募可能で当選の権利がある。

勝者を決める条件として発表されているのは「創造力と革新性と決断力を有する事業主または起業家」つまり、まあ誰でもよい。私はベニオフ氏、メータ氏、ローバー氏(ユーチューバーであるとともに元NASA JPLのエンジニア)、タッファー氏の面々が、果たして誰を選ぶのか非常に関心がある。

このInspiration4(インスピレーション・フォー)ミッションは現在2021年第4四半期の打ち上げを予定している

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タグ:SpaceXFalcon 9Crew Dragon民間宇宙旅行

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nob Takahashi / facebook

気象予報精度向上のためにClimaCellが独自衛星の打ち上げを計画

天気のデータと予報を提供しているClimaCellが米国時間2月24日、小型気象衛星による同社独自のコンステレーションを打ち上げる計画を発表した。ClimaCellは、レーダーを装備した衛星により地球の気象をより理解できるようになり、予報を改善できるという。最初の打ち上げは、2022年の後半を予定している。

ClimaCellのCEOであるShimon Elkabetz(シモン・エルカベッツ)氏が発表声明で指摘しているように、地上のレーダーでは雨や雲の構造に関する情報は得られるが、その情報にはムラがあり、米国内においても、基本的な天気予報すら難しくなっている。宇宙には高額なレーダー衛星があるが、それらは同じ領域を3日に1度訪れるものが多いため、あまり有益ではない。そこでClimaCellは、コンステレーションを小さくして、専用の衛星が同じ領域を1時間おきに再訪できるようにしたいと考えている。

「私たちは独自のセンサー技術とモデル作成技術により、世界のどの地点でもより正確に天候を予測します。また、そのデータを利用する独自のソフトウェアプラットフォームは、構成次第であらゆる仕事や業界向けに予報することができます。というわけで、私たちはこれから、宇宙が動かすSaaS企業に進化していきます。私たちは衛星コンステレーションを打ち上げて、全世界の天気予報を改善します。世界で初めて、常時稼働のレーダーコンステレーションで地球を取り囲み、地球のあらゆる地点の観測データをリアルタイムで天気予報に提供していきます」とエルカベッツ氏は述べている。

確かにそれは、同社にとって大きな一歩だが、近い将来にはこういうものが他にももっと登場するだろう。10年前という近い過去でも、企業が十分な資金を獲得して独自に衛星を打ち上げることは困難だった。今では、それも変わった。打ち上げサービスを容易に利用できることや、レーダー衛星の製造に革新的な技術が登場したこと、そして地上局などの補助的サービスを利用できるといった要因がこの変化に貢献している。現在、AWSやMicrosoftも同様のサービスを提供しており、衛星の製造に特化したベンダーのエコシステムもある。ClimaCellのチームによると、同社は現在、多くのベンダーと協議しており、いずれ最適な企業を選びたいという。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ClimaCell衛星コンステレーション天気予報

画像クレジット:ClimaCell

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

イーロン・マスク氏がスペースXの石油採掘リグの宇宙船発射台が2021年後半に稼働する可能性を示唆

SpaceX(スペースX)が現在開発中の次世代宇宙船であるStarshipの壮大なビジョンには火星への旅行だけでなく、地球上での定期的なポイント・ツー・ポイント飛行も含まれている。これは地球の大気圏外を飛び、通常の国際線なら何時間もかかる所要時間を30分程度に短縮することができる。しかし、ロケットはどこかから離陸する必要があるし、発射地点の環境負荷も従来の航空機より少し気がかかりだ。そこでSpcaceXの創業者のElon Musk(イーロン・マスク)氏は、石油採掘プラットフォーム(リグ)を海上の宇宙港にすることにした。

マスク氏は以前にもこの計画について話しており、SpcaceXは最近は火星の衛星にちなんで PhoibosとDeimosと呼ばれる2つのリグを購入した。現在はStarshipで使用するために改造中で、SpcaceXの開発サイトであるテキサス州ブラウンヒルズに近いメキシコ湾に配備される。

関連記事:SpcaceXが宇宙船Starship用の洋上基地建設のために採掘リグを2基購入

米国時間2月24日、マスク氏はツイッターにて2カ所のプラットフォームのうちの1カ所が2021年末までに少なくとも部分的に稼働する可能性があると述べた。同氏は楽観的なタイムラインで知られているが、最近は比較的正確なものが多く、少なくとも過去数年のように非現実的なものではない。

マスク氏が伝える「限定的な運用」の意味は、明確ではない。これはリグがあるべき場所に浮いていて、技術的にはStarshipのプロトタイプをホストできることを意味する可能性があるが、SpcaceXが2021年末までに1機のStarshipを打ち上げられることを意味するものではない。同氏はさらに、Starshipがデビューしたときの大胆なCGコンセプトビデオのように、都市部の目的地近くの水域にStarshipの打ち上げ施設と着陸施設を設置するだけでなく、世界中のさまざまな地点に設置する計画であると付け加えた。

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(文:Darrell Etherington、翻訳:塚本直樹 / Twitter

SpaceXによる約897億円新資金調達をSECへの提出書類で確認

CNBCが報じたSpaceXの先週の8億5000万ドル(約896億9000万円)の資金調達に関して、公式の声明などは何もないが、米証券取引委員会(SEC)は米国時間2月23日、そのラウンドを確認した。SpaceXの資金調達は同社の評価額740億ドル(約7兆8090億円)がベースだといわれており、1株あたりの価値では420ドル(約4万4320円)となる。

Bloombergによると、投資企業Sequoiaがこの大きな資金調達をリードし、同社は2020年のラウンドと今回にかけて、Elon Musk(イーロン・マスク)氏が率いる宇宙企業に全体で6億ドル(約633億1000万円)ほどを注入したという。CNBCの報道によると、さらに既存株の二次売却により同社には7億5000万ドル(約791億3000万円)の資本が生まれ、SpaceXが使える新資金は16億ドル(約1688億1000万円)となったという。これは460億ドル(約4兆8530億円)の評価額での、20億ドル(約2110億円)の調達した2020年8月と比べてもそれほど見劣りしない。

しかし、それが1年弱の間での調達となると、巨額と言わざるをえないだろう。しかし、非上場企業も含めて、一挙にこれだけの資本が必要な企業はあまりない。2年近い社史の前半に得た資金で稼ぎの良い打ち上げビジネスを構築できたが、それによってひと段落したわけではなく、今度はさらに巨額な初期費用を要する大きな新しいプロジェクトを着々と進めている。

現在、SpaceXはStarshipの新たなプロトタイプを急速に製造している。それは再利用可能な次世代型ロケットで、積載量は現在のDragon宇宙船とFalcon 9カーゴノーズコーンの数倍だ。プロトタイプは何度か飛ばしたが、着陸ミスで2つを失った。同社は通常、2つ以上のプロトタイプを同時に作るというペースを何カ月も維持しているが、ロケットとそれを動かす新エンジンは製造は高度な手作業によるものだ。

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しかも同社は、Starlinkも開発している。それはグローバルなブロードバンドのサテライトコンステレーションで、現在の1000基強から、最終的には全世界をカバーする1万2000基を目指している。その大規模展開と現在の一部北米地区を超えた広範な供給開始を早めるためにSpaceXは、専用のFalcon 9ロケットを確保し、それぞれに60基のStarlink衛星を搭載している。このミッションでは、カーゴの顧客は自社になるため、すべて営業経費となる。マスク氏の推計では、その総額が約100億ドル(約1兆550億円)となる。

StarshipとStarlinkという二大プロジェクトは、初期費用がとても大きいが、長期的なポテンシャルも大きい。Starshipの高高度テストと、Starlinkのサービス開始の間で、2つのプロジェクトが良い結果を出す度に評価額が急上昇していく。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX資金調達

画像クレジット:Bill Ingalls/Getty Images

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hiroshi Iwatani)

地表温度をモニターする宇宙開発スタートアップConstellRがプレシードラウンドで約1.3億円調達

宇宙から地表温度をモニターする技術を開発する宇宙開発スタートアップのConstellRは、FTTFが主導し戦略投資家のOHB Venture Capital、バーデン・ビュルテンベルク州立銀行のL-Bank、未公開投資家の参加を得て、100万ユーロ(約1億3000万円)のプレシードラウンドを調達した。最初のシステムは2021年12月に軌道に投入される予定だ。同社は権威あるEuropas Awards 2020でHottest Ag/FoodTech Startupの最終選考に残っている。

ドイツのフライブルクを拠点とするConstellRは、熱赤外線ペイロードを搭載した30台のCubeSatsのコンステレーションを介して土地を監視する。生成されたデータは農家が水や肥料の使用量を減らすために利用され、既存のモニタリングコストを97%削減するのに役立つ可能性があると同社はいう。ConstellRは特許出願中の「自由形状光学系」による小型化アーキテクチャを採用しており、従来の衛星システムよりもはるかに安価で赤外線による監視が可能になると主張している。

ConstellRでCEOを務めるMax Gulde(マックス・グルデ)博士は、「私たちの使命は地球上のあらゆる農場を1日中監視し、高精度の温度データを精密農業会社に提供して世界の食糧供給を守ることです。強力な資金力と技術力を持つパートナーとともに地球規模で農業を変えるために、私たちのコンステレーション開発が飛躍的に活躍する時を楽しみにしています」と述べている。

FTTF(Fraunhofer’s Technology Transfer Fund)のマネージングパートナーであるTobias Schwind(トビアス・シュウィンド)氏は「ConstellRのユニークなテクノロジーとビジネスケース、そして情熱的なチームが、このエキサイティングなプレシード投資を行うように私たちに確信させました」と述べている。

カテゴリー:宇宙
タグ:ConstellR資金調達農業

画像クレジット:ConstellR team

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NASAが火星に降下するパーセベランス探査機の高精細度動画を公開

NASAは、火星探査機Perseverance(パーセベランス)とその着陸モジュールローバーが撮影した動画を公表した。これは火星大気圏突入から着陸までの「恐怖の7分間」をPOV(一人称視点)で記録している。先週公開された画像はごく一部の予告編だった。こちらが完全な記録であり、史上初めて撮影された火星着陸動画だ。

関連記事:火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

ローバーの降下と任務についてはこちらで随時ツイートされているが、ここではまず概要を説明しておこう。

惑星間を高速で航行してきた探査機は、ヒートシールドを前方に向けて火星の大気に突入する。大気で減速され高温になったヒートシールドは投棄され、超音速パラシュートが展開される。ヒートシールドが外れると内部のカメラなどのセンサーが観測を始め、着陸に適したフラットな地点を探す。さらに減速され所定の高度に達したところで、パラシュートの切り離しが行われる。ローバー着陸モジュールを覆っている「ジェットパック」が、前進速度と降下を速度を殺す。地表70フィート(約21.3メートル)でローバーを減速させるロケットエンジンを組み込んだ「スカイクレーン」からローバーはぶらさがるかたちになる。ローバーはスカイクレーンから切り離され、スカイクレーンはローバーを妨害しないよう退避する。ローバーは静かに着陸する。

この過程には7分間かかり、特に最後の数秒は完全な綱渡りとなる(下図)。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

以前の初代ローバー探査機は画像やテレメトリ情報を送り返してきたが、今回のような臨場感あふれる動画は史上初だ。2018年のInSight火星着陸機もこのレベルの映像を送り返すことはできなかった。

関連記事:NASAのInSight火星着陸機は、赤い惑星を掘り下げる

JPL(NASAジェット推進研究所)の責任者、Mike Watkins(マイク・ワトキンス)氏は記者会見でこう語った。

火星への宇宙船着陸のようなビッグイベントを実際にキャプチャーできたのはこれが初めてです。アメージングなビデオです。我々はこの週末、パーセベランスからの動画を一気に見てしまいました。まあ数分間の動画を一気見するとは言わないかもしれませんが。もちろん、探査機が設計どおりの性能を発揮したことを見るのも楽しいのですが、多くの視聴者に火星への旅を体感してもらうことも同じくらい重要です。

NASAのチームによれば、こうした動画はそれ自体の科学的価値に加えて、チームが経験した絶大な恐怖と無力感をともに体験してもらいたいものだという。JPLのパーセベランスプロジェクトマネージャー補佐であるMatt Wallace(マット・ウォレス)氏はこういう。

この分野に長い私でさえ、いつか火星への着陸機を操縦するようになるとは想像できません。しかしこの映像を見れば、パーセベランスを操縦して火星のジェゼロ・クレーターに着陸するのがどのようなものであるか、非常に詳しく体験できます。

ローバーを囲むジェットパック・カプセルには上向きのカメラが、ローバー自体にも2台の下向きのカメラがあり、実質的に全周パノラマが記録できる仕組みだった。ヒートシールドが投棄される画像は印象的だ。そこに広がる火星の砂漠の風景はアポロが月に着陸するところを描写した映画のようだ。

火星に向かって下降する際、ヒートシールドを投棄するパーセベランス(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

フルビデオはこちら

この下降中に30GB以上の画像データが取得された。パラシュートの展開時にカメラの1台が不調となったが、それにしても巨大なサイズの画像だ。火星を周回する衛星の2Mbpsの回線を経由して映像を送るには時間がかかる(もちろん昔の数kbpsの回線に比べれば驚くべき高速化だ)。

すべての映像フレームが、火星着陸プロセスに関する新たな情報を提供してくれる。たとえばヒートシールドを投棄する使用されたスプリングの1つが外れたように見えるが、プロセスには影響しなかった。他のフレームと合わせて、今後精査されるだろう。

こうした驚くべき着陸プロセスの動画に加えて、パーセベランスはナビゲーションカメラによって撮影された多数のフルカラー画像を送り返してきた。まだすべてのシステムが稼働しているわけではないというが、チームはパーセベランスが撮影した画像をつなぎ合わせてこのパノラマ画像を作成した。

 

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

NASAのチームは、画像を処理する度にアップロードしているので、今後さらに多くの画像が見られるだろう。

NASAからの最後のプレゼントは火星の表面からの録音だ。これ自身が新しい洞察に結びつく情報であると同時に、さまざまな理由で視覚的情報に接することができない人たちにも着陸を体験してもらいたいというのがNASAの願いだ。

着陸に必要な突入(Entry )、降下(Descent)、着陸(Landing Phase)の頭文字をとったEDLシステムにはマイクも含まれていた。残念ながら降下中に起動することができなかったが、着陸後は完全に作動して環境音を記録している。かすかながさごそという風ノイズは聞き慣れた音だが、この風が光の速さで11分間もかかる別の惑星の上を吹いているのだと思うと信じられない気がする。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook

骨肉腫サバイバーの女性がSpaceXの初の完全民間有人宇宙旅行のクルーに

SpaceX(スペースエックス)は今や人々を宇宙に運ぶ事業を展開している。計画どおりにいけば、乗り込む全員が民間宇宙旅行客という初の宇宙旅行を2021年後半に初めて実施する。そして今、億万長者でShift4Paymentsの創業者Jared Isaacman(ジャレッド・アイザックマン)氏の旅に加わる人物が明らかになった。St. Jude Children’s Research Hospital(セントジュード小児研究病院)の従業員で元患者のHayley Arceneaux(ヘイリー・アルセノー)氏だ。

関連記事:SpaceXが初の完全民間有人宇宙飛行を2021年中に実施、Shift4 Paymentsのジャレド・アイザックマン氏ら4人が乗船

同氏はSpaceXのDragonに搭乗する4人のメンバーの1人としてアイザックマン氏によってすでに選ばれていた。打ち上げられれば、このミッションには詳細不明の軌道上を回りながら数日間過ごすフライトが含まれる。アイザックマン氏は2021年初めに宇宙旅行を発表した記者会見で、セントジュード小児研究病院から誰を選んだのか「すでに知っている」としていたが、披露するのは後に取っておくと話していた。

同氏は、自身が命名したフライト「Inspiration4」の数カ月におよぶキャンペーンを展開している。宇宙旅行の残る2席は現在進行中の2つのコンペティションで選ばれた人物に提供される。1人は打ち上げにともなう募金キャンペーンでセントジュード小児研究病院に募金した人の中から選ばれる。残りの1人はShift4が新たに立ち上げたeコマースプラットフォームでオンラインストアを開く起業家から選ばれる。

AP通信が報じたように、アルセノー氏は骨肉腫サバイバーで、医師助手として2020年にセントジュード小児研究病院へと加わった。予定されているフライトで宇宙に行くとなれば、同氏は数多くの「初」記録を打ち立てることになる。その1つが、わずか29歳で宇宙にいく最年少の米国人というものだ。また同氏は10歳のときにセントジュード小児研究病院で骨肉腫の治療を受け、人工膝と大腿骨にロッドを装着していて、人工装具をつけて宇宙に行くというのも初だ。

打ち上げにかかる費用はすべてアイザックマン氏がSpaceXに支払う。このミッションにともなうセントジュード小児研究病院から選ばれた人の納税義務もカバーする。同氏はまた、他のクルーを選ぶために使われる募金活動で集まった費用に加えて、自身の基金からセントジュード小児研究病院に1億ドル(約105億円)を寄付することも約束している。

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceXFalcon 9Crew Dragon民間宇宙旅行

画像クレジット:Inspiration4

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

豪大学ジョイントベンチャーICRARがはくちょう座X-1は予測より大質量と報告、ブラックホール形成の常識覆す可能性も

豪大学ジョイントベンチャーICRARがはくちょう座X-1は予測より大質量と報告、ブラックホール形成の常識覆す可能性も

NASA / CXC /M.Weiss

1964年に人類が初めてに発見したブラックホール、はくちょう座X-1が、実はこれまで信じられていたよりもはるかに巨大であるとの研究結果が発表されました。これにより天文学者たちはブラックホールの形成と成長のしかたを再考しなければならないかもしれません。

連星系を成しているとされるX-1は、これまで15太陽質量、つまり太陽15個分の質量とされていましたが、ハワイ~プエルトリコ間の米国各地に設置されたアンテナで構成された超長基線電波干渉計(VLBA)を用いた6日間の観測結果は、ブラックホールは21太陽質量を持つことを示しています。そして、われわれの星からX-1までの距離もこれまでの6000光年ではなく、7200光年を少し超えるぐらいに遠いことがわかりました。

銀河の中心にあるとされる超大質量ブラックホールが数百万から数十億太陽質量とされていることを考えると、恒星質量ブラックホールであるX-1の大きさなど宇宙のなかでは大したものでないように思えます。しかし、X-1が15でなく21太陽質量となると、ブラックホール形成のときに失われた恒星の質量の推定値も考え直さなければならなくなります。

ブラックホールの質量は、主にブラックホールになったもとの恒星の大きさと、恒星風(太陽風)の形で失われる質量の量に依存します。より高温で明るく輝く星はより重く、より多くの恒星風を生成する傾向があるとされます。そのため、星の質量が大きいほど、崩壊前および崩壊中に恒星風によって質量が失われやすくなり、ブラックホールが発する電波が強くなります。

しかし一般に、天の川銀河における恒星風の強さは、元々の星の大きさに関係なく、生成されるブラックホールの質量を15太陽質量以下にとどめる程度だと考えられていました。新しい調査結果はそうした認識をくつがえすものです。

「ブラックホールをこれほど重くするには、明るい星が一生の間に失う質量の量を減らす必要があります」と研究者は述べています。

新しいブラックホールの質量と地球からの距離の数値を使って計算した結果、はくちょう座X-1が信じられないほど速く、高速に近いほどの速さで回転していることが確認できたとのこと。これは、これまでに見つかった他のブラックホールよりも高速とのことです。

研究者らは、今後もX-1の観測を続けることを計画しています。オーストラリアと南アフリカで建設が進められているスクエア・キロメートル・アレイ(Square Kilometer Array:SKA)が稼働すれば、それを使った観測でX-1やその他のブラックホールの観測でより詳しいことがわかることが期待されます。天の川には1000万から10億のブラックホールが存在する可能性があり 、それらの少なくともいくつかを研究することで、この謎を解き明かすことができるかもしれません。
(Source:Science、via:MIT Technology ReviewsEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ICRAR / 国際電波天文学研究センター宇宙(用語)天文学(用語)ブラックホール(用語)

火星探査車降下途中の「恐怖の7分間」がリアルに感じられる写真

火星探査車「Perseverance(パーセベランス)」は日本時間2月19日朝、無事に火星に着陸したが、その直前には火星の大気圏に高速で突入し、NASAのチームが「恐怖の7分間」と呼ぶ着陸に向けた一連の複雑な操作が行われた。NASAはその時に撮影されたゾクゾクする写真を公開している。火星の大地の上に、ジェットパックから細いワイヤーでぶら下がっている探査車を見れば、チームの「恐怖」を容易く理解することができるだろう。

関連記事:パーセベランスが火星着陸に成功、最初の火星表面画像を送信

パーセベランスのTwitter(ツイッター)アカウントが、他の画像とともに投稿した(いつものように、一人称で)この写真は、探査車から最初に送られてきたものだ。ナビゲーション用カメラによって撮影されたモノクロの写真は、ほぼ着陸した瞬間を捉えたものと思われる。我々がこの視点から探査車(に限らないが)を見るのは初めてのことだ。

この写真を撮影したカメラは、「ジェットパック」と呼ばれるロケット動力の降下モジュールに搭載されている。火星の大気圏摩擦とパラシュートの両方を使って十分に減速した後、熱シールドが取り外され、パーセベランスは安全な着陸場所を探して大地をスキャンする。着陸場所が見つかったら、そこに探査車を運んで着陸させることがジェットパックの役目だ。

冒頭の画像は、Descent Stage(降下ステージ)の「Down-Look Cameras(見下ろしカメラ)」で撮影されたもの(画像クレジット:NASA/JPL-Caltech)

着陸地点から約20メートルの上空に達すると、ジェットパックは「スカイクレーン」と呼ばれる一連のケーブルを展開し、安全な距離から探査車を地上に降ろす。それによってジェットパック自身はロケットで離れた場所に不時着できるようになっている。

記事のトップに掲載した写真は、着陸の直前に撮影されたもので、火星の土壌の渦巻きが数百メートル下にあるのか、数十メートル下にあるのか、それとも数メートル下にあるのかは少し分かりにくいが、その後に撮影された画像を見ると、地面に見えるのが岩ではなく石であることが明らかになる。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

これらの画像は、火星から何万キロメートルもの距離を、HQトラッキングテレメトリデータとして送られて来たもので、我々は間接的にしか見ることができないが、そこに至るまでの過程が、実際には非常に物理的で、高速で、時には残酷なものであることを思い出させてくれる。数百の物事が正しく行われなければ、単に火星のクレーターを1つ増やすだけで終わってしまうのだ。そんな時間と情熱を費やしたものが、秒速5キロメートルという速度から始まった降下の後、遠く離れた惑星の上空でぶら下がっているのを目の当たりにするのは……感動で胸が締めつけられる思いがする。

とはいえ、この一人称的視点は、今回の火星着陸で最も印象的な写真ではないかもしれない。これが公開された直後、NASAは火星探査機「Mars Reconnaissance Orbiter(マーズ・リコネッサンス・オービター)」から送られた驚くべき画像を公開した。それはパーセベランスがパラシュートで降下している瞬間を捉えたものだ。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona

この写真が撮影された時点で、MROは700キロメートルも離れた位置にあり、秒速3キロメートル以上で移動中であったことに留意してほしい。「2つの宇宙船の非常に離れた距離と高い速度から、正確なタイミングを必要とする難しい状況でした。マーズ・リコネッサンス・オービターは上向きに傾斜するともに大きく左側に傾かせ、ちょうど良い瞬間にパーセベランスがHiRISEカメラの視野に入るようにしました」と、NASAは写真に付記した

今後、NASAがパーセベランスから十分な画像を収集すれば、さらに完全な「恐怖の7分」を捉えた写真を我々が目にするチャンスもあるだろう。だが、今のところ公開された数枚の画像は、そこにいるチームの創意と技術を思い出させ、人類の科学と工学の凄さに驚きと畏敬の念を感じさせるに違いない。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星惑星探査車

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

パーセベランスが火星着陸に成功、最初の火星表面画像を送信

火星探査車Perseverance(パーセベランス)は、スカイクレーンのロケットが作動する直前に着地地点を特定するという手に汗握る降下の後、無事に着陸を果たした。すると早速、パーセベランスは今回のミッションで探検することになっているジェゼロクレーターの最初の映像を送ってきた。

緊張を隠せないものの成功を信じる担当チームは、数時間前からパーセベランスが最終アプローチに入る様子を見守り、古代の三角州に位置し今回の探査対象となっているジェゼロクレーターのど真ん中へのコースを辿っていることを確認した。

火星の大気に突入した際に着陸船の周囲が高熱の空気に包まれるため、何度か通信が途絶えることはあったがこれは想定内のことであり、それを除けば、惑星間の距離による遅延はあるものの、着陸船からは安定的に最新情報が地球に送られてきていた。

時間どおりに着陸船が火星の大気圏に突入。10Gもの力がかかる減速操作に着陸船が耐えたとわかったときパラシュートが開き、地上を向いたレーダーで着陸地点が確認され、スカイクレーンのロケット推進降下が作動し、そしてついに探査車が無事に着地した。そのたびごとに担当チームとミッション本部の画面に映る人たちは、周囲に聞こえるほどの溜息を漏らし、「やった!」と小さく叫び、興奮した仕草を見せた。

画像クレジット:NASA

歓喜に溢れたが、新型コロナ予防対策に従って、(いつもならそうしていたのに)抱き合うことはせず、担当チームは着陸を祝った。そしてすぐに、探査車からの最初の映像というプレゼントが届けられた。

最初の映像は、着陸数秒後に、ナビゲーション用に備えられた魚眼レンズの「ハザードカメラ」(危険探知カメラ)による低解像度のものだった。文字どおり騒ぎ(砂埃)が落ち着くや、高性能なデバイスとカメラが起動し、カラー映像が送られてくることになっている。おそらく1〜2時間後だろう。

ミッションと、その驚きの着陸方法の詳細については、米国時間2月18日のパーセベランス・ミッションをまとめた記事をお読みいただきたい。これから数日間は、ハラハラどきどきの着陸時のような、興奮するほどのことは起こらないと思うが、パーセベランスはすぐにでもジェゼロクレーターの中を動き始める。そこでは、火星に生命が存在した証拠を探し、将来、人が火星を訪れた際に使用を予定している技術のテストが行われる。

「まだ宇宙飛行士を送り込む準備は整っていませんが、ロボットならいけます」とジェット推進研究所(JPL)の所長Michael Watkins(マイケル・ワトキンス)氏は放送の中で話していた。「まずは、私たちの目と腕をロボットとして送り込みます。それができるだけでも夢のようなことです。さらに各探査車や、科学とエンジニアリングから学んだことを活かして、次にはもっといいものを作り、もっともっと発見をします。こうしたミッションを実施するごとに、私たちは目覚ましい発見をしています。そしてどの発見も、1つ前よりずっとエキサイティングなものなのです」。

画像クレジット:NASA/JPL-Caltech

みんなが楽しみにしているエキサイティングなものに、火星ヘリコプター型ロボットIngenuity(インジェニュイティー)がある。これもすぐにでも飛び始めてほしいところだ。

「現時点から初飛行までの間には、いくつもの大切な段階を踏まなければなりません。明日、ヘリコプターを起動し、探査車がその健康状態を確認できるようにします。次の重要な段階は、インジェニュイティーを地上に降ろすことです。これにより、インジェニュイティーは、初めて自力での運用を開始する瞬間を迎えます」と、インジェニュイティーのプロジェクトマネージャーでありエンジニアリング責任者のMiMi Aung(ミミ・アン)は話す。「火星での凍てつく最初の夜を生き抜くことも、重要な段階です。その後、何項目かの点検を行ってから、本当に重要な初飛行に移ります。そして初飛行が成功すれば、火星の30日以内に、飛行実験のために特別に計画している残り4回の飛行を行います」。

このヘリコプターの実験は間違いなく革新的なものだが、これは単にNASAが初めて行ったという記録作りが目的ではない。火星ヘリコプターのインジェニュイティーは、将来の探査のための、着実な技術的基礎を築くものとして期待されているのだ。

「将来は、探査車と宇宙飛行士が長旅に出る前にヘリコプターをはるか前方に飛ばして、詳細な偵察情報が得られるようになります」とアン氏。「また、飛べるということは、探査車や宇宙飛行士では到達できない場所に行けるということです。それも大変に重要です。急斜面や、地面の裂け目の中など、科学的な関心が高いあらゆる場所に行けるようになる。これまでの常識が変わります」。

カテゴリー:宇宙
タグ:NASA火星Ingenuity惑星探査車

画像クレジット:NASA

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

SpaceXが最新ラウンドで約900億円調達との報道、評価額は約7兆8360億円に

SpaceX(スペースエックス)は新たなラウンドで8億5000万ドル(約900億円)を調達した。この件に「詳しい」情報筋の話としてCNBCが報じた。SpaceXは非公開企業ながらも、報道によると今回の調達によりバリュエーションは約740億ドル(約7兆8360億円)になる。

どこから見ても巨額の調達ラウンドであるが、SpaceXの基準においてはそうではない。2002年創業の同社は今回のラウンド、そして2020年8月の20億ドル(約2120億円)のベンチャーラウンドを含め、これまでに60億ドル(約6350億円)超を調達した。2020年8月のラウンド時のバリュエーションは460億ドル(約4兆8700億円)で、つまり同社のバリュエーションは少なくともプライベート投資家の視点からすれはこの6カ月で大きく飛躍したことになる。

SpaceXは衛星ブロードバンドコンステレーションStarlinkの衛星1000基以上を軌道に乗せ、NASAのクルーを宇宙船Dragonに乗せて国際宇宙ステーションに運び、宇宙船Starshipの高度フライトテストを2回行っておおむね良好な結果を得るなど、これまでに多くを成し遂げた。また、打ち上げを依頼する多くの潜在顧客の需要を示している初のライドシェアミッションも実施した。

SpaceXは既存資本のおかげで多くのことを達成した一方で、最近の成功はさらに資本を投入すべきことがあり、また資本を獲得する必要があることを明らかに示していた。宇宙に耐えられることを証明するためのStarshipの開発継続、Starlinkを真に地球規模のネットワークにするという多額の資金注入を要する取り組みなど、まだすべきことを多く抱えていることから、同社はさらに資金を調達することが見込まれる。

関連記事:スペースXがStarlink衛星を新たに60機打ち上げ

カテゴリー:宇宙
タグ:SpaceX資金調達

画像クレジット:SpaceX

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

民間商業宇宙ステーションの実現を目指すAxiom Spaceが約138億円を調達

近い将来の目標を最も高く掲げている新しい宇宙スタートアップ企業の1つが、その野望に向けた自信をシリーズBラウンドで投資家に示し、1億3000万ドル(約138億円)を調達した。

NASAが民間開発の宇宙ステーションモジュールを国際宇宙ステーションに取りつけるために選んだAxiom Space(アクシオン・スペース)は、C5 Capital(C5キャピタル)が主導した新たな資金調達について発表した。

Axiom Spaceは、国際宇宙ステーションで専門的な仕事に携わった実績を持つ宇宙の専門家を含むチームによって2016年に設立された。以来、大きな注目を集める発表を次々と行っている。今回の資金調達はその最新のものだ。同社は、既存の宇宙ステーションに初の民間による商業モジュールを取りつけることで、将来的には完全に民間所有の軌道上プラットフォームを独自に作り上げ、研究や宇宙旅行などに活用することを目指している。

Axiomは2021年1月、2022年1月にSpaceX(スペースX)のDragon宇宙船とFalcon 9ロケットを使って国際宇宙ステーション(ISS)に飛び立つことが予定されている人類初の民間宇宙飛行士について発表した

Axiomはこのミッションのサービスプロバイダーであり、民間宇宙飛行士の契約を仲介し、訓練とミッションのプロファイルを設定する。民間の個人で構成されたクルー(つまり、各国の政府によって選ばれ、訓練を受け、雇用された宇宙飛行士ではない)が宇宙ステーションに飛び立つのは、これが人類史上初めてのことになる。

同社はまた、Tom Cruise(トム・クルーズ)氏と、ISSに乗り込む映画の一部を宇宙で撮影することについて話し合っている。さらに、宇宙ステーションへの旅を掛けて競い合うリアリティ番組も制作会社と企画中だ。

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Axiomは、民間の有人宇宙飛行と既存のインフラストラクチャや産業を結ぶ主要企業として注目を浴びており、NASAのような公共機関のパートナーと、急成長しつつある民間宇宙産業の「レール」、つまりSpaceXや同種の企業の両方をカバーしている。同社は他の民間企業のどこよりも長い間、この独自のチャンスに力を入れてきた。それを実現するために必要なすべての関係と社内の専門家を備えている。

今回の新たな多額の資本注入は、同社の雇用を支援するだけでなく、今後の民間宇宙ステーションモジュールや、最終的には宇宙ステーションそのものを建造する力を高めることにもつながる。ヒューストンを拠点とする同社は、2024年までにその宇宙ステーションモジュールをISSに接続することを目指しており、これまでに1億5000万ドル(約159億円)を調達している。

カテゴリー:宇宙
タグ:Axiom Space資金調達民間宇宙飛行ISSNASA

画像クレジット:Axiom Space

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

AIによるSAR衛星データ解析システムを開発するスペースシフトが5億円調達、開発体制を大幅強化

AIによるSAR衛星データ解析システムを開発をするスペースシフトが5億円調達、開発体制を大幅強化

衛星データ解析システムの開発を手がけるスペースシフトは2月16日、シリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資による5億円の資金調達を発表した。引受先は、宇宙特化型の宇宙フロンティアファンド(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー)、EEI4号イノベーション&インパクト投資事業有限責任組合(環境エネルギー投資)ほか1社の合計3社。

今回の調達は、同社初の大型資金調達という。調達した資金により、開発体制の大幅に強化し、SAR(合成開口レーダー)衛星データ解析に特化したAIの開発を推進する。

近年、AIやビッグデータ処理、クラウドの普及を背景に、地球観測データの活用が様々な分野で進んでいる。ただ、従来自動解析に活用されていた衛星データは、主に光学衛星による可視光を用いた衛星写真だったという。

これに対してSAR衛星は、太陽の光を必要としないため、雲で被われていても地表の様子を見ることができ、夜でも観測可能であるなど利点も多く、今後の衛星データ利用の拡大においては重要な存在という。

ただ、SAR衛星は光学衛星と異なり、衛星から発するマイクロ波の反射により地表を見るため、独特なノイズがある画像になり、地表の様子を判読には特殊な知識を必要とする場面が多くある。

この課題解決のためスペースシフトが開発した新方式では、専門家でも判読が難しいとされるSAR衛星の画像をAIによって自動解析可能としたという。

スペースシフトは、今後もSAR衛星データの解析のためのソフトウェア開発に経営資源を集中させることで、世界中のあらゆるSAR衛星事業者、衛星データ利用者が必要とする高度な衛星データ解析技術を提供。地球全体のあらゆる変化を検知可能にすることで、社会活動の最適化、持続可能な社会の実現に寄与するとしている。

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