東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

東京大学 大学院情報学環 渡邉英徳研究室は7月26日、ユーカリヤ(Eukarya)と共同で汎用的WebGISプラットフォーム「Re:Earth」(リアース)を開発し、オープンソースソフトウェア(OSS)としてGitHub上で公開したと発表した。ライセンスは「Apache License 2.0」。行動規範(Code of Conducts)も公開している

また成果報告イベントとして、「最新Web技術による拡張可能なWebGIS「Re:Earth」OSS化イベント」が開催予定となっている(オンラインのみ。Zoom利用)。開催期日は8月10日19時〜21時。Re:Earthの解説、エンジニア・非エンジニア向けハンズオンセッションが実施される。申し込みは、こちら

Re:Earthの特徴

  • 実用性「ノンコードによる情報のマッピング」:Re:Earthは、専門技術なしでも扱うことができ、独自のウェブアプリの公開が可能。情報の作成や更新・公開設定などをエンジニアに依頼したり、難しいプログラミングを行う必要はない。物語性のある「ストーリーテリング」タイプのビジュアライゼーションも、コーディングなしに実現できるという
  • 独自性・新規性「様々な分野に対応できるプラグインシステム」:、最先端のウェブ技術を用いたプラグインシステムを実装しており、様々な分析や可視化がプラグインにより柔軟に対応できる。また、プラグインシステムにより、クライアントがノンエンジニアであっても管理・運用可能なシステムを実現
  • 実用性・新規性「柔軟なウィジェット配置システム」:デジタルアースをベースとして、統計グラフや時系列などの表現を柔軟なウィジェット配置システムによって実現できる。ウィジェットは、ドラッグ&ドロップ操作で直感的に配置可能。スマートフォンでの表示もサポート
東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

統計グラフや時系列などの表現を柔軟なウィジェット配置システムによって実現できる。ウィジェットは、ドラッグ&ドロップ操作で直感的に配置可能

Re:Earthは、フィジカル空間の情報をバーチャル空間に再現する「デジタルツイン」の基盤となるWebGISプラットフォーム。WebGISは、ネット上で利用可能な地理情報システム(GIS)を指す。東大渡邉英徳研究室は、そのソースコードを様々な分野で自由に活用可能にするためにOSSとして公開した。

同研究室は、これまで「Google Earth」や「Cesium」などのデジタルアースを用いて平和活動・企業間取引・震災・文化財な様々な分野のデータをバーチャル空間に分析・可視化する研究を行っており、これまでの研究で得た知見を多くの人たちに提供するウェブプラットフォーム化を目指して、ユーカリヤと共同でRe:Earthを開発したという。

Re:Earthの目標としては、「複雑・大規模化する地理空間(フィジカル空間)データの手軽な活用環境の提供」「地理空間データの管理・分析・可視化のための汎用WebGISの実現」「多様な分野に向けたプラグイン開発による機能拡張」の3点が挙げられている。

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

南アルプス市ふるさと〇〇博物館(東京大学渡邉英徳研究室制作、ユーカリヤ技術協力)

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

経営危機自治体(ユーカリヤ制作、東京大学渡邉英徳監修)

Re:Earthは、最新のウェブ技術を用いて開発されており、これまでウェブブラウザーでは実現が困難だった本格的なGIS環境を、インストール不要でどこからでも手軽に利用可能。また今回OSS化したことにより、本体・プラグインの開発者を含む、世界各国のエンジニアとワールドワイドなOSSコミュニティを形成する計画を進めるという。

なおRe:Earthは、以下技術を用いているほか、今後AWSを含む、対応する外部サービスを拡張する予定。

東京大学が「デジタルツイン」構築向けWebGISプラットフォーム「Re:Earth」をオープンソースとして公開

  • フロントエンド:React・TypeScript・Cesium・Resium(生産性向上・高品質なUI開発)
  • バックエンド:Go(高生産性・高速実行・高ポータビリティ)
  • API:GraphQL(高効率・スキーマドリブンな通信)
  • クラウド関連:Docker・Google Cloud Storage(保守管理コスト削減・スケーラブル)
  • DBMS:MongoDB(高速で高い柔軟性を持つNoSQLデータベース)
  • 認証:Auth0(IDaaS)
  • フロントエンドのプラグイン実行環境:WebAssembly+QuickJS(安全高速なJavaScriptの実行)

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:WebGIS(用語)Cesium(製品・サービス)デジタルツイン(用語)東京大学(用語)日本(国・地域)

「日本版StartX」目指す東大1stROUNDが東京工業大など4大学共催の国内初インキュベーションプログラムに

スタンフォード大学の卒業生が運営するStartXをご存知だろうか。これまで700社以上のスタートアップを生み出したこの非営利アクセラレータプログラムは、同大学出身者からなる強力なスタートアップエコシステムの形成に寄与している。

このStartXの「日本版」を目指し誕生した、東京大学協創プラットフォーム(東大IPC)主催のインキュベーションプログラム「1stROUND」は、新たに筑波大学、東京医科歯科大学、東京工業大学の参画を発表。国内初の4大学共催のインキュベーションプログラムとして始動する。

「株を取得しない」インキュベーションプログラム

1stROUNDは、ベンチャー起業を目指す上記4大学の学生や卒業生を主な対象として、最大1000万円の資金援助と事業開発環境を6カ月間提供するインキュベーションプログラムだ。その目標は、設立後間もないベンチャーの「最初の資金調達(ファーストラウンド)」の達成までをサポートするということ。実際に、1stROUNDの採択企業34社のうち90%が、VCからの資金調達に成功しているという。

1stROUNDの大きな特徴は、最大1000万円の資金提供をするにも関わらず「株を取得しない」ということだろう。これは、採択したベンチャーが後に大成功を収めることになったとしても、1stROUONDとしては直接的な利益を享受しないことを意味する。また同プログラムには、パートナー企業としてトヨタ自動車、日本生命、三井不動産など業界を代表する大企業が名を連ねているが、これらの企業も「無償」で同プログラムに資金を提供している。

画像クレジット:東大IPC

一見したところ「1stROUNDには投資家として参加するインセンティブがないのでは」と考えてしまうが、東大IPCやパートナー企業にも大きなメリットが存在する。それをわかりやすく示す例が、2020年4月に設立されたアーバンエックステクノロジーズだ。スマートフォンカメラを活用して道路の損傷箇所を検知するシステムを開発していた同社は、1stROUNDに応募して採択された企業の1社である。

当時、創業約5カ月にすぎなかったアーバンエックスに起こったことは、1stROUNDのパートナー企業である三井住友海上火災保険との戦略的提携だった。日本最大級の損害保険会社である同社は「ドラレコ型保険」を展開しており、約300万台のドライブレコーダーを保有する。これにアーバンエックスのAI画像分析技術を搭載することで、ドラレコ付き自動車が日本全国の道路を点検できるようになった。同プログラムを創設した水本尚宏氏は「1stROUNDのネットワークがなければ、まず実現し得なかったことだと思います」と話す。

その後、アーバンエックスはVCからの資金調達を成功させるが、そのリード投資家となったのは東大IPCの「AOI(アオイ)1号ファンド」だった。同ファンドは、1stROUNDと同じく水本氏が2020年に設立し、パートナーとして運営している。つまり、1stROUNDでは採択したベンチャーの株を取得することはないものの、のちにAOIファンドで出資を行い株を取得することができるので、東大IPCとしても将来的に利益を確保することが可能になる。

1stROUNDで支援を受けるベンチャーは、無償での資金提供に加えて大企業とのネットワーク支援を受けられる。一方でパートナー企業は「誰の手にもついていない」ベンチャー企業の情報収集や、戦略的提携の可能性がある。そして、東大IPCにとっても後のファンド投資につながる可能性がある。1stROUNDは、三者にとってメリットがある見事な仕組みといえるだろう。

画像クレジット:東大IPC

AOI 1号ファンドは240億円超に増資

これまで主に東大の学生や卒業生などを対象として運営してきた1stROUNDは、今後東京工業大学・筑波大学・東京医科歯科大学を含めた4大学に門戸を広げる。また、企業の一事業や部門を新法人として独立させる「カーブアウト」を主に扱うAOIファンドも、設立時の28億円から241億円への増資を発表し、さらに勢いに乗りそうだ。

1stROUND、AOIファンドの運営を行う水本氏はこう語る。「私達は『ファンドとしてきちんとリターンを出す』ことを目指しています。当たり前と思われるかもしれませんが、上から『儲からない案件をやれ』と言われがちな官民ファンドは、この基本的な部分が緩みがちなのです。しかし私は、1stROUNDのプレシードや、AOIファンドのカーブアウトといった、一般的に難しいとされる分野で成果を出したい。『こういう投資が儲かる』ことを証明し、民間VCや企業が参入してきた結果、エコシステムが大きくなると思うからです。私たちが民間VCと同じくらい、もしくはそれ以上にきちんと儲けることが、ゆくゆくは日本のためになると信じています」。

成功事例に乏しい分野にあえて挑戦し、国益に資することを目標とする東大IPC。数年後、ここから世界を驚かせるベンチャーがいったい何社出てくるか、楽しみだ。

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カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:1stROUNDStartX東京大学筑波大学東京医科歯科大学東京工業大学インキュベーションアーバンエックステクノロジーズ東京大学協創プラットフォーム日本ベンチャーキャピタル

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSで採択

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

Pale Blueは4月1日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が実施した2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/シード期の研究開発型スタートアップに対する事業化支援」(最大助成額:7000万円。NEDO STS事業)第3回公募において、助成対象として採択されたと発表した。2020年4月の設立後1年で累計調達額は約2億円となった。

これにより、宇宙産業を革新するメガコンステレーションの実現に必要な安全かつ安価な超小型衛星向け水統合エンジンの開発および実用化に挑む。

超小型衛星用推進機開発の東大発「Pale Blue」が研究開発型スタートアップ支援助成金NEDO STSに採択

現在、技術革新によって超小型衛星の市場が拡大している一方で、現状の小型衛星のほとんどは推進機を搭載していないため、能動的に軌道や姿勢を維持して運用寿命を長引かせたり、軌道を離脱させたりすることができず、とりわけ、後者に起因する宇宙ゴミ(デブリ)増大は深刻な問題になっているという。

こうした課題は推進機の搭載により解決可能なものの、大型衛星搭載の推進機は体積・重量・コストの観点から小型衛星への適用が難しく、また高圧ガス・有毒物を推進剤として使うため、環境への配慮や持続可能性の点でも問題があるという。

Pale Blueはこの解決策として、水を推進剤とした小型推進機を開発。従来の高圧・有毒な推進剤から脱却し、低圧貯蔵可能、安全無毒で取り扱い性と入手性の良い水を推進剤として利用することで、前述の課題を解決し、圧倒的な小型化と低コスト化を実現するとしている。

小型衛星実用化のボトルネックとなっている小型推進機にイノベーションを起こすことで、小型衛星群によるビジネスや深宇宙探査を実現し、科学技術による人類の幸福の最大化や文明レベルの向上を目指す。

東京大学は長年にわたって宇宙推進機の研究を行ってきており、推進機内における複雑なプラズマ物理の解明や電気推進の性能評価に関して、世界をリードする研究機関のひとつという。Pale Blueメンバーは、東京大学在籍時から推進機の基礎研究に加えて、高周波電源や高電圧電源の小型化・高効率化に取り組み、成果を上げ、さらに実際の小型衛星に搭載する推進システムの開発を多数経験してきたという。同社は水統合推進システムの実現において、東京大学のエンジン基礎研究の成果を社会実装・実用化する役割を担い、その収益をアカデミアに還元することを目指すとしている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:資金調達(用語)NEDO(組織)東京大学(用語)Pale Blue(企業)日本(国・地域)

日本IBMが量子コンピューター「IBM Q」を神奈川県・かわさき新産業創造センターに設置、2021年中に稼働

日本IBMが量子コンピューター「IBM Q」を神奈川県・かわさき新産業創造センターに設置、2021年中に稼働

日本アイ・ビー・エム(日本IBM)は3月23日、東京大学とIBMによる「Japan IBM Quantum Partnership」で表明していた「IBM Quantum System One」の国内設置拠点について、「新川崎・創造のもり かわさき新産業創造センター」(KBIC)に決定したと発表した。稼働開始は本年中を予定。

ここに設置される量子コンピューターについては、東京大学とIBMの契約に基づき東京大学が占有権を有する。東京大学はこのシステムを活用し、企業、公的団体や大学等研究機関と量子コンピューターの利活用に関する協力を進める。

かわさき新産業創造センターは、「新川崎・創造のもり」地区に位置する産学交流によるインキュベーション施設。2012年よりIBM東京基礎研究所のサイエンス&テクノロジー・グループが東京大学と共同で社会連携講座を開設しており、次世代ITに関するハードウェア研究を続ける研究拠点でもある。

量子コンピューターの常時安定稼働には電気・冷却水・ガスなどのインフラの安定供給や耐振動環境が必要で、KBICは川崎市の全面的な支援により安定稼働に最適な環境を実現しているという。量子コンピューターを安定稼働させることで、同研究所が現在東京大学と進めている研究活動が加速することが期待されるとしている。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:IBM(企業)Q System東京大学(用語)量子コンピュータ(用語)日本(国・地域)

「東大IPC 1st Round」第4回の採択企業5社を発表、シード期から東大発スタートアップを支援

東大IPC 1st Roundのロゴマーク

東大IPC 1st Roundのロゴマーク

スタートアップが初めに直面する課題の1つにシード期の資金調達がある。東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)は、東大発のスタートアップなどを対象に、企業連携型インキュベーションプログラム「東大IPC 1st Round」を用意している。東大IPCは三井不動産など計10社のコーポレートパートナーと手を組み、最長6カ月の期間でさまざまなサポートをしながら、採択企業の垂直立ち上げを目目指している。同プログラムは採択企業の約9割が採択から1年以内に資金調達を実施するなど、大きな効果を生んでいる。

東大IPCは3月15日、第4回「東大IPC 1st Round」採択企業を発表した。採択されたのは、EVや鉄鋼材リサイクル、AI、バイオ、獣医DXで事業展開する5社だ。

Yanekara:商用電気自動車をエネルギーストレージ化する充放電器とクラウドの開発

Yanekaraは「自然エネルギー100%の日本を創る」ことをミッションとしている。電気自動車を太陽光で充電し、それらを群制御することで電力系統の安定化に必要な調整力を創出できる充放電システムを開発している。

電気自動車が拠点や地域内の太陽光発電で走るだけでなく、駐車中に遊休資産となっている車載バッテリーから調整力を生み出すことができれば、エネルギーの脱炭素化と地域内自給、さらには高い災害レジリエンスを実現できるという。

今回の支援によって、プロダクトを完成させEV利用企業への提供実績を作り、Yanekaraシステムの社会実装に繋げていく。

Citadel AI:AIを可視化し、AI固有の脆弱性・説明責任リスクから顧客を守る事業

Citadel AIは、AIの思考過程を可視化の上、顧客のAIの品質・信頼性を確保する「AI監視ツール」を提供する。元米国Google BrainのAIインフラ構築責任者が開発をリード。同ツールは、オンライン・バッチ環境、学習・運用フェーズのいずれにも対応し、さまざまなAIシステムへの適用を可能としている。

Citadel AIは、AIを「消費期限がある生鮮食料品のようなもの」と表現する。出来上がった瞬間から社内外の環境変化のリスクに晒され、品質劣化が始まる。AI固有の脆弱性を狙ったアタックも存在し、さらにAIの説明責任・コンプライアンスの観点から、学習データに潜むバイアスにも常に注意が必要となるという。

Citadel AIは「24時間いつでも頼れるAIをあなたに」という事業ビジョンを持つ。

EVERSTEEL:画像解析を用いた鉄スクラップ自動解析システムの開発

EVERSTEELのミッションは、鉄スクラップの自動解析システムにより鉄鋼材リサイクルを促進し、世界の二酸化炭素排出量を削減することだ。

鉄鋼材生産による二酸化炭素排出量は、世界の製造業全体において最も多い25%を占めており、低減の促進が望まれている。また、リサイクル過程での不純物混入により鉄鋼材の品質などが低下し、多大なコストが発生してしまう。さらに鉄鋼メーカーは、不純物混入制御を現場作業員の目視で行っており、品質確保と作業の効率化に限界がある。

EVERSTEELは自動解析システムを実用化することで、高効率・高精度な不純物混入制御を実現していく。また、世界の基盤材料である鉄鋼材のリサイクルを促進することで、世界規模でのSDGs達成を目指す。

LucasLand:バイオ産業にDXをもたらす簡便微量分析法の開発

創薬や食品科学、環境安全、感染症検査、科学捜査などのバイオ産業において微量分析は重要視されている。しかし、一般的な微量分析法(X線、NMR、質量分析など)は分析装置の大きさやコストが問題となる。また、簡便微量分析法である表面増強ラマン分光法は生体試料への適合性の課題があった。

LucasLandのミッションは、これらの難問を解決した東大発の新素材「多孔性炭素ナノワイヤ」を用いて、バイオ産業全般のDXに資する微量分析プラットフォームを創造すること。今回の支援を活用し、事業化を推進していく考えだ。

ANICLE(予定):獣医業界のDXを進める遠隔ペットケアサービス事業

ANICLEは、すべてのペットが最適なヘルスケアを受けられる社会の実現を目指していく。現在の獣医業界には、さまざまなハードルにより飼い主が動物病院に行くタイミングが遅れ、救えたはずの命が失われているという深刻な課題がある。

ANICLEはITを活用し、トリアージ、オンライン相談・診療、往診といった遠隔獣医療サービスを提供することで、獣医療へのアクセスの改善を図る。さらに家庭と動物病院を繋ぎ、シームレスなヘルスケアをペットが受けられるように獣医業界のDXを進めていく。

東大IPC 1st Roundでコーポレートパートナーと協業機会も

東大IPC 1st Roundは米国スタンフォード大学出身者によるアクセラレータプログラム「StartX」をベンチマークに、東大IPCが始めたインキュベーションプログラムだ。対象は起業を目指す卒業生や教員、学生などの東大関係者や、資金調達を実施していない東大関連のスタートアップとなる。

また東大IPCは、コーポレートパートナーを東大IPC 1st Roundに迎えることで、採択企業との協業機会の創出に力を入れている。コーポレートパートナーには、JR東日本スタートアップ、芙蓉総合リース、三井住友海上火災保険、三井不動産、三菱重工業、日本生命保険、トヨタ自動車、ヤマトホールディングスなど、各業界のリーディングカンパニーが参加している。

東大IPCによると、すでに採択先と各企業との資本業務提携など、オープンイノベーションの事例が10社以上も生まれたという。2020年からは採択先に対する東大IPCによる投資も開始し、BionicMやアーバンエックステクノロジーズ、HarvestXなどに対する投資を実行している。

今回の発表では、産業ロボット業界をけん引する安川電機と、基幹業務ソフトから中小企業の「マネジメントサポート・カンパニー」を目指すピー・シー・エーが新たにコーポレートパートナーに加わったことが明らかになった。新たに迎えた2社を加え、コーポレートパートナーは全部で10社となった。

インキュベーションプログラムとして高い実績

東大IPCはこれまで計34チームを採択した。採択1年以内の会社設立割合は100%で、資金調達成功率は約90%、大型助成金の採択率は50%だという。設立直前直後のチームを対象とするインキュベーションプログラムとして、東大IPCは実績を積んでいる。

具体的な支援としては、東大IPCは採択企業に対し、コーポレートパートナーによる協賛も含めた最大1000万円の活動資金を出している。事業推進に必要な資金調達や実証実験、体制構築、広報、資本政策などに関して、東大IPCや外部機関からのハンズオン支援なども提供する。

なお、東大IPC 1st Roundにおける採択企業の詳細な選定基準は非公開となっている。東大IPCの広報によると、スタートアップの事業性と実現性、支援意義の3つの観点で選定しているという。また、イノベーションエコシステムの拡大を目指す狙いから、審査プロセスにはコーポレートパートナーや外部VCも参加し、最終選定を行っているとのこと。

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タグ:東京大学協創プラットフォーム開発東京大学人工知能DX

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

Plug and Play Japanは2月3日、東京大学医科学研究所発のスタートアップLiquid Mineへの出資を発表した。

Liquid Mineは、「最先端の遺伝子解析により、より多くのがん患者一人ひとりに最適な治療環境を提供する。」をミッションに、リキッドバイオプシー(液体生検。Liquid Biopsy)を用いたゲノム検査「MyRD」を提供する東京大学医科学研究所発のスタートアップ。患者個人に合わせたテーラーメイド医療(オーダメイド医療)を通じて、白血病患者の長期生存率向上、がんの克服を目指している。

白血病の検査としては、骨髄生検という手法が一般的なものの、非常に強い痛みを伴うため患者の肉体的・精神的・経済的負担が大きいという課題がある。一方Liquid Mineの提供するソリューションは、患者モニタリング期の骨髄生検を侵襲性の低いリキッドバイオプシーに代替することで、これら患者の負担軽減に貢献するという。

市場展開として、日本のみならず海外でもがん検査の新たなスタンダードとなる可能性を持つことから、世界に事業展開できるスタートアップに投資しているPlug and Play Venturesは、同社が目指すがんゲノム医療のポテンシャルを感じ、出資を決定した。

Plug and Playの投資部門Plug and Play Venturesは、世界にビジネスを拡大していく可能性を持つ日本のスタートアップに対し、事業領域を問わず投資を行っている。投資件数において世界で最も活発なベンチャーキャピタルのひとつでもあり、DropboxやPaypal、Lending Clubなど多数のユニコーン企業を輩出してきた。

2020年は162社のスタートアップに投資を実施したほか、ポートフォリオ企業から12社がExitを果たし、新たに4社がユニコーンとなった。

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東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(協創1号ファンド)は1月19日、抗体を主体とした医薬品および体外診断用医薬品の研究開発を進める凜研究所に対して、2億円の出資を行ったと発表した。

今回の凜研究所への投資は、LP出資先でライフサイエンス・ヘルスケア分野に特化した投資を行うファストトラックイニシアティブとの共同投資となっている。

凜研究所は、研究担当取締役を務める松村保広博士(元国立がん研究センター東病院 先端医療開発センター 新薬開発分野 分野長、元東京大学大学院新領域創成科学研究科 がん先端生命科学分野 客員教授)の研究成果の臨床開発を進めるため、2016年1月に設立された創薬ベンチャー。エーザイで医薬品の研究開発を長年リードした吉松賢太郎CEOのもと、がんの診断・治療に役立つ独自の抗体医薬を開発し、まったく新しい抗体医薬を上市することで、患者に回復への大きな希望を届けることを目指している。

ヒトの免疫機能として病原体などの異物が侵入した際に活躍する抗体において、特定の物質と選択的に結合するというその性質を薬として活用した「抗体医薬」は、今日世界で7兆円を超える製品分野へと成長しているという。

凜研究所では様々な抗体医薬を開発中で、そのひとつがタンパク質TMEM180に結合する抗TMEM180抗体という。大腸がん細胞で高発現し、正常な腸管上皮細胞には発現しないTMEM180を標的とするこの抗体を用いて、大腸がんをはじめとする難治性がんの治療を目指しているそうだ。

またこの他にも、近年注目されるがん微小環境を構成する間質(かんしつ)中の不溶性フィブリンタンパク質を標的とした抗不溶性フィブリン抗体に薬物を付加した抗体薬物複合体(ADC。Antibody Drug Conjugate)など、複数の抗体医薬製品群を研究開発中という。

東大IPCは、抗TMEM180抗体がKRAS遺伝子変異を有する大腸がんなど、現時点で治療法に乏しいがんに対する新たな治療オプションを提供する可能性を持っていること、日本のアカデミア発研究シーズの臨床開発を支援することの社会的意義、などの理由から出資を決定したとしている。

協創1号ファンドは、東京大学関連ベンチャーの育成促進と、東京大学を取り巻くベンチャーキャピタル(VC)の質・量の充実を中心に据えて運用を行なうことで、東京大学の周辺に持続可能なイノベーション・エコシステムを構築し、世界のベンチャー創出拠点のひとつとなることに寄与することを目的としている。具体的な運用として、今までに6つのVCへのLP出資(ファンド オブ ファンズ)と、18社の東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行い、現在も積極的に東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行っている。

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カテゴリー:ヘルステック
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最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテストの結果発表

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
日本IBMは、11月9日から11月30日までの3週間にわたり開催した、量子コンピューターの競技型プログラミング・コンテスト「IBM Quantum Challenge」(The Quantum Challenge Fall 2020)の結果を発表した。東京大学工学部物理工学科の長吉博成氏が、全問クリアに加えて、最後の問題を解く際に最も低い量子コストを達成し最優秀者となった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

同コンテストは、参加枠2000名限定に対し、85ヵ国から3320人以上の応募があったという。最も申し込みが多かった国はインドで、日本は2番目だった。また男性は75%で、女性は25%という比率だった。

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表
コンテスト参加者は、毎週難易度が上がる形で新しい課題を与えられ、2000名の参加者のうち、第1週目の演習課題をすべて解けた者は1091名、第2週目が576名だった。最後の最も難しい本戦課題を含め、すべての演習課題を正解できた者は227名だった。

優勝者の長吉氏は、問題の制約条件のユニークな特徴を利用した戦略を適用することで、最も少ない量子コストで解を得ることに成功した。

最終週の本戦問題については、問題作成者のIBM Quantumの松尾篤史氏が執筆した解答例長吉氏の解法と解説のどちらも、Github上で公開されている。さらに、トップチームの解法解説も掲載されており、アプローチや駆使したテクニックを学べる

最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテスト結果を発表

コンテストの内容は、qRAM(量子ランダムアクセスメモリー)を使って近未来の量子データ構造を実装し、データベース探索を行うGrover(グローバー)のアルゴリズムを使って量子ゲームソルバーを設計する方法を学ぶというもの。qRAMとGroverのアルゴリズムの組み合わせは、将来の量子システムを使った量子機械学習や複雑な意思決定問題の分野で、実生活の問題を解決するために数多くの応用が見込まれている。

参加者のスコアは、「コスト=S+10C」という式に基づいて、回路の実装コストを測定することで決定。

(Sは1量子ビットゲートの数、CはCNOT(CX)ゲートの数で)任意の量子回路は、1量子ビットゲートと2量子ビットゲートに分解できる。現在の誤り(エラー)耐性のないNISQ(ニスク。Noisy Intermediate-Scale Quantum)デバイスでは、CNOTのエラーレートは、一般的に1量子ビットゲートのものと比較して10倍となる。そのため、回路の実装コストを評価するために、CNOTゲートを1量子ビットゲートの10倍に設定。今回のチャレンジでは少ないゲートコストで正解にたどり着くことがゴールとなっている。

日本IBMによると、今回のコンテストの大きな成果は、量子コンピューティングと、量子コンピューター向けPython用フレームワーク「Qiskit」に関する知識とスキルレベルの向上といった学習体験にあるという。参加者の事前と事後アンケートの結果を比較したところ、より高いレベルの経験とスキルを身につけた様子がうかがえるとした。

量子コンピューティング

量子コンピューティングに関する知識の変化

Qiskitに関する知識とスキルレベルの変化

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超小型人工衛星による新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップASTROFLASHが資金調達

超小型人工衛星による新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップASTROFLASHが資金調達

超小型人工衛星を用いた新たな宇宙利用を開拓する東大発宇宙スタートアップ「ASTROFLASH」は12月7日、JKISS型新株予約権と銀行融資により資金調達を実施したと発表した。調達金額は非公開。新規引受先は、ゼロワンブースター、KDパートナーズ合同会社、その他個人投資家複数名など。調達した資金により、2022年頃に予定している初号機「視覚で楽しむ衛星」(仮称)の打ち上げに向けて開発を加速させる。

2019年11月設立のASTROFLASHは、日本の超小型人工衛星技術をリードしてきた、東京大学中須賀船瀬研究室発の宇宙スタートアップ。すべての人にとって宇宙を身近にすることをミッションとしており、従来の人工衛星よりはるかに安価で手軽な超小型人工衛星(CubeSat)を活用した新たな宇宙利用を実現することで、日本と世界の宇宙産業の拡大と発展に貢献するとしている。

今回の資金調達により、ASTROFLASHが2022年頃に予定している初号機「視覚で楽しむ衛星」(仮称)の打ち上げに向けて開発を加速させる。同事業は、「令和2年度(2020年度) 『産業技術実用化開発事業費補助金』(宇宙産業技術情報基盤整備研究開発事業)」や「東京都ものづくりベンチャー育成事業」(Tokyo Startup BEAMプロジェクト)の支援を受けており、それらの補助事業と合わせて初号機開発に万全の体制を期しているとした。また同社は、今後の事業拡大を見据えて引き続き調達活動を継続する。

ASTROFLASHは、多くの人が体感できる新たな宇宙利用の実証として、初号機「視覚で楽しむ衛星」の2022年打ち上げを予定。初号機は3Uサイズ(10×10×30cm。重さ4kg)のCubeSatで、光源装置を搭載することで地上から肉眼で明るく見えるよう運用されるという。

衛星は、世界中の都市へ明るさ最大-2等級以上の光を届けながら、その色や明るさをユーザーがスマートフォンなどでリアルタイムでコントロール可能。ASTROFLASHは、この「視覚で楽しむ衛星」の実現により、宇宙とつながる体験を多くの人に提供することを目指す。なお、同衛星は天文観測の妨げにならないよう、特定の地域でのみ視認されるよう運用される。

またASTROFLASHは、初号機の開発を進めると共に、「視覚で楽しむ衛星」のグローバルな活用を利用したPRなどを行うスポンサー企業を募集。衛星の命名権や運用方法をはじめとし、衛星を用いた様々なプロモーションについても調整することが可能としている。

さらに、初号機で実証した技術を用いて将来的には複数機でのフォーメーションフライトを行い、見える人工衛星の表現の幅を広げることを検討。これにより宇宙エンターテインメント事業を拡大させていくとともに、CubeSat技術によって可能となる新たな宇宙利用を開拓していく。

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カテゴリー:宇宙
タグ:ASTROFLASH宇宙資金調達(用語)日本(国・地域)

東大・松尾研発のAIスタートアップACESが3.2億円調達、IGPI川上登福氏が取締役に就任

東大・松尾研発のAIスタートアップACESが3.2億円調達、IGPI川上登福氏が取締役に就任

画像・映像認識AIアルゴリズムの力でリアル産業のDXを目指す東大松尾研発のAIスタートアップACESは12月3日、総額約3.2億円の資金調達を発表した。引受先は、経営共創基盤(IGPI)とVCファンド「Deep30投資事業有限責任組合」。また取締役として、川上登福氏(経営共創基盤 共同経営者 マネージングディレクター、一般社団法人日本ディープラーニング協会 理事)の就任が決定したと明らかにした。

ACESは、「アルゴリズムで、社会をもっとシンプルに。」というミッションのもと、人の知見を数式化することで、人とデジタルが接続された「なめらかかつ構造的な社会」の実現を目指しアルゴリズム事業に取り組むスタートアップ企業。

2017年11月の設立以降、スポーツ、小売、建設、自動車をはじめ、数多くの産業現場における共同DX事業を実施。2020年9月には、陸上自衛隊のAI活用・デジタル化推進への協力や、国土交通省の革新的技術の導入・活用に関するプロジェクトにおいて最高評価を獲得するなど、官民問わずDXの推進に尽力しているという。様々な業界のデジタル化ニーズが高まる中、さらなるアルゴリズムのライセンス領域の拡大、ソフトウェア化による事業拡大を加速すべく資金調達を実施した。

また今回、IGPIにおいてAI・IoT戦略立案・実行などの案件を統括し、ビッグデータ解析・DX支援を行うIGPIビジネスアナリティクス&インテリジェンスの代表取締役CEOを務め、ACESの顧問としても事業、経営戦略立案に尽力してきた川上登福氏の取締役就任が決定。今回の資金調達と川上氏の参画を機に、業界のサプライ/バリューチェーンのデジタル化を加速するとしている。

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タグ:ACES(企業)資金調達(用語)ディープラーニング / 深層学習(用語)東京大学(用語)日本(国・地域)

東大発AIスタートアップTRUST SMITHが障害物回避型アームのアルゴリズムで特許取得

東大発AIスタートアップTRUST SMITHが障害物回避型アームのアルゴリズムで特許取得

TRUST SMITHは11月4日、人工知能を使った障害物回避型アームのアルゴリズム開発に成功し、特許を取得したと発表した。特許番号は特許第6765156号(P6765156)。独自技術を発明し社会実装することで、技術的優位性の高いビジネスを展開していくとともにに、最短経路で良いよい社会の実現を目指す。

同社は、社内の組織体制として「ラボ制」を採用。東京大学や京都大学をはじめとする学術機関に在籍あるいは卒業した研究員を中心に、当社独自のアルゴリズムの研究開発に取り組んでいる。OSSを活用したソリューションの提供ではなく、他社に模倣されない同社独自の技術を発明し社会実装することで、技術的優位性の高いビジネスを展開していくと共に、最短経路で良いよい社会の実現を目指す。

TRUST SMITHは、少子高齢化による労働人口減少に由来する「人材不足」、技術力への自負とIT導入コストへの懸念による「IT活用の遅れ」といった製造業での問題を解決すべく、人工知能を使った障害物回避型アームのアルゴリズム開発。これまで手作業で行っていたとされる工場などでのピックアップ作業を自動で行えるようになり、(1)人件費削減と労働力不足の解消、(2)データの蓄積と消費エネルギーの最適化、(3)作業のミス・災害の防止の実現を目指す。

開発に成功したのは、「リーマン計量」と呼ばれる微分幾何学の理論に基づくもの。空間内に存在する障害物を回避し、目的物へアプローチできるアルゴリズムという。アームから見た空間内の物体との距離、相対速度または相対加速度に応じて適切に場を計量できるため、障害物が動いていても安全に回避しながら、目的物に到達可能になる。

障害物回避型アームの活躍の範囲は多岐にわたり、従来人々が手作業で行ってきたあらゆる作業をサポートすることを期待している。具体的には、以下のような業界・業種において障害物回避型アームが自動で作業を行えるようになるとしている。

  • 製造業(金属製品/電子部品など):部品の分別、部品の溶接などの作業
  • 製造業(食品):食品の調理工程における作業全般
  • 農業:野菜や果物の最適な収穫時期の判定と収穫作業
  • インフラ(原油):原油配管の超音波非破壊検査作業
  • サービス業(卸・小売):食品スーパーにおける商品陳列作業
  • サービス業(空港):空港内手荷物のバックヤードにおける搭載・取降工程における作業

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カテゴリー: 人工知能・AI
タグ: TRUST SMITH東京大学(用語)日本

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東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)運営のオープンイノベーション推進1号投資事業有限責任組合(AOI1号ファンド)は10月26日、道路点検AIを開発する東京大学関連スタートアップ「UrbanX Technologies」(アーバンエックステクノロジーズ)に対して、7000万円の出資を決定したと発表した。今回のUrbanXへの投資は、東大IPC経営陣の他、ANRIとの共同出資となり、東大IPCがリード投資家を務める。

UrbanXは、今回の資金調達により事業拡大を加速し、道路以外の分野においても都市のデジタルツインを構築。提携先開拓・開発を担う人材も積極的に採用する方針としている。

東大IPCは、同社主催コンソーシアム型インキュベーションプログラムの第3回「東大IPC 1st Round」でUrbanXを会社設立前に採択。会社登記から三井住友海上との協業(後述)など様々なハンズオン支援を実施し、今回の投資実行にいたったという。

道路メンテナンスなど、老朽化した社会インフラメンテナンスの課題対応に東京大学の技術を活用

2020年4月設立のUrbanXは、都市が抱える様々な問題をデータ×AIの力で解決し、スマートシティの実現を目指すスタートアップ。同ビジョンを実現するため、大手企業との提携により都市インフラの様々なデータを収拾し、ディープラーニングなどによるAI解析を行い、都市の変化を定量化している。また同ビジネスモデルの第1弾として、都市インフラの要となる道路におけるビジネス化を開始している。

現在、自治体などが実施する道路メンテナンスの点検方法は、主に高額な専用点検車両の使用や専門職員の目視による確認などがあるものの、これらでは総延長120万kmにおよぶ全国の道路を十分に点検できず、計画通りに維持管理することが困難な状況となっている。

また、日本だけでなく世界先進国において、高度成長期に次々と建設・整備された社会インフラの老朽化が急速に進んでおり、予防保全による安全の確保と費用削減は世界共通の課題テーマとなっている。

UrbanXの前田紘弥社長は、東京大学の特任研究員として東京大学生産技術研究所 関本研究室にて同社のベースとなる技術を開発。同技術は、すでに東京大学として基本特許を出願。また東京大学生産技術研究所 関本義秀准教授もUrbanXの取締役として同社の事業を主導している。

社会インフラメンテナンス支援に向けた実証実験も開始

UrbanXは、車載スマホ・ドラレコで撮影した画像をAI分析し、道路の破損箇所を検知するシステムを開発し、現在まで20以上の自治体で実証実験を行って教師データを収拾してきた。

しかし、全国の道路情報をリアルタイムに把握することをUrbanX単独で実現することは困難なため、東大IPCの仲介にて「東大IPC 1st Round」のパートナー企業の1社である三井住友海上火災保険(三井住友海上)との実証実験を開始した。

具体的には、三井住友海上の専用ドライブレコーダーに、UrbanXのAIによる画像分析技術を搭載し、東京都品川区・千葉県千葉市・石川県加賀市・滋賀県大津市・兵庫県尼崎市といった自治体での自動車走行においてデータを収集。道路の破損箇所を適切に検知するための技術的課題の検証、画像品質やハードウェアの性能などを検証し、道路メンテナンスの点検業務への有用性について確認する。

AOI1号ファンドは、東京大学周辺でのオープンイノベーション活動の推進を目的に、「企業とアカデミアとの連携によるスタートアップの育成・投資」というコンセプトで2020年組成。同ファンドでは、各業界のリーディングカンパニーと連携した新会社設立やカーブアウトベンチャー、彼らのアセットを有効活用するスタートアップへの投資を通じ、新分野におけるオープンイノベーションの成功事例創出を目指す。

今後も東大IPCは、東京大学周辺のイノベーション・エコシステムの発展およびそれを通じた世界のイノベーションを加速するため、ベンチャーキャピタルやオープンイノベーションを推進する企業との様々な連携を通じ、アカデミアの生み出す学術・研究成果を活用するスタートアップの創出・育成・投資を進めていく。

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タグ: UrbanX Technologies資金調達東京大学東京大学協創プラットフォーム開発 / 東大IPC日本

ゲノム医療情報サービス提供の東大発スタートアップ「Genomedia」が資金調達

ゲノム医療情報サービス提供の東大発スタートアップ「Genomedia」が資金調達

ゲノム医療情報サービスの提供を行うGenomedia(ゲノメディア)は、第三者割当増資として資金調達を実施したと発表した。引受先は、住友商事、シップヘルスケアホールディングス、米Aflac Ventures LLC(アフラック・イノベーション・パートナーズが支援)。

Genomediaでは、今回の第三者割当増資に加え、住友商事およびシップヘルスケアとの業務提携により、ゲノム医療を推進する医療機関・研究機関・サービスプロバイダーなどに対するゲノム医療関連情報サービスのソリューション提供を加速する。また、臨床現場へのサービス提供実績の蓄積を通して、ゲノム医療情報を活用した創薬支援、ゲノム医療の質向上への貢献を進めていくとしている。

がんゲノム医療では、医療機関で患者のがん組織が採取され、解析センターなどでがん関連遺伝子解析が実施される。その結果検出された遺伝子異常などの検査結果は、エキスパートパネルと呼ばれる会議において検討され、治療法が決定される。エキスパートパネルとは、主治医のほか、がん薬物療法や遺伝医学、病理学、分子遺伝学、バイオインフォマティクスなど、がんゲノム医療に関わる複数の医師、専門家が参加する会議のこと。

エキスパートパネルにおいては、より良い治療法を決定するための様々な幅広い情報に基づいた検討を行う必要があるものの、情報収集や整理作業などの負担が医療現場の課題となっているという。

Genomediaは、2015年より、国立がん研究センターをはじめとするさまざまな医療機関、研究機関などに、ゲノム情報と臨床情報の統合システム「Genomedia Front」を提供。同社独自の知識データベースを用いたゲノム医療関連情報サービスの提供を通して、エキスパートパネルなどにおける情報収集や整理作業などの業務を支援している。

Genomediaは、2013年創業の東京大学発スタートアップ企業。「ゲノム情報を活用して、豊かな生活、より良い地球環境の実現に貢献する」というミッションのもと、2015年より、国立がん研究センターをはじめとする様々な医療機関、研究機関などに、ゲノム情報と臨床情報の統合システムGenomedia Frontを提供SCRUM-Japan第一期、第二期への提供を経て、ゲノム医療向けクラウドサービス「Genomedia Front Cloud Service」を開発・提供を行っている。

カテゴリー: ヘルステック
タグ: 資金調達Genomedia東京大学日本

東大発「イノカ」と東工大発「aiwell」が海の環境保全達成に向け共同プロジェクトを開始

東大発「イノカ」と東工大発「aiwell」が海の環境保全達成にむけ共同プロジェクトを開始

「環境移送技術」の研究開発・社会実装を推進する東大発スタートアップ企業「イノカ」と、タンパク質の網羅的解析技術「AIプロテオミクス」の汎用化・社会実装を進めている東工大発スタートアップ企業 「aiwell」(アイウェル)は10月20日、海洋環境を保護するための共同事業を開始すると発表した。

海洋環境を熟知したイノカと、タンパク質解析のプロであるaiwellがタッグとが組むことで、海のコンディション管理を行い、SDGsの目標14「海の豊さを守ろう」を達成すべく、今後様々なプロジェクトを遂行する。

両社は、見た目だけでは決して判断がつかない海洋環境の実態を、タンパク質レベルで解明し、改善・保全する取り組みを順次展開。

一定の成果が出た後は、現状汚水を海に排出するしか方法のない化学工場やサンゴ礁を傷つけてしまうといわれている化粧品を開発している企業に向けて、海洋環境を守る仕組みづくりを共有。ともに海の環境を守り、企業イメージの向上に貢献していければと考えているという。

海の課題を「AIプロテオミクス」で解決し、海の豊かさを未来永劫守るため、イノカとaiwellはプロジェクトを開始。そしてこのモデルを日本全国・世界へ展開し、SDGsの達成を世界に向けて発信するとしている。

イノカとaiwellによる今後の計画

  • サンゴの健康診断: 水質の良い海でのみ生息できるサンゴが健康な状態であれば、その水質は良いといえるはず。サンゴの人工抱卵に成功したイノカが保有している、健康なサンゴに含まれるタンパク質を解析し、サンゴの生態系を解明。サンゴの状態をモニタリングすることで、海の生態系の保護へとつなげる
  • 海の健康診断: 「仮に海洋をひとつの生き物として捉えたとき、海水は人にとっての血液にあたるのではないか」。そんな高倉氏の発想より、海水中に含まれる魚などの排せつ物あるいは微生物の死骸などの物質をプロテオミクスで解析。生物にとって住みやすい海の環境の定義をタンパク質レベルで解明する
  • 人の手によって汚染されてしまった海洋環境を救う取り組み: 解明することで、実際に重油や排水などで汚染された海洋環境の改善・サンゴ礁の保全が達成できる仕組み作りを実施

イノカは、「100年先も人と自然が共生する世界を創る」というビジョンを掲げ2019年に創業。国内最高峰の「生態系エンジニア」とAI・IoTエンジニアを中心に特定水域の生態系を陸上の閉鎖環境に再現する「環境移送技術」の研究開発、社会実装を推進する東京大学発スタートアップ企業。

環境移送技術とは、水質(30以上の微量元素の溶存濃度)をはじめ、水温・水流・照明環境・微生物を含んだ様々な生物の関係など、多岐に渡るパラメーターのバランスを取りながら、自社開発のIoTデバイスを用いて実際の自然環境と同期させ、特定地域の生態系を自然に限りなく近い状態で水槽内に再現するイノカ独自の技術のこと。

2020年5月には、IoT技術により水温を沖縄の久米島付近の海面水温と同期させた完全閉鎖環境内の実験で、サンゴの人工抱卵を実現。この技術を活用し、研究機関と協同して海洋環境の健康診断技術の確立を目指す一方、民間企業と連携して環境保全活動や教育事業に取り組んでいる。

東大発「イノカ」と東工大発「aiwell」が海の環境保全達成にむけ共同プロジェクトを開始

2018年1月に創業したaiwellは、東京工業大学 生命理工学院 林宣宏研究室と次世代技術「AIプロテオミクス」に関する共同研究を2018年10月より開始。2019年4月には東京工業大学 大岡山キャンパス内に「東京工業大学・aiwell AIプロテオミクス協働研究拠点」を開設した。

AIプロテオミクスとは、林宣宏氏が発明した、生体の状態をプロファイルする次世代特許技術。二次元電気泳動技術の(大量の検体を扱うための)ハイスループット化と(微量な検体でも分析を可能とする)高感度化に成功。

生体内の遺伝子産物を網羅的に解析するプロテオミクスの基盤技術である二次元電気泳動法を用いて、血中タンパク質の二次元電気泳動画像をAIが学習することで、様々な病気や怪我になる一歩手前の状態を発見する研究として注目されているという。敗血症においては、98.2%の精度で的確な判断を可能にした。

2019年12月には東工大発ベンチャー認定企業となり、「AIプロテオミクス」に関する研究開発とその実用化、社会実装を推進。同研究開発では、生体内の遺伝子産物を網羅的に解析するプロテオミクスの基盤技術である二次元電気泳動法を用いて、画像化された血中タンパク質のデータをAIで解析することに成功し、様々な病気や怪我を起こす一歩手前の状態を発見できる技術として注目されている。

また、人間以外の動物や植物などにも幅広く応用が利くことから、SDGs達成のための技術のひとつとして今後広く活用されることが期待されている。

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カテゴリー: EnviroTech
タグ: aiwellイノカSDGs東京大学
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ハニカム構造などメタマテリアル活用設計アルゴリズム開発の東大発スタートアップが9000万円を調達

ハニカム構造などメタマテリアル活用設計アルゴリズム開発の東大発スタートアップが9000万円を調達

ハニカム構造などメタマテリアル活用の設計アルゴリズム「DFM」を開発するNature Architectsは9月30日、シリーズAのエクステンションラウンドにおいて、第三者割当増資として合計9000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は三菱マテリアルCVC(MMCイノベーション投資事業有限責任組合)、ニフコ、PKSHA SPARX アルゴリズム1号ファンド。2020年5月に完了した資金調達と併せて、シリーズAラウンドとしては累計4.15億円の調達となった。

また今回、同社DFM技術を社会実装するために事業面での協業を見据えたパートナー企業と資本提携を行った。三菱マテリアルCVCとは材料面で、ニフコとは製品開発面で、さらにPKSHA SPARXアルゴリズム1号ファンドとは設計アルゴリズムおよびライセンスビジネス面において協業を目指す。

東京大学発スタートアップのNature Architectsは、2017年5月に設立。メタマテリアル活用により、従来のモノづくりとは根本的に異なる製品設計が可能になる設計アルゴリズム「DFM」(Direct Functional Modeling)の開発を手がけている。メタマテリアルとは、ハニカム構造など、人工的な構造によって素材を超える特性(弾力・変形など)を付与されたものを指す。可動部など機構的な動きを弾性変形によって生み出す構造(コンプライアントメカニズム)なども含む。

従来のモノづくりでは、ボルト・フレームヒンジなどの「硬い」部品を組み立てることで製品設計をを行う。これに対してDFMでは、各パーツのあるべき「硬さ」を計算し、それを実現するメタマテリアルを生成・割当て可能にする設計アルゴリズムとなっている。メタマテリアルを活用できれば、部品ごとの「硬さ(柔らかさ)」を自在に制御することが可能になるという。

その結果、硬い部材に振動吸収機能を付与するなど、従来実現できなかった新機能をパーツに付加したり、フレーム・稼働部など部位ごとに必要な様々な機能を部品に分けることなく一体で設計・製造することが可能になるとしている。

DFMの適用範囲は、ロボティクス・自動車・航空宇宙など動きを明示的に扱う最終製品はもとより、レバー・スイッチ・ファン・バネなどの部材も対象としている。

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東大発スタートアップTRUST SIMITHが創業以来金融機関からの融資のみで総額1.1億円を調達

東大発スタートアップTRUST SIMITHが創業以来金融機関からの融資のみで総額1.1億円を調達

数理アルゴリズム実装を手がける東大発スタートアップ「TRUST SIMITH」は9月25日、金融機関からの融資のみで総額1.1億円の資金調達を実施したと発表した。「技術⼒への⾃負」と「プロジェクト成功への確固たる⾃信」とともに⾦融機関からの融資にこだわっており、2019年1月の創業以来第三者割当増資を一切行っていないという。

TRUST SIMITHは、機械学習・ディープラーニング・数理アルゴリズムなどの最先端技術を実⽤化し、ロボティクス・ドローン・医療・製造業など様々な分野でイノベーションの実現を⽬指すスタートアップ企業。

調達した資金は、優れた研究者の採⽤⼒強化、研究開発に必要な設備投資、知財戦略の遂行に用いる。

同社には、東京⼤学・京都⼤学はじめ、学術レベルにおいてその領域の第⼀⼈者として最先端の研究開発を⾏う研究者が多数在籍。今後、R&D部⾨の取り組みを拡充させるため、社内に技術研究所を創設予定という。優秀な研究者に対し、能⼒に⾒合う適切な報酬設計と働きやすい開発環境の整備を⾏い、研究者の採⽤⼒強化に努めるとしている。

また同社は、ソフトウェアだけでなく、アームロボットやフォークリフトなどハードウェアへの実装までを含めた研究開発をR&D部⾨にて総合的に実施しているという。実証実験に必要な⾃社⼯場の準備や、製品開発に必要な機材の購⼊などにあてる。

さらに、イノベーションの創出、事業競争⼒の強化、組織・基盤の強化などを⽬的として、同社の発明における特許取得や、事業性の⾼い知財を持つ⼤学の研究室および企業様との連携を図っていく。技術⾯における競合優位性を維持しながら、同社だからこそなせる課題解決を追求し続けるとしている。

不確実性の⾼いスタートアップにおいて、創業期からIPOまでのエクイティファイナンスの基本パターンが確⽴されつつある中、無謀な戦略ともとれる「異例の」デットファイナンス(借入金融)に同社がこだわる理由は、「技術⼒への⾃負」と「プロジェクト成功への確固たる⾃信」があるからという。

とりわけAI開発においては、専⾨知識を持たないソフトウェア企業が、概念実証という名⽬のもと成功する⾒込みのないAIプロジェクトを安易に受託し、プロジェクトが失敗に終わるケースがあり、いわゆる「PoC倒れ問題」が近年話題となっている。

同社の経営⽅針は、⾃社技術の押し売りではなく、顧客企業にとっての「リスクの排除」と「利益の最⼤化」に対して責任を持つこととしている。徹底的なヒアリングと、世界中の技術論⽂のサーベイを重ねることで、プロジェクトの成功確率とプロジェクトがもたらす企業様の経済メリットについて事前に⼗分精査し、説明などを行っているという。

また、話題性のある技術であっても、顧客企業にとって投資対効果が⾒合わないケースや、プロジェクトが失敗するリスクを排除しきれないケースにおいては、固辞しているとした。

顧客企業のリスクの排除と利益貢献について徹底的に考え続けた結果、数多くの上場企業や⾦融機関
から信頼を積み上げることができ、創業2期⽬にして、融資のみでの1.1億円の資⾦調達に成功したという。

同社は、クライアントの株価を5年で最低でも2倍、最⼤で10倍以上に成⻑させることにコミットするとしている。

東京大学JSK発のロボット開発スタートアップ「キビテク」が6840万円を調達

東京大学JSK発のロボット開発スタートアップ「キビテク」が6840万円を調達

ロボットの高度自律型遠隔制御システム(HATS)の開発およびロボット用制御ソフトウェアの受託開発を手がけるキビテクは9月18日、第三者割当増資として6840万円の資金調達を発表した。引受先は、シンク・アイ・ホールディングス、匠、ウイルテック。

キビテクは、今回調達した資金と出資企業との連携により、来年度の本格サービスインに向け、各種現場の知識に基づいた遠隔アシスト機能実現のためのソフトウェア開発・オペレーションセンター体制の構築を加速する。また、製造現場におけるFA系への取り組みを推進するとしている。

同社は、様々な高難度業務への自律ロボット導入を促進するため、自律ロボットが搭載するAIを遠隔オペレーターが効率よくアシストすることで、「常識を扱えない」「大量の事前知識を必要とする」などのAIの課題を克服する「HATS」(Highly Autonomous Teleoperation System))の開発を進めている。

東京大学JSK発のロボット開発スタートアップ「キビテク」が6840万円を調達

近年、物流現場や店舗などで自律型のロボットが様々な現場で活躍を始めている一方、AIにも限界があり(人間にとっては当然に思える)常識や社会的文脈に沿った臨機応変な対応ができるとは限らない。しかし、様々な状況に対応できるよう、事前にその状況をすべて洗い出してAIに教え込ませることは不可能だ。

東京大学JSK発のロボット開発スタートアップ「キビテク」が6840万円を調達

その結果、わずかに残存する異常状態への対応ができないために自律ロボットの導入に踏み切ることができないか、導入できる業務が限定されてしまうという課題があるという。また、すでに導入済みの場合でも、AIの限界によってロボットが停止してしまい、現場での復旧作業が必要となり、運用効率の低下というケースも見受けられるという。

同社が開発を進めているHATSは、遠隔オペレーターが簡単な操作で要点のみをロボットに指示することで、1名で担当できるロボット台数を格段に多い状態で運行できるようにするという。これにより、停止したロボットの復旧対応などを効率的に行えるようにするサービスとしている。

この事業を通して、障害者、リモートワークに縛られる方、途上国の低所得者などにオペレーター業務を担ってもらうことで就労の機会を増やし、貧困や格差固定化の問題の低減につなげ、より幸せな社会の実現に貢献するとしている。

キビテクは、東大の人型ロボット研究室JSK(情報システム工学研究室)出身者を主として2011年に創業した、知能ロボットの開発を行うスタートアップ企業。企業名「キビテク」の「キビ」は心の「機微」を意味しているという。同社の得意な技術を通して、未来の世界の人々の心の幸せに貢献することを最も大切にしている。

東大・松尾研発のAIスタートアップACESとメガネブランドZoffが業務提携、行動認識技術を用いたDXに取り組む

東大・松尾研発のAIスタートアップACESとメガネブランドZoffが業務提携、ヒューマンセンシング技術を用いたDXに取り組む

画像認識アルゴリズムを開発・提供する東京大学松尾研発のAIスタートアップ「ACES」(エーシーズ)は8月27日、メガネブランド「Zoff」(ゾフ)運営のインターメスティックと、ACESによるヒトの行動や感情を検知・解析するヒューマンセンシング技術(行動認識技術)を用いたDXの取り組みを開始したと発表した。

Zoffは、創業20周年を迎える2021年に向けたリブランディングの中核として、初となる研究・開発機関「Zoff Eye Performance Studio」(ゾフ アイパフォーマンス スタジオ。ZEPS)を設立。ヒューマンセンシング技術に強みを持つACESは、「メガネや店舗にIT・AI技術を援用することで人間の可能性を拡張し、顧客体験を洗練すること」を目指すZEPSのビジョンに共感し、AI活用の設計から技術開発・運用まで全面的にサポートを行うことで合意、業務提携が実現した。

今回の提携では、Zoffのコアコンピタンスである接客や商品などをAIによってアップデートするという。また、長期的にはIT・AIなどの技術躍進を背景に、メガネを視力矯正器具に留めず、人間の可能性を拡張するツールとしての価値を提示していくことを目指す。

東大・松尾研発のAIスタートアップACESとメガネブランドZoffが業務提携、ヒューマンセンシング技術を用いたDXに取り組む

今後の展望としては、ヒューマンセンシング技術を応用し、目のパフォーマンスおよび人のパフォーマンス向上に関する取り組みを検討。ACESとZEPSは、既存の商品・サービスの枠を超えて、目だけではなく人のパフォーマンスを向上させる「新しい機能」「新しい商品」「新しいサービス」の研究・開発を行い、メガネ業界のニューノーマルを牽引するとしている。

共同研究・開発テーマイメージとしては、以下を挙げている。

  • 日常生活やスポーツシーンにおける、目のパフォーマンスや身体能力向上を目的としたフレーム・レンズの開発
  • 光学・デジタル的なアプローチでの研究開発の推進
  • 機械学習・ディープラーニング・IOTなどを利用した生産・流通・販売基盤の構築

ACESは、東京大学松尾研発のAIスタートアップ。ディープラーニングのAIアルゴリズムを用いることで、ヒトが関わる様々なビジネスシーンをデジタル化し、課題解決と価値創出を行うDX事業を展開。ヒトの認識・解析を行うヒューマンセンシング技術を中心とした画像認識・動画解析アルゴリズムのAPI/SDKの提供や、共同DXプロジェクトなどを推進している。

ZEPSは、既存の商品・サービスの枠を超えて、目だけではなく人間のパフォーマンスを向上させるための「新しい機能」「新しい商品」「新しいサービス」を研究・開発し社会実装することを目的に設立した、Zoff初の研究・開発機関。エンジニアやゲームプレイヤーなど、目を酷使する職業のパフォーマンス向上を目的としたフレーム・レンズの開発や、視力だけでなく目の疲れ度合いなど目のパフォーマンスを数値化するサービスの開発など、新たな取り組みを進めている。

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痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円獲得

痛くない乳がん用診断装置開発の東大発スタートアップ「Lily MedTech」がNEDOに採択され約2.4億円の助成獲得

リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置の開発を行う東大発スタートアップ「Lily MedTech」は8月24日、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(以下NEDO)が実施する、2020年度「研究開発型スタートアップ支援事業/ Product Commercialization Alliance」(PCA)に採択され、約2.4億円の助成対象に決定したと発表した。

Lily MedTechが開発する乳房用超音波画像診断装置は、ベッド型をしており、ベッド上部に空いた穴の中の水槽にリング状の超音波振動子を搭載。女性がベッドにうつ伏せになり、乳房を水槽に入れることで、乳房全体の3D画像を自動で取得できる。

同装置は非接触のため、マンモグラフィのような圧迫による痛みはなく、超音波を使用するので被ばくのリスクもないという。また、乳房を下垂させた状態で自動撮像を行うため、操作者に依存せず、再現性の高い画像が取得できるという特徴を備えている。

今後国内外へ装置を広く浸透させ、より多くの女性が乳がん検診を受けやすい環境を作るため、同事業のコスト改善のための改良開発を行っていくとしている。

NEDOは、持続可能な社会の実現に必要な技術開発の推進を通じて、イノベーションを創出する、国立研究開発法人。リスクが高い革新的な技術の開発や実証を行い、成果の社会実装を促進する「イノベーション・アクセラレーター」として、社会課題の解決を目指している。

Lily MedTechは、女性に優しい乳がん診断を目指す女性起業家による東京大学発のスタートアップ企業。2019年12月9日に「第一種医療機器製造販売業」の許可を取得、現在は量産体制の構築と、発売に向けた社内体制の構築に注力している。

東京大学医学系研究科・工学系研究科での研究技術を基に、リング型の超音波振動子を用いた革新的な乳房用画像診断装置「リングエコー」を開発を進行。

現在の乳がん検診にはX線マンモグラフィやハンドヘルド型の超音波が用いられており、マンモグラフィは圧迫による乳房の痛み、X線照射による被ばくリスク、デンスブレスト(高濃度乳房)に対する検出精度低下などの課題があり、ハンドヘルド型の超音波はがん発見が検査技師の技術に依存するという課題を抱えているという。

これに対しLily MedTechのリングエコーは、被ばくリスクや圧迫による痛みがなく操作者の技術に依存しない装置として期待されている。

仕事、恋愛、結婚、出産、育児など、公私ともに選択肢が多い世代の女性が、乳がんによりその選択肢を奪われないよう、また乳がん罹患前と生活が大きく変わることのないよう、少しでも貢献するため日々開発を進めているとしている。

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東京大学とソフトバンクなどが「Beyond AI 研究推進機構」設立、10年間で最大200億円を拠出

Beyond AI 研究推進機構

東京大学、ソフトバンク、ソフトバンクグループ、ヤフーは8月6日、世界最高レベルのAI(人工知能)研究機関として「Beyond AI 研究推進機構」(旧:(仮称)「Beyond AI 研究所」)を設立し、2020年7月30日に共同研究を開始したと発表した。

ソフトバンク、ソフトバンクグループおよびヤフーから10年間で最大200億円を拠出。日本が世界をリードするための研究・事業活動を大胆に推進することで、AIを超える学術分野の開拓を目指す。

Beyond AI 研究推進機構は、共同研究開始にあたり、AI自体の進化や他分野との融合など、最先端AIを追究する中長期の研究テーマ10件および研究リーダーとして、東京大学が誇る各学術領域のトップクラスの研究リーダー10人が参加する。

Beyond AI 研究推進機構

また研究成果を基に、10年間で10件の事業化、3件の新学術分野の創造を目指すなど具体的な数値目標を設定するとともに、ソフトバンクが組成する50人規模の事業化推進チームとの連携により、初期段階から、データ分析やAI開発、戦略策定などの観点で中長期研究をサポートし、事業化を見据えた研究を効率的に推進する。

また、AIで共通利用される基盤技術に着目し、下記4領域で既存のAIを超える研究を推進する。

  • デバイス領域(AI自体の進化): 集積回路の物理的限界を突破し、微細化・高速化・省エネルギー化のブレイクスルーを図る
  • インテリジェンス領域(脳科学とAIの融合): 特定課題のみに対応する従来のAIから、人間の脳のように複合的・想像的活動を実現するAIを目指す
  • データ領域(物理とAIの融合): データクレンジングや教師データ作成などのコスト問題の解決に向けて、限られた教師データによるモデル構築など機械学習システム自体の変革を目指す
  • サービス領域(AIと社会): AIなどのデジタル技術がもたらす倫理や差別などの社会課題を横断的に研究

Beyond AI 研究推進機構

同研究推進機構は、東京大学の学内および海外の有力大学の研究者による最先端のAI研究を行う中長期研究と、研究成果を基に事業化を目指すハイサイクル研究という2方向で研究を行い、事業によって得たリターン(事業化益)をさらなる研究活動、次世代AI人材育成のための教育活動に充てることでエコシステムの構築を目指すことが特徴となっている。

Beyond AI 研究推進機構

また、今年度中にハイサイクル研究拠点を設置し研究を開始する予定で、中長期研究によって生まれた成果や知財を生かし、医療・ヘルスケアやスマートシティー、MaaSなどの分野において、CIP制度を活用した迅速な事業化に取り組むとしている。CIP制度とは、経済産業省が制定した研究促進制度で、大学・企業などが共同で素早く研究開発組織を立ち上げ、研究成果を基に設立したジョイントベンチャーを株式会社として事業化できる制度。

着実にリターンを創出する拠点としての役割を担うことで、エコシステム構築を加速し、AIが社会や人々の幸せに貢献することを目指していく。