東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東大IPCがガンの診断・治療に役立つ独自抗体医薬を開発する凜研究所に2億円を出資

東京大学協創プラットフォーム開発(東大IPC)が運営する協創プラットフォーム開発1号投資事業有限責任組合(協創1号ファンド)は1月19日、抗体を主体とした医薬品および体外診断用医薬品の研究開発を進める凜研究所に対して、2億円の出資を行ったと発表した。

今回の凜研究所への投資は、LP出資先でライフサイエンス・ヘルスケア分野に特化した投資を行うファストトラックイニシアティブとの共同投資となっている。

凜研究所は、研究担当取締役を務める松村保広博士(元国立がん研究センター東病院 先端医療開発センター 新薬開発分野 分野長、元東京大学大学院新領域創成科学研究科 がん先端生命科学分野 客員教授)の研究成果の臨床開発を進めるため、2016年1月に設立された創薬ベンチャー。エーザイで医薬品の研究開発を長年リードした吉松賢太郎CEOのもと、がんの診断・治療に役立つ独自の抗体医薬を開発し、まったく新しい抗体医薬を上市することで、患者に回復への大きな希望を届けることを目指している。

ヒトの免疫機能として病原体などの異物が侵入した際に活躍する抗体において、特定の物質と選択的に結合するというその性質を薬として活用した「抗体医薬」は、今日世界で7兆円を超える製品分野へと成長しているという。

凜研究所では様々な抗体医薬を開発中で、そのひとつがタンパク質TMEM180に結合する抗TMEM180抗体という。大腸がん細胞で高発現し、正常な腸管上皮細胞には発現しないTMEM180を標的とするこの抗体を用いて、大腸がんをはじめとする難治性がんの治療を目指しているそうだ。

またこの他にも、近年注目されるがん微小環境を構成する間質(かんしつ)中の不溶性フィブリンタンパク質を標的とした抗不溶性フィブリン抗体に薬物を付加した抗体薬物複合体(ADC。Antibody Drug Conjugate)など、複数の抗体医薬製品群を研究開発中という。

東大IPCは、抗TMEM180抗体がKRAS遺伝子変異を有する大腸がんなど、現時点で治療法に乏しいがんに対する新たな治療オプションを提供する可能性を持っていること、日本のアカデミア発研究シーズの臨床開発を支援することの社会的意義、などの理由から出資を決定したとしている。

協創1号ファンドは、東京大学関連ベンチャーの育成促進と、東京大学を取り巻くベンチャーキャピタル(VC)の質・量の充実を中心に据えて運用を行なうことで、東京大学の周辺に持続可能なイノベーション・エコシステムを構築し、世界のベンチャー創出拠点のひとつとなることに寄与することを目的としている。具体的な運用として、今までに6つのVCへのLP出資(ファンド オブ ファンズ)と、18社の東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行い、現在も積極的に東京大学関連ベンチャーへの直接投資を行っている。

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