Jason Goldbergが次に仕掛けるソーシャル・アプリの「Pepo」がシードラウンドで235万ドルを調達

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人々から注目を浴びた数々のスタートアップ(Fab.comFabulisJobster)の創業、そして、事業の失敗やピボット(HemFab.comFabulisJobster)などで有名なJason Goldbergは、今年初めにPepoを創業してもう一度闘いの舞台に立つことになった。ソーシャル・メッセージングアプリのPepoでは、特定の興味に関する情報を掲載したり、その情報を読んでリアクションを残すことができる。そして今日(現地時間6日)、Pepoはシードラウンドで235万ドルを調達したと発表した。

起業家が一度でも失敗すれば、投資家に必ず悪い印象を残すことになると考えている読者がいれば、Goldbergのストーリーによく耳を傾けてみてほしい。

今回のラウンドに参加した投資家たちは、かつてGoldbergが創業したデザイン・マーケットプレイスのFab.comに、合計で約3億ドルもの資金を出資した者たちだ(Fab.comはその後PCHに投げ売りされることになる)。今回のラウンドでリード投資家を務めたのはTencentで、この他にもGreycroft、Vectr、Correlationなども本ラウンドに参加している。Goldberg自身も今回の出資に加わっている。

かつてFab.comに出資していた投資家や、同社の取締役だった者のなかで、今回のラウンドに参加しているのは、TencentのJames Mitchell、OrienteのGeoff Prentice(前職はAtomico)、Allen Morgan、David Bohnett、Howard Morgan、Nishith Shahなどの投資家たちだ。先週TechCrunchが実施した取材によれば、10名いたFab.comの元取締役のうち7名が今回のラウンドに参加していることになる。

彼らがもう一度Goldbergを支援しようと決断しただけでも驚くべきことだが、実際には、彼らから最初に提示された金額は、最終的に合意に達した金額よりも高かったそうだ。(Pepoのチームメンバーは、かつてGoldbergと共にFab.com、Jobster、Socialmedianなどのスタートアップを運営していた)。

「より大きな金額での出資も提案されましたが、ゆっくりとしたペースで進めていくことにしました」とGoldbergは話す ― 彼が今日登壇していたTechCrunch Disrupt Londonでの会話だ。同社がアプリを最初に公開したのは今年2月で、それ以降の運営資金はGoldberg自身が負担していたという。

なぜ投資家たちは、3億ドルもの資金を燃やし尽くした張本人であるGoldbergにもう一度賭けてみる気になったのだろうか。考えられる理由の1つは、逆境にも負けないGoldbergの精神力だろう。彼は、自分が犯した失敗をとてもフランクに、そしてオープンに語る人物だ。

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また、ソーシャルの要素を加えたデザイン・マーケットプレイスであるFab.comと、(少なくも今は)ソーシャルにEコマースの要素を少し加えたPepoは、まったく異なる分野のプロダクトだということも理由の1つとして考えられるだろう。

そして、少なくとも今のところはPepoが順当な成長を続けているというのが3つ目の理由だ。

Goldbergによれば、同社はマーケティング活動をほとんど行っていないにもかかわらず、「Cooking」カテゴリーでは1万2000ビュー、「food food food」では4000ビュー、「Global Gay Travelers」では1万8000ビューを記録しているという。Pepoを新しく利用するユーザーの50%が、その後毎週Pepoを利用するようになるそうだ。加えて彼は、多くのダウンロード数よりもエンゲージメントの方が重要なのだと語っている(多くの場合、ダウンロード数はユーザーからの興味を継続的に惹きつけていることを表す指標ではない)。

Pepoのコンテンツは数種類のカテゴリーに分けられている。Pepo側が設定したカテゴリーもあれば、ユーザーが作ったカテゴリーもある。

Pepoでは、観光地、ホテルに備え付けのジム(創業者のJason自身が作成)、料理、食べ物関連、ファッション、テクノロジーなど様々なカテゴリーがカバーされている。それぞれのカテゴリー内では、Pinterestのような形で、テーマに関連する写真や動画、リンクなどが流れてくる。ユーザーはアイコンなどを利用してコンテンツに反応したり、質問をすることができる仕組みだ。

アプリの完成度について聞かれれば、「まだアーリーステージの段階だ」と私は答えるだろう:料理カテゴリーを例にすると、アプリには様々なユーザーから投稿された料理の写真が並んでいるが、レシピや作り方についての情報はほとんどない。また、そのような情報をユーザーが簡単に加えられるようなツールも不足している。

このアプリにはPinterest、Facebook、Instagramなどの強力な競合がおり、特定のグループ向けのコミュニケーションツールを構築して失敗した企業もいる(Snapguideの失敗は、そのような例のほんの一部だ)。それについてGoldbergは、Pepoは「自分が情熱を捧げるプロジェクト」なのだと話す。何か新しいことに挑戦するための理由付けは数多くあるが、そのどれにも劣らない強力な理由だ。

Goldbergは技術的な挑戦やチャンスへの対応の仕方に関して、人情味にあふれる意見を持っている。Pepoを創業したきっかけについて聞かれた彼は、自分のお気に入りのスナックを見つけようとインターネットで検索したときの経験がきっかけだったと話す。

「Pepoのアイデアは、私が情熱を捧げるものの1つを追い求めていた時に生まれました。アボカドトーストです」と彼は語る。

「昨年のクリスマス、私は夫と一緒にシドニーに旅行に行きました。その時、私たちはアボカドトーストが食べたくて仕方がありませんでした。Googleで検索してみましたが、そこで見つけたスタティックな情報に私たちは満足することができませんでした。Facebookでも美味しいアボカドトーストを食べられる場所を教えてほしいという投稿をしましたが、投稿はどんどん下に流れていってしまい、情報を知っている人にそのポストがリーチすることはありませんでした。その経験から私が思ったのは、自分たちと同じようにアボカドトーストが大好きな人と即座につながることができ、世界中にいるアボカドトースト愛好者とメッセージのやり取りもできるような場所があるべきだということでした。つまり、自分の友達や、そのまた友達、近くにいる人たち、ユニークなものに対する情熱や専門知識を持つ人たちなどと、即座につながることができ、情報が消えることがなく、いつでも検索可能なメッセージング・プラットフォームです。そのようなサービスにおいて、美味しいアボカドトーストを探すことは、無数に存在する使い方の1つでしかないのです」。

今後、無料アプリのPepoはスポンサーチャンネルを開設したり、「ネイティブ広告」などを利用したマネタイズ方法を検討していく。Pepoのスポンサーチャンネルを開設するため、Goldbergは様々なブランドと話を進めている最中であり(ブランド名は明かさなかった)、これが実現すればPepoのコンテンツ強化につながるだろう。また、Pinterestなどと同様に、ブランドにモバイルメディアへ露出する機会を提供することにもなる。

Goldbergが好んで話に取り上げるのが、Twitterの共同創業者がローンチしたMediumだ。「Mediumはパブリッシャーやライターたちにフォーカスしており、それが上手くいっているおかげで、パブリッシング分野においてはFacebookなどの動向を気にする必要がありません」と彼は話す。「私たちは、ユーザーが特定の分野に関わるコンテンツを書いたり、写真を投稿したりすることができるベストな場所を提供していきます。特定の話題について話したり、ユーザーが情熱を捧げるものについて話しあったりする際に、ユーザーから最も選ばれるプラットフォームになりたいと思っています」。

彼がDisrupt Londonに登壇したときの様子は、この動画で観ることができる:

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

BenevolentBioの人工知能はALSのもっと良い治療法を見つけるかもしれない、新薬開発よりもデータの発掘で

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あの、バケツ一杯の氷水を頭から浴びるキャンペーンで大きく知名度を上げた麻痺性の神経症状、 筋萎縮性側索硬化症(amyotrophic lateral sclerosis, ALS)の治療に有効な薬が、すでに存在しているとしたら、どうだろう?

それが、BenevolentBioのCEO Jackie Hunterが直面している疑問だ。Hunterは人工知能企業BenevolentAIの生物医学部門を任され、医学研究の膨大なデータベースに機械学習を適用して、データを高速にスキャンし組織化しようとしている。過去の科学研究を掘り返して新たな発見にたどり着くことなど、ありえないように思えるが、しかし生命科学の分野では新しい研究が30秒に一本の割合で公開されており、そのあまりにもの多さのゆえに、価値ある研究が見過ごされることも少なくない。

Hunterは今日(米国時間12/6)の本誌TechCrunch主催Disrupt Londonのステージで、BenevolentBioのAIがすでに成功している、と語った。BenevolentBioのAIは、ALS治療に関する未知の情報があるかもしれない研究を探しだす。“最終的に5種類の化合物をテスト対象として選定した”、とHunterは説明した。BenevolentBioはその5種類の化合物を、ALSの患者の細胞からクローンした細胞に対してテストした。

“ある化合物は、だめだった。二つは効果があり、それらはALS治療の基準としては最高の水準だった。そして他の二つはさらに良好で、これまでの研究の中では最良だった。5つの化合物のうち4つは、これまでの研究者たちがまったく見ようとしなかった化合物だった”、とHunterは語る。

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BenevolentBioがテストした薬はすでに開発が始まっているので、実際に患者に対して使えるようになるのは一般の新薬より相当早いと期待される。

“私も前は製薬業界にいたが、そのR&Dのやり方は数十年前からまったく変わっていない。ひとつの新薬の開発に、20億ドルの費用を要している”、とHunterは述べる。薬の開発者たちがAIを利用すると、既存の薬の別の用途を見つけることができるので、新薬に膨大な投資をするよりも効率的である。またAIは、研究者たちにより早く、もっとも有望な発見の方向性を示すことができる。

しかしながらAIは、それ自身で新しい科学的突破口に到達することはできない。Hunterは、そう主張する。データをチェックするためには依然として、経験豊富な人間科学者が必要である。“しかしAIは科学者たちの〔発想の方向性の〕健康診断ができる。AIは科学者を補助しその能力を拡張するが、科学者をリプレースすることはない”、と彼女は語る。

BenevolentBioはそのAIをさらに拡張して、親会社を介して他の分野にも応用したい、と期待している。Hunterによると同社の技術は、コンピューティングのパワーとデータ分析と、インサイトと、そして需要の理想的な組み合わせであり、“イノベーションのパーフェクトな波を作り出して、本当にこの業界を変えてしまう、と私は思っている”。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

TechCrunch Disrup Londonの最優秀スタートアップはSeenit―ユーザー参加でプロ級ビデオを作るツール

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当初14チームが参加したDisrupt Londonのスタートアップのバトルは、2日にわたる激しい競争の末、ついに最優秀賞が決まった。

Startup Battlefieldの参加者はすべて高い倍率の選考を経たチームばかりだ。 それぞれのチームはベンチャーキャピタリストを始めテクノロジー界のリーダーからなる審査員とオーディエンスの前でプレゼンを行い、4万ポンドの賞金と名誉のDisrupt Cupを争った。

審査員による数時間の議論の後、TechCrunch編集部ではファイナリストをInsideDNALiftIgniterOxehealthPhenixP2PSeenitの6チームに絞った。

ファイナリストのプレゼンの審査にあたったのは次の顔ぶれだ。Barbara Belvisi(Hardware Club)、Luciana Lixandru(Accel) Sean O’Sullivan(SOSV)、 Matthew Panzarino (TechCrunch編集長)、Francesca Warner(Downing Ventures)。

次回、ニューヨークでの開催が近づいているDisruptのStartup BattlefieldについてはStartup Battlefield hubのページをご覧いただきたい。問い合わせや応募は メールでBattlefield EditorのSam O’Keefe(sam@techcrunch.com)まで。

ではTechCrunch Disrupt London 2016の最優秀賞のプレゼンをどうぞ。

最優秀賞: Seenit

Seenitはイベントの主催者やブランドが参加者やファンを組織してプロ級のビデオ・クリップをを製作できるようにするツールだ。Seenitのユーザーはそうしたファンを選んで招待し、ビデオ製作のためのグループを組織することができる。メンバーはSeenitアプリを利用してモバイルでバイスからビデオを撮影してアップロードすることができる。

Seenitについてのさらに詳しい記事はこちら

次点:InsideDNA

InsideDNAは機械学習を応用した大量のDNA情報の解析テクノロジーで、製薬会社のチームが個人向けにカスタマイズされた薬品のデザイんとテストを行うのを助けることを目的としている。

InsideDNAについての記事

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

仕事のデータを一瞬にしてモバイルアプリに換えて、コラボレーションを効率化するサービスOpen As App

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クラウドコンピューティングによって同僚たちとのコラボレーションはかつてなく容易になったが、でも出先にいる人たちも含めると、必ずしも生産性が上がったとは言いがたい。Open As Appは、この状態〔モバイルからのクラウド利用が遅れている状態〕を変えようとする。

今日(米国時間12/5)のTC Disrupt LondonのStartup Battlefieldに登場したOpen As App offersは、データを即座にアプリに変えてしまうサービスだ。

ExcelのスプレッドシートやGoogle Docs/Sheetsをアップロードすると、Open As Appがそれらを自動的に、複数のプラットホーム(iOS, Android, Windows Phone, Windows 10, web)向けのコンテンナ・アプリにする。

またスプレッドシートのファンクションなど、データではなくアクションの部分も、データからアプリに変換されたコードが実行できる。それらは、電話の呼び出し、ナビゲーション、さまざまな基準によるフィルタリング、詳細ダイアログ、BIのインサイトなどだ。

Open As Appによってアプリに変換されたデータは、保存、シンク、そして対話が可能だ。たとえば、特定の価格帯の商品を検索したり、割引額を計算するなどが、Open As Appのアプリの中でできる。

サービスの料金は、月額会費制だ。ただし5人ぐらいのチームによる短期の試用は、無料だ。プランは、最低がBusiness Pro(25名まで)の月額79ドル、最高のBusiness Enterpriseは月額1499ドルで、使用する社員は1000名まで。また、たとえば100名の社員が使うのなら、 Business Proが4つ、という計算になる。

Open As Appはこれまで95万ユーロを、主にドイツのエンジェル集団Impact51から調達している。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

The Emotion Journalは日々の出来事から、ユーザーの感情をリアルタイムで分析する

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サンフランシスコに住むアプリ開発者のAndrew Greensteinは、数カ月前から日記をつけ始めていた。毎日5分間、日記をつけることを習慣づけようとしたが、そのための時間を割くのは難しかった。それでも彼は日記をつけることがストレスを発散することにつながり、目標を達成する手助けとなると書かれた本を信じ、これを習慣づけようと努力している。

Greensteinは彼のチームメイトと共に、Disrupt London HackathonでThe Emotion Journalを開発した。ユーザーの感情をリアルタイムで分析し、その分析結果を時系列で表示するボイス日記だ。(ここで、ちょっとした注意事項:The Emotion JournalのWebサイトを訪れてみると、セキュリティ警告が表示されるだろう。その理由は、このWebサイトはhttpsコネクションを利用しているが、彼らはまだhttps証明書の支払いを終えていないからだ)

Greensteinは日中の間、デジタル広告代理店のSF AppWorksのCEOとして働いている。しかし、彼と共同創業者のDarius Zagareanは最近になって人工知能に夢中になり、その技術をメンタルヘルスの分野に応用できないかと考えていた。

「今後もこの分野に取り組んでいきたいと思います。なぜなら、人間とコンピューターをつなげるこの分野は、私にとって非常に魅力的なものだからです」とGreensteinは話す。

AIをメンタルヘルス分野に応用するというアイデアが最初に生まれたのは、AppWorks内部で開催したハッカソンでのことだ。そのハッカソンに出場したあるチームが、不安を生じさせる状況を人工的につくりだすアプリを開発し、そのような状況に対するユーザーの反応を向上させるという試みをしたことがきっかけだ。「できるだけAIの技術を身につけておきたいと思っていました。この世界が向かう方向が、AIに向いていることは明らかだからです。感情というファクターをもつこのアプリは、私の心を鷲掴みにしました」とGreensteinは説明する。

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人工知能と感情の交わりを探求していこうと決心した彼は、リアルタイムの感情分析のためにIBM Watsonを利用したThe Emotion JournalをLondon Hackathonの舞台で創りあげた。ユーザーが1日の出来事をThe Emotion Journalに話しかけると、ユーザーの感情に合わせて画面の色が変化する。

The Emotion Journalはその感情の色を時系列で記録する。そのため、ユーザーは自分の感情を分析したサマリーをひと目で確認することができる。「索引可能で、検索可能な日記の必要性について頻繁に話し合ってきました。私たちは過去の出来事から何かを学ぶことができるかもしれないのです」とGreensteinは話す。

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AIと日記を融合することにより、ユーザーに彼らのメンタルヘルスについて多くを教えるThe Emotion Journalだが、このアプリケーションが利用できる期間は限られているかもしれない — Greensteinは、このプロジェクトをデモ版のままにしておくことを望んでいる。だから、このプロジェクトを利用できる今のうちに、ぜひチェックしてもらいたい。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter

Disrupt London 2016ハッカソンの優勝はボイス日記のEmotion Journal

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ロンドンにあるCopper Box Arenaでの夜は長かった。このアリーナは、数年前に開催されたロンドンオリンピックではハンドボールの試合が行なわれた場所だ。しかし、今週末にこの場所で開催された試合は、それとはまったく種類が異なるものだった。Disrupt Londonのハッカソンだ。

私たちのハッカソンに初めて参加する者もいれば、毎年のように参加しているハッカーたちもいる。彼らに与えられた課題は、素晴らしくて面白く、それでいてスマートなハックを24時間以内に完成させることだ。

本ハッカソンに参加した63チームが1分間のデモを他のハッカーと審査員に発表する場面では、そこにいた皆が興奮を覚えたことだろう。だが、このハッカソンで優勝して4000ポンドの賞金を勝ち取ることができるのは、その中でたったの1チームのみだ。前置きはこれくらいにして、Disrupt London 2016のハッカソンで受賞を果たしたチームを早速紹介しよう。

優勝:The Emotional Journal

日記をつけるという行為は、毎日欠かさずに行えばストレスの解消に効果があり、自分の目標の達成に役立つことが証明されている。しかし、ほとんどの人にとって、書くことは話すことよりも難しい。そこでこのチームは、IBM Watsonを利用してスマートなボイス日記を創り上げた。ユーザーがこの日記に話しかければ、システムが自動でユーザーの感情を分析し、その結果を保存していく。毎日この日記に話しかければ、ユーザーは自分の感情や体験が時系列にまとめられた分析結果を目で確かめることができる。人工知能を利用して人間のメンタルヘルスを向上するというアイデアは、とても素晴らしい。

TechCrunchライターのKate Congerは、このプロジェクトを紹介した記事をすでに発表している。それくらいクールなプロジェクトだったのだ。

第2位:Sayfe Space

難民はさまざまな悩みを抱えており、それが精神的な問題を引き起こしている。友人や家族からのサポートや、メンタルヘルスの専門家からのサポートが無ければ、その悩みを解決することは難しい。Sayfe Spaceが提供するプラットフォームでは、難民が自分の悩みを自然な形で打ち明けることができる。彼らが置かれた状況に共感し、彼らをサポートしたいと願うボランティアが、匿名性のチャットを通して難民が抱える悩みを解決するという試みだ。このチームもIBM Watsonを利用して自然言語処理を行い、チャットボットとの交流体験を向上させている。

第3位:DoshBot

DoshBotはユーザーの資金管理を助けるAIアシスタントだ。このボットはユーザーの銀行取引に関するデータと位置情報を取得し、それをTwitterやFacebookなどのSNSから得た、ユーザーの感情データと融合する。

[原文]

(翻訳: 木村 拓哉 /Website /Facebook /Twitter)

TC Disrupt London―DeepMindのMustafa Suleyman、汎用人工知能は「遠い先の話」

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Googleが 2014年に買収したApplied AIの共同ファウンダーであり、現在DeepMindの責任者を務めるMustafa Suleymanは今日(米国時間12/5)、ロンドンで開催中のTechCrunchカンファレンス、Disrupt Londonに登壇し、スペシャルプロジェクト編集長のJordan Crookのインタビューを受けた。Applied AIという会社、DeepMindのGoogle内での役割、AIの未来などがテーマだった。

SuleymanによればDeepMindの目標は「知性を解明し世界をもっと良い場所にする」ことだという。われわれ人間の知性とまったく同様に作動するシステムを創ることがDeepMindの目標だという。「われわれは複雑な社会的課題の多くはますます解決が困難になるだろうという予測の下に会社を創立した」。この複雑な課題とはたとえば、気候変動や食料問題だという。

しかしSuleymanは汎用学習システムの実現は「数十年も先」だと考えている。「科学者が何かの実現が20年先だとか、もっと先だとか言うとき、実はあまりに遠い先なので時期を正確に予測することはできないという意味だ。当面われわれは個別の問題の解決に集中する」とSuleymanは述べた。

これに関連してSuleymanはまた「映画で見るような人間そっくりのAIはわれわれが研究しており、おそらく数十年後に実現するであろう汎用AIとはほとんど類似点がないだろうという。

またJordan CrookはSuleymanに機械学習に関する重要な点について訊ねた。「機械学習アルゴリズムはわれわれ人間の知性の欠陥もそのまま受け継いでしまうのだろうか?」とCrookは尋ねた。Suleymanは「この点についての私は、われわれの判断は偏見も含めてコンピューター・システムに組み込まれてしまうよう運命づけられていると考えている」と答えた。「デザイナーとしてまたエンジニアとして、こうした問題を意識的に考える努力をしないなら、われわれはそれと気づかぬまま偏見を含めたシステムを構築してしまうだろう」という。

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DeepMindとGoogleの関係についてSuleymanはあまり具体的なことを明かすのを好まないようだった。「われわれが人工知能のスタートアップとして成功を収めた理由の一つはロンドンに本拠を置いており、シリコンバレーとその流儀からかなり離れていたこともある」と述べたが、つまり組織上親会社になる組織に対して細かいことを話したくないという意味に受け取れた。とはいえ、Suleymanは「Googleのおかげで買収された後は各種のコンピューター資源を潤沢に使えるようになったという。また「〔Googleによる買収後も〕独立の組織として運営することができ、従来通り研究が続けらたのははわれわれにとって非常に大きな意味があった」という。

もうひとつの話題はDeepMindのヘルス関連事業についてだった。DeepMindはイギリスの 国民保険サービス(NHS)と協力して急性腎臓障害の早期発見に関する研究を行っている。一部ではNHSとDeepMindの協力範囲は公表されている部分よりずっと広いはずだという批判も聞かれている。またMoorfields眼科病院と協力して病院における眼底検査のアルゴリズムを改良して高速化と診断精度の改良を図っている。NHSのプロジェクトでは、診断に関しては主としてNHSが開発したアルゴリズムが用いられ、DeepMindは主としてフロントエンド・アプリの開発を担当している。Suleymanはこの点について「NHSとの協力プロジェクトは歴史が新しい。12ヶ月前に始まったばかりだ」と説明した。

DeepMindとGoogleの関係は個人情報の取扱に関してユーザーからの疑念を招くおそれがあるのではないかとCrookは質問した。Suleymanは「われわれのシステムはデータのコントロール権限について明確な基準を定めており、このプロジェクトの場合、データの所有権は完全に病院側にある」と述べた。またDeepMindは可能な限りの透明性を目標としており、第三者の監査を受けていることを強調した。DeepMindはまた「透明性確保のための汎用アーキテクチャー」を開発中で、これによればデータがアクセスされた場合、アクセス元など詳細なログが記録されるようになるという。

今日、こうした議論に加えてDeepMindはステージでDeepMind Labを発表した。 これはゲーム的な3Dプラットフォームで、エージェントによるAI研究に役立てられる。DeepMindでは社内ですでにこのシステムを利用していたが、今回オープンソースで公開された。すべてのAI研究者、開発者がこのプラットフォームを利用することができる。ソースコードとゲームのプレイに必要な多数の付属マップは数日中にGitHubにアップロードされる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

My Brick Onlineは、レゴにスマートフォンを載せて新しい楽しみのを生みだす

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レゴ!レゴ!レゴ! レゴが嫌いな人などいるだろか? TechCrunch Disrupt Londonのハッカソンの中でも注目を浴びたこのエントリーは、スマートフォンを利用してあの愛しのレゴブロックをもっと楽しくする。

My Bricks Onlineを使えば、子供が ― 大人も ― スマートフォンを使って作品に音楽やサウンドを加えられる。子供たちにiPadを横に置いて昔ながらのおもちゃで遊ぶ強い理由を与えよう、というアイデアだが、皮肉にもスマートフォンを利用する。

Filip DenkerとPeter Pappから成るチームは、昨年のイベントでSuonoScopeを作り、Fooropaというスタートアップを運営している。今回のデモには車を使っている。サウンドと相性がよく、作るのが簡単で、子供たちの人気者だからだ。ただしこのプロジェクトはどんなタイプのレゴでも使える、とふたりは説明している。

Pappは、メカで遊べるレゴテクニックは高価で、買える場所も限られているので、My Bricks Onlineは普通のスマートフォンを使ってもっと利用しやすくしたと話した。

このしくみを実現するために、ふたりはPubNubのAPIを使い、端末のカメラに映った色に応じてアクションの引き金を引く ― つまりサービスの色によって異なる音を出す ― HTMLページにはチームが作ったレーストラックのラップタイムが表示される。家にスマート電球があれば、IFTTTのアクションを使って点灯させることもできる。

というわけで、これはテクノロジーが古いオモチャに新たな命を吹き込むことの証だ。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook