DeepMindのAgent57 AIエージェントがATARIの57本のゲームで人間に勝利

人工知能エージェントの開発現場では、その能力をゲームで測ることがよくあるが、それには相応の理由がある。ゲームは幅広い習熟曲線を提示してくれるのだ。ゲームは、基本的な遊び方は比較的すぐに習得できるが、マスターするのは難しい。しかも、通常は得点システムが備わっているため、習熟度を評価しやすい。DeepMind(ディープマインド)のエージェントは囲碁に挑戦し、リアルタイムの戦略ビデオゲーム「StarCraft」(スタークラフト)にも挑戦した。だが、このAlphabet(アルファベット)傘下の企業の最新の偉業はAgent57だ。Atari(アタリ)の57本のゲームすべてにおいて、さまざまな難易度、特性、プレイスタイルで標準的な人間を負かすことができる

57本のAtariゲームで人間に勝るとは言え、使用するゲームによって深層学習エージェントの能力測定の基準が偏りそうな気がするが、これは2012年から採用されている標準的な測定法だ。使用されるAtariのクラシックゲームには、Pitfall(ピットフォール)、Solaris(ソラリス)、Montezuma’s Revenge(モンテズマズ・リベンジ)などが含まれる。これらをまとめて使うことで、難易度のレベルが大きく広がり、勝つために数多くの戦略を考える必要が生じる。

1つのゲームをプレイするごとに勝利確率を最大化していく効率的な戦略などを導き出すことが目的ではないため、これは深層学習エージェントの構築には非常に適した課題となる。つまり、こうしたエージェントの開発と、このような課題を与えたそもそもの目的は、種々雑多な、そして常に変化するシナリオや条件から学習できるAIを生み出すことにある。長期的に目指すのは、これまで遭遇したこともない目の前の問題に知性で対処できる、より人間に近い存在である汎用AIにつながるエージェントの構築だ。

DeepMindのAgent57は、Atari57セットの57本のゲームのすべてで人間に勝る能力を示した点で注目に値する。これまでのエージェントは、平均して人間よりも優れているに過ぎなかった。それは、行動と報酬の単純なループで上達できる同タイプのゲームを大変に得意とするものの、Montezuma’s Revengeのような長期の探検と記憶を要する高度なゲームではまったく振るわないためだ。

DeepMindチームは、問題の各側面ごとに個別のコンピューターが取り組むという分散型エージェントを構築し、それに対処した。一部のコンピューターは、新しい報酬(それまで出会ったことがないもの)に注目するように調整し、目新しさの価値がリセットされる時期を、長期と短期の2種類設定した。その他のコンピューターは、どの反復パターンがいちばん大きな報酬を与えてくれるかを基準によりシンプルな報酬を探し出す。これらすべての結果を総合し、与えられたゲームごとに異なるアプローチにおいてコストと利益のバランスを調子するメタコントローラーを備えたエージェントが管理を行う。

そうしてAgent57は目標を達成したわけだが、いくつか別の新しい方法による改善も可能だとチームは言う。1つ目は、演算量がきわめて膨大であるという問題がある。チームは、今後、無駄を省く方法を探る。2つ目は、簡単なゲームでは、もっとシンプルなエージェントに劣ることがあるという問題だ。それでも、従来の知的エージェントに対して上位5つのゲームで勝利している。チームは、他のそれほど高度でもないエージェントに負けてしまう単純なゲームでの能力を、さらに高める策はあると話している。

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(翻訳:金井哲夫)

古代ギリシアの石板の解読をAIが助ける

機械学習とAIは、太陽系外惑星を見つけたり、写真のように本人そっくりの人間の画像を作ったりといった派手な業績が強調されがちだが、でも同じ技術が学術研究の意外なところでも利用されている。DeepMindが作ったAI systemは、壊れた石板の上に彫られている古代ギリシアの断片的なテキストを再現し、学者たちが理解できるようにした。

これらの粘土や石や金属に文字が彫られたのはおよそ2700年前で、今では歴史学や文学、人類学などにとって貴重な一次史料だ。板は当然文字で覆われているが、何千年という時間によって、割れたりひびが入ったりしているだけでなく、破片の一部がなくなっていることもある。

そのような欠落は、容易に補完できることもある。例えば「sp_der caught the fl_」と書いてあったら、誰でもそれが「spider caught the fly」(蜘蛛が蠅を捕らえた)だとわかるだろう。でも、なくなっている文字がもっと多くて、しかも古代の言語だったらどうか。欠落を補完するのは容易でない。

それをやる科学とアートを金石学(Epigraphy、碑文研究)と呼び、その言語に対する直観的な理解力によって文脈を捉える。つまり、残っている文字やテキストを手がかりにして、何が書かれていたかを推測する。でもそれは骨の折れる難しい仕事だ。その仕事は、大学院生たちがやらされることが多い。かわいそうに。

今回彼らを助けてくれたのが、DeepMindの研究者たちが作った Pythia(ピューティアー)というシステムだ。それは、デルファイの神託に従って太陽神アポロの言葉を人びとのために翻訳したとされる、女性神官の名前だ。

チームは最初、古代ギリシア語の碑文の世界最大のコレクションを、機械学習のシステムが理解できるテキストに変換するパイプラインを作るという前例のない困難な作業に取り組んだ。それができればあとは、文字の並びを正確に推測するアルゴリズムを作るだけだ。上であなたが、蜘蛛(Spider)と蠅(Fly)を推測したように。

院生たちがやる場合と同じくPythiaにも、本物のテキストを一部意図的に削ったものが渡される。学生たちは約57%の精度でテキストを正しく推測する。1つの断片に対して何度も繰り返す時間のかかる作業だが57%は悪くない。これに対しPythiaの正解率は30%だった。

ただしPythiaの場合は、近似度が高い上位20の答の中に正解がある率が73%だった。それほどすごいとは言えない成績だが、20の答の中に正解が必ずあることは人間がやっても難しい。

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Pythiaのシステムは、その仕事を完全に自分だけでやるわけではない。また、その必要もない。それは、人間がやったことを手がかりにする。そしてそれらに基づいて、石板の欠落部分を推測するための訓練を行う。つまり人間をリプレースするのではなく、人間の能力を補強する。

Pythiaの答は、最初は正しくないことが多い。でもそれは、難しい欠落と悪戦苦闘している人間にいいヒントや手がかりを与える。人間の認知労働力を軽減することによってそれは、テキスト復元努力のスピードと精度を上げるだろう。

Pythiaを記述している研究論文はここで読める。彼らが作ったソフトウェアの一部は、GitHubのリポジトリにある。

画像クレジット: DEA/ARCHIVIO J. LANGE/Contributor/Getty Images

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

ダーウィンの進化論に倣って自動運転車のAIを訓練するWaymoとDeepMind

Alphabet傘下で自動運転とロボタクシーの会社であるWaymoは、自動運転車のソフトウェアを強化するために人工知能を改良し、進化させるための訓練に力を入れている。最近同社は、やはりAlphabet傘下でAIを専門とするDeepMindと協力して、新たな訓練方法を開発した。質の高い訓練を効率的にできるようにすることを目指したもの。

両社が協力して開発した訓練方法は、Population Based Training(PBT、集団に基づく訓練)と呼ばれている。これは、より良い仮想ドライバーを育成するというWaymoの課題に対応するために考えられた方法で、その成果は印象的なものとなった。DeepMindがブログ記事で明らかにしたところによれば、PBTはWaymo車両が搭載する多くのセンサーによって発見された歩行者、自転車、バイクを認識して、それらの周囲に箱を描くニューラルネットワークで、誤認識が24%も減少したという。そのうえ、訓練に必要な時間とリソースの両方を削減することもできた。Waymoがこれまで採用していた標準的な方法に比べて、いずれもほぼ半減することができたという。

ちょっと戻ってPBTとは何かについて見てみよう。これは基本的に、ダーウィンが唱えた進化の仕組みからヒントを得た訓練方法だ。基本的にニューラルネットは、何かを試してみて、その結果を何らかの標準に対して評価し、その試みが期待した成果に比べて、より「正しい」か、より「間違っている」かを確認する。Waymoが使用していた訓練方法では、同じタスクに対して独立して動作する複数のニューラルネットを走らせていた。それらは、いわゆる「学習率」が異なるように設定されていた。言い換えれば1つのタスク、例えば画像の中の物体を認識するようなタスクを試みる際に、毎回アプローチに変化をつけられるようにしていた。学習率が高いほど、結果の質の変化も激しい。かなり良い結果が出ることもあれば、ものすごく悪い結果となることもある。一方、学習率が低いと進歩は緩やかとなる。急激に改善されたりする可能性は低いのだ。

このような比較による訓練は膨大なリソースを必要とし、どれが正しい答えを出したかということを判断するためには、担当エンジニアの直感に頼る必要があった。またエンジニアは、ダメなニューラルネットを「間引き」して、より良い結果を出すニューラルネットに処理能力を割り振るために、関連するコンポーネントを大規模に手動で検索する必要もあり、非常に労力がかかるものだった。

DeepMindとWaymoが、この実験によって試したのは、基本的にその間引きのプロセスを自動化すること。つまり、成果の上がらない訓練を自動的に切り上げて、そのタスクに対して最高の成果を発揮したニューラルネットから派生した、より見込みのあるものに置き換える。そこが、進化の過程に似ているというわけだ。いわば、人工的に「自然淘汰」を起こさせる。それこそが、この方法のキモとなる部分だ。

この方法に潜む落とし穴を回避するために、DeepMindは予備的な研究の後で、やり方を少し修正した。たとえば、モデルの評価を高速化し、15分間隔とした。また、確固とした評価基準とサンプルセットを作成し、テストによって現実の世界でも良好な性能を示すニューラルネットが生成できるようにした。訓練のために与えられた特定のデータに対してだけ、良好なパターン認識エンジンとして機能するようなものではない。

最後に両社は、一種の「孤立集団」によるアプローチも開拓した。限定されたグループの中でだけ、互いに競い合うニューラルネットの亜母集団を作ったのだ。つまり、島に取り残されたりして、大きなグループから切り離された動物の集団のようなものだ。大陸にいる親類と比べて、異なる特徴を発達させ、時にはよりうまく適応した特性を示すこともある。

すでに私たちの日常生活に組み込まれている技術に対して、深層学習と人工知能が実際にどのような影響を与え、さらに人間の生活に食い込んでくるのか。見ているだけでも、極めて興味深い。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

Google、データセンターの空調管理をAIに一任

データセンターの中は暑くてうるさい——そしてサーバーをオーバーヒートから守ることは運用コストの大きな部分を占めている。業界の大物、Facebook、Microsoft、Googleらがさまざまな方法で冷却コストの節減を目指しているのも当然だ。Facebookは可能な限り外部の空気を冷やす。Microsoftは水中データセンターを実験中。そしてGoogleは、同社のAIモデルを使っていっそうの節約を目論んでいる。

数年前、Googleは傘下のDeepMindを通じて、データセンターに最適な冷却方法を運用者に提供するために、機械学習の利用を探ってきた。しかし、当時はまだシステムは推奨するだけで実施するかどうかは人間のオペレーターが判断していた。今後その人たちは、午後の昼寝時間を長くとれるようになる。モデルが十分に進歩した結果、AIを備えたシステムに冷却システムの制御を任せられるとチームが判断したからだ。もちろん、オペレーターは今も介入できるが、AIが中止の決定をくださない限り、システムは無人運転を続ける。

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新しい冷却システムは現在複数のGoogleデータセンターに設置されている。5分毎に、システムがデータセンター内の数千個のセンサーから値を取得しその情報を元に最適な行動を選択する。もちろん、そこには様々な抑制と均衡が働いているので、Googleのデータセンターがこのために崩壊する可能性は低い。

多くの機械学習モデルと同じく、システムはデータを収集すればするほど賢くなる。現在、これまでのデータセンターのエネルギー利用と比べて平均30%のエネルギー節約を実現している。

ひとつ指摘しておくべきなのは、Googleはわずかな節約のためだけなく、これを自社の機械学習サービスの宣伝のひとつと考えていることだ。つまるところデータセンターでうまくいくなら、大きなオフィスビルディングにも適用できるはずだ。「長期的には、このテクノロジーをほかの環境にも適用し、より大規模な空調にも役立てる可能性があると考えている」、とDeepMind今日の発表文に書いている。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Facebookのオープンソースの囲碁ボットはプロの棋士に勝つ

碁(囲碁)は機械学習の研究者の必須科目だ。GoogleのDeepMindはそのアルゴリズムを魅せつけて有名になり、そしてFacebookも最近、碁ボットを自分で作っていることを発表した。同社のデベロッパーカンファレンスF8で今日(米国時間5/2)行われたそのELF OpenGoボットの発表では、30名の人間棋士との計14試合に全勝し、プロの資格を獲得した、と宣言された。

FacebookのCTO Mike Schroepferはこう述べた: “DeepMindにいるお友だちの偉業には敬服するけど、でも、まだ答えられていない疑問があるのではないだろうか? これらのツールは、ほかにどんなことに利用できるのか?”。Facebookが今日のブログ記事で言っているのは、DeepMindのモデル本体は不透明な包装紙に包まれたままだ、ということ。対照的にFacebookは、そのボットをオープンソースにした

“これを再現可能にしてしかも世界中のAI研究者が利用できるようにするために、われわれはオープンソースの碁ボットを作り、ELF OpenGoと名付けた。これなら、DeepMindのAlphaGoが答えなかった重要な疑問にも十分、答えることができるだろう”、とチームは主張している。

チームが関心を持っているのは、碁だけではない。FacebookのAI研究グループは、StarCraftボットも作って、あのゲームの混沌とした世界にプレーヤーが対応できるようにした。これも、オープンソースにする予定だ。Facebookはまだ、訓練量が十分ならどんなゲームでも学習できるボットをローンチできるところまでは行ってないが、でもチームはそれに向かって相当前進していることは確かだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

Google親会社のAlphabet、持株会社「XXVI」を設立して2015年の企業再編成を完了

かつてGoogleとして知られた会社 ―― 2015年に「会社の集合体」をAlphabetに再ブランドし、主要な広告収益事業を親会社が100%保有する企業ユニットに移行した ―― がこの事業再編成プロセスをようやく完了すべく、新たな持株会社、XXVI Holdings Inc.を設立した。

BloombergがFCC提出資料を発見し、金曜日(米国時間9/1)に報じた。

同社は声明でこの事実を正式に認め、2015年にAlphabet設立の際に発表した変更を実施するために、組織変更を行った。Google Inc.をGoogle LLCに変更し、Alphabet配下の新たな中間持ち持株会社 としてXXVI Holdings Inc.を設立する」と本誌に語った。

この新持株会社 ―― 命名は典型的なGoogle流で、アルファベットの文字数に由来する (ローマ字表記)―― の設立によってAlphabetは、Googleを今も法的にはGoogleの子会社である、2016年にスピンアウトさせた独立運営部門(たとえば、Uberと法廷闘争中のWaymo)や、 2014年にGoogleが買収したAI部門、DeepMindなどの部門からようやく切り離すことができる。

新持株会社はAlphabet傘下各社の株を保有する。Bloombergによると、これで今も法的にはGoogle傘下にある、いわゆる「その他」の子会社らをAlphabetに移すことが可能になる。その結果、どの会社もGoogleと同じ法的基盤に置かれる。

さらにGoogleは、corporation(株式会社)からLLC(有限責任会社)に形態を切り替えることで、各ビジネスユニットが親会社Alphabetの下で法的に別の事業単位であるという新体制の実態を反映した。

FCC提出資料には、「企業再編成の結果、AlphabetとGoogleはこれまで以上に効率よく、経済的、かつ透明性の高い運用が可能になり、各社は収益活動に専念できる」と書いてある。

Alphabetは再編成によって同社自身とGoogleの運営に関する透明性が高まると主張しているが、Googleの運営については必ずしもそうとは言えない。Bloombergが指摘するように、新体制は、Alphabetの収益源であり今や株主が単一(Alphabet)となり財務状況を公開する義務のなくなったGoogleにベールをかけることになる。従来、Googleは公開企業として財務状況を投資家に開示することが求められていた。

Alphabetの広報担当者は、この再編は法的形式のためと説明しており、最終的に株主によるコントロールや運営、従業員の管理に影響はないと言っている。

Alphabetの再編成は数年前から準備されており、法務部門が著しく複雑な状況(税法上の問題など)に対処する時間が必要だったことを踏まえると、このタイミングが最近の出来事に関係があるとは考えにくい。しかし、このところGoogleに規制の圧力がかかっていることは注目に値する。6月に欧州連合競争法の違反が発覚し、Googleは27億ドルの罰金を支払った。

欧州委員会は反トラスト捜査案件がまだ2件進行中であり、Google事業のほかの部分に関わる訴状を確認していることを示唆している。

最近Alphabet傘下の部門に影響を与えた行政審判は、同社のAIユニット、DeepMindが対象だった。7月に ―― 法的にはまだGoogleの子会社だった時期 ―― 英国のデータ保護監視当局(NHS)は、DeepMindがロンドン国民保険サービスと結んだデータ共有契約が、患者160万人分の医療記録を本人の合意なく共有するものだとして、英国プライバシー法違反と裁定した。

DeepMindがNHSと結んだ当初のデータ共有契約は、患者の個人を特定可能な医療記録の利用を可能にするもので、頑強な法的保護がなされていないことを問題視されていたが、繊細なデータが渡される部門の親会社が、広告の巨人Googleであるという事実から、批判の声が高まっていた。DeepMindがGoogleの広告ビジネスから法的に分離されることで、DeepMindが計画している同様のデータ共有契約 ―― 社内の健康部門経由 ―― に関する懸念が和らぐ可能性はある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

BlizzardとDeepMindがStarCraft IIをAI研究室として開放

StarCraft IIはここのところAlphabetのDeepMind AI研究のターゲットとなっていた。英国のAI企業(DeepMind)は、昨年からBlizzardのこのSF戦略ゲームに参加し、ゲームに基づいたオープンなAI研究環境を構築する計画を発表していた。この環境を用いて、誰もが世界のトップStarCraftプレイヤーに打ち勝つことのできるような、仮想エージェントの構築に参入することができるようにするためだ。そして今回、DeepMindとBlizzardは、その扉を環境に対して開いた。機械学習API、大規模なゲームリプレイデータセット、DeepMindのためのオープンソースのツールセットなどの新しいツールが提供される。

今回のStarCraft II APIのBlizzard側の新しいリリースには、クラウドの中で実行できるように作られたLinuxのパッケージだけではなく、WindowsとMacへのサポートも含まれている。それにはオフラインでのAI同士の対戦サポートも含まれ、さらにエージェントを教育するために匿名化された実際の人間によるゲームのリプレイデータも含まれている。これはまずは6万5000の完全なマッチデータから始まり、次の数週間のうちには50万以上になる予定だ。

StarCraft IIは基本的にAIの研究にとって非常に有用な環境だ、なぜなら、ゲームは複雑で多様であり、個別のマッチの勝利のために複数の道筋があるからだ。プレイヤーはまた、資源の管理や生成だけでなく、軍隊への指揮、守りを固める構造物の配備など、さまざまなことを同時に行う必要がある。さらに、ゲームボードに関するすべての情報がすぐに利用できるわけではない、つまりプレイヤーは敵の行動について仮定と予想を行わなければならないということだ。

それは実際に大規模なタスクだ、そこでDeepMindとBlizzardは、異なるサブタスクを「管理可能なチャンク」に分解する「ミニゲーム」も含めている。その中には特定のユニットの構築、リソースの収集、地図を用いた移動などを教えてくれるティーチングエージェントも含まれている。こうしてゲームを区分化することで、試合全体をマスターする複雑なエージェントを最終的に組み合わせる前に、個々の研究者たちからの技法を比較検証し詳細化してみることが可能になる。

ここでの目標は、StarCraft IIをどんな人間よりも上手くプレイできるAIを作り出すことだ。これはDeepMindが古の物理ボードゲーム囲碁に対して、AlphaGoソフトウェアで行なったことと同じ目標だ。DeepMindはこのことを通じて既存の研究を前進させたいと考えている、それゆえに大きなリサーチコミュニティへのアピールと、今回のようなツールのオープン化を行なったのだ。

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(翻訳:Sako)

マイクロソフト、AI研究所を創設してGoogleとDeepMindに挑戦

本日(米国時間7/12)Microsoftは、汎用人工知能技術の開発に重点を置く新しい研究所を設立したと発表した。場所はMicrosoftのレドモンド本社内で、科学者100名以上からなるチームが、自然言語処理から機械学習、知覚システムまで様々な分野のAIを研究する。

単一の作業に特化することなく様々な分野の問題に効率よく取り組むことのできる汎用AIを作ることは、多くの先端企業が目指しているゴールだ。例えばGoogleは、自社のGoogle Brainプロジェクトおよび2014年に買収したDeepMindの成果を利用して、汎用性の高いAIを開発しようとしている。DeepMindは現在Googleの親会社でもあるAlphabetの子会社になっている。

Microsoftの新たな挑戦はMicrosoft Research AIと呼ばれ、社内のAI専門家に加えて、認知心理学など関連分野の専門家を積極的に採用してチームを強化していく、とBloombergは書いている。新研究所はMITのCenter for Brains, Minds and Machines[脳・知性・機械センター]とも正式に提携する。産学協同による研究はAI開発分野では珍しくない ―― Microsoft、Google、およびUberを始めとする各社は学術組織に協力を約束することで関連する学問を専門にする学生を採用候補として確保している。

研究所の設立に加え、Microsoftは会社全体の監督機関として、AI倫理監視委員会を設置する。これもまた業界のトレンドを追うものだ。Microsoftは、DeepMind、Amazon、Google、Facebook、およびIBMと倫理的AI開発のための会社間契約を結んでおり、GoogleとDeepMindにも独自のAI倫理委員会がある

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

機械学習のDeepMind、国際展開を開始――最初の海外オフィスはカナダのアルバータ州エドモントンに

Alphabetの人工知能企業、DeepMindは本拠であるイギリスから海外への展開を開始した。最初の海外オフィスはカナダのアルバータ州エドモントンに置かれる。アルバータ支社はアルバータ大学と緊密に連携して調査・研究に当たる。

リーダーはアルバータ大の研究者、Rich Sutton、Michael Bowling、Patrick Pilarskiらとなる。最近、カナダでは人工知能開発に力を入れており、大学人が教育、研究を続けながら民間企業のプロジェクトにも貢献できる道が開かれつつある。これはその一例といえるだろう。

Sutton、Bowling、Pilarskiに加えてAdam Whiteも非常勤教授としてアルバータに戻りチームに参加する。またノーリミットのテキサス・ホールデムで人間のプロ・ポーカー・プレイヤーを破ったことで話題になったAIシステム、DeepStackの共同研究者6人もメンバーとなるという。

アルバータ大学との取り決めにはDeepMindが研究資金の提供を続けることが含まれる。Googleカナダのコミュニケーション担当ディレクターAaron Brindleは「この提携の目的は世界的にトップレベルの研究者をもっと大勢アルバータに引きつけることにある。これによって〔アルバータ大学の所在する〕エドモントンをテクノロジーのハブにしたい」と述べた。

DeepMindのアルバータ・チームのリーダー3人はいずれも「成功した方法を繰り返し、失敗した方法を避ける」という人間の学習方式をコンピューターにシミュレーションさせる方法を研究している。Sutton教授はまたDeepMindが2014年にGoogleに買収される前にの会社の最初のアドバイザーとなっている。アルバータ大学のメンバーは世界チャンピオンを破ったAI碁のAlphaGoやAtariのゲームを学んでプレイするAIシステムの開発にも参加していた。

画像: DeepMind

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

トップ棋士に3連勝したAlphaGo、引退を表明

盤上ゲームの中で最も戦略的とされる囲碁を打つために開発された、GoogleのAlpha Goが引退することになった。中国で世界最高レベルの打ち手をことごとく破ってからの引退ということになる。最後に対局したのは、世界トップランクの柯潔だ。中国で行われたイベントにて3局戦ったが、いずれもAlphaGoの勝利(3-0)となった。

AlphaGoはもともと、ロンドンのDeepMindにより開発されたものだ。DeepMindは2014年に5億ドルほどの金額でGoogleに買収されている。尚、今回のイベントでは人間5人を同時に相手にするいわゆる「相談碁」でもAlphaGoが勝利している。AlphaGoが世界的な注目を集めたのは、昨年前世界チャンピオンのイ・セドルを破ってからだ。今回の柯潔との対局や相談碁、あるいはペア碁を見るに、どうやらAlphaGoは次のレベルに到達しているようだ。

AlphaGoの引退を発表した、DeepMindのCEOであるDemis Hassabisは次のように語っている

囲碁発祥の地とされる中国で、世界トップレベルの棋士と連戦することは、AlphaGoにとっても進化のための最高の機会となりました。このような最高の機会を経験し、AlphaGoは引退させることといたしました。

今後、AlphaGoの開発チームは「次のレベル」のための開発に注力することとなります。アルゴリズムをより汎用的なものに改造し、この世の中に存在する複雑な問題を解決するためのお手伝いができるようになればと考えています。想定しているのは、病気の治療方法の発見や、消費エネルギーの劇的削減、革新的な新素材の開発などです。

ボードゲームの中でもっとも複雑だとされる囲碁にチャレンジすることで、AIの能力を高め、人間と関わるやり方も磨いてきたわけだ。Googleだけでなく、Tencentもゲームの中でのAIの活用/成長を狙っている。ゲームの世界で、その可能性を実証して注目を集めることで、次のステップに進む準備が整ったと判断したのだろう。AlphaGoは、新たな段階に進むことを決断したわけだ。

これまでにもDeepMindは、実用分野での可能性を探ってきている。昨年にはイギリスの国民保険サービスとの間で情報共有について合意している。但しこれは、営利企業に対して膨大な数の個人データを引き渡すことになるわけで、反対の声もおおくあがっている。現在は個人情報補語監視機関(Information Commissioner’s Office:ICO)による精査が行われているところだ。

こうした混乱は、AI技術自身がもたらしたものではない。しかし活躍の機会を、現時点で十分に活用できていないということにはなる。

「医療分野においても、AIが新たな知識や問題の解決法をもたらすことができれば、これは大きなブレイクスルーとなるわけです。はやくそうした場での活躍を実現したいと考えているのです」とHassabisは述べている。

そのようなわけでAlphaGoは囲碁から離れることになる。但し、ただちに完全に手が切れるというわけではない。DeepMindは、イ・セドル戦からのAlphaGoの進化過程を報告書としてまとめる予定なのだという。また、囲碁初心者が囲碁の魅力を知り、また経験者がより高いレベルになるための学習ツールの開発も行なっているのだとのこと。中国で行われたイベントでも見られたが、柯潔もAlphaGoから学び戦術を自分のものとして取り入れたりしている。そのような可能性をもったツールが登場するのは大いに楽しみだ。

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(翻訳:Maeda, H

AlphaGo対人類の囲碁対局、5人がかりでもAlphaGoの勝ち

世界ランク1位の柯潔が連敗するなど、囲碁ももはや人工知能に対抗できなくなりつつあるのかもしれない。それならばと、5人のトッププレイヤーがチームを組んでAlphaGoに挑む対局が行われた。しかし金曜日に行われたこのデモンストレーション対局でも、AlphaGoが勝利をおさめた。

5人で「相談碁」をプレイした人間側チームのメンバーは、陳耀燁、周睿羊、ビ・イクテイ、時越、および唐韋星だ。AlphaGo側はもちろん1人(1台? 1本?)だ。勝負はAlphaGoの中押し勝ち(人間チームのギブアップ)で決着した。

なお、この日は人間+AlphaGoと、別の人間+AlphaGoのペア碁も行われた。こちらで対局したのは「古力+AI」と「連笑+AI」だ。勝負は連笑側の中押し勝ちとなった。

解説者によると、相談碁を行ったメンバーたちはAlphaGoの打ち方を楽しむために打っているようだとのことだった。AlphaGoの動きを見て、どのような着手が効率的なのかと研究しているような感じであったらしい。AIと人間の新しい関わり方だと注目するむきも多かったようだ。

結果としては人類の惨敗となったわけではあるが、心配する必要はない。AIはあくまでも人間の味方であるのだ。

……今のところは。

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(翻訳:Maeda, H

AlphaGo、世界ランク1位のプロ棋士に連勝

AlphaGoは、AIの実力が人間を上回ることを再度証明してみせた。人間の方が上回る点がないわけではなかろう。しかし少なくとも囲碁に関しては、AIの実力が人類を上回るようなのだ。

AlphaGoがその名を轟かせたのは、トップレベルの棋士であるイ・セドルを4対1で破ってからのことだ。しかしそこにとどまらず、AlphaGoは世界ランク第1位の柯潔にも連勝してみせたのだ。この対局は全3局が予定されており、今週中に第3局が打たれる予定となっている。

柯潔は現在19歳。第1局は半目勝負(非常な僅差)であったものの、今回は中押し負け(途中でのギブアップ)に追い込まれてしまった。AlphaGoのアナリストによれば、序盤はむしろ柯潔がうまく打っていたのだとのこと。

「これは勝てるのではないかと、どきどきしていたんだ。中盤では勝ちそうだと思ったよ。でもAlphaGoの方はそう感じていなかったのかもしれないね。こちらは心臓の音が聞こえるほど舞い上がっていたけどね」と、対局後に柯潔は述べていた

対局はもう1局残っている。しかし第3局の結果がどうであれ、AlphaGoは世界が認めるナンバーワンプレイヤーを破ったことになるわけだ。歴史の転換点とも位置づけられる対局だったかもしれないが、中国では一切ライブストリーミングもされず、大きな不満の声も上がっている。

AlphaGoを生んだのはロンドンに拠点をおくDeepMindだ。2014年にはGoogleが同社を5億ドルほどて買収している。プロ棋士に勝利するという話は広く世間の耳目を集めるが、DeepMindは囲碁以外の知的活動分野でも世の中の課題を解決し、実用的AIを構築しようともしている。

ただし、そちらの方面ではまだ十分な結果が出ているとは言えない状況だ。たとえばイギリスのNHS(National Health Service:国民保険サービス)との間で、避けられる死を防ぐための医療を構築するためにデータ共有することとしたが、このデータ共有については不適切なものであるとの判断が下されてもいる。

膨大な数の患者データを、Googleの所有する企業に提供することが適切かどうかについて大いに議論になっているわけだ。DeepMindとNHSとの共同プロジェクトについては、データ保護の観点からも検証しているところでもある。

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(翻訳:Maeda, H

GoogleのDeepMindが社内的に使っていたニューラルネットワークライブラリSonnetをオープンソース化

GoogleのDeepMindが今日(米国時間4/7)、同社のオブジェクト指向のニューラルネットワークライブラリSonnetをオープンソースにする、と発表した。SonnetはTensorFlowに置き換わるものではなくて、同社内部の研究のためのベストプラクティスとよくマッチした高レベルのライブラリだ。

DeepMindが同社のブログ記事で述べているところによると、このライブラリはさまざまに異なるモデルへの切り替えが容易にできるように最適化されているので、実験を行うエンジニアが自分のプロジェクトの全体を手直しする必要がない。そうするためにチームはTensorFlowに変更を加え、複数のモデルを容易に階層として見なせるようにした。DeepMindはまた、さまざまな共有形式における透明性を加えた。

Sonnetをオープンソースにするのは、DeepMind自身の利益でもある。コミュニティがDeepMindの内部的ライブラリをよく知るようになれば、ペーパー等でのモデルの共有がやりやすくなる。また逆に、マシンインテリジェンスのコミュニティが自分たちの仕事にSonnetを採用することによって、ライブラリへの寄与貢献がよりやりやすくなる。

[TensorFlowと互換性があるので、コードのミックスができる。]
[Sonnetのオープンソース化でモデルのオープンソース化も容易になる。ペーパーの共有範囲も広がる〔Sonnet語がDM方言でなく標準語(共通語)になる〕。]

DeepMindはこのところ、オープンソースに熱心に取り組んでいる。たとえばオープンソースのAPIを開発して、研究をStarCraft IIの上でできるようにしている。12月にチームはDeepMind Labをリリースして、AI研究の一般化汎用化に貢献した。それは、OpenAIのUniverseにも似ている。オープンソースプロジェクトはDeepMindのWebサイト上で自分のホームページまでもらっている。

ライブラリはGithubで入手できる。ライブラリを内部的に変えるたびに、オープンソース版のアップデートを行うつもりだ。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Microsoftがインドで目の健康のために機械学習を活用、Google DeepMindに対抗

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同じ企業間競争でも、障害者の生活が少しでも良くなるための競争なら、大いに奨励したいね。Microsoft Indiaは、GoogleのDeepMindのやり方に倣って、インドにデータドリブンの視覚障害者支援サービスを導入するための研究グループ、Microsoft Intelligent Network for Eyecare(目のケアのための人工知能ネットワーク)を立ち上げた

DeepMindの眼科医学へのアプローチはイギリスがターゲットだったが、Microsoftは必ずしも対象国を限定しない。同社はアメリカ、ブラジル、オーストラリア、そしてもちろんインドの研究者たちの協力を求めながら、機械学習モデルを教育訓練し、失明の原因となる症状をシステムが同定できるようにする。

Microsoftの中心的なパートナーとなるハイデラバードのL V Prasad Eye Instituteは、インドの名門病院のひとつだ。このプロジェクトはとくに子どもに力を入れ、屈折矯正手術の結果や、子どもの近視率の変化の予測、といった意欲的な課題に取り組んでいく。

GoogleのDeepMindは、イギリスのNational Health Serviceとパートナーして目のスキャンを分析し、湿性で年齢と関連する黄斑変性や糖尿病性網膜症を検出する…これら二つは、失明に導く症状だ。それは、症状の早期発見によって早期治療を可能にし、目の損傷の重症化を防ぐ、という考え方だ。

アイケア(eyecare, 目のケア)は、これまで医学とは無縁だったような企業が、保健医療分野で機械学習のポテンシャルをテストするための、人気分野になりつつある。人間の健康状態の中でも目の状態や症状は、画像分析によくなじむからであり、それはイコール、機械学習の当面の得意分野でもある。医療診断へのコンピューターの利用は決して新しい技術ではなく、放射線画像の分析などは何年も前から行われている。しかしテクノロジー企業はこのところとくに熱心に、独自の研究開発テーマとしてこの分野に取り組んでいる。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

TC Disrupt London―DeepMindのMustafa Suleyman、汎用人工知能は「遠い先の話」

2016-12-06-deepmind-mustafa-suleyman

Googleが 2014年に買収したApplied AIの共同ファウンダーであり、現在DeepMindの責任者を務めるMustafa Suleymanは今日(米国時間12/5)、ロンドンで開催中のTechCrunchカンファレンス、Disrupt Londonに登壇し、スペシャルプロジェクト編集長のJordan Crookのインタビューを受けた。Applied AIという会社、DeepMindのGoogle内での役割、AIの未来などがテーマだった。

SuleymanによればDeepMindの目標は「知性を解明し世界をもっと良い場所にする」ことだという。われわれ人間の知性とまったく同様に作動するシステムを創ることがDeepMindの目標だという。「われわれは複雑な社会的課題の多くはますます解決が困難になるだろうという予測の下に会社を創立した」。この複雑な課題とはたとえば、気候変動や食料問題だという。

しかしSuleymanは汎用学習システムの実現は「数十年も先」だと考えている。「科学者が何かの実現が20年先だとか、もっと先だとか言うとき、実はあまりに遠い先なので時期を正確に予測することはできないという意味だ。当面われわれは個別の問題の解決に集中する」とSuleymanは述べた。

これに関連してSuleymanはまた「映画で見るような人間そっくりのAIはわれわれが研究しており、おそらく数十年後に実現するであろう汎用AIとはほとんど類似点がないだろうという。

またJordan CrookはSuleymanに機械学習に関する重要な点について訊ねた。「機械学習アルゴリズムはわれわれ人間の知性の欠陥もそのまま受け継いでしまうのだろうか?」とCrookは尋ねた。Suleymanは「この点についての私は、われわれの判断は偏見も含めてコンピューター・システムに組み込まれてしまうよう運命づけられていると考えている」と答えた。「デザイナーとしてまたエンジニアとして、こうした問題を意識的に考える努力をしないなら、われわれはそれと気づかぬまま偏見を含めたシステムを構築してしまうだろう」という。

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DeepMindとGoogleの関係についてSuleymanはあまり具体的なことを明かすのを好まないようだった。「われわれが人工知能のスタートアップとして成功を収めた理由の一つはロンドンに本拠を置いており、シリコンバレーとその流儀からかなり離れていたこともある」と述べたが、つまり組織上親会社になる組織に対して細かいことを話したくないという意味に受け取れた。とはいえ、Suleymanは「Googleのおかげで買収された後は各種のコンピューター資源を潤沢に使えるようになったという。また「〔Googleによる買収後も〕独立の組織として運営することができ、従来通り研究が続けらたのははわれわれにとって非常に大きな意味があった」という。

もうひとつの話題はDeepMindのヘルス関連事業についてだった。DeepMindはイギリスの 国民保険サービス(NHS)と協力して急性腎臓障害の早期発見に関する研究を行っている。一部ではNHSとDeepMindの協力範囲は公表されている部分よりずっと広いはずだという批判も聞かれている。またMoorfields眼科病院と協力して病院における眼底検査のアルゴリズムを改良して高速化と診断精度の改良を図っている。NHSのプロジェクトでは、診断に関しては主としてNHSが開発したアルゴリズムが用いられ、DeepMindは主としてフロントエンド・アプリの開発を担当している。Suleymanはこの点について「NHSとの協力プロジェクトは歴史が新しい。12ヶ月前に始まったばかりだ」と説明した。

DeepMindとGoogleの関係は個人情報の取扱に関してユーザーからの疑念を招くおそれがあるのではないかとCrookは質問した。Suleymanは「われわれのシステムはデータのコントロール権限について明確な基準を定めており、このプロジェクトの場合、データの所有権は完全に病院側にある」と述べた。またDeepMindは可能な限りの透明性を目標としており、第三者の監査を受けていることを強調した。DeepMindはまた「透明性確保のための汎用アーキテクチャー」を開発中で、これによればデータがアクセスされた場合、アクセス元など詳細なログが記録されるようになるという。

今日、こうした議論に加えてDeepMindはステージでDeepMind Labを発表した。 これはゲーム的な3Dプラットフォームで、エージェントによるAI研究に役立てられる。DeepMindでは社内ですでにこのシステムを利用していたが、今回オープンソースで公開された。すべてのAI研究者、開発者がこのプラットフォームを利用することができる。ソースコードとゲームのプレイに必要な多数の付属マップは数日中にGitHubにアップロードされる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Google DeepMindの新しい人工知能、DNCは地下鉄路線図から適切な経路を割出す

A web of dots connected by lines against a black background

2011年のノンフィクションのベストセラー、『ファスト&スロー あなたの意思はどのように決まるか』(早川書房)(Thinking, Fast and Slow)でノーベル賞経済学者のダニエル・カーネマンは、人間の思考は基本的に2つに分かれると主張した。この2つの区分はそれぞれ、適切にも、速い思考と遅い思考と名付けられている。

前者はいわば「勘に頼る」思考だ。物事に対する最初の直感的、自動的な反応といってもいい。後者は熟慮された内省を経た思考で、これを得るには時間がかかる。DeepMindの新しいアルゴリズムがもたらそうとしているのは、この「遅い思考」だ。近い将来、カーネマンの言う「遅い思考」が機械学習の手が届く範囲に入ってくる可能性がある。

Googleの子会社、DeepMindNatureに発表された新しい論文でディフェレンシャブル・ニューラル・コンピューター(DNC=differentiable neural computer)と名付けられた機械学習への新しいアプローチを説明している。新しいコンピューターといってももちろん物理的なハードウェアという意味ではない。情報を組織化し、この知識を適用して特定の問題を解決する新しいテクニックと呼ぶべきだろう。.

ニューラル・ネットワークは、本質的には、きわめて洗練された試行錯誤の過程だ。この過程が最終的に答えにたどり着く。こうしたフレームワークはある問題の解決に極めて有効だ。しかし相互に関連する既知の事実の集合を適用して現実世界の問題を解決する上ではさまざな改善の必要があった。

DeepMind

DeepMindの新しいテクノロジーは メモリにコンテンツを保存するというコンセプトと古典的なコントローラーをを用いたニューラルネットワークとを融合するものだ。コントローラーは次のいずれかの方法で情報を記憶する。すなわち新しい位置に記憶するか、既存の情報をその位置で書き換えるかだ。この過程を通じて新たなデータが書き込まれるタイムライン上で連想が形成される。

情報を取り出すためにコンテンツをメモリに保存する場合もコントローラーはその同じタイムラインをを利用する。このフレームワークはナビゲーション可能でコンテンツのグラフ構造から意味ある認識を得るのに有効であることが証明された。

消費者の購買傾向やGPSによるナビゲーションといった現実の複雑な行動がこうした知識グラフの形で表現される。DeepMindではデフェレンシャブル・ニューラル・コンピューターをロンドンの地下鉄路線図の認識に応用し、 コンピューターに記憶された構造化データから正しい経路を生成する生成することに成功した。
同社によれば、次のステップは、大規模なデータセットを処理できる新しいアルゴリズムの開発になるだろうという。

DeepMindのサイトでこの問題に関するさらに詳しい記事を読むことができる。

画像:Ralf Hiemisch/Getty Images

〔日本版〕 DeepMindはGoogleが買収した機械学習のスタートアップで、今年3月にAlphaGoが囲碁の世界チャンピオンを破ったことで一躍注目を集めた。differentiable neural computerについては現在日本語定訳がないようなのでそのままカナ表記とした。differentiableは数学用語では「微分可能な」、一般用語としては「区別できる」という意味。バベッジの最初のコンピューターがdifferential engine(差分機関)と名付けられたことと関係があるかどうかは不明。なおULR文字列がやや奇妙だが原文記事は通常どおり公開されているのでそのまま利用した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Facebook、Amazon、Google、IBM、MicrosoftがAIで歴史的な提携を発表

2016-09-29-ai-competitors

世界最大のテクノロジー企業のグループが今や地球上でもっとも価値のあるデータベースのカギを握っている。歴史的には財貨と貨幣が価値を体現する存在だった。現代ではデータがもっとも重要な通貨だ。データの価値を最大限にするのはそれをベースとする人工知能だ。誰であれきわめて大規模なデータの持ち主でなければ有効な人工知能テクノロジーを持つことはできない。現在のところそのような規模でデータを所有する企業はFacebook、Amazon、Alphabet(Google)、IBM、Microsoftなどだろう。

今日(米国時間9/28)、上述の5社は共同で発表を行い、AIにおける新たな提携を発表した。このPartnership on AIは人工知能に関する研究及びベストプラクティスの普及を目指すという。現実の活動して考えると、この5社の代表は頻繁にミーティングを行い人工知能の進歩を促進するための議論を交わすことになる。またこのグループは企業の垣根を超えてコミュニケーションを図る正式な組織も結成する。もちろんメンバー各社は日々のビジネスでは人工知能をベースにしたサービスやガジェットの開発をめぐって激しく競争しているライバル同士だ。

現在のメンバー各社は当初の財政的基盤も整備するとしている。しかしこのパートナーシップは開かれた組織であり、将来は参加メンバーを拡大する計画だ。科学者、エンジニアに限らず、ユーザー活動家、NPO、倫理問題の研究者その他人工知能に関連する人々が数週間後に開催予定の会議で意見を交わす予定だ。

DeepMind(現在はAlphabet傘下)の 共同ファウンダーで応用AIの責任者Mustafa Suleymanは「われわれはAIを作る側だけでなく、AIによって影響を受ける側の人々の参加を求めている」と語った。

このパートナーシップでは、企業外のグループや個人も大企業の代表と肩を並べて参加し、リーダーとなれる仕組みだ。

今日のスタート時点ではApple、Twitter、Intel、Baiduなどはメンバーに含まれていない。AppleはAIプロジェクトに熱心だとされるが、このパートナーシップに参加したライバルに比べてAI分野で立ち遅れて気味な同社が未参加なのが目立つ結果となっている。

新組織は単なる議論ではなく、実例をもってAIの普及を図ろうとしているようだ。パートナーシップはオープンライセンスの標準をもちいてAIプロダクトに関する研究成果を公表していく。これにはテクノロジー面だけでなく、倫理、プライバシー、少数者の保護など広い分野が含まれる。

IBM ResearchにおけるAI倫理の研究者Francesca Rossiは「現在エンタープライズ部門がAIをコントロールしている。社会全般がAIの利便性を利用できるようになるためには、まずAIが信頼性を確立することが必要だ」と語った。

メディアで目立つAIの危険性に関するポップカルチャー的な主張と比べたときに新組織の着実な立場は安心感を与えるものだ。将来AIによるシンギュラリティーが人類の存続を脅かすかどうかなどという議論に熱心な向きもいるようだが、われわれはすでにAIが関連する現実の問題の長いリストを抱えている。コンピューターは、われわれの職をすべて奪ったりしていないものの、以前から人間が持っている否定的特質も拡大する力がある。偏見が優勢な世界は偏見を含んだデータセットを生み、偏見を含んだデータ・セットは偏見のあるAIフレームワークを生成する。

この問題を是正するためにMicrosoftはすでにAI倫理委員会を設けている。新パートナーシップは従来の組織と重複するものではなく、むしろこれまで各社が個々に行ってきた努力を拡充するものだという。新パートナーシップの会議記録は一般公開される予定だ。

この記事の執筆にはJosh Constineが協力した。

画像: Bryce Durbin/Bryce Durbin

〔日本版〕この報道はTechCrunch以外にも欧米の主要ニュースメディアが報じているが、他の記事にもニュースリリースないしイベンへのリンクがない。今後なんらかのフォローアップがあるものと思われる。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

AIに投資しないリスクを怖れよう

NEW YORK CITY, NY- MAY 27: IBM Watson's computer housing case.

IBM's Watson computer is best known for winning Jeopardy, unaware of time constraints, while playing against humans. Some of Watson's other features are based in problem solving across many different careers. A demonstration showed how quickly Watson is able to diagnose illnesses, and provided a real life case that took doctors and nurses six days to diagnose, and only ended with the correct diagnosis because a nurse had seen the disease before. Based on symptoms input, Watson was able to correctly diagnose in minutes. The demonstration took place at IBM Watson's New York City, New York office on May 27, 2015. (Photo by Andrew Spear for The Washington Post via Getty Images.)

【編集部注】著者のKR Sanjiv氏はWiproのCTO。

今後10〜20年間で人工知能がどのように変化するかを予測することは難しい。しかしそこには沢山のことが待ち構えている。2018年までに、ロボットが監督する労働者は300万人以上になるだろう;2020年までには、スマートマシンは3割以上のCIOにとってトッププライオリティの投資対象になる。

ジャーナリズムから顧客サービスといった様々なものが既にAIによって置き換えられつつある。それは徐々に人間の経験と能力を置き換えつつあるのだ。かつて技術の将来と見られていたことがすでにここにある、そして残された唯一の質問は、それはどのようにマスマーケットに展開してくのかということだ。

時間が経つにつれて、現在AIの先進性を活用している産業から徐々に収集されている洞察 ‐ そしてそれに伴う技術の革新 ‐ が、アプリケーションの成長の中でAIをより堅牢で便利なものとして行くだろう。AIに多額の投資をする余裕がある組織は今、さらに追随するための勢いを増している最中だ;AIで自身を活かせる場所をみつけることのできない組織は取り残される虞がある。

リスク vs 利益

ビジネスに対するAIアプリケーションのリスクが、利益よりも大きいかどうか(あるいはその逆なのか)を予測することは不可能だと主張する者も居る一方で、アナリストたちは2020年までに、すべての経済取引の5パーセントが自律ソフトウェアエージェントによって取り扱われると予想している。

AI未来は、思い切った投資に踏み切り、例えそれが挑戦であろうとも、テクノロジーを研究し、継続的開発に資金を提供する企業の肩にかかっている。それを偶然行ってしまう者もいる、例えば6年に渡ってあるプログラマーに合計50万ドル以上を払って、そのプログラマーが自分の仕事を自動化していたことを知っただけの企業のように。

AIの進歩の多くは軍事から来ている。米国政府が次年度のために要求したドローンの予算は46億ドルに上っている。現在フィールドで使用されている、人間によって操縦されるドローンを、人間の介在なしに飛行できるようなものに置き換えることが狙いだ。AIドローンは、単に目的地を指定してやればよく、防空設備をかわしながら自身の目的地に到達することができる。とはいえ任意の致死攻撃決定はまだ人間の目によって行われる。

広く受け容れられている考え方は、堅実にやることで得られる利益よりも、取り残されて直面するリスクの方が遥かに大きいということだ。

学術面では、マサチューセッツ工科大学とオックスフォード大学といった研究機関は、人間の脳をマッピングしそれをエミュレートしようと日夜努力を重ねている。ここには2つの異なる経路が存在している ‐ 人間の脳の複雑さを再現するAIを作成するやりかたと、実際の人間の脳をエミュレートするやりかただ。これには沢山の倫理的な問題や懸念がまとわり付いている。例えばAIはどのような権利を持っているのだろうか?そしてあなたが愛する(エミュレートされている)人を収容しているサーバーがシャットダウンされたら何が起きるのだろうか?

これらの質問へは未回答のままだが、最終的には、全産業に対するAIシステムの実証済みの利便性が、全ての経済部門の主要なプレイヤーたちに、それと連携をするように拍車をかけるだろう。現在の情報技術が既存のすべての産業に実質的に不可欠であることと同様に、人工知能もそうなって行くことは誰の目にも明らかである。

計算の未来

これまでは、AIは主に特定の機能を果すための、事前にプログラムされたツールを作り上げるために使われてきた。これらは、著しく固定化されたものだった。こうした種類のAIベースのコンピューティング戦略が一般的になっている。だが未来AIは、真の意味での学習に依存することになる。言い換えれば、AIは、もはや何をしろと言われているかを理解するために、直接コマンドを与えられることに頼る必要はなくなるのだ。

現在私たちは、自動認識と学習に依存するGPSシステムや、発話を解釈するモバイルデバイス、そして私たちの意図を解釈することを学ぶ検索エンジンを利用している。とりわけプログラミングでの、AIにおける次のステップは、GoogleのDeepMindやIBMのWatsonのような進展をもたらすものになる。

DeepMindは知識ではプログラムされていない – 与えられたタスクのための手作りのプログラムまたは特定のモジュールは存在していないのだ。DeepMindは自動的に学習するようにデザインされている。システムは、最終結果に創発特性が得られるように、特に汎用性を目指して作られている。グランドマスターレベルの囲碁プレイヤーを倒せるようなソフトウェアをプログラムできる能力のような、こうした創発特性は、DeepMindがそうするようにプログラムした人が誰もいないということを知れば、さらに計り知れない深い印象として受け止められることだろう。

伝統的なAIは、対象分野が狭くそして知識を得るようにプログラムされたことだけを行うことができるが、Olli(Watsonによって支えられた自動運転車)は、モニタリングと乗客との相互作用から学習を行う。新たな乗客が推奨観光スポットを訊ねたり、目的地を明示的に指示したりするたびに、その情報は記憶され、次の人のために使われる。新しいセンサーが常に追加され、車自身が(人間のドライバーのように)仕事をするにつれ、継続的に、よりインテリジェントになって行く。

しかし、これらのAIシステムは、Googleのような企業が彼らに本当にやって欲しいと思うことを行うことができるのだろうか。例えば既存のリコメンデーションソフトウェアよりも優れている消費者の購買動向に関する予想などを?あるいは過去のパターンに関連付けることによって、動的にサプライチェーンの取引を最適化することなどを?そうしたところこそが、本当にお金のある場所なのだ。そしてそれらはゲームをしたり、運転したり、繰り返しタスクを行うよりもずっと複雑な問題なのである。

様々なAIプラットフォームの現在の実証例 – たとえばファッションの間違いを見つけたり、健康上の問題を予測するといったこと – は、明らかにAIが拡大していることを示しており、上に挙げたより複雑なタスクも、近い将来に現実のものとなるだろう。

程なく、AIは複雑な人間の意思決定プロセス、例えば投資アドバイスを与えるとか、患者に処方箋を提供するといったことなどを模倣できるようになるだろう。実際には、真の意味での学習による継続的改善によって、1次対応とより危険な仕事(トラックの運転のような)は完全にロボットによって引き継がれて、同じビジネスプロセスを繰り返す代わりに、問題解決のために人間が時間を使えるようになる新しい産業革命へと繋がって行くだろう。

AIへ投資しない代償

投資の利益とリスクは、漠然としていて、不確実で、推測の域を出ないものだ。ビジネスにおいて新しいもの全てに共通する、1つの良く知られたリスクは、不確実性そのものである。だからリスクは主に、誤った投資の形でやってくる、これは金融の世界では特に珍しい話ではない。

だから他の奇妙で新しいすべてのものに対する場合と同様に、ここで広く受け容れられている考え方は、堅実にやることで得られる利益よりも、取り残されて直面するリスクの方が遥かに大きいということなのだ。

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(翻訳:Sako)

Googleが囲碁の世界チャンピオンに勝ったDeepMindをデータセンターの省エネに利用、冷房費用を40%削減

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DeepMindは地球上でもっとも複雑なゲームの名人かもしれないが、でも彼は、Googleのデータセンターのエネルギー問題を解決できるだろうか。ところが、できるのだ。しかも、強力に。

データセンターの電力の用量は、需要や気候条件などさまざまな要因に依存し、電力使用効率の最大化のためにそれらの変数を調整あるいは予測することは、とても難しい。Googleは機械学習をこの問題に適用し、ニューラルモデルの構築により、AIがこれらの要因のすべてを常時把握/監視できるようにした。

それにより研究者たちは、DeepMindという生きてる獣をそのままデータセンターに放ち、結果を直ちに検証できるようになった。そのため、冷房に使用する電力利用を従来の40%下げることができ、その状態が今も維持されている。

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Googleはこれまでも自社におけるエネルギーの使用を懸念して、再生可能エネルギーの利用や、エネルギー利用の効率化に努力してきた。だからDeepMindの起用も、その流れの上にあり、単独の突出的なプロジェクトではない。DeepMindが行った複雑なパラメータ群の同時的多面的最適化AI技法は、そのほかのシステムやデータセンターにも応用できる。そうなれば同社は、得意満面となるだろう。

DeepMindはこのエネルギー節約AIについて、詳細なドキュメントの発行を予定している。Web上に公表されたら、この記事にそのリンクを載せよう。

参考記事(DeepMindの医療利用、規制でつまずく)〕

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))

Google曰く:囲碁チャンピオンを破ることで、人工知能が「人間に見えない答を見つけられる」ことを示した

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Googleが開発した人工知能(AI)が最強の囲碁プレーヤーを破った歴史的瞬間については数多く語られている。

囲碁はその膨大な打ち手の可能性から、AIにとって究極のテストの一つと見られている。「一回のゲームには、1,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000,000 種類の可能な打ち手がある ― これは宇宙の原子の数よりも多く、チェスのグーゴル(10の100乗)倍以上である」と、Googleは今年1月に言った

対局のシリーズ ― AlphaGoが4勝1敗で制した ― を見逃がした人や、何がそんなにすごいのかがわからない人たちのために、その一般的重要性についてGoogleがブログで説明している

もはや単なるゲームとはかけ離れている。AlphaGoを開発したGoogle傘下の会社、DeepMindのCEO・共同ファウンダー、Demis HassabisはこのAIの進歩について、人間に馴じみのない、あるいは不可能な方法で問題を解くためにAIを利用できることの証明であると語った。

この体験から2つの重要なことを学んだ。まず、このテストはAIが他の問題を解く可能性を示す良い前兆である。AlphaGoはあらゆることを「グローバル」に見る能力を持っている ― そして人間が行わないよう訓練を受けてきた、あるいは考慮すらしなかった答を見つける能力を。これは、AlphaGoのような技術を使えば、他の分野でも、人間が必ずしも見出せない答を見つけられるという大きな可能性だ。

さらにHassabisは、人間対機械と称されているこの対決が、実際には人間対人間のテストであることを指摘した。なぜなら、AlphaGo自身が生き物だからだという。

AlphaGoは実際には人間の業績だ。[囲碁世界チャンピンでAlphaGoの対戦相手の]イ・セドルとAlphaGoチームは、互いに相手が新しいアイデアやチャンスや解決方法を生みだすことを強いた ― それは長い目で見れば全員の利益になるものだ。

DeepMindのCEOは、自らの1勝を重要な出来事だと言うイ棋士の才気に敬意を表すとともに、成し逐げた進歩にかかわらず、人工知能の未来について地に足をつけて考えている。

「人間にできる幅広い知的作業をこなす柔軟性を学習できる機械 ―真の人工汎用知能の証明 ― までにはほど遠い」とHassabisは言った。

祝福が終った今、DeepMindはいつものつらい勉強に戻らなくてはならないようだ。先週の出来事は、DeepMindに何が出来るかに光を当て広く認知させるものであり、囲碁というゲームに限らず、今後DeepMindの将来のプロジェクトへの関心を高めることは間違いない。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook