Google CloudでVMのサスペンドとレジュームが可能に

米国時間3月23日、Google Cloudは仮想マシンのサスペンド / レジューム(一時停止と再開)機能を一般公開でローンチした。これまでこの機能は2年前にアルファでローンチし、開発者が利用できるオプションはインスタンスの停止とスタートだけだった。Google(グーグル)によると、今度のサスペンド / レジュームはラップトップのフタを開けたり、閉めたりする感覚に近いという。

インスタンスがサスペンド中は、それが使っているコアとRAMは課金されない。唯一支払うのはインスタンスのメモリのストレージ費用で、OSのライセンスも減額されるかもしれないとGoogleはいう。

他のクラウドにも同様の機能はあるが、Googleの主張では同社はACPI S3の標準信号を送り、その信号はデスクトップやラップトップにオペレーティングシステムが送ってスリープにしたり、RAMにサスペンドを送る場合と同じであるため、そのソリューションは非常に多種類のOSイメージと互換性がある。それどころか同社はデベロッパーに、ドキュメントのないカスタムのOSイメージで試してみることを奨めている。それらも、何もしなくても信号に応じた動作をするはずだ。

さらにGoogleの主張では、そのソリューションは他と違う。なぜならVMがサスペンドしてブートディスクから独立なら、イメージのためのストレージは動的にプロビジョンされる。従ってブートディスクにスペースがないことを心配する必要がないし、サスペンドしたインスタンスはストレージの消費量も少ない。サスペンド中にもインスタンスのIPアドレスはそのままなので、インスタンスがレジュームしたとき、メモリは単純にストレージからインスタンスのメモリに戻り、サイクルが続く。

ただしイメージのサスペンドは最大60日までで、その後、自動的に終了する。なお、そのサスペンド / レジュームは、GPUインスタンスやメモリが120GBを超えるインスタンス、E2インスタンス、そしてコンフィデンシャルVMでは無効だ。プリエンプティブルインスタンスはサスペンドできるが、サスペンション処理の間に終了するリスクがある。

しかしここでのアドバンテージは費用節約だけではない。このようなシステムはまた、必要に応じて、いくつかのインスタンスをスタンバイさせておく水平スケーリングを意味している。新しいVMをプロビジョニングするのは、時間がかかる。あなたのユースケースがそれなら、将来の道はサーバーレスかもしれない。しかし、それもまた長期のプロジェクトであるため、その間はこのようなシステムが役に立つ。

また、24時間365日稼働する必要のない開発環境にもサスペンド / レジュームを利用している企業もある。BigCommerceのエンジニアリング担当マネージャーであるAaron Humerickhouse(アーロン・ヒューメリックハウス)氏は次のように述べる。「Compute Engineのサスペンド / レジューム機能を活用することで、Compute Engineを中心とした開発環境の運用コストを削減することができました。BigCommerceでは、各エンジニアが自分の環境の『作業時間』をカスタマイズできるようになっており、各作業日の終わりに停止し、翌日の始まりに再開するようになっています。これにより、仮想マシンインスタンスの使用時間が1環境あたり平均で週168時間から週60時間に短縮され、毎月数千ドル(数十万円)のコスト削減が可能になりました。このようなコスト効率の向上は、当社のエンジニアリング組織が成長するにつれて、さらに増加すると考えています」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Google Cloudが大幅値上げ、2022年10月1日から実施

クラウドインフラのレンタル料金は、通常時間が経つにつれて安くなるが、米国時間3月15日、Google Cloud(グーグル・クラウド)がその流れに逆らって、多くのコアサービスで大幅な値上げを発表した。この値上げは、Googleが「より柔軟な価格モデルとオプション」を提供したいとの名目で発表したもので、2022年10月1日から実施される予定だ。もちろんほとんどの開発者は喜んでいない

悪いニュースばかりでもない。Googleの米国、欧州、アジア地域のアーカイブストレージの一部が値下げされ、より低価格のPersistent Diskアーカイブスナップショットオプションも登場する。また「Always Free Internet」(オールウェイズ・フリー・インターネット)の容量を1GB/月から100GB/月に引き上げる。

しかし、マルチリージョンのNearline(ニアライン)ストレージなど、ストレージの中核機能の多くは50%値上げとなる。Google CloudのColdline Storage Class A(コールドライン・ストレージ・クラスA)の利用料金は、1万オペレーションあたり0.10ドル(約12円)から0.20ドル(約24円)へと倍増となる予定だ。また、複数のリージョンに配置されたCloud Storageバケットから同じ大陸のリージョンにあるサービスのデータを読み出すことはこれまで無料だったが、今後は同じ大陸にあるGoogle Cloudのロケーション間で行われる他のデータ移動と同じように課金対象となる。

ロードバランシングもまた、0.008ドル(約0.94円)から0.012ドル(約1.42円)の「データ送信処理料金」をGoogleが適用することによる値上げが行われる(地域によって料金は異なる)。Googleは、これで他の主要なクラウドプロバイダーと価格を揃えることができるという。

同社のFAQにはこう書かれている「Google Cloud は、ビジネスを変革するための革新的なソリューションを、顧客志向の一貫した方法で提供しています。従量制の料金体系により、お客様はご利用になるサービスに合わせたコストでご利用いただけるようになります。また、お客様は主要なクラウドプロバイダーとのサービスをより簡単に比較することができるようになります」。

他の大手クラウドプロバイダーのマーケティングチームは、この発表に大喜びだろうが、大量のデータを動かすのは大変なことだ。データの重力が話題になるのには理由がある。これは、顧客の流出を恐れることなく価格を引き上げることができる分野の1つだからだ。

発表の文言はきれいに飾られているが、Googleはこれらの変更がもたらす影響を明確に認識している。FAQに書かれた、顧客は「アプリケーションを新しいビジネスモデルに合わせ、価格変化の影響の一部を和らげるために、現在の利用方法を適応させる必要があります」と書かれていることがそれを物語っている。

Google(特にGoogle Cloud)は、顧客がサービスに依存しているにもかかわらず、ほとんど無作為にサービスを停止するという世間の認識にすでに苦しめられている。その認識に、無作為に値上げを行うという認識も新たに加わった。同社が設定した野心的な成長目標を達成するために、セールスチームは残業を余儀なくされそうだ。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)

グーグルがセキュリティインテリジェンスのMandiantを6250億円で買収

サイバーセキュリティが多くの企業にとって最重要課題となっている今、Google(グーグル)はセキュリティインテリジェンス企業Mandiant(マンディアント)を54億ドル(約6250億円)で買収すると発表した。この買収によりセキュリティデータ収集能力と数百人のセキュリティコンサルタントチームを獲得する。Mandiantは買収完了後、Google Cloud(グーグルクラウド)に加わる予定だ。

Google Cloudの責任者Thomas Kurian(トーマス・クリアン)氏は、特にウクライナでの戦争が激化する中で、企業はかつてないほどのセキュリティ脅威に直面しており、MandiantはGoogle Cloudのプラットフォームにセキュリティサービスをもたらす、と指摘した。

「買収はエンド・ツー・エンドのセキュリティ運用を提供し、世界最高のコンサルティング組織の1つを拡張する機会です。力を合わせることで、クラウドの安全性を確保し、クラウドコンピューティングの導入を加速させ、最終的には世界をより安全にすることに大きな影響を与えることができます」とクリアン氏は声明で述べた。

GoogleはMandiantに1株当たり23ドル(約2660円)を支払う予定で、これは10日間の加重平均株価に57%のプレミアムを上乗せした額だ。Mandiantの株価は、この1年間で約18%上昇し、買収に関する噂が浮上し始めたここ数日でかなり急騰した

Moor Insights & Strategyの創業者で主席アナリストのPatrick Moorhead(パトリック・ムーアヘッド)氏は、この買収によってGoogleの既存の強力なセキュリティ姿勢が改善・拡大されるはずだと話す。「Google Cloudは、自社クラウド内のセキュリティ提供において、常に高い評価を得てきました。Mandiantの買収は、あらゆるクラウドやオンプレミス構成への門戸を開くものです」と同氏は筆者に語った。

クラウドセキュリティ分野を注意深く観察しているGartnerのアナリスト、Neil MacDonald(ニール・マクドナルド)氏も、2022年初めのSiemplify(シンプリファイ)買収と合わせて、Googleが強力なセキュリティ事業を構築しつつあると指摘する。「Googleが最近Siemplify を買収してセキュリティ・オーケストレーション・オートメーション&レスポンス(SOAR)を実現したのに続き、Mandiantの買収もGoogleがGoogle Cloud事業の一部であるセキュリティ部門の収益拡大に真剣に取り組んでいるという明確なシグナルです」とマクドナルド氏は説明した。

特に、クラウド上のワークロードを保護することに不安を感じている潜在顧客にとっては、今回の買収によりGoogleのセキュリティに関する主張が強化されるはずだとマクドナルド氏は付け加えた。「セキュリティ・ベンダーとしての能力とブランド認知度を高めることで、Google Cloud Platform(GCP)導入の阻害要因であるセキュリティを取り除くことができるのです」と話した。

Crunchbaseのデータによると、Mandiantは2004年に創業され、これまでに7000万ドル(約81億円)を調達している。同社は2013年に10億ドル(約1156億円)でFireEyeに売却された。合併した会社は2021年に分離し、FireEyeはSymphony Technology Groupが率いるプライベートエクイティコンソーシアムに12億ドル(約1388億円)で売却された

当時、FireEyeのCEOに就任した創業者のKevin Mandiant(ケビン・マンディアント)氏は、この取引はMandiantの独立した事業としての価値を引き出すためのものだと述べていた。確かにFireEyeよりもはるかに高額の買収額だった。

今回買収される側になったMandiantは、買収によってGoogle Cloudの規模とリソースにアクセスできるようになると話す。「Google Cloudセキュリティポートフォリオの一部として、Mandiant Advantage SaaSプラットフォームを介して、大規模に我々の専門知識とインテリジェンスを提供します」と買収を発表した声明の中でマンディアント氏は述べている。

買収完了に向けては規制当局の調査をパスし、Mandiantの株主の承認を得なければならない。両社は、2022年後半に買収が完了すると予想している。

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルがサイバーセキュリティSiemplifyを買収、Google CloudのChronicleの一部に

サイバーセキュリティ侵害の件数は高水準で推移しているため、法人ITにおける信用とビジネスの拡大を真剣に考える企業は、この問題に取り組むために投資を続ける必要がある。そのため、Google(グーグル)は、クラウドベースおよび法人向けセキュリティの事業を強化することで、新年をスタートさせようとしている。同社は米国時間1月4日、イスラエルに拠点を置くサイバーセキュリティのスタートアップSiemplify(シンプリファイ)を買収したことを明らかにした。Siemplifyは、企業向けのエンド・ツー・エンドのセキュリティ・サービス、一般にセキュリティ・オーケストレーション、自動化、対応(SOAR)サービスと呼ばれるものに特化している。

この買収は、イスラエルのメディアですでに報道され噂されていたが、今回、GoogleそしてSiemplifyのCEOで共同創業者のAmos Stern(アモス・スターン)氏がともに買収を認め、SiemplifyがGoogle Cloud Platformに、具体的にはそのChronicle業務に統合されることを明らかにした。

GoogleとSiemplifyは、買収価格についてのTechCrunchの質問には答えなかったが、この取引に近い情報筋は5億ドル(約580億円)だと明らかにした(この数字は、先の報道でも言及されている)。

Chronicleはもともと、Googleの古いムーンショット取り組みであるGoogle「X」とともに、法人向けセキュリティ企業として設立された。検索大手であるGoogleが、クラウド市場2強のMicrosoft(マイクロソフト)のAzureとAmazon(アマゾン)のAWSを猛追しようと、クラウドサービス事業を中心に機能やサービスを拡充して法人売上高の拡大を図る一環として、Chronicleは2019年にGoogle Cloud経由でGoogle本体に移行した

関連記事:エンタープライズセキュリティサービスのChronicleがGoogle Cloudに統合へ

Siemplifyは2019年5月に最後のラウンドを実施し、合計5800万ドル(約67億円)を調達した。投資家にはGeorgian、83North、Jump Capital、G20 Venturesの他、多数の個人も含まれていた。Siemplifyは現在、本社をニューヨークに置いているが、同社はイスラエルで創業し、現在も同国に研究開発部門を持っている。そのため、今回の買収はGoogleにとって初の米国外でのサイバー企業買収ということになる。

Googleの買収は、サイバーセキュリティの世界において重要な時期に行われた。全体像として、サイバーセキュリティ侵害が衰える兆しがないのは、悪意のあるハッカーがこれまで以上に巧妙な手口で仕掛け、そして組織や消費者がインフラや日常の活動をますますオンラインやクラウドに移行させているためにターゲットがますます魅力的なものになっていることに起因している。

Chronicleは、サイバーセキュリティの遠隔測定用プラットフォームとして構築された。具体的には、あらゆるデバイスやネットワーク上のデータの動きを追跡し、侵害を検知・阻止するためのてがかりを得る方法となる。SOARプラットフォームは、この活動の顧客インターフェース要素であり、セキュリティ運用の専門家が活動を管理・監視し、(自動または手動の)修復プロセスを開始し、将来同じことが起こらないようにするためにすべてを記録するのに使用される。Googleがより多くの顧客を獲得するためにサービスや自動化を追加していく中で、SOARの機能を増やすことは同社にとって論理的な次のステップだ。

「Siemplifyプラットフォームは、セキュリティチームがリスク管理を強化し、脅威に対処するためのコスト削減を可能にする直感的なワークベンチです。Siemplifyは、セキュリティオペレーションセンターのアナリストがエンド・ツー・エンドで業務を管理し、サイバー脅威に迅速かつ正確に対応し、アナリストとの対話を重ねることでより賢くなることを可能にします。この技術はまた、ケースロードの削減、アナリストの生産性の向上、ワークフロー全体の可視性の向上により、SOCのパフォーマンスを改善します」とGoogle Cloud SecurityのGMであるSunil Potti(スニル・ポッティ)氏は買収を発表したブログの中で書いている。「Siemplifyの機能をChronicleに統合するのは、企業のセキュリティ運用の近代化と自動化を支援できるようにするためです」。

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nariko Mizoguchi

クアルコムが4nmプロセス採用のスマホ向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を正式発表

クアルコムが4nmプロセス採用のスマホ向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を正式発表

クアルコムはSnapdragon Tech Summit 2021の1日目に、4nmプロセス採用のスマートフォン向け最新SoC「Snapdragon 8 Gen1」を発表しました。

「Snapdragon 8 Gen1」は、Snapdragon 888の後継となるハイエンドSoCで、今回から名称をリブランディング。ソニー・シャープ・シャオミ・OPPOなど各社から搭載端末が登場予定で、最初の商用端末は2021年内に登場します。

まず、デジタル運転免許証やデジタル自動車鍵の実用化に向けたGoogle主導のセキュリティ新規格「Android Ready SE Alliance」に世界で初めて対応します。

性能面では、新しいAdreno GPUの搭載によって、Snapdragon 888比でグラフィックレンダリング性能が30%向上。一方で消費電力は25%削減しています。

ゲーミングも強化しています。モバイル向けSoCとして初めて、視覚損失を抑えつつフレームレートを可変とするVariable Rate Shading Proに対応。また、Snapdragon 888比で同じ消費電力で2倍のフレームを生成できるなど、電力効率も高めています。

イメージング性能も強化しており、18bit ISP(画像処理プロセッサ)の内蔵によって、Snapdragon 888の約4000倍となる、毎秒32億画素の画像を撮影できる処理性能を誇ります。モバイル初となる8K HDR動画撮影に対応し、10億色を超える階調のHDR10+撮影にも対応します。

AI性能もSnapdragon 888比で強化しています。第7世代AIエンジンは共有メモリ容量とテンソルアクセラレーターの処理速度がそれぞれ2倍に向上し、トータルで4倍の性能向上をうたっています。

AIを活かした機能としては、Leica Leitz Lookフィルターを搭載し、カメラ撮影時にLeicaのボケ効果を再現可能。Hugging Face社の自然言語処理により、よりインテリジェントなパーソナルアシスタント機能も提供できるといいます。また、Sonde Health社との協業により、端末上のAIによって健康状態を見極めることを目的に、ユーザーの音声パターンを分析するモデルも高速化しています。

通信面では、第4世代目の5Gモデル「Snapdragon X65」の搭載により、下り10Gbps・上り3.5Gbpsの5G通信に対応します。最大3.6GbpsのWi-Fi 6 / 6E通信にも対応します。また、SoC内のSecure Processing Unit内においてSoC統合型のSIM「iSIM」をサポートします。

オーディオ面では、Bluetooth 5.2とCD品質ロスレスワイヤレスオーディオを提供するaptX LosslessをサポートするSnapdragon Soundに対応します。

Google Cloudと提携も発表

クアルコムはこのほか、AI分野でGoogle Cloudとの提携も発表。Google CloudのVertex AI Neural Architecture Search(NAS)を、スマートフォンやPC、オートモーティブ、IoT向けSnapdragonプロセッサに組み込みます。

Vertex AI Neural Architecture SearchはまずSnapdragon 8 Gen 1に搭載し、その後幅広いクアルコムの製品に組み込みます。また、Vertex AI Neural Architecture Searchは開発者が利用可能なQualcomm Neural Processing SDKに統合されます。

Engadget日本版より転載)

Google Cloudが自然言語処理スタートアップCohereと提携しインターフェースの革新を目指す

Google CloudCohereとの複数年のパートナーシップを発表した。このアーリーステージスタートアップは、デベロッパーが自分のアプリケーションに自然言語処理(NLP、Natural Language Processing)をさまざまなかたちで組み込めるために、そのプラットフォームを提供している。ソリューションはインフラストラクチャのリソースを大量に必要とするため、Google Cloud Platform(GCP)がパートナーシップに基づいてそれらを提供していくことになる。

両社はまた、市場化のための取り組みも共同で計画し、それによりCohereはスタートアップとしての力をつけ、GCPの営業チームの力を借りてそのユーザー数や売上を伸ばしていく意向だ。

Google CloudのCEOであるThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏によると、CohereはGoogle CloudのTensor Processing Unit(TPUs)チップのすばらしいユースケースを提供しており、Googleが内部で行ってきたことをベースとして利用している。

「第一に、これは私たちがGoogleで自分たちが使うために作ってきた技術の完璧な例です。私たちは現在、それらを他のプラットフォームが利用できるようにクラウド上で提供していません。しかしCohereのケースでは、利用できる能力を彼ら自身が見つけて、モデルを構築し、それらをTPUsの上で訓練しています。そのことによって彼らには、極めて差別化された能力が備わっています」とクリアン氏はいう。

Cohereの共同創業者でCEOのAidan Gomez(エイダン・ゴメス)氏は以前Google Brainにいた。同氏によると、彼の企業は、この高度なテクノロジーをすべてのデベロッパーが利用できるためのNLPソリューションを作ろうとしている。「私たちは大量のデータをほじくり返して巨大なモデルを作り、それらをTPUの巨大なポッドで訓練しています。また、その極端に大きなモデルをほとんどどんなプロダクションシステムでもレイテンシーの許容範囲に収めるために、最適化にも努めている」と語る。

彼によると、ワークロードを最適化することによって、Cohereはこの高度な技術のすべてへのアクセスをオープンにし、デベロッパーがモデルにアクセスでき、Cohereが提供しているモデルに基づいてNLPベースのソリューションを構築できるようにしている。今起こりつつある重要なシフトは、テキストベースのUIから、自然言語による対話的なインターフェースへの移行であり、Cohereなどはその変化の動因の1つだ。

クリアン氏は続けて「今の最先端技術では、大多数の人たちのコンピューターの使い方がGUIや画面を介するものになりつつあります。しかし多くの人は、コンピューターをたった1つの使い方で体験したいとは思っていません。彼らはコンピューターといろいろな方法、しかも自然な方法で対話したいと望んでいるため、人びとがシステムと対話する方法の進化の次の大きな段階は言葉だ」という。

三大クラウドのCEOが、ただのいちスタートアップとの提携で記者発表を行なうなどまずあることはない。しかしクリアン氏によると、TPUの使い方としてこれは特別に強力でクリエイティブな例だ。「Cohereの技術を実際に使ってみれば、それがとてもエレガントに動くことに気づくでしょう。それは、Aidanのチームが作ったソフトウェアと、TPUが提供する計算インフラストラクチャの組み合わせによるものだ」とGoogle Cloudのトップはいう。

Cohereは2019年に、ゴメス氏とNick Frosst(ニック・フロスト)氏とIvan Zhang(イワン・チャン)氏がトロントで創業した。同社はこれまで、Index VenturesやRadical Ventures、Section 32、そしてAIエンジェルの人名録のトップを飾るような著名エンジェル、Geoffrey Hinton(ジェフリー・ヒントン)氏やFei-Fei Li(フェイ・フェイ・リー)氏などから、計4000万ドル(約45億7000万円)を調達している。

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルがCMEグループの10年におよぶGoogle Cloudへの移行の契約に約1137億円投資

米国時間11月4日、Google Cloudが、世界最大のデリバティブ取引所CME Groupとの大きな契約を発表し、今後10年間をかけて、CMEの先物取引とオプションのマーケットをクラウドへ移すことになった。Googleは契約金の額を発表していない。

Google Cloudの戦略的産業担当副社長であるPhilip Moyer(フィリップ・モイヤー)氏によると、これは顧客がワークロードをクラウドへ移してGoogleがそれを助けるという、一般的な契約ではない。「むしろこれは、GoogleとCMEによるデモンストレーションであり、金融サービス産業における最も困難な部分をクラウドへ移行させることに、我々が真剣にコミットしていることを示すものです」とモイヤー氏はいう。

モイヤー氏によると、本契約が難しい点は、CMEのような企業にもなるとセキュリティとレイテンシーと冗長性、リカバリーの要求がとても厳しいことだ。両社は契約の構成や費用条件を明言していないが、計画ではそれを複数のフェーズで実装していくという。最初は、レイテンシーの要求がもっとも低い容易なワークロード、その次がデータ分析のツールとなる。

「この2番目のフェーズでは、本当のイノベーションに注力しなければなりません。データとその分析をよりリアルタイムにし、新しいプロダクトを作り、マーケットをもっと効率的にしなければなりません」とフィリップ・モイヤー氏はいう。一方、最後のフェーズでは、ワークロードのレイテンシーに最も敏感な部分をクラウドへ移す。

モイヤー氏にとってもこれは巨大な契約であり、10年間ですべてがうまくいけば、CMEのような金融サービス企業の業態を変えてしまう。「まさしく段階的なアプローチです。世界最大で、扱う内容も世界で最も多様な取引所を、クラウドへ移すのですから。そしてその間、Googleとしてはグローバルなネットワークと強度と、AIやML、データ技術、グローバルなアクセシビリティなどをフルに活かして、CMEの強さとアクセス性を全世界レベルで強化するつもりです」とモイヤー氏は語る。

契約が大規模であることに加えて、10億ドル(約1137億円)という投資額の構成も問題になる。モイヤー氏によると、リスクはCME自身も負うことになる。投資には、無議決権株式も含まれる。Googleから取締役が出ることはなく、投資の使い方を決めるのはあくまでもCMEの現取締役会だ。モイヤー氏によるとこの投資は、Googleが関係の長期的な成功に対するものでもある。

「お話したいことの1つとして、その関係が従来的なベンダー関係ではないことがあります。従来の、RFPやRFIをもらって成約という関係ではなく、私たち自身も、ゴールラインを超えるために必要なエンジニアリングにコミットすることになります。しかもそれは、数年後にスタートする話ではありません。今日から始まることであり、3つのフェーズのすべてを成し遂げる道のりなのです」とモイヤー氏はいう。

未知数も多いが、巨大な事業になるだろうし、成功すればより広大な金融サービス市場がGoogle Cloudに対して開くことになる。Googleはこの事業の一環として大規模なクラウドサービスを動かしているアドバンテージがある。その専門技術を活かして他の大規模クラウドサービスを顧客にできれば、クラウドサービスにおけるGoogle Cloudのマーケットシェアの針が、もっと目立つ大きさで動くだろう。

2021年の第3四半期ではGoogleのマーケットシェアは10%、売上は45億ドル(約5116億円)だった。Synergy Researchによると、マーケットリーダーのAWSは売上が160億ドル(約1兆8185億円)超、マーケットシェアは33%だった。同じく第3四半期で市場全体の規模は450億ドル(約5兆1147億円)だった。

関連記事:グーグルがハイブリッドクラウドに全力、エッジ・オンプレミスのマネージドソリューション新ポートフォリオを発表

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Google CloudがSparkのマネージドサービスを発表

Google(グーグル)は米国時間10月12日の同社Cloud Nextイベントで、フルマネージドサービスとして「Spark on Google Cloud」の提供を発表した。これにより、オープンソースの人気データプロセッシングエンジンをGoogle Cloud上のプレミアムなサービスとして利用できるようになる。

Googleのデータベース、アナリティクス、Looker担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのGerrit Kazmaier(ゲリット・カッツマイヤー)氏は次のように述べた。「このイノベーションで、Sparkがついにクラウドネイティブの世界にやってきます。データエンジニアやデータサイエンティストは、クラスタエンドの構成を心配することなくSparkを扱えるようになります。しかもGoogle Cloudのあらゆるデータサービスとも統合しました。そのため、BigQueryやVertex AI、Dataplexから直接Sparkを使い始めることができます。このようにSparkを簡単に利用でき、お客様は使い慣れたフレームワークやツールキットを使えます。データサイエンスのエクスペリエンスを、これからはクラウドネイティブで活用できるのです」。

Googleは「Google Cloudデータプラットフォーム向けとして世界初の、オートスケーリングでサーバーレスのSparkサービス」と説明している。しかしSparkの人気を考えれば、Sparkの実行や管理を提供する企業はたくさんある。SparkはDatabricksプラットフォームの中心でもあるが、DatabricksはSparkの開発者が創業し、十分な資金を調達しているスタートアップであることを考えれば当然だろう。

あなたはこんなふうにも思うかもしれない。「Google Cloudには、Dataprocの一部としてマネージドのSparkサービスがすでにあるんじゃないの?」(もちろん、あなたがGoogle、Amazon、Microsoftのクラウドのすべてのサービスを覚えている20%のうちの1人ならば、ということだが)

しかしカッツマイヤー氏は筆者に対し、異なる顧客をターゲットにした別のサービスであると説明した。すでにSparkやHadoop、あるいはMapReduceやPrestoなどのシステムを構成して利用しているなら、 Dataprocはこれらすべてをマネージドサービスとして今後提供する。しかし同氏としては、Google Cloudのデータサービスに関して開発しているものはすべてシンプルであることが大切で、特にデータのジャーニーを始めたばかりの企業が簡単に利用できることを重視しているという。

同氏はこう語った。「データチームを編成しているときに、データエンジニアを1人、データサイエンティストを1人雇いますか?最初に『これからストレージシステムを構築します。メタデータのシステムをゼロから作るんです』なんて言いたいでしょうか?もちろんそうではないですよね。しかし現状では、実際にそうせざるを得ません。これからはサーバーレスのSparkがあります。『さあ、やろう』というだけです」。

画像クレジット:Aki Ikonen / EyeEm / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

Google CloudがBigQuery Omniの一般提供を開始

Google(グーグル)は2020年夏にAnthosベースのマルチクラウドデータ分析ソリューションであるBigQuery Omniを初めて公開した。米国時間10月12日、毎年恒例のCloud Nextイベントで同社はBigQuery Omniの一般提供を開始したと発表した。Omniの特徴は、標準的なBigQueryのインターフェイスを使ってMicrosoft(マイクロソフト)のAzureやAWSなど他のクラウドにあるデータのクエリを実行できることだ。クラウド間でデータを移動する必要はない。

関連記事:Google CloudのBigQuery Omniがアルファローンチ、GCPやAWS、Azureのデータをクエリ可能

Googleのデータベース、アナリティクス、Looker担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのGerrit Kazmaier(ゲリット・カッツマイヤー)氏は筆者に対し次のように語った。「データサイロは良くないと誰もがわかっていますが、あちこちのクラウドにデータサイロを作っているのが今の現実です。データサイロの新しい世代となり、世界の企業の多くがマルチクラウドの現実に生きていることを我々は認識しています。我々はマルチクラウドを横断するクロスクラウド分析の可能性をBigQuery Omniで提供しています。クロスクラウド分析は究極にシンプルな方法です。データの移動や、管理上の反復や冗長性を考える必要がなくなるからです。1つにまとめられたインターフェイスと1つの処理フレームワークとして、基本的にはBigQueryを採用して他のクラウドの多くの部分で利用できるようにした、エンジニアリングのすばらしい成果です」。

画像クレジット:Google

Google Cloudの顧客の多くがすでにこの機能を利用している。カッツマイヤー氏は、Johnson & Johnson(ジョンソン・エンド・ジョンソン)がこの機能を使ってGoogle CloudにあるデータをAWSのS3にあるデータと組み合わせたり、Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)がゲーム内購入の広告データを組み合わせたりしている事例を挙げた。

データサイロに関しては、Googleは現在はプレビューであるDataplexも2021年中に一般公開になると発表した。Dataplexは企業が複数のデータレイクやデータウェアハウスにまたがるデータの管理、監視、運用をするためのツールだ。

米国時間10月12日にGoogle Cloudが発表した多くの内容と同様に、BigQuery OmniとDataplexもほとんどの企業がマルチクラウド環境で運営されていることを認めた上でのもので、つまり有益なデータが複数のシステムに分かれているのがデフォルトである。複数のシステムにわたるデータの管理は面倒でエラーが発生しやすいが、最も重要なのはデータを1つのシステムにまとめるのが難しい(そしてたいていお金がかかる)ということだ。Googleは同社のサービスをさまざまなクラウドに広げてGCPから管理するアプローチをとっている。これはAnthosでKubernetesのクラスタを管理するアプローチであり、GCPの中心的なサービスの一部を同社のクラウド以外でも実行できるようにしたということになる。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルのビジネスインテリジェンスサービスLookerがライバルTableauと連携

2019年にGoogle(グーグル)はビジネスインテリジェンスサービスのLooker(ルッカー)を26億ドル(約2950億ドル)で買収した。Salesforce(セールスフォース)はTableau(タブロー)を157億ドル(約1兆7800億円)で買収した。米国時間10月12日、新たな統合によってライバルである2つのプロダクトの距離が縮まった。具体的には、TableauユーザーはまもなくLookerのセマンティックレイヤーにアクセスできるようになり、GoogleのLookerユーザーはまもなくLookerプラットフォーム上でTableauの視覚化レイヤーを利用できるようになる。

関連記事:Googleがデータ分析スタートアップのLookerを約2860億円で買収完了

一見するとありそうもない連携のようだが、ある意味、この連携により両方のサービスがそれぞれの強みを活かせるようになる。Tableauの高度な視覚化機能はこれまでずっとユーザーをひきつけてきたが、Lookerとは違ってデスクトップで生まれたプロダクトであり、同社のあらゆる努力にもかかわらずデスクトップとクラウドの分断がいまだに見られる。一方のLookerはクラウド生まれだがSQLを書けるようなテクニカルなユーザー向けのプロダクトで、ビジネスユーザーがデータを分析できるようにすることを目指すTableauとは異なる。こうしたことが、買収の時点では多くの意味でTableauやLookerがそれぞれの買収元と良い組み合わせだった理由でもある。

Googleのデータベース、アナリティクス、Looker担当バイスプレジデント兼ゼネラルマネージャーのGerrit Kazmaier(ゲリット・カッツマイヤー)氏は「シンプルさを求めてデータに取り組む人はすべてGoogleのパートナーであると考えています。我々はDatabricks(データブリックス)とも連携しています。我々が最終的に妥当な問題全般を解決すれば、誰にとっても利益があります。そしてGoogleのすばらしいパートナーであるTableauのような企業もデータをもっとシンプルに扱うことに取り組んでいるなら、それはコラボレーションの本当に優れた基盤です」と述べた。

同氏はLookerのセマンティックモデルによってテーブルの柔軟性が大幅に増し、Tableauによってユーザーは視覚化とストーリーテリングに関してデータを民主化するツールをたくさん手にすることができると説明した。そう考えると2社がすでに多くの顧客を共有していることは、おそらく驚きではないだろう。「お客様がLookerMLに対してTableauを使えたらどれほど便利だろうと我々は考えました。つまり何度もコピーしたりするような複雑なことは必要なくなります。一方Looker側については、TableauをLookerに接続できればLookerのお客様にとってどれほど便利でしょうか。ほんとうに、大いに役に立つと我々は考えたのです」(同氏)。

カッツマイヤー氏は、最終的に重要なのはカスタマーエクスペリエンスであり、サービスが顧客にとってどのように価値を生み出すかであると語る。「自社だけが成功しようとし始めた企業は例外なく困難に直面すると私は思います」。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

グーグルがハイブリッドクラウドに全力、エッジ・オンプレミスのマネージドソリューション新ポートフォリオを発表

米国時間10月12日、Google(グーグル)は、同社の年次カスタマーカンファレンス「Google Cloud Next」において、ハイブリッドクラウドサービスの幅広いポートフォリオを発表した。これらのサービスでは、Googleのデータセンターネットワークのエッジ、パートナー施設、または顧客のプライベートデータセンターでコンピューティングを提供し、すべてを同社のクラウドネイティブ管理コンソールであるAnthosで管理する。

今回の発表の背景には、パブリッククラウドには必ずしも適さない特殊なワークロードを持つ顧客を取り込むという戦略があると、GoogleのIaaS担当GM兼VPのSachin Gupta(サチン・グプタ)氏は述べている。このようなニーズは、潜在的な顧客から絶えず聞かれていたという。

そのためには、合理的な代替案を提供することが必要だ。「パブリッククラウドへの移行を妨げるさまざまな要因があることがわかりました」とグプタ氏はいう。例えば、低遅延の要求があったり、処理しなければならないデータが大量にあったりして、そのデータをパブリッククラウドに移したり戻したりすることが効率的でない場合がある。また、セキュリティ、プライバシー、データの残留、その他のコンプライアンス要件がある場合もある。

このような背景から、Googleは純粋なパブリッククラウドではないさまざまな状況で機能する一連のソリューションを設計した。ソリューションは、Googleの世界各地のデータセンター、通信事業者やEquinixのようなコロケーション施設のパートナーデータセンター、あるいは企業のデータセンター内の管理対象サーバーの一部として、エッジに設置することができる。

後者については、Dell(デル)やHPEなどのパートナー企業が提供するサーバーであり、Amazon(アマゾン)が提供するOutpostsのようにGoogleが製造・管理するサーバーではないことに注意が必要だ。また、これらのマシンはGoogleのクラウドに直接接続されるわけではないが、Googleがすべてのソフトウェアを管理し、IT部門がクラウドとオンプレミスのリソースを一元的に管理する方法を提供するというところも興味深い点だ。これについては後述する。

ホスティングソリューションの目的は、コンテナとKubernetes、または仮想マシンを使用した、一貫性のある最新のコンピューティングアプローチだ。Googleは安全なダウンロードサイトを通じてアップデートを提供しており、顧客は自分でチェックすることも、サードパーティベンダーにすべてを任せることもできる。

このアプローチを支えているのは、数年前に発表した制御ソフトウェアであるAnthosだ。Anthosを使用することで、顧客は、オンプレミス、データセンター、パブリッククラウドなど、それがMicrosoft(マイクロソフト)やAmazonのような競合他社のクラウドでも、ソフトウェアがある場所でコントロールし、管理することができる。

Google Cloudハイブリッド・ポートフォリオ・アーキテクチャ図(画像クレジット:Google Cloud)

このようなアプローチは、Googleがハイブリッドの市場機会を利用して、クラウドの中で独自のシェアを開拓しようとしていることを示している。この分野はMicrosoftやIBMも開拓しようとしているが、Anthosを使ってすべてをつなぎ合わせながら、このような包括的なプラットフォームアプローチをとることで、とりわけ特定のワークロードをクラウドに移行できないような固有の要件を持つ企業において、Googleが支持される可能性がある。

Googleは、8月に発表された最新の四半期報告書において、クラウドインフラストラクチャ市場のシェアが初めて10%に達し、54%という活発な成長率を示した。市場シェアが33%のAmazonや20%のMicrosoftにはまだ遠く及ばないものの、少しずつ勢いを増してきていることがうかがえる。

関連記事:クラウドインフラ市場は2021年第2四半期も成長を続け、売上高は約4.6兆円に到達

画像クレジット:Sean Gallup / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Aya Nakazato)

Google Cloudがクラウド使用による二酸化炭素排出量を表示する機能を提供へ

Google Cloudは米国時間10月12日、ユーザーにカスタムの二酸化炭素排出量レポートを提供する新しい(そして無料の)機能を発表した。このレポートでは、クラウドの利用によって発生する二酸化炭素の排出量を詳しく説明する。

Google Cloudは以前から、2030年までに二酸化炭素をまったく排出しないエネルギーで稼働させたいと述べてきた。すでにエネルギー使用を再生可能エネルギーの購入とマッチングさせている。しかし、Google Cloudに限らず、今日では実質的にほぼすべての企業が、二酸化炭素排出量の目標を達成する方法を検討している。クラウドコンピューティングの役割を定量化することは非常に困難だが、ここでは企業が社内外でクラウドを利用する際の環境への影響を簡単に報告できるようにすることを目指している。

画像クレジット:Google

「顧客は、このデータを報告だけでなく、内部監査や二酸化炭素削減の取り組みに活用することができます。HSBC、L’Oreal、Atosなどの顧客と協力して構築した二酸化炭素排出量レポートは、顧客が気候変動に関する目標を達成できるよう、新たなレベルの透明性を提供します」と、CTOオフィスでGoogle Cloudの持続可能性のためのデータおよびテクノロジー戦略をリードするJenn Bennett(ジェン・ベネット)氏は話す。「顧客は、プロジェクトごと、製品ごと、地域ごとのクラウドの二酸化炭素排出量を長期的に監視することができ、ITチームやデベロッパーに二酸化炭素排出量の削減に役立つ指標を提供することができます。デジタルインフラの排出量は、実際には環境フットプリントの一部に過ぎませんが、各社が掲げる二酸化炭素削減目標に対する進捗状況を測定するためには、二酸化炭素排出量の計算が必要です」と語る。

画像クレジット:Google

ベネット氏が指摘したように、企業が正確な報告を行うことができれば、自然な流れとして、気候変動への影響を軽減するための提案を行うことが次のステップになる。具体的には、Google Cloudの「Unattended Project Recommender」に二酸化炭素推定値を追加したり「Active Assist Recommender」に持続可能性への影響のカテゴリーを追加したりすることになる。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星通信のPlanet LabsとGoogle Cloudがデータ分析契約で提携強化

衛星通信事業者のPlanet Labsは、Google Cloudとの既存のパートナーシップを強化する。新たな契約により、Planet Labsの顧客は、データの保存や処理にGoogle Cloudを利用できるほか、データ分析倉庫BigQueryといったGoogle以外のプロダクトにもアクセスできるようになる。

両社によるコラボレーションの始まりは2017年にさかのぼる。そのときGoogleは、同社の衛星画像事業Terra BellaをPlanetに売却した。その売却協定の一環としてGoogleは、Google Earthの画像の利用をPlanetにライセンスする複数年の契約に署名した。Planetはまた、同社の内部的なデータ処理とホスティングにGoogle Cloudを利用している。

今回の最新合意でPlanetの顧客は、BigQueryを利用して膨大な量の衛星画像データを分析でき「需要が増加している全惑星規模の衛星データの分析を、クラウドの力を利用して行いたい」とPlanetのニューズリリースでは述べられている。

Planetのプロダクトとビジネスを担当するKevin Weil(ケビン・ウェイル)社長は「Planetの顧客はスケーラブルな計算機能力とストレージを求めています。またGoogle Cloudの顧客は衛星データとその分析にもっと広範なアクセスをしたいと願っています。このパートナーシップは両者にとってWin-Winであり、顧客の事業運用のDXを助け、Planetのユニークなデータセットにより、デジタルファーストの世界で競争できるようにします」という。

Planetはおよそ200の衛星のネットワークを運用しており、それはどの国の政府よりも大きい。また集めたデータに対する分析も提供している。2021年7月、同社はSPACのdMY Technology Group IVとの28億ドル(約3085億円)の合併による上場を発表して、その他の多くの宇宙企業の仲間入りをすることになった。この取引でPlanetには5億4500万ドル(約600億円)のキャッシュが入ると思われるが、それにはBlackRockが管理するファンドであるKoch Strategic Platforms、Marc Benioff(マーク・ベニオフ)氏のTIME Ventures、そしてGoogleからの公開株へのプライベート投資2億ドル(約220億円)が含まれる。

関連記事:約200機からなる地球観測衛星コンステレーションのPlanetが約3097億円のSPAC合併で上場へ

カテゴリー:宇宙
タグ:Planet LabsGoogle CloudGoogle人工衛星衛星コンステレーション

画像クレジット:Planet Labs

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドインフラ市場は2021年第2四半期も成長を続け、売上高は約4.6兆円に到達

野球で、高い天井が見込めるなどという。若い選手の伸び代が大いにあるということだ。同じことがクラウドインフラストラクチャの市場にも言えるかもしれない。この市場は成長を続け、今後すぐに成長が鈍る兆候は見えない。主要ベンダーの第2四半期の売上合計は420億ドル(約4兆6000億円)に達し、第1四半期より20億ドル(約2200億円)増加した。

Synergy Researchのレポートによると売上は39%のペースで増えており、4四半期連続で増加している。これまで通りAWSがトップだが、Microsoftが急速に成長しGoogleも勢いを維持している。

AWSは依然として市場の論理をものともせず、前四半期をさらに5ポイント上回る37%の成長を見せた。成熟した市場を持つAWSとしてはすばらしい伸びだ。Amazonのクラウド部門の売上は148億1000万ドル(約1兆6300億円)でランレートは600億ドル(約6兆6000億円)近くに達し、市場シェアは33%でトップを走っている。シェアはここ数年このあたりにとどまっているが、市場規模が大きくなっているので売上も伸び続けている。

Microsoftの成長は51%とさらに急速だ。Microsoftのクラウドインフラストラクチャのデータを確実につきとめるのはいつも難しいが、Synergy Researchによると市場シェアは20%で売上は84億ドル(約9220億円)と、前四半期の78億ドル(約8560億円)から増加している。

GoogleもThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏のリーダーシップのもとでゆっくりと着実に成長を続けている。第2四半期の売上は42億ドル(約4610億円)で54%の増加となった。市場シェアは10%で、Google Cloudのシェアが2桁台のパーセンテージになったのはSynergyが四半期ごとのデータを調査するようになってから初めてだ。前四半期の売上は35億ドル(約3840億円)だった。

画像クレジット:Synergy Research

ビッグ3に続くAlibabaは前四半期と同じくシェア6%と堅調で(ただし発表はまだで近日中の予定)、IBMは前四半期よりも1ポイント落として4%となった。IBMはハイブリッドクラウドマネジメントへと移行する中で純粋なインフラストラクチャとして苦戦しているためだ。

SynergyのチーフアナリストであるJohn Dinsdale(ジョン・ディンスデール)氏は、ビッグ3はこの成長を加速するために多額の資金を投じているという。同氏は発表の中で「Amazon、Microsoft、Googleの合計で、四半期あたり通常250億ドル(約2兆7500億円)以上の投資をしており、その多くは340カ所以上のハイパースケールデータセンターの建設や設備のためです」と述べた。

一方、Canalysの分析も同様の数字を示しているが、市場全体の売上をSynergyをやや上回る470億ドル(約5兆1500億円)としている。Canalysの調べによる市場シェアは、Amazonが31%、Microsoftが22%、Googleが8%となっている。

CanalysのアナリストであるBlake Murray(ブレイク・マリー)氏は、クラウドベンダーがその巨大なデータセンターの運営にあたって再生可能エネルギーの利用を増やしていることから、企業の業務がクラウドへと移行している理由の1つは環境に対する持続可能性のゴールを達成するためだと述べている。

マリー氏は発表の中で「クラウドベンダーが利用するベストプラクティスとテクロジーは、業界の他の部分にも今後広がっていくでしょう。一方、顧客は環境に対する責任の一端を果たし持続可能性のゴールを達成するためにクラウドサービスの利用を増やしていくでしょう」と述べた。

企業はデータセンタービジネスから離れてクラウドに移行しているのか、あるいはビッグ3の持続可能性の取り組みに便乗したいのかに関わらず、着実にクラウドに移行している。世界全体でのクラウド利用率は25%との推計もあり、特に米国外では多くの市場が未開拓であることから今後も成長を続ける可能性は高い。

このことはビッグ3や、市場シェアに食い込んで売上を大きく伸ばそうとしているビッグ3より小規模の事業者にとっては良い兆候だ。Synergyのディンスデール氏は「ビッグ3より小規模でターゲットを絞っているクラウドプロバイダにとってはまだ大いにチャンスがありますが、ビッグ3の目の飛び出るような数字から目を離せるほどの状況にはならないでしょう」と述べた。

確かに今のところ、ビッグ3が天井にぶつかるとは考えにくい。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:クラウドストレージクラウドコンピューティングSynergy ResearchAWSMicrosoft AzureGoogle CloudAlibaba Cloud

画像クレジット:Jorg Greuel / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

Alphabetが第2四半期決算で予測超え、Google Cloudが売上54%増で損出減少

主要テクノロジー企業の決算報告が相次ぐ中、Alphabet(アルファベット)は米国時間7月28日株式市場終了後に第2四半期決算を発表した。検索・サービスの巨人は、2021年6月30日締め四半期に619億ドルの売上を計上し、純利益は185億ドル(約2兆300億円)、1株当たり利益は27.26ドルだった。売上は62%増、純利益は166%増だった。もちろんこれはパンデミックに影響された2020年第4四半期との比較だが、それでもこの成長は注目に値する。

Androidメーカーの結果は、予想を打ち砕いた。ウォール街はGoogle(グーグル)の親会社の売上を560億ドル(約6兆1500億円)、1株当り利益を19.14ドルと予測していた。しかし時間外取引でのAlphabet株の値上がりは1桁パーセント前後であり、Microsoft(マイクロソフト)の公式予想売上を上回る結果に対する市場の静かな反応と似ている。

関連記事:マイクロソフトの第2四半期は47%増益、クラウド事業が過去最高の業績

Alphabetはいくつか変動要素を持つ会社なので、もう少し数字を分解してみよう。

YouTubeの売上70億ドル(約7700億円)は対前年比84%増だ。これはYouTubeの年齢を踏まえると率直にいって好調な結果だ。それでも、ライバルサービスに食われるまでにどれほど多くの広告をYouTubeに載せられるのかは気になるところだ。別の報告でYouTubeは、YouTube Shorts(ユーチューブ・ショート)が「日間グローバルビューが150億回を超えた」ことを発表した。2021年3月に詳しく伝えられた日間ビュー65億回の131%増だ(誰もがTikTokを食べたがっているらしい)。

Google Cloud(グーグル・クラウド)の売上は46億ドル(約5050億円)、対前年比54%増だった。この成長率はMicrosoftが同社のクラウド製品であるAzure(アジュール)について報告した数字よりわずかに大きい。しかし、Microsoftの売上規模はGoogleよりも大きいと考えられているため、投資家はAlphabetの報告よりも大きい成長率を期待していたのかもしれない。Google Cloudは営業損失を1年前の第2四半期の14億ドル(約1540億円)から、今四半期の5億9100万ドル(約650億円)へと縮小した。これは素直に良い結果だ。

Other Bets(その他の投資)部門では売上が上昇した!ただし損失も。Alphabetのskunkworks(最先端技術開発)グループは売上1億9200万ドル(約210億円)を計上し、1年前の1億4800万ドル(約160億円)を上回った。しかし、さまざまな試行錯誤は四半期で14億ドルを失い、前年同期の11億ドル(約1210億円)より悪化した。

営業利益194億ドル(約2兆1300億円)には、Other Betsコストセンターが「含まれている」ため、Alphabetは将来の形ある売上につながるプロジェクトに余裕をもって投資し続けることができる。

しかし、AlphabetのGoogle主要サービス(検索、YouTubeなど)以外のすべての部分が同四半期で損を出している。

>画像クレジット:Alphabet

しかし、真実はAlphabetが報告した2020年第2四半期から2021年第2四半期にかけての壮大な営業利益増だ。営業利益の加速ぶりを見て欲しい!これは少々混乱させるわかりにくい内容だ。

その他の注目ポイント。Googleの株式再購入プログラムは一部変更されたが、一般投資家に影響を与えるものではない。というわけでAlphabetの決算報告記事は、今のところ時間外取引で株価を上げることはできていないが、1兆7500億ドル(約192兆1500億円)を超える時価総額を守るのに十分な好成績だった、としておこう。

巨大テック企業にとってすばらしい時だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AlphabetGoogleGoogle Cloud決算発表YouTube

画像クレジット:Michael Short/Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook

グーグルがARM EPYCベースのTau仮想マシンをクラウド向けに発表

米国時間6月17日朝、GoogleはARMの第3世代EPYCプロセッサーをベースとする新たな仮想マシン系ファミリー「Tau」のローンチを発表した。同社によると、この新しいx86互換のシステムは、標準のVMに比べて42%高い価格性能比を提供する。とりわけGoogleは、AMD EPYCプロセッサーの利用を2017年にGoogle Cloudで始めているが、Amazonのクラウドでの利用は2018年からになる。

Googleの言い方では、Tauファミリーは既存のクラウドVMの複数世代をすべて「一気に跳び越えて」いる。構成は多様だが、最大は1VMあたり60vCPUで、メモリーは1vCPUあたり4GBだ。ネットワーキングの帯域は最大で32Gbps、そしてさまざまなネットワーク上にあるストレージを接続できる。

Google CloudのCEOであるThomas Kurian(トーマス・クリアン)氏は、プレスリリースで「あらゆる業界のお客様が、より要求の厳しいデータインテンシブなワークロードに対応し、パフォーマンスの向上とコスト削減のための戦略的な方法を模索しています。AMDのような重要な戦略的パートナーとの協力により、我々はサービスの幅を広げ、業界で最もクリーンなクラウド上で、計算量の多いビジネスクリティカルなアプリケーションに対して最高の価格でお客様に提供することができました」と述べている。

画像クレジット:Google

GoogleはすでにTwitter、Snap、DoITなど一部な高名な顧客と初期的トライアルの契約を結んでいる。TwitterのプラットフォームリードであるNick Tornow(ニック・トルノフ)氏は、ブログで次のように述べている。「2桁のパフォーマンス向上の可能性を示す初期テストに興奮しています。私たちは、Google Cloudと協力して、新しいTau VMファミリーを使用することで実現できる特定のコンピュートワークロードの価格と性能に関するメリットをより深く評価しています」。

画像クレジット:Google

2021年第3四半期にTauのVMがGoogle Cloudに登場する。同社は事前登録しているクライアントにはすでにシステムをオープンしている。料金は構成次第だ。例えば32vCPUのVMで128GBのRAMなら1時間約1.35ドル(約149円)になる。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:GoogleGoogle Cloud

画像クレジット:Adam Berry/Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

グーグルのAirTable対抗ワークトラッキングツール「Tables」がベータを卒業、Google Cloud追加へ

2020年秋、Google(グーグル)の社内インキュベーターであるArea 120は「Tables」というワークトラッキングツールを披露した。そして米国時間6月14日、同社は、Tablesが正式にArea 120を「卒業」してGoogleプロダクトの一員になり、2022年中にGoogle Cloudへ加わると発表した。

Tablesのプロジェクトは、長年のGoogle社員で今はTablesのゼネラルマネージャーであるTim Gleason(ティム・グリーソン)氏が始めた。彼はGoogleに10年間在籍しているが、それ以前から長くテクノロジー業界にいる。グリーソン氏によると、Tablesを思いついたのは彼自身、プロジェクトの追跡管理が苦手だったからだ。複数のチームが、さまざまなドキュメントに分散している複数のノートやタスクを共有して仕事を進めるが、それらのドキュメントはすぐに陳腐化してしまう。

1つのプロジェクトに関連するノートやタスクが、人間が手作業でアップデートするさまざまなドキュメントに記述されているという状態を脱してTablesでは、ボットを使ってプロジェクトのチームメンバーをガイドし管理する。例えば仕事が遅れているときには、スケジュールを調節するためのリマインダーをメールで送らなければならない。新しいフォームが届いたらチャットルームでそれを告知する。一部のタスクを他の人たちのワークキューに移動する。スケジュールが変われば、タスクをアップデートする。これらの雑多な仕事をすべてTablesで管理できるようになる。

Tablesのチームによると、それはいろいろなユースケースでソリューションになりえる。例えばプロジェクト管理はもちろんのこと、ITの運用やカスタマーサービスの追跡、CRM、求人、製品開発など、さまざまな部門で使える。

画像クレジット:Google

このサービスは2020年9月にテストを始めたが、Googleによると、たちまちファンが増えたという。

Google Cloudの最上位管理者であるAmit Zavery(アミット・ザベリー)氏によると、初期の顧客からのフィードバックは好評で、しかもいろいろなプロジェクトで利用されていた。そのことからも、今後の成長性が伺われる。しかしザベリー氏は現在の顧客数を明かしていない。

ザベリー氏によると、パンデミックもTablesの採用の動機になっているだろうという。

彼は、誰もがあわててデジタル化に取り組むようになった現状に対して「新型コロナウイルスで起きたことを見てみれば、私が話を聞いた多くの顧客たちの中でワークトラッキングが大きな関心の的になったこともよく理解できます」という。

在庫管理、ヘルスケアのサプライトラッキング、住宅ローンのワークフローなどが最も多かったユースケースだ。しかし全体としてTablesは、チームが予想した以上に多様な業界で採用された。平均的な姿としては、およそ30名から40名の部、課、事業部などがTablesを使っている。

また、他のサービスからの乗り換えではなく、これまで手作業で行ってきたことをTablesで管理するというタイプのユーザーが最も多い。

「複数の文書に細切れ状態で分散していたり、それらの文書を複数の違う人が持っていたり、という状況はとても多いものです。またそういうところが最もテクノロジーのありがたさを感じてくれます。これからは中央の1カ所に情報が構造化されて集まり、それを確認したりアップデートしながら仕事を進めればいいのです。1つのユースケースやプロジェクトが15種類のスプレッドシートに分散し、それらの構造的関係を誰も知らない、という悲惨な状況が終わるのです」とザベリー氏は説明する。

Tablesの採用が急速に進んだのは、生産性が目に見えて向上したからだ。それには、既存のデータウェアハウスやその他のサービスを統合できることも大きい。現在、TablesはOffice 365やMicrosoft Access、Googleスプレッドシート、Slack、Salesforce、BoxそしてDropboxといった既存サービスをサポートしている。

Area 120からローンチしたプロジェクトは、有料サービスはとても少ない。Tablesはその少ない中の1つで、他にはチケットを販売するFundo、会話的広告プラットフォームのAdLingo、最近GoogleがローンチしたOrion WiFiなどがある。ベータのときは1人の個人がTablesを無料で利用でき、最大100テーブル1000行まで使える。有料プランは月額10ドル(約1100円)で最大1000テーブル1万行までの予定だ。有料になると大型のアタッチメントや、多様なアクション、履歴や共有、フォーム。自動化、ビューなどの高度化がサポートされる。

ただしGoogleによると、ベータ期間の課金はいっさいない。

TablesがGoogle Cloudの正規のプロダクトになれば、Googleのノーコードアプリ構築プラットフォームであるAppSheetと統合されるだろう。こちらも無料のティアがあるので、フリーミアムとしての利用は継続できる。高度な機能を使いたい人は、有料プランにアップグレードできる。AppSheetだけをスタンドアローンで使いたい、というニーズでもOKだ。

GoogleはTablesをWorkspaceにも統合して、ユーザー数をさらに増やすつもりだ。

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それについてザベリー氏は次のように述べている。「TablesはWorkspaceにも統合するつもりです。そのとても大きなユーザーコミュニティも、Tablesのような機能を欲しがっている人たちです。そのコミュニティには、大量のSheetsユーザーもいれば、大量のDriveユーザーもいる。しかも彼らが集めるデータは膨大です。Tablesは、彼らの仕事を自動化しその体験を強化できます」。

画像クレジット:Google

現在、ノーコードでしかもデータベースをスプレッドシートベースで構築するという、企業デジタル化の1つのタイプがブームだ。Tablesは明らかに、このブームに乗ろうとしている。たとえばTablesがリリースされる数日前には、AirTableが1億8500万ドル(約203億7000万円)のシリーズDを完了した。そのときの投資前評価額は、25億8500万ドルだった。

TablesがGoogle Cloudの一員になっても、2022年に完全にCloudのプロダクトとして利用できるようになるまでは、ベータバージョンを無料で使える。Google Cloudプロダクトの正規化とともに、ユーザーはそちらへ移行することになる。

AppSheetの統合を皮切りに今後のTablesはさらに新しい機能を加えていく予定だ。だから今後必ずしも、他のプロダクトに乗り換える必要はない。また、使いやすさやモバイルのサポート、インターネット接続、バックエンドの充実などでも改善していく、と同社は言っている。

正価は未定だが、上述している現在発表されているプランと大きくは変わらないだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:GoogleGoogle CloudノーコードTables

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Google CloudのVertex AIは機械学習を果てしないパイロットから価値を生む実用技術にする

米国時間5月18日のGoogle I/Oにおいて、Google Cloudは開発者が自分のAIモデルをもっと容易にデプロイしメンテナンスできるための、新しいマネージド機械学習プラットフォームであるVertex AIを発表した。I/Oは以前からモバイルとウェブのデベロッパーが対象であり、Google Cloudのニュースはあまりなかったため、やや違和感のある発表にも思えたが、GoogleがVertexの発表を本日行なうと決めた事実は、この新しいサービスが多様な分野の開発者にとって重要と同社が考えている証拠だ。

Vertexのローンチは、Google Cloudのチームが反省をたくさんしたことの結果だ。Google CloudのAI Platformでプロダクト管理を担当しているディレクターのCraig Wiley(クレイグ・ワイリー)氏は、次のように語る。「私見では、エンタープライズの機械学習は今危機にあります。その分野で何年も仕事した者の1人として現状を見れば、Harvard Business Reviewなどに論評を書いているアナリストの誰もが、今や大半の企業が機械学習に投資をしたり、投資に関心を示しているが、どこもそこから価値を得ていないと言っている。こんな状況は、そろそろ変わるべきです」。

画像クレジット:Google

2016年から2018年までAWSのAIサービスであるSageMakerのゼネラルマネージャーを経験して2019年にGoogleに来たワイリー氏によると、Googleのように自分たちのために機械学習を動かすことのできる企業は、どうやればそれが変革への力になるかを実際に見て知っている。しかし彼がいう問題とは、大きなクラウドがそんなサービスを提供するときは何十ものサービスに分割されてしまうことだ。「しかも(Google自身も含めて)そんなサービスの多くが袋小路にあります。そこでVertexの目標は、エンタープライズにとって機械学習への投資からのROIの時間を短縮し、モデルを作ったことが終わりではなく、彼らが作ったモデルから確実に、リアルな価値を得ることです」とワイリー氏はいう。

そこでVertexは、極めて柔軟性に富んだシステムとして、デベロッパーやデータサイエンティストのスキルのレベルがそんなに高くなくても、モデルを迅速に訓練できるようにする。Googleによると例えばモデルの訓練に要するコードの行数は他社の類似製品に比べて80%少なく、しかも彼らはモデルの全ライフサイクルを自分で管理できるようになる。

画像クレジット:Google

このサービスにはGoogleのAIオプティマイザVizierが統合されていて、機械学習のモデルのハイパーパラメータを自動的にチューニングする。これによりモデルのチューニングに要する時間が大幅に減り、エンジニアはより多くの実験をより短時間でできるようになる。

また、Vertexが提供している「Feature Store」でユーザーは機械学習のいろいろな機能をサービスし、シェアし、再利用できるようになる。そしてVertex Experimentsという機能を利用するとモデルの選択が速くなり、モデルの本番へのデプロイが加速される。

デプロイは、継続的モニタリングサービスとVertex Pipelinesが支援する。後者はGoogle CloudのAI Platform Pipelinesからの改名で、モデル用のデータを準備および分析し、モデルを訓練し、それらを評価してプロダクション(本番展開)へとデプロイしていくワークフローの管理を助ける。

いろいろなタイプのデベロッパーにとってとっつきやすいシステムにするために、このサービスには3つのインタフェイスがある。「ドラッグ&ドロップのツール」と「高度なユーザーのためのノートブック」、そして意外かもしれないがBigQueryのデータウェアハウスの中で、SQLの標準的なクエリを使って機械学習のモデルを作り実行するGoogleのツールである「BigQuery ML」だ。

Google CloudのCloud AIとIndustry Solutionsの副社長兼ゼネラルマネージャーであるAndrew Moore(アンドリュー・ムーア)氏は、次のように述べる。「Vertex AIを作るときには、2つのことを指針とした。1つはデータサイエンティストとエンジニアを組織の藪から救い出すこと、もう1つは、AIを果てしないパイロット事業から正規のサイズのプロダクションへと移行させることに誰もが真剣になるために、業界全体としての気運を作り出すことだ。このプラットフォームとして実現したことを、私たちはとても誇りに感じている。それは、データサイエンティストとエンジニアがクリエイティブな仕事に充実感を持てるような、新世代のAIの本格的なデプロイを可能にするものだからだ」。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GoogleGoogle I/O 2021Google Cloud機械学習Vertex AI

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Google Cloudがクラウド財務管理のオープンソース団体「FinOps Foundation」に参加

Google Cloudは米国時間4月6日、FinOps Foundationにプレミアメンバーとして参加すると発表した。

FinOps FoundationはLinux Foundationが主催する比較的新しいオープンソース団体で、2020年設立された。その目的は「クラウド財務管理」 分野の企業を集め、最適な手法とスタンダードを確立を目指している。クラウド財務管理という言葉が示すように、企業がクラウドへの支出を管理し、予算を立てるのに役立つツールと手法に関するものだ。企業のクラウド支出の最適化(理想的には支出の削減)を支援することだけを目的としたスタートアップ企業が数多く存在し、成功しているのには理由がある。

FinOps FoundationがCloudabilityの四半期ごとのCustomer Advisory Boardの会合から生まれたことは、驚くべきことではない。これまでVMwareのCloudHealthがベンダーの中で唯一のプレミアメンバーだった。他のメンバーにはCloudability、Densify、Kubecost、SoftwareOneなどがいる。今回のGoogle Cloud加入により、同財団は初の大手クラウドプロバイダーと契約を結んだことになる。

Google Cloudのエンジニアリングおよび製品担当ヴァイスプレジデントのYanbing Li(ヤンビン・リー)氏は「FinOpsのベストプラクティスは、企業がビジネスの成功に不可欠な数十から数百のプロジェクトにわたってクラウド支出を監視、分析、最適化するために不可欠です」と述べた。「可視性、効率性、ツールの向上により、顧客はクラウドの導入を改善し、ビジネス価値を向上させることができます。私たちはFinOps Foundationに参加することを楽しみにしており、同じ志を持つ組織とともに、業界全体で行動の変化を推進します」。

Google Cloudはすでに、FoundationのさまざまなSpecial Interest Group(SIG)やWorking Groupsにメンバーを派遣し、「クラウド財務管理のためのオープンソース標準の推進を支援する」ことを約束している。

FinOps FoundationのエグゼクティブディレクターであるJ.R. Storment(J・R・ストーメント)氏は「Google Cloudのようなマーケットリーダーがリソースを投入し、自社の製品提供をFinOpsの原則とスタンダードに合わせることで、FinOps Foundationの実務者は大きな恩恵を受けることができます。Google CloudがFinOps Foundationへのコミットメントを強化し、VMwareとともに3つあるPremier Member Technical Advisory Counciの2つ目のポジションを獲得したことをうれしく思います」と述べている。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:塚本直樹 / Twitter

Google Cloudがミッションクリティカルなワークロード向けの新しいサポートオプションを提供開始

米国時間3月11日、Google Cloud(グーグル・クラウド)が、同プラットフォーム上でミッションクリティカルなサービスを実行しているプレミアムサポートの顧客向けに、新しいサポートオプションを提供することを発表した。Mission Critical Services (MCS、ミッションクリティカルサービス)と名付けられたこの新しいサービスは、Googleが培ってきたSite Reliability Engineering(サイト・リライアビリティ・エンジニアリング)の経験を顧客に提供するものだ。とはいえ、これらのサービスの運営を、Googleが完全に引き取るわけではない。同社はその代わりに、これを「将来に備えるお客様の、旅のパートナーとして歩むコンサルティングサービス」だと説明している。

Googleはまず最初に、顧客と協力してアプリのアーキテクチャを改善(あるいは開発)し、適切な監視システムとコントロールを導入するとともに、サービスレベル目標(SLO)の設定と改善を支援する(これこそがSite Reliability Engineering哲学を占める重要な特徴だ)。

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その後、Googleはエンジニアによる継続的なチェックを行い、顧客にチューンナップ・アーキテクチャー・レビューを提供していく。Google Cloudのカスタマーエクスペリエンス担当VPであるJohn Jester(ジョン・ジェスター)氏は3月11日の発表で「当社の最上位層のエンジニアは、お客様のワークロードに深く精通しております。そのため影響の監視、防止、緩和を迅速に行うことができ、業界最速のレスポンスを実現致します。例えば、24時間365日の間に、何か問題が発生した場合には、5分以内に当社の専門家による対策室を立ち上げます」と説明している。

この新しいサービスは、Google Cloudが他の大手クラウドプロバイダーとの差別化を図ろうとしているまた別の例だ。今回の発表で強調されたのは、大企業の顧客のニーズに明確に焦点を当て、同社のプラットフォームに長らく欠けていた、きめ細かなサービス体験を提供するということだ。それは Thomas Kurian(トーマス・クリアン)氏がGoogle CloudのCEOに就任したときに約束したことであり、それを明らかに遂行しつつあるということだ。

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:sako)