Alphabetの時価総額1兆ドルとSaaS株の記録的高値で見えるこれからのスタートアップ

先の株式市場における記事の続編として、今週は注目すべきことが2つ起きた。1つはアメリカのテクノロジー企業として三番目に大きいAlphabet(アルファベット)が、時価総額1兆ドル(約110兆円)を超えたこと。そして2つめは、2019年の夏に下がったSaaS企業の株価が記録的な高値に達したことだ。

この2つのマイルストーンの間に深い関係はないが、どちらも現在のテクノロジー企業に対する公開株式市場の無節制を表している。そしてその熱気は、非公開市場のスタートアップや、彼らを支援するベンチャーキャピタルにも伝染している。

でもそれは、いくつかの理由でテクノロジースタートアップにとって良いニュースだ。大手テクノロジー企業の懐はこれまでになく暖かく、小さな企業をいくらでも買収できる。SaaSの高値は小さなスタートアップの資金調達と、彼らの先輩たちがエグジットする追い風になる。

大手テクノロジー企業とその小さな兄弟たちが現在、享受している圧倒的な好評価は、ユニコーンが登場する絶好の条件でもある。市場でこの高値が続くかぎり、TechCrunchもこのポイントをずっと追ってみたい。テクノロジー企業の株価はもはや、いかなる月並みの表現を超えたものだ。

関連記事: How many unicorns will exit before the market turns?…この好況の間にいくつのユニコーンがエグジットするか?(未訳、有料記事)

AlphabetとMicrosoftとAppleの3社を合わせると、その時価総額は3.68兆ドル(約410兆円)になるが、株価よりも安定的な数字である売上額を使うと、SaaSの株価は3社の売上の12.3倍だ。しかし、非上場のベンチャー支援の企業は必ずしも、公開株式市場の投資家たちの財布の口のゆるさにあずかることはできない。

テクノロジーの顧客企業はどうか?

現在の公開市場におけるテクノロジー企業の時価総額の膨張は、テクノロジーを生産し提供する側ではなく、最近ますます増えている「テクノロジー利用企業(tech-enabled-startups)」の助けになるだろうか? 2019年に上場した企業の一部は、彼らの非上場時の最後の評価額またはそれ以上になった時価総額を支持する気のない投資家たちから、すぐに見捨てられた。SmileDirectClubは、そんな例のひとつだ

テクノロジー企業を評価する基準は往々にして曖昧だが、粗利率と継続性は重要だろう。粗利率が大きくて、安定的に継続している企業は価値も大きい。市場のこのような見方が、最近のSaaSの株価を当然のように押し上げている。

2020年最初のベンチャー支援のIPOとして期待されるCasperOne Medicalにとっては、テクノロジー利用企業(tech-enabled-startups、テクノロジーをベースとする企業)というイメージを維持する方が、株式市場でも有利だろう。テクノロジー企業は今、時価総額がとても大きいため、非上場と上場を隔てる川を渡るときは、テクノロジーの匂いをほんの少しでもさせていた方が株価にとって有利だ。

関連記事: One Medical’s IPO will test the value of tech-enabled startups…One MedicalのIPOでテクノロジー利用企業の評価が分かる(未訳、有料記事)

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

書類上は金持ちなスタートアップ従業員の名目上の資産を守る「プレウェルス」

シリコンバレーのスタートアップに勤務し大富豪になれるはずの従業員は、お預けになっている将来の大きな報酬を仕事の活力にしている。だが、レイオフされたら、または会社がイグジットを決める前に辞めてしまったら、どうなるのだろう。

Wouter Witvoet(ワウター・ウィボエット)氏は、4番目の社員として働いていたスタートアップを退職した。ストックオプションの権利行使を行うために5万ドル(約550万円)を準備して、何か新しいことをやりたいと考えていた。しかし人事部から、ストックオプション分の税金を支払う義務があると聞かされた。それには180万ドル(約1億9800万円)足りない。オプションの権利が行使できる期間は90日間だ。

「結局、株はすべて失いました」とウィボエット氏はTechCrunchに話してくれた。

その後、ウィボエット氏はSecFi(セクファイ)を設立した。SecFiは当時ホットだったpre-wealth(プレウェルス)マネージメント分野の確立を目指す数少ない企業のひとつとなったのだ。プレウェルスとは、先買い契約と彼らが呼ぶ方法で、スタートアップの従業員がストックオプションの権利を行使できるというもの。IPOまたはイグジットが実現するまで返済を待ってくれる。

名目上の富の活用が新たなトレンドになる可能性は低いが、高成長を遂げるスタートアップが見失いがちな型破りな機会に、機関投資家は目を向ける。一部のヘッジファンドや非公開株式投資ファンドは、この分野で事業を展開し、IPOに束縛された成熟したスタートアップの給料支払いの抜け道を割り引き価格で提供している。

数億ドル規模の取り引きを行う業者も多い。Section Partners(セクション・パートナーズ)は1億2000万ドル(約132億円)を出資して、ストックオプションの期限切れを目の前にした従業員に、ストックオプション権行使金融なるものを提供して「命をつなぐ」手助けをしている。Troy Capital Group(トリー・キャピタル・グループ)のQuid(クイッド)は、2億ドル(約220億円)の資金でOaktree Capital Management(オークツリー・キャピタル・マネージメント)と提携した。サンフランシスコ湾岸地区のESO Fund(ESOファンド)は、2012年の設立以来、この手の資金提供をスタートアップの従業員に対して行っている。

SecFiは、Rucker Park Capital、Social Leverage、Weekend Fundをはじめとするベンチャー投資会社から700万ドル(約7億7000万円)の資金を調達し、以前はいくつもの企業の仲介役を果たしていたが、15日、ニューヨークのヘッジファンドSerengeti Asset Management(セレンゲティ・アセット・マネージメント)と提携したことを発表し、5億5000万ドル(約605億円)の負債融資枠を確保した。

所属するスタートアップが高額なイグジットを確実に果たすとわかっていて、ストックオプションの権利行使のために通常のローンを組むというのは最悪の判断だ。この先買い契約は、ストックオプションそのものが裏付けになるため、償還請求権はそのオプションの額で制限される。スタートアップが好調なら、会社に元金を返し、さらに金利や自己資本、つまり儲けの大半を支払わなければならないが、もしWeWorkのような大失態を演じた場合には、追いかけてくる人間はいなくなる。

さらにステージが高く、出費を抑え、レイオフを視野に入れているスタートアップの場合は、自分のオプションにどれだけの価値があるかを知りたがっているレイオフ対象の従業員が頼れるまともなリソースは少ない。多くの人はQuoraという底なし沼に入り込んで、きわめて個別的な情報を漁ることになる。個人レベルの教育という面ではメリットがあるかも知れないが、そうしたオプションの場合、金融業者はスタートアップ同士の提携を通じて、企業の人事部にマーケティングの一部を肩代わりさせようとする。

そうした巨大なファンドの資金が「プレウェルス」金融サービスに大量に流れるようになれば、SecFiのようなスタートアップが次々と現れ、大富豪になるかも知れないスタートアップの従業員に、ストックオプションで利益を得る以上の道筋を示すプラットフォームを提供するようになるだろう。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:金井哲夫)

ComcastはNASCARなどと共同でSportsTechアクセラレーターを発足

米国メディア企業のComcast(コムキャスト)とNBCUniversal(NBCユニバーサル)は、未来のオリンピックのゴールドメダリストを支援する革新的なスタートアップ企業の育成に自信を見せている。この米国のメディア大手は、一部その勢いに乗って米国時間1月13日にSportsTech(スポーツテック)アクセラレーターを発足した。

TechCrunchは、ニューヨークの30ロックフェラー・プラザにあるGEビルディングで開かれたComcastの幹部による説明会に参加し、詳しい話を聞いた。なおComcastとNBCUniversalは、NBC Sports、Sky Sports、Golf Channelの各スポーツ放送ブランドと提携している。さらに、NASCAR米国スキー・スノーボード協会、米国水泳連盟といった業界パートナーとも手を結んでいる。これらはみな、ComcastのNBCチャンネルで競技が放映されている。

本日より、プレシリーズA(シリーズA投資を受ける前の段階)のスポーツ技術スタートアップの申し込みを受け付ける。参加できるのは10社だ。参加が認められたベンチャー企業には株式ベースで5万ドル(約550万円)が出資され、SportsTechの3カ月にわたり、スポーツ業界からの支援や指導が受けられるアクセラレーター・ブートキャンプを受講することになる。キャンプは、Comcastのアトランタのオフィスで2020年8月から始まる。

SportsTechプログラムの運営にBoomtown Accelerators(ブームタウン・アクセラレーターズ)が加わるが、Boomtown AcceleratorsとComcastの両方が、選ばれたスタートアップ企業の株式を少なくとも6%を取得し分け合う。NASCARと米国スキー・スノーボード協会といった業界パートナーは、スタートアップ企業の選択の際に相談役として参加するが資金提供は行わない。

SportsTechの全体的な目標は、経営幹部と、この新しいアクセラレーターを率いることになるComcastのスタートアップ・パートナー開発部門副社長であるJenna Kurath(ジェナ・クラス)氏との会話から生まれた。Comcastとそのパートナーたちは、それぞれの事業を発展させ競争力を高めるためのイノベーションを手に入れようとしている。

マクドナルドのMcD Tech LabsやマスターカードのStart Pathなどなど、企業が主催するインキュベーターやアクセラレーターが米国の企業価値100億ドルを超える、いわゆるラージキャップ企業の間で一般的になりつつあるが、主催企業はそこで、スタートアップの新しい発想やディールフローを吸収し、デジタル・ディスラプションを受け入れ囲い込もうと目論んでいる。

SportsTechのカテゴリーは、メディアとエンターテインメント、ファンとプレイヤーの触れ合い、アスリートとプレイヤーのパフォーマンス向上、チームとコーチの成功、会場とイベントの改革、ファンタシースポーツとスポーツくじ、eスポーツ、スポーツビジネスに分けられる

その目標のために、SportsTechは、スポーツビジネス、チームとコーチの成功、アスリートとプレイヤーのパフォーマンス向上など、いくつかの望ましいスタートアップのカテゴリーを定めた。

SportsTechのパートナーであるNASCARは、より多くの観客の参加を促す革新的なアイデアを求めている。この自動車レースシリーズは(広告形態も含め)、デバイス配信への依存度が増している。NASCARのストリーム配信では、ピットやドライバーの様子など、ますます多くのレースのデータをリアルタイムで伝えるようになっている。

「スポーツの競争面で、ファンのエクスペリエンスで、そして事業の運営で、より多くのテクノロジーを取り込むには何をしたらいいのかが焦点になっています」とNASCARの最高イノベーション責任者Craig Neeb(クレイグ・ニーブ)氏は言う。「驚くほど強力でイノベーティブな企業を探し出せると、私たちは自信を持っています」とNASCARのSportsTechへの参加に彼は期待を寄せていた。

スノースポーツの米国代表チームを管理する非営利団体である米国スキー・スノーボード協会は、所属アスリートのパフォーマンスと医療技術に注目している。

「ウェアラブル技術(パフォーマンスを測定する)は興味深い分野です、また、技術的要素の理解を深めてくれるコンピュータービジョンや人工知能には大変に興味があります」と、米国スキー・スノーボード協会のハイパフォーマンス部長Troy Taylor(トロイ・テイラー)氏は話していた。

写真提供:U.S. Ski & Snowboard

こうしたテクノロジーは、2022年の北京冬季オリンピックに出場するアルペンスキーヤーのTommy Ford(トミー・フォード)とMikaela Shiffrin(ミカエラ・シフリン)のような米国のアスリートへの可能性を高めてくれる。

2014年、ComcastとNBCUniversalは、2032年までの夏と冬のオリンピックの放映権を77億5000千万ドル(約8520億円)で獲得した。「私たちは自問しました。もっとできないかと。オリンピックの前、最中、後に動き続けるイノベーションエンジンという考え方です。それが我らのチームUSAを、金メダル争奪の最前線に送り込んでくれるのか?」とジェナ・クラス氏は話していた。

その答はイエスだった。そうして、SportsTechアクセラレーターが発足した。オリンピックの成功を支援するだけでない。Comcastとこの新組織には戦略的なビジネス上の動機がある。「参加企業から早い段階で見識が得られたなら、新しい商業的な関係に発展する可能性があります。ライセンシングや買収もあり得ます」と、NBC Sportsのデジタルおよび消費者ビジネス上級副社長Will McIntosh(ウィル・マッキントッシュ)氏はTechCrunchに語った。

SportsTechは、Comcastの3つ目のアクセラレータープログラムだ。この組織には、サンフランシスコを拠点とするベンチャー投資会社Comcast Ventures(コムキャスト・ベンチャーズ)がついている。Crunchbaseのデータによれば、この投資会社はLyft、Vimeo、Slackなどを支援し、67件のイグジットを実現している。

SportsTechを卒業したスタートアップ企業は、Comcast、そのベンチャー投資会社、またはNASCARなどの業界パートナーからの投資を受けるか、買収に応じることができる。「今のところ、私たちの自然課題は当然ながら、成果物を早期に手に入れることです。しかし長期的には、今のパートナーたちと共に、このエコシステムに論理的な付加価値をもたらす者は他にいないかを話し合う予定です」と、Comcastのセントラル部門社長Bill Connors(ビル・コナーズ)氏は話していた。

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(翻訳:金井哲夫)

倫理条項を初めて資金提供協定に盛り込んだ米国の女性起業家

Keep your head high and give them hell(あわてずに、彼らを痛い目にあわせてやれ)

私の祖母であるOpal Thompson(オーパル・トンプソン)は、屈強な生粋のテキサスっ娘らしく、私にそう書いてよこした。今この言葉は、みんなに見えるように私の前腕に彫ってある。祖母の強烈な存在感と貴重な助言の思い出は、起業家になるまでの私を導く正しい道であり、この業界で懐疑的な人たちと面と向かって渡り合うときに私の背中を後押しして強気にさせてくれるものだった。「いいかい、男たちよりも一生懸命に賢く働いて仕事をやっつけるんだ」と祖母は私に言ってくれた。泥臭く聞こえるかも知れないが、それが今の私を育ててくれた。

去年の10月、恐れを知らない共同創設者Carolyn Rodz(キャロリン・ロズ)と私は、最高に誇りに思う発表を行い「彼らをやっつけて」やった。スモールビジネスの成長を支援する私たちのプラットフォームであるAlice(アリス)はシリーズA投資を決めた。それだけでもニュース価値のある大きな前進だったのだが、その見出しが実によかった。私たちは、資金提供協定に倫理条項を盛り込んだのだ。人種、性別、性的指向に関わる差別が発生したときには法的な対処を求めるというものだ。

Aliceのための資金調達でピッチを行ったとき、キャロリンと私は、そもそも私たちがスモールビジネスの経営者のためにAliceを始めた基本に立ち返った。私たちのプラットフォームは、このコミュニティーに参加する10万人を超える企業経営者たち、とりわけ、女性、退役軍人、有色人種、LGBTQ+コミュニティーの起業家たちの成長の壁を打ち破るために存在している。

私たちの仕事は、ヒントや成功事例の提供であったり、ここでなければ出会えなかったであろう投資機会の紹介であったりするが、いずれにせよスモールビジネスの経営者が仕事を「やっつける」ための手助けをすることだ。私たちには、スモールビジネスの経営者がそのベンチャーの成長に役立てられる確かで包括的なリソースになるという重大な責務がある。私たちは常に、顧客である企業経営者に新しいアプローチを試し、あらゆる側面をビッグに発展させるよう促している。それには、彼らの成長の妨げになる問題への挑戦も含まれる。

私たちの進路を長い間塞いできた問題に、物言わぬ硬直化した差別的で略奪的な有力投資家の姿勢がある。2年前の#MeToo運動によって潮流が変化し、いわゆる「ワインスティーン」条項が見られるようになったが、そのほとんどは、投資を受けた会社幹部への明らかなセクハラの訴えから投資家を守るものだ。

これは、ビジネスのあらゆる階層に説明責任を浸透させる上で正しい方向への重要な一歩ではある。しかし、こんな疑問が残る。

投資家が#MeToo運動の標的である場合はどうなのか?

名声に傷を付けられ、その行為が自身のビジネスに損害を与えてしまう場合に、取締役会のメンバーからベンチャー投資家に至るまで、意志決定を行う主要な人物を守るための法的な影響力が欠如していたことで、Aliceは辛い思いをしてきた。そこで、私たちが苦労して築いてきたAliceの名声を守るため、そして世界中から毎日私たちに助けを求めてくる企業経営者を守るために、キャロリンと私は、私たちの投資家たちとともに、模範を示し、態度を明らかにすることにした。私たちは「ワインスティーン」条項を反転させ、#MeToo案件、つまり人種差別や性に関連する差別が発生したとき、取締役会のいかなるメンバーも投票によって除名できる企業統治メカニズムを使う権限をAliceの取締役会に与えた。簡単に言えば、Aliceとその投資家は、私たちの起業家コミュニティーに不利益をもたらす態度をとる人間には、躊躇なく出口を指し示すことができるというものだ。

この規定を加えることは、私たちの会社を成長させるビジョンには不可欠だった。それは、インターネット上のビジネス・コミュニティーでインクルーシブであるという私たちの中核的な価値観に通じるものだ。また、ベンチャー投資家を探すユーザーには、まだ投資が決定する以前の段階でも、良識ある法的保護とされるべき規定を盛り込む権利があることを知ってもらいたい。私たちはこの条項を誰もが利用できるよう、そして私たちのように弁護料を払わずに済むよう、ここに公開している。

この情報を、必要とするあらゆる人の手にしっかり届けることは、ビジネスを行うすべての人が公正に扱われるようにするという私たちの使命のひとつでもある。私たちと同じように、他の企業の創設者にも資金提供契約へ倫理条項を盛り込ませることには、私たちがそうしたのと同じだけの価値がある。私たちはこれを大きな流れにしなければならない。

私たちの倫理条項は、大きなビジネスコミュニティーと、私たち全員の資金調達方法の改善に努力する私たちにとっても、大変に重要だ。スモールビジネスは、米国全体の就業者の95%近くを雇用し、米国人の半数以上の職業を支えている。

だが、女性、有色人種、LGBTQ+の人たちによる起業が日常化し、「ニューマジョリティー」へと変わろうとしているスモールビジネスの世界に対して、ベンチャー投資家の多様化は遅々として進まない。現在、ベンチャー投資会社で判断を下す人は、いまだに89パーセントが男性で占められおり、女性経営者の企業に彼らが投資する割合は、全体の2パーセントに過ぎない。ラテン系女性がベンチャー投資を受けられる比率は0.5パーセント以下であり、その他のマイノリティー起業家のコミュニティーではさらに低くなる。

これまでに、キャロリン(自身がラテン系)と私は、私たちを排除し続けてきたビジネス界に、自分たちの存在を知らしめる必要があることを学んだ。#MeTooの考え方が産業界でさらに広く受け入れられるようになれば、私たちはAliceを利用する企業や起業家を守り、この社会での影響力を永続化できるようになる。

2020年、私たちはAliceを次なる章に進め、新しい市場への拡大を目指すが、同時に私たちのユニークな起業の話を広めて他のスモールビジネスを勇気づけ、私たちと同じ道が歩めるよう力を貸したい。

ベンチャー投資家のみなさんに告ぐ。ニューマジョリティーの起業家たちがすでにここで身構えている。私たちの倫理条項はスモールビジネスの成功への道の始まりに過ぎない。

祖母のオーパルも誇りに感じてくれるはずだ。

【編集部注】著者のElizabeth Gore(エリザベス・ゴア)は、AI技術に支えられた無料のマルチチャンネルプラットフォームのAliceの共同創設者で社長。資金、ネットワーク、サービスを提供し企業経営者を支援する。

画像クレジット: jaouad.K  / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

テック企業の楽な時代は終わった

テック業界に奇妙な感覚が蔓延している。あまりにも無縁で異質な認識することすら困難な感覚だ。何か素晴らしい期待が悪い方へと劇的に変化する感覚。従来止まることのなかったお金の出る蛇口を誰かが締めたような感覚。成長モードにあるときでさえユニット経済が重要であるような感覚。世間は節約モードに入ったのか。

まあ、そこまで極端なことをいうのはやめておこう。しかし我々は今、(比較的)「倹約的」な出来事が驚くほど重なって起きている場面を目撃している。昨年の著名なテックIPOは大成功には程遠かった。UberLyft、Slack、Pinterest、Pelotonはいずれも私がこれを書いている時点でIPO価格を下回っており、中には大きく下落したものもある。市場全体が史上最高値を記録しているときにもかかわらず。6カ月後に大金持ちなれることを夢見ていた人たちは、比較的最近の社員でさえも驚かされただろう。

一方、まだ上場していない企業は出費を抑えるか、あるいは、一か八かのチャンスに賭けようとしている。最近テックユニコーンの間ではレイオフの波が起きている。最近IPO申請したCasperとOne Medicalは、S-1書類のに書いた数字が批判というよりあからさま嘲笑の的になっている。

WeWork問題についてはなるべく言わない方がよさそうだが、その影響の大きさから無視することはできない。直接的にはソフトバンクの投資失敗の数々がさらにレイオフを呼び、間接的にはシリコンバレー全体のムードを強欲から恐怖の方へと向かわせた。

恐怖の「ほうへ」あって恐怖「へ」ではないことに注意されたい。そこには大きな違いがある。ソフトバンクがいなくなったとしてもベンチャーマネーはそこかしこに山ほどある。ただし、投資家は責任ある資金の使い方を見つけるのに少々苦労している可能性はある。今もベンチャーキャピタリストは、概してテック業界の未来に対して驚くほど楽観的であり、未だに成長を第1に、収益を大差の第2に、キャッシュフローを第3置いており、利益はおそらくさまざまな要因に応じていずれ手に入るものと考えている。

とはいえ、テクノロジーの触れたものは直ちに金に変わるという、かつて蔓延していた感覚はほぼ消え去っている。念の為に言うが、多くの「純ソフトウェア」企業とそのIPOは十分成功している。Zoom、Docusign、Datedogを始め、エンタープライズソフトウェアのフェチでなければ聞いたことのない数多くの会社が実によくやっている。消費者向けテック産業だけが、現在失望させている。あるいは、これまで過大評価されすぎていたというべきかもしれないがそれは観点による。

しかし、最近世界は森であってピザではないという認識が高まりつつあるよはうで、手の届くところにある果実と高い枝に隠れている卵には大きなちがいがある。カスタムソフトウェアを使っているというだけではソフトウェア会社をつくることはできない。それは、今日の賭け金を払っているというだけの意味だ。では、ソフトウェア会社でもなくハードウェア会社でもないとしたら、どうすればテック会社と言えるのだろうか。

その意味で言うと、WeWorkはテック企業ではなく、かつてそうであったこともない。CasperもOne Medicalもテック企業ではない(ただし、これは裏付けのない感覚的なものだ。私の家族の最近の経験から判断すると、One Medicalの新しいソフトウェアシステムは、ケアレベルを改善どころか低下させている)。そういう会社はテック企業のように装いテックの後光をまとっているが、おそろしく説得力がない。

おそらく、この複数市場にまたがる不安は一時的なもので、いくつかの過大宣伝されたIPOと昨年のソフトバンク狂乱の後遺症なのだろう。おそらく、テクノロジーの麦はみせかけの籾殻と分けられて前者はこれからも力強く成長するのだろう。あるいは、もしかしたらだが、 すでに我々は果実が低い枝にぶらさがった黄金の日々が終わりは始めるところを見ていて、本格的な科学か本格的なソフトウェアだけがテクノロジーで成功する道になりつつあるのかもしれない。どちらを望むべきなのかはまだわからない。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

エクスペディアやオッペンハイマー、フィリップスが利用するデータ解析事業展開のSisenseが87億円超を調達

複数ソースからのデータの分析と視覚化を支援する企業であるSisense(サイセンス)は、Insight Venture Partners主導による8000万ドル(約87億7000万円)のシリーズE投資を受けたと、1月9日に発表した。さらに同社は、Duo SecurityとZendeskでCOOを務めていたZack Urlocker(ザック・アーロッカー)氏が取締役会に加わったことも公表した。

Sisenseの過去の投資会社には一流企業が名を連ねており、このラウンドにも参加している。Battery Ventures、Bessemer Venture Partners、DFJ Venture Capital、Genesis Partners、Opus Capitalなどだ。今回の投資により調達総額は2億ドル(約220億円)に近づいた。

CEOのAmir Orad(アミール・オラド)氏は、複雑なデータを分析とビジネスインテリジェンスを用いて単純化し、あらゆる形で届けるという私たちの使命を投資家が気に入るのは当然のことだと話している。情報は会社中にあるディスプレイ、デスクトップパソコン、スマートフォン、さらにはAmazon Alexaを通じても得ることができる。「できる限り簡単にデータにアクセスでき、論理的な方法でデータを噛み砕き、あらゆる論理的な場所に埋め込める方法を私たちは見つけました」と彼は解説する。

その使命が共鳴しているようだ。同社には名前を挙げるならば、エクスペディア、オッペンハイマー、フィリップスなどなど、1000を超える顧客がある。オラド氏によれば、Sisenseは、ナスダック・コーポレート・ソリューションを支える分析エンジンにもなっているという。これは、企業の最高財務責任者たちが投資家向け広報活動用システムとして中心的に使っているものだ。

企業価値については、オラド氏は「自分とは関係のないエゴブースト」だと称して話したがらなかった。むしろ彼は、投資家が与えてくれた資金をいかに効率的に使っているか、または顧客満足度で評価されたいという。IPOの噂についても何も語らなかった。その話題に関して彼は、「自分が生み出す価値に集中すれば、いいことが起きる」と繰り返している。

とは言え彼は、アーロッカー氏の合流を明白に喜んでいた。オラド氏によれば、2人は6カ月間かけてお互いを知り合い、いくつもの企業を立ち上げてイグジットを成功させてきたアーロッカー氏が彼の会社に合流してくれると見込んでいた。彼こそが、会社にゴールラインを切らせてくれる人物だとも思った。そしてそれは現実となった。アーロッカー氏の以前の会社であるDuo Securiy(デュオ・セキュリティー)は、23億5000万ドル(約2570億円)でシスコに買い取られた

現在のところ、2010年に創業したSisenseは、別の8000万ドル(約87億6000万円)を銀行に保有している。すでに、ニューヨーク、テルアビブ、キエフ、東京のオフィスに500名近い従業員が配置されているが、さらに増員する予定だ。とくに、国際的な存在感を攻めの姿勢で高めるために、カスタマーサクセスとフィールド・エンジニアリングに人を増やしてゆく計画だ。オラド氏はまた、「才能とテクノロジーと存在感があるなら、常に考えておくべきです」と、適切な機会の企業買収にはオープンである考えを示した。

シリーズE投資を獲得し、数億ドルの資金を調達した同社は、遅かれ速かれイグジットの話が持ち上がるようになるだろう。企業幹部として豊富な経験を持つアーロッカー氏を迎え入れたことで、その可能性は高まった。しかし、今のところ同社は成長と発展を続け、なるようになるという気持ちでいるようだ。

画像クレジット:guvendemir / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

JR東日本スタートアップが新潟市でMaaSと日本酒の実証実験をスタート

JR東日本スタートアップは1月9日、新潟市と共同でスタートアップ企業と連携した2つの実証実験を開始することを発表した。同社は、JR東日本の子会社でベンチャーへの出資や協業を推進するコーポレートベンチャーキャピタル。

今回、新潟で実証実験を予定しているのは、タクシーやシャトルの相乗りサービスを運営するNearMe(ニアミー)、AIによる日本酒レコメンドサービスを展開するMIRAI SAKE COMPANYの2社。後者は、JR大宮駅の西口広場で期間限定で開設された「STARTUP_STATION」にも出展したスタートアップだ。

関連記事:JR大宮駅西口にパスタロボや瞬間塩水冷凍魚、AI利き酒、スイーツ自販機の実験店舗がオープン

NearMeでは、新潟市内で観光タクシーの相乗りマッチングサービス「新潟トラベルシャトル」を提供。その名のとおり、観光タクシーを事前予約して相乗りすることで料金を抑えられるメリットがある。同社の「nearMe.」アプリで培った相乗りの乗車時や降車時、目的地までの最適なルート検索技術が活用される。実施期間は1月18日から3月末までを予定。送迎場所は、新潟駅南口、新潟市内の各種宿泊施設となる。

MIRAI SAKE COMPANYは、10種類の日本酒をのみ比べてAIによる味覚判定を実施し、個人に最適化された日本酒の銘柄や飲食店、酒販店を提案する観光拠点として「日本酒観光案内バー」(SAKE TOURIST INFORMATION BAR)を開設。独自のアルゴリズムにより12種類の日本酒味覚タイプに分類し、判定結果で提案された日本酒の飲める場所を巡る新潟駅近郊のラリーも提案してくれる。新潟駅周辺地域の飲食店・酒販店の回遊を促し、活性化を狙う。実施期間は2月14日~3月15日で、実施場所はJR新潟駅構内CoCoLo新潟西N+ TABI BAR & CAFE/km-0 niigata lab内。

サムライインキュベートがケニア、南アフリカ、ナイジェリアなどアフリカ向けに20億円規模の2号ファンドを組成

独立系ベンチャーキャピタルのサムライインキュベートは1月9日、子会社のサムライインキュベートアフリカを通じて、アフリカ大陸のスタートアップへの出資・インキュベーションを目的とした「Samurai Africa Fund 2号投資事業組合」の組成を発表した。総額20億円を目標に出資者の募集を進める。1社あたりの投資額はシリーズAラウンドで500万円〜5000万円を見込んでいる。

写真に向かって左から、サムライインキュベートでシニアマネージャー兼ファンドコントローラーを務める久保浩成氏、同社シニアマネージャー兼サムライインキュベートアフリカでマネージングパートナーを務める米山怜奈氏、サムライインキュベートで代表取締役社長の榊原健太郎氏、同社マネージャーの小池 直氏、同社執行役員でコーポーレートグループ所属の本間良広氏

サムライインキュベートとサムライインキュベートアフリカは、アフリカ大陸で活動する創業期スタート アップへの出資・成長支援を進めており、すでに18 社への出資・インキュベーション支援を実施。これらの出資・支援活動を加速させることを目的に、アフリカ2号ファンドの組成に至ったという。投資対象国は、ケニア、南アフリカ、ナイジェリアの 3カ国を中心とするアフリカ諸国。投資領域は、金融・保険、物流、医療・ヘルスケア、小売・EC、エネルギー、農業、交通・モビリティ、エンターテインメントなどとなっている。

なおサムライインキュベートアフリカは本ファンドの組成とは別に、独立行政法人国際協力機構(JICA)からアフリカ地域での起業促進やスタートアップエコシステム形成に関する調査業務を受託しており、 JICAが展開するアフリカ各国での起業家支援の強化にも協力する。

日本や欧米とは社会情勢や経済の仕組み、国民性などが異なるアフリカ諸国で、どういったスタートアップが起業し、成長していくのだろうか。

YJキャピタルとEast Venturesの共同アクセラレータープログラム「Code Republic」が第7期の募集を開始

ヤフーのコーポレートベンチャーキャピタルであるYJキャピタルと、日本や東南アジアでシード投資を進めているベンチャーキャピタルのEast Venturesは1月9日、スタートアップ向けのアクセラレータープログラム「Code Republic」を第7期の参加企業の募集を開始した。プログラムの募集期間は募集期間は3月1日23時59分まで、プログラム期間は4月3日〜8月3日までの4カ月間。応募フォームにて参加を受け付けている。

プログラムの参加要項は以下のとおり。

  • 社会構造・産業構造の革新を目指している
  • 誰よりも対象領域に詳しい
  • データドリブンで意思決定している
  • スピード感を持ってエグゼキューションできる
  • 粘り強く仮説検証を繰り返すことができる

Code Republicはこれまでは常時開催で、3カ月のメンタリングやゲストディナー、最後にその成果を披露するデモデイという構成だったが、第7期からは募集期間を限定し、1カ月長い4カ月のメンタリングやゲストディナーを経てデモデイに進むという構成に変更された。また、専任の共同代表の任命、担当キャピタリストの増員、期間固定により支援体制を強化することで、参加スタートアップ各社の仮説検証、事業計画策定、バックオフィス支援、営業先・提携先・投資家の紹介、資金調達などをサポートしてくという。YJキャピタルの松山氏は「これまでシード投資してきたスタートアップでシリーズAの調達に漕ぎ着けられるのは全体の十数%程度だったが、4カ月集中してスタートアップ企業と事業化に取り組むことで、達成率100%を目指したい」と語る。

なおCode Repulicは2016年の設立以降、計21社に累計9.7億円の投資を実行しており、追加調達率は77%、卒業企業の累計時価総額は156億円になっている。

Code Republicでは「アジアを代表する起業家集団を目指す」ことをミッションに掲げている。ポータルサイトやPayPayなどのキャッシュレス決済、ショッピングサイトなどの豊富なデータリソースを持つヤフーグループのCVCであるYJキャピタルと、東南アジアでのシード投資を通じて現地の社会問題や経済を取り巻く環境などに深い知見を持つEast Venturesが共同で開催するこのアクセラレータープログラムを通じて、グローバルな視点で事業を推進するスタートアップの登場に期待したい。

ソフトバンク出資のスタートアップが続々とレイオフを発表、最新はカーシェアリングのGetaround

カーシェアリング事業を展開するGetaroundは1月8日、従業員のレイオフを実施すると発表した。The Informationによると、解雇される従業員の数は約150人、全体の1/4程度だ。Getaroundはソフトバンク・ビジョン・ファンドから出資を受けている。

2009年に設立されたGetaroundは、2011年より個人間のカーシェアリングサービス「Getaround」を展開。Getaroundでは、Getaround Connectと呼ばれるコネクテッド・カー技術により、スマホでアプリから利用可能な車両を探し解錠することで、車両のオーナーから鍵を受け取るなど無駄なアクションが一切必要のない、優れた顧客体験を提供している。同社は米TechCrunchが開催したDisrupt 2011のピッチバトルの優勝社だ。

ソフトバンクが支援するスタートアップでは、2019年4月に犬の散歩代行サービスWag、10月にWeWork、ならびに車のサブスクリプションFair、12月に建設領域のKaterra、そして2020年1月にピザのロボットZumeのレイオフが明らかになっている。

また、2019年はソフトバンクにとって、WeWorkのIPOの失敗やWagの経営からの撤退を経験し、かつ、UberやOneConnectのIPOが期待はずれとなった年でもあった。そして2020年に入って早々、Axiosは、ソフトバンク・ビジョン・ファンドが複数のスタートアップに対する出資を、タームシート提出後に見送ったと報じた。複数のスタートアップとは、介護領域のHonor、B2BセールスソフトウェアのSeismic、ハンバーガー製造ロボットCreatorの3社だ。Paul Graham氏は、「起業家たち、気をつけろ。これはスタートアップに起こり得る、最も有害なことの1つだ」とツイートしている。

Getaroundは2018年8月、ソフトバンク主導のシリーズDラウンドで3億ドルを調達したと発表。同ラウンドにはトヨタの未来創生ファンドも参加している。Getaroundは2019年4月、調達した資金で、パリに本社を置くDrivyを3億ドル(約325億円)で買収したことを発表。同年5月に同社の創業者でCEOのSam Zaid氏をTechCrunch Japanが取材した際には、同氏はDrivyの買収を「アメリカとヨーロッパだけでなく、グローバルを狙える企業になるためのステップ」と説明し、アメリカと欧州以外の地域での展開も既に視野にあることを明かしていた。

Zaid氏は、1月7日に公開した投稿で、「成長と効率のバランス」の重要性を強調。同投稿に書かれている「500万ユーザー、300都市」は昨年に取材した際に開示していた数字と変わりないが、同氏は「我々は引き続き、全ての車がシェアされる世界を目指し、交通量の過多を解決することで、数十億人もの人々に良いインパクトをもたらしていく」と力強く綴っている。

「チームに感謝すると共に、影響を受けた従業員、そしてユーザーには大変申し訳なく思っている。個人的には耐え難く、不甲斐なく思っているが、この決断が、会社、そしてユーザーにとって最善策であることには自信がある」(Zaid氏)

Facebook共同ファウンダーのエドゥアルド・サベリンが約54億円をスタートアップ・ジェネレーター「Antler」に出資

自称「グローバル・スタートアップ・ジェネレーター」で、アーリーステージ・ベンチャーキャピタル企業であるAntlerは5000万ドル(約54億円)の追加資金をアムステルダム、ロンドン、ニューヨーク、ストックホルム、シドニー、ナイロビ、シンガポールの各地で調達した。

注目すべき新たな投資家には、Facebookの共同ファウンダー、Eduardo Saverin(エドゥアルド・サベリン)氏と妻のElaine Saverin(エレイン・サベリン)氏、投資家で慈善家のChristen Sveeas(クリステン・スベアス)氏(Kistefos経由)、Canica Internationalおよび革新的な日本の金融サービス会社、クレディセゾンらがいる。

2018年に、Magnus Grimeland(マグナス・グライムランド)氏(Zaloraを共同設立、その後Global Fashion Groupに売却)がシンガポールで設立したAntler は、複数の地域で企業設立支援プログラムを運営している。ロンドン拠点の人材育成会社でプレチーム、プレアイデアと呼ばれる人材投資モデルの先駆者でもあるEntrepreneur First(EF)と似ていないこともない。

EFと同様に、Antlerは参加者が同社のさまざまなプログラムを通じて共同ファウンダーを見つけ、新しいスタートアップのアイデアを確立することを目的としている。最初の2カ月間、参加者の基本的生活費を支援し、プレシード資金を出資する。成功した企業には後期ステージの資金提供も行う。この資金を得るために、Antlerはそれぞれの地域でファンドを設立している。

「Antlerでは、業界や専門性によらず、明確な特長と意欲と気概のある傑出した人材を求めている」とグライムランド氏は語る。「多様性にも力を入れており、優れた技術者、商品開発者、運営者などを融合させることも目的にしている。これまでの出身者には、Spotify、iZettle、Grab、Lazadaといったすばらしいテクノロジー企業の設立に関わったり、過去にスタートアップを売却したことがある驚くほど有能な人々もいる」

AntlerのファウンダーでCEOのグライムランド氏は投資方針について、同社が注目するのは広い範囲のテクノロジーであり「ディープなテクノロジーだけではない」と語った。これは、フィンテック(金融)、プロップテック(不動産)、ロボテック、D2Cブランドなど多くの分野での同社の投資に見て取れる。「我々のプログラムでは、出資先企業がヒット製品を作り、デモデーを待たずに実績を上げて欲しいと考えている」と同氏は説明した。

AntlerはEFのクローンと考えてよいか(グライムランド氏が以前Rocket Internetに深く関わっていたことを踏まえると下衆な質問だった)と聞かれた氏は強く「ノー」と答えた。「個人が企業を立ち上げたりスケールアップするのを助けるビジネスモデルには、胸躍らせるものがいくらでもあり、それぞれが異なり、独自の観点を持っている。我々は、Antlerでユニークなことを行っている」

2018年の設立以来、Antlerは120を超える企業に投資しており、その中には著名なVCから追加資金を調達した会社がいくつもある。例えば、AriraloとCogniceptはSequioaに、SampinganはGolden Gate Venturesから、それぞれ資金調達している。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国地方都市のスタートアップを支援する投資会社が17.7億円調達

ベンチャー投資の世界では、何かに特化することで利益を得ることがある。それを証明する最新の例として、「パークシティからカンザスシティ」の範囲に拠点を置くシードステージのスタートアップへの投資に特化したミズーリ州カンザスシティのベンチャー投資会社がある。米証券取引委員会の提出書類によれば、この会社はこのほど、1640万ドル(約17億7000万円)の資本を調達した。数年前に2人のカンザスシティ出身者であるLaura Brady(ローラ・ブラディー)氏とJeffrey Stowell(ジェフリー・ストーウェル)氏によって設立されたRoyal Street Ventures(ロイヤル・ストリート・ベンチャーズ)にとって、これは3回目の資金調達となる。

そこは、地理的に特化するには実に面白い場所だ。というのも、いわばそこは多くの機会に見放された土地だからだ。だがRoyal Street Venturesは、恵まれない土地に目を付け、そこで事業を始めた最初の企業というわけでもない。

もう遠い話になるが、Foundry Group(ファウンドリー・グループ)は2007年にコロラド州ボルダーで創業した。地元のスタートアップを気に掛けたり、企業価値を競り上げるライバルがほとんどいない土地だった。同様に、元Sequoia Capital(セコイア・キャピタル)の投資家であるMark Kvamme(マーク・クワメ)氏とChris Olsen(クリス・オルセン)氏は、東海岸からも西海岸からも消えてしまった腕の立つ投資家が中西部に大勢集まっていると直感し、2003年、オハイオ州コロンバスに逃げ込むようにして飛んでいった。

たしかに、銀行やRoyal Street Venturesを生み出したイノベーションセンターで働いてきたブラディー氏とストーウェル氏は事業資金には事欠かない。2016年の創業以来、米国の中西部と西部の少なくとも40社のスタートアップに投資してきた。そこには、パークシティのオーガニックなスナック菓子のメーカーであるAllgood Provisions(オールグッド・プロビジョンズ)、カンザスシティで自動車の卸売り業者のためのマーケットプレイスを構築しているBacklotCars(バックロットカーズ)、カンザス州オーバーランドパークの気象データ会社Main Street Data(メイン・ストリート・データ)も含まれる。

彼らはまた、未開の分野に挑戦するスタートアップにも、たびたび投資を実施している。例えばBlueboard(ブルーボード)は、従業員の評価とインセンティブプログラムの企業だが、サンフランシスコを拠点としている。

いずれにせよRoyal Street Venturesは、新たに調達した資金によりパートナーが欠乏している米国の地方都市の成長傾向を後押しするだろう。サンフランシスコのベイエリアやニューヨークといった最先端テクノロジーの拠点地域では、地価が高騰して優秀な人材が取り合いになっている。常に綱引きの状況では、スタートアップは足を引っ張られてばかりで有意義な結果が出せない。そんな理由もあり、地方都市は、現在上昇傾向にある。

こうしたトレンドの支援者の中でも高名なのが、言わずと知れたAOLの創設者Steve Case(スティーブ・ケース)氏だ。彼は、近年、米国中の機会に恵まれない地方のスタートアップを派手に応援している。ケース氏はまた「Rise of the Rest」(その他組みの台頭)と名付けたシードファンドを通じて地方のスタートアップへの投資も進めている。第2弾は2018年10月に発表された。

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(翻訳:金井哲夫)

シアトル企業へのVC投資額は2019年に3800億円に増加、スタートアップに好機到来

景気後退の絶え間ない脅威にもかかわらず、2019年はベンチャーキャピタル投資が多くの地域で非常に活発だった。もちろんサンフランシスコは世界のスタートアップの震源地であり、投資に関しては他のすべての地域を圧倒している。ただ他の地域も成長を続けており、今年はこれまで以上に多くの資金を集めた。

スタートアップの新しい集積地であるユタ州では、Weave、Divvy、MX Technologyなどの企業が、非公開市場で投資家から総額3億7000万ドル(約400億円)を調達した。北東部では、ニューヨーク市で記録的な取引件数を記録し、取引金額の中央値も着実に上昇している。ボストンでは、2010年代の締めくくりの年に、1億ドル(約109億円)を超える公表案件が10件以上あった。美しい太平洋岸北西部に位置するシアトルは、テック企業の巨人、Amazon(アマゾン)とMicrosoft(マイクロソフト)の本拠地だ。シアトルがいよいよその潜在力を十分に発揮する兆候があるとして、VCの関心が高まっている。

PitchBookのデータによると、シアトルのスタートアップは2019年、約375件の取引で合計35億ドル(約3800億円)をVCから調達した。2018年は346件で30億ドル(約3300億円)、2017年は348件でわずか17億ドル(約1800億円)で、2019年はいずれの年と比べても増加した。最近のシアトルの成長は、数社の急成長が大きく寄与している。

Convoy(コンボイ)は、トラック運転手と荷物の送り手を結ぶデジタル貨物ネットワークで、先月4億ドル(約430億円)のラウンドを完了し、バリュエーションは27億5000万ドル(約3000億円)になった。この取引はいくつかの理由で注目に値する。第一に、PitchBookによれば、シアトルに拠点を置く企業にとしてはここ10年で最大のベンチャーラウンドだった。今回のラウンドで、Convoyはシアトルで企業価値が最も高い企業のリストの上位に躍り出た。2018年に大規模なシリーズDで資金調達したOfferUpの14億ドル(約1500億円)のバリュエーションを上回った。

同社は、AmazonのCEOであるJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏、Salesforce(セールスフォース)のCEOであるMarc Benioff(マーク・ベニオフ)氏、U2のBonoとThe Edgeを含む多数の著名な投資家を魅了している。2015年の創業以来、同社は総額6億6800万ドル(約730億円)以上を調達した。

Remitlyはシアトルに本社を置くフィンテック企業で、シアトルのスタートアップエコシステムの発展に貢献している。国際送金が専門で、Generation Investment Managementがリードした1億3500万ドル(約150億円)のシリーズEでエクイティを、今年初めにBarclays、Bridge Bank、Goldman Sachs、Silicon Valley Bankからデットで8500万ドル(約92億円)を調達した。エクイティラウンドには、Owl Rock Capital、Princeville Global、Prudential Financial、Schroder&Co Bank AG、Top Tier Capital Partners、さらに、既存投資家からDN Capital、NaspersのPayU、Stripes Groupも参加した。このラウンドで、同社のバリュエーションは10億ドル(約1090億円)近くになった。

コワーキングスペースプロバイダーのThe Riveter、不動産ビジネスのModus、同日配達サービスのDollyなどの有望なスタートアップも最近になって投資を引きつけている。

長く切望されたシアトルのスタートアップの隆盛には、他の要因によるところも大きい。StripeAirbnb、Dropboxのような優良企業は、Uber、Twitter、Facebook、Disneyなどの多くの企業と同様に、シアトルにエンジニアリングオフィスを構えている。当然これによって豊富なエンジニアを集めることができた。エンジニアの確保は、成功するテックハブの構築に欠かせない要素だ。近隣のワシントン大学からのエンジニアのパイプラインは頭脳の供給に不足がないことを意味する。

シアトルは長年、優秀な人材であふれているが、ほとんどがMicrosoftとAmazonで働いている。問題は、高収入が得られるギグワーカーを辞めてリスキーなベンチャーで働こうとする人材と、起業家の不足だ。シアトルのベンチャーキャピタリストにとって幸運なことに、スタートアップの世界に企業から労働者を誘致するための新たな取り組みが進められている。今年初めに紹介したPioneer Square Labs(パイオニアスクエアラボ)は、この動きの代表例だ。シアトルの独自性ある起業家のDNAを擁護するというミッションのもとPioneer Square Labsは2015年に設立され、太平洋岸北西部に本社を置くテック企業の立ち上げや資金調達を支援している。

TechCrunch Disrupt 2017に登壇したBoundlessのCEOを務めるシャオ・ワン氏

RSLやMighty AIの創業者であるGreg Gottesman(グレッグ・ゴッテスマン)氏を含む創業経験者とベンチャーキャピタリストで構成されるPSLのチームは、「スタートアップスタジオ」モデルの下で、スタートアップのアイデアの創造・育成や、ビジネスをリードする創業CEOを彼らのネットワークから探し、採用することに取り組んでいる。シアトルは、世界で最も企業価値の大きい2つの企業の本拠地だが、期待したほど多くの創業者を生み出していない。PSLは、リスクの一部を軽減することで、アマゾンの元シニアプロダクトマネージャーで現在はBoundlessのCEOを務めるXiao Wang(シャオ・ワン)氏のような将来の創業者の育成が促進できるのではと期待している。

「スタジオモデルは99%の人にとって非常にうまく機能する。『ちくしょう、会社を始めなければ』と考えるようになる」とPSLの共同設立者であるBen Gilbert(ベン・ギルバート)は3月に語った。「素晴らしい起業家というのはそういう人達だが、スタジオが触媒として機能しなければ、彼らは起業しようとしないかもしれない」。

Boundlessは、PSLからスピンアウトした成功例の1つ。複雑なグリーンカード取得プロセスを支援する同社は今年初め、Foundry GroupがリードしたシリーズAで780万ドル(約8億5000万円)を調達した。既存投資家からは、Trilogy Equity Partners、PSL、Two Sigma Ventures、Founders ‘Co-Opが参加した。

シアトルのMadrona Venture Groupなどの古くからの機関投資家は、シアトルのスタートアップコミュニティを発展させるために一定の役割を果たしてきた。Madronaは今年初めに1億ドル(約109億円)のAcceleration Fundを立ち上げた。次の取引は「庭の外」で行う予定だが、同社は引き続き太平洋岸北西部のスタートアップの最大の支援者の1つだ。1995年に設立されたMadronaのポートフォリオには、Amazon、Mighty AI、UiPath、Branchなどがある。

シアトルに拠点を置くもう1つのVCであるVoyager Capitalも、太平洋岸北西部の投資に向け今年1億ドル(約109億円)を調達した。Starbucks(スターバックス)を率いたHoward Schultz(ハワード・シュルツ)氏が共同設立したベンチャーキャピタルファンドであるMaveronは5月、アーリーステージのコンシューマースタートアップへの投資に向け、さらに1億8000万ドル(約200億円)を集めたFlying Fish Partnersのような新しいVCも、有望な地元企業への投資に忙しい。

まだまだ語るべきことがある。シアトルに拠点を置く資金豊富なエンジェル投資家がスタートアップエコシステムの拡大に果たす役割の拡大や、シリコンバレーのトップファンドのような、シアトルの人材に資金を投入する非ローカルの投資家などだ。要約すると、シアトルのスタートアップ関連の取引は、優秀な人材、新しいアクセラレーターモデル、燃料補給したベンチャーファンドのおかげでようやく活発になってきた。シアトルのスタートアップコミュニティが今の成長期をどのように活用し、トップに躍り出るスタートアップがどこなのかを見届けよう。

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(翻訳:Mizoguchi)

インドのテックスタートアップの資金調達額は2019年に過去最高の1.6兆円を突破

インドのテックスタートアップがこれほど盛り上がったことはない。調査会社のTracxnによると、インドのテックスタートアップは2019年に145億ドル(約1兆6000億円)を調達し、過去最高だった昨年の106億ドル(約1兆2000億円)を上回った。

2019年にインドのテックスタートアップは、1185回の資金調達ラウンドに817人の投資家が参加した。うち459回はシリーズA以降のラウンドだった。スタートアップ向け融資を行うInnoVen Capitalのレポートによると、アーリーステージのスタートアップは今年、エンジェルラウンドとシリーズA以前の資金調達ラウンドで69億ドル(約7500億円)を調達し、昨年の33億ドル(約3600億円)をあっさり上回った。

InnoVenのレポートによると、一般的に投資家をひきつけるのに苦労することが多いアーリーステージのスタートアップの今年の資金調達の件数は前年比22%増加した。1社あたりのバリュエーションの平均は260万ドル(約2億8000万円)で昨年から15%増加した。

全体では、2500万〜1億ドル(約27〜109億円)の資金調達取引は81件で、昨年は56件、一昨年は36件だった。1億ドル(約109億円)を超える取引は27件あり、2018年は17件、2017年は9件だったとTracxnはTechCrunchに述べた。

インドでは2019年に、128のスタートアップが買収され、4社が株式公開し、9社がユニコーンになった。Tracxnによると、今年、インドのテックスタートアップも記録的な数の国外の投資家を魅了した。

今年の資金調達によって、急成長しているインドのスタートアップは着実な成長の道をさらに進むことになる。テックスタートアップの資金調達額がわずか43億ドル(約4700億円)だった2016年(前年の79億ドル(約8600億円)から減少)以来、エコシステムへの資本の流れが大幅に増加した。Tracxnによると、インドのスタートアップは2017年に104億ドル(1兆1000億円)を調達した。

「スタートアップの資金調達額は、2010年の5億5000万ドル(約600億円)から2019年には145億ドル(約1兆6000億円)へと、25倍を超える目覚ましい成長を遂げた」とTracxnはコメントした。

「インドのスタートアップについて同様に有望なのは、彼らが現在取り組み始めた課題だ」とVCファンド、Lightspeed Venture PartnersのパートナーであるDev Khare(デブ・カレ)氏は、TechCrunchとの最近のインタビューで語った。

「2014年と2015年の時点では、スタートアップは主にeコマースソリューションの開発と欧米市場で成功したアイデアのコピーに注力していた。しかし今日、彼らは幅広い分野で機会を狙っており、インドが世界初となるソリューションの開発も見られる」とカレ氏は述べた。

Tracxnの分析によると、宿泊施設のスタートアップは今年約17億ドル(約1900億円)を調達し、うちOyoだけで15億ドル(約1600億円)を調達したElastic Run、Delhivery、Ecom Expressなどの物流スタートアップの調達額も、6億4100万ドル(約700億円)に上った。

176の水平的マーケットプレイス、150を超える教育学習アプリ、160を超えるフィンテックスタートアップ、120を超えるトラック輸送マーケットプレイス、82の配車サービス、42の保険プラットフォーム、33の中古車リストプロバイダー、企業や個人へ運転資金を供給する13のスタートアップが今年資金を調達した。Tracxnによると、フィンテックのスタートアップだけでも今年32億ドル(約3500億円)を調達しており、他のどの分野のスタートアップよりも多かった。

投資家

50を超える投資(または共同投資)があるSequoia Capital(セコイアキャピタル)は、インドのテックスタートアップにとって今年最も活発なベンチャーキャピタルファンドだった。Googleのインドと東南アジアビジネス担当の元幹部、Rajan Anandan(ラジャン・アナンダン)氏は4月、Sequoia Capital Indiaにマネージングディレクターとして加わったAccel、Tiger Global Management、Blume Ventures、Chiratae Venturesが、Sequoiaを除くトップ4のVCだった。

Steadview Capitalは、配車サービスのOla教育アプリのUnacademyフィンテックスタートアップのBharatPeを含む9つのスタートアップへの投資により、プライベートエクイティファンドの先駆けとなった。NoBrokerに投資し、EdTech(エドテック)スタートアップのByju’sを最近黒字に転換させたGeneral Atlanticは、4つのスタートアップに投資した。FMO、Sabre Partners India、CDC Groupはそれぞれ3つのスタートアップに投資した。

HomeCapitalとBlowhornを含め40以上の投資を行っているVenture Catalystsは、今年インドのトップアクセラレーターまたはインキュベーターだった。Y Combinator25を超える投資を実行したほか、Sequoia CapitalのSurge、Axilor Ventures、Techstarsも今年非常に活発だった。

インドのテックスタートアップは、今年も多くのトップ企業や銀行から直接投資を引き寄せた。今月初めにフィンテックのスタートアップ、ZestMoneyに投資しGoldman Sachsは、今年合計で8件投資した。とりわけ、Facebookはインドのスタートアップに初めて投資した。投資先はソーシャルコマース企業のMeeshoとTwitterが1億ドル(約109億円)の資金調達ラウンドをリードしたローカルソーシャルネットワーキングアプリのShareChatだ。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

プレゼン資料コンサルに550万円を支払うべきか

ベンチャーキャピタル(VC)関連のツイートで、常軌を逸していてあり得ないと思えるようなコメントや声明を見かけることがある。そういうコメントに接すると、間違いに違いない、間違いでなければならないと思ったりする。Primary Ventures(プライマリーベンチャーズ)の投資家、 Jason Shuman(ジェイソン・シューマン)氏のコメントがその例だ。最近のシリコンバレーで、プレゼン資料のアドバイスにかかる料金についてコメントした。

彼の悲しい叫び声が聞こえるようだ。「心が折れる音がした」(シューマン氏は叫ぶような人ではないので気にしないでほしい)。確かに、多くの創業者がバブルについて心配している昨今、モノの価格はこれまで以上に高くなっている。最近にいたっては、すべてが少し狂っているように見える。「PowerPointファイルとちょっとした『考察』に数万ドル(数百万円)の価値があって、資金調達のタームシートをまとめるのに必要だ」というのは正気の沙汰ではないとも思える。

実際にはそれだけの価値がある。控えめに言っても、それだけの価値はあり得る。先週、「寄生虫コンサルというスタートアップが陥る罠を回避する方法」というタイトルの記事を書いた人間としてそう言わせてもらう。

間違いないのは、すべてのプレゼン資料コンサルに最高の価値があるわけではない。ニューヨークのウェストビレッジにあるすべてのクロワッサンに10ドル(約1090円)の価値があるわけではないのと同じだ。ただ一部の選りすぐりのコンサルは、彼らが要求する金額に値すると言える。

最高のコンサルは、WeWorkの壁に塗る石膏のような贅沢品ではなく、スタートアップに投資すべき重要なツールだ。スタートアップの仮説、製品、チーム、市場をきちんと説明できる形に落とし込むことは、本を読んだり、創業者の友人の資料をスキャンするだけでは学ぶことのできない質的なスキルだ。  1枚のスライドが間違っていたり、最悪の場合、箇条書きが1つ間違っているだけで、プレゼンの場で30秒以内にすべてが吹っ飛んでしまう可能性があるのだ。

信じてほしい。筆者はかつてVC投資家として、1つの文に固執していた。創業者の生涯をかけた仕事を会社という形にして、さらにそれを数枚のスライドに要約する過程で、私はたった8つの単語にこだわったことがあった。その8つの単語は意味をなしていなかった。何かが意味をなさないと、情熱と自信はすべて崩壊してしまう。8つの単語には間違って選んだ動詞と形容詞が含まれていた。

単に「良い」プレゼン資料コンサルは資金調達でわずかに影響力を発揮するにすぎないが、「スーパースター」は優れたタームシートを手に入れるだけでなく、スタートアップの軌道全体を根本的に変えることさえある。賭金の違いが結果を左右する。

もちろん、これができるのはプレゼン資料コンサルだけではない。良いPRコンサルなら、誰よりも優れた説得力で物事を推進できる。良いセールスコンサルは、創業初期に顧客を確保し、秩序だった清算か大規模なシリーズAに進むかの違いを生み出せる。良い製品マーケティングスペシャリストまたはプライシングのエキスパートは、潜在顧客を実際の顧客に転換し、解約率も減らす。

現在の創業者にとって難しいのは、シリコンバレーが十分に成熟した結果、こういったすべてのコンサルが利用できることだ。押し売り、ペテン師、資金はわずかなのになぜか羽振りの良いグルメ、魅力的なプレゼン資料で身を覆い隠している愚かなピエロがいる。

だが、プレゼン資料にアドバイスするサービスの市場が拡大した結果、スーパースターと呼べる人が市場に現れたのは確かだ。平凡な人が1年かかって提供するよりも多くの価値を1〜2週間で提供できる人々がいる。

創業者としてのあなたの仕事は、そういうダイヤモンドを絶えず探し、見つけたらどんなにコストがかかっても、あなたのアイデアに沿って彼らに働いてもらうことだ。場合によっては正気とは思えないコストであってもだ。

現在のハイテクスタートアップの特徴は、スーパースターという地層の上に基盤があることだ。スーパースターの才能は、優れた製品、VCからの多額の資金調達、最終的には理想的なイグジットを可能にする。スーパースターがもたらす勢いは本物だ。もちろん物事に絶対はない。プロセスのすべての段階で確率的に失敗の可能性が常にある。だが、愚かさが成功への道を開くことはほとんどない。

イノベーションのあらゆる要素と同じで、適切な人材と適切なアイデアに適切な投資を行うことがすべてだ。間違ったコンサルが間違ったアイデアに取り組むなら、5万ドル(約550万円)、いや50万ドル(約5500万円)払っても、何の役にも立たない。寄生虫はしょせん寄生虫にすぎない。だが、シードで得た資金を正しい人に払って正しい問題に取り組んでもらえれば、魔法が起こる。

料金の高さや、VCがスタートアップ自体よりプレゼン資料を重視することに怒りを感じるのは理解できる。そういったフラストレーションを感じるのは自然で、決しておかしくはない。だが、厳しい問いを避けるのはやめよう。あらゆるものに付加価値がある。その分野のトップエキスパートが自分の強みを理解し、専門知識を活用して料金を高く設定することは驚くにあたらない。

プレゼン資料コンサルに数万ドル(数百万円)を支払うことは、ベンチャーキャピタルからの資金調達を確保するための前提条件ではない。世の中には、会社のために資金を引っ張ってくるスキルのみを持っていて、そのスキルのために外部にお金を払ったことのない創業者もいる。

最終的には、あらゆるアーリーステージのスタートアップが同じ課題に直面する。やることが多すぎて時間がない。必ず何かをどこかで外注する必要に迫られる。頼んだ仕事の質は払う金額によって決まる。あなたの会社の資金を何に使うかが、あなたのスタートアップの行く先を決める。だから、それがプレゼン資料であろうと、他のことであろうと、最高の金額から目をそらしてはいけない。最終的に最高の金額をもたらしてくれる可能性があるからだ。

画像クレジット:Glow Images、Inc / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

非上場スタートアップへの投資機会を増やす米証券取引委員会の提案

このところ非上場企業の数が増え続けており、しかも彼らはこれまでよりも長く非上場を続けている。以前ならGoogleやAmazonのような企業の成長から利益を得たであろう公開市場の株主は、今や仲間はずれだ。米国証券取引委員会(Securities & Exchange Commission、SEC)は、この現状を危惧している。そこで、なんとかしなくてはいけないとSECは考えた。

SECは米国時間12月18日、富裕投資家などの「認定投資家」(Accredited Investor)の定義と、投資企業などの「適格機関購入者」(Qualified Institutional Buyer)の定義を変えて、非公開資本市場で投資できる人や機関の種類を増やそうという提案を行った。非公開資本市場とは、非上場のスタートアップやヘッジファンド、ベンチャーファンド、プライベート・エクイティ(非上場株)ファンドなどのことだ。それで何がどう変わるのか?現状のSECの定義では、認定投資家は100万ドル以上の流動資産を持ち、年収が20万ドル以上の人を対象とする。

今回のSECの提案では、エントリーレベルの株式ブローカーのライセンスや、認定教育機関が発行した信用証明書を持つ投資家が非公開株に投資できるようにする。また現在のSECの富裕基準を満たさなくても十分な知識のあるファンドの社員や、管理している資産が500万ドル以上のファミリーオフィスとそのファミリークライアント、そして自分の資産を認定投資家になるためにプールしている「配偶者格の者」も非公開株に投資できるようにする。

この改善提案では、1億ドル以上の証券を有し旧定義の投資基準を満たす有限会社とRBICs(FactSet Revere Business Industry Classification System)が適格機関購入者と見なされる。またSECの案では、投資企業法の定義を満たす500万ドル以上の投資の実績があり、特殊目的に限定される投資を行っていない法人などを新しいカテゴリーとして設けようとしている。

提案は現在、60日間のコメント受け付け期間にある。しかしこの、非公開(非上場)投資プールを拡大しようとするSECの主張に対しては、さまざまな賛否が巻き起こると考えられる。

投資家保護を重視する勢力は、すでに十分な資本を有しているスタートアップが弱い投資家たちを食い物にすると主張するだろう。もう一方では、経験の浅い資家家が米国のイノベーション経済から閉め出され、所得格差が一層悪化するるという声も高まるかもしれない。

SECの提案文書はここで見られる。また、コメントの提出方法もわかる。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

食事の出前サービスが4000億円超で買収された韓国は一流スタートアップ拠点になるかもしれない

ソウル、そして韓国はまだ誰も話題にしていない秘密のスタートアップ拠点なのかもしれない。中国のスタートアップ市場の規模と範囲があまりにも大きいために近隣国の韓国は小さく見られてしまいがちだが、ここ数年の様子から察するに、韓国は一流のスタートアップ拠点になれる、というかなるだろう。

その好例として、韓国を代表する食事の出前アプリ「配達の民族」、略して配民(ペミン)は先週、ベルリンのDelivery Hero(デリバリー・ヒーロー)からの驚きの40億ドル(約4380億円)の買収提案を受けたことを発表した。実現すれば、韓国のスタートアップ史上で最大のイグジットとなる。

この買収は、独占禁止法の審査を通過した後に決定する。なぜなら、Delivery Heroは配民の最大のライバルYogiyo(ヨギヨ)を所有しており、規制当局の承認が必要になるからだ。Delivery Heroは2014年にYogiyoの株式の過半数を取得している。

関連記事:Delivery Heroが韓国の強力なライバルであるBaedaltongの過半数株式を取得(未訳)

しかし驚くべきは、過去10年の韓国のスタートアップ拠点としての成長の様子だ。5年前にTechCrunchのソウル駐在海外特派員を、8年前には韓国科学技術院の研究者を務めていた私は、その拠点としての成長を地元で観察し、ここ数年は遠くから注視してきた。

いまだ財閥系複合企業の支配が続いているものの(サムスンを超えられるものがない)、韓国経済にダイナミズムを与えているのはスタートアップと文化産業だ。また、国の年金基金から(国内外を問わず)スタートアップ界に資金が流れる仕組みのため、大企業での昇進経路という泥沼から脱却してスタートアップの道を探る起業家たちのチャンスはさらに広がっている。

配民のオリジナルのブランディングは、イラストに重点が置かれている。

5年前に配民は、かわいい系でクリエイティブなインターフェイスでフライドチキンを出前するひとつのアプリに過ぎなかった。その料金を巡っては、レンストラン・フランチャイズのオーナーから批判を受けた。しかし今では、配民のバイクはソウル中で見かけるようになり、たくさんのレストランには配民のスピーカーが設置され、キャッチーなサウンドとともに配民の名前を宣伝し、インターネットで配達の注文が入るごとにアナウンスを流している。

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先週、ソウルにいた私は、あるレストランで、1分から3分おきぐらいに「配達の民族にご注文!」とのアナウンスが流れ、落ち着いて食べることができなかった。びっくりするような商品マーケティング戦略だが、米国の宅配スタートアップが真似しないことのほうが驚きだ。

エコシステムの強固さは、いつものとおりに維持されている。頭のいい大卒の労働人口が多く(韓国は世界で最も教育率が高い国のひとつだ)、加えて若者の失業率と不完全雇用率が高いことから、とうてい叶わない企業の役職にこだわるよりも、スタートアップを起業しようとする動きがますます加速している。

変わったのは、ベンチャー投資資金の流れだ。韓国がスタートアップの資金調達に苦労していたのは、そう昔のことではない。数年前、韓国政府は、自国の起業家を対象とするベンチャー投資企業の設立費用を引き受ける計画を開始した。単純に、スタートアップを軌道に乗せる資金がなかったという理由からだ。その当時、私が聞いたところでは、1000万円程度のシード投資金でスタートアップの過半数株式が買えてしまうのは珍しい話ではなかった。

現在、韓国は、ゴールドマン・サックスSequoia(セコイア)とおいった数多くの国際投資企業がスタートアップへの投資を狙う国になっている。さらに近年では、数々のブロックチェーン開発の中心地にもなり、資金の急激な上昇と下落を経験しつつも市場が維持されている。相対的に調達資金は増加し、いくつものユニコーン・スタートアップが生まれるまでになった。CrunchbaseのUnicorn Leaderboardには合計で7社が登録されている。

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そうして韓国は動き出した。数多くの新進スタートアップが将来の大きな結果に向かって突進しようと身構えている。

そのため、この国の障壁を乗り越えて参入したい意欲を持つベンチャー投資家には、これからもユニークなチャンスがある。とはいえ、この国の過去と未来の成功を最大限に活用するには克服しなければならない課題がある。

おそらく最も難しいのは、この地で何が起きているかを深く理解することだろう。中国は、国家安全保障からスタートアップや経済まで、あれこれ取材したいという大勢の外国の特派員を引きつけるのに対して、韓国では海外の特派員はもっぱら北朝鮮の話か、たまに変わった文化の話を取材するぐらいなものだ。スタートアップを専門に追いかけているジャーナリストもいるにはいるが、残念なことに極めて希で、エコシステムの規模に比べて予算があまりにも少ない。

さらに、ニューヨーク市と同様に、広く交流することのない異種のエコシステムがいくつも混在している。韓国には、国内市場をターゲットにしたスタートアップ(それが今の大量のユニコーン企業を生み出した)と、半導体、ゲーム、音楽と娯楽といったさまざまな産業を牽引する大手企業がある。私の経験からすると、このような垂直市場はそれぞれが社会的のみならず地理的にも個別に存在していて、産業の壁を越えて才能や見識を集結させることが難しい。

だが最終的には、シリコンバレーやその他の重要なテクノロジーの拠点で評価が高まれば、最高のリターン特性をもたらすスタートアップの街の上の階層に進めるだろう。先週、早期に配民に投資した人たちは、おそらく出前のフライドチキンで祝杯をあげたことだろう。

画像クレジット:Maremagnum / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

ダイキンが進めるAirTechとは?第2回事業創造プログラムの募集を開始

ダイキン工業とベンチャーキャピタルのサムライインキュベートは12月12日、「オフィスにおける空気・空間の改善による生産性向上」の実現を目的とした短期事業創造プログラム「第2回AirTech BootCamp」を開催することを明らかにした。本日12月12日より参加するスタートアップ企業や研究者を募り、2020年2月5日〜6日にイベントを開催する。

募集テーマと開催概要は以下のとおり。なお、最終プレゼンで採択された企業には、サムライインキュベートが2000〜3000万円程度の出資を検討する。実際に出資が決まった場合は、同社が事業立ち上げに協力し、ダイキン工業との協業をサポートするとのこと。

  1. オフィス空間における生産性向上に寄与するヘルスケアソリューション
  2. 生産性に寄与または相関するデータのセンシング・分析
  3. オフィスの空間ごとの目的達成度合いを把握するセンシング・分析
  • 対象者:テーマに関わる技術や事業を持つプレシード、シードのスタートアップ企業、もしくは大学の研究室でBootCamp実施日両日とも参加できる方
  • 募集期間:2020年1月14日23時59分まで
  • 審査期間:2020年1月15日〜29日(クアルコム※審査完了次第、随時結果をメールにて連絡)
  • BootCamp実施日:2020年2月5日〜6日
  • BootCamp開催場所:コワーキングスペース「point 0 marunouchi」

2019年7月に実施した第1回AirTech BootCampは、空気・空間における「アレルゲンやウイルスのセンシング・不活性化」と「非接触でのストレスセンシング・ストレスの抑制」のテーマで開催し、4チームを選出。現在でもダイキン工業との連携や投資検討を進めているチームがあるとのこと。

女性起業家への米国のVC投資が過去最高を記録

PitchBookの最新データによると、女性が創業したスタートアップへのベンチャー投資は2019年に33億ドル(約3600億円)に達した。これは今年の米国のスタートアップエコシステム全体への投資額の2.8%に相当する。

割合は小さいが昨年からは増加した。2018年の女性起業家へのベンチャー投資は580件、30億ドル(約3300億円)で投資額全体の2.2%だった。なお、2017年は21億ドル(約2900億円)だった。2019年はあと3週間を残して、男女共同を含め創業者に女性が含まれるスタートアップの調達額は合計172億ドル(約1兆8700億円)で、ベンチャーキャピタル投資総額の11.5%となった。昨年は2000件で、それぞれ170億ドル(1兆8500億円)、10.6%だった。

資金調達データベースのCrunchbaseは、今年10月までに世界で200億ドル(約2兆2000億円)が女性または男女共同創業のスタートアップに投資されたと報じた。グローバルのベンチャーマネーの3%は女性創業の、10%は男女共同創業のスタートアップに投資された。

女性起業家、ベンチャーキャピタリスト、シリコンバレーなどの多様な支持者による努力にもかかわらず、女性起業家は男性と同等の資金を調達するのが難しい。VCの公平性の欠如は、VC側に女性がいないことに一部原因がある。VCファンドによる女性起用はまだ非常に少ない。

2019年のAxiosの分析によると、多くのVCファームが各職位に女性を増やそうとしているが、意思決定層の女性は10%未満だ。同分析によると、1088人の投資家のうち女性はたった105人だった。2018年は8.93%、2017年は7%であり、女性の割合は増加しているが、VC業界は依然として男性が支配的であることが証明された。

ベンチャー企業に自社発行株式管理ツールを提供するCartaは先月、第2回ジェンダーエクイティギャップ年次調査を発表した。男性起業家と従業員は依然として女性よりもはるかに多く株式発行による資金調達に成功している。Cartaの調査結果によると、スタートアップの保有株式数の64%、保有株式の価値が100万ドル(約1億1000万円)を超える人の80%が男性だ。32万人の従業員、約1万社、2万5000人の創業者のデータに基づく分析結果は、スタートアップに在籍する女性にとってはさびしい結果となった。

ベンチャー企業であるTideは今年、女性起業家に関する独自調査を実施した。調査対象は英国と米国の起業家。いずれの国でも起業家の多様性が昨今話題だ。Tideによると、女性の起業家が英国の大学から取得した403学位のうち、約4分の1がケンブリッジ大学とオックスフォード大学からだった。米国の起業家の場合、ほとんどがスタンフォード大学、MIT、またはハーバード大学からだった。つまり最終的に投資家からの資金調達に成功した女性起業家のほとんどはエリート大学の卒業生で、特定の社会経済的地位にいる。トップ大学出身でなければ、投資家にアクセスしやすいネットワークに入ることはできず、当然資金へのアクセスはもっと難しくなる。

VCの多様性への取り組みは女性の問題を超えて広がっている。確かに、女性起業家を支援する使命を掲げたファンドは多数ある。Female Founders Fund、BBG Ventures、Halogen Ventures、Jane VC、Cleo CapitalなどのファンドやReady Set Raise、XFactor Venturesなどのアクセラレータープログラムだ。だが有色人種などのマイノリティも資金確保に苦戦している。PitchBookやCrunchbaseなどのデータベースでは性別は記録しているが、人種を記録していないため、資金調達の人種間格差の規模を把握することは困難だ。

格差を埋めることを使命として、Harlem Capitalのような企業がマイノリティの起業家に投資したり、BLCK VCのような組織が黒人ベンチャー投資家にコミュニティーを提供しようとしている。Harlem Capitalを率いるニューヨークのチームは先月、4000万ドル(約44億円)の資金調達デビューを発表した。ダイバーシティに注力するファンドとしては過去最大級の規模だ。BLCK VCと同様にHarlemも、現在多数のディールメーカーが白人やアジア系男性によって占められているベンチャーキャピタルに、より多くのマイノリティを引き付けることを望んでいる。

「VC業界に均衡をもたらすには、我々のようなダイバーシティファンドが必要だ」とHarlem CapitalのマネージングパートナーであるJarrid Tingle(ジャリッド・ティングル)氏は先月TechCrunchに語った。

VCやテクノロジー業界の女性に焦点を当てた動きとしては、今年初めに最初の最高経営責任者にPam Kostka(パム・コストカ)氏を迎えたAll Raiseもある。テクノロジーエコシステムで女性を含めたマイノリティの存在感を増す試みを行ったこの非営利組織にとって、2019年は当たり年だった。All Raiseは今年、最初のリーダーと数人の従業員を迎えただけでなく、ロサンゼルスとボストンへの進出を発表し、VCコホートと呼ばれるプログラムを開始し、対面やオンラインの資金調達ワークショップ、年次会議、ネットワーキングセッションを開催した。

「女性は我々のサポートとガイダンスに飢えている」とAll Raiseのコストカ氏は10月にTechCrunchに述べた。「ムーブメントは勢いを増しつつある」。

女性が創業した大規模かつ成長中の「ユニコーン」スタートアップも今年、ムーブメントを推し進める一助となった。女性が率いる企業がシリコンバレーのエリートからの支援を得られることを証明したのだ。PitchBookは、評価額が10億ドル(約1100億円)以上の企業であるユニコーンクラブへの新規参入者の例として、女性が創業した2つの会社、GlossierとRent the Runwayを挙げた。

Glossierは、Sequoia Capitalがリードした3月のシリーズDで1億ドル(約110億円)を調達した。Tiger GlobalとSpark Capitalも参加した。このラウンドで、Emily Weiss(エミリー・ワイス)氏が率いる同社は12億ドル(約1300億円)と評価された。そのわずか数日後に、Franklin Templeton InvestmentsとBain Capital VenturesがリードしたRent the Runwayの1億2500万ドル(約140億円)の資金調達ラウンドのニュースが届いた。バリュエーションは10億ドル(約1100億円)だった。

最新データの数値は異なる可能性があるが、2019年に男性経営者が米国のベンチャーキャピタルマネーの85%以上を調達し、ベンチャーキャピタルの意思決定層の90%以上が男性だった。ベンチャーキャピタル業界は、現状ではまだボーイズクラブのままだ。

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(翻訳:Mizoguchi)

Y CombinatorがオンラインのStartup Schoolを年に複数回開催へ

2017年にY Combinator(YC)は、Startup School(スターアップスクール)という名の、年1回10週間のオンラインコースの提供を開始した。一部はフォーラムコミュニティで、また一部はビデオクラスで構成されるこのプログラムでは、YCパートナーや彼らのネットワークから声のかかった起業家たちによって、資金調達やスタートアップのアイデアの評価などのトピックに関するさまざまな講義が提供されている。

画像クレジット: Getty Images

3年が過ぎ4万人以上の卒業生を送り出して、YCはそのスケジューリングを見直そうとしている。2020年以降、Startup Schoolは年に複数回開催されるようになる。また、これまで10週間だったプログラムを、8週間のプログラムへと移行する。

開始当初、Y Combinatorは各Startup Schoolセッションに対して、受け入れる起業家の数に厳しい上限を設定していた。だが2018年に誤って入学承認書が間違ったチームに送られた後、YCは応募者全員を受け入れる方針に転換した。同時にプログラムを変更し、個人的なアドバイスは減らして、小さなピア・ツー・ピアのアドバイスグループを増やした。Startup SchoolサイトのFAQ に、今年のセッションでは「参加者の数に制限はない」と書かれているように、彼らはこの戦略をこの先も維持するつもりのようだ。

以前にStartup Schoolに参加したことがあって、またやり直す価値があるかどうかに興味があるだろうか?YCによれば「いくつかの講義は更新または入れ換えられる」が、2020年代のStartup Schoolのビデオコンテンツは、2019年のものとほぼ同じだという。ただし、もちろんコース自体の構造にはいくつかの変更点がある。グループビデオチャットセッションは少なくなるが、YCパートナーたちとの毎週のQ&Aセッションが導入される。

「1年に複数回」が実際には何回行われるのかは、まだ決まっていないようだ。YCは、TechCrunchに対してまだ調整中だと語った。YCは、この変更を発表した投稿で、最初の2020年のコースが1月に開始されると述べている(従来のセッションは1年の中頃に開始されていた)。

また、YCのStartup School助成金プログラムもまだ完全に決まっていない。過去の数年間は、コースの卒業生たちは株式不要の助成金を申請することができた(当初は1万ドル/約109万円で、後に1万5000ドル/約163万円に増加)。Startup Schoolを年に複数回開催することを受けて、YCは「助成金プログラムを検討中」と述べている。

同じ投稿の中で、YCは最新の統計情報の概要を示した。たとえば、コースに参加した4万1777人の起業家のうち1万193人が卒業し、起業家の57%が自身のスタートアップにフルタイムで取り組み、そして起業家の62%が米国外から来ているということなどだ。

この最後の点が、YCの戦略の鍵のようだ。Startup Schoolは、少なくとも部分的にはYCアクセラレータプログラム本体への、潜在的な入口として機能することを狙っている。すべてをオンラインにすることで、世界中の人びとがドアに足を踏み入れることができるようにして、米国に移住するという重大なコミットメントを行うことなく参加できるようにしているのだ。

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(翻訳:sako)