今週は
コンバージョン祭ウィーク、ということで、LPO関連の記事を多目に配信していきます。A/Bテストを始め、コンバージョン改善への注目度が集まりつつある日本のウェブマーケティング業界ですが、そのために特別な予算を割いて取り組んでいる企業はまだまだ数少ないのが実情ではないでしょうか。そしてそんな状況で常に課題となるのが、上司や会社にコンバージョン最適化の予算を認めてもらうこと。今回はそんな悩めるウェブマーケッターへのアドバイス記事を。 — SEO Japan
大きな企業で働いている方が聞いたら「当たり前だ!」と怒られてしまうかもしれないが、コンバージョンの最適化、および、テストに誰もが賛成してくれるわけではない。
理想としては、データドリブンのアプローチ & コンバージョンの最適化を初日から組織に浸透させたいものだ。
しかし、現実は甘くはない。
組織には、エゴ、反対意見、縦割り主義、そして、自分が誤っている可能性がほんの少しでもあると極度に怯えてしまう経営陣が存在する。
縦割りが浸透している企業– つまり、デザイナーはここに集まれ、マーケッターはここで仕事をしろ、ITはこの物置で働け、等の風習が染みついている企業 — の場合、部門をまたいだコンバージョンチームを結成すると言うアイデアを伝えるだけで、笑われてしまう(もしくは、却下されてしまう)。
ConversionXL コンバージョンコースの生徒の中にも、この状況に遭遇し、次の疑問を持った方がいた:
「リサーチ & データドリブンの仮説をテストする試みを承認してもらうには、どうすればいいのだろうか?
コンバージョン率の最適化(CRO)は、理解するには時間、労力、そして、経験が求められる特殊な分野であることを説得する必要がある。そして、自分達で勝手に決めるのではなく、CROを信頼してもらわなければならない。
私の会社では、ウェブデザインやUXは、そこら辺の人がGoogleでちょっと検索を行えばマスターすることが出来ると考える人達がゴロゴロいるが、コンバージョン率の最適化に対しても、全く同じ考えを持っている気がする。」
最適化を実施している会社を探す
これは今まで遭遇したことがない大きな問題であったため、私はTwitterで質問を投げ掛けた:
CROを社内に浸透させる取り組みに関する記事で、大企業で従業員として最適化を担当するスタッフを探しています。ご存知の方いませんか?
この情報提供には、以下の基準を設けていた:
- 社員が100名以上在籍する
- コンバージョンのテストを頻繁に行っている
- 以前、結果を出し、取り組みを拡大する計画を持っている
反響は大きかったものの、時間を割いて、コンバージョンのテストを始める試みを理解する上で支援してくれた会社はたった2社であった。
航空会社にCROを浸透させた経緯
同じような経験をしたことがある方もいるのではないだろうか?
マーケティング部門は、Eコマースを「担当」していたが、Eコマースの売り上げは芳しくなかった。
マーケティング部門は、自分達のやり方でEコマースを運営しようとしている。ITは聞く耳を持たず、対立は深まるばかりであり、何も対策が行われずに時間ばかりが過ぎていった。
これは、アドリア航空で、現在、IT & マーケティングディレクターを務めるイズトク・フランコが、社内で「コンバージョン率の最適化」のアイデアが浮かぶ前に直面していた状況であった。
アドリア航空のEコマースのコンバージョン率を改善する方法を見つけ出すため、イズトク・フランコは検索を行い、最終的に私が綴った本「How To Build Websites That Sell: The Scientific Approach To Websites」を発見した。
フランコは、この本、そして、CROの概念をすぐに気に入った。具体的で、計測可能で、結果をベースにしているためだ。
当時、アドリア航空は、単純な公式でEコマースをまとめていた:
ビジター *コンバージョン率 *平均の発注規模 = 収益
当初、社内のスタッフの反応を尋ねたところ、フランコは次の画像を送ってくれた:
「広告キャンペーンは大成功だったよ」
「大成功って、具体的に言うと何?売り上げはどれだけ増えたの?」
「計測してないよ」
「でも、今回のキャンペーンは大きな話題になったよ。翌日Eメールが大量に届いたんだ。」
「何本届いたんだい?」
「6本だよ。でも、トピックは1つだったんだよ。6本で十分多いうちに入るでしょ。」
「6本のうち従業員から届いたメールは何本だった?」
「エンジニアを招待したのはどこのどいつだ!」
「あなたと同じ意見だと思ったんだけどね」
CEOを説得
意外にも、CEOはすんなりと納得してくれた。
イズトク・フランコ曰く、「コンバージョン率の改善はセールスを増やすことを確約した。まず、簡単に得られる利益を与え、テスト中毒になるほど分析をプッシュした」ようだ。
「私達はCROが単なる流行りの業界用語ではなく、Eコマースビジネスを運営する手段の一つだと説明した。その後は、雪ダルマ式に展開していった。CEOは、初期の結果、そして、「数字に基づく」構造化されたアプローチに満足し、後押ししてくれた。
幾つか利益を実際に出すことで、インハウスのCROがまぐれ当たりではないことを証明したフランコは、「セールス & コンバージョンを改善する」と言うモットーを掲げ、IT、Eコマース & マーケティングを単一の組織にまとめた。
EコマースをマーケティングとITの焦点として議題に上げることで、組織の焦点を再び明確に示し、一つの目標に統一することで、前途有望な成長(倍増)がもたらされた、とフランコは語っていた。
効果のあった取り組み: 有望な結果を見せた
イズトク・フランコは、CROが組織全体で時間をかけて取り組む価値があることを経営陣に納得してもらうために、小さな利益を探し求めた。また、既得権益を守るための意固地な討論を行うのではなく、実際のデータを用いて、考えを裏付けていった。
Avvoがコンバージョン率の最適化を導入した経緯
Avvo – 法律分野のディレクトリ、無料の法律アドバイス、弁護士によるQ&Aプラットフォーム – は、製品/マーケットを適合させて、良質な製品を作り、自然に成長していく段階からステップアップしようとしていた。そこで、CROに力を入れるようになった。
Avvoのセンディ・ウィジャヤは、ページのタイプによって、広告クリックのコンバージョンに違いがある点に気づき、CROを提案した。
例えば、一部のディレクトリページは、アドバイスのページよりも、広告のコンバージョンが高かった。
量的なデータによって、この事実が裏付けられただけでなく、質的な根拠によっても説明することが出来た。
法律のアドバイスを求める顧客は、通常、情報を検索し、一方、特定の地域や分野で弁護士を検索する顧客は、取引の検索を行う可能性が高い。
CEOを説得
Avvoは、スタートアップの段階であり、あらゆる手段を用いてトラフィックを増やすことに力を入れていた。しかし、闇雲にトラフィックを増やそうとした結果、実際には、最適化を通じて実現することが可能であったコンバージョンを失ってしまっていた。
関係者全員を味方につける際に大活躍したのは、ページのタイプごとに絞り込んだ既存のコンバージョンのデータであった。
実際にコンバージョン率を目にすることで、デザイン、コンテンツ、そして、最適化への投資のROIを推測することが可能になった。
CROは完全に浸透したため、Avvoは、もっとコンバートさせることが出来ると考えていたランディングページの最適化に取り掛かるようになった。
効果のあった取り組み: ROIに賢く対処した
Avvoは、割と正攻法なやり方で、コンバージョンのテストを採用した。既存のデータを使って、同社は次の分析を行った:
- 現状
- 理想
- 理想に辿り着くための計画
- 関係者
- コスト
- 目標達成時のROI
また、Avvoが、コンバージョンだけではなく、ユーザー体験全体を重視していた点も注目に値する。
複数の部署からスタッフに参加させることで、「正解」が存在しないものの、誰もが成功の当事者意識を持つようになり、Avvoの強さを増す上で貢献した。その結果、適切だと思える場合、仮説をテストするアプローチが浸透していった。
「個人的には、コンバージョン率の最適化は、有益なスキルであり、企業は採用するべきだと思う。CROを支援してもらうことで、プロジェクトマネージャーは、ディレクトリページに用いた反復的な手法を、ビジターを魅了し、トラフィックをコンバートさせることを意図した新しいタイプのページに適用することが可能になった。」– シャオハン・ザン SEO/CRO @ Avvo
エキスパートの意見
CROに対する支持を社内で得る点に関して、エージェンシー、とりわけ、もともと社内で経験を積んだことがある人物の意見を聞きたくなった。
「私はITアプリケーションディベロッパーとしてキャリアを始め、その後、オンラインマーケッターに転身した。この2つの職種を経験した結果、コミュニケーションにおけるギャップを認識し、マーケティング部門と技術部門に理解してもらうため、そして、効果的に利用するために、情報をリクエストし、提示する方法を個別に指導することが出来るようになった。
経験上、インハウスのCROは、複数のサイトを運営するオンラインマーケティング部門、あるいは、Eコマース部門から提案されることが多い。また、分析チーム、または、計測チームを持つ会社が、テスト/最適化のストラテジスト、または、ディレクターの役割を導入するケースも増えてきている。
リサーチ & データドリブンの仮説をテストする取り組みを支持してもらうには
主要なスペース、ページのレイアウト、コピー、画像を巡る争いは絶えず行われており、複数の部門で構成されたチームのパフォーマンスとメンバー間の関係に負の影響を与えてしまうことが多い。
CROのコンセプトを導入するには、とりあえずテストすることを提唱して、主観性を除去するアプローチが最も効果が高い。
大半の従業員は、このアプローチを支持し、データを使って判断を下す方針に魅力を感じる。テストを行い、注目に値する結果が出ると、経営陣はすぐに興味を示し、さらにテストを要求する声が必ず上がるようになる。テストの対象は広範にわたるため、次のステップに賢くアプローチする必要がある。
画像ソース
次の2つの原則が当てはまることに私は気づいた:
- 最適化テストの主な目標が、学ぶことになるように調整する。
- 改善における最高の機会を与えてくれる可能性がある学習計画を戦略的に立案する。
私はこの取り組みを実施する全ての方法を完全に伝えている。厳密に言うと、自分達だけで情報を使って、計画を立てることは不可能ではない。しかし、吸収するべき新しい展開は多く、また、あまりのデータの多さに困惑してしまうこともある。自分達だけで試みるよりも、私に尋ねた方が無難なケースもある。
CROの未経験者は、ヒートマップに感心することが多い。しかし、ヒートマップは複雑であり、理解するのは、X線を読むのと同じぐらい難しい。また、視覚要素を見て、色や細部に興味をそそられる人もいるが、その意味を全く理解していない。
知識と見解を分かち合うことで、CROが非常に専門的なスキルである点を分かってもらえるようにしている。CROのエキスパートは、事実上、マーケティングサイエンスのエキスパートだと言えるだろう。
Peep Laja
ピープ・ラジャがMarkitektのクライアントの仕事を通して得た教訓
まずは、テストを知らないだけなのか、あるいは、テストに対して反対しているのか特定する必要がある。
最適化に苦戦している企業は、2つのタイプのいずれかの問題を抱えている — それが、無知と反対だ。そのため、まずは、どちらの問題に対処するべきなのか特定しなければならない。特定後、正しいアプローチを選択することが出来るようになる。
無知の方が、対策が取りやすい。つまり、CEOをはじめとする経営陣は、最適化に反対しているのではなく、最適化に関する知識がない、もしくは、誤った考えを持っているケースである。
大きな銀行をクライアントに抱える最適化のエキスパートに聞いた話だが、この銀行のCEOは「テスト文化」ではなく、「最適化文化」を浸透させたいと主張していたようだ。
どんな違いがあるのだろうか?CEO曰く、何でもテストするのではなく、最適化を通して、サイトを改善するアプローチが適切だそうだ。これは、無知の典型的な例である。悪気はないのだが、何も分かっていない。
無知が問題なら、教育が解決策となる。 <- ツイートで拡散しよう
このケースでは、CEO、または、マーケティングの責任者を賢い人物(彼らが効く耳を持つ人物 — 部下ではなく、社外のコンサルタントが該当することが多い)、鋭い見解が綴られた本、あるいは、質の高いカンファレンスに接してもらう必要がある。適切な方向に無理やり動かしてでも、最適化を理解するチャンスを与えるべきだ。
格言にもあるように、誰が功績を認められるのか気にしなければ、多くの偉業を成し遂げることが出来るのである。
データと感情面での手腕を組み合わせて反対に対処する
テストに反対する姿勢が問題なら、苦労する。これは難問である。考え方を変えるのは容易ではない。感情的な理由やエゴが絡んでくることが多い。不可能ではなくても、感情的な考え方を変化させるのは至難の技である。
重役から支持を得るためのアドバイスを幾つか提供する:
- うまくいくことを証明する証拠を見せる。セールスが漏れている最大の穴を見つけ、穴を埋める努力をするべきだ。その際、テストする(理想 — しかし、テストツールを購入する予算が与えられない可能性がある。ただし、Google アナリティクスのウェブテストは無料で利用可能)、もしくは、穴を閉じてくれる可能性がある取り組みを実施することになる。うまくいったら(そして、仮説に対して自信が持てるように多くのデータを集める必要がある)、分かったことを、考案した解決策を、そして、有望な結果を上司に伝えよう。改善されたコンバージョン率ではなく、常に収益が増加した額を示してもらいたい。
- ケーススタディを紹介する。 データを持っていない場合は、コンバージョンの最適化を実施して素晴らしい成果を上げた同様の会社のケーススタディを紹介すると良い。ただし、非現実的な期待をさせて、求めた結果が得られない場合、コンバージョンの取り組みの閉鎖を命じられる可能性があるので、十分に注意してもらいたい。
- 競合者がCROを実施している点を伝える。経営陣は、競合者に懸念を持っている。競合者がCROを実施している点を証明することが出来れば — Optimizelyのコードがウェブサイトに埋め込まれている、もしくは、プレスリリースでCROが話題に上がっている等 — 大いに役立つ。置き去りにはされたくないはずだ。「競合者は、顧客獲得コストを下げ、コンバージョンを改善しています。このままでは負けてしまいます」と言うセリフは、抜群の効果を発揮する。
- いつでも正しい判断をする上司を知っているなら、その仮説をテストし、結果を公表する。何がうまくいくのか必ず言い当てる上司がいるなら、上司のアイデアを基にした対策を立て、テストを行い、現在のアイデアと比較しよう。適切にテストを行い、上司の仮説が3-5回連続で外れたら、データで裏付けた仮説の実施を認めるようになるだろう。その際は、堅実な仮説を立てる必要がある。「だから言っただろ」と言うセリフは聞きたくないはずだ。テストすることに同意してもらえない場合は、隠れてテストを実施しよう。その後、上司の意見を採用した結果と証拠を基に確立した仮説の結果を比較すると良い。
駄目な時もある
「社内をブラブラ歩き回って会社を経営する」タイプのCEOもいる。CEOが、最適化に関するミーティングに飛び入り参加し、自分の意見をごり押しする。このタイプのCEOは、自尊心が強く、何が最適なのか常に分かっている(と思っている)。反対すると、解雇につながる、または、聞き流されてしまうだろう。残念ながら、このタイプの上司を持つと、仕事が全く捗らない。 とりわけ、CEOが設立者の場合、会社を去る可能性がないため、大いに苦労する。
このようなケースは珍しくはない。
あるクライアント(年間の売上が3000万ドルのソフトウェア会社)のケースを紹介する。この会社のホームページの直帰率は、とにかくひどかった(85%前後)。そのため、サイトを分析し、(ブランドのガイドラインを参考にして)デザインを変更したところ、あらゆる基準において、現行のホームページを30-40%上回った。大成功だ。
しかし、その頃、この会社は非公開株式会社に買収され、新たなCEOが就任した。このCEOは、新しいホームページのデザインを気に入らなかった。その後、社内のデザイナーに新たにホームページをデザインさせた(会社のガイドラインは全く無視したデザインであった)。そして、私達はいつの間にか解雇されていた。
続いて、年間の売り上げが2億ドルに達する洋服販売サイトのケースを紹介する。この会社を作ったのはCEOであった。ホームページには画像スライダーが掲載されていた。データを見る限り、明らかにこのアイテムは効果を上げていなかった。しかし、CEOの妻がスライダーを気に入っていた。夫婦間の争いを恐れているため、CEOは、スライダーの削除には動かない。つまり、何をしたところで、CEOを動かすことは出来ない。以上。
どうしても分かってもらえない時はどうすればいいのだろうか?
馬鹿を相手にしていると、人生はあっと言う間に終わってしまう。そのスキルを評価しているところで仕事をするべきだ。
結論 — 最初はデータから & 少しづつ
まずは、持っているデータを活用し、従業員がテストに関心を持つように、小さな利益を証明する取り組みを行う点に関しては、意見はほぼ一致していたようだ。小規模なテストを実施し、小さな利益を証明することが出来るなら、社内のCROにさらに投資してもらえるようになる。
最後に読者の方々に問いたい。社内でCROを支持してもらう際に、どんな困難に直面したことがあるだろうか?
実際に、コンバージョンテストを実施することに同意してもらった経験があるなら、各種の部門をまたいで支持を得る上で、どんな取り組みが役に立ったのか教えてもらいたい。
この記事は、How To Sell Conversion Rate Optimization To Your Boss」を翻訳した内容です。
事例が豊富で中々のお役立ち記事でしたね。基本的にはデータで攻めるべきと思いますし、SEOなどに比べてもはるかに論理的に説明しやすいはずなのですが、これまで中々コンバージョン改善が導入されてこなかった背景を見ても、データだけで納得はしても予算承認してもらえるかまでは何とも言えない点があるのも悩ましいですけどね。。。その意味では、日本であれば今後は「コンバージョン改善のイベントで3日で400人以上も人が集まったそうです。今ちゃんと始めないと乗り遅れます!」と煽っていただくのも良いかもしれません・・・? — SEO Japan