信用できない大手ハイテク企業の自主規制、今、米国議会の行動が必要とされている

本稿の著者Arisha Hatch(アリシャハッチ)氏はColor Of Changeのキャンペーン担当副社長兼チーフ。

ーーー

2021年1月に起きた米連邦議事堂での暴動事件を受け、Donald Trump(ドナルド・トランプ)氏がソーシャルメディア界から追放されてから2カ月以上が経った。前大統領の憎悪に満ちたコメントや偽情報は収束しつつあるものの、これからも引き続き警戒が必要である。

今こそ、トランプ氏や同氏の支持者、その他のトラブルメーカーが将来的に過激主義を助長しないようにするためにはどうしたらいいかを見直すべきである。誤報、陰謀論、嘘は情報インフラを破壊し民主主義を脅かす。こうした問題に社会としてどう対処すべきかを考える時なのではないだろうか。

Color Of Changeのバイスプレジデントとして、私と私のチームはこれまでにFacebookやTwitter、Googleといった数十億ドル(数千億円)規模のハイテク企業のリーダーたちと数え切れないほどの会合を持ち、彼らのプラットフォーム上の憎悪に満ちた人種差別的なコンテンツや偽情報に対して常に声を上げてきた。私たちはさらに、これらの問題に適切に対処するため、何百万人ものメンバーが求めている要求を提起してきたが、こういったソーシャルメディア企業にはユーザーや黒人コミュニティの安全を守るための緊急性や責任感が欠如していることがあまりにも多いのが実情である。

白人国粋主義者や極右過激派による連邦議事堂の襲撃は、ソーシャルメディアのプラットフォーム上で拡散されてきたヘイトスピーチや偽情報を何年もの間放置し適切に対処してこなかったハイテク企業にも責任の一端がある。多くのソーシャルメディア企業は、極右過激派や白人至上主義者、国内テロリストに対してプラットフォームを開放し、民主主義の破壊に加担してきたわけだが、この責任を追及し、二度と起こらないようにするためには相当な努力が必要である。

知識の共有システムを回復させ、オンライン上での白人国家主義者の組織化を排除するために、ビッグテックはこれまでのような受け身で表面的なアプローチを捨て、私たちのコミュニティや民主主義に害を及ぼしているこの問題に本気で対処しなければならない。同時に、ハイテク企業の動き監視するために、連邦政府による介入が不可欠なのは明らかである。

私は6年間にわたって企業が説明責任を果たすためのキャンペーンを展開し、ビッグテック企業のリーダーたちと関わってきたため、ソーシャルメディア企業には、民主主義とコミュニティを守るためのポリシーを実施するだけの力やリソース、ツールがあると断言することができる。しかし、これまで巨大企業のリーダーたちは、利益と成長を犠牲にしてまで、プラットフォーム上での危険な誤報、特定の個人や組織を標的にした憎悪表現、白人主義者の組織化を食い止めようとすることはなかった。

その上、巨大なPRチームを駆使し、こういった問題にあたかも対処しているかのように振る舞うのだ。例えばFacebookなどのソーシャルメディア企業は、その時々の問題に対処するため毎度一貫性のないポリシー変更を発表するという受け身な対応を続けている。今回の暴動が起こる前、白人至上主義者や極右陰謀論者、人種差別主義者たちが、こういったプラットフォームを利用して暴力を組織化、勧誘し、扇動することの危険性について、我々Color Of Changeのような提唱者の警告にFacebookのリーダーたちが耳を貸すことはなかった。私たちが長年推奨してきたにも関わらず、トランプ氏を追放することも、より強力なコンテンツ・モデレーション・ポリシーを導入することも、アルゴリズムを変更して誤った情報を広めるFacebookグループの拡散を止めることも彼らは行わなかったのである。

このような脅威は、国会議事堂への襲撃のずっと前から明らかなものだった。Color Of Changeと支持者たちが2020年夏に「#StopHateForProfitキャンペーン」を推進し、1000社以上の広告主がプラットフォームから数百万ドル(数億円)相当の広告を引き上げたときにも、また、Facebookが当組織とメンバーからの圧力を受けて2018年にようやく公民権監査を実施することに同意したときにも、そして2017年、死者を出したバージニア州シャーロッツビルでの白人至上主義者のデモが行われた前からも、ずっと明らかだったのである。

ソーシャルメディア企業が行動を起こし、差し迫った要求に目を向けるようになったのは、すでに大きな問題が起きてしまった後からのことだ。トランプ氏のアカウントを停止したのも、投票集計に不正があったと主張したグループを削除したのも、また2020年の選挙で投票所での暴力を扇動する投稿や新型コロナウイルスの誤報を積極的に削除したのも、すべて事が起きてからの対応である。しかし現在でさえ、これらの企業はFacebook監督委員会というとって付けたような組織を適切なポリシー実施の代替として立ち上げ、問題に取り組んでいる姿勢をアピールしつつ、トランプ氏のアカウント停止といった問題の最終決定を曖昧にし、責任を回避しているのである。

Facebook、Twitter、YouTubeをはじめとする多くのビッグテック企業は、自社の利益や評判が脅かされると行動を起こすものの、彼らのビジネスモデルはサービス利用の最大化のみを目的として構築されているため、行動が実際に起こされるのは常に問題が起きた後となる。コンテンツが偏向的であればあるほど、エンゲージメントが高まり、コメントやシェアが多ければ多いほど我々の注目を集め、広告主にアピールすることができる。ビッグテックのリーダーたちは、積極的に自主規制を行う意志も能力もないことを証明し、だからこそ議会が直ちに介入しなければならないのである。

議会はビッグテックの巨大な力を抑制するための連邦規制を制定すべきであり、議員は私たちの日常生活に現実的な変化をもたらすような政策、つまり、黒人をはじめとする社会的に弱い立場にいるコミュニティをオンラインとオフラインの両方で保護するような政策を策定しなければならない。

企業の説明責任をないがしろにし、黒人のビジネスや労働者に影響を与える大手ハイテク企業の独占状態を打破するため、より強力な独占禁止法が制定されるべきである。私たちのデータから得られる利益が搾取を助長するために使用されないようにするために、包括的なプライバシーおよびアルゴリズムによる差別禁止法を制定する必要があり、また黒人や低所得者のコミュニティにおける情報格差を解消するために、ブロードバンドアクセスを拡大する他、インターネットサービスプロバイダーがコンテンツや機器によって異なる料金を請求できないようにしてネットの中立性を回復させるべきである。そして、第230条が公民権法の遵守からプラットフォームを免除するものではないことを明確にすることで、情報操作やコンテンツの適正化を図る必要があるのだ。

Color Of Changeをはじめとする活動家やアドボカシーグループからの圧力により、すでに多くの進展が見られている。2020年だけでも、Zoomなどの大手ハイテク企業は多様性の専門家を雇い、Googleは右翼団体プラウドボーイズのウェブサイトとオンラインストアをブロックする措置を取り、TikTokのような主要なソーシャルメディアプラットフォームは、憎悪に満ちたコンテンツを禁止するためのより強力なポリシーを採用し始めた。

しかし、巨大テック企業がソーシャルメディアのプラットフォーム上で煽られた誤報、憎悪、暴力に対処するため、これまでしておくべきだった対策を今更始めたところで、さほど褒められたことではない。我々は次のPR活動や白々しい声明、あるいはFacebookがトランプ氏のアカウントを復帰させるかどうかを決めるのを単に待つつもりもなく、またさらに多くの人の命が犠牲になるまで傍観するつもりもない。

連邦政府と規制当局は、ただちに政策変更を実施してビッグテックに説明責任を負わせるべきである。我が国のリーダーには、ビッグテックが民主主義や地域社会に及ぼしている害悪から人々を守る責任があり、ソーシャルメディアのプラットフォームを規制し、デジタル経済における危険な誘因を変革すべきなのである。連邦政府の介入なしには、ハイテク企業は歴史をひたすら繰り返すことになるだろう。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ソーシャルメディアアメリカColor Of ChangeSNS

画像クレジット:Martin Barraud / Getty Images

原文へ

(文:Arisha Hatch、翻訳:Dragonfly)

女性が率いるベンチャー企業への投資はポートフォリオのパフォーマンスを向上させる

本稿の著者はMichaela Villaroman(ミカエラ・ビジャロマン)氏とAlisee de Tonnac(アリゼ・ドゥ・トナック)氏。ビジャロマン氏は、Seedstarsのメディアリレーションコーディネーター。トナック氏は、テクノロジーと起業家精神を通じて新興市場の人々の生活にインパクトを与えることを使命とするスイスのグループSeedstarsの共同創設者であり共同CEO。Seedstarsグループは、90カ国以上で活動、、新興市場で最大の起業家コンテストなどを行っている。

ーーー

我々は投資ポートフォリオにおけるジェンダーの多様性の状況を考察しているが、これは女性が起業分野で過小評価されているためである。いくつかの数字を示しながら、なぜあなたの取引に多様性が欠けているのかを詳しく述べていきたい。

女性起業家と資金調達

国際金融公社が2013年に実施した調査によると、女性が所有する企業の資金調達において、2600億ドル(約28兆2100億円)から3200億ドル(約34兆7200億円)のニーズが満たされていない状態であるという。テック系スタートアップ350社の女性を対象にした調査では、この傾向がさらに強かった。女性回答者の72%が、起業時に金融資本を獲得するのが難しく、80%近くが個人的な資金調達に頼らざるを得なかったと答えている。さらに、VCの全資金のうち、女性創業者が獲得するのは3%にも満たない

男性による資金調達のしやすさと女性のそれとの間には明らかな違いがある。データによると、男性は女性の4倍もエンジェル投資家やVCからのエクイティ・ファイナンスを利用している(14.4%対3.6%)。男性が複数の資金源を簡単に利用できることから、平均で女性創業者の約2倍の資金で会社を設立するのもうなずける。

女性が所有する企業の資金調達では、2600億ドルから3200億ドルというニーズが満たされていないのが現状である

なぜ女性が率いるスタートアップの資金調達が難しいのだろうか?

女性が資本獲得に苦戦している事実は、ファンド運用会社における多様性を見ることで説明できるだろう。ファンドマネジャーの多様性の欠如は、結果としてポートフォリオに関して資金調達の不平等をもたらす。Women in VCのデータによると、米国において、女性が率いるVC企業の割合はわずか5.6%であり、VCパートナーのうち女性が占める割合はわずか4.9%に過ぎない。

「女性や有色系の人々がベンチャーキャピタルの投資戦略を推進できるようにすることは、最も迅速かつ効果的なコース修正である」とWomen in VCのレポートは伝えている。「ベンチャー投資家は、より広い社会規範に影響を与える並外れた力を持っている。彼らはどの創業者が資金を調達し、どの企業が成功のチャンスを得て、どの製品を市場に出すかを決める。これらのことは我々の文化に決定的な影響を与える」。

投資家たちはまず、自らの多様性の問題に取り組まなければならない。女性主導のスタートアップを積極的に調達し、投資しようとする取り組みの強化に向けて、潜在的な偏見を自覚するとともに、発展的な行動を起こしていく必要がある。

多様性のある取引が重要な理由

女性主導のベンチャーを増やして投資ポートフォリオを多様化することは、女性のリーダーシップを信頼することを意味する。企業業績に関する2012年の調査では、ドイツの上場企業のうち150社以上で、取締役会に30%以上の女性が名を連ねていた時期に優れた業績を上げていたことが示された。

さらに興味深いことに、別の調査では、女性の取締役は男性よりも優れていると論じている。研究結果によると、女性は複数の競合する利益に対処し、創造的に問題を解決し、合意を築くことにより効果的であることが明らかになった。対照的に、男性取締役はしばしば規則、規制、伝統に基づいて決定を行うという。

紛れもなく、有能な女性リーダーによって経営されている企業は、収益性の高いROIを提供する準備ができていると言えるだろう。フルブライト研究員で、ペパーダイン大学でマーケティングを教えるRoy Adler(ロイ・アドラー)教授が19年間にわたって実施した研究によると、女性を上級職に昇進させた実績が最も高い企業と、収益性の高い企業との間に相関関係があることが明らかになった。この相関関係は、それぞれの業界のフォーチュン500企業の中央値よりも18~69%上回っている。

これらの数字は、女性の登用が経済的利益となって返ってくることを期待できることを示しているが、ジェンダーの多様性への投資がもたらすより大きな影響と重要性は、その後の全体的な経済成長と繁栄にある。女性起業家のチャンスを高めることで、地域や世界の市場が恩恵を受けるドミノ効果を生み出すことができるのだ。

マッキンゼーは、ジェンダーの完全な平等が達成されれば、世界の国内総生産(GDP)は2025年までに世界全体で最大28兆ドル(約3040兆円)増加する可能性があると予測している。実際、女性に投資しないことによるマイナス面は極めて大きいことが判明している。国連の調査によると、中国や米国を含むアジア太平洋地域では、女性の経済参加が十分に行われていないため、GDPが少なくとも年間420億ドル(約4兆5600億円)減少しているという。

Seedstarsはスイスの投資持ち株会社で、新興市場の高成長テクノロジー企業への投資に注力しており、特に発展途上国において女性起業家がチャンスを与えられることでもたらされる恩恵についてより詳細な見解を提供している。

これらの数字は、ジェンダーの平等が十分に実現できていないが、その価値は非常に高いものであることを明確に示している。Melanne Verveer(メランヌ・ヴェルヴェール)氏とKim K. Azzarelli(キム・K・アザレッリ)氏の著書「Fast Forward」の中で、専門家たちがジェンダーの多様性について論じている。

「富の創造を破壊する最大の要因は家父長制です」とPax World FundsのCEO、Joseph Keefe(ジョセフ・キーフ)氏は語っている。「『身を乗り出す』べきなのは女性たちだけではありません。より良い利益を求める株主は、より多くの女性を雇用し、昇進の機会を与えている企業に力を注ぐべきです」。

バーナード大学のDebora Spar(デボラ・スパー)学長は「この国のあらゆる分野で、女性が権力の座に就く機会は非常に少なくなっています」と指摘する。「私たちはいわゆる『16%ゲットー』に陥っています。航空宇宙工学、ハリウッド映画、高等教育、フォーチュン500の主要ポジション、いずれにおいても女性の割合は最高でも16%程度にとどまっています。これは罪なことで、すばらしい人材を無駄にしていることになります」。

ジェンダーの平等を前進させる

インパクトを生み出すには、女性を十分に取り込むための積極的な対策が必要である。Seedstarsは2018年から、投資先探し、能力開発プログラム、投資活動など、グループ変革の理論で強調されている中核的な活動の中でジェンダーの平等に積極的に取り組んできた。

これまでSeedstarsは600以上の女性主導企業を支援し、女性が共同設立した14の企業に投資してきた。さらにSeedstarsは、メンター、審査員、デリバリー専門家の養成に関してもジェンダーの平等に力を入れている。最近の統計によると、Seedstarsプログラムの全参加者の約30%が女性で、過去数年間で増加(2018年の数字は地域によるが、20%前後となっている)したことを誇りに思っており、今後数年間でその数字をさらに引き上げることを目標としている。

我々自身のイニシアティブと、ジェンダーの多様性を促進する役割を果たす投資家の努力を組み合わせることによって、世界は、未だ完全には受け入れられていない、最も強力な集団の1つとして証明されている層への投資から、恩恵を受けることができるだろう。

あらゆる課題を解決するための第一歩は、問題を認識することにある。意識の向上と対策によって、女性起業家の未来を明るくする重要な発展がもたらされるに違いない。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラム女性投資Seedstars

画像クレジット:SEAN+GLADWELL / Getty Images

原文へ

(文:Michaela Villaroman、Alisee de Tonnac、翻訳:Dragonfly)

女性起業家の輩出目指す、世界最大の女子中高生向けアプリコンテストTechnovation Girlsが日本公式ピッチイベント

女性起業家の輩出目指す、世界最大の女子中高生向けアプリコンテストTechnovation Girlsが日本公式ピッチイベント

IT分野のジェンダーギャップの解消を目指すWaffle(ワッフル)は3月24日、世界最大の女子中高生向け社会課題解決型アプリコンテスト「Technovation Girls」(テクノベーション・ガールズ)の日本公式ピッチイベントのオンライン開催(Zoom)を発表した。開催日時は4月25日18時~20時。イベント内容は、日本出場チームによる成果物発表、授賞式、フォトセッションなどで、「Technovation Girls 2021 日本公式ピッチイベント観覧申し込みフォーム」で観覧希望者を広く募集している。

Technovation Girls日本公式ピッチイベント概要

Technovation Girlsは、米国の非営利団体「Technovation」が主催する、次世代の女性IT起業家の育成を目的としたコンテスト。2010年の開始から現在までに世界100か国以上5万人以上の女性が参加しているという。

同コンテストは、10〜18歳の女性を参加対象としており、1〜5人から編成されるチームが約3カ月間をかけて身近な課題を解決するアプリとビジネスプランの制作を行う。プログラミングなどの技術的なスキルだけでなく、社会課題の解決のためのアイディアや、ピッチ(プレゼンテーション)スキル、起業家精神などをチーム形式で競うという。また同イベントの公用語は英語で、公式の情報提供から提出物への記載に至るまで、すべて英語で実施される。

日本国内では、WaffleがTechnovation Girlsの日本公式アンバサダーとして、スポンサー企業とともに日本出場チームのサポートを行っている。各出場チームには、WaffleおよびTechnovation Girlsに賛同する2名の社会人メンターがつき、同コンテストで求められるデザイン思考やプログラミングスキルなどの習得を中心に、総合的なサポートを実施しているという。なお今回日本では、75名23チームが参加しているという。

Waffleは、IT分野のジェンダーギャップの解消を目指す非営利法人。国内の女子中高生向けにオンラインIT(コーディング)コース「Waffle Camp」(ワッフル・キャンプ)の提供、日本国内での「Technovaton Girls」(テクノベーション・ガールズ)のサポート、企業との協働による各種イベントを開催している。

Technovation Girls概要

  • 主催Technovation、Waffle(日本公式アンバサダー)
  • 日程:2020年11月〜2021年8月(予定)

実施内容

  • 2020年11月:参加登録開始
  • 12月:説明会登録および参加登録締締め切り
  • 2021年1月:チーム編成、デザイン思考ワークショップの実施
  • 2月:チームごとの社会課題と解決策の決定、プログラミング学習の実施
  • 3月:ビジネスプランの作成、アプリ開発、ピッチビデオの作成
  • 4月19日:米国本部への応募作品 提出締め切り
  • 4月25日:日本公式ピッチイベント(オンライン) 開催
  • 5月25日:ファーストラウンド審査結果発表(全体の5%)
  • 6月16日:セカンドラウンド審査結果 発表(8チーム)
  • 8月:ワールドサミット(オンライン)の開催

応募資格(日本国内)

  • 世界を変えるために成長する意欲がある
  • 2021年8月1日時点で中学2年生以上、18歳以下
  • 2021年1月から4月の3カ月間に合計30時間ほど、オンライン環境での活動時間を確保できる
  • 日本語が話せること(現時点での英語力は不問)
  • 女性アイデンティティをもつ、またはトランスジェンダー、ノンバイナリー、gender noncomformingの者

関連記事
「量子ネイティブ」育成に向けた「Q-LEAP 量子技術教育プログラム」公式サイトが公開
子ども向けSTEM教材開発のワンダーラボが資金調達、累計調達額3.1億円に到達
競技プログラミングコンテスト「AtCoder」アルゴリズム実技検定初の公式テキストが登場
最優秀者は東大・長吉博成氏、日本IBMが量子コンピューターの競技プログラミングコンテストの結果発表
女子大学生のための「ハッカーハウス」がない、だから学生自身が作ったWomxn Ignite
独立系VC「ANRI」が4号ファンド投資先において女性起業家比率を20%まで引き上げると発表
2020年はSTEM分野における女性の活躍の場をどう広げるべきか

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:アントレプレナーシップ / 起業家精神(用語)インクルージョン(用語)エンジニア(用語)学生(用語)教育 / EdTech / エドテック(用語)ダイバーシティTechnovation Girls(用語)プログラミング(用語)Waffle(組織)日本(国・地域)

ニューヨーク州が娯楽用大麻の合法化へ前進

ニューヨーク州当局はAndrew Cuomo(アンドリュー・クオモ)知事と、大麻の娯楽使用を認める合意に達した。この動きは東海岸最大の合法大麻市場を創出し、潜在的に数万人の雇用と大きなスタートアップの機会を創出するだろう。

これは大きな一歩だが、2021年内に娯楽用大麻の販売が行われる可能性はまずなさそうだ。この枠組みは最終的な見直しを必要としており、議員たちは商業的な販売に関する規則を作る必要がある。ニューヨーク・タイムズ(NYT)によると、民主党が多数を占める州議会は早ければ来週、2021年3月第5週にも法案を可決する可能性がある。

この法案は、ニューヨークで大麻を導入しようとして何度か失敗した後に提出されたものだ。隣の州であるニュージャージー州は、2020年の選挙で娯楽用大麻法案を可決した。

今回の法案にはいくつかの興味深い点がある。提案された法案では、大麻の配達とクラブのようなラウンジでの大麻の消費は認められるが、アルコールと一緒に消費することはできない。家庭内での栽培も認められており、個人使用の場合は6本までとなっている。NYTによると、この案は麻薬撲滅戦争の失敗の影響を受けた同地域に数百万ドル(数億円)の税収を還元するものだという。これには小規模事業主のために多くのビジネスライセンスを確保することや、小規模農家への融資、助成金、インキュベータープログラムの提供などが含まれる。

またニューヨーク州の議員は大麻の所持に関する法律を見直し、3オンス(約85グラム)以下の大麻に対する罰則を廃止するつもりだ。これにより、現在は合法的な活動で有罪判決を受けた人の記録も抹消される。

関連記事
2020年は大麻にとって決定的な年だった、今後の展開は
大麻株がバイデン氏勝利で高値更新中
米国の5つの州でカナビス合法化法案が承認

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ニューヨーク大麻

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Matt Burns、翻訳:塚本直樹 / Twitter

中国がアプリによる過剰なユーザーデータ収集を5月から禁止

中国の最高規制機関である国家インターネット情報弁公室、工業情報化部、公安部、国家市場監督管理総局が共同で発表した文書によると、2021年5月1日以降、中国のアプリはユーザーに過剰な個人データの提供を強制できなくなる。

中国では、アプリがユーザーに機密性の高い個人情報の提供を求め、共有を拒否したユーザーはアクセスを拒否されることがよくある。ナビゲーションマップを使用するための位置情報のように正当なものもあるが、モバイル決済を行うための生体認証など不要なものも多い。

TechCrunchで報じたように、中国当局は2020年12月に、さまざまなアプリが収集する権利を持つデータの許容範囲を示した。

関連記事:中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

新たな文書によると、人気が高まっている「ミニプログラム」など、あらゆる形態のアプリがこの要件の対象となっている。「ミニプログラム」とは、アプリストアをインストールしなくてもWeChatやAlipayといった包括的なネイティブアプリを通じてアクセスできるライトアプリのことだ。

現在のところ、この文書はガイドラインに過ぎず、規則をどのように施行するか、違反者をどのように処罰するかについては明記されていない。この文書は、データ保護に関して中国が少しずつ前進していることを示しているが、人々の日常生活が急速にデジタル機器と結びついているため、規制当局は規則を更新し続けなければならないだろう。

ここ数カ月の間、中国は、かつて同国が誇っていたテクノロジーの寵児たちを厳しく取り締まっている。中国は「プラットフォーム経済」を抑制するために包括的な独占禁止法を導入し、Ant GroupのIPOは失敗AlibabaとTencentは反トラスト的だと罰金が科されている。

関連記事
中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分
Antの超大型IPOが延期、中国当局がアリババ創業者から事情聴取

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:中国アプリ個人情報データ保護

画像クレジット:Alibaba

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Katsuyuki Yasui)

バイデン大統領は反トラスト法のスターでビッグテック企業批判の闘士リナ・カーン氏をFTC委員に指名へ

選挙期間中、バイデン大統領はテクノロジー企業への攻撃を大きなテーマにはしなかった。しかし最近の行動をみればバイデン政権は明らかに巨大テクノロジー企業を抑制する方向に舵を切った

米国時間3月22日、ホワイトハウスはLina Khan(リナ・カーン)氏を連邦取引委員会(FTC)の委員に指名する意向を確認した。これによりバイデン政権はオバマ時代の親シリコンバレー的な方針から離れることが明確となった。Politicoは2021年3月初めにバイデン大統領ががカーン氏を指名する予定だと最初に報じている。この指名は上院の承認を必要とする。

関連記事:バイデン時代のテクノロジー、オバマ時代のテクノクラシー再燃はなさそうだ

リナ・カーン氏は、巨大テクノロジー企業には規制が必要だとる反トラスト運動のスターだ。カーン氏は、2017年にロースクール在学中に発表した「Amazan社の反トラスト法上の矛盾(Amazon’s Antitrust Paradox)」という論文で一躍有名になった。ここでカーン氏は「独占的と分類されるべき行動」についての基準が、現代のビジネスの手法、ことにハイテク分野の企業行動に大きく遅れを取っていると論じた。

カーン氏は、反トラスト法を現代に活かすには価格の釣り上げや生産量の取り決めなどの伝統的な尺度だけではなく企業の市場支配力を大局的に見なければならないと主張している。

私は21世紀の市場における競争、ことにクラウドプラットフォームなどオンラインにおける競争の実態を正しく把握するには、こうした市場の基本的な特質とダイナミクスを分析する必要があると主張したい。このアプローチでは競争という概念を狭い範囲の物質的数量に限定するのではなく、競争のプロセスそのものを検証していく。このフレームワークの背景には、巨大企業のパワーがもつ潜在的的な反競争性は、企業の本質的構造と市場における役割の実態を考慮せずには完全に理解できないはずだ。この見地からすると、例えば企業の存在そのものがが反競争的な利益相反を生み出していないかを評価せねばならない。例えばあるビジネス分野で圧倒的な市場シェアがある場合、その優位性を別のビジネス分野に流用して不当な利益を得ていないか、また市場の構造そのものが略奪的、反競争的な行為を生み出す動機付けをしたり許容したりするものではないかもチェックすべきだろう。

現在、カーン氏はコロンビア大学ロースクールのアソシエイトプロフェッサーだが、2020年の下院の反トラスト小委員会が発表した包括的な報告書の作成にも大きく貢献している。同報告書は、いわゆるビッグテック企業の無制限の巨大化を抑えるための抜本的な反トラスト法改革への第一歩となった。

テクノロジー企業に関する反トラスト法強化を求める活動家はもちろんカーン氏だけではない。バイデン政権下で注目を集めている専門家としてははコロンビア大学ロースクールのTim Wu(ティム・ウー)教授がいる。2021年3月上旬、バイデン大統領はウー教授を、国家経済会議の技術・競争政策担当者に指名した。ウー教授は「ネット中立性」という用語を案出し、開かれたインターネットの提唱者として知られている。2018年にウー教授は「The Curse of Bigness:Antitrust in the New Gilded Age(巨大であることの呪い:新しい金権社会と反トラスト法)」を執筆し、テクノロジー分野での無制限が企業統合が現実的の政治的、経済的脅威となりつつあることを訴えている。

上院反トラスト法小委員会でハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているエイミー・クロブシャー(Amy Klobucha)議員は、Khan氏の指名を歓迎してTechchCrunchに対し、世界最大のの独占企業に対抗するためにはすべての人々の協力が必要でありバイデン大統領が新しい競争政策へのコミットメントを明確にしていることはすばらしいとして次のようなコメントを寄せた。

リナ・カーン氏は議会とFTC(連邦取引委員会)の双方に関わった実績があり、法執行を含めた消費者保護の取り組みを進め健全な市場競争の維持するために重要な役割を果たすでしょう。

関連記事:巨大テック企業を規制する米国の新たな独占禁止法案の方針

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:ジョー・バイデンFTC反トラスト法

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

原文へ

(文:Taylor Hatmaker、翻訳:滑川海彦@Facebook

顔認識技術のKairosを追い出された創業者ブラッキーン氏が諮問委員として復帰、偏向問題に取り組む

顔認識のスタートアップ企業Kairos(カイロス)の創業者で、2018年に更迭された元CEOのBrian Brackeen(ブライアン・ブラッキーン)氏が同社に復帰した。ブラッキーン氏は現在、同社の科学諮問委員会の議長を務めており、顔認識技術による人種的偏見の問題を解決し、排除することに貢献しようとしている。

それはKairosの明確な使命でないが(同社の使命は企業に認証ツールを提供することだ)、アルゴリズムの偏りは同社が、特にブラッキーン氏が長い間取り組んできた問題だった。

しかし、ブラッキーン氏が解任されるまでの間に起こったことや、その後の出来事は、非常に大きな旋風を巻き起こした。

2018年、Kairosの取締役会は、故意による不正行為があったとして、ブラッキーン氏をCEOの座から強制的に退かせた。Kairosはブラッキーン氏を自分が設立した会社から追い出しただけでなく、会社資金の不正流用や株主を欺く行為があったとして、同氏を訴えた。

当時、ブラッキーン氏はこの出来事を「お粗末なクーデター」と称し、疑惑を否定していた。その後、ブラッキーン氏はKairosを反訴し、同社とそのCEOであるMelissa Doval(メリッサ・ドーバル)氏が詐欺的行為によって意図的に彼の信用を毀損したと主張。2019年にブラッキーン氏とKairosはこの一連の訴訟において和解し、ブラッキーン氏はその後、妻のCandice Brackeen(キャンディス・ブラッキーン)氏とともにLightship Capital(ライトシップ・キャピタル)を立ち上げる

Kairosに復帰してから、すでにブラッキーン氏はKairosがBias APIと呼ぶものに注力するように指示している。同氏によれば、このAPIは企業や会社がアルゴリズムの偏りを検出し、対処することを容易にするために設計されたものだという。

ブラッキーン氏は、Lightship Capitalで手一杯なので、Kairosにフルタイムでは戻ったわけではないが、四半期ごとのミーティングでは全般的な舵取りを任されていると、同氏はいう。

過去のドラマにもかかわらず、ブラッキーン氏はKairosを今でも自分の子どもだと考えていると、TechCrunchに語った。ブラッキーン氏の更迭後にCEOに任命されたドーバル氏や、訴訟の先頭に立った元COOのMary Wolff(メアリー・ウルフ)氏のような人々が、会社からいなくなったことも注目に値する。

「まず、Kairosのチーム、投資家、ファンに対する責任を常に感じるということです」と、ブラッキーン氏は復帰の理由を語った。「その多くには、私が単独で責任を負っていました。第2の理由は社会です。この社会において偏見は、Twitter(ツイッター)の画像のトリミングから、黒人の手では空気乾燥機が作動しないことまで、あらゆるものに見られます。これは、社会がすべての人にとって公平ではないということを痛感させます。困難な問題は、AIがより多くの製品に組み込まれるようになると、あらゆる製品に偏りが見られるようになるということです。大規模なデータセットと長年のIPを持つKairosは、そのようなディストピア的な未来から私たちを救う会社でなければなりません。私はその戦略をリードする唯一の立場にいます」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Kairos顔認証差別

画像クレジット:TechCrunch

原文へ

(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

移民農業労働者が米国で就労資格を得て法的に保護されるサービスをSESO Laborが提供

Biden(バイデン)政権が、米国の移民制度を改革する際によく見られる問題に対処する法案を議会に提出しようとしている一方で、SESO Labor(SESOレーバー)というカリフォルニア州の小さなスタートアップが450万ドル(約4億8000万円)を調達して、農場が合法的に移民労働者の手を借りることができるようにした。

SESOの創業者Mike Guirguis(マイク・ギルギス)氏は、Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)やNFX(エヌエフエックス)などの投資家から資金を調達している。Trulia(トゥルーリア)の創業者であるPete Flint(ピート・フリント)氏が同社の取締役に就任した。同社は12の農場と提携しており、現在46の農場とも交渉中である。もう1人の共同創業者、Jordan Taylor(ジョーダン・テイラー)氏はFarmer’s Business Network(ファーマーズビジネスネットワーク)で最初の製品担当者として勤務した経験があり、以前はDropboxに所属していた。

SESOは1986年から施行されている規制の枠組みの中で、H-2Aビザの取得プロセスを合理化・管理するサービスを開始した。このサービスを利用すると移民農業労働者は、法的保護を受けながら米国に一時的に滞在できる。

現時点でSESOはビザ手続きを自動化し、労働者が必要とする事務手続きを整備することで、申請手続きを円滑化している。同社は労働者1人あたり約1000ドル(約10万6000円)を請求しているが、労働者自身へのサービスを徐々に提供していくことにより、安定した収益源を確保することをギルギス氏は想定している。「最終的には、農業経営者と農場労働者の双方に総合的なサービスを提供したい」とのことだ。

SESOは現在、2021年に1000人の労働者の受け入れを見込んでおり、現段階では収益が発生する前の段階である。ギルギス氏によると、就労ビザを扱う最大の業界関係者は今のところ1年間に6000人の労働者を受け入れているため、SESOは市場シェアを獲得するためにしのぎを削らなければならない。

米国における移民と農業労働者の複雑な歴史

国内での労働者不足を見込む農業雇用主が、移民ではない外国人労働者を一時的または季節的に農場で雇用できるように設立されたのが、H-2Aプログラムだ。労働者には米国の賃金法や労災補償の他、医療保険改革法(オバマケア)に基づく医療の利用を含むその他の基準が適用される。

ビザプログラムを利用して労働者を雇用する雇用主は、出入国時の交通費を支払い、住居を無償または有償で提供し、労働者に食事を提供する必要がある(給与からの天引きが可能)。

1952年に移民国籍法の一環として、H-2ビザ発給が開始された。これにより主に北欧への移住を制限していた出身国別割当制度が強化されたが、1924年に移民法が制定されて以来初めて、アジア系移民に米国の国境が開かれた。1960年代には入管法がさらに緩和されたが、1986年の大規模な移民法改革によって移住が制限され、企業による不法就労者の雇用が違法になった。H-2Aビザは、不法就労者の雇用にともなう罰則を受けずに農場で移民労働者を雇用する手段にもなった。

スタンフォード大学を優秀な成績で卒業し、労働政策に関する卒業論文を書いたギルギス氏によると、一部の移民労働者にとってH-2Aビザは最後の切り札だという。

ギルギス氏は給与計算関連のビジネスを展開するGusto(ガスト)を引き合いに出しながら、同社の最終的な目標について次のように語っている。「私たちは、農場と農業関連ビジネスのための人材派遣ソリューションを用意しています。農業の分野でガストのようになり、人材派遣の包括的なソリューションで農場を強力にサポートしたいと思っています」。

ギルギス氏が指摘するように、農業に従事する労働者のほとんどは不法滞在者である。「これまで食い物にされてきた労働者にとって、H-2Aは法的に就労することを可能にするビザです。雇用主が労働力を確保できるように私たちは支援しており、農業経営者が農場を維持するためのソフトウェアを構築しています」

難しい状況が続く中でも国境を開放する

労働力不足を指摘する最新の数字が現状を反映しているのであれば、農場には人材が必要だが、ロイターの記事を見てみると、問題の主な原因はH-2Aビザの発給不足ではなさそうだ。

ロイターの記事によると、農業機械を操作する労働者に発行されたH-2Aビザの数は、2019年10月から3月にかけて1万798件に増加した。ロイターが引用した米国労働省のデータによると、これは前年比49%の増加である。

H-2Aビザを取得できないということが問題ではなく、米国に渡航できないということが問題なのだ。国境管理の強化、収束しない世界的なパンデミック、パンデミックにともなう移動制限などにより、移民労働者は自分の国から出国できなくなっている。

このような状況でも適切な手段があれば、多くの農場がH-2Aビザを進んで利用できるため、不法移民を減らし、米国人労働者がやりたがらないであろう厳しい農作業に従事してくれる労働者を増やすことができる、とギルギス氏は考えている。

画像クレジット:Brent Stirton/Getty Images

David Misener(デビッド・ミーゼナー)氏は、オクラホマ州を拠点として農作物を収穫するGreen Acres Enterprises(グリーン・エーカーズ・エンタープライズ)のオーナーだが、通常雇用している移民労働者の代わりとなるふさわしい労働者を見つけるのに苦労している。

ミーゼナー氏は雇用しようとした米国人労働者について「収穫する方法や、収穫作業を仕事にするということを理解できませんでした」とロイターに対して語った。

「移民労働者がH-2Aを利用すると、自国で受け取る賃金の10倍を上回る賃金を受け取ることができます。手取りが時給40ドル(約4200円)相当になるため、誰もがH-2Aを欲しがっているのです」とギルギス氏はいう。

ギルギス氏は、適切なインセンティブと、農業経営者が申請・承認プロセスを管理するための簡単な方法を用意すれば、H-2Aビザを利用する雇用主の数が、国内の農業労働力の30%から50%にまで増加する可能性があると考えている。つまり、移民労働者が応募できる求人数が30万件から150万件に増える可能性があり、移民労働者がビザを取得して就労しながら、米国人と同じようにさまざまな法的保護を受けられるということだ。

事務処理を改善して農業労働者を保護する

創業者のギルギス氏は、いとこが農場を立ち上げるのをサポートした経験から、農場労働者のつながりとそれを取り巻く問題に関心を持つようになった。月に数回ギルギス氏が週末に手伝いに行ってたときにいとこの夫から、不法就労者として渡米した際の話を聞いた。

H-2Aプログラムを利用する雇用主は、不法労働者を雇用することで逮捕されることにともなう法的責任を負う必要がなくなる。トランプ政権下で実施されていた不法労働者に対する取り締まりが、ますます増えているのだ。

それでもこのH-2Aプログラムのルーツが、米国の移民政策の暗い過去にあることを否定することはできない。一部の移民擁護者は、H-2Aの制度が専門技術者向けのH-1Bビザと同じように、構造的な問題があると主張している。

移民労働者の支援団体であるResilience Force(レジリエンス・フォース)の創設者Saket Soni(サケット・ソニ)氏は、次のように述べている。「H-2Aビザは、雇用主が労働者を農業分野で受け入れるために使用できる短期の一時ビザプログラムです。すでに時代遅れとなっている移民制度の一部であるため、修正が必要です。米国に滞在する1150万人に市民権を与えるべきです。他国から来た労働者は必要に応じて、国内に滞在できなければなりません。H-2A労働者には市民権を取得する手段がありません。労働者たちが職場での問題について声を上げることができず、私たちのところにやって来るのです。H-2Aは労働者にとってありがたい贈り物であるだけなく、悪用される可能性もあります」。

ソニ氏がいうには、労働者が置かれている状況は非常に不安定であり、解雇されてもどこにも行けないため、仕事の問題について声を上げにくくなっている。合法的にこの国に滞在できるかどうかは、雇用主にかかっているからだ。

「労働力が必要なら、労働者を1人の人間として受け入れなければならないという考えを、私たちは強く支持しています。労働者が足りなければ、滞在を認めるべきです。H-2Aは移民が利用できる時代遅れの制度です」とソニ氏は語る。

ギルギス氏はこの制度についてはっきりと異議を唱えている。そして、SESOのようなプラットフォームが、今後このようなビザで入国する労働者の利便性とサービスを向上させるだろうと述べた。

「最終的に、移民労働者がもっと多くの給料を稼げるようなサービスを検討しています。今後、送金業務と銀行業務を開始する予定です。私たちのサービスは、このプログラムに参加する雇用主と労働者双方に利益をもたらすもので、搾取されるようなことはないと認識してもらう必要があります」とギルギス氏はいう。

関連記事:

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:SESO Laborビザアメリカ移民農業

画像クレジット:Brent Stirton / Getty Images

原文へ

(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

EUがギグワークを「より良質」なものにする方法を探し始める

欧州連合(EU)は、ギグプラットフォームとギグワーカーを含めた協議プロセスの第1段階を開始した。

EUの議員らはプラットフォームで働く人々の労働条件を改善したいと述べているが、EUのデジタル政策責任者であるMargrethe Vestager(マルグレーテ・ベステアー)氏は現地時間2月25日のスピーチで、そうした人々が「貧しく」「不安定」である可能性を認めた。しかし、ベステアー氏はまた、ギグワークの問題に関する欧州委員会のアジェンダは、(貧弱な)プラットフォーム業務と、良質で安定した(権利が保護された)雇用との間に、ある種の「バランス」を見つけることだと明確に述べた

過酷なサービス提供に従事していながら従業員名簿に載らない多くの人々は、労働者としての権利の一部しか与えられていない。彼らに支払う大金を削ることが、企業としての(多くの場合、理論上ではあるが利益がともなう)持続可能性に連鎖的に結びついている。そうしたことを踏まえると、ギグプラットフォームの仕事がいつまでも良質かつ安定したものにならない悪循環をEUの議員らがどう正していくのか、まだ詳細は不明だ。

しかし、おそらくそれこそが、欧州委員会の協議プロセスで把握しようとしていることだ。このプロセスの第1段階では「より良質」なプラットフォーム業務がどうあるべきか、ギガプラットフォームとギガワーカーの代表者らとともに徹底的に議論することが計画されている。

「プラットフォーム経済はEUとともにあり、新しいテクノロジー、新しい知識源、新しい仕事の形態が今後数年で世界をかたち作っていくでしょう」とベステアー氏は述べ、続けてプラットフォーム労働者の権利や社会的セーフティーネットが疎かにされてはならないというデリケートな問題に躊躇なく切り込んだ。「そして、デジタル経済に関わるあらゆる仕事を守るため、新しいチャンスだからといって権利が制限されることがあってはなりません。オンラインでも実社会と同様に、すべての人々が保護され、安全に尊厳を持って働けるようにするべきです」(ここでは「べき」という言葉に非常に力強い決意が込められている)。

「この協議における重要な課題は、プラットフォーム経済の機会を最大限に活用することと、プラットフォーム経済で働く人々の社会的権利を従来型の経済と同じように保証すること、この2つを両立させることです」とも述べ、次のように続けている。「また、プラットフォームと、現行の労働法の適用を受け人件費がかさんでいる従来型の企業との間で、公正な競争が公平な条件で行われるようにすることも重要です」。

ギグワークに関する欧州委員会の2段階の協議プロセスは、委員会のいう「プラットフォーム業務における労働条件を改善するために、EUが取りうる施策の必要性と方向性」について「社会的パートナー」による協議から始まる。

この協議は少なくとも6週間にわたって行われる。これには、プラットフォームが労働者(および・または、労働者の代表者)と話し合い、プラットフォームの労働条件の観点で「より良質」とはどのようなものかについて合意を見い出すことが含まれており、欧州委員会のイニシアチブの方向性を決定するためのものである。あるいは、両者が現実的な方策の同意に至った場合には、そのイニシアチブについて法整備を進めることになる。

協議の第2段階は「社会的パートナー」が合意に至らない場合を想定しており、夏前に行われる予定で「イニシアチブの内容」に焦点を当てるとベステアー氏はいう(つまり、正すべき悪循環を正すために、EUが最終的に何かを提案するということだ)。

ギグワークにおける難問である競争要素、つまり「雇用主の公平性」というダイナミクスも考慮しなければならない。プラットフォームが従来の雇用主と同じルールを適用していないために、良質で安定した仕事を提供しているライバル企業の競争力を低下させる可能性があることを考えると、欧州委員会がなぜ「社会的パートナー」の協議と並行して競争に焦点を当てた協議を始めているのか説明がつく。

「社会政策ではなく競争法に関するものであるため、別の法的基盤を持つこのイニシアチブについて、まもなく公聴会を開始する予定です。2つのイニシアチブについて別々に協議を行うのは、このためです」とベステアー氏は指摘する。

同氏は、これによってEUの競争規則が「必要とされている団体交渉の邪魔にならないよう」にすると述べた。また、(この意味はまだ不明確だが)「より良質な」プラットフォーム業務のバランスを実現するうえでの解決策が、団体交渉によって形成されることを委員会は期待しているという。

とはいえ、シニカルな人は、この意見公募が、最終的にはおそらくある種の見せ掛けに終わるだろうと予測するかもしれない。つまり、ベステアー氏がEUとともにあるべきと主張したプラットフォーム経済を実際に崩壊させることなく、プラットフォームにおける権利のギャップを埋めるための詰め物という見方もできるということだ。

Uber(ウーバー)の場合、プラットフォームの「法的な明確さ」を向上させるという欧州委員会の話を機会と捉えている。

巨大な配車サービス企業であるウーバーは先週、ホワイトペーパーを発表し、プラットフォーム業務への規制強化の動きを阻止すべく議員に働きかけた。カリフォルニア州では雇用法の強化からの切り離しに成功し、欧州でも同様の成果を求めProp 22スタイルを推し進めている。

関連記事
チーフコミュニティオフィサーはいまやCMOとも言えるだろう
Uberが「ギグワーカーは個人事業主」というカリフォルニアの住民立法を世界展開へ

他のプラットフォームも同様に、欧州の社会契約の中で自社のビジネスモデルに不都合な部分の再調整を促す利己的な提案をしてくることを予想している(例えば先週、ウーバーは規制緩和のロビー活動に有利になるよう、労働者の条件改善を意図的に引き延ばしたと非難された)。

欧州委員会のギグワーク協議の開始は、長期にわたる雇用法廷に対するウーバーの上告を棄却した英国の最高裁による画期的な判決(英国時間2月19日)に続くものだ。

最高裁判事は、ウーバーを訴えたドライバーのグループは確かに誤って「自営業者」に分類されていたとの見解を確定させ、ウーバーはずっと支払っていたはずの(労働者の)権利に対する補償金を支払う義務があるとした。

EUが(ブレグジット後の)英国と比較してプラットフォーム労働者に低いレベルの権利しか提供できずに終われば、ブリュッセル(EU本部)は確かに面目が立たないだろう。

プラットフォームが既存の雇用規制を回避し、社会通念を破壊してでも利益を追求することに基づいていることを考えると、本質的にアンバランスなビジネスモデルの観点で「バランス」を取ることについて話すのは非現実的かもしれない。しかし、欧州委員会は協議プロセスや重なり合うEU全体の規制のネットワークが、ギグエコノミーや大手テクノロジー企業の極めて悪質な行き過ぎた行為をより一般的に抑制するための方法であると考えているようだ。

協議についてのプレスリリースでは、プラットフォーム業務はEUのさまざまなビジネスセクターで「急速に展開されている」と述べられている。そのため「ハイテクを駆使した『発展』を邪魔することはできない」という冴えない記述がある。

委員会は「従来の労働市場の職に就くことが難しいと感じている人も含めて、柔軟性の向上、雇用機会の増加、副次的収入を提供することができる」と、おそらく「バランスのとれた」結果を求める向きに合せていると思われる、認識されたいくつかのポジティブな面から書き始めている。

「しかし、ある種のプラットフォーム業務は不安定な労働条件を伴い、契約の透明性や予測可能性の欠如、安全衛生上の課題、社会的保護の利用機会が不十分であることとして表面化している。プラットフォーム業務に関するその他の課題には、国境を越えた範囲とアルゴリズムによる管理の問題が含まれる」。

関連記事:英国のUber運転手らがアルゴリズム説明責任をめぐりUberを提訴

また、プラットフォーム業務の普及を加速させていることと、ギグワーカーの「脆弱な状況」に対する社会的な懸念が高まっていることの両方において、新型コロナウイルス感染症のパンデミックが果たす役割についても言及している。「脆弱な状況」のギグワーカーは感染しても、(病欠手当が全額支給されないと)仕事をやめるわけにはいかないので、収入を得るために、自分自身の健康(だけでなく他人の健康)を危険にさらすという選択を迫られるかもしれない。

欧州委員会の報告によると、EUの労働者の約11%(約2400万人)が、すでにプラットフォームを通じてサービスを提供したことがあると答えている。

ベステアー氏は、これらの人々のほとんどは「プラットフォーム業務を単に副次的、あるいはあまり重要でない収入源としているだけ」と言われていることに対して、300万人ほどは本業としてやっていると付け加えた。

そして、欧州でこれらの300万人に給料を払わなければならなかった場合のギグプラットフォームのコストを想像してみて欲しい。

プラットフォーム業務はEUとともにあるべきだとの見解を表明したスピーチの中で、ベステアー氏は、消費者の35%から55%が「今後も宅配を利用するつもりだ」と回答したという最近の調査結果を引用した。

「プラットフォーム経済は急速に成長しています」と同氏は付け加えた。「世界的に見ても、オンライン労働プラットフォーム市場は2年間で30%成長しています。この成長は今後も続くと予想され、プラットフォームを介して働く人の数は、今後数年の間に著しく増加すると考えられています」。

「我々は欧州の価値観を中心に据え、欧州のデジタルの未来をかたち作るために取り組んでいます」と同氏は続け、EUの施策リストにある幾多ものデジタル規制に触れた。幾重もの規制網を使い、欧州委員会が社会的に許容される公正な運用の枠組みにプラットフォームの巨大企業を縛りつけようとしている様子を暗黙のうちに示したのである(ただ、実際にはまだこうしたEU規制は行われていない)。

「12月に提出されたデジタルサービス法案とデジタル市場法案は、テクノロジーが基本的な権利を侵害するリスクがある場合に、消費者としての私たちを保護することを目的としています」と同氏は述べる。「4月には2020年発表した人工知能に関する白書のフォローアップを行い、今後の提案では同様に、市民としての私たちを保護することを目的としています。公平性と欧州の価値観の統合は、夏までに予定しているデジタル税に関する次期提案の推進力となるでしょう」。

「私たちは、デジタルトランスフォーメーションが持つ大きな可能性を社会や経済と調和させようとしています。これらの取り組みはすべて、こうした意欲の現れです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EUギグワーカー

画像クレジット:Jaap Arriens/NurPhoto via Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

欧州が推し進める新型コロナ「デジタルパス」に存在する差別や技術的課題の懸念

個人の新型コロナウイルス感染やワクチン接種のステータスを証明する、欧州委員会の汎EU「digital green pass(デジタルグリーンパス)」案についての詳細が現地時間3月17日に示された。明らかに差別のリスクをともなうことから、この計画は人権と市民の自由の観点から論争の的になっている。プライバシーとセキュリティの専門家も、詳細がまだ完全に明らかになっていないデジタルグリーンパスのシステムを支えるテクノロジーアーキテクチャについて疑問視している。

「案はデータ保護と差別に対する保護の要件をまだ満たしていません」とドイツ海賊党の欧州議会議員Patrick Breyer(パトリック・ブレイヤー)氏は同日の声明で述べた。「証明書のデジタル版が中央ワクチンレジスタではなく、本人のデバイスに分散されて保存されることを保証していません」。

EUの新型コロナワクチンパスポート、あるいは「デジタルグリーンパス」と呼んでいるもの、はたまた「デジタル新型コロナ証明書」なるものの意図は所持者が新型コロナワクチンを接種したかどうか、または最近の検査結果が陰性だったかどうか、感染から回復して抗体をもっているかどうかを示すことにある、とEU委員長のUrsula von der Leyen(ウルズラ・フォン・デア・ライエン)氏は3月17日に「共通の手法」のための立案の詳細を明らかにする記者会見で語っている。

「証明書は、それが示す結果(最小限のデータセット)が加盟国で相互に認証されるようにします」と同氏は述べ、このシステムの目的が加盟国の行き来の自由を「安全で責任ある、信頼できる方法で」回復させることにある、と付け加えた。

EU司法長官のDidier Reynders(ディディエ・レンデルス)氏は、意図は全EU市民が無料で証明書を受け取り、他の加盟国に受け入れを求めることができるようにすることだと話した。同氏によると、欧州委員会はパスの使用をほとんど管理しない。共通の手法に関連する特定要件の設定は加盟国に委ねられる。

レンデルス氏は、たとえばEUで使用が承認されていないワクチンを受けた人のワクチン接種ステータスを受け入れることを欧州各国が明示できるとの例を挙げた。しかし同氏は、欧州医薬品庁が承認したワクチンを接種したパス保持者の受け入れを委員会が加盟国に義務づけると述べた。

欧州委員会は「夏前」にこのシステムを利用できるように準備したいと考えているとも同氏は述べた。しかしながら新型コロナのステータスが差別や個人の市民の自由の不当な侵害に使われる明らかなリスクを考えると、本質的に物議を醸す目的のために使われるセンシティブな個人情報を含む複雑でテクニカルなプロジェクトにとって、そのタイムラインは驚くほど野心的なものだ。

デジタル証明書の準備は、欧州委員会が中心的要素を実装・獲得し、システムが意図した通りに機能するよう加盟国が必須のテクニカル的なことを国レベルで実装できるようにするだけでなく、欧州連合理事会と議会が法制化を承認する必要があることを意味する。レンデルス氏によると「おそらく」早ければ2021年6月にもすべてを行う。

このプロジェクトがいかに野心的かを踏まえて、記者会見の出席者が「プランB」はあるかと尋ねると、レンデルス氏は他のプランはないと答えた。加盟国が国境で新型コロナをめぐる一方的な判断をすることを防ぐために、共通の手法を導入して細分化を回避することが唯一のプランだからだ。

それでも、ブレイヤー氏によると現在のところ、案は欧州各国が異なるルールを適用する余地を残している。同氏はまた、たとえば加盟国がワクチン接種の代替要件として検査陰性を受け入れないことを選んだ場合、ワクチン接種に純粋にリンクされている旅行の自由を認めることで差別に繋がりえるとも警告した。「これは改善される必要があります」と同氏は述べた。

「一方で、証明書を提示した後に医療情報の保持が除外されているという事実は歓迎します」と付け加えた。

EUの議員たちはどの加盟国が共通のツールを使うかという突っ込んだ議論は回避したが、デジタルパスは紙とデジタルの両方で提供されると確認した(しかし、繰り返しになるが、ブレイヤー氏は各国が紙という形態を導入しないことを選ぶかもしれず、それによってスマートフォンへのアクセスを持たない人に対する差別につながるのではとの懸念を示した)。

レンデルス氏もまた、デジタルパスは証明書の内容を認証するためのQRコードを有し、それが検証済みかどうかをチェックすると認めた。

ドイツで検討されている欧州委員会のスキームは少なくとも1つの要素が、最近のSpiegelの報道と同じだ。それは、QRコードだけでなくブロックチェーンテクノロジー(IBMとローカル企業Ubirchが落札した)も含む。このテクノロジーはEUのデジタルパス要件との互換性を意図している。

記者会見ではブロックチェーンについて言及はなかった。域内市場委員長のThierry Breton(ティエリー・ブレトン)氏はテクニカルソリューションは「信頼の一部でもある」とだけ述べた。

「だからこそ、我々の認識が一致するよう加盟国と協業しています。我々はまさに同じテクノロジーを共有します」とブレトン氏は続け、次のように付け加えた。「もちろんGDPRを高度なレベルで守ります。我々はデータを交換しませんし、加盟国が今この見方を共有しているというのはいいニュースです。そして、もちろんこれは非常に重要です。というのも、ある国から別の国へと移動するとき、誰もがQRコードだけで自身の証明書の内容とそれが認証されているかを示すことになり、信頼もともないます」。

汎EUシステムがブロックチェーンの要素を含むかどうか、会見後に尋ねられた広報担当は質問をはぐらかし「ゲイトウェーはシグネチャーキーのために国家公共キーダイレクションをリンクさせます」とだけ答えた。

「どこがテクニカル的にこれを実行するのか、まだ伝えることはできません」と付け加えた。

続けて広報担当は2011年にe-Health目的でクロスボーダーデータ共有を促進するためにEU指令によって作られた加盟国代表の自主的なネットワークに言及し「信頼のフレームワーク」は「加盟国が3月12日にeHealth Networkで合意したアウトラインに基づいた」委員会によって開発される、とも述べた。

関連ウェブページでは、委員会は次のように書いている。「eHealth Networkは、デジタルグリーン証明書インフラを確立するのに必要な信頼のフレームワークの概要を公開しました。引き続き、ワクチンと検査、回復の認証の相互承認と相互運用のためのメカニズムを開発します」。

「さらなる作業はEU機関、健康安全委員会、世界保健機構、その他の機関と協業しているeHealth Networkが行います」ともある。

eHealth Networkの「健康証明書の相互運用のための信頼できるフレームワーク」は16ページのPDFとしてここで閲覧できる(2021年3月12日からのv.1.0)。

書面では、いくつかのデザインの選択と意図する結果を協議しているが、選んだテクニカルソリューションの詳細は示しておらず、委員会のすべての作業を終えて2カ月ちょっとで運用できるようにするという目標にもかかわらず、決定はまだなされていないようだ。

観光に大きく頼っている経済への新型コロナの影響を懸念している南欧の国々からの圧力が、ワクチン接種証拠書類の相互承認のための共通アプローチを委員会が急いで展開しようとしている原動力の1つだ。欧州の単一市場の細分化の恐れが委員会にとってさらに大きな促進剤となっている(例えばフランスやドイツなど他の加盟国が旅行する権利をパスにリンクさせることについて懸念を以前表したのは特筆すべきだろう。そのため、欧州各国がどれくらい考えを共有するかは議論の余地があるようだ)。

詳細の多くがまだ明らかになっておらず、さらに疑問なのはデジタルパスを支えるテクニカル的なものがどれくらい信用できるかだ。

eHealth Networkの概要では、たとえば「デザインとデフォルトによるデータセキュリティ」のセクションは、信用できるフレームワークは「セキュリティとプライバシーを確保しつつ、デジタルワクチン証明システムの実装に従ってデータのセキュリティとプライバシーをデザインとデフォルトで保証すべき」と断言している。しかしこれをいかに達成するのかについては説明していない。

「デザインは識別子や他のデータと相互参照されるかもしれない似たようなデータの収集やトラッキングの再使用を防ぐべきです」、さらには「これらの機能を信頼できるフレームワークに組み込むための技術的観点とタイムラインについてはさらなる議論が必要です」と書かれている。

「全体説明」を提供する他のセクションには、EUの信頼のフレームワークが「主に分散される」ようデザインされると記している。ただ「いくつかの中央化の要素」があるとも認めている。具体的には、共通のディレクトリ/ゲートウェイに保存される「信頼のルーツ」と「ガバナンスモデル」で、そうした主要な要素をめぐる信頼に核心となる疑問を提起している。

EUパブリックキーディレクトリについては、ゲートウェイが「欧州委員会のような公共セクター機関によって提供されるべき」とある。しかし明らかにその役割を他の機関が担う余地はまだある。

その他、概要ではオフライン証明は、定期的に認証のパブリックキーを取る専用証明ソフトウェアを組み合わせているデジタル署名を含む2Dバーコードの使用を取り込んでいる。オンライン証明は「 UVCI (Unique Vaccination Certificate/assertion Identifier)に頼ると書かれていて、次の仕様バージョン(V2)で組み込まれる」。

表示フォーマットのセクションでは、2Dバーコードが使われるとある。しかしまた「W3C Verifiable Credentials」が利用される可能性にも触れていて、決定は「後に下される」とだけ書かれている。

欧州委員会のデジタルグリーンパスのテクニカルデザインはオープンさを欠いていると批判的で「W3Cの非中央集権的識別子やVerifiable Credentials(ヴェリファイアブル・クレデンシャルズ)といったあまり知られていない一連の基準」を含む免疫パスポートスキームを批判する論文を2020年出した、CEOで研究科学者のHarry Halpin(ハリー・ハルピン)氏は、欧州委員会が自身の論文で指摘した「ブロックチェーンテクノロジーの問題ある使用」をデジタルグリーンパスに組み込むことを検討している、と懸念する。

同氏はW3Cのヴェリファイアブル・クレデンシャルズの免疫パスポートでの使用はプライバシーとセキュリティの面で危険だと主張する。

「テクノロジー的にいかなるグローバルIDを含むことなくテスト結果を証明する方法はあります」とハルピン氏はTechCrunchに語った。「もしあなたがただ『属性』を持っていると医学的信憑性を証明したければ、つまり過去72時間以内の新型コロナ検査で陰性だった、2020年新型コロナワクチンを接種した、あるいはその他のことを証明したければ、別のIDフォームがあります。属性ベースのクレデンシャルはIDを明らかにすることなく属性を証明します。こうしたユースケースのためのグローバルIDは必要ありません」。

「形而学的には、新型コロナのために私の以前のプライベートな健康データは公開されるべきだが、そうであるならはっきりと言えばいい。ブロックチェーンのナンセンスさの後ろに隠してはいけない」と同氏は付け加えた。

eHealth Networkの概要を議論するとき、セキュリティとプライバシーの研究者Lukasz Olejnik(ルーカス・オレジニク)博士は、誰が信頼のソースとなるのか、そして提案されたデザインに関連するファンクションクリープ(本来の目的以外にも拡大流用されること)のリスクがあるかどうかなど、概要は疑問を提起していると述べた。同氏はワクチンパスポートのプライバシーリスクと広範な影響についても指摘した

「このテクニカル面について書かれた文書は、ユーザーのIDが証明書に組み込まれていることを認めています。これはパスポートがID証明になることを意味します」とTechCrunchに語った。「今日の規制案を考えると、ファンクションクリープのような拡大が、将来こうしたパスポートが実際のID証明になることにならないかという疑念につながります」。

「それ以外にも、eHealthの書類は記述的ですが、将来のソリューションに関して詳細が含まれていません。このシステムでの信頼のソースは関心のある重要な問題です」とオレジニク氏は付け加えた。「我々は詳細についてさらに待たなければならないようです」。

この度の記者会見で、レンデルス氏は他のアングルから将来の拡大のスペクトルを提起した。デジタルパスが「一時的な」手段となる一方で、法制化でシステムがパンデミックの終わりに「棚上げ」され、また別のパンデミックが起こったときなど必要に応じて後に再び活性化される可能性を折り込むかもしれないと述べた。

「我々はWHOがパンデミックの終焉を宣言するときに証明を一時停止する可能性を持っています。ですので、これは新型コロナ専用です」とレンデルス氏は話した。「これは『一時停止』であり、委任行為を通じて、そして欧州議会とともに、もし別のパンデミックが起こったときにこの手段を使うかもしれないということです。しかし基本的に我々は加盟国、欧州議会と一時的なソリューションについて話をしています」。

「それを延長したくはありません」とも付け加えた。「WHOがパンデミックの終わりにあるということができるようになれば、我々はそうした手段を停止します。そしてもちろん、その後の手段の再活用の可能性について考えるだけです。私はそれを望んでいませんが、将来別のパンデミックがあるかどうか次第です。ただそれは専門的な行為であり、常にプロセスには議会が含まれます」。

ファンクションクリープの問題について、レンデルス氏は欧州各国がデジタルパスを、たとえばEU市民の自由な移動を促進するという欧州委員会の目的外での使用を模索するかもしれないと認めた。

しかし同氏は、そうした使用はEU法や基本的権利に則る必要があると強調する一方で、加盟国がマスク着用やすでに特定の状況で行われている迅速検査を求めるのと変わりはないと主張した。

「もし他の使用があれば、課せられているマスクのような他のものをおそらく使うことができるというケースです。また検査、人々が自分で扱うセルフ検査もあります。しかしもし証明書を他の方法で使うことになれば、その使用が見合ったもので、差別的でなく、EU規制に適合していることを確認しなければなりません」と述べた。

「もちろん我々はケースバイケースで状況を確認しますが、証明書と迅速抗原検査やマスクといった他の手段の区別をつける必要があるとは思いません。使用されているツールは他にもあります。他の使用がふさわしいもので、差別的ではなく、明らかに自由な移動のルールに沿うものであると確認する必要があります」。

EUのデジタル新型コロナパスは、2021年1月から議論されている。欧州委員会は1月に「加盟国の証明書が急速に欧州や欧州外のヘルスシステムで使えるものになるよう」1月末までに「適切な信頼のフレームワーク」に同意してもらえるよう働きかけていると述べた。

そして2021年3月初め、欧州委員会がパスを整備する計画があることを発表したとき、国境を超えた安全な移動を今夏促進したいと強調した。とはいえ、第1四半期の欧州のワクチン展開のペースがゆっくりしたものであることを考えると、そうした希望はいま脆いものになっている。

関連記事:EUが安全な旅行を支援する新型コロナワクチン接種・検査状況を表示する「デジタルパス」を準備中

欧州委員会の委員長はまた、一部の加盟国が新型コロナの第3波への移行期にあると警告した。

新型コロナのステータスを認証するデジタルパスでもって全速力で前進するというEU首脳陣の計画は依然として議論の的となっている。少なくとも、欧州でのワクチンへのアクセスはまだかなり限られていて、これはツールが不公平に適用される恐れを強調している。

市民の自由の懸念も「ワクチンパスポート」から切り離すことはできない。そうした懸念は「デジタルパス」と名称を変えて和らげても払拭されない。しかしいま、欧州委員会の共有の手法のためのテクノロジーの選択肢をめぐって新たな疑念もある。それは、システムのアーキテクチャが、EUデジタルグリーンパスは「データ保護、セキュリティ、プライバシーを尊重する」と約束したフォン・デア・ライエン氏のツイート内容に沿うかどうかだ。

EU市民にとって、そうした主張を信じるのに完全な透明性は不可欠だ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:EU新型コロナウイルス

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch/

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

レシート買取アプリのWEDが寄付アプリ「dim.」をリリース、寄付を身近に、簡単に

寄付をより身近に、簡単にするdim.

寄付をより身近に、簡単にするdim.

レシート買取アプリ「ONE」などを提供するWEDは3月18日、スマホから3ステップで簡単に寄付できる無料アプリ「dim.(ディム)」をリリースした。dim.は寄付先に個人情報が共有されない。寄付金額は1000円からとなっており、寄付が初めてのユーザーも気軽に行うことができる。

寄付アプリdim.の開発背景

WEDは2016年に設立し、2018年にリリースしたレシートや画像がお金に変わるアプリのONEは、2020年に100万ダウンロードを超えた。2021年3月8日からは全国の一部エリアでONEのテレビCMを放送するなど、これまでONEに力を入れてきた。

現在、人や社会、環境に配慮した消費行動「倫理的消費(エシカル消費)」が世の中で注目を集めている。「消費の未来を追求する」というコンセプトで事業を展開するWEDは、エシカル消費をより身近なものにしようとdim.を開発するに至った。

dim.の開発にはもう1つ理由がある。WEDの山内奏人代表が2020年末に救急車で病院に搬送され、医療現場のひっ迫した現状を目の当たりしたことだ。幸いなことに山内氏の体調は回復したが、大変な状況下でも人を救う医療従事者の姿を見た時に感じた「自分でも何かできないのか」という想いが開発のきっかけとなったという。

寄付を身近に、簡単にするdim.

 寄付を行うまでの壁を取り払う

寄付を行うまでの壁を取り払う

これまで、テレビやインターネットのニュースなどで大変な状況を知り、寄付をしたいと考えたことはないだろうか。しかし多くの人が「どこに」「どうやって」寄付をすればいいのか、その具体的な方法がわからず、実際に行動を起こせないことも少なくなかった。

そのため、WEDは簡単に寄付ができる仕組みを作り上げた。まずdim.では寄付先を選び、寄付プランを決める。住所やクレジットカードといった支払情報を入力した後、SMSに届いたメッセージから支払いをするだけで寄付が完了する。支払方法はクレジットカードやApple Payでも可能。2回目以降は支払情報の入力をスキップできる。WEDは消費者が寄付を思い立った瞬間に行動を起こしやすくすることで、エシカル消費の普及を促進していく狙いだ。

dim.はリリース時点で、災害支援や人道支援を行うピースウィンズ・ジャパンと、日本動物愛護協会、子供の貧困問題などを支援するフローレンス、民間の国際援助団体のセーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、東日本大震災で被災した子供を支援するハタチ基金の5団体が寄付先として選択できる。

寄付金額の下限は1000円で、上限は100万円とした。ユーザーは寄付プランとして1000円、2000円、5000円、1万円、10万円、50万円、100万円の7つから、希望する金額を選ぶ。また、dim.を介した寄付は、寄付団体ごとの寄付総額や支援者数がアプリ画面からリアルタイムに把握できるようになっている。

寄付を行ったユーザーには、返礼としてWEDから寄付プランごとに異なるオリジナルステッカーが届く。一方、寄付はdim.から一括して行うため、寄付団体からの返礼品などはないという。

なお同社のマネタイズは、WEDは寄付団体からアプリへの掲載料などは取らずに、寄付人数と金額に応じて手数料を取る。

dim.をマーケットプレイスのように

今後は寄付先となる団体を増やしていく他、寄付金額の拡張をユーザーのニーズを踏まえて検討する。この他、3月10日時点でアプリ対応機種はiOS 14以降となっているが、iOSの利用状況などを考慮してAndroid版のリリースを決める。

WEDは「dim.で寄付を身近に、簡単に体験して欲しい。中長期にはdim.を通して世の中の情報と寄付をシームレスに繋げることで、マーケットプレイスのようなカタチになっていくはず。また、我われの理念に共感してくれるメーカーなどとコラボレーションもしていきたい」と語った。

関連記事:ECサイトでのお買い物から最大15%「現金」還元、レシート買取で話題を呼んだWEDの新サービス「C」

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:WEDdim寄付資金調達エシカル消費 / 倫理的消費日本

大麻の販売関連サービスのDutchieが新たな資金調達で評価額は前回の8倍に

約4年ほど前に米国オレゴン州ベンドで設立されたDutchie(ダッチー)は、大麻薬局に月額料金でウェブサイトの作成と運営、注文の処理、受け取り準備が必要な物の追跡などのサービスを提供している。同社は先日、シリーズCラウンドで2億ドル(約218億円)の資金を調達し、評価額は17億ドル(約1860億円)に達した。これは2020年8月にシリーズBで3500万ドル(約38億円)の資金調達を行った際の評価額の約8倍にあたる。実際、2億ドルという金額は2020年の夏に出資者が考えていた評価額とまったく同じだ。

関連記事:米国で大麻のオンライン販売急増、大麻薬局と顧客を結ぶDutchieが絶好調

なぜこのように短期間で大幅に成長したのだろうか?スタートアップ投資における一般的な熱気に加え、DutchieはGreenbits(グリーンビッツ)とLeaflogix(リーフロジックス)という2つの企業を買収したばかりであり、これによりDutchieは顧客のためのオールインワン技術プラットフォームをさらに強化することができる。Dutchieは、この2社にいくら支払ったかを明らかにしていないが、この2社はそれぞれエンタープライズ・リソース・プランニングとPOSソフトウェアを手がけており、合わせて150人の従業員とともにDutchieに統合されることで、現在300人の従業員を抱える同社の規模を、実質的に倍増させることになる。

また、Dutchieはかなり強い追い風も受けている。新型コロナウイルスによるロックダウンが、多くの新規ユーザーを大麻に向かわせたことに加えて、11月の選挙ではさらに5つの州が娯楽用大麻の合法化を決定した。連邦政府は依然として大麻を違法なドラッグに分類しているため、大麻企業が商業銀行や保険にアクセスすることを拒否してきたが、以前のどの政権よりも大麻の非犯罪化に近づいているように思われる

関連記事:米国の5つの州でカナビス合法化法案が承認

Dutchieが発展していることと、規制が進展していることを受けて、我々は米国時間3月15日、同社の共同創業者でCEOを務めるRoss Lipson(ロス・リプソン)氏に、Dutchieが最終的には薬局との提携ではなく、消費者に直接販売を開始するかどうかについて話を聞いた。Dutchieから大麻が送られてくるようになり、消費者が実店舗に現金を支払う必要がなくなれば、それらの業者は必要がなくなるのではないだろうか?

だが、リプソン氏は、そうはならないと主張した。2020年、明白な原因からオンラインによる注文が急増し、バーチャルで商品を選べる手軽さに慣れた買い物客が増えたものの、リプソン氏は「長期的に見れば、これは小売ファーストのモデルです。この業界の性質は、主に植物を栽培と加工する方法により、ハイパーローカルモデルに適していますので、小売店はそのまま残り、成功し続けると思います」と語った。

それは今後、明らかになるだろう。一方でDutchieは、新製品の開発(発見・教育ツールを含む)と国際的な事業展開のために、上位の支援者からさらに2億ドルの資金を得たとリプソン氏はいう。

今回のラウンドはTiger Global Management(タイガー・グローバル・マネジメント)が主導し、Dragoneer(ドラゴニア)とDFJ Growth(DFJグロース)という大麻関連の投資を始めたばかりの2社が参加した。

Dutchieの初期に投資したCasa Verde Capital(カサ・ヴェルデ・キャピタル)、Thrive Capital(スライヴ・キャピタル)、Gron Ventures(グロン・ベンチャーズ)、スターバックスの元CEOで創業者のHoward Schultz(ハワード・シュルツ)も参加している。

この業界に対する投資家の関心が高まっている中、Dutchieが上場する可能性はあるかと尋ねると、リプソン氏は、Dutchieは今「自分たちのやるべきことに集中している」と答えた。

また、合併によってDutchieを上場させたいと考えている特別買収目的会社との話し合いについて尋ねると「現時点ではそのような話し合いに関わっていません」としながらも「ビジネスチャンスがあれば検討します。私たちは、この決断が薬局とお客様にどのような価値をもたらすかを考えます。それが価値をもたらすものであれば、私たちはその決断を下すでしょう」と、リプソン氏は語った。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Dutchie資金調達大麻

原文へ

(文:Connie Loizos、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Match Groupが素性調査を行う非営利団体Garboに数億円の資金を投資

Tinder(ティンダー)、Match(マッチ)、OkCupid(オーケーキューピッド)、Hinge(ヒンジ)など、人気出会い系アプリの親会社であるMatch Group(マッチ・グループ)は、素性調査プラットフォームGarbo(ガーボ)に7桁ドル(数億円)の投資を行ったと、米国時間3月15日発表した。Match Groupのユーザーがオンラインで相手を選ぶときに、適切な情報を元に判断できるようにするのが狙いだ。この取り引きにより、MatchはGarboと親密に協力し合い、2021年後半にはTinderに素性調査技術を組み込み、その後、Match Groupが米国で展開している他の出会い系アプリにも導入していく予定だ。

ニューヨークを拠点とするGarboは、2018年、Kathryn Kosmides(キャサリン・コズミズ)氏によって設立された。コズミズ氏はジェンダーに基づく暴力の被害から立ち直った人物であり、暴力事件を起こした経歴が疑われる人物に関する重大な情報を、誰もが簡単に調べられるようにしたいと考えた。

画像クレジット:キャサリン・コズミズ氏(Match Group)

通常、非営利団体によって提供される素性調査サービスは、麻薬犯罪や軽い交通違反など、広範にわたる個人情報を表面化させてはくれるが、必ずしも暴力や虐待に関連するものとは限らない。しかも、料金は立場が弱い側のコミュニティに課せられることが多く、ジェンダーに基づく暴力には対応していないとGarboは指摘する

Garboは逮捕、有罪判決、接近禁止命令、迷惑行為、その他の暴力犯罪などに関連する公共の記録と、暴力や虐待に関する報告のみを収集し、低価格で素性調査サービスを提供している。このサービスは、相手の氏名、またはファーストネームと電話番号を入力するだけで利用できる。出会い系アプリに登録される個人情報は、大抵はこの程度しかないからだ。

するとこのサービスは「公正素性」チェックを行う。つまり、調査結果から麻薬所持容疑や飲酒または麻薬を使用しての運転、危険運転致死罪などを除外した内容が示される。

2020年、Garboはニューヨーク市エリアの500人を対象に、この技術のベータテストを実施した。するとたちまち、口コミだけで予約希望者が6000人にまで膨れ上がった。後にGarboは、この技術が全国規模で展開できる可能性を感じてテストを中止した。一般公開する前に、その準備を整えたかったからだ。

金銭的な支援をほとんど受けていない小さな非営利団体であったGarboは、そのためには大規模なパートナーが必要だと気がついた。その後、コズミズ氏はMatch Groupの安全関連の新責任者Tracey Breeden(トレイシー・ブリーデン)氏と知り合い、両者は、その技術を米国中のもっと多くのオーディエンスへ届けるために協力し合うことで合意した。

「あまりにも長い期間、世界中の女性や社会から阻害された人々は、数々の障壁に阻まれ、資源と安全から遠ざけられてきました」と、Match Groupの安全および社会的擁護責任者のブリーデン氏は、本日のニュースに関する声明の中で述べている。「企業は、そうした障壁を、テクノロジーと行動に根ざした真の協働によって取り除く役割を果たせるものと、私たちは認識しています。Match Groupとの提携により、Garboの思慮深く画期的な消費者向け素性調査は、情報による力と権利を利用者に提供し、テック界全体における安全な人間関係とオンラインコミュニティに通じる公平な道作りの一助となります」と彼女は話す。

Match Groupによる出会い系アプリの機能強化を目的とした外部の安全技術提供者への投資は、これで2回目になる。2020年初め、同社は、Tinderとその他の出会い系アプリに新たな安全機能を組み込む目的で、Noonlight(ヌーンライト)に投資を行っている。これは、ProPublica(プロパブリカ)とColumbia Journalism Investigations(コロンビア・ジャーナリズム・インベスティゲイションズ)が2019年12月に共同執筆した記事で激しく非難されたことを受けての対応だ。この記事では、Match Groupが既知の性犯罪者たちにアプリの使用を認めていたと伝えている。さらにMatch Groupには同社の出会い系アプリ利用者の素性調査に一環した指針がなく、利用者の安全は、利用者自身に責任を押しつけていたとも指摘している。

それに対して、Tinderの最大のライバルであるBumble(バンブル)は、Tinderのような旧来の出会い系アプリよりも女性に優しいことを売り言葉にし、悪質な人間から利用者を守るためにデザインされた機能を数多く展開した。最も新しいものとしては、悪質な人間が「Unmatch」(マッチ解除)を利用して自分の素性を隠す行為を阻止する手段がある。

「安全ではない」アプリという評判は、Tinderのみならず、オンライン出会い系アプリ業界全体に重大なダメージを及ぼすため、Match Groupがその問題に対処するための直接投資を決めたことは納得できる。例えばNoonlightへの投資では、Uber(ウーバー)やLyft(リフト)が採り入れているものと似た、Tinderアプリの中で目立たない形で緊急通報できる機能や不正防止対策などの導入をMatch Groupは約束した。

Match Groupによれば、Garboはこの新しい資金を使って、製品、エンジニアリング、管理を担当する人材を雇用する予定だ。これには、エンジニアリングの責任者や中心的チームとなるエンジニア5人なども含まれる。このチームは、自然言語処理やAIなどのテクノロジーを駆使して、Garboの数々の能力を構築することになっている。

Garboはまた、Match Groupからの時間と資源の多大な貢献に力を得て製品を完成させ、それをTinderを手始めに、Match Groupの各製品に展開していく。一方Match Groupは、Garboの技術を、配車サービスなどの他のプラットフォームでも利用できるようにする同非営利団体の取り組みを後押しする。

ただし、Tinderで展開される場合は素性調査は有料になる。

とはいえMatch Groupでは、利用者の反応、どれだけの人が使いたがるか、どれほどの調査を利用者が求めるかなど、さまざまな要素に基づいて価格を設定すると話している。また、どれだけ深く統合するか、つまり、アプリからGarboへの外部リンクにするのか、アプリ内の一機能のようになるのかなど、そのかたちも未定だ。

Match Groupでは、この機能を展開する時期をTinderは「2021年後半」、他の出会い系アプリはそれ以降と述べるだけで、具体的には示していない。同社では、今後数カ月内に、米国以外の利用者に向けたサービスのための同類の投資を行うことも検討しているようだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Match GroupGarbo投資マッチングアプリジェンダー

画像クレジット:Tinder

原文へ

(文:Sarah Perez、翻訳:金井哲夫)

表記揺れの影響を受けず不動産物件を特定できる「不動産共通ID」ベータ版が4月公開、APIとして提供

表記揺れの影響を受けず物件を特定できる「不動産共通ID」ベータ版が4月公開、APIとして提供

Geolonia(ジオロニア)不動産テック協会は3月15日、国内の土地や建物等の不動産情報に対して付与する共通ID(不動産共通ID)ベータ版を4月15日に提供すると発表した。不動産共通IDはAPIとして提供し、無償利用が可能。正式サービス時には正規化された住所や物件名を逆引き取得できる有料の上位プランも提供予定。

また「不動産共通ID β版利用 先行エントリーフォーム」において、事前利用登録の受付を開始した。

不動産共通IDは、Geoloniaが2020年8月にオープンデータとして公開した日本全国の「住所マスターデータ」(Geolonia 住所データ。ライセンスはCC BY 4.0)を基に、不動産取引における企業間での情報連携やデータ連携などの実現を目的として不動産テック協会が整備するID。

不動産事業において統一されていない住所や物件名の表記に対して、同一の物件を示す情報に共通のIDと付与することで、表記揺れに影響されることなく物件の特定が容易となるインフラ環境を構築、不動産情報のデータ連携にかかるコストの大幅削減を図る。

表記揺れの影響を受けず物件を特定できる「不動産共通ID」ベータ版が4月公開、APIとして提供

不動産共通IDはなぜ必要なのか?

現在、不動産に関する情報は不動産事業者各社において、「住所」「物件名」などで物件を特定して管理されている。しかし、その表記方法が統一されていないため、同一物件の住所でも「三丁目」と「3丁目」といった表記ゆれや誤入力が発生しており、同一物件であるという特定が難しく、様々な企業が持つ不動産情報の連携が困難という課題がある。こうした課題を乗り越え、生活や企業活動のうえで有用・必須な不動産情報の利用可能性を広げるため、不動産テック協会とGeoloniaは共同で「不動産共通ID」プロジェクトを2020年7月よりスタートした。

不動産共通IDの整備は、行政においても長年の課題であり、不動産業界だけでなく、物流業界や行政などにも幅広く応用できるインフラとなるという。企業ごとに管理方法や管理表記の違う不動産情報に対して、同一物件を示す情報に共通のIDを付与することで、表記ゆれがある住所と物件名が入力されても同じIDが得られる技術により、物件の特定が容易となるインフラ環境を構築する。

不動産共通IDで物件を特定することで、物流の誤配送を防ぎ再送コストを削減できるほか、在宅情報との組み合わせにより在宅の家のみに配送する、夜間光街画像との組み合わせで空き家を特定するといった活用が可能という。また、特定物件に対して複数の工務店・施工会社が行った修繕をひとつに集約し、建物の修繕履歴を一元管理することも可能になるとしている。

表記揺れの影響を受けず物件を特定できる「不動産共通ID」ベータ版が4月公開、APIとして提供

2019年9月設立のGeoloniaは、位置情報基盤を通じて、社会が抱える様々な課題を解決できる企業を目指すスタートアップ。IoT、スマートシティーなど、国、自治体、企業のDXが進むにつれて重要な「地図」「地理空間情報」「ロケーションデータ」の分野で、ウェブ地図提供事業、位置情報開発支援事業、ロケーションプラットフォーム事業を展開している。

不動産テック協会は、現在100社超(そのうち不動産テック企業72社)が属する、日本最大の不動産テック企業の団体。加盟企業には、仲介や管理業務、価格査定、ローン・保証など、多岐にわたる不動産業務の効率化や収益化のために、テクノロジーを活用しサービス提供する企業が加盟している。各社ごとに保有する不動産情報は、数千~数億に及ぶという。

関連記事
京都市の通り名も対応、月額2000円の開発者向けクラウド郵便番号・住所検索APIサービス「ケンオール」公開
Googleが感染症の数理モデルとAIを組み合わせた都道府県別の新型コロナ感染予測を公開、慶応大監修
オープンソースによる総務省「住民記録システム標準仕様書」準拠のシステム開発が開始
LIFULL・ゼンリンなどが不動産ID発行システム試用版の公開に向け開発・運営協議会を設立
新型コロナ研究データを集めた「COVID-19データポータルJAPAN」が公開、国立情報学研究所と国立遺伝学研究所が管理
Geoloniaと不動産テック協会が日本全国の住所マスターデータをオープンデータとして公開
コード・フォー・ジャパンが飲食店情報をオープン化する「OPEN EATS JAPAN」プロジェクトを開始
「東京都 新型コロナウイルス感染症 支援情報ナビ」のソースコードが公開

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:オープンデータジオコーディング(用語)Geolonia(企業)不動産 / 不動産テック(用語)不動産テック協会(組織)物流 / ロジスティクス(用語)日本(国・地域)

米共和党のマルコ・ルビオ上院議員が労組結成を目指すアマゾン倉庫従業員を「支持する」と発言

アラバマ州ベッセマーにあるAmazon(アマゾン)の物流倉庫で働く従業員たちは、すでにBernie Sanders(バーニー・サンダース)上院議員からJoe Biden(ジョー・バイデン)米大統領まで、民主党の政治家たちから公に支持されている。後者は2020年末には「今まででもっとも労組寄りの大統領になる」と約束していた。そして今、多くの労働者が組合結成を目指す中、チームは意外なところから政治的支持を得た。

米国時間3月12日、共和党のMarco Rubio(マルコ・ルビオ)上院議員はUSA Today紙に寄稿した論説で「労働組合の無制限な影響力がもたらす危険性」はあるものの、労働者たちを支持すると述べた。フロリダ州選出の上院議員であるルビオ氏は、歴史的に共和党は経営者側に味方する傾向があることを指摘しつつ「保守派がビジネス界に当然視される時代は終わった」と付け加えている。

この記事は、伝統的に左派と同盟してきた労働組合を全面的に支持するというには程遠いものだ。ルビオ氏は冒頭で、労働組合と経営者の対立は「労働者にとっても、国の経済的競争力にとっても間違っている」と述べ若干の含みを持たせた上で「独特の悪質な企業行動」を挙げている。

ルビオ氏はこう書いている。

これが私の基準です。働く米国人と、リーダーが労働者階級の価値観に対して文化戦争をしかけようと決めた会社との間で対立が生じた場合、選択は容易です。私は労働者を支持します。ですから私は今日、Amazonのベッセマー倉庫にいる人たちを支持するのです。

同記事は、Amazonの職場環境に対する長年の不満だけでなく、文化戦争に関する共和党の不平も取り上げている。「今日は職場環境かもしれませんが、明日は、経営者が今はやりの『ウォークな(woke、人種差別などの社会的不公正の問題に高い意識を持つこと)』人事を労働者に受け入れさせる要求かもしれません」と同氏は述べた。

政治と労使関係は、奇妙な同志をもたらすようだ。オーガナイザーは左派であることが多いが、組合の目的は(実際にはどうであれ)、政治的立場に関係なく労働条件を守ることだ。

関連記事:アマゾンの倉庫労働者が組合結成へ向け郵便投票を開始

Cori Bush(コリ・ブッシュ)下院議員、Jamaal Bowman(ジャマール・ボウマン)下院議員、Andy Levin(アンディ・レビン)下院議員、Terri Sewell(テリ・シーウェル)下院議員 、Nikema Williams(ニケマ・ウィリアムス)など、多くの議員がアラバマ州を訪れ、同倉庫の従業員への支持を表明している。約6000人を雇用している同倉庫の従業員は、2月7日に郵便による投票を開始した。投票は2021 年3月末に終了する。

究極のところ企業に圧力をかける上で、知名度の高い政治家の支持は労働者にとってプラスになるかもしれない。しかし、このようなコメントを鵜呑みにしてはいけないと、組合オーガナイザーは釘を刺すこともある。

ニューヨーク大学(NYU)フェローのClarissa Redwine(クラリサ・レッドウィン)氏は、先日TechCrunchのパネルセッションでバイデン氏の支持について聞かれこう述べた。「何よりもまず、権力者がいうことは重要ではないと覚えておくことが大切です。あなたが持っているすべての力は、トップにいる人たちが与えてくれるものではありません。隣にいる人々と腕を組み団結して、その力や影響力を自分のものにすることで得られるのです」。

【更新】小売・卸売・百貨店労組(Retail, Wholesale and Department Store Union、RWDSU)のStuart Appelbaum(スチュアート・アペルバウム)会長は、TechCrunchに次のようなコメントを送った。「我々はあらゆる方面からの支持を歓迎します。ルビオ上院議員の支持は、働く人々が職場で尊厳と敬意を得るための最良の方法は、組合結成であることを示しています。これは党派的な問題であってはなりません」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Amazon労働組合

画像クレジット:Scott R. Galvin / AP

原文へ

(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

Googleが女性と少女のエンパワーメントを支援する27億円の補助金を発表、全世界から応募可

Google(グーグル)はインド時間3月8日、女性と女児のエンパワーメントに取り組む非営利団体や社会事業の活動に資金を提供するため、さまざまな支援プログラムとともに2500万ドル相当(約27億円)の補助金を発表した。

国際女性デーに発表されたGoogle.orgの新しい「Impact Challenge」プログラムは、女性の経済的な平等・自立、そして起業家精神を追求する機会へのアクセスを支援し、システミックな障壁や不公平に対処することを目的としている、とGoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏はバーチャルイベントで述べた。

「これらのチームが何を必要としているにせよ、我々は彼らの傍に寄り添い、ビジョンの実現を支援する所存です」と、Google.orgの代表理事であるJacquelline Fuller(ジャクリーン・フラー)氏は同イベントで述べた。同社によると、4月9日まで世界中のチームから応募を受け付けるという。

フラー氏はまた、Google.orgがインドの十分なサービスを受けていない女性を支援するために100万ドル(約1億円)を追加投資することも発表した。インドは世界第2位のインターネット市場であるにもかかわらず、女性のネットユーザーの割合は少ない。

5年前、Googleはインドの農村部の女性にネットリテラシーをもたらすために、「Internet Saathi」と呼ばれるプログラムを開始した(Saathi:ヒンディー語で苦楽を共にするパートナー、仲間)。同社によると、このプログラムはインドのコングロマリットであるTata(タタ)社と共同で実施したもので、インドのインターネットへの女性の参加を大幅に向上させることができたという。

現在ではインドの農村部におけるネットユーザーの10人中4人が女性になった、とGoogleは述べている。2015年にはその数字は10人に1人だった。同社独自の調査結果によれば、Internet Saathiプログラムはインドで3000万人以上の女性に恩恵をもたらしたという。同じミッションを継続するために他の取り組みに注力していくということで、同社はこのプログラムを終了すると述べた。

「このプログラムは連鎖的な効果を生み出しました」と、Google IndiaのトップであるSanjay Gupta(サンジャイ・グプタ)氏はイベントで述べた。

しかし、単にインターネットに接続しただけでは「十分な進歩とはいえません」と、インド・東南アジアのGoogleシニアマーケティングディレクター、Sapna Chadha(サプナ・チャダ)氏は述べている。「インドの女性は伝統的に経済参加を妨げられてきました」。

同社は、影響力のあるインドの業界団体NASSCOM(National Association of Software and Services Companies)の社会事業部門であるNASSCOM Foundation(ナスコム財団)と提携し、インドの10万人の女性農業従事者にデジタル・金融リテラシーをもたらし、さらに100万人の女性による起業を実現し、支援するための「Women Will」というプログラムを立ち上げるという。

Women Willプログラムの一環として、チャダ氏は、英語とヒンディー語でのチュートリアル、事業アイデア、その他の機会を特集するリポジトリのウェブサイトを発表した

Googleはまた、起業家が無料でGoogle Payアプリ内にビジネスページを表示できるようになる新機能の展開に取り組んでいる、とチャダ氏は述べた。そして女性起業家はこれから、Google検索とGoogleマップのリスティングを通して、彼女らのビジネスは女性が主導していると強調することも選択できます、と同氏は語った。

インド政府の女性子供開発省のSmriti Irani(スムリティ・イラニ)大臣はこう述べた。「私たちの娘が誰も性別の重荷に縛られることのない、私たち全員が誇りに思える未来を築くために、皆さんの力を結集していただくよう呼びかけます」。

関連記事:女性起業家への米国のVC投資が過去最高を記録

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Google 女性 インド

[原文へ]

(文:Manish Singh、翻訳:Aya Nakazato)

「LGBTQの居場所をつくる」米国10代向けアプリweBelong、ミクシィ笠原氏などから約7300万円を調達

「本来の自分」というのは、なかなか晒け出せないないものだ。ネット上ではもちろん、家族や友人にだってカミングアウトできないことは誰にでもあるだろう。そんな人たちに「居場所」を提供するSNSアプリがある。HoloAsh,incが運営する、10代マイノリティ向けコミュニティアプリ「weBelong」だ。

同社はこの度、プレシードラウンド調達として、ミクシィ笠原健治氏、元メルカリ富島寛氏、エニグモの須田将啓氏など、複数のエンジェル投資家などから約7300万円の資金調達を実施。アカツキHeart Driven Fundなどからの出資を含め、累計の調達金額は約1億円になったという。

画像クレジット:HoloAsh,Inc.

weBelongは、米国に住む10代のマイノリティ(LGBTQや、ヒスパニック、黒人など)向けの匿名制コミュニティアプリだ。生年月日、性別、ジェンダー、趣味、悩みなどを登録すると、アルゴリズムが「自分に近い属性や関心を持つグループ」をおすすめしてくれる。ユーザーはそのグループ内で、互いの悩みや関心事をテキストでチャットできる。

例えば「自分がレズビアンであることを親に言い出せない」「摂食障害に悩んでいる」「自分の体型が恥ずかしい」など、アプリ内ではさまざまなトピックについて会話が交わされる。仲の良い友達や家族に相談しにくい悩みでも、weBelongのユーザー同士では打ち明けられる。自分と近い境遇にある人たちだからこそ、安心して話ができるのだ。

他人と比較しないSNS

「米国は多様性に満ちた国なのだから、LGBTQは社会で受け入れられているのではないか?」と思われる読者もいるかもしれない。しかし、必ずしもそうとはいえない現実がある。米人権団体のHRCが行った調査によると、10代LGBTQの76%が「自分の家で自分らしくいられない」と回答。また学校においても、70%は過去にいじめを経験しているという。

20代、30代でさえ「本当の自分」をカミングアウトするには勇気がいる。このような環境下で、まして10代となると「そもそも自分の性は何なんだろう?」「これを家族に言っていいのかな?」「友達になんて思われるだろう?」と、誰にも相談できないまま殻に閉じこもってしまうのは想像に難くない。

そんな「自分らしくいる」ことに難しさを感じる、10代マイノリティに焦点を当てたのがweBelongだ。このSNSアプリがおもしろいのは、フォロー・フォロワー数や「いいね」(同アプリでは「ハグ」と呼ぶ)の数を第三者からは確認できないという点だ。よって他のSNSアプリのように、ユーザーは「数字」を競い合うことがない。自分を良く見せようとしたり、アピールしたりするインセンティブが働かないからだ。

HoloAshのCEOである岸慶紀氏は想いを語る。「weBelongは『他人と比較しない』ことにこだわっています。他のアプリのように、一部の有名なインフルエンサーが圧倒的なパワーを持つという場所にしたくはなくて、どんな人にとっても居心地の良い空間をつくりたいと思っています」。

「感謝される経験」が支えになる

weBelongは2021年1月にリリースされてから、約20万件のコメントがなされ、毎日約200人が利用している。特筆すべきは、1日あたり35分〜40分におよぶユーザーの平均滞在時間だ。これは、同社が目指した「自分と同じ属性の人と繋がれる、居心地の良い空間」を演出できている証拠だろう。

現段階では収益化は行っていないものの、岸氏の頭の中にはアイデアはいくつもある。「ただの広告モデルにはしたくないと思っています。確かに、10代マイノリティ向けに商品を展開する企業の広告を出す、ということはすぐに思いつく方法です。ただ、僕たちが目指しているのは本当にそこなのかな、と少し違和感があるんです」。

同氏は、ユーザー同士でマイクロペイメントができる仕組みやアプリ内のバーチャルコインの活用を考えているという。例えば、ユーザーAがユーザーBの悩みを聞いてあげた時、ユーザーBはお礼として数ドルをユーザーAに支払う。その支払いに対して、weBelongが少額の手数料を受け取るという形だ。

岸氏は、自身がADHDを持つ身としてこう語る。「自分がまだ小さい頃に、歯磨きを学校の先生に褒められたことがあるんです。それがたまらなくうれしくて、それ以来いつも歯磨きだけは完璧にしていた(笑)。こんな些細な出来事でも、人生を生きる大きな糧になると思うんです。weBelongでは、いろんな不安や悩みを抱えた人たちがお互いを支え合う中で、『他人から感謝される』『他人に頼りにされる』という経験を経て、自己肯定感を強めていくきっかけになって欲しいと思っています」。

現代を生きるティーンエイジャーにとって、SNSは諸刃の剣だ。自分自身を世界中に発信できる一方で、数字に依存してしまうばかりに「心が疲弊」する場合もある。フォロワー数・いいね数を競わずに、10代マイノリティの助け合いに焦点を絞るweBelongは、現代のSNSシーンにまったく別の角度から一石を投じる存在になりそうだ。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:weBelong資金調達SNSマイノリティLGBTQティーンエイジャーHoloAsh,inc

バイデン大統領の多様性への取り組みが、ビジネスリーダーの方向性を導く

本稿の著者Elias Torres(エリアス・トーレス)氏は、会話型マーケティング・販売プラットフォームDriftの創設者兼CTOだ。

ーーー

2021年の我が社の目標は44%が女性、14%が過小評価グループで労働力を構成することだった。多少の進展はあったものの、現在のそれぞれの数値は、43%と13%にとどまっている。

この目標がなぜそこまで重要であるかを説明すると、筆者には、17歳の時に母と兄弟とともにニカラグアから米国へ移住した経歴があるからだ。その際、知識があり努力さえすればなんでも達成できる場所が約束されたのだ。しかし、成長の過程を振り返っても、筆者のような立場にあるビジネスリーダー、政治家、校長先生などを見た記憶はない。Marc Benioff(マーク・ベニオフ)のような立場にある黒人やSteve Jobs(スティーブ・ジョブズ)のような立場にあるラテン系の人物が報道されることが一切なかったため、少数グループが活躍できる未来が見えなかったのだ。

だが、2008年のオバマ大統領の選出を機に、社会の認識が非常に速い速度で変わったのだ。これによる有色人種への影響が大きかったことは言うまでもない。新しい政権に切り替わった今、バイデン大統領は「我が国の多様性を反映する」内閣の人選に非常に力を入れている。

彼の政権には、国連大使候補者であるLinda Thomas-Greenfield(リンダ・トーマス・グリーンフィールド)大使や国土安全保障長官候補者のAlejandro Mayorkas(アレハンドロ・マヨルカス)など、黒人およびラテン系コミュニティを代弁する人材が含まれている。

17歳のときの筆者が、元難民が米国の未来の舵を取っているのを見たとしたらどのように感じ、世界観がどのように変わり、成長しただろうと考えたら、多様性へ献身しようという意欲が倍増した。結局は、公的機関が多様性に対してこのように積極的に取り組んでくれたら、確実に企業もそれに続くと言えるのではないか。

各企業には、2021年のDEI計画があるはずだ。我が社の計画は次のとおりである。

アイデアを得るために役員ではなく従業員を活用する

役員室は、より多様な人員で構成されるようにはなってきているものの、最終的に大きな進歩が見られる期待は少ない。進歩とはむしろ、従業員が自身のスキルとやる気がうまく重なり合ったときに見られるのだ。

今年、これを説明するようなことが我が社で起こった。

黒人が主導するビジネスへの新型コロナウイルスによる桁外れな影響を目にして、数名の従業員がアイデアを持って私の元に訪れたのだ。彼らは、我が社の製品を使い長期にわたるシャットダウンの影響を受ける黒人主導のビジネスを救済する方法を見つけたいと考えていた。彼らは、BlackBoston.comの所有者であるWilliam Murrell(ウィリアム・マレル)と協働し、ニーズを把握することから始め、彼と同ウェブサイトのビジターをどのようにつなげるかを考え始めた。Williamのネットワークで作業をすることで我々は、黒人が経営するビジネスにおいてテクノロジーの導入の妨げになっている障壁が何であるか深く理解し、ギャップを埋める反復可能なプロセスを作り出した。

このような判断とその結果としての取り組みは、収益性向上の方法を考えるために多大な時間を費やす役員室で行われたのではない。むしろ、自身のコミュニティを改善したいと願う従業員がアイデアを練り、その方法を生み出したのだ。

こうした取り組みをより一般的なものにするため、我が社は多様性に明るい採用担当者を採用し、チームがコミュニティをより適切に反映できるように尽力した。また、少数グループを面接へ導き、採用判断時の偏見を軽減できるように均衡のとれた採用プロセスを策定した。一方で、退職者から学ぶ姿勢も重要だ。彼らから我が社の改善すべき領域を学び、会社を超えて彼らが成長できるよう促すためだ。

在宅勤務が表現や相互信頼の妨げにならないようにする

現在、人々は通常の営業時間内で勤務していない。育児をこなしながら在宅で仕事をしていたりする。リーダーがその大変さを理解し、自分に引き寄せて考えることが必須である。我が社は、会計年度末を1月に変更したため、営業チームと市場参入チームは年度末に目標を達成するために慌てて仕事をせず、休日を家族と楽しみリフレッシュすることができた。

さらに、社員主導の採用リソースグループ(ERG)の役割を強化・拡大し、同僚同士が表現できる安全なスペースを確保している。相互信頼もビジネスにおいては不可欠である。自身を役員室における象徴と認識する創設者としては、社員が自らを表現でき、個々の成功や失敗から学んだことを共有する場所を用意することの価値を認識しているつもりだ。

こういったことだけでは多様性の直接的な改善にはつながらないが、信頼の構築に大いに役立つのは確かである。

人種や性別だけではなく、多様な視点を受け入れる

我が社が取り組んでいる最後の事項は、外見だけが多様性ではないということを認識することだ。むしろ、考え方やその人の抱えているものの多様性の方が、チームが共通の目標を達成するためにどのように協力するかにとって重要である。

結局のところ、違いを尊重できない文化の構築を進めると、マイノリティを組織の外へますます追いやってしまうことになる。我が社では、多様性、平等、インクリュージョンに焦点を当てることの一環として、民族の多様性と同様に考え方の多様性を認め合うことを推奨し、そして重要な時に問題を提起する社員に対する説明責任を我々自身に課している。

2020年はトラウマの年であり、すべての人が同じ恐怖と不安を共有した。ありがたいことに、このトンネルの終わりには、2つの有望なワクチンと性別や民族の境界線を越えた平等な表現を尊重する価値を知っている新しい政権がある。

このような前向きな発展に関わらず、多様なコミュニティに力を与える取り組みは、確実に維持していかなければならない。つまりは、テック業界に少数グループが十分に進出していないという体系的な問題は、このような取り組みだけでは解決しないだろうが、問題への対処と日々の学びに対し持続的に注意を払うことで解決できると信じている。2020年に目標を達成できなかったとはいえ、2021年は、大統領のリーダーシップの下、オフィスでの平等性を維持できるよう尽力する次第だ(オフィスがどこにあろうとも)。

すべてのビジネスオーナーがこれと同じ取り組みを行ってくれることを期待したい。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラムDEI

画像クレジット:Andrii Yalanskyi / Getty Images

原文へ

(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

今、その役割が注目されている活動家的なデベロッパーの台頭

本稿の著者はBob Lord(ボブ・ロード)氏は、IBMでWorldwide Ecosystems and Blockchainを担当するSVP。IBMのブロックチェーンビジネスを監督し、開発者、グローバルシステムインテグレータ、独立系ソフトウェアベンダーにまたがる同社の主要なエコシステムを推進するなど、ビジネス全体に新しいオープンテクノロジーを浸透させている。

ーーー

この数カ月間、特に米国において、テクノロジーと社会におけるその役割が注目を集めている。

私たちは、テクノロジーの公正かつ倫理的な利用方法や虚偽情報の拡散を阻止するためにできることなどについて、真剣に話し合う必要がある。だが、こうした問題の解決に尽力する際、この話し合いによって、善行のためにテクノロジーを利用する活動家的なデベロッパーの台頭という、2020年現れた希望の兆しを曇らせることがないことを願う。

活動家的なデベロッパーはこれまでにないほどさまざまなグローバル問題に対応し、信じられないほどに困難な問題を解決するのを好むことだけでなく、そうした問題を大規模に、そして見事に解決できることを証明した。

彼らの起業家精神にあふれる成長型マインドセットをこのコミュニティで解き放ち、より多くの人々が、あらゆる人のために持続可能な未来を築く機会があるようにする責任は、私たち全員にある。私は、同僚や業界、政府などに、デベロッパーが主導するアクティビズムの新たな波をサポートし、今、存在しているスキルギャップを協力して埋めていくよう呼びかけている。

新型コロナウイルスのパンデミックから、気候変動や人種問題まで、デベロッパーは、人々が不安定な今の世界をうまく切り抜けることができるように新しいテクノロジーを作る重要な役割を担っている。こうしたデベロッパーの多くは、労働時間外に世界中で共有できるオープンソースのソフトウェアを使用して社会問題に取り組んでいる。この取り組みにより多くの命が救われている。ゆくゆくは何百万人もの命を助けることになるだろう。

国際的な研究者コミュニティは、いち早くオープンソースのプロジェクトによってデータと遺伝子配列を共有し合い、新型コロナウイルスの早期理解と感染を阻止する取り組みにおいて協力することに役立てた。研究者がほぼリアルタイムで世界中の遺伝子コードを追跡できることは、私たちの対応において極めて重要であった。

St. Jude Children’s Research Hospital(セントジュード小児研究病院)では、この重要な時期に、たった10日間で同意署名プロセスのデジタル化を成し遂げた。台湾、ブラジル、モンゴル、インドから集まった4名のデベロッパーチームは、気象データを使用して天候の変化を察知し、より情報に基づいた作物管理の意思決定ができるよう農業経営者を支援した

1950年代から1960年代の公民権運動と反戦運動から最近のブラックライブズマター運動を支持する集会まで、人々は情熱と抗議心を持って、より良い未来へと導く話し合いの場をかたち作ってきた。そして今、人々による活動の豊かな歴史に、新しく重要なツールが加わった。最大級の課題に世界的および地域的に協力して対応するために必要なデータ、ソフトウェア、テクノロジーのノウハウだ。

現代のソフトウェアデベロッパーは、1940年代や1950年代に橋や道路を設計し、非常に広範な進歩への道を開いたインフラストラクチャを作った土木技師に似ている。

オープンソースコードのコミュニティは、すでに協力・共有している。あらゆる人が共有できるイノベーションを生み出し、完璧ではなく完成を目指すことに焦点を当てているのだ。ハリケーンによってコミュニティが大きな被害を受けそうなとき、ただ土嚢を準備するだけではなく、オープンソースのテクノロジーを使用してコミュニティを支援し、ソリューションを拡張して他者を助けることができる。例えばDroneAID(ドローンエイド)は、視覚認識を利用して頭上を飛ぶドローンから地上のSOSの印を検知して数え、緊急救援のために地図上に救急ニーズを自動的にプロットするオープンソースのツールだ。

GitHub(ギットハブ)による最近の調査では、オープンソースプロジェクトの作成は2020年4月より25%増えている。デベロッパーは空き時間を利用してオープンソースコミュニティやバーチャルハッカソンに貢献し、より持続可能な世界を作ることに自らのスキルを活用している。

2018年、私はIBM、David Clark Cause(デビッド・クラーク・コーズ)、United Nations Human Rights(国連人権理事会)によるCall for Code(コール・フォー・コード)の立ち上げを手伝った。グローバルなデベロッパーのコミュニティを支援する取り組みだ。そのミッションの大部分を占めるのは、野心的な構想を実世界に取り入れるために必要なインフラストラクチャを作ること。IBMでは、エンタープライズクライアントによって使用されるものと同じテクノロジーへの2400万人のデベロッパーコミュニティアクセスを提供しており、これにはオープンハイブリッドクラウドプラットフォーム、AI、ブロックチェーン、量子計算などが含まれている。

Prometeo(プロメテオ)は消防士、看護師、デベロッパーのチームで、AIとモノのインターネット(IoT)を利用したシステムを開発した勝者であろう。これは消防士が火災に立ち向かう際に消防士を保護するシステムで、スペインの複数の地域ですでにテスト済みである。私たちはこれまで、自宅学習用に教師が仮想情報を共有できるようにしたデベロッパー、消費者の購入における二酸化炭素排出量の影響を計測できるようにしたデベロッパー、スモールビジネスに新型コロナウイルスに関するポリシーの最新情報を提供できるようにしたデベロッパー、農場経営者が天候の変化に対応できるようにしたデベロッパー、パンデミックの中でビジネスの生産ラインの管理方法を向上できるようにしたデベロッパーなどを見てきた。

2020年、Devpost(デブポスト)は世界保健機構(WHO)と連携し、健康、被害を受けやすい人口、教育などのカテゴリーで新型コロナウイルス感染症の緩和ソリューションを作成するという課題をデベロッパーに出した。Ford Foundation(フォード財団)とMozilla(モジラ)は技術者、活動家、ジャーナリスト、科学者をつなげて、技術と社会正義に取り組む組織を強化するためのフェローシッププログラムを先導した。U.S. Digital Response(米国デジタルレスポンス、USDR)では、無料奉仕する技術者を、危機に対応する政府や組織と結び付けた。

最も複雑な世界的かつ社会的な問題は、より小さく解決可能なテクノロジーの課題に分解できる。だが最も複雑な問題を解決するには、あらゆる国、あらゆる階級、あらゆる性別の頭脳が必要になる。スキルギャップの危機は世界的な現象であり、次世代の問題解決者に、すばらしいアイデアを影響力の高いソリューションに変えるために必要なトレーニングとリソースを準備することが重要だ。

2021年は、企業や州、国の境界を越えて連携し、世界で最も大きな問題のいくつかに取りかかる新しく活気に満ちたデベロッパーコミュニティが表れると期待できるだろう。

だが彼らは自分たちだけでは問題を解決できない。こうした活動家的なデベロッパーには私たちからの支援や励まし、対処すべき最も重要な問題を指摘する手伝いが必要だ。そしてソリューションを世界中すみずみまで提供するツールも必要になる。

テクノロジーの真の力は、この世界をより良いものに変えたいと考える人々のためにある。変化を生みたい人々がそれを成し遂げるためのツール、リソース、スキルセットを確保できるように、私たちはスキルギャップを埋め、社会の根深い格差を解消することを、改めて重要視する必要がある。

私たちの未来は、これを正しく理解できるかどうかにかかっている。

関連記事:誰もが資本を獲得し起業家精神を持てる社会を目指すことが最後の公民権運動

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:コラムアメリカ

画像クレジット:Klaus Vedfelt / Getty Images

原文へ

(文:ゲストライター、翻訳:Dragonfly)

従業員の3割が女性の中国ゲーム大手NetEaseのトップが男女共同育児休暇の拡大を呼びかける

NetEaseのCEOである丁磊(ウィリアム・ディン)氏

中国は一人っ子政策を緩和したが、政策当局が設定した人口目標を達成できていない。2019年、中国の出生率はここ70年で最低の水準に落ち込み、これは社会的態度の変化、生活費の高騰、そして厳しい労働文化に起因していると専門家は指摘する。

中国の人口危機を解決する方法の1つは、母親の負担を軽くすることだと、人気音楽ストリーミングサービスも運営している中国第2位のゲーム会社NetEaseの創設者兼CEOのDing Lei(丁磊、ウィリアム・ディンとしても知られる)氏は述べている。

丁氏は今週、全国人民代表大会(NPC)と中国人民政治協商会議(CPPCC)の会議で構成される中国の年次国会でこの提案を行った。毎年春になると、政治的エリートや技術系の億万長者を含むさまざまなバックグラウンドを持つ代表者が、非公式に「2つの総会」として知られている立法会議のために北京に集まる。

丁氏は、Tencent(テンセント)のPony Ma(ポニー・マー、馬化騰)氏、Xiaomi(シャオミ、小米科技)のLei Jun(レイ・ジュン、雷軍)氏、Baidu(バイドゥ、百度)のRobin Li(ロビン・リー、李彦宏)氏のような他のハイテク企業のボスを含むCPPCCのメンバーである。丁氏は、女性の肩にかかる負担を軽減するために、高額な出産、短い産休、小児医療の供給不足、未発達な育児システム、その他の「現場でなかなか解決しない問題点」に取り組むべきだと提案した。

丁氏はさらに「男性が子育てにもっと責任を持てるように」、育児休暇を「自己の判断で」共有できるようにすることを提唱した。同氏は、女性の出産に関するコストは国が負担すべきであり、保育施設の数を増やすべきだと主張した。

中国では近年、ほとんどの省が父親の育児休暇を導入しているが、その期間や実施の取り組みは地域によって異なる。NetEaseやTencentのある広東省では、父親には最大15日間の有給休暇が与えられている。一方、上海は10日間と最も少ない。

しかし一部の専門家は、平均1週間の父親の育児休暇は、最低98日の有給産休を受け、居住地によってはそれ以上の日数を得られる新生児の母親を解放するのにまったく足りないと主張している。TechCrunchの取材に対し、NetEaseの家族休暇ポリシーは国や地域の規制に沿ったものである、と同社の担当者は語った。

中国のハイテク大手は時折、男女比を公表したりほのめかすことがある。2019年には、NetEaseの2万人の従業員のうち35%が女性で、その年のトップマネジメントのうち約25%が女性だったという。女性社員の福利厚生を誇るオンライン旅行代理店Ctripは、2018年にはスタッフの60%以上が女性だったという。女性リーダーシップフォーラムで頻繁に講演を行っているJack Ma(ジャック・マー、馬雲)氏は2019年に、Alibaba(アリババ)スタッフの33%以上を女性が占めるべきだと公言した

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:NetEase中国

画像クレジット:Visual China Group via Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)