フェイスブックもグーグルと同様に職場復帰する従業員にワクチン接種を義務付け

Google(グーグル)のSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)CEOは、米国時間7月28日、同社が従業員に対し、現場で仕事に復帰する前にワクチン接種を義務付けることを発表した

このことは、GoogleおよびAlphabet(アルファベット)のスタッフに送られた手紙に書かれており、新型コロナウイルスのデルタ変異型が世界的に流行し続けていることから、同社が在宅勤務ポリシーを10月18日まで延長することにも言及している。

また、Facebook(フェイスブック)のVPであるLori Goler(ローリー・ゴーラー)氏は、TechCrunchへ送られたメッセージの中で、このソーシャルメディアの巨大企業が同様のポリシーを採用していることを認めた。

「オフィスの再開にともない、米国内のすべてのキャンパスに出勤する人には、全員にワクチン接種をお願いする予定です」と、ゴーラー氏は書いている。「このポリシーをどのように実行するかは、地域の状況や規制によって異なります。医療上の理由やその他の理由で予防接種を受けられない人々にはプロセスを用意し、状況の進展に応じてそれ以外の地域でアプローチを評価していく予定です。当社は引き続き専門家と協力して、すべての人の健康と安全を優先したオフィス復帰計画を立てていきます」。

この声明と同様の同様の文言で、ピチャイ氏が書いた長文の手紙にも「医療上またはその他の保護された理由で」という例外を分けている。Facebookでは当初、9月に半数、10月までに全員の職場復帰が計画されていたが、ゴーラー氏のコメントには、この復帰時期の変更については示されていない。

先週、同社の広報担当者は、The Wall Street Journal(ウォール・ストリート・ジャーナル)紙に「専門家のガイドラインでは、デルタ変異を含む新型コロナウイルスの変異種の予防にはワクチンが非常に有効であるとされています。オフィス再開までのスケジュールに変更はありません」とコメントしている。

両社の声明とも、地域や州の規制、医学的または個人的な懸念、そしておそらくは地域によって大きく異なるワクチンへのアクセスなどに基づき、会社の方針にある程度の幅を持たせている。

また、Amazon(アマゾン)もTechCrunchの問い合わせに対し「アマゾンの従業員や契約社員には、新型コロナウイルスワクチンが入手可能になり次第、ワクチンを接種することを強く勧めます」と回答している。

同社の現在のガイドラインでは、オフィスに戻るためにワクチン接種が必要というわけではないようだが、ワクチンを接種していない従業員にはマスクの着用が義務付けられている。ワクチン接種を完了したことが証明されている人は、顔を覆うことは任意となっている。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ツイッターが新型コロナ感染再拡大を受け再開したばかりのNYとSFのオフィスを閉鎖

ニューヨークとサンフランシスコのオフィスを再開してわずか2週間、ソーシャルメディア大企業Twitter(ツイッター)は米国時間7月28日、それらのオフィスを「すぐに」閉めると明らかにした。

この決定は「CDC(米疾病予防管理センター)のアップデートされたガイドラインを熟慮し、現状を踏まえてのもの」と広報担当は話している。

「Twitterはニューヨークとサンフランシスコのオフィスを閉鎖し、予定していた他のオフィスの再開も一時停止することを決めました。この措置はすぐに取られます。当社は引き続き各地域の状況を注視し、Tweeps(ツイッターユーザー)の健康と安全を優先する必要な措置を取ります」と広報担当は付け加えた。

同社は7月12日に2つのオフィスを再開したばかりだった。各オフィスで働く人数は明らかにしなかった。

CDCは今週、伝染力の強いデルタ株についての懸念が強まる中で、ワクチン接種完了者に新型コロナウイルス感染率が高い地域の屋内でのマスク着用を推奨した

この記事の前に、GoogleのCEOであるSundar Pichai(サンダー・ピチャイ)氏がオフィスに戻る従業員にワクチン接種を義務付けることを発表した、とTechCrunchのBrian Heater記者が報じた。ワクチン接種の義務付けはGoogleとAlphabetの従業員に宛てたレターの内容の一部であり、新型コロナ変異種が引き続き世界中で拡大している中で、同社が在宅勤務措置を10月18日まで延長することもレターには記されていた。

TechCrunchへのメッセージの中で、Facebook(フェイスブック)の人事担当VPのLori Goler(ロリ・ゴーラー)氏は同社も似たような措置を取ることを認めた

Amazon(アマゾン)もこの件に関するTechCrunchからの問い合わせに対し「当社はAmazon従業員と契約業者に新型コロナワクチンが利用できるようになり次第すぐさま接種するよう、強く奨励しています」と述べた。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Nariko Mizoguchi

グーグルが米社員に新型コロナワクチン接種を義務付け、オフィス勤務再開は延期

リモートワーク向けのツールを作り出したテック企業にとっても、オフィスでの業務再開は大きなチャレンジだ。Google(グーグル)のような企業は、2020年3月にいち早く在宅勤務を推奨したのちにオフィスを閉鎖し、自宅から仕事するよう求めた。(世界の大半とともに)バランスを取ることをともなった日々だったが、同社は2020年5月に一部の従業員向けにオフィス勤務再開計画の作成を開始した。

デルタ株や他の新型コロナウイルス変異株が予定していた正常復帰を脅かす中で、AlphabetのCEOであるSundar Pichai (サンダー・ピチャイ)氏は同社のニューノーマルについて明らかな見解を示した。Google Keywordブログにも掲載された従業員に宛てたレターの中で、ピチャイ氏はGoogleの社屋で働く従業員はワクチンを接種する必要がある、と述べている。

「数週間内に米国でこの規則を導入し、今後数カ月で他の地域にも拡大します」とピチャイ氏は述べた。「導入は地域の状況と規則によって異なり、ワクチンがその地域で広く利用できるようになるまでは規則は適用されません」。

問題を複雑にしているのは2番目のポイントだ。デルタ株の流行により同社の在宅勤務は10月18日まで延長された一方で、その日以降ワクチンを接種していない従業員がどうなるのかについてはまだ完全に明らかではない(新型コロナによるさらなる在宅勤務措置の延長はないと仮定して)。ワクチンを接種していない人はGoogleのオフィスやリモートで働くことができないかもしれない。

しかしピチャイ氏のレターは「健康上の理由、その他考慮すべき理由」があるワクチン未接種者向けの特例に言及している。Googleはそうした特例を何に適用するのかについて明確にしていない。

「特異な状況にある人のために、2021年末まで自宅から働くことを申し込める、拡大した一時的な労働オプションを間もなく共有します」とピチャイ氏は書いている。「また、育児や介護をしている人のためにExpanded Carer’s Leave(育児・介護者の一時休職)を年末まで延長します」。

Apple(アップル)などの他のテック大企業もまた、新型コロナ感染の高まりを受けて規制が導入される中で、オフィスに戻る計画を後ろ倒しにし、小売店舗でのマスク着用を義務付けた。Facebook(フェイスブック)を含む他の企業は元々決めていた秋再開の計画を維持している。

「専門家のガイドラインには、デルタ株を含む新型コロナ変異株の予防にワクチンが極めて効果的であると書かれています」とソーシャルメディア大企業Facebookの広報担当はつい最近ウォールストリートジャーナル紙に述べた。「オフィスを再開するという我々のタイムラインに変更はありません」。

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画像クレジット:Sundry Photography / Getty Images

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(文:Brian Heater、翻訳:Nariko Mizoguchi

【コラム】プライド月間の6月を終えて、テック業界のステレオタイプな男性的文化との戦い

「ゲーム」と呼んでいるものを始めたのは4歳のときだった。学校でコスプレの時間があり、衣装箱に駆け寄った私の肩を先生が掴んだ。先生は私の顔を見てこう言った。「これは女の子の衣装。男の子の衣装はあっちだよ」。

私は何が悪いのかわからず困惑した。ただ「ああ、世の中にはルールがあるんだな」と思ったのを覚えている。その瞬間から、私は多くの人が参加しているゲームのルールに従うようになった。学校や職場、社会全体で何が許容され、どのように振る舞うべきかを規律する、不文律のゲームだ。

私はこのゲームに従い、自分の「ゲイらしさ」を抑えてきた。20代でカミングアウトした後でさえも。仕事を始めたばかりの時は特にそうだった。初めて参加する会議やビジネスの取引があるたびに、どの部分が「OK」で、どの部分が人を遠ざけるのか、線引きはどこなのかを常に先読みしていた。

そういう意味では、私が拠り所とするテック業界に蔓延しているステレオタイプの男性的な「ブログラマー」文化は、私にとって大きな驚きではない。誰もが自分の核となるアイデンティティを隠そうとして、集団の型に合うように必死でエッジを削っていれば、少数派の声がかき消されるのは必然だ。この図式から得られる結果はこうだ……大きな変革を起こす者が集うはずの、イノベーションの艦隊であるはずのシリコンバレーは委縮していく。

プライド月間と先日行われた祭典は、ブログラマー覇権主義に対する解毒剤になる。虹を象徴とするプライドは、自由であり、真実であり、何にも縛られないすべての者の豊穣の角(豊かさの象徴)である。プライド月間が終わりに近づいた今、私の最大の希望は、プライド月間だけが持つ偏見のないエネルギーで、さらに意義のある変化を引き起こすことである。

まず自分のチームのために行動する

私はプライドとそれにともなう意義深い行動を心から愛しているが、一部のブランドが形だけの行動をしていることは否めない。企業がマーケティングのためにレインボーフラッグを利用し、必ずしも自分たちの身近なところで具体的な変化を起こさないという「パフォーマティブ・アクティビズム(流行に合わせて表面だけのアクティビズムを行うこと)」が増加している。口先ではプライドを支持しながら、裏では反トランスジェンダー法案を推進する政治家を支援する企業も増えている。

もしあなたが職場の多様性に真剣に取り組むリーダーであれば、まず自分のチームを支援できるように内部に目を向けよう。従業員が、性別、人種、性的指向、さらには服や音楽の趣味といった付随的な属性に関係なく、十分に満足していられる文化を作るにはどうすればいいだろうか。

2019年に行われたイェール大学公衆衛生大学院の調査によると、レズビアン、ゲイ、バイセクシャルを自認している人のうち、推定83%が日々の生活で自分の性的指向をすべての他人、またはほとんどの他人に秘密にしているという。

この抑圧は職場ではさらにひどくなる。テック業界では特に顕著で、無数の差別的行動が日常茶飯事となっている。職場向けの匿名チャットアプリ「Blind」の調査によると、LGBTQの技術系社員の約40%が、職場で同性愛者差別やハラスメントを目撃したことがあると回答している。

多様性に関する年次報告書によると、大手テック企業では、他の業界に比べて女性や過小評価グループ(ある集団において、全世界における人口比よりも小さな割合しかもたないグループ)の雇用が非常に少ないこともわかっている。#SiliconValleySoWhiteというハッシュタグで共有されている何千何万もの個人的な体験談にもあるように、この業界では日常的に、文化的に少数派のグループに属する人を「ダイバーシティ採用」と称して、給与や昇進などあらゆる面で差別を行っている。さらに、Bloomberg Technologyのキャスターであり、著書「Brotopia」でシリコンバレーの男性優位主義の文化を暴いたEmily Chang(エミリー・チャン)は、この業界は女性を疎外するように仕組まれていると話す。

これらの問題は簡単に解決できるものではないが、私は「自分らしさ」がその解決に重要な役割を果たすと信じている。私の「ゲーム」を終了するときが来たのだ。人からの評価を気にせず、自分の好きなように仕事ができることを知ったとき、私はその自由をとても甘美なものに感じた。何年にもわたって、自分でもよく理解せずに、絶え間ないループの中で疲弊しながら自分を偽ってきた後、私はCEOになり、私は自分がなりたいと思っていた人物になることができた。カリフォルニアのテック業界に精通し、出世すればするほど、私は私であることに自信を持てるようになった。

しかし、自分の会社を所有しなければ、自分自身を完全に表現することはできないと思う必要はない。調査によると、自分を表現しないことによる代償は、個人の自由だけでは済まないことがわかっている。近年では多様性に関する意味のある対話が行われるようになったとはいえ、私たちが働く世界は圧倒的に画一的(一面的)だ。自分の本来の姿を明らかにすることができない、あるいはしようとしない人々であふれている。

他者の理解と「弱さの共有」の力

技術系のリーダーである私たちが、本腰を入れて自分らしさの表現の問題を掘り下げることができなければ、私たちの業界に蔓延している「ブログラマー」文化を排除することは不可能だ。

「ブログラマー」文化が蔓延した環境では、誰もが恐怖、疲労、不安を抱くだけではなく、収益にも影響が生じる。幸福感を持つ従業員は生産性が高く、多様性のある経営陣を擁する企業では、収益性、創造性、問題解決能力が高いという事実は、研究で明らかになっている。仕事中に本来の自分でいられるという自由は、成功と達成感につながる。

それでは、技術系のCEOや経営陣は、どうすればこれを実現できるだろうか?私は、二面的なアプローチが必要だと考える。まず、自分らしさの表現に向けた取り組みを、ポリシーとして制定する。リーダーはチームに、従業員が自分らしさを最大限に発揮して仕事を行えるようにするという責任を持たせる。つまり、従業員全員に、組織内のすべての声を聞くという責任を与えるのだ。

GumGum(ガムガム)では、STRIDE(Seeking Talent Representation Inclusion Diversity & Equity:包括性、多様性、平等性を持つ自己表現の追求)評議会を設置している。評議会のメンバーは、社内のすべての部門、拠点、職責から構成されていて、日々の業務の一環(有給)として、社内の多様性と包括性を向上させるための具体的な提案を行っている。

職場における自分らしさの表現を可能にするには、無意識の偏見に関するトレーニングも不可欠だ。私がキラキラしたショートパンツとクロップトップを着て街を歩いていたら、周りの人は好意的かどうかにかかわらず、私の選んだ服装に何らかの反応を示すだろう。このような潜在的な判断を意識することは、偏見を抑制するための第一歩であり、職場での意思決定に偏見がどのように影響するのかを理解することにつながる。

第二に、ビジネスの真正性を追求するのはCEOや上級管理職の役割であり、彼らが模範となる能力を持つことだ。今日のキャンセルカルチャー(ボイコットの形式の1つ。ある人物を仲間や仕事上の仲間から追放すること)によって、リーダーたちは、自分たちの行動を律し、プロとしてミスのないようにすることに過敏になっているように思われる。

もちろん、時と場所に応じたプロフェッショナリズムは必要だが、私は常に、CEOとして可能な限りオープンであることを心がけている。自分の個性のあらゆる要素、他人にジャッジされ、好ましくないと思われるような要素にも光を当てるのだ。私がかつてアイデンティティを隠そうとして苦慮していたが故の決断である。かつて私が抱えていた、ゲイであることの恐怖は、今では本当の自分を見せるための起爆剤となっている。私は、私の周りの人にも同じことをしてもらいたいと考えている。

ある種の人たちだけが活躍できるテック企業のブロカルチャーを醸成したいと思う人はいないだろう。しかし、それを口にするだけでは十分ではない。まずは、人と違っていてもいい、どのような違いがあってもいい、ということを表すことから始める必要がある。例えば私は派手なファッションが好きなので、Zoomのミーティングに空色の帽子をかぶって出席することを躊躇わない。これがCEOとしての私の表現方法だ。

このような姿を見せることに恐怖心があるなら、恐怖をオープンにすることも重要だと思う。私たちはCEOとして、自分の弱さ、アイデンティティへの苦悩、隠しておきたい自分の秘密の部分を共有すべきだ。失敗を認めることも同様だ。CEOもただの人間であり、自分らしさの表現を目指すのであれば、その人間性も晒すべきだ。

「自分の弱さを批判されることなく話を聞いてもらえる」という土壌を作ることも必要だ。面接や新しいプロジェクトに取り組む際、私が社員に尋ねるお気に入りの質問に「何に対して恐怖を感じているか?」という質問がある。

恐怖心は誰にでもある。この質問に対する答えで、その人の傷つきやすい部分に触れることができる。その人は、失敗したり、間違った決断をしたり、何かの拍子に問題を引き起こしたりすることを恐れているかもしれない。そのような感情に触れることは、自分らしさを完全に表現することを認める良い方法である。

テック企業の転換点

プライド月間は、受容と存在の自由をめぐる幅広いストーリーの一部である。この価値観を十分に実践せずに、周りがやっているからといってレインボーフラッグを掲げる企業は、偽善的であるだけでなく、自らを損なっている。プライドは収益の機会ではないし、たとえそうであったとしても、中身のないメッセージを発信するだけのブランドはチャンスを逃がしている。

体よく飾られたLGBTQ+プライドの下には、プライド運動が支持する価値観を緊急に必要としているたくさんの職場環境がある。その価値観を日々の仕事で実現していくことは、並大抵のことではない。しかし、職場での「あるべき姿」から脱却できるようにすることは、(遅きに失した)変化のための重要な出発点となる。

私は、本当の自分を隠すことは恥ずべきことだと考え、他の人がそのような経験をしないように努力している。私は今、若い頃には考えられなかったほど自分らしく仕事をしていて、その小さな行動が、同僚たちにも影響を与えている。際限ない駆け引きを止め、本当の仕事を始めることができるとすれば、それはビジネスにおける自分らしさの在り方をともに探究し始めたときだけだ。

編集部注:本稿の著者Phil Schraeder(フィル・シュレーダー)氏はコンテクストインテリジェンスに特化したグローバルテクノロジー&メディア企業であるGumGumのCEO。

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(文:Phil Schraeder、翻訳:Dragonfly)

米議会襲撃の暴徒に「顔を使って」ノートPCのロック解除を裁判所が命令、生体認証に黙秘権使えず

ワシントンD.C.の連邦判事は、米国連邦議会議事堂で2021年1月6日に起きた暴動に参加した罪に問われている男性に対し、彼のノートパソコンに反政府暴動未遂の罪を明らかにするビデオ映像が入っている可能性が高いと検察側が主張したため、「顔により」ノートパソコンのロックを解除するよう命じた。

Guy Reffitt(ガイ・リフィット)容疑者は、暴動に参加してから3週間後の2021年1月下旬に逮捕され、以来、刑務所に収監されている。彼は、国会議事堂敷地内への銃器の持ち込みや司法妨害罪など、5つの連邦容疑に対して無罪を主張している。WindowsノートPCはFBIが押収した複数のデバイスのうちの1つで、パスワードで保護されていたが、レフィット容疑者の顔を使ってロックを解除できたと捜査当局は述べている。

検察によると、このノートパソコンには、暴動の一部を記録するために使用したとされるレフィット容疑者のヘルメット装着型カメラの映像が数GB単位で入っていたことが、科学捜査の結果から判明したという。検察側は、パソコンのロックを解除するために、レフィット容疑者がパソコンの前に座ることを強要できるかどうか裁判所に尋ねていた。

レフィット容疑者の弁護士は、依頼人はパスワードを「覚えていない」と裁判所に伝えていたが、裁判所は検察を支持し、容疑者の生体認証を強要する申し立てを認めた。レフィット容疑者の弁護士は、裁判所の命令を最初に報じたCNNに対し、ノートパソコンのロックが解除されたことを明らかにした。

政府は、憲法修正第5条の抜け穴を利用したことになる。憲法修正第5条は、米国内の誰にでも黙秘権を認めており、パスワードなど、自己負罪となるおそれがある情報を提供しない権利もそれに含まれている。しかし、一部の裁判所は、これらの保護はパスワードの代わりに使用できる人の身体的属性、例えば顔面スキャンや指紋などには及ばないと判断している。

レフィット容疑者の起訴状では、FBIはそのように述べており、コンピュータの前に座ることで同氏にコンピュータのロックを解除することを強要しても、「被告人の自己負罪に対する憲法修正第5条の権利には抵触しない」と主張している。

全米各地の裁判所は、修正第5条の解釈と、それが個人のバイオメトリクスの強制使用に適用されるかどうかについて、まだ意見が分かれている。米国最高裁がこの問題をすぐに取り上げることはないだろう。最高裁は、この問題を裁定するための請願をここ2年の間に2度却下しており、その結果、適用は各州の判断に委ねられている。

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画像クレジット:U.S. Courts / supplied

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

中国が「冷却水いらず」な実験用原子炉による9月実験開始を計画、2030年に商業用原子炉の建設を予定

Thorium pellets. Pallava Bagla/Corbis via Getty Images

中国政府の科学者は、世界初をうたう、冷却のための水を必要としない実験用原子炉の計画を発表しました。来月にも原子炉は完成し、9月から最初の実験が開始される予定です。中国はこの実験炉での実験がうまくいくならば、早ければ2030年に最初の商業用原子炉を建設する予定。そしてその後は水が必要ない利点を活かして砂漠や平原地域にこの原子炉を置き、さらには「一帯一路」構想に参加する国にも最大30基を建設する予定だとしました。

中国人民政治協商会議(CPPCC)の常任委員、王守軍氏は、CPPCCのウェブサイトに掲載された報告書で「原子力での『進出』はすでに国家戦略であり、原子力の輸出は輸出貿易の最適化と、国内のハイエンドな製造能力を解放するのに役立つ」と述べています。

この構想の原子炉が大量の水を必要としないのは、燃料にウランではなく液体トリウムを使う溶融塩原子炉だからです。この原子炉ではトリウムを液体のフッ化物塩に溶かし込み、600℃以上の温度で原子炉に送り込みます。原子炉の中で高エネルギーの中性子が衝突することでトリウムがウラン233に変化し、核分裂の連鎖反応を開始します。こうしてトリウムと溶融塩の混合物が加熱され、それを2つめの炉室に贈ることで大きなエネルギーを抽出、発電に利用します。

溶融塩は空気に触れれば冷えて固まります。そのため、万が一漏洩があったとしても、核反応は自然におさまり、トリウムが外界に漏れ出ることもほとんどないとのこと。またトリウムはウランに比べて核兵器への転用が難しく、また安価で入手しやすいという点もメリットとされます。

この溶融塩原子炉の試作機を開発した上海応用物理研究所によれば、計画は中国が2060年までにカーボンニュートラルを実現するという目標の一環とのこと。2019年の米調査会社の報告によると、世界の炭素排出量の27%が中国が占めています。これは他の先進国全体を合計しても届かない数値であり、世界からの厳しい目が中国に向けられています。

溶融塩原子炉のアイデアは新しいものではなく、1946年に米空軍の前進組織が超音速ジェット機を開発するときに考えられました。しかし、その後の開発においては溶融塩のあまりの温度に配管が耐えられなかったり、トリウムの反応がウランに比べて弱いことから、結局ウランを添加しないと核分裂反応が持続させられないといった技術的なハードルを解決できず、研究は中止されました。

ちなみに、米国では6月に資産家のビル・ゲイツ氏とウォーレン・バフェット氏が出資する企業が「ナトリウム高速原子炉(SFR)」という新しい原子力発電方式の実証炉をワイオミング州の石炭火力発電所に建設することを発表しています。こちらは仕組み的には日本がかつて研究開発していた高速増殖炉「もんじゅ」の方式を発展させた方式のものとされます。

原子力発電というと、われわれ日本人はどうしても福島の原発事故や、広島・長崎の原爆投下を思い出し、放射能流出が心配になりがちです。化石燃料を使った発電から再エネへの積極的な転換を目指す大きな流れもあるなか、米中という大国が従来より安全とはいえ新たな原子力を開発し、これを推進するなら、その先の世界がどうなっていくのかは気になるところです。

(Source:LIve ScienceEngadget日本版より転載)

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スポーツ庁がオープンイノベーション推進プログラム「INNOVATION LEAGUE 2021」参加企業を募集中

スポーツ庁がオープンイノベーション推進プログラム「INNOVATION LEAGUE 2021」参加企業を募集中

スポーツ庁は7月20日、SPORTS TECH TOKYOと共同で世界規模のスポーツテック・アクセラレーション・プログラム「SPORTS TECH TOKYO」と共同でスポーツオープンイノベーションプラットフォームの構築推進を目的としたプログラム「INNOVATION LEAGUE(イノベーションリーグ)2021」の開催を発表した。これは、スポーツビジネスの「拡張」を目指す「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」と、スポーツから生まれる可能性を讃える「INNOVATION LEAGUE コンテスト」で構成される。エントリーはすでに開始されている。

INNOVATION LEAGUE アクセラレーション

INNOVATION LEAGUE アクセラレーションは、「スポーツ周辺領域のテクノロジーとスポーツ協会・団体が持つ課題やアセットを掛け合わせることでアイデアを創出し、スポーツビジネスの拡張を目指すプログラム」とのこと。つまり、スポーツの事業化をテクノロジーを活用して広げようという主旨だ。今回は、日本フェンシング協会とジャパンサイクルリーグがコラボレーションパートナー(実証連携団体)として参加し、それぞれが「コラボレーションテーマ」を提示している。

プログラム概要

  • 募集企業:スタートアップから上場企業まで、事業ステージは一切問わない。応募時点で法人化されていない団体・チームでも応募可能。第三者の出資を受けている場合や、他社主催の同種プログラムに参加している場合でも応募可能。未成年者の場合は親権者から事前の同意が必須
  • 応募期間:7月20日から9月12日午後11時59分
  • 採択社数:5〜6社予定
  • 応募方法:「INNOVATION LEAGUE 2021」プログラム説明会(オンライン・Zoomウェビナー)に申し込む体裁となっている。またRelic提供のイノベーションマネジメント・プラットフォーム「THROTTLE」アカウント作成が必須
  • プログラムからの採択企業に対する投資はない。応募にかかる費用は応募者が負担

日本フェンシング協会」コラボレーション テーマ

  • 課題:これまでフェンシング協会がチャレンジしてきた領域に留まらず、フェンシングの深い魅力を起点に、フェンシングの面白さをより多くの人に伝達する
  • テーマ:試合における「緊張感」と「先進性」を拡張させる新たな観戦体験の設計。フェンシングファンとのエンゲージメントを深めるアプローチ開発。これまでフェンシングとの接点がない生活者も気軽に楽しめるフェンシング体験の開発

ジャパンサイクルリーグ」コラボレーションテーマ

  • 課題:自転車ロードレースの魅力は、自転車競技経験のある「アスリート層」以外には伝わりにくい現状
  • テーマ:自転車競技を語りやすい、語って楽しい競技にするテクノロジー(公道・競輪場などのレース双方を対象)

スポーツ庁は、このプログラムに参加するメリットを次のように掲げている。

  • 競技団体や事業会社との事業共創機会の提供
  • 起業家や各業界のプロフェッショナル、「INNOVATION LEAGUE アクセラレーション」に参画する事業開発経験豊富な有力メンター陣によるメンタリング機会の提供
  • SPORTS TECH TOKYOの広域なネットワークへのアクセス
  • キックオフ、デモデイなどプログラム期間中のイベントを通じた露出機会拡大
  • スポーツ庁とのネットワーク構築機会
  • プログラムをサポートいただく幅広い企業・団体とのネットワーク構築機会

予定スケジュールは次のとおり。

  • 2021年8月11日14:00から:「INNOVATION LEAGUE 2021」プログラム説明会。オンライン(Zoomウェビナー)
  • 9月下旬:一次審査で10~20社程度を採択
  • 10月上旬〜中旬:競技団体との面談セッション
  • 10月下旬:採択企業の通知
  • 11月上旬:キックオフイベント(都内またはオンラインでクローズド形式)の開催
  • 11月上旬〜2月:共創プログラム期間(都内またはオンライン)
  • 2月中旬:デモデイの開催

INNOVATION LEAGUEコンテスト

INNOVATION LEAGUE コンテストは、上記プログラムと同じ主旨のもと、「スポーツの価値やスポーツビジネスの可能性を拡大する新しい取り組み・優れた取り組みを表彰」するというコンテスト。日本国内を拠点とする企業、スポーツチーム、競技団体、個人が、国内で2021年に実施した(または実施中の)取り組みが対象となる。応募期間は7月20日から12月10日午後11時59分まで。結果発表は2022年2月上旬を予定している。なお、最終審査では応募者によるショートピッチ(数分程度の短いプレゼンテーション)を予定。

説明会と申し込みに関する詳細はこちら。

コンテスト概要

  • 対象となる取り組み:2021年1月1日〜応募時点までに実施したもの、もしくは現在実施中のもの。2021年1月1日以前に終了している取り組みは対象外。国から委託費を受けた取り組み(成果が原則として国に帰属するもの)は応募できない。ただし、補助金、交付金などを受けた取り組み(成果が事業主体に帰属するもの)は応募可能
  • 応募資格(企業・団体など):国内に拠点を置く企業、競技団体・スポーツチーム、NPO・NGO、地方自治体などが応募可能。共同・連名での応募も可能だが、国内に拠点を置いていること
  • 応募資格(個人):国内在住であること。年齢不問で、学⽣の応募も行える。共同・連名での応募も可能だが、代表応募者が国内在住であること。18歳未満の場合は親権者から事前の同意が必須
  • 募集期間:7月20日から12月10日午後11時59分まで
  • 応募件数:同じ内容の重複応募でなければ、複数応募も可能
  • 応募シート:「応募シートはこちら」より応募シートをダウンロードし必要事項を記入する。応募内容は、応募シートの規定枚数(スライド2枚)に収める必要がある。3枚目以降は提出しても審査対象外となる
  • 応募方法:Relic提供のイノベーションマネジメント・プラットフォーム「THROTTLE」アカウント作成が必須。規定応募シートに必要事項を記入した上で、「THROTTLE」の応募フォーム画面よりエントリーを行う

表彰内容は次のとおり。

  • イノベーションリーグ大賞:スポーツが持つ産業拡張力を強く感じさせる取り組み
  • ソーシャル・インパクト賞:スポーツを社会課題の解決に活用している取り組み
  • アクティベーション賞:スポンサーシップ活用の先進的取り組み
  • パイオニア賞:スポーツの世界が強いられている変化・困難を乗り越えるためのチャレンジ

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米民主党、反ワクチンの陰謀論を後押しするSNSの保護を停止する法案提出

2人の民主党上院議員が米国7月22日に提出した法案は、ソーシャル・メディア・プラットフォームが反ワクチンの陰謀論やその他の種類の健康に関わる誤まった情報を後押しするなら、プラットフォームが頼りにしている責任の盾を取り上げてしまおうというものだ。

Amy Klobuchar(エイミー・クロブチャー)上院議員(民主党、ミネソタ州)とBen Ray Luján(ベン・レイ・ルハン)上院議員(民主党、ニューメキシコ州)が提出した「Health Misinformation Act(健康誤情報法)」は、通信品位法(Communications Decency Act)第230条に新たな除外規定を設け、アルゴリズムによって宣伝された健康に関する誤った情報や陰謀に対してプラットフォームが責任を負うようにする。プラットフォームは第230条により、ユーザーが作成し、プラットフォームがホストする膨大な量のコンテンツに対する法的責任から守られている。

「あまりにも長い間、オンラインプラットフォームは米国人の健康を守るために十分な努力をしてきませんでした」とクロブチャー氏は話す。「こうした企業は世界でも有数の大金持ちであり、致命的なワクチンの誤情報が広がるのを防ぐためにもっと努力しなければなりません」

この法案では、第230条の文言を具体的に変更し、「インタラクティブ・コンピューター・サービスにより作成または展開された健康に関する誤った情報」がアルゴリズムによって増幅された場合には、責任保護を取り消すとしている。この例外案は、新型コロナウイルスの出現のように、国家的な公衆衛生上の危機が宣言された場合にのみ発動し、平時は適用されない。この法案では、健康誤情報の定義を保健福祉省(HHS)の長官に委ねることになっている。

法案には「テクノロジープラットフォームに組み込まれている機能が誤情報や偽情報の拡散を助長している。ソーシャルメディアのプラットフォームでは、個人がコンテンツをシェアして『いいね!』やコメントなどにより肯定的なシグナルを得るインセンティブが働く。正確であることよりも参加することが報われる」とある。

この法案では「偽情報の12人」にも言及している。このレポートによると、反ワクチン活動家のRobert F. Kennedy Jr.(ロバート・F・ケネディ・ジュニア)氏やその他の陰謀論者を含むたった12人が、反ワクチンの偽情報エコシステムの大部分を説明している。リストに載った人物の多くは、Twitter(ツイッター)やFacebook(フェイスブック)などのソーシャルメディアで依然として自らのメッセージを公然と発信している。

第230条を擁護する人々は、この法律に新たな例外を設けることは危険だと考えている。同条は、YelpやRedditからこの記事の下にあるコメント欄に至る全てを可能にしている現代のインターネットの根幹をなす部分であり、予期せぬ二次的な影響が生じる可能性があることから、この法律はそのままにしておくべきだと主張している。

しかし、民主党、共和党を問わず、議会の一部の議員は、大手ソーシャルメディア企業を規制するために、同条を貴重な手段だと考えている。ホワイトハウスは、司法省やFTC(米連邦取引委員会)を通じて肥大化したハイテク企業に影響を与える独自の方法を検討しているが、バイデン氏のオフィスは今週初め、大統領も同条を「検討している」と述べた。しかし、トランプ元大統領も気づいたように、同条を弱体化させることは議会だけが成し遂げられる仕事であり、それさえもまだ望み薄だ。

最近、新型コロナの誤情報への対応をめぐってバイデン大統領と議論を戦わせたFacebookは、民主党の新法案について曖昧ながらも協力的な姿勢を示した。Facebookの公共政策担当副社長のKevin Martin(ケビン・マーティン)氏は、「健康関連の誤情報に関する困難かつ緊急な問題をはっきりさせることは有益であり、議会や業界と協力して改革のための選択肢を検討することを楽しみにしています」と述べた。

民主党の新法案は、第230条の改正案としてはかなり的を絞っているが、超党派の支持は得られそうにない。共和党は、大企業の責任保護の一部撤廃に関心があるものの、一般的には、プラットフォームが削除するコンテンツの数が少なすぎるのではなく、多すぎるという見解だ。また、共和党は自らが新型コロナワクチンに関する誤った情報を流す可能性が高く、ワクチン接種を党派的な問題に仕立て上げている。この法案が通るかどうかはともかく、驚くべき数の米国人がワクチンを接種するつもりがないことは明らかだ。より感染力の強い変異種が増え、寒い季節が近づいているにもかかわらず。

「ワクチン未接種者の間で新型コロナの感染者数が増加するにつれ、ソーシャルメディア上でワクチンにまつわる誤った情報が増えています」とルハン氏は第230条の変更案について述べた。「命が危険にさらされているのです」。

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画像クレジット:ADEK MICA/AFP / Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

バイデン大統領はグーグル批判者を司法省の反トラスト部門のリーダーに起用

バイデン政権は米国時間7月20日に、強力なテクノロジー企業に政府が手綱を付ける手段の第3弾として、これまで巨大テクノロジー企業を熱心に批判してきたテクノロジー評論家であるJonathan Kanter(ジョナサン・カンター)氏が司法省の反トラスト部門を率いることを提案した。

カンター氏は弁護士として、Googleに対する反トラスト訴訟でYelpのような小企業を代表してきた長年の実績がある。現在の彼は自分の法律事務所を持ち、その専門分野は、国や州による反トラストの執行において原告を代弁することだ。

ホワイトハウスのプレスリリースでは、「その経歴を通じてカンター氏は一貫して、強力で有意義な反トラストの執行と競争政策の推進努力における指導的代弁者でありエキスパートだった」と述べている。革新派はこの指名を祝っているが、バイデン政権の新たな反トラスト鷹派たちの一部は、両方の政党から支持されている。

司法省の反トラスト局のトップにジョナサン・カンター氏が指名されたことは、労働者と消費者にとってすばらしいニュースです。彼は合併企業が市場で力を持ち競争力を強化することをチェックする戦いでリーダーであり続けました。

司法省はすでに、Googleに対する大規模な反トラスト訴訟を遂行している。その訴訟はトランプ氏時代の司法省が起こしたものだが、同社を、その検索および検索広告のビジネスにおける「不法に維持されている独占」で告訴している。指名が認められたらカンター氏は、Googleに対する司法省の大きな訴訟の舵取りを担うことになる。

2016年のThe New York Timeの署名入り論説でカンター氏は、Googleは悪名高くも反競争的な「行動規範書」に依存してその市場支配を維持していると論じている。カンター氏は、無料で広告に支えられたプロダクトをリリースして、結果的に市場の一角において「差別的で排他的な慣行」により競争を制限してきたGoogleの長い歴史を指摘している。

カンター氏は、バイデン政権下で強力な規制者の役割に上り詰めた高名なビッグテック批判者の、最も新しい登場者にすぎない。2021年6月月、バイデン大統領は熱烈なAmazon批判者であるLina Khan(リナ・カーン)氏をFTCの委員長に指名して承認を得た。3月にはバイデン大統領は、もう1人のビッグテック批判者であるコロンビア大学の法学教授Tim Wu(ティム・ウー)氏を、National Economic Council(国家経済会議)のテクノロジーと競争政策の専門補佐として指名した。

これらのどれを見ても、バイデンのホワイトハウスが国とビッグテックとの大きな戦いに臨んでいることを示している。一方、議会は一連のビッグテック法を準備しているが、しかしホワイトハウスは、立法改革の代わり、あるいはそれと一緒に、FTCやDOJを介して独自の規制を揮えるのだ。

MSNBCの最新のコメントでホワイトハウスは、通信品位法の230条も「再検討」している、と認めた。それは、プラットフォームをユーザー生成コンテンツの責任から免除する強力な法律の、ごく一部だ。

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画像クレジット:Photographer:Al Drago/Bloomberg via Getty Images /Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Twitterが音声ツイートに自動文字起こし機能追加、社内にアクセシビリティ専門チームを用意し取り組む

Anadolu Agency via Getty Images

Twitter社は、音声ツイートに自動文字起こし機能を追加したことを発表しました。2020年6月にiOS版アプリに導入された音声ツイート機能ですが、ようやくアクセシビリティ(心身の機能に制約ある人でも、等しくアクセスできて利用しやすくすること)に配慮されたかっこうです。

記事執筆時点では、サポートされている言語は英語、日本語、スペイン語、ポルトガル語、トルコ語、アラビア語、ヒンディー語、フランス語、インドネシア語、韓国語、イタリア語となっています。

これらの言語でしゃべった音声は、キャプション(文字起こし)が自動生成されるようになっています。ただしTwitter社いわく、キャプションの生成にはデバイスの言語設定を使うため、その設定としゃべる言語が食い違っている場合は正確に動作しないとのことです。

文字起こしを見るには、音声ツイートの右上にある「CC」アイコンをクリックまたはタップします。しかしTwitterがテックメディアThe Vergeに語ったところによると、文字起こしは新しめの音声ツイートのみに表示され、古いツイートには表示されないそうです。

音声ツイートが開始された直後、Twitter社は文字起こし機能がないことに対してアクセシビリティ擁護団体から批判を受けていました。が、当時Twitter社内にはアクセシビリティ専門チームがなく、有志の社員がその仕事をしていることが明らかに。その後9月に、アクセシビリティに特化したチームを結成したことが発表されています。

ちなみにTwitter社は、音声チャット「スペース」では文字起こし機能を提供済みです。Twitterは文字ベースゆえに身体的な条件を超えて様々な人々が交流する場となっていますが、それだけにアクセシビリティが強く求められているのかもしれません。

(Source:Twitter Japan。Via The VergeEngadget日本版より転載)

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金属3Dプリント構造物では世界最大級、センサーで痛み具合・交通量が計測可能なステンレス製3Dプリント橋が登場

金属3Dプリント構造物では世界最大、センサーで痛み具合など監視可能な世界初のステンレス製3Dプリント橋が利用開始

MX3D

オランダ・アムステルダムに世界初のステンレス鋼で3Dプリントされた橋がかかりました。この橋はAutodeskと技術協力して開発されたMX3Dソフトウェアを使い、溶接トーチを装着した産業用ロボットアーム4台で、約6か月をかけて”出力”されました。

完成したこの3Dプリント橋の大きさは、全長12.5メートル、幅6.3メートル、ステンレス製の構造部の総重量は4.5トン。これは金属3Dプリント構造物としては世界最大とのこと。

さらにこの橋はただ3Dプリントされたというだけでなく、構造の各所にセンサーが備え付けてあり、橋を渡る人の数やその歩く速度から、振動、歪みなど構造に関する計測データ、さらに温度や大気などの環境要因を測定し、橋のライフサイクルを通して、その構造がどう変化していくかを記録観察可能になっています。

収集したデータは英インペリアル・カレッジ・ロンドンの研究グループが開発した橋のデジタルモデルに適用し解析されて、より大規模で複雑な建築プロジェクトで3Dプリントしたスチール構造物がどう使用できるかを理解する助けになることが期待されます。アラン・チューリング研究所のチームとこのデジタルモデルを開発するケンブリッジ大学のマーク・ジロラミ氏は「古くなった橋の故障を調査すると、それまで見過ごされていた劣化が見つかることがよくあります。常にデータをフィードバックしていれば、早期に問題を見つけ、警告を発してこれらの故障を防ぐことが可能になるかもしれない」と述べています。

また3Dプリントで橋を作ることに関しては、構造の強度が3Dプリント出力する方向に依存することがわかったとし、さらに基本的な強度が圧延鋼と変わらず、方向によってはそれを上回るものだったという意外効果もあったとしました。

数年前までは、デスクトップサイズでなく人が住める大きさの建築物や橋梁といった構造物を作ることはSFの世界の話でしたが、いまやもう、(出力にかかる時間はともかく)実用化の域に来ているようです。

橋の上で発表会を開催。橋を渡った第1号は、同国のマキシマ王妃だった模様

©Rotapool / Remko de Waal
橋の上で発表会を開催。同国のマキシマ王妃が橋について発表し、テープカットを行ったとのこと

(Source:MX3DImperial College London。Via New ScientistEngadget日本版より転載)

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コラム】消費者の同意を取り付けるためだけのプライバシー通知をやめませんか?

編集部注:本稿の著者Leif-Nissen Lundbæk(レイフ-ニッセン・ルンドベック)氏は、Xaynの共同設立者兼CEO。専門はプライバシー保護を目的としたAIだ。

ーーー

「プライバシー」は誰もが気にする言葉であり、大手テック企業でさえもこの問題に取り組んでいる。最近では、Apple(アップル)がiOS バージョン14.5の要(かなめ)として「App Tracking Transparency(アプリのトラッキングの透明性)」というユーザーのプライバシー保護機能を導入した。2021年の初めには、同社CEOのTim Cook(ティム・クック)氏が、プライバシーについて気候危機と同等に言及し、21世紀の最重要課題の1つとしている。

Appleの対応は、正しい方向への強い働きかけであり、強力なメッセージとなっているが、これで十分なのだろうか?表面上は、消費者はアプリによる追跡方法について通知を受け、希望すれば追跡を制限したりオフにしたりすることを選択できる、ということになる。ソ連の風刺作家イリフ=ペトロフの言葉を借りれば「溺れる者を救う方法は、溺れる者自身が知っている」(風刺小説『12の椅子』の「溺れる者は、自分が救え」をもじったセリフ)とでもなるだろうか、歴史的に見ても、あまり良い結果を生む仕組みとはいえない。

今日、ネット上の消費者は、大量に表示されるプライバシーポリシー、Cookieのポップアップ、ウェブやアプリのさまざまなトラッキング許可に、まさしく溺れている。新しい規制はプライバシーの開示に関する同意の収集義務を増やすだけで、これには多くの企業が喜んで応じている。そして企業は情報管理の負担を消費者に押し付けている。消費者側は、大量の情報に1つ1つ目を通すことは合理的、経済的、主観的な観点から割に合わないので、これを盲目的に受け入れるしかない。責任を背負わされた消費者を救う選択肢はただ1つ……プライバシー通知を廃止することだ。

通知は見過ごされている

調査によれば、ネット上の消費者は往々にして「よくある」通知に悩まされている。ネットユーザーの大多数は、ウェブサイトに「プライバシー通知」または「プライバシーポリシー」という文書があれば、その企業は自分の個人情報を収集、分析、または第三者と共有しないはずだと期待している。同時に、大多数の消費者は、トラッキングやプライバシーを無視した広告のターゲットにされることに深刻な懸念を抱いている。

オンラインビジネスやプラットフォームの多くは、消費者に理解してもらうためではなく、消費者の同意を取り付けるために、プライバシーに関する通知やその他のデータの開示を行っている。

プライバシーの二重苦のようなものだ。消費者はプラットフォームを利用するために、プライバシーに関する通知を受け入れる必要がある。同意すると、トラッキングやプライバシーを無視した広告を許可することになる。同意する前にプライバシーポリシーを事細かに読めば、貴重な時間を無駄にすることになり、面倒で苛立たしい。Facebookのプライバシーポリシーが、ドイツの哲学者イマヌエル・カントの「純粋理性批判」のように難読なものだとしたら、それは問題だ。結局のところ、プライバシーに関する通知を拒否するという選択肢は形式的なものに過ぎず、プライバシーポリシーに同意しなければ、プラットフォームにアクセスできない。

このようなプライバシー通知にはどのような意味があるのか?企業にとっては、データ処理を正当化するという意味がある。一般的に、今のようなプライバシー通知は弁護士が弁護士のために作成した文書であり、実際のユーザーの利益は完全に無視されている。このような文言は誰も読まないとわかっているので、意図的に難解な文章にしたり、あらゆる種類のくだらない文章、あるいはおもしろおかしく本音を書き込んだりしている企業もある。

通知の中でユーザーの不滅の魂と永遠の命の権利を主張した企業もあった。一方、消費者にとっては、プライバシー通知への同意を押し付けられるのは面倒なもので、データの安全性について誤った認識を抱かせることにもつながる。

万が一、プライバシーに関する通知があまりにも不愉快なもので、消費者が別のプラットフォームに移動することがあっても、本当の解決策にはならないことが多い。ネット上ではデータの収益化が主流のビジネスモデルとなっていて、個人情報は最終的に同じ大手テック企業に流れる。たとえ消費者が直接的には彼らのプラットフォームを利用していなくても、代替のプラットフォームの多くは、プラグイン、ボタン、Cookieなどで大手テック企業とつながっているのだ。抵抗しても無駄なのだろうか。

旧態依然の規制の枠組み

もし企業が、誰も読まないような不透明なプライバシー通知を意図的に作成しているとして、立法者や規制当局が介入したら、消費者のデータプライバシーを改善することができるだろうか?うまくいったケースは歴史的にも見当たらない。デジタル化が進む前の時代でも、法律家は契約前に多くの情報を開示する義務があり、消費者はアパートを借りたり、車を買ったり、銀行口座を開いたり、住宅ローンを組んだりする際に、大量の書類に記入する必要があった。

特にデジタルの分野では、法律は後手に回り、技術の発展に大きく後れをとっている。EUでは、Google設立から20年、Facebook設立から10年を経て、包括的な法律である「EU一般データ保護規則(General Data Protection Regulation、GDPR)」を制定したが、いまだに横行するデータ収集行為を抑制できていない。これは、より大きな問題の一部にすぎない。今日の政治家や議員はインターネットを理解していないのだ。インターネットの仕組みを知らないのに、どうやって規制するというのか。

米国やヨーロッパの議員の多くは、ハイテク企業がどのように運営され、ユーザーデータでどのように収益を上げているのかを理解していない、あるいは(さまざまな理由で)理解していないふりをしている。議員たちは、自分たちで問題に取り組むのではなく、企業に「明確で理解しやすい」言葉でユーザーに直接通知するよう要求している。これは自由放任主義という名の無責任だ。

このような姿勢のせいで、私たちは、オンラインデータのプライバシー、プロファイリング、デジタル個人情報の盗難といった21世紀の課題に、古代ローマの法論理である「同意」を用いて戦うことを強いられている。ローマ法を非難するわけではないが、マルクス・アウレリウスにはiTunesのプライバシーポリシーを完全に読む必要はなかった。

オンラインビジネスや主要なプラットフォームでのプライバシーに関する通知やその他のデータの開示は、消費者にわかりやすく説明するのではなく、同意を得ることを目的としている。そうすることで、データフローを維持し、プライバシーに関する形ばかりの姿勢を示す機会があったときには、すばらしいアピールができる。とはいえ、消費者はこのでっち上げに気づきつつある。そろそろ変化が必要だ。

企業に真っ当な姿勢を求める声

ここまで、消費者がすべての「法律用語」を理解することは困難であり、理解したとしてもどうしようもないことを説明してきた。また、立法者にはテクノロジーを適切に規制するための知識やモチベーションが足りていないことも指摘した。ネットユーザーの多くが不満と苛立ちを表している今、デジタル企業は自らが行動を起こすべきだ。データプライバシーが21世紀の最大の課題の1つであるならば、一致団結した行動が必要だ。世界中の国々が二酸化炭素の排出量を減らすことを約束したように、企業も団結して消費者のプライバシーを守ることを約束しなければならない。

そこで、大小すべてのテック企業にお願いしたい。プライバシー通知の因習を捨てて欲しい。潜在的な法的請求から自社を守り、ユーザーの個人情報を収集し続けることを目的として、ほとんどの消費者が理解できない文章を書かないで欲しい。消費者に向けた、誰もが理解できるプライバシー通知を書いて欲しい。

文章だけでなく、行動も大切だ。個人データの収集や処理に依存しない製品を開発しよう。個人データの収集や処理に頼らない製品を開発し、インターネットのオープンソースやプロトコルのルーツに立ち返り、大手テック企業や広告主ではなく、自社のコミュニティに価値を提供しよう。これは可能であり、収益性があり、やりがいもある責務である。

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(文:Leif-Nissen Lundbæk、翻訳:Dragonfly)

​防災テック領域スタートアップのSpecteeが鹿児島県薩摩川内市で発生した河川の氾濫・被害状況をAIで解析・可視化

  1. ​防災テック領域スタートアップのSpecteeが鹿児島県薩摩川内市で発生した河川の氾濫・被害状況をAIで解析・可視化

​防災テック領域スタートアップのSpectee(スペクティ)は7月12日、鹿児島県薩摩川内市で2021年7月10日に発生した河川の氾濫による浸水状況について、AIでリアルタイムに解析し地図上にシミュレーションを行ったと発表した。

現在同社では、AIを用いて、SNSに投稿された画像や河川カメラ・道路カメラの映像から浸水深を自動的に割り出し、降水量・地形データなどと組み合わせて統合的に解析することで、氾濫発生から10分以内に浸水範囲と各地の浸水深を2D・3Dの地図上に表示する技術の開発を進めているという。被害状況をわかりやすく可視化することで、災害対応の迅速化に役立てていくことを目指しているそうだ。現在同技術を通じ得られる、各地点における詳細な緯度経度情報や浸水深(推定値)などのデータの提供を行っており、学術研究や企業の実証実験などで利用できるとしている。

7月10日に発生した鹿児島県薩摩川内市を流れる川内川・支流で発生した氾濫についても、開発中のAIによるリアルタイム浸水推定技術を用いて、SNSに投稿された画像を基に、浸水の推定範囲および深さを地図上にシミュレーションを実施した。ただし、掲載した図は同技術に基づいた推定値としており、現在同技術の開発と並行して精度検証を行っているという。

Specteeは、AI防災・危機管理ソリューション「Spectee Pro」を中心に、AIなど最先端技術を活用したビッグデータ解析を通して、災害関連情報や企業のリスク情報などをいち早く提供する他、デジタルツイン技術による被害のシミュレーションや予測などを実施。「危機を可視化する」をスローガンに、すべての人が安全で豊かな生活を送れる社会の創造を目指している。

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バイデン氏がビッグテックの「悪質な合併」阻止目指す大統領令に署名、過去のM&Aにも異議の可能性

バイデン政権は米国経済の一部の寡占化が進む分野、中でもハイテク業界に、大統領令によって強制的に競争を導入する大規模かつ野心的な計画を発表した。

「バイデン大統領は本日、企業統合の傾向を緩和し、競争を促進して、米国の消費者、労働者、農家、中小企業に具体的な利益をもたらすために、断固たる措置をとります」と、ホワイトハウスが公表した今回の大統領令に関するファクトシートには記されている。

バイデン氏が米国時間7月9日に署名したこの大統領令は、連邦レベルで12以上の異なる機関を巻き込み独占を規制し、消費者を保護し、世界最大級の企業の悪行を抑制するという、包括的な「政府一丸」のアプローチを開始するものだ。

このファクトシートの中でホワイトハウスは、大企業を取り締まる問題を連邦レベルで自らの手で解決しようとする計画を掲げている。テック分野に関しては、反トラスト法の施行権限を持つ連邦機関であるFTC(連邦取引委員会)と司法省の力を強めることが主な目的だ。

すでに規制の脅威にさらされているビッグテックにとって最も注目すべき点として、ホワイトハウスはここで、これらの機関は「過去の政権が以前に異議を唱えなかった悪質な合併に異議を申し立てる」法的手段を持っていると明確に主張している。つまり、一握りのハイテク企業を今日の巨大企業に育て上げた過去の買収案件を巻き戻す可能性があるということだ。大統領令は、反トラスト法を「精力的に」執行することを反トラスト当局に求めている。

連邦政府の監視は「支配的なインターネットプラットフォームに焦点を当て、とりわけ新興の競合企業の買収、連続的な合併、データの蓄積、『無料』の製品による競争、ユーザーのプライバシーへの影響などに注意を払う」としている。Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、Amazon(アマゾン)が特にこの警告の矛先だが、Apple(アップル)も連邦政府の注意を免れることはできないだろう。

ホワイトハウスはファクトシートの中でこうも述べた。「過去10年間で、大手テクノロジー企業は数百社を買収しており、その中には潜在的な競争上の脅威を排除するための『キラーアクイジション』と呼ばれるものも含まれている。連邦政府機関は、これらの買収を阻止したり、条件を付けたり、場合によっては意味のある調査さえしなかった場合があまりにも多かった」。

最大手のテック企業各社は、競合他社を買収するという長年の戦略を当時は何の摩擦もなく行うことができたため、後から違法と見なすべきではないと主張してきた。しかし、今回の大統領令は、バイデン政権がそれを認めていないことを明確にしている。

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ホワイトハウスはまた、インターネットサービスプロバイダー(ISP)を具体的に挙げ、消費者の選択を優先し、速度の上限や隠れた料金を明記したブロードバンドの「栄養ラベル」を制定するようFCCに命じている。こうしたラベルはオバマ政権下でFCCが取り組み始めていたが、トランプ大統領の就任後に廃止された。

大統領令はさらに、2017年に撤廃されたネット中立性ルールを復活させることをFCCに直接求めている。ルール撤廃の動きは、オープンインターネットの支持者や、恩恵を受けることになるサービスプロバイダー以外のテック業界のほとんどに広く恐怖を与えたものだった。

また、ホワイトハウスはFTCに対し、FacebookやYouTubeなどの無料サービスが巨大な帝国を築くために利用してきた、監視や「非常に多くのセンシティブな個人情報の蓄積」から消費者を守るための新しいプライバシールールを作成するよう要請する予定だ。ホワイトハウスはFTCに対しさらに、大規模なプラットフォームの寡占により成長を抑制されないよう、中小企業を保護するためのルールを策定するよう求めている。大企業は新進気鋭の競合他社を打ち負かすために、別の形のデータに基づいた監視で市場の優位性を乱用するケースが多いからだ。

最後にこの大統領令は、DIYや第三者による修理を阻害するような制約から消費者を解放する「修理する権利」ルールを導入するようFTCに促している。国家経済会議(NEA)長官の下に新設されたホワイトハウス競争評議会(White House Competition Council)は、新大統領令で示された提案を連邦政府が実行するための調整を行うとのこと。

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巨大テック企業を規制する米国の新たな独占禁止法案の方針

行政府の反トラスト法への取り組みは、FTCや議会での活動と並行して行われている。FTCサイドでは、バイデン大統領はLina Khan(リナ・カーン)氏という恐れられている反トラスト運動家を任命した。カーン氏はAmazonを激しく批判する若い法学者であり、連邦政府が独占を定義する方法を哲学的に見直すことを提案している。同氏は現在、委員長としてFTCを率いている。

米国議会では、テック業界を抑制することを目的とした超党派の法案が、多くのハードルを残しながらも法制化に向けて徐々に動き出している。2021年6月に下院司法委員会は、ハイテク業界のロビー活動に対抗するために別々に作成された6つの法案を審議した。これらの法案は、巨大なインターネットベース企業の現代のリアリティに対応できていない独占禁止法を近代化しようとするものだ。

今回の大統領令について、ハイテク分野の反トラスト法改革を主導しているAmy Klobuchar(エイミー・クロブシャー)上院議員はこう述べている。「米国の独占問題に対処するためには、競争政策に新たなエネルギーとアプローチが必要です。それは、独占禁止法を更新するための法律を制定することを意味しますが、同時に、現行の法律の下で競争を促進するために連邦政府ができることを再考することも意味します」。

ホワイトハウスは、ここ数十年で企業統合が加速していることを挙げ、ひと握りの大企業が医療、農業、ハイテクなどの業界を支配しており、消費者、労働者、中小の競合企業は、それら大企業の過剰な成功の代償を払っていると主張している。バイデン政権は、これらの産業の一角にある企業に対して独占禁止法の執行に力を入れるとともに、労働市場や労働者保護を全体的に評価していくという。

「不十分な競争は、経済成長とイノベーションの妨げとなります。【略】経済学者たちは、競争が減ると、生産性の伸びが鈍化し、企業投資やイノベーションが減少し、所得、富、人種の不平等が拡大すると指摘しています」とホワイトハウスは述べている。

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画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Aya Nakazato)

ニューヨーク市で生体情報プライバシー法が発効、データの販売・共有を禁止

収集した顧客の生体情報データで企業が行えることを制限する生体情報プライバシーの新条例がニューヨーク市で発効した。

米国時間7月9日から、生体情報を収集している企業は(最も一般的な手法は顔認証と指紋だ)データがどのように収集されているかを説明する通知とサインを、顧客が気づくようドアに表示することが求められる。この条例は、いくつか挙げると小売、店舗、レストラン、劇場など、幅広い業種の企業に適用される。また収集した生体情報を販売・共有したり、そうした情報で益を得たりすることも禁じている。

この取り組みは、生体情報データがどのように収集・使用されているのかに関して、ニューヨーク居住者、そして毎年ニューヨーク市を訪れる何百万という人を保護するものだ。一方で、差別的で往々にして機能していないと批評家が批判するテクノロジーの使用を企業に思いとどまらせる。

条例に違反した企業は厳しい罰則に直面するが、違反をすばやく正せば罰金を回避できる。

法律というのは決して完全ではないもので、こうした法律も同様だ。というのも、今回の法律は警察を含む政府機関には適用されないからだ。条例がカバーする企業の中で対象外となるのは、たとえば指紋認証で出退社する従業員だ。また、何をもって生体情報とするかについては、対象範囲を拡大したり狭めたりするという問題に直面することが考えられる。

似たような生体情報プライバシー法は2020年にオレゴン州ポートランドが制定しており、ニューヨークはポートランドに続く最新の例となる。しかしニューヨークの法律は、他の都市の強力な生体認証プライバシー法には及ばない。

イリノイ州は、同意なしでの生体データの使用を訴える権利を住民に保障する法律「Biometric Information Privacy Act」を導入している。許可を得ずに写真に写っているユーザーをタグするために顔認証を使っていたFacebookは2021年、イリノイ州の住民が2015年に起こした集団訴訟で6億5000万ドル(約716億円)を払って和解した。

ニューヨーク拠点のSurveillance Technology Oversight ProjectのエグゼクティブディレクターAlbert Fox Cahn(アルベルト・フォックス・カーン)氏は今回の法律について、ニューヨーカーがどのように地元の企業に追跡されているのかを知ることができるようになるたための「重要なステップ」だと述べた。

「偽の顔認証マッチングは、ニューヨーク市警察がRite AidやTargetへと歩いているあなたに職務質問することにつながるかもしれません」とカーン氏はTechCrunchに語った。同氏はまた、他の都市がすでにそうしたように、ニューヨークが顔認証などのシステムを非合法化することでさらに規制すべきだとも話した。

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nariko Mizoguchi

Evernoteの名前が反政府調査ロビーグループのウェブサイトから静かに消えていた

2013年、いわゆるPRISMプログラムの下、テック企業8社がユーザーのデータを米国国家安全保障局(NSA)に渡していたことを糾弾された。NSAの告発者であるEdward Snowden(エドワード・スノーデン)氏がリークした政府の高度機密書類によって明るみに出た。その6カ月後、そのテック企業らはReform Government Surveillance(政府による情報収集の改革)という名前の同盟を結成。名前が示すように、政府調査に関する法律の改訂を立法者に働きかけるのが目的だ。

狙いは単純だった。立法者に対し、標的となる脅威の監視方法を制限し、米国人の個人データを底引き網的に収集するのではなく、企業に大局的状況を提供し、ユーザーデータ提出に関する一種の秘密命令について、企業が透明性を保てるよう要求することだ。

Reform Government Surveillance(RGS)の創立メンバーはApple(アップル)、Facebook(フェイスブック)、Google(グーグル)、LinkedIn(リンクトイン)、Microsoft(マイクロソフト)、Twitter(ツイッター)、Yahoo(ヤフー)、およびAOL(エーオーエル、後のVerizon MediaでTechCrunchの親会社[今のところ])の8社で、後にAmazon(アマゾン)、Dropbox(ドロップボックス)、Evernote(エバーノート)、Snap(スナップ)、およびZoom(ズーム)がメンバーに加わった。

ところが2019年6月のある日、EvernoteがRGSウェブサイトから説明もなく消えた。さらに奇妙なのは、そのことに2年間誰も気づかなかったことで、Evernote自身でさえ知らなかった。

「当社のロゴがReform Government Surveillanceウェブサイトから削除されていたことは知りませんでした」とEvernoteの広報担当者がTechCrunchのコメント要求に答えて語った。「私たちは今もメンバーです」。

Evernoteは2014年10月に同盟に参加した。PRISMが最初に世間にさらされてから1年半後のことだが、この会社はリークされたスノーデン文書に名前が載ったことがなかった。それでもEvernoteは強力な仲間として、RGSによる行政調査法改訂の要求活動はリークされたNSA文書に名前が載った企業以外からも支持を得ていることを示した。EvernoteはRGSの一員であること、および「政府による個人の監視と個人情報のアクセスを規制する慣行と法律を整備する」努力を支持していることを最新の透明性レポートでも表明している。このことからもRGSウェブサイトから名前が消えた謎はいっそう深まった。

TechCrunchは他のRGSメンバー企業にも、Evernoteが削除された理由を知っているかどうか尋ねたが、返信がなかったかコメントを拒んだか、思い当たらないかのいずれかだった。あるRGSメンバー企業の広報担当者は、さほど驚いていない。なぜなら企業が「業界団体を出入りする」のはよくあることだからと語った。

Reform Government Surveillance同盟のウェブサイト。Amazon、Apple、Dropbox、Facebook、Google、Microsoft、Snap、Twitter、Verizon Media、およびZoomのロゴが並んでいるが同じくメンバーであるEvernoteはない(画像クレジット:TechCrunch)

たしかにそうかもしれない。企業はいずれ自分のビジネスに役立つかもしれないロビー活動によく参加する。政府による情報収集は、シリコンバレーのビッグネームが一致して大義を支持している稀な難問だ。実際、テック企業の中には自社ユーザーに対する政府調査の増加を公かつ積極的に擁護しているところもある。なぜなら自分たちの使っているサービスにプライバシー強化を要求しているのはユーザー自身だからだ。

結局Evernoteが消えた理由は驚くほど穏やかなものだった。

「Evernoteは長年のメンバーですが、過去数年はあまり活動していなかったため、ウェブサイトから削除しました」とRGSの代理を務めているワシントンDCのロビー業者であるMonument Advocacy(モニュメント・アドボカシー)がメールで説明した。「貴社の質問は当組織内に新たな会話を生むきっかけになりました。今後ともお付き合いのほどよろしくお願いいたします」。

MonumentはRGSの設立初期に調査法改訂のロビー活動を行うために雇われて以来、ずっとこの件に関わっている。OpenSecrets(オープンシークレット)の調査によると、同社は2014年以来これまでに220万ドル(約2億4000万円)をロビー活動に費やしている。具体的には、愛国者法、外国諜報活動偵察法(FISA)など議会で検討中の法案を変更するよう議員に働きかけているが、結果はまちまちだ。RGSは、愛国者法に基づくNSAの情報収集を縮小する米国自由法案を支持したが、NSAに米国外在住外国人の情報を収集する権利を与えるFISA第702条に対する反対運動は失敗した。702条は2018年に再承認され6年延長された。

2020年RGSはほとんど活動がなく、大西洋横断データフローの重要性に関する声明を1件発行しただけだった。米国EU間のデータ移動は、テック企業が懸念する最新の重要問題であり、現地当局が監視できないヨーロッパのユーザーはサービスから削除される恐れがある。

声明には「RGS加盟企業は自社サービスを利用している人々のプライバシーを守り、個人データを保護することを約束します」と書かれ、Amazon、Apple、Dropbox、Facebook、Google、Microsoft、Snap、Twitter、Verizon Media、およびZoomのロゴが入っているがEvernoteの名前はない。

同盟の力はメンバーの力そのものであり、ウェブサイトからEvernoteを削除したが今でもメンバーである、というのは結束した企業共同体が高らかに発信するメッセージではない。そもそもテック大企業たちの間で最近見られるものではないが。

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タグ:Evernote透明性Reform Government Surveillance / RGSプライバシー個人情報NSA

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(文:Zack Whittaker、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国のワクチン接種証明アプリ、倫理面でのリスクが潜む中で企業による開発が進む

米国では、新型コロナウイルス感染症のワクチンを接種すると、CDCが発行する小さな紙のカードを渡される。基本的にこのカードが、ワクチン接種済みであることを示す唯一の証拠である。すぐに紛失してしまう可能性もあり、何とも頼りない証拠であるようにも感じるが、米国では今、この紙をデジタル版の証明書に置き換えることが政治的な非難の矢面に立たされている。

それにもかかわらず、多くの企業がこの問題に取り組み「ワクチン接種パスポート」と呼ばれることもある実用的なデジタル形式の証明書を作り出そうとしている。実際のところ、多くの人がワクチン接種パスポートと呼ぶものは、単に、ワクチン接種を受けたことの証明として、スマートフォン上で携帯できるものであり、財布に入れて持ち歩けるカードのことではない。

デジタル形式の証明書については、プライバシーを理由に反対する声も上がっている。他方、この方式を市民的自由にかかわる問題だと主張する声もあり、中には、しかるべきテクノロジーやインターネットに対する公平な利用機会が与えられていないことに関連する、公平性をめぐる問題を指摘する人々もいる。

まだ答えが出ていない倫理上の問題に関して意見の一致が見られないことを受け、フロリダ州ジョージア州をはじめとする一部の州は、少なくとも、州政府のサービス提供に際して提示を義務づけることや、一元型のワクチン接種記録保管システムを構築するために州政府が持つ電子式接種パスポート記録の使用を禁止した。アイオワ州知事は2021年5月、事業者と同州に対し、カードが物理的なものかデジタル形式かにかかわらず、サービスの利用にあたって何らかの証明を求めることを禁止する法律に署名した。

これらのことは、各州の州法や行政命令の間に統一性がないことを示す少数の例にすぎない。統一性がないため、この問題を解決する製品の開発に取り組む企業は従来以上に複雑な状況に直面している。しかし、すべての州がデジタル形式のワクチン接種記録を禁止しているわけではない。2021年6月上旬、カリフォルニア州は、ワクチン接種のデジタル記録を請求するための登録制度を開始した。またニューヨーク州は、ワクチン接種の証明を自分のスマートフォンにダウンロードするための制度を2021年の初めに発表している。こうしたアプローチについては後ほど詳しく取り上げる。

ワクチン接種カードのデジタル化について、明らかな意見の対立があるにもかかわらず実行に移したらどのようになる可能性があるのかを探るため、複数の専門家に話を聞いた。

実務上の問題

感染症と病院疫学などを専門分野とする、ボストンのTufts Medical Center(タフツ医療センター)のShira I. Doron(シーラ・I・ドロン)博士によれば、問題は見かけほど単純ではない。

まず初めに、ドロン博士は、州間で記録保管方法が一貫していないことを指摘した。学校の体育館から薬局、球場まで、あらゆる種類の場所でワクチン接種が行われてきており、接種者にかかりつけの医師がいると仮定して、これらの記録がそのような医師のところまで届いているのかどうかは定かではない。

「(ワクチン接種が開始された)12月15日から(集中型記録保管を念頭に置いて何らかの制度が)展開されていたなら(ワクチン接種パスポートは)うまくいっていたはずです。しかし、そうではありませんでした。ですから、もし今、誰かが担当して、過去に遡ってそのような証明書を発行してくれるのでしたら、そのような制度はうまく行くかもしれません。もちろん、そうすることの倫理性に反対している人も大勢います」とドロン博士は述べた。

ドロン博士にとって、つまるところ、問題は感染率だ。ワクチン接種者の増加に合わせて感染率が低下し、感染率が10%未満に下がったという理由だけでも安全性が高まり、何らかの証明書を必要とする状況がともかくも緩和される可能性がある。「もっと理想を言えば、さらに感染率を下げてワクチン接種率を上げることによって、建物に人が入ってきても心配せずに済むようにすべきだと思います」とドロン博士は述べている。

ブロックチェーンの活用

感染率が望ましい水準よりも高いままである場合や、大学などの事業体が請求を希望している場合、紙のカード以外にワクチン接種証明書をどのように提供するのであろうか。ブロックチェーンを挙げている人々もいるが、このアプローチに異論がないわけではない。ニューヨーク州は、同州のExcelsior Pass(エクセルシオール・パス)という名称のワクチン接種証明書に、IBMのブロックチェーン技術を使用している。しかしプライバシーの重視を唱える人々は、そのような技術を使用することで、個人の医療情報の機密性が危険にさらされるおそれがあると懸念している

IBMのアプローチの考え方は、自分の担当医が利用している医療ポータルや、IBMと提携している自分のワクチン記録の保管場所に行ってもらうというものだ。このポータルには、スマートフォンや携帯電話で写真を撮ってデジタルウォレットに保存できるQRコードが表示される。そのQRコードを何らかの場で提示すると、それが専用のスキャナーアプリケーションで読み取られ、ワクチン接種の証明(または直近の陰性の検査結果)が表示される。最後に、その場で運転免許証などが補助的な本人確認書類として使用され、本人かどうかの確認が行われることになる。

ここで問題となるのは、そもそも、このようなケースでなぜブロックチェーンを使用するのかということだ。IBMのPayer and Emerging Business Networks(支払人・新興ビジネスネットワーク)のグローバルVPであるEric Piscini(エリック・ピシーニ)氏は、主に3つの理由があると述べている。「1つ目は、ブロックチェーンではデータの改ざんが不可能であり、そのことが極めて重要であるという点です。これこそ、ブロックチェーンが使用される(大きな)理由(の1つ)です。2つ目は、これも非常に重要なのですが、そのプラットフォームの分散化によって、(ワクチンに関するすべてのデータを)1カ所だけに集中させないことです。ブロックチェーンではデータが分散化され、さまざまな関係者によって管理されます。【略】3つ目【略】は監査証跡で、これは消費者としての私にとって重要であるだけでなく、私という個人を特定する必要がある『事業体』にとっても重要な要素です」とピシーニ氏は説明した。

しかし、これらはブロックチェーンの使用を正当化するのに十分な理由になるであろうか。Constellation Research(コンステレーション・リサーチ)のアナリストでエンドユーザーのプライバシーを専門とするSteve Wilson(スティーブ・ウィルソン)氏は、ブロックチェーン技術はワクチン接種のデジタル証明に使用するのに適していないと考えている。「基本的に、ブロックチェーンが新型コロナウイルス感染症に関するワクチン接種や検査に何らかの貢献をするとは思えません。ブロックチェーンの目的は、ある一連の事象の順序付けにクラウドソーシングで合意し、その順序を共有の記録に残すことにあります。それによって、ワクチン接種の管理に関する何らかの問題に対処できるとは思えません」とウィルソン氏は疑問を呈する。

問題に対するオープンソースアプローチ

先週、デジタル式のワクチン接種記録アプリを発表したカリフォルニア州は、他の州とは異なる道を進み、Smart Health Cards Framework(スマート・ヘルスカード・フレームワーク)と呼ばれるオープンソースのフレームワークを使用している。このフレームワークは、The Commons Project(ザ・コモンズ・プロジェクト、TCP)という組織により、Oracle、Microsoft、Salesforce、Epicなどを含む、医療分野とテクノロジー分野に優れた組織との幅広い連携を通じて開発された。

ザ・コモンズ・プロジェクトの共同創設者であり、Cornell Tech(コーネル・テック)のシニア・リサーチャー・イン・レジデンスであるとともにWeill Cornell Medicine(コーネル大学医学部)の助教授でもあるJP Pollak(ポラック)氏は、政府がワクチン接種記録を集中型データベースで作成しないことを明らかにして以降、ワクチン接種管理システム自体がかなり分断化されていることもあり、デジタル記録を作成するにはさらに難しい状況になっていると述べている。ポラック氏の組織は、この問題の解決策を生み出すために活動している。

「私たちがザ・コモンズ・プロジェクトで取り組んでいるのは、Vaccination Credential Initiative(ワクチン接種証明情報イニシアチブ)、略してVCIと呼んでいる運営グループです。このグループの主な目的は、うまくいけば将来に標準となる仕様をデザインして提唱することにあります。そのような仕様ができれば、そうしたさまざまなワクチン支給団体すべてが、署名付きの携帯可能な形式で同じワクチン記録を発行できるようになります」とポラック氏は話す。

それは、VCIが開発したスマート・ヘルスカードアプリの形で実現される。「私たちが構築して付け加えた段階は、(ワクチン接種に関する個人の)情報を、私たちがスマート・ヘルスカードと呼んでいるものに変える段階です。基本的には、その情報のすべてが接種者のCDCカードに登録されます。つまり、接種者の氏名、生年月日、接種したワクチンの種類、投与日、ロット番号、接種会場といった情報が登録されるわけです。そうしたあらゆる種類のことがこの証明情報にまとめられ、次にその証明情報に発行者が署名します」とポラック氏は述べた。

今週、カリフォルニア州の他にルイジアナ州も、ザ・コモンズ・プロジェクトが開発した解決策の正式な運用を開始した。ウォルマートは先日、同社を通じてワクチンを接種した人は誰でも、自分のワクチン記録のデジタル版をCommonHealthアプリ(Androidで入手可能)やCommonPassアプリ(iOSまたはAndroidで入手可能)に直接ダウンロードできるようになったと発表している。ウォルマートはまた、ワクチン投与を行っている他の複数の企業が今後数週間のうちに同社の先例に続き、これらの同じアプリを通じてデジタル記録を利用できるようにする予定であることを示唆した。

このアプローチは、必ずしも、テクノロジーの公平な利用機会、プライバシーや、ワクチン接種の証明を示すよう求められることの倫理性をめぐる批判のすべてを解決するものではない。しかし、情報を必要とする人に、その情報をオープンな方法によってデジタルで提供する手段を提供するものであることは間違いない。

居住地の州が選択する方式が何であれ、州が実際に何らかのアプローチをともかくも選択すれば、それに対してひと通りの賛否両論が生じることは避けられない。紙のCDCカードは、ウィルソン氏が指摘するように、外国旅行をする人々が数十年にわたり携帯してうまく機能してきた「イエローカード」と、多くの点で似通っている。

しかし、世界の人口のおよそ半数がスマートフォンを所有し、3分の2が何らかの携帯電話やスマートフォンその他を持つ2021年においては、このような記録がデジタル形式で提供されるようにするのは理に適ったことだと思われる。本稿で取り上げた問題を解決しようとするスタートアップや大企業は、優れた解決策を考え出すこと以上のことをしなければならない。こうした企業は、このようなアプローチを提示することにも意味があるということを、個人、事業者、政府に納得させる方法を考え出すことも必要で、あらゆることの中でそれが最大のハードルであるかもしれない。

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タグ:新型コロナウイルスワクチンアプリプライバシー個人情報アメリカ

画像クレジット:Carol Yepes / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

職場でのハラスメントと孤立感、不屈の精神について4人の女性エンジニアに聞く

女性エンジニアはしばしば、職場やキャリアに関して男性エンジニアは経験しない障害に直面する。なぜなら、エンジニア人口の中で女性は今でも少数派であるためだ。数え方にもよるが、全エンジニア職のうち、女性が占める割合はわずか13~25%である。この偏りが力関係の不均衡につながり、女性にとって有害な職場を作り出している。

この点で非常に有名かつ悪質な事例は、Susan Fowler(スーザン・ファウラー)氏がUber(ウーバー)で経験したものだ。ファウラー氏は2017年2月に投稿したブログ記事の中で、入社初日に上司が社内チャットでセックスに誘ってきたことを暴露した。その後、ファウラー氏はUberでの体験を詳述した回想録「Whistleblower」(邦題仮訳:「内部告発者」)を出版した。

ファウラー氏の辛い経験は、女性エンジニアが職場で対処しなければならないハラスメントにスポットライトを当てることになった。男性優位になりやすい職種であるエンジニアとして女性が直面するハラスメントは、ファウラー氏の身に起きたような露骨なものから、日常的に起きるマイクロアグレッション(明らかな差別に見えなくとも、先入観や偏見を基に相手を傷つける行為)までさまざまだ。

本稿の執筆に際して、以下の4人の女性が自分の直面した試練について語ってくれた。

  • Tammy Butow(タミー・バットウ)氏、主任ソフトウェアリライアビリティエンジニア(SRE)としてGremlin(グレムリン)に勤務
  • Rona Chong(ロナ・チョン)氏、ソフトウェアエンジニアとしてGrove Collaborative(グローブ・コラボラティブ)に勤務
  • Ana Medina(アナ・メディナ)氏、シニアカオスエンジニアとしてグレムリンに勤務
  • Yury Roa(ユーリー・ロア)氏、SREテクニカルプログラムマネージャーとしてコロンビアのボゴタにあるADL Digital Labs(ADLデジタル・ラブズ)に勤務

ファウラー氏もSREとしてUberでメディナ氏(後にUberに1000万ドル[約11億円]の支払いを求めた差別訴訟の原告団に参加した)と同じチームで働いていたことは注目に値する。女性エンジニアの世界がどんなに狭いかを例証していると思う。上記の4人が受けたハラスメントの程度はそれぞれ異なるが、彼女たちは皆、日常的に試練に直面しており、中には精神的にかなり消耗したものもあると語ってくれた。しかし、彼女たちはまた、目の前に立ちはだかるどんな障害でも乗り越えてみせる、という強い決意を示していた。

職場での孤立感

彼女たちがどの職場でも直面した最大の問題は、少数派であるがゆえの孤立感だった。そのような孤立感は、時には自信喪失や居場所のなさという克服し難い感覚につながる場合があるという。メディナ氏は、男性エンジニアたちが意図的あるいは無意識に取った態度によって、職場で迷惑がられていると感じたことが何度もあったそうだ。

メディナ氏は次のように説明する。「私にとって本当につらかったのはマイクロアグレッションが日常茶飯事だったことです。そのせいで労働意欲が低下したり、出勤したくないと思ったり、ベストを尽くしたいという気持ちが薄れたりしました。その結果、自分の自尊心が傷ついただけでなく、エンジニアとしての自分の成長でさえも自分で認められなくなってしまいました」。

ロア氏は、孤立感はインポスター症候群につながる場合があると述べる。だからこそ、エンジニア職にもっと女性を起用し、職場に女性のメンターやロールモデル、仲間を作ることが重要なのだ。

ロア氏は次のように説明する。「チームの中で女性がたった1人という状況にある私たちの前に立ちはだかる障害の1つがインポスター症候群です。職場に女性が1人あるいは数人しかいない場合、これは本当に大変な試練となります。そのような時、私たちは自信を取り戻す必要がありますが、そのためには女性のロールモデルやリーダーの存在が非常に重要なのです」。

チョン氏も、自分と同じ思いをしつつも乗り越える道を見つけた人がいることを知ることは重要だという意見に同意する。

チョン氏は次のように語る。「他の人が自分の職場での仕事や試練、それを乗り越えた方法について真実を話してくれたのを聞いて、私もテック業界で働き続けようという励みを得られました。テック業界を離れるべきか悩んだ時期もありましたが、個人的に話せる人や先例になってくれる人が近くにいて、先ほど話したようなサポートを得られたことが本当に助けになりました」。

バットウ氏は、エンジニアになったばかりの頃、自分がコードを書いたモバイルアプリが賞を獲得した際にとある記事の取材を受けた時のことを語ってくれた。出版されたその記事を見て、バットウ氏は愕然とした。見出しが「Not just another pretty face……(このエンジニアは顔が美しいだけではない……)」となっていたからだ。

「『え、それが見出しなの?』と思いました。記事が出たら母に見せようと楽しみにしていたのですが、見せるのをやめました。私はあのアプリのコードを書くのに膨大な時間を費やしました。どう考えても私の顔は関係ありません。こういう小さなこと、一般的には大したことではないと言われるようなことの多くが、実は小さなマイクロアグレッションなのです」。

不屈の精神で乗り越える

これらすべてのことを経験してもなお、彼女たちはみんな、自信喪失を乗り越えてエンジニアとして成功するための専門的な技術スキルが自分たちにあることを示したいという強い願いを抱いている。

バットウ氏は10代の頃から前述のような誤解と戦ってきたが、そのせいで自分の進みたい道をあきらめることはなかった。「そのような誤解については気にしないようにしました。実はスケートボードをやっていたせいで、周囲の誤った見方に直面することがよくあったんです。同じことですよね。スケートボードに乗りたくて公園に行くと『トリックの1つでもできるのか?』って言われるので、私は『見てて』って答えて、実際にトリックをやってみせていました。同じようなことが世界中のさまざまな場所で頻繁に起きていて、ただひたすらにそれを乗り越えていかなければならない。私もそうです。やりたいことは決してあきらめません」。

チョン氏は、落胆の気持ちに負けたりはしないが、そんな時は、そういうことを話せる他の女性の存在が大きな力になると語る。

チョン氏は次のように回想する。「忍耐したい、あきらめたくないと強く願うと同時に、もう投げ出したいと思ったことも実際はありました。でも、他の人の経験を知る機会を得たり、自分と同じ経験をしている人が他にもいることを知ったり、そのような人たちが自分に合う環境を見つけて試練を乗り越えていくのを見たりしたこと、そして彼女たちに『あなたなら大丈夫』と言ってもらえたことによって、踏みとどまることができました。そうでなければ、テック業界で働くことをやめていたかもしれません」。

女性同士で助け合う

チョン氏のような経験は珍しくないが、チームの多様性が高まれば、少数派のグループ出身のチームメンバーが増えて、お互いに助け合える。バットウ氏がある時点でチョン氏を採用してくれたことが、チョン氏にとっては大きなきっかけになったという。

チョン氏は次のように語る。「他の女性を同じ職場に採用することによってネットワーク効果が生まれます。そして、その効果を拡大していくことができると思います。そうすることによって、変化を作り出したり、自分たちの望む変化を感じたりでき、より居心地の良い職場環境を作ることができます」。

メディナ氏は、テック業界で働くラテンアメリカ系や黒人の人材を増やすことを目指している。特に女子学生や若い女性たちにテック業界への興味を持ってもらうために、同氏はTechnolachicas(テクノラチカス)という団体を設立し、Televisa Foundation(テレヴィサ財団)と提携して一連のコマーシャル動画を制作した。合計6本の動画のうち、3本は英語、3本はスペイン語で制作された。女子学生たちにSTEM(科学・技術・工学・数学)分野でのキャリアの道を進む方法を紹介することが目的だ。

「どの動画も、18歳未満の女子だけではなく、その子に影響を与えうる大人および親、つまり18歳未満の若者たちの成長にとって絶対に欠かせない大人たちを対象に制作されています。若者たちがSTEM分野に興味を持ち、それをキャリアとして選択するよう励ますためにそのような大人たちができることについて紹介しています」。

バットウ氏によると、重要なのは人々のやる気を引き出すことだという。同氏はこう語る。「私たちは、自分たちの経験について話すことによって、他の女性たちにインスピレーションを与えることができればと思っています。そのようなロールモデルの存在はとてつもなく重要です。共感できるロールモデルが近くにいることが実は最も重要であるということは、多くの研究で証明されています」。

彼女たちは最終的に目指していること、それは、エンジニアとして自分のベストを尽くすことに集中できる職場環境を整えるためのサポートを、本稿で紹介したような苦労をしなくても得られるようにすることだ。

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タグ:エンジニアハラスメントインタビュー女性

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(文:Ron Miller、翻訳:Dragonfly)

EUが新型コロナ「デジタル証明書」を本格運用、ワクチン接種や検査陰性を証明

共通のクレデンシャルで個人の新型コロナウイルス関係のステータスを認証する、欧州連合(EU)のデジタル証明書システムの運用が予定通り現地時間7月1日に始まった。

欧州委員会によると、ほぼすべてのEU加盟国がデジタル証明書を発行・認証することができるようになり、欧州経済域のひと握りの国だけがまだ保留中だとウェブサイトにはある。

多くの国がこれより前に証明書発行を開始した。当局は6週間の移行期間を認めている。

欧州委員会は、2億件超の証明書がすでに発行された、と述べた。

証明書発行の案が公になり始めた2021年1月以来、いくつかの名称が浮上した「EUデジタル新型コロナ証明書」は、標準化され世界的にも受け入れられる証明書を提供することで欧州域内における国境をまたぐ移動を促進するのが狙いだ。

EU市民は、証明書がなくても自由に移動する権利をまだ有しているが、共通のクレデンシャルの導入は、証明書保持者に対し隔離といった新型コロナ関連の規制を免除するなど、域内での移動を促進するのに役立つ。

証明書は、承認された新型コロナのワクチンを接種したEU加盟国内の市民、以前新型コロナに感染した人(ゆえに抗体を持っている人)、あるいは最近の新型コロナ検査で陰性だった人に発行される。

「デジタル」証明書と呼ばれているが、紙バージョンの発行も可能だ。デジタル版と同じく、スキャンできるQRコードが記載される。なので旅行しやすいよう証明書を携帯するためにモバイルデバイスを持っている必要はない。

証明書は無料で発行される。

欧州委員会は以前、デジタル証明書の認証プロセスで個人情報が「交換されたり保持されたり」することはない、と述べていた。認証のためのシグネチャーキーは国レベルのサーバーに保存され、証明書がスキャンされたときに一元化されたゲートウェーを介してアクセスされるだけだ。

デジタル証明書に関するEU規則では、加盟国は公衆衛生を守るために「必要かつ見合っている」ステップでない限り、追加の移動規制を証明書保持者に適用することを控えなければならない、と規定している。

規則は1年で失効する。

EUデジタル新型コロナ証明書システムについての詳しい情報はここで確認できる。

関連記事:EUの新型コロナワクチン「デジタルパス」が稼働、ドイツなど7カ国が先行導入

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タグ:EU新型コロナウイルスワクチンヨーロッパ

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

Googleが新型コロナ「デジタルパス」をAndroid標準機能としてサポート、「Google Pay」で接種情報表示可能に

Googleが新型コロナ「デジタルパス」をAndroid標準機能としてサポート、「Google Pay」で接種情報表示可能に

Google

Googleは6月30日(現地時間)、Android端末上で新型コロナウイルスのワクチン接種証明書を保存・表示が可能になったと発表しました。まずは米国で提供され、今後他の国でも提供予定です。

海外では、ワクチン接種を条件にマスクの非着用や経済活動の再開などの規制緩和も行われていますが、そこで問題となるのがワクチンを接種したという証明です。

紙の証明書が発行される場合も、常にそれを持ち歩かなければいけないというのがデメリット。一部では専用アプリ、いわゆるワクチンパスポートなどを利用するケースもありますが、個人情報を含めプライバシーの問題も懸念されています。

このため、AppleはiOSで利用できるワクチンパスポートアプリを、公的な保健医療機関に認められた組織またはその組織と提携する開発者に限定しています。

アップル、「コロナ陰性証明書アプリ」のApp Store提出は信頼できる機関または提携開発者に限定へ

これに対してGoogleは、OSの標準機能としてサポートする形となりました。Google Payで会員カードなどを表示するのに使われるPasses APIをアップデートして対応します。ワクチン接種の情報はクラウドには保存されず、端末内にのみ保存されます。

自分が所有する複数デバイスへの保存も可能ですが、同期はされないため、各デバイスで手動で保存する必要があります。なお、当然ながら、この情報をサードパーティと共有したり、ターゲッティング広告に利用することはないとしています。

これを利用するには、当然ながら医療機関等の情報提供側でも対応が必要です。情報提供側がWeb上に公開しているワクチン接種情報の仕組みをAPIに対応させると、その情報を端末上に保存可能になります。

この機能はセキュリティの観点から、利用できるのはAndroid 5.0以上でPlay Protect認定を受けている必要があり、加えてパスワードやPIN、生体認証などの登録が必要です。なお、Google Payアプリのインストールは必須ではないとのことです。

ちなみに、日本でのワクチン接種証明書は、現在議論が進められており、7月の中旬から下旬を目途に、まずは書面での交付が開始される予定。将来的にはアプリの利用も検討されています。

iPhoneユーザーはどうするのかという問題はありますが、接触確認アプリの場合と同様、AppleとGoogleで歩調を合わせて、利便性の高い仕組みを提供してほしいところです。

(Source:GoogleEngadget日本版より転載)

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