Tencent Musicがワーナーと提携、これで3大レコードレーベルとジョイントレーベルを運営

Tencentの音楽ストリーミング事業が、主要ライセンスパートナーである「3大」レコードレーベル企業との結びつきを強めている。現地時間3月23日、Tencent Music Entertainment(TME)はWarner Music Group(WMG)と新たなジョイントレーベルを設立したと発表した。これは2018年1月にSony Music Entertainmentと、2020年8月にUniversal Music Group(UMG)と開始したのと同様の取り組みだ。

TMEは発表の中で、この提携は「Warner Musicのグローバルなリソースとアーティストのキャリアをサポートしてきた経験、そして中国の音楽とエンターテインメント市場におけるTMEの巨大な影響力」のメリットを活かすものになるだろうと述べている。

UMGとのジョイントレーベルも同様に、国際的なアーティストを急速に成長する中国の音楽市場で展開し、中国のミュージシャンを海外に広めることを狙っている。

TMEとWMGはジョイントレーベルに加えて複数年のライセンス契約にも合意し、10年間にわたる両社の提携をさらに延長した。

TMEは3大レコードレーベルと継続的なライセンス契約を結んでおり、一部では資本関係を構築している。2021年1月にTencentが主導するコンソーシアムはUMGの持株比率を20%に増やした。

TMEは中国で人気のオンライン音楽サービスも運営している。系列の音楽ストリーミングアプリにはQQ Music、Kugou Music、Kuwo Musicがあり、TMEは2020年第4四半期に合計6億2200万人の月間モバイルアクティブユーザーを獲得している。

ただし有料ユーザーの割合は依然として低く、2020年第4四半期では9%が有料ユーザーだ。しかし前年同四半期の6.2%からは増加している。

しかしTMEにはSpotifyなど欧米のストリーミングサービスとは異なる主要な収入源がある。それはソーシャルエンターテインメントだ。このジャンルにはカラオケアプリのWeSingがあり、バーチャルギフトの販売で収益化している。バーチャルギフトとはユーザーが購入して気に入ったパフォーマーに贈るもので、現実世界のファンとアイドルの関係性を再現している。

2020年第4四半期に、サブスクリプションとデジタル音楽販売の売上が4億2300万ドル(約460億円)だったのに対し、ソーシャルエンターテインメントは8億5400万ドル(約930億円)と売上に貢献した。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Tencentワーナーミュージック音楽ストリーミング中国

画像クレジット:TME

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Kaori Koyama)

中国Pinduoduoが年間アクティブユーザー数7.88億人でアリババの王座を奪取

史上初、Pinduoduo(拼多多、ピンデュオデュオ)がAlibaba(阿里巴巴、アリババ)を年間アクティブユーザー数で抜き、中国eコマースの新興企業は5年間で華々しい成長を遂げた。

この節目は、Pinduoduoが中国の発展途上の低層都市のユーザー向けである、という当初の偏見を乗り越えた証でもある。Pinduoduoは、中間業社を排除して低価格の果物と乳製品を販売することで名を成したが、徐々に多様化を進め、大幅割引のiPhoneなど全方位の商品を扱うようになった。

同社は2018年にNASDAQに上場し、Tencent(テンセント)が主要株主・パートナーとなっている。2020年年間アクティブユーザー7億8800万人を記録したことが、発表されたばかりの第4四半期決算でわかった。同年のAlibabaのアクティブユーザーはわずかに少ない7億7900万人だった。

しかし月間アクティブユーザー(MAU)では、Alibabaが2020年12月に9億200万人と大きくリードしている。同月PinduoduoのMAUは7億7200万人だった。

中国サイバースペース最高権威のレポートによると、どちらの企業にもまだ成長の余地があり、中国には2020年現在9億8900万人のインターネットユーザーがいる。

21年前に創業したAlibabaは、売上でPinduoduoを大きく引き離しており、その理由の一部は取引高の多さと盛況なクラウドコンピューティングビジネスにある。Alibabaは12月末締四半期で、2210億人民元(約3兆7080億円)の売上を計上し、対するPinduoduoは2655億人民元(約4兆4540億円)だった。

農産物は今もPinduoduoの中心で、同社は元GoogleのColin Huang(黄峥、コリン・ホアン)氏が設立した。現在ホアン氏は会長に退き、将来同社の「農業プラットフォーム」を成長させる鍵となると彼が信じる食料とライフサイエンスの研究に時間を割いている。

Pinduoduoは、農作物を農家から都会の消費者へと運びたいだけではない。ここ数年、同社はアグリテック(農業テクノロジー)に打ち込んでおり、AI利用農家を促進し、農業従事者が知識を持ったオンラインベンダーになるための教育も行っている。これらの戦略は、中国地方経済を押し上げようとする政府の方針とも一致しており、数億人の生活に影響を及ぼす。

関連記事:アリババのライバルPinduoduoはなぜ中国の農業に投資するのか

このeコマース新興企業には大きな目標がある。2025年までに年間1450億ドル(約15兆8000億円)の農作物を販売することだ。どうやら順調に向かっているようだ。eコマース取引の指標である同社の2020年総取引高は2700億人民元(4150億ドル)以上だった。同社のマーケットプレイスでは1200万の農家が直接消費者に販売している。

関連記事:2025年に15兆円超の農産物販売を目標を掲げる中国eコーマスのPinduoduo

「Pinduoduoは農業製品から始まりました」と現在の会長兼CEOであるChen Lei(チェン・レイ)氏が声明で語った。「いつかPinduoduoが世界最大の食料品店になることを願っています」。

Pinduoduoで売られている果物を試してみるコストは比較的低いため、食料品販売は、電子機器ほど利益が大きくないがユーザー獲得の方法として効果的かもしれない。

農業ドリームを追求している同社だが、まだ利益が出るまでには至っていない。Pinduoduoの純損失は四半期で13億8000万人民元(約230億円)まで減少した。2019年の同時期は17億5000万人民元(約290億円)の損失だった。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Pinduoduo中国eコマース農業

画像クレジット:A strawberry grower on Pinduoduo

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

中国はAlibabaのメディア帝国を解体したいと考えている

Jack Ma(馬雲、ジャック・マー)氏はこれまでの年月の中で、米国のJeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏と肩を並べるほどのメディアポートフォリオを累積してきた。しかし現在、マー氏のメディア帝国の将来は、この億万長者のメディアへの影響力拡大を恐れる中国政府の標的になっている。

中国当局はAlibabaに対して、同国の世論に対する同社の強力な影響力への懸念から、Albabaのメディア資産の一部を手放すよう命令した。The Wall Street JournalBloombergが、そのニュースソースを挙げて報道している。

Alibabaによるメディア投資は、118年前に香港で創刊された英字新聞South China Morning Postの買収を発表し、厳しい目にさらされた。中国本土では、Alibabaのフィンテック系列のAnt Groupが支援するニューヨーク上場のテクノロジニュースサイト36 Krや、Alibabaと戦略的提携を結んでいる国有のShanghai Media Groupがメディア事業を行っている。

Alibabaがアジアの有力紙South China Morning Postの株式を保有していることに批判や疑問も少なくない。こうした懸念を和らげるために、ジャック・マー氏は報道機関の編集の独立性を約束している

他のメディア取引では、Alibabaは出版物とのデジタルコラボレーションの可能性に焦点を当てることが多い。例えば、同社はデータとクラウドコンピューティングの専門知識を活用して、影響力のある金融メディア複合企業のShanghai Media Groupが金融データプラットフォームを開発するのを支援すると約束している。

Alibabaはまた、中国のTwitterに相当するWeiboや、中国の若者の間で人気の動画サイトBilibili(Alibabaの天敵Tencentを主要株主としている)にかなりの額の出資をするなど、新しいメディア新興企業を模索している。

Weiboは2020年6月にAlibaba役員が起こした不倫事件に関する投稿を大量に削除したとして、批判を浴びた。中国のインターネット規制当局であるCyberspace Administrationは、事件を具体的に指さずに「オンラインコミュニケーションの秩序を妨害した」として非難している

中国政府はすでに、インターネット経済における権力の集中を取り締まる動きを開始している。2020年12月、独占禁止法規制当局はAlibabaとTencentに対して、過去の買収許可を得るための報告を怠ったとして、それぞれ少額の罰金を科した。Alibabaのメディア資産のうち、どれを売却すべきかは不明だ。

関連記事:中国が独禁法違反でアリババとテンセント子会社に罰金処分

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Alibaba中国メディア

画像クレジット:Wang HE/Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hiroshi Iwatani)

中国で人気上昇中の暗号化チャットアプリ「Signal」が禁止に

インスタントメッセンジャーアプリSignal(シグナル)の中国ユーザーは、良い時間が長くは続かないことを知っていた。暗号化された会話のために使用されていたそのアプリは、米国時間3月16日午前時点で中国大陸部で利用できないことをTechCrunchのテストが確認した。同アプリのウェブサイトも、3月15日以降中国大陸部で禁止されていることを検閲追跡ウェブサイトのGreatfire.orgが伝えている。

Signalからはすぐにコメントを得られなかった。

この暗号化チャットアプリは、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)を使わずに中国でアクセスできる数少ない欧米ソーシャルメディアの1つだった。Facebook(フェイスブック)、Twitter(ツイッター)、Instagram(インスタグラム)などは長期に渡ってブロックされ続けている。ある意味で、この禁止は勲章でもある。アプリの中国におけるユーザー基盤が当局の目を引くまでに成長した証だ。

SignalはAppleの中国App Storeでは3月16日現在まだダウンロード可能であり、Appleがアプリを削除するよう政府命令を受けていないことを示している。Signalはテクノロジーに精通し、プライバシー意識の高い中国ユーザーの間で徐々に地盤を広げていた。

中国の精巧なGreat Firewall(グレート・ファイアウォール)は、多くのインターネットユーザーを検閲回避のエキスパートにした。通常、サービス禁止は段階的であり、Clubhouseの例がそれを示している。お手軽なオーディオアプリは中国のApp Storeで入手不可能だったが、ユーザーは海外のApp Storeからインストールする方法を見出し、対検閲ツールを使うことなく自由に使っていたが、やがてアプリのAPIがブロックされた。その後でさえ、在中国ユーザーはVPN経由でルームに入れば会話を聞けることに気づいた。Clubhouseのオーディオ技術を提供しているAgoragaまだ中国でアクセス可能だからだ。

関連記事:中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に

Microsoftの検索エンジンBingのように、中国では外国のアプリやウェブサイトが遮断されるが、復活することもある。Signalの禁止が恒久的なものかどうかは不明だが、アプリの成長を考えると、これで中国での短い寿命に終止符が打たれることになるかもしれない。

関連記事:プライバシーポリシーへの懸念で欧米で人気のSignalとTelegramは中国国内でも(いまのところ)拡大中

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Signal中国

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国の中小起業や地方自治体にも中国ハッカーによるゼロデイ攻撃の被害

米国政府は、その最も重要な連邦ネットワークをハッキングしたロシアへの報復を準備していると報じられているが、米国はサイバー空間でもう1つの古い敵にも直面している。中国だ。

関連記事:FBIとNSAが米連邦機関で進行中のハッキングは「ロシア起源の可能性が高い」と述べる

Microsoft(マイクロソフト)は3月初旬に、「Hafnium(ハフニウム)」と呼ぶ新たなハッキンググループの存在を明らかにしたが、このグループは中国で活動し、中国が支援している。Hafniumは、これまで報告されていなかった4つのゼロデイ脆弱性を利用して、Microsoft Exchange Server(マイクロソフト・エクスチェンジ・サーバー)をeメールサーバーとして運用している少なくとも数万の組織に侵入し、メールボックスやアドレス帳を盗み出した。

関連記事:中国の国家ハッカーがExchange Serverの脆弱性をゼロデイ攻撃、マイクロソフトが警告

Hafniumの目的は明らかになっていない。この活動を、国家が大企業や政府から情報や産業上の秘密を収集するスパイ活動になぞらえる人もいる。

しかし、今回の組織的ハッキング活動が大きな被害をもたらしているのは、欠陥が容易に悪用できるからというだけでなく、被害者が非常に多く、広範囲に及ぶからだ。

セキュリティ専門家によると、今回のハッカーはインターネット上で脆弱なサーバーをスキャンして攻撃を自動化しており、法律事務所や政策シンクタンクだけでなく、防衛関連企業や感染症の研究者など、幅広いターゲットや業界を狙っているという。脆弱なExchange Serverのメールーサーバーを運用していたため、Hafniumの攻撃に巻き込まれた膨大な数の被害者には、学校、宗教団体、地方自治体なども含まれる。

マイクロソフトはパッチを公開しているが、米国連邦政府のサイバーセキュリティ諮問機関であるCISAは、パッチは脆弱性を修正するだけで、ハッカーが残したバックドアを閉じることはできないと述べている。

CISAは、Microsoft Exchange Serverの脆弱性が国内外で広く利用されていることを認識しており、侵害の有無を判断するために、MicrosoftのIOC検出ツールでExchange Serverのログをスキャンすることを推奨しています。

リソースに余裕のある大規模な組織であれば、システムが侵害されたかどうかを調査し、破壊的なマルウェアやランサムウェアなどのさらなる感染を防ぐため、手を打つことができるだろう。

しかし、地方の小規模な被害者は、自分たちのネットワークが侵害されたかどうかの調査に、すぐに手が回らないことが多い。

Hafniumの発見に貢献したサイバーセキュリティ企業のVolexity(ヴォレクシティ)でセキュリティアナリストを務めるMatthew Meltzer(マシュー・メルツァー)氏は、「我々が見てきたところによると、被害者のタイプは非常に多様で、その多くは、サイバー脅威対応の専門業者ではなく、ITシステムの展開と管理を専門とする地元のITプロバイダーに技術サポートを委託しています」と述べている。

サイバーセキュリティの予算がない場合、被害者は常に侵害されていると考えられる。だが、次に何をすべきかを把握しているとは限らない。パッチを当てて不具合を修正することは、復旧作業の一部に過ぎない。ハッカーの後始末は、サイバーセキュリティの専門知識を持たない中小企業にとって、最も困難な作業となるだろう。

それはまた、他の悪質なハッカーに発見され、同じ脆弱性を利用してランサムウェアを拡散したり、破壊的な攻撃を仕かけたりされるのを防ぐための時間との戦いでもある。Red Canary(レッド・カナリー)とHuntress(ハントレス)の両社は、Hafnium以外のハッキンググループも同じ脆弱性を利用していることが考えられると述べている。ESET(イーセット)によると、少なくとも10のグループが同じサーバーの欠陥を悪用しているとのことだ。

脅威検出を専門とするRed Canaryのインテリジェンス担当ディレクターであるKatie Nickels(ケイティ・ニッケルス)氏は、これらのExchange Serverの脆弱性を悪用した活動が「明らかに広く行われている」としながらも、悪用されるサーバーの数はそれよりずっと少ないと述べている。

「一般的なIT管理者にとっては、最初に使われるWebシェルのクリーンアップをする方が、その後の活動を調査するよりもはるかに簡単でしょう」と、ニッケルス氏は語る。

マイクロソフトは管理者ができることについてのガイダンスを公開しており、CISAはアドバイスと、サーバーのログを検索して不正アクセスの証拠を見つけるためのツールを提供している。また、ホワイトハウスの国家安全保障会議は異例の声明を出し、パッチを当てるだけでは「修復にならない」と警告、企業に対して「直ちに対策を講じる」よう求めている。

サーバーがすでに侵害されている場合、パッチや緩和策は修復策にはなりません。脆弱性のあるサーバを持つ組織は、すでに標的にされていないかどうかを確認するために、早急に対策を講じることが不可欠です。

このようなアドバイスが中小企業にまでどれくらい浸透していくか、注視する必要があるだろう。

中小企業を含む多くの被害者は、自分たちが被害を受けていることに気づいていない可能性があり、たとえ被害を受けていることに気づいたとしても、次に何をすべきかについて段階的な説明が必要になると、サイバーセキュリティの専門家であるRuna Sandvik(ルナ・サンドビック)氏は語る。

「このような脅威から身を守ることも重要ですが、侵害の可能性を調査し、その行為者を排除することは、より大きな課題です」と、サンドビック氏は述べている。「企業にはパッチをインストールできる人はいるでしょう。しかし、それは最初のステップに過ぎません。侵入されたかどうかを調べるには、時間、ツール、ログが必要です」。

セキュリティ専門家によると、Hafniumは主に米国の企業をターゲットにしているが、攻撃はグローバルに行われているという。欧州銀行監督局は、自局のメールサーバーとして使用していたExchange Serverが攻撃を受けたことを確認した最大の組織の1つだ。

ノルウェーの国家安全保障局は、国内で「これらの脆弱性を悪用されたことがすでに確認されている」として、ノルウェーのインターネット空間全体で脆弱なサーバーをスキャンし、その所有者に通知すると発表した。SI-CERTとして知られているスロベニアのサイバーセキュリティ対応部隊は、こちらも自国のインターネット空間で潜在的な被害者に通知したと、Twitter(ツイッター)で述べている

米国企業の広範囲に及んでいることを考慮すると、米国政府と民間企業は対応を連携するためにもっとできることがあると、サンドビック氏は述べている。CISAは2019年に、脆弱でパッチが適用されていないシステムの所有者を特定するために、インターネットプロバイダーを召喚できる新たな権限を提案した。同庁は12月に政府の年次防衛法案の中でこれらの新しい権限を得たばかりだ。

「誰かがそれを持つ必要があります」と、サンドビック氏は言っている。

関連記事:米国土安全保障省が脆弱システムの利用者開示をISPに義務づけへ、法改正を準備中

カテゴリー:セキュリティ
タグ:ハッカーサイバー攻撃Microsoftゼロデイ攻撃中国

画像クレジット:BSIP / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

中国の写真加工アプリ「Meitu」が43.4億円相当の仮想通貨を購入

Tesla(テスラ)の後を追うように、中国のアプリメーカーMeitu(美圖公司)が仮想通貨投資に仲間入りした。

関連記事:ビットコイン購入がテスラの環境重視の評判と収益に悪影響をおよぼす可能性

2010年代前半、Meituはポートレート写真加工分野を支配し、社名を関したその看板アプリは、中国国内では「写真美化」を意味する動詞にまでなった。しかしここ数年、スマートフォンにフィルターが内蔵されるようになり、Meituのような加工アプリはリードを保つことがむずかしくなった。Meituの株価は2017年の1株あたり18香港ドル(約251.38円)から現在の3香港ドル(約41.90円)へと下落している。

会社が創立13年を迎え、新たな成長の道を探る中、同社は仮想通貨に目を付けた。

MeituはEther(Ethereum、イーサリウム)1万5000単位、Bitcoin(ビットコイン)379.1214267単位、それぞれ2210万ドル(約24億円)と1790万ドル(約19億4000万円)相当を現地時間3月5日に公開市場取引で購入したことを3月6日に発表した。今回の購入は、最大1億ドル(約108億5000万円)相当の仮想通貨を購入するという同社の投資計画の第1回で、資金は保有現金から支出された。

このところMeituの会長Cai Wendheng(カイ・ウェンシェン)氏は歯に衣着せぬブロックチェーン擁護者だ。中国政府は新規仮想通貨公開(ICO)と仮想通貨取引所を禁止しているが、カイ氏は2018年に個人で1万Bitcoinを購入した。

同氏の仮想通貨支持は、Meituの最近の投資行動からも見て取れる。同社は開示情報で次のように発表した。「取締役会は、ブロックチェーン技術には既存の金融およびIT産業の両方を破壊する可能性があるという見解であり、これはモバイルインターネットがパソコンインターネットと多くのオフライン産業を破壊したのと同じです。ブロックチェーン業界はまだ初期段階にあり、2005年前後のモバイルインターネットと同様だと取締役会は考えています」。

さらにこう続けた。「こうした背景を踏まえ、仮想通貨の価値増加の余地は大きく、会社資産の一部を仮想通貨に割り当てることは、保有現金を分散化する意味もあると取締役会は信じています」。

Meituはさらに、Bitcoin投資は同社の「資産分配」計画の一部であるのに対し、Etherへの投資はブロックチェーンをさまざまな海外ビジネスに織り込む、という自社のブロックチェーン全般の方針を後押しするもので、EtherumベースのdApps(自律分散型アプリケーション)はその1つであると話した。会社は海外のブロックチェーンプロジェクトへの投資も視野に入れており「当社の大きいユーザー基盤とのシナジー効果が期待できる」としている。

2020年6月現在、Meituは全世界で公開している一連のアプリで計約3億人のアクティブユーザーを有している、と称している。

関連記事:中国の国家ブロックチェーンネットワークが世界中のdApps開発者を受け入れ

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Meitu仮想通貨中国

画像クレジット:Meitu

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Nob Takahashi / facebook

三人三様、中国のテック巨人CEOが国会の年次総会で提案すること

中国の国会に相当する全国人民代表大会(全人代、NPC)とその国政助言機関、人民政治協商会議(政協、CPPCC)の年次総会が今週、北京で開催されている。数千人の代表が出席し意見を述べる中には、中国のビッグテックの経営トップも含まれている。ここでは、中国のデジタル経済のためにテック大手のボスたちが何を提案しているか、垣間見ることができる。

Tencent、Pony Ma(ポニー・マー、馬化騰)

中国国営の人民郵電報の報道によると、Tencent(テンセント)の創業者兼CEOである馬氏は、軌道に乗り始めた同国のインターネット経済の発展のためには、規制当局による精査がさらに必要であると述べ、ガバナンス強化を訴えた。全人代の代表として、馬氏は9年連続で出席した国会の会議中に合わせて50以上の提案を提出している、と同ニュースは報じた。

具体的には、P2P金融、バイクシェア、長期賃貸アパート、オンライン食料品のグループ購入など、資金流出の激しい競争の中でビジネスが破綻している新興分野の厳格なガバナンスを求めている。

馬氏の意見は、規制当局が国内の巨大テック企業への監視を強めている中でのことだ。ここ数カ月の間に、中国政府は反競争的な慣行をめぐってAlibaba(アリババ)や他のテック企業への調査を開始し、プラットフォームがユーザー情報を収集する方法を制限する包括的なデータ法を策定している。

関連記事
中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる
中国のインターネット規制当局は強制的なユーザーデータの収集を標的に

Xiaomi、Lei Jun(レイ・ジュン、雷軍)

製造業のバリューチェーンで地位向上を目指す中国の壮大な計画の中で、スマートフォンや他のハードウェアデバイスを多数製造しているXiaomi(シャオミ、小米科技)は、工場のアップグレードを支援することに熱心に取り組んでいる。

XiaomiのCEOである雷氏は、全人代の代表の1人だ。同氏は中国はスマートマニュファクチャリングで遅れをとっており、自国のイノベーションに欠け、外国の技術に過度に依存していると認識している、と提案書の中で述べている。研究開発の努力は、最先端のセンサーや産業用ロボット用の精密減速機などの重要部品に向けられるべきだ、とも。

また、中国には工場のイノベーションを推進する人材が不足しており、政府の政策は企業が外国人の技術者を誘致し、産学連携を促進することを支援すべきであると雷氏は指摘している。

Baidu、Robin Li(ロビン・リー、李彦宏)

中国最大の検索エンジンを提供するBaidu(百度)は、AIへのピボットの一環として、スマートドライビング技術に多額の投資を行っている。アルゴリズムを訓練するために大量のデータを必要とするBaiduのような自律運転企業にとって、規制は大きなハードルとなっており、試験許可証の発行率は地域によって大きく異なる。

BaiduのCEOで政協のメンバーでもある李氏は、規制当局に対し、より革新的になり、自律走行の合法的かつ大規模な商用化への道を切り開くよう促している。自律走行の商用化を一丸となって推進するために、さまざまな政府機関、業界関係者、学界が連携した仕組みを作るべきであると同氏は述べた。

さらに李氏は、中国では、よりシニアに優しい技術、政府のデータへの一般アクセスの拡大、未成年ユーザーのオンライン保護の改善も呼びかけた。

関連記事:従業員の3割が女性の中国ゲーム大手NetEaseのトップが男女共同育児休暇の拡大を呼びかける

カテゴリー:その他
タグ:中国TencentXiaomiBaidu

画像クレジット:VCG/VCG via Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

従業員の3割が女性の中国ゲーム大手NetEaseのトップが男女共同育児休暇の拡大を呼びかける

NetEaseのCEOである丁磊(ウィリアム・ディン)氏

中国は一人っ子政策を緩和したが、政策当局が設定した人口目標を達成できていない。2019年、中国の出生率はここ70年で最低の水準に落ち込み、これは社会的態度の変化、生活費の高騰、そして厳しい労働文化に起因していると専門家は指摘する。

中国の人口危機を解決する方法の1つは、母親の負担を軽くすることだと、人気音楽ストリーミングサービスも運営している中国第2位のゲーム会社NetEaseの創設者兼CEOのDing Lei(丁磊、ウィリアム・ディンとしても知られる)氏は述べている。

丁氏は今週、全国人民代表大会(NPC)と中国人民政治協商会議(CPPCC)の会議で構成される中国の年次国会でこの提案を行った。毎年春になると、政治的エリートや技術系の億万長者を含むさまざまなバックグラウンドを持つ代表者が、非公式に「2つの総会」として知られている立法会議のために北京に集まる。

丁氏は、Tencent(テンセント)のPony Ma(ポニー・マー、馬化騰)氏、Xiaomi(シャオミ、小米科技)のLei Jun(レイ・ジュン、雷軍)氏、Baidu(バイドゥ、百度)のRobin Li(ロビン・リー、李彦宏)氏のような他のハイテク企業のボスを含むCPPCCのメンバーである。丁氏は、女性の肩にかかる負担を軽減するために、高額な出産、短い産休、小児医療の供給不足、未発達な育児システム、その他の「現場でなかなか解決しない問題点」に取り組むべきだと提案した。

丁氏はさらに「男性が子育てにもっと責任を持てるように」、育児休暇を「自己の判断で」共有できるようにすることを提唱した。同氏は、女性の出産に関するコストは国が負担すべきであり、保育施設の数を増やすべきだと主張した。

中国では近年、ほとんどの省が父親の育児休暇を導入しているが、その期間や実施の取り組みは地域によって異なる。NetEaseやTencentのある広東省では、父親には最大15日間の有給休暇が与えられている。一方、上海は10日間と最も少ない。

しかし一部の専門家は、平均1週間の父親の育児休暇は、最低98日の有給産休を受け、居住地によってはそれ以上の日数を得られる新生児の母親を解放するのにまったく足りないと主張している。TechCrunchの取材に対し、NetEaseの家族休暇ポリシーは国や地域の規制に沿ったものである、と同社の担当者は語った。

中国のハイテク大手は時折、男女比を公表したりほのめかすことがある。2019年には、NetEaseの2万人の従業員のうち35%が女性で、その年のトップマネジメントのうち約25%が女性だったという。女性社員の福利厚生を誇るオンライン旅行代理店Ctripは、2018年にはスタッフの60%以上が女性だったという。女性リーダーシップフォーラムで頻繁に講演を行っているJack Ma(ジャック・マー、馬雲)氏は2019年に、Alibaba(アリババ)スタッフの33%以上を女性が占めるべきだと公言した

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:NetEase中国

画像クレジット:Visual China Group via Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国のD2Cコスメブランド「完美日記」のYatsenが創業35年の名門スキンケアブランドEve Lomを買収へ

中国のコスメ市場では歴史的に見ると海外ブランドが崇拝されてきたが、近年は中国国内のスタートアップがより安価でローカライズされたオプションを提供して、Z世代の消費者を獲得することが増えている。その中でも特に注目されているのが、設立5年のスタートアップYatsen(逸仙控股)が所有するD2Cブランド「Perfect Diary(完美日記)」だ。

Yatsenは2020年11月にニューヨーク証券取引所(NYSE)で6億1700万ドル(約660億円)のIPOを行い、資本市場にその存在を知らしめた。同社の主力ブランドであるPerfect Diaryは、オンライン売上高では、L’Oréal(ロレアル)や資生堂に次ぐトップメイクアップブランドとして常にランクインしている。そして今、同社は新たに、英国のプライベートエクイティ企業Manzanita Capitalが所有する創業35年のスキンケアブランドEve Lom(イヴロム)の買収に乗り出すという、大きな動きを計画している。

中国時間3月3日、中国革命の父である孫文(孫逸仙、広東語ローマ字表記Sun Yat-sen)にちなんで名づけられたYatsenは、クレンザーで知られるEve Lomを買収するための最終契約を締結したと発表した。この取引は数週間以内に成立する見込みで、Manzanitaは少数株主として同事業に参画し続け、戦略的パートナーとしての役割を果たすという。

取引の規模は非公開だが、2021年2月にBloombergは、Manzanita Capitalが2億ドル(約214億円)程度でEve Lomを売却しようとしていると報じていた。

Perfect Diaryは口紅、アイシャドーパレット、ファンデーションなどの商品をXiaohongshu(小紅書)などのソーシャルコマースプラットフォームでレビューする多数のインフルエンサーと提携し、中国での知名度を上げてきた。また同社は、中国で豊富に存在する化粧品やパッケージのサプライヤーの多くが国際的なトップブランドと提携しているという利点を活かしている。これらの戦略により、Perfect Diaryは品質に妥協することなく手頃な価格を提供し、「Xiaomi(シャオミ、小米科技)のコスメ版」というあだ名を得ている。

Yatsenは創業以来、飛躍的な成長を遂げてきた。効果的なEC戦略のおかげで、2019年の総売上高は2018年から4倍以上の35億元(5億4000万ドル、約578億円)になった。しかし、損失も膨らんだ。同社は2020年9月までの9カ月間に11億6000万元(1億7000万ドル、約182億円)の純損失を計上したが、前年同期には2910万元(約4億8000万円)の純利益を計上していた。

目論見書に記載されているように、Yatsenは製品ポートフォリオの多様化を図るため、買収の可能性を模索してきた。Eve Lomとの縁組により、同社は「グローバルなブランド構築能力と提供する商品をより豊かにしていきたい」と、Yatsenの創設者兼CEOであるJinfeng Huang(黄金峰)氏は声明の中で述べた。

Yatsenはすでに国際展開を開始しており、まず東南アジアに上陸し、Shopee(ショッピー)のようなeコマースサイトで販売している。同社は目論見書の中で、今後は「国際的な拡大を加速し、製品をローカライズするために、現地パートナーと選択的に協力していく」計画だと述べていた。確立されたブランドが多く競争の激しいメイクアップコスメ業界で、Yatsenの海外市場での冒険はこれから間違いなく注目に値する。

関連記事:Pinterestがアイシャドウを購入前に試せるバーチャルメイク機能を発表

カテゴリー:その他
タグ:Yatsen買収美容中国

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国の国家ハッカーがExchange Serverの脆弱性をゼロデイ攻撃、マイクロソフトが警告

Microsoft(マイクロソフト)は顧客に対し、中国政府の支援を受ける新たなハッカーが、同社の企業向け電子メール製品であるExchange Serverの、これまでに発見されていなかった4つのセキュリティ上の欠陥を悪用し攻撃していると警告した。

Microsoftは米国3月2日「Hafnium(ハフニウム)」と呼ばれるハッカーグループが、法律事務所や防衛請負業者だけでなく、感染症研究者や政策シンクタンクなど、米国を拠点とする幅広い組織を攻撃対象にして情報を盗み出そうとしているようだと述べた。

同社によると、Hafniumは、新たに発見された4つのセキュリティ脆弱性を利用して、企業ネットワーク上で稼働しているExchangeの電子メールサーバに侵入し、被害者組織から電子メールアカウントやアドレス帳などのデータを盗み出し、さらにマルウェアをインストールしていたとのこと。4つの脆弱性を併用することで、Exchange 2013以降を使用するオンプレミスの脆弱なサーバーを侵害できる攻撃の連鎖が作られるという。

Hafniumは中国を拠点に活動しているが、攻撃を仕かけるために米国内のサーバーを利用していると同社は述べている。Microsoftは、Hafniumがこれら4つの新しい脆弱性を最初に発見したハッカーグループであるとも述べた(同社のブログ記事の以前のバージョンでは、Hafniumがこの脆弱性を悪用する「唯一の」グループであると誤って記述されていた)。

Microsoftは攻撃が成功した数については明言を避けたが、その件数は「限られたもの」と説明した。

該当する4つのセキュリティ脆弱性を修正するためのパッチは現在すでに公開されており、通常は毎月第2火曜日に予定されている同社の典型的なパッチ適用スケジュールよりも1週間早い公表となった。

「Microsoftの顧客セキュリティ担当副社長であるTom Burt(トム・バート)氏は次のように述べた。「Hafniumの攻撃に対するアップデートを迅速に配備するよう尽力しましたが、多くの国家活動家や犯罪グループが、パッチが適用されていないシステムを利用しようと迅速に動くことが予想されます」。

同社は米政府機関にも調査結果をブリーフィングしたとしているが、今回のHafniumによる攻撃は、米連邦政府機関に対するSolarWinds関連のスパイ活動とは関係ないとしている。トランプ政権末期にNSA(米国家安全保障局)とFBIは、SolarWindsの件は「ロシア起源の可能性が高い」と述べていた。

関連記事
FBIとNSAが米連邦機関で進行中のハッキングは「ロシア起源の可能性が高い」と述べる
NASAと米連邦航空局もSolarWinds製品を使った大規模ハッキングで被害に遭ったとの報道

カテゴリー:セキュリティ
タグ:Microsoft中国ハッキングマルウェアゼロデイ攻撃

画像クレジット:Drew Angerer / Getty Images

原文へ

(文:Zack Whittaker、翻訳:Aya Nakazato)

顔交換も簡単にできる中国のマシン動画生成スタートアップSurrealが創業3カ月で資金調達

もし動画を作るためのカメラが不要になり、数行のコーディングで動画を生成できるようになったとしたらどうだろう?

機械学習の進歩が、そのアイデアを現実のものにしつつある。私たちも、ディープフェイク技術が家族写真で顔を入れ替えたり、自撮りを有名なビデオクリップに変えたりする例を見てきた。現在、AI研究のバックグラウンドを持つ起業家たちが、アルゴリズムを使って超リアルな写真や音声、動画を生成するためのツールを考案している最中だ。

関連記事
MyHeritageが古い家族写真をディープフェイク技術でアニメーション化
口コミで大流行の顔交換ビデオアプリRefaceにa16zなどの有名投資会社が約6億円を出資

こうした技術を開発しているスタートアップの1つが、中国に拠点を置くSurreal(サーリアル)だ。同社は設立からわずか3カ月しか経っていないが、Sequoia ChinaとZhenFundという2つの著名な投資家からすでに、シードラウンドで200万~300万ドル(約2億1000万〜3億2000万円)の資金を調達している。創業者でCEOのXu Zhuo(シュウ・チョウ)氏はTechCrunchに対して、Surrealは今回のラウンドで10件近くの投資オファーを受けたと語っている。

Surrealを創業する前、シュウ氏はSnap(スナップ)に6年間在籍していて、同アプリの広告レコメンデーションシステム、機械学習プラットフォーム、AIカメラ技術の開発に携わっていた。この経験はシュウ氏に、合成メディアが主流になると確信させた。なぜならそのツールは「コンテンツ制作のコストを大幅に下げることができる」からだと、シュウ氏は、深圳(シンセン)にある Surreal社の十数人規模のオフィスで行われたインタビューで語っている。

とはいえ、Surrealには、人間のクリエイターやアーティストを置き換えようという意図はない。実際、シュウ氏は、今後数十年の間に機械が人間の創造性を超えることはないと考えているのだ。この信念を体現しているのが、同社の中国名である「诗云」(シーユン、詩雲)だ。これは、SF作家の劉慈欣(リュウ・ジキン)氏の小説のタイトルから取られたもので、その小説は技術が古代中国の詩人李白に勝てないという物語だ。

「私たちの方程式は『視覚的なストーリーテリングは、創造性プラス制作力に等しい』というものです」とシュウ氏は目を輝かせながら語る。「私たちはその『制作力』の部分に注力しているのです」。

ある意味、マシン動画生成とは、Douyin(抖音、ドウイン、中国版TikTok)やKuaishou(快手、カイショウ)を人気の高いものにしたビデオフィルターを、ステップアップしたような強化版ビデオツールなのだ。既存のショートビデオアプリはプロ並みの動画を作るための障壁を大幅に下げてくれるものの、それでもカメラは必要だ。

「ショートビデオのキモは、決してショートビデオの形式そのものではありません。肝心な点はより良いカメラ技術を手に入れることができるかどうかです。これによってビデオ制作コストが下がります」とシュウ氏は語る。彼はSurrealを、TikTokの親会社ByteDance(バイトダンス)のベテランであるWang Liang(ワン・リエン)氏とともに設立した。

ディープフェイクの商品化

Google(グーグル)、Facebook(フェイスブック)、Tencent(テンセント)、ByteDanceなどの世界最大のテック企業の中にも、GAN(敵対的生成ネットワーク)に取り組んでいる研究チームがある。シュウ氏の戦略は、大型契約へと向かっている重量級のアプリとは直接対決しないことだ。むしろ、Surrealは中小の顧客を狙っている。

eコマース販売者向けのSurrealの顔交換ソフト

Surrealのソフトウェアは現在のところ企業顧客にのみ提供されていて、顧客はアップロードされたコンテンツの顔を変更したり、まったく新しい画像や動画を生成したりするために使用することができる。シュウ氏はSurrealを「動画用Google翻訳」と呼んでいる、なぜならそのソフトウェアは人間の顔を交換するだけでなく、登場人物が話す言語を同時に翻訳し、声と唇を一致させることができるからだ。

ユーザーは動画や画像ごとに課金される。今後、Surrealは顔だけでなく、人の服や動きをアニメーション化することも目指している。Surrealは財務状況の公表を拒んだが、シュウ氏によれば、同社は約1000万件の写真と動画の注文を受け付けたという。

現在、多くの需要があるのは、中国のeコマース輸出企業だ。彼らはマーケティング素材に西洋人のモデルを登場させるためにSurrealを使っている。本物の外国人モデルを雇うのはコストがかかるが、アジア人モデルを採用しても効果があるかどうかはわからない。Surrealの「モデル」を使用することで、一部の顧客は2倍の投資収益率(ROI)を達成することができたとシュウ氏はいう。数百万ドル(数億円)のシード資金を手にした Surreal は、アルゴリズムの改善のために大量のデータを収集できるように、オンライン教育などのより多くのユースケースを模索することを計画している。

未知の領域

Surrealを支えている技術は、敵対的生成ネットワーク(GAN)と呼ばれる比較的新しい技術だ。機械学習研究者の Ian Goodfellow(イアン・グッドフェロー)氏が2014年に発表したGANは、画像を生成する「ジェネレーター」と、画像が偽物(フェイク)か本物(リアル)かを判別する「ディスクリミネーター」のペアで構成されている。このペアは、ジェネレーターが満足のいく結果を出せるようになるまで、敵対的な役割として訓練を行う。

GANが悪意ある者の手に渡った場合には、詐欺やポルノなどの違法行為に利用される可能性がある。Surrealが個人ユーザーの利用ではなく、エンタープライズでの利用から始めている理由の一部はその点にある。

Surrealのような企業はまた、新たな法的課題を提起している。機械が生成した画像や動画の所有者は誰なのだろう?著作権を侵害しないようにするために、Surrealでは顧客に対して、アップロードするコンテンツに対して権利を持つことを求めている。誤用を追跡し防止するために、Surrealは生成したコンテンツの各部に暗号化された目に見えない透かしを追加し、所有権を主張する。Surreal が作成した「人物」がたまたま実在の人物と一致する可能性もあるため、同社は生成したすべての顔とオンラインで見つけた写真を照合するためのアルゴリズムを実行している。

「倫理問題に対してはSurreal自身が解決することはできないと思っていますが、私たちはこの問題を探求していきたいと思っています」とシュウ氏は語っている。「根本的に、(合成メディアは)ディスラプティブなインフラを提供すると思っています。それは生産性を高めます。生産性がこのような応用にとっての重要な決定要因となっているのですから、マクロレベルでは避けて通ることはできません」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:SurrealGAN中国機械学習資金調達ディープフェイク

画像クレジット:Surreal

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:sako)

バイデン大統領が半導体・EVバッテリーなど4品目のサプライチェーン見直しを要求する大統領令に署名

バイデン大統領が半導体・EVバッテリーなど4品目のサプライチェーン見直しを要求する大統領令に署名

バイデン米大統領が、4つの主要製品分野におけるサプライチェーンの見直しを要求する大統領令に署名しました。主要製品とは消費者製品向けコンピューターチップ、電気自動車用大容量バッテリー、医薬品とその有効成分、 電化製品で使うためのレアメタルの4種類。大統領令は即時の見直し作業開始を求め、100日間でこれらの入手先を外国、特に中国のサプライヤーに「過度に依存」していないかを判断します。

見直し作業は単なる調査と報告に終わらず「ギャップを埋め」「多様で回復力のある」サプライチェーンの構築に活用されるとのこと。

大統領令を出すきっかけには、パンデミックの初期にマスクなど個人用保護具が広範囲に不足した結果、最前線で対策に当たる医療従事者に必要な物資が行き渡らず、その場しのぎのマスクや手術着に頼らざるを得なくなったことが含まれます。そして、パンデミックが原因のひとつと言える昨今の半導体不足も、サプライチェーン見直しの理由のひとつとされます。

また、この命令は防衛、公衆衛生、通信技術、エネルギー、輸送、食料生産の6分野にひろくまたがるサプライチェーンについて1年間のレビューも要求しています。バイデン大統領は、サプライチェーン問題の解決策は、特定の産業について国内生産を増やすとともに、将来の不足を防ぐために同盟国との協力体制を築くことだとしています。

もちろん、この大統領令がすぐに半導体不足解決につながるわけではありません。ですが将来的に同じことを繰り返さないためにも、脆弱な部分を取り除く重要性はあります。大統領は「特定の問題がすぐに解決されないのは誰もがわかっていることで、いまあるボトルネックを解決するために、サプライチェーンになりうる同盟国の半導体企業などと連絡を取り生産増強に取り組んでいる」としました。

なお、ホワイトハウスはこの大統領令について中国外しが目的ではないことを強調、あくまで特定の供給元に依存していないかを判断するためだとしています。とはいえ、バイデン大統領はトランプ政権における対中政策は深刻な問題があったとしており、習近平国家主席との電話会談でも中国の「強制的で不公正な経済慣行」に「根本的な懸念」があることを伝えています。

大統領令が中国からのサプライへの依存を制限することはできると思われるものの、それを完全に断ち切れるかどうかはわかりません。資材の入手から加工、製品としての組み立てに至るまで一切を中国に依存している場合、企業がそこから脱却するのは難しいことも考えられます。

米国としては、政府と議会の協力でインセンティブや労働者訓練プログラムを用意し、サプライ元を米国内や同盟国に変えさせると言った対策も必要になるかもしれません。

(Source:CNBCPoliticoEngadget日本版より転載)

関連記事
ファーウェイが米商務省による「安全保障上の脅威」指定をめぐり提訴
ファーウェイCEOはバイデン新大統領との会談を歓迎
バイデン政権のジーナ・ライモンド商務長官にはファーウェイをエンティティリストから外す理由がない
米国の新型コロナ追加経済対策にファーウェイとZTEの機器排除費1965億円が含まれる
米国の禁輸リスト入りしたDJIのプロダクトの米国内販売は継続の見込み
中国最大のチップメーカーSMICが米禁輸リスト入りか
バイデン時代のテクノロジー、オバマ時代のテクノクラシー再燃はなさそうだ

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Joe Biden / ジョー・バイデン(人物)エンティティリスト / Entity List(用語)中国(国・地域)アメリカ(国・地域)

「原神」や「Call of Duty」など中国のモバイルゲームは米国でも人気

米国では2020年来、新型コロナウイルス感染流行によって、外出を控えた人々が自宅でアプリを利用する機会が増えている。特にモバイルゲームがブームとなっており、その中でも中国のスタジオによって制作されたゲームが人気を集めている。

市場調査会社Sensor Tower(センサータワー)の新しい報告によると、米国のApp StoreとGoogle Play Storeでリリースされたゲームの第4四半期の収益は合計58億ドル(約6150億円)で、前年同期比34.3%増となり、世界のモバイルゲームの収益の4分の1以上を占めているという。

先の第4四半期には、米国におけるモバイルゲームの収益の20%が中国製のタイトルによるものだった。これにより、中国は事実上、米国におけるモバイルゲームの最大の輸入国となった。同期間中に米国で最も売れたゲーム上位100本の中で、中国のパブリッシャーは21本を占め、世界最大のモバイルゲーム市場であるこの国において、合計で7億8000万ドル(約827億円)の収益を上げた。これは2年前の3倍以上にも増えたことになる。

ランキングの上位には、Tencent(テンセント)とActivision(アクティビジョン)のコラボレーションによる一人称視点シューティングゲーム「Call of Duty:Mobile(コール オブ デューティ モバイル)」や、テンセントの「PlayerUnknown’s Battlegrounds(プレイヤーアンノウンズ バトルグラウンズ)」など、お馴染みの中国製タイトルが並ぶ。しかし、中国の小規模なスタジオも米国市場に急速に浸透している。

中国以外ではあまり知られていないゲーム会社のmiHoYo(ミホヨ)は、アニメ風キャラクターが登場するロールプレイングアクションゲーム「Genshin Impact(原神)」のヒットによって、同国のゲーム業界で注目を集めている。第4四半期には米国で6番目に高い収益を上げたモバイルゲームとなり、1億ドル(約106億円)以上の収益を記録した。

最も注目すべきことは、miHoYoが2011年の設立以来、独立したスタジオであることだ。テンセントのような業界の大物からの資金を欲しがる多くの新興ゲーム企業とは異なり、miHoYoこれまで、初期の段階からわずかな金額しか調達していない。また、テンセントや携帯電話ベンダーのHuawei(ファーウェイ)、Xiaomi(シャオミ)といった大手代理店を避け、中国の若者に人気の動画サイト「Bilibili(ビリビリ)」やゲームダウンロードプラットフォーム「Taptap(タップタップ)」で「原神」をリリースしたことでも物議を醸した。

2020年末から米国で最もインストールされたモバイルゲームの1つ、パズルゲーム「Project Makeover(プロジェクト・メイクオーバー)」の開発元であるMagic Tavern(マジック・タバーン)もまた、あまり知られていないスタジオの1つだ。清華大学の卒業生たちが設立し、世界各地にオフィスを構えるMagic Tavernは中国にルーツを持つスタジオの中で、米国のカジュアルゲーム市場に進出した最初のスタジオの1つとして認められている。KKRが出資するゲーム会社のAppLovin(アップラビン)は、Magic Tavernの戦略的投資家だ。

米国で人気が高い他のゲームにも、中国企業が直接所有しているわけではないにせよ、中国とのつながりを持っているものがある。「Shortcut Run(ショートカットラン)」と「Roof Rails(ルーフレールズ)」はフランスのカジュアルゲーム会社であるVoodoo(ヴードゥー)の作品だが、2020年にTencentから少額出資を受けている。Tencentはまた、若いゲーマー向けゲームプラットフォームであるRoblox(ロブロックス)の戦略的投資家でもあり、近日中にIPOを予定している。

関連記事:

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:スマホゲーム中国アメリカ

画像クレジット:Genshin Impact via Google Play Store

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

TikTokの中国版Douyinが検索ユーザー数は5億5000万人、検索最大手Baiduに対抗

ショートビデオの進歩は、情報がどのように作成され、広まり、オンラインで消費されるかということを変化させている。洒落た15秒の動画は、エンターテインメントのためだけのものではない。中国のショートビデオアプリDouyin(抖音)とKuaishou(快手)では、人々は毎日のニュースを得たり、料理を習ったり、英語の練習をしたり、仕事を探したり、急速に拡大しているプラットフォームのコンテンツライブラリから実質的にあらゆる種類の情報を探すことができる。

人々は機械が推奨する動画を見ることに慣れてきているが、多くのユーザーはまだアクティブな検索をしたいという欲求とニーズを持っている。Douyinはそれを理解し、2018年半ばに検索機能を導入した。それから2年以上が経ち、この機能は月間アクティブユーザー数(MAU)5億5000万人に達した。同アプリが最後に報告したのは2020年9月のデイリーユーザー数が6億人という数字だったので、月間ユーザー数はそれを上回っているはずだ。それを見ると、Douyinの検索機能にはまだ成長の余地がある。

関連記事:中国版TikTokのライバル「Kuaishou」はオンラインバザールとしても人気

TikTok(ティックトック)の中国版であるDouyinの台頭は、若いプロダクトマネージャーKelly Zhang(ケリー・チャン)氏の功績によるところが大きい。同氏は、今週初めてDouyinの検索ユーザー数を彼女のマイクロブログアカウントで公開した。検索は、中国では長らくBaidu(百度)が独占していた領域だ。2020年12月の時点で、Baiduのフラッグシップアプリの月間アクティブユーザー数は5億4400万人だったため、Baiduと同じくらい多くの人がDouyinで検索していると言って差し支えないだろう。

チャン氏の発言は、オンライン動画分野を制覇し、最終的には人々の情報の受け取り方にまで踏み込もうとするDouyinの野心を物語っている。「前にも言いましたが、私はDouyinが人類文明の動画百科事典になることを願っています。従って動画検索は本に例えれば索引であり、答えを見つけ、新しい知識を得るための入り口なのです」。

同氏はさらに、アプリが検索機能への投資を拡大し続けているため、Douyinの検索エンジンでは新年(中国は旧正月を迎えたばかり)に研究開発、製品、オペレーションのための人材を募集していくと付け加えた。

データ分析会社のJiguangが2020年12月に発表したレポートによると、ショートビデオプラットフォームは、すでに中国のユーザーがオンラインで検索する際に2番目に人気のある方法でBaiduなどの一般的な検索エンジンに次ぐものであり、SNSやeコマースを上回っている。検索におけるBaiduの優位性は、中国のテック大手がサイトやデータへの無料アクセスをお互いにブロックし合うことで築かれた壁に四方から阻まれ、ますます制限されている。ユーザー体験は損なわれるが、この現状はDouyinやAlibaba(アリババ)によるTaobao(淘宝、タオバオ)マーケットプレイスのようなアプリ上の垂直検索エンジンにとっては好都合で、結果的に広告スポンサーからの収益につながる。

ByteDance(バイトダンス)はDouyin、TikTok、ニュースアグリゲーターのToutiao(今日頭条)などのサービスで、機械学習アルゴリズムを使ってコンテンツを推薦することに取り組んできた。このモデルは非常に効率的で収益性が高いことが証明され、BaiduからTencent(テンセント)に至るまでの先人たちが、同様のアルゴリズムを利用したコンテンツフィードを導入するようになった。より長い歴史を持つ検索分野へのByteDanceの進出は、興味をそそる一方で、自然な流れでもある。同社は、デジタルメディア帝国のパズルを完成させ、人々に情報を見つけるための別の選択肢を提供しているにすぎない。ユーザーは機械からのレコメンドを受けたり、必要に応じてコンテンツクリエイターをフォローすることができる。または、頭に浮かんだ検索キーワードがあれば、古き良きやり方で入力もできるというわけだ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Douyin中国検索

画像クレジット:Douyin creators

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施

「Clubhouse」の音声データが中国当局に漏れる可能性が浮上、開発元はセキュリティ強化を実施

Rafael Henrique/SOPA Images/LightRocket via Getty Images

日本でもにわかに話題となり、あっという間に一部の人々に浸透した感のある音声チャットサービスClubhouseですが、その会話データが中国政府に流れている可能性が浮上し、セキュリティ対策の強化が行われています。

問題を発見したスタンフォード大学の研究者によれば、Clubhouseの開発者Alpha Explorationはサービス提供のために上海を拠点とするソフトウェア企業Agoraのサーバーをバックエンドとして利用しており、さらにユーザーごとにユニークなClubhouse IDとチャットルームIDが平文でやりとりされることから、Agoraが生の音声データにアクセス、保管できる可能性が高いことがわかったとのこと。

IDが平文で流れているということは、Clubhouseのトラフィックを眺めていれば、どのチャットルームに誰が集まっているかを簡単に知ることができます。また会話のメタデータがすべて中国に流れてから中継されていることで、中国当局がこれを国家安全保障上の脅威だと見なせば、中国の法により音声データを含むすべてを複製し政府に提供させることができてしまいます。

当然ながらAgora側はこの報告を否定し、データを保存することもなければ、音声データそのものが米国内にあれば中国政府がそれを入手することもできないと反論しました。Alpha Explorationもサービスを開始の際「プライバシーの取り扱いに関する事情を考慮し、中国ではサービス提供をしないことを決めた」と説明しています。

しかし、中国国内のユーザーがClubhouseアプリの入手方法を見つけ出し、中国政府が先週、アプリの使用を禁止したことは、それが中国でも利用できていたことを意味します。

音声データが仮に中国国内の他の企業を介していたとすれば、当局がそれを手に入れることもできるはずです。ただ、研究者らはAlpha ExplorationがAgora以外の中国企業を利用しているとの証拠はないとしており、いまのところ中国政府には会話内容が渡るようなことはない模様です。

ただ、Alpha Explorationは中国国内でのサービス使用に成功したユーザーについても保護するとしており、「アプリが中国国内のサーバーに情報を送信しないよう、暗号化措置を追加する」と述べました。暗号化はサードパーティーの企業に依頼し72時間ほどで完了するとしており、中国からユーザーに関する情報やデータを取得することは難しくなるはずです。

ただ、サービスを提供していない中国国内でそれを利用できたユーザーは、おそらく都心部に住む富裕層と考えられ、中国当局の監視の標的になる可能性があります。いまはまだ招待制で、端末が比較的高価なiPhone向けにしかリリースされていない状況ですが、サービスが収益化を見据えて成長を続け、あらゆる人が安心して利用できるようにするためには、暗号化対策を追加し安全性の高さをユーザーにアピールするのは重要なことです。

(Source:Stanford Internet ObservatoryEngadget日本版より転載)

関連記事
Appleのティム・クック氏がアドテックは社会の破滅をもたらすと警告、同社アプリトラッカーのオプトイン機能を擁護
サードパーティーがユーザーデータを知らぬ間に収集する副次的監視の時代を終わらせよう
中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に
Clubhouseと中国、ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理
プライバシーポリシーへの懸念で欧米で人気のSignalとTelegramは中国国内でも(いまのところ)拡大中
プライバシーがテック企業の新たな競争の場に
Zoomがセキュリティを巡る「虚偽」主張問題で連邦取引委員会と和解
Zoomが待望の無料ミーティングのためのエンドツーエンド暗号化を開始するが機能制限多数
人気の無料VPNではプライバシーは保護されていない
TikTok、WeChatをめぐる騒動と、米中間で広がるデジタル格差
TikTokのファクトチェック、米国でのIPO、中国の所有権、そして5000億円超の税金
中国が考える「データセキュリティの世界標準」が明らかに
TikTok禁止を予期して世界中でVPNの人気が急上昇、なぜ?
インド政府がTikTokなど中国企業の59のアプリを禁止すると発表
Zoomが中国政府の要請で人権活動家のアカウントを一時停止したことを認める

カテゴリー:セキュリティ
タグ:暗号化(用語)SNS / ソーシャル・ネットワーキング・サービス(用語)音声Clubhouse(製品・サービス)中国(国・地域)VPN(用語)

中国当局がテスラを品質問題でに召喚

中国で現地生産能力を増強し急成長を遂げているTesla(テスラ)は、電気自動車の品質問題を巡って中国政府から協議に召喚されている。

米国時間2月8日遅くに掲載された中国政府の通達によると、消費者から不正な加速、バッテリーの発火、ソフトウェアアップグレードの失敗、その他の車両問題について苦情を訴えたことを受け、市場規制当局やサイバーポリス、交通当局を含む中国政府のグループがTeslaと協議を行ったとのこと。

Teslaは中国語SNSのWeibo(ウェイボー)で「政府省庁の指導を真摯に受け止める」とし、「中国の法律を厳守します」と述べている。また安全性と消費者の権利を確保するために、規制当局の指示の下、「内部の運営構造とワークフロー」の強化に取り組むという。

Teslaはここ数年、中国で人気が急上昇する一方、国内では部品や機能の不具合によるリコールが相次いでいる。中国の市場規制当局は先週、政府との協議の直前に、輸入車のModel Sの2万428台とModel Xの1万5698台をリコールしたと発表した。

Teslaにとって中国はますます重要性を増し、現在では第2位の市場となっている。Teslaは上海のGigafactoryで自治体による減税措置を受けているため、現地調達と生産が可能となり、Model 3などの価格を引き下げることができた。

Teslaが米証券取引委員会 (SEC)に今週提出した書類によると、中国は2020年に前年比で倍増となる66億6000万ドル(約6963億8000万円)の売上をTeslaにもたらし、同社の総売上の20%以上を占めた。2019年には、中国はTeslaの収益の約12%を占めた。

同時にTeslaはNioやXpengのような資金力のある地元発の中国電気自動車スタートアップと競合しており、両社とも米国で上場している。Xpengは2020年に合計2万7041台を出荷し、Nioは4万3728台でそれを上回った。しかしこれらの数字は、2021年に49万9647台に達したTeslaの総出荷台数にまだおよんでいない。

関連記事:中国は今やテスラの売上の4分の1近くを占めている

カテゴリー:モビリティ
タグ:Tesla中国

画像クレジット:WANG ZHAO/AFP/Getty Images / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:塚本直樹 / Twitter

TikTokの親会社ByteDanceが市場独占疑惑をめぐりTencentを提訴、中国の裁判所が受理

中国政府が同国のインターネット大手による独占的な動きを阻止しようとしている中、ByteDance(バイトダンス)がライバルのTencent(テンセント)との戦いを裁判所に持ち込んだ。

TechCrunchがByteDanceの広報担当者に確認したところ、北京の知的財産裁判所(知識産権法院)は、Tencentに対して提起されたByteDanceの訴訟の進行を許可したという。新興のメディア企業ByteDanceは、TikTok(ティックトック)の中国版であるDouyin(抖音)に対するTencentの制限が中国の独占禁止草案に違反していると主張している。Douyinは北京に本社があるのに対し、Tencentの拠点は深圳にある。

Tencentは3年前から、Douyinを同社の主力SNSアプリであるWeChatとQQからブロックしており、ユーザーがDouyinアプリのコンテンツを閲覧したり共有したりすることを禁止している。Tencentの行動は「間違いなく」独禁法草案で禁止されている「市場支配を悪用して競争を排除し、制限することで達成される独占的行動」に該当すると、Douyinは述べている

「当社は、競争は消費者にとってより良いものであり、イノベーションを促進すると信じています。我々の権利とユーザーの権利を守るために、この訴訟を提起しました」。

Tencentはこれに対し、今回の告発は虚偽で悪質な名誉毀損であると述べている。さらに、毎日6億人のユーザーが利用しているDouyinは、WeChatのユーザーデータにアクセスするために違法で反競争的な方法を使っており、同社のプラットフォームエコシステムとユーザーの権利を侵害したとして、ByteDanceを提訴する予定であると主張している。

ByteDanceとTencentは、それぞれがお互いの縄張りを狙っている。ByteDanceは、ソーシャルネットワーキングにおけるTencentの支配に対抗するためにチャットアプリをデビューさせ、Tencentは多数のショートビデオアプリを導入してDouyinの人気に対抗しようとした。どちらも、それぞれの分野で他方の優位性を脅かすことはできていない。

関連記事:中国人が熱狂するショートビデオにネットの巨人も気が気ではない

20年間の比較的緩い規制に続いて、中国政府は中国のインターネット大手の独占的行為を抑制しようとする姿勢を強めていることが、早期の兆候として示されている。

2020年11月には、中国のトップ市場規制当局が初の独占禁止法の草案を発表し、訴訟や調査への門戸が開かれた。12月には、規制当局がAlibaba(アリババ)のプラットフォーム上での独占販売をベンダーに強要したとして、Alibabaに対する独占禁止法の調査を開始した。そして2021年2月になって、北京の裁判所は、反競争的な行為を行ったとして、ファッションeコマースサイトのVipshopに300万元(約4900万円)の罰金を課した。今後数カ月の間に、中国のインターネット大手がさらに独禁法違反で打撃を受けても不思議ではないだろう。

関連記事:中国eコマース大手アリババの独禁法違反調査始まる

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ByteDanceTencent裁判中国独占禁止法

画像クレジット:Greg Baker / Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

中国で人気が出すぎたClubhouseがつかの間の検閲回避を経て利用禁止に

人々が1週間の旧正月休暇を迎える準備をしていた中国では、現地時間2月8日夜、数千人におよぶユーザーがに突然Clubhouse(クラブハウス)にアクセスできなくなったことに気づいた。WeChatグループ内では、Clubhouseのユーザーが慌てて状況を報告し、最新のライブオーディオアプリにまたアクセスする方法を求めて助け合おうとした。

ドロップイン音声チャットのスタートアップClubhouseは、このところ中国で急速に勢いを増しており、早い段階から多くのユーザーがさまざまなトピックについての会話をしていた。しかしこのアプリは、他の米国ベースのアプリやサービスと同じ運命をたどる可能性が高いと思われる。それは、当局による禁止だ。2月8日の時点で、Clubhouseが直面しているのは確かにその状況だとTechCrunchは確認した。アプリのウェブサイトはブロックされていないままだが、中国のユーザーは、Clubhouseアプリにアクセスできなくなった。中国のインターネット規制に準拠するためにアプリのモデルをどれだけ変更しなければならないか考えると、アプリが同国に戻ってくる可能性は低い。

現地時間2月8日夜、中国のユーザーがClubhouseにアクセスしようとすると通知が出て、アクセスできなくなった

Clubhouseは本拠地の米国でも、効果的なモデレーションと虐待防止が実践されていないという批判に直面してきた。それを考えると、政府が不適切と判断した情報の拡散を抑止するための措置をより厳格に実施している中国の法に触れたことは、さほど驚くことではない。同アプリはまた、正式にApple(アップル)の中国のApp Storeを介して利用可能ではなかった。しかし、ユーザーが自分のデバイスにアプリをインストールしていた場合、アプリとそのオーディオルームへのアクセスは、これまではVPNを使用することなく自由に利用可能だった。

以前、TechCrunchが報じたように、同アプリは9月のグローバルローンチ後、中国のApp Storeでも短期間利用可能だったが、10月に削除された。その際Clubhouseがアプリを削除したのか、Appleが削除したのかは不明だ。

関連記事:Clubhouseと中国、ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理

中国で検閲を監視する団体であるGreatFire.orgのキャンペーンとアドボカシーディレクターであるBenjamin Ismail(ベンジャミン・イスマイル)氏はこう語っている。「これはAppleのやっていることではありませんが、彼らはおそらく板挟みの窮地を脱して喜んでいるんじゃないでしょうか。Appleの関与によるApp Storeからの削除から、当局によるサーバーのブロッキングへと議論が移りますから」。

Clubhouseは中国のApp Storeに掲載されていなかったため、中国本土からどれだけの人数がプラットフォームを利用していたのかは不明だ。中国ではタブー視されている1989年の親民主化運動「天安門 事件」を議論するルームでは、禁止前の2月8日の午後、参加者数が最大5000人に達した。同じトピックに焦点を当てた別のルームには、2000人以上のユーザーが集まった。

北京時間の2月8日午後7時頃には、ClubhouseのAPIがブロックされたとGreatfire.orgがTechCrunchに伝えた。一部のユーザーはWeChatグループ内で、中国の電話番号で検証コードを取得できなくなったと報告しており、障害のレベルに手がかりを加えている。中国の多くのユーザーは中国の電話番号を使ってサインアップしており、これは国から発行される実在のIDとリンクしているため、警察が彼らを特定するのが容易になる可能性がある。

過去2週間で、Clubhouseは中国本土のいくつかのコミュニティ内で人気が急上昇し、スタートアップ、投資、アカデミック、または海外体験のバックグラウンドを持つ人々などがそれに含まれていた。彼らの多くは、無料で政治的な議論がプラットフォーム上で頻繁に行われていることを考えると、同アプリは中国で長く続かないだろうと認識していた。「Clubhouseは中国でどのくらい続くのか」、または「Clubhouseを利用しているために、お茶を飲みましょうと誘われたことがあるか」というタイトルのClubhouseルームは、多くのユーザーを引きつけていた。「お茶を飲む」というのは、取り調べを受けるために警察に連行されることを意味する隠語だ。

禁止される数時間前、中国の国営新聞であるGlobal Timesは「Clubhouseは『言論の自由がある天国』ではないと中国本土のユーザーは語る」という記事を掲載し、このアプリを「反中国」コメントが盛り上がっているプラットフォームだと説明するユーザーの言葉を引用した。

TechCrunchが米国時間2月6日に報じたように、今回の禁止に先立つClubhouseの初期の成功は、すでにドロップイン音声SNSを中心に設計された多くの国産の代替アプリの誕生を促している。しかし、オリジナルのアプリ自体が国内でアクセスできなくなったのと同じ理由で、これらの似たような取り組みが、中国でのClubhouseの人気を再現するのは難しいかもしれない。

TechCrunchの得た情報によると、バーチャルプライベートネットワーク(VPN)のようなグレート・ファイアウォール(GFW)の迂回ツールを使って、中国本土の一部のユーザーはClubhouseへのアクセスを取り戻すことに成功したという。一部の機能では、VPN経由でルームに入っている限り、VPNをオフにした状態でも音声を聞いたり話したりできるようになっている。TechCrunchは以前、米国と中国を拠点とするAgoraが、Clubhouseのライブオーディオインタラクションが利用するSDKを提供していると報じている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:ClubhouseSNS中国

画像クレジット:Thomas Trutschel / Contributor

原文へ

(文:Darrell Etherington、Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

Clubhouseは中国でも流行るのか?ライバルアプリや生まれつつあるクローンそして政府による情報管理

中国時間2月5日になったばかりの真夜中過ぎに、私は中国のスタートアップコミュニティで有名な、Feng Dahui(フェン・ダーウェイ)氏が主催するClubhouse(クラブハウス)のroomを偶然見つけた。0時半頃だったが、まだ500人近くのリスナーがいて、その多くは中国のエンジニア、プロダクトマネージャー、起業家だった。

その場の議論の中心となっていたのは、仮想ルームの音声チャットに気軽に参加できるアプリClubhouseが、中国で成功するかどうかということだった。その問いは、ここ数週間私も自問していたものだ。現在シリコンバレーで、オーディオソーシャルネットワークに関する誇大広告が渦巻いていることを考えると、中国の知識豊富で技術に精通したユーザーたちが、このプラットフォームに群がり始めるのは当然のことだ。中国ではアプリ招待への需要が高まっていて、人々は最高100ドル(約1万500円)ほどを払って転売屋から招待を購入している。

私が話した多くのユーザーは、このアプリは中国でその可能性を完全に発揮することはなく、またプロダクトマーケットフィットが行われることもないままに禁止されるだろうと信じている。実際、多くの人が参加しているいくつかの中国語ルームでは、仮想通貨取引から香港での抗議活動に至る、中国では通常検閲されている話題が触れられている。

慰めになるかどうかもしれないが、Clubhouseのクローンや派生商品は中国の中ですでに開発されつつある。Herockというニックネームで通っている起業家でブロガーの中国人は、似たようなことに取り組んでいる「少なくとも数十の国内チーム」を知っていると私に教えてくれた。さらに中国では、音声ベースのネットワーキングは、異なる形態ではあるものの、何年も前から存在している。もしClubhouseがブロックされた場合、いずれかの代替アプリは成功するのだろうか?

情報管理

Clubhouseの直接的なクローンは、おそらく中国では使えるようにはならないだろう。

10億人近くのインターネットユーザーを抱えるこの国では、いくつかの要因がその見通しを暗いものにしている。Clubhouseの主要な魅力は、リアルタイムで会話が有機的に流れることだ。しかし名前を出すことは拒否したある中国のオーディオアプリの創業者は「中国政府がコントロールなしに、自由な議論が起こり広がることを許すことがあり得るでしょうか」と反語的に問いかけた。たとえば中国でのビデオライブストリーミングは、誰が話すことができて何をいうことができるかを制限する厳しい規制監督下にある。

そして匿名創業者は、2011年に行われた有名なネット上の抗議運動を引用した。多数の小規模業者たちが、料金値上げ案を巡ってAlibaba(アリババ)のオンラインモールへのサイバー攻撃を開始したのだ。彼らがお互いの行動の調整に使っていたのはYYというツールで、最初はゲーマー向けの音声チャットソフトとしてスタートし、後に動画ライブ配信で知られるようになった。

「当局はリアルタイム音声通信の威力を恐れています」と創業者は付け加えた。

Clubhouseがすでに検閲の対象になっている兆候がある。Clubhouseは中国内で仮想プライベートネットワーク(VPN)やその他の検閲迂回ツールを使うことなく完全に機能するが(少なくとも今のところは)、iOS専用のアプリは中国のApp Storeでは利用できない。Clubhouseは、2020年9月下旬に世界リリースされた直後にストアから削除されたと、アプリ分析会社のSensor Tower(センサータワー)は述べている。

現在中国のユーザーがClubhouseをインストールするためには、他国のApp Storeに切り替えてアプリをインストールする必要があり、ユーザーへのリーチがさらに制限されている。

Apple(アップル)が、政府のアクションを見越して先制的にClubhouseをストアから削除したのかどうかは不明だ。主要な海外アプリの削除が遅れることで検閲側から非難されることは予想される。あるいは、リアルタイム放送は、いかなる形であっても中国の規制当局によってチェックされないことはないということを知って、Clubhouseがアプリ自体を自主的に削除したのかも知れないが、これは必然的にユーザーエクスペリエンスを損なうことになる。

Clubhouse自身の中国進出の優先度は、他の地域で受け入れられつつあることを考えると、かなり下がっているだろう。Sensor Towerの推計によれば、Clubhouseアプリはこれまでのところ、世界で約360万件のインストールを数えている。このアプリのインストール数の大部分は米国を起点としており、新規のダウンロード数は約200万回、次いで日本とドイツが合わせて40万回以上のダウンロード数を記録している。

Clubhouseのエリートたち

中国スタートアップ界の重鎮、フェン・ダーウェイ氏が主催するClubhouseルーム(画像クレジット:TechCrunch)

中国のインターネット上で検閲なしでオープンな議論を行うことは難しそうだということが、市場にまだ独自のClubhouseがない理由なのかもしれない。しかし、たとえClubhouseのようなアプリが中国で存在を許されたとしても、Douyin(ドウイン、抖音。TikTokの中国語版)やWeChat(ウィーチャット)のようには全国的で大規模なものにはならないかもしれない。

このアプリは「エリート主義的」で、音声版Twitter(ツイッター)のようなものだと、NASDAQ(ナスダック)に上場する中国の音声プラットフォームLizhi(リージー、荔枝)の、CEOで創業者のMarco Lai(マルコ・ライ)氏は語った。これまでのところ、Clubhouseの招待制モデルは、米国のユーザーに関しては主にテック、アート、セレブリティ業界に限定されている。Herock氏の観察では、中国国内のユーザー層もこの傾向を反映しており、特に金融、スタートアップ、プロダクトマネジメント、暗号通貨トレーダーなどの分野に集中している。

しかしこのようなユーザーの中にも、自由に使える時間の問題がある。先日の夜は、深夜にByteDance(バイトダンス)社員たちの会話を立ち聞きした。私はほとんどの場合には、仕事が終わった後の深夜近くにClubhouseに入っている。実際それが、中国でのユーザー活動がピークを迎える時間帯だからだ。中国のプロフェッショナル向けネットワーキングコミュニティRaimaker(レインメーカー)の創業者であるZhou Lingyu(チョウ・リンユー)氏は、Clubhouseは中国で多くのユーザーを引きつけることができるだろうかという私の問いかけに、「中国に、そんなに十分な時間を持つ人はいるのでしょうか?」と答えた。

彼女の発言はすべての人には当てはまらないかもしれないが、Clubhouseがターゲットにしているように見える、あるいは少なくとも惹きつけているように見える中国のハイテク中心の高学歴層は、中国のハイテク企業で一般的にみられる悪名高い「996」スケジュール(9amから9pmまで週6日働く)で働いている可能性が高い層でもある。Clubhouseが奨励する「有意義な会話」は望ましいものだが、アプリの持つリアルタイムで自然発生的な会話の性質は、より効率的で管理しやすい時間の使い方を好む可能性の高い996ワーカーたちにも多くの負担を求めることになる。

関連記事:中国の長時間労働にスタートアップが反撃

モデレーターが活動的であり続けるためには、他の人間とつながるという純粋な情熱とは別に、物質的なインセンティブも必要かもしれない。1つの可能性のある解は、質の高い会話をポッドキャストのエピソードに変えることだ。「Clubhouseは、1回限りのカジュアルな会話のための場所です。質の高いコンテンツを制作している人は、会話を録音して、後で繰り返し聞くことができるようにしたいと思うでしょう」とチョウ氏は述べている。

中国内の対応品

中国では、オーディオネットワークは少し違うかたちで使われてきた。一部の企業は、ゲーミフィケーションを重視し、アプリに遊び心のあるインタラクティブな機能を満載にしている。

たとえばLizhiのソーシャルポッドキャストアプリはただ聞くだけではない。アプリではそれに加えて、リスナーがホストにメッセージを送ったり、バーチャルギフトを使ってチップを渡したり、詩を読んでいるホストを聞きながら自分の声を録音したり、オンラインカラオケコンテストで競い合ったりといったことを行うこともできる。

ホストとリスナーの間の交流は、Lizhiの運営スタッフがキャンペーンをデザインし、コンテンツの品質とユーザーのエンゲージメントを確保するために舞台裏でコンテンツ制作者と協力しているため、比較的整然と行われている。それに比べてClubhouseの成長は、より有機的なものになっている。

「中国のプロダクトは、現実の生活の中での自然な社会的行動をプロダクトの中に再現することよりも、観戦やパフォーマンスに重点を置いています。Clubhouseの機能はシンプルです。どちらかというと喫茶店に近いですね」とライ氏はいう。

Lizhiのもう1つの音声製品であるTiya(タイヤ)は、Clubhouseに近いものと考えられるが、Tiyaのユーザーは15歳から22歳の若者が多く、ゲームやスポーツ観戦をしながら音声でチャットができるエンターテイメント性に重点が置かれている。それもまた、交友関係の必要性をあおる。

2019年にサービスを開始したDizhua(ディシュア)も、Clubhouseと比較されている中国製のアプリだ。ルーム発見のために、人びとの既存のネットワークを利用するClubhouseとは異なり、Dizhuaは匿名のユーザーを彼らが登録した関心事項に基づいてマッチングする。Clubhouseでの会話は、気軽に始めたり終えたりすることができる。Dizhuaはユーザーに、テーマを選んで留まり続けることを奨励している。

「Clubhouseは純粋なオーディオアプリで、タイムラインもコメントといったものもありません」と、中国のベンチャーキャピタル企業内専門家であるArmin Li(アーミン・リー)氏は述べている。「それはぶらぶら歩きや、ながら作業のように、ユーザーの目的が明確でないようなシナリオ向けの、カジュアルで一時的なスタイルなのです【略】その高いコミュニティ参加率、コンテンツの質、ユーザーの質は、中国の音声プロダクトには見られないものです」。

要点は、中国のプラットフォーム上で行われる会話は、コンテンツ監査人によって監視されているということだ。中国のネットプラットフォームでユーザー登録を行う際には実名確認が必要なので、ネット上には本当の匿名性は存在しない。ユーザーが議論できるトピックは限られており、多くの場合、楽しくて無害なものに傾きがちだ。

にもかかわらず中国の人がClubhouseに参加する理由は何だろう?私のようにFOMO(時代遅れになることへの恐れ)から参加した人もいる。起業家たちは常に次の市場機会を探し求めているし、インターネットの巨人のプロダクトマネージャーたちは、Clubhouseで学んだことの1つ2つでも自社の製品に応用できることを期待している。一方、Bitcoinのトレーダーや活動家は、Clubhouseを中国の規制当局の権限外にある避難所と見なしている。

テクニカルサポート

Clubhouseに関して印象的な点は、中国内でとてもスムーズに動いていることだ。海外のアプリは、たとえ中国内で禁止されていない場合でも、サーバーが中国から離れているために読み込みが遅くなることが多い。

Clubhouseは、ときには何千人もの参加者が集まる巨大なチャットグループをサポートする技術を、実際に自社で開発しているわけではない。その代わりに、Agora(アゴラ)社のリアルタイムオーディオSDKを使用しているのだと2つの情報ソースが教えてくれた。また、South China Morning Post(サウスチャイナ・モーニング・ポスト)紙もそのことを報じている。AgoraのCEOであるTony Zhao(トニー・ジャオ)氏にパートナーシップの有無を確認したところ、彼は電子メールで、自社とClubhouseとの関係に関しては肯定も否定もできないと返信してきた。

その代わりに彼は、世界中の200カ所以上の共同データセンターで稼働し、インターネットを覆っているAgoraの「仮想ネットワーク」を強調した。そこで同社は、アルゴリズムを使用してトラフィックを計画し、ルーティングを最適化している。

注目すべきは、Agoraの運営チームは主に中国と米国にいるということで、必然的にClubhouseのデータが中国の規制の範囲内にあるかどうかについて疑問が生じる。その可能性については同社がIPO目論見書の中で触れている。

Agoraのようなリアルタイム音声技術プロバイダーを利用すれば、機を見るに敏な者なら低コストでClubhouseのクローンを迅速に構築することができる、とHerock氏は述べている。現地の規制上の課題やユーザーの行動が異なるため、中国の起業家がClubhouseを直接コピーすることはないだろう。しかし彼らは、Clubhouseまわりの過剰ともいえる人気が消えてしまう前に、音声ネットワーキングを使った独自の解釈を生み出すために競争をすることになるだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Clubhouse中国

画像クレジット:Getty Images

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:sako)

中国版TikTokのライバル動画アプリKuaishouが上場初日に194%急騰、時価総額19兆円超に

中国以外ではあまり評価されていない中国の動画アプリ「Kuaishou(快手)」は、香港証券取引所で大規模な新規株式公開(IPO)を完了した。このアプリは、TikTok(ティックトック)の中国バージョンDouyin(抖音)の最大のライバルであり、広告やサブスクリプションで収益を上げている多くの欧米の動画プラットフォームとは異なり、チップビジネスを最大の収益源にしている。

Kuaishouの株式は中国時間2月5日、香港市場で1株あたり338香港ドル(約4593円)で取引を開始し、公開価格115香港ドル(約1563円)に対して194%高を付け急騰した。これにより、同社の時価総額は1兆4000億香港ドル(約19兆250億円)近くまで膨らんだ。今回の上場では、オーバーアロットメントオプションを除いた総株数は3億6521万8600株で、同社は約54億ドル(約5689億円)を調達した。

Tencent(テンセント)に支援されているKuaishouは、これにより成長投資のための財源を補充し、うまくいけば黒字化に向けてまい進することができるだろう。2020年の最初の9カ月間で、同アプリは2020年同期の18億元(約293億円)の調整後利益と比較して、72億元(約1173億円))の調整後純損失を計上していた。

Kuaishouの株式は2020年11月に終了した11カ月間で、4億8100万人の月間ユーザーを誇った同アプリの事情に精通している中国の機関投資家と個人投資家の両方で大ヒットとなった。同アプリは香港市場で過去最多の応募数を記録し、合計1648億ドル(約17兆3626億円)にのぼる個人投資家の需要を引きつけたとサウスチャイナ・モーニング・ポストが報じた。同社株は、Phillip Securities Group(輝立証券集團)が運営するグレーマーケットプラットフォーム上で322.8香港ドル(約4387円)、オンラインブローカーのFutu Securities(富途證券)で421香港ドル(約5721円)に達した。

Douyinと同様、Kuaishouも(GIFアプリとしての短い期間を経て)15秒の短い動画を作成して共有するためのプラットフォームとして始まり、後にライブストリーミングへも拡大していった。名を馳せたクリエイターはフォロワーとのさらなる交流を求めたいと考え、フォロワーはクリエイターへの忠誠心や愛情を表現したいと思うだろうから、この移行は自然なことだ。ライブストリーミングとバーチャルギフトは、そのようなニーズに応える。

Kuaishouには主に3つのマネタイズ方法があり、中でもライブストリーミングが収益の大部分を占めている。2020年11月に終了した11カ月間に、同アプリのユーザーのうち5800万人がライブ動画に毎月お金を費やし、平均すると1人の有料ユーザーにつき47.6元(約776円)の収入があったという。

同アプリは広告も販売しており、各ユーザーが71.4元(約1163円)のマーケティング収入をもたらしている。最後に、Kuaishouではクリエイターが商品を販売することもできる。GMV(Gross Merchandise Value、流通取引総額)はeコマース取引を測る上で緩く使われる業界指標だが、Kuaishouのプラットフォームを通じ直接購入につながったGMVは同じ期間中に3327億元(約5兆4200億円)に達したという。

ちなみに、Alibaba(アリババ)によるTaobao(淘宝、タオバオ)のライブ配信プラットフォームであるTaobao Live(淘宝直播、タオバオライブ)は、12月に終了した12カ月間のGMVで4000億元(約6兆5200億円)以上のGMVをもたらした

Kuaishouは増え続けるライブストリーミングからの収益を享受しているが、その背景には規制上のリスクが潜んでいる。中国政府は、18歳未満のユーザーがバーチャルギフトを購入することを禁止している。また規制当局はプラットフォーム運営者たちに対し、毎月ユーザーが購入できるバーチャルギフトの額に上限を設けるよう促しているが、今のところ上限を特定したり提案したりはしていない。

同社の目論見書には「バーチャルギフトにおいて最終的に課されるユーザー支出の制限は、バーチャルギフティングから得られる収益や業績に悪影響をおよぼす可能性がある」と記載されており、Kuaishouはそのリスクを認識している。

規制当局がバーチャルギフトの規制に踏み切るまでの間、Kuaishouは事業の多角化を図りながら、今後も成長を続けていくことになるだろう。

関連記事:中国の人気動画サイトKuaishouがたった6カ月で1060億円を失った経緯

カテゴリー:ネットサービス
タグ:KuaishouIPO中国

画像クレジット:Kuaishou

原文へ

(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)