中国のD2Cコスメブランド「完美日記」のYatsenが創業35年の名門スキンケアブランドEve Lomを買収へ

中国のコスメ市場では歴史的に見ると海外ブランドが崇拝されてきたが、近年は中国国内のスタートアップがより安価でローカライズされたオプションを提供して、Z世代の消費者を獲得することが増えている。その中でも特に注目されているのが、設立5年のスタートアップYatsen(逸仙控股)が所有するD2Cブランド「Perfect Diary(完美日記)」だ。

Yatsenは2020年11月にニューヨーク証券取引所(NYSE)で6億1700万ドル(約660億円)のIPOを行い、資本市場にその存在を知らしめた。同社の主力ブランドであるPerfect Diaryは、オンライン売上高では、L’Oréal(ロレアル)や資生堂に次ぐトップメイクアップブランドとして常にランクインしている。そして今、同社は新たに、英国のプライベートエクイティ企業Manzanita Capitalが所有する創業35年のスキンケアブランドEve Lom(イヴロム)の買収に乗り出すという、大きな動きを計画している。

中国時間3月3日、中国革命の父である孫文(孫逸仙、広東語ローマ字表記Sun Yat-sen)にちなんで名づけられたYatsenは、クレンザーで知られるEve Lomを買収するための最終契約を締結したと発表した。この取引は数週間以内に成立する見込みで、Manzanitaは少数株主として同事業に参画し続け、戦略的パートナーとしての役割を果たすという。

取引の規模は非公開だが、2021年2月にBloombergは、Manzanita Capitalが2億ドル(約214億円)程度でEve Lomを売却しようとしていると報じていた。

Perfect Diaryは口紅、アイシャドーパレット、ファンデーションなどの商品をXiaohongshu(小紅書)などのソーシャルコマースプラットフォームでレビューする多数のインフルエンサーと提携し、中国での知名度を上げてきた。また同社は、中国で豊富に存在する化粧品やパッケージのサプライヤーの多くが国際的なトップブランドと提携しているという利点を活かしている。これらの戦略により、Perfect Diaryは品質に妥協することなく手頃な価格を提供し、「Xiaomi(シャオミ、小米科技)のコスメ版」というあだ名を得ている。

Yatsenは創業以来、飛躍的な成長を遂げてきた。効果的なEC戦略のおかげで、2019年の総売上高は2018年から4倍以上の35億元(5億4000万ドル、約578億円)になった。しかし、損失も膨らんだ。同社は2020年9月までの9カ月間に11億6000万元(1億7000万ドル、約182億円)の純損失を計上したが、前年同期には2910万元(約4億8000万円)の純利益を計上していた。

目論見書に記載されているように、Yatsenは製品ポートフォリオの多様化を図るため、買収の可能性を模索してきた。Eve Lomとの縁組により、同社は「グローバルなブランド構築能力と提供する商品をより豊かにしていきたい」と、Yatsenの創設者兼CEOであるJinfeng Huang(黄金峰)氏は声明の中で述べた。

Yatsenはすでに国際展開を開始しており、まず東南アジアに上陸し、Shopee(ショッピー)のようなeコマースサイトで販売している。同社は目論見書の中で、今後は「国際的な拡大を加速し、製品をローカライズするために、現地パートナーと選択的に協力していく」計画だと述べていた。確立されたブランドが多く競争の激しいメイクアップコスメ業界で、Yatsenの海外市場での冒険はこれから間違いなく注目に値する。

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タグ:Yatsen買収美容中国

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(文:Rita Liao、翻訳:Aya Nakazato)

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TechCrunch Japan

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