NASA探索車が火星にて生命存在の可能性を示すガスレベルを検知

NASAの探査車「キュリオシティ」が、火星地表から高レベルなメタンの存在を検知したことを、New York Timesが報じた。6月19日のミッション中に発見され、NASA研究者によって観測されたこの発見は、微生物が火星地下に存在していたことを証明する可能性がある。

地球上において、メタンは生物からの排出物により高密度で存在していることが多いため、研究者たちはこのガスが火星地下の微生物からの排出物である説を裏付ける、より確証の高い証拠を調査しようとしている。すべてが計画通りに進めば、早ければ6月24日にはキュリオシティによる新たな調査手段による結果が報告されるはずだ。

火星研究者にとって、測定可能な量のメタンの検知は注目に値する。なぜなら、メタンの測定値が正しいとすれば、それは最近生物によって生成された可能性が高いのだ。もしそうでなければ、比較的短時間で自然に分解されてしまう。一方で、地中に溜まっていたガスが小さな割れ目から噴出した場合など、メタンは生物がいなくても生成される。

NYTによると、研究者が火星でメタンを発見したのは初めてではないが、これまで観測された中で最も高い濃度であり、また少なくとも探査車の数値はNASAのMRO(マーズ・リコネッサンス・オービター)によっても暫定的に裏付けられている。地球以外で生命の存在の可能性が発見されたのは今回が初めてではないことを忘れてはならないが、また同時に、地球だけが生物を保持する唯一の存在である証拠が確認されたこともないのだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのロボット飛行士が宇宙で初の一歩を踏み出す

米国時間6月20日、NASAバージョンのコンパニオンキューブ(海外のゲーム「Portal」のキャラクター)が、初めて宇宙での「一歩」を踏み出し、国際宇宙ステーション(ISS)内の無重力空間で自ら回転する能力を示した。”Bumble”と呼ばれるそのロボットは、ISS内の宇宙飛行士と協力して働くためにNASAが開発したAstrobeeロボットの一つで、宇宙を単独で飛んだはじめてのロボットだ。

Bumbleの初飛行は、航空ショウで歓声の上がるようなものではない。ロボットが一歩前進して少し回転しただけだ。しかし、ロボットの推進システムが正しく動き、調整されていることを確認するための重要な基本動作だ。最終的にロボットは無人で動作し、基本的な保守作業や実験の補助を行う計画なので、気難しい人間宇宙飛行士と自由に空間を共有する前に、意図通り動作することを確認しておく必要がある。

Astrobeeシリーズには現在3体のロボットがいる。BmbleとHoney(これもISSにいる)、および予定通り行けば7月に次の補給ミッションに参加するQueenだ。いずれもカメラを搭載して人間が行う実験の様子を記録するほか、ロボット同士が協力して実験器具を移動することもある。充電のためにドッキングステーションに入ったり、小さなロボットアームで何かにぶら下がったり、ものを掴んだりすることもできる。

Bumble blinks!

この一辺30 cmの立方体ロボットは、NASAのエイムズ研究センターで開発された。フルに機能するようになれば、宇宙飛行士の作業を軽減し、人間にしかできないことに集中させられるはずだ。地球を周回するISSでは、実験、研究することが山ほどある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAが月軌道ゲートウェイへの補給について民間会社から意見公募

NASAが明かした初の女性宇宙飛行士を、そしてアポロ計画以来となる宇宙飛行士の月に送るという目標は、現在の予定では2022年末までに建設が開始される月を周回する新しい宇宙ステーションの設置を含む。米国時間6月14日、NASAは米企業がどのようにして宇宙ステーションへの補給を支援するのかについて、業界からフィードバックと見解を求める公募を発表した。

国際宇宙ステーション(ISS)と同様に、「月軌道プラットフォームゲートウェイ(LOP-G、あるいは単純にゲートウェイ)」は、目標の完成状態に到達するまで少なくとも6年はかかるとされている建設の多くの段階において、定期的な補給と貨物の輸送が必要になる。NASAはまた、月面着陸のためのパーツや、最終的には月面探査や基地の建設において、民間会社ができることを検討している。これは、正式な契約者を選定する前に、民間会社がどのような貨物の輸送手段を提供できるのかについて、非公式にガイダンスを求めている段階である。

業界からの要望をより深く掘り下げるために、NASAは6月26日に質問会を開催し、7月10日にコメントを発表する。実際の提案依頼書は今夏に公開され、NASAは最終的にその契約金額が70億ドル(約7500億円)に達すると予測している。

NASAは以前、ISSへの民間企業による商業輸送サービス(Commercial Resupply Services、CRS)として、SpaceX(スペースX)とOrbital Sciences(オービタル・サイエンシズ)、そして後にCRS の契約をOrbital ATK(オービタルATK、ノースロップ・グラマンに買収されたオービタル・サイエンシズ)とSierra Nevada(シエラネバタ)、Space Xにそれぞれ与えている。今回も、Space XやBlue Origin(ブルー・オリジン)、ノースロップ・グラマン、Lockheed Martin(ロッキード・マーティン)などが入札するものと予測されている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAの探査機が至近距離で撮った小惑星ベンヌの写真がすごい

NASAが、地球近傍小惑星Bennu(ベンヌ)の、思わず息をのむような新しい画像を撮影した。探査船OSIRIS-REx(オサイリス・レックス)が、この地球外オブジェクトをめぐる第二の新しい軌道から撮った写真だ。この写真が撮影されたのは6月13日で、ベンヌの全長がかなり分かる。その半分に太陽の光が当たっていて、残り半分はほぼ完全な影だ。

この画像はベンヌのおもしろい特徴も捉えている。上の図で言うと小惑星の下の方に、その最大の巨礫の「出っぱり」のようなものが突き出ていて、比較的なめらかな輪郭がそこだけ破れている。OSIRIS-RExの撮影距離はその岩からわずか0.4マイル(約644メートル)で、フットボール場2面ぐらいだ(観客席等も含めて)。その距離から探査機のカメラは直径1.6フィート(50センチ弱、Xbox Oneのサイズ)という細かい精度で小惑星の表面を撮影できた。

この軌道は、太陽系内のオブジェクトを宇宙船が周回する軌道としては、そのオブジェクトへのもっとも近い距離の軌道として宇宙記録を達成した。これだけ近ければ、NASAの研究者たちは、くねくねと宇宙を旅する小惑星の表面からと確実に同定できる羽毛状のデブリを調査できるだろう。もっと至近の利益としては、これだけすごい画像を見られるのも距離が近いからだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

月面のピット(竪穴)をロボで偵察して月の可住性を調べるNASAのプロジェクト

月面探査車はクールだけど、崖面を垂直下降できたら探査のお仕事はもっとクールだろう。カーネギーメロン大学(CMU)の研究グループは、NASAから200万ドルの研究助成金をもらって、垂直下降ロボットの開発に取り組む。それは、月面のあちこちにある竪穴を探検する方法を探る研究プロジェクトの一環だ。

ピットとクレーターは違う。クレーターは隕石の衝突によってできた面的構造物だが、竪穴すなわちピット(Pit)は地球上の陥没穴や洞穴に近い。表面はアクセスできるが地下には大きな空洞があって、そこには各種ミネラルや水や氷があるかもしれない。それだけでなく、未来の月探検者のための、すぐに使えるシェルターになるかもしれない。

CMUロボティクス研究所のRed Whittaker教授は、インテリジェントで機敏で早足のロボットを使って行うこれらのピットの接近調査には重要なミッションがある、と語る。すなわち、月を周回する軌道上からの観測でピットの存在はすでに分かっているけど、でもその詳細はまだまったくわかっていない。たとえば、これらの陥没穴のような竪穴は、未来の月探検ミッションの役に立つのか?役に立つとしたらどのように?

Whittakerの素案は「Skylight」というコードネームで呼ばれ、ある程度自律性のあるロボットが表面のどこを調べるか自分で選ぶ。しかもその行動は、速くなければならない。月面が夜になればずっとオフラインになる。だから1回のミッションで実働時間は約1週間だ。

NASAの野心的なミッションでは、2024年に再び月面に宇宙飛行士を送る。そして2028年には月に基地を作る。そのための重要な情報を「Skylight」のような偵察ミッションが提供する。しかし時間は切迫している。ロボットがピットを偵察するミッションは、2023年の予定なのだ。

画像クレジット: NASA/GSFC/Arizona State University

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

NASA探査機OSIRIX-RExが小惑星ベンヌで接近軌道の宇宙新記録を達成

宇宙のニュースが好きな人なら、Bennu(ベンヌ)という名前を聞いたことがあるだろう。それは、今から200年後ぐらいにわれわれの惑星に衝突するかもしれないと言われている地球近傍小惑星だ。衝突の確率は低いが、他の多くの小惑星よりは高い。この小惑星が注目される理由はいろいろあり、特に最近の発見では「アクティブである」と言われる。自分の軌道上をコンスタントに進みながら埃を噴出し、まわりの空間にばらまいているのだ。

その発見に促されてNASAは、宇宙を旅する岩を周回する探査機OSIRIS-REx距離を小さくする(小惑星により接近する)ことになった。探査機は昨年、観察のためにベンヌに到着したが、それはいくつかの既知の地球近傍小惑星の中から、調査ミッションに最適として選ばれたからだ。

OSIRIS-REx探査機は現在、ベンヌの質量中心の3000フィート(915m)上空にいるが、この距離は地球上空の平均的軍用攻撃ヘリの巡航高度よりも低い。NASAの親切な画像が、そのことを示している(訳注:図中の探査機の高度はBフェーズ更新後のそれと思われる)。

NASAは、今回の新しい(低い)軌道のことを「Orbital Bフェーズ」(B軌道段階)と呼んでいる。それはベンヌに限らず記録的な低さで、太陽系内の地球外天体への接近軌道としてはこれまででもっとも近い。8月半ばまでこの軌道にとどまり、今後数週間は小惑星表面の定期的写真撮影を行う。上で述べた、埃の噴出とばらまきを調べるためだ。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

月に宇宙飛行士が再び降り立つ費用は3兆3000億円に?

NASAが計画する月への帰還計画には、次の5年で300億ドル(約3兆3000億円)もの費用がかかるかもしれない。今週行われたインタビューの中で、同機関の管理者ジム・ブリデンスティン(Jim Bridenstine)氏がそう示唆した。もちろん、これはあくまでも概算に過ぎない。とはいえこれは私たちが初めて目にした包括的な数字であり、莫大な費用ではあるものの、予想されていたものよりは安いものである。

ブリデンスティン氏はCNNとのインタビューの中で、NASAが月面に再び降り立つために必要な費用は、200億ドル(約2兆2000億円)から300億ドル(約3兆3000億円)の間になるだろうと示唆した。さらに月軌道プラットフォームゲートウェイ(Lunar Gateway)を充実させたり、恒久的な構造物を残したりといったことを行う場合には、追加のコストが発生する。

この数字を広い視野から眺めてみた場合、NASAの年間予算は約200億ドル(約2兆2000億円)であり、これは連邦政府の他の多くの政府機関や予算項目と比較してごくわずかなものだ。予想される追加費用は年間平均4〜60億ドル(約4400億円から6600億円)になると思われるが、支出はそれほど一貫してはいないだろう。例えば、NASAが来年に向けての追加予算として要求したのは16億ドル(約1700億円)だけだ。

関連記事:月に宇宙飛行士を送るNASAの新計画名称はアルテミス

2019年の時点で、月への再着陸にかかる費用が1960年代のアポロ計画と同じ(約300億ドル)だということに驚く人もいるかもしれない。だかもちろん、今回私たちは惑星間有人旅行をゼロから構築するわけではない。アルテミス計画を支える技術とインフラストラクチャ(実証済みのものも最近開発されたものも)には既に何十億ドルもの投資が行われている。

それに加えて、ブリデンスティン氏は、NASAがこの規模のミッションでは過去になかったほどの規模で、商用宇宙利用と提携することで、コストが削減できることを頼りにしている。コストシェアリング、共同開発、および内部ではなく商用サービスの使用によって、数十億ドルが節約される可能性がある。

ブリデンスティン氏がCNNに語った副次的な目的は「アルテミスプログラムに資金を提供するために、NASAの一部と共喰いになることがないようにすることです」ということだった。よって、他のミッションから資金を引き出したり、あるいは他のプロジェクトから技術や部品を選択することは考えられていない。

議会がその予算を承認するかどうかはまだわからない。今後5年間での技術開発と展開の基本的なスケジュールについては、さらに多くの懸念がある。たとえ何十億ドルを費やそうとも、すべてが計画通りに進んだとしても、NASAは月面への帰還ミッションがこの期間では不可能であることをただ知ることになるのかもしれない。例えば、SLSやOrionのプロジェクトは予算を超えており、繰り返し延期されている。

大胆で積極的なタイムラインは、NASAのDNAの一部だ。とはいえ彼らは最善の計画を立ててはいるものの、エンジニアとプログラムマネージャーたちが最悪の事態にも備えていることは確実だろう。彼らがやり遂げることを見守ろう。

画像クレジット: NASA

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(翻訳:sako)

NASAは国際宇宙ステーショの「商用化」を宣言、民間宇宙飛行士の受け入れも

6月7日に開かれたイベントで、NASAは、国際宇宙ステーション(ISS)を地球の低軌道での商業活動のハブとする案を発表した。長い間、NASAは、宇宙での民間事業を支援する拠点としてISSを位置づける計画を練っていた。

「国際宇宙ステーションの商用利用の解禁をお伝えするために、私たちはここに来ました」と、NASAの首席報道官Stephanie Schierholzはカンファレンスの口火を切った。20の企業とNASAの職員がステージに上がり、この新たな商用化の発表と、その機会や計画に関する討論を行った。

計画には、民間宇宙飛行士がアメリカの宇宙船を利用してISSを訪問し、滞在することを許可する内容も含まれている。また、「宇宙での製造」、マーケティング活動、医療研究「などなど」、ISSでの民間事業の活動を許可するとNASAは話していた。

NASAは、5つの項目からなる今回の計画は、ISSの政府や公共部門の利用を「妨げるものではなく」、民間の創造的な、また利益追求のためのさまざまな機会を支持するものだと明言している。NASAの全体的な目標は、NASAが、ISSと低軌道施設の数ある利用者のなかの「ひとつ」になることであり、それが納税者の利益につながると話している。

NASAの高官から今日(米時間6月7日)発表された、5つの内容からなる計画は次のとおりだ。

  • その1:NASAは、国際宇宙ステーション商用利用ポリシーを作成した。搭乗員の時間、物資の打ち上げと回収の手段を民間企業に販売することなどを含め、初回の必需品や資源の一部を提供する。
  • その2:民間宇宙飛行士は、早ければ2020年より、年に2回まで短期滞在ができる。ミッションは民間資金で賄われる商用宇宙飛行とし、アメリカの宇宙船(SpaceXのCrew Dragonなど、NASA有人飛行計画で認証されたもの)を使用すること。NASAは、生命の維持、搭乗必需品、保管スペース、データの価格を明確に示す。
  • その3:ISSのノード2 Harmonyモジュールの先端部分が、最初の商用目的に利用できる。NASAはこれを、今後の商用宇宙居住モジュールの第一歩と位置づけている。6月14日より募集を受け付け、今年度末までに最初の顧客を選定し、搭乗を許可する。
  • その4:NASAは、長期の商用需要を刺激するための計画を立て、まずは、とくに宇宙での製造と再生医療の研究から開始する。NASAは、6月15日までに白書の提出、7月28日までに企画書の提出を求める。
  • その5:NASAは、長期にわたる軌道滞在での長期的な商業活動に最低限必要な需要に関する新たな白書を発表する。

商用輸送の費用を下げることは、この計画全体にとって、きわめて重要であり、その問題は繰り返し訴えられてきた。それは、費用を始めとするさまざまな問題を解決し、単に商用化を許可するだけでなく、実行可能なものにするための手助けを、民間団体に呼びかけているように見える。もうひとつの計画は、次の10年、さらにその先に及ぶ長期にわたり、民間団体からのISSへの投資を呼び込み、ISSを民間宇宙ステーションに置き換える可能性を開くというものだ。それは最終的に、寿命による代替わりの問題の解決につながる。

補給ミッション中のSpaceXのDragonカプセルがISSを離れるところ。

TechCrunchのJon Shieberが、4月、ISS米国立共同研究施設の次席科学官Michael Roberts博士をインタビューした際に、宇宙ステーションの商用化について話を聞いている。

Roberts博士は、ISSで民間団体が事業を行えるようになる可能性は一定程度あると明言していた。これには、たとえば、関心の高い製薬業界の前臨床試験や薬物送達メカニズムといった分野の「基礎研究」も含まれる。製造業界では、無重力や真空という環境を利用して、現在の製造方法の改善を目指す民間企業をRoberts博士は挙げていた。

重要な細目としては、ISSで許されるマーケティング活動の範囲の拡大がある。ISSに搭乗してるNASAのクルーは、マーケティング活動に参加できる(とは言え、カメラの前でいかにもクルーらしく振る舞う程度だが)。民間宇宙飛行士の場合は、広告や宣伝が許される範囲が大幅に柔軟化されるため、さらに大きな仕事ができるようになる。理論的には、もしこれがディストピアの方向に流れたならば、レッドブルの超絶エクストリームな宣伝活動がもっと増えるということだ。

NASAによれば、現在も50の民間企業がISSで実験を行っているとのことだが、今回の発表は、その機会を、より望ましい形と規模の枠組みに、時間をかけて整備させてゆくことを意味している。

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(翻訳:金井哲夫)

民間宇宙探査のパイオニアAnousheh Ansariは国際宇宙ステーションの商用化を歓迎

XPRIZEのCEOでProdeaの創設者であるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏は、イランで過ごしていた子供時代に宇宙飛行士になることを夢見ていた。しかし、ご想像のとおり、周りの人間はほとんどがその野心を理解してくれなかった。ところが2006年、彼女はロシア宇宙センターで私財を投じて訓練を受けてソユーズ宇宙船に乗り、個人資金で国際宇宙ステーション(ISS)を訪れた世界最初の民間女性となったのだ(しかもそれは、イランの民間人、そしてイスラム教徒の女性としても初だった)。

その当時NASAは、アンサリ氏が料金を支払ってISSに搭乗するというアイデアには興味がなく、むしろ明らかに嫌がっていた。それから13年が経った今週の初め、NASAは、ISSを「ビジネスに開放する」と公式に発表し、一晩の宿泊料を1人あたりおよそ3万5000ドル(約380万円)と提示した(これはあくまで宿泊料金。旅費は自分で考えないといけない)。今週、トロントで開かれているCreative Destruction Lab(創造的破壊研究所)イベントで、私はアンサリ氏に会い、今回の画期的な決定が宇宙ビジネスにどのような利益をもたらすのか、またこの分野での彼女の展望、さらに宇宙に特化したスタートアップ全般に与えられるチャンスについて話を聞いた。

「ほんと7年前の6日間、もっと長かったかも知れないけど、そのとき使っていたノートパソコンを持ってくればよかったわ。そこにはISSの賃貸化。それは現実になる!って書いてあったの。私には予知能力があったのね」とアンサリ氏は冗談を飛ばした。「でも、それは理に適っていると思います」。

宇宙ステーションを訪れ利用することで得られる商業的、個人的な利益に対するNASAの認識を考えるに状況が変化した理由はいくつもある。とりわけ大きな理由は、当初のミッションで設定されていた期間を超えて老朽化が進み、現実に機能上の寿命を迎えようとしていることだ。

「宇宙ステーションは【中略】、現在すでに寿命を延長した状態です」とアンサリ氏は言う。「なので、次世代への投資のために、(当初予定してたミッションに上乗せして)うまく利用して利益を生むことができるようになったのです」

最初に計画されていたミッションが事実上終了したとしても、まだしばらくの間は、民間企業がその施設を使うことで多大な恩恵を引き出せる。

「宇宙ステーションでの研究や実験には非常に大きな関心があるため、コストは劇的に下がると思います」と彼女は、NASAのガイドラインに提示された民間宇宙飛行士の費用に関して言い添えた。「とはいえ、それでもそこへ行くまでのコストはかかります。つまり、誰もが支払える額にはならないということです。しかし、一晩3万5000ドルの家賃を支払えば実験が行えるのです。それは驚きです」。

「多くの企業が、製薬、医療、健康などの本当にたくさんの企業が、それを利用して実験を行うと私は考えています」とアンサリ氏。「それに私はわくわくしています。実現してよかった」

5月15日、米国カリフォルニア州プラヤ・ビスタにて。写真に向かって左から、XPRIZEのCEOを務めるAnousheh Ansari(アニューシャ・アンサリ)氏、XPRIZEの創設者で執行委員長を務めるPeter Diamandis(ピーター・ディアマンディス)氏、Global Learningでエグゼクティブディレクターを務めるEmily Church(エミリー・チャーチ)氏。XPRIZEは、Global Learning XPRIZE財団大賞授与式のためにGoogleのプラヤ・ビスタ・オフィスを訪れた。(写真:Jesse Grant/Getty Images for Global Learning XPRIZE)

アンサリ氏にとって、宇宙の商用利用分野の成長は、XPRIZEの原点だ。彼女は昨年の10月から、この財団のCEOを務めている。アンサリ氏とその義理の弟であるAmir Ansari(アミー・アンサリ)氏が多額の寄付を行ったことでその名が冠された賞金1000万ドル(約11億円)のコンテストAnsari Xprizeは2004年に勝者が決まり、それが今日のSpaceXの事業の道筋を付けた。

「最初のコンテストは、2週間以内に2回宇宙に行くというもので、賞金は1000万ドルでした。繰り返しの打ち上げが可能であることを証明したかったのです。SFの話ではなく、商業的に可能だということを。しかも、妥当なコストで行えるということをです」とアンサリ氏は振り返る。「必須要件がありました。たしか、燃料の容積を除く95%が再利用可能であることです。2台のロケットを作って、ひとつを飛ばして、次にあっちを飛ばすとったやり方では主旨に合いません。それが本当にビジネスに利用できることを確かめられるよう、条件を整えたのです」。

そこで大切な要素は、民間企業でも手が届く投資レベルで商業的に実現可能な関心事になり得ることを、初めて実証することだった。もうひとつの大切な要素として、関係当局の認可のもとで、参加者が実際に打ち上げが行える環境を作ることがあった。

「私たちは規制当局と米連邦航空局(FAA)との協力のもとで、民間人の打ち上げがどうしたら可能になるかを探りました。FAAには、対処方法がわからなかったからです」とアンサリ氏。「彼らは、宇宙に何かを打ち上げたいという民間企業と関わったことがなかったのです。そこで私たちの働きかけと、NASAや規制当局と行ってきた実績から、彼らは門戸を開き、そのための部門を立ち上げました。今それは、FAA Office of Commercial Space Tranportation(民間宇宙輸送局)と呼ばれています」。

2017年から打ち上げられているSpaceXのCRS-11。SpaceXが民間ロケットを打ち上げられるようになったのも、XPRIZEが商用打ち上げ事業のガイドラインを確立したお陰だ

今日までの働きで、数多くの分野を開拓し、スタートアップのための道を切り開いてきたアンサリ氏だが、Creative Distruction Labの初日に行った基調講演で、参加していた起業家たちに対して、このチャンスに満ちた新しい分野についていくつかの要求を突きつけた。彼女は、「雲の上に存在するクラウドシステム」には多大な可能性があり、データ・ウェアハウス施設を宇宙で運用すれば、電力と熱管理の面で今すぐ恩恵が得られると指摘した。

彼女はまた、スタートアップに対して、自分たちが作るものの波及的な影響力を念頭に置くよう訴えた。具体例をあげれば宇宙デブリだ。より広義においては、急激な変化は自然に恐怖の反応を引き起こすことを忘れないで欲しいと話した。

「エンジニアは、おもちゃやテクノロジーで遊ぶのが、ただただ大好きなので、これは難しい問題です」と彼女は話した。「しかし、こうした考えを理解させるのは、ここに集った私たちの役目です」。

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(翻訳:金井哲夫)

SpaceXが3月に使用したFalcon 9の再打ち上げと回収に成功

米国時間6月12日、SpaceX(スペースX)によるカリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地からの打ち上げが実施され、カナダ政府による観測衛星コンステレーション「RADARSAT」を構成する3基の人工衛星を打ち上げた。

今回の打ち上げで利用されたFalcon 9の第1段は、わずか数カ月前の3月に、スペースXのCrew Dragon宇宙船の無人テスト打ち上げで使用されたものだ。第1段は整備されれた後に再打ち上げされ、スペースXの再使用可能なロケットの飛行間隔を短くするという目標にさらに一歩近づいた。

なお、ロケットの第1段はヴァンデンバーグのLZ-4着陸地点へと降下し、回収されている。今回SpaceXは、より大きなFalcon Heavyを打ち上げた時に最大3基のブースターを同時に着陸させる能力を実証した。

SpaceXのロケットは3基のペイロードを目標軌道へと分離しており、ミッションの成否については今後記事をアップデートする予定だ。

SpaceXXの次の打ち上げは6月24日に予定されているFalcon Heavyのミッションで、これは3回目のFalcon Heavyの打ち上げかつ米空軍のミッションだ。ペイロードとしては複数の小型実験衛星を含む米空軍のSpace Test Program Flight 2と、NASAの研究プロジェクトが含まれる。

アップデート:3基の人工衛星の投入はすべて成功した。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAの月着陸船「スヌーピー」が宇宙に捨てられた50年後に発見か

NASAが1969年に月面着陸に成功する前には、数多くの調査ミッションが行われた。アポロ10号もその1つであり、実際の着陸を除くあらゆる模擬ミッションが実施された。宇宙飛行士のトーマス・スタッフォード氏とユージン・サーナン氏はアポロ10号ミッションで、NASAが「スヌーピー」というニックネームを付けた月着陸船で月面直前まで接近し、任務完了後に着陸船を宇宙に放った。

スヌーピーを地球に戻す意図はなかった。飛行士たちが作業を終えて宇宙船の司令室に戻ったあと、月着陸船は太陽を回る月よりも遠い軌道に送り出され、NASAがその軌跡を追うことはなかった。スヌーピーを発見するプロジェクトは、Nick Howes氏率いる英国のアマチュアたちのグループによって2011年に始められた。現在同グループは「98%の確度で」位置を確認したと主張しているとSky Newsが伝えている。さらにHowes氏は、もし位置が特定できればElon Musk氏のような人物が回収して重要文化遺産とし保存できるかもしれないと思いを巡らしている。

アポロ10号はNASAのアポロ計画で4番目の有人ミッションで、月着陸船を月面から8.5マイル(13.7km)以内まで飛ばす計画があった。テストは着陸船が最終着陸シークエンスでパワードディセント(ロケット推進力を利用した下降)を実行する直前まで行われた。「ピーナッツ」のテーマに合わせて、同ミッションの司令室は「チャーリー・ブラウン」と呼ばれた。

注目すべきは、このミッションに使用された燃料タンクには月面から戻ってくるための燃料が入っていなかったことだ。これは、テスト飛行中の宇宙飛行士が、アポロ11号のニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏に先んじて、最初に月面を歩いた人類になろうとした場合に備えて課せられた意図的な制約だった。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

NASAの火星用ヘリコプターが2020年のミッションに向けて最終テストへ

NASAの火星用ヘリコプターであるMars Helicopterは、この赤い惑星を探検する未来の人類にとっても重要な実験だ。それはNASAの2020年の火星ミッションに積載され、地球以外の大気における大気よりも重い重量物の飛行試験に向かう。最後の一連のテストに合格した同機は今、2020年7月の火星打ち上げを目指して最後の準備作業に入っている。

この重量4ポンド(約1.8kg)で自動操縦のテスト用ヘリコプターは、火星探査車Mars 2020に乗って火星まで運ばれ、地球からの数か月に及ぶ長旅を経て、予定では2021年2月18日に、探査車が火星のジェゼロ・クレータ(Jezero Crater)に着地した後に展開される。ヘリコプターはカメラを搭載し、電源としてソーラーパネルがある。今回はそのほかのセンサーや科学的機器類はいっさいなく、火星で果たしてドローンを飛ばせるか?という唯一の疑問に答えることだけを目的とする。将来の実験では、地上車である探査車にはできなかったデータを集めるためにセンサーが載ったりするだろう。

これまでMars Helicopterは、打ち上げと着地をシミュレートする激しい振動環境や、火星の表面のような過酷な温度条件、そして電気系統と機械系統の完成度をテストされてきた。現在はソーラーパネルも取り付けられ、ローターの試運転も経て、あとは現実に近い条件での最終的なストレステストが残っているだけだ。

NASAのMars 2020ミッションは最短でも1火星年、地球上の687日間行われ、新設計のコンパクトカーサイズの探査車には、火星の表面よりも下の岩石や土を採取する新しいコアサンプリング(円柱状標本採取)ドリルが搭載される。

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

Virgin Orbitは2020年までに英国で衛星打ち上げを実施へ

リチャード・ブランソンが手がける宇宙開発企業の1つは、英国のコーンウォールの新しいVirgin Spaceportからの人工衛星の打ち上げを目指している。これは英国宇宙局との合意のもと、780万ポンド(約11億円)にて施設を開発するというプロジェクトだ。

プロジェクトのゴールは、2020年の早い時期にスペースポートを稼働させることで、これはそれほど遠い時期ではない。ブログ投稿によれば、ブランソン氏はコーンウォールへの個人的な愛着と、建設地点の選定における正当性の一部としてのその地での冒険を説明している。

なおヴァージングループの宇宙開発事業を整理すると、まずVirgin Orbit(ヴァージン・オービット)はカスタムしたボーイング747からの小型人工衛星の打ち上げを目指している。これは航空機を利用することで、3万フィート(約9.1km)から人工衛星を搭載し打ち上げられる2段式ロケット「LauncherOne」の打ち上げコストを下げるのが狙いだ。

ヴァージンは現在ニューメキシコにスペースポートを所有しており、Virgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)のスペースプレーン(母艦のWhiteKnightTwoから打ち上げられる、再使用可能な宇宙旅行用のSpaceShipTwo)が、カリフォルニアから同施設へと運用を移動させている。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

中国が海上船からロケットの打ち上げを初実施

中国の国家航天局は米国時間6月6日、黄海上の船に設置された射場からの長征11号ロケットの打ち上げに初めて成功した。中国が海上プラットフォームから宇宙へと向かうロケットを打ち上げたのは今回が初めてで、また商業目的のペイロードを5基、宇宙での研究目的のペイロードを2基搭載していた。


これにより、中国は海上から宇宙にロケットを打ち上げられる国家として、米国やロシアの仲間入りを果たした。このような方式は、ロケット打ち上げにおける不慮の事故の際に、被害を最小限に抑えられる利点がある。また中国は、海上プラットフォームからのロケット打ち上げを独自の技術で実現し、運用した唯一の国だ。以前に米国やロシアが実施した海上からの打ち上げは、ノルウェーやウクライナなど複数国と技術提携したもので、2014年には運用を停止している。

 

本日の打ち上げは、船舶が民間の貨物船であったこと、そしてロケットも中国の高級車ブランドのWEYがスポンサーにつき、かつ名付けにも関わったことから、同国の民間企業との共同事業でもあった。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAが火星の月探索模擬ミッションで45日間の隔離実験

宇宙は人間には過酷である。慣れていないというだけでなく、ほとんどの人が人生のほとんどを過ごすこの地球と、あまりにもかけ離れているからだ。人間が宇宙で暮らしたり働いたりするとどうなるかを知るために、研究者が多くの実験を重ねているのはそのためだ。たとえば、5月24日に開始された新たな実験では、4人組のクルーが45日間宇宙船に隔離され、生活と仕事をともにした。ただし、この惑星の境界から外に出ることなく。

実際、実験に参加したBarret Schlegelmilch氏、Christian Clark氏、Ana Mosquera氏、およびJulie Mason氏の4人は、ヒューストンのNASAジョンソン宇宙センターから一歩も外にでていない。しかしそこがポイントだ。これは、火星のふたつの月のひとつ、フォボスへ行くミッションをシミュレートした模擬生活・仕事空間なのだ。この実験はNASAが “Human Exploration Research Analog”(人間探査模擬研究)と呼んでいるもので、わざとらしい頭文字のHERAはギリシャの家族の神を意味するが、要するに有人宇宙飛行ミッションのシミュレーションだ。

ちなみに、この実験に参加している「乗組員」たちは実際の宇宙飛行士ではなく、「NASAが宇宙飛行士に選ぶタイプを模倣する」ボランティアであると、人間研究プログラムの模擬飛行プロジェクトマネジャー、Lisa Spence氏が声明で語った。模擬宇宙飛行士たちは、模擬宇宙船ミッション期間中監視され、長期間の隔離ミッションの及ぼす生理的および心理的な影響を研究者が観察する。

このミッションは、研究者が同じ条件で適切なクロスサンプルを得るために行われる4つのキャンペーンのうちの一つであり、このキャンペーンでは特に、乗組員のスペースとプライバシーが制限された環境で生活し仕事をすると何が起きるかを調べ、他の実験セットの場合と比較する。

これは、NASAが2024年まで計画している人類を再び月に送るミッションの前にやっておくべき重要な実験だ。なお、人間的要素と同様に重要である技術面でも最近進展があった

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

スペースXのドラゴン補給船がISS補給ミッションから帰還

SpaceX(スペースX)のドラゴン補給船が国際宇宙ステーション(ISS)からの帰還を果たし、民間企業によるISSへの17回目の補給ミッションを完了させた。

Commercial Resupply Services mission 17(CRS-17)は、一度打ち上げを延期した後の最初のバックアップウィンドウにて、米国時間5月4日に打ち上げられた。ドラゴン補給船はISSへと滞在する宇宙飛行士への補給品と、科学実験のための試料を5500ポンド(約2.5トン)搭載していた。

ドラゴン補給船は約1ヶ月間ISSへと係留され、宇宙飛行士は中の貨物を取り出し、そして6月3日に地球大気圏への再突入を開始した。そして同日の午後、太平洋へと着水したのだ。

打ち上げミッションの様子は、下の動画で確認できる。なお動画には、Falcon9ロケットの第1段がドローン船「Of Course I Still Love You」へと着陸する様子を赤外線で捉えたシーンも含まれている。

 

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

NASAのSLSロケットが月探査ミッションのマイルストーンを通過

NASAは、人類を再び月へと送り込むミッションが重要なステップを迎えたことを祝福した。Boeing(ボーイング)によって製造されるスペース・ローンチ・システム(SLS)を推進する最初の大型コアロケットの4分の5が完成したのだ。

実際には、ロケットはまだ完成していない。しかし、2024年にアルテミス計画としてオリオン宇宙船を月に時間どおりに輸送する巨大ロケットを製造するにあたって、重要な一歩を踏み出したことになるのだ。

またこのロケット・ステージが完成した際には、エンジンや燃料タンクを含めてその全長は200フィート(約61メートル)を超えることになる。これは、車を12台縦に並べた長さと同等だとNASAは言及している。そして、NASAにとって人類を月へと送ったサターンVロケットの第1段(140フィート弱:約42メートル)以来で、最も大きなロケットだ。

今後、NASAはSLS機体の他の部分を開発し、ボーイングは第1段の残りを完成させる。2024年は遠いようにも感じられるが、ロケット開発は時間がかかり、また人を乗せるロケットはなおさらなのだ。

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(翻訳:塚本直樹 Twitter

イーロン・マスクのStarlinkが成功すれば世界のインターネット接続は一変

5月末にSpaceXがStarlink衛星最初の打ち上げに成功したことで、インターネット接続は新しい時代に向かって大きく一歩進んだ。 小型通信衛星60基はSpaceXとして過去最大のペイロードだった。このマイクロ通信衛星はやがて地球全体を覆い、どんな場所にもインターネット接続をもたらす通信衛星群を構成する最初の一波だという。同社は打ち上げ成功後、謎に包まれたStarlink構想に関していくつかの新しい情報を公開した。

SpaceX とCEOであるイーロン・マスク氏はStarlink構想に関してこれまでいくつかのヒントは出してきたものの、具体的内容については非常にガードが固かった。

配布されたプレスキットで、衛星は225kg程度、カーゴベイへの充填率を最大化するためフラットパネル型であり、Startrackerと呼ばれるナビゲーションシシテムを備えてくることなどはわかっていた。

しかし打ち上げ成功後にスタートしたStarlinkのサイトではもう少し詳しい情報が公開されている。イラストではあるが細部がはっきりわかる画像も掲載されていた。このCGで衛星の仕組みの概略がわかったので簡単に紹介してみよう。

Starlinkでは地上と通信するだけでなく、相互にも通信可能な数千の衛星が常時ある地域の上空にあってインターネット接続を提供する。衛星の数、被覆地域の広さ、提供できるトラフィックの量など詳しいことは不明だ。それでも上のGIF画像でだいたい仕組みは分かる。

4基の衛星が一組となってフェーズドアレイ・アレイ・アンテナを構成する。これにより打ち上げ時にはコンパクトでフラットだが、展開されると大口径のアンテナが実現できる。またカバー方向を変更するために通常のレーダーのように大きなパラボラアンテナの方向を変える必要がない。もちろんフェーズド・アレイ・アンテナは高価だが、衛星はできるだけ小型軽量で可動部分が少ないほうがいいに決まっている。

個々のStarlink衛星は太陽電池パネルを一枚だけ備える。パネルは紙の地図のように折り畳まれており、軌道上で展開される。上の図では衛星本体の右側に展開された一部が示されている。多くの衛星と異なり、太陽電池パネルを1枚しか備えていないのは機構の単純化、コストの削減が目的らしい。Starlinkのように数千個の衛星がシステムとして協調動作し、かつ寿命も数年と想定される場合、個々の衛星の信頼度さほど必要ない。いずれにせよ太陽電池パネルは枯れたパーツでもともと信頼性は高い。

クリプトン・ガスを利用するイオン・スラスターが姿勢制御を担当する。名前を聞くとSFっぽいがイオン推進は数十年前に実用化されている。陽電荷をもつプラズマを放出し負極が電磁力で吸引すると、反作用で推進力を得られる。長時間にわたって推進が可能であり精度も高いが推力自体は微小だ。

陽イオン源としてキセノンが使われることが多いが、Starlink衛星では推進剤にクリプトンが選ばれている。その理由は説明がやっかいだが、ひとつは同じ希ガスでもクリプトンのほうがやや入手しやすい点だ。現在稼働しているイオンエンジンの数は多くない。しかし数千個を動かす予定ならほんのわずかのコスト差でも収益に大きく影響する。

衛星には天体を観測して自機の姿勢を制御するStartrackerと他の衛星と衝突を防ぐシステムも搭載されている。この部分はSpaceXから具体的な説明がないのわれわれの側で推測するしかない。星を観測し、自国や地表との相対的位置をベースに位置、姿勢を計算するのだろう。このデータと政府のデータベースに掲載されている他の衛星や既知の宇宙デブリのデータと照合すれば衝突防止が可能になる。

Starlinkサイトには直交する5枚の円板の画像があった。これはリアクション・ホイールだろう。それぞれのホイールは一定速度で回転することで運動エネルギーを蓄えており、加速、減速によって反作用を生じさせて衛星の姿勢を制御する。きわめて巧妙なしくみだが、これも現在の衛星で標準的に用いられている。リアクション・ホイールとイオン・エンジンによって衛星の姿勢、相互の位置関係を精密に制御し、またデブリとの衝突を回避するわけだ。

SpaceXは私の取材に対して「われわれのデブリ・トラッカーはアメリカ空軍の統合宇宙運用センター(Combined Space Operations Center)に接続されており、あらゆるデブリの軌道を取得できる」と答えた。デブリの軌道データとStarlink衛星の軌道データを照合し、衝突の可能性が発見されれば衛星軌道が変更される。イオン・エンジンの推力は微小なため、充分な時間の余裕が必要だ。ボールが飛んでくるのを見てから避けるような動作ではなく、航空管制官が衝突を防止して旅客機を運航するのに似ている。

しかしStarlinkについてはまだ分からないことが多い。たとえば地上局はどうなっているのだろう? Ubiquitilink構想とは異なり、Starlinkの電波は微弱でユーザーのスマートフォンで直接受信することはできない。 そこで地上局が必要になるわけだが、マスク氏は以前、「ピザの箱程度のサイズにする」と述べていた。しかしピザといってもS、M、L、XLいろいろなサイズがある。どこに、誰が設置するのか? コストは?

先週のメディア向けブリーフィングでマスク紙はもう少し詳しく説明した。「地上受信設備は円盤型だ。しかしDirecTVなど静止衛星を利用した宇宙放送の地上アンテナとは異なり、特定の方向に向ける必要がない。Starlinkのディッシュは空に向いてさえいればいい」という。

また通信システム自体にもまだ謎が多い。たとえばアメリカのユーザーがStarlinkを利用してクロアチアのサイトを開こうとしたとしよう。なんらかのアップリンクで信号はStarlink衛星に到達する。衛星から衛星へ中継され、サイトの最寄りの衛星から地上に戻るのだろう。このダウンリンクは目的の地域のインターネットの基幹回線に接続するのだろうか? 最後の1マイルが光回線になるかどうかはテキストや音声通話などの場合ほとんど問題にならない。しかし最近急速に成長してきた動画ストリーミング・サービスにとっては大きな障害となり得る。

そして、ここが最大の問題かもしれないが、コストはどうなるのだろうか? SpaceXではこのサービスを地上の接続サービスと競争できる料金にするとしている。都市部における光ファイバーの普及度合いを考えるとこれが実現できるかはやや疑問だ。しかしテレコム各社は人口密度の低い遠隔地に光回線を設置したがらず、昔ながらのDSLに頼っている。こうした地域ではStarlinkは非常に高い競争力がありそうだ。

しかし実際の運用が始まるのはまだかなり先だ。今回打ち上げられた60基の衛星は第一陣に過ぎない。構想どおりに作動するかどうかを試すフィージビリティ・スタディーだ。テストが成功すればさらに数百機が打ち上げられテストは次の段階に進む。こうなれば一部の地域でごく初歩的なサービスが提供されるようになるかもしれない。とはいえ、SpaceXは計画の推進を急いでおり、早ければ年内にもこの段階に達するという。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

NASAは月に機材を運ぶ初めての民間企業を選出

NASA(米国航空宇宙局)は、月に科学技術機材を運搬する初の民間企業として、AstroboticIntuitive MachinesOrbit Beyondの3社を選択した。これは、アルテミス計画の一部をなすCLPS(Commercial Lunar Payload Services、商用月運送サービス)プログラムに基づくもの。

米国時間5月31日にNASAが発表したところによると、各社の月着陸船がNASAの機材を運搬し、月面での科学的な調査と、2024年にNASAの宇宙飛行士が月を再訪するための技術の実証を可能にする。NASAは、各社の任務に対する対価として、合計で最大2億5300万ドル(約278億3000万円)を支払う契約を交わした。

「我々が選んだこれらの米国の民間の着陸任務の事業者は、米国が何十年ぶりかで再び月面を目指すことを代表しています。そして、これは我々のアルテミス月面探査計画にとって大きな前進となるのです」と、NASAの長官であるJim Bridenstine氏は述べている。「来年には、最初の科学技術研究活動が月面で行われる予定です。それによって、5年以内に女性としては最初の、男性としては何番目かの飛行士を月面に送り込むことが可能となるでしょう。こうした商用着陸サービスへの投資は、低高度の地球周回軌道以外での商業宇宙経済を構築するための重要なステップにもなるはずです」。

各社の提案には、各種の特殊な測定器の運搬も含まれていた。例えば、着陸船の位置を予測する装置、月面の放射線の強度を測定する装置、着陸船が月に与える影響を評価する装置、それにナビゲーションの補助装置といったものだ。

これはNASAと、NASAによって選ばれた企業にとってだけの勝利となるものではない。それはXPRIZEにとっても誇るべきものとなるはずだ。というのも、Astroboticはもともと、カーネギーメロン大学からスピンアウトして、2007年にGoogle Lunar XPRIZE(GLXP)競技に参加した会社だからだ。

ピッツバーグに拠点を置くAstroboticは、Space Angels Networkの支援を受けている。2021年7月までに、月の表側にある大きなクレーター「死の湖(Lacus Mortis)」に、最多で14回、機材を運搬するという約束で、7950万ドル(約87億4500万円)を獲得した。

ヒューストンを拠点とするIntuitive Machinesは、月のダークスポットにある「嵐の大洋(Oceanus Procellaru)」にやはり2021年7月までに5回の運搬を実現するということで、7700万ドル(約84億7000万円)を受け取った。一方、ニュージャージー州のエジソンに本拠を置くOrbit Beyondは、2020年9月までに、月のクレーターの1つ「雨の海(Mare Imbrium)」の中の平原に4回の運搬を実現させることになる。

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「これらの着陸船の運行は、民間企業との希望に満ちた協力関係のほんの始まりに過ぎません。それによって、私たちの月の、私たちの太陽系の、そしてさらに大きな世界の科学的な謎を解き明かすことに近づくのです」と、NASAの科学ミッション部門の副長官、Thomas Zurbuchen氏は、声明の中で述べている。「そこで私たちが学ぶことによって、宇宙に対する見方が変わるだけでなく、私たちが月に赴くミッションを、そしてやがては火星に赴くミッションを準備することができるでしょう」。

NASAのパートナーとなった企業は、最初から最後までの商業運搬サービスを実現することに同意している。つまり、機材の準備と運用、打ち上げ、着陸までの全行程を含むものとなる。

NASAが、こうした方向に一歩を踏み出したことは、月に対する取り組みだけでなく、今後、火星に宇宙船や飛行士を送り込むことにつながる道を切り開くことになる。

「今回の発表は、NASAと民間のパートナーとのコラボレーションにおける重要な一歩となりました」と、NASAのジョンソン宇宙センターのCLPSプログラムのマネージャ、Chris Culbert氏も、ヒューストン発の声明の中で述べている。「NASAは、産業界と協力して、今後の月探査を可能にすることにコミットしています。われわれが選んだ企業は、アメリカの変化に富んだ、小さくても活気に満ちた会社を代表する存在です。それぞれが、月に到達するための独創的かつ革新的な方法を持っています。彼らと協力して、われわれの機材を確実に送り届け、再び人類を月に立たせることができるようになることを楽しみにしています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

月に宇宙飛行士を送るNASAの新計画名称はアルテミス

クールなミッションにはクールな名称が必要だ。そして、月定住と再び米国人を月に送るというNASAの新たな計画は、アルテミスという名称を得た。アポロ計画の最盛期から今年50年という節目にあること、新計画では女性を初めて月に送ることを鑑みたとき、うなづける名称だ。

名称はNASAのソーシャルメディアチャネルで発表された。そしてJim Bridenstine長官が昨日の記者会見で軽く触れていた。

「アポロには双子の妹アルテミスがいたことが明らかになる。アルテミスは月の女神となる。我々の宇宙飛行士部門は多様性に富み、かなり優秀だ。アポロ計画から50年が経ち、アルテミス計画が次の人類、そして初の女性を月に運ぶというのは素晴らしい」と長官は語った。

ギリシャ神話になじみのある人ならNASAが専門用語に含ませたヒントがわかっただろう。アルテミスは月の女神だった。しかしまた狩猟の神でもあった。そしてアルテミスの忠実な狩猟の友はオリオンだった。まるでNASAがいま開発中の多目的宇宙船のようだ。

月に加えて、アルテミスは当然のことながら天文学や宇宙飛行と関連がある。複数の衛星やミッションがこの名称を使ってきているし、金星と月にはアルテミスにちなんでつけられた谷などがある。しかし今回の命名はこれまでで最高のものだろう。

NASAに問い合わせ中だが、私が思うにアルテミス計画は月定住を確立するという来るべき大きなミッションに関係している。これには月面探査や、月軌道プラットフォームゲートウェイなど月や月周回軌道でのインフラ整備という大きなミッションが含まれることが予想される。

今回の発表は、NASAが月探査のミッションのためにとっておいた予算に新たに16億ドルを追加するとの発表を受けたものだ。

名称が女性のものであるのは意図的なものだ。アポロ計画は多くの女性のサポートのおかげで成功したが、ミッションは男性宇宙飛行士だけで行われた。しかし今回は異なる。女性も男性も宇宙へ行き、そして間違いなく女性でも男性でもない人もすぐに宇宙へ行く。

Bridenstine長官はこの計画は次世代を頼りにしていると話した。「私には11才になる娘がいるが、多様性に富んだ現在の宇宙飛行士団と同じように娘にも多様性の中にいる自分を見出してほしい」。

「月着陸の歴史を振り返ると、1960年代から1970年代にかけてはテストパイロットで、女性にはチャンスがなかった。今回の計画は、私の娘のような新世代の女の子たちが月に行くことを思い描けるようにするだろう」と発表後の質疑応答で語った。

アルテミス計画は10年以上はかかることが予想される。月に行くことは簡単ではなく、最初の成功すらもその後待ち構える、さらに大きく野心的なミッションの基礎となるにすぎない。

イメージクレジット: Flaxman

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(翻訳:Mizoguchi)