NASAは月に機材を運ぶ初めての民間企業を選出

NASA(米国航空宇宙局)は、月に科学技術機材を運搬する初の民間企業として、AstroboticIntuitive MachinesOrbit Beyondの3社を選択した。これは、アルテミス計画の一部をなすCLPS(Commercial Lunar Payload Services、商用月運送サービス)プログラムに基づくもの。

米国時間5月31日にNASAが発表したところによると、各社の月着陸船がNASAの機材を運搬し、月面での科学的な調査と、2024年にNASAの宇宙飛行士が月を再訪するための技術の実証を可能にする。NASAは、各社の任務に対する対価として、合計で最大2億5300万ドル(約278億3000万円)を支払う契約を交わした。

「我々が選んだこれらの米国の民間の着陸任務の事業者は、米国が何十年ぶりかで再び月面を目指すことを代表しています。そして、これは我々のアルテミス月面探査計画にとって大きな前進となるのです」と、NASAの長官であるJim Bridenstine氏は述べている。「来年には、最初の科学技術研究活動が月面で行われる予定です。それによって、5年以内に女性としては最初の、男性としては何番目かの飛行士を月面に送り込むことが可能となるでしょう。こうした商用着陸サービスへの投資は、低高度の地球周回軌道以外での商業宇宙経済を構築するための重要なステップにもなるはずです」。

各社の提案には、各種の特殊な測定器の運搬も含まれていた。例えば、着陸船の位置を予測する装置、月面の放射線の強度を測定する装置、着陸船が月に与える影響を評価する装置、それにナビゲーションの補助装置といったものだ。

これはNASAと、NASAによって選ばれた企業にとってだけの勝利となるものではない。それはXPRIZEにとっても誇るべきものとなるはずだ。というのも、Astroboticはもともと、カーネギーメロン大学からスピンアウトして、2007年にGoogle Lunar XPRIZE(GLXP)競技に参加した会社だからだ。

ピッツバーグに拠点を置くAstroboticは、Space Angels Networkの支援を受けている。2021年7月までに、月の表側にある大きなクレーター「死の湖(Lacus Mortis)」に、最多で14回、機材を運搬するという約束で、7950万ドル(約87億4500万円)を獲得した。

ヒューストンを拠点とするIntuitive Machinesは、月のダークスポットにある「嵐の大洋(Oceanus Procellaru)」にやはり2021年7月までに5回の運搬を実現するということで、7700万ドル(約84億7000万円)を受け取った。一方、ニュージャージー州のエジソンに本拠を置くOrbit Beyondは、2020年9月までに、月のクレーターの1つ「雨の海(Mare Imbrium)」の中の平原に4回の運搬を実現させることになる。

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「これらの着陸船の運行は、民間企業との希望に満ちた協力関係のほんの始まりに過ぎません。それによって、私たちの月の、私たちの太陽系の、そしてさらに大きな世界の科学的な謎を解き明かすことに近づくのです」と、NASAの科学ミッション部門の副長官、Thomas Zurbuchen氏は、声明の中で述べている。「そこで私たちが学ぶことによって、宇宙に対する見方が変わるだけでなく、私たちが月に赴くミッションを、そしてやがては火星に赴くミッションを準備することができるでしょう」。

NASAのパートナーとなった企業は、最初から最後までの商業運搬サービスを実現することに同意している。つまり、機材の準備と運用、打ち上げ、着陸までの全行程を含むものとなる。

NASAが、こうした方向に一歩を踏み出したことは、月に対する取り組みだけでなく、今後、火星に宇宙船や飛行士を送り込むことにつながる道を切り開くことになる。

「今回の発表は、NASAと民間のパートナーとのコラボレーションにおける重要な一歩となりました」と、NASAのジョンソン宇宙センターのCLPSプログラムのマネージャ、Chris Culbert氏も、ヒューストン発の声明の中で述べている。「NASAは、産業界と協力して、今後の月探査を可能にすることにコミットしています。われわれが選んだ企業は、アメリカの変化に富んだ、小さくても活気に満ちた会社を代表する存在です。それぞれが、月に到達するための独創的かつ革新的な方法を持っています。彼らと協力して、われわれの機材を確実に送り届け、再び人類を月に立たせることができるようになることを楽しみにしています」。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)

投稿者:

TechCrunch Japan

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