工場製の壁、床、屋根パネルを現場で組み立てるモジュラーホームビルダーCoverが約68億円調達、テスラの様式にならう

現在、モジュラーホームの設計に取り組むスタートアップが数多く存在する。中でも興味深いのは、ロサンゼルスに拠点を置く創業7年のCover(カバー)だ。同社によると、壁、床、屋根のパネルをすべて工場で製造した後、標準的なトラックで輸送し、現場でクレーンを使わずに組み立てるという。

建物の骨組みには軽量のスチール、天井にはアルミを使っている。パネルがゴムの複合材でできているのは、創業者でCEOのAlexis Xavier Rivas(アレクシス・シャビエル・リバス)氏が説明するように「乾式壁材の設計は製造や輸送に適したものではなく、とても脆い」ためである。

明らかに、これらの建物をどのように設計するかについて多くの考察がなされてきたようだ。例えば、同社ではすべての給排水衛生設備と電気配線を天井に設置しており、オーナーは新しい配線や配管を設置する際、天井を開けるだけで済む。

奇妙に聞こえるかもしれないが、同じ目的を達成するために、壁に一連の穴を開け、それらを補修して塗り直すことに比べると、それほど違和感はない(また、現在不足している配管工や電気工のような職人の助けも必要ない)。

他の使用素材としては、床や外装に使われている天然の木や木の複合材がある一方、堅牢な表面のカウンタートップや浴室の床には多孔性がない。これは衛生的であることを意味しており、世界的なパンデミックからの回復に伴い、住宅オーナーにとってますます重要な要素となっている。

Coverに関して言えば、その主要な焦点、そして将来性として、迅速な組み立てとカスタマイズの両方があることを考えると、材料の組み合わせ方は当然、一層重要性を帯びてくる。

リバス氏が語るプロセスの仕組みは、顧客が同社と協働して設計を作り上げる、というものだ。現時点では、その設計は1200平方フィート(約111.5平方メートル)以下の平屋建てユニットに限られているものの、エネルギーの浪費を最小限にするために窓をどこに配置すべきかなど、さまざまな要素が考慮されている(またリバス氏は、Coverが作る窓はLEED認定を受けており、住宅は気密性が高く、エネルギー効率が大幅に向上していると指摘する)。

Coverは合意された設計を事前に設定されている価格で採用し、パーツのエンジニアリングに着手する。価格には許可手数料、都市に支払う手数料、基礎工事費用、そして家自体の費用が含まれている。例えば400平方フィート(約37.2平方メートル)のスタジオ(ワンルーム)で20万ドル(約2280万円)、600平方フィート(約55.7平方メートル)のワンベッドルームユニットで25万(約2850万円)ドル、1200平方フィートの寝室が3つある住居で最大50万ドル(約5690万円)という設定だ。

いささか驚くべきことに、基礎工事が完了すれば30日間以内の建設と設置が可能でなり、同社が当初顧客に約束する120日という期間より短縮されるという。

また、必要な許可が得られない場合は100%の返金保証を提供する他、構造に関する生涯保証と、それ以外については1年間の保証を設けている。

これらの建物は「腐食することはありません」とリバス氏。「シロアリに食べられることもないでしょう」。一方、顧客が新しいエアフィルターを必要としている場合は「私たちが交換します」。

トロントで育ったリバス氏は、大学で建築学を学んだ後、Coverを設立する前に短期間、複数の建築会社を渡り歩いた。SpaceX(スペースX)とTesla(テスラ)のエンジニアをこのミッションに引き寄せることができたことを誇りに思っているリバス氏は、今週初めに交わした会話の中のさまざまな場面で、Coverのプロセスをこの自動車メーカーのプロセスになぞらえた。

類似点を見出しているのは同氏だけではないようだ。Coverは2021年10月下旬に、Gigafund(ギガファンド)が主導するシリーズBラウンドで6000万ドル(約68億円)を調達したことを発表した。Gigafundは、SpaceXに大きく賭けた2人の元Founders Fund(ファウンダーズ・ファンド)投資家によって設立された投資会社だ。

今回のラウンドには、Valor Equity Partners(バロー・エクイティ・パートナーズ)とFounders Fundが参加しており、どちらもSpaceXとTeslaの初期投資家でもある。他にも、General Catalyst(ジェネラル・カタリスト)、Lennar(レナー)、Fifty Years(フィフティ・イヤーズ)、AngelList(エンジェルリスト)の共同創業者Naval Ravikant(ナバル・ラヴィカント)氏、Lowercase Capital(ローワーケース・キャピタル)の創業者Chris Sacca(クリス・サッカ)氏、Marathon Asset Management(マラソン・アセット・マネジメント)のCEOであるBruce Richards(ブルース・リチャーズ)氏、Dropbox(ドロップボックス)の共同創業者Arash Ferdowsi(アラシュ・ファダウシ)氏など、著名な投資家が多数名を連ねている。

確かに、全国的な住宅と建設の不足を考えると、Coverが建設しているものへの需要は少なくない。実際、Coverのセールスチームについて尋ねられたリバス氏は、非常に多くのインバウンド関心があり、現在「1人の時間の3分の1がセールスに費やされている」と述べている。

人々がどのようなものを注文しているかについて、リバス氏は同社の顧客の傾向を次のように語っている。引っ越してくる家族(年老いた親や大学から戻ってくる子ども)を受け入れるため、自宅とは別にホームオフィスを作るため、あるいは賃貸収入を増やす方法を確立するため、という目的が多くを占めるという。

さらに、これまでに建設した約20軒の裏庭つき住宅に加えて、現在総額7500万ドル(約86億円)を調達している同社は、大規模な複数階建て住宅と複数世帯向け住宅の建設を始める意向を強く抱いている。

現在稼働している2万5000平方フィート(約2322.6平方メートル)の倉庫から、10万平方フィート(約9290平方メートル)の工場に移転することで、さらに多くのパネルを生産できるようになるとリバス氏は話す(そこに6000万ドルの一部が注ぎ込まれている)。

実際、すべてが計画どおりに進めば、近いうちに既存の顧客でも、すでに購入した家をCoverアプリを使って容易に拡張できるようになるという。同氏の話を聞くと、それは簡単なことのようだ。

「アプリを起動して、追加したい部屋をクリックし、予約して、オンラインで支払いをすれば、2〜3日でリノベーションが完了します」。

これはElon Musk(イーロン・マスク)氏がその名を馳せる、一種の開幕戦のようなものだ。さて、Coverがうまくやり遂げるかどうか、注目してみたい。

画像クレジット:Cover

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(文:Connie Loizos、翻訳:Dragonfly)

設計・建築事務所のプロジェクト管理を支援するソフトウェアを提供するMonographが約23億円調達

Monograph(モノグラフ)は、建築・設計の専門家がプロジェクトを管理するためのクラウドベースのプラットフォームを提供しているスタートアップ企業だ。同社は米国時間11月15日、シリーズBラウンドで2000万ドル(約23億円)の資金を調達したと発表した。このラウンドは、新規投資家のTiger Global(タイガー・グローバル)が主導し、Tishman Speyer(ティシュマン・シュパイヤー)と既存投資家のIndex Ventures(インデックス・ベンチャーズ)およびHomebrew Ventures(ホームブルー・ベンチャーズ)が参加した。

今回の資金調達により、2019年に設立されてからMonographが調達した資金総額は2930万ドル(約33億6000万円)となった。同社の前回の資金調達は、2021年5月のシリーズAで、740万ドル(約8億5000万円)を調達している。

Monographを設立した3人の設計技術者であるRobert Yuen(ロバート・ユエン)氏、Moe Amaya(モー・アマヤ)氏、Alex Dixon(アレックス・ディクソン)氏は、いずれも建築学のバックグラウンドを持つ。同社のソフトウェアは、建築事務所がタイムシート、予算、人事、請求書の発行など、多くのさまざまな業務システムを管理するのに役立つ。これまでに5億ドル(約570億円)相当のプロジェクトが、このプラットフォーム上で実行されている。

サンフランシスコを拠点とする同社は、2021年にわずか8人でスタートした後、33人の従業員を抱えるまでに成長したと、CEO兼共同創業者のロバート・ユエン氏は、TechCrunchにメールで語った。新たに調達した資金は、製品チームとエンジニアリングチームのさらなる成長のために使用される予定だ。

新型コロナウイルス感染流行の影響で、新たな住宅のリフォームや建築の需要が高まり、小規模な設計会社の成長が加速していると、ユエン氏は書いている。業界で雇用が活発化する中、Monographは中核となるソフトウェア製品への投資に加えて、コンテンツの共有や求人情報の提供を通じて、その分野の専門家による仮想コミュニティを構築している。

ユエン氏は、プロジェクトマネージャーがプロジェクトレベルの財務状況をリアルタイムで確認できるMonographの予算管理ソリューションを、スプレッドシートに依存しているこの業界では特にユニークなものであると強調した。同氏によると、Monographを使用していない一般的なプロジェクトマネージャーは、プロジェクトの予算が不足しているのか超過しているのかを理解するために、平均で1カ月ほど待たなければならないという。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・クルチウス)氏は、同社のMonographへの投資に深く関わっている人物だ。同氏はTechCrunchにメールで次のように語った。

「Monographは、建築家による建築家のための製品です。それゆえに、プロジェクト管理に費やす時間を最小限に抑えるソリューションを提供する点において優れているのです」。

画像クレジット:Monograph

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(文:Anita Ramaswamy、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Flexbaseが建設業界初のクレジットカードを発表、最大60日間の無利子融資

Flexbase(フレックスベース)は、最大60日間の無利子融資を提供する、創業者らによると業界初のクレジットカードを発表し、建設業の資金調達の常識を覆している。

Flexbaseは、建設業者や建設業界向けの自動決済ツールを開発している会社で、中小企業を対象にするためにZaid Rahman(ザイド・ラーマン)氏とHadi Solh(ハディ・スルフ)氏によって設立された。

ラーマン氏とスルフ氏は建設業を営む家庭で育ち、食卓で資金繰りの悩みを聞かされていた。ドバイで建設会社を経営していたラーマン氏の父親は、数百万ドル(数億円)の請求書を顧客が支払ってくれなかったとき、心臓発作を起こした。ラーマン氏とスルフ氏は、企業が資金に容易にアクセスしてキャッシュフローの問題を回避できるよう、Flexbaseを設立した。

「ほとんどの建設会社は、破産するか、あと一歩のところまで来ています」とラーマン氏は話す。「その理由の1つは、ほとんどの顧客が期日通りに支払うことを好まないからです。銀行が建設会社を嫌うのも理由の1つです。これは、そのようなキャッシュフローの問題があるためであり、建設会社は短期的な資金を得ることがなかなかできません。建設会社の倒産が多いのもそのためです」。

Flexbase Cardは、建設会社であればどの会社でも申し込むことができ、ヒューストンで先行してサービスを開始している。しかし共同創業者によると、Flexbase Cardと他のFlexbaseツールを併用することで、会社の財務データをより深く理解することができ、より大きな額の融資を受けることができるようになるという。

60日間の融資は、支払いを受けるまでに通常100日以上かかる業界にとって「ゲームチェンジャー」だとスルフ氏はいう。その理由の1つは、一般的な請求書が1〜2ページであるのに対し、建設業の請求書は50〜100ページにも及ぶことがあり、その中には州や郡のコンプライアンスに関する書類も含まれている。1枚でも欠けていると、請求書全体が却下されてしまうこともある、とラーマン氏は話す。

Flexbaseは経費管理を自動化することで、売掛金と買掛金の間の時間を短縮し、支払いまでの時間を50日短くすることができる。

「資金面で建設会社を他の企業と同じように評価することはできませんが、引き受けを行うことで、当社は建設会社がビジネスを成長させるのに十分な信用を提供しています」とラーマン氏は付け加える。「我々は、建設会社がプロジェクトの種類や顧客基盤を拡大するために、2分で十分な信用を提供しています」。

画像クレジット:PM Images / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Nariko Mizoguchi

建築建材の総合検索サービスArch-LOGを提供する丸紅アークログが総額6.99億円の資金調達

建築建材の総合検索プラットフォーム「Arch-LOG」(アークログ)を提供する丸紅アークログは11月8日、第三者割当増資による総額6億9930万円の資金調達を完了したと発表した。引受先は長谷川コーポレーションと前田建設工業。調達した資金は、Arch-LOGのユーザービリティを向上させるための既存システムのバージョンアップをはじめ、建築・建設産業のDXにつながる各種機能のアイデアの実現、新機能開発などへ投資するとのこと。

Arch-LOGには、約120万点(2021年10月時点)の建築建材が登録されており、ガラス、石材、防水材といったカテゴリーや特定のメーカー名、キーワードなどで必要な建築建材を検索できる。さらに、複数のメーカー製品を比較選定することも可能なため、従来の膨大なカタログを手作業でチェックしていく必要がない。サンプル請求もワンクリックで行なえる手軽さを備えている。

また、Arch-LOGで選定した建材を用いたデジタルマテリアルボード作成機能や、高精細CG画像のリアルタイム生成が行なえるBIM(ビム。Building Information Modeling)レンダリング機能も搭載。施主や顧客へ3DCGでの使用提案ができるなど、ウェブベースでのプロジェクトの「見える化」を実現できる。これら機能によって、作業時間の大幅な短縮・生産性の向上が期待できるほか、紙カタログの削減によりSDGsにもつながるとしている。加えて、竣工前の企画から設計、施工に至るまでの進行管理、使用建材の各種データ(取扱説明書・耐用年数)など建物情報をデジタルベースで一元管理できる。

今後の予定として、竣工後も各製品の交換時期になると自動でアラートが鳴ったりメールでお知らせが届いたりすることで建物維持管理のメンテナンスや顧客へのリフォーム提案が可能になる「メンテナンスアラートサービス」、BIMと連動して設計から施工までのフローをシームレスにつなぐ「仕上表機能」を来期に実装するとのこと。

丸紅アークログは、プロジェクトの低い利益率や抵抗率、労働力不足などの課題を抱える建築・建設業界においてそれらの解決策となるデジタル化を進めるため、丸紅とログログが2019年6月に共同で設立。創業からの2年間で、Arch-LOGを全社的に活用することを目的に締結したアライアンスは、スーパーゼネコン5社を含めたゼネコンや設計事務所、デベロッパーなどの大手各社30社以上になるという。

アンドパッドが建設業界のデジタル化を推進する「ANDPADアプリマーケット」公開、ANDPAD APIも提供開始

アンドパッドが建設業界のデジタル化を推進する建設DXプラットフォーム「ANDPADアプリマーケット」公開、ANDPAD APIも提供クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を提供するアンドパッドは11月8日、建設業界のデジタル化を推進する建設DXプラットフォーム「ANDPADアプリマーケット」の公開を発表した。APIを活用した連携サービスを強化し、その第1弾となる外部サービス・パートナー12社もあわせて明らかにした。

ANDPADは、現場の効率化から経営改善までを一元管理できるクラウド型建設プロジェクト管理サービス。国土交通省のNETIS (新技術情報提供システム) にも登録されており、2016年のサービスリリース以来13万社・33万人以上の建設・建築関係者に利用されている。

ANDPADアプリマーケットは、業務のデジタル化で効率化を図りたい建設会社と、DXに貢献するITサービスを提供する開発者をつなぐ建設DXプラットフォーム。部門によって異なるITサービスを導入することの多い建設業界において、ANDPADアプリマーケットを通じたデータ連携により業務効率化の推進を図る。ANDPADアプリマーケットとの連携サービスの第1弾として、顧客管理や経理・会計、遠隔臨場など、それぞれの課題に応じた12種類のサービスが提供される。今回発表されたANDPADアプリマーケットの連携サービス・パートナーは下記の通り。

連携パートナー・アプリ一覧(50音順)

  • 安心計画:見積システム「カンタン見積計画」
  • オービックビジネスコンサルタント:クラウド会計システム「勘定奉行クラウド」
  • コンピュータシステム研究所:住宅営業支援システム「ALTA Revolution」
  • シンカ:顧客接点クラウド「カイクラ」
  • セーフィー:クラウド録画サービス「Safie」(セーフィー)
  • セールスフォース・ドットコム:顧客管理ソリューション「Salesforce」
  • NEXT STAGE:現場施工品質監査システム「GenKan-NS」
  • freee:クラウド会計ソフト「freee会計」(今後連携予定)
  • 弁護士ドットコム:ウェブ完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」
  • ホームプロ:リフォーム会社紹介サイト「ホームプロ」
  • Box Japan:コンテンツクラウド「Box」
  • マネーフォワード:クラウド型会計ソフト「マネーフォワード クラウド会計」

また、ANDPADアプリマーケットの公開に合わせ、ANDPAD APIの提供も開始(開発者向けページ)。ANDPAD APIを通じてANDPADとサービス連携することで、より簡単なサービス提供を可能にする。アンドパッドは、今後は公開するAPIを拡げるとともに、より開発しやすい環境の整備を推進し、ANDPADアプリマーケットを通じて建設業界向けITサービスのエコシステムの形成を目指す。さらに価値のあるプラットフォームとなるよう開発を進め、業務効率化やコスト削減など、建設業界が抱える課題解決の実現に寄与したいという。アンドパッドが建設業界のデジタル化を推進する建設DXプラットフォーム「ANDPADアプリマーケット」公開、ANDPAD APIも提供

建設現場での床面への位置出し作業を省力化する自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」が商用化

自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」(画像左奥の測量機はトプコンの製品)

自動墨出しロボットシステム「SumiROBO」(画像左奥の測量機はトプコンの製品)

日立チャネルソリューションズは11月8日、建設現場での設備工事などにおける床面への位置出し作業を省力化する自動墨出し(すみだし)ロボットシステム「SumiROBO」(スミロボ)の本格提供を開始すると発表した。研究開発や自社利用以外で墨出し作業を自動化するロボットの商用化は国内初という。今後は、設計データと現場の状況から経路生成し自律走行と位置情報の高精度化を実現するなど、データを活用したソリューションの強化にも取り組む。

墨出しとは、建築・建設工事現場において設計図などに基づき工事に必要な基準線などを明示する(書き出す)作業のこと。同社は、長年培ったセンシング技術やメカトロ技術を建設現場における自動化に応用しSumiROBOを開発。同製品は、測量機と連携して高い精度の墨出しを実現するとともに、特別な知識が不要な簡単操作と、各種センサーによる安全性を兼ね備えた建設業向け位置出し作業ロボットシステムとしている。

同社によると、2021年春にプロトタイプを開発して以降、オフィスビル、商業施設、学校、研究所、工場、倉庫、店舗など多様な条件下の建設現場、数十カ所で試行を重ねたという。これにより様々なノウハウを獲得し、簡単に利用できる運用手順や基本的なサポート内容を構築でき、商用化に至ったとしている。

墨出しロボットシステムの特徴

  • ヒューマンエラーのない高精度墨出し:墨出しロボットシステムに指示を入れるだけで図面に基づいた墨出しポイントに、位置・文字・マークなどの情報を正確に印字可能。測量機と連携した自動での高精度な位置決め作業により、計測ミスなどを防止できる
  • 省力化を実現する連続自動運転:タブレットから墨出し作業範囲やロボットの進入禁止範囲を指定できる。障害物を検知時は、回避ルートを自動探索して作業継続を行う機能を採用
  • 導入を容易化するスキルフリーな運用:測量機の操作はタブレットから行え、作業者に測量機の専門知識がなくても設定可能なため、墨出し経験がない場合でも利用できる。墨出しデータの作成は、ツールによりCADデータ(DXF形式)から自動変換可能

食品廃棄物を利用して持続可能な軟木を堅木のように扱えるようにするKebonyが約40億円調達

これはごくシンプルなことだ。針葉樹(軟材)は「持続可能」な森林で、広葉樹(硬材)よりも早く成長する。広葉樹は、アマゾンのような生物多様性に富んだ原生林に多く見られる。つまり、もし軟材を硬材のように使うことができれば、より持続可能な建築用木材を入手できるだけでなく、広葉樹の森林を破壊から守ることができる。さらに、温室効果ガスの排出量も大幅に削減できる。


これが、Kebonyが開発した製品の背景にある理由だ。Kebonyは、自らを「木材改質技術会社」と位置付け、Jolt CapitalとLightrockが主導して、3000万ユーロ(約39億8000万円)の資金調達を実施した。その木材特性をコントロールする方法はとても興味深いものだ。

Kebonyは、持続可能な方法で伐採された木材に、サトウキビやトウモロコシなどの食品製造過程で発生する廃棄物を加えている。これにより、熱帯広葉樹の挙動や特性を実際に反映した、長持ちする特性を木材に与えることができるという。

もちろん、建設業界がよりグリーンな建設資材を求めている中で、このような素材を使用することは非常に理に適っているし、熱帯林の伐採を減らすことにもつながる。

Kebonyは、この処理によってパイン材のような木材を「貴重な熱帯広葉樹に匹敵し、場合によってはそれを上回る」特徴を持つ木材に変えることができるとしている。また、このプロセスは、木材防腐剤を含浸させる従来の木材処理よりも優れているという。

Kebonyの資金調達は、Jolt CapitalとLightrockがリードした。Jolt CapitalとLightrockは、以前からの株主であるGoran、MVP、FPIM、PMV、Investinorとともに参加し、後者2社は引き続き取締役会に参加する。

Kebonyのコア市場は欧州と米国で、今後も拡大を計画している。欧州の木材市場は、住宅・非住宅建築業界で30億ユーロ(約3980億円)規模の市場となっている。

KebonyのNorman Willemsen(ノーマン・ウィレムセン)CEOは次のように述べている。「Kebonyは市場で最も美しくエコロジカルな木材を生産しており、環境に優しく費用対効果の高い優れた品質を誇っています」。

Kebonyの創業者たち。ノーマン・ウィレムセンCEOとThomas Vanholme(トーマス・ヴァンホルム)CFO(画像クレジット:Kebony)

Jolt CapitalのマネージングパートナーであるAntoine Trannoy(アントワーヌ・トランノワ)氏は次のようにコメントしている。「Jolt Capitalでは、特許技術を活用して持続可能な製品を提供するマテリアルサイエンス企業に強い関心を持っています。ウッドテックにおける20年以上の研究開発と、栽培された針葉樹にハードな熱帯広葉樹の望ましい特性を与える実証済みのプロセスを持つKebonyは、そのうちの1つです」。

LightrockのパートナーであるKevin Bone(ケビン・ボーン)氏は、こう付け加えた。「Kebonyは、脱炭素社会に向けた競争の中で、木材改質技術のリーダーになるという野心を持っており、絶好の立場にあります」。

Kebonyによると、2021年上半期の売上高は2020年の同時期と比べて23%の成長を遂げ、EBITDAも大きくプラスとなっているという。

ウィレムセン氏は次のように説明してくれた。「私たちが実際に行っているのは、木材に含浸させてオートクレーブに入れることです。これにより、木材構造の細胞壁が恒久的に変化し、恒久的に変化した特性が得られ、実質的に木材の寿命を延ばすことができるのです」。

それは何よりだが、スケーラビリティはどれほどのものなのか、と尋ねてみた。

「実際、非常にスケーラブルです。現在、2つのオペレーションが稼動しています。さらにスケールアップするための基本的な青写真を持っています」。

コンクリートやスチールなどの伝統的な素材と比較して、カーボンフットプリントは「大幅に削減されます」と同氏は語った。「立方メートルあたりのCO2排出量は約350キロです。例えば、スチールや従来の広葉樹と比較すると、それらは約1万キロです。つまり、他の素材に比べて非常にわずかです」。

画像クレジット:Kristian Alveo / Kebony

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(文:Mike Butcher、翻訳:Aya Nakazato)

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」がセカンドクローズ完了し総額10億6000万円調達

建設・土木の生産支援サービスのフォトラクションが「建設テック カオスマップ 2020年9月版」を公開

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」(フォトラクション)を開発・運営するフォトラクションは10月27日、新たに第三者割当増資による3億円の資金調達を実施し、資金調達ラウンドにおける調達額が総額10億6000万円でクローズしたと発表した。セカンドクローズの引受先は、新規投資家のHIRAC FUND1号投資事業有限責任組合(マネーフォワードベンチャーパートナーズ)、ウイング・キャピタル・パートナーズ、一般投資会社(社名非公開)、既存投資家のジェネシア・ベンチャーズ、みずほキャピタル。創業からの累積資金調達はデットファイナンスも含め約21億円となった。

調達した資金により、Photoructionおよび「建設BPO」の開発とカスタマーサクセス、採用と組織体制の強化を実施する予定。

3Dプリントの家を建設するICONが228億円獲得、月や火星の基地建設も計画

3Dプリンティングロボットを使ってホームレスの人々のための1世帯住宅を作る。米航空宇宙局(NASA)と協力して月面、ひいては火星にインフラや居住環境を構築するための建設システムを開発し、北米最大の3Dプリント建築物になるとみられるテキサス州の軍事部門の兵舎を納入する。

これらは、テキサス州オースティンに拠点を置く建設テックスタートアップICONが取り組んできたことのごく一部だ。

そして同社は2021年8月下旬、シリーズBで2億700万ドル(約228億円)という巨額の資金調達を達成した。

筆者はICONについて、2018年10月に同社がシードラウンドで900万ドル(約9億9000万円)を調達して以来取り上げてきた。3年も経たないうちにこのマイルストーンに到達したことを見るのはかなりクールだ。

シリーズBラウンドを主導したのはNorwest Venture Partnersで、他に8VC、Bjarke Ingels Group(BIG)、BOND、Citi Crosstimbers、Ensemble、Fifth Wall、LENX、Moderne Ventures、Oakhouse Partnersが参加している。この資金調達により、ICONの純資産合計は2億6600万ドル(約293億円)に達した。同社は評価額を明らかにしていない。

ICONは2017年後半に設立され、2018年3月のSXSW(サウスバイサウスウエスト)の際、米国で初めて認可された3Dプリント住宅をもってローンチした。その350平方フィート(約32.5平方メートル)の家のプリントに要した時間は、約48時間(25%のスピード)であった。ICONは意図的にコンクリートを材料に選んでいる。それは、共同創業者でCEOのJason Ballard(ジェイソン・バラード)氏が語ったところによると「コンクリートは地球上で最もレジリエンスに優れた材料の1つ」だからだ。

それ以来同社は、米国とメキシコに20を超える3Dプリントの住宅や建築物を届けてきた。これらの住宅の半数以上は、ホームレスや慢性的貧困状態にある人々のためのものである。例えば、ICONは2020年、非営利パートナーのNew Storyと提携してメキシコに3Dプリント住宅を建設した。またテキサス州オースティンで、慢性的なホームレスに提供する一連の住宅を非営利団体Mobile Loaves&Fishesと協働して完成させた。

同社は2021年初めにメインストリームの住宅市場に参入し、テキサス州オースティンのデベロッパー3Strands向けに米国初になるという3Dプリント住宅販売を行った。4軒のうち2軒は契約が結ばれている。残りの2軒は8月31日に発売予定である。

そして先頃、ICONは「次世代」Vulcan建設システムを公開し、住宅の新たな探求シリーズを披露した。シリーズ第1弾となる「House Zero」は、3Dプリンティングに特化して最適化設計されている。

ICONによると、同社独自のVulcan技術は、従来の工法より迅速で、無駄が少なく、設計の自由度が高い「レジリエンスとエネルギー効率に優れた」住宅を実現するという。新しいVulcan建設システムは、最大3000平方フィート(約278.7平方メートル)の住宅や建築物を3Dプリントすることができ、以前のVulcan 3Dプリンターより1.5倍大きく、2倍高速になっているとバラード氏は説明している。

ICONは世界的な住宅危機とそれに対処する解決策の欠如に突き動かされている、と同氏は会社設立当初から主張してきた。3Dプリンターやロボット、そして先進的な材料を利用することは、手頃な価格の住宅の不足に取り組む1つの方法である。この問題は、全国的に、そしてオースティンにおいて、悪化の一途をたどっている。

ICONの将来計画のリストには、社会、災害救援、そしてよりメインストリームの住宅を提供することなどが盛り込まれており、さらにはNASAと共同で、月、やがては火星にインフラや居住地を作るための建設システムを開発することも含まれている、とバラード氏は語る。

ICONはまた、NASAと2つのプロジェクトを進めている。先にNASA、ICON、BIGによるMars Dune Alphaの発表が行われた。ICONはこれまでのところ、壁システムの印刷を完了し、現在は屋根に取りかかっている。また、NASAは、ICONの3Dプリントで作られる火星の最初のシミュレーション居住地に住むミッションのクルーを募集中だ。このミッションは2022年秋に開始される予定である。

プロジェクトOlympusは、未来の月探査のための宇宙ベースの建設システムを開発し「別の世界に人類の住まいを想像する」ICONの取り組みを象徴するものとなっている。

「私たちの目標は、次の10年のうちにICONテックを月に届けることです」とバラード氏は語る。

バラード氏はTechCrunchの質問に対して「2020年8月の3500万ドル(約38億5700万円)のシリーズA以降で起きている最も重要なことは、3Dプリント住宅や建物に対する需要の急激な増加です」と答えている。

「この単一の指標は、私たちにとって大きな意味を持ちます」とバラード氏はTechCrunchに語った。「人々がこうした家を求めることは必然的なことなのです」。

「住宅不足に取り組むためには、世界は供給を増やし、コストを削減し、スピードを上げ、レジリエンスを上げ、持続可能性を高める必要があります【略】これらはすべて、質と美しさを損なうことなく行うことが必要です」とバラード氏は付け加えた。

「そのようなことを可能にするアプローチはいくつかあるかもしれませんが、それらすべてを実現できる可能性を秘めているのは、建設スケールの3Dプリントだけです」。

バラード氏によると、ICONは創業以来ほぼ毎年400%の売上増を記録し、目覚ましい財務成長を遂げている。同社のチームは2020年の3倍になり、現在100人以上の従業員を擁している。来年中には規模が倍増する見込みだ。

共同創業者たちと次世代Vulcan建設システム(画像クレジット:ICON)

シリーズBの資金は、3Dプリント住宅の建設の促進「急速なスケールアップと研究開発」、さらなる宇宙ベースの技術の発展、そして「住宅問題に対する持続的な社会的インパクト」の創出に充てられる、とバラード氏は語っている。

「私たちはすでに初期段階の製造を立ち上げており、3Dプリント住宅の需要を満たすために、その取り組みをアップグレードし、加速しているところです」とバラード氏。「今後5年間で年間数千世帯の住宅供給を実現し、将来的には年間数万世帯の住宅を供給できるようになると考えています」。

今回の資金調達の一環としてICONの取締役会に加わるNorwest Venture PartnersのマネージングパートナーJeff Crowe(ジェフ・クロウ)氏は、ICONの3Dプリンティング建設技術が「米国および世界中の住宅不足に多大なインパクトをもたらす」と考えていると語った。

クロウ氏によると、先進的なロボティクス、材料科学、ソフトウェアを組み合わせて堅牢な3Dプリント建設技術を開発することは、そもそも「非常に難しい」ことだという。

同氏はEメールで次のように述べている。「制御された環境で1台か2台のデモユニットを製造するだけではなく、さまざまな地域で、信頼性と予測可能性を備えた、美しく、手頃な価格で、快適で、エネルギー効率に優れた住宅を何百、何千台も生産できるような技術を開発することは、さらに困難です。ICONはこれらすべてを実現しており【略】ブレイクアウト、世代間の成功につながるすべての要素を備えています」。

画像クレジット:ICON, Lake/FLATO Architects

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

インフラ点検など手がけるFOFが橋梁の定期点検や補修設計の現地踏査にVRクラウド「スペースリー」活用

インフラ点検・建設業向けICT技術サービスを手がけるFOFが橋梁の点検や補修設計の現地踏査をVRで報告

インフラ点検や建設業向けICT技術サービスなどを手がけるFOF(エフオーエフ)は10月20日、全天球カメラを使ったVRによる現地踏査報告サービスの開始を発表した。これにはスペースリー(Spacely)が展開するVRクラウド「スペースリー」が使われている。

一般的に橋梁などの現地調査の結果を伝える踏査報告は、文章が主体で、主要な部分の写真を添付するといった内容だが、FOFは現地の状況をVR化して、実際にその場に立って見ているような感覚で現場の確認ができるサービスを開始する。

VR画像には、マップのリンク、橋梁台帳、徒歩で橋の下に行ける箇所の指摘など、さまざまな要素を埋め込むことができる。また、全天球カメラをポールに付けて橋梁の側面を撮影できるので、通常なら点検車を使わなければ見ることのできない箇所も観察できる。AIサイズ推定で、大まかな距離の計測も可能。遠隔操作機能があるので、発注機関と実際に現場に集まっているような感覚で打ち合わせもできるという。

このシステムは、踏査報告だけでなく、橋梁の経年記録、トンネルや災害時の状況確認などにも活用ができるとのことだ。

こちらで、実際の踏査VRのデモを体験できる

70年以上も労働生産性の成長が停滞する建設業界のDXを進めるAgoraがTiger Global主導ラウンドで36億円調達

CEO兼共同設立者マリア・リューミン氏(画像クレジット:Agora)

請負業者向けの資材管理プラットフォーム構築を手がけるスタートアップAgoraが、Tiger Global Managementが主導するシリーズBラウンドで3300万ドル(約36億円)を調達した。

今回の資金調達には、8VC、Tishman Speyer、Yahooの共同創業者Jerry YangJerry Yang(ジェリー・ヤン)氏、Michael Ovitz(マイケル・オーヴィッツ)氏、DST、LeFrak、Kevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏も参加しており、同スタートアップの2018年創業以来の調達総額は約4500万ドル(約49億円)となった。

建設テックは、きらびやかなテクノロジーを好むことが多いスタートアップの世界では、これまで「魅力的」とは考えられてこなかったセクターの1つだ。しかし、建設業は商業や不動産業の原動力ともなっており、私たちすべてに何らかの形でインパクトをもたらしていると言えるだろう。

一方、10兆ドル(約1097兆円)規模の建設業界は長い間、生産性の問題に悩まされてきた。事実、マッキンゼーによると、この業界における労働生産性の成長は1947年以降停滞しているという。

画像クレジット:Agora

Maria Rioumine(マリア・リューミン)氏とRyan Gibson(ライアン・ギブソン)氏がAgoraを設立したときのミッションは、商業取引の請負業者向けに、資材の発注と追跡、手作業でのデータ入力の自動化、そして調達プロセスに関わるすべての人への相互通信可能な単一プラットフォームの提供といった取り組みを推進することにあった。

最終的な目標は、プロジェクトの迅速な進行を支援し、請負業者が建設コストを削減して不必要な遅延を回避することに置かれている。Agoraが期待する、より大きなインパクトは、同社のSaaSプラットフォームが「建設環境をより迅速かつ効率的なものにする」ことであり、それによって都市が「より手頃になり、すべてにアクセスしやすくなる」ことだ。

サンフランシスコに拠点を置くAgoraは、極めて限定的でニッチな方法でこの問題に取り組んでおり、請負業者だけでなく投資家にも支持されていることが示されている。Agoraは、すべての取引を一括して解決しようとするのではなく、特定の垂直市場に焦点を絞っている。例えば、最初は電気関連でスタートしたが、現在は機械関連に移行している。

「2020年、1010億ドル(約11兆円)を超える規模の電気関連の案件に対応しました。当社の顧客は、あらゆる種類のプロジェクトに取り組んでいます」とリューミン氏はTechCrunchに語った。「例えば、発電所に従事する顧客、病院の建設を行う顧客、学校の教室や大学のキャンパスの建設を手がける顧客、教会やスタジアムの建設に携わる顧客がいます。これらの請負業者の仕事は、欠くことのできない重要なものです」。

Agoraの年間経常収益(ARR)は前年比で760%増加しており、顧客ベースも6倍の伸びを示しているという。従業員数もこれまでの3倍の45人に増員され、現在は顧客向けの年間資材ボリュームとして1億4000万ドル(約153億円)を処理している。

同社はシリーズBに向けて活発な資金調達を行ったわけではなく、代わりに投資家たちが積極的にタームシートを提供してくれた、とリューミン氏は説明する。

「私たちのことを十分に理解していた数人の投資家たちが、このラウンドを先取りすることについてアプローチしてきました」と同氏はTechCrunchに語ってくれた。「最初の対話から12日が過ぎた頃、複数のタームシートが用意されていました」。

Tiger GlobalのパートナーであるJohn Curtius(ジョン・カーティウス)氏は、Agoraの「独自」の取引に特化したアプローチに惹かれたと語っている。

同氏の見解によると、このスタートアップは「建設における調達の未来を定義している」という。

「Agoraは巨大かつクリティカルな問題を解決しようとしています」とカーティウス氏はメールで述べている。「調達プロセスの非効率性とサプライチェーンの破綻により、年間数十億ドル(約数千億円)が無駄になっています」。

同社のプラットフォームが提供する具体的な機能としては次のようなものがある。テンプレートのカスタマイズ、事前に承認された資材リストの作成、頻繁に必要とされるアイテムの容易な再注文、40万以上のSKUを提供するカタログからの注文、そしてエラーを減らし基本的なプロセスを自動化する、手作業によるデータ入力の排除などだ。

Agoraによると、現場チームとオフィスチームの両方を1つのデジタルプラットフォームに統合することで、オフィスチームが発注処理に費やす時間を75%、現場チームが資材管理に費やす時間を38%削減できるという。全体として、同社の技術は平均的な顧客に年間最大30万ドル(約3290万円)の節約をもたらす可能性があるという。

今回調達した資金は、複数のチームにわたる人材の雇用に充てる他、30の州を越えて事業を拡大し、他の垂直市場への進出を図っていくために活用する計画だ。

「建設業界では長い間、テクノロジーへの投資不足が続いてきました」とリューミン氏はいう。平均すると、建設収入に占めるテクノロジー支出の割合は約1.5%で「これは実際、中央値が3.3%を示す業界の中で最も低い水準です」と同氏は付け加えた。

「この業界の規模と、ここ最近における生産性向上の低調さを考えると、テクノロジーに真に投資し、それを現場や請負業者に提供していくすばらしい機会が私たちに訪れているのだと感じます」。

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

スマートフォンで建築家に注文住宅の間取りを依頼できる「madree」(マドリー)など運営するスタジオアンビルトは10月13日、第三者割当増資による総額1億3000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はUTEC(東京大学エッジキャピタルパートナーズ)、マネーフォワードベンチャーパートナーズのHirac Fund、ほか個人投資家。

調達した資金は、エンジニアなどの人材獲得やマーケティング費用にあて、既存事業の改善や蓄積された間取りデータを活用した新しいサービス開発を行なうとのこと。また、ハウスメーカーや住宅関連企業との連携強化していくという。

madreeは、自分の暮しに合った間取りをスマートフォンから登録建築家に作成してもらえるサービス。間取りを軸とした独自の注文住宅プラットフォームという。作成した間取りは、提携住宅会社での概算見積もりをサイト上から依頼可能。同じ間取りについて複数社から概算見積もりを取ることもできる。会員登録ユーザーは4万2000人、定型住宅会社は200社以上となっている。

2017年6月に設立されたスタジオアンビルトは、「日本でいちばん多くの建築デザインを届けるプラットフォームをつくる。」をビジョンに掲げる建築デザイン領域のスタートアップ。madreeのほか、建築設計の仕事をオンラインで全国の建築系デザイナー・エンジニアに依頼できる設計事務所や工務店向けサービス「STUDIO UNBUILT」(スタジオアンビルト)も運営している。7000名を超える建築設計関連の専門家が利用しているという。

注文住宅の間取りをスマホで建築家に依頼できる「madree」を運営するスタジオアンビルトが1.3億円調達

いまだExcelファィルに頼る建築業界にGraneetは財務管理SaaSを提供する

フランスのスタートアップ企業であるGraneet(グラニート)は、Point Nine(ポイント・ナイン)とFoundamental(ファンダメンタル)が主導するシードラウンドで240万ユーロ(約3億1200万円)を調達したばかりだ。同社は、建設業界とそこに存在する無数の中小企業に特化した、垂直型のSoftware-as-a-Service(サービスとしてのソフトウェア)を提供している。

Graneetは、建設会社がプロジェクトをより良く管理できるように、最も優れた財務管理ソリューションを構築したいと考えている。大半の建設会社は、いまだに複数のExcelファイルに依存しており、情報のサイロ化やデータ入力の煩雑さに悩まされているのだ。同社には他にも、Jack Newton(ジャック・ニュートン)氏、Renaud Visage(ルノー・ヴィサージュ)氏、Alexandre Guinefolleau(アレクサンドル・ギネフォロー)氏、Arthur Waller(アーサー・ウォーラー)氏、 Philippe Gelis(フィリップ・ゲリス)氏、そしてColonies(コロニーズ)の創業者たちが出資している。

Graneetの共同設立者でありCEOのJean-Gabriel Niel(ジャン・ガブリエル・ニエル)氏の母親は、建設会社を経営している。「彼女は私に、『これはおかしい、2つの建設プロジェクトのうちの1つで、利益が出るのか損失が出るのかがわからない』と言いました」と、同氏は筆者に語ってくれた。

そこでニエル氏は、受注処理や請求管理など、この会社の社内プロセスを調べてみた。彼はその時、Microsoft Excel(マイクロソフト・エクセル)が依然として主要なソリューションであることに気づいたのだ。

Graneetは見積、請求そしてリソースプランニング(経営資源計画)という、3つの基本的なことを解決する必要があると考えている。同社はまず、請求書の作成から着手した。Graneetでは、依頼主が支払う予定の金額、これまでに受け取った金額、そして次の請求予定を、信頼できる唯一の情報源として確認できるようにする。これによって未払いの請求書があるかどうかを確認し、支払いがあったものをマークすることができる。

続いて同社は、見積もりとリードジェネレーション(見込顧客の獲得)に取り組み始めた。ユーザーはGraneetのプラットフォームから直接見積書を作成することができる。依頼主が見積書を承認すると、建設プロジェクトを進めていき、完了率を入力できる。これはこの業界では重要な指標だ。

そして今回の資金調達により、Graneetは3つ目のリソースプランニングを開発したいと考えている。近いうちに、Graneetから下請け業者を管理し、複数の請負業者に向けて請求書を複数のパートに分割して発行できるようになるはずだ。

Graneetの顧客である建設会社は、このプラットフォームに下請け業者を招待できるようになる。下請け業者はすべてを見ることはできないが、自分たちが取り組んでいる部分を確認することができる。同様に、Graneetを利用している下請け業者であれば、毎月の進捗報告を依頼主の企業に送ることができるようになるというわけだ。この機能が実現すれば、Graneetは間違いなく新しい顧客を引きつけることができるはずだ。

将来的には、既存の顧客にもより多くのサービスを提供できると、Graneetは考えている。例えば、多くの建設会社は資金繰りのために、ファクタリング会社を利用している。ファクタリング会社は、未払いの請求書を買い取り、その割り引いた額を直ちに支払うが、Graneetはプラットフォーム上で直接前払いを提供することもできるようになる予定だ。

以上は、Graneetがどのように役立つかという例だ。その発想の背景には、建設会社は現在、ソフトウェアソリューションに関して、十分な備えができていないということがある。もし、Graneetがそのギャップを埋められることを証明できれば、他にも多くの製品がチャンスを得られることになるだろう。

画像クレジット:Graneet

画像クレジット:Greyson Joralemon / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

Apple Storeのデザイナーが共同設立者となったJuno、アパートの持続可能な建設に約22億円を調達

より持続可能で手頃な価格のアパートを建設することを目的とする不動産テックJuno(ジュノ)が、シリーズA資金調達ラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。

Comcast Ventures(コムキャスト・ベンチャーズ)、Khosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)、Real Estate Technology(リアル・エステート・テクノロジー、RET)ベンチャーズが共同で資金調達を率いた。これにより同社の調達額は2019年の開始時点から合計で3200万ドル(約35億円)に上る。JLL Spark(JLLスパーク)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Anim(アニム)、K50(Kフィフティー)、Foundamental(ファンダメンタル)、Green D Alumni Ventures(グリーンDアルムナイ・ベンチャーズ)もシリーズA投資に参加した。

Junoの共同設立者でCEOのJonathan Scherr(ジョナサン・シェル)氏は、サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップ企業が「ゼロからの開発に向けた初のOEMエコシステム」を構築し、オール電化施設を建設することを計画していると述べた。

同氏はTechCrunchに次のように話す。「私達は住宅開発を製品開発のように扱い『製品化』と呼んでいます。リピート価値のある建物を作ることにより、継続的な改善を実現して効率を上げるツールとシステムを作ることができます。建物が1回限りの文脈で検討、設計されたら、1つのプロジェクトから次のプロジェクトへの学びが途絶えてしまいます」。

Junoの製品化は、ある意味もっと一般的に使用される言葉「プレハブ工法」に似ていると考えることができる。プレハブ建設会社Katerra(カテラ)は失敗したがAbodu (アボドゥ)Mighty Buildings(マイティー・ビルディングス)を含めコースラが支援し付帯住宅や戸建て住宅にさら重点を置いたこの分野の他の多数の会社は資金調達して成長を続けている。また、ノースカロライナ州に拠点を置くPrescient(プレシャント)もプレハブ工法により集合住宅とホテルを建設している。

関連記事:ソフトバンクが支援する建設の巨人「Katerra」が約2200億円以上を使い果たし事業を閉鎖

オースティンプロジェクトのレンダリング(画像クレジット:Engraff Studio / Juno)

Junoの理論は「製品化」を通じて、設計のタイムラインの短縮、推定やスケジューリングの精度上昇「大幅に加速」した建設プロセスなどにつながるツール、システム、プロセスを作ることができるというものである。それにより、シェル氏は米国中の人々のためのより手頃な価格の住宅オプションを実現できると述べる。また、Junoはその設計プロセスの進捗が従来の不動産開発より60%速いと主張している。

同業他社と同じく、Junoは従来の建築方法よりはるかに持続可能な手法を謳っている。

「今日の建設ごみは、米国の全都市ごみの2倍あります。Junoのシステムはその設計、サプライチェーン、建物の建設に効率を生み、廃棄物とエネルギー使用量を減らします」。低炭素、完全木造建物、木材の露出増加(Junoは抗菌性と話す)、ガスをまったく出さない建物などを特徴とする。

都市部ではオール電化の建物に重点が置かれ、クリーンエネルギー生成へのロードマップが確立されたため、Junoの居住システムは集合住宅ユニットにおける内包カーボンのネットゼロ目標に向けて前進しているとシェル氏はいう。

シェル氏は元々Apple Storeのデザイナーであった BJ Siegel(BJ・シーゲル)氏と、現在同社のアドバイザーを務めるChester Chipperfield(チェスター・チッパーフィールド)氏とともにJunoを創設した。チッパーフィールド氏は、以前Tesla(テスラ)のグローバルクリエイティブディレクター、Appleのスペシャルプロジェクト統括、Burberry(バーバリー)のデジタル部門長を務めていた。シェル氏はベンチャー投資家や多数の会社のアドバイザーとしての経験がある。

「1999年にBJ (シーゲル)はAppleのリテールプログラムのコンセプト・アーキテクトとして、リピート価値のある建築環境のアイデンティティを作り出す方法を考えていました」。とシェル氏は語る。「それによって、彼とAppleの同僚はAppleのリテールを、サプライチェーン分散化に基づくAppleの製品として考えるようになったのです」。

(左から右)共同設立者でアドバイザーのチェスター・チッパーフィールド氏、共同設立者でCEOのジョナサン・シェル氏、共同設立者、設計部門長のBJ・シーゲル氏(画像クレジット:Juno)

父親が不動産開発業者のシェル氏によると、Junoは同じようなモデルを基に作られた。複製可能な「より良い」住宅を設計することにより、会社が「サプライチェーンを構築し、これまで不可能であった方法で学習システムの基礎を築く」ことを目標に掲げる。

Junoは米国の都市に大規模なオール電化木造アパート群の初の国内網を築くことから始めた。Swinerton(スワイナートン)Ennead Architects(エネアド・アーキテクツ)と提携し、そのモデルを実現している。このスタートアップ企業はその最初のプロジェクト、イーストオースティンでのアパート建築にも着工した。現在400棟を開発中である。イーストオースティンの建物は2022年にオープン予定。Junoはシアトルとデンバーでも開発を計画している。

今後同社はその新たな資本を使って製品を作り、最初のプロジェクトのコホートに着手し、さらに多くの開発業者と関わり続けることを計画している。

Junoの投資家は同社の事業と計画について当然楽観的である。

コースラ・ベンチャーズのパートナーであるEvan Moore(エヴァン・ムーア)氏は、普段は不動産開発会社、建設業者、建築家には投資しないと述べた。

「しかし強いチームが重要な業界で劇的に他とは違う製品に取り組んでいるなら、支持するでしょう」。と彼はメールで回答した。

ムーア氏は、これまでアパートは消費財で、使用されることにより価値が得られるという事実にも関わらず、アパート開発は製品主導ではなく資金主導の業界であったと付け加えた。

「顧客体験を第一に考えて建物を設計する機会は山ほどあります。Appleがアパートを建てたら?私からすると、それはみなさんが作り出したい体験とは逆方向に作用するもので、それをサポートする構成要素、サプライチェーン、システムを設計し、制約となる費用の中で作業することを意味します。野心的な考えですから、実験するに値します」。

Comcast Ventures (コムキャスト・ベンチャーズ)社長のSheena Jindal(シーナ・ジンダル)氏は、アメリカの住宅ストックがますます老朽化し不足しており、家を購入することが難しくなっていると指摘する。同社はすべての人が手頃な価格の住宅を手にするに値すると考えているという。

「初めてJunoのチームに会った時、第一原理アプローチに強い印象を受けました」と、ジンダル氏はメールで回答した。「Junoは集合住宅の生産で何が壊れていたか根本的に理解し、その設計およびOEMソース戦略をもって早期にバリューチェーンに焦点を当てて真正面から取り組みました。Junoはバリューチェーンの既存のプレイヤーに取って代わるのではなく、提携しているのです」。

画像クレジット:Engraff Studio / Juno

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

建設保険市場でデジタル体験と契約決定の簡易化を図るShepherdが約6.8億円調達

建設市場に特化したインシュアテックのスタートアップであるShepherd(シェパード)は、Spark Capital(スパーク・キャピタル)が主導する615万ドル(約6億7500万円)のシードラウンドを獲得した。この資金調達イベントは、2月にSusa Ventures(スサ・ベンチャーズ)が主導してプレシードラウンドを実施した後に行われたもので、Susa VenturesはShepherdの最新の資金調達イベントにも参加している。

広い意味では、Shepherdは、消費者よりも他の企業に販売するネオ・インシュランス・プロバイダー(次世代保険会社)に該当する。消費者にサービスを提供するインシュアテックのスタートアップ企業は、株式公開のために何年にもわたってベンチャーキャピタルの支援を受けてきたが、初期の楽観的な見方に続き、公開後すぐに株価が下落してしまっていた。

しかし、Shepherdや9月初めに発表されたBlueprint Title(ブループリント・タイトル)のような企業は、保険業界の他の場所にもアプローチする余地があることに賭けている。Shepherdは、建設市場をターゲットにしており、過剰賠償責任保険から始めて、この業界を切り開こうとしている。

同社の共同設立者兼CEOであるJustin Levine(ジャスティン・レヴィン)氏は、TechCrunchの取材に対し、建設業界の契約者は、一般賠償責任や商用自動車保険など、多くの保険を必要としていると述べている。しかし、大掛かりな建設プロジェクトでは、さらに多くの賠償責任保険が必要となることが多く、それらは超過保険やアンブレラ保険として販売される。

Shepherdは、建設業界のミドルマーケット ─ 年間2500万ドル(約27億4600万円)から2億5000万ドル(約274億6400万円)規模のプロジェクトを行う企業─ をターゲットにしており、顧客との契約を支援する方法として、テクノロジーを活用したいと考えている。

レヴィン氏によると、同社が提供するサービスには2つの核となる部分があるという。1つ目は、お客様が期待しているもの、つまり、お客様のための完全なデジタル体験だ。CEOは、そのデジタルサービスを、インシュアテックの世界においてあって当たり前のものだととらえている。私たちも同じ考えだ。しかし、別の建設テックプロバイダーと提携して、保険契約決定を手助けするという、もう一方の部分を考慮すると、同社はさらに興味深いものになる。

例えば、このShepherdは、同社の事業に投資したProcore(プロコア)と提携している。

契約決定の判断を手助けするのを第三者のソフトウェア会社に委ねるというコンセプトは、ある意味では理に適っている。新しい技術や手法を採用するという点でテクノロジーに前向きな企業は、そうでない企業と比べて契約決定のプロファイルが同じではない。一般的に、データが多ければ多いほど契約決定の判断がしやすくなる。建設会社が機能するよう支援するソフトウェアにつなげることは、その観点からも理に適っていると言えるだろう。

初期の顧客が同社の製品のことを「建設管理ソフトウェアを装ったリスク管理ソリューション」と呼んでいたことに納得しているとProcoreのCEOは、TechCrunchの取材で語っている。リスクが効果的に管理されればされるほど、Shepherdの損失率は時間の経過とともに低下し、価格競争力が高まると考えられる。

価格に関して、現在建設保険市場は苦戦しているとレヴィン氏は考えている。決済コストの上昇により、この分野の手つかずの古い保険(レガシー保険)の中には、予想以上の損失を抱えているものもあり、一部の保険会社は価格の引き上げを余儀なくされている。レヴィン氏は、Shepherdがこのレガシー保険を持たずにこの市場に参入したことで、競争力のある価格を提供できるようになったと考えている。

過剰賠償責任保険は、Shepherdが建設保険市場に参入するための「くさび」であり、いずれ他の商品も販売する予定だという。同社のCEOによれば、超過賠償責任保険を最初に取り組むのは、このエリアが同市場において現在最も痛みを伴っている場所だからだという。

率直にいうと、TechCrunchはB2Bネオインシュアランスのスタートアップ市場に魅力を感じている。消費者に保険を販売するには、保険の種類によって異なる特定の売上原価(COGS)が必要であり、しばしば市場投入コストがかさむ。さらに、莫大な予算を持つナショナルブランドに対抗するには、顧客獲得コスト(CAC)が厄介なことになる。新興のテック企業にとっては、事業保険市場のほうが有利かもしれない。ベンチャー投資家は、きっとそのような賭けをすることを望んでいる。

Sparkの案件を担当したNatalie Sandman(ナタリー・サンドマン)氏は、最初にShepherdに出会ったときは別のプロジェクトに取り組んでいたのだが、注意を向けてみると、心に刺さったとTechCrunchに語った。この投資家は、建設保険の契約プロセスに新しいデータを導入するというアイデアが、同社がよりスマートな意思決定をするのに役立つ可能性があると述べている。保険の世界では、契約の選択肢が増えれば、より収益性の高い保険になる。つまり、将来のキャッシュフローが大きくなるということだ。そして、それが価値創造につながることは誰もが知っていることだ。

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画像クレジット:Dibyangshu SARKAR / AFP / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Akihito Mizukoshi)

ルンバのように動いて建築現場にレイアウトをプリントするRugged Roboticsのロボット

2020年の出来事の中で、最も追い風を受けたロボティクスの分野の1つは建設業だろう。自動化によって大きな利益を得られる可能性のある建設業は、ロボティクスの急成長分野だ。新型コロナウイルスの影響から多くの不要不急の事業が停止したことで、この事実はさらに強調された。過去1年余りの間に、Toggle(トグル)、Dusty(ダスティ)、Scaled(スケールド)、SkyMul(スカイミュル)など、この分野における多くのプレイヤーが、注目に値する資金を調達するのを、我々は目にしてきた。

2018年にヒューストンで設立されたRugged Robotics(ラグド・ロボティクス)は、2019年のシードラウンドで250万ドル(約2億7400万円)を調達した。現在は積極的な資金調達を行っていないが、マサチューセッツ州に拠点を置く建設会社のConsigli(コンシーリ)と提携するなど、すでに初期のパイロット段階における技術の運用を開始している。

画像クレジット:Rugged Robotics

ConsigliのJack Moran(ジャック・モラン)氏は「私たちには、かなり先進的なクライアントがいました」と語る。「その建築物は、プロジェクトの中核となるシェルを我々が管理しており、非常に複雑で、多くの奇妙な形状の装備を施さなければならず、私たちにとってはチャレンジングなものでした」。

Ruggedが「レイアウト・ルンバ」と自称するこのロボットは、マサチューセッツ州ケンブリッジにある10階建てのビルの建設に使用され、実際に1フロアあたり約4万平方フィートの空間の設計図を地面に描き出した。この提携により、Ruggedは初期の研究開発モードから商業化への重要な一歩を踏み出すことになった。

「レイアウト作業は、建設プロセスの中で最も重要な作業です」と、Ruggedの創業者兼CEOであるDerrick Morse(デリック・モース)氏はTechCrunchによるインタビューで語った。「どこに何が設置されるかを記すことから、どこに何が作られるかが決まります。レイアウト中のミスは、建設プロセス全体に影響を及ぼし、手直しや遅延、追加費用につながります」。

Ruggedのチームはまだ小規模で、NASAやSamsung(サムスン)での経歴を持つ共同設立者を含む、6名ほどのフルタイム従業員で構成されている。チームは現在、3台のロボットを保有しているが、5台に増やすことを計画している。これらのロボットは、地面にドットマトリクスインクのパターンを印刷し、建設チームが実際に作成する建物の位置確認を示す。

Ruggedチームのメンバーは、ロボットと一緒に現場に行き、ロボットが計画を実行するのを監督し、RaaS(Robotics as a Service)として建設会社に課金する。

「私たちには果てしない顧客ニーズがあります」とモース氏はいう。「我々と一緒にパイロットやデモを行うことに熱意を持つ数十億ドル(数千億円)規模の建設会社がいくつかあります。私たちは今後1年間で組織とフリートを拡大していく予定ですが、その成長のために追加の資本投入を行うことになるでしょう」。

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億円調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

建築業界向けの建材・家具検索プラットフォーム「TECTURE」を手がけるtecture(テクチャー)は8月24日、総額約1億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、Coral Capital、個人投資家を含めた8社。2019年創業からの累計調達額は1.9億円となった。調達した資金により開発体制およびデータベース構築体制を強化し、さらなる事業拡大にむけて組織基盤を強化する。また、TECTUREの検索機能アップデートを実施した。

今後の計画として、2022年春には、複数の主要専門誌5年分に相当する3500事例(約7万枚の写真)をデータベース化する予定。今後は「BtoB」の検索領域を拡大し、建物・家具・建材・設計図書・3Dデータなど空間に関するあらゆる検索・データ管理を可能にするという。またコンシューマー「toC」へ向けたマーケットプレイスの展開を予定しており、2023年には日本最大級の空間デザイン検索プラットフォームとなることを目指す。

tectureは、「空間デザインの未来をつくる」をミッションに掲げ、建築家の谷尻誠氏、編集者の佐渡島庸平氏、開発者の川田十夢氏、同社代表の山根脩平氏が、2019年2月に立ち上げた、建築デザイン領域のDX化を目指すスタートアップ企業。デザイナーの作品事例に家具・建材の商品情報を埋め込むことで、作品事例(メディア)から商品情報(カタログ)までワンストップで検索できる設計・メーカー向けプラットフォーム「TECTURE」を展開している。これまで大量の紙で検索していた家具・建材カタログや設計図書をオンライン上で効率的に管理できることから、サービス利用者数は1万5000人を超え、サービス導入設計事務所数は約200社に達しているという。

建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

TECTUREのアップデートでは、デジタルカタログとしての機能を大幅に強化し、プロユースの検索性に対応した。「建築をさがす」「家具・建材をさがす」の2つのタブで絞り込み検索を実装している。事例や家具・建材の検索性を高め、詳細検索では「防火」「防煙」「ホルムアルデヒド」など建築基準法に対応した建材を絞り込める。

また、メーカー各社の販促ならびに空間デザインや設計業務を強力にサポートするだけでなく、これから家を建てよう、リノベーションをしようと計画中のユーザーにとっても、利用価値の高いサービスアップデートとなっているという。建築業界向け建材・家具検索の「TECTURE」が1.2億金調達、建築基準法対応建材の検索を可能とするアップデートも実施

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」(フォトラクション)の開発・運営を行うフォトラクションは8月25日、第三者割当増資による7億6000万円の資金調達を発表した。引受先は、慶應イノベーション・イニシアティブ(KII)、GMO VenturePartners、既存株主のDBJキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。調達した資金により、PhotoructionおよびAIを活用しデスクワークや雑務を代行するアウトソーシングサービス「建設BPO」の開発とカスタマーサクセス、採用と組織体制の強化を実施していく予定。

建設業界では、国内建設投資額が平行線になると予測され、今後も多くの需要が見込めるという。しかし、法改正により2024年には残業規制がかるのに加え、労働人口が100万人減ると予想されており、労働力不足のために1人当たりの生産性向上や人材リソースの確保は待ったなしの状況となっているという。そこで同社は、人材とテクノロジーへの投資を継続的に実施することで、国内60兆円を超える建設産業の生産性向上をさらに加速するとしている。

2016年3月設立のフォトラクションは、「建設の世界を限りなくスマートにする」をミッションとし、建設現場の生産性向上をアプリケーションとデジタルアウトソーシングで支援するサービスとして、Photoructionを提供している。同サービスは2017年末に工事現場の写真管理アプリケーションとしてスタートし、現在ではスーパーゼネコンをはじめ10万超の建設プロジェクトで活用されるようになった。また2018年には、建設業務に特化したAIの研究開発も開始。2021年1月に建設BPOをリリースした。

建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

同社は、SaaS×AIにより、業務の効率化だけではなく1人当たりの労働時間を増やせるよう、新しい生産性向上サイクルの可能性を追求するとしている。
建設・土木の生産支援クラウド「Photoruction」の開発・運営を手がけるフォトラクションが7.6億円調達

3Dプリントとロボットアームで住宅建設の工期を短縮するDiamond Age

ベイエリアのDiamond Ageが今週、800万ドル(約8億8000万円)の資金調達を発表した。このシードラウンドをリードしたのはPrime Movers LabとAlpaca VCで、Dolby Family Ventures、Calm Ventures、Gaingels、Towerview Ventures、GFA Venture Partners、そしてSuffolk Constructionなど参加した投資家はとても多い。

同社の売りは、複数の最新技術を組み合わせて利用し、工期と工数を大幅に減らすことだ。Diamond Ageの主張では、同社のその技術が完全に実現すると、手作業を担当する人間労働者を55%減らし、一世帯住宅の建設工期を9カ月から30日に短縮できるという。今回の資金調達の一部は、コンセプトを実証するために、1100平方フィート(約102.2平方メートル)の「デモハウス」を建設するためのプロセスを整えることに使われる。

共同創業者でCEOのJack Oslan(ジャック・オスラン)氏は「私たちはアメリカンドリームを追う次世代のために、高品質で手頃なお値段の一世帯住宅を作る必要があります。それを実現する唯一の方法はオートメーションです」とプレスリリースで述べている。

具体的に同社が利用するのは、ロボットと3Dプリントだ。ロボットについては、26種類のロボットアームアタッチメントを用いて建設をサポートする。また、ガントリーを使った3Dプリンティング技術で、構造物の内壁や外壁を作る。

なぜベイエリアかというと、サンフランシスコのベイエリアは極めて住宅事情が逼迫しているからだ。一般の建設会社も、RaaS(Robotics as a Service)と呼ばれるレンタル方式で同社の技術を利用できる。料金の情報は、今回得られなかった。

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画像クレジット:Diamond Age

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(文:Brian Heater、翻訳:Hiroshi Iwatani)

デジタルツイン関連技術・サービスを展開する企業をまとめた「デジタルツイン 業界カオスマップ」2021年8月版

  1. デジタルツイン関連技術・サービスを展開する企業をまとめた「デジタルツイン 業界カオスマップ」2021年8月版公開

デジタルツインプラットフォームの開発・提供を行うSymmetry Dimensions(シンメトリー・ディメンションズ)は8月19日、2021年8月版「デジタルツイン 業界カオスマップ」を発表した。

2014年10月設立のSymmetry Dimensionsは、空間・都市向けデジタルツイン構築およびプラットフォーム開発を行う企業。空間や都市における人流・交通・IoT・BIM/CIMなど様々な種類のデータをプラットフォーム上で統合・解析することで、誰もが簡単にデジタルツイン上での仮説・検証・計画を行うことを可能にするとしている。

デジタルツインとは、物理空間に存在する場所や事象について、IoTデバイスなどを用いてデータ化しデジタル空間上に再現することで、分析・予測などを可能にする技術。データを活用した業務の最適化を行う方法として、製造業や建設業、スマートシティなど様々な分野での活用に注目が集まっているという。

同社は、2021年8月版「デジタルツイン 業界カオスマップ」とともに、デジタルツインの市場動向およびテクノロジーのうち、特にトレンドとなっている注目すべき重要なキーワードを解説している。

「オープンデータ」の加速

デジタルツインやスマートシティを構築する基盤として、世界中の国や自治体でオープンデータ化の取り組みが加速している。米国政府機関や州・都市などが保有する公共データを一元的に管理提供する「Data.gov」では、2009年の発足当初47件だったデータが、現在では6570倍の約31万件に増大。日本国内では2021年3月に公開された国土交通省の3D都市モデル「Project PLATEAU」(プロジェクト・プラトー)、静岡県の3D点群(Pointcloud)データベース「Virtual Shizuoka」など、3Dデータを中心としてオープンデータ化が進んでいる。

「製造」「建設」業界が先行するデジタルツイン

従来から3Dデータを利用していた製造・建設業界は、デジタルツイン化への対応も早く、これらのニーズに応じたデジタルツイン構築やサービス提供を行う企業が増加している。また、製造業界では自社開発でシステム化を進める企業が多く見られる一方、建設業界では外部テクノロジー企業との協業によるシステム化を進める傾向にある。建設業界においては、今後もスタートアップをはじめとした様々な企業からデジタルツイン開発への参入が活発になるとしている。

業界を横断した「汎用型」プラットフォーム(Cross-Industry)

スマートシティに代表される都市型デジタルツイン領域では、業界を横断した汎用型のデジタルツインプラットフォームが登場。これは、IoTセンサーの普及による現実空間のデータ収集が増大したこと、iPhoneをはじめ身近な製品がLiDARセンサーを採用するなど現実世界をデータ化する流れが加速していることで、従来は3Dデータを使用していなかった企業においてもデジタルツインの構築・利用が可能になってきたためという。

「マルチエクスペリエンス」

デジタルツインの活用では、企業や組織のあらゆる関係者が、場所を問わず、より迅速に現在の状況を把握・共有し、次の行動につながる意思決定を行う必要があるという。Symmetry Dimensionsは、そのためウェブブラウザー・スマートフォン・xR(拡張現実、複合現実)を組み合わせたマルチエクスぺリンス化が加速するとしている。ウェブブラウザーを基点としたクラウドベースのデジタルツインプロダクトは今後さらに増大するという。

デジタルとフィジカルの双方向での共有・連携

現実空間の位置情報に基づき、永続的に情報を保存し、ユーザー間での共有を可能にする技術である「AR Cloud」の進化と、コロナ禍により、あらゆる業務の「デジタルファースト」のプロセスが加速し、デジタルツインと物理空間の双方向でのデータ共有・連携が進むという。これによりデジタルツイン上で行われた意思決定の迅速な現場への反映と、最適化された従業員エクスペリエンスを提供をするようになるとしている。