NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

NASA

NASAの最新の国際宇宙ステーション(ISS)ミッションには、月の土(レゴリス)を使って現地に建物を作るための3Dプリンター実証機が搭載されています。

Redwire Regolith Print(RRP)と呼ばれるこのプロジェクトは、既存のプリンティング機材と連携してレゴリスに見立てた材料を用いて3Dプリントの実証試験を行い、出力されたものが地球とは異なる環境で期待どおりの強度を示すかどうかを確かめます。

月面に飛行士が滞在するための施設を作ることを考えたとき、全ての資材を地球から持っていくのは現実的ではありません。そのため研究者らは何年も前から現地調達できるレゴリスを使った居住施設の建設を研究し、様々なアイデアひねり出しています。NASAもコンペ形式で画期的なアイデアを募集していました

今回の実験は、その実現を真剣に目指すもので、低重力下での土の3Dプリントが上手くいくかを確かめます。まだまだ課題はたくさんあるはずですが、実験がその解決の足がかりになることが期待されます。またそれは月だけでなく将来の火星への進出にも役立つかもしれません。

NASAがISSで月基地建設用3Dプリンターの実証機をテスト、微小重力・月の土で必要な強度が出るか確認

Redwire Space。Redwire Regolith Print(RRP)の3Dプリンター実証機

(Source:NASA。Via Universe TodayEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:宇宙
タグ:ISS / 国際宇宙ステーション(用語)宇宙開発(用語)建設 / 建築(用語)3Dプリント / 3Dプリンター(用語)NASA(組織)

クラウド型建設プロジェクト管理の「アンドパッド」が建設現場の短時間工事に特化した稼働管理アプリをローンチ

クラウド型建設プロジェクト管理の「アンドパッド」が建設現場の短時間工事に特化した稼働管理アプリをローンチ

クラウド型建設プロジェクト管理サービス「ANDPAD」を運営するアンドパッドは8月5日、建設現場の稼働管理アプリ「ANDPADボード」をローンチしたと発表した(ANDPAD施工管理とは別サービス。ANDPAD施工管理契約済みのユーザーは別途契約が必要)。

ANDPADボードは、1日程度の短期間で工事が完了する業務向けに開発された稼働管理アプリ。作業員の日程調整から現場情報の共有、作業完了報告までワンストップで実現することで情報を一元管理可能という。このため、出先・事務所で予定を調整している社員や、現場に向かう工事担当者も簡単操作で効率的な稼働管理を実現できる。特に、「流通」「メーカー」「修繕メンテナンス」「原状回復」「サッシ・建具工事」「看板サイン工事」「給湯器工事」などの修繕・取り付け・設置工事分野で利用しやすいとしている。

設備設置工事や看板サイン工事など施工時間が短い工事の日程調整や現場管理には、職人や現場担当者へのスピーディーな情報共有が重要であるにもかかわらず、ホワイトボードや付箋などアナログなツールで情報管理されていることが多く、リアルタイムの情報共有が難しいという課題があるそうだ。

アンドパッドは、従来のガントチャート形式工程表よりシンプルに使え、稼働管理もできる機能がほしいという要望を受けていたことから、ANDPADボードの開発・ローンチに至ったという。

ANDPADボード概要

  • ホワイトボードをクラウド化、より円滑な情報共有で稼働管理を改善:メール・FAX・紙・電話で連絡しホワイトボードで行っていた職人・協力会社の稼働管理・スケジュール情報を、クラウドで一括管理。出先での急な日程変更が発生しても、すぐにANDPADボードで編集・共有できる。PC、スマホ、タブレットで工事予定が閲覧・編集できるため営業、事務、協力会社の全員がいつでも、どこでも最新情報を確認可能。また、現場情報の確認から作業報告までアプリですべて完結するため、事務所へ確認に戻る手間などを削減できる
  • 現場での使い勝手追及、柔軟な権限設定で他拠点展開にも対応:現場での使いやすさを追求し、今週や明日の予定をスマホで確認できる。当日予定している工事の段取り情報の確認もカレンダーをタップするだけ、作業の完了報告もホーム画面から作成可能。また、管理者ユーザーは、ユーザーごとに各カレンダーの閲覧・編集権限を自由に設定できるため、支店別や社内外などさまざまなな構成での管理が可能

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ANDPAD(企業)建設 / 建築(用語)SaaS(用語)日本(国・地域)

製造業・建設業・設備管理業など現場特化SaaS「SynQ」を手がける福岡発のクアンドが1.2億円を調達

製造業・建設業・設備管理業など現場特化SaaS「SynQ」を手がける福岡発のクアンドが1.2億円を調達

製造業・建設業・設備管理業などにおいて、遠隔地にいる管理者と現場担当者をつなぐビデオ通話ツール「SynQ Remote」(シンクリモート)を提供するクアンド(QUANDO)は8月2日、第三者割当増資による総額1億2000万円の資金調達を発表した。引受先は、ALL STAR SAAS FUND、UB Ventures、ドーガン・ベータ、F Venturesおよび個人投資家。今回の資金調達が外部投資家からの初回エクイティファイナンスという。調達した資金は、採用活動およびSynQ Remoteの新規機能開発や販路拡大、「SynQ」シリーズにおける新プロダクトの開発にあてる予定。

2017年4月設立のクアンドは、「地域産業・レガシー産業のアップデート」をミッションに掲げ、現場向け情報共有プラットフォーム「SynQ」(シンク)を提供する福岡発スタートアップ。

これまで同社は、原子力発電所向けバルブ製造メーカーとクラウドメンテナンスシステムの共同開発や、鋼材機器メーカーと遠隔制御AIシステムの事業化など、レガシーな産業の現場のDXを手がけており、SynQはその経験を通して感じた「現場特有のコミュニケーションや情報共有の課題」に対するソリューションという。第1弾として、現場仕事に特化した遠隔支援ビデオ通話アプリ「SynQ Remote」をリリースしており、建設業・製造業・メンテナンス業・行政など累計67社・584アカウント(2021年7月31日時点)が利用しているそうだ。

SynQ Remoteは、ビデオ通話機能をはじめ、音声テキスト化機能も採用。現場仕事の多くは、騒音環境下にあることが多く、音声だけでの会話では現場側では「聞こえない」といった状況が発生しやすい。このため、テキストで相手に指示できるようにしているという。

また、現場で図面を見ながら会話できるようにする「画面共有」機能、対象物を指さしながらコミュニケーションをするような現場型のコミュニケーションを実現する「ポインター」機能、撮影した写真に直接・絵を書いて相手に指示を送れる手書きメモ機能を採用。遠方にいる人が任意のタイミングで写真を撮影できる「遠隔撮影」も搭載している。

遠隔にいるベテラン技術者が現場の新人作業者に指示している場面。ポインタ機能を使うことで口頭では伝わりづらい作業手順を遠隔から指導でき、限られたベテラン技術者の労働力をレバレッジ

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タグ:建設 / 建築(用語)クアンド(企業)製造業(用語)デスクレスワーク(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

静岡県豪雨災害の復旧工事の応援が必要な事業者と全国の工事会社をマッチング、「助太刀」が「災害支援機能」を無料開放

静岡県豪雨災害の復旧復興工事の応援が必要な事業者と全国の工事会社をマッチング、「助太刀」が「災害支援機能」を無料開放

建設職人と現場をマッチングするアプリ「助太刀」(Android版iOS版)運営の助太刀は7月27日、令和3年(2021年)7月静岡県豪雨災害の復旧復興工事に携わる業者を対象に「災害支援機能」を無料開放すると発表した。

災害支援機能とは、助太刀登録業者のうち、災害時支援が可能であると意志表明している業者・職人を現地の業者に紹介し、迅速につながるようにするというサービス。

助太刀アプリは、建設現場で働く職人や工事会社同士ををマッチングするプラットフォームとして、すでに15万を超える事業者に登録。建設業界のあらゆる課題を解決するべく、求人、ファクタリング、ECなど様々なサービスも展開している。

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「建設界のShopify」を目指すBrokreteは業界のDXを推進させる

パンデミックは、生活と産業のあらゆる面に影響を与えている。そして当然ながら、建設業界でもデジタル化が急速に進んでいる。建設のサプライヤーも、他の業界と同じく、もっと高いレベルで仕事せよというプレッシャーに日増しに迫られている。現在、DozerやReno Run、Toolboxといった企業がそれに対応しようとしているが、そのモデルは垂直統合に近くあまりオープンなものではない。しかしそれでも、建設企業はコンクリートやレンガが必要になるたびに仕入れの交渉をしなければならず、同時に記帳もしなければならない。

そこを突こうとするのがBrokreteだ。同社は「建設のShopify」を自称している。

Brokreteは今回、Xploration Capitalがリードするシードラウンドで300万ドル(約3億3000万円)を調達し、これには匿名の新たな戦略的投資家と既存の投資家も参加した。同社はY Combinatorの2020年の冬季を卒業した。戦略的投資家は、Ronald Richardson(ロナルド・リチャードソン)氏やAngeLlist VenturesのAvlok Kohli(アヴロク・コーリ)氏、そしてMaRS Investment Accelerator Fund(IAF)だ。資金は北米とヨーロッパの市場拡大に充当される。Brokreteはまた、建設業界のサプライヤーのためのeコマースプラットフォーム「Storefront」も立ち上げた。

同社の創業者でCEOのJordan Latourelle(ジョーダン・ラトゥーレル)氏は次のようにいう。「今の建設業はほとんどがオフラインで、レガシーのコマースを規範とする1兆2000億ドル(約132兆2180億円)の市場です。BrokreteのStorefrontプロダクトは、彼らの日々の操業を桁違いに強化するために必要なツールでサプライヤーを武装します。私がBrokreteを創業したのは、eコマースの巨人たちに無視されている業界を見たからです。今では我々は、建設業界のeコマースのためのオペレーティングシステムになりつつあり、あくまでも使いやすさと値頃感の両立を目指しています」。

Brokreteのプラットフォームは、コードレスでホワイトレーベル、マルチチャネルで、業界固有の販売と注文の管理をオンラインで行なう。サプライヤーはiOSやAndroidのアプリでeコマースを動かし、伝統的な顧客からのオフラインの注文を受け取る。また、アプリはオーダー管理と支払いと発送、ロジスティクスそしてリアルタイムでの配達を行なう。さらに財務とオペレーションのERPを統合している。Brokreteの主張によると、同社は現在、1000社あまりの請負建設企業を顧客としており、250社あまりのサプライヤーのネットワークを構築している。

「私たちは建設業界にShopify的に利用してもらい、自分のストアを持ってもらいたい。サプライヤーが自己のブランドと店を持ってもらいたいのです」とラトゥーレル氏はいう。

Xploration CapitalのゼネラルパートナーであるEugene Timko(ユージン・ティムコ)氏は次のように語る。「建設は、まだほとんどデジタル化していないサプライチェーンを抱えた巨大な業界として生き残っている数少ない業種の1つです。この業界が歴史的に抱えている主要な問題は、実際のストックへのリアルタイムのアクセスがないことであり、そのために生産者と流通業者とがオンライン化できないでいます。しかしBrokreteのようなエンド・ツー・エンドのソリューションがあれば、この業界もBrokreteのマーケットプレイスで販売できるだけでなく、自分自身のダイレクトなオンラインチャネルを作ることができます。それは、Shopifyが多くの人にネットショップを提供しているのと同じです。何千何万という、それまでオフラインだった企業が、オンラインでオーダーを受け取るようになるでしょう」。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Brokrete建設DX

画像クレジット:Brokrete

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」を開発、年内量産開始を目指す

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」の年内量産開始を目指すと発表

「世界一ひとにやさしい現場を創る」をビジョンに、ロボットが人とともに働く楽しい建設現場の実現を目指すロボットソリューションの建ロボテックは、7月8日、人の代わりに鉄筋結束を行う協働型ロボット「全自動鉄筋結束トモロボ」の開発を終え、年内の量産機提供開始を目指すと発表した。

建設業界では、人口減少の影響で労働者数が減る傾向にあり、さらに労働時間や休日などの条件が原因で若者の離職率が高いという。しかも2024年4月には「時間外労働の上限規制の適用」が実施され作業時間が短縮されるなど、人手不足の深刻化が心配されている。こうした問題に対処すべく、建ロボテックは、「ロボット本体とともに、ロボットを活用したスマート施工の導入から運用、アフターケアまでの全プロセスに必要なサポートを包括したソリューションを、ワンストップで従量課金制にて提供」している。

なかでも建ロボテックは、協働型ロボット「トモロボ」シリーズ第1段として、鉄筋工事の約2割の工数を占めると言われる鉄筋拘束作業を自動化する「鉄筋拘束トモロボ」を2020年1月から提供を開始した。市販の電動工具をセットして使用する国内初の小型鉄筋結束ロボットソリューションだ。現在約500台が21の企業の56の現場で活躍している。

しかしこれは、1列(レーン)分の鉄筋拘束作業を終えると、人の手で隣のレーンに移動させる必要があり、1人のオペレーターが同時に運用できるロボットは3台が上限だった。そこで、レーンを移動させる際に使われる「スライダー」にセンサーとモーターを組み込んだ「自動スライダー」を開発。トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できるようになった。スライダー自身も、次のレーンに移動して待機するという具合に、すべて自動化される。スライダーは、通常の鉄筋をレールとして使用するため、経費も抑えられる。これで「鉄筋拘束トモロボ」が「全自動鉄筋拘束トモロボ」に進化する。10月から量産機開発のための試験運用を開始し、「国内初の現場で実利用が可能な小型全自動鉄筋結束ロボットソリューション」を年内に提供開始する予定。さらに、自動スライダーにトモロボの運用管理機能を搭載さいたオペレーターロボットも、今年中の開発完了を目指している。

レーンを移動させる際に使われる「スライダー」にセンサーとモーターを組み込んだ「自動スライダー」

トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できる

トモロボとスライダーとの動作アルゴリズムにより、トモロボは自動でレーンを移動できる

建ロボテックが鉄筋結束作業を行う「全自動鉄筋結束トモロボ」の年内量産開始を目指すと発表

レーンチェンジをする鉄筋の端に「スライダー」が移動し、トモロボの到着を待つ。鉄筋結束作業を終えた後、トモロボは待機している「スライダー」に移動し、スライダーに乗る。トモロボが乗った後、スライダーは次の鉄筋結束作業場所に移動する。これらすべてを自動で行う

「全自動鉄筋結束トモロボ」は、2021年7月14日から開催される「生産現場におけるロボット活用を推進する専門展示会 第4回自動化・省人化ロボット展」で初披露される。

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カテゴリー:ロボティクス
タグ:建設 / 建築(用語)建ロボテック(企業)日本(国・地域)

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

建設現場のDX・自動化を目指す東京大学発スタートアップのARAVは6月18日、スマホ・PCなどで建設機械(建機)を遠隔操作できるようにするシステム「Model V」の提供を開始した。10~20年以上前に発売されたような古いタイプの建機でも、改造することなく後付けで装着することで遠隔操作が可能になる。

現在建築現場では、「年間死亡者数が多い」「若者の就業率が低く高齢化が深刻」「建設・採掘の人手不足が加速」といった課題があり、安心・安全な働きやすい環境を整備することが急務となっている。

  • 年間死亡者数が約300人以上おり、全産業の33%前後と危険な現場
  • 29歳以上の就業者が11%。全産業と比較して若者の就業率が低く高齢化が深刻
  • 建設・採掘の有効求人倍率が約16%と人手不足が加速

また建築現場の建築機械についても、「粉塵が舞っている」「『高所や斜面での作業』といった環境要因を改善し、作業員が働きやすい環境を作りたい」「『夏は暑く冬は寒い』という季節要因にとらわれず作業をしたい」といったニーズがあるという。

ARAVではこれらの課題を解決するため、インターネット経由で建機を遠隔操作可能なシステムを開発・提供してきた。そして今回、過去に提供してきたシステムを改善・パッケージ化し、Model Vとして提供を開始した。ARAV調べ(2021年5月31日現在)では、スマートフォンやノートPCなどマルチデバイスに対応し、独自技術でセキュアにインターネットを介し建機を遠隔操作できるのは同社のみとしている。

Model Vは、エッジコンピューターやアタッチメントなどのハードウェア、遠隔操作組み込みソフトウェア、操作時のインターフェースを含むシステムとして構成されている。プロダクトを建設機械に取り付けることで、スマートフォン・タブレット・PCなどの通信機器から遠隔操作が可能になる。

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

プロダクトイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

PCやスマホで建機・重機を遠隔操作できる「Model V」を東大発ARAVが提供開始、後付け装着でも利用可能

取り付けイメージ。画像は制作途中のものにつき、実際の仕様とは異なる場合がある

また遠隔操作時にスマートフォン・タブレットを利用している場合は、タッチ操作に対応。専用・汎用のコントローラーを取り付けるとより快適に操作できるという。無線・有線の汎用コントローラー、ジョイスティックコントローラーなども接続でき、ARAVは操作者に合わせたインターフェースを用意するとしている。

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

ノートPCとジョイスティックコントローラーを組み合わせた利用イメージ

東大発ARAVがスマホ・PCで建機建機を遠隔操作できる「Model V」を提供開始、後付け装着でも利用可能

スマホを利用した操作イメージ

なお「Long Range Ver.」と「Short Range Ver.」の2種類があり、Long Range Ver.では、1141km離れた土地からも遠隔操作が可能だ(実証実験を伴う接続可能距離の最大実測値)。過去に富士建と行った共同の実証実験では、東京・佐賀間で遠隔操作に成功しており、離れた県での使用も問題なく行なえるという。

Short Range Ver.では、100kmまでの接続・操作が可能としている。これは、「現場と本社」「現場と操作者がいる場所」などの距離が100km圏内であることが前提の場合に適しているそうだ。

 

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建機の遠隔操作や自動操縦で建設現場のDXを進める東大発スタートアップARAVが6300万円を調達

カテゴリー:モビリティ
タグ:ARAV(企業)遠隔操作 / リモートコントロール(用語)建設 / 建築(用語)、重機 / 建機 / 建設機械(用語)、東京大学(組織)日本(国・地域)

10種類以上のセンサーを一元管理可能な現場管理支援SaaS「Canvas」を手がけるIoTBASEが8000万円調達

IoTで企業のデジタル変革を支援するIoTBASEは6月16日、プレシリーズAラウンドにおいて、第三者割当増資および社債発行による約8000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、インキュベイトファンド、グロービス、あおぞら企業投資。調達した資金は、業務プロセスにおける課題解決ニーズに対応するためのプロダクト開発に投資する。

IoTBASEは、現場管理を支援するSaaS型クラウドサービス「Canvas」を提供している。これは、車両や設備の状態監視センサーのデータや、作業ステータス、現場写真など、現場の様々なセンサー情報をクラウド上で一元管理可能なIoTデータダッシュボードサービスという。従来現場に人が向かい確認しなければならなかった業務を削減し、現場業務の生産性向上をサポートする。

Canvasの特徴としては、10種類以上のセンサーを統合管理するIoTプラットフォームである点や、現場の設備状態や作業状況を離れた場所からリアルタイム把握可能、関係者への通知や外部共有も直感的な操作で簡単に設定できるなどが挙げられる。

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カテゴリー:IoT
タグ:IoT(用語)IoTBASE建設 / 建築(用語)日本(国・地域)

住宅建築の技能をビデオで学べるプラットフォーム「Copeland」

職業専門学校は目新しいものではない。しかしCopeland(コープランド)という新しいスタートアップは、配管や塗装、家具製作などについての教育を、業界のプロや専門性を持つ教育者が登場する高品質の事前収録されたオンライン授業で提供することで大きな事業を構築できると考えている。

建設関係のMasterClassと感じたら、それは偶然ではない。CopelandはMasterClass(企業価値はいまや25億ドル[約2740億円]と報じられている)に最初に小切手を切った有名な投資家Michael Dearing(マイケル・ディアリング)氏のアイデアで、技能などが十分に生かされていない米国人を、十分な働き手を確保できない住宅建築業者と結びつけることにチャンスを見出した。一方、Copelandの共同創業者でCEOのGabe Jewell(ゲイブ・ジュウェル)氏は創業前、クリエイティブディレクターとしてMasterClassで約4年間過ごした。

コンテンツに料金を課しているCopelandは、職業専門学校に加えて建築や解体に関する数限りないハウツービデオを無料で閲覧できるYouTubeビデオとも競合している。それでもベイエリアで設立されたばかりの6人の会社であるCopelandはこれまでに9つの異なるコンテンツを制作した。同社の見通しに胸躍らせている投資家もいる。実際、ディアリング氏による初期の投資に加え、同社はシードラウンドでDefy.vcとCollaborative Fundから500万ドル(約5億5000万円)を調達し、累計調達額は700万ドル(約7億7000万円)となった。

米国時間6月3日午後に筆者はCopelandが何をしようとしているのか、住宅所有者や野心的な技能職の人がターゲット顧客なのかどうか、ジュウェル氏に話を聞いた。Copelandはある教育者にちなんだ名称だ。ジュウェル氏との会話は以下の通り。

TC:技能職の人や建築・建設分野で働く意欲がある人を教育しようとしています。この分野は労働力が不足し、ノウハウを持っている人を必要としています。あなたの顧客がトレーニングを受けたことを雇用主が認められるよう、証明書を付与する計画ですか。

GJ:適正証明あるいは、アセスメントをしっかりパスした場合の修了証明書を検討しています。ライセンスの方はというと、(一括請負建設業者の)ライセンスは地域で発行されるため複雑です。誰かの家を燃やしてダメにしてしまわないよう、認可された電気工事業者である必要がありますが、通常そのライセンス取得には4年かかります。ですので当社は現在、一般的な教育とサポートに注力しています。

TC:好奇心からお聞きしたいのですが、1カ所で多くの人に対応するプラットフォームであることを考えたとき、どうやってユーザーをテストするのですか。

GJ:建設の数学をテストすることが考えられます。角度や面積などをどう計算するのかを知っていることを確認するアセスメントを通じて行います。他のテストは一般的な知識についてとなるかもしれません。オンラインテストではあなたがすばらしい家具を作ることを確かめることはできませんが、他にもテストの方法は簡単に考えられます。

TC:MasterClassはセレブやそれぞれの分野のスターに頼っています。話題となるために、DIYタイプの番組からセレブ的な建築業者や技能職の人を先生として引っ張ってきますか。

GJ:それについても協議しています。やっていることをシェアするプロの建築業者による健全なオンラインコミュニティがあり、彼らは当社を温かく迎えてくれました。当社にとって最も重要なことはインストラクションの質を本当に高くすることです。

TC:私は昨日、煉瓦の壁をどのように解体するかについてのビデオを観ました。それで、ふと思ったのですが、Copelandのプラットフォームに住宅所有者向けのコンテンツは登場するのでしょうか。

GJ:DIY初挑戦という人にもコンテンツを提供するつもりです。例えばデッキ作りは雇用につながるスキルで、プロの作り方として学べるものを教えることができます。と同時に、もしあなたが自分のデッキを作ることを真剣に考えているなら、教え方を知っているプロ以外の誰から学ぶのでしょうか。

当社はまた、そうしたオーディエンスが集える方法を考えています。そこで壁を解体する方法を学ぶことができるかもしれませんが、信頼できるリソースとしてチェックできるプロの改造業者を見つけるためにCopelandを利用することもできます。

TC:プログラミングの各ピースをつくるのにどれくらいの時間がかかるのですか。

GJ:コースを合体させるのに数カ月かかります。各コースは大体が1〜2時間ですが、今後はもっと幅が出てくるでしょう。

TC:建築業者や、現在追い詰められている商業不動産デベロッパーとの提携はありますか。

GJ:住宅建築業者との提携を確立しているところです。いくつか進行中で、さらにコンテンツを制作してライブラリーに追加するとともに、そうした面を成長させることについてワクワクしています。

TC:コンテンツを制作するなかでサブスクも視野に入れていますか。

GJ:はい。現在は1コースあたり75ドル(約8200円)で、無期限にアクセスできます。また企業は人数分や回数で購入することもできます。ライブラリーを拡大するにつれ、価格体系はよりフレキシブルになるでしょう。

TC:どのようなタイプのコンテンツが今後登場しますか。

GJ:現在、大工仕事や家具製作、設計図読みのような実践的な技能をともなう住宅建築にフォーカスしていますが、配管や塗装、そして契約やリスク管理など一般的な請負業者のスキルなどを加えることでコンテンツを引き続き拡大していきます。当社はまた、現場とオフィスの中間のスキルを主に扱う、大学の教授による商業建築管理のライブラリーも制作しています。経験のある職人でリーダーシップスキルを学ぶ必要があったり、小売から建設の分野に移ってきた、あるいはオフィスの収容能力に取り組んでいどうやって結論を導き出すかを学ぶ必要がある、という人向けです。

カテゴリー:EdTech
タグ:Copelandオンライン学習住宅建築

画像クレジット:Copeland

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(文:Connie Loizos、翻訳:Nariko Mizoguchi

現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達

現場と社内をつなぐビジネスチャット「direct」など手がけるL is Bが12.3億円資金調達

L is B(エルイズビー)は6月2日、第三者割当増資および融資による総額12億3000万円の資金調達を発表した。引受先は、チェンジ、大和企業投資、イノベーション・エンジン、みずほキャピタル、三菱UFJキャピタル。借入先は日本政策金融公庫など。

調達した資金は、顧客の要望に応えるための新機能開発やサービス拡充、営業・マーケティングの強化にあてる。また日本国内での開発にこだわり、より多くの課題解決と安心感を実現するため、資金調達に合わせ開発、営業、マーケティングなどすべての職種で採用を強化する。

2010年9月設立のL is Bは、現場業務におけるコミュニケーションのDXを支援するビジネスチャット「direct」(ダイレクト)、独自AIエンジンを搭載したFAQソリューション「AI-FAQボット」など、業務における生産性向上を目的としたDX化支援ソリューションを提供。

directは、文字のやり取りだけでなく、現場で撮った写真や図面ファイルを使った情報共有、緊急時の連絡手段として、現場で働くフィールドワーカーと社内をつなぐDXソリューションとして広く活用されているという。2021年1月現在2500社以上の企業が導入しているそうだ。最大10名まで無料で使える「フリープラン」も提供しており、職場や現場における操作性を体験できるようにしている。

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カテゴリー:ソフトウェア
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ソフトバンクが支援する建設の巨人「Katerra」が約2200億円以上を使い果たし事業を閉鎖

20億ドル(約2200億円)を超える資金を使い果たしたSoftBank(ソフトバンク)が支援する建設スタートアップのKaterra(カテラ)は、事業を閉鎖することを従業員に伝えた。The Informationの報道による。

2020年、同社は世界で8000人以上の従業員がいると述べていた。

カリフォルニア州メンロパーク拠点のKaterraは、2020年末倒産寸前まで追い込まれた時、不動産デベロッパーに安く建物を販売する同社ビジネスの有効性に苦悩していた。会社はパンデミックによる労働コストと材料コストの高騰が苦闘の原因だと主張した。その後SoftBankから2億ドル(約220億円)の救援資金を受け取り最後のチャンスを与えられた。SoftBankは数十億ドル(数千億円)を注ぎ込んだ後、同社の過半数株式を買い取ったと報道されている。

Katerraの転落は、SoftBankにとって2019年のWeWork IPO以来最大の華々しい失敗だ。SoftBankは2020年、テック株の大規模な復調のおかげで同社のVision Fund(ビジョンファンド)投資先企業の多くで利益を上げてきたが、ここ数カ月でで利益の一部は消失した。

Barron’s(バロンズ)による2021年5月のインタビューでCEOの孫正義氏は、KaterraおよびGreensill(グリーンシル)への投資を「後悔」していることを強調した。Katerraの出資者には他に、Khosla Ventures、DFJ Growth、Greenoaks Capital、およびCelesta Capitalがいる。

TechCrunchはKaterraにコメントを求めている。

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画像クレジット:hopsalka / Getty Images

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nob Takahashi / facebook

これぞ「メイド・イン・デトロイト」の実力、現場労働者の安全性を向上させる多数センサーを搭載したGuardhatのスマートヘルメット

デトロイトを拠点とするGuardhat Technologiesの創業者Saikat Dey(サイキャット・デイ)氏は、鉄鋼業界で自身のキャリアを開始した。Guardhatを設立する前にはミシガン州ディアボーンに本社を置く多国籍鉄鋼コングロマリット、Severstal InternationalのCEOを務めていた経験を持つ。

前職ではミシシッピ州、ミシガン州、ウェストバージニア州の炭鉱で3600人の従業員を抱え、数量、売上ともに第4位の鉄鋼メーカーのグローバルビジネスを管理していたデイ氏。その頃から同氏は安全性に大きなこだわりを持つようになったという。

キャッシュフローやEBITDAといった一般的な数値だけでなく、従業員の安全性も報酬に影響を与える指標であるとデイ氏は考えている。「現場の従業員の安全性をいかにして守るかということは、重要な指標の1つです」とデイ氏は説明する。

工場の安全性に対する懸念から組合の幹部に働きかけ、そこから開発が始まり誕生したのが現在のGuardhatの中核となる技術だ。

Guardhatは危険な産業における作業中の事故を検知、警告、防止する、ウェアラブル技術と独自のソフトウェアを統合したインテリジェントセーフティシステムを開発している。

Dan Gilbert(ダン・ギルバート)氏が経営するDetroit Venture PartnersGeneral Catalystの他、Ru-Net Holdingsの共同創業者であるLeonid Boguslavsky(レオニード・ボグスラフスキー)氏が率いるベンチャー投資会社RTP Venturesなどの投資家がデイ氏のビジョンを支援している。また、何よりも重要な関係者である、同社の技術を利用している従業員を代表する組合からの賛同も得ることができている。

Guardhatの産業用ウェアラブルの初日のブレインストーミングのメモ(画像クレジット:Guardhat

世界中の産業労働者のために作られた「メイド・イン・デトロイト」

鉱業、金属、石油、ガスなどの産業分野では、毎日およそ15人の労働者が仕事中に死亡し、毎年300万人が負傷している。この業界の経営者にとってこの問題は、倫理的な問題であると同時に経済的な問題でもある。Severstalではデイ氏の給料の40%が労働者の安全に結びついていたという。

実際、Guardhatのアイデアは同氏がデトロイトにある同社の鉄鋼工場のフロアを歩いているときに思いついたものだった。いつものように工場内を歩いていると、ある機器を操作している男性の前を通りかかった際、その男性が持っていた一酸化炭素警報器が鳴り始めたという。しかしその男性は原因究明をすることなく、モニターの電源を切ってしまったのだ。

「デトロイトの中心部にあるその製鉄所には、北米最大の高炉があります。彼が何をしていたにせよ、大惨事につながる可能性がありました」とデイ氏。

それがGuardhatのテクノロジーが誕生したきっかけとなる。今どこにいるのか、どんな状況に直面しているのか、いつ助けが来るかなど、世界中のどんな工場にも当てはまるシンプルで状況に応じた質問に答えるように設計されている。

「当時、事故を防ぐための有効な手段や、事故が起こった場合にタイムリーな情報を提供する手段がありませんでした」。

経営陣によって設計されたこの技術だが、実際に労働者が使ってくれるようデトロイト地区の組合長と相談しながら作られている。

「2014年の9月にこのビジネスを開始することを決めました。この事業を始めるか否か迷っていたとき、ある組合員がやってみなよと言って背中を押してくれたのです。60億ドル(約6500億円)の損益計算書を見ながら米国の6大鉄鋼メーカーの1つを運営する有色人種の私が、文字通りガレージからこの事業を立ち上げました。勇気と愚かさが必要でしたし、UAW(全米自動車労働組合)の友人たちからは多大な支援を受けました」とデイ氏は当時を振り返る。

従業員が不必要に監視されたり罰されたりしているように感じることなく、情報を生成、保存できるようになったのは、このコラボレーションのおかげである。

Guardhat Technologiesのセンサー機器を詰め込んだセーフティヘルメット(画像クレジット:Guardhat Technologies)

プロトタイプから製品へ

同社の初となる製品は、センサー機器を詰め込んだヘルメット「HC1」だ。「誰もが着用し、着用が義務付けられているものに搭載すべきです」とデイ氏。

当初はウェアラブルの開発だけを考えていたものの、時間が経つにつれてデイ氏とチームはデバイスだけでは十分ではないことに気が付く。「ヘルメットは単なるフォームファクターの1つに過ぎません。【略】フォームファクターが何であれ、従業員を取り巻くすべての情報をプラットフォーム上でどのようにして1つの揺るぎない情報源として確立させるかが重要でした」。

デトロイトを拠点とする数多くのスタートアップ企業と同様、デイ氏とチームも資金調達の必要に迫られた際、ギルバート氏に相談した。

ギルバート氏はプロトタイプを着用してビルの中を走り回り、GuardHatチームが同氏のいる場所を探し当てられるかテストした。

ギルバート氏が加わったことにより、プロダクトデザイン会社であるfrog labsと3Mも協力することになり、そこからプロトタイプのテストが開始された。

「オハイオ州アクロンにある第三者認証機関でテストを行った初日のことを今でも覚えています。彼らは5メートルの高さから金属球を落としていました。1つ3000ドル(約33万円)のプロトタイプ27個が粉々になってしまいました。テストはすべて失敗です。我々はヘルメットの作り方を知らなかったわけです」とデイ氏は振り返る。

frog labsやその他企業の支援を受けて完成したこの装置は、現在5000人以上の作業員に使用され、少なくとも2000件の事故を未然に防いだり、警告を発したりすることができている。

同事業はデトロイトでしか誕生し得なかったとデイ氏は感じている。「デトロイトというのは象徴的なものです」と同氏。それはGuardhat創業チームが重工業のあり方を学んだ、実社会の厳しい試練の象徴でもあるのだ。

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カテゴリー:ハードウェア
タグ:デトロイトGuardhat Technologies安全工場建築

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Dragonfly)

賃貸不動産の原状回復工事がネットで完結、内装工事クラウド「リモデラ」が6月1日より関東でサービス開始

賃貸不動産の原状回復工事がネットで完結、内装工事クラウド「リモデラ」が6月1日より関東でサービス開始

発注者が現場に行くことなく、賃貸マンションなどの原状回復工事を業者に発注できるクラウドサービス「リモデラ」を提供するREMODELA(リモデラ)は、5月31日、これまで関西地区のみで展開されていた同サービスを、6月1日より関東地域でも展開すると発表した。

不動産管理会社がこのサービスに原状回復工事をしたい物件を登録すれば、リモデラのスタッフが現場へ行き360度写真を撮影する。管理会社はこの画像を利用して、現場に足を運ぶことなく工事の発注ができる。

同社はこのサービスのメリットとして次の3つを掲げている。

  • 自宅やオフィスから工事を発注できる
  • 工事進捗が可視化されるため、最短の入居可能日を把握できる
  • 引渡時の写真データを保存し、将来の退去時に活用できる

賃貸不動産の原状回復工事がネットで完結、内装工事クラウド「リモデラ」が6月1日より関東でサービス開始

また、ITを活用することで業務が簡素化され、工事費用が安くなるという。

同社は順次、全国へサービスを広げてゆく予定だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:建設 / 建築(用語)不動産 / 不動産テック(用語)リフォーム / リノベーション(用語)REMODELA(企業・サービス)日本(国・地域)

BIMやCIMなどデジタルツインへの位置情報統合に道筋、Cellidが建設現場において独自ARによる3次元位置情報の取得に成功

Cellidは5月26日、大林組の建設現場において、独自のAR技術「Cellid SLAM」を用い、作業員の3次元位置情報の取得に成功したと発表した。

今回の実証実験の目的は、「屋内外の大規模・複雑な構造を備える建設現場において、汎用単眼カメラを装着して巡視する職員の移動経路を3次元の動線として把握できるか」「BIM/CIMを含むデジタルツイン・プラットフォームとSLAMで取得した3次元位置情報を統合することで、安全管理や労務管理のためのツールとして発展する可能性があるか」を検証するものだ。BIM(Building Information Modeling)は、3次元の形状情報、材料・部材の仕様・性能・コスト情報など建物の属性情報を備える建物情報モデル。CIM(Construction Information Modeling)は、土木分野において国交省が提言した建設業務の効率化を目的とした取り組み。計画・調査・設計段階から3次元モデルを導入し、施工・維持管理の各段階でも連携・発展させ、事業全体で関係者間で情報を共有するというもの。

一般に、レーザーや赤外線を活用するSLAM技術(自己位置推定と周辺環境の地図を同時に実行する技術。Simultaneous Localization and Mapping)は、専用センサーを必要とすることから、デバイス費用が高額、かつセンサーの設置のためのスペースや電源供給に課題があった。またセンサーの代わりに画像データを活用する研究も進められているものの、膨大な計算負荷に加え、現場での活用に耐える精度の確保が難しく、実装には至っていないという。

一方Cellid SLAMの空間認識アルゴリズムは、すでに現場に導入されている汎用単眼カメラの映像のみを入力情報とする。そして今回、非GNSS環境を含む大規模な建設現場において、GNSS(全球測位衛星システム)やビーコンといった従来の自己位置推定技術を上回る測位精度を発揮することが確認された。

Cellidは今後、BIM/CIMなどから構築されたデジタルツイン上にウェアラブルカメラを装着した作業員などの位置情報を反映し、情報の統合を進めるとしている。また、同一現場で同時に複数の作業員がウェアラブルカメラを装着・撮影することで、位置情報だけではなく、大規模な現場の点群データなどをスピーディに収集することも可能となる。

そして将来的には、位置測位技術とAR技術などとを組み合わせることで「AR付箋」などの早期実現も期待できるとしている。AR付箋は、現実空間の特定の3次元位置に「作業ガイド」や「注意事項」を、デジタルツイン側からの入力により、設置するサービスという。

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カテゴリー:VR / AR / MR
タグ:拡張現実 / AR(用語)建設 / 建築(用語)コンピュータービジョン(用語)CIM(用語)Cellid(企業)SLAMデジタルツイン(用語)土木(用語)BIM(用語)日本(国・地域)

電気設備工事での電力計確認を効率化、SPIDERPLUSときんでんがOCR連携機能実験

スパイダープラスは5月24日、関西電力グループの総合設備工事会社「きんでん」と協力し、図面管理・情報共有システム「SPIDERPLUS」(スパイダープラス)とOCR連携による確認作業支援機能を開発し、実証実験を開始すると発表した。

電気設備工事では、設計時と施工後の電力量計情報の照合・確認を行うことになっているが、その際作業員が10桁以上に及ぶメーターの製造番号や各種数値を目視すると同時に手書きでメモを行うという。そのため表示内容の見間違いや書き間違い、警告表示の見逃しなどのヒューマンエラーが起きやすく、業務時間が伸びる原因の1つとなっているそうだ。

このような課題を解決すべく、スパイダープラスはきんでんと協力し、SPIDERPLUSとOCR技術の連携による「確認作業支援機能」を開発した。SPIDERPLUSの入ったタブレットで電力量計を撮影し、画像データをクラウドに送信すれば、画像内の文字をOCR連携によって認識し、その結果と設計時の情報とが自動照合される。また、相違判定の際は確認支援機能によって警告が表示される。OCR処理による自動判定と、作業員の目視を合わせたダブルチェックを実施することで、ヒューマンエラーの防止に加え、確実な作業管理と効率化につなげられるとしている。

OCR連携による確認作業支援機能のメリット

  • 警告表示による見間違いや見逃しの防止:設計値と異なる仕様や設定値である場合、電力量計に誤結線などのエラーが表示されている場合などは、警告を表示し見逃しを防止
  • 情報流用による省力化:設置済みの電力量計情報の収集のみを目的とする場合を含めて、OCR処理結果の情報流用による省力化が可能となる
  • 読み取りデータの保存:写真を撮影すると、読み取りデータが保存される(別売の電力量計を撮影用補助具として使用することを推奨)

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建築学生向けサービス「BEAVER」を運営するArchiTechが3500万円を調達、利用者数3000人突破

建築学生向けサービス「BEAVER」を運営するArchiTechが3500万円を調達、利用者数3000人突破

設計作品共有・建築ソフト学習・就活支援などを包括する建築学生向けサービス「BEAVER」(ビーバー)を提供するArchiTech(アーキテック)は5月24日、第三者割当増資による総額3500万円の資金調達を5月17日に実施したと発表した。引受先はTHE SEED。

調達した資金は、学生ユーザーのさらなる増加と定着を図るためのマーケティングとサービス開発体制、また企業とのマッチングを生み出し続けるためのBtoBサポート体制の構築にあてるとしている。

BEAVERは、「建築学生に必要な全てがここに。」をテーマに、建築を志す学生が学生期間中常に傍らにおいて使えるウェブサービスとして2018年11月にリリース。2021年5月現在で利用ユーザー数は3000人を突破し、日本最大級の建築学生コミュニティとなっているという。

同サービスでは、建築ITソフトのチュートリアル学習サービス、自身の設計作品の投稿や全国の学生の作品を閲覧できる作品共有サービス、自身の実績をまとめたウェブポートフォリオを基に企業とのマッチングを図る就活支援サービスを提供している。

2018年11月設立のArchiTechは、「愛される建築が生み出され続ける世界を実現する」をミッションに掲げる建築系スタートアップ。BEAVER、建築学生と建築系企業のマッチングサービス「BEAVER CAREER」(ビーバーキャリア)、建築CGイメージや3Dモデルの制作を行う「THE PERS」(ザ・パース)などの事業活動、またデザイン評価の可視・定量化に関する京都大学の共同研究事業を行っている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:ArchiTech(企業)オンライン学習 / eラーニング / オンラインレッスン(用語)建設 / 建築(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

登録建設業者数が5万社突破、建設業マッチングの「ツクリンク」が約3億円を調達

全国の元請会社と協力会社・職人をつなぐ建設業マッチングプラットフォーム「ツクリンク」を提供するツクリンクは5月20日、第三者割当増資による約3億円の資金調達を発表した。引受先は、DG Daiwa Ventures、CAC CAPITAL、ドーガン・ベータ、西武しんきんキャピタル。

調達した資金は、ユーザーニーズに応える新機能の開発などサービスの拡充や営業組織・マーケティングおよび採用強化に用いる。また首都圏以外の地域に対しても、営業組織やマーケティングの強化により事業成長の加速を図るとしている。

ツクリンクは、登録無料で利用できる、建設事業者をつなぐマッチングプラットフォームだ。リフォームや内装、 塗装などの建築工事や土木工事の情報をサイト上に登録すると、施工可能な会員から取引連絡が届き、交渉できる。また無料で自社のプロフィールページを作成でき、業者間ネットワークの拡大や営業の効率化およびコストの削減を促進する。

またツクリンクの登録建築業者数は、2021年3月末現在で5万社超という。今後も会員数や建設工事案件数の増加はもちろん、マッチングの質を高めるサービスの拡充に努めるとしている。

登録建設業者数5万社が突破、建設業マッチングの「ツクリンク」が約3億円を調達

ツクリンクは「産業構造を変え、豊かな未来をつくる」をミッションとし、人手不足といわれている建設業界の限られたリソースの効率的な活用を促進し、建設業界のDXに貢献するとしている。建築業界のマッチングサービスにより、よりどれだけ業界の効率化を図れるのかに注目したい。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:資金調達(用語)建設 / 建築(用語)ツクリンク(企業・サービス)マッチングサービス(用語)日本(国・地域)

建設3DプリンターのPolyuseが資金調達、普及を阻む壁とそれを超えるための戦略とは

人材不足、高齢化など、建設業界では課題が山積している。この状況を打破すべく、3Dプリンターの活用が注目されている。そんな中、建設用3Dプリンターを開発するPolyuse(ポリウス)が、Coral Capital、STRIVE、池森ベンチャーサポート、吉村建設工業から約8000万円を調達した。代表取締役の岩本卓也氏は「建設用3Dプリンターの活用は始まったばかり。本格的普及には段階的なアプローチが不可欠です」と語る。建設用3Dプリンターは今後どう活用されていくのか。岩本氏と、同じく代表取締役の大岡航氏に聞いた。

3Dプリンターが建設業界を救うか

建設業界には、すぐに解決できない課題が多い。根強い3K(きつい、汚い、危険)のイメージ、慢性的な人材不足、高齢化、進まない施工期間の短縮、販売管理等コストの膨張など、枚挙にいとまがない。

「現在、建設業界を中心的に支えているのは50代、60代の人材です。この中で10年以内に働けなくなる人もいるでしょう。10年後の建設業界の人材は、今の3分の2になると言われています。建設業界全体のデジタル・トランスフォメーションを進めることで、効率化を進め、人材不足を補うことは喫緊の課題です」(岩本氏)

さらに、これまで建設業界が猶予されてきた長時間労働の上限規制が2024年に始まる。3Dプリンターのようなマシンを積極的に導入することで、職人の負担や労働時間を減らすことも必要になる。

しかし、建設用3Dプリンターの活用は実際にはそれほど簡単ではない。なぜなら、そのためには、建設、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、事業開発を理解する人材が必要だからだ。

「建設において3Dプリンターを活用するということは、3Dプリンターというハードウェアを理解し、それを制御するソフトウェアを開発し、ソフトウェアを使って樹脂やセメントなどのマテリアルを立体的に作り上げ、作ったマテリアルを建設現場のオペレーションに載せ、一連のプロセスを事業として成り立たせるということです。現状、これらのいくつかを持ち合わせるプレイヤーはいますが、すべてを揃えているところは見かけません。そこで、その要素をすべて持つ当社の存在意義が出てきます」(岩本氏)

ポリウスの3Dプリンターは、マテリアルの調整により従来では難しかった曲線造形も可能になった(画像クレジット:ポリウス)

3Dプリンター活用が進まないワケ

3Dプリンターには建設業界の課題を解決する可能性がある。しかし、岩本氏は「3Dプリンターの活用と普及拡大には、主に3つの壁があります」と語る。

1つめが建築基準法の壁だ。これは、建築基準法が直接的に3Dプリンター活用を禁じているということではない。建築基準法を遵守した形で3Dプリンターを活用した建物を建てようとすると、実績を積みづらいのだ。

「建設業界は3Dプリンターを試し始めたばかりで、実績が多くありません。『3Dプリンターで建てた橋は理論上〇〇年保ちます』とは言えるものの、『3Dプリンターで建てた橋が実際に〇〇年保ちました』とは言えないのです。建築基準法を所管する国土交通省は実績重視です。理論的に安全だとしても、実際にどれだけ安全に使えるのか実績のない3Dプリンターで橋を作らせるわけにはいかないのです」(岩本氏)

2つめの壁は3Dプリンターそのものにかかるコストだ。建設用3Dプリンターには、アーム型とガントリー型がある。アーム型は本体の構成要素が少ないので、開発がしやすい。本体を移動させないで印刷できる範囲は狭いが、本体を移動させればでいくらでも印刷範囲を広げられ、汎用性が高い。だが、開発コストが2000万円ほどで高い。一方ガントリー型は印刷範囲であるフレームから開発する必要がある。印刷範囲がフレームにより限定的になるが、広く取ることができる。開発コストをアーム型より安く抑えやすい点が特徴だが、移動や設置が難しい。使い勝手で言えば高価なアーム型が有利だが、コストの面では現状、ガントリー型が現実的だ。ポリウスは主にコスト面での優位性や、協業先との話し合いからガントリー型の3Dプリンターを採用している。

3つめの壁は人件費と工数だ。実は、現段階でポリウス製ではない3Dプリンターを活用した施工を行うと、3Dプリンターなしの既存の施工よりも多くの作業者と工数がかかる。他社製品の場合「マテリアルの粉を入れる人」「ミキサーを管理する人」「ポンプを制御する人」「造形時の状態を見る人」「データを監視する人」など、最低4~5人は必要になる。一方、ポリウス製の3Dプリンターでは、一連の作業に必要なのは1人だ。

「従来では、『建設用3Dプリンター』という一般的な観点でいうと、既存工法より3Dプリンター活用工法の方が人件費と工数がかかる、という壁があります」(岩本氏)

建設業界全体を巻き込む

上記の3つの壁があることで普及が遅れる建設用3Dプリンターだが、それを打開するためには3Dプリンターの活用事例をとにかく増やすことが必要だと岩本氏は話す。建築基準法の壁を超えるため、同社は「法律に触れない範囲での3Dプリンター活用を進めている」(岩本氏)という。具体的には、側溝、土手、テトラポッドなどの土木構造物や、住宅の門扉や置物、公園の遊具といった外構(エクステリア)だ。建築物全体を3Dプリンターだけで仕上げるのではなく、建築物の一部を仕上げ、既存の施工方法と組み合わせることで、3Dプリンターの活用事例を全国規模で増やそうとしている。

大岡氏は「私たちは建築基準法を常に意識しないといけないので、行政とのコミュニケーションが重要です。建設業界の人材不足、効率改善は、行政も重要性を理解しているので、行政と戦うような構図にはなりません。むしろ、行政との関係性が強いゼネコンなどと協力して、業界ごと改善する方法を模索する必要があります。私たちは既存のプレイヤーと戦いたいのではなく、一緒に業界をよくしていきたいのです」と業界全体の協力の重要性も指摘する。

この「業界全体」というのは、ポリウスのキーワードでもある。

「3Dプリンターを活用するには、建設、ハードウェア、ソフトウェア、マテリアル、事業開発のノウハウが必要です。ただ、それらを全部まとめて一気通貫でやる企業や組織はこれまでありませんでした。私たちの活動の幅を広げるには、大学などの研究機関に当社の事業や、テクノロジー連携のあるべき姿をお伝えし、業界のあらゆるプレイヤーと研究機関のコラボレーションの可能性を掘り下げていかなければなりません。業界全体のステークホルダーのみなさんと一緒にコンソーシアム型開発を進めていくことが重要です」(岩本氏)

日本で建設用3Dプリンターを制すれば、世界を制す

ポリウスの調べでは、世界には建設用3Dプリンター企業が70社ほどあるという。しかし、日本ではまだまだ珍しい。大岡氏によると、日本は海外と比べて建築に関わる基準が厳しく、ポリウスのようなスタートアップが生まれにくいのだそうだ。

「逆にいうと、海外の建設用3Dプリンター企業は日本に参入しにくいのです。そこで、私たちはそこを逆手にとって建築基準の厳しい日本にまず対応し、その後比較的に基準の緩い海外に進出してこうと考えています」(岩本氏)

とはいえ、日本での3Dプリンター活用はまだまだ始まったばかり。まずはテクノロジーがあまり浸透していない建設業界とのコミュニケーションを重ね、3Dプリンターの信頼を醸成することが必要になる。ポリウスは今回の資金調達により、3Dプリンターを扱うハードウェアエンジニア、ソフトウェアエンジニア、マテリアルエンジニアなどの各種エンジニアを募集し、研究開発を進めていくという。

ポリウスのメンバー。写真中央が代表取締役の岩本氏、その左が同じく代表取締役の大岡氏。

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カテゴリー:その他
タグ:建設3Dプリンター資金調達Polyuse日本

「建設DX」のスパイダープラスが上場、現場出身の創業者「俺にわかるものを作れ」

今、デスクレスSaaSが熱い。物流ラストワンマイルの変革を目指す207は、TechCrunch Startup Battle Online 2020で優勝を飾った。また、製造工場から紙をなくすカミナシは、2021年3月シリーズAで約11億円を調達している。

そして2021年3月30日、「建設DX」を推進するスパイダープラスがマザーズに上場した。SPIDERPLUSは、建設現場の施工管理者(現場監督)の業務を効率化するクラウドアプリだ。

大量の図面をiPadに収める

ビルやマンションといった大型の建設現場では、現場監督がA1サイズの図面(紙)を大量に持ち歩く光景は日常的だ。さまざまな箇所の検査を行う中で、図面にメモを記入したり、記録写真を数百枚から数千枚という単位で撮影していく。現場を巡回し終えると、現場監督は事務所に戻り「どの写真がいつどこで撮影されたものか」などの整理を行い、最後に報告書を作成する。この膨大な「まとめ作業」は深夜にまで及ぶことも珍しくないという。

このような「建設現場の非効率」を解決するのがSPIDERPLUS(スパイダープラス)だ。同アプリは、建築図面をクラウド上で管理することができ「iPad1台」で、現場での業務が完結させられる。大量の図面、記録写真、検査記録をいつでもどこでも参照できるため、現場で起こりがちな「忘れた書類を事務所に取りに帰る」こともなくなる。現場での記録写真やメモは、クラウド上で図面に直接紐づけることができ、後の「まとめ作業」も削減可能だ。つまり、現場監督は1台のiPadで現場での検査からレポートの作成までを一気通貫で完結できるというわけだ。

スパイダープラスの導入効果は明確にあらわれている。同社が行ったアンケートによると、ユーザーの40%以上が月20時間以上の業務時間の削減に成功した。現場監督の残業時間が月間約50時間に及んでいたある電気設備工事業者では、スパイダープラスを導入したことで月100時間近くの業務時間削減に至ったという。

画像クレジット:スパイダープラス

現場出身の創業者

スパイダープラス創業者兼CEOの伊藤謙自氏も、かつては作業着を身にまとい建設現場で働く職人の1人だった。2010年頃に初代iPadが発売された頃「こんな便利なものがあるのに、なぜウチの会社には未だに紙や色鉛筆が転がっているんだ」と疑問に思ったことが、スパイダープラス誕生のきっかけとなった。

伊藤氏は早速、幼馴染でともに上京していたエンジニアの友人に相談。伊藤氏のアプリのアイデアを聞いた友人は「作れると思う」と答え、そこからスパイダープラスの開発が始まった。この友人が、現在同社でCTOを務める増田寛雄氏だというからおもしろい。

建設現場出身であり、同時にSaaS創業者でもある伊藤氏の口癖は「俺にわかるものを作れ」だ。同社はあくまでも現場目線に立った使いやすいプロダクトを作ることで、顧客の支持を獲得してきた。現場でアプリを使うユーザーからは「スパイダープラスはとにかく簡単に使える。ボタンが1つしかないくらいにシンプルだから」との声が聞こえてくるという。

それでも、2011年のリリースからしばらくは顧客に受け入れられない期間が続いた。とにかく現場に足繁く通い、顧客と対話を重ねてプロダクトの改良を続ける他なかったという。転機は2013年の東京オリンピック開催決定だった。建設業界の人手不足が顕在化し、大手企業を中心に「建設DX」を真剣に検討する機運が高まり始めた。このニーズに、それまで「もがきながら」地道に改良を続けてきたスパイダープラスがフィットしたのだ。

スパイダープラスは、2017年から3年連続で契約社数を昨対比200%伸ばし、2021年1月時点で鹿島建設をはじめとする大手ゼネコンやサブコンなど約800社が導入し、約3万5000人のユーザーが利用する。既存顧客の売上継続率を測るNRRは145%、また解約率は0.6%という。

建設DXはスパイダープラスの独壇場というわけではない。Forbes JapanのCloud Top 10に選出されたアンドパッドをはじめ、今後さらに競合が増える可能性は十分にある。しかし、アプリ開発前より行う保温断熱工事業を「祖業」として継続するスパイダープラスの視線の先にあるのは、あくまで顧客だ。同社は「建設業者」として顧客と同じ目線に立ち続けることで、他のSaaS企業との差別化を図る。上場企業となった今こそ、現場を重視するスパイダープラスの姿勢は大きな強みになるだろう。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:スパイダープラス建築DX日本新規上場

契約から完成まで30日、Aboduの「裏庭ミニ住宅」をLA当局が承認

カリフォルニア州の住宅不足は深刻だ。そこで裏庭に「離れ」や簡易オフィスを提供するサービスが多数生まれている。Aboduもそうしたスタートアップだが、契約から竣工までまで30日という超特急のQuickshipプログラムがロサンゼルス市から認可を受けた。

このスピードを可能にしたのは「一括事前承認」システムで当初サンタフェに導入されたが、今回LAでも認められた。

サンノゼ市は付随的簡易住宅(ADU)の開発者に対し事前に一括認可を与えるプログラムを2019年に開始した。Aboduはこの事前認可プロセスを利用して同市で住宅の建設を開始した。

この承認プロセスが適用される場合、AboduのようなADUデベロッパーは1時間で建築許可を得られる。サンノゼで事前承認されているADUデベロッパーには他にActon ADU、ベンチャー企業のConnect Homes、J. Kretschmer Architect、Mayberry Workshop、Open Remodel、prefabADUなどがある。ロサンゼルスではLa Mas、IT House、Design、Bitches、Connect Homes、Welcome Projects、First Officeなどが事前承認による住宅建設許可の対象となっている。

AdobuはADUによる事前承認を受けた建設以外にもパロアルト、ミルブレー、オレンジカウンティ、ロサンゼルス、オークランドなどカリフォルニア全域で各種の建設を行っている。同社の資料によれば、サンフランシスコ周辺のベイエリアではADU同等住宅の販売価格は18万9000ドル(約2100万円)からとなる。中層マンションでは65万〜85万ドル(約7100万〜9300万円)、鉄筋の高層ビルでは1戸あたり100万ドル(約1億900万円)かかるという。

AboduのCEOであるJohn Geary(ジョン・ギアリー)氏は次のように述べている。

個人が住宅を増設しようとする場合、当社のQuickshipプログラムが最速です。子供が成長したなど家族構成の変化や賃貸による投資収益を期待するなど住宅増設のニーズがある戸建て住宅所有者は大勢います。Aboduはロサンゼルス市で最短4週間でADUプロジェクトを完了できるようになりました。Aboduが最も重要だと考える使命は、人々や自治体に真の変化をもたらすために必要な青写真を提供しながら、州の住宅不足に深刻な打撃を与えることです。

Kim-Mai Cutler(キム-マイ・カトラー)氏は元TechCrunchのライターだが現在はAboduの取締役に就任している。同氏は「建設開始から30日以内に引き渡しという大きな目標を達成できたことで夢が現実になりました」と語った。カトラー氏はカリフォルニア、特にサンフランシスコからシリコンバレーで深刻化している住宅危機についての本を出版している。

この本(ないしそれに相当する文章)をきっかけにカトラー氏はホームレス解消のための公的対策に積極的に関与するようになった。同氏はAboduサイトのブログ記事に「私は米政府のホームレス対策支出や自治体による手頃な価格の住宅を調達するための地方債の発行、運営を監督する委員などの組織に参加するようになりました」という。

画像クレジット:Abodu

カトラー氏がAdobuを支援するのは、以前から住宅に関する問題に関する関心と知識を持っていたためだとしてこう続けた。

カリフォルニア北部は今や世界で最も不動産価格が高くまた予測不可能な動きを示す土地となっています。これ非常に大きな問題を引き起こしています。住宅建設は許可手続きから資材調達まですべてに透明性が欠けているため何年もかかるのが普通です。この1年間、Aboduの共同ファウンダーであるジョン・ギアリー氏、Eric McInerney(エリック・マキナニー)氏は、子持ちの大学生カップルのためにその両親宅の裏庭に家を建てました。またミルブレーでは母親と息子のためにそれぞれ独立した家を、サンノゼでは夫婦の家の裏庭に祖母を住まわせるための家を建設しています。

Aboduの特色は裏庭に建設する「お祖母さん用の離れ」や「勉強部屋」「ミニハウス」に焦点を絞っているところにある。カトラー氏はこう説明する。

サクラメント(のカリフォルニア州議会)では中層階住宅建設の促進に関する審議が行き詰まっている一方、裏庭のミニハウスに関しては州議会でも太平岸州北西部の議会でも、Phil Ting(フィル・ティン)氏のAB68、Bob Wieckowski(ボブ・ウィエコウスキー)氏のSB1069など、裏庭に小住宅を簡単に設置できるようにする法案が次々と成立しました。これは郊外居住者が待望ん望んできた変化です。これは人々に有益であると同時に政治的にも実行実行が用意なオプションなのです。

カトラー氏はAdobuが30日以内に家を建設できることは人々の認識を大きく変えるきっかけになると考えている。このスケジュールは基礎の建設に2週間、プレハブ住宅をクレーンで基礎の上に載せるのは1日というテクノロジーのおかげだ。またこの方式は驚異的な低コストを実現する。これにより住宅の建設数自体が大幅に上昇するはだ。しかし絶対的にみれば住宅の供給は依然として危機的なまでに低い水準だ。「ミレニアル世代が家族形成の最盛期を迎えている時期だというのに米国全土での住宅売買の数は1年前のわずか半分なのです」とカトラー氏は指摘する。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Aboduカリフォルニア住宅建設

画像クレジット:Abodu

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:滑川海彦@Facebook