コード不要でさまざまなeコマースツールを利用可能にするPipe17が約8.5億円調達

eコマース(電子商取引)市場に焦点を当てたソフトウェアを手がけるスタートアップのPipe17は、800万ドル(約8億4600万円)の資金調達を終えたと米国時間2月18日朝に発表した。

Pipe17のサービスは、小規模なeコマース事業者が、コードを書かずにデジタルツールを導入するのに役立つ。このスタートアップのサービスを利用することで、社内にIT機能がないeコマース業者でも、同社の販売プラットフォームを利用して発送したり、POSデータとERPを連携させることが、すぐにできるようになる。

大手物流不動産会社GLPのベンチャー部門であるGLP Capital Partners(GLPキャピタル・パートナーズ)が、この資金調達ラウンドを主導した。

Pipe17の共同設立者であるMo Afshar(モハマド・アフシャール)氏とDave Shaffer(デイヴ・シェーファー)氏が、TechCrunchのインタビューで語った話によると、彼らのスタートアップのアイデアは、eコマース市場を調査したところ、販売プラットフォームに関わる意欲に対し、電子商取引ツールを連携させるためのソフトウェアが比較的不足していることに気づいたところからきているという。Shopify(ショッピファイ)やBigCommerce(ビッグコマース)、Shippo(シッポ)などは優れたプラットフォームだが、eコマース運営の勢いを維持するためには、自社でコードを書くことができなければ、結局はデータをすべて、1つのプラットフォームから別のプラットフォームへ移動させなければならない。そのギャップを埋めるために、彼らはPipe17を開発した。

アフシャール氏によると、Pipe17は接続というレンズを通して、eコマース業者の運営を簡素化したいと考えているという。2人の共同設立者は、簡単な相互互換性こそが、現代のeコマースのソフトウェアに欠けている重要な要素だと考えており、現在のeコマース市場をSplunk(スプランク)やDatadog(データドッグ)が登場する以前のITやデータセンターの世界になぞらえている。

問題を解決するためには別のアプリケーションを購入しなければならないというのが、eコマース業界における一般的な認識だと、共同設立者は説明する。Pipe17は、ほとんどのeコマース企業はおそらく十分なツールを持っているが、それらの既存のツールをコミュニケーションさせる必要があると考えている。

このスタートアップの巧妙なところは、我々がノーコード・ローコードと呼ぶもの、あるいはより高度なノーコードというべきものを構築していることだ。開発者ではない人に、異なるソフトウェアサービス間の接続を視覚的にマッピングするためのインターフェースを提供するのではなく、マッピングする必要がありそうなものをあらかじめ構築するのだ。リンクさせたい2つのeコマースサービスを選ぶだけで、Pipe17はインテリジェントな方法でそれらを接続してくれる。コーディングが苦手な人にとって(おそらく多くの小規模オンラインストア運営者がそうだろう)、これは魅力的なセールスポイントになるだろう。

このスタートアップの顧客ターゲットは、年間売上高が数百万ドルから数億ドル(数億円から数百億円)の販売業者だ。

なぜPipe17は今になって資本を調達したのだろうか?2人の共同設立者は、Plaid(プレイド)やTwilio(トゥイリオ)がそれぞれのニッチで行ったのと同じように、大きな市場を単純化するチャンスは限られているため、今資金を調達することは理に適っていると述べている。アフシャール氏の見解によれば、eコマースの運営はまさに大規模化が進んでいるというが、2020年見られたデジタル販売の成長を考えると、これは議論の余地がない展望だ。

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Pipe17が埋めようとしているニッチには、複数のプレイヤーが存在する。各企業がどれだけ競合するかについては異論があるかもしれないが、Y Combinator(Yコンビネーター)の支援を受けたAlloy(アロイ)は最近、ノーコードのeコマース自動化サービスを構築するために400万ドル(約4億2300万円)の資金を調達した。これはPipe17がやっていることに関わりがある。もし彼らが競争に巻き込まれたら、果たしてどこがトップに立つだろうか。それを見るのは興味深いことになるだろう。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Pipe17eコマースノーコード資金調達

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

レストランに近い味が楽しめるスマートオーブンと食事キットサービスTovalaがさらに約31億円調達

新型コロナウイルス(COVID-19)をきっかけに自宅で過ごす時間が増えたことで、食事の仕方や内容に注目が集まっている。料理をするのが好きな人であっても、特に忙しい人や料理が得意でない人にとってはなおのこと、美味しいもの、栄養のあるもの、新しいものをいつでも食べられるように工夫するのは難しいだろう。そうした状況に機運を得て事業が好転したスタートアップの1社が2021年2月初旬、事業拡大のための資金調達ラウンドを発表した。

スマートオーブンと食事キットサービスを提供するTovalaがシリーズCラウンドで3000万ドル(約31億円)を調達した。シカゴに拠点を置く同スタートアップの共同創設者でCEOのDavid Rabie(デビッド・ラビー)氏はTechCrunchに対し、今回の資金の大部分は米国西部への生鮮食品の流通を支援する第2の施設を開設するために使われる予定であり、それはおそらくユタ州になるだろうと語った。その他の投資用途には、顧客サービスの改善や人材の獲得などが含まれる。

さらに将来的には調理済みの料理やレシピの選択肢も徐々に増やしていく予定だ。ラビー氏によると、Tovalaオーブンでの調理を目的とした料理づくりのサービスを、一流のレストランやシェフと提携して準備しているという。

「このオーブンがあれば、レストランに近い体験ができると思います」とラビー氏は説明する。「温め直すだけのものではなく、下ごしらえされた食材の提供により、地域のレストランへのリーチを開拓できると考えています」。

資金調達はLeft Lane Capitalが主導しFinistere Ventures、Comcast Ventures、OurCrowd、Origin Ventures、Pritzker Group Venture Capital、およびJoe Mansueto(ジョー・マンスート)氏も参加している。すべてこれまでの支援者だ。

Y Combinator出身のTovalaは、食肉加工大手Tyson(タイソン)をはじめとする興味深い投資家を惹きつけてきた。注目すべきは、2020年6月のシリーズBラウンドで2000万ドル(約21億円)を調達して以来、半年で2回目の資金調達ラウンドとなることだ。

前回のラウンドと同様、評価額は公表されていない。しかし、同社が相当数の実績を上げていることは今回の資金調達で証明されており、同社の価値がいかに上昇傾向にあるかを示している。

過去18カ月の年間収益は10倍に増加し(新型コロナ以前の増加を含む)、従業員数は40%増加、出荷量は300万食を超えている。同社によると、オーブンは毎月平均32回所有者によって使用されている(デバイスが接続されているため追跡可能)。

しかしラビー氏によると、総ユーザー数はまだ明らかにされていないという。

Tovalaのオーブンは299ドル(約3万1200円)で販売されているが、購入後半年の間に11.99ドル(約1250円)の食事(1食につき1人分)を6回注文することを約束すると、通常100ドル(約1万500円)安くなる。Tovalaは現在、そうした食事の義務なしに最大で130ドル(約1万3600円)の割引を提供しており—レストランが休業して家で過ごす時間が増えたことで、食事を考え直す人達の波に乗ろうとしているのかもしれない—オーブンの価格は約170ドル(約1万7800円)程度に下がっているようだ。

オーブンに入れ、付属のつけ合せを添えるだけで完成する同社独自の既製トレイの食事に加え、Tovalaのオーブンを使用して店で売られている何百もの既製食品もパッケージのバーコードをスキャンして仕上げることができる。Tovalaのアプリを使って自分でプログラムして調理したり、それとは別にトースト、スチーム、ベイク、ブロイルなど、通常のオーブンと同じようにTovalaのオーブンを使用したりすることも可能だ。

指1本でタップするだけで食べ物を注文することができるキット食品や宅配食品の数々は、多くの人々の家庭での食事に対する考え方に変化をもたらした。

どれも手軽に食べられるように作られている。しかしTovalaは、より幅広い選択肢の中で特定のニッチをカバーできることを期待して事業を拡大してきた。自宅で調理した新鮮な料理を食べたいが、料理キット会社によってあらかじめ加工された材料があったとしても、そうした料理を準備する時間も関心もない人たちである。

しかしそれはビジネスの一側面にすぎない。Tovalaのオーブンは同社が構築したバーティカルインテグレーションの中心的な部分であり、ハードウェアは売れにくいと言われている中でも依然として事業提案の一部として残していくとラビー氏はいう。

「私たちは高品質の食事を人々に届けるビジネスを進めています。オーブンはそれを実現するための重要な手段です」と同氏は続ける。「私たちはテクノロジーと食品に携わる会社であり、オーブンビジネスから離れることはありません」。

一方で、同社はオーブンを製造する他社との提携も拡大している。

たとえばTovalaはLGと契約を結び、自社のソフトウェアをLG製オーブンに組み込んで、アプリとバーコードスキャンシステムでプログラムできる料理やTovalaの食事キットを作れるようにしている。ラビー氏は、Tovalaのソフトウェアを動かすフルサイズのLG製オーブンは「私たちが参入するような製品ラインではない」ためこの取引は理に適っていると語っている。

LGは出資者ではないとされており、これらの新デバイスがいつ発売されるのかも不透明だ。なお両者の提携は2019年に発表されている。

とはいえ、この提携はインターネットに接続された機器やその周辺のサービスを構築しているハードウェア企業が、次の段階に向けて既存企業とより緊密に連携するというケースの良い例である。

競合となり得る企業を買収するケースは他にもある。BBQ製品大手のWeber(ウェーバー)は2021年1月、以前に投資していたスマートオーブンのスタートアップJuneを買収した。そして2017年にはElectrolux(エレクトロラックス)が真空調理家電のスタートアップAnova(アノーバ)を2億5000万ドル(約260億円)で買収している。

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この種のエグジットはTovalaのメニューにあるかもしれないし、ないかもしれないが、将来的に前菜からメインコースに移行するための選択肢であることは否めない。

今のところ同社は、独立性を維持して成長するという方針だ。ラビー氏によると、Left Laneが興味を示した背景には「家庭でスマート食品を作る」というPeloton(ペロトン)のようなカテゴリー定義の役割をTovalaが担っており、人々の日常の習慣や日課の一部になり得るという考えがあったという。

「Tovalaは、食事のサブスクリプションと接続されたデバイスを組み合わせることで、食品デリバリー業界で見られる他のどの製品よりも高い顧客定着率を達成しており、これまで定着率が低かったフィットネス業界でPelotonが達成してきたことと多くの点で類似しています」とLeft Lane Capitalの共同創設者でマネージングパートナーのJason Fiedler(ジェイソン・フィードラー)氏は声明で述べた。「私たちのチームはカテゴリーを定義する消費者サブスクリプション事業への投資における実績を有しており、Tovalaが次なる大手食品テック企業になる可能性に期待しています」。フィードラー氏は今回のラウンドで取締役会に加わる予定だ。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Tovalaスマート家電資金調達料理

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

AI駆動でテキストを美しい合成音声として出力するAflorithmicが約1.4億円調達

ロンドンとバルセロナを拠点とするAudio-as-a-Service SaaSスタートアップAflorithmic(アフロリズミック)が、シードラウンドでCrowd Media Holdings(インフルエンサーベースの「ソーシャルコマース」とマーケティングに注力したオーストラリア拠点の企業)から130万ドル(約1億3605万円)の資金を調達した。

プレスリリースによると、クラウドメディアホールディングスはAflorithmicの10%の株式を取得することになり、この戦略的投資の目的は「クラス最高の音声クローン技術」によって有名人とFaceTimeで会話できるようにすることだという。

Aflorithmic(アフロリズミック)という社名は発音しにくいかもしれないが、この創業2年のスタートアップが提供するのは会話と音声そのものだ。同社はAI駆動型の合成メディア、「エシカル(倫理的)な」音声クローニング、オーディオマスタリングを使用して、完全に自動化されたスケーラブルな音声制作プラットフォームを構築した。開発者はAflorithmicのAPIを使用して、ウェブサイト、モバイルアプリ、スマートスピーカーなどのチャネルを介してユーザーに音声を届けることができる。

「テキストを美しい音声として出力」というのがAflorithmicの謳い文句だ。同社は今回のシードラウンド以前に、88万7000ドル(約9275万円)以上の外部資本を調達した。具体的には、創業後10カ月間を自己資金で運営した後、プレシード / FFF / エンジェルの各ラウンドで上限を超過する応募申し込みがあった。

Aflorithmicのウェブサイト上サンプルクリップでは、合成音声(ロボット音声)のボイスオーバーがお客様にあいさつした後、設定済みコンテンツの詳細を説明するパーソナライゼーション要素が紹介されている。

Aflorithmicの現顧客(概念実証 / パイロット版)は同社のツールを使用して、子ども向けオーディオブック、健康 / 栄養プログラムのパーソナライズされたナレーション、ホテルの宿泊客用コンシェルジュサービスなどを作成している。同社ビジネスの前提に、スタジオ製作での肉声によるボイスオーバーでは、音声コンテンツに対する現在の多様なニーズに到底対応できないという考え方がある。

そこで、その需給ギャップを埋めるために合成メディアが必要になるというわけだ。合成メディアを使えば、ブランドや企業の特定の顧客向けにパーソナライズされた多種多様な音声トラックを提供できる。現時点ではEdTech、MarTech、ヘルス / フィットネスといった業界を中心として、初期のベータ顧客向けに10ほどのプロジェクトが進行している。

同時に、ポッドキャストや生音声のストリーミングの人気も衰えを知らず、動画偏重時代でも音声が生き残れることを示している。

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Aflorithmicの新しい投資家であるクラウドメディアホールディングスは、Aflorithmicのツールで実現できることについてかなり野心的なアイデアを持っており、それは「消費者によるeコマースの利用形態を根本から変える」ものになるという。

同社がAflorithmic(AFLR)に対する投資を決断したのは、合成音声を動画と組み合わせて、お気に入りの有名人とのビデオチャットを再現し、ファンが体験できるようにするという計画があったからだ。

Aflorithmicに出資してこのプロジェクトで提携することにより、この計画にともなうリスクを軽減することができるという。

「AFLRの音声技術を利用すると、有名人のアクセント、トーン、癖などを再現できるので、まるでその有名人が電話の向こうにいるような感覚を味わうことができる」とクラウドメディアは説明する。この未来のクローン有名人が優しくささやく「実際のコンテンツ」は、同社のAI駆動型チャットボットテクノロジーによって実現されるという。このチャットボットは、ユーザーが投稿した1億8000万件を超える質問に対する回答(テキストのみのメディア)から構築されたナレッジベースに基づいて動作する。

こうしたテキストを、聞き手を癒やす合成音声に変えてくれるのがAflorithmicのテクノロジーだ。クローン有名人の動画では3D画像が使用されることになるが、そのためのテクノロジーは合成メディア企業3社(英国拠点のForever Holdings、デジタルヒューマン製作企業のZoe01とUneeq)によって提供される。

クラウドメディアは、Aflorithmicのテクノロジーをより広範囲に活用し、AI駆動型のチャットボット(CM8)といった同社のその他ソーシャルコマースアプリに統合していくという。これは、マーケティング、教育、ヘルスケアなど、業界を越えたカスタマーサービスでの利用を狙ったものだ。

一方、Aflorithmicは今回調達した資金をAPI音声制作エンジンの研究開発、音声クローニング、人材獲得に使用する計画だという。

同社は、APIベースのAudio-as-a-Serviceを幅広い顧客に提供している。その使用事例には、高度にパーソナライズされたニュースレターとポッドキャストやマーケティングアプリケーション用の音声クローニングなどがある。

また、膨大な音声ライブラリーが用意されていて顧客がロボットスピーカーを選択できるのも同社の売りだ。それだけでなく、ユーザーは自身の音声スニペットを録音しておき、音声クローニングAIを使用して、パーソナライズされた音声コンテンツを制作できる。

ユーザーは、音楽や複雑なオーディオエンジニアリングを含む、プロレベルのコンテンツを制作し、最終製品をウェブサイト、モバイルアプリ、スマートスピーカーといったあらゆるデバイスやプラットフォームに配信できる。製作経験は一切不要だという。

Aflorithmicの共同創業者でCEOのTimo Kunz(ティモ・クンツ)氏は次のように語った。「会社を大量消費市場に進出させる上でクラウドメディアの経験から学べることを楽しみにしている。また、ソーシャルコマースの未来をかたち作る同社の試みに参加することができてうれしく思う。音声制作は今後、自動化されたスケーラブルでダイナミックな体験へと変わっていくと確信している。当社はまさにそれを先導している」。

「合成音声の制作には、ほぼ無限と思える可能性がある。マーケティングアプリケーションだけをとってみてもその可能性は驚くほどだ」と同氏はつけ加えた。「Kim Kardashian(キム・カーダシアン)が2億人もいる彼女のフォロワーのパーソナルショッパーになり、Pirelli(ピレリ)のP Zero ROSSOの新しいタイヤが必要な理由をLewis Hamilton(ルイス・ハミルトン)が個人的に説明してくれる、そんな未来を想像してみてほしい。当社のテクノロジーを使えばそうした未来がまもなく現実となる」。

また、ビジネスモデルに関して同氏は次のように語った。「当社は、TwilioやMessagebirdと同じようなSaaSを使用している。基本は使用量、つまり再生された音声トラック数に応じた月額サブスクリプションだ。ただし、無料の試用期間も用意している。研究開発の側面が多い大規模なコラボレーションの場合は、カスタム価格の交渉にも応じる」。

Aflorithmicの他の2人の共同創業者はPeadar Coyle(ピーダー・コイル)氏とBjörn Ühss(ビョルン・アス)氏である。

Aflorithmicが音声クローニングを形容するのに使っている「エシカルな」という言葉は、合成メディア制作を支援する商用ツールの開発に取り組んでいるすべての企業にとって避けて通れない課題を示している。

有名人のクローンはおもしろそうだが、個人の音声クローニングは、フィッシング詐欺、個人情報の盗難、感情操作、脅迫など、悪用または乱用される可能性が非常に高い。著作権も考慮する必要がある。

Aflorithmicのウェブサイトにある倫理セクションには、パーソナライズされた音声をスケーラブルにすることにともなうリスクを認める記述がある。そこには「優れたイノベーションには大きな責任がともなう」と書かれており、「当社は、英国EUの『Ethics Guidelines for Trustworthy Artificial Intelligence(信頼できるAI開発のための倫理ガイドライン)』に従って、エシカルかつ公正で、透明性の高いAIを提供することに全力で取り組んでいる。当社のコンテンツ、音声モデル、およびアルゴリズムのトレーニングは、規制に完全に準拠し、個々のデータ所有者の承認を得たものである」とある。

音声クローン技術の悪用を防ぐ方法について、クンツ氏は次のように語った。「これは大きな問題だ。当社は合成音声の使用に関する倫理的側面について早い段階から考えると同時に、セキュリティについても非常に真剣に検討している。セキュリティは潜在的顧客との早期の話し合いにおいて重要な鍵を握っている。当社は音声データを機密性の高い個人情報と見なし、そうした情報と同様に慎重に扱っている。当社のテクノロジーで音声をクローニングするすべてのお客様は、音声提供者の同意があることを書面で当社に提出する必要があり、当社は特に初期段階において、その音声の使われ方を詳細に確認する」。

「また、当社のAPIインフラストラクチャは、当社のチームによってオンボーディングおよび精査された有料ユーザーのみにアクセスを許可するよう安全に設計されている」。

「当社は最近のディープフェイクの流行には乗らないよう意識的に注意を払っている。ディープフェイクは否定的な響きがあるだけでなく、当社のテクノロジーの有意義な使い方ではない」と同氏はつけ加えた。

Aflorithmicは競合他社としてDescript(ディスクリプト)を挙げる。ディスクリプトは2021年1月に3000万ドル(約31億3900万円)を調達し、別の音声クローニングスタートアップであるLyrebird(ライアーバード)を2019年に買収した。Descriptのツールは動画と音声の両方に対応しているのに対し、Aflorithmicは音声制作プロセス全体の自動化に重点を置いている。

「Descriptはどちらかというと制作者向けツールという位置づけだ。すばらしいツールであり、優れた機能を備えている。しかし、テキストから音声への変換、音楽と音声の編集、後工程に至るまでの制作プロセス全体をカバーしているわけではない。こうしたプロセスの自動化は重要な点だ。音声制作をクラウドに移行することで、規模のメリットが得られ、あらゆるリスナー向けに異なる音声トラックを作成できるようになる」とクンツ氏はいう。

「Descriptは、編集を容易にするための音声版Photoshopのようなスタジオ機能に重点を置いているが、当社は自社製品をどちらかというと音声版Stripeのように考えており、企業が単なる編集ではなく当社のAPIを使用して自社製品にAudio-as-a-Serviceを簡単に組み込むことができるようにしている」。

「Peloton(ペロトン)のようなヘルスケアアプリを例に説明すると、当社の方式では、高度にパーソナライズされたワークアウトをとても簡単に作成できる。高度にパーソナライズされたAIコーチをワークアウトに取り入れ、運動を続けるモチベーションを保つようユーザーをサポートする。これでユーザーは、ワークアウトデータの履歴やパーソナルベストに基づいてモチベーションを与えてくれるパーソナルトレーナーが自分の隣にいるような感覚を味わえる」。

「動画に関しては、慎重な選択だった」という。「音声は極めて個人的で、適切なニュアンスを出すのは複雑で難しい。当社は複数のAI動画プラットフォームと提携しており、こうした企業に音声を提供している。動画制作企業は合成音声がどれほど難しいかわかっているからだ」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Aflorithmicm合成音声資金調達

画像クレジット:画像クレジット:Rick Stufflebean

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)

インドで貯め込まれるばかりの情緒的な資産である「金」を市場流通させるindiagold

インドの人々のほとんどは、どのような形式であれ、信用力を証明するクレジットスコアを持たないために、正規の金融機関からの融資にアクセスできない

その代わりに、質店などの非正規の機関を利用するか、あるいは最近ならば、書類の手続きなしでローンを提供するアプリが候補になる訳だが、時には1000%もの高額な金利を請求され、また返済が遅れでもすれば、スマホの連絡先の誰かに迷惑がおよぶこともある。

(Googleは最近、このことを察知し、2021年1月にインドのPlay Storeからこうしたアプリを何百個も削除したのだが、残念なことに家族、同僚、社会の厄介者になることを恐れて自殺する人が現れるまで、こうしたことが表沙汰になることはなかったのだ)

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そこでゴールドの出番である。

何世代にもわたり、どのような社会経済的な立場のインド人でも、蓄えたお金の少なくとも一部をゴールドに換えて密かに隠すことを好んで行ってきた。実際、インドにはゴールドに対する高い需要があり、インド国民は他のどの国の人たちよりも多くのゴールドを貯め込んでいる。この南アジアの国は、世界有数の貴金属の輸入国でもあるのだ。

インドの人たちはゴールドを、金融市場の浮き沈みから身を守るための貯蓄の手段として利用するだけでなく、借り入れを起こすための資産としても利用している。ただし、ゴールドをジュエリーなどのかたちで売り払うことにはスティグマがある。貧困のあまり、生活のために取っておいた最後の持ち物を質入れしなければならなかった、ということになってしまう。

家庭内に封印されたこうしたゴールド(World Gold Councilの推計によれば、インド人は2万5000トンのゴールドを密かに保有し、これは現在の価値にして約147兆円以上にもなる)は、経済の引き上げにもひと役買っている。3分の1でも現金化すれば、GDPの成長率を2%押し上げられるとアナリストはいう。ゴールドは何十年も価格が下がらないすばらしい安全資産として、銀行などの金融機関が好む資産だ。

インドで最も価値あるスタートアップのPaytmの元幹部、Deepak Abbot(ディパック・アボット)氏とNitin Misra(ニティン・ミスラ)氏の2人は、ゴールドを担保とした融資にデジタトランスフォーメーションを起こすことで、この問題を解決できると信じている。

ニューデリー市もやはり、ゴールドマネタイゼーションスキームのような取り組みを通じて、貯め込まれたゴールドを市場に流通させようといくつかの試みを行ってきたものの、今のところあまり成功しているとは言えない。

ゴールドを手放すよう説得することの難しさの本質は、それが情緒的な資産だからだ。ミスラ氏とアボット氏はTechCrunchのインタビューに答えてそのように説明している。インドでは、金のジュエリーは力強さと誇りの象徴であり、家族が未来の世代へと受け継がせるものなのだ。

「インドでは州、宗教、コミュニティに関わらず、ゴールドにある種の慶事の感情が込められています。それは崇高なものであって、免税やプレミアム価格などと引き換えに、ネックレスなどのジュエリーを溶かして、その形をなくしてしまうなどということは、想像すらできません」とミスラ氏は説明する。

これとは別の難しさがある。家族の非常事態やその他の抜き差しならない事情により(それはしばしば最後の手段になるのだが)どうしてもゴールドを売らなければならない人がいるとして、その売却プロセスでは、一族の大切な財産を質に入れるというスティグマゆえに、多くの人が気まずく恥ずかしい思いをすることになる。

近年、一部の企業とスタートアップが銀行と協働し、顧客の玄関先まで訪問することで、こうしたスティグマを取り払う試みを実践しており、部分的には成功をおさめている。

ディパック・アボット氏とニティン・ミスラ氏(画像クレジット:indiagold)

アボット氏とミスラ氏(写真)には、もっと良いアプローチと大きなアイデアがあるという。

インドでは多くの人々がゴールドの貯蔵やその他の貴重品を銀行の貸金庫に預けて保有するのだが、その料金は月額65ドル(約6800円)にもなる(とはいえ、銀行からは年払いを求められる)。銀行の貸金庫にはデメリットもある。こうした貸金庫にたどり着くには長いプロセスがあって、最短でも半日はかかる。貸金庫の中の物品に対する保険もない。また、サービスを利用するには数百ドル(数万円)のセキュリティデポジットがかかる上、サービスを受けられるにしても長い待機期間を経なければならない。

アボット氏とミスラ氏は彼らが新しく発掘したスタートアップのindiagoldを通じて、同じような貸金庫サービスを月額わずか1.36ドル(約142円)で提供している。これには中身の貴重品のすべてに対する保険も含まれている。2人によれば、これは貴金属を安全に貯蔵するための手段をより簡単に便利に提供するというアイデアだ。

「indiagoldアプリにサインアップすると、当社のエージェントがご自宅へ伺い、ゴールドの検査と計量を行い、すり替え防止用のバッグに保管します。当社ではこのバッグにRFIDタグも貼付しており、一度スキャンした後は、開封しようとするとすぐにわかります。このバッグを鋼製のボックスに入れ、お客様の指紋を使ってロックします。一連の作業は当社のエージェントがすべてボディーカメラでキャプチャします。お客様の自宅を離れて指定の金庫に到着するまで、カメラフィードがリアルタイムでお客様にストリーミングされます」とミスラ氏はいう。

犯罪率が上昇する中、ジュエリーの安全を守るアイデアに異を唱える人はほとんどおらず、財産に保険がかけられるとすればなおさらだ、と2人は説明する。indiagoldでゴールドを預ければ、このスタートアップのアプリに財産の価格がリアルタイムで表示され、融資限度額を提示してもらえる。審査には数秒しかからない。

「お客様がローンを希望しない場合はそれで良いのです。必要になったときには、ゼロタッチのオプションがあるのです。ご自分のゴールドがご自分の指紋で、貸金庫に安全に保管されているとわかっていますから、ジュエリーを溶かされたり壊されたりする心配はありません。融資限度額を知りたければ30秒以内に知ることができます。誰かと話したり、誰かに訪ねて来てもらったりする必要はありません」と同氏。

「複数のジュエリーを預けた場合、その一部を担保にして融資を受けることができます。近々行事があるからネックレスが必要になるとわかっていれば、同じ貸金庫の別のジュエリーを担保にしてローンを組むことができます。当社が請求するローン金利は最高で1%です」。

これは、2020年後半に運営を始めたばかりのindiagoldが取り組もうとしている問題の一部に過ぎない。

同社は、顧客の信用力を判定するプラットフォームを構築し、この未開拓のマーケットに手を伸ばそうとしている銀行やその他の貸手向けにAPIを提供している。

現在デリー首都圏で運営しているこのスタートアップは近年、Leo Capitalが主導した資金調達ラウンドで200万ドル(約2億939万円)を獲得した。このラウンドに参加した大物投資家にはCredのKunal Shah(クーナル・シャー)氏、PineLabsのAmrish Rau(アムリッシュ・ロウ)氏、SnapdealのKunal Bahl(クーナル・バール)氏とRohit Bansal(ロヒット・バンサル)氏、BharatPeのAshneer Grover(アシュニール・グローバー)氏とBhavik Koladiya(バービック・コラディヤ)氏、CredのMiten Sampat(ミテン・サンパット)氏およびMX PlayerBoatのSameer Mehta(サミール・ミータ)氏、Innoven CapitalのAshish Sharma(アシッシュ・シャーマ)氏、Alteria CapitalのAnkit Agarwal(アンティック・アガーワル)氏、MyMoneyMantraのRahul Soota(ラウール・スータ)氏、LivspaceのRamakant Sharma(ラマカンタ・シャーマ)氏、そしてBlume Founders Fundが名を連ねている。

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「この巨大なマーケットに本気で取り組むには、これしか方法がないと思います。私たちはより多くの労力を傾け始めています」と、ミスラ氏は語っている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:インドゴールドindiagold資金調達

画像クレジット:gmutlu/iStock / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Dragonfly)

飲食店と卸売業者間の受発注サービス「クロスオーダー」を手がけるクロスマートが2.7億円を調達

飲食店と卸売業者間の受発注サービス「クロスオーダー」手がけるクロスマートが2.7億円を調達

XTechグループにおいて、飲食店と卸売業者向けの受発注サービス「クロスオーダー」を手がけるクロスマートは2月22日、シリーズAラウンドにおいて総額2億7000万円の資金調達を発表した。引受先は、ギフティ、SBIインベストメント、みずほキャピタル、SMBCベンチャーキャピタル。また資金調達と同時に、ギフティ代表取締役の鈴木達哉氏が社外取締役に就任した。

調達した資金により、クロスオーダーの営業強化、食品メーカーが飲食店にオンライン販促できる「クロスオーダー販促」の提供を開始する。各種採用も強化を行う。

2019年11月にサービス開始したクロスオーダーは、これまでFAXや電話が主流だった卸売業者の受注業務の効率化を実現するサービス。サービス開始から約1年で7万件を超える受発注のデジタル化に貢献しているという。

飲食店と卸売業者間の受発注サービス「クロスオーダー」手がけるクロスマートが2.7億円を調達

またeギフトフォーム事業を展開するギフティからの出資の下、クロスオーダー販促を開始する。これまでメーカーが対面で行ってきた飲食店に対する営業・販促が、クロスオーダー上で行えるようになるという。コロナ禍での新たな営業手法として注目され、すでに大手食品メーカーが利用を開始しているそうだ。

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カテゴリー:フードテック
タグ:クロスオーダー(製品・サービス)XTech / クロステック(企業)クロスマート(企業)資金調達(用語)日本(国・地域)

企業のデータウェアハウス活用を支援するCensusがシリーズAで約17億円調達

Census(センサス)は、企業が顧客データを自社のデータウェアハウスからSalesforceやMarketoなどのさまざまなビジネスツールに同期するのを支援するスタートアップだ。同社は米国時間2月18日、Sequoia CapitalがリードするシリーズAラウンドで1600万ドル(約17億円)を調達したと発表した。このラウンドの他の参加者には、2020年の同社の430万ドル(約4億5000万円)のシードラウンドをリードしたAndreessen Horowitzの他、著名なエンジェルも含まれる。エンジェルにはFigmaのCEOであるDylan Field(ディラン・フィールド)氏、GitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、NotionのCOOであるAkshay Kothari(アクシェイ・コサリ)氏、RipplingのCEOであるParker Conrad(パーカー・コンラッド)氏などが名を連ねる。

Censusは、データウェアハウスの上に何かを構築するスタートアップの中から生まれた新しい成功例だ。同社の背後にある大きな考え方は、企業がデータウェアハウス内のデータを運用できるようにすることだ。データはこれまで分析とレポートにのみ使用されていた。だが企業は、必要なすべてのデータがデータウェアハウスですでに利用可能な状態にあり、改めて統合しなくても信頼できる唯一の情報源として使用できることに気づいたため、データを運用する企業のエコシステムが形成され始めた。

同社の主張はAmazon Redshift、Google BigQuery、Snowflakeといったデータウェアハウスを中核とする現代のデータスタックは、企業がデータを抽出・変換(Fivetran、dbtなど)・視覚化するために必要なすべてのツールを提供するということだ(Lookerを考えてほしい)。

基本的にCensusのようなツールは、データウェアハウスと、企業がこのデータから価値を引き出すのに役立つビジネスツールとの間に位置する新しいレイヤーとして機能する。これにより、ユーザーは製品データをMarketoなどのマーケティングツールやSalesforceなどのCRMサービスと簡単に同期できる。

画像クレジット:Census

「私たちが3年前に最初に問うたのは、『必要なものはすべてウェアハウスにすでにあるのに、なぜすべてのアプリが接続されている不格好にもつれたワイヤーにしがみついているのか。データチームを活用して運用を推進できるとしたらどうか』ということです。データウェアハウスが企業の他の部分にも接続されている場合、可能性は無限大です」とCensusは2月18日の発表で説明した。「私たちが立ち上げたときの狙いは、Figma、Canva、Notionなどの製品主導の企業がより良いマーケティング、販売、顧客の成功を推進できるようにすることでした。その過程で、Zendeskでのサポートチケットの自動優先順位付け、Netsuiteでの請求書の自動化、さらにはHRシステムとの統合など、顧客はCensusをますます多くの場面で使用しています」

Censusはすでに数十の異なるサービスやデータツールと統合されており、顧客にはClearbit、Figma、Fivetran、LogDNA、Loom、Notionなどを抱える。

Censusは今後新しい資金を使用して、より詳細なデータ検証や視覚的なクエリエクスペリエンスなどの新機能をリリースする予定だ。さらに、コードベースのオーケストレーションを開始して、Censusワークフローをバージョン管理可能にし、エンタープライズオーケストレーションシステムへの統合を容易にすることも計画している。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Censusデータウェアハウス資金調達

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Nariko Mizoguchi

Varo BankがNBA選手ラッセル・ウェストブルック選手が主導するラウンドで約66.5億円調達

2020年、米国で初めてネオバンクとして全米銀行免許を付与されたVaro Bank(ヴァロ・バンク)は、米国時間2月18日朝、新たに6300万ドル(約66億5000万円)の資金調達を行ったと発表した。このラウンドは、NBAのスター選手であるRussell Westbrook(ラッセル・ウェストブルック)氏が主導したもので、彼はまたアドバイザーとしても同社に加わり、有色人種のコミュニティなど十分なサービスを受けていないコミュニティを対象としたプログラムの方向性に直接助言を与えていくという。

関連記事:2017年開業のモバイルバンクキングスタートアップのVaroが全米銀行免許を取得しリアル銀行に

ウェストブルック氏の投資は、以前ソーシャルアバターのスタートアップ企業であるGenies(ジーニーズ)を支援したRussell Westbrook Enterprises(ラッセル・ウェストブルック・エンタープライゼス)を通じて行われた。

これまでVaro BankにはWarburg Pincus(ウォーバーグ・ピンカス)、The Rise Fund(ザ・ライズ・ファンド)、Gallatin Point Capital(ギャラティン・ポイント・キャピタル)、HarbourVest Partners(ハーバーヴェスト・パートナーズ)、そしてBlackRock(ブラックロック)が運用するファンドなどが投資してきた。Varo Bankは2020年、シリーズDの資金調達で2億4100万ドル(約254億円)を調達している。今回の追加資金により、現在までの調達総額は4億8240万ドル(約509億円)となった。

2017年に設立されたVaro BankはChime(チャイム)、Current(カレント)、N26、Level(レヴェル)、Step(ステップ)、Moven(ムーヴン)、Empower Finance(エンパワー・ファイナンス)、Dave(デイヴ)、GoBank(ゴーバンク)、Aspiration(アスピレーション)、Stash(スタッシュ)、Zero(ゼロ)など、米国で増えているオールデジタル銀行と競合している。

多くのネオバンクと同様、Varo Bankは、月々の手数料や最低残高の要件がなく、現代的なモバイルアプリを使って簡単に利用できる銀行口座を提供している。また、高金利預金も提供しており、顧客は全米に5万5000台が設置されているAllpoint(オールポイント)の手数料無料のATMネットワークを利用できる。しかし、Varo Bankには実店舗の銀行支店はない。

Varoは2020年、米通貨監督庁(OCC)から全米銀行免許を取得し、連邦預金保険公社と連邦準備制度理事会から認可を得て、Varo Bank, N.A.を開設したことを発表。これで事実上「本物の」銀行となった。

現在、Varo Bankは300万以上の銀行口座を持ち、預金残高は前年比900%以上増加していると同社はいう。Varoのプラットフォームにおける利用額も、前年比で300%以上増加している。

ウェストブルック氏がVaro Bankと仕事をすることに関心を持ったのは、同社が銀行サービスを通じて金融の不平等に影響をおよぼすことに取り組んでいるからだ。具体的には、同社は最大2日分の早期給与預金、全国平均より高金利の普通預金口座、資格を得た顧客がVaro Bankアプリで必要に応じて100ドル(約1万550円)まで利用できる短期の小口融資(キャッシング)「Varo Advance」を導入することに力を入れている。この貸付サービスは2020年12月に開始されたが、新型コロナウイルスの影響で、2021年3月までは手数料無料のままとなっている。

今回調達した新たな資金は、Varo Bankのサービス拡大のために使用されるほか、ウェストブルック氏と協力して、十分なサービスを受けていないコミュニティにおける金融リテラシーの構築に焦点を当てたコミュニティ感化プログラムを共同で作成する予定だと、同社はTechCrunchに語った。

「銀行システムは米国の人口の大部分、特に有色人種のコミュニティに対し、無視したり、十分なサービスを提供していませんでした。私は持続的な社会変革を実現し、より強固で包括的なシステムを構築することに情熱を注いでいます」と、ウェストブルック氏は今回の投資についての声明で述べている。「私はVaroと協力して、これまで相応のサービスが受けられなかった人々に向けた経済再活性化の一翼を担うことに興奮し、その準備を整えています」と、同氏は続けている。

Russell Westbrook Enterprisesは今回の投資に際し、Jefferies LLC(ジェフェリーズLLC)から独占的な助言を受けたと、同社は記している。

【追記】Varo Bankの既存の投資家は今回のラウンドに参加しなかったが、他のVCや、ファミリーオフィス、個人が参加した。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Varo Bank資金調達銀行

画像クレジット:Varo

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

業務用車両管理の支援プラットフォームのBigChangeが107.6億円調達

近頃、仕事の未来と分散したスタッフのための新しくてより便利なツールの広がりが話題になるが、車両管理ソフトウェアの開発に焦点を合わせている企業は、あまり「技術系スタートアップ」とみなされていない企業でさえ、すでに何年にも渡ってこの問題に取り組んできた。2021年2月第1週、この分野の古参企業の1つが最初の重要な投資ラウンドを発表した。これは投資家たちがこうしたB2B企業にいかに注目し、いかに企業自体も新たな成長の機会と捉えているかの証だ。

BigChangeは、車両が「オフィス」になりがちな外回り業務の追跡や指示の支援をする、車両管理ソフトウェアを開発している英国のスタートアップで、7500万ポンド(約107億6000万円)のラウンドを完了したところだ。このラウンドは米国の投資会社であるGreat Hill Partnersが主導している。

同社はフィールドサービスエンジニア、社内で業務管理を行うスタッフや、これまでは電話をかけ、書類を作成し、オフィスと現場の間を往復して業務を行っていたスタッフ向けに、テクノロジーの進歩を活用してアプリを開発することでビジネスを築き上げてきた。

「21世紀にふさわしいモバイルワーカー管理への大変革をもたらすために、BigChangeを設立しました。当社のプラットフォームは、ペーパーワークをなくして炭素を劇的に削減し、効率を上げて安全運転を促進することで、エンジニアの移動や書類の記入にかかる時間を減らし、本来の業務にかけられる時間を増やせます」と設立者でCEOのマーティン・ポート氏は声明で述べた。「Great Hillと提携し、英国および海外でバーティカルおよびエンタープライズソフトウェア企業の拡大に成功を収めた同社の実績を活用できることをうれしく思います」。

BigChangeによると、同社に対するGreat Hillの出資額は1億ポンド(約144億5千万円)となっている。あるレポートによると、そのうちの4800万ポンド(約69億3500万円)をポート氏が手にしており、今回の資金調達は二次取引だと指摘している。同社は2012年から存在し、利益を上げているようだ。PitchBookが追跡した報告書によると、これ以前の資金調達は極めて少なく(約200万ドル、日本円で約2億1000万円)、ある時点でエンジェルラウンドの資金調達を試みたが、完了前にプロセスをキャンセルしている。

テクノロジー業界は基本的には、世の中のあらゆる業界の一部となり続けているため、この取引は、その境界がいかにして拡大し、さらに曖昧になっていくのかを示すものとして注目に値する。

BigChangeはロンドンからのスタートアップ企業でもなければ、ケンブリッジやオックスフォード地域、ブリストルや南部からでもない。具体的にいえば北部、リーズで始まった。都市部や南部地域のスタートアップ企業が引きつける資金調達や注目はなかったが、そこには見事なまでの多くのスタートアップ企業が存在する。(目を引く例外の1つは、オンラインストアのPharmacy2Uだ。このリーズのスタートアップ企業はAtomico、BGFなどによって支援されており、Amazonのような企業がこの分野での成長に関心を寄せていることを考慮すると、注目株の可能性が高いといえる)

現時点のテクノロジーの大きな課題の1つは、いかに多くの活動が分散されつつあるのかということだ。現在、新型コロナウイルスの蔓延を食い止めるために私たちの多くがリモートで働いている結果、たくさんの人々がこうした状況を利用して特定の場所に住む必要がまったくないと考え、ベイエリアのような高級地域から生活の質を高めるために他の場所へと移住することを選択している。

もちろん英国には、(長年に渡って米国の多くの都市にあったように)テクノロジーエコシステムを備えたマンチェスター、エジンバラ、カーディフなどのような都市がある。だが、これらの都市の1つ、今回はリーズが、かなりの資金調達ラウンドを引きつけていることで、才能だけでなく、より多額の資金が意外な地域に流れ込む同様の展開が英国で起きる可能性があることも示している。

ここで焦点を当てているのは、BigChangeが実際に構築しているその他の分散化に関する話だ。

同社は「ナレッジワーカー」ではなく、デスクに座らず、移動しながら業務を行うスタッフ向けのアプリやより大きなソフトウェアの開発分野に参入した数多くの企業の1つだ。外回りのスタッフには、業務やルートをより適切に管理することができる(JourneyWatchと呼ばれる)アプリがある。発送業務の際には追跡を行うアプリがあり、ソフトウェアを使用して仕事のバランスを取り、業務のさらなる分析も行うことができる(JobWatchとして販売されている)。これらは耐久性のあるデバイスで動作し、ディストリビューションはSaaSアーキテクチャに依存している。現在、世界中と取引があるものの、大半の顧客を英国国内に抱える約1500の企業に勤務するおよそ5万人がアプリを使用している。

BigChangeはこの分野のスタッフを対象とする唯一の企業ではない。TechCrunchでは2021年1月、サービスプロフェッショナル向けのソフトウェアを開発する企業の1つである北米のJobberを取り上げたばかりだ。ナレッジワーカー以外の幅広いオーディエンスにテクノロジーを提供する機会を生かしているその他の企業には、Hover(家の修理担当者が材料の調達、価格の設定、作業の見積もりやビジネスの管理を行うためのテクノロジーと幅広いツール一式を提供)や、GoSite(あらゆる種類のSMBを支援するプラットフォームを提供)などがある。この特定分野のその他の企業は、KlipboardAzugaServiceTitanServiceMaxなどがある。

関連記事:3Dイメージングを不動産の評価と修繕に活用するホバーが約62億円の資金を調達

Great Hill Partnersの名称はGizmodo、(かつての)Ziff DavisStoryblocksなどのさまざまなメディア企業や、The RealRealWayfairなどの支援企業の過半数の株式を保有する未公開株式投資会社として見覚えがあるかもしれない。今回のケースでは、仕事の一部に「フィールドサービス」がある、非常に幅広い業界でBigChangeがいかに採用されているかに注目したということになる。

関連記事:Gizmodo/Onionグループを投資ファンドのGreat Hill Partnersが買収

「小口顧客や特定のサブバーティカルに注力するニッチプレーヤーとは異なり、マーティンと優秀なスタッフたちは、フィールドサービス担当者や運営担当者向けの柔軟なオールインワンプラットフォームを構築しています」とGreat Hill Partnersのパートナーであるドリュー・ロークス氏は声明で述べた。「BigChangeのテクノロジーは、およそあらゆる規模やバーティカルの商業および住宅用顧客にサービスを提供する能力だけでなく、実績のある製品開発やカスタマーサービス能力によっても差別化されています」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:BigChange資金調達

画像クレジット:BigChange

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

ユーザーを維持するのは人とのつながり、瞑想にソーシャル要素を加えるChorus

瞑想アプリのChorus(コーラス)は2020年3月16日にオンライン体験をローンチした。このタイミングは、運が良かったともいえる。それは奇しくも、地元カリフォルニア州で、7つの自治体の保健所が共同で屋内退避命令を出したのと同じ日だった。

数え切れないほどの他の企業と同様に、2020年は同社の計画どおりにはいかなかった。しかし、同社のサイトは、「体験的」ハイブリッドな対面クラスを完全にバーチャルなインターフェイスに転換するために奔走した。最終的にはそれがかえって良い結果を生んだかもしれない。

もちろん昨今、瞑想アプリの選択肢には事欠かない。CalmとHeadspaceがリストのトップに位置するが、ユーザーたちは、テクノロジーが直接の原因となっているストレスの一部を軽減するために(皮肉なことに)テクノロジーに注目しており、マインドフルネスのカテゴリーは非常に人気があることが証明されている。

しかし、瞑想は難しい。それを始めるのは難しいし、維持するのも難しい。アプリによっては、そのプロセスで他よりもうまくユーザーをガイドしてくれるものもあるが、それでも孤独な体験のように感じることが多い。これは人々が、効果を実感する前に習慣を投げ出してしまう原因の1つだ。

Chorusは初期の対面イベントですでに成功を収めていた。共同設立者兼CEOのAli Abramovitz(アリ・アブラモヴィッツ)氏はTechCrunchにこう語った。「最も没入感のある最初の体験を提供してくれるので、ほとんどのユーザーにとってはこれが第一歩でなくてはと考えていました。サンフランシスコで対面ポップアップを実施しました」。

同社はまた、約100万ドル(約1億円)のプレシードラウンドを調達することに成功した。さらに最近では、Y Combinatorの2021年冬バッチのスタートアップの一部として追加の出資を受けている。

公式アプリは近日発表の予定だ。今のところ、体験のサインアップはウェブポータルを通しており、実際のクラスはZoomを介してライブで行われ、オンデマンド視聴のためにアーカイブされている。これは多くのジムやパーソナルトレーナーがパンデミックの間に利用しているセットアップに似ている。最も洗練されたものではないが、アブラモヴィッツ氏によると、Chorusのユーザー数は現在「数千人」に達しており、実際の数字は明らかにしていないが、主に口コミによるものだという。

月額40ドル(約4200円)の料金を支払う数百人のユーザーのうち、約3分の2が「非常に熱心に参加している」と分類されており、これは平均して1日おきにクラスに参加していることを意味する(対して、約1050円でドロップイン参加もできる)。同社のサービスは、人気のある曲をベースにした呼吸法で人々を惹きつけ、他の多くの瞑想アプリと比べより共同の体験を提供することで、ユーザーの関心を保っている。

「当社が解決しようとしている問題には、2つの部分があります」とアブラモヴィッツ氏はいう。「もともと私たちは、特に瞑想が難しいと感じている人たちのために、新しい瞑想体験をデザインしていると考えていました。顧客がクラスの後に居残って語り合う姿を見た後、私たちが学んだことは、人々をまた戻って来させるものは、自分自身や他の人とつながるための新しい方法だということです」。

同社の体験は、対面式のクラスで得られる体験をバーチャルにしたもので、つまり、クラスの後に仲間の参加者と交流できるようになっている。社会的に孤立した時代にあって、ユーザーがこのような体験に特に興味を持つ理由は明らかだ。

パンデミック後の世界でこの体験がどのようなものになるかについては、同社は今後もユーザーのニーズに合わせて適応していく予定だという。

「当社は基本的に体験を提供する会社です」とアブラモヴィッツ氏は語る。「私たちは、従来の瞑想は取っつきにくいと感じていた人々のための瞑想体験の会社です。それが当社のコアです。当社はプラットフォームやチャネルを問わず、私たちのコミュニティにとって最高の体験を提供していきます。今はアプリがそれです。将来的にはコミュニティのために、VRのようなハードウェアデバイスを導入したり、Pelotonのような戦略的なスタジオになるかもしれません。しかし、今はデジタル体験に集中しています」。

関連記事:瞑想とマインドフルネスのアプリは新型コロナ禍で急成長中

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Chorus瞑想資金調達

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

公共料金を分割などで払えるようにするPromiseが約21億円調達

2020年は何十億人という人にとって経済的に試練の年だった。特に試練となったのが公共料金、税金、他の行政関係費用の支払いという基本的なものだ。公的な支払いのためのシステムは簡単に、あるいはフレキシブルに支払えるようにはできていない。Promise(プロミス)はそれらの決済システムを統合し、全額を一度に支払えない人向けに手数料と債務の条件を寛容なものにすることでそうした状況を変えることを目指している。その実現に向け同社は2000万ドル(約21億円)を調達した。

ほぼすべての金が家賃と食費に充てられる場合、水道代や電気代のようなイレギュラーな請求を支払う金をかき集めるのは難しい。そうした公共サービスは携帯電話の契約より短い猶予期間でサービスを止めるということはほぼ考えられないため、それらの支払いを先送りするのは無難だ。しかしそれは請求書が数枚溜まるまでのことで、ある日、未払い料金が何百ドル(数万円)にもなっているのに気づく。そして、未払い料金を分割払いする方法はなく、超過料金を払う。チケット代金やその他の料金、罰金についても同様だ。

PromiseのCEOで共同創業者のPhaedra Ellis-Lamkins(ファエドラ・エリス-ラムキンス)氏はこれが現在のシステムが陥っている状況だ、と説明した。支払い計画がオンライン精算時にワンクリックで提供されるテレビや家具の購入と異なり、地方自治体の支払いサイトあるいは公共料金支払いにはそうしたオプションはほぼない。

「人々が支払う意思のある料金の支払いに苦慮していること、もしそうした人にリマインダーや利用できる支払いオプション、フレキシビリティを提供すれば人々はかなりの率で支払うことがわかりました。システムが問題なのです。システムは銀行口座にいつも余っている金があるわけではない人のためにデザインされていません」と同氏はTechCrunchに語った。

「たとえばもし誰かが15日の午後10時に1回目の支払いをすると、同じ額を翌月15日の午後10時に支払えるだろうとシステムは考えます。こうしたシステムはほとんどの人が最低限必要なものをまかなうのに苦労していることを理解しません。週払いにするか、複数回の支払いに分割される必要があります」。

支払いプランを提供しているものでも多くの欠陥があり、これは少なくとも部分的にはフレキシビリティの欠如のためだ、とエリス-ラムキンス氏は話した。不払いは全プランのキャンセルにつながりかねない。そもそも加入すること自体が難しいことすらあるかもしれない。

「一部の都市は支払いプランを提供していますが、サインアップするのに実際に足を運んで複数ページの書式に記入し、収入の証明を提示して制限基準を満たさなければなりません。税申告や他の書類作成とは対照的にプロセスの簡素化に自己証明を使うために我々はパートナーと協業することができました。現在当社の返済率は90%超です」。

Promiseは一種の仲介人のように機能する。エージェンシーや公共サービスを統合し、滞納している人に異なる支払いシステムの可能性を気づかせる。オンラインショップで購入するときに、分割払いを含むさまざまな支払いオプションを目にするのと似ている。

画像クレジット:Promise

ユーザーは支払いプラン(携帯電話は多くの人が使用するインターネットの形態であることからサービスはモバイルフレンドリーだ)に加入し、Promiseがリマインダーや領収書、処理、エージェンシーへの入金などを行う。同社はコストを前払いで徴収せず、独自のやり方で回収する。要は、Promiseは政府機関や他の公共料金を集める組織を専門とする追加のフレキシブルな支払いメカニズムだ。

Promiseはサブスク料金(たとえばSaaS)と取引手数料で稼いでいて、どちらも顧客にとって理にかなったものだ。想像がつくかもしれないが、公共サービスにとって回収すべき500ドル(約5万2700円)をまったく回収できないリスクをとるより、あるいはもっと手間のかかる手法や高いコストがかかる滞納金回収手法をとるより、500ドルの回収を確実なものにするために数ドル(数百円)の手数料を払う方がよりリーズナブルだ。

あなたがこれは大きな問題ではない(その結果大きなマーケットではない)と考えるといけないので、エリス-ラムキンス氏はカリフォルニア州の160万人が10億ドル(約1056億円)の水道料金を滞納していて、8世帯のうち1世帯が平均500ドル(約5万3000円)を延滞している、という同州水委員会の最近の調査結果を示した。

パンデミックがほぼ全世帯におよぼした大きな経済的影響を考えると、こうした数字は通常より悪いものだろう。しかし他の状況での支払いプランのように、それぞれ収入の異なる世帯がそうしたシステムのメリットを自分の都合に合わせて利用できる。鈍いデザインの公共料金支払いサイトを利用しなければならなかった多くの人が代替手段を歓迎するだろう。

今回のラウンドにより、Promiseの累計調達額は3000万ドル(約32億円)を超えた。うち1000万ドル(約11億円)は2018年にY Combinatorを卒業した直後に調達している。最新の出資は既存投資家のKapor Capital、XYZ、Bronze、First Round、YC、Villageなどによるものだ。

カテゴリー:フィンテック
タグ:Promise資金調達

画像クレジット:SEAN GLADWELL / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Nariko Mizoguchi

複数の事業体を運営する中堅企業向け財務管理ソフトウェアのAccountsIQが約7.4億円を調達

公認会計士のチームによって設立された財務管理ソフトウェア(FMS)のスタートアップであるAccountsIQは、580万ユーロ(約7億4000万円)の資金調達を行った(会計士が起業家になりたいと思った時には、スタートアップとはどんなものであるかを知っていたに違いない)。

ダブリンを拠点に、複数の事業体を運営する中堅企業を対象とするこの会社を支援しているのは、最近3番目のファンドを発表したばかりのフィンテックに特化したVC、Finch Capital(フィンチ・キャピタル)だ。AccountsIQによると、今回の資金注入は、成長の加速と、製品強化を継続するための営業・マーケティング、カスタマーサクセス、エンジニアリング全般にわたる雇用に充てられるという。

2008年にダブリンで創業したAccountsIQが手がけるクラウドベースのFMSは、複数の事業で「決算の把握、処理、報告」を簡素化することを目的としている。これには子会社、支店、SPV、フランチャイズモデルなどを介して拡大している企業が含まれるが、中でも異なる場所、通貨、管轄区域で取引を行っている企業が主な顧客だ。このアイデアはXero(ゼロ)、QuickBooks(クイックブックス)、Sage(セージ)のようなローエンド製品と、NetSuite(ネットスイート)、Intacct(インタクト)、SAPのようなハイエンドで高価な製品との間に存在する市場のギャップを埋めるものだと、AccountsIQは述べている。

「クラウド以前は、マルチエンティティビジネスの財務管理は困難であり、各事業体がアカウントを作成し、レビューや分析のために一元的に送らなければなりませんでした」と、AccountsIQ共同設立者のTony Connolly(トニー・コノリー)氏は説明する。「当社のクラウドソリューションは、すべての事業体が同時にアクセスし、本社や経理担当者と協力して、それぞれの取引を処理することができます。同時にグループの基準通貨で決算を完全に統合することによって、グループ全体の決算をボタン1つで簡単に中央に報告し、ベンチマーキングできるようになります」。

この「真実の一本化」を可能にするために、AccountsIQは、サブグループ、複数通貨の再評価、企業間取引など、さまざまな複雑な報告に対応できるように設計されている。

このソフトウェアはまた、「人工知能」とオープンAPI戦略を採用し、銀行口座の自動同期、電子決済の生成、電子請求書の自動投稿、フロントエンドシステムとスマートフォンを介した経費の取り込みや簡単な承認ワークフローの統合を実現していると主張する。現在統合されているのは、TransferMate Global Payments(トランスファーメイト・グローバル・ペイメンツ)、TINK(ティンク)、BrightPay(ブライトペイ)、Kefron AP、Chaser(チェイサー)、Concur(コンカー)、Salesforce(セールスフォース)、各種ISAM(アイサム)などだ。

現在までにAccountsIQのソフトウェアは、非営利団体から銀行まで、さまざまな業界の4000社で使用されており、顧客にはPwC(プライス・ウォーターハウス・クーパース)、Linesight Global Construction Group(ラインサイト・グローバル・コンストラクション・グループ)、Asavie Technologies(アサヴィ・テクノロジーズ)、Throgmorton(スログモートン)などの企業がいる。コノリー氏によると、このスタートアップがターゲットとする顧客は、複数の事業体が関与しており、各事業体を個別に会計処理する必要があるが、一元的に管理したい企業だという。国境を越えた電子商取引の加速と、英国のEU離脱のようなマクロな出来事により、その顧客プロファイルは明らかに拡大している。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:AccountsIQ資金調達人工知能

画像クレジット:Khali Ackford / AccountsIQ

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(文:Steve O’Hear、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

新型コロナを追い風にイベントネットワーキングアプリGripが13.7億円調達、今後のハイブリッド化も視野に

近い将来、オフラインのイベントが確実にオンラインに移行することが予想される中、ネットワーキング分野のスタートアップはパンデミックを目の当たりにして迅速に方向転換する必要があった。その1つがGripで、以前は物理的な会議(かつてのTechCrunch Disruptを含む)向けのネットワーキングアプリとして知られていた。Gripは2020年以来、「オムニチャネル」エクスペリエンスに移行し、バーチャル、ハイブリッド、ライブのさまざまな種類のイベントを組み合わせている。この戦略が功を奏したようで、この度シリーズAの資金調達ラウンドで1300万ドル(約13億7000万円)を調達した。その結果、調達総額は1450万ドル(約15億3000万円)に増えた。

今回のラウンドは、ロンドンを拠点とするグロースエクイティファンドのKennet Partnersが主導した。この資金調達はオンラインイベントのブームを反映している。このブームで、ロンドンを拠点とするスタートアップのHopinは2020年、シリーズAで4000万ドル(約42億円)を調達した。2016年創業のGripは、Reed Exhibitions(リードエグジビション)や Messe Frankfurt(メッセフランクフルト)など、いくつかの大規模なイベント主催者をクライアントとして抱える。

Gripの創業者でCEOのTim Groot(ティム・グルート)氏は声明で次のように述べた。「私たちの使命は、イベントの主催者がプロフェッショナルを結集し業界を発展できるよう力を貸すことです。今回の資金調達ラウンドによりエクスペリエンスを新しいレベルに引き上げることができます。業界をリードする広範なプラットフォームを活用し、バーチャル、ハイブリッド、対面のイベントに独自の価値を提供します」。

グルート氏は、Gripが今や製品に多額の投資をし、世界的な拡大を目指していると述べた。

Gripの他の競合他社には、過去に150万ドル(約1億6000万円)を調達したBrellaや、これまでに600万ドル(約6億3000億円)を調達したSwapcardなどがいる。

では、なぜGripが集団からリードしているように見えるのか。

グルート氏は筆者に語る。「当社は、他のプラットフォームとプラグアンドプレイ方式で連動して機能するという点で、少し異なるアプローチを採用しています。そのためGripは、多くの主催者によってスタンドアロンのバーチャルイベントプラットフォームとして使用されています。したがって、会議にはHopinを使用し、ネットワーキングにはGripを使用するということがあります。2020年に成長できたのはその方法のためかもしれません」。

Gripは2020年にバーチャルイベントへ方向転換した後、毎月100件を超えるイベントを主催し、150万人が使用した。その結果、同社によれば、2020年の売上高はほぼ4倍に増加した。2021年は1万を超えるイベントを行う予定で、参加者は500万人以上を見込む。

GripのAIを利用したアルゴリズムにより、参加者はイベント前に開かれる会議のスケジュールなど、自身の興味に基づきよりパーソナライズされたマッチメイキングのレコメンデーションを取得できる。出展者には、ソフトウェアが見込み客を捕捉したり、イベント後の分析を提供したりする。

参加者は会議に登録されると、グループで会話できる。また、Gripはその場でテーマに合わせて3分間の会話が行える「スピードネットワーキング」機能に取り組んでいる。

Gripは、HopinやBizzaboなどの「フルサービス」プラットフォームとは異なり、Vimeo、YouTube、Zoom、BlueJeansなどのさまざまなストリーミングプラットフォームと統合する。

KennetのパートナーでGripの取締役会メンバーを務めるHillel Zidel(ヒレル・ジレル)氏は次のように述べた。「ネットワーキングに重点を置いてバーチャルイベントを開催するGripの能力が、2020年の驚異的な成長をもたらしました。イベント主催者とそのクライアントは、対面イベントの制約にもかかわらず顧客とのつながりを維持することができました。ライブイベントが将来再開されれば、Gripは、ライブ、バーチャル、ハイブリッドのイベントをサポートするソフトウェアソリューションの提供を通じて、イベント主催者を引き続き支援できる非常に有利な立場にあります」。

Founders Factoryの共同創業者でGripの以前からの投資家であるBrent Hoberman(ブレント・ホバーマン)氏は次のように述べた。「Gripは、ファウンダーズフォーラムでイベントを開催した際に気づいたニーズから生まれました。スマートテクノロジーを利用して、ゲスト間に意味や価値のあるつながりを生み出す方法は何だろうか、と問うたわけです」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Grip資金調達バーチャルイベント

画像クレジット:Grip

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(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

混合現実ベースのバーチャルイベントプラットフォーム拡大でTouchCastが約58億円調達

過去12カ月間、パンデミックの影響によりキャンセルされなかったイベントはオンラインのバーチャル環境で開催されてきた。こうしたイベントの企画や参加を支援するスタートアップへの注目は急速に高まり、資金提供も増えている。

最近の話題としては、ニューヨーク発のビデオスタートアップ企業TouchCast(タッチキャスト)が、5500万ドル(約58億円)の資金を調達した。同社は、一般企業が技術的な負担なしにリアルなバーチャル会議やイベントを実現できるようにすることを目的としたプラットフォームを開発した。共同創業者でCEOのEdo Segal(エド・シーガル)氏は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)により「需要が高まり過ぎた」同社のサービスとチームを増強するためにこの資金を使用していきたいと述べている。

今回の資金調達は、大手コンサルタント企業兼システムインテグレーターの投資部門で戦略的投資家のAccenture Ventures(アクセンチュア・ベンチャーズ)がリードしており、Alexander Capital Ventures(アレクサンダー・キャピタル・ベンチャーズ)、Saatchi Invest(サーチ・インベスト)、Ronald Lauder(ロナルド・ローダー)氏の他、匿名の投資家らも参加している。これまで、同スタートアップの資本金は大部分が自己資金であり、シーガル氏は現在の評価額を明らかにしていないものの、間違いなく9桁台、つまり数億ドル(数百億円)規模だと伝えている。

Accenture(アクセンチュア)はTouchCastの技術を自社のイベントで使用してきたが、自社で使用すること以外にも関心を持っていると考えられる。Accentureは複数の企業顧客のインタラクティブなサービスを構築および実装していることから、TouchCastのパイプラインにさらなる潜在顧客が増えることになる可能性もある

(実例:著者がZoomでシーガル氏にインタビューを行った際、同氏はボーイング747などが並ぶ、とある大手航空会社の広大な格納庫にいた。企業名は伏せておくが、同氏はその航空会社へのプレゼンから戻ったところだと教えてくれた。)

特にカンファレンスなどのバーチャルイベントでは、これまでZoom、Google(グーグル)のHangout、Microsoft(マイクロソフト)のTeams、Webexなどのビデオ会議プラットフォームを活用した、グループ通話を管理形式にしたようなものが多く見られてきた。

実際のステージや会場というよりも、古いテレビ番組の「The Brady Bunch(ゆかいなブレディー家)」や「Hollywood Squares(ハリウッド・スクエア)」のオープニングシーンのようなグリッド状の画面に、参加者それぞれのビデオストリームが表示されるのが一般的だ。

もちろんそれとは一線を画した企業もある。2020年開催されたApple(アップル)のオンラインイベントでは、実際のライブイベントよりも細やかな情報を提供し、自然な雰囲気でバーチャルイベントがあるべき姿を見せつけた。

しかし、誰しもがAppleのようなハリウッドレベルのプレゼンテーションを実現できるわけではない。

シーガル氏によると、TouchCastが構築したプラットフォームの本質は、企業が古いクイズ番組よりもAppleのイベントに近いクオリティのイベントを企画できるよう、コンピュータービジョン、ビデオストリーミング技術、自然言語処理を組み合わせたものだという。

「このプラットフォームは、どんな企業でもAppleのようなイベントが実現できるようにするために制作しました。ホームオフィスに座っている現実を忘れるような体験を参加者にもたらしたいと思っています」とシーガル氏は語る。

しかし「ホームオフィス」という概念は未だ健在だ。TouchCastでは、主催者やステージへの参加者は自宅からZoomやTeamsなどのベーシックなビデオ会議ソリューションを使用して参加することになる。しかしその舞台裏で、TouchCastはコンピュータービジョンを用いて人物にトリム加工を施し、バーチャル環境の「会場」に配置して、実際の会議のステージにいるかのように演出する。

会場は複数のテンプレートの中から選択することが可能だ。主催者が特定の会場を撮影してそれを使用することもできる。TouchCastは、実際のイベントに加えて、オーディエンスが質問をしたり互いにチャットをしたりできるツールも提供している他、イベントが進行するにつれて重要なポイントの書き起こしや概要を作成し、希望者に提供することもできる。

シーガル氏はTouchCastをB2B2Cを含め消費者向け製品として売り出すつもりはないというが、会議主催者がスペシャルゲストを招いてイベント内に音楽のセクションを設けたいと希望している場合に備え、それを実現できる機能も準備しているという(正直にいうと、その機能をより消費者向けのイベントのために使用するのはそう難しいことではないように思われる)。

TouchCastが、現在不安定な立場にあるイベントプランナーたちを相手にサービスを提供するスタートアップへと成長したことは意外な結果ではあるが、この事実は創業者(や投資家)にとって、想定していた機会が必ずしも正しい機会というわけではないことを示す良い例だといえるだろう。

TechCrunchの元編集者Erick Schonfeld(エリック・ションフェルド)氏が共同創設者である同社が、2013年にひっそりと設立されたのはまだ記憶に新しい。

同社の創業当時のコンセプトは、クリエイターがオンラインビデオにインタラクティブな要素やメディアウィジェットを簡単に取り入れられるようにすることで、ウェブサイトで見られるような双方向性やにぎやかなメディアのような雰囲気に近づけるというものだった。

あまりにも知的過ぎたのか、または技術面で時期尚早だったのか、同社のサービスは日の目を見ることはなく、失敗に終わったと推測した同僚もいたほどだ。

しかし、それは見当違いだった。シーガル氏(AOLで新興プラットフォーム担当副社長として働いていたシリアルアントレプレナー。AOLはTechCrunchを買収し、最終的にはVerizonの一部となった)によると、TouchCastが会議ソリューションに使用している技術は、当初のビデオ製品のために構築した技術と本質的には同じであるという。

現在市場に出ているものよりも機能の少ない初期バージョンを発表した後、同社はUnreal Engineを使用してより優れた混合現実を実現するカスタム機能を加え、約半年の期間をかけて再編成を試みた。その結果、他社が主催するTouchCastを使用した会議に参加した参加者が、今度は自社のイベントのためにTouchCastを使用したいとアプローチしてくるようになり、そうした顧客の期待に応えられるような現在のバージョンが完成した。

シーガル氏は「当社が一夜にして成功を収めるためには、8年かかりました」とジョークをいう。

TouchCastが引用したGrand View Researchのデータによると、バーチャルイベントは2027年までに4000億ドル(約42兆円)規模のビジネスになると推定されており、参加する価値のあるイベント体験を構築しようと考える多数の企業が生まれている。

最近大規模な資金調達を行ったHopin(ホピン)やBizzabo(ビザボ)だけでなく、Zoomやグーグル、マイクロソフト、Cisco(シスコ)など、テレビ会議の大手企業もより充実したサービスを提供し始めている。

Accentureが、そうした企業の中でも特に興味深いTouchCastへの支援を決めたのも不思議ではない。

たとえ「ライブイベント」が再開したとしても、バーチャルの要素と、バーチャル体験がうまく機能し、見たくなるような魅力を持つだろうということへの期待は、リモートワークと同様に、今後も定着していくだろうという事実を多くの人々が理解して受け入れ始めているからである。

Accenture VenturesのマネージングディレクターであるTom Lounibos(トム・ルーニボス)氏は同社の発表中で、「デジタルディスラプション、分散型ワークフォース、顧客体験は、企業のビジネスのあり方を変革し、未来の働き方へと移行することへのニーズの原動力となっています。組織がバーチャル体験の力をうまく使いこなしてビジネスにインパクトを与えるためには、質の高いやりとりと洞察力が必要不可欠であることが今回のパンデミックで明らかになりました。TouchCastへの投資は、クライアントの重要なビジネスニーズに対応するために役立つ最新のテクノロジーを見極めるという当社のコミットメントを明確に示しています」と述べている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TouchCast混合現実ビデオ会議バーチャルイベント資金調達

画像クレジット:TouchCast

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:TechCrunch Japan)

企業向けバーチャルコミュニケーションプラットフォームのRocket.Chatが約20億円調達、米海軍そしてイスラム国も利用

Slackのようなチャットプラットフォームは、ビジネスユーザーが仕事上のコミュニケーションから何を求め、何を期待するかという点で、従来の流れを変える役割を果たしてきた。統合されたオープンソースに狙いを定めた会社が米国時間2月3日、その成長を加速するための資金調達を発表した。

Rocket.Chatはオープンソースのプラットフォームを手がけるスタートアップで、銀行、米海軍、NGO、その他大小さまざまな組織が、同社のサービスを活用して1つの場所から安全性の高い各種のバーチャルコミュニケーションサービスをセットアップし、運営している。チームチャットに加えて、顧客サービス、スタッフや外部パートナーをカバーするコラボレーションプラットフォーム、学校の教室、会議などにも対応する。このRocket.Chatが1900万ドル(約20億円)を調達した。

同社は今回調達した資金を、さらなる顧客の拡大に充てるとともに、セキュリティ機能の強化、ブロックチェーンアーキテクチャ上での連携、マーケットプレイスのアプリ、ボットのオプション、ソーシャルメディアとオムニチャネルの顧客サービスの統合、バーチャルイベント向けの設備拡充など、プラットフォームの機能を拡張するために活用する予定だ。

ビジネス上のやり取りがますますバーチャル化していく中、バーチャルコミュニケーションプラットフォームを構築するRocket.Chatのような企業がより多くの機能を実装する道が開かれてきている。

シリーズAの資金調達ラウンドはValor Capital Groupが主導しGreycroftMonasheesNEAによる強力な支援の他、e.venturesGraphene VenturesONEVCDGFの参加も得た。ブラジルのポルトアレグレを拠点とするこのスタートアップ(デラウェア州で法人化)は、現在までに2700万ドル(約28億円)を調達している。

「私たちはGabriel(ガブリエル・エンゲル氏、Rocket.Chatの創設者兼CEO)とRocket.Chatのことを数年前から知っており、彼らのオープンソースプラットフォームには非常に感銘を受けています。どのような組織でも、カスタマイズされたルックアンドフィールで独自のチャットツールを安全に管理することができます」 とValor Capital Groupでパートナーを務めるAntoine Colaço(アントワーヌ・コラソ)氏は述べている。「彼らは国際的な顧客ベースを通じて自社のプラットフォームの価値を証明しました。これには世界的な大企業や政府機関がクライアントとして含まれています。今回のラウンドの後も、同社の強力な顧客と開発者の成長が世界中に広がっていくことを期待しています」 。

Rocket.Chatは今回のラウンドでの評価額を明らかにしていないが、2020年の顕著な成長を反映していることは確かだ。同スタートアップは現在、1600万人の登録ユーザーを150カ国に擁しており、そのうち800万人が月間アクティブユーザーである。この1600万人のうち1130万人は過去6カ月内に同サービスに登録したユーザーだ。同社によると、現在約84万5000のサーバにインストールされており、1500人以上の開発者が同社のプラットフォーム上で開発を行っているという。

Rocket.Chatは、オープンソースプラットフォームへの大規模な取り組みの一環として、資金調達とビジネス拡大を進めている。

エンタープライズITの世界でオープンソースが約束しているのは、対象となる組織が必要とする用途に合わせてサービスをカスタマイズするプラットフォームを提供すると同時に、ビジネス環境でのセキュリティや拡張性などの面で十分に堅牢であることを確保するためのツールを備えていることだ。

ここ数年にわたって、これは大きなビジネスチャンスにつながるものとなっている。企業がITサービスに期待し、必要とするものがより洗練されてきていることから、既製のアプリケーションが必ずしも要求を満たすとは限らない場合もあるからだ。

Rocket.Chatはあらゆる通信ニーズに対応するオールインワン型の大型店舗のような存在であり、各組織はそれぞれの目的に合った方法でサービスを組み合わせている。

顧客自身がホストして管理することもできるし、クラウドベースのSaaSとして利用することもできる。料金は、顧客がどのサービスを利用したいか、ホストされているかどうか、およびプラットフォームの毎月の使用量によって異なり、無料(最小限のセルフホスティングサービスの場合)からユーザー1人当たり月額4ドル(約420円)、あるいはそれ以上となっている。

画像クレジット:Rocket.Chat

ここに示したモックアップからわかるように、基本的なプラットフォームはSlackに少し似ている。しかし、たとえば顧客サービスのためのオムニチャネル通信に使用している場合、顧客との通信に使用される可能性のある他のプラットフォームからの通信を組み込むことができるプラットフォームをRocket.Chat内に構築することが可能だ。

同社のワークコラボレーションプラットフォームは基本的なチャットインターフェイスからスタートするが、定期的に使う他のアプリやビデオ通話などへのアラートやリンクを統合することもできる。Rocket.Chat上に構築されたこれらの機能やその他の機能は別に使うこともできるが、顧客サービスのチケットを社内の技術サポートチームに渡すなど、相互にやり取りすることもできる。

つまり、組織自身がホストして管理できるバージョンを提供することで、組織の電子的なメッセージングに対するプライバシーと管理を強化できるということだ。

同社の何千もの顧客は、まさにそれを実現するソリューションを求めているわけだが、興味深い組織が顧客に名を連ねている。

CEOで創設者のGabriel Engel(ガブリエル・エンゲル)氏がTechCrunchに語ったところによると、そのリストには米海軍を含む軍事および公共部門の組織の他、クレディ・スイスのような金融サービス企業、コーネル大学、カリフォルニア大学アーバイン校、ビーレフェルト大学などの教育機関、ドイツ鉄道輸送網など、多数の民間企業が名を連ねているという。かつての顧客にはシティバンクやアリゾナ州も含まれている。

しかし、この柔軟性が常にRocket.Chatの有利に働くとは限らない。議論の余地はあるが、このリストには、メッセージを特定の利用者に限定したいと考えている対極的な種類の組織も含まれているようである。イスラム国もまた、メッセージ配信のためにRocket.Chatをホストし、運用していることが判明している。

エンゲル氏は、これは同社がサポートしているものではなく、当局と協力してこのようなユーザーを可能な限り排除しているものの、サービスの構築方法がもたらした結果だと説明する。

「彼らが独自のRocket.Chatサーバーを運用している場合、利用状況を追跡することはできません」と同氏はいう。「米海軍がRocket.Chatを使うのには理由があります。それは私たちが彼らが何をしているのかを追跡できず、知ることができないからです。良くも悪くも、いかなる外的影響からも切り離されています」。また、違法な組織がSaaSバージョンを使用している場合、当局と協力してそれらを削除するポリシーを同社は持っているとつけ加えた。「しかし、Linuxと同様に、Rocket.Chatを自分のコンピューター上でダウンロードして実行する場合は当然ながら私たちの手の届かないものとなります」。

意図的にプライバシーを確保して構築されたプラットフォームが悪用される可能性があると聞くと、悪用を防ぐ手立てはほとんどないように思われ、その利点の一部は打ち消されてしまうように見える。この倫理上の問題、およびテクノロジーがそれを解決できるかどうか、あるいはそれが政府当局に委ねられるかどうかは、Rocket.Chatだけでなく私たち全員にとっての問題であり続けるだろう。

そうした中で、それを必要とするグループに代替案を提供することに投資家たちの関心が集まっている。

「今日の環境において、組織は、チームを内部的に関与させ、顧客やパートナーと外部的に通信し、安全な利害関係に基づくコミュニティと接続するための安全な通信プラットフォームを持たなければなりません」とGreycroftでパートナーを務めるDylan Pearce(ディラン・ピアース)氏は声明の中で語った。「Rocket.Chatの世界クラスの経営チームとオープンソースコミュニティは、イノベーションにおいて業界をリードし、地球上のすべての人にサービスを展開できるコミュニケーションプラットフォームを提供するものです」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Rocket.Chat資金調達

画像クレジット:Rocket.Chat

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

カレンダーの使い方を再定義、コラボレーションツール化を目指すMagicalが約3.5億円調達

カレンダー。それは私たちの仕事や会議を整理する中心的な存在だ。しかしカレンダーの全般的なエクスペリエンスをモダナイズしようとする試みは常にあるものの、OutlookやGoogle Workspace(旧G Suite)のカレンダーのエクスペリエンスは現在も根本的には変わっていない。近年、CalendlyやReclaimAIなどのスタートアップが取り組んでいる分野は主にスケジューリングだ。

Magicalはテルアビブを拠点とするスタートアップで、カレンダーのエクスペリエンスを根本から作り直し、カレンダーを単なる個人の時間管理サービスではなくチームのコラボレーションツールにすることを目指している。米国時間2月18日、同社はResolute Venturesが主導するシードラウンドで330万ドル(約3億5000万円)を調達したと発表した。このラウンドにはIbex Investors、Aviv Growth Partners、ORR Partners、Homeward Ventures、Fusion LAそしてプロダクティビティ分野のエンジェル投資家が参加した。

このサービスのアイデアは、ワークスペースとプロダクティビティを扱う大きなコミュニティであるSupertoolsでのディスカッションから生まれた。Supertoolsも、Magicalの創業者でCEOのTommy Barav(トミー・バラブ)氏が始めたものだ。

画像クレジット:Magical

このコミュニティからのフィードバック、そして自身が手がけるFortune 500に名を連ねる巨大多国籍企業のコンサルティング業務から、バラブ氏は時間管理はビジネス上の未解決の問題であると認識した。同氏は筆者に対し「時間管理の分野は非常に細分化されています。時間を管理するための小さなツールやフレームワークはたくさんありますが、そうしたものはメインのワークフローであるカレンダーに組み込まれていません」と語った。

これまでのカレンダーは大きなプロダクト群のアドオンで、その中に閉じ込められているとバラブ氏は主張する。「Outlookのカレンダーはメールの相棒ですが、実は1日の中心です。このように、カレンダーを時間管理のハブとして使うという満たされていないニーズがあります」(同氏)。

Magicalはまだプライベートベータで、AIスケジューリングや自動化ツールなど最近のスケジューリングやカレンダーのスタートアップが取り組んでいる多くの機能の統合を目指している。しかしMagicalの野望はこれにはとどまらない。

画像クレジット:Magical

「まずはカレンダーの使い方を再定義したいと考えています。これまでのイノベーションの多くはスケジューリングに関するものでした。自分のスケジュールを立て、会議のスケジューリングを効率化し、カレンダーの表示を変えるといったことです。【略】しかし我々は優れたカレンダーを提供し、スケジューリングや調整、利用といったワークフローをカレンダーに組み込んで、時間管理を再定義しようとしています。モダンなワークスペースにおけるカレンダーの利用を再定義しているのです」とバラブ氏は説明する。

Magicalはまだスタートしたばかりで細部を作っているところだが、たとえばカレンダーを会議資料の中心的なリポジトリにするというのが大まかな考え方だ。資料の共同作業や共有のツールも搭載しようとしている。チームメンバーは会議に出席しなくても資料をフォローできる(あるいは会議に関するメールで入手できる)。

バラブ氏は「無駄な会議を減らすのに役立つでしょう。そのために、他のサービスもカレンダーのエクスペリエンスに統合しようとしています。一般的にはZoomやSlackですが、たとえばSalesforceやNotionなども考えられます」という。

Magicalに投資しているResolute Venturesの創業パートナーであるMike Hirshland(マイク・ハーシュランド)氏は「市場機会をこれほど明確に認識している起業家には滅多に出会えません。トミーとMagicalのメンバーは3年間にわたり多くのユーザーと話をして機会を認識し、市場のニーズに合うプロダクトをゼロから設計しました。今こそ『出発の時』であり、私はこのジャーニーの一員であることを嬉しく思っています」と述べた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Magicalカレンダー資金調達

画像クレジット:Magical

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Kaori Koyama)

ブロックチェーン活用し「唯一無二」のアニメ原画データなどを販売する「AniPic!」が4000万円調達

ブロックチェーン活用し「唯一無二」のアニメ原画データなどを販売する「AniPic!」が4000万円調達

アニメ作品のワンシーンや原画の高解像度デジタルデータを収集できるコレクションサービス「AniPic!」(アニピク!)などを運営するYUIMEX(ユイメックス)は2月19日、シードラウンドにおいて、第三者割当増資による約4000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、ANOBAKA(旧KVP)、iFund、Upstart Venturesの3社。

またAniPic!において、「攻殻機動隊 SAC_2045」の商品化を明らかにした。発売は2月下旬予定。

調達した資金により、AniPic!をはじめとするデジタルプラットフォーム構築や、マーケティングの強化を図る。AniPic!ブランドのテクノロジーを活かした新たなグッズプロダクトや、アニメ・マンガ作品向けのデジタル美術館サービスもAniPic!内にローンチを予定しているという。また近日中に「AniPic!ストア」をオープン、AniPic!ブランドの「メモリアルグッズ」、「テクノロジーグッズ」を展開予定。

ブロックチェーン活用し「唯一無二」のアニメ原画データなどを販売する「AniPic!」が4000万円調達

AniPic!は、「もっとダイスキなアニメを、いつも側に。」をサービスコンセプトとする、ブロックチェーン技術を利用したアニメコンテンツ販売サービス。AniPic!は、著作権者の許諾に基づきアニメ・マンガのワンシーンや原画の高解像度デジタルデータを販売しており、ファンは好みのデータをコレクションとして収集し楽しめるという。

AniPic!は、2020年11月にサービスを開始。フジテレビ系列のアニメ「GREAT PRETENDER」(グレートプリテンダー)の場面写真や設定資料などを「アニピク」こと「デジタル・ブロマイド」として販売している。

YUIMEXは、同サービスを進める市場背景として、インターネットやデジタルデバイスの普及によって、アニメやマンガなど創作物の著作権を侵害する事例が後を絶たず、1月1日の改正著作権法施行により、海賊版デジタルコンテンツのダウンロードが違法化された点を挙げている。

こういった状況においてYUIMEXのグッズ販売では、ブロックチェーン技術を使うことで、それぞれのユーザーが所有するデジタルブロマイドが唯一無二のものであることを証明できるという。これによりファンがクリエイターを支援できるだけでなく、市場を健全化を目指すとした。

2020年2月設立のYUIMEXは、「世界に結い目を、デジタルに愛を」というコーポレートビジョンの下、事業を展開。現在、ブロックチェーン技術を用いた価値証明を通じて日本が世界に誇るアニメ文化への、テクノロジーによる革新的アプローチを行うAni-Tech(Animation-Technology)領域を掲げている。

世界に新しいアニメ作品の価値を届け、世界中のアニメファンと日本のアニメ文化を結ぶサービスのさらなる拡大に向けて「ダイスキとダイスキの結い目を創り続ける」というミッションに挑戦していくとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:アニメーション(用語)資金調達(用語)ブロックチェーン(用語)マンガ(用語)YUIMEX日本(国・地域)

脱炭素で注目が集まるエネルギー貯蔵スタートアップをVolta Energy Technologiesが支援

エネルギーおよびエネルギー貯蔵素材の最大手数社の支援で、エネルギー系企業への投資とアドバイザリーサービスを提供するVolta Energy Technologies(ボルタ・エナジー・テクノロジーズ)は、1億5000万ドル(約158億5000万円)を目標とした投資ファンドをおよそ9000万ドル(約95億円)でクローズしたことが、同グループの計画に詳しい人たちの話でわかった。

このベンチャー投資ビークルは、これでEquinor(エクイノール)、Albermarle(アルベマール)、Epsilon(イプシロン)、Hanon Systems(ハンソン・システムズ)の4社からすでに約束されている1億8000万ドル(約190億1000万円)のコミットメントを補うこととなった。しかもそれは、これまでになくエネルギー貯蔵技術への関心が高まった時期とうまく重なった。

内燃機関と炭化水素燃料からの移行が本格的に始まると、各企業は、大量の電気自動車(EV)と、いまだ開発段階にある再生可能エネルギーの大量貯蔵に欠かせないコスト削減とバッテリー技術の性能向上を、こぞって追求するようになった。

「資本市場は、脱炭素に巨大な投資機会を見込んでいました」と話すのは、Voltaの創設者で最高責任者のJeff Chamberlain(ジェフ・チェンバレン)氏。

同社は、2012年、オバマ政権下の米エネルギー省トップとチェンバレン氏が話し合いを始めたときに出たアイデアから誕生した。それは、チェンバレン氏がアルゴンヌ国立研究所在籍中に米国政府のバッテリー研究コンソーシアムに参加し、米国屈指の研究所となるJCESR(エネルギー貯蔵研究共同センター)の開設を率いた際の経験が、Volta Energyへと進化した。そこでチェンバレン氏は、民間セクターの投資パートナーに向けて、国立研究所の最先端の研究を活用して民間企業が最高のテクノロジーを生み出すと売り込んだ。

チェンバレン氏によれば、官民双方の研究機関からのVoltaへの支援は強力なかたちで続いたという。トランプ政権下においてさえ、Voltaの主導力はますます力を増し、化学、電気、石油ガス、そして産業熱利用の各業界の大手企業から1億8000万ドルという長期投資につながるファンドへの出資を引き出すことができたと、同氏は話す。

同社の計画に詳しい人たちの話では、1億5000万ドルを目標とし、2億2500万ドル(約237億7000万円)を上限とするこの新規投資ファンドは、現在の投資ビークルを補い、バッテリー業界に大きな資金の流れを作ることで同社の火力をさらに高めるという。

チェンバレン氏は制限があることを理由に、この投資の具体的な内容や条件の説明は避けたが、同社にはバッテリーとエネルギー貯蔵に関連する技術に投資すること、そして「電気自動車の普及と太陽光発電や風力発電の普及を可能にする」と語った。

最初のクリーンテックブームの際に、Voltaの頭脳を支える人たちは、大量の善意の資金がお粗末なアイデアに注ぎ込まれ、商業的成功を見ることなく消えていった様子を目の当たりにしたとチェンバレン氏はいう。Voltaは、エネルギー貯蔵分野で研究者たちが取り組んでいる本物の投資機会に関する教育を投資家たちに施し、そうした企業に資金を投入することを目的に創設された。

「投資家たちがゴミ焼却炉に資金を投げ込んでいると、私たちは感じていました。それが脱炭素へ悪影響を及ぼしかねないとも気づいていました」とチェンバレン氏。「私たちの全体的な目的は、膨大な個人資産の投資先をを各人に指南し、燃え続けるゴミ焼却炉への資金投入を止めさせることにありました」。

このミッションは、バッテリー市場にさらに多くの資金が流入するようになって、さらに重要性を増してきたとチェンバレン氏はいう。

EV業界でのNikola(ニコラ)のPOに端を発したSPAC騒動は、QuantumScape(クアンタムスケープ)のバッテリー関連SPACへ繋がり、その他もろもろのEV関連のOPを招き、やがてはあらゆる方面で、EV充電およびバッテリー関連企業への投資額が吊り上げられた。

チェンバレン氏はVoltaのミッションを、バッテリーと電力管理のサプライチェーン全般にわたる市場への参入を待つ、もっとも優れた新生の技術に資金提供し、生産を確実に軌道にのせ、伸び続ける需要を満たす準備の手助けをすることだと考えている。

「エネルギー貯蔵エコシステムと、その底流にある技術的な課題を深く理解していない投資家は、明らかに不利な立場にあります」と、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)の元幹部であり、Voltaの初期の投資家でもあるRandy Rochman(ランディー・ロックマン)氏は声明の中で述べている。「Voltaの知識がなければエネルギー貯蔵の世界では何も起こり得ないと、私は非常に明確に理解しました。エネルギー貯蔵への投資機会を特定し落とし穴を避ける上で、彼らに勝るチームはありません」。

Voltaからの新しい資金は、すでにいくつもの新しいエネルギー貯蔵法と実現技術の支援に向けられている。そこには以下の企業が含まれる。急速充電が求められる場所に適応する、プルシアンブルーを応用した高出力で火災の危険性がないナトリウムイオンバッテリーを開発するNatron(ネイトロン)、使われていない電灯線を利用して電力を分配することで、再生可能電力の統合を最適化し、電力網でのエネルギー貯蔵を可能にするハードウェアを開発するSmart Wires(スマート・ワイヤーズ)、移動体と電力網の両方に使える全固体リチウムバッテリーを製造するIonic Materials(アイオニック・マテリアルズ)。同社のプラットフォーム技術も、5Gモバイルや充電可能なアルカリ電池といった他の成長市場にも革新をもたらす可能性がある。

関連記事:EVが制度面で追い風を受ける中、バッテリー会社が最新のSPACターゲットに

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:Volta Energy Technologiesエネルギー貯蔵再生可能エネルギー資金調達電気自動車

画像クレジット:NeedPix under a Public domain license.

原文へ](文:Jonathan Shieber、翻訳:金井哲夫)

人気の仮想通貨ウォレット・取引所・エクスプローラーBlockchain.comが約127億円調達

Blockchain.comは米国時間2月17日、1億2000万ドル(約126億8000万円)の資金調達を行ったことを発表した。同社は人気のある仮想通貨ウォレットのほか、取引所やブロックエクスプローラーなどを開発している。

今回の資金調達ラウンドには、Moore Strategic Ventures、Kyle Bass(カイル・バス)氏、Access Industries、Rovida Advisors、Lightspeed Venture Partners、GV(Google Ventures)、Lakestar、Eldridge他の投資家が参加した。全体では、同社は設立以来1億9000万ドル(約200億8000万円)以上の資金調達を行っている。

同社は元々はBlockchain.infoという名称で、ブロックエクスプローラーとしてスタートした。一般的にブロックエクスプローラーでは、Bitcoinのブロックチェーン上で発生した取引のハッシュ値を入力して、金額、手数料、確認回数、送信者と受信者のウォレットアドレスなどの詳細情報を得ることができる。時が経つにつれ、多様化してきたエクスプローラはより多くのブロックチェーンとよりさまざまな種類のデータのサポートを加え始めた。

Blockchain.comはその後、オープンソースのBitcoinウォレットを構築した。同社のウォレットは自己管理ウォレット(non-custodial wallet)であり、秘密鍵の管理は自分で行うことになる。他の自己管理ウォレットとしてはCoinbase WalletArgentZenGoなどがある。

多くの仮想通貨ユーザーは、取引所でBitcoinを購入し、取引所のアカウントにそれらを残しておくことを選択する。その場合、取引所がユーザーのために暗号資産を安全に保管するので、ユーザーはウォレットを管理しない。こうした委託管理ウォレット(custodial wallet)にはCoinbase.comBinanceKrakenなどがある。

どちらのソリューションにも、いくつかの利点と欠点がある。取引所がハッキングされたり、誰かがフィッシングでログイン情報を取得した場合、委託管理ウォレットにある資産は安全ではなくなる。

ユーザーの資産が自己管理ウォレットにある場合、秘密鍵を紛失してしまうと、ウォレットにアクセスできなくなってしまう。Blockchain.comや他の自己管理ウォレットプロバイダーは、いくつかの情報をバックアップすることで、ウォレットへのアクセスを失うリスクを軽減する方法を見つけている。

最近では、Blockchain.comが独自の取引所を開設し、ウォレットユーザーがより簡単に資産を取引できるようになった。また同社は機関投資家にもサービス提供を開始した。サービスには注文の執行、カストディ、融資、店頭取引などが含まれている。

Blockchain.comはまた、いくつかのメトリクスを共有している。同社のウェブサイトやモバイルアプリを利用して作成されたウォレットは、6500万に達した。2012年以降、Bitcoin取引の28%が、Blockchain.comが管理するウォレットで送受信されてきたという。

関連記事:ビットコインが初めて5万ドルの壁を突破、Coinbaseの直接上場が迫る

カテゴリー:ブロックチェーン
タグ:Blockchain.com資金調達

画像クレジット:André François McKenzie / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Aya Nakazato)

クリエイターと有料会員を結びつけビジネス構築をサポートするCircleが4.3億円調達

Clubhouseが注目を集めているが、個人で利用できる動画やオーディオのストリーミングプラットフォームの普及により、意欲的なユーザーはこれまでよるはるかに簡単にオーディエンスにリーチできるようになった。これによりクリエイターの活動がここ数年で爆発的に増加している。しかしクリエイター活動が持続可能なビジネスにするための鍵はなんといっても活動の規模による。十分な数の加入者を獲得すれば趣味やサイドビジネスとして始めた配信でも、あっという間にフルタイムの事業にできる可能性が十分ある。

Circleは約1年前、2020年1月にニューヨークを拠点として設立されたスタートアップで、クリエイターと有料サブスクライバーを結びつけ、できるかぎり簡単にビジネス構築ができるよう手助けする。2020年8月には150万ドル(約1億6000万円)のシード資金の調達に成功している。このときTechCrunchではCircleを取材してファウンダーのDNAがオンライン学習コースのTeachableに発していることを知った。以後、同社は非常に強力な初期段階の成長を示している。

同社は2021年1月に100万ドル(約1億500万円)以上の年間経常収益を達成した。現在の有料ユーザーは1000人以上で2000人に近づいている。同社によればエンゲージメントも急速に増加しており、DAU(1日あたりのアクティブユーザー)とMAU(1カ月あたりのアクティブユーザー)の双方で毎月40〜50%の成長を続けている。2021年1月にはiOSアプリをベータ版を終了し製品版をリリースしている。

共同ファウンダーでCEOのSid Yadav(シド・ヤダヴ)氏は、「我々はクリエイター運動、コミュニティ運動が活発化する適切なタイミングをうまくとらえました」と述べている。スタートアップの有料ユーザーは多くのYouTuberをはじめとして、学習コースのクリエイター、Twitchのストリーマー、Patreonのユーザーなどを中心としている。ヤダヴ氏は「プラットフォームのコミュニティの60%が個人クリエイター」と推定している。しかし、多くのブランドも興味を示し始めているという。

こうした有望な情報はすぐにベンチャーキャピタルの関心を集めることとなった。同社は4000万ドル(約42億3000万円)超の評価額で400万ドル(約4億2300万円)のシードラウンドを2020年末に完了したことを公式に発表した。先にプレシードラウンドをリードしたNotation Capitalが今回のラウンドもリードした。ただしNotation Capitalの出資額は4分の1だったという。

Circleのチームは世界各地からの20人に成長した(画像クレジット:Circle)

プレシードの投資の大きな部分はプラットフォームを利用している多数の起業家、クリエイターに割当られた。「もちろん一流企業から多数のオファーを受けましたが、我々はクリエイター向けプラットフォームであり、可能な限りこうしたユーザー自身に出資のチャンスを割り当てることが理に適っているので」とヤダヴ氏は述べている。同社によればラウンドの大部分はプラットフォームを利用しているエンジェル投資家とコミュニティビルダーに割り振られた。これにはAnne-Laure Le Cunff(アン-ローレ・ル・クンフ)氏、David Perell(デビッドペレル)氏、Tiago Forte(ティアゴ・フォルテ)氏、Nat Eliason(ナット・エリアソン)氏が含まれている。

会社が発展段階の早期にある点を考えると、プロダクト開発がなんといっても最優先事項だ。「私たちのアプローチは裁縫的です」とヤダヴ氏は述べた。Circleのコミュニティは「部品」を縫い合わせるページをレイアウトする。Circleサークルの主なモードは、コミュニティのメンバーがSpaceという場所で、お互いにトピックについて話し合うことができるスペースを介すことができるというものだ。Circleで構築されたコミュニティは、独自のドメインを利用できホワイトラベルとしてサードパーティが収益化できる。

Circleのコミュニティプラットフォームを利用することで、クリエイターはコンテンツを公開し、コミュニティに参加できる(画像クレジット:Circle)

Circleの最終的な目標は、ニュースレターやポッドキャストの公開から、動画ストリーミング、イベントチケット販売、商品通販、イベントカレンダーの設定まで、クリエイターがユーザーのニーズを満たすために必要なツールをすべて1つに統合することだ。しかもどのレイヤーであっても支払サービスができる。もちろん多くの機能は未実装で今後開発していかねばならない。しかも、ヤダヴ氏のチームはコア機能の大幅に拡大する野心も抱いている。

Circleのチームは現在20名。メンバーはヨーロッパ、インド、オーストラリア、および米国にいる。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Circle資金調達クリエイター

画像クレジット:hobo_018 / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:滑川海彦@Facebook

アプリ監視プラットフォームのSentryが約63億円調達、評価額は約1057億円を超えユニコーンに

アプリケーションパフォーマンスモニターを開発するスタートアップのSentryは米国時間2月18日、シリーズDで6000万ドル(約63億4000万円)を調達し、資金調達後の評価額が10億ドル(約1057億円)のユニコーンの地位に到達したと発表した。今回のラウンドをリードしたのはリターン投資家のAccelとNew Enterprise Associatesで、Bondも投資に参加した。

Accelは2015年にSentryのシード資金調達を主導し、それ以来各ラウンドに投資してきた。同社は6万8000の組織にサービスを提供し、これまでに合計1億2700万ドル(約134億2000万円)を調達している。クライアントにはDisney(ディズニー)、Cloudflare(クラウドフレア)、Peloton、Slack(スラック)、Eventbrite、Supercell(スーパーセル)、Rockstar Games(ロックスター・ゲームス)などがある。

Sentryのソフトウェアはアプリに潜在的な問題がないかどうかを監視し、サービス停止やダウンタイム、ユーザーの不満を招く前に開発者がバグを発見するのを助ける。シリーズDの資金はより多くの言語やフレームワークのサポートの追加、サンフランシスコ、トロント、ウィーンのオフィスでの雇用など、製品開発に使用される。

Sentryの製品は幅広い分野で使用されているが、ゲームやストリーミングメディアでは継続的な成長が見られ、金融、商業、ヘルスケアを含むインフラとサービスのデジタル化が進む業界で新たな需要が見込まれる。

2020年7月、SentryはPythonとJavascriptのフロントエンド監視ソフトウェアのローンチを発表した。当時、同社のMilin Desai(ミリン・デサイ)CEOはTechCrunchに対して、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界的流行によって仕事、教育、eコマースアプリの利用が増加したため、あらゆる分野の顧客がプラットフォームに大きく依存していると語った。

AccelのパートナーであるDan Levine(ダン・レヴィン)氏はプレスリリースで、「ほぼすべての企業がデジタルファーストの働き方や顧客とのやり取りを行うようになったことで、アプリケーションの健全性はビジネスクリティカルなイニシアティブとなり、Sentryは爆発的な成長を遂げる準備が整っています」と述べた。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Sentry資金調達ユニコーン

画像クレジット:Sentry

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(文:Catherine Shu、翻訳:塚本直樹 / Twitter