ソーシャルディスタンスの強制が続くことも大きな要因となってあらゆるコミュニケーションのリモート化は我々の社会、経済活動においてますます重要な地位を占めている。そこから利益を得ている企業には資金も集まってくるようだ。ゲーマーをはじめ多くの人に使われている人気チャットのプラットフォームであるDiscordがさらなる資金調達で1億4000万ドル(約144億8000万円)を調達し、月間アクティブユーザー数も1年前の2倍となる1億4000万人に達するという。
Discordに近い複数の情報源は今回のラウンドの会社評価額が70億ドル(約7238億円)だったと明かした。これはわずか6カ月前の評価額の2倍にあたる。
我々はDiscordがシリーズHラウンドの調達総額1億4000万ドル、評価額は70億ドルに達する見込みだと書いている。これは同社がデラウェア州当局提出した会社情報によるもので、最初に発見したのはPrime Unicorn Indexだった。つまりDiscordがすでに調達した1億ドル(約103億4000万円)にさらに4000万ドル(約41億4000万円)を調達する(そしておそらくはすでに調達した)ことを意味する(我々はアップデートでこの部分を確認した)。
Discordの共同創業者でCEOのJason Citron(ジェイソン・シトロン)氏は声明でこう述べた。
信じられないほど多様なコミュニティがDiscordを集まる場所に選び、驚くほどの成長を達成できたことを光栄に思い、また身の引き締まる思いをしています。2021年に向けて、無料サービスと有料のサブスクリプション、Nitrの双方をさらに改善するために調達した資金役立てる予定です。
今回のラウンドはGreenoaks Capitalがリードし、Index Venturesも参加していることを複数の情報源が確認している。Greenoaks Capitalの創業者でマネージングパートナーであるNeil Mehta(ニール・メタ)氏は次のように述べている。
(Greenoaksは)ゲームをプレイするにも、レシピを共有するにも、ビジネス上で共同作業するにもコミュニティが集まるのに最適な場所がDiscordだと信じています。これは人々の交流の方法が限りなくイノベーションを続け、成長し、最終的には世界中の何十億もの人々をつなぐ場所となるはずです。Discordチームとのパートナーシップを長期的な続けることができることは幸運です。
PrimeUnicornのレポートは、数週間前のTechCrunchの記事を裏づけてる。情報源は同社が2020年11月末に最大70億ドルの評価額でラウンドを実施中だと確認した(我々はこの評価額が事実かどうか確認しようとしている)。
今回のラウンドの情報はしばらく前から流れており、一部では「未公開のスタートアップの上場を準備する「プレIPOラウンド」だとしていた。Prime UnicornはDiscordの今回のラウンドでの1株あたりの評価価格は280.2487ドルで、シリーズGでは144.1809ドルだったとしている。
同社の既存投資家はGreylock、IVP、Spark Capital、Tencent、Benchmarkなどだ。ラウンドHの1億4000万ドルを含めてスタートアップが調達した総額は4億2000万ドル(約434億3000万円)になる。
これほど大規模な資金調達は、コミュニケーションのためのバーチャルチャンンルが現在の我々の生活の重要な部分だというの証であるのはもちろんだが、Discord自体の急成長をも意味する。
Discordはもともと人気オンラインゲームをプレイする際のコミュニケーションチャネルだった。簡単にいえば、誕生当初はゲームの副産物だ。ジェイソン・シトロン氏とStanislav Vishnevskiy(スタニスラフ・ヴィシュネフスキー)氏はHammer&Chiselゲームスタジオの一部として、ゲーム(自身で開発したものはもちろん、サードパーティーのゲームも含めたすべてのゲーム)をプレイしながら戦術その他の情報を共有するツールとしてスタートした。
Amazon(アマゾン)が提供するゲームストリーミングサービスのTwitchやeスポーツののプラットフォームでは、プレイヤーと観客の双方が「今画面で何が起きてきるのか」についてリアルタイムで解説が得られる場所を持つことが特に重要になる。
今や本格的ゲームだけでなくカジュアルゲームも、マスマーケットをターゲットとしなければならない。そこでゲーマーのコミュニケーションツールも大規模化が自然の流れとなる。事実、Discordの成長は爆発的で、月間アクティブユーザー数は2020年は2倍の1億4000万人に達し、1日あたりのダウンロード数は80万に上るという。
DiscordはAmongUsのようなバイラルに人気が出たゲームで使われており、ゲーム以外の用途にも拡張されている。こうしたことが追い風の要因だろう。
同社は2020年初めに35億ドル(約3618億7000万円)の評価額で1億ドル(約103億4000万円)を調達しており、その時点でシトロン氏とヴィシュネフスキー氏は、Discordのプラットフォームがすでにゲームという分野を超えた存在になっていることを示唆した。両氏はこう述べている。
多くのユーザーにとってDiscordはもはやビデオゲームの付随サービスではないことが判明した。これは情報の交換にせよ、充実した時間を過ごすためにせよ、 単に親しい友だちと居心地よく会話するためにせよ、Discordが最適なツールとなっている。
しかしながら、ゲーム世界の外への成長は同時に痛みをともなうものでもあった。Discordは、プラットフォームで白人至上主義のような不快なメンバーと戦わざるを得なかった。同社はこうした戦いは峠を過ぎており、プラットフォーム上にBlack Lives Matterの主催者もいるし、そもそも非政治的なソーシャルメディアのインフルエンサーも多いと主張している。ただしすべての批判者を納得させるところまではいっていないようだ。まだ過去の話ではなく引き続き取り組むべき課題なのだろう。しかしこれは他のソーシャルプラットフォームも同じだ。
Data & Society Research Instituteのメディアバイアスの上席研究員であるJoan Donovan(ジョーン・ドノヴァン)氏は、数年前にSlate のインタビューで「Discordはが暴露や嫌がらせキャンペーンの組織化の中心」になっていると非難した。
ラウンドGの直後にラウンドHで1億4000万ドルもの資金調達が実施できたことは興味深い。同社とその投資家はDiscordがゲーマーだけでなく、オンラインに参加している多くの々のために優れたコミュニケーションのプラットフォームとなる明確な野心を持っていまる。ただしこれは巨額の資金を要する野心だ。
しかし野心の一部はすでに実現されている。Discordの画面共有機能がデスクトップからiOSとAndroidアプリに拡張されるという最近のニュースがいい例となる(Twitterが最近Squadを買収したことに似ている)。
ラウンドHの1億ドルの資金調達をリードしたIndexVenturesのDanny Rimer(ダニー・リマー)氏、「Facebookのように投稿をそのまま表示するのではなく、(Discordは)コンテキストを含めたコミュニティにおける有体験を提供します。Slackがビジネスチャットで果たしている役割をDiscordはソーシャル分野の会話で果たすでしょう」と述べている。
なおPrime Unicorn は、シリーズHラウンドでは「精算時に残余財産があった場合の分配をすべてのラウンドの参加者を同一権利として扱うパリパス方式によるものとしていることに注意するよう」促している。
Prime UnicornIndex_Discord_COI_12112020(デラウェア州提出文書・PDF)
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画像クレジット:Discord
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(翻訳:滑川海彦@Facebook)