日々のプロセスを自動化、開発者が重要なタスクに集中できるようにするツールのRaycastが約16.9億円調達

開発者向け生産性向上ツールのRaycast(レイキャスト)は、Accel(アクセル)とCootue(クーチュ)を中心としたシリーズAで1500万ドル(約16億9100万円)の資金を調達した。また、このラウンドには、エンジェル投資家として、Hopin(ホピン)のCEO兼創業者であるJohnny Boufarhat(ジョニー・ブファルハット)氏、Stripe(ストライプ)の製品責任者であるJeff Weinstein(ジェフ・ワインスタイン)氏、GitHub(ギットハブ)の元CTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、Checkout.com(チェックアウト・ドットコム)のCTOであるOtt Kaukver(オット・カウクバー)氏などが参加した。

Raycastは、元Facebook(フェイスブック)のソフトウェアエンジニアであるThomas Paul Mann(トーマス・ポール・マン)氏とPetr Nikolaev(ペトル・ニコラエフ)氏によって2020年に設立された。彼らは、異なるSaaSツール間で開発者が継続的にコンテキストスイッチを行うことで日々失われる時間を取り戻す方法を模索していた。

「私たちが会社を始めたのは、コンピューターとの向き合い方を改善したいと思ったからです。私たち自身も開発者として、ほとんど価値を提供しない忙しい作業に多くの時間を費やしていることに気づきました。むしろもっと重要な仕事に時間を費やしたいと思ったんです。これがRaycastの前提であり、仕事を早く終わらせるためのツールを提供します」RaycastのCEOであるトーマス・ポール・マンは、TechCrunchのインタビューに答えている。

Raycastは、コマンドラインにインスパイアされたインターフェースにより、開発者が情報を見つけ、更新することを容易にすることを目的としている。このプラットフォームは、日々のプロセスやタスクの自動化を可能にし、開発者が重要なタスクに集中できるようにする。このデスクトップソフトウェアは「Superhuman」や「Command E」などの同業他社を参考にしており、ユーザーはキーボードショートカットを使ってすばやくデータを引き出し、修正することができる。ユーザーは、Jiraでの課題の作成や再修正、GitHubでのプルリクエストのマージ、ドキュメントの検索などを簡単に行うことができる。基本的に、Apple(アップル)のSpotlight検索の開発者向けバージョンであり、ソフトウェアエンジニアが開発作業以外のすべての部分を単一のツールを使って操作できるようにすることを目的としている。

Raycastの成長に関して、わずか12カ月で、2020年10月に130人だったデイリーアクティブユーザーを現在までに1万1000人以上に増やし、その間に2000万以上のアクションがプラットフォーム上で実行されたと述べている。チームは現在12名のメンバーで構成されており、年内にはさらに多くの人材が入社する予定だ。

また、Raycastは、エクステンションAPIとストアをパブリックベータ版として公開し、開発者がカスタムエクステンションを構築し、チームやコミュニティで共有できるようにした。同社によると、このベータ版では、1カ月間にコミュニティが100以上のエクステンションを構築し、Figma、GitHub、Chrome、Notion、YouTube、Twitterなどのサービスにも接続しているという。Raycastは現在、エクステンションAPIとストアを公開し、世界中の開発者に開放している。

画像クレジット:Raycast

マン氏は、今回の資金調達について、Raycastは開発者の生産性向上分野のリーダーになりたいと語っている。「それが、今回の資金調達の目的です。今回の資金調達は、チームの規模をさらに拡大するために使用します。私たちは、このプラットフォームを誰もが利用できるようにして、誰もが望むツールを構築できるようにしたいと考えているんです」と述べている。

Raycastは今回の資金調達を利用して、開発者やツールのコミュニティの構築に注力し、プラットフォームの成長を加速させるとともに、チームレベルでのRaycastの導入も計画している。同社は今後も個人の開発者に重点を置いていくが、生産性向上のためのツールやワークフローを他の人と簡単に共有できるようにすることにも可能性を見出している。米国時間11月30日より、企業は早期アクセスプログラムに登録して、チーム向けの新機能を利用できるようになる。ユーザーは、チームのニーズに合わせてカスタムエクステンションやリンクを構築・配布できる、独自の社内ストアを作成することができるようになる。

「チームはエクステンションを構築し、それをチームメンバーと個人的に共有することができます。カスタムセットアップで生産性を向上させる社内ツールがあれば、チームメンバーも恩恵を受けることができるよう、それをチームメンバー内に共有することができます。これにより、チームとしての生産性を維持し、普段抱えている忙しい業務に費やす時間を節約することができます」とマン氏は語る。

RaycastのシリーズA資金は、2020年10月に行われた270万ドル(約3億円)のシードラウンドに続くものだ。今回のラウンドは、Accelがリードし、YC、Jeff Morris Jr.(ジェフ・モリスJr.)氏のChapter One(チャプター・ワン)ファンド、さらにエンジェル投資家のCharlie Cheever(チャーリー・チーバー)氏、Calvin French-Owen(カルヴィン・フレンチ・オウエン)氏、Manik Gupta(マニック・グプタ)氏が参加した。

AccelのパートナーであるAndrei Brasoveanu(アンドレイ・ブラソヴェアヌ)氏は「Raycastへのシード投資を担当して以来、Raycastが開発者コミュニティで成長し、牽引していることに感銘を受けてきました。これは、Raycastが開発者にとって不可欠なツールになる可能性を秘めているという当初の確信を裏付けるものであり、APIやストアの立ち上げやチームへの拡大によって、チームがさらに前進することに期待しています。我々は、トーマス氏とペトル氏の野心的な冒険を引き続きサポートできることをうれしく思います」と述べている。

画像クレジット:Raycast

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

どんな企業でもAIが使えるようになるツールを提供するH2O.ai、約1810億ドルのプレマネー評価で約123億ドルを調達

H2O.aiは、オープンソースのフレームワークと独自のアプリケーションを開発し、あらゆる企業が人工知能ベースのサービスを簡単に構築、運用できるようにするスタートアップである。AIアプリケーションがより一般的になり、テック企業以外の企業もAIを取り入れたいと考えるようになっていることもあり、同社への関心が一気に高まっている。そんなH2O.aiが今回、同社の成長を促進するために1億ドル(約122億8000万円)を調達。今回の資金調達により同社の価値は、ポストマネーで17億ドル(約1918億4000万円)、プレマネーで16億ドル(約1805億5000万円)となった。

今回のラウンドはシリーズEで、戦略的支援者であるCommonwealth Bank of Australia(CBA、オーストラリア・コモンウェルス銀行)がリードしている。CBAは同スタートアップの顧客でもあるのだが、今回の支援を利用して両者のパートナーシップを深め、新しいサービスを構築していく予定だ。今回の資金調達には、Goldman Sachs(ゴールドマン・サックス)、Pivot Investment Partners(ピボット・インベストメント・パートナーズ)、Crane Venture Partners(クレーン・ベンチャー・パートナーズ)、Celesta Capital(セレスタ・キャピタル)などが参加。今回の資金調達を活用し、H2O.ai全体の製品をさらに充実させ、同社のH2O AI Hybrid Cloudプラットフォームの拡大を続けるために人材を採用することなどが計画されている。

顧客が戦略的支援者としてラウンドをリードしたのは今回が初めてではなく、2019年にはGoldman Sachsが同社シリーズDの7250万ドル(約81億8000万円)をリードしている。PitchBook(ピッチブック)のデータからも見られるように、H2Oの評価額は4億ドル(約451億3000万円)と評価されていた前回のラウンドから飛躍的に上昇しており、同社の成長率、そして同社が行っていることに対する一般的な需要の大きさがうかがえる。マウンテンビューに本社を置くH2O.aiは、これまでに2億4650万ドル(約278億円)を調達している。

関連記事:AI利用のハードルを下げるH2O.aiがゴールドマンサックスのリードで約77億円調達

直近2回のラウンドがいずれも、H2O.aiの顧客でもある大手銀行が主導しているという事実は、同スタートアップにとってのチャンスがどこにあるかを物語っている。以前、Workday(ワークデイ)に買収されたPlatfora(プラットフォラ)の共同創業者で、同社創業者兼CEOのSri Ambati(スリ・アンバティ)氏がメールで筆者に話してくれたところによると、現在同社のレベニューの約40%は、非常に広範で包括的な金融サービスの世界からもたらされているという。

「リテールバンキング、クレジットカード、ペイメントなど、PayPal(ペイパル)からMasterCard(マスターカード)までのほとんどすべての決済システムがH2Oの顧客です」と同氏。株式の分野では、債券、資産運用、住宅ローン担保証券などのサービスを提供している企業の数々がH2Oの技術を利用しており、MarketAxess(マーケットアクセス)、Franklin Templeton(フランクリン・テンプルトン)、BNY Mellon(バンク・オブ・ニューヨーク・メロン)も「強力な」顧客であると述べている。

また、他の業種からのビジネスも増えているという。Unilever(ユニリーバ)やReckitt(レキットベンキーザー)、P&G(プロクター・アンド・ギャンブル)などの消費財、UPS(ユナイテッド・パーセル・サービス)などの物流配送、Chipotle(チポトレ)などのフードサービス、そしてAT&T(エーティーアンドティー)は「当社の最大の顧客の1つです」と話している。

同社の成功には新型コロナウイルスの存在もひと役買っている。

パンデミックを振り返り「製造業はサプライチェーンの混乱とデマンドセンシングにより、急成長を遂げました。我々はH2O AI Healthを立ち上げ、病院やプロバイダー、Aetna(エテナ)のような支払会社、製薬会社の顧客を支援したのです」と話している。

注目すべき点は、自社のワークフローにAIを導入して、自社の顧客にサービスを提供したいと考えている他の技術系企業との連携をH2O.aiが強化しようとしていることである。「バーティカルクラウドとSaaS ISVが最近の私たちの勝因です」。

同社は設立当初からH2Oと呼ばれるオープンソースのサービスを提供しており、現在では2万社以上の企業に利用されている。人気の理由の1つはその柔軟性にある。H2O.aiによると、同社のオープンソースフレームワークは、既存のビッグデータインフラ、ベアメタル、または既存のHadoop、Spark、Kubernetesクラスタの上で動作し、HDFS、Spark、S3、Azure Data Lakeなどのデータソースから、インメモリの分散型キーバリューストアに直接データを取り込むことができるという。

「当社のオープンソースプラットフォームは、お客様が独自のAIセンターオブコンピタンスとセンターオブエクセレンスを構築するための自由と能力を提供します。AIを山に例えると、私たちはお客様が山を征服するのを支援するシェルパのTenzing Norgay(テンジン・ノルゲイ)氏ようなものです」とアンバティ氏は同社のオープンソースツールについて話している。

エンジニアはカスタマイズされたアプリケーションを構築するためにこのフレームワークを使用することができるが、一方でH2O.ai独自のツールは、次に何が起こるかについてより良い洞察を得るために大量のデータを取り込むことで利益を得ることができる不正検知、解約予測、異常検知、価格最適化、信用スコアリングなどの分野においてより完成度の高いアプリケーションを提供している。これらのアプリケーションは、人間のアナリストやデータサイエンティストの仕事を補完するものであり、また場合によっては人間が行う基本的な作業を代替することも可能だ。現在、トータルで約45のアプリケーションが存在する。

将来的にこのようなツールを増やしていき、各分野の「アプリストア」でそれぞれの需要に合わせた独自の事前構築済みツールを提供していく計画だとアンバティ氏は話している。

H2O.aiの成長の原動力となっているトレンドは数年前から勢いを増している。

人工知能にはエンタープライズITの世界から大きな期待が寄せられている。機械学習、自然言語処理、コンピュータビジョンなどのツールをうまく活用すれば、生産性を向上させることができるだけでなく、企業にとってまったく新しい分野を切り開くことも可能となるからだ。長期的には、企業の運用コストやその他のコストを何十億ドルも削減することができるだろう。

しかし大きな問題として、多くの場合、組織にはAIを使ったプロジェクトを構築および遂行するための社内チームが不足していることが挙げられる。ニーズやパラメータの進化に伴い、インフラもすべて更新する必要があるのである。今やテクノロジーは企業のすべてに関わっているが、すべての企業がテック企業というわけではない。

H2O.aiは市場におけるこのギャップを埋めることを目的とした最初の、あるいは唯一のスタートアップではないが、他のスタートアップよりもこのタスクにおいて幾分か先を行っている。

Microsoft(マイクロソフト)やNVIDIA(エヌビディア)などの大手テック企業からの多額の資金提供と賛同を得て設立されたのがカナダのElement.AIだ。同社はAIを民主化してAIツールを構築・運用するためのリソースが不足していても企業がAIから恩恵を受けることができるようにし、AIを推進する多くのテック企業にビジネスを奪われないようにするというアイデアに取り組んでいた。同社はインテグレーションに重点を置いていたものの(AccentureのAIサービスのように)、コンセプトからビジネスへと大きくジャンプすることができず、最終的には2020年にServiceNow(サービスナウ)に買収され、企業向けのツールを構築する同社の取り組みを補完することになったのである。

アンバティ氏は、H2O.aiのビジネスのうちサービス分野はわずか10%程度で、残りの90%は製品によるものだと話しており、あるスタートアップのアプローチが成功し、別のスタートアップが失敗する理由を説明してくれた。

「データサイエンスやAIのサービスに魅了されるのは当然です。私たちの製品のメーカー文化に忠実になり、なおかつお客様の深い共感を築いて耳を傾けることが成功には欠かせません。お客様は当社のメーカー文化を体験し、自らもメーカーになる。私たちは継続的にソフトウェアをより簡単にし、AI Cloudを通じてローコード、再利用可能なレシピ、自動化を民主化してデータパイプライン、AI AppStoresを構築し、お客様が顧客体験、ブランド、コミュニティの改善に利用できるサービスとしてAIを提供しています」。

「私たちは単なる木ではなく森を育てているということが他社との大きな違いです。H2O AI Cloud、ローコードアプリケーション開発であるH2O Wave、H2O AI AppStores、Marketplace、H2O-3 Open Source MLは、すでにAIアプリケーションとソフトウェアの中核をなしており、私たちは顧客とそのパートナーや開発者のエコシステムと提携しています」。

これは投資家にも好評なプレーであり、ビジネスでもある。

CBAのCEOであるMatt Comyn(マット・コミン)氏は、声明中で次のように述べている。「オーストラリア・コモンウェルス銀行は、毎日収集される数百万のデータポイントという大きな資産を保有しています。H2O.aiへの投資と戦略的パートナーシップは、人工知能における当行のリーダーシップを拡大し、最終的には当行が最先端のデジタル提案や再構築された商品およびサービスを顧客に提供する能力を高めてくれることでしょう」。CBAのチーフデータ&アナリティクスオフィサーであるAndrew McMullan(アンドリュー・マクマラン)博士が、H2O.aiの取締役会に参画する予定となっている。

画像クレジット:Mario Simoes / Flickr under a CC BY 2.0 license.

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

絶えず変化するモバイルアプリ開発を支援、特化するBitriseが約68億円調達

世界中でますます多くの人々が、スマートフォンからあらゆることを行うようになっているため、それに合わせて、より優れたアプリをiOSおよびAndroid向けに構築する能力も必要とされている。Bitrise(ビットライズ)は、このような人々のモバイルに対する需要と、企業がアプリを迅速に提供する能力との間にあるギャップを解消し、すべての調整要素と複雑さのバランスをとるために役立つ最適な企業となることを目指している。

モバイルDevOps(デブオプス)企業のBitriseは、米国時間11月23日、シリーズCラウンドで6000万ドル(約68億円)の資金を調達したことを発表した。このラウンドは、Insight Partners(インサイト・パートナーズ)が主導し、既存投資家のPartech(パーテック)、Open Ocean(オープン・オーシャン)、Zobito(ゾビト)、Fiedler Capital(フィードラー・キャピタル)、Y Combinator(Yコンビネータ)などが参加した。

このリモートファーストの会社は、2014年10月にBarnabas Birmacher(バルナバ・バーマチャー)氏、Daniel Balla(ダニエル・バッラ)氏、Viktor Benei(ヴィクター・ベネイ)氏が共同で設立した。2017年に320万ドル(約3億6000万円)のシリーズAラウンドを実施し、2019年にはシリーズBで2000万ドル(約22億7000万円)の資金を調達している。今回の新たな調達は数週間で計画・実行され、Bitriseの資金調達総額は1億ドル(約113億円)近くになったと、CEOのバーマチャー氏はTechCrunchに語った。

ブダペストに本社を置くBitriseは、2年前にY CombinatorのGrowth Program(グロース・プログラム)を経て会社の規模を拡大。現在では従業員を3倍に増やし、ロンドン、サンフランシスコ、ボストン、大阪にオフィスを開設している。

「モバイルは、この12カ月で2年分も3年分も進歩しました」と、バーマチャー氏はいう。「このことは、企業が競争力を維持するために、モバイルを利用しなければならないことを意味します。しかし、モバイルの開発はますます複雑になっています」。

開発者はプロセスの実行に追われ、顧客のために新しい価値を創造することに十分に集中できないと、同氏は付け加えた。

Bitriseが目指しているのは、モバイル開発のためのエンド・ツー・エンドのプラットフォームを構築することだ。このプラットフォームは、中核となるワークフローを自動化して、リリースサイクルを短縮し、新しいコードの部分が、実行中のアプリにどのような影響を与えるかをリリース前に把握できるようにすることで、企業が次のビッグリリースを顧客に提供することに集中できるようにする。

現在までに、6000以上のモバイル企業から、10万人以上の開発者がBitriseを利用している。同社の収益は前年比で倍増しており、エンジニアリング、プロダクト、セールス、グロースの各チームで働く従業員を、現在の160人から300人に増やすことを計画している。

新たに調達した資金を使って、Bitriseは人材の採用に加え、開発者が継続的インテグレーションとデリバリーの領域で、より容易に業務を行うことができるように、また、DevOpsのライフサイクル全体で可観測性を高められるように、製品を拡大していく予定だ。

今回の投資の一環として、Insight PartnersのバイスプレジデントであるJosh Zelman(ジョシュ・ゼルマン)氏がBitriseの取締役に就任し、同じくInsight PartnersのバイスプレジデントであるMatt Koran(マット・コラン)氏が取締役会のオブザーバーとして参加する。

「Bitriseは、8年前に設立されて以来、モバイルにおける現在の状況に向けて事業を築き上げてきました」と、ゼルマン氏は書面による声明の中で述べている。「モバイルは、世界中の人々にとって、コミュニケーション、エンターテインメント、商取引の主要な手段となっています。そしてBitriseは、企業がかつてないほどのペースでモバイルのイノベーションに対応していくことを可能にしてきました。Bitriseはモバイルのために設立された企業であり、同社はモバイルDevOps分野のリーダーとなっています」。

画像クレジット:Anna Lukina / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

開発者が適切な機械学習モデルを見つけられるようにするCatalyzeXが約1.9億円調達

電気自動車の駆動用などで需要が高まるネオジム磁石、NIMSが最小限の実験と機械学習による最適な製作条件の予測に成功

機械学習の利用が爆発的に増えている今日では、モデルの数もたいへん多く、デベロッパーは選択に苦労している。Googleで検索しようとしても、それは機械学習のモデルを検索するために設計された検索エンジンではない。そこで、CatalyzeXが登場した。それは、デベロッパーが抱えるデータにもっとも適したモデルを見つけるのを助けてくれるだけでなく、単純なインターフェースでそのコードへの直接のリンクを提供する。

このアーリーステージのスタートアップが米国時間11月16日、164万ドル(約1億9000万円)のシードラウンドを発表した。Unshackled Ventures、Kepler Ventures、On Deck、Basecamp Fund、Abstraction Capital、Unpopular Ventures、Darling Venturesそして多くの業界のエンジェルたちが参加している。

同社の共同創業者である2人の兄弟、Gaurav Ragtah(ガウラヴ・ラグタ)氏とHimanshu Ragtah(ヒマンシュウ・ラグタ)氏は、すでに大量の研究が為されていることを見て、デベロッパーが現在、持っているデータと目的に最もふさわしいモデルを容易に見つけられるためのツールを作ろうと思い立った。

CEOのガウラヴ・ラグタ氏によると「私たちが作ったプラットフォームは、特定のユースケースに適したさまざまなテクニックと利用可能なモデルをすべて簡単に検索して、ワンクリックでそのコードへジャンプできる。これまでのように『良いテクニックを見つける』ことと、『それを実際に実装しているコードを見つける』ことの間にある苦労を少なくします」という。

CatalyzeXの検索結果ページ(画像クレジット:CatalyzeX)

目的に応じて最適を発見する、それは、どんなタイプの調査にもいえることだが、若きスタートアップである彼らが機械学習に集中したのは、応用範囲が極めて広いからだ。このようなプラットフォームを構築する経験を通じて彼らは、どのユースケースにはどんなタイプの調査研究が最も適切かを知り、ユーザーにとってもっとも適切なものを自動的に浮かび上がらせる。

同社の各週のアクティブユーザーは3万ほどだが、ユーザーの研究調査のタイプとそれに適したモデルを正しく精密にマッチングできるためには、いわゆる臨界質量に達することが必要だ、と彼らも知っている。そこで当面彼らは、そのツールに組み込んだ技術、たとえばクローラーとかアグリゲーターなどを利用して、そのプロセスをより活性化している。

兄弟は、1940年代後期に英国がインドとパキスタンを分割したときの難民たちのためのニューデリーの地域で生まれ育った。祖父母たちがそこに入植し、最初はテント生活だったがやがて家を建てた。ガウラヴ氏は2009年に奨学金で渡米し、その後、ヒマンシュウ氏も後を追った。2人は米国のテクノロジー企業に就職し、機械学習のプロジェクトで仕事をした。そして、そこで見た調査研究の問題点から、それらを解決するソリューションとしてCatalyzeXを着想した。

現在、社員は彼ら2人だけだが、そのアイデアが実を結ぶことを期待して人を増やし、ツールを構築していくつもりだ。彼ら自身の出自からして、雇うのはマイノリティの人たちにしたいと考えている。

「ありとあらゆる背景を抱えた人たちと仲良くしたいといつも努力をしてきましたが、人を雇うという話ならそのための求人求職パイプラインで、多様なバックグラウンドの人びとを見つけるしかありません。ベストの人材を多様なバックグラウンドから見つけられなかったら、それは私たちにとっての不利になります」と彼は言っている。

同社のウェブサイトからツールにアクセスできる。また、ChromeとFirefox用のブラウザーエクステンションもある。

画像クレジット:Jonathan Kitchen/Getty Images

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(文:Ron Mller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Slackがワークフロー構築を容易にする開発者向けのビルディングブロック機能を発表

Slackは、Slack内でアプリケーションを動かして面倒な切り替えを減らすことで、常にコミュニケーションツールとして差別化してきた。米国時間11月16日のSlackのFrontiersカンファレンスでは、新しいビルディングブロックによるアプリ統合の進化が発表される。ビルディングブロックとは開発者が構築するパッケージ化されたワークフローのコンポーネントで、ビルディングブロックをつなぎ合わせて使うことができる。

Slackのプロダクトマネジメント担当シニアバイスプレジデントであるSteve Wood(スティーブ・ウッド)氏は、再利用可能なビルディングブロックを提供しようとしたため、新しいアプローチではプラットフォーム全体を再設計する必要があったと語る。これまで開発者はSlack内のアプリを作ることができ、それは開発者の意図の通りに動作した。新しいビルディングブロックはユーザー側がコントロールできるため、プラットフォーム全体がもっと利用しやすく、カスタマイズ可能になるはずだ。

ウッド氏は「この新しい世界で、我々はまさに(プラットフォームを)リミックス可能なものとして前進させていきます。ユーザーがアプリをインストールするとビルディングブロックを利用できるようになり、ビルディングブロック同士をつないで、チャンネル内でビルディングブロックがお互いにやりとりできるようになります。ビルディングブロックをつなげば、やりたいことのために必要なワークフローを構築できます」と説明した。

画像クレジット:Slack

同氏は、業務に必要なアプリがどんどん増えていくことを背景にこのアプローチが生まれたとし、今後はSlackのワークフローの中でアプリをつなぎ合わせて目的のタスクを選択できるようになると述べた。ユーザーがSlack内で、あるいはSlack以外のアプリを切り替えを余儀なくされるのではなく、ソフトウェアがユーザーに代わって仕事をする。

ウッド氏は、Slack内で障害に関するZendeskのヘルプデスクチケットが発行される例を挙げている。自動化された緊急対応ワークフローが動き出して、PagerDutyのアラートが発せられ、重要人物を集めたZoomミーティングが自動で始まり、Boxから緊急対応チェックリストが引き出され、インシデントに関する記録を取るためにGoogleドキュメントで書類が開く。

ツール自体は開発者がファンクションとトリガーを構築するためのインターフェイスで、開発者はSlackの新しいコマンドラインインターフェイスで開発ができる。トリガーによってワークフローを動かすファンクションが開始される。構築したものは単独のアプリとしてもビルディングブロックとしても保存でき、開発者は複数のビルディングブロックをつなぎ合わせることもできる。

CCS Insightのアナリストでワークフローのトランスフォーメーションを担当するAngela Ashenden(アンジェラ・アシェンデン)氏は、Workflow BuilderツールとともにSlackの統合機能をすでに使っている企業にとってこのアップデートは好ましいはずだという。

アシェンデン氏は次のように説明する。「この新機能はアプリとワークフローを作成するプロセスの高速化を目指しています。プロセスのさまざまなパーツ間のギャップを埋め、テック系か非テック系かにかかわらず誰もがこれまでよりも簡単にワークフローを構築し、日々のワークフローを共有して利用できるようになるでしょう。目的は従業員がワークフローをアドホックで、あるいは個人のプロセスで利用できるようにすることであり、チームのプロセスももっと明確にすることです」。

IDCのアナリストでソーシャルやコラボレーション分野を調査するWayne Kurtzman(ウェイン・カーツマン)氏は、ビルディングブロックのコンセプトは必ずしも目新しくはないものの、これによりSlackは組織内でワークフローを動かし、単なるコミュニケーションを超える場としてさらに幅広くアピールするだろうと述べた。

カーツマン氏は「Slackにはこれまでにも(統合の)機能があり、ブロックのおもちゃのように簡単に作れることを狙っていました。使いやすくて再利用でき、またユーザーがオートメーションへの理解を深めていくことで、この機能はさらに幅広く使われるだろうと私は予想しています」と語った。

ウッド氏は、数日中にプライベートベータを公開するが、最終的にはビルディングブロックのライブラリやマーケットプレイスのような配布システムが公開されるだろうと述べた。これはまだ検討段階だ。SlackのWorkflow Builderのアップデートも予定されており、これを使うと非テック系のエンドユーザーがあらかじめ用意されたビルディングブロックをつなげて、テンプレート化された便利なワークフローを作ることができる。

このツールは2022年中にリリースされる見込みだが、ビルディングブロックが説明通りに動作するのであれば、Slackはコミュニケーションの意味合いを弱め、ワークフローやプロセスオートメーションにシフトしていくのかもしれない。それは、Salesforceとより深く統合するために重要なことだろう。Salesforceは2020年末にSlackを270億ドル(約3兆円)以上で買収した

画像クレジット:Smith Collection/Gado / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Kaori Koyama)

モバイルアプリのリリースプロセスを効率化するRunwayが約2.3億円のシード資金を追加調達

NVIDIAがエッジコンピューティング向け超小型AIスーパーコンピューターJetson AGX Orin発表

Runway(ランウェイ)は、ドレスレンタルのRent the Runway(レント・ザ・ランウェイ)のiOSチームが直面した課題をきっかけに設立されたスタートアップだ。このほどベータテストを終え、モバイルアプリのリリースサイクルを簡易化サービスを公開する。同社いわく、モバイルアプリ・リリースの「航空管制」サービスだ。また同社はBedrock Capitalのリードで実施した200万ドルのシード・ラウンドで資金を追加調達した。

ラウンドには、Array Ventures、Chapter One、Breakpoint Capital、Liquid 2 Ventures、Four Cities、Harvard Management Seed Capital、SoftBank Opportunity Fund、およびさまざまなエンジェル投資家が参加した。

Runwayの構想は、Rent the Runwayの初期モバイル・アプリ・チームで一緒に働いていた、Gabriel Savit(ガブリエル・サヴィット)氏、Isabel Barrera(イザベル・バレラ)氏、David Filion(デビッド・フィロン)氏、およびMatt Varghese(マット・バーギース)氏という4人の共同ファウンダーから生まれた。前職で4人は、アプリのリリースには多くの無駄な時間が費やされ、Slack(スラック)などのアプリを使った社内コミュニケーションで多くの行ったり来たりが起きるなど、数々のオーバーヘッドがともないことを体験した。エンジニアリング、プロダクト、マーケティング、デザイン、品質管理などの部門すべてが、アプリのリリース・プロセスに関わる各自の役割に関して互いに状況を報告し合わなければならなかった。それは、今でもドキュメントやスプレッドシートの共有を通じてよく行われていることだ。

Runwayは、代わりにアプリのリリースサイクルにともなうさまざまな部分を管理することに特化した専用ソフトウェアを提供する。

そのシステムは、企業の既存のツール、GitHub(ギットハブ)、JIRA(ジラ)、Trello(トレロ)、Bitrise(ビットライズ)、CircleCI(サークル・シーアイ)などを統合して、何が行わているのか、どのアクションアイテムが残っているかなどの最新情報を全チームに送る。今年の春にベータ公開して以来、Runwayは対応するインテグレーション(統合)を2倍に増やし、現在はLinear、Pivotal Tracker、Jenkins,GitHub Actions、GitLab CI、Travis CI、Slack、Bugsnag、Sentry、TestRailなどにも対応しており、近々さらに増やす予定だ。

画像クレジット:Runway

テスト期間中、Runwayは少数の初期ユーザーによって使用され、3月時点でClassPass(クラスパス)、Kickstarter(キックスターター)、Capsule(カプセル)などが同プラットフォームを使って40以上のアプリをリリースした。

ベータ開始以来、顧客ベースは10倍に増え、現在Gusto(ガスト)、NTWRK(ネットワーク)、Brex(ブレックス)、Chick-fil-A(チック・フィル・エー)などのほか、エンタープライズ分野の大物企業も顧客リストに入っていると同社は語る(その1つは「人気のフード・デリバリー・アプリ」だと本誌は理解している)。顧客の何社かから、Runwayを旧方式に代えて使うことを支持するメッセージが同社のウェブに掲載されている。たとえばClassPassのモバイル責任者、Sanjay Thakur(サンジェイ・タクー)氏は、Runwayを使った結果、システムの「混乱が減り」、リリースに費やす時間も減ったと語った。

「エンジニアたちは私に、リリースマネージャーの仕事でて多忙を極める時期の負荷が軽減されたと言っています」とタクー氏は言った。

KickstarterのシニアiOSエンジニア、Hari Singh(ハリ・シング)氏は、Runwayのおかげで「状況が整理された」と話し、「チームの全員が同じものを見ているのはすばらしいことです。起きていることに関する主観的意見がなくなるました」と指摘した。

「Runwayはリリースを早くしただけでなく、リリースのことを心配する必要をなくすことで、メンタル面のストレスを軽減しました」とNTWRKのシニアソフトウェアエンジニアであるDave Cowart(デイブ・コォート)氏は言う。「かつてはリリースを必要以上にためらっていました。今はスムーズにいくことも最小限の努力ですむこともわかっています」

現時点で、3月以降にアーリーアダプターたち同プラットフォームを使ってリリースしたアプリは計700本を超えている。また同社は3月のベータ以来いくつか重要なプロダクト変更も行ってきた。

画像クレジット:Runway

たとえば、これまで手動で行われてきたタスクのさらなる自動化、不安定なフェーズのリリースを自動的に停止する、安定したフェーズのリリースの自動的な加速、アプリストアの「What’s New」セクションへの標準リリースノートの登録、段階パーセンテージの自動更新する(Andoidを含む)、アプリストアで最新ビルドを選択する、iOSのベータレビュー用の新しいビルドの送信、リリースサイクルの最後にリリースにタグ付けする、変更履歴の自動生成、リリースアーティファクトの付加、不足ラベルの追加、プロジェクト管理ツールのチケットにバージョンを固定するなどだ。

Runwayはさらに、ホットフィックス(緊急修正)リリースの迅速化、社外ステークホルダーに回覧する承認機能、スクリーンショット・ビュアー、承認ゲート、CIパイプはラインからアーティファクトダウンロードを直接生成する機能、回帰テストの統合、安定度監視の統合、TestFlightおよびPlay Storeベータ・トラック・テスティングの統合、コード中のバージョン番号の自動更新など高頻度リリースのための追加機能、役割、承認、アクセス管理リストのサポートなど様々な拡張を実施した。同社はSOC 2認証も取得した。

今なお取り組んでいる分野が、新規顧客の導入プロセスの簡素化だ。Runwayは幅広いプラットフォームとして作られているため、顧客が数多くのアプリやサービスをRunwayに接続する初期設定プロセスには時間がかかる。それでもRunwayは、多くのチームの異なるツールやプロセスに適応する同システム能力は、最終的にセールスポイントになるものであり、導入の障壁にはならないと信じている。

正式公開にあたり、Runwayは1アプリ当たり月額400ドル(約4万5900円)の標準プランを継続するほか、トップ企業の導入を見据えて大企業向けのカスタム・エンタープライズ価格を追加した。将来はインディーチーム向け新プライシングの追加も考えているという。

Runwayは新たな資金を、複数のフルスタックエンジニア(特に元モバイル・エンジニア)、成長とマーケティングを担当するフルタイム社員1名を含む新規雇用に充てると語った。同社はすでに、元シニアモバイルエンジニアを初のフルタイム社員として採用している。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nob Takahashi / facebook

Ubuntu開発元Canonicalが仮想マシン管理ツールMultipassのM1 Macサポート発表、20秒でLinux環境起動

Raspberry Piで簡単に3Dポイントクラウドが作れる3Dセンシングシステム「ILT開発キット」発表
Ubuntu開発元Canonicalが仮想マシン管理ツール「Multipass」のM1 Macサポート発表、20秒でLinux環境を起動

Canonical

Linuxで最大のシェアを持つUbuntuの開発元Canonical社は9日(英現地時間)、M1チップ(系列)を搭載したMac上でクロスプラットフォームのLinuxを動作させる「最も迅速な方法」を発表しました。具体的には仮想マシン管理ツール「Multipass」(GitHub)がサポートされたということであり、これによりユーザーは1つのコマンドでM1 Mac上で仮想マシンイメージを起動し、わずか20秒でLinuxを実行できるとのことです。

アップル初のMac向け自社開発チップ「M1」は高性能かつ低消費電力が魅力ながらも、独自仕様のためmacOS以外のOSを動かすことが困難であり、Linux Kernelについても一応の動作が確認されてから、Linux Kernel 5.13 RCで正式サポートされるまで半年近くかかっていました。ついに10月には「基本的なデスクトップとして使える(GPUアクセラレーションはまだ使えず)」と宣言されながらも、今なおM1 Mac上で動かすまでは簡単な作業とは言えません。

そんななか、Canonical社はUbuntuこそが「M1 MacをLinuxコンピュータに変身させる最初のプラットフォーム」だと主張。今回のMultipassサポートに当たっても、プロダクトマネージャーのNathan Hart氏も自社が「開発者が市場にある他の選択肢よりも早くLinuxを使えるようにしたいと考えており、Multipassチームはその実現に貢献しています」と述べています。

Multipassの何が優れているかといえば、仮想マシン(VM)内のアプリを動かすにあたってコンテキスト(動作状態を保持する機構)を切り替える必要がなく、VM内のアプリをホスト端末(M1 Mac)から直接実行できるということです。

公式ブログによれば、Multipassの最新版1.8.0ではVM内のコマンドとホストOS上のコマンドを結びつけられる新機能「エイリアス」が利用でき、それにより「ユーザーはあらゆるLinuxプログラムをネイティブに近い状態で使えます」とのこと。例えばWindowsやMac上でDocker(仮想環境の構築ツール)を実行したい開発者にとって、エイリアスはその代わりになり得ると謳われています。

アプリやシステム開発から縁遠い一般人にとっては難解な話にも思えますが、要は「M1(あるいはM1 ProやM1 Max)搭載MacでLinuxの仮想マシン(サーバーなど)を構築してコマンド実行しやすくなった」ということです。

M1 Macの発売から約1年が経過し、アップルが全く仕様を明らかにしていないM1チップの分析がここまで進んだことは驚きとも思えます。が、上記のLinux KernelはGPUアクセラレーションはまだ使えず、今回のMultipassはそもそもグラフィック機能はサポートしておらず、いずれもM1チップを攻略しきっているとは言えません。

とはいえ、MacにゲーミングPC的なグラフィック機能を求めるのはコストパフォーマンスと見合っていない事実は、価格が数倍違うM1 Max MacBook ProとPS5のGPU性能が大差ないことでも再確認された感はあります。クリエイティブやソフト開発のプロ向け製品として、M1 Macは着実にシェアを伸ばしていくのかもしれません。

(Source:Ubuntu Blog。Via 9to5MacEngadget日本版より転載)

コードとドキュメントの同期を自動化するSwimmが約31.1億円調達

開発チームはプロジェクトの細部を理解したり、新人に仕事を任せるときなどにドキュメントが必要だ。公開するAPIを作っているときには、それらの実装の仕方を述べた良質なインストラクションがますます重要だが、伝統的にドキュメントとそのメンテナンスは多くのプログラマーに愛されない仕事だ。

イスラエルのスタートアップSwimmは、ここに着目した。同社は、デベロッパーにドキュメントを含めるよう促し、その作成を容易にし、古くなったら教えるソリューションを開発した。米国時間11月8日、同社は、そのソリューションの今後の成長のために、2760万ドル(約31億1000万円)という大きなシリーズAを発表した。そして同時に、Swimmのベータをリリースした。

このラウンドはInsight PartnersとDawn Capitalがリードし、これまでの投資家である Pitango FirstとTAU Venturesも参加している。Swimmによると、同社の総調達額は3330万ドル(約37億6000万円)になるという。

SwimmのCEOで共同創業者のOren Toledano(オレン・トレダーノ)氏によると、デベロッパーはドキュメントを軽視することが多い。彼らはコーディングに集中することが好きなので、同社はドキュメンテーションワークをコーディングの工程と容易に統合できる方法を考えた。

「Swimmの目標はデベロッパーがドキュメントを楽に作れる方法、それらがコード自体と一体化しているような方法を作ることだ。そして私の考えによると、そのもっとも重要な部分は、コードドキュメントにくっつけたときに、コードベース本体にある変化を見つけて、何かが変わったからお前は古い、と告げられることだ」とトレダーノ氏はいう。

そんなことをするSwimmは、当然ながらIDEやGitHubなどの上でデリバリーパイプラインの一部になる。そして、変化があればフラグする。それはワードプロセッサーのコメント機能に似ていて、ユーザーはその変化を受け入れたり、必要な変更を加えたりする。そのソリューションはプログラミング言語を特定せず、すべてのタイプのコードに対応する。

トレダーノ氏によれば、ひと言でいえば同社はドキュメントをコードとして扱う。

コードが所在するユーザーのリポジトリにコードも同居し、コードのように振る舞う。つまりコードをプッシュすると、Swimmのドキュメントもプッシュされる。ドキュメントはコードと同じ工程と、CIのパイプラインと、コードをデプロイする同じアプリケーションを通る。そしてこのような環境を使うと、ドキュメントが常にアップツーデートになる。

同社の社員は今30名で、米国に2人、ベルリンに1人、その他はテルアビブにいる。従業員の40%は女性だが、今後の雇用によって男女半々にしたいという。同社は、同社のための雇用のインフラストラクチャが確実にダイバーシティを実現していくものにしたい、という。

「そしてそうなればうちは、人事に関する知識やインフラがオープンになり、私たちが作っている人のインフラは、イスラエルで恵まれていない階層の人びとを今後加えていくものになる。そのやり方は、イスラエルのいろいろな機関とパートナーして、その階層の人たちをハイテクの世界で昇進させていくものになるだろう」とトレダーノ氏はいう。

同社は2019年にローンチし、2020年4月に570万ドル(約6億4000万円)のシード資金を獲得した。今回のラウンドは5月に締め切られた。

画像クレジット:Swimm

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

アップル、iOS 15.2開発者ベータ第2弾で「メッセージ」アプリに子供向け新安全機能を搭載

Apple(アップル)は、iOS 15.2の2回目のデベロッパーベータをリリースし、メッセージAppの新機能「コミュニケーションセーフティー」のサポートを開始した。この機能が2021年初めに発表された際は、児童性的虐待コンテンツ(CSAM)検出技術の新機能と並んでのことだった。同時に発表されたCSAMは物議を醸し、反発を受けて延期された。

一方、このメッセージAppの新安全機能は、子どもたちがオンラインコミュニケーションを上手に使いこなせるよう、親がより活発な、情報に通じた役割を果たすのを支援することを目指している。メッセージAppは、デバイス上の機械学習(ML)を利用して画像の添付ファイルを分析し、共有されている写真が性的に露骨なものかどうかを判断できるようになる。この技術では、すべての処理がデバイス上で行われるため、Appleが子どものプライベートな通信にアクセスしたり、読み込む必要はない。この機能はデフォルトでは有効になっておらず、ファミリー共有機能の中で、保護者がオプトインするようになっている。

メッセージスレッドの中にセンシティブな写真が発見された場合、その画像はブロックされ、写真の下に「これはセンシティブな写真かもしれません」というラベルが表示され、クリックするとその写真を見ることができるリンクが表示されるようになっている。子どもが写真の閲覧を選択すると、詳細情報を示す別の画面が表示される。ここでは、センシティブな写真や動画について「水着で隠すようなプライベートな体の部分が映っています」「あなたのせいではないけれど、センシティブな写真や動画はあなたを傷つけるために使われる可能性があります」というメッセージが子どもに伝えられる。

注目すべきは、Appleがコミュニケーションセーフティー機能について、当初の計画に比べていくつかの変更を加えたことだ。同社は当初、13歳未満の子どもがメッセージAppで露骨な画像を閲覧した場合、親に通知する予定だった。しかし、その通知システムが子どもたちを危険にさらす可能性があるとの批判を受け、Appleはこの機能を削除した。

このコミュニケーションセーフティー機能は、現在、iOS 15.2のベータ版で提供されている。Appleがこの機能を正式にリリースする予定は今のところ不明だ。

編集部註:9to5Mac.comによると、上記の通知システムは特定の状況で機能するため Appleは削除したという。iOS 15.2 beta 2での機能の実装では、子どもがよりコントロールできるようにすることに重点を置いており、Appleは現在、年齢を問わず、子どもが助けを求めたい場合には信頼できる人にメッセージを送るという選択肢を与えているが、その判断は、画像を見るかどうかの判断とは完全に切り離されているとのこと。

画像クレジット:Apple

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(文:Aisha Malik、翻訳:Aya Nakazato)

2021年、アップルの米App Storeはホリデーシーズンも休まず営業

Apple(アップル)によると、App Storeは、例年と違い2021年はクリスマス休暇中も通常どおりに営業する。この方針変更は、1年で最も忙しいシーズンに緊急のバグフィックスがあったり重要なアップデートがあっても十分対応することができるため、開発者的にはうれしいことだろう。またiPhoneなどのApple製品をギフトにもらった顧客は、新しいアプリを探したり、好きなアプリを再びダウンロードできる。休日が増えた消費者は、新しいアプリやゲームを探して。1年の最後を過ごそうとするだろう。すると第4四半期におけるApp Storeの利用も上向きになる。

通常、AppleのApp Store Connectサービスは、ホリデーシーズンには完全に休みになるため重要なアップデートがある開発者はその前に間に合わせようとして焦ってしまう。しかし2021年は、ホリデーにも営業を行うが、11月24〜28日と12月23〜27日は、レビュー完了まで時間がかかるかもしれないと人が少ないことを示唆している。

この変更は、AppleがAppp Storeのビジネスモデルをめぐって世界中の規制当局からの締め付けがますます厳しくなっている時期に行われた。問題のビジネスモデルとは、有料アプリのダウンロードやアプリ内購入に対してAppleが手数料を取ることだ。そこでAppleは、App Storeの提出プラットフォームを閉鎖して、これ以上議員や批評家などから攻撃されたくない。しかも提出プラットフォームには開発者が手数料のかたちでお金を出しているのだ。料金を徴収するのはデベロッパーコミュニティへの奉仕のためだ、というApple側の理屈があるのならなおさら閉鎖はおかしい。

もちろん、同社が単純に理解していたのは、ホリデーの期間中にはトラフィックの増加で実際にショップを閉鎖するには最悪の時期だということだろう。だからむしろ、店をずっと開けておくことを解決策とした。

ホリデー期間中のストアの人減らしについてAppleは詳細を言っていないが、もっぱら少数の契約社員に頼ったり、この時期に特有の社内業務で店の人が減るのかもしれない。Appleにコメントを求めたが、今回は応えがない。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hiroshi Iwatani)

AIを活用したエンジニアリング卓越性プラットフォームのPropeloがシリーズAで約13.6億円を調達

ここ数年、DevOpsツールの数は飛躍的に増加しており、それにともない、企業がソフトウェア開発プロセスを改善するためにそうしたツールが生み出すデータの量も増加している。しかし、ほとんどの場合、これらのデータは単にダッシュボードの中でばらばらに分析されている。Propelo(旧社名:LevelOps)は、この混沌とした状況に秩序をもたらしたいと考えており、機械学習(ML)を活用した分析サービスとノーコードのロボティックプロセスオートメーション(RPA)ツールを組み合わせた「AI駆動のエンジニアリング卓越性プラットフォーム」を構築し、ユーザーがこれらのデータポイントを実用的なものに変えられるようにすることを目指している。

同社は米国時間11月4日、Decibel Partnersが主導するシリーズAラウンドで1200万ドル(約13億6000万円)の資金調達を実施したと発表した。このラウンドには、Fike Ventures、Eniac Ventures、Fathom Capitalも参加した。

Propeloの創業者兼CEOであるNishant Doshi(ニシャント・ドーシ)氏は、2015年にPalo Alto Networks(パロアルトネットワークス)が買収したSaaS型セキュリティサービス、CirroSecureを共同創業した経験がある。その後、Palo Alto Networksに数年間在籍し、シニアディレクターやエンジニアリング担当VPとして、DevOpsツールの爆発的な普及を身をもって体験した。開発プロセスをよりよく把握するために、チームはJira、GitHub、Salesforceなどのソースからデータをつなぎ合わせる必要があった。

画像クレジット:Propelo

「これは手作業が多く、多大なリソースを必要とします」と同氏は語る。「ビジネスの核心にフォーカスしていないのに、解決策を探そうとすると、いつも別のツールが必要になってしまうのです。また、それらのツールを手に入れても、何を測定すればよいのかわかりません。当社のような専用のソリューションがもたらす進歩にアクセスできず、さらに重要なのは、行動可能性がないということです」。

画像クレジット:Propelo

そして、最後の部分がキーポイントだとドーシ氏は強調する。優れたデータや分析結果があっても、その情報に基づいて実際に行動を起こすことができなければ、開発プロセスを改善することはできない。PropeloのRPAツールを使えば、ユーザー(同社によれば、主にエンジニアリング・リーダーシップ・スタックのユーザーを対象としている)は、企業内のDevOpsプロセスを改善するための多くのタスクやワークフローを簡単に自動化することができる。

このサービスは現在、Jira、GitHub、GitLab、Jenkins、Gerrit、TestRailsなど、約40種類のDevOpsツールと連携している。Propeloは、AIを活用することで、ユーザーが隠れたボトルネックを発見したり、スプリントが失敗しそうなタイミングを予測したりできる。実際、データの衛生管理やJiraチケットの更新は、ほとんどの開発者があまり考えたくないことなので、Propeloは定期的に開発者にそれを促すことができる。

現在のPropeloのユーザーには、Broadcom(ブロードコム)やCDK Globalなどがいる。Broadcomでセキュリティ技術とエンドポイントソリューションを担当するエンジニアリングVPのJoe Chen(ジョー・チェン)氏はこう述べている。Propelo は、DevOps の摩擦を減らし、無駄な動作を減らす方法について、スクラムチームごとの非常に細かいレベルで、データに基づいた洞察を提供してくれます。これは、追加技術投資の効率を最大化し、エンジニアのペインポイントを取り除くのに役立ちます」。

画像クレジット:

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Aya Nakazato)

開発者がアプリのサイズを小さくとどめるために役立つツールを提供するEmerge Tools

アプリは時間が経つに連れて大きくなる傾向がある。新しい機能を追加するということは、より多くのコード、より多くのサードパーティ製フレームワーク、より多くの画像や動画などのアセットを追加するということだ。フォントやサポートドキュメントのようなリソースは重複し、最適化や圧縮が行われないままビルドプロセスを通過してしまう。

アプリを小さく維持することは、ユーザーにも開発者にもメリットがあるものの、必ずしも常に最優先されるものではない。開発チームの規模や優先順位によっては、誰かに文句を言われるまで忘れ去られてしまう類のことだ。

Y Combinator(Yコンビネータ)W21(2021年冬)クラスのEmerge Tools(エマージ・ツールズ)は、アプリを小さく留めるためのツールを開発している企業だ。このツールは、ビルドごとの変更を監視し、必要なストレージ容量を削減するためのアクションを推奨してくれる。

なぜアプリを小さくするのか?理由はいくつかあるが、Emergeの共同設立者であるJoshua Cohenzadeh(ジョシュア・コヘンザデ)氏は次のようなことを指摘している。例えば、開発したiOSアプリのサイズが大きすぎると、App Store(アップ・ストア)はユーザーに、Wi-Fiが使えるようになるまでダウンロードするのを待つように提案するため、ユーザーが興味を失ってしまうことがある。ちなみにUber(ウーバー)は最近のブログ記事で、App Storeのサイズ制限によって最大でインストール数の10%が失われたと書いている。世界中にユーザーを拡げたいと考えているアプリ開発者は、潜在的なユーザーの多くが低速のネットワークを利用していたり、メガバイト単位で通信料を支払っている可能性があることを考慮しなければならない。あるいはまた、スマートフォンの空き容量を確保しようとした時に「おいおい、なんで〇〇のアプリが400MBも使っているんだ?」と思ったことがない人はいないだろう。

Emergeを共同で設立したコヘンザデ氏とNoah Martin(ノア・マーティン)氏は、文字通り子どもの頃から一緒にものづくりを行ってきた。高校時代には、Macの画面解像度をすばやく変更するためのメニューバーツール「QuickRes(クイックレズ)」を開発した。その後も、人気の高いMac用スクリーンショットマネージャーや、MacからTesla(テスラ)をコントロールするためのメニューバーウィジェット、さらにTinder(ティンダー)の写真をA/Bテストするためのツールなどを作成したが、コヘンザデ氏によると、これは配布停止命令を受けることになってしまったとのこと。

大学卒業後、大企業に就職した2人は、サイドプロジェクトとしてのアプリ開発(コヘンザデ氏は「小さな取るに足りないアプリ」と呼んでいた)をやめて、本格的にスタートアップを起ち上げることにした。Y Combinatorに応募した2人は、アイデアを練っているうちに、モバイルネットワークに制限がある国々では、ユーザーがデータ転送に多大な労力を費やしているという調査結果を見つける。そこで2人は、アプリがどこでデータを浪費しているかを調べ、さらに掘り下げていったところ、アプリのサイズについては、多くの開発チームが、多くの大企業でさえも、常に重視しているわけではないことがわかった。

「小規模な企業では、独自のパフォーマンスチームを持つほどのリソースはありません。クレイジーな最適化などを行うリソースもありません」とコヘンザデ氏はいう。「だからEmergeの基礎となったのは、これを標準化しようということでした」。

Emergeは、いくつかの異なる方法でインサイトを提供している。開発チームのGitHub(ギットハブ)に接続して、アプリのサイズ変更を各プルリクエストのコメントとしてフラグを付けることもできるし、一方でEmergeのダッシュボードでは、アプリ内で何がスペースを占めているかを複数の異なるビューで表示し、スリム化する方法を提案する。

Emergeの「X-Ray」ビュー(画像クレジット:Emerge)

「X-ray」ビューでは、各フレームワークやアセットがどれだけの容量を占めているかが一目瞭然だ。特定のフレームワークを1つか2つのあまり使わない機能にしか使用していないのに、アプリのサイズの5分の1を占めている場合、そのフレームワークを使用する価値はあるだろうか? ビルドに何度も紛れ込むように管理されたファイルもハイライトされる。「重複ファイルを抱え込んでいる会社が多いことには驚かされます」と、コヘンザデ氏はいう。

「Breakdown」ビューでは、アプリの中でバイナリ自体が占める割合、画像や動画などのアセットが占める割合などが、カテゴリーごとに分けて表示される。

Emergeの「Insights」ビュー(画像クレジット:Emerge)

「Insights」タブには、アプリのサイズに最も大きな影響を与える可能性のあるアクションが提案される。例えば、Swift(スイフト)のバイナリでバイナリシンボルを削除したり、所定のプラットフォームで異なる画像タイプを使用したり(iOSではPNGの代わりにHEICを使用するなど)、前述の重複ファイルを削除する方法を考え出したりする。

自分たちが開発したアプリの中からEmergeが何を見つけるか、興味がある人もいるだろう。だが、1つ問題がある。同社のツールはまだ誰にでも公開されているわけではないのだ。というのも、コヘンザデ氏によると、彼らが提携している企業のほとんどは、このようなツールにアクセスを許可する前に、厳格なセキュリティ審査と法的契約を必要とするからだ。Emergeでは、小規模なチームを対象とした「完全セルフサービスのモデル」を近々発表する予定であるという。価格は、アプリの数、ビルドの数、チームの規模、どのプラットフォーム向けにビルドするかといった基準に基づき、企業ごとに異なる。Emergeが2021年初めに設立された当初は、iOS向けアプリのみに集中していたが、2021年10月よりAndroid向けアプリのサポートも追加した。

Emergeは最近、170万ドル(約1億9000万円)を調達した投資ラウンドを完了させたが、これは同社にとって初のラウンドだった。コヘンザデ氏によると、このラウンドにはHaystack(ヘイスタック)、Matrix Partners(マトリックス・パートナーズ)、Y Combinator、Liquid2 Ventures(リキッド2ベンチャーズ)の他、数名のエンジェル投資家が参加したとのこと。

画像クレジット:Emerge

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(文:Greg Kumparak、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

フェイスブックがクリエイターにアップルの料金を回避できるリンクを提供

Facebookという名前だった企業は、米国時間11月3日、Apple(アップル)の悪名高いプラットフォーム料金を回避する計画を発表した。このところ有力なソフトウェア企業とiOSを開発した企業との間で戦争が続いているが、これはその最新の戦いとなる。Facebookの11月3日の投稿でMetaのMark Zuckerberg(マーク・ザッカーバーグ)氏は、同社プラットフォーム上の特定のクリエイターに対して、支払いを直接受けとることができるリンクを提供し、議論の多いAppleによる30%の手数料を迂回できるようにすると述べた。

「メタバースの構築のために、クリエイターが自分の仕事からお金を稼ぐ機会をクリエイターの手に開放することに注力したい。Appleが取引に際して徴収する30%の料金は、その開放を困難にしているため、この度、私たちのサブスクリプションプロダクトをアップデートして、クリエイターがもっと多くを得られるようにしたい」とザッカーバーグ氏はいう。

サブスクリプションの対象となるFacebookページを運営しているクリエイターは、テキストやeメールで新しいプロモリンクを共有し、独自の決済システム「Facebook Pay」で運営される決済ポータルにファンを誘導することができる。また、このクリエイター向けの投稿の中で、Facebookは、以前発表した10億ドル(約1142億1000万円)規模のクリエイタープログラムの一環として、年末までにクリエイターが新規購読者を獲得するごとに、5〜20ドル(約570〜2280)を支給するという新しいボーナスプログラムを発表している。

画像クレジット:Facebook

FacebookのPatreonに似たサブスクリプションプロダクトは、人気のあるFacebookページを持つ人々に、毎月の定期的な支払いで特別な収益化ツールを提供するものだ。現在の申込資格は、1万人のフォロワーまたは250人以上のリターンビューワーに加え、5万件の投稿エンゲージメントまたは18万分間の視聴があることになる。

Facebookは、2023年まではFacebook自身がクリエイターの決済から料金を徴収することはない斗述べているが、この分野に最近熱心になってきた同社としては、導入期の数年間無料にした後、ブームとなっているクリエイターエコノミーで自らも稼ぐ計画をきっと持っているだろう。そもそも同社自身が以前は、30%の手数料徴収を計画していたのだ。少なくとも現在のところ、その計画を引っ込めているようだが。

Appleはこれまで、iOSで提供されるすべての有料アプリとアプリ内課金から、標準で30%の手数料を徴収してきた。この手数料は、Appleにとって莫大な収益をもたらしてきた。しかし2020年末、同社は小規模なアプリメーカーに救いの手を差し伸べ、年100万ドル(約1億1000万円)未満の開発者の手数料を15%に引き下げている。

AppleのApp Store手数料は、多くの大手ソフトウェア開発者にとって大きな悩みの種となっている。2020年「Fortnite」のメーカーであるEpic Gamesは、自らを開発者のために闘う小さな会社と位置づけ、派手なキャンペーンでアプリ内課金をめぐってAppleを裁判で訴えた。本稿執筆時点で9230億ドル(約105兆4241億円)の価値があるMetaは、Appleとの間で行われたクリエイターへの支払いをめぐる新たな戦いにおいても、同様の位置づけをしている。

2021年9月、カリフォルニア州のEpic Games対Appleの訴訟の判事は、Appleが開発者に対して、同社による多額の手数料を回避する外部の支払い方法をユーザーに紹介することはもはや阻止できないという判決を下した。この判決により、Facebookの新たな回避策の道が開かれた。Appleはこの判決を不服とし、2021年10月に、判事の差し止め命令の停止を要求している。

クリエイターへの支払いに関する新たな回避策は、FacebookにとってAppleとの初めての大きな衝突ではなく、Facebookがユーザーの味方に回った初めての例でもない。Facebookは、ユーザーのプライバシーを強化するためにiOS 14に搭載された新しいトラッキング防止機能に脅威を感じ、すべての主要な全国紙に変更に抗議する全面広告を掲載した。表向きにこの行動は、自社ではなく影響を受ける中小企業を代表してのものだった。

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画像クレジット:Sean Gallup/Getty Images

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(文:Taylor Hatmaker、翻訳:Hiroshi Iwatani)

セガとマイクロソフトがAzure活用した大型戦略タイトルSuper Gameの創出・次世代開発環境の構築に向け戦略的提携を検討

セガとマイクロソフトがAzure活用した大型戦略タイトルSuper Gameの創出・次世代開発環境の構築に向け戦略的提携を検討

CHARLY TRIBALLEAU via Getty Images

セガと米マイクロソフトが、マイクロソフトのAzureプラットフォームを活用する次世代開発環境で大規模かつグローバルなゲームを制作するための戦略的提携を検討すると発表しました。

これはセガの中長期的な戦略の一環とのことで、セガは今後「グローバル展開」「オンライン」「コミュニティ」「IP活用」といった要素を盛り込んだ革新的な「Super Game」の開発を推進していくとのこと。

今回の提携は、セガが今後のトレンドを先取って開発プロセスを最適化し、マイクロソフトのAzureプラットフォームの活用によって高品質な体験を消費者に提供していくことを目的とするとのこと。

そのため両社はまず、この提携の基本的な部分で合意に達し、これからは相互協力のもとオンラインサービスの提供に必要なネットワーク環境やコミュニケーションツールの技術的進化を目指していくとしています。さらにセガは開発プラットフォームも新たな世代へ移行させて多様化するインフラとワークスタイルの変化にも対応していくと述べています。

セガの社長COO、杉野幸雄氏は、Super Gameの開発と先進的なゲーム開発環境の構築のために「セガが持つゲーム開発力とマイクロソフト様が保有する最先端のテクノロジーや開発環境の構築といった分野において、相互に協力関係を築くことで、世界中のゲームファンにお楽しみいただけるゲーム開発をさらに進めてまいります」とコメントしています。

またマイクロソフトのコーポレーションバイスプレジデント(CVP)サラ・ボンド氏は「セガ様とゴールを共有し、ゲームファンの皆さんに、より多くの新しい価値を一緒に提供していけるよう努めていきます」と述べています。

新型コロナへの警戒感もワクチン接種がすすむにつれ沈静化しつつあるなか、PS5やXbox Series X|Sといった新世代ゲーム機が発売されて約1年が経とうとしています。この1年間は、外出を控える巣ごもり生活でゲームの楽しさを思い出した人も多そうです。また、セガがSuper Gameと呼ぶ「グローバル向けの大型タイトル」とは一体何なのかも気になるところ。4つの要素をヒントに、どんなゲームが開発されているのかを予想してみるのも面白いかもしれません。

(Source:セガEngadget日本版より転載)

モバイルアプリを直接スマホ上で作成できるiOSネイティブ製品デザインツール「Play」

モバイル環境向けのデザインを行う際、従来の方法では、開発者が1つのプログラムでデザインを行い、別のプログラムでプロトタイプを作成し、さらに別のツールでコラボレーションを行うというように、多くのやりとりが必要だった。

新しいスタートアップの「Play」は、自らを「スマートフォンから直接作成、イテレーション、コラボレーションすることを可能にする唯一のiOSネイティブ製品デザインツール」と位置づけている。従来のソフトウェアでは、同じようなことをするために回避策やハックを要求されると、同社の共同設立者で共同CEOのDan LaCivita(ダン・ラチヴィータ)氏は説明する。

「これは、携帯電話を主な入力デバイスとして使用する唯一のデザインツールです」と同氏はTechCrunchに語った。「スマホからデザイン、プロトタイプ、コラボレーションを行うことができ、プロダクトデザイナーが使用しているメディア上で作成中のデザインを体験する方法を提供する唯一のものです。基本的にコーディングをしなくても、Apple(アップル)のサンドボックスで遊ぶことができます」。

ユーザーは、ゼロから作成するか、Figmaなどのツールからデザインをインポートするかを選ぶことができ、ボタン、カード、ビデオプレーヤーなどの一般的なUIコンポーネントには「Play Library」を、完全に機能するページを素早くカスタマイズして作成するには「Page Layouts」を使用する。また、ライブマップ、AR(拡張現実)、カメラ機能など、iOSのネイティブ機能も利用できる。

ラチヴィータ氏は2019年に、Eric Eng(エリック・エン)氏、Joon Park(ジュン・パーク)氏、Michael Ferdman(マイケル・フェルドマン)氏と一緒に会社を立ち上げた。彼らは全員、前身のFirstbornというスタートアップで一緒に働き、ウェブサイトやモバイル製品を作っていた。

「私たちは、すべてのペインポイント(問題点)を身をもって経験しました」 とラチヴィータ氏はいう。「ジュン(・パーク)が『もっと良い方法があるはずだ』と言ったんです。我々は従来のグラフィックデザインソフトウェアをベースにして開発を続けているのだから、別のツールではなく、入力デバイスとして携帯電話のような別のアプローチが必要なんだ、と」。

PlayはApp Storeで公開されているが、現在はプライベートベータ版で、2万5000人以上がウェイティングリストに登録している。今後数カ月から来年にかけてユーザーを追加していく予定だ。今はフリーミアムモデルだが、2022年にはいくつか異なる価格帯を提供する予定とのこと。

米国時間11月1日、同社はFirst Round Capitalが主導し、Oceans Venturesを含む910万ドル(約10億4000万円)の資金調達を発表した。本ラウンドは、2021年初めと2020年のシードラウンドを組み合わせたものだ。

今回の資金調達は、チームの規模拡大と、2週間前に発表したPlay for iPadのような、顧客からの直接の要望による新製品の開発継続のために使用される。また、最近では、ユーザーが互いにコラボレーションするためのTeams機能も発表した。

創業者たちがFirst Round CapitalのTodd Jackson(トッド・ジャクソン)氏と最初に会ったとき、彼らは資金調達を考えていなかったが「意気投合して関係がうまくいった」とラチヴィータ氏はいう。ベンチャーキャピタリストとしてではなく、チームメイトとして協力してくれるパートナーを見つけたのだ。

ジャクソン氏は、Twitter(ツイッター)でPlayを見つけて興味を持ったという。同氏は、Dropbox(ドロップボックス)やFacebook(フェイスブック)で、同じようなユーザビリティの問題を抱えるデザイナーたちと仕事をしていた。

彼は、デスクトップでしか利用できないツールで長い時間を費やしデザインを構築したり、アニメーションを追加したりしていた友人らにPlayを送った。

「スマートフォンでここまでできるとは思いませんでした」と彼はいう。「1つのことをするのに、1つのデザインツールしかないというメンタルモデルで我々はものを考えがちです。よく、モバイル製品のアイデアの多くは、誰かと共有できないために日の目を見ないという話をします。Playがあれば、そのような状況に陥ることはありません」。

画像クレジット:Play

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(文:Christine Hall、翻訳:Aya Nakazato)

TikTokが開発者向けVideo Kitをデスクトップ、ウェブ、コンソールでも使えるように拡張

米国時間10月27日、TikTok(ティックトック)はこれまでモバイルプラットフォームに対応していた開発者向けのVideo Kitを、ウェブ、デスクトップ、コンソール用アプリの開発にも使えるように拡張すると発表した。また合わせてClipchamp、Combo、Grabyo、Kapwing、Mobcrush、LG U+など多くの他社製アプリが新たにTikTokと連携することも明らかにした。


Video KitはTikTokのソリューションで、他社製のツールやアプリを連携させる「TikTokに共有」が含まれる。これにより他社製アプリの編集プラットフォームからビデオファイルをTikTokに直接アップロードできる。2019年に公開された「TikTokに共有」は、TikTokの開発者向けプログラムで初めて提供された機能だった。このプログラムではその後、Login KitやSound Kitなどの新しいツールも提供されている。

現在「TikTokに共有」はAdobe Premiere Rush、Picsart、Enlight Videoleap、Momento GIF Makerなど多くのツールから利用できる。このようなアプリは、TikTokアプリより高度な編集をしたいプロのクリエイターに多く使われている。

関連記事:TikTokが開発者向け新ツールの提供開始、サードパーティーアプリの統合を拡大

デスクトップやウェブのツールにも拡大することで、TikTokはプロのクリエイターや、さらにはブランドや企業にもリーチを広げようとしている。例えばMicrosoft(マイクロソフト)は最近Clipchamp買収し、Microsoftの生産性ソフトウェアのラインナップにビデオの制作・編集ソフトウェアが加わった。Microsoftはビデオについて、企業がアイデアのピッチやプロセスの説明、チームメンバーとのやりとりに使う新しいタイプの「ドキュメント」と呼んでいる。

Comboのプラットフォームはクリエイターが時間をかけずにコンテンツを再利用できるように作られていて、ストリーミングサービスのハイライトやクリップをTikTok用のビデオにできる。クラウドビデオ制作プラットフォームのGrabyoは、放送局やメディアパブリッシャーが放送、デジタル、ソーシャルプラットフォームのすべてに向けてライブでリアルタイムのビデオコンテンツを制作、編集、配信するツールを提供している。

他には、Super League Gaming傘下のMobcrushはゲーマーやライブストリーマー向けのツールを提供し、Kapwingのビデオエディタにはクリエイティブチームが共同作業をするためのツールが含まれている。LG U+が提供するコラボレーションプラットフォームのU2には、2021年中にクリエイターがビデオのストーリーボードをチームとともに扱える機能が搭載される予定だ。

TikTokは、新しいツールに関心のある開発者はdevelopers.tiktok.comにアクセスして利用を開始できると述べている。

画像クレジット:Lionel Bonaventure / AFP / Getty Images

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

元アップル社員が起ち上げたBild、クラウド上でのハードウェア設計の共有・共同作業を行うツールを提供

Apple(アップル)でハードウェアエンジニアリング・プログラムマネージャーを務めていたPradyut Paul(プラデュット・ポール)氏は、eメールやスプレッドシートといった旧式のツールを使ってハードウェア製品を構築・共有することの難しさを身をもって体験した。

設計が遅れたせいで何十万ドル(数千万円)もの費用をかけて迅速な出荷を行った後、ポール氏はハードウェアをより早く開発し、より多くの設計を検証するために、他のチームと連携するもっと良い方法があるはずだと考えた。

このようなコラボレーションをクラウドで行えるようになれば、組織全体のチームが設計プロセスをより簡単にレビューできるようになり、製品リリースのスピードアップにつながる。そのためにポール氏はアップルを退社し、2020年にCTOのAvinash Kunaparaju(アビナッシュ・クナパラジュ)氏、COOのDerrick Choi(デリック・チョイ)氏とともに、Bild(ビルド)を起ち上げた。

Bild共同創業者のプラデュット・ポール氏とアビナッシュ・クナパラジュ氏(画像クレジット:Bild)

「私たちは、エンゲージメントをクラウドに移行するというアイデアを思いつきました」と、ポール氏はTechCrunchに語った。「それは単なるやりとりではなく、非常に多くの関係者が関わり、受信箱が基本的にコミュニケーションの保管場所になります」。

同社は米国時間10月25日、シードラウンドで300万ドル(約3億4000万円)を調達したと発表した。この資金は、顧客獲得、セールス、マーケティングの分野でチームを強化し、新規ユーザーに向けたセルフサービス体験を構築するなど、製品開発を継続するために使われる。今回の資金調達は、Tola Capital(トラ・キャピタル)が主導し、Lux Capital(ラックス・キャピタル)、Shasta Ventures(シャスタ・ベンチャーズ)、Counterview Capital(カウンタービュー・キャピタル)、Frontier Ventures(フロンティア・ベンチャーズ)、Techstars(テックスターズ)が参加した。

ユーザーは、Bildのウェブベースのビューアを使って、3D CAD、ボードファイル、部品表、回路図、図面、シミュレーションデータなどを操作することができる。従来はこれを、スクリーンショットを共有したり、対面ミーティングでやっていた。

機械系エンジニアに特化したデザインレビュー管理や、ファイルの共同編集など、個々のペインポイントに取り組んでいる企業は他にもあるが、それらをすべて考慮に入れて、しかも会社全体で管理しているのはBildだけであると、ポール氏は確信している。

「別のチームに属している人々に、可視性を提供することは困難です」と、ポール氏は続ける。「私たちが注目していることの1つは、ハードウェアの将来性とソフトウェアとの連携をどのように強化し、両者がコラボレーションできる環境をどうやって作るかということです」。

これまでBildは、25社の企業を対象としたプライベートベータテストを行っていたが、今回の資金調達の発表に併せて、そのソフトウェアを一般にも公開した。初期の顧客の一部は有料顧客に変更されたが、価格戦略についてはまだ検討中であると、ポール氏は述べている。

Bildのコラボレーションツール(画像クレジット:Bild)

次に同社が取り組んでいることは、実際に見たときとコンピューター上で見たときのギャップを小さくするために、CADモデルをさまざまな視覚や方法で見せられるようにすることだ。

ハードウェア市場は500億ドル(約5兆7000億円)から700億ドル(約8兆円)規模の産業であり、まだデジタル化が進んでいないと、Tola CapitalのプリンシパルであるAkshay Bhushan(アクシャイ・ブーシャン)氏は述べている。

例えば、Autodesk(オートデスク)のような大企業は、これまでこの分野を壁で囲っていたが、リモートで働く人が増えたことにより、ハードウェアとソフトウェアが融合し始めていると、同氏は付け加えた。

「Bildは、すべてのエンジニアが抱えているであろう問題を解決し、ペインポイントを喜びに変えています」とブーシャン氏は語る。「プラデュットとアビナッシュは顧客志向で、顧客も認識しているこれらの問題を見据えていました。誰もが同じようなメールやプロセスのトラッキングに異なる名称を与えていましたが、Bildが行っていることに価値と機会を見出したのです」。

画像クレジット:Andrey Suslov / Getty Images

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(文:Christine Hall、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

アップルがApp Storeガイドライン更新、アプリ開発者がユーザーに他の支払い方法について連絡することを許可

Apple(アップル)は米国時間10月22日、App Store(アップ・ストア)のガイドラインが更新されたことを発表した。これには3つの重要な変更が含まれている。1つは、先に発表された米国のアプリ開発者グループとの和解合意に基づく変更だ。新しいガイドラインでは、アプリ開発者が、アプリ外で利用可能な他の支払い方法をユーザーに提案できるようになったことが明確に認められている。これに関連して別の項目では、アプリはユーザーに名前やメールアドレスなどの顧客情報を要求することができるが、その要求はユーザーにとって任意のものでなければならず、アプリの使用を妨げるべきではないと説明している。

3つ目の変更は法的措置とは関係ないもので、来週導入されるApp Storeの新機能「App内イベント(アプリ内イベント)」を開発者がどのように利用できるかを説明している。

8月にAppleは、米国のアプリ開発者グループが2019年に同社に対して起こした集団訴訟において、和解案に合意したことを発表。この合意にはいくつかの項目が含まれていたが、最も大きいものは、開発者がiOSアプリやApp Store以外で購入する支払い方法について、ユーザーに情報を伝えることができるようになるということだった。当時、Appleは開発者が「電子メールなどのコミュニケーションを利用して、iOSアプリ以外の支払い方法に関する情報を伝えることができる」ことを、ガイドラインの変更によって明確にすると述べていた。

「これまでどおり、アプリケーションやApp Store以外で行われた購入については、デベロッパがAppleに手数料を支払うことはありません」ともAppleは述べていた

今回、その変更案が正式にApp Storeガイドラインに盛り込まれた。

具体的には、Appleはガイドライン3.1.3の条項を削除した。この条項では、開発者はアプリ外で個々のユーザーに対し、Apple独自のアプリ内課金以外の購入方法を利用するために、アプリ内で得た情報を使うことは認められないとしていた。旧ガイドラインには、ユーザーがアプリにサインアップした際に登録されたアドレスにメールを送信することも、上記の行為に含まれると書かれていた。

この条項が廃止されたことによって、開発者はユーザーとこのようなコミュニケーションを取ることも可能になった。

また、Appleは以下のように、ガイドライン5.1.1 (x)に新しいセクションを追加し、開発者がどのようにユーザーの連絡先情報を要求できるかを詳しく説明している。

Appは、ユーザーの基本的な連絡先情報(たとえば名前やメールアドレスなど)の共有がユーザーの任意の選択であり、いかなる機能やサービスの提供もこれらの情報の共有を条件にしておらず、本ガイドラインのその他の規定(子どもからの情報収集に関する制限を含む)にすべて遵守するものである限り、これらの情報をユーザーにリクエストすることができます。

顧客への連絡を禁止する規則、いわゆる「ステマ防止」ガイドラインは、数カ月前から規制当局の監視対象となっている分野だ。世界中の立法府は、Appleが開発者に対し、ユーザーへの働きかけや、マーケティング、決済システムの選択など、ビジネスを運営する方法を制限することで、独占的な行為を働いているのではないかと突き止めようとしている。

すでにAppleは、いくつかの市場でさまざまな和解に至ったことにより、App Storeの規則の調整を余儀なくされていた。

例えば韓国では、AppleとGoogle(グーグル)が各々の決済システムの使用を開発者に要求することを禁止する新しい法律が最近可決された。また、日本では先月「リーダー」アプリをめぐる公正取引委員会との和解が成立し、アプリ内から自社ウェブサイトへリンクを張ることが可能になった。

一方、米国では、Appleは「Fortnite(フォートナイト)」の開発元であるEpic Games(エピック・ゲームズ)と裁判で争っている。この訴訟は現在控訴中だが、判事の当初の判決では、Appleに開発者がアプリ内で自社のウェブサイトを表示できるようにすることを求めており、そこでユーザーはサービス料や定額料金を直接支払うことができ、その過程においてAppleの決済システムを回避することが可能になるというものだった。

しかし、今回のガイドライン変更では、直接アプリに代替決済システムを組み込むことまでは認めていない。

anti-steering(外部への誘導禁止)の変更は、規制当局の圧力が大手テクノロジー企業に導入を促している新ポリシーの分野の1つに過ぎない。

AppleとGoogleは、それぞれの方法で、開発者の収益から自社の取り分を減らすように、手数料体系を見直している。その対象には特に、小規模ビジネスメディアへのアクセスを提供するアプリ報道機関によるアプリなどが含まれる。Googleは今週、これまで初年度は30%、2年目は15%としていたサブスクリプション型アプリの手数料を、初日から15%に引き下げた。また、特定のメディアアプリに対しては手数料を10%に引き下げた。

関連記事:グーグルがPlayストアの一部手数料をさらに引き下げ、サブスクアプリは15%に、メディアアプリは10%に

画像クレジット:Apple

今回発表されたもう1つの新ルールは「App内イベント」と呼ばれる新機能に関するもので、その使用方法についての単なるガイダンスだ。

WWDCで発表されたApp内イベントは、アプリメーカーにとって、ゲーム対戦、新作映画のプレミア上映、ライブストリーミング体験など、アプリ内で行われるイベントをユーザーに紹介するためのより良い方法となる。App内イベントは10月27日のiOS 15.1アップデートから、App Storeに掲載されるようになる予定だ。

関連記事:アップルがApp Storeに製品ページA/Bテストとアプリ内イベントの宣伝を導入

Appleは今回の新ガイドラインで、開発者に対し、App Store Connectでイベントを設定する際には、入力するメタデータが正確で、直接そのイベントに関連していることを確認するようアドバイスしている。イベントは(複数のストアフロントに関わる場合も含めて)、App Store Connect上で選択した日時に開催される必要がある。また、ディープリンクはタップすると直接イベントが起動しなければならないことや、イベントが収益化できることも明記されている。

これら3つのルール更新は、10月22日より有効となっている。

画像クレジット:TechCrunch

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(文:Sarah Perez、翻訳:Hirokazu Kusakabe)