突然文章が書けなくなる……、Sudowriteの強力なツールがあなたに代わって筆を走らせる

オフィスビルや工場、高層ビルが林立し、光と影が織り成す光景は、夜の街に生命の息吹を感じさせる。この都会のジャングルに生息するのが我々の卑劣なヒーロー、Amit Gupta(アミット・グプタ)だ。彼から漂うのは洗濯物とヘアジェル、そしてかすかなペパーミントの香り。シルクのスーツにはたっぷりのコロンと、革とムスクの柔らかくて暖かな香りがブレンドされている。ウールハットは明るいトーンのベージュ、ネクタイはダークトーンのピンク色だ。スタートアップ創業者である彼の肌は、生まれたての赤子のように柔らかで温かい。握手は力強く、物腰は柔らかである。深い信念を持つ彼の会社の名はSudowrite(スドウライト)だ。共同創業者の名はJames Yu(ジェイムス・ユー)。ユー氏はParse(パース)を設立し、後にFacebook(フェイスブック)に売却した人物でもある。同社は名だたるエンジェルの数々を投資家として持ち、資金調達額は3百万ドル(約3億4000万円)におよぶ。

クルマの騒音、子どもの遊ぶ声、テレビの音、ラジオの音、火災報知器の音、パトカーのサイレンの音、酔っぱらいのつぶやきなど、都会の不協和音と膨大なシンフォニーが流れる中、グプタは血も涙もないニュースを受け取った。白血病と診断されたのだ。彼の人生は完全に狂ってしまった。自分の人生を見つめ直し、自分にとって何が大切なのかを真剣に考える時が来たのだ。彼は深呼吸をしてみる。自分にはもう時間が残されていないのか、それともこれは単なる警告なのか。

Sudowriteにスタートアップとは何かを説明してもらうと、息が止まるほど笑える結果となった。実におもしろい(画像クレジット:Sudowrite)

ドローンのレンタルカメラ用の奇妙なアクセサリークリエイティブな写真マウントのアイデアで知られていた既存のスタートアップ、Photojojo(フォトジョジョ)もいまや昔のこと。会社を売却した彼は、次に何をすべきかを考えなければならなかった。会社を売却して得たお金は、薄い黒い葉のように貧弱で、悪魔の翼のようによじれている。紙のように薄く、煙のように薄く、絹のように薄く、まるで蜘蛛の巣のようだ。

ここまでの記事が奇妙に感じるのは、筆者がSudowriteというツールを使って説明文を書いたからだ。爆笑ものだが、信じられないほど強力なツールでもある。常に意味をなすとは限らないが、重要なのはそこじゃない。このツールはライターに完全に取って代わるものではなく、要約したり拡大したり、時には執筆過程で不足している創造力に火をつけるためのものなのである。この記事の最初の部分が完全に狂っていることからもわかるように、そういう意味でこのツールは非常に良く機能している。

「2014年に病気になり、人生を見つめ直すことになった時にPhotojojoを売りました。私はシリコンバレーを完全に離れて旅に出ました。自分の死ぬまでにしたいことリストにあったことはすべてやりました。しかし移植から5年が経過し、おそらく白血病で死ぬことはないだろうということになったのです」とSudowriteの創業者でCEOのグプタ氏は振り返る。「それで、じゃあこれから人生で何をしようかと考えました。しばらくはコーチングをしていました。そして、ここ数年はSF小説を書いていて、それに夢中になっていました。どん底から這い上がっていくのはとても楽しいことでしたし、私にとってはとても新しいことでした」。

SF作家としての道を歩む中で、グプタ氏はほとんどの作家が経験する問題に直面した。「ライターズブロック」である。書くという作業はここまで難しいことだっただろうか?

「Sudowrite はさまざまな問題を解決してくれると思いますが、その具体的な内容は作家ごとに異なります。私が感じるところの執筆作業における問題点の1つは、非常に孤独であるということでした。すべてが協力的なスタートアップの世界から来たためなおさらでしょうか。役に立っているのかもよくわからない週に一度の読書グループ以外には何の出口もなく、キーボードの前にただ座って行き詰まると机に頭を叩きつけ、とても孤独に感じていました。私たちが最初に考えたのは、隣に座っている創造的なパートナーのような役割を果たすものを作れないか、ということでした。行き詰まったときに彼らに向かって『これが解明できないしうまくいかない。アイデアをくれないか』と相談できる何か。それが当初の目的でした」とグプタ氏は説明する。

創業者のアミット・グプタ氏とジェイムス・ユー氏は、山頂で発見された。彼らは一般的な家猫よりも少しだけ大きく成長することで知られている。墓というよりはゴミ山のような土の中に人骨がごちゃごちゃと横たわっていて、眼窩はまっさらな空を見つめている。創設者らは下駄についた泥を払い、戦いに備えて知恵を絞る。ドラゴンの息づかいがすぐそこに迫っている(写真のキャプションはSudowriteによるもの。キャプションの正確性については確認していない)

「人間のリーディングパートナーのように、うまくアイデアを出し合える相手を作りたいと考えたのです。また、脚本家などのエンターテインメント業界の人々と話をしているうちに、特定のニーズがあることに気がつきました。例えば自分が書いた脚本があって、それの1ページ版と3ページ版を作成しなければならない場合などがあります。非常に特殊な業界の仕事ですが、AIにとってはとても簡単なことです。これはあまりクリエイティブな作業ではないため、Sudowriteのようなツールを使えば彼らがしなければならない嫌な作業を何時間も省くことができるのです。用途はたくさんあると思いますが、インスピレーションを刺激して仕事の流れを良くするのが主な目的です」。

1つの文章をSudowriteによって創造的に膨らませてみた。より細かく描写したものや、心の葛藤を表したもの、またはより簡潔に説明したもの(筆者の最も苦手とするもの)など、AIの力によってシンプルな文章からいくつものバージョンが出来上がる

グプタ氏は作家の孤独感を解消するためにSF小説のライティンググループに参加していたのだが、そこで出会ったのが共同創業者で元Parse創業者のユー氏である。2人はGPT-3をベースにしたアプリの初期バージョンをともに作りあげ、有料の顧客を獲得し始めたところで資金調達を決意した。

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「当初このプロジェクトを立ち上げるために100万ドル(約1億1300万円)程度の資金を集めようと考えていました。最終的には300万ドル(約3億4000万円)を調達しましたが、そのほとんどが個人投資家によるものでした。これは意図的なものです。ベンチャーキャピタルからのプレッシャーを感じることなく、自分たちのペースで実験したり、奇妙なことに挑戦したりするのを許容してくれる人たちが欲しかったのです」とグプタ氏は話している。

同社のエンジェル投資家リストはそうそうたる顔ぶれで、Medium(ミディアム)およびTwitter(ツイッター)の創業者であるEv Williams(エヴァン・ウィリアムズ)氏、Gumroad(ガムロード)の創業者であるSahil Lavingia(サヒール・ラヴィンギア)氏、Parse(パース)の創業者であるKevin Lacker(ケヴィン・ラッカー)氏、WordPress(ワードプレス)の創業者であるMatt Mullenweg(マット・マレンウェッグ)氏、Rotten Tomatoes(ロッテン・トマト)の創業者であるPatrick Lee(パトリック・リー)氏などが名を連ねている。また、Big Fish(ビッグフィッシュ)やAladdin(アラジン)の脚本家であるJohn August(ジョン・オーガスト)氏、Bourne Ultimatum(ボーン・アルティメイタム)やOceans Twelve(オーシャンズ12)の脚本家兼監督であるGeorge Nolfi(ジョージ・ノルフィ)氏など、エンターテインメント界の名だたるメンバーが揃っている。

現在、同社のユーザー数は300人から400人で、プラットフォームの利用料は月額約20ドル(約2300円)だ。今回の資金調達ラウンドにより、創業チームはチーム規模を少し拡張することができたようだ。

「今回の資金調達で実現したことは、何といっても人材の確保です。当社にとって初となる機械学習担当者、開発者、リードデザイナーを採用しました。この3つのポジションを確保することができましたが、しばらくはこの規模を維持するつもりです。当社のユーザーは皆、口コミで集まってきた人たちで、幅広いジャンルの方がいます。小説や脚本を書いている人もいれば、Substack(サブスタック)のニュースレターを作っている人もいます。また、職業として文章を書いているユーザーもいます。変わった使用例もあります。Sudowriteを使って説教を作る宗教指導者や、瞑想のための文書を書く人、また、ロールプレイングゲームを作るユーザーもいます。非常に幅広い層に支持されています」。

Sudowriteは、これまでクローズドベータ版を提供していたが、これからは自身でベータ版に登録して試すことが可能だ。

以下に、グプタ氏が記録したデモビデオを添付しておく。数カ月前のものだが、このツールがどう機能するのかをより詳しくおわかりいたけると思う。

画像クレジット:Sudowrite

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:Dragonfly)

コードとドキュメントの同期を自動化するSwimmが約31.1億円調達

開発チームはプロジェクトの細部を理解したり、新人に仕事を任せるときなどにドキュメントが必要だ。公開するAPIを作っているときには、それらの実装の仕方を述べた良質なインストラクションがますます重要だが、伝統的にドキュメントとそのメンテナンスは多くのプログラマーに愛されない仕事だ。

イスラエルのスタートアップSwimmは、ここに着目した。同社は、デベロッパーにドキュメントを含めるよう促し、その作成を容易にし、古くなったら教えるソリューションを開発した。米国時間11月8日、同社は、そのソリューションの今後の成長のために、2760万ドル(約31億1000万円)という大きなシリーズAを発表した。そして同時に、Swimmのベータをリリースした。

このラウンドはInsight PartnersとDawn Capitalがリードし、これまでの投資家である Pitango FirstとTAU Venturesも参加している。Swimmによると、同社の総調達額は3330万ドル(約37億6000万円)になるという。

SwimmのCEOで共同創業者のOren Toledano(オレン・トレダーノ)氏によると、デベロッパーはドキュメントを軽視することが多い。彼らはコーディングに集中することが好きなので、同社はドキュメンテーションワークをコーディングの工程と容易に統合できる方法を考えた。

「Swimmの目標はデベロッパーがドキュメントを楽に作れる方法、それらがコード自体と一体化しているような方法を作ることだ。そして私の考えによると、そのもっとも重要な部分は、コードドキュメントにくっつけたときに、コードベース本体にある変化を見つけて、何かが変わったからお前は古い、と告げられることだ」とトレダーノ氏はいう。

そんなことをするSwimmは、当然ながらIDEやGitHubなどの上でデリバリーパイプラインの一部になる。そして、変化があればフラグする。それはワードプロセッサーのコメント機能に似ていて、ユーザーはその変化を受け入れたり、必要な変更を加えたりする。そのソリューションはプログラミング言語を特定せず、すべてのタイプのコードに対応する。

トレダーノ氏によれば、ひと言でいえば同社はドキュメントをコードとして扱う。

コードが所在するユーザーのリポジトリにコードも同居し、コードのように振る舞う。つまりコードをプッシュすると、Swimmのドキュメントもプッシュされる。ドキュメントはコードと同じ工程と、CIのパイプラインと、コードをデプロイする同じアプリケーションを通る。そしてこのような環境を使うと、ドキュメントが常にアップツーデートになる。

同社の社員は今30名で、米国に2人、ベルリンに1人、その他はテルアビブにいる。従業員の40%は女性だが、今後の雇用によって男女半々にしたいという。同社は、同社のための雇用のインフラストラクチャが確実にダイバーシティを実現していくものにしたい、という。

「そしてそうなればうちは、人事に関する知識やインフラがオープンになり、私たちが作っている人のインフラは、イスラエルで恵まれていない階層の人びとを今後加えていくものになる。そのやり方は、イスラエルのいろいろな機関とパートナーして、その階層の人たちをハイテクの世界で昇進させていくものになるだろう」とトレダーノ氏はいう。

同社は2019年にローンチし、2020年4月に570万ドル(約6億4000万円)のシード資金を獲得した。今回のラウンドは5月に締め切られた。

画像クレジット:Swimm

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドベースのドキュメントエディターを開発するAlmanacが37億円調達、リモートワーク普及が背景

企業のオフィスへの復帰は遅れ続け、一時的なリモートワーク制度が恒久的なものになりつつあるなかで、リモートワークファーストの文化のためのツールを開発するスタートアップが、際限ない顧客の供給を目の当たりにしているように見える。

「企業は、リモートワークへの移行が新型コロナウイルスによる一過性の異常な出来事ではないことに気づいています」とAlmanac(アルマナック)のCEOであるAdam Nathan(アダム・ネイサン)氏はTechCrunchに語った。「ここ数カ月、爆発的な収益の伸びを見せています」。

Almanacはドキュメントエディターを開発しており、GitHubのような開発者向けプラットフォームからバージョン管理などの機能を取り入れている。リモートワークへの移行を捉え、オープンソースのオフィスドキュメントライブラリ「Core」を通じて新規顧客を獲得するとともに、オンラインで企業のハンドブックを作成するような、オンボーディングを容易にする機能を展開している。

ここ数年、急成長しているスタートアップ企業の資金調達期間が短くなっている。Almanacは2020年、Floodgateがリードした900万ドル(約10億円)のシードラウンドを発表した。この度発表した3400万ドル(約37億円)のシリーズAでは、パンデミックの間、スタートアップへの投資に最も積極的だったTiger Globalがリードした。このシリーズAには、General Catalystや多くのエンジェルとともにFloodgateも参加した。

Floodgateは、この共同作業型ドキュメントエディターを、より多くの企業がオンライン生産性ソフトウェアを本格的に導入する方法としたいと考えている。ローカルファーストのドキュメントエディターをゴミ箱行きにする動きだ。オフィス生産性スイートの世界では、Alphabet(アルファベット)のG Suiteが台頭しつつあるが、依然としてMicrosoft Officeが市場を支配している。

「私たちは、Microsoft Officeに対する世代を超えた挑戦者であると考えています」とネイサン氏は話す。「Microsoft Officeは古いプロダクトであるだけでなく、私たちが現在行っていることからすると、完全に時代遅れのプロダクトなのです」。

投資家らはパンデミック時代のトレンドを背景に多数のスタートアップに投資したが、そのトレンドはすでに消滅したように見える。オフィス文化やハイブリッド文化から完全なリモートワークへの移行が進んでいることは、従業員が柔軟なリモートワーク制度がある仕事を重視していることからも明らかになっている。

Facebook(フェイスブック)のような大手テック企業では、リモートで仕事が可能な従業員のために、フルリモートワークに向けた制度を徐々に整備している。一方、Apple(アップル)の積極的なオフィス復帰プランは、同社の従業員から公開・非公開を問わず珍しいほどの批判が殺到している。ネイサン氏は、多くの企業が変化する現実を把握するにつれ、この対立が加速すると予想している。

「個人的には、ハイブリッドというものが存在するとは思っていません」と同氏はいう。「オフィス文化かクラウド文化か、どちらかを選ばなければなりません」。

画像クレジット:Almanac

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(文:Lucas Matney、翻訳:Nariko Mizoguchi

より良い選択を学ぶオートコンプリートで誰でも文章を早くかけるようになるCompose.ai、企業独自の言葉遣いにも対応

今日のGPT-3の世界では、テキストを扱う新しいソフトウェアサービス話題になることも、珍しくなくなった。Compose.aiもそんな企業の1つで、同社は独自の言語モデルを開発し、多くの人が文章をもっと早く書けるようにしてくれる。初期のプロダクトが早くも投資家の関心を引き、Craft Venturesがリードするシードラウンドで210万ドル(約2億3000万円)を調達したことを同社は米国時間6月8日の朝に発表した。

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Compose.aiは、ウェブを閲覧しているときにどこでも使えるオートコンプリート機能を提供する。AIを搭載したバックエンドは、ユーザーの声を学習し、コンテキスト(文脈)を吸収してより良い回答を提供したり、やがては企業の大きな声を吸収して文章のアウトプットを整える機能も備えている。

共同創業者のLandon Sanford(ランドン・サンフォード)氏とMichael Shuffett(マイケル・シャフェット)氏によると、Compose.aiは、5年後に平均的な人たちは書くときにすべてのワードをタイプしていない、と信じている。同社は、Compose.aiのChromeエクステンションで今後はもっと多くの人たちがそうなって欲しい、と述べている。ブラウザーのエクステンションなら、会社の許可がなくても使えるはずだ、と。

サンフォード氏とシャフェット氏の説明によると、同社の言語アルゴリズムはマルチティアのプロダクトだ。最初の段階として、インターネットそのものを読んで学習(主に英語)し、第2段階として具体的なドメイン、たとえばeメールというドメインを扱う。第3段階にはユーザーの声を学習し、そして今後の第4段階では、企業内で一般化している言語へのアプローチ、すなわちその企業独自の言葉遣いのパターンなどを扱う。

企業が従業員に共有言語モデルを提供することで、彼らが文章を書く際に言語や単語選択の好みを提示できるというのは興味深いコンセプトだ。このように強力で中央集権的なトーンという考え方は、役に立つものと知的に厳格なものの中間に位置する。しかし、多くの人は書くことに自分なりの工夫をしたくない、もしくは書くことをまったく好まないものだ。したがって、中央集権的なサポートを増やすことは、ほとんどの人にとって面倒なことではなく、むしろ時間を節約するハックになるだろう。

いずれにしてもCompose.aiは、新たに得た資金でスタッフを増やそうとしている。現在、フルタイムが3名と若干の契約社員だけだ。サンフォード氏とシャフェット氏によると、今後も小さな会社を維持し、少数の経験豊富な技術者と機械学習のスタッフでプロダクトチームを充実させたいという。

Composeの今後、どのような展開を行うのだろうか?創業者たちはTechCrunchに対し、少しずつ企業との対話を始めており、第4四半期末には有料サービスを開始する予定だと語った。これは早期の収益を意味し、スタートアップのランウェイを大幅に延長することになるだろう。

Composeが構築しているものは技術的にシンプルなものではなく、経済性を適切に調整するための興味深い作業が待っている。同社の創業者はTechCrunchに対し、同社のプロダクトが顧客のために実行するパーソナライゼーションの作業は、間違ったやり方をすると高くつく可能性があると述べている。2人は、将来的に月額10ドル(約1100円)のプランを経済的に魅力的なものにすることは可能だが、「ナイーブ」な方法で行えば、Compose.aiは同じアカウントをサポートするために500ドル(約5万4800円)の計算コストを費やす可能性があるという。

それはまずい。

同社は、間近に迫った有料プランが経済的にうまくいくと確信している。TechCrunchでは、機会があればそのバージョンの同社プロダクトを試してみたいと思っている。

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カテゴリー:人工知能・AI
タグ:GPT-3機械学習Compose.ai資金調達文章

画像クレジット:danijelala/Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Hiroshi Iwatani)

クラウドを使わずドキュメント共同編集機能を実現するP2Pソフトウェア「Collabio」

クラウドレスでの共同編集を可能にするオフィススイートアプリCollabio Spacesをご紹介したい。データや変更履歴の管理を確実に行いながら、ドキュメントの共同編集を可能にするというものだ。

モバイルデバイスやデスクトップコンピューターから、複数人がローカルネットワークで共同編集できるようになるというこのP2Pソフトウェア。Googleドキュメントのような共有文書機能を使用している場合には必ずつきまとう、機密情報をクラウドにアップロードする際のリスクや、複数人にドキュメントをメール送信し、編集済みファイルが返信された後に手作業で変更点を照合する、などという面倒な作業をこのソフトウェアが解決してくれるようだ。

Collabioの機能は今後さらに強化されていくという。将来的には、ローカルネットワークだけでなくどこからでもドキュメントの共同作業ができるようになる。2021年4月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介して動作するP2Pコラボレーションが追加される予定だが、それもリモートサーバーを介すことによるプライバシーリスクを回避している。

同アプリは今のところMacOSとiOSのみに対応しているが、Android版とWindows版も2021年中のリリースを予定しているという。

現在サポートされているテキストフォーマットは、DOCX、ODT、XLSX、ODS。Collabioオフィススイートには、カメラを使ってテキストや画像をスキャンして認識する機能、PDFに注釈やコメントをつける機能(音声入力も含む)、テキスト文書やPDFに電子署名をする機能、プレゼンテーションを表示する機能なども含まれている。

画像クレジット:XCDS/Collabio

英国のロンドンに本社を置き、チェコ共和国のプラハに研究開発拠点を持つXCDS(eXtended Collaboration Document Systems)が同アプリの製作会社だ。同社は約10年前から事業を行っているが、CTOのEgor Goroshko(イーゴル・ゴロシュコ)氏によるとオフィスツールの開発は7年ほど前から行っており、同氏はCollabio自体をスタートアップとして見なしているという。

このアプリは(非公開の個人投資家から非公開額の)資金提供を受けているが、チームは近い将来、開発を継続して製品を強化するためのさらなる資金調達を計画している。

新型コロナウイルスにより過去12カ月間でリモートワークが急速に広まったが、これを機会にコラボレーションツールや生産性向上ツールは大きな改善を遂げ、またオフィス勤務者が同じスペースで働かなくなった事によって直面したワークフローの障壁を安全に取り除けるようになった。現在のCollabioはリモートコラボレーションではなく近距離で働く者同士のためにデザインされているため、次のメジャーリリースがどのようなものになるのか非常に興味深い。

Collabioの初期チームには、Quickofficeの開発者で2012年の買収時にGoogleに移籍しなかったメンバーも含まれている。彼らはドキュメント関連製品のユーザーエクスペリエンスを向上させる方法を考えることに注力し、その結果、長年開発してきたP2Pドキュメントコラボレーション製品を2020年秋にようやく市場に出したのである。

「Collabioの開発を開始したときから長期戦を覚悟していました」とゴロシュコ氏はTechCrunchとの対談で当時を振り返る。「独自のアイデアを開発し始める前に、(オフィススイートソフトの)ユーザーが普段慣れ親しんでいるほとんどの機能を実装する必要があると確信していました」。

「簡単にいうと、弊社のクラウドレスコラボレーションは、クラウドのものとまったく同じように機能します。当然ドキュメントへの接続方法には多少の違いがありますが、それ以外はクラウドで作業する際とまったく同じ体験ができます」。

「2020年9月にiOSアプリからスタートし、10月にはmacOSバージョンを導入しました。初期のリリースでは主に実際のユーザーでアプリを検証し、私たちのアイデアを証明することにフォーカスしています。ローンチして以来約1万5000件のインストールがあり、ユーザーが何を必要としているのか、何を改善すべきなのかなど、貴重なフィードバックを得ることができました。2021年2月から集中的に市場に投入し、この1カ月間で1000人以上のユーザーを獲得することができました」。

CollabioのP2Pクラウドレスコラボレーションと、典型的なサーバーへのアップロード型コラボレーションとの間には、注目すべき重要な差がある。

その1つに、共同執筆や共同編集をしているドキュメントに、他者が常にアクセスできないという点がある。自分のデータへの共同アクセス権を厳密に管理したい場合には、こういった制限が役に立つかもしれない。

「Collabioではクラウドを使わない共同編集を『アドホックコラボレーション』と呼んでいます。クラウドなしでは常にドキュメントにアクセスすることはできないため、時折行われるドキュメントに対する議論や更新には最適です」とゴロシュコ氏。

もう1つの重要な違いは、共有されたドキュメントは所有者のホストデバイスにしか残らず、コピーは所有者しか保存できないという点が挙げられる(少なくとも現時点では)。

「共同作業者はセッションドキュメントにアクセスはできますが、デバイスにファイルをアップロードしたり転送したりすることはできません。セッションはホストがドキュメントを開いている限り続きます。ドキュメントを閉じた時点で他の参加者はアクセス権を失い、またドキュメントをローカルネットワークに保存することはできません。これはプライバシー保護のためですが、今後接続している相手にドキュメントのコピーを保存させるオプションをユーザーに提供するかどうかを現在検討中です」。

すべてのドキュメント作業はローカルネットワーク上のデバイスで行われるため、Collabioを使ったコラボレーションにインターネット接続は必要ない。安定したインターネット接続の確保が容易ではない出張などの状況で、これは非常に役立つと同チームは考えている。

ゴロシュコ氏によると、CollabioはこのローカルP2P接続が「より高い品質を達成できるよう」Wi-FiとBluetoothの両方を使用しているという。「これはAirDrop技術などでも採用されている一般的な手法です。相手のアドレスが特定されると、アプリケーションはWi-Fi経由で接続を確立し、データ交換の速度と品質を向上させます」。

「すべての作業はローカルネットワーク上のデバイスでのみ行われるため、アドホックコラボレーションにインターネットは必要ありません。AirDropでファイルを交換する際にインターネットが必要ないのと同じです。AirDropと同様に、Collabio Spacesには特別な設定は必要なく、すべてが自動的に行われます。セッションを開始すると同僚が自分のデバイスでそれを見ることができ、選択したドキュメントに接続するだけで、コードを知っていればドキュメントを編集することができます」。

Collabioチームは、Appleのテクノロジーと同社の「It just works(それだけで機能する)」という哲学に影響を受けているとゴロシュコ氏はいう。それでも、同製品をApple以外のプラットフォームにも提供できるよう取り組んでおり、年内のリリースを目指している。

「大規模かつ複雑で野心的なプロジェクトですが、我々が革新的なアプローチをもたらすことができると信じています。Officeソフトの市場はかなり保守的ですが、新しいソフトに対する市場からの期待値は高く、そのため公開までにかなりの時間を要しました。しかし参入障壁が高く、ドキュメント管理や編集の分野で革新が遅れているからこそ、そこに大きなチャンスが隠れているのです」。

従来の製品にコラボレーション機能を追加しなければいけなかった通常のオフィススイートとは違い、Collabioは「概念実証の最初の段階から共同編集を念頭に置き」ゼロから開発を行ったため効率化を図ることができたのだと同氏は考えている。そのため、共同編集アルゴリズムの実装が「携帯電話の最小限のリソース消費」でも可能になるというわけだ。

ゴロシュコ氏によると、Collabioのユーザーがモバイルデバイスを使ってコラボレーションセッションを開始した場合、最大5人のメンバーが同時に接続することができ、また全参加者がドキュメントを編集することができるという(デスクトップであればさらに大人数が同時に接続可能だ)。

「蜂の巣型のアイコンからコラボレーションセッションを開始すると、Collabio Spacesアプリがインストールされた周辺のデバイスに共有ドキュメントが表示されます。AirDropによるファイルの共有やAirPlayによるオーディオやビデオのストリーミングと同じように作動し、近くにいる人はセッションに割り当てられたセキュリティコードを知っていれば、編集に参加することが可能です」。

このP2P接続は「標準的なエンド・ツー・エンドの暗号化」によって暗号化されているとゴロシュコ氏はいうが「インターネットにアクセスすることなく、ローカルネットワーク内で信頼できる接続を許可するためのトリック」があると認めた上で「最初はこれで十分だと思いますが、将来的にはこの方法を改善することになるでしょう」と語っている。

独立したセキュリティテストを受けていないどんな初期製品にも同じことがいえるが、前述の理由から、これからCollabioによるこの斬新な製品を利用しようと考えているユーザーは、共同編集の目的で共有するデータの機密性を考慮しながら慎重なアプローチをとるべきである。

一方、同スタートアップはリモートワークでより効率的に仕事をしようと四苦八苦しているオフィスワーカーのニーズに応えることができれば、大きな成長が期待できると感じている。

「チームワークに特化したエディターを作り、コラボレーションを最大限に活用できるようにすることが我々の目標です。他のメンバーとともに仕事ができればメリットも大きいですが、他人と同期するためにはある程度の労力をともないます。プランニング、トラッキング、ディスカッション、レビューなどのこういった作業のほとんどは通常ドキュメントとは別に行われるか、ドキュメントの中での作業になっています。このギャップを埋め、ユーザー間でコラボレーションがスムーズに行えるようにしたいと考えています」。

「弊社にとって市場には大きく分けて2種類の競合が存在すると考えています。1つ目のMS Office、Googleドキュメント、Libre Officeのような大手のオフィスドキュメント編集スイートは、あまりにも膨大な機能を備えているため直接的な競合だとは思っていません。多くの人がほとんどの機能を使いこなせていないのが現状です」。

「そして、2つ目のNotionやAirtableのような新しい製品が登場し、ドキュメント編集プロセスをビジネスに統合するスマートな方法を紹介しています。我々はこの2種類の中間あたりに位置していると考えています」。

Collabioを使用するにはサブスクリプションの購入が必要となるが、1週間までの無料トライアル版が用意されている。

また、コラボレーションセッションのホストになることはできないが、ユーザーとしてドキュメントを閲覧したり編集したりすることはできる無料のオプションもあると聞いている。

2021年5月に予定されているメジャーリリースでは、インターネットを介してどこからでもP2Pコラボレーションができる機能が追加され、またリモートサーバーの必要がなくなるなど、リモートワークの普及に対応して実用性が大幅に拡大される予定だ。

こういった新機能の仕組みは、ひと言でいうなれば「数学」である。ゴロシュコ氏によると、このシステムは共同編集中「常に」ドキュメントの一貫性を保つためのOperations Transformation(操作変換)アルゴリズムに依存しており、リアルタイム操作の必要性がないようになっている。

「共同編集者が最後に何を入力しようと、最終的には必ず同じ内容になります。このアルゴリズムによって必ずしもすばらしいドキュメントができ上がるとは限りません。複数人が同じ場所に入力すれば、訳のわからない言葉になるでしょう。ただし、全参加者の間ですべての変更が同期された後は皆、同じ訳のわからない言葉が並べられたドキュメントを見ることができます。Operations Transformationではリアルタイム操作が必要とされないため、変更が早くても遅くても、最終的には他の変更と一致するように変換されます。つまり、クラウドまたはクラウドレスのコラボレーションモードどちらであっても、共同編集をサポートするための特別なインフラや高速処理が必要ないのです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:CollabioXCDSコラボレーションツールチェコドキュメント共同編集テキストエディターP2Pリモートワーク

画像クレジット:Aksonsat Uanthoeng / EyeEm / Getty Images

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(文:Natasha Lomas、翻訳:Dragonfly)