ナイジェリア拠点のフィンテック企業InterswitchのCEOが語る、アフリカ大陸の金融サービスの現状

アフリカ全土に展開するフィンテック企業のInterswitch(インタースイッチ)は、そのベンチャー投資部門を再開することを計画している。CEOであるMitchell Elegbe(ミッチェル・エレグベ)氏自身から、米国時間9月16日に行われたTechCrunch Disruptの壇上で語られた。

このナイジェリア出身の起業家は、同国の首都ラゴスに拠点を置くInterswitchが予定しているIPOについてはあまり新しい情報を語らなかったが、同社がアフリカのスタートアップへの投資を復活させることを明らかにした。

2002年にエレグベ氏によって設立されたInterswitchは、当時は主に現金ベースで行われていたナイジェリアを、デジタル化するインフラストラクチャを開拓した。同社は現在、アフリカ最大の経済と人口2億人を擁するナイジェリアのオンラインバンキングシステムに、多くのインフラストラクチャを提供している。同社は、アフリカの23の国で、個人向けおよびビジネス向けの決済商品を提供するまでに拡大した。

このフィンテック企業は、2019年に行われたVisaによる2億ドル(約209億6000万円)の株式投資によって、評価額が10億ドル(約1048億円)となりユニコーンの仲間入りをした(未訳記事)。

ベンチャー投資の復活

スタートアップの段階を十分に超えたInterswitchは、2015年に1000万ドル(約10億5000万円)のベンチャー部門(未訳記事)を立ち上げたが、ナイジェリアのフィンテックセキュリティ会社であるVansoを買収(techcabal記事)した2016年以降、そのベンチャー部門を休止していた。

しかしエレグベ氏によれば、Interswitchはまもなくスタートアップへの投資と買収を行うビジネスを再開するという。「私たちはチームを認定したばかりですが、そうした投資を再び開始する予定です」。

彼は新しいファンドの焦点を簡単に紹介した。「今回は、金融投資を行い、Interswitchが持つネットワークを投資企業が自由に活用できるようにしたいと考えています」と同氏はTechCrunchに語った。

「私たちは投資先の企業を厳選していきます。それらは、Interswitch自身が、明確に価値を与えることができる企業でなければなりません。私たちの行動と、私たちが既にお付き合いのあるお客様たちの力で、成長の加速をお手伝いできるような企業でなければならないのです」とのこと。

アフリカのテクノロジー業界における最近のベンチャーの動きが、Interswitchが投資分野に戻るように迫った可能性がある。エコシステムとして、アフリカ大陸のVCは過去5年間でほぼ4倍に増加し、2019年には約20億ドル(約2092億8000万円)に達した(未訳記事)。しかし、そのほとんどは単一企業による投資ファンドからのもので、ベンチャーファンド企業による投資とテクノロジーM&Aは、まだ軽微なものに留まっている。それは過去数カ月にわたって変化し、全体的な上昇がInterswitchの競合他社と見なされる可能性のある法人を中心としたアフリカのフィンテック周辺で発生してきた。

7月には、ドバイのNetwork International(ネットワーク・インターナショナル)が、ケニアに拠点を置くモバイル決済処理会社のDPOを2億8800万ドル(約301億4000万円)で買収(The Africa Report記事)した。買収後まもなく、DPOのCEOであるEran Feinstein(エラン・ファインスタイン)氏は、Network Internationa社はアフリカでの買収をさらに推進する予定だと語った。6月には、別のモバイルマネー決済処理会社であるMFS Africaがデジタル金融会社のBeyonic(ビヨニク)を買収(Venture Burn記事)した。そして8月には、保有資産と融資高でアフリカ最大の銀行である南アフリカのStandard Bank(スタンダード・バンク)が、フィンテックセキュリティ企業TradeSafeの株式を取得(AppsAfrica記事)した。

Safaricomによる主要なM-Pesaモバイルマネー製品(未訳記事)がケニアで台頭して以来、アフリカのフィンテックは成長を続け、競争が激化している。このセクターには数百のスタートアップがあり、現在アフリカ大陸でのすべてのVC投資のほぼ50%を受け取っている。

投資家と創業者が狙っているチャンスは、アフリカに多数いる銀行口座を持たない人々と銀行口座は持つものの活用できていない消費者(Investopedia記事)、そして中小企業たちをオンラインにしようとするものだ。世界銀行のデータによると、サハラ砂漠以南の10億人(世界銀行データ)のおよそ66%が銀行口座を持っていない。モバイルベースの金融プラットフォームは、そうした地域全体をシフトさせるための最良のユースケースを提示してきた。

Interswitchは、アフリカのデジタルファイナンスレースのリーダーとしての地位を確立している。しかし、革新的で若いフィンテックスタートアップに、投資や買収を行う積極的なベンチャー部門がなければ、現在の役割をどのように維持または拡張できるのかを想像することは困難だ。

IPOについての具体的な話は出なかった

エレグベ氏は、長い間期待されてきたInterswitchのIPOに対してはあまり語らなかった。会社はまだ上場するつもりなのかと尋ねたところ、彼はそれについては回答を控えたいとした。「現時点では、ビジネスの成長と顧客のための価値の創造に注力していて、それが私たちの主な焦点なのです」とのこと。

IPOの可能性がまだあるのかどうかについて「はい」または「いいえ」の回答を求めたところ、エレグベ氏はそれは「はい」だと答えた。「私たちはプライベートエクイティの投資家を抱えていますが、この先ビジネスのある時点でのエグジットを彼らは望んでいます」という。「イグジットのタイミングを迎えるときには、テーブルにはさまざまなオプションが置かれることになりますが、IPOもそのオプションの1つです」。

InterswitchのIPOについては長年話題されてきた。エレグベ氏は2016年に、TechCrunchに対して、ラゴスとロンドン証券取引所の二重上場が可能だと語っていた。その後、他のInterswitchチャネルを通じて、2017年のナイジェリアの景気後退と通貨のボラティリティのために公開が遅れたという噂が流れた。2019年11月には、状況を知る情報筋が、TechCrunchに対してその背景を語っていた「IPOの可能性はいまでも非常に高いままです。おそらく2020年の前半のいつかでしょう」。その後、新型コロナウイルス危機とそれに伴う世界経済の低迷が起こり、それがInterswitchのIPO計画を再び遅らせた可能性がある。

同社が上場すれば、それはナイジェリアとアフリカのフィンテックにとって大きな出来事となるう。アフリカ大陸には、VCが支援し世界的に上場しているフィンテック企業は存在していない。Interswitchの投資家のイグジットは、アフリカ大陸のスタートアップに対する投資機会の様子をうかがっている主要なファンドから、より多くのVCをナイジェリアやアフリカ全土へと引き寄せることになるだろう。

アフリカへ再注力

グローバルな製品展開に関してエレグベ氏は、今のところアフリカへの注力を継続する予定だと説明した。「アフリカ大陸の中で、Interswitchには十分な機会があります。私たちはできるだけ多くのアフリカ諸国に広がることを望んでいます。そしてInterswitchをアフリカ大陸への(金融)ゲートウェイとして位置付けたいと考えています」と彼はいう。

エレグベ氏は、主要な金融サービス企業との提携を通じて、アフリカの顧客基盤にグローバルな金融アクセスを提供し続けると説明した。2019年8月にInterswitchは、Verveカード所有者がDiscoverのグローバルネットワークを使って支払いを行えるようにするパートナーシップを開始した。

同氏は、ナイジェリアでのビジネスを行う際の欠点と可能性のバランスをとる見方を示しながら、今回のDisruptにおけるセッションを終えた。近年ナイジェリアは、アフリカにおける大規模な技術拡大、VC投資、そしてスタートアップ形成のための非公式なハブ化が進んでいる。しかし、ナイジェリアはインフラストラクチャーに関しては厳しい運営環境が続いている、それはしばしば政治的腐敗とボコ・ハラムのテロ行為による北東部地域の不安定に関連していることが多い。

「ナイジェリアは非常に大きな人口と非常に大きな市場を抱えています。私たちには解決する必要のある課題がたくさんありますが、ナイジェリアにはチャンスがあるので、多くのお金がそこへ向かっていることは理解できます」と彼はいう。

ナイジェリアの検討をしているテック投資家へのエレグベ氏のアドバイスは以下のものだ「短期的な見方をしないでください。そこには素晴らしい仕事をしている素晴らしい人びとがいます。インパクトを与えたいと思う正直な人たちです。そうした人たちを探し出す必要があります」。

原文へ

(翻訳:sako)

オンラインファクタリングのOLTAがあいおいニッセイ同和損保と業務提携、コロナ禍での企業の資金繰りを支援

オンライン完結型ファクタリングサービス「クラウドファクタリング」を提供するOLTAは9月15日、MS&ADインシュアランスグループのあいおいニッセイ同和損害保険との業務提携契約を締結したことを明らかにした。

今回の提携により、あいおいニッセイ同和損保の取引信用保険に加入している全国の中小事業者が、クラウドファクタリングを利用することでより手軽に素早く運転資金を調達できるようになる。

OLTAでは、約20万社の法人データに基づくAIスコアリングモデルを開発。このモデルを基にオンライン完結型のファクタリングサービス提供しており、最短24時間での現金化を実現している。提供開始から約2年で申込総額は200億円を突破しているとのこと。今後は、全国の金融機関やSaaS企業などと幅広く連携していく予定だ。

ファクタリングとは、売掛債権を買い取ってその債権の回収を行う金融サービスのこと。OLTAでは利用者・利用企業から請求書を買い取って、まずは請求金額を利用者・利用企業に全額振り込む。その後、利用者・利用企業は取引先から支払われた実際の売掛金の全額と2〜9%の手数料をOLTAに支払う(弁済)するという流れだ。なお、ノンリコース(償還請求権なし)のため、売掛先が万が一倒産した場合は自社の負債にはならない。

利用者・利用企業は通常は2カ月以上かかる売掛金の入金を待たずに手元に現金を確保できるほか、取引先にファクタリングを利用していることを知られることはない。なお手数料の利率については、請求先の信用情報に加え、利用者の利用実績やOLTAに提出した財務情報などに基づき都度判定しているとのこと。同社では長期利用者に向けた優遇コースを準備中で、詳細は不明だがクラスが上がることで手数料などが優遇されるようだ。

あいおいニッセイ同和損害保険としては、新型コロナウイルスの流行により、売掛債権の回収不能を補償する取引信用保険のニーズが高まっていることが背景にある。また流行の長期化によって事業活動の資金繰りが厳しくなってきているという中小企業を支援する目的で、クラウドファクタリングを取引信用保険契約者向け付帯サービスとして利用することなった。取引信用保険とは、商品の買主が売主(保険契約者)に対して支払うべき代金(売掛債権)が、買主の倒産などによって支払われない場合に、保険契約者が被る損害を補償する保険のことだ。

クラウドエクイティプラットフォームのSeedrsが既存のセカンダリーマーケットをあらゆる企業に開放

Seedrs(2017年にイギリス初のフル機能プライベートエクイティセカンダリーマーケットの提供を開始)は、すべての非公開企業にセカンダリーマーケットを開放している。 これにより、創設者、従業員、初期投資家がIPOやエグジットを待たずに二次的流動性を実現できる。Seedrsは3年前から同社プラットフォームで既発行株式の放出を行ってきたが、これまで同プラットフォームは、直接Seedrsと取り引きしたことのあるユーザーだけに開放されていた。

投資家はSecondary Marketの「ダイレクトリスティング」に自らの株式を直接上場し、Seedrsの投資家ネットワークに売却できるほか、「セカンダリーキャンペーン」を介して顧客や既存の株主に株式を売却すること、あるいは「プライベートリスティング」を介して株式を売却したり、機関投資家やファンドからなるSeedrsネットワークにアクセスしたりできるようになる。

これまでのところ、Seedrsは総額4000万ドル(約42億円)の資金をAugmentum FintechやSchroders plc(旧Woodford Investment Management)を含む投資家から調達している。同プラットフォームでエグジットを果たした最も有名な企業には、Pod Point、Wealthify、FreeAgentが含まれる。

この開放が行われるまでに、Seedrs Secondary Marketは2万2000件のセカンダリトランザクションを実行し、過去6か月間のセカンダリートレードで平均50万ポンド(約7000万円)/月を記録した。 2020年、Revolutの株主は150万ポンド(約2億1000万円)以上の株式を売り、市場での平均利益は598%にのぼった。現在は、株式をプレミアム価格で販売したり割引したりできるよう、Secondary Marketサービスに動的価格設定が追加された。

今年初め、SeedrsとCapdeskは共同での取り組みを実現し、これによりCapdeskに上場されている企業はSeedrsマーケットプレイスを介して株式を売却したり資本政策表を調整したりできるようになった。

SeedrsのCEO、Jeff Kelisky(ジェフ・ケリスキー)氏は、一次資金調達に加え、同社は毎月新たに30社をSecondary Marketに追加していると語った。

「企業が長期間株式を公開しない現在の環境では特にそうですが、二次流動市場へのアクセスが非公開企業の投資エコシステムにおいてますます重要になっています。プライベートエクイティ投資に向けたフルスケールのマーケットプレイスを構築する中で、当社は非公開企業の既発行株式の売却は投資において不可欠かつ期待を集めている要素だとみています」と彼は述べた。

COVID-19によるパンデミック下で、投資家のSecondary Marketに対する需要が高まり、プラットフォームへのアクセスを望む非公開企業や株主からの問い合わせが増えているという。

セカンダリーキャンペーンを実施した最初の企業は、子供を有害なオンライン活動から保護するスタートアップ、SafeToNetであった。 同社は一次資金調達ラウンドで150の投資家から250万ポンド(約3億5000万円)を確保し、その後、創設者および従業員らによるセカンダリーで30万ポンド(約4000万円)を獲得した。

SafeToNetの共同創設であるRichard Pursey(リチャード・パーシー)氏は「当初の資金調達の目標額であった250万ポンド(約3億5000万円)を速やかに達成でき、既発行株式の売却を通じてより多くの投資家に当社のコミュニティに参加いただける機会を提供できたことを大変喜ばしく思います。当社にとっては、一部の既存の株主にエグジットの機会を提供しつつ、同時に独立した企業として引き続きSafeToNetを成長させることが重要です。また既発行株式の売却は当社にとって、株式をさらに手放すことなく新しい投資家に参画いただき、ブランドに対する情熱をもった支持者で当社の顧客コミュニティを構築する素晴らしい方法でもあります」と声明の中で述べた。

共同創設者兼会長のJeff Lynn(ジェフ・リン)氏は「これは、当社がここしばらく取り組んできたものです。当社はプライマリーキャンペーンが終了したその裏で、人々にセカンダリートレードをする場を提供していました。現在、当社は、今までに一度も取り引きしたことのない企業との協力を開始し、初期投資家や従業員の既発行株式の売却を支援しようとしています。需要と関心は非常に高まっています」と、Techcrunchに語った。

「私はこの状況はおそらくエコシステムの進化を示していると思います。現在、2010年代前半に資金提供を受けたテック企業が、依然として成長を続け、事業も順調ではあるものの必ずしもIPOには至っていない、という地点にたどり着いたところです。従って多くの初期投資家が幾分の流動性を得たいと望んでおり、当社はそれを提供しようとしています。」

彼は競合他社であるCrowdcubeは企業が既発行株式の売却をスムーズにすすめられるよう支援するサービスを行ってきたが、Seedrsもセカンダリーマーケットへの直接上場を行っていると述べた。「企業からの投資家は当社のプラットフォームを利用することで、フルキャンペーンを行わずにセカンダリーマーケットを通して株式を直接売却することができます。また、当社はこれを当社の機関投資家向け運用商品に織り込んでいます。ですから、当社のいわゆるアンカー投資家サービスに既発行株式の売却を導入することで、約350の機関投資家および準機関投資家を対象にプットオプションの取引が可能になります。」

テック企業は特にその傾向が強いが、プライベートエクイティのサービスプロバイダーが統合する中、セカンダリーマーケットの規模は世界規模で拡大中である。

関連記事:個人が非上場スタートアップに投資できる「CAMPFIRE Angels」、先行登録を受付開始

カテゴリー:フィンテック

タグ:クラウドファンディング

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

PayPalとVisaがグローバルで迅速な支払いを可能にするInstant Transfer取引を拡充

新型コロナウイルスの大流行は、人々や企業の財政に大きなストレスを与え続けている。このような状況に対応するため、PayPalとVisaは米国時間9月10日、手元の現金をより早く人々の手に届けるサービスの拡大を発表した。Instant Transfer(インスタント・トランスファー)は、送金された資金をPayPalが銀行口座(待ち時間を数日から数秒に短縮)に移動させることで、人々や企業が転送された資金を素早く使えるようにするサービスだ。国内および国際決済の両方で利用できる。

Instant Transferは、PayPalが提供するPayPal、Venmo、Xoom、Brainintree、Hyperwallet、iZettleなどのサービスを利用して送金や受け取りを行う世界中の消費者や企業が対象だ。Instant Transferオプションを選ぶことで、電送された資金をより早く入手できるようになる。なお、PayPalのサービスは支払いにVisa Directを利用している。なお、このサービスはPayPalが2019年3月に開始したInstant Transfersの進化と拡大であり、当初は米国で始まった。

StripeやSquareだけでなく、ヨーロッパなどほかの地域の決済プロバイダーも、転送された資金がそれぞれのプラットフォーム上で受け取り側が利用可能になるまでにかかる待ち時間を短縮するために、長年にわたってさまざまな製品を立ち上げてきた。

しかしここ数カ月で、即時送金・受け取りの重要性が増している。一部の企業、特に大企業では実際に景気が回復しているという事実にもかかわらず、多くの人が職を失い、売買の動きが鈍化している。一方で、受け取ったお金を使うまでの時間が短縮され、必要性が大幅に高まっているのだ。

PayPalが実施した最近の調査では「米国の中小企業の76%がキャッシュフローの不足に苦しんでいる」とのこと。91%が「リアルタイム決済がキャッシュフローの不足に役立つ可能性がある」と回答したという。

PayPalがこれを世界的に展開しているもう1つの理由は、現在多くのプレーヤーがしのぎを削っている決済市場での競争力を高めるため。電子商取引は、我々が指摘したように非常に局地的な問題を含んでいる。各国の消費者と企業は、それぞれの国で使いやすい方法で送金を受け取りを行っているが、これは他の市場と同じ方法かもしれないし、同じで方法ではないかもしれない。また、資金が使われる場所は国によって大きく異なる。

PayPalはこれまで、自社サービスの立ち上げと興味深いスタートアップへの投資を通じてこの問題に対処しようとしてきた。自社製品内でInstant Transfersを提供することにより、自社プラットフォームでより多くのユーザーが取引させることができる。PayPalにとっては、競合すると思われるサービスも統合して利用できるため、より柔軟なサービスとして提供でき、結果的により良い結果をもたらすことになる。

VisaのCPOであるJack Forestell(ジャック・フォレステル)氏は声明で「このような困難な時期には、大切な人にお金を送ったり、収益へのリアルタイムのアクセスを中小企業に提供したりすることが重要です」と述べた。「PayPalとグローバル規模で提携することで、私たちは2つの信頼できるブランドを結集し、世界中の何億もの消費者と中小企業に金融の安定性を維持するために役立つ、迅速で安全な支払いオプションを提供しています」とコメントしている。

Visa Directは今年に入ってすでにビジネスを大きく伸ばしており、同社によると第3四半期には約80%の成長を記録しているとのこと。決済の高速化は、長期的には新型コロナウイルスの感染蔓延や社会的距離対策がどのように展開するかにかかわらず、昔ながらの取引方法の代替サービス、あるいは代理店としての地位を確立したいと考えている電子商取引企業にとっては重要なポイントだ。

PayPalのOmni Payments担当SVPであるJim Magats(ジム・マガッツ)氏は声明で、「デジタルは急速に人々や企業が資金を動かすための好ましい方法になりつつあります」と述べている。「世界的な新型コロナウイルスの感染拡大がデジタルへの移行を劇的に加速させる一方で、デジタルへの移行は感染拡大を長引かせる長期的な変化であると考えています。Visaとのパートナーシップを拡大し、世界中のより多くの顧客が資金をより迅速に利用できるようになることを楽しみにしています」と続けた。
画像クレジット:dem10 / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

インドのミレニアル世代向けの投資アプリGrowwが31.8億円を調達

インドでは毎月1億5000万人以上がデジタル決済アプリを使用しているが、投資信託や株式に投資しているのは約2000万人にすぎない。その状況をミレニアル世代に訴求することで変えようとしているスタートアップが、大きな資金を得た。

バンガロールを拠点とするGroww(グロウ)はインド時間9月10日、シリーズCラウンドで3000万ドル(約31億8000万円)を調達したことを発表した。Y Combinatorの成長ステージ投資ファンドであるYC Continuityがこのラウンドを主導し、既存の投資家であるSequoia India、Ribbit Capital、Propel Venturesが参加した。今回のラウンドによって、創業3年のスタートアップGrowwの調達総額は5900万ドル(62億5000万円)になった(未訳記事)。

Growwを使えば、ユーザーは体系的投資計画(SIP)や 株式連動型貯蓄などを含む投資信託に投資することができる(未訳記事)。このアプリは非常に簡素化されたユーザーインターフェイスを採用することで、主にミレニアル世代を中心とした顧客層に、投資の世界を理解しやすいものとする。なお現在インドで利用可能なすべてのファンドを提供している。

Growwの共同創業者で最高経営責任者のLalit Keshre(ラリット・ケシュレ)氏はTechCrunchのインタビューの中で、この数か月間、同スタートアップは、ユーザーがインド企業の株やデジタルゴールド(現物に裏打ちされた金の所有権)を購入できるようにサービスを拡大してきたと語った。ケシュレ氏とGrowwの他の3人の共同創業者たちは、自分たちのスタートアップを立ち上げる前は、Flipkart(フリップカート)で働いていた。

Growwは、投資信託の提供によって800万人を超える登録ユーザーを集め、20万人以上のユーザーがプラットフォーム上で株式を購入したとケシュレ氏は語る。新しい資金により、Growwは国内でのリーチをさらに拡大し、新製品の導入も行うことができると彼はいう。

そうした新製品の1つは、ユーザーが米国上場企業の株式とデリバティブを購入できるようにする機能だという。ケシュレ氏によれば、スタートアップはすでに一部のユーザーで、この機能をテストしているという。

YC ContinuityのパートナーであるAnu Hariharan(アヌ・ハリハラン)氏は声明の中でこう述べている「Growwはインドで最大の、消費者向け仲介会社になりつつあると思います。まだ会社が単なるアイデアだった時期に、創業メンバーたちとYCで出会いました。彼らは世界レベルでもトップクラスのプロダクト開発者たちだと思います。私たちは世界最大の小売金融プラットフォームの1つとなるGrowwとパートナーであることに感謝しています」。

ケシュレ氏によると、Growwのユーザーの60%以上がインドの小さな都市や町の住人で、さらにその60%が、これまでにこうした投資を行った経験がない人たちだという。スタートアップは、投資の世界について人びとを教育するために、いくつかの小さな都市でワークショップを行っている。そしてそこにこそ成長の機会が転がっている。

Sequoia Capital Indiaの代表であるAshish Agrawal(アシシ・アグラワル)氏は声明の中で、「インドでは金融市場への個人投資家の参加が増加しています、前四半期だけで200万人の新しい株式市場投資家が生まれました」と述べている。

現在Zerodha、ETMoney、INDWealth、Cube Wealthといった数多くのスタートアップがインドで登場し、拡大して、同国内で増加するインターネット人口に資産管理プラットフォームを提供している。Paytmなどを含む多くの既存の金融会社たちも、投資信託への投資を含めるように提供内容を拡大している。ここ数カ月、インドで金融サービスのカタログを積極的に拡大した(未訳記事)したAmazon(アマゾン)も、デジタルゴールドをインド国内で販売している。

画像クレジット:Dhiraj Singh / Bloomberg / Getty Images

原文へ

(翻訳:sako)

銀行は、エンタープライズAIやフィンテックの起業家が思うほどバカじゃない

著者紹介:Simon Moss(サイモン・モス)氏:Symphony AyasdiAI(シンフォニー・アヤスディエーアイ)のCEO。同社では、金融サービス向けのエンタープライズAIを開発。

Selina Finance(セリーナ・ファイナンス)の株価が5300万ドル(約56億円)上昇し、またその次の日には別のスタートアップ銀行の株価が6470万ドル(約68億円)上昇したことが立て続けに報道されたことで、エンタープライズAIやフィンテックの熱心な支持者が「銀行は何もわかってない。銀行には手助けか競合が必要だ」とまた豪語し始めている。

彼らの主張はこうである。銀行は、フィンテックの素晴らしいアイデアをいつになっても導入しない、どうやら業界の方向性を分かっていない。技術者のなかには、銀行向けの商品マーケティングにうんざりし、思い切って自分のチャレンジャーバンクを立ち上げた人もいる、と言うのである。

だが、従来の金融業者が黙ってはいない。フィンテックには「購入するか自分で構築するか」という選択が付きものだが、金融業者のほとんどはその質問自体が間違いだと知っている。ソフトウェアを購入するか、社内で構築するか。ほとんどの場合、問題はそこではない。銀行の多くは、もっと難関で、されど賢い道を突き進んでいる。アクセラレーションである。

銀行のほうが賢いといえる2つの理由

とはいえ、銀行が悲惨な間違いをしたことがないかと言えば、そうではない。批評家は、銀行がソフトウェア企業になるために何十億ドルも浪費して、コストや製品寿命の点で膨大な無駄が発生する巨大なIT事業を生み出し、無意味なイノベーションや「社内ベンチャー」に投資してきた、と批判している。しかし全体としては、銀行にインパクトを与えようとする起業家市場よりも、銀行のほうがビジネスについてよく理解していると言える。

まず、ほとんどの技術者には欠けているが銀行は持っているものがある。それは、銀行の専門領域に関する知識だ。技術者は、そのような専門領域に関する知識を過小評価しがちだが、それは間違いである。深い協議、緊密なプロダクト管理の調整、簡潔で明確なビジネス有用性をともなわない抽象的なテクノロジーが多過ぎると、意図する実体的価値を生み出すために使えるテクノロジーが見過ごされてしまう。

2つ目に、銀行が購入に慎重なのは、人工知能やその他のフィンテックの価値を見損なっているからではない。価値を非常に高く評価しているからこそ、慎重になっているのである。エンタープライズAIに競争力を高める力があることを知っているため、競合他社と同じプラットフォームを導入し、同じデータレイクからデータを引き出すのはもったいないと思っているのだ。

近い将来、競争力や差別化、アルファ値、リスクの透明性、業務の生産性といった要素は、どれほど生産的かつ高パフォーマンスの認知ツールを大規模に導入できるかで決まるようになっていく。NLP、ML, AI、そしてクラウドを組み合わせることで、ツールの規模が大きい順に、競争力のあるアイデアをより迅速に具現化できるようになる。問題は、競争上の主な強みをどのように獲得できるかだ。簡単に答えられる企業は多くないだろう。

正しい答えに導けるなら、銀行は自社のドメインの専門知識が持つ真の価値を手に入れ、差別化された強みを生み出すことができる。誰かのプラットフォームで、他のすべての銀行と肩を並べなくて済むのだ。自らの業界の方向性を定め、価値を守ることができる。AIは、ビジネスの知識や創造力を増強させるものだ。ビジネスの知識が欠けていれば、資金の無駄になってしまう。これは、起業家についても同じことが言える。自社のポートフォリオをビジネスと完全に連動させられなければ、製品イノベーターの衣をまとったコンサル業者になってしまうというわけだ。

本当に強いのはどちらか

実際、銀行はよく言えば慎重、悪く言えば臆病なのだろうか。次なるトレンドに大きな投資をして失敗に終わらせたくない、フィンテック業界の本物と偽物を見分けられない。そうした主張も理解はできる。実際、銀行はAIに大金を費やしてきた。だが、本当にそうだろうか。

一見すると、銀行はAIと呼ばれるものに大金を費やしてきたように見える。過去には、必要とされるレベルの容量や並行処理機能までスケールできる見込みがまったくない社内プロジェクトを行ってきた。また、本当は実現できないと誰もが分かっているような高い目標を掲げ、大規模なコンサルプロジェクトのなかで身動きが取れなくなってしまったケースもある。

この不安感は銀行業にとってはプラスとは言えないが、間違いなくチャレンジャーバンクという新たな業界を発展させるカギとなった。

チャレンジャーバンクの登場は、一般的に、従来の銀行が過去にとらわれすぎて新たなアイデアを導入できないために生じたことだと考えられている。だが、投資家はいとも簡単に同意する。ここ数週間、米国のチャレンジャーバンクであるChime(チャイム)がクレジットカードの展開を発表したほか、Point(ポイント)が米国を拠点に設立され、さらにはフィンテック企業のSolarisbank(ソラリスバンク)の支援のもと、チャレンジャーバンクVivid(ビビッド)がドイツで設立された。

舞台裏で起こっていること

従来の銀行は、データ科学者の雇用にリソースを割いており、その頭数はチャレンジャーバンクを大幅に上回ることもある。従来の銀行家は、外部のフィンテックベンダーに質問して問題を解決してもらうより、社内のデータ科学者に質問し、問題について意見を聞きたいと考えているのだ。

賢いのはこちらのやり方だろう。従来の銀行家は、社内で100%所有できないフィンテックサービスに資金を投じる必要はあるのか、それより、権利の一部を購入し、競争力となる部分を社内で保持できないか、ということを考えている。競争力となる強みを、どこかのデータレイクに野放しにしておきたくないのである。

銀行の視点で考えると、社内で「フィンテック」ができなければ、競争上の強みは生まれない。投資対効果は常に厳しく検討されている。問題は、銀行はデザインの創造力をかき立てるような場所ではないという点だ。大成功を収めたプロジェクトは、JPMC(JPモルガン・チェース)のCOINプロジェクトくらいである。ただ、これはクリエイティブなフィンテックと銀行が密に連携した例であり、結果としてビジネス上の明確な問題が浮き彫りにされた。製品要求仕様書の条件が不十分だという問題である。社内開発のほとんどはオープンソースを相手にしており、投資利益率に関して予算を吟味していくにつれ、魔法のきらめきも消えていくものだ。

今後数年の間、銀行がこうしたサービスを展開して新企業を買収していくにつれ、新たな基準の設定について議論が盛んになっていくだろう。銀行業のオプションが急増していくなか、最終的にはフィンテック企業と銀行が融合すると言える。

技術面での負債を抑える

もちろん、自社での構築方法を探るのに時間をかけすぎる結果、業界の進歩に後れを取るというリスクはある。

技術者は、マネジメントを素人が行えば着実なステップから外れてしまうと忠告するだろう。開発段階のニーズが二転三転することで、技術面での負債が溜まるというわけだ。データ科学者やエンジニアにプレッシャーをかけすぎるのも、技術面での負債の増加を早めることになる。バグや非効率がなおざりにされ、新機能もその場しのぎになってしまう。

これが、社内構築のソフトウェアにスケーラビリティがないと言われる所以である。コンサルタントが開発したソフトウェアでも、同じ現象が見られている。システム内の古い問題が新しい問題の陰に隠れ、結果として、低品質のコードを基盤に構築した新しいアプリケーションでエラーが生じるようになる。

では、どうやって修正できるだろうか。適切なモデルは何なのか。

ありきたりな質問ではあるが、基本に立ち返ってこそ成功があるというものだ。理解すべきなのは、大きな問題はクリエイティブなチームによって解決できるという点だ。個々がそれぞれの意見を理解し、対等に扱い、何を解決すべきか、またどのような成功を見据えているのかを完全にクリアにした状態でマネージメントを行わなければならない。

スターリン時代のプロジェクトマネジメントを実践すれば、成功確率は規模の大きい順に上昇する。つまり、将来的に成功するには、銀行はパートナーとなるフィンテック企業の数を絞り、銀行が生み出す知的財産の価値をともに高く評価する、格段に信頼できるフィンテック企業と連携する必要がある。両者とも、連携なくして成功はないと認めなければならない。道を模索するのは簡単ではないが、互いの協力がなければ、銀行も、そして銀行との協働を図る起業家も、いばらの道を突き進むことになる。

関連記事:英国のフィンテック「Revolut」が日本でも口座開設をスタート

カテゴリー:フィンテック

タグ:銀行

[原文へ]

(翻訳:Dragonfly)

オランダ発の決済スタートアップMollieが110億円調達、バリュエーション1000億円超え

新型コロナウイルス感染症のパンデミックで家にいる時間が長くなり、消費者はさまざまなものをオンラインで購入するようになった。そうした事態を受けて、eコマースは過去8カ月かなりの利用増となっている。この影響でかなりの成長をみせているアムステルダム発の決済スタートアップが9月7日、プロダクトの充実や需要に対応する国際展開を引き続き進めるための大型の資金調達を発表した。

決済機能をサイトやアプリに統合するためのシンプルなAPIベースの方法を提供しているスタートアップのMollie(モリー)はTCVがリードする投資ラウンドで9000万ユーロ(約112億円)を調達した。今回のシリーズBで同社の累計調達額は1億1500万ユーロ(約144億円)となる。特筆すべきは、同社のバリュエーションが10億ドル(約1060億円)を超えることだ。創業者でCEOのAdriaan Mol(アドリアン・モル)氏がTechCrunchとのインタビューで明らかにした。

Mollieは2004年から事業を展開しているが、資金調達は今回がまだ2回目だ。初のラウンドは1年前で、2500万ユーロ(約31億円)を調達した。同社がスタートアップのレーダーにそれほど引っかかっていなかったのはおそらくこのためだろう。

「バックエンドとフロントエンドを、まだ両親と一緒に暮らしていた時に私自身が構築した」とモル氏は話した。「それがオランダ流。かなり長い間アイデアを温める。それが会社の礎だと思う」。

Mollieはここ数年で多くのマイルストーンを達成した。かなりのバリュエーションで突然登場したように見えるが、そうした時期を経て今がある。

同社はこのところ主に中小の事業者にフォーカスしている。そうした事業者のほとんどが十分なサービスを受けられていない。顧客は10万を超え、主にオランダ、ベルギー、ドイツにいる。名の知れているところではWickey(ウィッキー)、Deliveroo(デリバルー)、TOMS (靴の会社)、UNICEF(ユニセフ、国際連合児童基金)などが挙がる。

Mollieは2020年に、決済額100億ユーロ(約1兆2500億円)超に向けて順調で、前年比の成長率は100%となる見込みだ。ドイツなど一部のマーケットでは成長率は1000%を超えることが予想される。すでに黒字化も達成している。

「効率化という点で当社は正しい位置につけている」とモル氏は述べた。「しかし競争力を維持するために新たなプロダクトに投資する必要がある」。

実際、決済サービスプロバイダーのマーケットは激戦区だ。Stripe(ストライプ)や、Mollieの仲間のAdyen (アディエン)のような企業もAPI提供のコンセプトで確固たる事業を構築している。いくつかのコードで決済をサービスに取り込めるというものだ。これらの企業は人気があるだけでなく、かなり資金を有しており、さらなるツールの開発を継続する体勢を整えている。そして国際的に事業を拡大し続けている。

Mollieはそうした企業や他の競合他社と2つの点で差異化を図っている。1つは、かなり細分化されたままであるマーケットで、ローカライズされた決済商品を提供していることだ。そうしたマーケットでは、顧客や事業者が使いたがる決済方法は国によって異なる(それらの国ではStripeのようなサービスがまだ完全に提供されていない)。

2つ目は、さまざまな種の決済方法を統合することの難しさを少しも表に出さずに、素早く簡単に統合できるようにしていることだ。事業者そして顧客の両方にとっての使いやすさは、買い物かごに商品を残したままにすることが少なくなることを意味する。そしてサイト訪問者のコンバージョンレートはかなり高い。コンバージョン率は通常7%にもなる、とモル氏は説明した。

「もし旅がトラブルなくスムーズなものであれば、客はドロップアウトしない。それは当社の顧客にとって直接の売上高になる」とモル氏は話した(価格は明確に示されているが画一的ではない。ボリューム、そしてどの決済方法が統合されて使われているのかによる)。

そうした点は、かなりの収益性と効率性によるMollieの成長率とともに、TCVを引きつけている。

「使用場所を拡大することは極めて重要だ」とTCVのパートナーであるJohn Doran(ジョン・ドーラン)氏は述べた。「子供でも使えるくらい本当に簡単だ。いわば、決済世界のApple(アップル)を構築しようというもの」

モル氏がMollie立ち上げのアイデアを思いついたのは、自身の前のスタートアップMessageBird(メッセージバード)に決済サービスを統合しようとしていたときだった。MessageBirdはAPIベースのメッセージサービス(未訳記事)だ。Wilioの欧州版のようなものだと考えて欲しい。利用できる決済のサービスはすべて平均以下で、望む方法で使用できないことに気づいた、とモル氏は話した。そこでエンジニアであるモル氏は自ら「インハウス」でソリューションを構築することにした(文字通り、彼の両親の家でだ)。

なぜ1つの傘の下で両サービスを提供しなかったのか尋ねた。するとモル氏は2つの事業とアイデアは単にあまりにも大きすぎて1つの事業として展開するにはさほど類似性がないからだと述べた。そして同氏は役員会にはまだ残っているもののMessageBirdの経営から身を引き、Mollieにすべての時間を充てることにした。

そして決済事業への専念が報われた。

Mollieにとって次なるステップは、決済に絡むサービスの構築を進めることだ、とモル氏は語る。顧客向けの運転資本の提供や、中小の事業者が1つのプロバイダーから通常受けられない他の金融サービスといった分野だ。「従来の銀行が中小事業者に提供していないプロダクトは多い」と同氏は述べた。「従来の銀行は、中小事業者とのビジネスでたくさん稼がないために中小事業者に投資しようという動機付けが得られない」。決済に絡むサービスとしてはPoS決済、カードの発行、信用状の発行、その他の金融商品が考えられる、と付け加えた。

関連記事:新型コロナパンデミックで米国におけるeコマースへのシフトが5年分加速

カテゴリー:フィンテック

タグ:Mollie 資金調達

画像クレジット:Lukasz Radziejewski / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

原文へ

(翻訳:Mizoguchi

Revolutからコンプライアンス責任者が去り、元アマゾン幹部2名をCOOとCPOに採用

英国拠点のネオバンクスタートアップであるRevolutで人事異動が進行中だ。リーダーシップチームの主要メンバーが英国拠点の国際金融グループであるBarclays(バークレイズ)に移籍し、2人の元Amazon(アマゾン)社員が入社、そして新たなCOO(最高執行責任者)を含む人事が動き出している。

TechCrunchは、Revolutのコンプライアンス責任者であるChris Sing(クリス・シン)氏が同社を去り、バークレイズのチーフスタッフオフィサーに就任することを確認した。同氏は2018年12月にRevolutに入社し、2年弱で働いたことになる。Revolutに入社する前は真逆のキャリアで、英国の規制当局である金融行動機構(Financial Conduct Authority、FCA)のマネージャーを務めていた。FCAでの在籍中には、スペイン・マドリードに本拠を置くサンタンデール銀行に出向していたこともある。

Revolutはシン氏の去就を確認しており、後任が決まるまでの間、同氏が担っていた役割はコンプライアンス保証グループの責任者であるHarinder Gill(ハリンダー・ギル)氏に引き継がれることになっている。

Revolutがもはやアーリーステージのスタートアップではないことを考えると驚くべきことではないが、ここ数カ月で退職した多くのシニアスタッフに同氏が加わること点には注目だ。中でも最も注目を集めているのは、同社の銀行部門のCEOだったRichard Davies(リチャード・デイビス)氏だ。同氏はネオバンクのAllica(アリカ)銀行のCEOに就任するために退職した。もう1人は投資部門の責任者だったAndre Muhammad(アンドレ・ムハマド)氏。なお、ムハマド氏の転職先は不明(未訳記事)だ。

一方で、Revolutはアマゾンからの2人のシニアスタッフ採用を発表する寸前であることTechCrunchは確認している。彼らは、Revolutの新しいグループCOOとして入社するSteven Harman(スティーブン・ハーマン)氏と、新しいCPO(チーフ・ピープル・オフィサー)になるJim McDougall(ジム・マクドゥーガル)氏だ。ハーマン氏は直近ではアマゾンの欧州大陸カスタマーフルフィルメント担当副社長、マクドゥーガル氏はディレクターまたはHRサービストランスフォーメーション(人事部門変革)の役職に就いていた。

Revolutのコンプライアンス責任者の退職と主要な役職での人材採用は、同社にとって興味深い時期に起きた。同社はこの春、55億ドル(約5844億円)の評価額で5億8000万ドル(約616億円)のシリーズDラウンドで資金を調達した。また、現在の景気低迷、新型コロナウイルス危機の中で財政を立て直すために大量のレイオフを行う(Altfi記事)など、いくつかのコスト削減策も講じている。
画像クレジット:Revolut

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

英国のフィンテック「Revolut」が日本でも口座開設をスタート

フィンテックスタートアップのRevolutが日本に進出した。1万ユーザーによるテストを経て、アカウントの開設を一般開放した。同社は2018年に日本の金融庁から事業認可を取得している

アカウント(口座)を開設すると、電子ウォレットとVISAデビットカードが作られる。アカウントにはクレジットカード、バーチャルカード、Apple Pay、Google Payなどから入金できる。Revolutはすぐに利用通知をユーザーに送り、アプリからカードの凍結、再開ができる。

他のRevolutユーザーや銀行口座に送金することもできる。Revolutではアプリ内のお金を他の通貨に変換して送金することが可能で、多くのユーザーがこのサービスを旅行に利用して、為替手数料を節約している。

日本のユーザーは、vault(貯金箱)を作って、購入金額の端数を貯めることができるほか、定期支払いも設定できる。現時点ではそれだけだ。

同サービスはすでに日本でプレミアム会員プランを開始しているが、スタンダード会員と比べて為替手数料が安くなるとカードのデザインが選べること、充実したサポートとLoungeKey Passで利用できる空港ラウンジのチケットを購入できる以外に目立った特典はない。

英国やヨーロッパと異なり、日本では暗号通貨の購入や株取引、保険商品の購入、子供向けRevolut Juniorアカウントの開設などはできない。Revolutは地元英国でスーパーアプリを作るべく、数年をかけて大幅な機能追加を行ってきた。

いずれ全世界で暗号通貨や株取引などの機能を提供すると同社は約束している。しかし、提供時期は明らかにされていないので、今後のサービスの進化を見守るしかない。

現在Revolutは英国、ヨーロッパ、米国、シンガポール、オーストラリアで利用可能で顧客数は1300万人となっている。

画像クレジット:Revolut

関連記事:フィンテックRevolut、日本とシンガポールで間もなくサービス開始

カテゴリー:フィンテック

タグ:Revolut 日本

画像クレジット:Revolut

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

コーポレートカードを通じたB2B SaaSビジネスのAirbaseが急成長中

TechCrunchは数週間前、コスト管理機能が特徴のコーポレートクレジットカードのスタートアップであるRamp(ランプ)が、「プラスチック」ビジネスに加え経費管理ソフトウェアに進出した(未訳記事)と書いた。筆者は記事の最後に、企業や消費者のプラスチックカードを引き受けたり供給したりすることに意欲的な企業が非常に多いことを考えると、「実際のところカードは現時点でコモディティにはなっていない」のではないかと書いた。

ある会社がその考えを体現した。TechCrunchが最後にAirbase(エアベース)を取り上げたのは今年3月だ。同社はシリーズAラウンドで2350万ドル(約25億円)を追加調達した(未訳記事)。それ以前のシリーズAのトランシェの約3倍の評価だった。

CEOのThejo Kote(テジョ・コテ)氏は、カードはそれ自体が「メインイベント」ではなく、ソフトウェアのイネーブラー(助ける存在)であるとTechCrunchに語った。同氏は、コーポレートカードビジネスではなく、企業向けの支出管理ソフトウェアを開発したいと考えている。

AirbaseはコーポレートカードとSaaSの金融ツール一式により企業の会計部門と従業員をサポートする。同社は取引手数料から収益を稼ぐ。つまり、配布するカードを使って行われる取引の一部を手にする。一方で、同社の収益の大部分は定期的なソフトウェア収入からのものだと同社はTechCrunchに述べた。

同氏の見方は筋が通っている。バーチャルカードの人気の高まりと同様、「クレジットカード」は物理的な商品を買ってすぐに身につける、というよりはデジタルによる支出の手段となる可能性が高い。そこでデジタルプラスチックとそうでないものを区別するものは何か。おそらくその周りにあるソフトウェアだ。

ソフトウェアへのゲートウェイとしてのカードは、実際にはきちんとしたビジネスモデルだ。Airbaseが両方の製品から収益を得られるからだ。一部のSaaS企業が自ら支払い支援に参入して別の収益源として立ち上げるやり方(未訳記事)に少し似ている。コテ氏によるとAirbaseにとってはB2B SaaSビジネスがメインであり、取引手数料は二次収入だという。

これは、Airbaseのユーザー支出関連の収益が伸びていないことを意味しているわけではない。コテ氏によれば、Airbaseのユーザー支出は、例えば2020年の第2四半期には2019年第2四半期の5倍になった。同時に、2020年7月31日までの4四半期でAirbaseの年間経常収益(ARR)は280%に増加した。ただしその数字には取引手数料が入っており、それを含めることには議論の余地がありそうだ。また同社は「2020年の最初の2四半期」における既存顧客維持率(リテンションレート)が126%だったと主張した。参考までに、Finixと同様(未訳記事)、Rampのユーザー支出も上昇している(未訳記事)。

従って、Airbaseは少なくとも成長に関しては順調だ。

Airbaseは自社のソフトウェアスタックを構築し続け、さらに同社のプロダクトへの投資を続ける計画だ。支出を集中管理するツールにより、企業は時間を節約でき、会計処理をよりスムーズかつ迅速に行うことができる。もちろんそれによりAirbaseと顧客の結びつきが強くなり、SaaSや手数料取引の解約が発生する可能性は低くなる。

フィンテックと言えば一時期は銀行口座情報にオンラインでアクセスすることを意味した。それから、対面よりもオンラインでより多くの銀行業務を行うことを意味するようになった。その後、支出管理サービスとオンライン投資ツールの波が押し寄せた。最近では、少なくとも理論的には、銀行業務と投資がデジタル面から再構築され、手数料が下がり、アクセスしやすくなってきた。

したがって、次にコーポレートカードが見直され、Ramp、Brex、Airbaseなどのプレーヤーが、企業の支出の将来や市場シェアをどう獲得していけばよいのか理解しようとするのは当然のことだ。勝者は誰になるのか。

画像クレジット:Damien Meyer / Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

米国のガソリンスタンドでAmzon Alexaによる音声決済が可能に

1月にAmazon(アマゾン)は、ガソリンスタンドでAlexaのユーザーが、Echo AutoなどのAlexa対応モビリティデバイスを使って、音声コマンドで代金を決済できる機能を発表した。同社によると米国時間9月1日、その機能が全米1万1500カ所のExxon(エクソン)とMobil(モービルのスタンドで使えるようになったと発表した。決済処理を開始するには、顧客がまず「Alexa, pay for gas」(Alexa、ガソリンの代金を払って)と言う。

アマゾンはFiservとチームを組んで、給油機の起動から、決済の安全を守るためのトークンの生成までを自動化した。ただし、取引そのものはAmazon Payが処理する。そして顧客のAmazonアカウントに保存されているのと同じ決済情報が使われる。

立ち上げに際して同社は、この機能はEcho AutoなどのAlexaデバイスで使えるようになるが、ほかにAlexa対応の車や、iOSやAndroidのAlexaアプリでも利用可能だという。

前述のように「Alexa, pay for gas」でこの機能は起動するが、そのときAlexaはガソリンスタンドの場所や給油機の番号を確認してから給油機を起動する。

この機能は、給油機に決済カードを挿入するだけのやり方に比べて早くはないし、容易でもないかもしれない。しかし、状況によっては便利だろう。給油機を認証しているときユーザーは社内にいられるから、寒いときは助かる。ガソリンスタンドで一人で給油するのが不安な女性などにも歓迎されるだろう。夜や知らない町ではなおさらだ。今の新型コロナウイルスの感染蔓延のご時世には、給油機の向こう側にいるお客と十分な時間ソーシャルディスタンスを保てるし、給油機を操作する時間も短い。

ただし残念ながら、給油そのものはAlexaがやってくれない。自分でやるしかない。

画像クレジット: Amazon

[原文へ]
(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

PayPalが4回払いの「Pay in 4」で信用販売レースに参入

米国時間8月31日、PayPal(ペイパル)は、新たな分割払い方式として「Pay in 4」の提供を開始した。名前が語っているように、これは利用者が購入に際して無利子の4回払いを選べる仕組みだ。同サービスはPayPalがすでに提供しているPay Laterシリーズの拡張であり、そこでもPayPal Creditのリボ払いやEasy Paymentsが用意されている。

Pay in 4では、30~600ドル(約3170〜6万3380円)の購入で6週間の4回払いを選ぶことができる。この仕組みは売り手のPayPal料金に含まれているのて、顧客にこのオプションを提供するための追加料金は必要ない。これは他のいくつかの「buy now, pay later」(信用販売)サービスと同じだ。

この短期分割払いオプションは、米国ユーザーに手数料や利息不要の後払いを可能にするものだ。最初の支払いを済ますと、残る3回の支払いは自動的に行われる。同機能はユーザーのPayPalウォレットにも表示され、支払いの管理を行うことができる。

Pay in 4 は、PayPalのEasy Paymentsのテストから生まれた。同社によると、顧客はある価格帯で6週間にわたる分割払いを好むことがわかったという。

新サービスがKlarna、AfterPay、Affirmなど他のライバルであるフィンテックサービスに対抗するためであることは明らかだ。これらのサービスは手数料や利子を事前にはとらなくても、ユーザーが支払いできないと延滞料金を取ることか多い(Money記事)。ちなみにKlarnaは、2週間ごとにカードに請求される無利子4回払いのプログラムを、直接の競合相手にも提供(Klarnaリリース)している。

PayPalアカウントは、ユーザーのクレジットカードまたは銀行口座と紐づけられているため、支払いを忘れる可能性は低い。ただし支払えなかったときは、手数料が発生する。金額は州によって異なり、これは州ごとに独自の延滞料金のしくみを定めていて、PayPalがそれに従わなくてはならないためだ、と同社はいう。

「昨今の小売や経済の厳しい環境の中、売り手は、追加コストをかけることなく、購入単価とコンバージョン率を上げる安全な方法を求めている。同時に消費者は、柔軟で責任を負える支払い方法を求めていて、オンラインでは特にそうだ」とPayPalのグローバルクレジット担当SVP(上級副社長)であるDoug Bland(ダグ・ブランド)氏が新サービスを紹介する声明で語った。「Pay in 4によって、我々は信用販売分野の先駆者としての歴史を作ろうとしている。PayPalの信用と高い普及率を活かし、消費者に柔軟で責任ある支払い方法を提供するとともに、売り手には売上とロイヤルティを高め、顧客の選択肢を増やす方法を提供する」と語った。

カテゴリー:フィンテック

タグ:PayPal

画像クレジット:PayPal

原文へ
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

米国フィンテック企業のNerdwalletが英国の同業Know Your Moneyを買収、海外進出へ

米国時間8月27日、新しいクレジットカード、ローン、保険、その他の金融商品を探している人のためのリソースを提供しているNerdwallet(ネルドウォレット)は、海外展開を目指す動きを見せた。同社は、英国に住む人々に向けた比較や情報ツールの同様の範囲を提供する、英国イングランド東部のノリッジを拠点するスタートアップのKnow Your Moneyを買収したことを発表した。

Nerdwalletからは取引の財務条件は明らかにされていないが、Know Your Moneyは同社の米国外での最初の海外事業となり、国際的なゼネラルマネージャーであるMegan Tedford(ミーガン・テッドフォード)氏の下で、さらなる国際的な拡大のための会社の努力の先頭に立つことになる。

この取引は、現在1億6000万人のユーザーを抱える米国サンフランシスコを拠点とするNerdwalletの静かな成長を印象づけるものだ。前回の資金調達は2015年で、株式で6900万ドル、残りはクレジットノートで1億ドル(約106億円)を調達し、評価額は約5億2000万ドル(約550億円)となっていた。以来、この数字は更新されていなかったが、同社は1に利益を上げており、まのところこれ以上の資金調達の予定はない。投資家には、IVP、RRE Ventures、iGlobe Partners、Silicon Valley Bankなどが名を連ねている。

Nerdwalletは、当時から大幅に規模を拡大し、現在では年間1億5000万ドル(約158億円)以上の収益を上げている。もう少し詳しく説明すると同社は、1億人のユーザーを擁し、今年初めに会計クラウド大手のIntuitに71億ドル(約7480億円)で買収されたCredit Karmaと、おなじく同社に昨年に約10億ドル(約1060億円)で買収されたCredit Sesameのような企業と直接競合している。ほかにも、アドバイスや金融コンテンツを提供するマーケットプレイスや、さまざまな金融商品のオファーの相対的コスト比較サービスを提供する企業が多数存在する。

Nerdwallet は、Know Your Moneyを英国最大の企業向け比較サイトと評している。昨年は約500万人の消費者と120万人の企業がその商品を利用しており、銀行口座の検索と開設、ローンの取得と住宅ローンの手配、保険の加入などが含まれている。

John Ellmore(ジョン・エルモア)氏とともにKnow Your Moneyを共同設立したJason Tassie(ジェイソン・タッシー)は声明の中で「我々はNerdWalletと連携し、消費者が金融商品について学び、評価・比較するために我々のチームが進めてきた素晴らしい仕事をさらに発展させることを楽しみにしています。NerdWalletとの協業は、我々の既存の成長計画を加速させ、コンテンツライブラリやツール、ガイドを拡大し、ユーザーが金融に関する意思決定を行う際のサポートをより多く提供することに貢献していきます。Know Your MoneyとNerdWalletは、人々がより良い、より多くの情報に基づいた財務上の意思決定を行えるようにするという目標において完全に一致しています」と述べている。

ゼネラルマネージャーのテッドフォード氏によると、Know Your Moneyとの交渉は新型コロナウイルスの感染蔓延に先立って始まったが、基本的にはZoomを使って交渉が進み、今年の2月に直接会っての交渉は完全に停止されていた。

新型コロナウイルスの感染蔓延は、この取引に拍車をかけたわけではないかもしれないが、消費者がオンラインでの金融サービスをより多く使うようになっただけでなく、経済が低迷して不況に陥る中で財政的なコントロールが期待されているため、両社にとってどこにビジネスチャンスがあるのかを浮き彫りなった。

「新型コロナウイルスの感染蔓延の影響で、借り換えや投資などの分野で金融ガイダンスや商品に対する需要が急増しており、今年はこれらの分野で当社のサイトへの訪問者数が記録的に増加しました。英国への進出は、すべての消費者が自信を持って財務上の意思決定を行う世界という当社のビジョンに向けた重要な一歩です」と、Nerdwalletの共同設立者兼CEOである Tim Chen(ティム・チェン)氏は声明で述べている。

「消費者はより多くの助けを求めています。Know Your Moneyでは、できるだけ多くの人々に、できるだけ多くのトピックで、できるだけ多くの場所でガイダンスを提供していきたいと考えています。Know Your Moneyは、消費者が金融商品を見つけたり比較したりするのに役立つ素晴らしい仕事をしてきましたが、我々はこのパートナーシップを通じてその仕事を加速させることを楽しみにしています」と締めくくった。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

ソフトバンクがリード出資した破産フィンテック企業Wirecardの英国事業をVisa出資のRailsbankが買収へ

Wirecard(ワイヤーカード)に新たな一章が開かれたようだ。ドイツの不名誉なフィンテック企業は巨額の会計スキャンダルに直面し、その後15億ドル(約1580億円)の借入金の支払いが滞り今年初めに破産した。

APIを通じて金融・銀行サービスを提供する英国のスタートアップであり、Visa(ビザ)などが投資する(未訳記事)しているRailsbank(レイルズバンク)はWirecard Card Solutions(ワイヤーカードソリューションズ)の買収で合意した。英国事業にはカードテクノロジーと関連資産、既存のクライアントビジネスと従業員が含まれる。

取引条件は明らかにされていないが、Wirecardの広報担当者によると、取引は11月に完了する予定で、Wiredcardの事業の重要な部分を占めると語った。

Wirecardはドイツで上場しており、ソフトバンクなどが主導した資金調達ラウンド後に190億ドル(約2兆円)もの金額で評価(未訳記事)された。同社の衰退の物語は、「演技」が終わりを迎え数カ月経った後でも、詳細とともに注目(Financial Times記事)された。

Wirecard Card Solutions自体の事業規模も巨大であり、欧州のフィンテック業界と強いつながりがある。そのサービスには、カスタマイズされたカードプロダクト、デビットカード、プリペイドカード、クレジットカードが含まれる。欧州最大のプリペイド発行会社の1つであり、Monzo、FairFX、Revolut、Transferwise、Uaccount、Soldo、Pockitにもサービスを提供している。

興味深いことに、資料で見る限りRailsbankの方が事業規模は随分小さいようだ。Nigel Verdon(ナイジェル・バードン)氏とClive Mitchell(クリブ・ミッチェル)氏が共同で創業した同社は、PitchBookのデータによると、これまで約1700万ドル(約18億円)を調達(Pictbookデータ)し、穏当なバリュエーションを保っている。以上から推察するに、Wirecard Card Solutionsの買収対価はキャッシュではなく株式だったのではないだろうか。

注目すべきは、Wirecard Acquiring&Issuing GmbHと、ドイツの親会社であるWirecard AGグループの一部が、Wirecard Card Solutionsの一部の株式を引き続き保有する点だ。

「会社の将来を計画する上での重要な優先事項の1つは、大切な顧客が可能な限り最高の結果を得ることだ。Railsbankへの資産売却の提案を含むソルベント・ワインドダウン(リストラ計画)の実効により優先事項の主要部分を達成できると思う」とWirecard Card SolutionsのマネージングディレクターであるTom Jennings(トム・ジェニングス)氏は声明で述べた。

「プログラムマネージャーが我々の提案をサポートしてくれた。すべての関係者のためにポジティブに前進できれば良い。この移行を可能な限りシームレスに行えるように支援してくれた顧客と、MastercardとVisaの継続的なサポートに感謝する」

RailsbankのCEOであるバードン氏は声明で、「Wirecard Card Solutionsと合意に至ったことを喜んでいる。取引の過程で積極的に協力してくれたチームにも感謝する」と述べた。「結局のところ、顧客とチームの要望に応えることが我々の優先事項だ。Railsbankチームは、顧客、プログラムマネージャー、チームメンバーが新しい家にシームレスに移動できるように誠実に取り組んでいく」

Wirecardのディストレストアセット(再生企業の株式や資産)の取得にRailsbankが関心を持っていることが初めて報じられたのは先週だ(sifted記事)。その後、同社は転落するWirecardの後援者候補として浮上した。手数料なしで現地通貨で決済できるカードをユーザーに提供する「仮想通貨フレンドリー」なWirex(ワイレックス)は今週初め、カード発行サービスをWirecardからRailsbankへ切り替えると発表した

Railsbankは、すでに英国、EU、米国、シンガポールで約50種類のカードプログラムを運営しており、Wirecardの事業引き継ぎに向けたインフラは整っていると述べた。

Railsbankがこの点を強調することに驚きはない。移行のタイミングは契約の中で重要な部分だ。今回の買収はWirecardの将来に関するこの数カ月の憶測を締めくくる。Wirecardがどん底に至る前には、フィンテックの顧客やパートナーに加え、オリンパス、Getty Images、Orange、KLMといった法人顧客を抱えていた。

しかし、WirecardにはAdyen、FirstData、WorldPay、Stripe、Railscardなど同じ分野で法人向け決済、カード発行、銀行・金融サービスを提供する多くの強力な競争相手がおり、顧客が逃げる前にどこかに買収・統合してもらうことができるかが大きな課題だった。

画像クレジット:Getty Images

[原文へ]

(翻訳:Mizoguchi

14.7億円超を調達したメキシコのチャレンジャーバンクFondeadoraとは?

メキシコシティを拠点とし、フルスタックのネオバンクを構築しようとしているフィンテックスタートアップであるFondeadora(フォンデアドラ)を紹介しよう。同社は、グーグルのAIに特化したベンチャーファンド「Gradient Ventures」(グラディエント・ベンチャーズ)が主導する1400万ドル(約14億7500万円)のシリーズAラウンドで資金を調達したばかりだ。2018年に設立された同社はすでに15万口座を管理し、毎月2000万ドル(約21億円)の預金を増やしている。

メキシコでは、多くの人々が取引のほとんどをいまだに現金に頼っているため、チャレンジャーバンクにとって大きなチャンスがある。世界各国でカードやデジタル決済への移行が進んでいることを考えると、Fondeadoraを立ち上げるのに適切な時期だったようだ。

なお今回のシリーズA調達ラウンドには、Y Combinator、Sound Ventures、Fintech Collective、Ignia、起業家であり投資家のScott Belsky(スコット・ベルスキー)氏が参加した。

Fondeadoraの共同創業者で共同CEOを務めるNorman Müller (ノーマン・ミュラー)氏は、「我々は約10年前にメキシコで最初のクラウドファンディングプラットフォームを立ち上げました。しかしカード決済の約50%がシステム上のトラブルで失敗しました」と語る。

そのプラットフォームも「Fondeadora」と呼ばれていた。クラウドファンディングプラットフォームのKickstarterとの取引を経て、ミュラー氏とFondeadora共同創業者のRené Serrano(ルネ・セラーノ)氏は初心に戻り、クラウドファンディング・プラットフォームを運営している間に抱えていた問題点を考えた。それが現在のFondeadoraとなり、メキシコの銀行体験を向上させたいと考えているチャレンジャーバンクになったわけだ。

Fondeadoraの設立チームはメキシコ中を旅して、利用できる銀行設立免許を探したそうだ。「手に入れたのは、メキシコのトマト農家のグループが所有していた銀行設立免許でした。20年前、政府は金融包摂(金融サービスへのアクセス増加)を実現するために約10件の銀行設立免許を与えていました」とミュラー氏は振り返る。

同社はこの銀行設立免許を得て、銀行サービスを開始した。支店に行かなくても口座を開設でき、契約者にはMastercardのデビットカードが送られてくる。購入後の通知の受信、カードのロックとロック解除、他のユーザーへの即時振込なども可能だ。月々の利用料は無料で、海外送金手数料もかからない。

次の目標としては、普通預金口座を使いやすくしたいと考えている。「『現金』には素晴らしいUI/UXが備わっています。触ってもいいし、引き出しに入れてもいい。しかし、収入を得るための媒体としてはひどいものです」とミュラー氏は語る。

今後数カ月の間に、Fondeadoraの口座に預けた預金に利息がつくようになる。「私たちは国債に投資しています、それは非常に安全なタイプの金融商品です。メキシコでは5%や6%の金利を得ることができます」とミュラー氏は説明する。このスタートアップのサービスでは、預金のごく一部を中程度のリスク投資にも配分することができる。

Processed with VSCO with hb2 preset


画像クレジット:Fondeadora

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

決済サービス開発のFinixがシリーズBに約32億円を追加調達、他社の決済処理インフラ立ち上げを支援

決済関連サービスを他社に提供するスタートアップであるFinixは、シリーズBの資金調達ラウンドをLightspeed Venture PartnersAmerican Express Venturesが主導する3000万ドル(約32億円)の投資で延長したと発表した。

このフィンテック系スタートアップはこれで9600万ドル(約10億2200万円)以上のベンチャーキャピタルからの資金調達が完了した。CEO兼共同創業者のRichie Serna(リッチー・セルナ)氏によると、そのうち9000万ドル(約9億6000万円)は昨年だけで調達したという。

FinixはTechCrunchのインタビューで、収益、収益成長、新規評価額、現在の収益性、顧客数などの開示を拒否した。セルナ氏はFinixの取引量が2019年第2四半期から2020年第2四半期にかけて4倍以上に増加したことを顧客の成長のための成果だと喜んで発表したが、データの変化については詳細を明らかにしなかった。

Finixは、他のスタートアップ企業が自社で決済処理インフラシステムを立ち上げるのを支援している。処理手数料やトランザクション手数料を徴収するStripeのような企業が提供するサービスを自社の支払いサービス取り込んでいる企業も多い。Finixも同様で、企業がStripeのようなサービスや決済インフラを社内に導入できるように支援している。これにより、サードパーティの決済プロバイダーが取引から切り離していた小口決済を、Finixが請求するコストを差し引いて企業が手に入れられるという考えだ。

Finixのサービスは企業内のインフラとして機能するものだが、Stripeのような企業はプラグアンドプレイシステムにも似ている。Finixの顧客の内訳を知ることは興味深く、その情報があれば現在のビジネスがどれだけ健全であるかを知ることができるだろう。同社は、顧客にソフトウェア料金を請求し、支払い処理数に応じて変動制料金で請求することで収益を上げている。取引量ごとに収益を上げているわけではないが、もちろん取引量の多い顧客からは利益を得ている。

Finixがターゲットしていた顧客は「年間5000万ドル(約53億3000万円)の取引量のある企業」だった。セルナ氏は、現在の焦点が変わったかどうかについてはコメントを控えた。同社は最近、新しい引受モデル「Finix Flex」を立ち上げた。これは、古いシステムを利用している企業が決済プロバイダー間の切り替えコストを削減できるよう支援することを目的としている。

「私たちは基本的に、企業の高度成長や安定成長の観点から、どのような段階にある企業のための決済プロバイダーになりたいと考えています」とセルナ氏は述べている。新たに調達した資金は、2021年半ばまでにFinixのチームを85人に倍増させるために使われる予定だ。

フィンテックの世界は、現在も進行中の新型コロナウイルスの感染蔓延の影響を少なからず受けた(未訳記事)。Squareのように小規模な個人商店の資金調達を支援している新興企業は、人々が自宅にとどまり、一部の企業が閉鎖されたため、セクターごとに取引量が減少した可能性がある。

Finixはその反対側に位置しており、オンライン通販やアプリでの支払いを可能にしている。このようなeコマースの空前のブーム(未訳記事)が、Finixのようなビジネスが成長している理由かもしれない。別のデータポイントとしてセルナ氏は、その総顧客数は毎月成長していると述べている。

セルナ氏は、2019年第2四半期から2020年第2四半期までのFinixの取引量倍率が4.5倍であることに改めて注目し「新型コロナウイルスの感染蔓延は同社のビジネスに『多くの課題』を突きつけていない」と語る。

今のところFinixの延長ラウンド(未訳記事)は、強さと生き残りの物語であるようだ。

画像クレジット:Bryce Durbin/TechCrunch

原文へ

(翻訳:TechCrunch Japan)

ウォレットアプリのKyashが資金移動業の登録完了、アプリ内残高を現金として払い出し可能に

ウォレットアプリ提供のKyashが資金移動業の登録完了、アプリ内の残高を現金として払い出し可能に、新機能は後日公開

ウォレットアプリ「Kyash」(iOS版Android版)提供のKyashは8月27日、「資金決済に関する法律」に基づく資金移動業の登録を完了したと発表した。登録番号は「関東財務局長第00082号」(金融庁)。

資金移動業登録により、本人確認を経たKyashのユーザーは、アプリ内の残高を現金として払い出す(出金する)ことが可能となる。同社は、提供するサービスの可能性が格段に広がるとし、新機能の詳細については、後日公開するとしている。

「Kyash」アプリは、インストールすると誰でもすぐにバーチャルカードを発行可能。クレジットカードやデビットカードをアプリに登録するか、コンビニ・銀行からチャージすると、友人や同僚への送金、Visa オンライン加盟店で買い物が行える。また「Kyash Card」を発行すると、世界中のVisa加盟店約5300万店舗での利用が可能。カードの利用限度額上限や利用可能場所はカスタマイズに対応しており、ICチップによるサインレス決済も行える。

Kyashは、「価値移動」のサービス・インフラを開発・提供するテクノロジー・カンパニーで、ウォレットアプリ「Kyash」と同期して進化した次世代のカード「Kyash Card」を提供。人々のライフスタイルに寄り添いながら、人々の価値観や想いが自由に届けられる「新しいお金の文化」を創造することを目指している。

関連記事
ウォレットアプリのKyashが約47億円調達、チャレンジャーバンクへの進化目指す
Kyashがサインレス&タッチ決済対応の新カードを20年初頭に提供、限度額や利用場所をカスタマイズ可能に
ウォレットアプリの「Kyash」が約15億円調達、3大メガバンクと米VCが投資

三井住友カードがポイント特化型プラチナカード「プラチナプリファード」を9月1日に発行開始、キャッシュレスを推進

三井住友カードは8月26日、従来のプラチナカードとしてのステータスはそのままに、メリットをポイントに凝縮させたポイント特化型プラチナカード「三井住友カード プラチナプリファード」を9月1日に発行開始することを発表した。

年会費は3万円だが、入会後3カ月以内に40万円を利用すると4万ポイントが還元されるほか、ベースポイントは1%、特約店利用でプラス1〜9%、海外利用でプラス2%、前年に利用実績に応じて継続特典として100万円ごとに1万ポイント、最大4万ポイントが付与される。メインのクレジットカードとして使うなら、年会費が実質無料になる利用者も多いだろう。

詳細は追って記載する。

オンラインでプリペイド法人カードを即発行できる「paild」正式ローンチ、TC Tokyo2019ファイナリスト

フィンテックスタートアップのHandiiは8月24日、法人向けカード決済サービス「paild(ペイルド)」の正式ローンチを発表した。

paildは、法人カードをオンライン上ですぐに発行できる法人向けのプリペイド式ウォレットサービス。従来の法人カードとは異なり、paildでは、カードの発行や停止、上限金額設定、使用履歴の確認といった操作が、オンラインの管理画面で即、完結できる。

paildのカード発行画面と管理画面

また、従来のプリペイドカードのように1枚ずつ入金する必要がなく、会社のキャッシュを一括でチャージ可能。複数のカードで残高をシェアして、paildの管理画面上で各カードの上限設定を行うことで管理できる仕組みとなっている。チャージは現時点では、会社の預金口座からの口座振替で行える。

カードは国内外のVisa加盟店で使うことができ、バーチャルカードだけでなくプラスチックカードも発行可能だ。プリペイド式だからカード会社による与信審査や利用限度額の制約がかかることはなく、何枚でも発行できるため、各社員に配布して立て替え経費精算にかかる時間やコストを抑えたり、用途に応じて別々のカードを使い分けたり、という使い方もできる。

Handii代表取締役社長兼CEOの柳志明氏は「資金調達を実施済みのスタートアップで、お金はあるのにクレジットカードの与信枠が小さくて使える限度額が低いといったケースはよくある。paildなら、会社の与信とは関係なくチャージされた額が使えるので、事業に必要な月額サービスなどの決済にも安心して使ってもらえる」と話す。

Handii代表取締役社長兼CEO 柳志明氏

また新型コロナウイルスの影響でリモートワークが増えた関係で、法人カードの利用環境にも変化が出ていると柳氏はいう。「これまでは管理部門に1枚ある法人カードを、必要なときに必要な部門が持って行って決済に使うことが多かったが、リモートワークではこれができない。paildでは必要なタイミングでカードが発行でき、不要になればすぐに停止できるので、ベータ版ユーザー企業では、そこを便利だと認識していただけた」(柳氏)

paildのベータ版は4月にローンチされたが、こうした企業のニーズもあって、既に150社以上が利用。即時発行と決済管理の容易さだけでなく、カード明細と使用部門・社員の突き合わせの問題もpaildなら解決できると柳氏は話す。

「例えばバックオフィスの支援をするコンサルティング企業などで、クライアントが利用するSaaSをカード決済で契約するケースなど、同じサービスへの支払いがクライアントごとにいくつも発生して、どれがどのクライアントの支払いか分からなくなるということも。paildなら、クライアントごとに何枚でもカードが発行できるので、明細の突き合わせの手間を省くことができる」(柳氏)

サービスの初期費用・システム利用料は無料。プラスチックカードの発行手数料は2020年12月末までは無料で、以降は1枚580円がかかる。バーチャルカードの発行については2021年1月以降も無料。Handiiでは今後、新たな機能や付加価値サービスを有料で提供する予定だ。

「今のところ、社員数が一桁〜数百人規模の企業に利用されているが、今後、より大きな規模の企業が利用するようになれば、カードの利用制限や権限の持ち方などで新しい機能も必要になると考えられる。既存のクレジットカードにとらわれない機能を用意して、有料プランとしていきたい」(柳氏)

また、バックオフィス関連のSaaSとは積極的に連携していきたいと柳氏。「今や非金融系のSaaSには便利なものが増えている。一方でお金まわりのサービスではいまだに手作業が多く、従業員も経理部門も困っていることが多いので、その部分をHandiiでは解決したい。それ以外の領域については、既存サービスもあり、顧客が既に使っているということもあるので、連携によってトータルでより良い業務フローとなるよう、サービスを提供していきたい」と語る。

Handiiは2017年の設立。2019年6月にはニッセイ・キャピタルとCoral Capitalより総額3億円の資金調達実施を明らかにしている。また2019年秋に開催されたTechCrunch Tokyo 2019スタートアップバトルではファイナリストとして出場している。

Handiiのメンバー

米アメックスがソフトバンク出資の中小企業向けオンライン融資Kabbageを買収

中小企業は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで大きな打撃を受けた。それは多くの場合、中小企業にサービスを提供する会社にも波及した。中小企業への融資を中核事業とするスタートアップが、このタイミングでクレジット業界の巨人に買収された。フィンテック業界は中小企業向けビジネスの分野で、将来の「ニューノーマル」(新常態)を取り込み始めた。

機械学習アルゴリズムを使用するプラットフォームにより中小企業への融資を審査・実行するKabbage(キャベッジ)をAmerican Express(アメリカンエクスプレス)が買収すると両社は8月17日に発表した。Amex(アメックス)は声明で、Kabbageの融資や他の金融サービスツールが加わり、同社が抱える「数百万」の中小企業の顧客に提供できるサービスの幅が広がることは、同社がこのセクターに注力していく計画の表れだと述べた。

買収の金銭的条件は公表されていないが、2020年8月初めの報道によると買収額は最大8億5000万ドル(約900億円)に上るという(Bloomberg記事)。参考までに、Kabbageはこれまでに負債と資本で約9900億ドル(約105兆円)を調達しており(そして少なくとも35億ドル、約3700億円を証券化している)、2017年にソフトバンクがリードした2億5000万ドル(約270億円)の株式ラウンドでは12億ドル(約1270億円)を超えるバリュエーションがついた

この買収は、中小企業だけでなく、中小企業にサービスを提供するフィンテック企業、特にKabbageにとって新型コロナウイルスの嵐を乗り切ろうとする難しい時期に行われた。

Amexの買収対象に従業員、技術、財務データが含まれているのは確かだが、「Kabbageの既存の融資ポートフォリオは買収契約には含まれていない」とAmexはプレスリリースで述べている。

融資ポートフォリオに何が起こるかについてKabbageの広報担当者は、クロージング時に融資を管理・回収する別会社が用意されると発表した。

Kabbageの融資の合計金額は不明だが、広報担当者はKabbageが過去数年間の事業運営で実行した融資だけでなく、ペイチェック・プロテクション・プログラム(PPP)に基づく米国の中小企業向け融資も含まれていることを明らかにした。先週の時点でPPP融資は約30万件あり(Kabbageリリース)、合計70億ドル(約7400億円)に上る。2019年にKabbageはTechCrunchに対し、同年の融資実行額が25億~30億ドル(約2650~3180億円)となるペースだ(未訳記事)と述べていることからも既存の融資ポートフォリオは決して小さい金額ではなく、現在の経済状況ではおそらく大きなリスクを抱えている。

今回のニュースはフィンテック業界でKabbageが見せた数々の興味深い大きな浮き沈みの最後を締めくくる。同社は急成長するビジネスを背景にソフトバンクや他の多くの投資家(および顧客)の注目を集めた。そのアイデアは人工知能を使用して中小企業による融資申請から成約に至るプロセスをスピードアップするというものだ。

従来の銀行と、その遅くて時には苛立たしい融資審査のアプローチの双方に革新をもたらすKabbageは、融資実行や融資条件の判断に従来の決算情報からソーシャルメディアのシグナルまで、さまざまな情報源を独自の機械学習アルゴリズムのインプットとして利用する。Kabbageが他の貸し手(競合の銀行を含む)にホワイトラベルサービス(顧客のブランドで販売するために自社製品を提供すること)としてプロダクト提供するほどに成功した。

2020年2月以降は厄介な状況が続く。多くの中小企業がパンデミックにより休業を余儀なくされ、同社のビジネスは崖から落ちるように悪化した。中小企業の休業の多くは恒久的になった。同社は3月末、相当の数の従業員に一時帰休を言い渡し(未訳記事)、4月には中小企業向けクレジットラインを突然停止した(Bloomberg記事)。その後、PPP融資業者大手3社の1つとしてゆっくりと以前の業務に戻った。

だがPPPは短期的なプログラムだ。KabbageとAmexの買収契約で注目されるのは、中小企業に長期の金融サービスを提供するにあたり、2社が異なるアプローチを持ち寄り同じ屋根の下で連携できるかだ。

American Expressは数年前から、業界をリードする企業向けカードに留まらず、企業顧客に決済と運転資金ソリューションも提供し、その規模を拡大してきた」とグローバルコマーシャルサービスプレジデントのAnna Marrs(アンナ・マーズ)氏は述べた。「この買収により、米国の中小企業に決済とキャッシュフローをワンストップでデジタル管理する簡単で効率的な方法を提供するという当社の計画が加速する。これは今日の環境ではかつてないほど重要だ。Kabbageの革新的なテクノロジーと才能あるチームを、当社の幅広い顧客ネットワークと中小企業を支援する60年以上の経験とあわせることにより、顧客がこの困難な時期を乗り越えるのをより厚く支援できる」。

「Kabbageでは、常に米国の中小企業の成功を第一の目標に掲げてきた」とRob Frohwein(ロブ・フローウェイン)CEO兼共同創業者は声明で述べた。「当社は、大企業だけに用意されていた機能や洞察を中小企業にも提供できるテクノロジーとデータプラットフォームを構築した。American Expressに加わることで、当社は小規模な企業が完全にデジタル化された一連の金融プロダクトによって成功を収めるのを助け、彼らの事業運営と成長を支援できるようになる」

カテゴリー:フィンテック

タグ:American Express Kabbage

原文へ
(翻訳:Mizoguchi