オランダ発の決済スタートアップMollieが110億円調達、バリュエーション1000億円超え

新型コロナウイルス感染症のパンデミックで家にいる時間が長くなり、消費者はさまざまなものをオンラインで購入するようになった。そうした事態を受けて、eコマースは過去8カ月かなりの利用増となっている。この影響でかなりの成長をみせているアムステルダム発の決済スタートアップが9月7日、プロダクトの充実や需要に対応する国際展開を引き続き進めるための大型の資金調達を発表した。

決済機能をサイトやアプリに統合するためのシンプルなAPIベースの方法を提供しているスタートアップのMollie(モリー)はTCVがリードする投資ラウンドで9000万ユーロ(約112億円)を調達した。今回のシリーズBで同社の累計調達額は1億1500万ユーロ(約144億円)となる。特筆すべきは、同社のバリュエーションが10億ドル(約1060億円)を超えることだ。創業者でCEOのAdriaan Mol(アドリアン・モル)氏がTechCrunchとのインタビューで明らかにした。

Mollieは2004年から事業を展開しているが、資金調達は今回がまだ2回目だ。初のラウンドは1年前で、2500万ユーロ(約31億円)を調達した。同社がスタートアップのレーダーにそれほど引っかかっていなかったのはおそらくこのためだろう。

「バックエンドとフロントエンドを、まだ両親と一緒に暮らしていた時に私自身が構築した」とモル氏は話した。「それがオランダ流。かなり長い間アイデアを温める。それが会社の礎だと思う」。

Mollieはここ数年で多くのマイルストーンを達成した。かなりのバリュエーションで突然登場したように見えるが、そうした時期を経て今がある。

同社はこのところ主に中小の事業者にフォーカスしている。そうした事業者のほとんどが十分なサービスを受けられていない。顧客は10万を超え、主にオランダ、ベルギー、ドイツにいる。名の知れているところではWickey(ウィッキー)、Deliveroo(デリバルー)、TOMS (靴の会社)、UNICEF(ユニセフ、国際連合児童基金)などが挙がる。

Mollieは2020年に、決済額100億ユーロ(約1兆2500億円)超に向けて順調で、前年比の成長率は100%となる見込みだ。ドイツなど一部のマーケットでは成長率は1000%を超えることが予想される。すでに黒字化も達成している。

「効率化という点で当社は正しい位置につけている」とモル氏は述べた。「しかし競争力を維持するために新たなプロダクトに投資する必要がある」。

実際、決済サービスプロバイダーのマーケットは激戦区だ。Stripe(ストライプ)や、Mollieの仲間のAdyen (アディエン)のような企業もAPI提供のコンセプトで確固たる事業を構築している。いくつかのコードで決済をサービスに取り込めるというものだ。これらの企業は人気があるだけでなく、かなり資金を有しており、さらなるツールの開発を継続する体勢を整えている。そして国際的に事業を拡大し続けている。

Mollieはそうした企業や他の競合他社と2つの点で差異化を図っている。1つは、かなり細分化されたままであるマーケットで、ローカライズされた決済商品を提供していることだ。そうしたマーケットでは、顧客や事業者が使いたがる決済方法は国によって異なる(それらの国ではStripeのようなサービスがまだ完全に提供されていない)。

2つ目は、さまざまな種の決済方法を統合することの難しさを少しも表に出さずに、素早く簡単に統合できるようにしていることだ。事業者そして顧客の両方にとっての使いやすさは、買い物かごに商品を残したままにすることが少なくなることを意味する。そしてサイト訪問者のコンバージョンレートはかなり高い。コンバージョン率は通常7%にもなる、とモル氏は説明した。

「もし旅がトラブルなくスムーズなものであれば、客はドロップアウトしない。それは当社の顧客にとって直接の売上高になる」とモル氏は話した(価格は明確に示されているが画一的ではない。ボリューム、そしてどの決済方法が統合されて使われているのかによる)。

そうした点は、かなりの収益性と効率性によるMollieの成長率とともに、TCVを引きつけている。

「使用場所を拡大することは極めて重要だ」とTCVのパートナーであるJohn Doran(ジョン・ドーラン)氏は述べた。「子供でも使えるくらい本当に簡単だ。いわば、決済世界のApple(アップル)を構築しようというもの」

モル氏がMollie立ち上げのアイデアを思いついたのは、自身の前のスタートアップMessageBird(メッセージバード)に決済サービスを統合しようとしていたときだった。MessageBirdはAPIベースのメッセージサービス(未訳記事)だ。Wilioの欧州版のようなものだと考えて欲しい。利用できる決済のサービスはすべて平均以下で、望む方法で使用できないことに気づいた、とモル氏は話した。そこでエンジニアであるモル氏は自ら「インハウス」でソリューションを構築することにした(文字通り、彼の両親の家でだ)。

なぜ1つの傘の下で両サービスを提供しなかったのか尋ねた。するとモル氏は2つの事業とアイデアは単にあまりにも大きすぎて1つの事業として展開するにはさほど類似性がないからだと述べた。そして同氏は役員会にはまだ残っているもののMessageBirdの経営から身を引き、Mollieにすべての時間を充てることにした。

そして決済事業への専念が報われた。

Mollieにとって次なるステップは、決済に絡むサービスの構築を進めることだ、とモル氏は語る。顧客向けの運転資本の提供や、中小の事業者が1つのプロバイダーから通常受けられない他の金融サービスといった分野だ。「従来の銀行が中小事業者に提供していないプロダクトは多い」と同氏は述べた。「従来の銀行は、中小事業者とのビジネスでたくさん稼がないために中小事業者に投資しようという動機付けが得られない」。決済に絡むサービスとしてはPoS決済、カードの発行、信用状の発行、その他の金融商品が考えられる、と付け加えた。

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カテゴリー:フィンテック

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画像クレジット:Lukasz Radziejewski / Flickr under a CC BY-SA 2.0 license.

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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