米アメックスがソフトバンク出資の中小企業向けオンライン融資Kabbageを買収

中小企業は新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックで大きな打撃を受けた。それは多くの場合、中小企業にサービスを提供する会社にも波及した。中小企業への融資を中核事業とするスタートアップが、このタイミングでクレジット業界の巨人に買収された。フィンテック業界は中小企業向けビジネスの分野で、将来の「ニューノーマル」(新常態)を取り込み始めた。

機械学習アルゴリズムを使用するプラットフォームにより中小企業への融資を審査・実行するKabbage(キャベッジ)をAmerican Express(アメリカンエクスプレス)が買収すると両社は8月17日に発表した。Amex(アメックス)は声明で、Kabbageの融資や他の金融サービスツールが加わり、同社が抱える「数百万」の中小企業の顧客に提供できるサービスの幅が広がることは、同社がこのセクターに注力していく計画の表れだと述べた。

買収の金銭的条件は公表されていないが、2020年8月初めの報道によると買収額は最大8億5000万ドル(約900億円)に上るという(Bloomberg記事)。参考までに、Kabbageはこれまでに負債と資本で約9900億ドル(約105兆円)を調達しており(そして少なくとも35億ドル、約3700億円を証券化している)、2017年にソフトバンクがリードした2億5000万ドル(約270億円)の株式ラウンドでは12億ドル(約1270億円)を超えるバリュエーションがついた

この買収は、中小企業だけでなく、中小企業にサービスを提供するフィンテック企業、特にKabbageにとって新型コロナウイルスの嵐を乗り切ろうとする難しい時期に行われた。

Amexの買収対象に従業員、技術、財務データが含まれているのは確かだが、「Kabbageの既存の融資ポートフォリオは買収契約には含まれていない」とAmexはプレスリリースで述べている。

融資ポートフォリオに何が起こるかについてKabbageの広報担当者は、クロージング時に融資を管理・回収する別会社が用意されると発表した。

Kabbageの融資の合計金額は不明だが、広報担当者はKabbageが過去数年間の事業運営で実行した融資だけでなく、ペイチェック・プロテクション・プログラム(PPP)に基づく米国の中小企業向け融資も含まれていることを明らかにした。先週の時点でPPP融資は約30万件あり(Kabbageリリース)、合計70億ドル(約7400億円)に上る。2019年にKabbageはTechCrunchに対し、同年の融資実行額が25億~30億ドル(約2650~3180億円)となるペースだ(未訳記事)と述べていることからも既存の融資ポートフォリオは決して小さい金額ではなく、現在の経済状況ではおそらく大きなリスクを抱えている。

今回のニュースはフィンテック業界でKabbageが見せた数々の興味深い大きな浮き沈みの最後を締めくくる。同社は急成長するビジネスを背景にソフトバンクや他の多くの投資家(および顧客)の注目を集めた。そのアイデアは人工知能を使用して中小企業による融資申請から成約に至るプロセスをスピードアップするというものだ。

従来の銀行と、その遅くて時には苛立たしい融資審査のアプローチの双方に革新をもたらすKabbageは、融資実行や融資条件の判断に従来の決算情報からソーシャルメディアのシグナルまで、さまざまな情報源を独自の機械学習アルゴリズムのインプットとして利用する。Kabbageが他の貸し手(競合の銀行を含む)にホワイトラベルサービス(顧客のブランドで販売するために自社製品を提供すること)としてプロダクト提供するほどに成功した。

2020年2月以降は厄介な状況が続く。多くの中小企業がパンデミックにより休業を余儀なくされ、同社のビジネスは崖から落ちるように悪化した。中小企業の休業の多くは恒久的になった。同社は3月末、相当の数の従業員に一時帰休を言い渡し(未訳記事)、4月には中小企業向けクレジットラインを突然停止した(Bloomberg記事)。その後、PPP融資業者大手3社の1つとしてゆっくりと以前の業務に戻った。

だがPPPは短期的なプログラムだ。KabbageとAmexの買収契約で注目されるのは、中小企業に長期の金融サービスを提供するにあたり、2社が異なるアプローチを持ち寄り同じ屋根の下で連携できるかだ。

American Expressは数年前から、業界をリードする企業向けカードに留まらず、企業顧客に決済と運転資金ソリューションも提供し、その規模を拡大してきた」とグローバルコマーシャルサービスプレジデントのAnna Marrs(アンナ・マーズ)氏は述べた。「この買収により、米国の中小企業に決済とキャッシュフローをワンストップでデジタル管理する簡単で効率的な方法を提供するという当社の計画が加速する。これは今日の環境ではかつてないほど重要だ。Kabbageの革新的なテクノロジーと才能あるチームを、当社の幅広い顧客ネットワークと中小企業を支援する60年以上の経験とあわせることにより、顧客がこの困難な時期を乗り越えるのをより厚く支援できる」。

「Kabbageでは、常に米国の中小企業の成功を第一の目標に掲げてきた」とRob Frohwein(ロブ・フローウェイン)CEO兼共同創業者は声明で述べた。「当社は、大企業だけに用意されていた機能や洞察を中小企業にも提供できるテクノロジーとデータプラットフォームを構築した。American Expressに加わることで、当社は小規模な企業が完全にデジタル化された一連の金融プロダクトによって成功を収めるのを助け、彼らの事業運営と成長を支援できるようになる」

カテゴリー:フィンテック

タグ:American Express Kabbage

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(翻訳:Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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