ソフトバンクがリード出資した破産フィンテック企業Wirecardの英国事業をVisa出資のRailsbankが買収へ

Wirecard(ワイヤーカード)に新たな一章が開かれたようだ。ドイツの不名誉なフィンテック企業は巨額の会計スキャンダルに直面し、その後15億ドル(約1580億円)の借入金の支払いが滞り今年初めに破産した。

APIを通じて金融・銀行サービスを提供する英国のスタートアップであり、Visa(ビザ)などが投資する(未訳記事)しているRailsbank(レイルズバンク)はWirecard Card Solutions(ワイヤーカードソリューションズ)の買収で合意した。英国事業にはカードテクノロジーと関連資産、既存のクライアントビジネスと従業員が含まれる。

取引条件は明らかにされていないが、Wirecardの広報担当者によると、取引は11月に完了する予定で、Wiredcardの事業の重要な部分を占めると語った。

Wirecardはドイツで上場しており、ソフトバンクなどが主導した資金調達ラウンド後に190億ドル(約2兆円)もの金額で評価(未訳記事)された。同社の衰退の物語は、「演技」が終わりを迎え数カ月経った後でも、詳細とともに注目(Financial Times記事)された。

Wirecard Card Solutions自体の事業規模も巨大であり、欧州のフィンテック業界と強いつながりがある。そのサービスには、カスタマイズされたカードプロダクト、デビットカード、プリペイドカード、クレジットカードが含まれる。欧州最大のプリペイド発行会社の1つであり、Monzo、FairFX、Revolut、Transferwise、Uaccount、Soldo、Pockitにもサービスを提供している。

興味深いことに、資料で見る限りRailsbankの方が事業規模は随分小さいようだ。Nigel Verdon(ナイジェル・バードン)氏とClive Mitchell(クリブ・ミッチェル)氏が共同で創業した同社は、PitchBookのデータによると、これまで約1700万ドル(約18億円)を調達(Pictbookデータ)し、穏当なバリュエーションを保っている。以上から推察するに、Wirecard Card Solutionsの買収対価はキャッシュではなく株式だったのではないだろうか。

注目すべきは、Wirecard Acquiring&Issuing GmbHと、ドイツの親会社であるWirecard AGグループの一部が、Wirecard Card Solutionsの一部の株式を引き続き保有する点だ。

「会社の将来を計画する上での重要な優先事項の1つは、大切な顧客が可能な限り最高の結果を得ることだ。Railsbankへの資産売却の提案を含むソルベント・ワインドダウン(リストラ計画)の実効により優先事項の主要部分を達成できると思う」とWirecard Card SolutionsのマネージングディレクターであるTom Jennings(トム・ジェニングス)氏は声明で述べた。

「プログラムマネージャーが我々の提案をサポートしてくれた。すべての関係者のためにポジティブに前進できれば良い。この移行を可能な限りシームレスに行えるように支援してくれた顧客と、MastercardとVisaの継続的なサポートに感謝する」

RailsbankのCEOであるバードン氏は声明で、「Wirecard Card Solutionsと合意に至ったことを喜んでいる。取引の過程で積極的に協力してくれたチームにも感謝する」と述べた。「結局のところ、顧客とチームの要望に応えることが我々の優先事項だ。Railsbankチームは、顧客、プログラムマネージャー、チームメンバーが新しい家にシームレスに移動できるように誠実に取り組んでいく」

Wirecardのディストレストアセット(再生企業の株式や資産)の取得にRailsbankが関心を持っていることが初めて報じられたのは先週だ(sifted記事)。その後、同社は転落するWirecardの後援者候補として浮上した。手数料なしで現地通貨で決済できるカードをユーザーに提供する「仮想通貨フレンドリー」なWirex(ワイレックス)は今週初め、カード発行サービスをWirecardからRailsbankへ切り替えると発表した

Railsbankは、すでに英国、EU、米国、シンガポールで約50種類のカードプログラムを運営しており、Wirecardの事業引き継ぎに向けたインフラは整っていると述べた。

Railsbankがこの点を強調することに驚きはない。移行のタイミングは契約の中で重要な部分だ。今回の買収はWirecardの将来に関するこの数カ月の憶測を締めくくる。Wirecardがどん底に至る前には、フィンテックの顧客やパートナーに加え、オリンパス、Getty Images、Orange、KLMといった法人顧客を抱えていた。

しかし、WirecardにはAdyen、FirstData、WorldPay、Stripe、Railscardなど同じ分野で法人向け決済、カード発行、銀行・金融サービスを提供する多くの強力な競争相手がおり、顧客が逃げる前にどこかに買収・統合してもらうことができるかが大きな課題だった。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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