Apple Musicはコンサートのストリーミングを強化する

音楽ストリーミングアプリは差別化に苦労している。その中でApple(アップル)は米国時間12月4日の夜、本社にあるSteve Jobs Theater(スティーブ・ジョブズ・シアター)で開催される、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)の大規模なショーを使い、コンサートビデオを戦略の中心にしようとしている(訳注:コンサートはすでに終了しており、現在はオンデマンドで視聴できる)。このApple Music Awardsコンサートは、ライブストリーミングが行われた後、Apple Musicの6000万人の加入者に、オンデマンドでストリーミングされる。アップルは近い将来にも、こうしたストリーミングコンサートをもっと開催したいと考えている。

単なるコンサートのストリーミングを超えて、アップルはアートやアーティストの味方としての認知を強化しようとしている。Apple Musicは、iPhoneメーカーの巨大な収益のほんの一部に過ぎないため、Spotify のようなミュージシャンの成功に寄り添っている(と考える人がいる)、音楽専業のライバルと比較したときに、必要以上にビジネスライクで資本主義的なもののように見られる可能性もある。

真剣なリスナーによるチャンネル登録者数を増やし、クリエイターの信頼を勝ち取るには、Apple Musicは、単により多くのアップルハードウェアを販売するようにデザインされているように見られるわけにはいかない。そこで今夜、同社はアーティストたちへの敬意を示し、最初のApple Music Awardsをお披露目したいと考えたのだ。ビリー・アイリッシュはアーティスト・オブ・ザ・イヤーと、彼女の兄であるフィネアス・オコネルとともにソングライター・オブ・ザ・イヤーを獲得した。一方リゾ(Lizzo)はブレイクスルー・アーティスト・オブ・ザ・イヤーを受賞した。さらに、Apple Musicのストリーミングカウントに基づいて、アイリッシュの「When We All Fall Asleep, Where Do We Go?」がアルバム・オブ・ザ・イヤーを受賞し、Lil Nas X(リル・ナス・X)の「Old Town Road」がソング・オブ・ザ・イヤーとなった。

賞のトロフィー自身が特別に加工されたアップルの作品であり、WWDCでガジェットを作成するロボットのビデオで見られるような、非常に凝ったデザインのものだ。ナノメートル精度の平らなシリコンウエハーの単一の12インチディスクから加工されるが、これはAppleのiPhoneを駆動しているものと同じ種類のものだ。銅の層には紫外線リソグラフィーでパターンが刻まれ、ウェーハ上の数十億個のトランジスタ間をエッチングで接続する。その後、何百個ものチップに切断され、数カ月をかけてガラスと酸化皮膜で覆われたアルミニウムの間に吊るされた反射するトロフィーが作成される。一風変わったコレクターアイテムになることを予想させるものとして、それぞれの賞にはしっかりと設置するためのアップル特製の水準器が付属している。

受賞者とその仲間のアーティストたちが、アップルが音楽を本当に気にしているという認識とともに会場を去ることを期待しているように思われる。それに加えて、Apple Musicの規模は、アーティストたちに、このストリーミングサービスで曲へのリンクをより多く共有し、競合するリスニングアプリよりも優先してプロファイルを紹介したい気持ちにさせる役に立つだろう。

コンサート方面に関して言えば同社は2007年に、年次開催のApple Music Festival(以前はiTunes Festivalと)を開始した。しかし、10年目の2017年に、ブリトニー・スピアーズ、エルトン・ジョン、そしてチャンス・ザ・ラッパーのライブを大々的にストリーミングしたあと、アップルはイベントを中止していた。Apple Musicは昨年、専用のMusic Videosタブを追加したが、最近はいくつかのイベント(テイラー、ザ・クリエイター、ショーン・メンデス)以外でのコンサートストリーミングは実施しなかった。これらのコンサートビデオは、Apple Music内で見つけるのが難しいものもある。

しかし、今回の取り組みはアップルにとって大きなチャンスでもある。音楽ストリーミングサービス全体を眺めると、カタログはより似通ったものになり、誰もがお互いのパーソナライズされたプレイリストと発見メカニズムをコピーし合い、多くがラジオとポッドキャストを取り込んでいる。一方、数年前と比較して、ストリーム限定音楽やアーティストに対する包括的な支払いはそれほど流行っていない。音楽カタログの断片化はリスナーに対して不便を強いることになり、大量配信に失敗したアーティストにとって有害である可能性がある。そして複数の冗長なストリーミングサービスにお金を払いたくないアーティストファンからの反発を招く可能性がある。

その点、通常はカメラ付き携帯電話の揺れる画像としてしか見ることができないストリーミングコンサートビデオは、音楽のエコシステムに対する新しい追加要素と感じられる。もしプラットフォームがビデオの撮影と制作にお金を払う意思がある場合、プラットフォームのための強力な差別化要因となり得る。そして、今夜アップル本社で行われたビリー・アイリッシュの木で覆われたステージのように、記録されたショーが普通見られるツアーとは異なっている場合には、ファンを画面の前に釘付けにすることができる。単に一般的なアプリで音楽を聴くことに比べて、ビデオ視聴はショーを放送する会社への親しみを深める可能性がある。

Spotifyのような。コンサートビデオの面ではまだほとんど何もしていない競合他社に比べると、アップルはすでに先を行っている。今夜のような番組をさらにストリーミングすることで、Apple Musicは、従来の音楽ストリーミングにさまざまなレア動画やミュージックビデオ、およびCoachellaなどのストリーミングコンサートを統合しているYouTube Musicの、良きライバルになるだろう。幸運なことに同社は、世界中に小売店とオフィスを持っているため、より多くのショーの開催と記録のための移動の労力を減らすことが可能だ。

これまでのところ、Apple Musicはその成長を、同社の携帯電話、タブレット、コンピューターへの事前インストールに加えて、無料トライアルシステムに頼って来た。しかし、もしそれが業界のコンテンツ提供に欠けている部分を見つけて、その潤沢な資金を活用してプレミアムビデオに投資し、アーティストの役に立つことを示すことができたなら、Apple Musicはアップル自身から独立した、より多くの信頼を集めるブランドを構築することができるだろう。

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(翻訳:sako)

Amazonが広告付き音楽ストリーミングサービスを米、英、独で無料提供

Amazon(アマゾン)は音楽ストリーミングサービスを無料にする。同社はこれまでAmazon Echoデバイスを所有している人だけに広告付きのストリーミングを無料で提供してきた。そして今回、この無料サービスの対象を、米国、英国、ドイツのAmazon Musicアプリ(iOS、Android)、Fire TV、ウェブ版Amazon Musicに広げる。

Amazonは料金を下げながら着実に音楽サービスを利用しやすいものにしてきた。例えば今年初めAmazonは、 Amazon Music UnlimitedからEchoデバイスへのストリーミングや、200万曲が聴けるPrime Musicにアクセスするのに Amazon Primeの料金を払っている顧客に課していた3.99ドル(約430円)を今後はチャージしないと発表した。そしてEcho所有者向けに広告付きの無料Amazon Musicの提供を始めた。このサービスのカタログには基本的にPrime Musicと同じ200万曲があり、ただ広告が入るだけで、プライム会員である必要はない。

このAmazon Musicをいま、Echo所有者に限らず誰でもあらゆるデバイスで無料で利用できるようにする。Pandoraと同じようにユーザーは曲、アーティスト、時代、ジャンルに基づいて何千ものステーションをかけることができる。また世界のトップソングを特集した「オールヒット」などのトッププレイリストや、「休日のお気に入り」といったステーションを利用することもできる。

Amazonの無料サービスのカタログは小さいので、このAmazonの動きは、SpotifyやPandoraのプレミアムサービス、Apple Musicといった有料購読サービスを脅かすものではない。また、SpotifyのDiscover Weeklyや他のカスタムプレイリストを支えているパーソナライゼーションテクノロジーという点でもさほど進んでいるわけではない。こうした機能は音楽ファンを引きつけるものであり、サービスを選ぶ基準となっている。

その代わり、Amazonの無料音楽サービスは、広告なしにするためにプライム会員になるよう促すことで消費者により高額なサービスを販売する手法となる。(Prime Musicの200万の曲はプライム会員にサービスとして付いてくる)。そしてAmazonの真意は次のとおりだ。Amazonプライムに多くの客を取り込み、送料無料や他のメリットの価値を認識させることで、Amazonプライムを毎年更新してもらうこと。一度プライム会員になれば、よりAmazonで買い物するようになり、Amazonはもうかる。

無料の音楽サービスはまた、Amazonのより広い音楽エコシステムへの入り口にもなる。もし利用者が広告なしで多くの音楽を楽しみたいと思ったら、Amazon Music Unlimitedに切り替えることができる。このサービスは5000万曲を有し、プライム会員向けに月7.99ドル(約860円)で、非会員向けには月9.99ドル(約1100円)で提供されている。真のオーディオファイルで楽しみたい人はAmazon Music HDにアップグレードでき、こちらはプライム会員向けに月12.99ドル(約1400円)、非会員向けには月14.99ドル(約1600円)で提供されている。Amazonは目下、4カ月のAmazon Music Unlimited利用料金を0.99ドル(約110円)としている。

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(翻訳:Mizoguchi)

Amazon MusicがSpotifyに続いて世界のApple TVにやって来た

Amazon(アマゾン)が米国時間10月10日朝に発表したところによれば、Amazon MusicApple TVで楽しめるようになる。これにはApple TV 4K、Apple TV HD(tvOS 12.0以降)が含まれる。Amazon Musicが加わったのは数日前にSpotify(スポティファイ)がApple TVで利用可能になったことに続くものだ。

Apple TV向けの新しいAmazon Musicアプリは米国や日本のほか、英国、オーストラリア、ニュージーランド、カナダ、フランス、イタリー、スペイン、ドイツ、メキシコ、ブラジル、インドで公開される。

これでアマゾンとApple(アップル)は音楽ストリーミングサービスを相手のプラットフォームに相互乗り入れすることになり、長年緊張していたアマゾンとアップルの関係はやや緩和された。

新しいAmazon MusicのFire TVアプリには数百万の楽曲と数千のプレイリストが含まれている。Spotifyで人気のラップ音楽のプレイリストであるRap CaviarはAmazon MusicではRap Rotationとなっている。ユーザーは楽曲名、アーティスト名で個別検索できるのはもちろん、マイミュージックタブには購入ないしインポートした曲やアルバムが分類・表示される。

Apple TVへのAmazon Musicの乗り入れは3月にApple MusicがFire TVで利用可能になったことに続くものだ。

両社の関係が改善に向かっていることは、例えばアマゾン本体におけるアップル製品の取り扱いを拡大したことにも示されていた。今や Apple TVだけでなくApple Watch、Beatsヘッドフォンもアマゾンのストアから購入できる。子供向けの電子書籍、映画を提供するFreeTime UnlimitedアプリのiOS版が配布されたのと同時に Apple MusicもEchoデバイスで利用できるようになっている。

もともと2017年12月以降、Amazon Prime VideoはApple TVで見ることができたが、 来るべきアップルのストリーミングサービスであるApple TV+ではFire TVを含むクロスプラットフォーム機能を約束している。こうした緊張緩和の流れの中にあっても今回のアマゾンの動きが注目されるのには反トラスト法という別の観点があるからだ。

現在、アップルは米司法省以外にもEUロシアなど各国の反トラスト法当局による厳しい調査の対象となっている。

ことにSpotifyは反トラスト法に違反する不当な競争阻害を行っているとしてアップルを非難してきた。これには「アップル税」と呼ばれるアプリ内課金への手数料、 アプリアップデートへの過度な干渉など. SpotifyがApple Musicのライバルだとして不利な取り扱いをされたとする例がいろいろ含まれている。これに対してアップルは自社プラットフォーム上で多数のライバルが運用されていることを挙げて反論していた。しかし最近の音楽ストリーミング各社の動向からすると、こうしたライバル関係の緊張は緩和に向かっているようだ。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

SpotifyがApple TVに、iOS 13ではSiriもサポート

米国時間10月7日、音楽ストリーミングの大手であるSpotifyのサービスがついにApple TVで使えるようになった。またiOS 13に対応した最新のSpotifyアプリがSiriをサポートしたことも発表された。 音楽を聞くときにSiriの音声コマンドが使える。「Hey Siri, play」の後に楽曲名を付け加え、最後に「on Spotify」と付け加えればいい。

Siriのサポートがテストされていることは今年に入って発見されていたが、一般向けにサポートされる日時についての正式な発表はなかった。

Spotifyによれば、AirPods、CarPlay、HomePodでもSiriはサポートされているという。また最新のSpotifyアプリは、データ帯域幅が問題になる場合に役立つ、iOSのデータセーバーモードにも対応する。

アプリのアップデートは順次行われているのでApple TVでSpotifyが使えるようになるまでいま少し待つ必要があるユーザーもいるかもしれない。

これまでSpotifyでSiriがサポートされていなかったのもSpotifyの責任ではなかった。Siriを使ってアプリに音声コントロール能力を与えるAppleのSiriKititフレームワークがiOS 13でやっとサードパーティに公開されたのだ。これでSpotifyなどの音楽サービスはオーディオ再生や、曲のスキップや移動、トラック情報の取得などの機能を音声で操作できるようになった。

iOS 13になって、まずPandora、Googleマップ、WazeなどがSiriのインテグレーションを行った。 つまり日頃Appleのライバルである企業もSiriのサポートができるようになれば即座に飛びつくということが証明されたわけだ。

もちろんSiriの音声コマンドが使えるのは一般ユーザーにとって便利だし、結局アプリの運営者のビジネスにもメリットがあることになる。SpotifyはこれまでAppleの行動を反トラスト法に違反する疑いのある競争制限的なものとして対立していたが、こうした事情がその主張を軟化させたようだ。

長らくSpotifyはAppleのアプリプラットフォームは反競争的であり、自社アプリやApple Musicのような自社サービスを不当に優先するビジネス慣行を継続させてきたと非難してきた。そうした不満の最たるものがAppleがSiriに自社のアプリ、サービスを優先させていることだった。またApp StoreにおけるAppleの取り分が30%であることもSpotifyの成長を妨げる要因だとしていた。

この3月にSpotifyはEUに対しAppleに対して反トラスト的ビジネス慣行の申立を行っていた。また米議会もAppleに関する反トラスト法調査に関連して情報を提供するようSpotifyに接触しているとReuters(ロイター)が報道している。

iOS 13でSirikitがサードパーティに公開され、Siriが使えるようになってもSpotifyは「これでは十分でない」という立場を維持するだろう。たとえばユーザーがSiriにSpotifyを操作させるためにはいちいち「on Spotify」と付け加える必要がある。ユーザーがいつもSpotifyで音楽を聞いているなら、このサービスを音楽再生のデフォルトに設定できる機能があれば大いに手間が省けるわけだ。またSiriのサポートが行われたのはすべてのiOSではなくiOS 13のデバイスのみだ。

Spotifyは本日、Google Nest Home Max、Sonos Move、Sonos One SL、Samsung Galaxy
Foldに加えて、スマートウオッチではMichael Kors(マイケル・コース)のAccessシリーズ、Wear OSを搭載したDiesel(ディーゼル)やEmporio Armani(エンポリオ・アルマーニ)のサポートも発表している。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

GoogleがYouTube Musicを今後出荷のAndroid 9/10端末にプリインストールへ

ストリーミングが音楽マーケットの主流になってきた現在、Google(グーグル)はすべてのAndroidデバイスに音楽アプリをプリインストールすることで一気にライバルに追いつこうとしている。これがYouTube Musicをめぐる動きだ。

米国時間9月28日、Googleは同社のPixelシリーズを含め、今後発売されるAndroid 10とAndroid 9スマートフォンにYouTube Musicプリインストールすると発表した

実際、Googleの音楽戦略は根本的な再編成を必要としていた。2015年11月にYouTube Musicをスタートさせて以後、Googleの音楽サービスは2本立てになっていた。一方は2011年開始のGoogle Play Musicだ。さらに事態をわかりにくくさせていたのは、YouTubeが有料のサブスクリプション、YouTube Premiumも始めたことだ。このサービスはGoogle Play MusicとYouTube Musichの双方にアクセスできる。逆にGoogle Playの有料サブスクリプションメンバーはYouTube Premiumもカバーしている。さらにややこしいことに、今年5月にはYouTube Musicのみのサブスクリプションも始まっている。

Googleの音楽サブスクリプションの全体像は飲み込めただろうか?Googleのチャットアプリの現状は混乱を極めているが、音楽サービスもわかりやすいとはいえない。

4月にGoogleは、Google Play MusicをYouTube Musicに1本化するつもりであることをとうとう認めた。これはGoogle PlayのArtist Hubをシャットダウンするのはもっと大きな音楽サービスの再編の一環なのだという説明だった。

しかしYouTube Musicが今後発売されるAndroidにプレインストールされるという本日の発表の後でもGoogle Play Musicはまだ健在だ。

ただし新しいAndroid 10デバイスにGoogle Play Musicはプリインストールされず、必要とするユーザーはアプリをPlay Storeからダウンロードしなければならな。逆にYouTube MusicがプリインストールされていないAndroidデバイスのユーザーも、Play Storeからダウンロードすることになる。

YouTubeの音楽ストリーミングはApple MusicやSpotifyといった市場リーダーと比較してもそこそこ充実したサービスだ。ユーザーの視聴傾向から新しい音楽を推薦する機能もあり、これには楽曲だけでなくアルバムやライブ、リミックスも含まれる。サブスクリプションであればYouTube Musicは広告が入らないし、オフライン再生もできる。最近はSpotifyの毎週のお勧め、Discover Weeklyに対抗して、Discover Mixもスタートしている。

しかしYouTube Musicはユーザーがダウンロードしなければならないため、iOSのApple Musicのようなプリインストールサービスに比べて不利だった。さらにGoogle Play Musicのユーザーは長年かけて蓄積したプレイリストをYouTube Musicにインポートインポートできないのも痛かった。

5月にYouTube Musicは、有料定期購入者が1500万人に達していた。一方Spotifyの発表によれば、6月末の時点でのSpotifyの月間アクティブユーザー2億3200人うち、1億800万人が有料定期購入者のアカウントだという。Apple Musicの有料定期購入者は6月に6000万人の大台に載せた

Googleによれば、Google Play MusicのYouTube Musicへの統合は作業中だという。つまりまだ実現していない。

YouTubeの広報担当者はTechCrunchの取材に対し、「以前発表したとおり、我々は最終的にはGoogle Play MusicをYouTube Musicで置き換える。この再編の一環としてYouTube MusicがAndroid Q以降のデバイスにプリインストールされる」と確認した。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

米国の音楽ストリーミングサービス有料購読者数が6000万人の大台に

音楽ストリーミング購読が依然として米国の音楽産業の売上成長を支えている。米国レコード協会(RIAA、Recording Industry Association of America)が今週発表した新たなレポートで明らかになった。RIAAによると、2019年上半期の音楽産業の総売上は18%増の54億ドル(約5800億円)となり、そのうちの80%はストリーミングによるものだった。レポートではまた、米国の有料購読者数が初めて6000万人を超えたとしている。

同期のストリーミング売上高は26%増の43億ドル(約4600億円)だった。

この数字には、Spotify、Apple Music、Amazon Musicといった有料購読バージョンに加え、Pandora、Sirius XM、他のインターネットラジオなどのデジタルラジオサービス、そしてYouTube、Vevo、有料でないSpotifyなど広告を流すストリーミングのものが反映されている。

一方、有料購読ストリーミングも成長を続けている。対前年比で有料購読は31%増えて33億ドルに達し、音楽産業の売上高の最大の成長要因となっている。

2019年上半期には、米国における音楽産業の売上高の62%を、音楽ストリーミング売上高の77%を有料購読が占めた。

フルのオンデマンドストリーミングサービスを受ける有料購読者の数は今年上期に30%伸びて6110万人になった。これは平均して1カ月に100万人が新たに購読しているというペースだ。

ここには、たとえばPandora Plusや、Echoだけで利用できるAmazon Musicのような限定サービス「Limited Tier」は含まれていない。限定サービスではカタログ全てへのアクセスが制限されたり、特定のオンデマンド機能が利用できなかったりする。このカテゴリーの売上高は前年比39%増の4億8200万ドル(約515億円)だった。

こうした数字について、「急成長、デジタルダウンロードのわずかな落ち込み、新たな物理的売上のおかげで、ストリーミングはいまや音楽産業の売上高の80%を占めている。そして音楽ファンの好きな曲やアーティストの探し方、共有方法、聴く方法を一新した」とRIAAの会長兼CEOのMitch Glazier(ミッチ・グレイジャー)氏は書いている。

広告を流すオンデマンドサービスは対前年で25%伸びて4億2700万ドルとなった一方で、デジタルラジオサービスは5%増の5億5200万ドルだった。

しかしながらストリーミングサービスでの伸びはデジタルダウンロードの落ち込みで若干相殺された、ともGlazier氏は指摘している。

このカテゴリーの売上高は18%減の4億6200万ドルで、デジタルトラックの売上高は対前年比16%減、デジタルアルバム売上高にいたっては23%減だった。全体として、デジタルダウンロードは総売上高の8.6%にすぎなかった。

今年上半期の物理的プロダクトの売上高は5%増の4億8500万ドルで、これは今後減少に転じるとRIAAはみている。

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(翻訳:Mizoguchi)

Spotifyが有料会員数1.08億人、MAU2.32億人を達成、ユーザー当り売上は減少

Soptifyが4~6月期に獲得した会員数は800万人で、予測値の850万人をわずかに下回った、とストリーミングの巨人が本日(米国時間7/31)発表した。

音楽スクリーミング最大手は6月末時点で月間アクティブユーザー数2.32億人、有料会員数数1.08億人を記録し、3月末の月間アクティブユーザー数2.17億人、有料会員数1億人をそれぞれ上回った。月間アクティブユーザーには有料ユーザー/無料ユーザーのいずれも含まれている。

「有料会員数が目標に届かなかった…これはわれわれの責任だ」と同社は語った。

有償購読者には30日間の無料トライアルを利用中のユーザーも含まれる。またSpotifyは、プレミアムサービスを1ドルで利用できる年2回のキャンペーンも最近スタートした。

これがユーザー平均売上が前四半期より1%ダウンの4.86ユーロ(5.42ドル)になった原因の一つだと同社は言い、この減少傾向は年内も続くと予想していることを付け加えた。

spotify users

Image and data: Spotify

一方、Apple Musicの有料会員数は今年6月に6000万人を超えたところだ(こちらも3ヶ月無料トライアルのユーザーを含む)。

収支を見ると、Spotifyの四半期売上は前年同期から31%増の18.6億ドル、営業経費は4%増だった。営業損失は334万ドルへと改善し、アナリストが予測した売上18.3億ドル、営業損失6200万ドルを上回った。

さらにSpotifyは、主要レコードレーベル2社とライセンス契約で合意に達し、他の2社とも鋭意交渉中であることを明らかにした。レーベル名は公表していない。

Sptofiyの将来の利益(あるいは損失)は、音楽レーベルとの交渉で現在の利幅をどう変えられるかにかかっている。Spotifyが生み出す売上の大部分は音楽レーベルに渡る。数年毎に全レーベルとSpotifyが交渉して契約を更新する。

Gimlet MediaAnchorParcastらの買収によってポッドキャストサービスを強化した同社は、ポッドキャスト利用者が前四半期に比べて50%増えたと言っている。Spotify CFOのBarry McCarthy氏は、同社がさらにポッドキャスト会社を買収することを検討していると語った。

Spotifyは今年3月に ヨーロッパでいわゆる「Apple税」について苦情を申し立てたが、今日はAppleについて語らなかった(Appleは申立てに異議を唱えている)。Spotifyは、同社が2月に音楽ストリーミングサービスを開始したインドについても多くを語らなかった。今年4月にSpotifyは、インドのユーザー数が200万人を突破したと語った。「最も新しい市場であるインドの業績は好調で、当社の予測とも一致している」と今日同社は語った。

関連記事:Spotifyが新興市場の36カ国でAndroid向けのLite版アプリを正式リリース

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook

今年上半期の米国におけるオンデマンド音楽ストリーミングは史上最多の5000億回

今週発表されたニールセンの中間音楽レポートによると、2019年上半期で史上最多となる5077億回のオンデマンド音楽ストリーミングがあった。昨年の上半期に比べ31.6%増となったこの記録的な数字は主に、Ariana Grande(アリアナ・グランデ)、Billie Eilish(ビリー・アイリッシュ)、Halsey(ホールジー)、Khalid(カリード)、BTS、Lil Nas X(リル・ナスX)、そしてBad Bunny(バッド・バニー)らのシングルやアルバムの成功に寄るところが大きい。

レポートではまた、TikTokの甚大な影響と5億人もの月間ユーザーによるグローバルでの視聴についても触れている。「TikTokほど2019年に曲の大ブレークをサポートした新興アプリはなかった」とニールセンは書いている。

そして最もストリーミングされた曲となったリル・ナスXの「Old Town Road」(今年これまでに13億回オンデマンドストリーミングされた)、3億1000万回ストリーミングされたエイバ・マックスの「Sweet But Psycho」、1億6500万回ストリーミングされたジョージの「Slow Dancing in the Dark」など、さまざまなヒットをTikTokは生み出したと指摘している。

レポートはさらに、記録的な数字となった5077億回ものオンデマンドストリーミングを、SpotifyやApple Musicのようなオーディオストリーミングと、ビデオストリーミングに分け、急成長しているのはビデオストリーミングの方だということも明らかにしている。

ニールセンのデータによると、ビデオストリーミングは2018年上半期の1247億回から今年上半期は1742億回へと39.6%伸びた。それに引きかえ、オーディオストリーミングの方は2018年上半期は2610億回、今年上半期は3335億回で27.8%の伸びにとどまった。

Music Business Worldwideによるさらなる分析では、オーディオストリーミングの年間成長率は実際、減少しているのだという。成長率27.8%は、2017年上半期から2018年上半期にかけての成長率41.5%に比べスローダウンしている。よりシンプルにいうと、この2期の間で米国におけるオーディオストリーミングの年間成長は40億回超減ったことになる。

また減少傾向は、物理的なアルバムの売上(15.1%減の3250万)、デジタルアルバム売上(24.4%減の1910万)、レコード(9.6%減の770万)、デジタルトラック売上(25.6%減の1億5310万)でも見られる。

レポートではまた、2019年の音楽業界では注目に値することがいくつかあると指摘している。テック企業との関係という点において、1つにはFortniteであったMarshmelloのコンサートだ。「Marshmello: Fornite Extended Set」のデビューウィーク期間中に1万3000ユニットとアーティストカタログにおける「大きな増加」につながった。Fortnite(フォーチューン)での露出があった翌週、Marshmello(マシュメロ)のアルバム「Joytime II」の売上は316%増となった。

それぞれのアーティストやトレンドについて深く掘り下げているレポート全文はここで入手できるデータは2019年1月4日から2019年6月20日にかけてのものだ。

イメージクレジット:Getty Images under a license

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(翻訳:Mizoguchi)

音楽分野の2018年売上の半分がストリーミングから

ストリーミングが世界の音楽録音物の売上ナンバーワンになろうとしている。このシフトは今年中に確実に実現しそうだ。最新の業界レポートによると、世界の音楽録音物の2018年の売上は、2017年の174億ドルから9.7%増えて191億ドルとなった。特に、ストリーミング売上は、昨年有料のストリーミング部門が32.9%増えたおかげで世界の売上のほぼ半分(47%)を占めるまでになっている。これにより、2018年のストリーミング売上は890万ドルとなり、2019年はさらに増える勢いだ。

世界の音楽マーケットの連続成長は今年で4年目となる。こうした調査を実施している音楽業界の団体IFPI1997年にマーケット調査を始めて以来、最も高い成長率となっている。

有料のストリーミングはストリーミングの売上の大部分を占め、マーケットシェア37%であるのに対し、広告入りのストリーミングはシェア10%だ。

レポートによると、2018年末時点の有料ストリーミングのユーザーは25500万人だった。

一方、物理的ディスクの売上のシェアは24.7%で、10.1%減だった。この部門では、レコードがまだ成長していて、13年連続の成長となり、マーケットシェア3.6%に達した。しかし、物理的フォーマットの全体的な売上が減少傾向にあることに変化はなかった。

ディスク離れが続く一方で、消費者はデジタルに向かっている。

デジタル部門の売上は2018年に21.1%伸びて112億ドルに達した。レポートによると、100億ドル超えは今回が初めてだ。この部門では、ストリーミングが34%伸びて89億ドルとなった(70億ドルが購読ストリーミングだ)。その一方で、ダウンロードは21.2%減少し、マーケット全体の7.7%となった。

レポートでは、38のマーケットで売上の半分超をデジタルが占めている、としている。

興行権での売上とそれに付随する売上(テレビや映画、ゲーム、広告での音楽の使用)は14%で、全体の音楽マーケットにおけるシェアは2.3%だった。

特に北米では、ストリーミングが大きく成長した(33.4%)おかげで物理部門の売上の減少(マイナス22%)を相殺し、売上が14%増とまたもや2桁成長となった。

アジアと豪州の売上は11.7%成長し、欧州を抑えて世界で2番目の売上規模となった。そしてラテンアメリカは伸び率16.8%で、世界で最も成長している地域だ。

売上高の大きなマーケットは、米国、日本、英国、ドイツ、フランス、韓国、中国、豪州、カナダ、ブラジルの順となっている。

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(翻訳:Mizoguchi)

音楽コピーライトをめぐる戦い

好景気なマーケットに投資するために何億ドルもの資金を工面しているのはベンチャーキャピタルだけではない。皆が積極的に投資したいという産業でなくなってから15年たったのち、音楽業界がいま再び脚光を浴びている。人気の曲のコピーライトを買い占めようと、大量の資金が流れ込んできている。

SpotifyやApple Music、Tencent Musicなど大手音楽配信サービスにみられるように、有料のストリーミング配信が浸透しているが、その一方でPandoraやAmazon Music、YouTube Music、Deezerそしてその他サービスも全盛期に入っている。米国では現在、有料音楽ストリーミングサービスのアカウントは5100万にのぼる。音楽業界は昨年世界で8%成長し、産業規模は173億ドルになった。これには、ストリーミング収入の41%増加、有料ストリーミング収入の45%増加が貢献している。

音楽ストリーミングの高まりは、つまり曲のコピーライトを持つ人の収入増加、新興マーケットでのエンターテイメントの成長、デジタルビデオ利用の成長、そしてVRのような新たなコンテンツフォーマットにおける音楽の活用の可能性を意味する。驚くことではないが、プライベートエクイティ、富裕層相手のファミリーオフィス、企業、そして年金ファンドもこの動きに一枚かみたいと思っている。

曲のコピーライトには通常2種類あるー出版権と原盤権だ。歌詞、メロディーなど曲を構成するものは出版権を持つソングライターが生み出す(しかし通常、彼らは出版契約を結び、出版元がロイヤルティーの半分に加え所有権も持つ)。一方で、演奏された曲の場合は、原盤権を持つレコーディングを行なったアーティストに帰属する(だが通常彼らは録音契約を結び、録音のレーベルが原盤権とロイヤルティーのほとんどを所有する)。

回収するロイヤルティのことを考えると、人気のある曲を所有するというのは、価値あることだ。その曲がストリーミング再生され、iTunesからダウンロードされ、YouTubeでカバーされ(メカニカルライセンス)、ラジオやグローサリー店で流れ(パフォーマンスライセンス)、映画やテレビ番組でサウンドトラックに使われ(シンクライセンス)、その他の活用法でもロイヤルティーが得られる。曲からあがるより多くのロイヤルティー収入はマスターオーナーに入る。というのも彼らはマーケティングで財政リスクを多く負うからだが、しかし出版元もマスターオーナーが回収できないようないくつかのチャネル(たとえばラジオでの再生)からロイヤルティーを回収することができる。

人気の曲のソングライターに関しては、特に意外性のないソースから年間に数万、何十万、あるいは何百万ドルものロイヤルティーが入る、もちろん、書かれて録音された曲の多くが収入にはならない。大衆に愛されるヒット曲をだすのは難しいことだ。このような欠乏ー人気のミュージシャンは何千もいるが、その曲が何十年も愛されるようなレジェント的なアーティストというのは少ないーは、成功したミュージシャンのコピーライトは、売却するときプレミアムな価値を生み出すことを意味する。

ストリーミング経済に投資するということ

2017年、ストリーミングサービスの収入は世界の音楽業界収入全体の38%を占め、ついに従来のアルバム売上や曲のダウンロードに取って代わった。購読制のストリーミングサービスはこうした流れの中心的な役割を果たしたが、まだ伸び代はある。ゴールドマン・サックスのメディア部門アナリストLisa Yangは2030年までに世界の音楽業界の規模は410億ドルに達し、うち世界のストリーミングマーケットは340億ドル(そのほとんどが有料購読から)となると予想している。

Merck Mercuriadis is seen on the left. (Photo by KMazur/WireImage for Conde Nast media group)

 

Elton JohnやGuns N’ RosesそしてBeyoncéといった大物を手がけ、トップソングライター関連の金融商品(Hipgnosis Songs)を6月にロンドン証券取引所に持ち込んで2000万英ポンド(2億6000万ドル)の資金を調達した音楽プロデューサーMerck Mercuriadisと今週初めに話をした。Mercuriadiの計画は今後3〜5年で10億英ポンドの資金を調達して投資することだ。これにより、これまでコンシューマーの音楽への支払いに受け身的だった態勢を、音楽業界が経験したことのないレベルへと持っていくことを狙う。

実際、音楽ストリーミングはパラダイムシフトだ。世界中の音楽が1つのインターフェースで無料(広告付き)で、あるいは手頃な購読料金(広告なし)で楽しめ、コンシューマーはもはやどの曲を買おうかと選ぶ必要はない(どれを違法にダウンロードしようかと選ぶ必要もない)。

音楽ストリーミングには全てが用意され、そして全てが価格に含まれ、人々は幅広い音楽を楽しめる。音楽ストリーミングで人々はさまざまなジャンルを開拓したり、ラジオではスター扱いされていないミュージシャンを発見し、そして数十年昔の音楽を楽しんだりしている。以前はそんなに音楽の購入にお金をかけなかったコンシューマーは今ではさまざまなアーティストに触手を広げながら購読に年120ドルも費やしている。

小売ビジネスも同様だ。Soundtrack Your Brand(Spotifyからのスピンアウト)のような企業向けストリーミングサービスを通して、業者はビジネスライセンスを行使しているーこちらはより高価だ。このライセンスでは、ラジオを流したり何枚かのCDを繰り返しかけたりするのではなく、より幅広い音楽をストリームすることができる。

音楽産業マーケットの成長のほとんどが、中国、インド、南米、そして幅広く行われていた音楽の著作権侵害や非消費に購読アプリが取って代わりつつあるナイジェリアのような新興マーケットで起こっている。3つのストリーミングサービスを展開し、中国マーケットの約75%を占めているTencent Music Entertainmentは(音楽産業は昨年34%成長した)IPOの準備を進めていて、実施すればSpotifyが4月にIPOを実施したときと同じ、時価総額290億ドルになると予想されている。

西洋音楽は世界中のポップカルチャーに浸透し、そうした国々では、広告収入は少なくても有料購読者が増えることで何百万ものリスナーから収益をあげるというストリーミング時代に突入している。

タレントマネジメントや出版、プロダクションを手がけるPrimary Waveにおいては、創業者のLarry Mestelによると、オンラインでファンが増えることにより彼のクライアント(Smokey Robinson、Alice Cooper、Melissa EtheridgeそしてBob Marleyエステートなど)に新興マーケットがより多くの収入をもたらしている。Mestelは2016年、ストリーミングモデルによる機会の増加で大きく改善してきた音楽マーケットにおいて音楽カタログの権利を得るために新たに3億ドルの資金を調達した(Blackrockと他の機関が支援)

大きく成長しているのは音楽ストリーミングプラットフォームだけではない。ビデオストリーミングも爆発的に成長している。短いYouTubeビデオ、HuluやAmazon Primeビデオなどのプラットフォームでビデオは増えていて、これらはサウンドトラックで使用する曲のライセンスにも結びついている。サウンドトラックに伴うライセンス収入はグローバルで2017年だけで前年比10%の増加だった。昨年Facebookは、ユーザーがInstagram StoriesやFacebookビデオで使う曲のクリップをカバーするため、大手出版元とライセンス契約を結んだ。

楽曲カタログの増大する価値

カタログは一般的に、“正味の出版元株価”をベースに価値が算出される。これは支払うべきところに支払い(ロイヤルティーの一部をアーティストが所有する場合など)を済ませた後に残る年間ロイヤルティーの平均額となる。

Round Hill MusicがElvis PresleyやJames Brown、AC/DCその他アーティストのカタログの所有権を入手しようと1月にCarlinを2億4500万ドルで買収したとき、出版元株価の16倍を支払った。これはかなりの額だが、レジェンド的なアーティストのカタログを扱うとき、昨今のマーケットでは特に珍しいことではない。3年前は10〜12倍の支払いが主流だった(音楽がまだ長く愛されていないような比較的新しい、またはさほど名の通っていないアーティストの場合は少なくなる)。

Avid Larizadeh Duggan left her role as a general partner at GV to become Chief Strategy & Business Officer of Kobalt

 

Kobaltは、デジタル系の版元・レーベルサービス元となるために、GVやBalderton CapitalといったVCから2億500万ドルを調達し、この分野でかなり積極的に展開している。基幹のビジネスはさておき(クライアントのコピーライトをコントロールしないという点で従来の版元やレーベルとは異なる)、Kobaltは英国のRailpen年金ファンドのような機関投資家が音楽のコピーライトを資産クラスとして保有するのを手助けするためのファンド2つを立ち上げた(最新のものは6億ドル)。12月にはこのファンドは版元SONGS Music Publishingのカタログを、報道されたところによると1億6000万ドルで購入した。このカタログ売買では、LordeやThe Weekndその他の若いポップ/ヒップホップアーティストによる曲の所有権を手に入れようと他の13社も競った。

高すぎるか?

資産クラスで急激な金の流れが起こるとき(価格面にもその流れが押し寄せている)、当然のことながらバブルではないか、という疑問が浮かび上がる。結局、昨年の業界の収入は1999年の収入のまだ68%で、初期コンシューマーの多くがいったんストリーミングサービスを利用するようになってしまえば、成長の速度は必然的に緩やかなになる。

しかしこうした資金を動かす原理は社会のシフトとつながっているーこれは音楽ストリーミングはしばらく成長の余地があり、特に人口の大部分がネットにつながるようになるときには(まずモバイルでネットにつながる)、成長するという証拠となる。

もちろん、カタログはそれぞれ異なる。Shamrock CapitalのマネジングディレクターJason Sklarは、上げ潮が全ての船を平等に持ち上げるとは限らない、と強調する。ストリーミングサービスのユーザーが若いこと、デジタル由来のソーシャルメディアを使ったアーティストの活動などを考えた時、ストリーミングの革命は特にヒップホップやラップ、ポップで恩恵が大きいようだ。

購入価格以上に、この業界のディールの評価が絶対的に変動するということは、バイヤーがカタログに付加できる営業価値でもある。彼らは新たなテレビ番組や広告キャンペーン、その他のプロジェクトで曲を流して古い曲を蘇らせて宣伝することができる。これこそが、出版権において、戦略投資家が単に財政的な投資をおこなうだけの投資家よりもアドバンテージを持っている部分だ。ビートルズやプリンスのカタログは自然とインバウンド需要を取り込んだが、そうではない中間アーティストの息の長いカタログのときには特にそうだ。

強くそして長期的なマーケットの成長と幅広い戦略でもって、音楽のコピーライトは今後多くの大手参入組が開発することになる資産クラスなのだ。

イメージクレジット: Flashpop / Getty Images

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(翻訳:Mizoguchi)

Amazon Alexaが音楽目覚まし時計になった

この秋、Amazonが発表したEcho Spotはスマートスピーカーと時計を組み合わせて誰もがベッドの脇に置こうとする新しい目覚まし時計になろうとする試みだった。今日(米国時間12/11)、AmazonはSpot(および他のAlexaデバイス)に音楽再生機能を追加した。これによりSpotは見慣れたラジオ付目覚まし時計そっくりに動作するようになる。

Amazonによれば、Alexaデバイスの所有者はAmazon Prime Music、Amazon Music Unlimited、Spotify、Pandora、TuneIn、SiriusXM、iHeartRadioを始めとする好みのストリーミング・サービスを選んで音楽で目を覚ますことができるという。

設定は現在Alexaで音楽を聞こうとする場合とほぼ同様だ。ユーザーはアーティストの名前、曲名、プレイリスト名、ジャンルなどを指定できる。もし曲のタイトルを知らなければ歌詞からでも曲を指定できる。

ただし歌詞からの探索機能とユーザーのムード、活動の種類を指定する機能が使えるのはAmazon Musicだけだ。

Amazonによればユーザーは「朝5時、ジョギング、ポップス」などと指定できる。 また「午前7時、歌詞が『I’ve paid my dues time after time』 という曲」など歌詞からも設定できるとしている。またユーザーはジャンルとしてロック、ポップス、80年代などを指定したり、お気に入りのアーティストの特定の曲を指定したりできる。また味気ない目覚ましのアラーム音以外なら何でもいいというなら単に「音楽をかけて」と指定するだけでよい。

毎朝同じ時間に起床するなら、その都度アラームをセットする必要はない。Alexaにアラーム設定するときに「毎朝」と付け加えるだけでよい。

Amazonによれば〔英語版の場合〕“Alexa, wake me up at…”、“wake me up to…”、“set an alarm”と呼びかければよいという。

この機能はAmazon EchoだけでなくAlexaが作動するすべてのデバイスで有効だ。例外はFire TVだ。テレビというのは通常夜はスイッチを切るので目覚まし機能は備えていないという。

Amazonによれば、目覚まし時計機能はユーザーがAlexaデバイスに要望した新機能中でトップだったという。そこで今日新機能追加が実現したわけだ。

たしかに機能の追加としては小さいが、これでEchoをもう一つ買って寝室にも置こうと考えるユーザーは多いかもしれない。実際、AmazonのEcho Spotはまさにそういうマーケットを狙った製品だ。もっとも多くのユーザーがSpotの出荷前にすでにEcho Dotをベッドサイドに置くために購入している。

Amazonではクリスマスから年末にかけての商戦でEchoシリーズのハードウェアを全力で売る構えだ。先日のブラックフライデーのセールでは大幅な値引きが行われ、Echo Dotは一挙にベストセラー商品になった。Amazonはその後も大部分のEchoデバイスでバーゲン価格でのセールスを続けている。これにはEcho Show、Echo Plus、新しいEcho、Echo Dotが含まれる。

〔日本版〕音楽目覚まし機能はすぐに日本語でもサポートされると思われるが、Amazonのデバイスサポートページにはまだ情報がない。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+

Tencentは今年の初めにSpotify買収の交渉を行っていた

Spotifyは長い間米国内での公開を考えてきた。来年にはIPOを行わない上場の準備をしていると囁かれている。しかし同社が今年の初めにある主要テクノロジー企業に売却する機会を拒絶していたことが判明した:その相手とはTencent(騰訊)である。評価額3800億ドルに達する中国の巨大インターネット企業だ。

Tencentは中国とアジアの外で急成長している同社の音楽ビジネスを拡大するためにSpotifyにアプローチしたのだと言われている。これはその協議について知る情報源から、TechCrunchが得た情報だ。

SpotifyならびにTencentは、私たちの問い合わせに対してコメントを拒否した。

両者の間で価格に関する議論にまで進んだのかどうかははっきりしない。Spofityの公開の意思は明確なので、そのステージまでは進んでいないものと思われる。

Spotifyは世界的なトップ音楽ストリーミングサービスとして浮上してきた。アクティブな利用者数は1億4000万人で、そのうち有料カスタマーは6000万人だ。この創業11年の会社の評価額は130億ドルと言われていて、その主要なライバルはAppleである。Appleは同様のサービスを数年後に立ち上げてキャッチアップを続けている。Apple Musicの有料ユーザーは、この6月に2700万人に達した

このSpotifyが、音楽ビジネスを発展させるために時間を費やしてきたTencentの眼に、どのようにアピールしたかは想像に難くない。Tencentの主力事業であるTencent Musicは、昨年行われたTencentのQQ Music事業とChina Music Corpの合併により開始された。

QQ Music、Kugou、Kuwoの3つの主要なサービスで6億人のユーザーを抱えており、既にそれ自体が紛れもない獣だ。Tencent Musicは、計画されているPOに先立ち、100億ドルの評価額で、戦略的投資家たちから資本を調達しようとしていると伝えられている

しかし、利益出ている中国国内のビジネスを越えて、Tencentは世界のマーケットやセグメントへの拡大を狙っている。同社は、東南アジアでSpotifyなどと競合する、勢いのあるFreemium音楽サービスJooxを運営し、今年の初めにはカラオケアプリメーカーのSmuleにも多大な投資を行った

60ヵ国以上に存在するSpotifyは、その国際的な取り組みを大いに盛り上げることも可能だ。しかし、そうはしていない。

これまでSpotifyに求婚をした大物の中にはGoogleや、あのMySpaceなどが含まれていた。Spotify自身はSoundcloudの買収を何度か試みているSpotifyが行った10件以上の買収は、そのほとんどが、サービスや技術を向上させるための小規模で人材を取り込む取引だった。

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(翻訳:Sako)

ロシアのSpotify、Zvooqが社員の引き抜きを理由にYandexを相手取り2900万ドルの賠償請求

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西欧の主要レーベルを味方につけ、ロシアと独立国家共同体(CIS)で音楽ストリーミングサービスを提供しているZvooqが、Yandexに2900万ドルの賠償金を求める裁判を起こしている。同社は、ロシアの検索エンジン大手Yandexが、今年の2月に両社の間で結ばれたとされる秘密保持契約書(NDA)に反し、自社の音楽ストリーミングサービスのために、Zvooqのキーメンバーを引き抜いたと主張しているのだ。

モスクワを拠点とし、キプロスに登記されているZvooqは、Yandexを不正競争とNDA違反で訴えている。なお、問題となっているNDAは、YandexがZvooqの戦略的投資家になる意向を示したことを契機に締結されていた。

NDAの中では、調印日から6ヶ月以内に、YandexがZvooqの社員を自社に勧誘することや、社員に解雇を促すことが禁じられていた。

しかし今春、同社のマーケティングディレクターを務めるVarvara SemenikhinaがYandexから勧誘を受けた結果、同社の音楽ストリーミングサービスであるYandex.Musicのマーケティングディレクターに就任したとZvooqは主張しているのだ。

2014年7月からZvooqに勤めていたSemenikhinaは、同社のプラットフォームの開発に”密に関わって”おり、さらには将来的なビジネスプランにも通じていたとZvooqは話す。

またZvooqは、Yandexによる引き抜きが、Zvooqの大型資金調達計画のタイミングと重なっていたため、投資家や同社の買収を検討していた人たちがZvooqから離れていってしまったと語っている。

Zvooq共同ファウンダーのVictor Frumkinは、「不正競争や不正な商習慣が業界全体に与える影響を考慮して、私たちは今回訴訟に踏み切りました。これは特に、公正なビジネス環境が整っていないロシアでは重要なことだと考えています。自由で開けたマーケットは、主要なプレイヤーが適正競争に関する基本的なルールを守ってこそ、効果的に機能するものです。そうすることでしか、Zvooqのように素晴らしいビジネスモデルと革新的なアイディアを持った企業が、消費者の生活を良くすることはできません。もしも企業の行いや市場原則に関する基本的なルールが守られなければ、また、もしも締結済みの契約書の内容が履行されなければ、政界に繋がりを持ったモラルの低い企業だけが市場で生き残ることになってしまいます。昨今の地政学的な状況を鑑みて、保護貿易主義が台頭しているロシアではなおさらです」と話す。

「Yandexによる引き抜きは許されざる行為であり、彼らはその報いを受けるべきだと考えています。というのも、今回の事件によってYandexは、世界中の人々に対して、ロシアの商習慣はまだ未発達で投資には高いリスクが伴うと言っているようなものです。私が知る限り、YandexはZvooq以外の企業にも同じようなことを行ってきており、業界全体のためにも、不正な商習慣がこれ以上悪影響を生み出さないように、私たちはこの状況に歯止めを掛けたいと考えています」と彼は続ける。

Zvooqのリーガルステートメントは、NDAの締結地でもあるリマソール(キプロス)の地方裁判所に提出されているため、英国法に基いて裁判が進められることになる。

Yandexの広報担当者は、TechCrunchに対し「私たちは、この裁判の知らせにとても驚いています。Zvooq社員の引き抜きは起きていないため、YandexはNDAにも違反していませんし、ここ数日の彼らの発言には、現実の状況が反映されていません。私たちは法的な立場を十分に理解しておりますので、裁判でそれを守るだけです。ZvooqとYandexの関係についてのこれ以上の詳細は、企業秘密のためお答えすることはできません」と語った。

ZvooqからYandexに引き抜かれたとされる、Varvara Semenihinaは「私の転職とヘッドハンティングは全くの無関係です。私がYandexにCVを送るずっと前に、Zvooqは私が辞めることに合意していました」と話す

ZvooqもZvooqで、Yandexがロシアの地元メディアに対して一方的な説明をしていると語っている。

ロシアのテックシーンに詳しい情報筋は以下のように語っている。「Yandexは以前ロシアのテック界の申し子でしたが、Googleによってロシア第2位の地位へと徐々に押し込まれてきています。さらに地政学的、経済的にも孤立しはじめたことから、現在同社は暴君のように振る舞っています。そのため、Zvooqのような小さなスタートアップは、以前にも増して今回の引き抜き事件のような集中攻撃を受けて、彼らにねじ伏せられてしまっているんです」

Zvooqによれば、同社の音楽ストリーミングサービスには現在2500万曲が登録されており、Zvooqはユーザーに対して、Universal Music GroupやSony Music Entertainment、Warner Musicといった大手レーベルからライセンスを受けた楽曲を提供している。

今年の6月にZvooqは、500万ドルの資金を調達すると共に、大手携帯電話オペレーターのTele2とパートナーシップ契約を結んでいた。さらにZvooqは、Yandex.Music、Google Play、Apple Musicに続く、ロシア第4の音楽ストリーミングサービスと考えられている。

また、2014年の8月にZvooqは、シリーズAで2000万ドルを調達しており、ロシアの小売企業Ulmartがリードインベスターとなったこのラウンドには、フィンランドのプライベート・エクイティ・ファンドEssedel Capitalが参加していた。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

Olaが車内エンターテイメントプラットフォームのOla Playをローンチ

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インドにおけるUberの主要ライバル企業であるOlaが、インターネットに繋がったカーエンターテイメントプラットフォームをローンチし、優雅な車内環境を提供しようとしている。

誰もタクシーの中で長くて退屈な時間を過ごしたいとは思わないだろうが、特に混雑したインドの都市部では、乗車時間が長くなりがちだ。そんな状況を改善するかもしれない「Ola Play」は、以前UberがSpotifyPandoraとの連携を通して提供を開始した、車内エンターテイメントをアップグレードしたようなサービスだ。

ドライバー用と乗客用のふたつのタッチ式デバイスを利用するこのサービスには、エンターテイメントのほかにも、行程に関する情報やインターネットブラウザなどが含まれている。さらに、乗客は自分の携帯電話とデバイスを同期させて、Apple Music、Sony LIV、Audio Compass、Fyndなどのサービスを利用することもできる。

Appleのような企業との提携に加え、ハードウェア面では、インドを拠点とする自動車メーカーのMahindra and Mahindraや、通信機器・半導体の開発を行うQualcommと協力し、Olaは同サービスを提供している。

Olaは以前も、車内エンターテイメントの必要性について話していた。去年、Uberと時を同じくして、Olaは無料の車内Wi-Fiサービスの提供をスタートし、このサービスが乗客のエクスペリエンスを向上させるとともに、インド国内の携帯電話のサービスエリアにある穴を埋めるのに一役買うことになると同社は主張していた。今年に入ってからOlaは、このWi-Fiサービスを、ゆくゆくはOlaの顧客がアクセスできるような、公衆Wi-Fiネットワークへと展開していきたいという野心的なプランを発表した。

そしてOla Playの導入で、同社は再度エクスペリエンスの向上に注力しようとしているのだ。はじめは、ベンガルール、ムンバイ、デリーで高級ラインのOla Primeを利用している”一部の”顧客に対してのみOla Playが提供される予定だが、2017年3月にはインド中を走る5万台以上のOlaカーで同サービスが利用できるようになる計画だ。

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Olaの車内プラットフォームに、今後どのような機能が追加されていくのか楽しみだ。というのも、同社は前述のWi-Fiパッケージを含むメンバーシッププログラムである「Ola Select」向けに、ファッション系EC企業のMyntraなど、複数のブランドと既に議論を進めているのだ。乗客とサービスプロバイダーの両方が得をするように、あるブランドの商品を車内で販売するというのは、そこまで難しい話ではない。

また、Didi Chuxingへの中国事業の(近々実行予定の)売却に合意して以来、Uberは余ったリソースをインド市場にまわしており、インド市場でのOlaとUberの競争は激化している。現状、カバーしている都市数ではOlaがUberを上回っており、主要都市におけるサービス利用数でもOlaが勝っているというデータも存在する。一方でUberは、インド向け新機能の開発やマーケット拡大に力を入れていることもあり、Olaは、Uberのサービスに慣れているような富裕層を獲得するため、エンターテイメント機能の拡充に努めているのだ。

「Ola Playで、エンターテイメントを含む車内メディアを乗客がコントロールできるようになれば、彼らのエクスペリエンスが根本から変わり、ライドシェアリング業界は新たな時代に突入することになると私は信じています」とOlaの共同ファウンダー兼CEOのBhavish Aggarwalは、声明の中で語った。

「私たちの顧客は、毎日合計で6000万分もの時間をOlaカーの中で過ごしているため、彼らにとっての快適さや便利さ、生産性にOla Playが与える影響は甚大です。このサービスによって、ライドシェアを交通手段の第1候補と考える人の数が、さらに何百万人も増えることでしょう」とAggarwalは付け加える。

さらにOla Playは、Olaが近々資金調達を計画しているという噂が立つ中でローンチされた。一年前に同社は5億ドルを調達していたものの、東南アジアを拠点とする同盟企業のGrabが、インドよりも小さな市場で営業を行っているにも関わらず7億5000万ドルを調達したことから、Olaも棚ぼたを狙っているのかもしれない。今月に入ってからBloombergは、Olaがもうじき6億ドルの調達を完了すると報じており、今回の派手で華やかな発表の目的のひとつは、恐らく現在行っている投資話を前進させることなのだろう。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

BitTorrent Nowの音楽・動画ストリーミングアプリが、iOSとApple TV向けにも公開

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BitTorrentの名前は今でも著作権侵害を思い出させるものかもしれないが、BitTorrent社はピア・ツー・ピア技術がコンテンツの合法的な配布手段として利用できるようにするための努力を続けてきた BitTorrent社によれば、同社の製品には1億7千万人以上の利用者がいるということだ。本日、コンテンツクリエイターたちが、観客である私たちの注意を惹くことができるようにすることを目指して、ストリーミングアプリケーションBitTorrent NowがiOSとApple TV向けに公開された。

このアプリはまず 6 月にAndroid向けに公開され、iOS向けのリリースはすぐに行われるとアナウンスされていたものだ。

SoundCloudのような音楽ストリーミングアプリと同様に、BitTorrent Nowはアーティストたちに作品をBitTorrentのプラットフォームへアップロードさせ、多くの人たちの目に触れる機会を与える。とはいえBitTorrent Nowが他の多くのサービスと一線を画す点は、コンテンツの種類を1種類に限っていないところだ。歌、映像、ミュージックビデオ、その他をインディーズのクリエイターたちから受け入れるのだ。

モバイルでは、コンテンツはBitTorrentのサーバーによって従来のやり方で配布されていたが、同社は、ピア・ツー・ピア技術でのサポート構築に取り組んできた。ただし、デスクトップでも利用可能であるBitTorrent Nowのネットワークは、同社のウェブサイトの説明によれば、「ファンによって支えられている」そうである。つまり、あるコンテンツを最初にダウンロードした人は、それをダウンロードする他の人々のための配布ポイントになるということだ。

とはいえ同社は、モバイルアプリはしばらくは、クライアント/サーバ・システムを使用すると述べている。P2Pコンポーネントが開発中なので、これは「一時的」な措置である。

BitTorrent Nowの上で現在主流の有名アーティストを見かけることはほとんどない。ここは新進気鋭の才能に出会う場所なのだ。とはいえ、何組かの注目株も含まれてはいる。The OnionSuper DeluxeIHEARTCOMIX、Major Lazer、Flume、G-Eazy、A24 Films、Drafthouse Films、David CrossそしてThe FADERなどがその例だ。

アプリを使って、ユーザーは自分の好きなアーティストをフォローし、プレイリストを作成し、BitTorrentコミュニティ全体で流行っているものを知り、推奨作品リストを受け取ることができる。また、「rock」、「house」、「mixtape」、「folk」、「book」、「comedy」などのようなジャンルやタグにより、アプリ内でコンテンツを探索することができる。

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BitTorrent NowはiOS上でのバックグランド再生にも対応している、もしソーシャルネットワークや、SMSや、メールを介してシェアを行いたければiOSの組込シェア機構を用いて行うことが可能だ。

BitTorrent Now の課題は、これだけ世の中に多くのコンテンツ発見の手段(これまでBitTorrent が支援してきた「既存」のアーティストたちのものを含む)がある中で、自分にふさわしい場所を見つけることだ。SoundCloudに加えて、アーティストたちは既にBandcamp、YouTube、Vimeo、あるいは自分自身のウェブサイトやFacebookのようなより巨大なソーシャルネットワーク上でも作品を共有することができるのだ。

そこでBitTorrentは、クリエイターたちに自分の条件を設定させることによって魅力を加えようとしている。BitTorrentの「bundles」を用いれば、アーティストたちはコンテンツを無償で提供することもできれば、サブスクリプションを設定したり、または個別の支払いを求めることもできる。アーティストたちはまた、ユーザーの電子メールアドレスを得て、収益の大部分を手にすることもできる。

しかしファンにしてみれば、こうした様々なオプションは、ある場合には広告付きコンテンツを視聴し、またある時は支払いが必要になるということを意味する。これは、誰もが理想的と思うわけではない、まとまりのない経験へとつながる可能性がある。

BitTorrent Nowアプリは現在iTunesやApple TVから入手可能だ。

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(翻訳:Sako)