ニューヨークの都心ブルックリンで農産物の産直を展開するFarmigoに地域農家も好感

 

ニューヨークのどまんなかで、農産物の地産地消でスタートアップしているFarmigoは、サンフランシスコ出身だ。ぼくみたいに。

今でもチームはウェストコーストにいるし、イスラエルのテルアビブにもいる。2年前にファウンダでCEOのBenzi Ronenと同社の本社は、合衆国を横断してニューヨークのブルックリン(Brooklyn)に来た。このシリーズBuilt in Brooklynの中でも、変わり種だ。

Ronenによると、“Brooklynは地域産の自然食品が360度全方向から集まるすばらしいハブだ。地元産の農産物もね。オンラインとオフラインの企業の協力体制も、ここは理想的だ。食べ物スタートアップとメディアスタートアップとのコミュニケーションも良い”。

Farmigoがローンチしたのは実は2011年のTechCrunch’s Disrupt SFだった。そのときの彼らのプロダクトは、コミュニティ支援型農業(community supported agriculture, CSA)のためのソフトウェアで、地元消費者と地元農家をオンラインでつなぎ、配達はたいへんなので消費者がコミュニティの配布センターに来て、品物をもらう。センターは学校でも、どこかのオフィスでも家でも、どこでもよい。

Ronenは曰く、同社は食品の生産者たちを結びつけることによって、従来的な“食品チェーンを崩壊させたい”。ただしマーケットプレースの構築は、容易ではない。“参加意欲のある農家が十分にいるか。そして、そうやって産直的に食料を買いたい消費者が十分にいるか。この二つが最大の難題だ”。

“現時点では、農家はうちに集まってくる。従来的な食品チェーンでは末端小売価格の20%しか農家の手に渡らないのに対し、うちでは60%wp渡しているからだ”、と彼は言う。

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(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa))


Amazon、ローカルビジネスへ拡大着々―レストランのテイクアウト注文、宅配サービス開始

去る6月にわれわれはAmazonがSeamless、Grubhub、DeliveryHeroのようなレストランのテイクアウト注文と宅配のサービスを準備中だと伝えた。先週末、Amazon Localアプリのアップデートで、そのサービスがリリースされていたことが判明した。

テイクアウト&デリバリー機能は、皆が感謝祭のディナーの残り物をつついていたであろう先週末に静かにリリースされた。「ホリデーシーズンは忙しくなります。われわれがお手伝いします」というのがAmazonの説明だ。

われわれはAmazon Localでいろいろな都市を試してみたが、どうやら現在サービスが実施されているのはシアトルのみのようで、提携レストランは、宅配が20店舗、テイクアウトの注文が110店舗となっている。 Takeout & Deliveryでの注文はすべて既存のAmazonアカウントを通じて決済される。

われわれも含めて多くのメディアが報じているように、Amazonはローカル・コマース・サービス分野で大規模で野心的な将来計画を描いており、特にオンラインからオフラインにサービスを拡張しようとしている。これにはReutersが伝えているようなYelp、Thumbtack、Angie’s Listをひとまとめにしたような総合的ローカル市場が含まれる。これはすでにAmazon Freshとして一部実現しており、単なる生鮮食品の宅配だけでなく、Spotlightという新しいサービスもスタートさせている。これはレストランのテイクアウト料理からカップケーキ、紅茶葉、特製アイスクリームなど各種の「地元の良品」を選んで届けるというものだ。

またAmazonはSquareやPayPalのライバルとなる店頭支払いシステム、Amazon Local Registerローンチしている。

Amazonはこれらのサービスを統合し巨大化することによって消費者とローカルビジネス双方の利便性が高まるようなスケールメリットを狙っているようだ。

たとえば、今回スタートしたテイクアウトとデリバリーのサービスは料金がユーザーのAmazonアカウントから支払われる。Amazonはこのつながりを利用してレストランその他のローカル・ビジネスにLocal Registerを採用するよう説得することができるだろう。

ある情報源によれば、「レストラン向けサービスやレジスター・サービスは手始めだ。今後数ヶ月のうちに更に進化した機能のサービスを他の業種にも拡大していく」ということだ。

ではAmazonはまずどの業種を狙っているのだろう? われわれも6月の記事で指摘しているが、旅行業が次のターゲットだろう。旅行業のニュースブログ、Skiftの先月の記事によれば、Amazonは新年早々にもAmazon Travelを立ち上げるという。当初はホテル予約からスタートするが、フライト予約などに順次サービス範囲を拡張していく計画だということだ。興味深いのは、Amazon Localで所在地をシアトルに設定すると、レストランのテイクアウトと配達だけでなく、「ホテル予約」というタブも表示されることだ。

われわれはAmazonにコメントを求めている。新情報が得られればアップデートする。

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(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+


アプリ1つで写真ケーキを注文–BAKEが手がけるPICTcake

オンラインでケーキを販売するBAKE。同社はこれまで「クリックオンケーキ」の名称で、通常のケーキと、食用プリンターでケーキの表面にプリントを施した「写真ケーキ」を販売してきた。現在では写真ケーキを中心に年間3万個を販売。注文の翌々日には全国どこにでも冷凍のケーキを届けることが可能だという。

そんな同社が10月2日、サービスを刷新。ブランドも写真ケーキに特化した「PICTcake」にあらため、iOSアプリも公開した。アプリでは、スマートフォン上で写真撮影からケーキのデザイン、購入までが可能。

BAKEは2013年4月の設立。代表取締役である長沼真太郎氏の前職は流通業、そして実家は日本で一番の売上を誇るという老舗の宅配ケーキ屋「きのとや」だ(長沼氏の出身地である北海道では、雪のために物流面でのトラブルがつきものなため、宅配ケーキが人気なのだそうだ)。そんな長沼氏は現在、チーズタルトやシュークリームの専門店を経営しつつ、PICTcakeの事業に取り組んでいる。すでにチーズタルトの事業はすでに年商1億円程度になっているそうだ。

僕も友人の誕生日会などで写真ケーキを見かけることはあったのだけど、実はこれ自体は15年ほど前からあるものらしい。しかし食用プリンター自体がまだそれほど普及していないため、製造できるケーキ屋も限られているそうだ。それをオンラインで年間3万個販売しているということで、長沼氏は「ものすごいニッチな分野だがニーズはある。我々は写真ケーキでは多分世界一ではないか」と語る。ちなみにデコレーションケーキの市場は年間1400億円だが、そのうちで写真ケーキが占めるのは、10億円程度なのだそう。

ケーキの価格は17cm×17cm(5-10名用)が4320円、22cm×22cm(10-20名用)が8640円。今後は結婚式などのイベントでも利用できるような大きなサイズにも対応していくとしている。そのほか、IP、つまり版権もののキャラクターなどとのコラボレーションに関しても積極的に行っていくそうだ。製造は前述のきのとやに委託しているが、現在東京でも製造工場と提携を進めている。


料理写真共有サービスmiil、リピーター数をもとにした飲食店ランキングを提供

5月の代表変更以降、サービスを「食を通じたコミュニケーション」のためのものと再定義した料理写真共有サービス「miil(ミイル)」。ユーザー数は33万人と決して大規模なコミュニティではないが、女性ユーザーを中心にして、月間40万枚の写真が投稿され、「食べたい!(Facebookの「いいね!」に相当)」は月間で900万件も付く。

6月に運営元のミイル代表取締役である大下徹朗氏に話を聞いたところ、今後はユーザーを拡大しつつ、有料オプション(月額300円)と食品EC支援事業、広告でのマネタイズをするとのことで、有料オプションについては機能を強化すると言っていた。その有料オプションの新機能「リピ店(リピテン)」が7月23日に発表された。iOS版のみでサービスが提供されており、Android版については8月以降の提供となる。

リピ店による「渋谷駅徒歩10分、焼肉、夜、予算指定なし」での検索結果

リピ店は、飲食店のランキング表示および検索機能だ。miilでは以前から飲食店の検索機能はあったのだけれども、それを改善して、ユーザーの写真投稿頻度をもとに「リピーター」を算出するようにしたそうだ。そのリピーターの多さをベースにして、独自の飲食店ランキングを表示、検索できるようになる。

その飲食店に一度しか訪れたことがないユーザーは、ランキングへの寄与度が低い。そのため、例え来店者が多い(=miil上で写真の共有が多い)飲食店であっても、ランキング上位には表示されにくくなる。一方で、異なる日付で同じ飲食店に複数回来店しているユーザーが多い場合はランキングの上位に表示されやすくなるのだそうだ。

常連がつくことがランキングに寄与するということで、オープンしたばかりの飲食店を発見するのにはちょっと向かない気もする。ただ、「常連さんが多い飲食店は良い飲食店」ということであれば信頼もできるし、何より飲食店選びに失敗するようなことはなさそうだ。飲食店を検索する際、食べログやRettyといったサービスを思い浮かべがちだが、匿名のユーザーによるレビュー、実名のユーザーによるレビューという基準ではなく、「常連がついているかどうか」は飲食店選びの新しい基準の1つになるのではないか。

リピ店の一部の機能(詳細な検索条件の指定など)は有料オプションでの提供になるが、8月10日までに限定して機能を無料で提供する予定。ミイルでは今後も有料オプション向けの機能を拡充するとしている。


加熱するフードデリバリー市場、日、米、東南アジアのそれぞれの事情

編集部注:この原稿は、ベンチャーキャピタルであるサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV) ヴァイスプレジデントの白川智樹氏による寄稿である。CAVでは東南アジアを中心に海外に11の拠点を設置し、現地企業への投資も実施している。本稿では、その各拠点からの情報をもとに、アジア全体で盛り上がりを見せるフードデリバリーサービスについて読み解いてもらう。なお本稿は後日CAVが運営するブログ「RisingAsia」にも掲載される予定だ。

2014年に入り日本で一気に盛り上がりを見せているネットを使ったフードデリバリー市場。アジア、米国の8カ国11拠点で投資活動を行うCAVの持つローカルネットワークを活用し、この注目市場を俯瞰してみたい。

本格的な立ち上がりを見せる米国

米国では、1年程前からローカル特化型のデリバリーサービスを展開刷るスタートアップが多数出てきている。6ドルの弁当を配達するY Combinator出身の「SpoonRocket」や同じくY Combinator出身でローカルレストランの食材を取り扱う「Doordash」、500 Startups出身で社員向けにランチを提供している企業にケータリングサービスを行う「chewse」などが代表例となっている。DoorDashに関しては、2013年9月にKhosla VenturesやCharles River Venturesなどいわゆる“トップティア”のベンチャーキャピタル(VC)からの資金調達に成功している。

米国ではピザなどの宅配はこれまで一部あったものの、飲食店が配達機能を持っているケースはあまり多くなかったため、配達をスタートアップ側が担うことでフードデリバリー分野はこれから本格的に立ち上がっていくと見ている。しかし上記以外にも特化型サービスが多数生まれており、すでに過当競争の様相を見せている。

・出前(昼食/夕食)「SpoonRocket」「Doordash
・法人向けケータリング「chewse
・通販(生鮮食品)「Instacart

「オフィス設置型」も多い日本

出前をIT化した「出前館」や法人弁当ニーズを捉えた「ごちクル」が多くのユーザーを獲得していたが、2014年に入り、外出する手間を省くオフィス設置型のサービスや、米国のトレンドに合わせ「○分以内」で個人に配達するファストデリバリー型のサービスが増加している。ファストデリバリー型は配達網の早期確立により、速配ニーズの強い周辺分野への進出を狙っていると考えられるが、上述した米国とのインフラの違いは大きく、既存サービスとの差別化が必要とされるだろう。

・出前(昼食/夕食)「出前館

・弁当(昼食)「ごちクル」「bento.jp」「渋弁.com

・オフィス設置型(昼食)「オフィスグリコ」「 オフィスおかん」(2014年5月にCAVが出資)「 OFFICE DE YASAI

・通販(日用雑貨・食品・飲料) Yahoo!ショッピング「すぐつく

1.2兆円の市場規模を持つ韓国
韓国のフードデリバリー産業は日本以上に生活インフラとして浸透しており、12兆ウォン(約1.2兆円)の市場規模を誇る。この巨大市場のIT化はPCに先んじてスマートフォンから始まった。韓国最大のフードデリバリーアプリである「配達の民族」は市場シェア60%、合計ダウンロード数は1000万件を達成しており、現在はテレビCMを展開することでよりマス層へのリーチを狙っている(CAVでは2014年3月に同社に出資している)。また、電話注文によるファストデリバリーも一定層に普及しており、今後はこの分野のIT化も予想される。

・出前(昼食/夕食)「配達の民族 」「YOGIYO

・高級店に特化 「FOODFLY

中国では「出前」ビジネスに強み
日本同様、中国においても店舗側で料理を配達する文化があるため、出前館型のビジネスモデルはニーズが強い。現在大手となっているのは2009年に設立された「饿了么」である。中国12都市で展開しており、登録店舗は約2万店舗、年間交易額は6億元(約100億円)となっている。社員数は200人を超え、2013年11月に米Sequoia Capitalの中国法人から2500万ドル、2014年5月に中国レストラン情報サイト最大手である「大衆点評社」から8000万ドルの戦略投資を受けた。日本からは2011年末に出前館運営の夢の街創造委員会が「得利好(Deli-hao)」を北京市内で開始したが、2013年に事業撤退をしている。

インドネシアでは渋滞がサービスの利用を加速
ベトナムやタイでは、フードデリバリーの文化が日本に比べて定着していない。これは配達中に食事が冷めてしまうことへの懸念や、ワーカーの昼食時間の長さ(ゆっくり外で昼食を取りたいと考えるため、昼食時間が平均1時間半程度と長い)に理由があるようだ。2012年以降にRocket Internetの展開するサービス「foodpanda」をはじめ10社以上のフードデリバリーサービスが乱立したが、現在も未成熟市場であり被買収など淘汰が進んでいる。

一方、インドネシアはジャカルタなど都市部で特に渋滞が多く外食に時間がかかることもあるため、フードデリバリーが比較的利用されている。KFC、Pizza Hut、Domino Pizzaなどをはじめとして飲食店側で配達機能を持っていたり、オフィスで掃除や雑務を担うオフィスボーイに依頼しテイクアウトを行ったりすることもある。現在、東南アジア圏に事業展開するFoodPandaや、ローカル企業の「Klik Eat」(夢の街創造委員会が出資)などがサービスを展開している。加盟する飲食店の中には、配達機能を持っていない店舗も多いため、事業者がにバイク便を用いて配達している。


実は女性8割のコミュニティになっていた料理写真共有サービス「ミイル」、体制を刷新して再始動

自分で作った料理や飲食店で食べた料理の写真に、美味しく見せるフィルターをつけてアップロードして交流する写真SNS「miil(ミイル)」運営のミイル。2013年に創業者だった中村仁氏が代表取締役を退任し、取締役だった高橋伸和氏が代表に就任。さらに2014年5月にはミイル(当時の社名はFrogApps)が創業期に出資を受けていたサイバーエージェント・ベンチャーズの元取締役である大下徹朗氏が代表となった。

先日代表に就任したばかりの大下氏に会ったところ、今後はミイルを「食を通じたコミュニケーションサービス」と再定義してサービスを展開するといった話を聞くことができた。

ミイルの登録ユーザーは現在32万人。そのうち8割は女性ユーザーで、中でも10〜20代のユーザーが6割を占めるのだという。月間で40万枚の写真が投稿され、Facebookの「いいね!」に相当する「食べたい!」は月間で900万件も付く。写真をきっかけにしたコメントのやりとりも多い。「料理は大変な家事。だがそれが作品や趣味として楽しめるようになっている」(大下氏)

ミイルがサービスを開始した当初、「スマホ時代のぐるなび、食べログ」の座を狙う料理写真共有サービスが複数あった。その多くは最近話題をあまり聞かなくなったのだが、ミイルはそういった店舗検索のサービスではなく、料理好きな女性に刺さるコミュニティとして成長していたようだ(その一方で、レストラン検索機能なども強化する予定があるそうだが、これは有料オプションとなるらしい)。ただまだユーザー数は30万人弱、まだまだ伸びしろはありそうだ。

そんなミイルは6月16日、「アンバサダー制度」を開始。あわせて、認定アンバサダーによる食品EC支援事業を開始した。

食品EC支援事業では、miilのアクティブユーザー数人を「アンバサダー」として認定。クライアント企業の商品をそのアンバサダーに無償で提供して、その商品を使ったメニューなどの投稿を促す。クライアント企業やミイルがアンバサダーへ金銭を支払うことはせず、いわゆる「ステマ」にはならないようにする。そのほかミイル内に「おとりよせショップ」を設置して、アンバサダーや商品購入者による写真の投稿や生産者による写真の投稿、ECサイトへの誘導などを進める。第1弾として、新潟県のカガヤキ農園と提携して事業を展開する。ミイルでは今夏中にも5件程度の提携を狙う。


3D Systems、プロの菓子シェフが3Dの砂糖オブジェクトを出力できるプリンタを発表

砂糖を材料に既存の3Dプリンタで出力させようとする試みはこれまでも行われてきた。しかしその結果は、なんというか、甘いものではなかった。

そこで3D SystemsがChefJetシリーズを発表した。このプリンタはモノクロまたはフルカラーで砂糖でできた3Dオブジェクトを出力できる。

モノクロ版のChefJet 3Dの出力サイズは8x8x6インチ、5000ドル以下で2014年中に出荷可能だという。ChefJet Pro 3Dはフルカラーで出力サイズは10x14x8インチとかなり大きい。

これらのプリンタにはデジタル・レシピ集が付属するので、シェフはCAD/CAMで学位を取っていなくてもさまざまな砂糖の3Dオブジェクトを出力できる。3D Systemsは昨年8月に3Dシュガー・プリンティングを専門とするSugar Labsを買収している。

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


Instagramはダイエットにも効果あり?!(あるいは人類の進化について)

ダイエットを考えている人にはぜひ読んでもらいたい。

ご存じのようにInstagramには、食べ物の写真が数多く登録されている。そしてJournal of Consumer Psychologyで発表されたBYU(ブリガムヤング大学)の最新の研究によると、食べ物写真を見ることは、その写真の食べ物に対する食欲を減退させる効果があるのだそうだ。

発表によれば、実際には食べなくても、食べ物の写真を見るだけで、その食べ物に対する欲求が抑えられるとのこと。すなわち実際に目の前に出された時、あまり魅力的に感じなくなってしまうのだそうだ。

今回の実験が行われた方法を見ておこう。BYUのRyan Elder教授とJeff Larsonは232人の被験者を集めて、料理写真の評価を行わせた。被験者の半分には塩味の効いた食べ物の写真を扱わせ、あとの半分には甘いものの写真を見せた。そしてそれぞれが写真を見てレーティング作業を終えた段階で、ピーナツを供したのだ。

すると塩味の食べ物を見ていたグループは、ピーナツ自体は写真になかったにも関わらず、ピーナツに興味を示さなかったのだ。塩味の料理写真を数多く見ることにより、十分な塩を味わった感じがしてしまったのだ。実際に口には入れていないのに、感覚的には充分であると感じてしまったわけだ。

もちろん、ほんの数枚の写真では効果は現れない。店で食べ物の写真を撮って共有したからといって、営業妨害に問われることはなさそうだ。

「効果が現れるのは相当数の写真を見たあとのことです」とElderは言っている。「2、3枚の写真を見てもう十分だと感じるようなことはありません」。

さて、本題は以上だが、この調査レポートから得るべき内容とは何か。

もちろん「大いなる希望」を読み取るべきだ。動物世界の一員であるにも関わらず、私たちの食生活というのはずいぶんと奇妙なものとなってしまっている。動物たちは、基本的には生きるために食べる。そしてその生きるための食べ物こそ、彼らにとって美味であるわけだ。生きるのに必要なだけ食べ、そして食べた分はしっかりと消化して、エネルギーに変える。

一方で私たちは、素材をいろいろと料理してさまざまな化学調味料を加えてから食すようになっている。そして、アメリカ人はあきれるほどの肥満大国になってしまったのだ。美味しそうなものを見かけると、まるでその時こそが最期のチャンスになるとばかりにむさぼり食う食事習慣を持ってしまっている。そうしておいて、またしばらくすると食事の時間だと、レストランに向かうのだ。

ところで現在の私たちは、美味しそうなものを見ると写真に撮って共有しないと気が済まない状態になりつつある。これはすなわち、食べ物との付き合い方を考え直せという神の啓示なのではないだろうか。別の言い方をすれば、人類は進化しようとしているのだ。食べ物の写真を見れば食欲を抑制できる。近々、Instagramの#foodpornハッシュタグは、新しい「治療方法」としてメディカルジャーナルに掲載されることになるに違いない(めでたしめでたし、と、話を終えておきたい)。

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(翻訳:Maeda, H