第一生命が欧州スタートアップとイノベーションを模索、その具体的な内容とは?

Dai-ichi Life International (Europe) Limited でHead of London Innovation Labを務める伊豆淳氏

少子高齢化が止まらない日本。あらゆる業界で国内マーケット縮小への対策が迫られている。生命保険事業を営む第一生命は2017年にイノベーション専門組織を設置、2018年に東京とシリコンバレーにラボ組織を設置するなど、テクノロジーの活用とグローバルなパートナーシップ構築に注力している。同社の取り組みをDai-ichi Life International (Europe) Limited でHead of London Innovation Labを務める伊豆淳氏、同London Innovation LabでInnovation Managerを努める米本兼也氏が語った。

本記事は、イントラリンク主催「第一生命がヨーロッパに目を向ける理由 〜現地スタッフが語る欧州スタートアップエコシステムの特徴とポテンシャル〜」のセッション内容を編集・再構成したものとなる。

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欧州という保険市場

伊豆氏によると、現在、保険業界はGDPの成長鈍化や人口減少などの外部環境踏まえて課題に対応すべき状況にあるという。また、スマートフォンユーザーが増え続けており、こうしたトレンドも取り込んでいく必要があるという。

「欧州と日本は似たような人口構成を持っていて、社会環境も類似しています。高齢化や、それにともなう医療費負担の増加など、日本と同じような課題を持っています」と伊豆氏。

ここで日本と世界の保険市場を見てみると、実は日本が米国、英国に次ぐ3番目の市場規模を持つ保険大国であることがわかる。しかし、欧州を1つの市場とみなすと、その市場規模は日本よりも大きい。

伊豆氏は「統計の取り方にはいろいろあり、こちらの統計では中国が含まれていないのですが、仮に中国が入ってきても日本が上位に入ってくることに変わりはありません」と補足する。

いずれにしても、欧州という市場は大きい。欧州の保険事業プレイヤーを見ても、ドイツのアリアンツ、フランスのアクサ、イギリスのアビバ、イタリアのゼネラリなど、大規模でグローバルな企業が目に入る。

欧州インシュアテック動向

こうした大規模保険事業プレイヤーはイノベーションにも注力している。

伊豆氏は「彼らはGAFAMと連携し、ラボを設立し、インキュベーター、アクセラレーターを立ち上げるなど、活発な活動を見せています」という。

大手はこのような動きを見せているが、スタートアップはどうだろうか。

伊豆氏は「欧州のインシュアテック企業は豊かな状況にあります」と話す。

欧州のインシュアテック企業の評価額は230億ユーロ(約3兆円)となっている。また、欧州インシュアテックへの投資額は右肩上がりで、2021年には42億ユーロ(約5409億円)の投資が見込まれる。一方の日本は、インシュアテックだけでないスタートアップ全般への投資額(2020年)が37億ユーロ(約4765億円)だ。インシュアテックに限定するとこれよりも投資額が低いことがわかる。

では、インシュアテックに関わるスタートアップと既存の保険会社は競合するのだろうか。

伊豆氏は「保険会社は保険の製造、販売、管理と、保険に関わるすべての機能を持っています。インシュアテックスタートアップでこうした『全機能』を備えているところは多くありません。彼らはむしろ、従業員の福利厚生、健康サポートや請求管理、自営業、中小企業向け保険など、保険会社のパーツの機能に特化して優位性を発揮しようとしています」と考えている。

最新欧州インシュアテック事例

こうした動向を受けて、保険の提供方法にも変化が訪れている。

例えば、パラメトリック保険。この形の保険では、気温、雨、風速などの潜在的な損失に関連するパラメータを契約書に明記し、保険会社が天気などのデータを監視し、データが損失発生の閾値に達したら自動的に保険が支払われる。

組み込み型保険というものもある。これは、例えばスキーを楽しみたい顧客が、スキー場のチケットをオンラインで購入する際、追加の保険の注文の有無をオンライン決済の中で顧客に確認することで、保険をプッシュするものだ。

また、AIの活用も見逃せない。自動請求サポート、カスタマーサポートのためのチャットボット、掛け金のダイナミック・プライシングなどを行うためのデータ分析、写真による請求処理など、保険のさまざまなプロセスの中でAIの活用が進んでいる。

その他にも、ブロックチェーンの活用や、テレメディシン(遠隔医療)など、インシュアテック企業のテクノロジー活用は枚挙にいとまがない。

伊豆氏は「当社は欧州で有望なスタートアップとのイノベーションを模索していますが、こういった状況で欧州のエコシステムにいきなり入るということは現実的ではありません。当社は現地のアクセラレーターにアプローチしたり、業界団体に参加したり、欧州のスタートアップと繋がりのあるコンサルティング企業のサポートを得たり、欧州スタートアップに投資するなどして、徐々にエコシステムに入るようにしています」と語る。

第一生命が欧州スタートアップとパートナーシップを構築する方法

米本氏は、保険事業で海外展開する難しさを指摘する。

Dai-ichi Life International (Europe) Limited London Innovation LabでInnovation Managerを務める米本兼也氏

「国が変われば商習慣が変わります。ですが、保険の場合、国の福利厚生とも関わるサービスですので、ある国で展開したサービスを他の国でそのまま横展開することができません。同じことは技術でも言えます。欧州で良い技術を持つスタートアップを見つけても、その技術が日本でそのまま活用できるかは別問題です。欧州のスタートアップを日本に紹介するときには、その技術が日本でどう役立つのか、勝ち筋を見据えてから紹介するようにしています。また、技術をサービスに反映するときにはできるだけスモールスタートして、撤退する必要が出てきたらすぐ撤退できるようにしておくことも大事です」と米本氏。

また同氏は欧州でコラボレーションするスタートアップを見つけ出し、日本の第一生命につなげる役割を果たしているが「ビジネス部門への気遣い」の重要性も訴える。

「私のいるイノベーション部門だけではイノベーションはできません。イノベーションを起こすためには、現業を持つビジネス部門の力が不可欠です。ですが、彼らには、今、この瞬間走らせているビジネスがあります。そのため、彼らに大きな負担をかけることは避けながら、新しい技術を導入することで得られる効果をアピールし、興味を持ってもらうように努めています」と米本氏は語る。

また、同氏は海外スタートアップとの連携で不可欠な英語に関しても言及した。

米本氏によると「問い合わせなどのコミュニケーションが英語だ」というところで日本側が構えてしまうこともあるという。

米本氏は「そういうときには、英語の翻訳や資料作りなども対応してくれるコンサルティング会社さんにプロジェクトの初期から入ってもらうなどして、日本側の負担や心の壁を小さくしていく工夫が必要ですね」と締めくくった。

「To The Market」は女性のための倫理的で持続可能な職場環境の構築を支援する

Jane Mosbacher Morris(ジェーン・モスバッカー・モリス)氏は、国務省でテロと闘う女性を支援する仕事がキャリアのスタートだった。そして今、彼女は女性が適正な給与の仕事を見つける支援をしている。

女性が変化を推進するにはリソースへのアクセスが必要であることを認識した彼女は、農業をはじめとするいくつかの分野について学び、サプライチェーンに戦略的投資を行うことに興味を持った。

Curate Capitalの創業者でゼネラルパートナーのキャリー・コルバート氏(左)とTo The Marketの創業者ジェーン・モスバッカー・モリス氏(右)

「私が気づいたのは、小売製造業の経済規模は最大であり、サプライチェーンの中で女性が支配していることでした」とモスバッカー・モリス氏がTechCrunchに語った。「しかし、倫理的で持続可能な小売商品を推進するために十分な戦略的投資は存在していませんでした。私たちは、どうすればグローバルサプライチェーンに本格参入するきっかけや推進役になれるかを考えました」。

彼女は2016年にTo The Market(トゥー・ザ・マーケット)を設立し、グローバルサプライチェーンへのアクセスを民主化し、環境を保護し、特に女性が創業した企業を推進するというビジョンを掲げた。同社の独自プラットフォームは、倫理的で持続可能なビジネスとサプライチェーンを吟味し、IT技術を活用してブランドをサプライヤーのネットワークと結びつける。系列化されたサプライチェーンには現在50か国で200社のメーカーがいる。

同社は10月4日にシリーズAラウンドの調達を発表し、モスバッカー・モリス氏は金額が500万ドル(約5億6000万円)だったことを確認した。ラウンドをリードしたのはCurate Capitalで、Working Capital Fund、Spouting Rock、およびForward Venturesも参加し、Belle Fund、Knightsgate Venturesおよび戦略エンゼル投資家のグループが追加投資した。

「To The Marketは倫理的につくられた商品の証明書になろうとしています」とCurate Capitalの創業者でゼネラルパートナーのCarrie Colbert(キャリー・コルバート)氏はいう。「この会社は選ばれた会社にとって最も大切なものになるでしょう。2020年の彼らの成長に拍手を送ります。このチームはよい位置にいたことでパンデミックの嵐を乗り換えただけでなく、製造者が中国から品物を入手できなかったとき、ジェーン(モスバッカー・モリス氏)は彼らのニューズにすぐに答えられる広大なネットワークを持っていました」。

モスバッカー・モリス氏は、ベンダー基盤に投資したことによって同社が競合するどの仲介業者よりも「少なくとも10年先」にいると語った。それは持続可能性と倫理的な特徴についてだけでなく、事業成績においてでもだ。

To The Marketが仕事をしている小売業にはNordstrom Rack(ノードストローム・ラック)、TJ Maxx(TJマックス)、Burlington(バーリントン)、およびBloomingdates(ブルーミングデールズ)がいる。会社は獲得した資金を新たな成長に向けて使おうとしている。チームの拡大、技術開発、および市場開拓の推進などだ。現在従業員は20名ほどの「野心的のチーム」、とモスバッカー・モリス氏はいる呼んでいる。

「私たちは、中国以外のメーカーと提携することによって、グローバルサプライチェーンや米国企業、中でもかつて1つの国ので特別に注目を集めてきた企業に付加価値を与えます」とモスバッカー・モリス氏はいう。「このパンデミックは、多様性のある系列化されたサプライチェーンをもつことが不可欠であることを私たちに教えました。1つの工場と国に依存することは非常にリスキーです」。

画像クレジット:MediaGroup_BestForYou / Shutterstock

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(文:Christine Hall、翻訳:Nob Takahashi / facebook

モバイルSuicaで障害、iPhone・Apple Watch向け「Apple PayのSuica」でチャージなど不可に

モバイルSuicaで障害、iPhone・Apple Watch向け「Apple PayのSuica」でチャージなど不可にJR東日本は10月5日未明、モバイルSuicaサービスのうち、iPhone / Apple Watch向けに提供している『Apple PayのSuica』でチャージや定期券、グリーン券の購入が行えない不具合が発生していると発表しました。

同社は『現在復旧を急いでいる』としたうえで、チャージは店舗・駅の券売機等で、定期券・グリーン券の購入は駅の券売機で行うよう案内しています。

また、『Apple PayのPASMO』ユーザーからも「チャージできない」との報告が上がっています。

(Source:JR東日本Engadget日本版より転載)

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返る

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返る今年も10月5日となり、アップルの共同創業者スティーブ・ジョブズ氏が逝去してからちょうど10年の節目を迎えました。

どれほどの偉人や有名人といえども歳月が経つと知名度の風化は免れにくいものですが、令和の時代でも「出でよ、日本のジョブズ」というタイトルの記事を見かけることはたびたびあり、故人の影響力の強さが偲ばれます。ジョブズ氏の美的感覚や「製品はユーザー体験を総合したもの」という考えがiPhoneという形に結実し、10数年以上にわたるシリーズを通じて日常の一部になっているからかもしれません。

以下、これまでの過去記事を引用しつつ、ジョブズ氏の残した足跡を振り返っていきましょう。

Apple TV操作アプリ「Remote」開発者、スティーブ・ジョブズとの思い出を語る

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返る
ジョブズ氏の関わった製品やソフトウェアも永遠ではなく、いつかは終わりが来る。その現れの1つがiPhoneやiPadをApple TVのリモコン代わりにする「Remote」アプリの廃止でした。もっともiOS 12以降のコントロールセンター画面に同機能が統合されているため、発展的解消ともいえる出来事です。

そのコードの最初の1行を15年前に書いた元アップルのエンジニアは、「App Storeチームがストアへのアップロードの流れをテストするために使用した」最初のProduction(App Store公開に必要な証明書を得た)アプリになった」と振り返っていました。つまり、App Storeのはじめの一歩が踏み出されたわけです。

さらに時代が下って2010年には。ジョブズ氏は「次のApple TVリモコンは、この操作がディスプレイなしで出来なければならない」と語っていたとのこと。それが後のSiri Remoteや、ひいてはiPod Classicのクイックホイールのような操作感が蘇った第2世代へと繋がった。製品や形がなくなったとしても、志は受け継がれていく証でしょう。

ジョブズ、「iTunesがCD市場を滅ぼす」とベゾスに警告したとの証言

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返る
アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏はEC(電子商取引)のビジネスモデルを根づかせ、送料無料などを武器に全世界を席巻した風雲児です。そんなベゾス氏とジョブズ氏は「音楽」(CD)という接点で関わりを持ち、後のアマゾンのあり方に大きな影響を与えたのではないか、と思わせる逸話がありました。

アマゾンプライムやAWS、KindleやAmazon Musicの創設に関わった著者らによる『Working Backwards』という書籍では2003年、アップルがMac用のiTunesを公開して間もない頃のエピソードが語られています。

アップル本社に招かれたベゾス氏に、ジョブズ氏はWindows用iTunesを開発し終えたと明かし、「アマゾンは、CDを買う最後の場所になる可能性が十分にある」「CDは手に入りにくくなるから、プレミアムをつけてもいいだろう」と述べたそうです。

この発言がアップルとアマゾンの提携を持ちかけていたとは考えにくいのですが、少なくとも「これからの音楽はデジタルかつダウンロード販売になる」と宣言したのは確かなことでしょう。2003年当時のアマゾンにとってCDは小さくて郵送しやすいことから、貴重な収入源の1つでした。

ジョブズ氏の性格から推測すると、本書で述べられる「挑発して、アマゾンのビジネス上の判断を誤らせようとしていた」可能性は高いと思われます。が、ベゾス氏は冷静に対応し、その後まもなくKindleを発売したり、AWS(アマゾンウェブサービス)を立ち上げ、物理媒体への比重を減らして見事に成功を収めています。

天才は天才を知る。ジョブズ氏が予言したCD市場の衰退は現実となっており(さらにストリーミングのSpotifyが登場することでiTunesの「1曲ごとに1ドル27セント」ビジネスも崩壊しましたが)それが反映された今日のアマゾンも「ジョブズの遺伝子」を受け継いでいるのかもしれません。

元アップル幹部、ジョブズのApp Store反対やiOS向けFlash開発を語る

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返る

Scott Forstal

App Storeの成長は目覚ましく、ゲームの収益だけでもソニーと任天堂とマイクロソフトの合計を超えた(2019年)との報道もあります。しかしジョブズ氏はApp Storeの設立に反対する最大の人物のひとりだったという、元アップル幹部の証言がありました。

デバイスの梱包から操作性、搭載アプリから流通まですべてのユーザー体験に責任を持ちたい—そんなジョブズ氏の信念からすれば、サードパーティのアプリ開発を一切可能にすべきではないと強硬に反対していたとの回想は頷けることです。

妥協案として上がっていた「Webアプリをブラウザ内で実現できれば十分」という考えは、おそらく実現していればユーザーも不満が募り、ジョブズ氏の「ユーザー体験は快適であるべき」という理想にも反する結果となっていたはず。

とはいえ生粋の技術者ではないジョブズ氏がそこまで見通せるとも考えにくく、やはり強烈な自我を持つスコット・フォーストール氏らが粘り強く説得し、しぶしぶサードパーティ製アプリ開発を認めさせたことは、アップル内外を問わず幸運だったと思われます。

またフォーストール氏は、最終的にはiPhone向けFlashを却下したジョブズ氏が、実はAdobeとの協力を進めさせていた(が、デキが酷かったので辞めさせた)との興味深い証言もしています。ジョブズ氏の先を見通す力は並々ならなかった一方で、部下の苦言にも耳を傾け、時には自説を撤回する度量があったことを示している(部下にも相当な信用や胆力が必要そうですが)と言えそうです。

ジョブズのメールから「iPhone Nano」が検討されていたことが判明

ティーブ・ジョブズ逝去からちょうど10年、App Storeやアマゾンにまつわる足跡を振り返るアップルとEpicとの「フォートナイト」やApp Store手数料をめぐる訴訟では、証拠として様々な資料が提出され、その中には門外不出のはずのアップル社内メールも多く含まれていました。そこから、ジョブズ氏が「iPhone Nano」なるデバイスの開発を検討していたことが明らかとなっています。

それはiPhone 4発売から数ヶ月後の2010年末、部下に対して送ったもの。この年はAndroidスマートフォンの販売も本格化し、ソニーのXperia最初の機種が発売された時期(海外のみ)ではありますが、「Googleとの聖戦(Holy War with Google)」という言葉があるのも味わい深いところです。

「iPhone Nano」計画が興味深いのは、iPhoneの単一サイズにこだわりがあると思われたジョブズ氏が(原則が崩れたのは2014年発売のiPhone 6 Plus以降)現行モデルの小型化らしきデバイスを自ら提案している点でしょう。実際、2009年~2011年にかけて「iPhone Nano」の噂が飛びかっていたとの証言もあります。

初代iPhone発売時には「誰もスタイラスなんて欲しくない(中略)誰もが生まれつき持っているポインティングデバイス、生まれつき10本持ってる指を使うんだ」としてスタイラス嫌いを標榜していたジョブズ氏ですが、自ら「iPhone Nano」を認めたように、iPad Pro以降のApple Pencilも評価する柔軟さを持ち合わせていたとも思われます。

今年2021年は、アップル創業45周年でもあります。ティム・クックCEOが引用した「これまでのところ素晴らしい旅だったが、まだ始まったばかりだ」という故人の言葉通り、ジョブズ氏の遺産とも言えるiPhoneやiPad、数々のアップル製品と共に、われわれ人類の旅はまだ始まったばかりかもしれません。

Engadget日本版より転載)

ソフトバンク出資のインドの格安ホテル予約サービス「Oyo」がIPO申請、最大約1290億円調達へ

Oyo(オヨ)は公開市場を探索する準備が整ったようだ。創業8年のインドの格安ホテル大手である同社はインド証券取引委員会にIPO申請の書類(PDF)を提出した。書類によると、同社は11億6000万ドル(約1290億円)の調達を模索する。

グルガーオンに本社を置くOyoは、ホテル経営者にデジタル予約・決済の導入、部屋の最適価格の決定、サードパーティ予約サービスの統合をサポートするオペレーティングシステムを提供している。同社は新規株式の発行で9億4200万ドル(約1045億円)を調達することを目指していて、残りは既存株の販売(セカンダリー取引)で調達する。

SoftBank(ソフトバンク)は1億7500万ドル(約194億円)超相当の株式を売却する計画だとOyoはIPO申請書類で説明した。同社は3億3000万ドル(約366億円)を借金返済にあてる。同社はつい最近、負債で6億6000万ドル(約732億円)を調達していた。

主な投資家にSoftBank、Airbnb、Lightspeed Venture Partners、Sequoia Capital India、Microsoftなどを持ち、直近の評価額が96億ドル(約1兆650億円)だったOyoは、個人投資家から何を得ようとしているのか詳細を明らかにしていない。しかし今週初めにTechCrunchが報じたように、わかっていることがある。OyoはIPOで評価額120億ドル(約1兆3312億円)を目指している。そして同社の若い創業者、Ritesh Agarwal(リテッシュ・アグルワール)氏は自身の持分を売却しない。

10月1日の仮目論見書提出は、近年海外マーケットでかなり野心的に事業を拡大してきたものの、そうした取り組みにブレーキをかけて方向を修正したOyoにとって大きな転換だ。

他のホスピタリティー・旅行業界の企業と同様、Oyoもパンデミックで大打撃を受けた。新型コロナウイルスの拡散を抑制しようと、一部の国はロックダウン措置を取ったため、売上高が60%減った時期もあったと同社は明らかにした。

同社の2021年3月までの会計年度の総収入は6億ドル(約665億円)で、5億2800万ドル(約585億円)の赤字だった。

ただ、同社の主要マーケットがここ数四半期に経済活動を再開したため、同社は直近の数カ月で急速な回復の兆しを見せている。仮目論見書の中で、4つのマーケット(インド、インドネシア、マレーシア、欧州)が同社の総売上高の約90%を占めると明らかにした。

Oyoはまた、このところホテルとの関係を簡素化してきた。同社は現在ホテルを所有せず、その代わり15万7000を超えるパートナーと協業し、そうしたパートナーがホテルやリゾート、住宅を運営するのをサポートしている。パートナーに最低保証も約束していない。

ソフトバンクが現在45%超の株式を保有するOyoのストーリーは、アグルワール氏がラージャスターン州でより良い教育を受けようと故郷を後にしたところから始まる。同氏は頻繁にデリーに住む友人を訪ね、友人の家や安いホテルに宿泊した。そして10代後半で通っていた学校を退学したとき、同氏は格安ホテルが毎晩部屋を埋めるのに苦労しているのに気づいた。

そしてアグルワール氏は、ホテルのリノベーションを自身にさせるようホテル経営者を説得し、将来の手数料と引き換えに企業に販促を始めた。これは同氏が過去の会話で語ったことだ。

この取引は、成功したことがすぐさま証明された。そして、マーケットで無視されてきた部門にフォーカスするために、アグルワール氏がテクノロジーを使ってサービス拡大を模索することにつながった。

Oyoのサービス

これがOyoの始まりだ。同社はすぐに成功し、PayPal共同創業者Peter Thiel(ピーター・ティール)氏の財団からの共同出資をひきつけるほど急速な成長だった。

Oyoはまず市場をリードする地位を築き、それから事業を拡大した。東南アジア、欧州、中国、米国から始めた。同社の積極的な拡大は部分的には成功で、部分的には失敗でもあった。欧州と東南アジアではいうまくいっているが、中国と北米のマーケットに参入するのは同社が思った以上に難しいことがわかった。

事業拡大の最中に、27歳のアグルワール氏は同社に7億ドル(約776億円)を投資した。同氏は、この投資に先立って、自身の持分を10%から30%に引き上げるためにRA Hospitality Holdingsという企業を通じて20億ドル(約2219億円)を使う計画だと発表した。アグルワール氏と同氏の持ち株会社のOyoの持分はいま32〜33%だと仮目論見書にはある。

Oyoのアプリは1億回超ダウンロードされ、従業員の70%がインド国内居住だと同社は仮目論見書に書いた。そして同社は、2019年12月時点で獲得可能な最大市場規模は短期滞在施設5400万軒だととらえている。

「インド、インドネシア、マレーシアでは、2018年と2019年にOYOプラットフォームに加わったホテルの2019年の業績は、同規模の他の独立経営ホテルを上回りました。OYOプラットフォームに加わってから12週間後、OYOで稼働しているホテルの2019年の売上高は、インド、インドネシア、マレーシアにおける同規模の独立経営ホテルの推定平均売上高の1.5〜1.9倍でした。欧州では、OYOで稼働している民泊施設の売上高は2019年に、個人で運営している施設の推定平均売上高の2.4倍でした」と仮目論見書にはある。

Oyoの事業についての知見が得られる2枚の興味深いスライドが仮目論見書にあった。

OYOで稼働しているホテルと比較対象の独立経営ホテルのコロナ前の平均売上高(米ドル、2019年)

Oyoはフード、小売、ホテル、旅行事業においてインドで2番目に大きいロイヤルティプログラムを展開している

この記事にはCatherine Shu氏も協力した。

画像クレジット:Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

スポーツ×地域マーケで地域活性化を目指す北海道発「スポーツネーション」が9000万円のシード調達

スポーツ×地域マーケで地域活性化を目指す北海道発「スポーツネーション」が9000万円のシード調達

「応援する力を経済に還元しよう」をミッションに掲げる北海道発のスポーツ領域スタートアップ「スポーツネーション」は10月1日、シードラウンドにおいて、総額9000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先は、banker、INCLUSIVE、個人投資家。調達した資金は、スポーツチーム支援のための現地人材採用、サブスクスポンサーへの提供サービスに向けたシステム開発、幹部人材の採用にあてる。

これまでスポーツネーションは、同社代表取締役の三木智弘氏が同時に経営する札幌市の男子プロバレーボールチーム「サフィルヴァ北海道」において、スポーツチームの新しいビジネスモデルの検証を行ってきたという。現在同氏は、東京大学を休学しサフィルヴァ北海道を経営をしており、その中で「知名度」「資金力」「人材」がないスポーツチームがいかに世の中に価値を提供し、ひいてはスポーツ界全体の課題を解決していけるのかを考える中で、スポーツネーションが生まれたとしている。

また、コロナ禍でスポーツビジネスのスポンサーモデルの脆弱性が露呈し、興行中止などで業界全体が苦しんでいることを当事者として感じる中で、全国各地のスポーツチームをサポートしたいという思いから、全国展開に向けたプロダクト開発チームと営業人材の強化の必要性を感じ、今回の調達にいたったという。

チームとステークホルダーのデジタルでのつながりを創出するとともに、スポーツを応援する力を地域経済の活性化につなげ、次世代の社会を創っていくことを全国各地で挑戦するという。

DNAベースのデータストレージプラットフォームを開発中するCatalogが約39億円調達

膨大な量の高密度データや情報オーバーロードを処理するのにエネルギー消費をともなうフラッシュドライブやハードドライブなどのような従来型の電子メディアは、ストレージ容量が限られているためにセキュリティ問題で脆弱だ。格納されたデータを移送するとなれば、高額の費用が発生するという問題もある。

従来型の電子メディアの問題を解決しようと、ボストンのスタートアップCatalog(カタログ)は共同創業者でCEOのHyunjun Park(ヒョンジュン・パク)氏を含むマサチューセッツ工科大学の科学者らによって2016年に創業された。同社は合成DNAを使ってエネルギー効率が良く、価格競争力もあり、そしてより安全なデータストレージと計算プラットフォームを開発している。

同社は米国時間9月30日、DNAベースのデータ計算ツールの開発を継続するためにシリーズBラウンドで3500万ドル(約39億円)を確保したと発表した。

韓国のHanwha Impactが同ラウンドをリードし、香港を拠点とする既存投資家である李嘉誠氏のHorizons Venturesも参加したとCEOのパク氏がTechCrunchとのインタビューで語った。

今回調達した資金は、Catalogの合成DNAで動く計算プラットフォームの開発を加速させるのに使用される。このプラットフォームはデータ管理や計算、自動化を可能にする。また今後2、3年で同社は計算機能の開発にさらに資金を注ぐ計画だとパク氏は話した。プラットフォームは2025年ごろに商業化される見込みだという。

DNAストレージアライアンスの会員であるCatalogは引き続き業界が成長できるよう、DNAベースの計算システムの協力者やパートナーを支援するとパク氏は話す。

シリーズBにより、同社の累計調達額は約6000万ドル(約67億円)になった。パク氏はバリュエーションの公開は却下した。同氏によると、シリーズBはHorizons Venturesがリードした2020年の1000万ドル(約11億円)のシリーズA、そしてNew Enterprise Associates、OS Fund、その他の投資家が共同でリードした2018年の900万ドル(約10億円)のシードラウンドに続くものだ。

DNAをデータストレージやコンピューティングの媒体として利用するというコンセプトは何年も前からあるが、その多くは学術的な領域に追いやられている。Catalogは、DNAをアルゴリズムやアプリケーションに組み込む手段を発見し、独自のデータエンコーディングスキームを用いて自動化することで、広く商業的に利用できる可能性を見出している。

「DNAへの情報書き込みに対するCatalogの独自のアプローチ、すなわち符号化スキームは、膨大な量の情報を保存するのに最小限の新規DNA合成を必要とするという革命的なものです。というのも、DNA合成の低スピード・高コストはこれまでこの分野のボトルネックだったからです」とパーク氏は説明した。

Catalogが独自に開発したDNAライターの「Shannon」は1秒で何百、何千もの化学反応を処理できる。フル稼働で1秒あたり10MB超のスピードで書き込むようデザインされており、1回の駆動で最大1.63TBの圧縮データを保存できる。

Catalogのテクノロジーは、金融サービスにおける不正検知、製造業における欠陥発見のための画像処理、エネルギー分野における地震処理などのデジタル信号処理などへの応用が期待されています。

「CatalogはIT、メディア、エンターテインメント、エネルギー部門などの企業と協業してきました。これらの取り組みを通じて、さまざまな産業やヘビーデータユーザーで当社の(DNAベースのデータストレージと計算の)プラットフォームが適用性を持つことがあることがわかりました」とパク氏はいう。そして共同開発パートナー、コラボレーターとして協業している12社ほどが米国と欧州を拠点としている、と付け加えた。

IT産業は過去数年、アクセラレーター(GPU、FPGA)や量子コンピューター、超並列コンピューターなど、目的にかなうテクノロジーの急増を目の当たりにしてきた。DNAベースのコンピューターの出現はこのポートフォリオを補完するものだ。同社の声明によると、DNAベースのコンピューターは低エネルギー、空間的に密、そして安全なコンピューティングで、電子システムの現実と限界とは無縁なものだ。

「基準点として、高パフォーマンスのコンピューティングマーケットは現在年400億ドル(約4兆4580億円)で、急速に成長しています」。グローバルのマーケット規模について尋ねると、パク氏は言った。

「Microsoft(マイクロソフト)、Twist(ツイスト)、Illumina(イルミナ)、Western Digital(ウェスタン・デジタル)などの企業が2021年、DNAストレージアライアンスを設立しました。Catalogはこの組織のメンバーであり、計算に注力することでこれを次のレベルにもっていき、企業がそうでもなければ廃棄したり冷たいストレージに放置したりするデータから事業価値を生み出すことができるようにします」とパク氏は語った。

「Catalogのテクノロジーは、大量のデータの蓄積や保存だけでなく、より重要なことにデータの有効活用の問題を解決する実行可能な方法を示しています」とHanwha Impact Partnersの副社長Nick Ha(ニック・ハ)氏は述べた。

Catalogは2021年初め、アジアでの事業拡大のために完全子会社として韓国・ソウルにオフィスを開設したとパク氏は話した。

画像クレジット:catalog

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

DNAベースのデータストレージプラットフォームを開発中するCatalogが約39億円調達

膨大な量の高密度データや情報オーバーロードを処理するのにエネルギー消費をともなうフラッシュドライブやハードドライブなどのような従来型の電子メディアは、ストレージ容量が限られているためにセキュリティ問題で脆弱だ。格納されたデータを移送するとなれば、高額の費用が発生するという問題もある。

従来型の電子メディアの問題を解決しようと、ボストンのスタートアップCatalog(カタログ)は共同創業者でCEOのHyunjun Park(ヒョンジュン・パク)氏を含むマサチューセッツ工科大学の科学者らによって2016年に創業された。同社は合成DNAを使ってエネルギー効率が良く、価格競争力もあり、そしてより安全なデータストレージと計算プラットフォームを開発している。

同社は米国時間9月30日、DNAベースのデータ計算ツールの開発を継続するためにシリーズBラウンドで3500万ドル(約39億円)を確保したと発表した。

韓国のHanwha Impactが同ラウンドをリードし、香港を拠点とする既存投資家である李嘉誠氏のHorizons Venturesも参加したとCEOのパク氏がTechCrunchとのインタビューで語った。

今回調達した資金は、Catalogの合成DNAで動く計算プラットフォームの開発を加速させるのに使用される。このプラットフォームはデータ管理や計算、自動化を可能にする。また今後2、3年で同社は計算機能の開発にさらに資金を注ぐ計画だとパク氏は話した。プラットフォームは2025年ごろに商業化される見込みだという。

DNAストレージアライアンスの会員であるCatalogは引き続き業界が成長できるよう、DNAベースの計算システムの協力者やパートナーを支援するとパク氏は話す。

シリーズBにより、同社の累計調達額は約6000万ドル(約67億円)になった。パク氏はバリュエーションの公開は却下した。同氏によると、シリーズBはHorizons Venturesがリードした2020年の1000万ドル(約11億円)のシリーズA、そしてNew Enterprise Associates、OS Fund、その他の投資家が共同でリードした2018年の900万ドル(約10億円)のシードラウンドに続くものだ。

DNAをデータストレージやコンピューティングの媒体として利用するというコンセプトは何年も前からあるが、その多くは学術的な領域に追いやられている。Catalogは、DNAをアルゴリズムやアプリケーションに組み込む手段を発見し、独自のデータエンコーディングスキームを用いて自動化することで、広く商業的に利用できる可能性を見出している。

「DNAへの情報書き込みに対するCatalogの独自のアプローチ、すなわち符号化スキームは、膨大な量の情報を保存するのに最小限の新規DNA合成を必要とするという革命的なものです。というのも、DNA合成の低スピード・高コストはこれまでこの分野のボトルネックだったからです」とパーク氏は説明した。

Catalogが独自に開発したDNAライターの「Shannon」は1秒で何百、何千もの化学反応を処理できる。フル稼働で1秒あたり10MB超のスピードで書き込むようデザインされており、1回の駆動で最大1.63TBの圧縮データを保存できる。

Catalogのテクノロジーは、金融サービスにおける不正検知、製造業における欠陥発見のための画像処理、エネルギー分野における地震処理などのデジタル信号処理などへの応用が期待されています。

「CatalogはIT、メディア、エンターテインメント、エネルギー部門などの企業と協業してきました。これらの取り組みを通じて、さまざまな産業やヘビーデータユーザーで当社の(DNAベースのデータストレージと計算の)プラットフォームが適用性を持つことがあることがわかりました」とパク氏はいう。そして共同開発パートナー、コラボレーターとして協業している12社ほどが米国と欧州を拠点としている、と付け加えた。

IT産業は過去数年、アクセラレーター(GPU、FPGA)や量子コンピューター、超並列コンピューターなど、目的にかなうテクノロジーの急増を目の当たりにしてきた。DNAベースのコンピューターの出現はこのポートフォリオを補完するものだ。同社の声明によると、DNAベースのコンピューターは低エネルギー、空間的に密、そして安全なコンピューティングで、電子システムの現実と限界とは無縁なものだ。

「基準点として、高パフォーマンスのコンピューティングマーケットは現在年400億ドル(約4兆4580億円)で、急速に成長しています」。グローバルのマーケット規模について尋ねると、パク氏は言った。

「Microsoft(マイクロソフト)、Twist(ツイスト)、Illumina(イルミナ)、Western Digital(ウェスタン・デジタル)などの企業が2021年、DNAストレージアライアンスを設立しました。Catalogはこの組織のメンバーであり、計算に注力することでこれを次のレベルにもっていき、企業がそうでもなければ廃棄したり冷たいストレージに放置したりするデータから事業価値を生み出すことができるようにします」とパク氏は語った。

「Catalogのテクノロジーは、大量のデータの蓄積や保存だけでなく、より重要なことにデータの有効活用の問題を解決する実行可能な方法を示しています」とHanwha Impact Partnersの副社長Nick Ha(ニック・ハ)氏は述べた。

Catalogは2021年初め、アジアでの事業拡大のために完全子会社として韓国・ソウルにオフィスを開設したとパク氏は話した。

画像クレジット:catalog

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

アルファベットが気球ネット企業Loonの特許を一部ソフトバンクに譲渡、飛行データはオープンソース化

Alphabet(アルファベット)のLoonは、高高度気球を飛ばして対象地域にセルラーネットワークを提供するという、成層圏でのムーンショットだった。このプロジェクトは、気球が自律的に航行し、1つのエリアに長時間とどまることができる技術を開発するなど、多くの新境地を開拓したが、最終的には終了した。現在、AlphabetはLoonのアセットを分割しており、その多くは業界の他の企業に無料で提供されたり、重要なパートナーや戦略的投資家に引き渡されたりしている。

ソフトバンクはこのプロセスで、知的財産を手にする企業の1つとなる。日本のテレコム大手である同社は、Loonが保有する成層圏での通信、サービス、オペレーション、航空機に関する約200件の特許を取得し、自社の高高度プラットフォームステーション(HAPS)事業の開発に活用するという。ソフトバンクはかつて、Loonのパートナーとして「HAPSアライアンス」を設立し、業界の発展に貢献してきた経緯がある。ソフトバンクのHAPS事業は自律型グライダーを中心に展開していたが、通信用のペイロードをLoonの気球にも搭載できるように適応させた。ソフトバンクはLoonの投資家でもあり、2019年にはAlphabet傘下にあった同社に1億2500万ドル(約139億2000万円)を出資している。

Loonの閉鎖によって、ある種の利益を得ることになったもう1つの企業がRavenだ。Ravenはもう1つのパートナーであり、Loonが運用していた高高度気球の製造に特化した企業だ。同社は、気球の製造に特化した特許を取得する。

落雷がLoonのハードウェアに与える影響を実験室で検証(画像クレジット:Alphabet)

Loonの残りの研究内容の大部分は、成層圏の科学と産業の技術水準を向上させるために一般に公開される。Alphabetは、GPSやセンサーのデータを含む、Loonの約7000万kmの飛行データをオープンソースとして提供している。また、気球の打ち上げ、飛行中のナビゲーション、気球の管理など、270件の特許および特許出願について、権利を主張しないことを表明している。成層圏気球の専門家を目指す人々や一般大衆のために、Loonは同社の経験をまとめた本を出版した。この本は以下に埋め込まれた無料のPDFから入手できる。

このプロジェクトをICARUSと比較して論じたくなるところだが、Alphabetのムーンショットには最初から一定レベル以上の失敗の可能性が織り込まれているため、それほど適切な比較ではない。また、これらのIPやデータがすべて公開されることは、科学界にとっても非常に良い結果となるだろう。

画像クレジット:Alphabet

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Aya Nakazato)

自宅で野菜やハーブを栽培しよう、Rise Gardensが10億円の資金調達で成長拡大

野菜を中心とした食事や、持続可能な食生活を実践する消費者が増える中、Rise Gardensは、誰もが自宅で植物を栽培できるシステムを展開している。

シカゴを拠点とし、スマートな屋内水耕栽培ビジネスを展開するRise Gardensは、このたび、TELUS Ventures(テラスベンチャーズ)が主導するシリーズAラウンドにおいて、オーバーサブスクライブ(申し込みが上回る)で900万ドル(約10億円)を調達した。ラウンドには既存の投資家であるTrue Ventures(トゥルーベンチャーズ)とAmazon Alexa Fund(アマゾンアレクサファンド)、および新規投資家であるListen Ventures(リッスンベンチャーズ)が参加。Rise Gardensの創業者かつCEOのHank Adams(ハンク・アダムス)氏は、TechCrunchの取材に応じ、2017年の設立以来、ベンチャーキャピタルから合計1300万ドル(約14億4000万円)を獲得した、と答える。

スポーツテクノロジーの専門家だったアダムス氏は、2019年に最初の製品を発売するまで、設立前から数年かけてプロトタイプに取り組んできたと話す。IoTを利用したRise Gardensシステムでは、野菜、ハーブ、マイクログリーンを1年中栽培できる。

Rise Gardensシステムは3つのサイズから選択可能で、ユーザーは約300ドル(約3万3000円)で「庭」を持つことができる。

何かを育てることには「一種の喜び」があるが、手間がかかったり、ストレスになったりするような趣味には手を出したくない、だからサポートが必要なのだ、とアダムス氏は話す。Rise Gardensに付属するモバイルアプリは、水量や植物の成長状況をモニターし、水や肥料の与え方、手入れのタイミングをユーザーに知らせてくれる。

アダム氏はこう続ける。「皆が食べ物に注意を払い、自分の食事に気を配っています」「自分が食べるものを育てることに興味を持つ人が増えました。世界的なパンデミックも一因でしょう」。

実際、消費者の関心は高く、2020年にはRise Gardensの売上高は7桁(日本円では1億円)を超え、Gardensシステムは1年間に3回も完売した。ユーザーは10万本近くの苗を購入し、5万本を収穫している。

同社は、2019年の製品発売以来、フードロスを907kg以上削減し、946トンの水を節約することに貢献したと推定している。

屋内ファームのコンセプトは新しいものではない。すでに同様のサービスを展開している企業には、AeroGarden(エアロガーデン)、2020年11月にScotts Miracle-Gro(スコッツ・ミラクル-グロー)に買収されたAeroGrow(エアログロー)、Click & Grow(クリックアンドグロー)などがある。Rise Gardensは、Gardyn(ガーディン)などと同様、資金調達を行った新しいスタートアップ企業の1社である。

Rise Gardensは、粉体塗装の金属やガラスを使った、室内で人目をひくようなデザインのGardensシステムで、競合他社との差別化を図っている。さらに、ユーザーが自分の「庭」でさまざまなことを試せるようにしている。

「趣味も極めると飽きてしまうので、柔軟性のあるものがいいと考えました」「レベル1からスタートして、トレイの蓋を交換することで、より高密度に栽培することができます。マイクログリーンキットを追加したり、トマトやピーマン用に支柱を追加したり、スナップエンドウをつるすためのトレリスを作ったりすることもできます」とアダムス氏。

シリーズAの資金は製品開発、在庫管理、製造、新市場への進出、チームの増強(特にカスタマーサービスとマーケティング)に充てられる。現在、同社の従業員は約25名で、2021年中にさらに8名を増員する予定だ。

Rise Gardensのプロダクトは、(同社のウェブサイト以外では初めて)Amazonでの販売も間もなく開始される。学校にも進出し、アダムス氏はこれを「学校菜園バージョン2.0」と呼んでいる。

TELUS Venturesのプレジデント兼マネージングパートナーであるRich Osborn(リッチ・オズボーン)氏は、屋内ファームの分野を評価した際、Rise Gardensとアダムス氏が選ばれたのは、彼らのバックグラウンド、データエクスペリエンス、そしてAmazonとの協力体制によるものだ、とTechCrunchに語る。

オズボーン氏によると、この種の製品に対する消費者の需要だけでなく、この種の投資から生み出される持続可能性と社会的影響は、強調してもし過ぎることはない、という。

TELUS Agriculture(テラスアグリカルチャー)の暫定プレジデントであり、アグリビジネス・グローバルマネージングディレクターであるNishan Majarian(ニシャン・マジャリアン)氏は、作物の成長には個体差があるので、将来的に作物の管理は植物単位で行われるようになるだろう、と話す。

マジャリアン氏は次のように続ける。「Climate Corp.(クライミットコーポレーション)がMonsanto(モンサント)に買収されて以来、次の10億ドル(約1105億)を獲得すべく、農業に大規模な投資が行われています」「農業作物は、分類化されていないサプライチェーンです。作物1つ1つが異なり、市場も異なります。そのため、これらの問題と規模を解決するために資金を調達するスタートアップ企業にとっては、身近で、複雑で、いうなれば肥沃な土壌になるのです」。

関連記事:ビッグデータによる気候予測のスタートアップ、Climate Corporationをアグリビジネスの巨人モンサントが11億ドルで買収

画像クレジット:Rise Gardens

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(文:Christine Hall、翻訳:Dragonfly)

フェイスブックが支援する「2Africa」は完成すれば最長の海底ケーブルに

Facebook(フェイスブック)は米国時間9月28日、2Africa(ツーアフリカ)ケーブルの「2Africa Pearls」(ツーアフリカ・パールス)と呼ばれる上陸地に9つの新拠点を追加し、合計4万5000km以上の長さになることを発表した。この海底ケーブルはアフリカ、ヨーロッパ、アジアの3つの大陸を直接結ぶものだ。

フェイスブックによれば、今回の延長により、2Africaは完成すれば世界最長の海底ケーブルシステムになるという。これは、現在SEA-ME-WE 3ラインが持つ、東南アジア、中東、西ヨーロッパの33カ国を結ぶ総延長3万9000kmの記録を上回るものだ。

海底ケーブルへの継続的な投資は、より多くの人々をオンラインにするためのフェイスブックの取り組みの一環だ。当初、フェイスブックは アフリカの人口約12億人に手頃な価格でインターネットを提供することを目指していた。その計画はやがて、アフリカ、中東、ヨーロッパの23カ国を結ぶ3万7000kmのケーブルを敷設するコンソーシアムの形に変容した。

先月フェイスブックはこの数を増やし、セーシェル、コモロ諸島、アンゴラ、ナイジェリア南東部への上陸地点を追加した。6月にも新しい分岐が、カナリア諸島(国ではない)へ接続されている。

関連記事:フェイスブックが「2Africa」海底ケーブルネットワークをさらに4つの地域へ拡張

2Africa Pearlsの分岐に、新しい接続拠点が加わり、 地上ではエジプトを通してバーレーン、インド、イラク、クウェート、オマーン、パキスタン、カタール、サウジアラビア、アラブ首長国連邦が接続される。

2Africa Pearlsへの拡張が行われることで、このシステムは さらなる18億人に接続性を提供することが可能になり、合計30億人に接続できるようになるとフェイスブックは述べている。同社はまた、これらの人びと33カ国にまたがり、世界人口の36%を占めていると付け加えた。

2Africaコンソーシアムは今でも、China Mobile International(チャイナ・モバイル・インターナショナル)、フェイスブック、MTN GlobalConnect(MTNグローバル・コネクト)、Orange(オレンジ)、STC、Telecom Egypt(テレコム・エジプト)、Vodafone(ボーダフォン)、WIOCCで構成されている。先月行われた前回の延長と同様に、コンソーシアムは9つの拠点を展開するために、ノキアのAlcatel Submarine Networks(アルカテル・サブマリン・ネットワークス、ASN)を選択した。

ただし、最新の開発に関しては、コンソーシアムから海底ケーブルの建設がいつ完了するかについての発表は出されていない。しかし、これまでの発表を見る限り、フェイスブックと通信事業者グループは、2023年後半から2024年前半という設定を想定しているものと思われる。

画像クレジット:Getty Images

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(文:Tage Kene-Okafor、翻訳:sako)

東南アジア6カ国でロジスティックを展開するNinja Vanが約642億円調達

シンガポール拠点のロジスティックスタートアップNinja Van(ニンジャバン)が、事業のインフラとテクノロジーシステムの成長を支えるべく、5億7800万ドル(約642億円)のシリーズEラウンドをクローズした。

同社の発表によると、投資家には中国のAlibaba Group、そして既存投資家であるDPDgroupのGeoPostFacebook共同創業者Eduardo Savering(エドゥアルド・サベリン)氏のB Capital Group、MonkのHill Ventures、ブルネイ政府系ファンドZamrudが含まれる。

関連記事:Facebook共同創業者が設立したVCが新ファンドの一次募集で約448億円を確保

報道によると、早ければ2022年にも新規株式公開するNinja Vanのバリュエーションは、最新のラウンドにより10億ドル(約1111億円)を超えた。同社の広報担当はバリュエーションについてコメントしなかった。

シリーズEで、同社の累計調達額は9億7650万ドル(約1085億円)になったと広報担当はTechCrunchに語った。

今回のラウンドは、2020年4月に7億5000万ドル(約833億円)のバリュエーションで2億7900万ドル(約310億円)を調達したシリーズD、2018年1月に8700万ドル(約96億円)を調達したシリーズCに続くものだ。

関連記事:シンガポールの物流スタートアップNinja Vanが約300億円調達、B2B部門に注力

Ninja Vanは調達した資金を、東南アジアにおけるeコマースの機会を最適化するためのマイクロサプライチェーンソリューションを含む、オペレーションの強化に使う。

同社は1日あたり約200万個の小包を配達していて、150万もの荷主と受取人1億人を抱える、と主張する。

CEOのLai Chang Wen(ライ・チャン・ウェン)氏、CTOのShaun Chong(ショーン・チョン)氏、CPOのBoxian Tan(ボシアン・タン)氏が2014年に創業した同社はシンガポール、マレーシア、インドネシア、タイ、ベトナム、フィリピンで事業を展開している。現在スタッフ6万1000人超を雇用する。

「東南アジアのeコマースをの可能性、特にeコマースの成長を促進するテクノロジーがもたらしているロジスティックの力を強く信じています。この地域でのNinja Vanの広範なプレゼンスと極めてローカルな洞察でもって、Ninja Vanとの提携で東南アジア中のeコマースエコシステムの参加者にさらにサービスを提供できると確信しています」とAlibaba Groupの東南アジア投資責任者Kenny Ho(ケニー・ホー)氏は述べた。

画像クレジット:Ninja Van

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(文:Kate Park、翻訳:Nariko Mizoguchi

衛星データ+機械学習+スマート調節弁で作物の灌漑を細分制御、コストを最大80%削減するVerdi

米国時間9月21日、TechCrunch DisruptのStartup Battlefield(スタートアップ・バトルフィールド)コンペで発表されたVerdi(ヴェルディ)は、スマートバルブ(調節弁)のクラスターを「swarms(スウォーム、群れ)」と呼んでいる。この言葉は、同社が北米の農場で展開しようとしている高密度の導入を意味している。同社のシステムは、既存の灌漑技術に後付けすることで、農家が作物に供給する灌漑をよりコントロールできるようにすることを目的としている。

同社のシステムは、人工衛星(将来的にはドローンも)によって収集された第三者データを利用して、特定の作物のどの部分に十分な水が供給されていないかを判断する。このシステムでは、作物を小さなゾーンに分け、機械学習(ML)を活用して、必要な場所に適切な量の水が届くようにする。

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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi
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    画像クレジット:Verdi

共同創業者兼CEOのArthur Chen(アーサー・チェン)氏は、TechCrunchにこう語った。「植物の生育にはさまざまなバリエーションがありますが、それは土壌や気候の違いによるもので、畑の中のわずか数メートルの範囲で起こることもあります」。

「既存のインフラでは、植物の生育条件がそれぞれ異なるにもかかわらず、すべての植物を同じように取り扱うという、画一的な処理しかできませんでした。私たちがここでやろうとしているのは、農家の方々に、個々の植物のグループ、あるいは畑の中の単一の植物に対して、水や、例えば肥料の散布をカスタマイズする能力を提供することです」。

同社は2019年、ブリティッシュコロンビア大学のスピンアウトとしてスタートした。コロナ禍の影響で渡航が制限されていることもあり、これまで彼らのオリジナル技術のほとんどはブリティッシュコロンビア州で展開されている。

今のところシステムの導入には担当者の立ち会いが必要なため、Verdiは1月初旬のロールアウト以来、多くの試験を同州内で行ってきた。ただし、カリフォルニア州やワシントン州でも試験的に導入されている。

このシステムは、従来の方法に比べて、灌漑コストを最大80%削減し、最大10倍の精度を実現することができるという。同社の農家への主なアピールポイントはより正確な灌漑を行うことだが、潜在的な投資家にアピールする際には、水の使用量削減の可能性を強調した方がいいだろう。投資家たちは、より多くのグリーン企業をポートフォリオに加えたいと考え探しているはずだ。特に干ばつに悩まされているカリフォルニア州では、より多くの節水ソリューションが検討されるべきだ。

現在までに、4人のフルタイム社員からなるチームは、Startup Haven、Rarebreed Ventures、Alchemist Acceleratorから、108万ドル(約1億2000万円)のプレシード資金を調達している。

画像クレジット:Verdi

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(文:Brian Heater、翻訳:Aya Nakazato)

インドの格安ホテルチェーンOyoが来週にもIPO書類を提出か

インドの格安ホテルチェーンスタートアップOyo(オヨ)は早ければ来週にも新規株式公開の書類を提出する。この件に詳しい人物がTechCrunchに明らかにした。世界第2位のインターネット市場であるインドで株式公開に取り組んでいるひと握りの企業に仲間入りする。

まだ秘匿事案であることから匿名を希望した複数のバンカー情報筋によると、27歳のRitesh Agarwal(リテッシュ・アグルワール)氏が興した創業7年のOyoはIPOで12億ドル(約1320億円)を調達しようとしている。

この内容は今後数日で若干変わる可能性はあり、IPO書類の提出も追加でもう数日かかるかもしれない、と情報筋は話した。

Zomato(ゾマト)、そして Paytm(ペイティーエム)やPolicyBazaar(ポリシーバザール)などを含むいくつかの会社と同様、Oyoはインドの証券取引所に上場する計画だと情報筋の1人は話した。

投資家にソフトバンク、Lightspeed Partners(ライトスピードパートナーズ)、Airbnb(エアビーアンドビー)などを抱え、直近の評価額が96億ドル(約1兆570億円)だったOyoは、3カ月前の時点で銀行口座に7億8000万ドル(約860億円)〜8億ドル(約880億円)を持っていて(このほど開かれた会議でのアグルワール氏の公のコメントによる)、7月にデットで6億6000万ドル(約730億円)を調達した。

Microsoft(マイクロソフト)からの戦略的投資で最近約500万ドル(約5億5000万円)を調達したOyoは約36カ国で事業を展開している。インドで最も評価額の大きな企業の1つである同社は、ホテル経営者がデジタルで予約や支払いを受けられるようにするオペレーティグシステムのようなものを開発した。このテクノロジースタックを使って、同社はホテル経営者が部屋の最適な価格を決めたり、インターネット上でホテルを見つけやすくしたりするのをサポートしている。Booking.comやMakeMyTripといったサードパーティのホテル予約サービスの統合も手伝っている。

関連記事:マイクロソフトがインドのホテルチェーン「Oyo」に投資へ

旅行やホスピタリティ産業の大半の企業と同じく、Oyoはパンデミックで大打撃を受けたが、ここ数カ月でかなり回復した。

同社の売上高の大半は、ワクチン接種が進むにつれてロックダウン規制を緩和したインドやマレーシア、インドネシア、欧州などを含む一握りのマーケットからきている。

7月のBloomberg TVとのインタビューの中で、アグルワール氏はOyoが「すでに上場企業のように事業を展開している」と述べたが、すぐに上場するつもりなのかどうか明言は避けた。同社はこれまでのところIPO計画についてはコメントしていない。

画像クレジット:Akio Kon / Bloomberg / Getty Images

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(文:Manish Singh、翻訳:Nariko Mizoguchi

米GM傘下のOnStarがアマゾンとコラボ、Alexaデバイスを使い家庭に緊急サービスを提供へ

Alexaデバイスの所有者は、OnStar(オンスター)の親会社であるGeneral Motors(ゼネラルモーターズ、GM)とAmazon(アマゾン)とのパートナーシップの拡大により、近々自宅からOnStarの緊急サービスを利用できるようになる。

OnStarは、2021年初めに「Guardian(ガーディアン)」アプリを導入してOnStar Guardianを拡張しており、顧客は携帯端末からサービスにアクセスできるようになっていた。今回の拡張により、顧客の音声対応ホームデバイスもこのエコシステムに加わることになる。

GMのプロダクト担当責任者であるJeff Wajer(ジェフ・ワジャー)氏は、最近のTechCrunchのインタビューで「携帯電話を(そのとき)持っていなくても、緊急時に助けを求めたい場合が多々ある」と語った。また、電話を使うことができない様々なアクセシビリティレベルの人々でも、OnStar-Alexaの統合機能を使えば助けを呼ぶことができる、とも。

この統合機能は、まず既存のOnStarの顧客を対象に段階的に導入され、2022年にはより広範囲に導入される予定だ。対応するAlexaデバイスは、Echo、Echo Dot、Echo Show。GMは、何人の顧客が当初このサービスにアクセスできるのか、また料金がどのくらいなのかについての詳細は明らかにしなかったが、ワジャー氏は、最初のコホートに含まれるOnStarの顧客には初期無料トライアルがあると述べた。

OnStar Guardianは、GMの車両に乗っているかどうかにかかわらず利用できる。だがGM車においては、GMとAmazonのコラボレーションはこれが初めてではない。GMはすでに一部の車両のインフォテインメントシステムにAmazon Alexaを導入しており、今回の提携は両社の結びつきを強化するものだ。

これは、GMが自動車以外のソフトウェアやサブスクリプションビジネスを強化しようとしていることの表れでもある。GMのグローバルイノベーション担当副社長であるPam Fletcher(パム・フレッチャー)氏は、声明でこう述べた。「この新しいサービスは、GMの成長戦略へのコミットメントと、ソフトウェアを活用したサービスの革新を示すものです」。

画像クレジット:Emmanuele Contini / NurPhoto / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:Aya Nakazato)

Apple Storeのデザイナーが共同設立者となったJuno、アパートの持続可能な建設に約22億円を調達

より持続可能で手頃な価格のアパートを建設することを目的とする不動産テックJuno(ジュノ)が、シリーズA資金調達ラウンドで2000万ドル(約22億円)を調達した。

Comcast Ventures(コムキャスト・ベンチャーズ)、Khosla Ventures(コースラ・ベンチャーズ)、Real Estate Technology(リアル・エステート・テクノロジー、RET)ベンチャーズが共同で資金調達を率いた。これにより同社の調達額は2019年の開始時点から合計で3200万ドル(約35億円)に上る。JLL Spark(JLLスパーク)、Vertex Ventures(バーテックス・ベンチャーズ)、Anim(アニム)、K50(Kフィフティー)、Foundamental(ファンダメンタル)、Green D Alumni Ventures(グリーンDアルムナイ・ベンチャーズ)もシリーズA投資に参加した。

Junoの共同設立者でCEOのJonathan Scherr(ジョナサン・シェル)氏は、サンフランシスコを拠点とするこのスタートアップ企業が「ゼロからの開発に向けた初のOEMエコシステム」を構築し、オール電化施設を建設することを計画していると述べた。

同氏はTechCrunchに次のように話す。「私達は住宅開発を製品開発のように扱い『製品化』と呼んでいます。リピート価値のある建物を作ることにより、継続的な改善を実現して効率を上げるツールとシステムを作ることができます。建物が1回限りの文脈で検討、設計されたら、1つのプロジェクトから次のプロジェクトへの学びが途絶えてしまいます」。

Junoの製品化は、ある意味もっと一般的に使用される言葉「プレハブ工法」に似ていると考えることができる。プレハブ建設会社Katerra(カテラ)は失敗したがAbodu (アボドゥ)Mighty Buildings(マイティー・ビルディングス)を含めコースラが支援し付帯住宅や戸建て住宅にさら重点を置いたこの分野の他の多数の会社は資金調達して成長を続けている。また、ノースカロライナ州に拠点を置くPrescient(プレシャント)もプレハブ工法により集合住宅とホテルを建設している。

関連記事:ソフトバンクが支援する建設の巨人「Katerra」が約2200億円以上を使い果たし事業を閉鎖

オースティンプロジェクトのレンダリング(画像クレジット:Engraff Studio / Juno)

Junoの理論は「製品化」を通じて、設計のタイムラインの短縮、推定やスケジューリングの精度上昇「大幅に加速」した建設プロセスなどにつながるツール、システム、プロセスを作ることができるというものである。それにより、シェル氏は米国中の人々のためのより手頃な価格の住宅オプションを実現できると述べる。また、Junoはその設計プロセスの進捗が従来の不動産開発より60%速いと主張している。

同業他社と同じく、Junoは従来の建築方法よりはるかに持続可能な手法を謳っている。

「今日の建設ごみは、米国の全都市ごみの2倍あります。Junoのシステムはその設計、サプライチェーン、建物の建設に効率を生み、廃棄物とエネルギー使用量を減らします」。低炭素、完全木造建物、木材の露出増加(Junoは抗菌性と話す)、ガスをまったく出さない建物などを特徴とする。

都市部ではオール電化の建物に重点が置かれ、クリーンエネルギー生成へのロードマップが確立されたため、Junoの居住システムは集合住宅ユニットにおける内包カーボンのネットゼロ目標に向けて前進しているとシェル氏はいう。

シェル氏は元々Apple Storeのデザイナーであった BJ Siegel(BJ・シーゲル)氏と、現在同社のアドバイザーを務めるChester Chipperfield(チェスター・チッパーフィールド)氏とともにJunoを創設した。チッパーフィールド氏は、以前Tesla(テスラ)のグローバルクリエイティブディレクター、Appleのスペシャルプロジェクト統括、Burberry(バーバリー)のデジタル部門長を務めていた。シェル氏はベンチャー投資家や多数の会社のアドバイザーとしての経験がある。

「1999年にBJ (シーゲル)はAppleのリテールプログラムのコンセプト・アーキテクトとして、リピート価値のある建築環境のアイデンティティを作り出す方法を考えていました」。とシェル氏は語る。「それによって、彼とAppleの同僚はAppleのリテールを、サプライチェーン分散化に基づくAppleの製品として考えるようになったのです」。

(左から右)共同設立者でアドバイザーのチェスター・チッパーフィールド氏、共同設立者でCEOのジョナサン・シェル氏、共同設立者、設計部門長のBJ・シーゲル氏(画像クレジット:Juno)

父親が不動産開発業者のシェル氏によると、Junoは同じようなモデルを基に作られた。複製可能な「より良い」住宅を設計することにより、会社が「サプライチェーンを構築し、これまで不可能であった方法で学習システムの基礎を築く」ことを目標に掲げる。

Junoは米国の都市に大規模なオール電化木造アパート群の初の国内網を築くことから始めた。Swinerton(スワイナートン)Ennead Architects(エネアド・アーキテクツ)と提携し、そのモデルを実現している。このスタートアップ企業はその最初のプロジェクト、イーストオースティンでのアパート建築にも着工した。現在400棟を開発中である。イーストオースティンの建物は2022年にオープン予定。Junoはシアトルとデンバーでも開発を計画している。

今後同社はその新たな資本を使って製品を作り、最初のプロジェクトのコホートに着手し、さらに多くの開発業者と関わり続けることを計画している。

Junoの投資家は同社の事業と計画について当然楽観的である。

コースラ・ベンチャーズのパートナーであるEvan Moore(エヴァン・ムーア)氏は、普段は不動産開発会社、建設業者、建築家には投資しないと述べた。

「しかし強いチームが重要な業界で劇的に他とは違う製品に取り組んでいるなら、支持するでしょう」。と彼はメールで回答した。

ムーア氏は、これまでアパートは消費財で、使用されることにより価値が得られるという事実にも関わらず、アパート開発は製品主導ではなく資金主導の業界であったと付け加えた。

「顧客体験を第一に考えて建物を設計する機会は山ほどあります。Appleがアパートを建てたら?私からすると、それはみなさんが作り出したい体験とは逆方向に作用するもので、それをサポートする構成要素、サプライチェーン、システムを設計し、制約となる費用の中で作業することを意味します。野心的な考えですから、実験するに値します」。

Comcast Ventures (コムキャスト・ベンチャーズ)社長のSheena Jindal(シーナ・ジンダル)氏は、アメリカの住宅ストックがますます老朽化し不足しており、家を購入することが難しくなっていると指摘する。同社はすべての人が手頃な価格の住宅を手にするに値すると考えているという。

「初めてJunoのチームに会った時、第一原理アプローチに強い印象を受けました」と、ジンダル氏はメールで回答した。「Junoは集合住宅の生産で何が壊れていたか根本的に理解し、その設計およびOEMソース戦略をもって早期にバリューチェーンに焦点を当てて真正面から取り組みました。Junoはバリューチェーンの既存のプレイヤーに取って代わるのではなく、提携しているのです」。

画像クレジット:Engraff Studio / Juno

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

アカツキが現地子会社を設立しインド市場に本格参入、日本発アニメやキャラクターの新興国市場展開を開始

ゲームなどIPプロデュースのアカツキが現地子会社設立しインド市場に本格参入、日本発アニメやキャラクターの新興国市場展開開始

「ゲームを軸としたIPプロデュースカンパニー」として事業を展開するエンターテインメント企業アカツキは9月22日、インドでの戦略的事業拠点となる子会社Akatsuki India Privete Limitedの設立を発表した。日本発のアニメやキャラクターを使ったインド市場での事業を開始する。

アカツキでは、エンターテインメント、メディア、ライフスタイル領域のスタートアップを対象としたファンド「AET Fund」を通じて日本とアメリカでの投資活動を行っているが、2018年6月からはインド市場にも力を入れ、インドのコンテンツおよびメディア領域のスタートアップへの純投資を開始した。これまでに20社超への投資を実行している。そして今回、「今後10年以上の長期的視点」に立って、インドでの日本発IP(知的財産)を使った事業展開を本格化する。

インドで予定している事業内容は、日本のコンテンツを現地語にローカライズし、さまざまなメディアで配信する「IPのメディア展開」、現地語でのデジタルマーケティングとソーシャルマーケティングを行う「IPの認知最大化」、インドの消費者向け商品の企画、現地生産、eコマースでの直販販売などを行う「マーチャンダイジング」(商品化)、現地企業と連携した販促品の展開やIPコラボレーション、現地のモバイルゲームなどのオンラインサービスとのIPコラボレーションを行う「プロモーション」となっている。

玩具などの生産は、当面は現地の製造工場との連携で行うが、ゆくゆくは独自の製造拠点を構える予定。また既存のアニメやキャラクターのライセンシングにとどまらず、グローガル展開を前提としたオリジナルIPの創出も進めるという。将来的には、アフリカを含む新興国市場での展開も視野に入れている。

「本取り組みを通じて、日本の魅力的なキャラクターとストーリーを世界に届け、世界中の人びとの人生を彩り豊かにすることを目指してまいります」とアカツキでは話している。

ポストコロナに向けて、分散型ワークの実現に向けPatchはコワーキングスペースを英国の小さな町や郊外に広める

パンデミックは働く環境に多大な影響を与えたといえるが、他の変化がすでに進行している中での出来事でもあった。電子商取引の拡大による街頭での買い物の減少は、さらに拍車がかかっているし、リモートワークへの移行も急速に進んでいる。人々はもはや8時から6時までの通勤を望んでいない。しかし、私たちは、在宅勤務が評判ほどいいものではないことに気づきもした。その上、もし地域に似たサービスがあれば簡単にいけるのに、WeWorkのようなところで共同作業をするためだけに大都市に通勤することに意味を見いだすこともできない。問題は、特に郊外や小さな町に、地域のコワーキングスペースがほとんどないということだ。

自宅で仕事をするのではなく、家の近くで仕事をすることができれば、よりバランスのとれたライフスタイルを手に入れることができるだけでなく、多くの人(特に家族)が望んでいる仕事と家庭の分離も実現することができるのではないだろうか。

今回、英国のスタートアップが「Decentralized workspace(分散型ワークスペース)」のアイデアを発表し、英国全土での展開を計画している。

Patchは、従来の通勤者を対象とした「Work Near Home(家の近くで働く)」という提案とともに、地元の大通りの空き店舗を「共同文化スペース」に変える。英国には600万人の知識労働者がいると推定されており、Patchはこの会員からの月額利用料で運営される。

現在、Patchは110万ドル(約1億2000万円)の創業資金を複数のエンジェル投資家から調達している。例えば、LocalGlobeの共同創業者Robin Klein(ロビン・クライン)氏、Entrepreneur Firstの共同創業者Matt Clifford(マット・クリフォード)氏、Charlie Songhurst(チャーリー・ソンハースト)氏、Episode 1のSimon Murdoch(サイモン・マードック)氏、元Jack WillsのCEOでGreat Portland EstatesのNEDであるWendy Becker(ウェンディ・ベッカー)氏、サステナブル投資家Eka Venturesの創業パートナーのCamilla Dolan(カミラ・ドラン)氏、米国投資会社SequoiaのタレントディレクターであるZoe Jervier(ゾーイ・ジャービア)氏、Grabyoの創業者でアーリーステージの投資家Will Neale(ウィル・ニール)氏などだ。

「家の近くで働く」というアイデアは、ポストコロナの「ハイブリッドワーキング」の動きに対応したもので、Patchは「起業家精神、テクノロジー、文化的なプログラムに焦点を当てた」公共の場を作ることを計画している。

Patchの各拠点では、プライベートオフィス、コワーキングスタジオ「利用しやすい低コストのオプション」、無料の学問のための場所などを提供する。

Patchの最初の拠点は、11月初旬にエセックス州チェルムスフォードにオープンする予定で、2022年にはさらに複数の拠点が計画されている。また、チェスター、セント・オールバンズ、ウィカム、シュルーズベリー、ヨービル、ベリー、キングストン・アポン・テムズの人々からも要望が寄せられているという。

Patchの創始者であるFreddie Fforde(フレディ・ファード)氏は次のように語った。「働く場所と住む場所は、伝統的に異なる環境と見なされてきた。そのため、平日の大通りは空洞化し、オフィス街も同様に廃れてしまった。私たちは、人々が家の近くで仕事をすることを可能にし、仕事、市民、文化の交流が混在する新しい環境を作り出せるテクノロジーがこの状況を根本的に変えると考えている」。

ファード氏は、Entrepreneur Firstの元創設者であり、ロンドンやサンフランシスコのアーリーステージのテック企業でさまざまな役割を担ってきた社員でもある。プロダクト部門の責任者には、2015年にターナー賞を受賞したデザインスタジオAssembleの元共同設立者であるPaloma Strelitz(パロマ・ストレリッツ)氏が就任する。

Entrepreneur FirstおよびCode First Girlsのクリフォード氏は、次のようにコメントしている。「テクノロジーは、私たちが組織化し、ともに働く方法を常に変えてきた。Patchは、住んでいる場所に制約されることなく、才能のある人たちが自分自身の能力に基づいて働く機会を解放するだろう。私たちは、高スキルの仕事がどこでもできる国にいたいと思っており、Patchはその環境の実現ための重要な部分を担っている」。

Patchは、主要都市の中心部ではなく、町や小都市の住宅地をターゲットにしており、町の中心部にある利用されていないランドマーク的な建物を探すとしている。例えば、チェルムスフォードでは、ビクトリア朝の醸造所を最初のスペースとして利用する予定だ。

Grays Yard

経済開発・中小企業担当の副内閣メンバーであり、BID委員会の代表でもあるチェルムスフォード市のSimon Goldman(サイモン・ゴールドマン)評議員は、次のように述べている。「グレイズヤードに新しいコワーキングスペースが導入されることは、この街にとって本当にポジティブな計画だ。住民に地元で働く選択肢を提供することで、通勤時間が短縮され、ワーク・ライフ・バランスの向上につながることが期待される。家の近くで働くことは、個人やその家族だけでなく、環境や地域経済にも多くのメリットをもたらす」。

また、Patchはイベントスペースのピーク時の20%を、地元や全国の「公益に役立っている」コミュニティサービスの提供者に寄付する「ギビングバック」モデルも実施するとしている。初期の国内パートナーには、技術サービスを提供するCode First Girlsや、Raspberry Pi Foundationが運営するCoder Dojoなどがある。

画像クレジット:Patch workspace

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(文:Mike Butcher、翻訳:Yuta Kaminishi)

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

David Levenson/Getty Images

1980年代に大ヒットした8ビットホームコンピューター、シンクレアZXシリーズを開発・発売したクライブ・シンクレア卿が9月16日に81歳で死去しました。

日本では発売されなかったシンクレアZXシリーズですが、英国ではZX80、ZX81、ZX Spectrumといった機種を発売し、累計500万台以上を売り上げる大ヒット作となりました。フロッピーディスクドライブやモデムなど多数の周辺機器がサードパーティから発売され、また他社による互換機も数多く作られたのも特色と言えるでしょう。ソフトウェアも少なくとも2万3000本以上が作られ、現在もコミュニティによってその数は増加しているとされます。

1980年代に大ヒットした8bitコンピューターの名機「ZX Spectrum」開発者クライブ・シンクレア氏死去

Sinclair

1984年に発売したビジネスコンピューターシンクレアQLは、個人向けながらモトローラのMC68000系CPUを搭載した意欲作でしたが売上げは不振におわり、その損失のせいでシンクレア氏はシンクレアブランドとコンピューター事業を売却しています。

シンクレア氏が特にコンピューター分野に残した功績は大きなもので、ZXシリーズは決してゲームには向いていないハードウェアであったにもかかわらず数多くのゲームが開発・移植されるなど、当時のプログラマーのゆりかごのような役目を果たしました。失敗に終わったQLにしても、後にLinuxを生み出すリーナス・トーバルズ氏が大学生時代にこのマシンでプログラミングを学んだと語っています。

シンクレアはPCだけでなく、1972年には世界初のポケット電卓を開発したり、1985年にはSinclair Vehiclesで電気自動車C5を発売しています。C5は大人1人が乗れる大きさの電動三輪でしたが、世の中がシンクレアに数十年遅れていたのか、ヒットにはつながりませんでした。いまや自動車業界は電動化まっしぐらといった状況。シンクレア氏の先見の明は際立ちすぎていたのかもしれません。合掌。

(Source:The GuardianEngadget日本版より転載)

グーグルの気球Loonの遺産、ワイヤレス光通信でコンゴ川を挟み高速インターネットを届けるアルファベットのProject Taar

Google(グーグル)の親会社であるAlphabet(アルファベット)は2021年初めにProject Loonを終了したが、インターネットアクセスを提供する気球から学んだことは無駄にはならなかった。Loonで開発された高速無線光リンク技術は、現在、Taaraプロジェクトという別のムーンショットに使用されている。TaaraのエンジニアリングディレクターであるBaris Erkmen(バリス・エルクメン)氏は、新しいブログ記事の中で、このプロジェクトのワイヤレス光通信(WOC、wireless optical communications)リンクがコンゴ川を越えて高速接続を実現していると明らかにした。

関連記事:Alphabetが成層圏気球によるインターネット接続プロジェクトLoonを閉鎖

Taaraの構想は、LoonチームがWOCを使って100km以上離れたLoonの気球間でのデータ転送に成功したことから始まった。チームは、この技術を地上でどのように利用できるかを検討した。WOCの応用可能性を探る一環として、彼らはコンゴ共和国の首都ブラザビルとコンゴ民主共和国の首都キンシャサの間に存在する接続性のギャップを埋めることに取り組んだ。

これら2つの場所はコンゴ川を挟んで、わずか4.8kmしか離れていない。しかし、キンシャサでは、川を囲む400kmの範囲に光ファイバーを敷設しなければならないため、インターネット接続のコストがはるかに高くなってしまう。Project Taaraは、ブラザビルからキンシャサまで、川を挟んで高速通信が可能なリンクを設置した。同プロジェクトは20日以内に、99.9%の稼働率を実現し、約700TBのデータを提供した。

Project Taaraでの光ビーミング接続の仕組み

TaaraのWOCリンクは、お互いを探し出して光のビームを結ぶことにより高速インターネット接続を実現している。霧の多い場所での使用には適していないが、Taaraプロジェクトでは、天候などのさまざまな要因に基づいてWOCの利用可能性を推定できるネットワーク計画ツールを開発した。将来的にはそれらのツールを使って、Taaraの技術が最も効果的に機能する場所を計画することができるようになる。

Taaraのエンジニアリングディレクターであるエルクメン氏はブログ記事でこう述べた。

追跡精度の向上、環境対応の自動化、計画ツールの改善により、Taaraのリンクは、ファイバーが届かない場所に信頼性の高い高速帯域幅を提供し、従来の接続方法から切り離されたコミュニティを接続するのに役立っています。我々はこれらの進歩に非常に興奮しており、Taaraの機能の開発と改良を続ける中で、これらの進歩を積み重ねていくことを楽しみにしています。

編集部注:本稿の初出はEngadget。著者Mariella Moon(マリエラ・ムーン)氏は、Engadgetのアソシエイトエディター。

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画像クレジット:Alphabet

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(文:Mariella Moon、翻訳:Aya Nakazato)