“完全食”の麺・パンをD2Cで提供するベースフードが4億円を資金調達

“完全栄養食”のパスタやパンを開発し、サブスク型で販売する食品スタートアップのベースフードは5月27日、総額約4億円の資金調達実施を発表した。

主食なのに糖質・カロリーオフの“完全食”

ベースフードは2016年4月の創業。「主食をイノベーションして、健康をあたりまえに」をミッションに掲げ、手軽においしく、体にいい主食の開発・販売を手がける、フードテック領域のスタートアップだ。現在提供しているのは、1食で1日に必要な栄養素の3分の1が摂れる“完全食”の主食2種類を中心とした商品である。

2017年2月に販売開始した「BASE PASTA(ベースパスタ)」は、全粒粉の小麦やチアシードなど10種類以上の栄養豊富な食材が練り込まれた生麺だ。ゆでて、パスタソースをあえるだけで、糖質や脂質、ナトリウムは抑えつつ、簡単にバランスよく栄養が摂れる。2018年12月には改良版へリニューアル。めんつゆで和風のそばとして、もしくはソースで焼きそば風にして食べるなど、ユーザーによってアレンジもいろいろ考えられているようだ。

また2019年3月に登場した新商品「BASE BREAD(ベースブレッド)」は冷凍パンだ。電子レンジで加熱するだけ、あるいは自然解凍だけでも食べられ、手軽に栄養バランスを補える。こちらも一般的なロールパンと比べると、糖質は50%オフ、脂質は30%オフ、カロリーは20%オフだ。調理の必要がなく簡単に食べられることや、ほかの食べ物に合わせやすいことから、パスタにも増して売れ行き好調とのこと。発売から2週間で2万食を販売したという。

ベースフード代表取締役の橋本舜氏は、「新しくできた商品の方がよりおいしくなっている」と自信を見せる。「栄養バランスのよい主食づくりという点では、製品はできあがっているので、さらにおいしいものを開発することに力を入れている。パスタのバージョンアップもそうだし、ブレッドについてはパン屋さんの味を実現できていると思う」(橋本氏)

BASE PASTA、BASE BREADはいずれも1食あたりの価格は390円(税込)。基本的にはサブスクリプションモデルを前提としているため、定期購入にすると10%オフ、送料割引(BASE PASTAでは送料無料)で購入可能だ。

フードテック×D2C企業として独自製品で世界目指す

資金調達について橋本氏は、「食品メーカーとして売上も立ち、利益も上がっているが、『かんたん、おいしい、からだにいい』をかなえる食品を1000万人といったオーダーで、世界中に広げるために、スピードアップするため」と語る。調達資金は商品やサービスの改善に投資するほか、日本発の完全栄養食をより多くの人に届けるため、海外展開についても推進していく考えだ。

写真中央:ベースフード代表取締役 橋本舜氏

橋本氏は「フードテックは今、投資家にも注目されている」と話す。「米国のフードテック事情を見渡すと、例えばBeyond Meat(植物由来の人工肉メーカー)は、今年5月のIPO後に株価が160%に値上がりしている。景気低迷の中で、プラットフォームビジネスが限界を迎えつつある今、ものづくりに回帰する動きがあるのではないか。そうした中で、付加価値やサステナビリティをうたった食品をつくって売る事業は強いと、VCにも見られている」(橋本氏)

さらに「日本はもともとフードテックの国」と橋本氏は続ける。「味の素、カップラーメン、カロリーメイトなど、いずれも戦後、日本発で出てきた商品で、メーカーはいずれも今、大手企業だ。健康でおいしいものをつくる力が日本には世界のどこよりもある。情報技術と違って、フードテックでは日本はすぐ世界一になれる可能性を持っている」(橋本氏)

その上で橋本氏は「現状では、日本でフードテックのスタートアップとして、独自に飲料などではない食べ物を作っているところは、我々のほかにはない。けれども後続で現れるフードテック企業のためにも、今回ベースフードが4億円という資金を調達したことには意味があると考える」と話す。

また、橋本氏は、ベースフードが自社開発商品を消費者へ直販するD2Cモデルで事業を行っている点も、投資家に評価された部分だと感じている。

「米国ではD2Cモデルのユニコーン企業が5社ぐらいあり、日本でも、これから資金調達を行っていくD2Cスタートアップは増えるだろう。傾向としては店舗で販売していたところへITを導入するという流れの事業が多い中、ベースフードでは、単品でオリジナルの、今までになかったコンセプトの商品を開発してD2Cで販売しているというところがポイントだと考えている」(橋本氏)

今回の資金調達はベースフードにとって、シリーズAラウンドにあたる。第三者割当増資の引受先は楽天(楽天ベンチャーズ)XTech Venturesグローバル・ブレインと個人投資家だ。同社は、2017年10月にもグローバル・ブレインを引受先として1億円を調達している。

新たに株主に加わった楽天について、橋本氏は「当初からECサイトを運営し、グローバルで事業も行う彼らがベースフードについて、かなり早い段階で『絶対に世界的なブランドになる』と言ってくれていた」と明かす。

またXTech Venturesについては、特にテクノロジー系のスタートアップに強いVCということもあり、かつ「共同創業者でジェネラルーパートナーの手嶋浩己氏が、(海外にも進出して上場も果たした)メルカリをユナイテッド時代に見出した人であり、彼が現在D2Cビジネスに注目していることが大きかった」と橋本氏は述べている。

橋本氏は「麺とパンという世界中で食べられている食品を、おいしく、かんたんで体にいい完全食として、どんどん掘り下げて開発し、よりよいものとして広げていく。グローバルでは100兆円規模とも換算される市場で勝負していきたい」と語っていた。

オンライン広告をもっとプライベートするアップルの提案

長年にわたり、オンライン広告のおかげでウェブのほとんどが無料で使えるようになっている。ただ問題は、広告がみんなに嫌われていることだ。無神経に画面全体を占領したり、自動的に表示されたりするとき以外も、インターネット上のどこへ行こうと、彼らは私たちの動きを見張っている。

広告は、私たちがどこへ行き、どのサイトを訪れたかを追跡でき、個人の特徴を蓄積できる。広告をクリックしなくてもだ。もしクリックすれば、何を買ったかが相手に知られて、他のサイトにも報告される。だから、あなたが夜更かしをしてアイスクリームやネコの餌や、もうちょっとプライベートなものを買っていることが知れ渡ってしまうのだ。

簡単な対策として、広告ブロッカーという手がある。しかし、それではインターネットの発展や利便性の向上は望めない。そこでApple(アップル)は、評判の悪い広告トラッキング能力は使わずに、広告を存続させる中間地点を見つけ出した。

巨大ハイテク企業のアップルが考え出したのは、Privacy Preserving Ad Click Attribution(プライバシー保護型広告クリック・アトリビューション)。舌を噛みそうな名前だが、その技術的な能力は確かなようだ。

背景を簡単に説明しておこう。インターネットで何かを買うごとに、広告を掲載した店舗は、あなたが何かを買ったことを知り、同時に、同じ広告を掲載している他のサイトにそれが伝わる。広告がクリックされると、店舗は、どのサイトで広告を継続させるべきかを考えるために、それがどのサイトの広告なのかを知る必要がある。これがいわゆる広告アトリビューションだ。広告はよく、トラッキング画像を使う。見えるか見えないかのピクセルサイズの微小なトラッカーがウェブサイトに埋め込まれていて、どこでウェブページが開かれたかを監視している。この画像にはクッキーが仕込まれていて、ページからページへ、またはウェブサイト全体にわたるユーザーの移動状況を簡単に追跡できるようになっている。この目に見えないトラッカーを使うことで、広告をクリックしてもしなくても、その人が訪れたいくつものサイトを通じて、興味や何を欲しがっているかといった個人的な特徴の数々を、ウェブサイトが蓄積してゆく。

その概要を説明した米国時間5月23日公開のアップルのブログ記事によると、広告は、オンラインストアで何かを買ったことを他人に知らせる必要はないと、同社では考えているようだ。広告に必要な情報は、誰か(個人は特定しない)が、どのサイトの広告をクリックして何を買ったかという情報だけだという。

個人の識別などはもってのほか。その新技術を使えば、広告キャンペーンの効率を落とすことなく、ユーザーのプライバシーが守れるとアップルは話している。

アップルeのこの新しいセブ技術は、間もなくSafariに組み込まれることになっているが、大きく分けて4つの部分で構成されている。

1つ目は、広告をクリックしても、個人が特定されないようにするものだ。広告には、ユーザーがどのサイトを訪れ何を買ったかを認識するための、長大な一意のトラッキングコードが使われていることが多い。なので、キャンペーンIDの数を数十個に限定すれば、広告主はその一意のトラッキングコードをクリックごとに割り当てることができなくなり、ウェブ上で特定の個人ユーザーのトラッキングがずっと難しくなる。

2つ目は、広告のクリック回数の測定は広告がクリックされたウェブサイトだけで許可されるというもの。これによりサードパーティーは排除される。

3つ目は、ユーザーがサイトに登録したときや何かを買ったときなど、ブラウザーは広告のクリックとコンバージョンに関するデータの送信を最大で2日間、不特定な時間だけ遅らせるというもの。そうすることでユーザーの行動をさらに見えにくくする。そのデータは、他の閲覧データが関連付けられないように専用のプライベートな閲覧ウィンドウを通して送られる。

最後に、アップルによれば、これらをブラウザーレベルで行うということだ。それにより、広告ネットワークや業者が取得できるデータが大幅に制限される。

誰が何をいつ買ったかを正確に調べるのではなく、アップルのブライバシー広告クリック技術は、個人を特定せずにクリックされたこととコンバージョンのデータを送り返す。

「サイトを超えたトラッキングによる問題を訴えるブラウザーが増えているため、私たちは、プライバシーを侵害する広告クリックのアトリビューションを過去のものにしなければなりません」と、アップルのエンジニアであるJohn Wilander氏はブログ記事に書いていた。

この技術の中核となる機能の1つに、広告が収集できるデータの量を制限する技術がある。

「今日の広告クリック・アトリビューションの実践方法には、データ量に実質的な制限がなく、クッキーを使用するユーザーの、サイトをまたいだ完全な追跡が可能になります」とWilander氏は解説する。「しかし、アトリビューションデータのエントロピーを十分に低く保つことで、報告はプライバシーを保護した状態で行えると信じています」。

要約すれば、キャンペーンとコンバージョンのIDの数を64個に限定すれば、サイトを超えて移動するユーザーの追跡を可能にする一意の識別子となる長い一意の値を、広告主が使えなくなるということだ。アップルによれば、この数を制限しても広告主は広告の効果を知るための十分な情報が得られると言っている。それでも広告主は、例えば特定のコンバージョンIDを使い特定のサイトで48時間以内に行った広告キャンペーンのうち、どれがもっとも顧客の購入に結びついたかを知ることができる。

アップルは、この技術が広く普及すれば購入のリアルタイムの追跡は過去のものになると考えている。広告のクリックとコンバージョンの報告を最大2日間遅らせることで、広告主は誰が何をいつ買ったかをリアルタイムで知ることができなくなる。アップルによれば、誰かが何かを買った途端にアトリビューションの報告が送られる間は、ユーザーのプライバシーを守る手立てはないという。

アップルは、このプライバシー機能が今年の後半にSafariのデフォルトに切り替わるよう設定しているが、それだけでは不十分だ。同社は、他のブラウザーのメーカーもこの松明を手に取って一緒に走ってくれるよう、この技術をワールド・ワイド・ウェブ・コンソーシアムで規格化するよう提案した。

最近のことを憶えている人なら、ウェブの規格はすべて成立するわけではないと思うだろう。哀れな運命を背負ったDo Not Track(トラッキング拒否)機能は、ブラウザーのユーザーからウェブサイトと広告ネットワークに追跡するなという信号を送れるようにするものだった。主要なブラウザーのメーカーはこの機能を受け入れたものの、議論が泥沼化して規格にはならなかった

アップルは、今回の提案は通ると見ている。その主な理由は、プライバシー広告クリック技術は、Do No Trackと異なり、他のプライバシー保護のための技術と協力してブラウザー内で効果を発揮できるからだ。Safariにはintelligence tracking prevention機能がある。GoogleのChromeMozillaのFirefoxなどの他のブラウザーも、プライバシーにうるさい人たちに対処するためにプライバシー機能を強化している。アップルはまた、ユーザーが積極的にこのプライバシー機能を欲しがると踏んでいる。その一方でこれは、広告やコンテンツのブロッカーをインストールするなどのユーザーの思い切った行動によって閉め出されることを恐れる広告主の懸念にも配慮している。

この新しいプライバシー技術は、先週公開になった開発者向けのSafari Technology Preview 82に搭載されている。ウェブ開発者向けには、今年後半に提供される。

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(翻訳:金井哲夫)

自宅ライブ提供のSoFar Soundsが2億7000万円超調達、でも演奏者のギャラは1万円ちょっと

ステージも見えないような騒々しいライブ会場にうんざり?SoFar Sounds(ソーファー・サウンズ)は、自宅のリビングルームでコンサートを開いてくれる。1人15ドルから30ドルを支払えば、静かに床に座って演奏をじっくり聴くことができるのだ。

これまでに2万回を超えるコンサートに、100万人近い人たちが参加している。私は6回ほど聞きに行ったが、まさに至福の一時だった。ただ、あなたが音楽で生計を立てているプロのミュージシャンでなければの話。1ステージ25分の演奏で、SoFarがバンドに支払う出演料はたったの100ドルというケースがあり、メンバー1人あたりの分け前が1時間で8ドル以下なんてこともある。

主催者には何もなし。残りはすべてSoFarの取りぶんとなる。その金額は、1回の演奏会につき1100ドルから1600ドル(約12万円から17万円)。演奏者のギャラの何倍にもあたる。その理由は、それがバンドにとっていい宣伝機会であり、SoFarは利益を出すにはほど遠い小さなスタートアップだったからだと思われている。

米国時間5月21日、SoFar SoundsはこれまでOctopus VenturesとVirgin Groupから受けていた600万ドル(約6億6300万円)の投資に加えて、Battery VenturesとUnion Square Venturesから250万ドル(約2億7600万円)の投資ラウンドを獲得したと発表した。目的は規模を拡張して、旧来型の会場とは違う、駆け出しのアーティストのための活動拠点の事実上の業界標準になることだ。

SoFarは10年前、バンド演奏の最中におしゃべりをするパブの客への不満から生まれた。現在同社は、世界430箇所の都市で月間600回以上のコンサートを開いている。そして、SoFarで演奏した経験を持つアーディスト2万5000人のうち、40人以上がグラミーにノミネートまたは受賞している。このスタートアップは、仕事で忙しい人たちや年配の音楽愛好家のために深夜の暗くて汚いクラブに代わる演奏会の文化を育ててきた。

しかしそれは、長年の問題を固定化することにもつながった。安すぎるミュージシャンのギャラだ。高く売れるCDがストリーミングに取って代わられ、ミュージシャンは生活費を得るためにライブに依存するようになった。SoFarは今、バンドの出演料をガソリン代や食事代よりも低くすることを慣例化しようとしている。しかも、普通の会場に聴きに行ったり、自前で自宅コンサートをお膳立てすることができない人たちがSoFarに群がるようになれば、アーティストの生活はさらに厳しくなる。SoFarの経費が非常に少ないことを考えれば、公平とは思えない。

これに比べたら、Uberは寛大な企業に見える。SoFarで働いていたという人の話では、同社は、ごく少数の正規職員が、会場の手配やアーティストの確保、宣伝を集中して行う態勢を維持しているという。会場の準備を行うのはボランティアで報酬は出ない。会場の持ち主にも何も出ない。だが少なくともSoFarは保険料を支払っている。SoFarは以前、同社のコンサートに初めて出演するアーティストにはギャラは支払わず、その代わりに彼らの演奏を録画した「高画質」な動画を提供していた。100ドルの出演料が支払われるのは、その何倍ものチケット売り上げがあった場合だ。

「SoFarはしかし、ミュージシャンへの支払いというもっとも大切な問題をないがしろにして平気でいるように見えます」とミュージシャンのJoshua McClain氏は書いている。「彼らは、UberやLyftといった企業と同じステージに上りたいのです。抜け目ない仲介技術のスタートアップです。強力なマーケティング力を持ち、消費者と業者(この場合は観客とミュージシャン)との間に遠慮なく割り込んでくる。このモデルで優先されるのは、サービス提供者以外のすべて、つまり、成長、利益、株主、マーケター、利便性、観客です。これらはみな、実際に汗を流すサービス提供者の犠牲の上に成り立っています」と彼は語り、#BoycottSoFarSounds(ボイコットSoFar)への参加を呼びかけていた。

サンフランシスコの放送局KQEDのEmma Silver氏が丹念に取材した記事によれば、多くのバンドがその出演料に失望しており、SoFarが営利目的の企業であることも知らなかったという。「地元アーティストの支援を一生懸命にやっているのだと思っていました。しかし彼らが実際に行っているのは、ミュージシャンの出演料はクソほどで構わないという考えを貫くことです」と、オークランドのシンガーソングライター、Madeline Kenney氏はKQEDに話していた。

SoFarのCEOであるJim Lucchese氏は、以前はSpotifyのクリエーター部門を指揮していたが、自らが立ち上げた音楽データのスタートアップThe Echo NestをSpotifyに売却した後、SoFarで演奏活動を行っていた。彼はこう主張している。「宣伝ができて100ドルの報酬が受け取れるのは極めて公平です」。とはいえ、こう認めている。「今のところ、SoFarの出演は、あらゆるタイプのアーティストにとって有効だとは思っていません」。一部のSoFarのコンサートでは、とくに海外市場で、投げ銭制度をとっているものもあり、「その金の大半」がミュージシャンのものになっていると彼は強調していた。映画『ボヘミアン・ラプソディ』のプレミアなど、外部のスポンサー企業がついた公演では、アーティストのギャラは1500ドルにも上ることがあるが、そんなものはSoFarのコンサートのほんの一部に過ぎない。

それ以外の場合は「ファンを獲得できることが、SoFarの最大の魔法」とLucchese氏は言う。つまり、収入は、グッズやチケットの購入、それにSNSでのフォローを客にお願いするアーティスト自身の努力次第ということだ。会場の保険料、演奏権管理団体、従業員の労力へのSoFarの支出を差し引けば、「売り上げの半分を少し超える額がアーティストに渡っている」と彼は主張する。残念ながらそれは、SoFarの一部の運営経費について、ミュージシャンも考慮しろと言っているように聞こえる。McClain氏は「そもそも、そっちの収益性など知ったことではない」と書いている。

こうして潤沢な資金を得たからには、SoFarはアーティストに対して、その時間と経費に見合う報酬を支払うようになってほしいと願う。幸い、Lucchese氏は今回獲得した資金で行う計画の中に、それが含まれていると話していた。地元の人たちが、多大な需要に応えてコンサートを開催できるよう支援するツールの構築に加え、彼はこう話している。「アーティストのための収入源がこれだけという現状に私が満足しているか?とんでもない。もっとアーティストの側に立った投資を行います」。それには、バンドと観客を結びつけ、金を使ってくれるファンを増やすためのよりよい方法も含まれる。Instagramハンドルや今後のスケジュールを記したフォローアップメールを充実させるだけでも効果があるだろう。

職人気質の人たちは「宣伝」が苦手だ。SoFarのような仲介業者が尻を叩いても、それは変えられない。SoFarは、ライブ音楽を世界の人々に聴かせる手段を握っている。だが、それを実現するには、アーティストを単なる使い捨ての素材としてではなく、パートナーとして扱う必要がある。たとえ、注目を集めたくて必死になっている出し物が後を絶たない状況であってもだ。そうしなければ、ミュージシャンも、その熱烈なファンも、SoFarのリビングルームから消えていなくなってしまう。

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(翻訳:金井哲夫)

会社創設者の私は仕事と自尊心を取り違えていた

今はほぼ毎日がいい日だ。会社創設者や重役をクライアントに持ち、自分でスケジュールを決めて、好きな街に暮らしている。私は、重役向けコーチ兼アドバイザーとして、1億ドル(約110億円)以上の資金を調達した企業の創設者やCEOを相手に仕事をしている。どの企業も同じだろうが、私も、設立、計画、失敗を数多く経験して、今の地位を手にした。

懸命に働き苦労した体験を彼らに伝えるのが私に求められる役割であり、実際にそうしてきた。

しかし、失敗したときの気持ちや、とりわけ恥ずかしいという感情が一番に立ち、それが私の人生や仕事を左右していたことは、特に話す機会がなかった。どん底のとき、どれほど自分が無価値だと感じていたか。私は自傷行為の計画すら立てていた。

企業を立ち上げるためには、超人的なエネルギーが必要になる。だからこそ、起業物語が神話化されるのかも知れない。私の場合もそうだった。もし、一流ベンチャー投資家から資金を調達できたら、10億円の収益を上げられたら、会社を50億円以上で売却できたら、自分は大したものだと思える。ずっと憧れていた青年成功者になれる。そして、まず100万ドルを稼いだら、一気に10億ドル規模の企業を立ち上げる。

愛に価値を感じないことが、つまり本質的な価値観に欠けていたことが、私の意志決定の原動力になっていた。自分で設定した目標を達成できなかったことが、自分が無価値な人間だという感覚を強めていった。だが幸いなことに、やがて私は自意識に目覚め、達成できない目標を無闇に追いかけるのは不健全なことだと気がついた。

しかし、CEOの職を辞することで自分が崩壊してしまうとは、予想もしていなかった。どれほど心が折れてしまうかも、想像できなかった。

徹底した治療の結果、私が最初から間違った方向に進んでいたことを容易に理解できるようになった。もうほぼ完全に、恥は過去のものとなった。しかし長い間、恥は私のあゆる意志決定の燃料となっていて、それは決して枯渇することがなかった。いつだって恥は有り余るほどあった。ビジネスの世界では、それは私たちが想像するよりも、ずっと普通のことだ。私が会った起業家は、ほぼ全員が「違和感」を体験している。私たちは失敗を賛美するが、「自分はダメだ」という恥の感情に結びつくその痛みを、誇りに思えるだけの忍耐力を持たない。

私たちは、固い意志を持ち、自分を突き動かし、粘り強くあるべきだ。そのために、私が学んできたことをみなさんにお伝えしたいと思う。自分は無価値だと落ち込んでいる人は、他にも大勢いることを私は知った。幸せは、そして成功の喜びは、まだ手の届くところにある。

たまたま会社を立ち上げた

19歳のとき、私にはまだ、高等教育を変革するという野望を抱いていたわけではなかった。私はただの、不満を抱える大学1年生だった。Chronicle of Higher Educationのインタビューで、Jeff Young氏は私にこう聞いた。私がインターネットで立ち上げたばかりのUnCollegeで何をするつもりかと。

UnCollegeは、大学に対する欲求不満から生まれた、出来たてのウェブサイトだった。高等教育の現状維持の姿勢に疑問を持つ人たちのコミュニティを作ることが狙いだ。それが転換期だった。Young氏にそのサイトの今後を聞かれた私は、即座に自尊心とサイトの未来を結びつけた。結局、それがメジャーな雑誌からインタビューを受ける理由となったのだが。私は、UnCollegeを大きく育てなければならなかった。そうしなければ、私は敗者になる。それだけでは済まないかも知れない。承知のとおり、それは上場企業となったからだ。

そのときから、私は起業家として成功するために取るべき行動を頭の中に書き記すようになった。そのリストはどんどん長くなり、すべての項目に、例のあの注意事項が付随した。本を書かなければ無価値な人間になってしまう。起業して100万ドルを調達しなければ、無価値な人間になってしまう。世界のカンファレンスで演壇に立たなければ、無価値な人間になってしまう。

私は資金を集めた。会社を立ち上げた。100万ドルの収益を上げた。その度ごとに、チェックボックスにチェックマークを入れていった。でも幸せ感は増さなかった。もう満足を感じられない体になってしまったのかと、心配になってきた。「成功した」と実感できなかったのだ。とくに、インターネットや業界で広まった他人の成功を見たときは、なおさらだ。

もし「成功者」になれば、人に欠点を見られることがなく、最終的にはなんらかの価値のある人間になれると私は考えていた。だが、頭の中のリストにチェックマークを入れるごとに恥や不安感に飲み込まれる感じがしていた。そして、自分の価値を実感するためには、次の項目にもチェックマークを入れなければと追い立てられた。

まさに、泥沼にはまった感じだ。自尊心は内側から湧き出るものだと、まだそのときは気付いていなかった。

仕事と自尊心の取り違え

会社を立ち上げようと頑張ってきたのは、失敗が怖いからだとすぐに気がついた。今後10年の人生をかけて克服すべき問題点をじっくり考えたからではなかった。それでも、2013年9月、UnCollegeは最初の学生を迎えた。

その秋、自分は間違っているのではないかと疑うようになった。だが、ここまで事業を大きくすることを私に期待していた投資家たちに、そんな話は怖くてできなかった。私の生き残りの術は、微笑みながら、誰よりも物を知っているふうに振る舞うことだった。謙虚に助言を聞く勇気があればよかったのに。

人に助けを求めずに来た結果、最初に雇った2人の人間を手放すことになった。さらに2人、現金が底を突いたために一時解雇するはめになった。

第一期の学生は気の毒だった。適切な構造のカリキュラムを設計しなかったので、学生たちは不満を抱いた。彼らは自主学習のコミュニティは気に入ってくれたが、会社としては、コミュニティ以上の価値を提供することができなかった。学期が終了する2カ月前、学生たちは反乱を宣言して、プログラムの改善策の提示を求めてきた。

私は恐ろしくなり、逃げ出したくなった。しかし、すでに新学期の授業料を受け取ってしまっている。他に方法はないと、私は思い込んだ。そして、コーチング・プログラムを創設し、コーチを雇い、20の新しいワークショップを開設して、学生たちをインターンシップに送り込むための努力を開始した。私たちが創設したコーチング・モデルはうまくいった。その後2年間、それを改善しながら続けることができた。

2015年春、私は筆頭投資家を訪ねた。私の声は震えていた。彼は、私の恐れと不安を感じとっていたが、私はその日、彼にハッキリとこう伝えた。「もう限界です。自分が壊れてしまいます」。

そのとき私は、燃え尽き症候群になっていた。会社は大学の代替学校から予備校に変わっていた。役員会は承認してくれた。CEOを雇う時期だ。

CEOを雇った後、毎日会社に通おうという私の意欲はさらに低下した。ベッドから起き上がるのが難儀になっていた。ある朝、Four Seasonsの投資家と朝食をとった後、私は外へ出て砂浜に座り、泣きだした。目を上げると、以前私の学校で学んでいた学生が私に手を振っているのが見えた。すぐに涙を拭き、私は弱々しく微笑んだ。

私は、恥ずかしくて、弱くて、無力だと感じた。

仕事に自分のアイデンティティを見出すことは、できなかった。もうそれは終わらせるべきだと、自分でもわかっていた。でも、他に何がある?

私は自分の会社と、その新しいリーダーシップに期待を寄せたが、不安でもあった。空虚だった。いつ会社が止まって、いつ始まったのか、知らなかった。25歳の誕生会ディナーでは、何も喉を通らなかった。私は恥と恐れに飲み込まれていた。なんとか夕食を持ちこたえることができたが、家に帰るなり、私は泣き崩れた。

恥るのは癖

12月には、私は自分の会社のCEOを辞めた。6カ月後、私はベッドから起きられなくなった。

それから2カ月ほど、私は休養を取ることにした。まだ会社の役員会には属していたが、何も貢献できなかった。UnCollageの後の人生設計を考え始めたが、どこから手を付けてよいやら、わからなかった。自分ではまだ気がついてはいなかったが、私には個人的なプロセスを経る必要があった。生まれ育った家族とは別に、自分は何者で、何を信じているのかを見極めることだ。すでに25歳になっていた私は、そうした疑問をなんとか避けてきた。皮肉なことに、私の同僚はみな、大学でその疑問と対峙していた。

恥じることは、人を消耗させる。自分自身に関する疑問への答を先延ばしにするほど、恥は私を蝕んでゆく。何に気をつければよいのか? 選択は正しかったのか? この会社を立ち上げるときに払った犠牲には価値があったのか? 間違った道を歩んできてはいないか? 私が耐え抜いてきた苦痛は、どれも無駄だったのか? また幸せを感じられるようになるか? 私には自己がまったくないように思われてきた。

自分が有用な人間だと感じさせてくれる仕事を失い、私は毎日、サンフランシスコのドロレス公園で飲んだくれていた。不健康であることは承知していが、何年間も頑張ってきたご褒美だと自分に言い聞かせていた。まだ25歳なのに、人生に彩りが消えてしまった。かつて私に喜びをもたらしてくれた物事は、もう何ももたらしてくれない。笑うことも、痛みに耐えることもできなくなった。どれだけ承認される人物になったかという自分自信のくだらない確信も、もう効かない。このサイクルが続けば、それはますます強大になり、私は弱くなっていく。どんどん引きずり込まれていく。

10月のある月曜日、私はもう廃人同然になっていた。ひとり家にいて、何日間もベッドから出られず、食事もしていないことに気がついた。私は飛行機に乗ってミネアポリスに行くことになっていたのだが、自分にそうさせることができなかった。そこで父を呼んだ。父は、「うつ病かも知れない」と医師に伝えるよう進言してくれた。だがまだ怖くて電話を手に取ることができず、それを医師に告げられたのは数カ月後のことだった。治療が始まった。だが、快方に向かう前に、事態はさらに悪化した。

「会社が思うように行かないので悲しい」という以外に、自分の心の状態を言い表す言葉がなかった。私の頭に電球が灯ったのは、「不安を感じたのはいつ?」とセラピストに聞かれたときだった。思い出せたのは、現金が底を突いてからわずか数日後のことだ。

「感情を極端に大きく感じているだけだと思ったことは? たとえば、1から10までのレベルなのに、20ぐらいに感じているとか。日々の生活で不安を感じるのは、人間として当然です」。

それが扉を開いてくれた。会社を辞めるのが悲しかっただけではない。「成功」しなかったことを恥じていたのだ。ビジネスと結びけていた私のアイデンティティは、成功だけではない。自尊心もだ。心の奥底で、私はこう思い込んでいた。私はダメな人間だと。恥とは、私たちの自我のいちばん深いところに空いた穴だ。永久に存在するように見えるために、埋めることができない。それが自分の本質であるかのように感じられる。業績とは関係ない。

恥は、子どものころに、いろいろな感情から生まれてくる。私は、子どものころ吃音があった。声が悪くて言葉が伝わりにくかったので、それを隠していた。うまく発音できない言葉は、同義語に置き換えていた。そうしていたのは、自分の苗字をどもらずに言えないことへの強烈な羞恥心に対処できなかったからだ。そのうちに、強い恥の感情を麻痺させるために、無視することを憶えた。なんとか対処した。早い時期になんとか対処する方法を学んだので、恥と一緒に、他の感情も麻痺させられるようになった。

会社を立ち上げたころ、悲しみ、消耗、フラストレーション、当惑、不安、罪悪感などといった、「何かが間違っている」と私たちに告げるすべての感情は、表面には現れず、名前も付けられていなかった。そのため、長い目で見て成功した人でも、起業家なら日常茶飯事の、当たり前の、ごく自然な失敗をやらかした日は、家に帰るときに「間違っているのはお前だ」と自分に言い聞かせるしかなかった。

感情を無視することは、子どものころからの私のサバイバル術だった。始めのころに受けた批判から生じる疑いや不安を無視することで、会社の設立を押し通すことができた。しかしそれは、私のアキレス腱でもある。それが私のアイデンティティと自尊心を、自分の仕事に求めるよう仕向けたのだ。

CEOは、それをすべて、まとめて持ってると言われている。CEOは、誰の助けも借りずに先を見通せる、先見の明の持ち主だ。だからこそ私は、他人に助けを求める許可を自分に与えることができなかった。さらに会社を去るとき、私には自分の感情を表現する語彙も意識も欠如していた。ずっと昔、吃音を無視するための手段だった私の完璧主義は、助けと失敗を結びつけ、失敗と恥を結びつけた。

そんな月日を過ごした後も、私はまだ人に助けを求めることを許せなかった。

トラウマを手懐ける

ストレス、過重な負担、燃え尽き症候群。これらは私の感情にもっとも近い言葉だ。スタートアップ企業の間では、繰り返し経験するそれを示す決まり文句にもなっているが、それを押しのけて仕事を続けるのだという。しかし、これらは感情ではない。苦痛や恥といった感情を覆い隠すものだ。すなわちそれは、トラウマのことを指す。

トラウマと聞くと、自動車事故や自然災害や暴力を思い浮かべる人が多い。機能能力を完全に抑え込んでしまう事件だ。しかしトラウマは、現在まで引きずっている過去の経験のひとつに過ぎず、それが、ポジティブにもネガティブにも私たちの心を形作る。

コーチの仕事を通して、私は、可愛すぎる人、醜すぎる人、ゲイすぎる人、太りすぎている人、外国人的すぎる人、頭が悪すぎる人、頭が良すぎる人、暗すぎる人、明るすぎる人など、さまざまな起業家や重役に出会った。これらは、埋めることができず、常にそこにあると自分で信じ込んでいる恥の穴だ。彼らは決して敗者ではない。最大の成功を収めた人でもトラウマを抱えている。彼らはそれを鞭にして、自らを突き動かしているのだ。しかし、恥は振り切ることができない。いつかかならず追いつかれる。それを理解するまでに、私は長い年月を要した。そして、自分自身に温情を持つことが、生涯を通しての課題になった。

自分の自尊心を職業的な野望から切り離すための語彙を手に入れた私は、UnCollageを、誇り高い失敗と思えるようになった。次のプロジェクトに活かせる学びがあったことは言うまでもない。みなさんも、自分自身を愛することを学んで欲しい。そしてその結果として、大成功をもたらす会社を設立して欲しい。

【編集部注】
Dale Stephens
Thiel Fellowの初期メンバーであり、教育関係の企業を6年間経営していた。近年は会社重役向けコーチや、起業家や重役を企業の成長速度に合わせて成長できるよう手助けをしている。

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(翻訳:金井哲夫)

非侵襲性血糖値モニター開発のEasyGlucoseがMicrosoftイベントで賞金10万ドル獲得

米国時間5月8日、Microsoftが毎年開催している学生スタートアップ企業のコンテストであるImagine Cupの今年の優勝者が決まった。非侵襲性でスマートフォンを使って血糖値を測定できる糖尿病患者のための検査法、EasyGlucoseだ。この他にも、同程度に有益な2つのアイデアを持つ企業がファイナリストに選ばれ、本日MicrosoftのBuild開発カンファレンスにてプレゼンテーションを行った。

Imagine Cupは、世界各地で数多く開かれている学生コンテストの優勝者から、公益性の高いもの、そしてもちろんAzureなどのMicrosoftのサービスを利用しているものを集めた大会だ。去年の勝者は、手のひらにカメラが搭載され、掴むものを認識できるスマートな前腕義手だった(今回も彼らは改良型プロトタイプで参加していた)。

3組のファイナリストは、それぞれ英国、インド、米国から選出された企業だが、EasyGlucoseは私の母校であるUCLAに在籍中の一人だけのチームだ。

EasyGlucoseは、雑音の多いデータに含まれる信号の検出に機械学習の利点をうまく生かしている。ここで言う信号とは、虹彩の微小な変化だ。開発者のBryan Chiang氏は、虹彩の「隆起部、窩孔、しわ」に、その人の血糖値を示す小さなヒントが隠されていることを発見したとプレゼンテーションで解説していた。

Imagine Cup決勝大会で行われたEasyGlucoseのプレゼンテーション。

こうした特徴は、眼の中を覗き込んでも肉眼で見られるものではない。そこでChiang氏は、スマートフォンのカメラにマイクロレンズを装着することで、彼が開発したコンピュータービジョンアルゴリズムによる解析に必要な高精細な映像が得られるようにした。

その結果、他の非侵襲性方式よりも格段に優れた血糖値測定が可能になった。しかも、数時間ごとに自分の体に針で穴を開けるという、最も多く行われている方法に取って代われるほどの能力がある。現在EasyGlucoseは、針を使う方法との誤差が7パーセント以内にあり、「臨床的測定精度」に必要な数値を大きく上回っている。Chiang氏は、その差を縮めようと頑張っている。間違いなくこの発明は糖尿病患者に大歓迎されるだろう。なんと言っても低価格だ。レンズアダプターが10ドル、アプリの継続的なサポート料は月間20ドルだ。

これはホームランではない。今すぐ実用化されるものでもない。通常、こうした技術は研究室(彼の場合は大学の寮)から直接世界に広がることはない。まずは米国食品医薬品局の認可が必要だ。ただし、新しい癌治療法や外科手術用器具とは違って、審査期間はそう長くはならないはずだ。EasyGlucoseは、現在特許出願中であるため、書類審査が行われている間は誰も手出しができない。

勝者として、Chiang氏には10万ドル(約1100万円)と、Azureのクレジット5万ドルぶんが贈られた。さらに、誰もが羨むMicrosoftのCEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏による1対1のメンタリングが受けられる。

Imagine Cupの決勝に残った他の2チームも、公益性の高いサービスにコンピュータービジョンを中心的に使っている。

Caeliは、慢性呼吸病を患いながら汚染地域で暮らさざるを得ない人々のために高性能な特製マスクを生産し、大気汚染問題に取り組んでいる。安価な市販のマスクでは対処できない深刻な大気汚染に苦しむ地域は少なくない。

これは、スマートフォンのフロントカメラで自分の顔をスキャンし、顔の形にぴったり合うマスクを選んでくれるというもの。どんなに高性能なフィルターが付いていても、脇から汚染粒子が入り込んでは意味がない。

このマスクには、コンパクトな吸入器が組み込まれていて、例えば喘息を患っている人などは、必要に応じて薬を霧状にして吸入できる。薬は、アプリに登録した量や時間に応じて自動的に放出される。また、その場所の汚染状況を調査して、もっとも危険な場所を避けられるようにもしてくれる。

Finderrは、家の中で物を紛失しても自分では探せない視覚障害者のためのユニークな解決策だ。特殊なカメラとコンピュータービジョンアルゴリズムを使うことで、このサービスは家の中を監視し、鍵、バッグ、食料品など、日常的な品物の置き場所を記録する。それらを探すためにはスマートフォンが必要なので、それだけは、なくしてはいけない。

アプリを立ち上げ、探している物を音声で伝えると、スマートフォンのカメラが、現在位置とその物の相対位置を割り出し「正解に近づいているよ」的な音声で、その場所へ導いてくれる。目が見える人のために、画面には大きなインジケーターが表示される。

プレゼンテーションの終了後、私は彼らに今後の課題について質問をした。Imagine Cupに出場する企業はたいていがアーリーステージだからだ。

今現在、EasyGlucoseは善戦しているが、このモデルにはまだまだ大量のデータが必要であり、さまざまな利用者層でテストしなければならないとChiang氏は訴えていた。1万5000人の眼球でトレーニングをしているが、食品医薬品局に提出するデータとしては、まだまだ足りない。

Finderrは、すべての画像を、巨大なImageNetデータベースで認識するが、チームの一員であるFerdinand Loesch氏は、それ以外の画像も簡単に追加でき、100点あればトレーニングできると話していた。英国では、こうした器具を利用する視覚障害者に初期費用として500ポンド(約7万1300円)の助成金が出る。彼らは、家の中をカバーするカメラの台数を減らすために、天井に取り付ける360度カメラを開発した。

Caeliは、本来は医療機器である吸入器も、例えば医療機器製造業者にライセンスすれば、自然に売れて宣伝にもなると考えている。他にもスマートマスクの準備を進めている企業がいくつもあるが、それらに対する彼の評価は低い(競合他社としては当然なことだが、引きずり下ろすべき業界の強力なリーダーは存在しない)。今後彼らが拡大を目指すインド国内のターゲット市場では、こうした製品を保険でカバーするのも、それほど難しくないと彼は指摘している。

彼らはアーリーステージの企業だが、遊びでやっているわけではない。とはいえ、そうした会社創設者の多くは授業の合間に仕事をしているのも事実だ。今後、彼らの話をたくさん耳にするようになり、彼らをはじめ、Imagine Cupから飛び立った他の企業も、来年あたりには資金を調達して従業員を雇うようになったとしても、驚きはしない。

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(翻訳:金井哲夫)

なぜアメリカのラーメンは不味いのか?米国で勝負するRamen Heroに聞く

Ramen Heroのミールキット

アメリカではラーメンブームが来ており、ここサンフランシスコでも多くの店がラーメンを提供している。だが、実際に美味しいお店は多いのだろうか?

アメリカでラーメンのミールキットを提供するスタートアップ、Ramen Heroの創業者でCEOの長谷川浩之氏は、「美味しい店を探すのは苦労する」と話す。

同氏の実感だと、「美味しいラーメンは5パーセント、美味しくないラーメンは95パーセント」。

TechCrunch Japanでは長谷川氏に、サンフランシスコにあるRamen Heroのオフィスで、アメリカのラーメン事情や、アメリカで多種多様な人々にミールキットを提供する同社のラーメンに対する「こだわり」について話を伺った。

ラーメンと言えば、麺とスープ。アメリカでラーメンを提供する店はどこで麺を仕入れているのだろうか?そして、その麺は美味しいのだろうか?

アメリカには2つの大きな製麺所がある。Sun NoodleYamachan Ramenだ。長谷川氏によるとアメリカのラーメン店の多くのはどちらかの麺を利用する。ちなみにRamen HeroはYamachan Ramenに麺を発注している。

Sun Noodleは1981年、ハワイ州ホノルルで設立された。山ちゃんラーメンは1989年、代表の山下英幸氏がサンノゼで創立し、以来、「真の日本の麺」を生産してきた。

長谷川氏は上記の2社の麺のクオリティーは高いと評する。

「アメリカの小麦は、正直、美味しい。日本国内では『日本の国産小麦』と謳っているところもあり、それももちろん美味しいのだが、外国産だから不味いのか、というと、そうではない。逆のパターンもある。国土が広いから大量に作っているし、ノウハウもあるし、香りが良いものもあるし、価格もリーズナブル。良いものを作りやすい環境が揃っている」(長谷川氏)

問題はスープや具材。「お湯に醤油をいれただけなんじゃないか」と感じるようなラーメンや、「創作系ラーメンは存在するが、これはちょっとヒドい」と思うようなものが多く存在するそうだ。

その原因は、アメリカではまだまだ専門店が少なく、日本食レストランやアジア系レストランが1メニューとしてラーメンを提供しているというケースが多いから。そして、アメリカで本格的なラーメンが展開され始めたのは、「ここ10〜20年ほど」。舌の肥えた職人やラーメン通がまだ十分に育っておらず、「作り手が増え、コンペティティブになることでの相乗効果」がまだ十分に伸びていないと長谷川氏は言う。

だが、状況も少しづつ変わってきている。「日本から本格的なラーメン屋が進出した」などのニュースにより、行列のできるラーメン屋は少しずつ増えてきた。

長谷川氏が2016年に算出した数字だと、市場規模は5000億ドルほど。当時、同氏いわくアメリカでは2万6000店ほどの飲食店がラーメンを提供していた。ラーメン店の数の伸び率も、2016までの10年間、「毎年10〜20パーセントくらい」(長谷川氏)で伸びていた。

もともとアメリカでは昔から、大学生などが節約のためにカップラーメンや乾麺を食べている。僕が通っていたサンディエゴにある中学校でも、カフェテリアのメニューにはマルちゃんのカップラーメンがあった。なので、「ラーメン」という言葉自体はアメリカではかなりメインストリームだ。

そのような学生が30から40代になり、お金にも時間にも余裕ができ、ラーメン店の開店に関するニュースを見たり、近所にラーメン店が開いたことをきっかけに、再びラーメンに興味を持つというケースもあると長谷川氏は言う。だが、多くの場合は行列に並ぶ必要があったり、不味かったり、と、気軽にラーメンを楽しめる状況ではない。加えて、地方では都心部と比較して美味しいラーメン店を見つけるのが困難だ。

だからこそ、Ramen Heroは現在、D2Cのミールキットという形でラーメンを提供している。好みが千差万別なアメリカ向けに、Ramen Heroは若干、甘めの味に設定。アメリカではラーメンは「スープヌードル」として食されるため、麺は日本と比較すると少なめだという。

そんなRamen Heroの次の展開はB2B。アメリカでラーメンを提供している店舗に対し、Ramen Heroのラーメンを販売する予定だ。これにより、「ECに抵抗のある高齢者」などもRamen Heroのラーメンをトライすることができる。

「B2Bは面白い」と話す長谷川氏。全米でラーメンを提供する店は2万6000店もあるものの、その95パーセントは不味い。長谷川氏はこの状況を大きなチャンスと捉えている。

Ramen Heroはアメリカのラーメン好きの「救世主」になれるのか?同社の今後の展開に期待したい。

Netflix、タイ洞窟の少年救出劇をドラマ化へ

Netflixは、タイのタムルアン洞窟に2週間以上も閉じ込められたサッカーチームの少年たちの救出劇をドラマ化する権利を13 Thumluang Companyから獲得したことを明らかにした。

TechCrunch記者のJon Russelいわく、NetflixはCrazy Rich AsianのチームSK Global Entertainmentと同タイトルの監督を務めたJon M. Chuとのパートナーシップで、まだタイトルが確定していない、救出劇のミニシリーズを展開する。

タイの新聞The Nationの報道によると、「少年たちとその家族は多くの人々に助けられサポートを受けた」ことから、売り上げの20パーセントを寄付する。

加入者が約1.5億人のNetflixはこのようなローカルな物語を全世界に広めるのに最適なプラットフォームだと言えるだろう。

救出ダイバーを「小児性愛者」呼ばわりしたイーロン・マスク氏は一体どのように描かれるのだろうか。マスク氏に特化したエピソードがあることを密かに期待したい。

【写真】Facebook本社、オフィスツアー

Facebookの本社を訪れ、社内外の様子を写真に収めてきた。

こちらはFacebookのオフィシャル素材だが、上からドローンで撮影するとこんな感じ。

屋上は公園のようになっていて、芝生が綺麗に整えられ、木や花も良く手入れされていた。

屋上から見た景気。緑が多い!

屋上にはロビーやミーティングルームの案内が。「Tangerine Dream」や「Pink Mammoth」はミーティングルームの名前。担当者によると、従業員による提案で決まった名前らしい。音楽好きが多いのだろうか。

「Tangerine Dream」発見!

敷地の外は、ザ・殺風景。

建物の中も外もアーティーな感じ。

社内にあった掲示板。

自販機。

中身はこんな感じ。

ランドリーサービスや車のオイル交換、洗車のサービスも完備。

自転車もいっぱい。

「君の脳みそのために君を雇っているんだ。頼むからヘルメットを着用してくれ!」

広すぎる。街か!

噂の「ハッカースクエア」。中庭にあるミーティングスペースだ。「The Hacker Company」の看板は、Facebookの元従業員がフロリダを旅行中、道路脇で見つけたもの。買い取られ、フロリダからメンローパークまで運ばれた。

ハッカースクエアにある、謎の黄色いオブジェ。担当者によると、これは以前のパロアルトのオフィスの地下から発見されたもの。ハッカソンの際などにこの上に立って開始のベルが鳴らされたり。今では「Facebookのアイコンの1つ」だという。

こんなにデカい「いいね!」は初めてみた。誰かが頑張ってレゴで作ったのだろう。

ジョン・デストロイヤーって何者だ。

Oculusチームの建物には分解された「Oculus Rift」が展示されていた。

ゴールデン・ゲート・ブリッジ風、らしい。赤いってだけじゃないか。

アイスクリーム屋さん。

ピザ屋さん。

ハンバーガー屋さん。

中庭の食事エリア。

カフェテリアも広い。

ヘルシーなビーガンフードが多かった。

ゲームセンター。

お土産ショップ。

Facebook本社はゲーム「MOTHER2 ギーグの逆襲」に登場する「ハッピーハッピー村」のように青一色なのだろうと想像していたが、そうでもなかった。オフィスというよりは大学のキャンパスのような雰囲気のヘッドクオーターだった。

アップルは2期連続の減収減益、iPhone売上大幅減でサービス強化打ち出す

現在のアップルのトップページ。お得感を打ち出すメッセージをトップページに出すのは、これまでの同社で見られなかった戦略だ。それだけiPhoneの需要が低下していることを示している

アップルは米国時間4月30日、2019年1〜3月期の業績を発表した。報告書のタイトルは「サービス収入が史上最高の1150億ドルに達する」としているように、iPhoneなどのハードウェアの売り上げは落ち込んだが、サービスやソフトウェアの収入が増えたことをアピールする内容だった。

売上高は、前年同期比5%減の580億1500万ドル(約6兆4630億円)のの減収で、内訳は製品465億6500万ドル(約5兆1890億円)、サービスが114億5000万ドル(約1兆2760億円)。純利益は、前年同期16%減の115億6100万(約1兆2880億円)ドルで2四半期連続の減益だ。iPhoneの販売不振が続いたことが主な原因と考えられる。

製品別の売上高は、iPhoneが310億5100万ドル(約3兆4600億円)と前年同期17%減、Apple Watchなどのウェアラブル端末などは30%増、iPadも22%増、Macは5%減となった。アプリ販売や音楽配信などのサービス部門は114億5000万ドル(約1兆2760億円)で16%増と、四半期ベースで過去最高を更新している。Apple Watch系は堅調な伸びを示しており、iPadは新モデルの投入により売上を伸ばしたと考えられる。

地域別の売上高は、北米と日本は依然好調で、それぞれ255億9600万ドル(約2兆8513億円)で前年同期3%増、55億3200万ドル(約6162億円)で前年同期1%増とプラスを維持したが、グレートチャイナ(中国や台湾など中華圏)では102億1800万ドル(約1兆1382億円)で前年同期22%減、中国・台湾を除くアジア地域が36億1500万ドル(約4027億円)で8.6%減、欧州も130億5400万ドル(約1兆4542億円)で21.5%減となった。

iPhone売り上げの大幅減は市場の予想どおりだが、純利益がアナリストの予想より伸びたことや自社株買いの効果などにより同社の株価は上昇した。iPhoneが売れないのでアップルの株価が下がるという現象は、もはや底を打ったのかもしれない。

iPhoneの買い換えサイクルが長期化する中、iPhoneの売り上げが落ちるのはいわば当たり前。ハードウェアのテクノロジーではここ数年、ファーウェイやサムスンの二番煎じになっている現状を考えると、ハードウェア依存から脱却するいいタイミングかもしれない。

決算の数字から想像すると、先日の発表会で北米や英語圏を中心とするサービスの発表が目立つ印象だったのは、大幅なテコ入れが必要だが、もはやテコ入れしても改善しない確率が高い中華圏よりも、堅調な北米の業績を維持・伸長させる戦略を採ったからだろう。

個人的に気になるのは、今後アップルがライバルひしめくアジアでどう戦っていくか。日本はかろうじて1%増の売上となったが、ほかの地域に比べると金額が1桁少ない。日本を中国・台湾を除くアジア地域に入れてしまうと2.9%減の減収だ。日本を除くアジア全体でiPhoneの需要が急速にしぼんでいる現状で、他言語に比べてローカライズやカルチャライズの手間のかかる日本向けのサービスをどれだけ充実させていく気があるのだろうか。日本国内も4月1日〜7日のBCNの売上ランキングでファーウェイ端末が1位になるなど、決してiPhoneが盤石なわけではない。

倫理感のある技術者の消滅と再生

この数年間、次から次へと悲惨なニュースを聞かされてきた。どれも事前に知り得て、予防できたはずの事故だ。飛行機の墜落原子力発電所のメルトダウン外国の権力による個人情報の不正取得ひとつの州を焼き払ってしまった電力網

これは規制や国籍に由来する問題ではない。特定の社会的構造が共通して抱える問題でもない。Facebookで機械学習のプログラムを行っている人が、フォルクスワーゲンの自動車エンジニアや日本の原発設計者とつるんでいることもない。彼らは同じ学校の出身者でもなく、同じ教科書で学んだわけでもなく、同じ専門紙を読んでいるということもない。

これらのまったく異質で悪質な事件の根本的な共通原因は他にある。それは、ますます毒性を増す錬金術、複雑性と資本主義だ。この2つの問題は、安全文化の再生によってのみ修繕することができる。

予期せぬ災害は「当たり前に起きる事故」

責任の所在を突き止める前に、一歩下がって、これらの技術的システムを見てみよう。自動車の排ガス、原子力発電所、飛行機、アプリケーションプラットフォーム、送電網。これらには、ひとつだけ共通していることがある。すべて、大変に複雑化された高度な結合システムであるという点だ。

複雑化とは、使用されている無数の部品が、ときとして非線形に接続されている状態だ。結合システムの高度化とは、ひとつの部品への摂動が、即座にシステム全体の運用に影響を及ぼす状態だ。

そのために、安全システムは大幅に縮小され、737MAXを墜落させた。ソーシャルプラットフォームではAPIが大幅に制限され、ユーザーの個人情報のストリームが外へ漏れてしまった。また、送電線網は木に触れて発火し、火災となって数十人の人の命を奪った。

こうした悲劇は、理論的には予防できた。とは言え、複雑な結合システムの相互作用の程度は測り知れない。つまり、小さな変化が大きな結果を引き起こす。

随分前になるが、Charles Perrow氏は素晴らしい本を著した。複雑性と結合性の高度化と、悲惨だが「ノーマル・アクシデント」(当たり前に起きる事故)とを結びつけた。それがその本のタイトルにもなっている。彼は、そうした災厄は珍しいものでもショッキングなものでもなく、それらのシステムの設計そのものが、かならず事故が起きるように作られていると指摘している。何百万、何億という数の相互作用で成り立つシステムでは、検査や設計段階で事故を防ぎきれるものではない。したがって、事故は当たり前に起きるというわけだ。

彼は、未来のエンジニアリングについて厳しい意見を述べている。これはかなりの皮肉に聞こえるかも知れない。技術者は、どんどん複雑さを増すシステムに、より高度なツールで対処してきた。そのツールは、ほとんどがより強力なコンピューターパワーと、より優れたモデリングから生まれている。しかし、それらのシステムの複雑さに対する私たちの組織的な行動に限界があるために、技術的ツールの効力にも限界があるというのだ。

管理者の安全妄想

シュタッドハレ議会センターの前で報道陣に発表を行うフォルクスワーゲン弁護団代表Markus Pfueller氏。2018年9月10日、自動車メーカー、フォルクスワーゲンのディーゼルエンジンの排ガスデータ改ざんによって経済的損失を被ったとする投資家の訴えに対する公判がドイツのブランシュバイクで開かれた。(写真:Alexander Koerner/Getty Images)

エンジニアが、さらに高度なツールを手に入れる可能性があったとしても、管理者そのものは、どうしても高度にはならない。

安全は掴み所ない概念だ。安全性を否定する企業のリーダーはいない。一人もだ。世界中のどのリーダーも管理職も、たとえリップサービスであれ、安全の大切さを口にする。建築現場は危険で満ちているが、「安全帽着用」という標識がよく見えるところにかならず掲げられている。

企業などの組織において、たしかに安全は最重要課題だが、年次業績報告書や四半期業績報告書の中の安全に関するごく小さな記述は、何時間も読み込まなければ見つけられないない(大事故が起きた後は別だが)。

この資本主義と複雑性が交わるところで、物事は歪められてしまう。

すべての工学上の大災害に共通するひとつのパターンがある。それは、どの事故においても、事前にその危険性に気づき内部告発する人がいたということだ。どこかの誰かが、これから何が起きるかを知っていたが、事業の停止ボタンを押すことができなかった。

無理もない。四半期収益や成長のプレッシャーが非常に強く、企業の中の誰一人、CEOですら、システムを止めることはできないからだ。

しかし、そのように事前に知り得た大事故が、企業に収益をもたらすわけではないと考えると奇妙だ。カリフォルニアのガス電気供給会社PG&Eは破綻した。Facebookは数百万ドルの罰金を科せられた。フォルクスワーゲンは和解金147万ドルを支払った。737MAXの事故は、ボーイングが成長企業でいられるかどうかを危うくしている

価値のない株券をシュレッダーにかけたいと思う株主はいない。いったいどこで食い違いが生じたのか。

工学の文化に倫理基準を再興する

倫理は、トップのリーダーシップと、あらゆる利害関係者、とりわけ株主との間の、とくに安全と規制に関するコミュニケーションを円滑にすることから始まる。複雑な技術製品を製造する企業の株主には、彼らが所有する企業は短期的な利益よりも安全を優先させますと、繰り返し伝える必要がある。長期的成長と持続性に重点を置いていることを周知しなければいけない。

ウォール街の飲み屋の常連でもなければ、こうした販売プロセスが困難であることを知って衝撃を受けるだろう。投資家は、配当のベーシスポイントがわずかでも減少することを嫌う。それぐらいなら、クレジットデフォルトスワップに飛びついて、船が文字通り沈むか、比喩的に沈むとなれば、すぐに飛び降りほうを選ぶ。

しかし、短期トレーダーだけが投資家ではない。資本市場は一様ではなく、大事故が不可避という危険性がない長期的な成長に投資しようと、何兆ドルもの資産を用意している投資家もいる。投資家との良好な関係を築く上での重要な鍵となるのが、企業の文化に同調してくれる投資家を探すことだ。投資家が安全を重視しないなら、もう他に安全を重視する人はいなくなる。

こうした不祥事は、企業の墓場をどんどん広げてゆくことにつながる。だがそれは、安全に関する会話の役に立つ。

重役会や株主とは別に、工学の文化に、その準備ができたときに、製品を自信を持って出荷できる回復力を養う必要がある。技術の統括者は会社の経営陣に対して、安全の重要性と、継続的に安全性を高めることが、あらゆる出資者にとって必要であることを言い聞かせる必要がある。

技術の統括者は、安全基準を維持するために、組織の上と下の両方を説得しなければならないため、おそらくもっとも難しい役割を担うことになる。この数年間、数々の大事故の報告書を読んで、安全性に関する食い違いは、ほとんどがここから始まっていることに気付いた。つまり、技術部門の管理者が、自社製品の安全性よりも経済性を優先させるようになったときだ。こうした金銭的影響力には、なかなか抵抗できないが、安全はすべての人の合言葉であるべきだ。

最後に、出資者も従業員も、個人として常によく目を配ることが大切だ。技術開発の作業に従事しつつ、安全について意識を高め、問題があれば、早めに何度でも指摘する。安全には粘り強さが肝心だ。もし、あなたが勤務する組織が腐敗してしまっていたとしたら、赤い停止ボタンを押して告発し、その狂気を止めるられるのは、恐らく、あなたしかいない。

Extra Crunchでは、私たちの責務として、この問題への関心を高める活動を行っている。私たちの常駐ヒューマニストGreg Epstein氏が、現代の技術世界における難しい倫理の問題について、さまざまな思想家にインタビューし、会話を重ねている(現在、Extra Crunchは英語版のみ)。

専門家パネル:そもそも「技術の倫理」とは何か?

インターネット文化の倫理:Taylor Lorenzに聞く

倫理感のある技術者の消滅を既成事実にしないために、彼の記事を参考にして欲しい。当たり前に起きる事故を、できる限り正常な状態にして、当たり前でなくさなければいけない。技術系企業のあらゆる階層によりよいツールと説明責任を導入すれば、資本主義の修復は可能だ。長期的視点に立てば、急速に拡大する企業の墓場を見てもわかるが、それは将来に向けての非常に重要な投資になる。

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(翻訳:金井哲夫)

「VUCA」の時代を生き抜くスキル習得を、岡山大の問題発見・解決力育成プログラム「SiEED」

国立大学法人岡山大学は「SiEED」(STRIPE Intra & Entrepreneurship Empowermentand Development)を開講し、4月8日に基礎プログラムの第1回講義がスタートした。その2日前の4月6日に開催されたキックオフイベントでは、Evernote元CEOのフィル・リービン氏などが登壇して受講生にエールを送った。今回ははそのレポートの2回目。ゲストからの受講生へのメッセージを中心に紹介をする。

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岡山大の問題発見・解決力育成プログラム「SiEED」が始動、Evernote元CEOのフィル・リービン氏がエール

思考の幅を広げるために、VUCAの時代に必要な視点とは?

「SiEED」のキックオフイベントでは、自身を「Dreamer And Doer」(夢見てそれを実行する人)と称するBio-Artistの福原志保氏、外資系企業から白馬インターナショナルスクール設立準備財団代表に転身した草本朋子氏が登壇し、SiEED エグゼクティブアドバイザーでスクラムベンチャーズパートナーの外村 仁氏がモデレーターとして、トークセッションを行った。

自身の人生の「計画性」について語る福原氏

福原氏は自身の人生は常に「計画性ゼロ」と表現。「フランス語にハマって渡仏、現地で英語を話せないことに課題を感じて英国に留学、しかし近くのアートを扱う大学の方が面白そうで、入試が終わっていたが手続き方法を聞き出して入りこんだ。」というエピソードを披露。その福原氏は大学で「バイオプレゼンス」という、故人の遺伝子を木に組み込む生物の世界の常識を破る取り組みを発表。倫理面・法律面で賛否多く反響があったという。福原氏は大学という場について「『リサーチ』という前提で、普通できないことができる。実行力とレジリエンスを発揮してほしい」と学生へのエールを送った

「VUCA」の中で戦うことの重要性を説く草本氏

続いて登壇した草本氏は、「22年教育を受け、45年間働き、余生を送る時代は崩壊し、学び続けなければならない今、VUCA(Volatility(変動性・不安定さ)、Uncertainty(不確実性・不確定さ)、Complexity(複雑性)、Ambiguity(曖昧性・不明確さ)の中で戦えるソフトスキルを習得することが重要」と指摘。草本氏は長女の妊娠を機に魅力を感じていた白馬に移住したが、地元の高校が生徒減で存続の危機に直面、全国から生徒を集めてそれを食い止める経験をしたという。ならば「日本に限らず世界から生徒を集めよう」と、インターナショナルスクールの開校を準備。その学校で草本氏は「FAIL(First Attempt in Learning、失敗は学ぶための最初の機会)を大事にしたい。日本は失敗を認めにくい文化だが、子供達から失敗のチャンスを奪ってはいけない」とした。

「事前の計画」が通用しない中での思考法について示唆をする外村氏

こうした話を受けてモデレータの外村氏は、「計画性」が必ずしも大切ではなく、VUCAの中では計画すること自体に無理があると指摘。「既存の解答力が重要視されていた時代から、未知の問題解決力、さらには新規の問題設定力が重要な時代に移行していく」と、会場の生徒・学生たちに「思考の幅を広げる」ための考え方を伝達していた。

続いて第3部では、SiEEDプログラムの具体的な内容について、ストライプインターナショナル代表取締役社長兼CEOで公益財団法人石川文化振興財団理事長を務める石川康晴氏、岡山大学理事(研究担当)で副学長、SiEED-Okayama起業家精神養成学育成講座の代表を務める那須保友氏、モデレータとしてSiEEDディレクターでSVVI日本代表を務める山下哲也氏が登壇した。

SDGsに向けた取り組みとして「教育」を最重要視する姿勢を示す石川氏

地元、岡山でアパレルをはじめとしたさまざまな事業を展開するストライプインターナショナルは、これまでさまざまな形で岡山に貢献してきた。ただ今回の出資は一際大きなもので、背景には、同社のコーポレートメッセージ「いいこと、しようぜ。」がある。石川氏は「大企業や役所を改革しようとしていた若者がどんどん牙を抜かれて丸くなる様子を見てきた。だが、世の中を変えた地方の事例は沢山ある。ネスレやウォルマートも田舎の企業。岡山から、世界を目指せる。我々が仮に「いいこと、しようぜ。」を一つしかできないなら、教育を選びたい。大きな世界の中で新しい技術を武器に新しい世界を作っていける人を育てたい。」と、SiEEDプログラムを同社が非常に重要視していることを聴衆に伝えていた。

「悩むより考えよう」と呼びかける那須氏

続いて登壇した那須氏は、自身が「いつか海外に留学し、先進的な遺伝子治療を岡山で実施したい」という夢を持ってさまざまな課題に挑んできたエピソードを披露。ただ、そこで重要なのが「課題はどこにでもある。それを見つけて解決すると、世界は広がる。次は新しい課題を、楽しみながら解決できる。悩む暇があるなら、解決法を考えよう。というのも、悩む=答えが出ないことを前提に考えるふりをする、であることが多いので、それならば考える=答えが出ることを前提にして建設的に考える、をやっていくべきだ」と指摘。那須氏はさまざまな紆余曲折は経たものの、最終的に岡山の地で遺伝子治療を手がけることに成功している。

学生にSiEEDプログラムの概要を伝える山下氏

最後に、SiEEDプログラムの具体的な内容について山下氏から説明があった。山下氏は「SiEEDプログラムはまさに、VUCAの中で戦うスキル、特に考える力を培うもの。課題設定・解決力はこれからの時代の基礎概念であり、これを養うのが基礎プログラムだ。オンライン学習を用いた反転授業を目指す。オンラインの自習コンテンツは、何度でも巻き戻して納得するまで学べる。授業では、ディスカッションを中心に、各自が考えてきた結果を共有し、さらなる議論の場にする」と説明。

さらに、後期からは「応用プログラム」が開始される予定。ワークショップやブートキャンプを通して、アントレプレナーシップやイントレプレナーシップの概要、数学力、データ分析、プログラミング、グロースハッキングといった、これからの時代に必要な実践的なスキルを学べるようにするという。

いよいよ動き出した岡山大学の新たな取り組み。ここから地域に改革をもたらす人財が登場するか、期待して見守りたい。

リーガルテックのHolmesが新ソリューション「Holmes Project Cloud」提供へ

契約書の作成から管理までを一括サポートするクラウドサービス「Holmes(ホームズ)」を運営するリーガルテック領域のスタートアップのHolmesは4月24日、新ソリューション「Holmes Project Cloud」を6月にリリースすると明かした。同日、その新サービスに関する特設サイトも公開している。

同社は従来のシステムを「Holmes Contract Cloud」とし、それに紐づいた新たなソリューションがHolmes Project Cloudとなる。Homes Project Cloudは「事業活動に必要なあらゆる契約をプロジェクト単位で設計し最適化する」契約マネジメントシステム。事業の流れに合わせ、文書や関連情報を管理。進捗やタスクを把握しながら、シームレスに契約業務を行うことが可能だ。

同社はこの展開を「新たなホームズへとパラダイムシフト」としている。TechCrunch Japanではこの新ソリューションやHolmesの“これから”のビジョンに関して追って取材をする予定だ。

Sun AsteriskとVIE STYLEが業務提携、IoHウェルネスプラットフォームを共同開発

サービス開発支援やスタートアップスタジオなどを手がけるSun Asterisk(旧フランジア)は4月24日、IoH(Internet of Human)デバイスおよびウェルネスプラットフォームを開発するVIE STYLEとの業務提携を発表した。

ストレスフリーなヘッドホンなどで知られるVIE STYLEは、IoHデバイス(生体情報を取得するイヤホン・ヘッドホン)および生体情報を活用してサービスを提供するウェルネスプラットフォームを開発している。

Sun Asteriskは「社会にポジティブなアップデートを仕掛ける」というミッションを掲げ、新しいテクノロジーに対する投資を積極的に行なっている。

提携の目的は以下の通りだ。

  1. 脳波を活用した新しいウェルネスサービスの開発に向けて共同研究
  2. 脳波・心拍・呼吸などの生体情報を活用する「IoHウェルネスプラットフォーム」の開発および実証
  3. ニューロテックサイエンティストの育成

IoHウェルネスプラットフォームについてSun Asteriskは以下のように説明している。

「音楽や映像コンテンツを視聴中のユーザーからヘッドホン・イヤホンにより生体情報を取得して、AIで解析。 解析結果からユーザーの深層心理をAIが推定。レコメンデーション機能等に反映することで、ユーザーに個別最適なコンテンツを提供し、ユーザーを心地よい状態に誘導サポートする機能を備えたプラットフォームです」。

三菱総合研究所のレポートでは、ブレインテック市場は2024年には5兆円規模になると試算されている。Sun Asteriskはリリースで「今後、ビッグデータやAIの技術活用がさらに加速する中、それらをより高いレベルで実現させるブレインテックの重要度が高まることが予測されます」と今回の業務提携の狙いに関して綴っている。

スタートアップのための最新コンテンツマーケティングを伝授

【編集部注】これは、Extra Crunchに掲載されているスタートアップのための専門家による最新アドバイスの無料サンプルです。このテーマで執筆をご希望される方は、ec_columns@techcrunch.comまでお問い合わせください(Extra Crunchは現在、英文記事のみのサービスです)。

成長著しい優秀なマーケターであっても、コンテンツマーケティングがうまく行かないことがある。その多くは、4年前の古びた戦術を、いまだ漫然と使っている。

ここでは、SEOで今年最も成功した事例の背景にある実際のデータを、あらゆる雑音を排したかたちで届けする。

私たちは、Growth MachineBell Curve(私の会社)という2つのマーケティング代理店で、クライアントが示したコンテンツマーケティングの効果を調査した。これらの代理店は、Perfect Keto、Tovala、Framer、Crowd Cow、Imperfect Produce、その他100社あまりの企業を成長させてきた。

それらのクライアントは、どんなコンテンツを書いているのか? 検索エンジンの掲載順位を上げるために、どのような最適化(SEO)をしているのか? 読者から顧客へのコンバージョンをどのように行っているのか?これからみなさんにお伝えするのは、ほとんどのスタートアップがブログの運営方法を間違えているということだ。

月間の閲覧者数15万件を記録するCupAndLeaf.comの戦略を参考に見ていこう。

短い文章で深く書く

以前、Googleは、良質な記事を見分けて積極的に紹介する技術を持ち合わせていなかった。彼らのアルゴリズムは、「コンテンツファーム」の質の悪い記事に振り回されていたのだ。しかし、それはもう過去の話。

今日、Googleは本来の社命に戻りつつある。それは「世界の情報を整理して、あまねくアクセス可能にし、利用しやすくする」というものだ。言い換えれば、現在Googleは、良質な記事を確実に見分けることができる。ではどうやてて? 強いつながりを示すエンゲージメントの兆候をモニターしているのだ。ブラウザーの「戻る」ボタンをクリックすると、Googleはそれを検知する。これは、閲覧者が記事を読もうとクリックした直後に離脱して、前のページに戻ったことを示す。

これが度重なると、Googleはその記事の掲載順位を下げる。質が低いと判断されるのだ。例えば、下の図は(古い)Googleウェブマスターツールの画面だ。記事の質の評価プロセスが示されている。この例では「デザインパッケージのアイデア」というキーワードで検索できるある記事の掲載順位の推移がわかる。Googleは最初に25ポイントを与えている。

しかし、時間が経過するにつれて閲覧者のエンゲージメントが低下し、Googleは次第にこの記事の掲載順位を下げ、最終的にはこの画面でわかるとおりの結果になっている。

教訓は?閲覧者のエンゲージメントを保つために質の高い記事を書くこと。それ以外は、ほとんどが雑音だ。私たちのクライアントを研究するうちに、エンゲージメント率の高い記事を書くための4つの法則がわかった。

1.記事の優先度を上げる検索クエリを書き込む

記事の中で、検索クエリがうまく使われていない場合がある。下の画像は、「personalized skincare」(個別のスキンケア)の検索結果だ。

見てわかるとおり、Googleは記事(article)よりもクイズ(quiz)を優先させている。そのため、個別のスキンケアに関する記事を書く前に、こうした下調べをしておかないと、時間を無駄にすることになる。なぜならこのところ、Googleは一部の検索クエリで、地元のお勧め、動画、クイズなど、読み物以外のタイプの順位を上げるようになっているからだ。原稿を書き始める前に、気を落ち着けて調べておこう。

2.閲覧者がコンテンツから得られるものを正確にタイトルに入れ込む

閲覧者が製品を買いたくてサイトに訪れるのなら、ぜひとも製品のリンクを入れたい。レシピを探しているのなら、それを提供する。タイトルが示しているとおりの内容を、閲覧者に提示しなければならい。そうでなければ閲覧者は離脱する。Googleは離脱の回数を数えているので、それが増えれば順位が落とされる。

3.検索者に結論を与える記事を書く

目標は、あなたのサイトが人々の検索の旅の終点になることだ。つまり、あなたの記事を読んだ人が、Google検索に現れた他のサイトを見に行かなかったとしたら、あなたのサイトはその人が求めていたものを提供したとGoogleは推論する。それは、検索者を最短距離で目的地に導くというGoogleの第一の使命でもある。

検索者の旅を終わらせるには、次の2つの技を使う。探していると思われる項目すべてをカバーする、十分に詳しい情報を提供する。探している情報に関連する可能な限りのページにリンクを張る。そのために私たちはClearscopeを使っている。記事の検索順位に大きく影響する決定的な情報を確実に見つけてくれるツールだ。

4.詳しいながら簡潔な文章を書く

2019年、最も検索順位が高かったブログに共通しているものは?前書きを省き、段落を短くして要点を書くことだ。さらに、滞りなくナビゲーションできるよう「目次」も備えている。

それを真似よう。読本の形から抜け出すのだ。私たちのクライアントで、パフォーマンスが高いブログを書いている人たちは、みなそうしている。

詳しく知りたい方は、Extra CrunchのJulian Shapiroの記事「What’s the cost of buying users from Facebook and 13 other ad networks?」(Facebookと他の13の広告ネットワークからユーザーを買うコストは?)と「Which types of startups are most often profitable?」(最も利益率の高いスタートアップのタイプは?)をお読みいただきたい(英語のみ)。

バックリンクよりもエンゲージメントを優先させる

データの調査から、もうひとつ、「バックリンク」に関する大きな発見があった。バックリンクとは、他所から自分のサイトへのリンクを意味するマーケティング用語だ。

4年前、SEOの世界では、バックリンクと、質の高いサイトからのリンクの多さを表す「ドメインレーティング」(0から100のポイントで示される)が重要とされていた。当時は、バックリンクを気にすることが正しかったのだ。

現在は、私たちのデータによれば、バックリンクに以前ほどの力は見られない。たしかに助けにはなるが、それはしっかりとしたコンテンツがあっての話だ。ほとんどのコンテンツマーケターは、まだそこに気がついていない。下の画像は、ドメインレーティングが非常に低い中小企業が、今日の巨大企業を打ち負かした様子を示している。

ここからわかるとおり、バックリンクがなくても、Googleは喜んで高い順位を与えてくれるということだ。Googleはサイトのエンゲージメントの強さから判断しているので、あなたのサイトにTechCrucnhからのリンクがなくても関係がない。

Googleには、googleアナリティクス、Google検索、Google広告、そしてGoogle Chromeのデータがあり、あなたのサイトに対する検索者のエンゲージメントがどれほどあるかをモニターしている。信じて欲しい。あなたのコンテンツのエンゲージメントを知りたければ、Googleにはいくらでも方法があるのだ。バックリンクに頼る必要などないのだ。

だが、バックリンクが役立たずだと言っているわけではない。私たちのデータは、バックリンクには、かなり低くなってはいるものの、まだ価値があることを示している。とりわけ、バックリンクがあれば、Googleの「考慮」にいち早く入ることができる。権威ある関連性の高いサイトからのバックリンクがあれば、Googleは安心してあなたのページにテストトラフィックを送ることができる。通常は数カ月かかるところを、もしかしたら数週間で来る。

「テストトラフィック」とは、こういうことだ。記事を公開してから数週間が経つと、Googleがそのサイトの存在に気がつき、そのページを関連するキーワードの検索結果の上位に試験的に表示する。そして、そのページへの検索者のエンゲージメントをモニターする(戻るボタンをすぐにクリックしないか)。エンゲージメント率が高いとわかれば、そのページの露出度が徐々に高められ、検索順位も次第に上がってくる。良いバックリンクがあれば、このプロセスが数カ月から2、3週間程度に縮まる可能性がある。

数よりもコンバージョンを優先させる

エンゲージメントは最終目標ではない。それは本来の目的、つまり登録、購読、購入(マーケターは「コンバージョン・イベント」と呼ぶ)を促すための前処理に過ぎない。サイトの来訪者がコンバージョンに至る過程は3種類ある。

ショート:最初の記事を読んですぐにコンバージョンする。

ミディアム:最初の記事と、さらにいくつかの記事を読んで、最後にコンバージョンする。

ロング(これがもっとも多い):ニュースレターを購読して、後で戻ってくる。

ショートまたはミディアムの率を高めるには、ブログ記事の文章、デザイン、行動の誘因を最適化しなければならない。私たちは、それを実施する際の2つのルールを特定した。

1.滑らかに売り込みにつなげる

記事の後半に至るまでに宣伝を入れてはいけないと、私たちのデータは示している。なぜか?導入部分に宣伝を入れてしまうと胡散臭くなるからだ。また、良い記事に読者が引き込まれるほど、あなたのブランドに対する親近感や信頼感が高まる。そうなれば、宣伝が始まっても読み飛ばされることが少なくなる。

2.売り込みの言葉を宣伝らしくしない

ほとんどのブログは、製品の売り込みを、大きくて邪魔くさいバナー広告のような形で組み入れている。私たちのデータによれば、こうした視覚的に派手な宣伝は、反射的に拒絶される。そうではなく、製品を通常のテキストのリンクとして組み入れるのだ。他の文章のリンクとまったく同じスタイルにする。健康ブログのWoodpathは、Amazonの販売ページへの誘導をうまく処理している。

ページビューではなくファネルで考える

最後になるが、私たちのクライアントの中でも最高のパフォーマンスを誇る企業は、Googleアナリスティックのデータよりも、読者の満足度に重点を置いている。読者に電子メールを送ってくれるよう促し、それに対して電子メールを「段階的」に連続して送っている(ドリップ)。理想的には、これによってブランドの信頼が高まり、最終的に来訪者のコンバージョンが実現する。

彼らは、来訪者に広告で「リターゲティング」しているのだ。そうして、来訪者がブログで読んだ記事の内容に深く結びついた製品を、広告を使って売り込んでゆく(FacebookとInstagramは、こうしたトラフィックの区分に必要な大まかな操作手段を提供している)。リターゲティング広告について詳しく知りたい方は、私の「Growth Marketing」(成長マーケティング)ハンドブックを読んでいただきたい(本文は英語)。

リターゲティングは大きな力になる。FacebookやInstagramに100社を超えるスタートアップの広告を出すうちに判明したのだが、リターゲティングで購入に至るまでのコストは、私たちのサイトを見たことがない人に広告を打って購入させた場合の3分の1に留まる。

ブログのトラフィックではひとつも結果を出せなかったクライアントでも、サイトを見てくれた人をリターゲティングしただけで数千件という結果を出すことがある。

まとめ

月間5万件の来訪者を誇るブログが、何も得られないということもある。つまり、数ではなく、来訪者とのエンゲージメントを優先させるべきなのだ。もっとも重要な指標「ヒーローメトリクス」を、来訪者あたりの収益と総収益に置くことだ。そうすれば、重要な中間目標、つまりコンバージョンを考えている来訪者を惹きつけることから目が離れずに済む。

そうした来訪者をサイトにつなぎとめるのだ。そして、彼らを説得しコンバージョンに導く。手短に言えば、人を行くべきところへ導き、その行程の摩擦をできる限り小さくする仕事をGoogleに手伝わせることだ。

Julian Shapiroのその他の記事はExtra Crunchに掲載されています。スタートアップへの最先端のアドバイスを記事にして発表したいとお考えの方は、Extra Crunch編集部(ec_columns@techcrunch.com)までお知らせください(英文のみ)。

[原文へ]

(翻訳:金井哲夫)

SEOにおける、検索者の”意図”を理解することの重要性

検索エンジンの進化は留まることを知らず、次々と新しい技術が導入されています。

しかし、ユーザーにフォーカスし、検索者の意図を理解することの重要性は変化することはありません。

今回の記事は、コンテンツ作成における普遍的かつ基本的な内容の記事となります。SEO戦略の振り返りや、この春SEO担当になった方々にとって、とても参考になる記事ではないでしょうか。


検索エンジンの「そのページが検索者の意図にどの程度合致しているのか?」という判断能力は日々洗練され続けている。この記事では、こうした背景のもと、SEOの戦略をより良いものに仕上げるためのいくつかのヒントを記載したいと思う。

検索は刺激的で、常に変化を続けるマーケティング・チャネルである。

Googleアルゴリズムのアップデート、検索方法のイノベーション(モバイルや音声検索など)、ユーザー行動の進化などが我々をSEOに向かわせている。動きが激しいという性質を持つこの業界においては、変化に対して柔軟な戦略や成功するためには常に学び続ける姿勢が必要とされる。

しかし、常に新しい戦略をまとめ上げることは難しく、先進的な戦術を採用するあまり、基本的なSEOの原則を見落としてしまうこともある。

最近、クライアントからの質問に共通点があることに気が付いた。検索者の意図についての調査も多いため、このタイミングでこのテーマを再度取り上げようと思っている。実際、検索者の意図は非常に複雑であり、複数の科学的な研究(PDF)や調査(PDF)が行われている現状がある。

とはいえ、自社内で研究チームを抱えていない場合、検索者の意図や、それらが与えるSEOへの影響度などを分析することは難しいだろう。

この記事では、我々Page One Power社がクライアントと共に行っているプロセスを紹介したいと思う。SEOのターゲットキーワードの背後にある、検索者の意図をよりよく理解する手助けとなるプロセスだ。

クライアントがターゲットキーワードのリストを我々に提示する際に、我々は常に2つの質問を彼らに尋ねる。

  1. あなたのサイト・ページはそのキーワードで上位表示されるべき内容か?
  2. (上位表示された際)それらのキーワードが果たす役割はなにか?

この質問を投げかけることで、我々自身とクライアントが、SEOの戦略のために特定のキーワードやテーマを設定する”以前に”、オーディエンスや検索行動の分析に注視するようになる。

成功するSEO戦略とは、検索者の意図の明確な理解に基づいているのだ。

検索者の意図の種類

検索者の意図とは、特定の検索キーワードの背後にある、”なぜ?”の部分に言及することだ。検索者が達成したいことは何なのであろうか? 検索者の意図は下記の4つに分類することができる。

  • インフォメーショナル(Informational):情報収集型
  • ナビゲーショナル(Navigational):案内型
  • コマーシャル(Commercial):購買型
  • トランザクショナル(Transactional):取引型

検索キーワードをこの4つに分類することで、どのような種類のページを検索者が求めているかを、よりよく理解できるようになるだろう。

インフォメーショナル:情報収集型

このタイプのキーワードで検索する場合、検索者は対象やトピックについての情報を得たいと考えている。これは検索において最も定番の検索意図であり、概して検索ボリュームも大きい。

このタイプの検索はマーケティングファネルの上位に位置づけられている。いわゆる”発見”の段階であり、ここではいきなり訪問者が消費者へとコンバート(転換)することは少ない。

彼らの疑問に対し、簡潔にわかりやすく回答しているコンテンツが豊富なページが求められるだろう。そして、検索結果もこの傾向を反映されたものとなっているはずだ。

ナビゲーショナル:案内型

検索者が特定の企業やブランドのサイトに訪問することが決まっているが、たどり着くまでの案内が必要とされる場合の検索である。特定のブランド名(外部記事:The importance of targeting branded searches)、商品名、サービス名などが、具体的なキーワードの例として挙げられる。

検索結果には、トップページ、特定の商品やサービスの専用ページなどが表示されているはずだ。また、特定のブランドに関するニュース記事も含まれるかもしれない。

コマーシャル:購買型

コマーシャルは、インフォメーショナルとトランザクショナルの混ぜ合わせとして存在している。

このタイプの検索は、購買目的の検索が含まれている。検索者は何かを購入しようとしているが、その判断を助けてくれる情報も同時に欲しているのだ。そのため、情報を提供しているページや、特定の商品やサービスのページなどが検索結果に表示されている。

トランザクショナル:取引型

購買に最も関連する検索である。こうした検索には、「価格」や「セール」といった言葉が併用されることが多い。

このタイプの検索結果では、商業的なページ(商品、サービス、定期購読などのページ)が表示される可能性がかなり高い。

ターゲットキーワードを上記4つに分類することで、検索者のニーズをより良く理解することができる。そして、ページの作成や最適化の方法にも影響を及ぼすだろう。

検索者の意図への最適化:自身のページは上位表示に値するのか?

異なる種類の意図があることを理解した上で、検索者の意図への最適化を進めよう。

我々は、クライアントからターゲットキーワードのリストをいただいた際に、「あなたのページはこうしたキーワードによる検索で上位表示されるべきページですか?」と尋ねるようにしている。

また、この質問をすることで、別の重要な質問へとつなげることができる。

  • これらのキーワードで検索するユーザーの意図はなにか?
  • Googleはそのインテント(意図)は何であると考えているだろうか?
  • どのような種類の検索結果を検索者は求めているだろうか?

特定のキーワードやテーマに対して最適化をする前に、検索者の意図への最適化を行う必要がある。

調査を始めるにあたり、まず行うべきことは、検索結果画面を実際に確認することだ。

現状の検索結果画面を分析するだけでも、インテントの理解に対するヒントを得ることができる。検索結果に表示されているページは、ブログ記事だろうか、レビューや「TOP10」リストのようなページだろうか、商品の特設ページだろうか。

ターゲットキーワードの検索結果が、情報の豊富なガイド記事やリソース元となるような記事で占められている場合、商品のページが上位表示される可能性は限りなく低いだろう。

反対に、競合他社の商品ページで占められていた場合は、十分に最適化がされれば、あなたの商品ページが上位表示される可能性も十分にあるだろう。

Googleは検索者の意図に対する回答となるページを上位に表示したいと考えている。そのため、検索者の目的を達成するために、可能な限りのことを自身のページで行う必要があるのだ。オン・ページの最適化(内部SEO)やリンクは非常に重要だ。

しかし、検索者の意図への対応がなければ、上位表示を達成することはできないのである。

検索意図の調査を行うことは、コンテンツ作成の戦略(外部記事:Searcher intent: The secret ingredient behind successful content development)にも影響を与えるだろう。

上位表示されるためには、自身のページを”少なくとも”現状の検索結果に表示されるページと同等のものにする必要がある。もし、現状の検索結果に表示されるほどの質のページが無いのであれば、そうしたページを作成する必要がある。

(機会は少ないだろうが)検索者の意図にうまく答えていない検索結果に出くわす機会(外部記事:How using search opportunities can guide link-building content strategies)もあるだろう。その場合は、検索者の意図に応える適切なページを早急に作成するべきだ。

また、より深い洞察や「リンク設置の意図(外部記事:The Power of Link Intent)」を考慮することも可能だ。「リンク設置の意図」とは、「情報元やリンクを集めるに値する記事作成の機会があるかどうか?」ということだ。検索者の意図を分析することは、SEO施策における別の側面にも影響を与える可能性があるのだ。

自身に対し、既存のページ、またはこれから作成しようとしているページが、「そのキーワードで上位表示されるべきページであるか?」を尋ねてみよう。こうすることで、検索者の意図の特定と最適化への方法が見えてくるはずだ。

検索者の意図への回答:何を達成するものなのか?

我々が頻繁に尋ねるもう1つの質問は、「それらのキーワードが果たす役割はなにか?」である。

単純な回答としては、「より多くのトラフィックを得るため」となるだろう。しかし、実際にそれが意味していることは何なのだろうか?

キーワードに付随する検索者の意図に依るが、トラフィックが導くものは、ブランド認知、権威性の構築、コンバージョンの創出など多岐に渡るだろう。施策における見込みやKPIを設定するときは、こうした検索者の意図も検討しなければならない。

重要なことは、全てのトラフィックがコンバージョンを導く必要があるのではないと理解することだ。バランスの取れたSEO戦略とは、全ての見込み顧客があなたのブランドを発見できるために、マーケティングファネルにおける複数の段階をターゲットとしているのだ。

ブランドの親和性を高めることは、トラフィックを獲得する初期段階において重要となる。ブランド認知が高まることで、CTRが2倍〜3倍になること(外部記事:How to Use Brand Affinity to Dramatically Increase CTR)もあるのだ。検索者の意図に基づき、キーワードやフレーズを分類することは、ターゲットキーワードのギャップの特定と埋め合わせの手助けとなるだろう。

ターゲットとしているキーワードで上位表示された際、自身のビジネスにどのような影響を与えるかを考えよう。そして、それらの影響がマーケティングにおける最終ゴールに結びついているのかも考えよう。こうした作業をすることで、最も成果を生み出す機会(検索結果)を細分化し、注力する力を養うことができるだろう。

検索者の意図の理解とSEO

検索エンジン最適化の作業は、検索者の意図への最適化から始まるべきだ。検索エンジンはこれからも進化し続けるだろうし、ページと検索者の意図との合致をより正確に測定することができるようになるだろう。

また、上位表示されているページが、そのキーワードを使用した検索者の意図に最も答えているページであるか、を判断する力も伸び続けるだろう。

Page One Power社に相談にくるクライアントに対しては、検索者の意図に注力すべきとアドバイスしている。そのために、我々は下記の質問を尋ねている。

  1. あなたのサイト・ページはそのキーワードで上位表示されるべき内容か?
  2. (上位表示された際)それらのキーワードが果たす役割はなにか?

この質問を、あなた自身にも尋ねてみてほしい。

ターゲットキーワードにおける検索者の意図に対し、あなたのSEO施策は合致しているのか。今一度確認してみてはいかがだろうか。

この記事は、Search Engine landに掲載された「The importance of understanding intent for SEO」を翻訳した内容です。

SEOの施策においては、特定のキーワードにおける上位表示獲得を目指すことは避けては通れません。「そのために必要な作業や考え方とは何か?」が簡潔にまとめられていました。

また、こうしたSEOの施策が、「マーケティング戦略とうまく結びついているか?」の確認も非常に重要です。捉え方を間違えてしまうとせっかくのSEO施策も失敗と認識されてしまうこともあります。

SEOの施策が失敗と認識される事態を避けるためにも、検索意図への最適化と、マーケティング戦略との結びつきを確認しながら施策を進めていきましょう。

岡山大の問題発見・解決力育成プログラム「SiEED」が始動、Evernote元CEOのフィル・リービン氏がエール

国立大学法人岡山大学は「SiEED」(STRIPE Intra & Entrepreneurship Empowermentand Development)を開講し、4月8日に基礎プログラムの第1回講義がスタートした。この講義は、岡山大学の学生や教職員に加え、社会人や中高生などにも開放されるもの。その直前となる4月6日に、同大学においてSiEEDの始動を記念して国内外からゲストが集結した。岡山大学の「本気の改革」に多くの関係者がエールを送った。

「マイントドセットの社会実装」を支える

SiEEDプログラムに対する想いを語る岡山大学学長槇野博史氏

冒頭に登壇した岡山大学の槇野博史学長は、SiEEDにおける人財育成について「社会課題を解決し、その成果を世界のパラダイムシフトにつなげていける開拓者、挑戦者の育成」と定義。SiEEDは、同大学がこれまで実践し、多くの実績を残してきた国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」に照らし合わせたSDGs教育プログラムと接続することで、DP(Diploma Policy、大学を卒業するための学士力の要件)である「教養、専門性、情報力、行動力、自己実現力の5つの力」をより強力に高めることのできるプログラムであるとした。

槇野学長は「例えばイノベーションの創出においては、大学における研究成果・新技術と社会における製品化・市場投入とのギャップを埋めるためのマイントドセットの養成とスキルセットの習得かが、SiEEDで可能になる」と期待を寄せた。

2名の起業家によるトークセッション

続いてEvernoteの元CEOで、現在は起業家支援を手がけるAll Turtles創業者のPhi lLibin(フィル・リービン)氏と、大同門の代表取締役社⻑でシルバーエッグ・テクノロジーの共同創業者のフォーリー淳子氏が登壇した。

何を、いつ作るか

写真左から、Evernote元CEOでAll Turtles創業者であるフィル・リービン氏と、大同門の代表取締役社⻑でシルバーエッグ・テクノロジー共同創業者のフォーリー淳子氏

リービン氏はロシアの難⺠出身で、8歳で米国ニューヨークに移住。英語はコミックを通じ自己学習で習得し、プログラミングは親が買ってくれた「Atari400」で独習したという。大学卒業後はソフトウェア企業に就職し、1997年に「最初の起業」を行って以来、リービン氏は幾度もの起業をしたが、いつも「何を作るか。それには、いつが最適なのか。」を考えていたという。

自身の生い立ちについて語るリービン氏

「ブームの技術は、5年後の当たり前としてあらゆる前提になる」とリービン氏は強調。「1993〜95年、世界はインターネットのプラットフォーマーとしてYahooやAmazonが登場。1998年にはそれを前提にしたドットコムがバズワードになり、無数の企業が産まれた。が、数年後には誰も話題にしなくなった。2007年にはモバイル、昨今はAIという具合に、バズワードは次々に産まれるが、5年後にはそれが前提の新たな価値が生まれる」と示したうえで、「2007年創業のEvernoteはその時点でAIをうたっていた。ただし人工知能(Artificial Intelligence)ではなく拡張知能(Augmented Intelligence)。人間の記憶領域を拡大し、過去の関連ノートを通して思いがけない知への出合い(セレンディピティ)を引き起こすという価値だ」と、同社サービスの成功の裏には明確な提供したい価値と、先見性のあるリリースタイミングがあったことを伺わせた。

意味のある問題に取り組めば、必ずスケールが付いてくる

次にリービン氏は直近で起業した「All Turtles」の取り組みを紹介。多くのベンチャーが創業期に「資金調達や経理処理等に追われ、プロダクト開発に時間を割けない」という課題を解決すべく、開発に集中できる形で支援を行うシステムを持つ。日本を含む3つの国にオフィスを構えて「意味のある問題の解決」に挑むチームを支援している。

ただ、年間3000ものチームが同社の門を叩き、うちリービン氏との面会には600人が挑んだが、支援を得たのはわずか3チーム。ここをクリアするための要件としてリービン氏は以下の4つを挙げた。

  1. 本質的で現実的な課題を解決すること
  2. 当該領域のエキスパートである創業メンバーがいること
  3. ビジネスモデルが現実的で、収益化の可能性が高いこと
  4. 数年前には実現不可能だったサービスを、最新の各種プラットフォームを活用して12〜18カ月で実現すること

つまり、成功確率が高い起業家は、明確な課題設定、その領域に取り組む専門知識、収益性、最新技術の応用、スピード感をもった製品化といった要素を持っているのだという。前出の槇野学⻑が岡山大学の重点育成ポイントに挙げた「教養、専門性、情報力、行動力、自己実現力の5つの力」とも、連動する部分が多い。リービン氏は「情熱を持って意味ある課題に挑めば、後からスケールは付いてくる」と、来場者に課題設定の重要性を説いた。

若者へのメッセージ「自分が作りたいものを作ろう」

後半はモデレーターのフォーリー淳子氏が会場の声を拾うかたちで、SiEEDプログラムでこれから学ぶ若者たちに向けたメッセージがリービン氏から発信された。

フォーリー純子氏:これまでに経験した厳しい決断とは?
リービン氏:厳しい決断には2種類ある。答えがわからないちきと、答えはわかるがそれが気持ちよくない時(に下す決断)だ。チームメンバーの解雇が後者の一例。ひとつ言えるのは「恐れ」に基づいた決断や、安全を取りにいく決断は最悪な結果を招くことが多いということだ。

フォーリー純子氏:そうした悪い判断から学んだことは?
リービン氏:悪い判断をした時に大切にしてほしいのが、その失敗を徹底的に味わい尽くすことだ。かなり辛いことだが、そこに向き合ってほしい。そしてできればその失敗から得られた知見を、世界中に向けて発信してほしい。その情報が検索して出てくれば、次に問題解決に挑む人にとって大きな力になる。

フォーリー純子氏:日本の若者へのメッセージを。
リービン氏:「顧客が何を求めているか」を追求してできた製品は、個別に作り分けないと他の誰かに対して売りにくい。一方でEvernoteはその逆で、作りたいものを作って、それを使いたい人が顧客になった。自分たちの製品であれば改良も短時間でできることになる。つまり、Evernoteは自分たちのために作った会社だ。そういう意味でも、皆さんが起業をする時には、1つ目の会社は「自分のために」作るといいでしょう。2つ目以降の会社で「誰かのためになるもの」を実現するのがいいと思います。

Twitterにポケモンの絵文字が登場!ハッシュタグで出現

ハリウッド版の実写映画「名探偵ピカチュウ」公開の5月3日(日本先行公開)まであと数週間といったところだが、本日、Twitterでは特定のハッシュタグを使うとポケモンの絵文字が出現するのが話題になっている。

#フシギダネ #ヒトカゲ #ゼニガメ #ミュウツーのハッシュタグでそれぞれのポケモンの絵文字が、そして #DetectivePikachuのハッシュタグでは名探偵ピカチュウの絵文字が登場することが確認できた。

同日の4月11日、7月に公開される映画「ミュウツーの逆襲 EVOLUTION」の最新予告映像が公開されているが、果たして関係あるのだろうか。

「Detective Pikachu」の公式アカウントも絵文字を紹介している。

10年後にはドライバー24万人不足、トラックの長時間待機問題の解決を目指す「トラック簿」がローンチ

日本GLPのグループ企業で、物流系のソリューションを開発・展開するモノフルは4月10日、物流施設や工場などにおける「トラックの長時間待機問題」の解消を目指し、新サービス「トラック簿」の提供を開始した。

国土交通省が2018年2月に公表した「荷待ち時間調査の結果」を見ても、やはり多くのドライバーが長い時間、待機している状況だというのがわかる。

2027には日本において24万人のドライバーが不足すると言われている中、ドライバーたちが長時間、待機しているだけの状況にいるというのは非常にもったいないと言えるだろう。

同サービスの意図は「倉庫のバース運用の最適化」。バースは、トラックに荷物を積んだり降ろす際などに使用されるスペースのことだ。

トラックの長時間待機問題は、このバースを利用する車両が特定の時間に集中したり、荷受け側、例えば、物流施設や工場が、事前準備を十分に行えなかったりすることが大きな要因となり引き起こされていると考えられている。

そこで、「トラックの流れをよりスムーズ」にするべく誕生したのが、このトラック簿だ。バースの状況をデータ化し、作業の効率をアップすることで、トラックの待ち時間が削減できる「トラック受付・予約」のサービスとなっている。

同サービスには「受付/バース割当」「簡単呼び出し」「実績管理/データ分析」「バース予約」の4つのメイン機能がある。

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  2. PC-2

類似サービスにはHacobuの「MOVO」やプロロジスの「スマートバースシステム」などが存在し、少し検索しただけでも色々と出てくる。そんな中、モノフルはトラック簿の他サービスとの「差別化ポイント」として「コスト優位性」を挙げている。

フリープランの基本料金は無料。連絡手段としてLINEを利用することができ、ドライバーとLINEでつながれば、予約確定や呼出も全て無料となる。

また、モノフルは同日、昨年に資本業務提携を発表したスマートドライブのクラウド車両管理サービス「SmartDrive Fleet」との連携により、予約したトラックの自動受付および自動遅延通知が可能になると併せて発表している。

さらに今後、フューチャースタンダードが提供する映像解析AIプラットフォーム「SCORER」を活用することで、「バースに設置したカメラでトラックの接車時間を自動測定し、リアルタイムで満・空状況を把握する」機能を開発、提供する予定だ。

モノフルにとって、トラック簿は、同社が目指す「輸配送プラットフォーム」の第一弾。今後も様々な発表が期待されている。

AGAZZIのリュックはムダな機能が満載、指紋認証リーダー搭載、Kickstarterで販売

TechCrunchのメンバーは優れたバッグが大好きだ。TechCrunchではバッグばっかり紹介するBag Weekなんかもやっていたりする。

個人的には、バッグを選ぶときは「ミニマリズム」を重視している。でも、たまにもう少しごちゃごちゃしたのが気になることもあって、アジアを訪れたときにはTimbuck2のカバンを重宝した。

今回紹介するAGAZZIのバックパックは、色んな意味で、盛りだくさん。まるでバックパック界のSamsungのようだ。デカくて、大胆で、高額。見た目もかっこいいし、多機能なのだが、いくつかの機能は、ただ搭載したいから追加されているんじゃないかって気さえする。

でもKickstarterでこの246ドルのバッグを買うぐらいなら、余計なものであれ、他にも機能が欲しくなるだろう。ちなみに、この値段は早割価格。AGAZZIいわく、「Pro」バージョンは460ドルで発売されるそうだ。僕は200ドルのTimbuk2のカバンでさえ、若干、買うのは躊躇したな。

460ドルのProバージョンには、自転車に乗るとき用のライトが外側にあり、内側にも、荷物を探す時に重宝しそうなライトが付いている。その他には充電器や財布用のRFIDポケット、そして、なんと(!)指紋認証リーダーが搭載されている。

指紋リーダーに関して、AGAZZIでは以下のように説明している。

「AGAZZIの革命的な『盗難防止用』指紋ロックは、持ち物を常に安全に保ちます。 頑丈なステンレス製の格納式ケーブルで、バックパックのコンパートメントをロックしたり(盗難の心配はもうありません)、バックパックを固定物に固定したりすることができ、混雑した場所でも安心です」

確かに、スマホよりかはバッグの中身を覗くほうが簡単だし、トイレに行くたびにカバンを持ち出すのは面倒なので、どっかに繋いでおけるというのは便利かも。ちなみに、The Vergeではプロトタイプを試しに使っていたみたいだが、割と良くできているみたいだ。

とにかく、このカバンはKickstarterで発売されているし、 配達は9月に予定されている。

動画制作・プロデュースのFIREBUGがANRIなどから4.2億円を資金調達

写真左からFIREBUG代表取締役CEO・宮﨑聡氏、代表取締役CCO・佐藤詳悟氏、社外取締役に就任した中川綾太郎氏

動画などのコンテンツ制作事業やアーティストのプロデュースなどを行うFIREBUGは4月10日、ANRIをはじめとする複数のVCや事業会社、エンジェル投資家を引受先として、総額4億2000万円の第三者割当増資による資金調達を行ったことを明らかにした。

同時に経営体制強化を目的として共同代表制へ移行したことも発表。新たにサイバーエージェントで執行役員などを務めていた宮﨑聡氏が代表取締役CEOに就任し、現代表の佐藤詳悟氏は代表取締役CCO(Chief Content Officer:最高コンテンツ責任者)となる。また、ペロリ創業者の中川綾太郎氏が社外取締役に就任する。

FIREBUGは2016年2月の設立。創業者の佐藤氏は吉本興業でマネージャー業を経験した後、2015年1月にクリエーターのエージェント会社であるQREATOR AGENTを立ち上げた。FIREBUGでは、2017年7月にRKB毎日放送およびエイベックス・ベンチャーズ、個人投資家などから、数億円規模の資金調達を実施。2018年4月にはAOI TYO Holdings、アカツキ、読売新聞東京本社から資金調達を行っている。

設立からしばらくは、テレビ番組やウェブ動画、イベントなどの企画やプロデュース、PRなどを事業としていたFIREBUG。2017年9月に新事業として、スマートフォン向け短尺縦型動画配信サービス「30(サーティー)」を開始し、企業向けの短尺動画制作なども行ってきた。現在は、スタートアップを中心とした企業向けにクリエイティブも含むマーケティング・PR支援や、アーティスト・クリエイターのプロデュース、TV、ネットも含めたコンテンツ制作事業を手がけている。

今回の資金調達と経営体制変更により、FIREBUGではマスメディアでの経験豊富な佐藤氏と、デジタル業界の広い知見を持つ宮﨑氏がタッグを組み、中川氏の協力も得ながら、さらに事業拡大を目指していくという。具体的には、新たに著名人やインフルエンサーを対象に、YouTubeを中心とした動画プラットフォームでのマネタイズをサポートするエージェント事業を開始する、といったことが想定されている。

同社では、今後もエンターテインメントスタートアップとして「テクノロジーを活用した新しいコンテンツフォーマットの創造」の実現に向け、尽力するとしている。

今回投資に参加した引受先の一覧は下記の通りだ。

ANRI
East Ventures
アカツキ
静岡放送
中京テレビ放送
北海道文化放送
ユナイテッド
加藤恭輔氏(メドレー執行役員)
佐藤裕介氏(ヘイ代表取締役社長)
高野秀敏氏(キープレイヤーズ代表取締役)
古川健介氏(アル代表取締役)
光本勇介氏(バンク代表取締役兼CEO)