MosaicがGCからシリーズAで1850万ドルを調達、CFOソフトウェアスタックの再構築を目指す

CFOは企業における全知のオーナーと考えられている。CEOが戦略や方針を設定し、文化を構築する一方で、CFOは組織内で起きていることをすべて把握する必要がある。収益はどこから来ていていつ届くのか?新規採用の費用はいくらでいつ支払われる必要があるか?どのようにしてキャッシュフローを管理し、どのような負債商品が不連続性の解消に役立つだろうか?

企業のクラウド移行が進むにつれて、これらの質問に対する回答が難しくなってきている。他部門が一元管理された記録システムとしてのERPを避け始めたからだ。さらに困ったことに、CFOは財務に関してこれまで以上に戦略的になることを期待されていながら、鍵となるデータが入手できないことで重要な予測や見通しに支障をきたしかねない。過去10年の間にマーケティングを実行するためのまったく新しいソフトウェアスタックがCMOに向けて導入されているが、CFOはどうだろうか。

Palantir(パランティア)出身の3人は、CFOたちがMosaicという新しいスタートアップに目を向けることを期待している。Mosaicは「戦略的財務プラットフォーム」で、ERP、HRIS、CRMなど企業のITを構成するあらゆる種類のシステムからデータを収集し、CFOとそのチームがより正確かつ迅速な予測を行うための戦略的プランニングツールを提供する。

Mosaicは2019年4月、Bijan Moallemi(ビジャン・モアレミ)氏、Brian Campbell(ブライアン・キャンベル)氏、Joe Garafalo(ジョー・ガラファロ)氏によって設立された。3人はパランティアの財務チームで15年以上も一緒に働いていた。その間、同社が百人ほどの小さな組織から数千人規模の従業員を持ち、百人を超える顧客を抱える組織へと成長するのを見てきた。昨年、パランティアが新規株式公開(IPO)を果たしたのは記憶に新しい。取引先は十数か国を超えているという。

Mosaicの創設者、ビジャン・モアレミ氏、ブライアン・キャンベル氏、ジョー・ガラファロ氏。写真はMosaicより提供。

戦略的な財務管理を実現することがパランティアの成功にとって不可欠だったが、既存のツールは同社のニーズに対応できなかった。そこでパランティアは独自のサービスを築き上げた。「CFO向けツールキットのデフォルトツールであるExcelの活用にとどまらず、コード作成のための技術チームを編成して組織全体にスピード、アクセス、信頼性、可視性を提供するツール構築を進めました」とMosaicのCEO、モアレミ氏は説明する。

ほとんどの組織が技術分野の人材をCFOのオフィスで使わざるを得ない状況で、3人の共同創設者はパランティアを去り財務の責任者として他に活動の場を移した。モアレミ氏は教育テック系スタートアップのPiazzaへ、キャンベル氏は訴訟管理スタートアップのEverlawへ、ガラファロ氏はブロックチェーンスタートアップのAxoniへ移り、それぞれ財務を改善する方法について考え続けていた。そしてパランティアのような成長をすべての企業で実現するために集結し、CFOオフィスのための優れたソフトウェア基盤を構築した。「この10年間でCFOのオフィスが大きく進歩したことには、デスクトップベースのExcelからクラウドベースのGoogleスプレッドシートへの移行が寄与しているでしょう」とモアレミ氏は続けた。

MosaicがCFOソフトウェアスタックの再構築に向けて取り組んでいるのはどのようなことだろうか。同社は企業全体をつなぎ、より協調的な形で財務に関する議論を行うための入り口となるプラットフォームを構築したいと考えている。財務部門の中心である報告と計画に焦点を当てながら、より多くの人々が起きていることを理解し、CFOにフィードバックできるように、ダッシュボードと予測を企業の中に広げていくことを目指している。

Mosaicのプランニング機能のスクリーンショット。画像はMosaicより提供。

ここ10年間でAnaplan(アナプラン)などの上場企業がこの分野に参入している。モアレミ氏によると、こうした既存企業は重要な課題をいくつか抱えており、Mosaicはそれらの解決を図っているという。まずオンボーディングが挙げられる。コンサルタントがソフトウェアを企業のワークフローに統合するため、一部の企業では数か月かかる場合がある。第2に、これらのツールを運用し続けるには専任の常勤スタッフが必要となる。第3に、これらのツールは基本的にCFOオフィス以外の人には見えない。Mosaicはすぐに統合でき、組織内に広く分散され、最小限のメンテナンスで使えるような環境を整えたいと考えている。

「誰もが戦略的であることを望んでいますが、それを実行するにはかなりの困難が伴います。なぜなら、これらの異種システムからデータを引き出し、整理し、マッピングしてExcelファイルを更新することに8割の時間を費やし、残りの時間で検討し直したり、データが何を意味しているか理解しようとしたりしているからです」とモアレミ氏は言う。

このことから、同社がターゲットにしている顧客はシリーズBやCで資金を調達している企業であり、多量のデータが既にアクセスしやすいデータベースに保存されていることは間違いないだろう。最初は小規模な企業が相手だったが、「ここ12か月の間、より大規模で複合的な顧客との取り組みを進めながら少しずつ前進しています」とモアレミ氏は語っている。同社の従業員数は30人に成長し、売上高は7桁に達しているが(モアレミ氏によると営業部門はない)、このスタートアップはそれ以上具体的には教えてくれなかった。

こうした成長と活気を背景に、Mosaicは投資家の注目を集めている。同社は本日、General Catalyst(ゼネラル・カタリスト)のTrevor Oelschig(トレバー・オエルシン)氏が主導するシリーズAラウンドで1850万ドル(約19億1550万円)を調達したことを発表した。GCはFivetran、Contentful、Loomなどのスタートアップへの企業向けSaaS取引を率いている企業だ。このラウンドは昨年末に完了した。

Mosaicは250万ドル(約2億5900万円)のシード投資をXYZ VenturesのRoss Fubini(ロス・フビーニ)氏(以前はVillage Globalの投資家)から2019年半ばに調達している。フビーニ氏はメールで、Mosaicの創設者たちがパランティアでCFOのソフトウェアの状況について「共通の課題」を感じていたこと、さらに「彼ら全員が仕事をするために必要なツールに対して深いフラストレーションを体験していた」ことに興味を持ったと伝えている。

シリーズAの他の投資家には、Felicis Venturesに加えてXYZとVillage Globalが含まれている。

Mosaicは資金調達と併せて、パランティア、Dropbox(ドロップボックス)、Shopify(ショッピファイ)など9つのテック企業の現CFOまたは元CFOを含むアドバイザリーボードを設立することも発表した。

ビジネスの多くの機能はソフトウェアにおいて完全なる変革を遂げてきた。そして今こそCFOの時だとMosaicは期待している。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:資金調達

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

カナダのコーヒーチェーンTim Hortonsが中国事業拡大でTencentなどから資金調達

カナダのコーヒーとドーナツのチェーンTim Hortons(ティムホートンズ)は中国事業向けに新たな資金を調達した。この投資ラウンドはSequoia Chinaがリードし、中国におけるTim HortonsのデジタルパートナーであるTencentとEastern Bell Capitalが参加した。Tim Hortonsは2年前にブームを迎えていた中国のコーヒー産業に進出した。

Tim Hortonsは最新の調達額を明らかにしなかったが、ソーシャルメディアへの投稿で資金はさらなる店舗展開、デジタルインフラの構築、ブランドプレゼンスなどに使うとした。

中国のソーシャルメディアエンターテイメント大企業Tencentは2020年5月に創業57年のTim Hortonsに初めて出資した。当時、両社のタイアップは  Tencentの最大のライバルであるAlibabaへの対抗措置だとみられていた。Alibabaは米国のコーヒー大手Starbucksが中国で事業を展開し、デジタル化を進めるのをサポートするために提携していた。

Tim HortonsのWeChat親会社とのコラボレーションは同じようなものだ。同社はこれまでのところ、インスタントメッセンジャーの中で動く軽量アプリの一種であるWeChatミニプログラムを通じて会員300万人を集めている。中国の若い消費者にアピールするために、Tim Hortonsは中国最大のゲーム会社であるTencentとeスポーツがテーマのカフェを開いた。

中国で事業を展開して2年が経つTim Hortonsは主要10都市150店舗を開き、店頭レベルでは黒字になっていると話す。2021年はさらに200店舗超を追加し、今後5年で中国で1500店舗を展開する計画だ。

コーヒーデリバリースタートアップのLuckinのドラマティックな躍進凋落は中国のコーヒーマーケットの見通しを前面に押し出した。Luckinや他のコーヒー会社をめぐる投資の熱狂にもかかわらず、米国やドイツのような国に比べると中国ではコーヒーを飲む習慣はあまり浸透していない。一方で、中国のコーヒー消費量は世界平均2%を優に上回る15%という割合で急増していて、Dongxing Securitiesの2020年レポートによると、2025年には1兆人民元(約16億円)のマーケットに達すると予想されている。

カテゴリー:その他
タグ:Tim Hortons資金調達カナダTencent

画像クレジット:Tim Hortons via Weibo

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(文:Rita Liao、翻訳:Nariko Mizoguchi

有名人がユーザー向けにパーソナライズしたビデオメッセージを送るサービスMemmo.meが約10.6億円調達

Memmo.meは、ユーザーが有名人にお金を払ってパーソナライズされた動画を作ってもらうサービスのスタートアップだ。同社はシリーズAで1000万ドル(約10億6000万円)を調達したと発表した。

共同創業者でCEOのGustav Lundberg Toresson(グスタフ・ランドバーグ・トレソン)氏は「(有名人が)1対多ではなく1対1で人とつながる際の障壁をなくすというミッションに燃えています」と述べている。

同氏は、このサービスが新たな収入源として有名人に受け入れられているとも指摘する。このことはコロナ禍で特に魅力となっているが、同氏は収束後も「自分のリビングで稼げる」のは有名人にとってうれしいだろうと予測する。

このコンセプトからCameoを思い出す人もいるだろう(実際、Netflixのドキュメンタリー番組「Tiger King(タイガーキング)」に出演するCarole Baskin(キャロル・バスキン)氏は両方のプラットフォームに登録されている)。Cameoが米国を拠点としているのに対し、Memmoが設立されたのはスウェーデンのストックホルムで、ランドバーグ・トレソン氏によればMemmoの戦略はグローバルとローカルの両方を対象にしているという。同社は現在、スウェーデン、ドイツ、フィンランド、ノルウェー、英国、スペイン、イタリア、カナダで現地のマーケットプレイスを、そしてグローバルのマーケットも運営している。

同氏は「サッカーやバスケットボールのスターのような世界的な有名人から将来有望な地元のミュージシャンまで、あらゆる人を見つけられる場所にしたいと考えています。世界各地のユーザーが自分にとって最も関心の高い有名人を見つけられるようにするためにローカライズをしているのです」と述べた。

Memmoによれば、世界で10万以上のビデオメッセージが送信され、売上は2020年7月から2021年1月の期間に毎月50%ずつ増加しているという。

今回の資金調達ラウンドを主導したのはLeft Lane Capitalで、同社の創業者でマネージングパートナーのHarley Miller(ハーレー・ミラー)氏がMemmoの取締役会に加わる。他にはDelivery Hero共同創業者のLukasz Gadowski(ルーカス・ガドウスキ)氏、FJ Labs、DepopのCEOであるMaria Raga(マリア・ラガ)氏、Zillow共同創業者のSpencer Rascoff(スペンサー・ラスコフ)氏、Grouponの運営責任者だったInbal Leshem(インバル・レシェム)氏、Voi Technology共同創業者のFredrik Hjelm(フレドリック・イェルム)氏、UdemyのCEOだった Dennis Yang(デニス・ヤン)氏、Wolt共同創業者のElias Aalto(エリアス・アアルト)氏もこのラウンドに参加した。

ミラー氏は発表の中で「我々はMemmoが各地のマーケットにサービスを広げていくペースに感嘆しています。マーケットプレイスの流動性を得るにはローカライズが欠かせません。タレントや有名人がファンと深く関わりつつ自らの財産と知名度のギャップを収益化できるサービスは、コロナ禍でさらに明らかになったトレンドです」と述べた。

Left Lane Capitalの拠点はニューヨークだが、ランドバーグ・トレソン氏はLeft Laneのマーケットプレイスに関する専門性に特に期待が大きく、今回の投資は米国ですぐにサービスを開始することを意味するものではないと述べた。

Memmoはこれまでに1200万ドル(約12億7500万円)を調達した。今回調達した資金でライブビデオなどの新機能を追加する他、企業が有名人に依頼して社外向けのマーケティングや従業員の士気向上のためのプロモーションビデオを作るサービスを構築する予定だ。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Memmo.me資金調達

画像クレジット:memmo

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(文:Anthony Ha、翻訳:Kaori Koyama)

日本の民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

民間宇宙スタートアップ企業ALEがシリーズA追加ラウンドで総額約22億円の資金調達

「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げるALE(エール)は2月26日、2019年9月5日に公表したシリーズAの追加ラウンドとして、第三者割当増資を実施したと発表した。引受先は、宇宙フロンティアファンド(スパークス・イノベーション・フォー・フューチャー)、Horizons Ventures、THVP-2号投資事業有限責任組合(東北大学ベンチャーパートナーズ)、個人投資家など。

引き続き同追加ラウンドにおいて、既存投資家および新規投資家を引受先とする追加調達を検討しており、2022年4月までを目処に総額約22億円(今回の資金調達金額を含む)の調達を完了する予定。シリーズAを含む累計調達金額は総額約49億円となる。

ALEは、同追加ラウンドで調達する資金を基に、2023年に技術実証を予定している人工流れ星衛星3号機の開発、同年のサービス開始に向けた事業開発、2021年度に技術実証を予定しているEDT(導電性テザー)を利用したデブリ化防止装置の開発、さらには大気データ取得活動の要素技術開発およびその体制構築を着実に実行していく。

2011年9月設立のALEは、「科学を社会につなぎ 宇宙を文化圏にする」をミッションに掲げる民間宇宙スタートアップ企業。人工流れ星を始めとした宇宙エンターテインメント事業で宇宙の美しさや面白さを届け、人々の好奇心を刺激することで、さらなる宇宙開発のきっかけを作るとしている。

また宇宙から貴重なデータを取得し、地球の気候変動のメカニズム解明に寄与することを目指す。両者を有効利用し、人類の持続的な発展に貢献するとしている。

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カテゴリー:宇宙
タグ:宇宙(用語)ALE(企業)資金調達(用語)人工衛星(用語)日本(国・地域)

再利用型ロケットを次の段階へ引き上げるStoke Spaceが9.7億円のシード資金調達

多くのロケット打ち上げ業者は、宇宙に人や物を運ぶ際のコストや遅延を減らす最良の方法が、再利用型のロケットだと考えている。SpaceX(スペースエックス)やRocket Lab(ロケット・ラボ)は、宇宙の入口までペイロードを運搬するロケットの第1段を再利用型にしてみせた。そして今、Stoke Space Technologies(ストーク・スペース・テクノロジーズ)は、再利用可能な第2段を開発していると話す。これはペイロードを軌道やその先にまで運ぶものだ。同社はその実現に向けて、シード投資910万ドル(約9億6600万円)を調達した。

安全に地球に帰還できる第1段の設計だけでも決して簡単なものではないが、第1段は特定の高度と速度にまでしか到達できない。さらに速度を増して軌道にまで昇るようなことはしない。そのため、比較的単純な挑戦でもある。第1段が燃え尽きた後を引き継ぐ第2段は、ペイロードをさらに加速し目標の軌道へと導く。ということは普通に考えても、第2段を地球に戻すには、もっとずっと長い距離を、もっとずっと高速に移動させなければならない。

Stokeは、再利用可能な第2段の開発は可能であるばかりか、数十年にわたって宇宙産業に成長をもたらすには、低コストな宇宙経済の構築が欠かせないと考えている。同社のチームは、Blue Origin(ブルー・オリジン)でNew Glenn(ニューグレン)とNew Shepard(ニューシェパード)のロケット本体とエンジンの開発に関わった人物や、SpaceXでFalcon(ファルコン)9のためのMerlin(マーリン)1Cエンジンの開発に関わった人物などで構成されている。

「私たちの設計理念は、単に再利用可能であるばかりでなく、運用面でも再利用可能なハードウェアをデザインすることです。つまり、改修の手間を減らしてターンアラウンド時間を短縮するということです。そうした再利用性は、最初からデザインしておかなければなりません」と、Stokeの共同創設者であるCEOのAndy Lapsa(アンディー・ラプサ)氏はいう。

画像クレジット:Stoke Space Technologies

機体は弾道再突入の後に動力着陸を行うということ以外に、Stokeは重量が何トンにもなる精密機器である第2段ロケットを、400キロメートルの高さから時速2万8000キロメートルほどの速度で安全に下ろすという神業を実現させる、工学面の話も手法も公表していない(ただラプサ氏はGeekWireに対して「上質で高性能な安定したインジェクター」がエンジンの、さらにはその周辺のシステムの要になると話していた)。

そのような高速での再突入は大変に危険なため、着陸用の他に、減速用の燃料も残しておけばよいではないかと考えるのが普通だ。だがそれではペイロードを積む以前に機体の重量と複雑性が増してしまい、積載能力を落としてしまいかねない。

「再利用型システムは、本質的に使い捨てシステムよりも複雑になるのは事実です」とラプサ氏。「しかし、ミッションのコスト削減と可用性の向上が望めるなら、その複雑性にも価値はあります」

他の打ち上げ業者が指摘するとおり、再突入では大量の金が燃え尽きる。しかし今のところ最も安全な対策は、第1段を生かすことしかない。第2段も決して安くはないため、どの業者も、できれば再利用したいと考えているはずだ。もしそれがうまくいけば、打ち上げコストを劇的に下げることができる。

Stokeが約束しているのは、第2段を帰還させるだけではなく、それを持ち帰って翌日にはまた飛ばせるようにすることだ。「あらゆる打ち上げハードウェアは、飛行機と同等の頻度で何度も再利用できます。ゼロ改修で24時間ターンアラウンドです」。

打ち上げと着陸の際にロケットがどれだけ摩耗す損傷するかを考えれば「ゼロ改修」は夢物語だと感じる人も多いだろう。SpaceXの再利用型第1段はターンアラウンドがとても短いが、着陸地点で燃料を詰め替えて、すぐに発射ボタンが押せるというような簡単な話ではない。

しかもStokeでは、小型の低コスト人工衛星がよく投入される地球低軌道よりも高い場所まで飛べる、再利用型ロケットのサービスも目指している。静止軌道投入、月や他の惑星との往復も計画されている。

「静止トランスファー軌道、静止軌道への直接投入、月遷移軌道や地球脱出ミッションは、当初は一部再利用型や使い捨て型のロケットで行われますが、それらに使われる機体は、いずれは地球低軌道への完全再利用ミッションで使われたものと、まったく同じものが使われるようになります。将来の発展型モデルは、これらの(さらに他惑星への着陸)ミッションに応じてデザインを拡張できるようにして、完全再利用を実現します」とラプサ氏は話す。

野心的な主張だ。現在のロケット業界の動向がどうあれ、非現実的だといわれても仕方ない。だがこの業界は10年前に人々が想像していたよりもずっと速いペースで進歩してきた。その改革をもたらしたのは、非現実的な野心だったように思われる。

Stokeがシードラウンドで調達した9億6600万円は、これからのいくつかのステップを実現するために使われるが、この業界の事情に詳しい方なら、決められた時間内に開発とテストを行うには、もっとずっと大きな資金が必要になることはご承知だろう。

今回のラウンドはNFXとMaC Venturesが主導しYC、Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏のSeven Seven Six、Joe Montana(ジョー・モンタナ)氏のLiquid2、Trevor Blackwell、Kyle Vogt、Charlie Songhurstその他が参加している。

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カテゴリー:宇宙
タグ:Stoke Space資金調達ロケット

画像クレジット:Stoke Space Technologies

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

コレクターグッズ専門マーケットプレイス「Clove」が3.5億万円調達、秋葉原駅前にショップ開設

コレクターグッズ専門マーケットプレイス「Clove」が3.5億万円調達、JR秋葉原駅にショップ開設

コレクターグッズ専門のマーケットプレイス「Clove」を運営するトラストハブは2月26日、シリーズAラウンドにおいて、3億5000万円の資金調達を実施したと発表した。引受先はニッセイ・キャピタル。累計調達額は4億5000万円となった。

また2021年春に、秋葉原駅前にカフェ&バー併設のカードショップ「トレーディングカードショップ Clove Base 秋葉原」(東京都千代田区佐久間町1-13 チョムチョム秋葉原 6階)をオープンすると明らかにした。

調達した資金を基に、オフライン領域も含め、マーケットプレイスとしてのプラットフォーム化を一層進めていく。

Clove Base 秋葉原は、オンラインに加えてオフラインにおいても、「Cloveブランド」での「安心×信頼」の商品購買体験を提供したいとの思いから、秋葉原において、安心してトレカを取引できる場所としてオープンするという。併設のカフェ&バーでは、カードユーザー同士のコミュニティの場を作っていく。

Clove Base 秋葉原では、白を基調とした「安心×信頼」をコンセプトに開放感のある空間を設け、品揃え豊富なショップエリアを展開するという。買取査定も実施し、高額な商品に関しては個室の商談室も用意しているそうだ。

コレクターグッズ専門マーケットプレイス「Clove」が3.5億万円調達、JR秋葉原駅にショップ開設

50席以上を備えるカフェエリアでは、カードバトルを楽しみながら、ドリンクやフードをオーダー可能。マッチング対戦や大会などのイベントも随時開催するそうだ。バーエリアでは、カウンター席とソファ席を用意し、心地よいコミュニティ空間を作っていけるとしている。

コレクターグッズ専門マーケットプレイス「Clove」が3.5億万円調達、JR秋葉原駅にショップ開設

コレクターグッズ専門のマーケットプレイス「Clove」

Cloveは、買取・販売に加えて、鑑定・状態評価を経由する委託販売という形式の下C2Cで取引を行えるサービスとして運営。出品者が委託販売を利用したい場合、トレーディングカードをCloveに郵送し、同社による状態評価・真贋鑑定・写真撮影を経た後、買い手とのマッチングにより取引できるようになる。トレーディングカードの購入を検討している者にとっては、従来のフリマ形式の取引サービスと比較し「真贋」や「状態」について安心して取引できる点がメリットとしている。

コレクターグッズ専門マーケットプレイス「Clove」が3.5億万円調達、JR秋葉原駅にショップ開設

2019年5月設立のトラストハブは、「ネットでも安心して取引ができる」というビジョンの下、コレクターグッズ専門のマーケットプレイス「Clove」を2020年3月にローンチ。現在は遊戯王カードに特化している。

同社によると、コレクターグッズのオンライン取引は、商品の特性上、本物かわからない、相場が適正かわからないといった問題を抱えており、テクノロジーを駆使しその解決を図りたいという。

「コレクターグッズの取引市場は、偽物流通や相場がわかりずらいといった問題を抱えています。そんな中、トラストハブは「安心して取引ができる」というビジョンでコレクターグッズ専門のマーケットプレイス『Clove』を立ち上げました。

『Clove』を利用してくださっているユーザーの皆様、そして私たちのビジョンに賛同してくださっている投資家の皆様に、心から感謝しています。この度の資金調達を通じて、更なる事業拡大、採用強化へと邁進していきますので、引き続きの皆様のご協力、ご支援、宜しくお願いいたします!」とコメントしていた。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Clove(製品・サービス)資金調達(用語)トラストハブ(企業)マーケットプレイス(用語)日本(国・地域)

民泊管理ツールなど提供のmatsuri technologiesがシリーズBのエクステンションラウンドで資金調達、民泊業界の支援進める

アフターコロナマーケットに向けて支援策を講じていく(画像は同社HPより)

アフターコロナマーケットに向けて支援策を講じていく(画像は同社HPより)

民泊管理ツールやコロナ禍における自主隔離物件などを提供するmatsuri technologiesは2月26日に、シリーズBエクステンションラウンドにおいて第三者割当増資を行ったと発表した。エクステンションラウンドでの金額は非公開。調達資金の一部は、「コロナを超える」をスローガンにアフターコロナに向けた産業全体への投資を進める資金とする。コロナ禍で深刻なダメージを受ける民泊業界。同社は資金繰りが難しい現在におけるクッションとなりつつ、アフターコロナを見据えた業界活性化の環境づくりを進めていく。

引受先はオールアバウト、ALL-JAPAN観光立国ファンド投資事業有限責任組合、個人投資家の坂野敦氏(資産運用会社Aspex Managementのパートナー)、既存投資家となる。今回は2019年9月に実施した総額約5億8000万円の資金調達に続くものだ。

今回の資金調達とコロナ禍での金融機関の融資によって、2016年8月からの累計資金調達額は約14億円となった。調達した資金は人材の獲得費用や既存製品の強化、民泊施設の拡充のほか、組織・事業の強化もはかる。

「コロナを超える」キャンペーンの背景

民泊市場はコロナ禍で大きく傾いた。日本政府観光局(JNTO)によると、2020年の訪日外国人旅行者数は約412万人(推計値)で、19年の約3188万人と比べて約87%の減少となった。2020年の1月下旬以降の新型コロナの拡大や、2月から順次水際対策が強化されたことに伴って、訪日外国人旅行者数は激減。民泊は訪日外国人旅行者が約7割を占めるマーケットであるため、民泊関連の事業者はかなりの深手を負った。

2021年1月に出された2度目の緊急事態宣言は追い打ちをかけた。コロナ禍であっても、事業者らは人員を削り、業務のスリム化をはかるなど傾くマーケットに対抗してきた。政府主導の「Go To トラベルキャンペーン」で少しずつだが戻りつつあった客足も、途絶えることとなる。「もうどうすればいいかわからない」。そんな悩みが同社の吉田圭汰代表のもとに多く寄せられたという。

「このままでは旅行・宿泊需要が回復するまでに、民泊マーケットそのものが崩壊してしまい、人が戻ってくることが難しくなるのではないか。その危惧が現実とならないようにアフターコロナに向けたキャンペーンを展開していく」(吉田代表)。

3本柱のキャンペーンで支援

アフターコロナを視野に同社は3本柱のキャンペーンを打つ。

1つはコロナ期間(2021年4月からの半年間)に、民泊物件などの運営代行サービス「m2m Premium」の各種プランの手数料を無料とする。さらに、宿泊施設向け本人確認ソフトウェア「m2m Check-in」でも4月からの半年間、タブレット代金・ソフトウェア利用料を不要とする。

もう1つは、民泊物件のマンスリーマンション化を支援するというもの。コロナ期間を乗り越えるため、政府の「事業再構築補助金」の活用なども含めた上で行う見通し。

民泊は旅行需要ありきだが、マンスリーマンションに転換することで受け皿を広げる。マンスリーマンション化によって、1カ月といったように長いスパンで利用者が借りることになる。同社はテレワーク用のデスクの用意といったハードウェア部分や、集客プラットフォームに関わる費用などを支援する考え。

残りの柱としては、別荘オーナーが使用しないとき、貸別荘として運用して収益を生む「S-Villa」の販売を一般公開する。同社が別荘を選定し、貸別荘としても運用可能な物件を紹介。別荘購入後はオーナーの代わりに同社が、別荘のリフォームから運用、清掃、清算、管理まで行っていく。また、すでに別荘オーナーである場合は、貸別荘への変更や運用代行にも対応する。

「長期的に繁栄するアフターコロナマーケットを作り上げるための、包括的なキャンペーンとなっている」と吉田代表は説明する。

コロナ禍でも新事業を次々に展開

民泊オーナーだけでなく、コロナ禍で不況のあおりを受けたのは同社も同じだった。コロナ禍によって既存のオフィスを解約し、規模を縮小したオフィスに移転した。

一方で、向かい風を受けながらも、2020年には6つの新事業を展開。事業の巻き返しをはかった。政府からの自主隔離規制要請に合わせた「一時帰国.com」や新型コロナ陽性者の濃厚接触者の避難所を提供する「自主隔離.com」では、旅行者がいなくなった民泊物件などを活用した。

2020年の半ば、新型コロナが一時的に落ち着いたタイミングも見逃さなかった。カップル向けに「お試し同棲」を始め、新たな需要の掘り起こしに力を入れた。初期費用なしで、家具家電付き物件に文字通り「お試し」で住めるというサービスだ。20代前半の若年層から人気を博し、多いときには1時間で300件ほどの問い合わせがあったという。

さらにスマホで完結する短期賃貸プラットフォームの「Sumyca(スミカ)」もリリース。「一時帰国.com」や「自主隔離.com」、「お試し同棲」はSumycaのプラットフォームを通して事業を回せるようにした。

6つの新事業で巻き返しを図った

6つの新事業で巻き返しを図った

吉田代表は「6つの事業展開により、一時期は9割ほど落ち込んだ売り上げも最終的な着地では前年を超える見通しとなり、資金調達の実施もできた」とし、その上で「コロナ禍に対して我われがいまできることに力を注ぐ」と強調する。

アフターコロナマーケットを盛り上げる

民泊市場はまだまだこれからが勝負の市場だ。旅行需要について吉田代表は、ワクチンが国民に行き届き、新型コロナの変異などが起きなければ「はやくて秋ごろ、遅くても来年の春前には回復するのではないか」と予想する。

コロナ禍の暗闇から新たな灯がともるまで、もうひと踏ん張りの力がほしい。そんな民泊オーナーや事業者に支援の手を差し伸べるmatsuri technologies。吉田代表は「コロナ禍で悲観的な考えに陥ってしまう気持ちはよくわかる。アフターコロナマーケットを大きく盛り上げるため、いまを一緒に乗り越えましょう」と呼びかける。

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カテゴリー:その他
タグ:matsuri technologies資金調達旅行新型コロナウイルス民泊日本

犬が指定範囲外に出たら通知するスマートなペット用首輪のFiが約32億円のシリーズBを調達

ペットテック企業のFiは米国時間2月25日、シリーズBで3000万ドル(約32億円)を調達したと発表した。Longview Asset ManagementのChuck Murphy(チャック・マーフィー)がリードしたラウンドは、2019年にシリーズAで700万ドル(約7億4000万円)を調達したのに続くもので、同スタートアップの価値を2億ドル(約210億円)以上と評価している。

ニューヨークを拠点とするFiは、コネクテッドドッグカラー(スマート首輪)に特化しており、2020年末にSeries 2のデバイスをリリースした。この第2世代バージョンでは、ペット追跡デバイスにいくつかの重要なハードウェア改善が施されており、またバッテリーの最適化により、満充電時で最大3カ月の駆動時間を実現している(同社によると、平均は約1.5カ月だという)。

デバイスはWi-FiとBluetoothを利用しており、犬がAIによって指定された範囲外に移動した場合には通知を送信する。

Fiは2019年のスタート以来堅実な成長を遂げており、新型コロナウイルス(COVID-19)の大流行にもかかわらず、製品に対する需要は伸び続けているという。まだ事業規模は小さいが、Fiは米国での販売拡大に取り組んでいる。また、2020年の第4四半期(10月〜12月)にはメガペットのオンライン小売業者ことChewyでも販売された。

「米国には非常に大きな市場があり、私たちはまだその表面で活動しているだけです」と、ファウンダー兼CEOのJonathan Bensamoun(ジョナサン・ベンサムーン)氏はTechCrunchに語っている。「私たちはこの分野に集中していたいと思っています。そして、これを本当に家庭用品にしたいのです。成長の最大の制約は、人々が我々や製品カテゴリーの存在を知らないことです」。

Fiによると、従来型の大型ペット小売店との交渉は現在「宙に浮いた」状態だという。この資金調達ラウンドは研究に加えて、製品のフットプリントの成長を助けるために、マーケティングと追加の小売パートナーシップの調査に向けられる。

「私たちはFiのジョナサン(・ベンサムーン)氏とチームを1年以上追跡しており、彼らの実行力と急速な成長に非常に感銘を受けています」と、AVPのパートナーのCourtney Robinson(コートニー・ロビンソン)氏はTechCrunchに向けた声明で述べている。「彼らはデザイン、バッテリー寿命、精度の面で競争相手を打ち負かすデバイスによって、コネクテッドカラーという新しいカテゴリーの明確なリーダーとしての地位を確立しました」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Fi資金調達ペット

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(文:Brian Heater、翻訳:塚本直樹 / Twitter

再生エネに頼る送電網の安定化に取り組むMaltaが約53億円調達

エネルギー供給網が化石燃料から主に再生可能エネルギーによるゼロエミッションソースの使用へと移行するにつれ、太陽光や風力で断続的に生み出されるかなりの量のエネルギーを貯蔵して使用するという能力が必要とされている。

だからこそ、新たに5000万ドル(約53億円)を調達したばかりのエネルギー貯蔵テクノロジーデベロッパーMalta(マルタ)のような企業のテクノロジーがかなりの注目と投資を惹きつけている。

Maltaは、Google(グーグル)の親会社Alphabet(アルファベット)の特別プロジェクトからスピンアウトし、需要ピーク時(先週のテキサス州の電力供給網に影響を及ぼしたような状態だ)にエネルギーを放出する長期エネルギー貯蔵を提供する新しい方法において、いくつかのかなり古いテクノロジーの組み合わせに頼っている。

Maltaの最新の資金調達ラウンドはスイスの天然ガス、メタノール、農業の複合企業Proman(プロマン)がリードし、既存投資家からは再生エネルギーや持続可能なスタートアップに次々と投資しているBreakthrough Energy Ventures、産業用フィルターと熱交換器メーカーのAlfa Lavalが参加した。Facebookの共同創業者でAsanaの共同創業者兼CEOのDustin Moskovitz(ダスティン・モスコヴィッツ)氏も本ラウンドに加わっている。

熱交換はMaltaのアプローチの中心にある。これはノーベル賞を受賞したスタンフォード大学の物理学教授Robert Laughlin(ロバート・ラフリン)氏の研究に基づいている。2017年の論文で、ラフリン氏はエネルギーを貯蔵するのに極低温記憶装置と過熱溶融塩を送る熱ヒートポンプを使ったシステムを提案した。

初期デザインを元に、AlphabetのムーンショットファクトリーであるXのエンジアたちはラフリン氏が提案したデザインの修正バージョンの開発を開始した。

その修正デザインが、2018年にXからスピンオフしたMaltaが現在取り組んでいるものだ。

再生可能エネルギープロジェクトデベロッパーRye Developmentで以前働いていたMaltaのCEOであるRamya Swaminathan(ラミャ・スワミナサン)氏は現在のMaltaのシステムが約60%の効率でエネルギーを貯蔵・放出できると述べた。それはあまりいい数字ではない。しかしスワミナサン氏は再生エネルギーのコストの減少は、価格がコスト曲線まで下がり続ける中で効率がさほど重要ではないことを意味する、と話した。「実際には、我々は電気代がゼロに近づくシステムに向かっています」とスワミナサン氏は述べた。事実、一部の送電網が風力や太陽光で発電された電気が過剰になったときにマイナスの価格モデルを展開しているように、Maltaのテックはより魅力的なものになっていると述べた。

再生可能エネルギーの構築によって引き起こされるさまざまな発電問題を解決すべく長期貯蔵の開発を行っている企業はMaltaはだけではない。エネルギー貯蔵のジレンマに取り組んでいる複数の企業のリストをFortuneが記事化している(実際、筆者が書きたかったものだ)。

そこには、Energy VaultとAdvanced Rail Energy Storage North Americaが含まれる。両社とも長期貯蔵に機械的エネルギーの使用を試みている。Energy Vaultの場合、重さ1トンの巨大なセメントブロックを持ち上げるのに再生可能エネルギーを使っている。貯蔵されたエネルギーを電力として放出するためにブロックを落とす。ARES North Americaは似たようなコンセプトを用いているが、巨大なブロックの代わりにエネルギーを貯蔵・放出するのに電車を使っている。

マサチューセッツ州ケンブリッジを拠点とするMaltaの事業所の近くに、Maltaのエネルギー貯蔵システムと競合しそうなものに取り組んでいるForm Energyという会社がある。この会社はTesla、破綻した巨大バッテリーテックデベロッパーのAquion、A123 Systems(リチウムイオンバッテリー革命の祖)などの企業で働いていたエネルギー貯蔵のスーパースターによって設立された。

Maltaのシステムは10時間以上にわたって100メガワットを放電できる。スワミナサン氏によると、これはリチウムイオンバッテリーと競合するような価格での1ギガワットアワーの生産に相当する。

同社は現在、初の商業規模プラントに取り組んでいて、2024年から2025年の委託を想定している。

一方、競合他社はかなり巨大な貯蔵プロジェクトからすでに電気を供給している。Energy Vaultによると、同社は供給網に約35メガワットアワーを放電できるスイスの全国公共送電網にデモンストレーションユニットをつなげた。

Promanのような企業はMaltaを好んでいる。というのも、同社の化学・天然ガスの顧客に提供できるからだ。

「長期で低コストのエネルギー貯蔵ソリューションに対する急激なグローバル需要があります。Maltaの拡張性と技術的に堅牢なソリューションを発展させていくことを同社を楽しみにしています」とPromanのCEOであるDavid Cassidy(デビッド・キャシディ)氏は声明で述べた。「投資とともに、Promanは商業規模のプラントにMaltaと取り組み始める際に補完的なデザイン、エンジニアリング、建設の専門性をMaltaに提供します」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Malta再生可能エネルギー資金調達電力網

画像クレジット:Jose A. Bernat Bacete/Moment / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nariko Mizoguchi

機械学習のモデルデータ精製サービスAquariumがシードで2.8億円調達

Aquariumは、Cruiseの元社員2人が、機械学習のモデルデータをもっと容易に精製し、モデルをより速くプロダクションに持ち込みたい、と願って創業した。同社は米国時間2月24日、SequoiaがリードしY Combinatorと多くのエンジェル投資家が参加したシードラウンドで260万ドル(約2億8000万円)を調達したことを発表した。エンジェルの中には、Cruiseの共同創業者であるKyle Vogt(カイル・フォークト)氏とDan Kan(ダン・カン)氏がいる。

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2人の創業者であるCEOのPeter Gao(ピーター・ガオ)氏とエンジニアリングのトップQuinn Johnson(クイン・ジョンソン)氏はCruise在籍時に、モデルのデータの弱い部分を見つけることが、プロダクション化を妨げる問題であることが多いと感じた。Aquariumはその問題を解決しようとする。

「Aquariumは機械学習のデータ管理システムであり、その訓練のベースとなるデータを改良してモデルの性能を上げます。モデルがプロダクションで使えるようにするためには、通常はそれが最も重要な部分です」とガオ氏は語る。

彼によると、現在はさまざまな業界で大量のさまざまなモデルが作られているが、データセットを段階的に改良して継続的に良質なデータを見つけることが難しいため、多くのチームが行き詰まっている。そこでAquariumの創業者たちは、データの精錬という問題にフォーカスしようと決めた。

ガオ氏は次のように説明する。「わかってきたのは、モデルの改良の多くと、それをプロダクションに持ち込むための仕事の多くが、意思決定に関わっていることです。どこで何を集めるのか。ラベルをつけるためには何が必要か。モデルの再訓練や、エラーを見つけるための分析、そして段階的な改良の反復のために必要なものは何か。これらの問題にはすべて、決定が関わってきます」。

その目的は、人間よりも優秀なモデルをプロダクションに投入することだ。顧客のSterblueが、その良い例だった。同社は風力タービンを検査するドローンサービスを提供している。同社の顧客は人力でタービンを検査し、損傷を見つけている。しかしドローンが撮影したデータの集まりがあれば、機械学習のモデルを訓練して問題を見つけられるだろう。同社はAquariumを利用してモデルを精製し、精度を13%上げた。費用は人力検査の半分になったとガオ氏はいう。

Aquariumのチーム( 画像クレジット:Aquarium)

Aquariumは現在、創業者を含めて社員は7名、内3名が女性だ。ガオ氏によると、ダイバーシティは最初の構想時にすでに存在した。彼は、機械学習のモデルの作成には偏りがつきものであることをよく知っている。だから、このようなツール作成ワークには、多様性に富んだチームを作ることが偏りを減らす方法の1つだ。

同社は2020年2月にローンチし、Y Combinatorの2020夏季に参加した。2020年はプロダクトの磨き上げに終始し、最近やっとベータを脱して一般公開にこぎつけた。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Aquarium機械学習資金調達

画像クレジット:AerialPerspective Images/Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Hiroshi Iwatani)

ユーザーテストプラットフォームのMazeがシリーズAで15.9億円調達

Maze(メイズ)が、Emergence Capitalの主導する1500万ドル(約15億9000万円)のシリーズA資金調達ラウンドを完了した。同社が提供するのは大規模なユーザーテスト環境だ。利用者はこれを使うことによって、デザインアップデートやテストプログラムを公開する前にフィードバックを収集することができる。

通常多くのユーザーがいる場合には、それをまずテストすることなく公開したくはない。企業の中には、一部のユーザーに対してA / Bテストを実施し、カスタムフォームや投票機能を使ってフィードバックを収集しているところもある。しかし、そのやり方にはある程度のコーディングがともなうし、ロードマップも複雑になる。また他の企業の中には、ただ一部の顧客と、多くの時間を費やしてやり取りを行っているところもある。

Mazeを使えばFigma(フィグマ)、InVision(インビジョン)、Adobe XD(アドビXD)、Marvel(マーベル)、Sketch(スケッチ)のプロジェクトをベースにした新機能をテストすることができる。お気に入りのアプリを使って何か新しいものをデザインした後、そのプロジェクトを使って新しいテストを開始できる。

テスト実施者はウェブブラウザ上で操作を行い、ユーザーにアプリ内で何かをしてもらったり、コンテキストを提供してテストの最後に簡単な質問をするといった設定を行える。設定が終わると、テスト用のリンクが手に入る。

それからテスト実施者はそのリンクを使って、何百人、何千人ものユーザーを対象にテストを行うことができる。そして成功率、ユーザーがどこで離脱したか、質問や投票への回答などについての詳細なレポートを得ることができる。また最新のMazeでは、デザインがなくてもコンセプトをテストできるようになった。

基本的に、Mazeはプロダクトデザイナーやプロダクトマネージャーに力を与えたいと願っている。そうした担当者たちは、その主張に実際の数字で裏づけが与えられることで、製品ロードマップに責任を持つことが可能になる。また、MazeはSaaS製品であるため、誰でもユーザーテストを共同で行うことができる。このことでデザイン主導の会社運営がやりやすくなる。

今回の資金調達ラウンドには、Emergence Capitalに加えて、Jay Simonsや既存の投資家であるAmplify Partners、Partech、Seedcampも参加した。同社はチームの規模を大きくしていく計画である。

過去12カ月間で、Mazeは毎月の経常収益を600%成長させた。現在では年間150万ドル(約1億6000万円)の経常収益を生み出し、4万社がMazeを利用している。100万人のテスターがMazeのテストを少なくとも1回は行っている。GE、Samsung(サムソン)、Vodafone(ボーダフォン)、Braze(ブレイズ)、FairMoney(フェアマネー)などが顧客として名前を連ねている。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Maze資金調達

画像クレジット:Maze

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(文:Romain Dillet、翻訳:sako)

現場状況を遠隔地と共有可能な「コネクテッドワーカーソリューション」のフェアリーデバイセズが10.2億円調達

現場状況を遠隔地と共有可能な「コネクテッドワーカーソリューション」のフェアリーデバイセズが10.2億円調達

現場作業の内容・状況をリアルタイムに遠隔地と共有可能できる「コネクテッドワーカーソリューション」を手がけるFairy Devices(フェアリーデバイセズ)は2月24日、シリーズBラウンドにおいて、総額約10億2000万円の資金調達を発表した。引受先および借入先は、商工組合中央金庫、DG Daiwa Ventures、みずほ銀行、りそな銀行、信金キャピタル、ダイキン工業、ユナイテッド、横浜キャピタル。

調達した資金により、コネクテッドワーカーソリューションによる現場DXを加速する。日本および海外におけるソリューション提供体制をより一層強化し、国内産業現場に蓄積されてきた匠の技のデジタル化を加速化することで、「熟練工AI」を早期に実現する方針としている。

コネクテッドワーカーソリューションは、製造・サービス・保守メンテナンス・建設など様々な現場において、「遠隔支援による熟練工不足の解消」「現場ノウハウのデジタル化」「AIによる現場支援」を実現する現場DXのためのソリューション。

首かけ型ウェアラブルデバイス「THINKLET」と、現場データのデジタル化を司るクラウドプラットフォーム「THINKLET PLATFORM」により構成しており、既存の現場作業を邪魔することなく作業内容・状況を遠隔地とリアルタイムに共有可能できる。また作業データを蓄積・学習・解析することで、熟練作業者の技能やノウハウをデジタル化し再活用可能という。

現場状況を遠隔地と共有可能な「コネクテッドワーカーソリューション」のフェアリーデバイセズが10.2億円調達

2007年4月設立のFairy Devicesは、「使う人の心を温かくする一助となる技術開発」を目指し、VUI(Voice User Interface)やVPA(Voice Personal Assistant)関連技術や音声認識/音声翻訳関連技術とクラウド基盤、それらの性能を活かすエッジデバイスの開発を通して、音声技術を中心とした機械学習技術の実業務現場への適用を推進。

さらに、現場の人から生まれる各種のデータ解析や、最先端の応用研究を実装した業務ソリューションを、デバイスからクウドまで一気通貫で提供することによって、様々な業界のDXを支援している。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:AI / 人工知能(用語)音声認識 / Voice Recognition(用語)資金調達(用語)Fairy Devices(企業)日本(国・地域)

MealMeが出前サービスの食事を比較検討できる検索エンジンで9500万円を調達

米国時間2月24日朝、食事専用の検索エンジンMealMe.ai(ミールミー・エーアイ)がプレシード投資ラウンドを90万ドル(約9500万円)でクローズしたと発表した。このラウンドはPalm Drive Capitalが主導し、Slow VenturesCP Venturesが参加している。

TechCrunchがMealMeを初めて知ったのは、2020年10月に行われたアクセラレーターTechstars Atlanta(テックスターズ・アトランタ)のデモデーでのことだ。TechCrunchでは、そのとき登壇した当時のコホートのうち気になったスタートアップをまとめて紹介している。

同社の製品では、利用者は食事やレストランを検索できる。すると、さまざまな食事の出前アプリから利用者が食べたいもの、配達して欲しいものの価格帯が示される。注目すべきは、MealMeが業者に関わらずアプリ内で決済ができる点だ。

このサービスは、DoorDash(ドアダッシュ)やUber Eats(ウーバーイーツ)といった食事配達サービスアプリの価格や配達時間の透明性を高める可能性がある。しかし、MealMeは最初から検索エンジンを作ろうとしていたわけではない。ここに至るまでには紆余曲折があった。

ソーシャルネットワークから検索エンジンへ

MealMeは、最初のアイデアの方向性だけは正しかった類のスタートアップだ。同社は、食事に特化したソーシャルネットワークとしてスタートしたのだと、共同創設者のMatthew Bouchner(マシュー・ボシュナー)氏はTechCrunchに話した。そのサービスは改良を重ねるうちに、食事の写真を投稿できるようになり、掲載されたものを注文できるようになっていった。

まだソーシャルネットワークとして運用されていたころに、MealMeはY CombinatorとTechstarsに参加を申し込んだが、どちらからも断られてしまった。

やがて同スタートアップは、利用者たちが食事の写真を投稿するのは、どの出前サービスを使えば望みの食事を配達してもらえるかを知りたいためだと知った。そこに気づいた彼らは、レストランを検索でき、出前業者や価格の比較検討ができる料理専用の検索エンジンの開発に精力を傾けた。その改良によって、同社はTechstars Atlantaへの参加が叶い、TechCrunchが記事にしたデモデーにこぎつけたというわけだ。

Techstarsの参加中、同社はそのモデルを、DoorDashなどへの単なるリンクから、自社アプリの中で決済までできるかたちに変更した。これがMealMe内部の流通取引総額(GMV)を引き上げたとボシュナー氏はインタビューの中で話していた。その機能は2020年9月に運用開始となった。

そこから同社は、前週比でおよそ20パーセントという急成長を始めた。TechCrunchがMealMeインタビューを行った時点で、同社はGMVランレートが50万ドル(約5300万円)に達し、100万ドル(約1億600万円)に拡大しつつあると話していた。そこから現在までの数週間で、GMVランレートは100万ドルの壁を突破した。

MealMeは、そのビジネスモデルを積極的に語ろうとしないが、利用者が注文の際に支払う金額と、出前アプリに渡す総収益との差からマージンを生み出しているようだ。

TechCrunchは、MealMeのプラットフォームとしてのリスクが気になった。いくつものサードパーティーの出前サービスの価格を比較しながら注文できる仕組みを、それらのサービスを提供する業者を怒らせずに、うまく運営できるのだろうか。インタビューを行った時点では、サービス提供業者からの反発はないとボシュナー氏は話していた。同社の目標は、早く成長して、世界のDoorDashにとって有用な収入源となり、その後に正式な契約を交わすことだとボシュナー氏は話していた。

「私たちは強力な収益発生器として事業を続け、毎週数千件の注文を出前サービスにもたらします」とボシュナー氏は声明文の中で述べている。MealMeは、投資家たちは、Uber EatsなどがMealMeでアプリを使えなくするという懸念よりも、成長の早さのほうに大きな期待をかけていると確信しているようだ。

私がMealMeに興味を惹かれた最初の理由は、もし私が20代位前半だったら、どんだけ使っていただろうかと感じたことだ。おそらく同社は、若いころの私のような利用者を大勢呼び寄せ、大手の出前サービス企業に対して、掲載を断られるどころか、手数料を要求できるぐらいにまで大きく成長することだろう。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:MealMe資金調達検索エンジンフードデリバリー

画像クレジット:David Paul Morris/Bloomberg / Getty Images

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(文:Alex Wilhelm、翻訳:金井哲夫)

美容師向け動画教育サービス「HAIRCAMP」がプロ向け美容商材EC大手ビューティガレージから資金調達

美容師向け動画教育サービス「HAIRCAMP」がプロ向け美容商材EC大手ビューティガレージから資金調達

美容師向けに動画教育サービス・オンラインサロン「HAIRCAMP」を提供するHAIRCAMPは2月24日、資金調達を発表した。調達額は非公開。引受先は、プロ向け美容商材EC大手ビューティガレージの100%子会社BGベンチャーズが運営するCVC。

資金調達および資本業務提携を通じて、ビューティガレージが持つ理美容・ビューティ関連事業やIT事業などとシナジーを生み出し、美容師たちがより楽しくやりがいを感じながら働ける環境を目指す。

美容師向け動画教育サービス「HAIRCAMP」がプロ向け美容商材EC大手ビューティガレージから資金調達

2013年6月設立のHAIRCAMPは、「人生を加速させる 学びとの出会い」をビジョンに掲げ、「稼げる美容師が増えていくことで美容業界が活性化し、それが最終的に一般消費者の皆さまや、美容業界に関わる人たちを豊かにしていくことに繋がる。」という考えのもと、美容業界×ITの可能性を模索。2017年に美容師向けのオンライン学習サービス「HAIRCAMP」を公開した。

セミナーをオンライン化することで学習に対する時間・場所に対する制限、そして1セミナーあたりの参加者数という会場キャパシティの制限がなくなったことで、美容師が講師を務めるメリットが高まったという。

受講者側にもメリットがあり、ライブ配信では、まるで1対1で目の前に講師がいるような感覚を味わいながら学べるという。また巻き戻し再生も行えるため、気になるポイントを何回でも学習できる。

またライブ配信を中心とした参加学習コンテンツに加え、交流型学習コンテンツのオンラインサロンもスタートし、情報のインプットだけではなくアウトプットする機会を設けたそうだ。現在では、美容師の10人に1人が利用しているサービスに成長したとしている。

さらに、利用ユーザーの増加に伴い、美容商材メーカーなどとのコラボレーション配信も増え始め、美容の最先端技術や最新商品の知識を発信する機会も増しているという。

HAIRCAMPは、ビューティガレージの資本参加により同社自身の成長スピードを加速させ、美容師の学ぶ機会に加えて、技術の定着やキャリアアップまでサポートし、関わる人たちの笑顔が増えていくよう邁進していくとしている。

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カテゴリー:EdTech
タグ:HAIRCAMP(企業・サービス)資金調達(用語)美容(用語)日本(国・地域)

欧州全域への拡大を目指す英国発の花束ギフトサービスBloom & Wildが約106億円を調達

Bloom & Wild(ブルーム・アンド・ワイルド)は、花の注文と配達という非常に伝統的なビジネスで新しいオンラインのアプローチを採用するロンドン発のスタートアップだ。2020年好業績を記録した同社が米国時間1月18日、さらなるチャンスに大きく賭けるための大型資金調達ラウンドを発表した。

Bloom & Wildは今回、シリーズDで7500万ポンド(約106億円)を調達した。欧州全域へと拡大を続けるために使う計画だ(現在、英国に加えてアイルランド、フランス、ドイツ、オーストリアで営業している)。また、テクノロジーを活用したビジネスの構築も継続しており、新しい人材を雇用して、さらに多くのアイデアや、スーパーマーケット大手のSainsbury’s(センズベリーズ)と組んだ実店舗の開拓などの新たなパートナーシップを構想している。

Bloom & Wildの共同創業者兼CEOであるAron Gelbard(アロン・ゲルバード)氏はメールでのインタビューで次のように述べている。「これまでの9カ月ほど、多くの人にとってどれほど厳しい状況だったかを考えると、当社は事業を続けてくることができて非常に幸運だったと思っています。友達や家族と会えないでいるときに、お客様が大切な人とつながっていられるようお手伝いができて、本当にうれしく、また光栄です。確かに、当社が営業している各国で全国規模の規制が実施された時期に、売り上げは大きく伸びました。しかしそれだけでなく、規制が比較的緩和された時期になっても堅調な売り上げが続いています。新しいお客様を確保し、初めて当社のサービスを通じて花を受け取った人の多くもお客様に変えてきました」。

今回の資金調達はGeneral Catalyst(ゼネラル・カタリスト)がリードしており、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、Novator(ノベーター)、Latitude Ventures(ラチチュード・ベンチャーズ)、D4 Ventures(D4ベンチャーズ、Hanzade Doganが設立)や、Burda Principal Investments(ブルダ・プリンシパル・インベストメンツ)など、以前からの投資会社も参加している。

Bloom & Wildは評価額を公表していないが、Sky News(スカイ・ニュース)で報じられていた噂によると、情報筋の話では評価額は約5億ドル(約518億円)とのことだ。

いずれにしても、このスタートアップの資金調達ラウンドは、非常に好調な成長を受けて実施されたものだ。Bloom & Wildの収益は2020年に160パーセント増加し、その期間に取り扱った花の配達件数は約400万件にのぼった。これは、創業から2019年までに取り扱った配達の累計件数よりも多いという。これが力となって同社は黒字に転じ、2020年には初めて利益を計上した。

PitchBook(ピッチブック)によると、2014年創業のBloom & Wildが今回のラウンド前までに調達した資金は合計3500万ドル(約36億2000万円)程度だった。ピッチブックは、2018年に行われた前回のラウンドの直後、Bloom & Wildの資金調達前の企業価値をちょうど8800万ドル(約91億1000万円)と推定している。そのことを考えると、今回の5億ドル(約518億円)は大躍進である。

とはいえ「こんなときに、どうして花のことなんて考えられるのか。今は世界的なパンデミックの真っ最中じゃないか。何てことだ」と考える人がいるかもしれない。

確かにそのどおりだ。しかし、他の人のためであれ、ただ自分のためであれ、花やそれに類する贈り物には特別なポジションがあるように思う。それは、困難なときにこそ感謝される。

我々が実際に目にしてきたように、人々の関心は予備のトイレットペーパーやフェイスマスク、その他の日用品の購入から、絶対に必要というわけではない多くの嗜好品(手の込んだ食べ物や飲み物から、洗練された家具に至るまで)のオンラインショッピングへとすぐに移っていった。自宅で非常に長い時間を過ごしているからだ。しかし、花はご褒美や贈り物の殿堂で独自の位置を占めていると筆者は思う。

人と人とが互いに直に触れ合う機会をはなはだしく奪い、健康を脅かすパンデミックの最中にあって、人から花をもらうことは新たな、時にはより深い意味を持ち得る。花の色、匂い、サラサラと擦れ合う音といった、物理的な存在感は、我々が恋しく感じている人間どうしのふれあいの代わりになり得るのだ。

ゲルバード氏は次のように語る。「この困難な時期に人々がつながりを保てるよう、自分たちの役割を果たすことができて光栄です。そして、私は成長しているチームを誇りに思います。業務を拡大しつつも、1つ1つの注文に、当社ならではの思いと気遣いをこめて対応しているからです。今回General CatalystとIndexから得た支援により、新たな力を得て2021年のスタートを切った当社は、世界をリードする、また最も愛されるフラワーカンパニーになるというビジョンを今後も追求していきます」。

誰かのために、あるいは自分のために、花を注文したことがあるなら、そうするための選択肢があふれるほど存在していることを実感しているだろう。British Florist Association(ブリティッシュ・フローリスト・アソシエーション)によれば、英国だけでも約7500件のフローリストがあるが、これには、幾千ものオンライン専門の小売業者(Bloom & Wildのような)や、それらの業者をつないでInterflora(インターフローラ)やFTDのような広範な配達網にする多くのサービスは含まれていない。

FTDはこの分野でサービスを整備する役割を果たしてきた。FTDは2018年に、BloomThat(ブルームザット)という米国のフラワーデリバリースタートアップを買収した(ブルームザットは自らを花のUber(ウーバー)になぞらえている)。

花のように実際に触れられる物は対面販売で買うことを好む人もまだいるが、ここ数年で多くの人はオンラインに移行していった。誰かに届けるために花を注文する人は特にそうである。そのため、いくつかの点で、オンライン専門のフラワービジネスを始めて拡大することはずっと容易になっている。

Bloom & Wildは、生花を花束にして販売するアプローチを取っている。また、外箱を、英国の典型的な郵便物の投入口(例えば玄関のドアの投入口など)に入るデザインにすることにより、小さな花束であれば配達が非常に容易になる選択肢を用意している。

また、Bloom & Wildが売る花束は、インスタ映えするデザインで、Instagram(約25万の花の写真が投稿されている)で花束を探す人を対象に考案されており、我々が直面している困難な状況に訴求する説明が添えられている(例えば、上の写真の花束は「The Ezra(エズラ)」と名づけられており、その説明にはこうある。「鮮やかなオレンジ色と柔らかい薄紫色のこの組み合わせを見ると、太陽の下で過ごした休日と、その休日を一緒に楽しんだ人のことを思い出しますね。旅仲間が恋しいですか?この花束を贈って、その人の1日を一瞬で明るくしてあげましょう」)。

オフィス用の花を注文することも可能だ(もっとも、オンラインで注文する他のD2Cプロダクトほど頻繁に注文が入ることはないだろう)。また、サブスクサービスも利用できる。Bloom & Wildは顧客とその好みを認識すると、サービス対象のどの花をどのように贈るかを顧客に知らせる。同社はそのうち、花以外の商品も扱うようになった。今シーズンはクリスマスツリーを販売した。また、花束と一緒に贈れるギフトもいくつか用意しており、徐々に実店舗も展開し始めている。

しかし何よりも、Bloom & Wildに対する関心が急上昇している理由は、サービスの効率やターゲティングだけではなく、「顧客の好みにぴったり合う花を届ける」という的確なプロダクトを提供していることにある。

ゲルバード氏は、Bloom & Wildの「サプライチェーンは生花業界で最もダイレクトで、花は生産者から直接調達しています。そのため、お客様は優れた価値を手にし、花を長い間楽しめます。つぼみの状態で届き、通常は10日かそれ以上花が咲いています」と説明する。
同氏はまた、アプリやウェブサイトですばやく簡単に注文できるようにする「カスタムメイドのテクノロジーとデータサイエンスプラットフォーム」を構築したとも述べている。最後に、「広告連動型検索に依存するコモディティ化された従来型の業界で、当社はプロダクトとブランドの展開に関する革新的なアプローチを採用しました」と述べ、その一例として「letterbox flower(郵便受けに入る花束)」の発明に言及した。

General CatalystのAdam Valkin(アダム・バルキン)代表取締役は次のように述べる。「Bloom & Wildは、花を贈る伝統的な行動に予測分析とテクノロジーを取り入れて、より新鮮で運送期間の短い花束を大切な人に届けられるようにしました。アロンとそのチームに関して最も印象的なのは、創業以来、2つの取り組みを同時に進めてきたことです。彼らは、フラワーデリバリーのサプライチェーンが抱える複雑な課題に業界トップの効率性で対処すると同時に、ぜひまた利用したいと消費者に感じさせる顧客体験を、心を動かす方法で築いています」。

さらに、Index Venturesのパートナー、Martin Mignot(マーチン・ミニョ)氏はこう付け加えた。「Bloom & Wildのチームは、フラワーデリバリーとギフトのあらゆる側面を再発明しました。あらゆる段階で現状に満足せずに挑戦しています。アロンとそのチームによるたゆまぬ努力により、同社は消費者の喜ぶ体験を作り出し、欧州で最も急速に成長するフラワー企業になりました。我々はパートナーとして、同社が世界的な企業に成長することを楽しみにしています」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Bloom & Wild資金調達イギリス

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:TechCrunch Japan)

シンガポールの植物由来肉スタートアップNext Genがシード投資10.6億円を調達

シンガポールは、代替肉の開発を支援する政府の取り組みなどもあり、急速にフードテックスタートアップの拠点となりつつある。そこに参入した新興企業の中にNext Gen(ネクスト・ジェン)がある。同社は2021年3月、シンガポール国内のレストランに向けて、植物由来「チキン」のブランドTiNDLE(ティンドル)を立ち上げる。また同社は米国時間2月24日、1000万ドル(約10億6000万円)の資金調達を発表した。このシード投資ラウンドに参加したのはTemasek、K3 Ventures、EDB New Ventures(シンガポール経済開発庁の投資部門)、NX-Food、FEBE Ventures、Blue Horizonとなっている。

Next Genは、PitchBookの調査データをもとに、これは植物由来食品技術の企業が調達したシードラウンドの中で最大の投資額だと主張している。同社が外部から投資を受けたのはこれが初めてながら、当初の目標額700万ドル(約7億4200万円)を上回った。Next Genは2020年10月、Timo Recker(ティモ・レッカー)氏とAndre Menezes(アンドレ・メネゼス)氏によって、資本金220万ドル(約2億3300万円)で創設された。

Next Genの最初の製品は、TiNDLE Thy(ティンドル・サイ)という鶏もも肉の代替品だ。材料は水、大豆、麦、オート麦繊維、ココナッツ油、結着剤のメチルセルロースなどとなっているが、チキンの風味は、ひまわり油などの植物油と天然の香味料で作られ、鶏肉と同じように調理できる。

Next Genの最高執行責任者メネゼス氏がTechCrunchに話したところによると、同社の目標は、Impossible(インポッシブル)やBeyond(ビヨンド)が植物由来ハンバーガーのリーダーであるように、植物由来チキンの世界的なリーダーになることだそうだ。

「消費者も料理人も、鶏肉の食感、味、香りを求めます。その多くは鶏肉の脂によるものです。私たちが胸肉ではなく、もも肉でスタートしたのはそのためです」とメネゼス氏。「私たちは、Lipi(リピ)というブレンドで鶏の脂を作りました。香りと、焼いたときに茶色くなるところを再現しています」。

レッカー氏もメネゼス氏も、食品業界での長い経験を持つ。レッカー氏はドイツで植物由来の代替肉を作る企業LileMeat(ライクミート)を創設している。2020年この会社はLIVEKINDLY Collective(ライブカインドリー・コレクティブ)に買収された。メネゼス氏の食品産業でのキャリアはブラジルで始まった。世界最大級の鶏肉輸出国だ。彼は革新的で持続可能な製品を中心的に輸入と流通を行うシンガポールの会社Country Foods(カントリー・フーズ)でゼネラルマネージャーを務めた後、植物由来代替肉の会社で働き始めた。

「かなりの長期間を食肉産業で過ごしてきた私は、長い目で見たらそこは持続可能な業界ではないと悟ったのです」とメネゼス氏はいう。

この数年間、同じように感じる消費者が増えきたことを受けて、彼は動物由来食品に代わるものを探し始めた。UBSは、人々はビーガンや菜食主義者でなくても、より健康的で人道的なタンパク源を好むようになり、2025年には世界の植物性タンパク質市場の複合年間成長率は30パーセント以上となり、500億ドル(約5兆3000億円)規模になると予測している

特にミレニアル世代とZ世代の消費者は、畜産業による環境への影響の意識の高まりから、肉、卵、乳製品の消費を減らしたいと考えるようになっている。「彼らは食品ごとの持続可能性と、コレステロールや栄養価といった健康面をよくわかっています」。

ナトリウムと飽和脂肪が少ないTiNDLE Thyは、シンガポール健康促進局のHealthier Choice Symbol(健康的な選択マーク)を授与されている。Next Genが今回調達した資金は、TiNDLE Thyのローンチに役立てられる。最初は、シンガポールの人気レストランThree Buns Quayside、the Prive Group、28 HongKong Street、Bayswater Kitchen、The Goodburgerに製品が提供される。

1〜2年後には、Next GenはシリーズA投資ラウンドを立ち上げ、ブランドや製品を増やし、ターゲットとする市場も、米国(現在流通ネットワーク構築のための成長担当ディレクターを募集中)、中国、ブラジル、ヨーロッパへと拡大していく予定だ。レストランと共同で事業を展開した後は、Next Genは家庭向けにも製品を販売する計画を立てている。

「最初に料理人に提供する理由は、彼らは大変に厳しい評価を下すからです。もし料理人がこの製品に満足できたなら、消費者も喜んでくれると確信できます」とメネゼス氏は話していた。

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カテゴリー:フードテック
タグ:Next Gen代替肉資金調達シンガポール

画像クレジット:TiNDLE/Next Gen

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(文:Catherine Shu、翻訳:金井哲夫)

「NP後払い」のネットプロテクションズがJCBと資本提携、約60億円の調達とともに事業連携を強化

「NP後払い」のネットプロテクションズがJCBと資本提携、約60億円の調達とともに事業連携を強化

ネットプロテクションズホールディングスは2月25日、ジェーシービー(JCB)を引受先とする約60億円の第三者割当増資について合意したと発表した。今回の資金調達により、JCBの同社に対する出資比率は10.24%となった。また国内外において拡大するBNPL(Buy Now, Pay Later。信用販売)市場における事業連携を開始する。

ネットプロテクションズホールディングスは、子会社ネットプロテクションズを通じて、BtoC EC向け後払い決済を軸に2002年よりサービスを展開。同グループの主力サービス「NP後払い」では、2019年度の年間流通総額が2900億円、年間ユニークユーザーは1450万人以上、サービス開始以来の累計利用件数は2億件に達するなど、国内のECにおける決済プラットフォームとしての成長を実現した。

また、BtoB向け後払い決済「NP掛け払い」においては現在加盟企業数は約2300社、年間流通総額は590億円、累計取引件数780万件超となった。企業の掛け売り業務すべてを代行する決済インフラとして成長しているとした。

同グループでは、国内外において拡大するBNPL市場のプラットフォームおよびBtoB決済インフラとしてのさらなる成長実現、事業推進の強化を図るべく、今回の資本提携を行ったという。

日本発唯一の国際カードブランドを運営するJCBの豊富な加盟店ネットワークおよび多様な決済ソリューションとそれを支える高度なサービス運営オペレーションと連携することで、「NP後払い」「NP掛け払い」に加えて、BtoC向けカードレス決済「atone」(アトネ)においてさらなるサービス拡大と品質向上の実現を目指す。

同グループは「つぎのアタリマエをつくる」をミッションに、テクノロジーを活用して新しい信用を創造する「Credit Tech」(クレジットテック)のパイオニア企業として、あらゆる商取引を円滑にしていくことを目指す。JCBとの資本提携により、後払い決済プラットフォームとしてのさらなる強化を行い、ミッション実現のための成長するとしている。

1961年設立のジェーシービーは、日本で唯一の国際カードブランドを運営する企業としてJCBカードを利用できる加盟店ネットワークを展開。国内外で1億4000万人以上がJCBカードを利用している(2020年9月末現在)。

2000年1月設立のネットプロテクションズは、テクノロジーを活用して新しい信用を創造するCredit Tech企業として、あらゆる商取引を円滑にしていくことを目指しているという。

2002年より、日本で初めて未回収リスク保証型の後払い決済サービス「NP後払い」の提供を開始し、前年比約116%のスピードで成長を続け、現在では累計利用件数が2億件を突破した。

2014年より、同サービスにより培った独自の与信ノウハウとオペレーション力を企業間取引向けに展開した「NP掛け払い」の本格販売を開始し、前年比約137%のスピードで成長を続けているという。

2017年にはatoneを提供開始。2018年には、台湾においてもスマホ後払い決済サービス「AFTEE」(アフティー)をリリースした。

これらの事業を通じて、顧客の購買歴・支払い歴をあわせた取得難度の高い信用ビッグデータを保有しており、今後は様々な領域でのデータ活用・展開を模索していくとしている。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:Credit Tech(用語)JCB / ジェーシービー(企業・サービス)資金調達(用語)ネットプロテクションズ(企業)BNPL / 信用販売(用語)FinTech日本(国・地域)

SaaSアカウントや請求情報を一元管理可能な「NiceCloud」を運営するLBVが約1億円を調達

SaaSアカウントや請求情報を一元管理可能な「NiceCloud」を運営するLBVが約1億円を調達

企業のSaaSアカウントや請求情報を一元管理できるSaaS管理プラットフォーム「NiceCloud」を運営するLBVは2月25日、Coral Capital、ANOBAKA、個人投資家および金融機関から、総額約1億円の資金調達を発表した。

調達した資金により、開発体制を強化すると共にSaaS提供事業者との提携を進める。NiceCloudは、2021年3月にクローズドα版公開、また機能を強化した上で2021年夏にβ版をリリースすることを予定している。β版リリースに先駆け、上場企業やスタートアップを含む数十社が事前登録を行っているという。

近年DXによるデジタル化が進む中で、企業によるSaaS(Software as a Service)の利用、またSaaS提供事業者が増え続けており、SaaS国内市場規模は2024年には1兆円を超えるとも予測されている。

そのような中、1社あたりのSaaSの利用数が5~10を超える企業では、どの従業員がどのSaaSを利用しているかわからない、アカウントの発行や削除が面倒といった課題が発生してるそうだ。

LBVは、これらSaaSアカウント管理の課題を解決するためにNiceCloudを開発。NiceCloudは、企業が導入する各SaaSアカウントを一元管理し、どの従業員がどのSaaSを利用しているか、どれくらいの料金を支払っているかをダッシュボード上で把握でき、アカウントの発行・削除などの面倒な業務を自動化するとしている。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:LBV(企業)SaaS(用語)資金調達(用語)日本(国・地域)

独自の金属3Dプリント技術で鋳型や金型の作成を支援するMantleがステルスモードを脱し約13.8億円調達

付加製造技術は、数十年前からよく耳にする専門用語となっている。しかし、一部の顕著な例外を除いて、3Dプリントは主にラピッドプロトタイピングや数量限定の個人的な制作物に特化していた。Mantle(マントル)のような金属3Dプリントを手がける企業は、この技術を本当の意味での大量生産へと拡大していく興味深い使用例を示している。

ベイエリアを拠点とするこのスタートアップ企業は、3Dプリント技術を従来の製造方法の代替としてではなく、その強化と改善に用いることに重点を置いている。具体的にいうと、製造業者のためのより優れた鋳型や金型の作成を支援することにその技術を集中しているのだ。

もちろん、金属3Dプリント技術の分野で同社と競合する企業は数多く存在する。中でも注目すべき企業としては、Desktop Metal(デスクトップ・メタル)、ExOne(エックスワン)、Markforged(マークフォージド)などが挙げられるが、Mantleは製造工程の一部を省くことができる機械で差別化を図っている。米国時間2月24日にステルスモードを脱したMantleは、Foundation Capital(ファウンデーション・キャピタル)、Hypertherm Ventures(ハイパーサーム・ベンチャーズ)、Future Shape(フューチャー・シェイプ)、11.2 capital(11.2キャピタル)、Plug and Play Ventures(プラグ・アンド・プレイ・ベンチャーズ)、Corazon Capital(コラゾン・キャピタル)から1300万ドル(約13億8000万円)の資金提供を受けたことを明らかにした。

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「30年近く3Dプリントに関わってきた中で、この会社の主な違いは生産志向のユースケースに焦点を当てていることです」と、Foundation CapitalのジェネラルパートナーであるSteve Vassallo(スティーヴ・ヴァサロ)氏はTechCrunchに語った。「3Dプリントの多くは、できるだけ早くプロトタイプを作るためのものです。実際に生産の環境で使えるもの、つまり使用できる本物の部品を作ることは、これまでなかったことです」。

Mantleの機械(同社によれば、およそ「スタンディングデスク2台分」の大きさ)は、部品の仕上げがプロセスに組み込まれている。

「当社では、炉に入る前に形状の精緻化を行う初の焼結ベースのハイブリッド技術を使用しています」と、Ted Sorom(テッド・ソロム)最高経営責任者はTechCrunchに語った。「非常に高密度のボディに蓄積するだけでなく、高速切削工具で加工できるように考案された独自の材料を使っています。これによって、今日の誰もが得ることのできる物とはまったく異なるレベルの精緻な表面に仕上げることが可能です」。

同社は現在のところ、L’Oréal(ロレアル)を最初のパートナーとして発表している。この化粧品大手は、Mantleのプリンターを使って製品やパッケージの精密な金型を作成する予定だ。

Future ShapeのTony Fadell(トニー・ファデル)氏は、TechCrunchに寄せたコメントの中で次のように述べている。「Mantleの技術を使えば、Apple(アップル)製品並みの品質の機械部品を、数カ月ではなく数日で作ることができ、コストを桁違いに下げられる超強大な力が得られます。このスピードと低コストは、部品を完璧にするために繰り返し製作することを可能にし、さらにより早く発売することも可能になります」。

カテゴリー:ハードウェア
タグ:Mantle3Dプリント資金調達

画像クレジット:Mantle

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(文:Brian Heater、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

カーボンオフセットAPIのPatchがa16zのリードで4.8億円調達したことを正式発表

カーボンオフセットAPIを開発するPatch(パッチ)が450万ドル(約4億8000万円)の資金を負債調達した。同社は企業が自社の炭素排出量を計算し、排出量に見合ったオフセットプロジェクトを見つけて資金提供するのを支援するサービスを販売している。

TechCrunchの既報どおり、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ、a16z)がラウンドをリードし、既存出資者のVersionOne VenturesMapleVCおよびPale Blue Dot Venturesも参加した。

関連記事:a16zによる次の気候テック投資がカーボンオフセットAPIのPatchになる可能性

PatchのAPIは、社内と消費者向けサービスの両方で使用できる。企業は同社のコードを社内向けサイトのユーザー体験に組み込むことで、社員の出張フライトなどを追跡し、出張による炭素排出を相殺するカーボンクレジットの購入を推奨、管理することができる。

このソフトウェアでは、大気中の二酸化炭素除去を支援するプロジェクトのうち、どこち出資するかを選ぶことができる。出資対象のプロジェクトは、実証済みの森林再生・保存プロジェクトから、直接空気補足・隔離プロジェクトのような早期段階の高度技術まで多岐にわたる。

Patchの共同ファウンダーであるBrennan Spellacy(ブレナン・スペラシー)氏とAaron Grunfeld(アーロン・グランフェルド)氏の2人は、アパート賃貸サービスSonderの元社員で、Patchのカーボンオフセット事業は同社のサービスを利用する企業の脱炭素化の代替手段ではないことをインタビューの中で強調した。むしろ彼らのサービスは、企業が事業運営における化石燃料依存からの脱皮に必要なその他の作業を補完するものだと考えている。

Patchの共同ファウンダー:ブレナン・スペラシー氏とアーロン・グランフェルド氏(画像クレジット:Patch)

Patchは現在11社の二酸化炭素除去プロバイダーと提携しており、第1四半期末までにさらに10社を加える計画だと同社は述べている。例えばプロバイダーの1つであるCarbonCureは、二酸化炭素をコンクリートに注入、固定することで、建造物が存続する限り二酸化炭素を建材の中に埋め込む。

「二酸化炭素除去クレジットは、CarbonCureのようなテクノロジーの普及を劇的に加速する可能性があり、気候変動対策の目標達成にとって極めて重要です。質の高い恒久的なクレジットの需要は急速に高まっており、Patchのリストに載ることで、幅広い顧客を呼ぶことができます」とCarbonCure TechnologiesのJennifer Wagner(ジェニファー・ワグナー)社長が声明で語った。

関連記事:財務の収支報告に加えて未来の企業は炭素収支をと訴えるPersefoniが4億円相当を調達

Patchのサービスを利用している企業はすでに15社ほどある、とTechCrunchは報じている。利用者にはTripActionsの他、未公開株式投資会社のEQTのようにPatchのAPIの利用を自社だけでなく、投資先企業にも拡大する予定の会社もある、とスペラシー氏は語った。

グランフェルド氏は、調達した資金は社員増と新商品開発に使うつもりだと述べた。現在社員は6名で、年末までに24名追加する予定だ。

会社の拡大に合わせて、Patchは炭素排出監視・検証サービスを提供するスタートアップを、同社のAPIを統合して販売するチャンネルにすることを検討している。CarbonChainPersefoni、 あるいはY Combinator卒業生のSINAI Technologiesといった会社のことだ。

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「ますます多くの企業が、地球温暖化防ぐための排出量削減の取組みでリーダーシップをとっています」とAndreessen HorowitzのマネージングパートナーであるJeff Jordan(ジェフ・ジョーダン)氏はいう。「Patchは、企業が中核事業プロセスに炭素除去を組み込むことをより簡単なものにし、認証済みの炭素除去業社を集め、実装が容易なAPIを通じて企業に簡単に利用できるソリューションを提供しています」。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:PatchAndreessen Horowitzカーボンオフセット資金調達

画像クレジット:Christopher Furlong / Getty Images

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(文:Jonathan Shieber、翻訳:Nob Takahashi / facebook