地産食料品宅配のGood Eggsが約106億ドルの資金を調達、南カリフォルニアでの開業計画も発表

食料品宅配スタートアップのGood Eggs(グッドエッグズ)が、新たに1億ドル(約106億ドル)の資金調達を行い、2021年夏か秋に南カリフォルニアでの事業開始を計画していると発表した。

Good Eggsのことをよく知る読者なら、この話の一部はすでに耳にしたことがあるかもしれない。このスタートアップは2018年、前回の資金調達ラウンドで5000万ドル(約52億8000万円)を調達した際、Bentley Hall(ベントレー・ホール)CEOが地理的拡大の計画についても言及していたからだ。

だが、Good Eggsはサンフランシスコのベイエリアに集中しながらも、成長の機会を十分に見出してきたように思われる。同社によると、過去1年間で収益は9桁(100億円以上)に伸び、従業員数は400人を超え、顧客ベースはほぼ倍増したという。

ホール氏はまた、2020年3月に自宅待避命令が発動する数日前、同社がオークランドにより大きな新しい倉庫をオープンしたことにも言及している。チームは新しい倉庫を運営し、食料品配達の需要の増加に対応しながら、その過程で労働者の安全を確保するのに多忙を極めた。

画像クレジット:Good Eggs

食料品の宅配市場はますます競争が激しくなっているが、Good Eggsは商品の品質と幅広さで際立っているとホール氏は主張する。同社の商品の70%は地産食材であり、大抵は収穫後48時間以内に配達される。

「食料品、ミールキット、料理やお酒を提供する業者はたくさんあります。私たちは特定の基準に基づき調達したそのすべてをお届けしています」と、ホール氏は語る。その結果、Good Eggsはその消費者の多くにとって、家庭における食品購入の65%から85%を占める「プライマリーソース」となっている。

2015年にロサンゼルス、ニューヨーク、ニューオーリンズでの事業を停止し、その後すぐにホール氏がCEOに就任してから、同社にとって好転の兆しが現れていることも注目に値するだろう。ホール氏は、新しい市場への進出を急いでいるわけではないようだ。

「私は(南カリフォルニアを)1つの大きな地域としてではなく、いくつかの小地域の集まりとして考えています」と、ホール氏はいう。「LA地域、サンディエゴ北部、オレンジ郡などがあり、これらの地域を合計すると、ベイエリアの2~3つ分の規模になります。これは当社にとって、アドレス可能な市場が大幅に拡大することになります」。

画像クレジット:Good Eggs

今回の新たな資金調達は、Glade Brook Capital Partners(グレイド・ブルーク・キャピタル・パートナーズ)が主導しGV、Tao Invest(タオ・インベスト)、Finistere Ventures(フィニスター・ベンチャーズ)、Rich’s(リッチズ)のほか、以前からの投資家であるBenchmark Partners(ベンチマーク・パートナーズ)、Index Ventures(インデックス・ベンチャーズ)、S2G、DNS Capital(DNSキャピタル)、Obvious Ventures(オブヴィアス・ベンチャーズ)も参加。Glade BrookのJ.P. Van Arsdale(J.P.ヴァン・アルスデール)氏は同社の取締役会に加わっている。

「食料品市場では根本的な変化が進行しており、電子商取引やより高品質な商品とサービスへのシフトが加速しています」と、ヴァン・アルスデール氏は声明の中で述べている。「Good Eggsは、強力なユニットエコノミクスで急速な成長を遂げており、カテゴリーを定義するリーダーとなるための絶好の位置にいます。今後の成長と拡大に向けて、彼らのチームとパートナーを組めることに興奮しています」。

今回調達した資金によって、Good Eggsは地理的な拡大のみならず、新商品の追加を続け、eコマース体験を向上させる方法を見つけることができるようになると、ホール氏は述べている。

Good Eggsは今回の資金調達に加えて、Vineet Mehra(ヴィニート・メーラ)氏を最高成長顧客体験責任者として採用したことも発表した。メーラ氏は、Walgreens Boots Alliance(ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス)で最高マーケティング責任者兼最高顧客責任者だった人物で、それ以前にはAncestry(アンセストリー)でエグゼクティブバイスプレジデント兼グローバル最高マーケティング&収益責任者を務めていた。

カテゴリー:フードテック
タグ:Good Eggs資金調達食材宅配

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

飲食店のレシピを再現して仕込み料理などの外注ができる「ロカルメオーダー」運営が2億円調達

フード産業向けに食品のセントラルキッチン機能などを提供するスパイスコードは2月8日、STRIVECoral Capital食の未来ファンド、ほか未公開の個人投資家を引受先として2億円を調達したと発表した。これまでの累計調達金額は2億7500万円。

新型コロナウイルスによる影響で、飲食店は打撃を受けている。売上の減少によりコスト削減の圧力が高まり、イートイン店舗の省略化やデリバリー対応に頭を悩ませる店舗も多い。そんななか、スパイスコードが提供する「ロカルメオーダー」は、このフード産業のDXを推進することでサプライチェーンの最適化を進め、飲食店が抱える問題を解決しようとしている。

同サービスは、飲食店のオリジナルメニューの仕込みや加工をネットで外注できるというサービスだ。飲食店は、仕込み調理やEコマース商品の製造などを外注することで、本来プロの料理人が最も注力すべき「提供前調理(客に提供する前の仕上げの調理)」など、クリエイティビティの高いタスクに集中することができる。こうすることで、慢性的な人手不足にも対応できるほか、飲食店で働く人々の労働時間の改善にもつながる。

使い方もとても簡単で、飲食店はラインを使ってロカルメオーダーの申し込みができ、後日送られてくるキットにレシピと試食用のサンプルを送るだけだ。あとは、チームにプロのシェフも抱えるスパイスコードがそのレシピの味を忠実に再現し、工場生産用の手順書に落としこむ。そして、スパイスコードがオンラインでネットワーク化する食品工場と協力して料理を作り出す。僕のような料理初心者からすると、料理の世界は一種のアートのようで本当にレシピの再現ができるのか疑問だったが、スパイスコード代表の中河宏文氏によれば、「料理長くらいの経験を持つシェフであれば、レシピの再現は十分に可能だ」と話す。

食のOEM自体はこれまでも行われてきたが、これまでは飲食チェーンが直接食品工場に発注しており、手作りにおける手順とは違う工場製造の手順づくりや味の再現などに時間がかかっていた。また、最低発注ロットも通常200キログラムからと発注までのハードルが高かった。それと比較して、ロカルメオーダーではレシピの再現から外注でき、また複数の発注を同社が取りまとめていることから、発注も120キログラムからと比較的少ないロットでも発注可能というメリットがある。現在、高級フレンチ料理店のひらまつや居酒屋チェーンのジリオンなど数十社がロカルメオーダーを利用しているという。

地道なDX

CEOの中河氏は、mixiでクライアントアプリチームのリードエンジニアを務めたあと、運転者用スマホアプリなどを提供するDrivemodeを米国で共同創業(のちに本田技術研究所に売却)した経験を持つ人物。帰国後はメルカリのAIチームをTech Leadも務めている。フード産業から離れた業界をフィールドにしてきた彼だが、シェフである妻の話を聞き、この産業でのDXを実現することが重要だと感じ、スパイスコードに参画したという(CTOとして参画し、のちにCEOに就任)。

しかし、慣れない業界で新しいビジネスを起こすには、商慣習に合わせてツールを調整するなどの苦労があったとも中河氏は話す。申し込みにLINEを利用しているのもその理由の1つだ。当初はネイティブアプリを作ることも考えていたが、飲食店側にまったく受け入れられず、彼らが普段から使用しているLINEを利用する作戦に変更した。飲食店は日ごろから、近くの八百屋さんにLINEでトマトを発注するなど日常業務でLINEを使うことに慣れていたのだ。また、食品工場をオンラインでネットワーク化する部分にも苦労があった。ある工場にはWi-Fiすらなく、スパイスコード側でSIMカードを入れ込んだChromebookを用意するなんてこともあったそうだ。

今後はAI技術によるレシピ再現の自動化へ

スパイスコードは今後、さまざまな面で食のサプライチェーンの最適化を進めるとともに、テクノロジーの活用を進める。サプライチェーンの最適化という点では、配送の集約や工場生産であまった部位を利用したオリジナル商品を開発する。また、エンジニアである中河氏をはじめ、元メルカリの機械学習エンジニアが揃うチームによってレシピ再現の自動化などを進めていきたい考えだ。

「飲食店から送られてきたレシピには、欠損している情報が多々ある。そこをAIの技術で埋めて、自動的に工場生産の手順書まで落とし込むことに今後挑戦したい」(中河氏)

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カテゴリー:フードテック
タグ:資金調達

黒人の業界リーダーがMasterClassのようなコースを提供するBeGreatTV、差別への対処法まで

「ブラックやブラウン」の講師がクラスを教えるオンライン教育プラットフォーム「BeGreatTV」は先日、Stand Together Ventures Lab、Backstage CapitalのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏、女優のTiffany Haddish(ティファニー・ハディッシュ)氏などからの参加を得て45万ドル(約4740万円)のプレシードラウンドを終了した。

BeGreatTVの目標は、才能ある黒人や有色人種のイノベーターやリーダーから誰もが学べるようにすることだと、創業者兼CEOであるCortney Woodruff(コートニー・ウッドラフ)氏はTechCrunchに語った。

「黒人や有色人種の個人が、(自分と同じような)黒人や有色人種の人から学びたいと考えたとき、異なるビジネス分野の用語集を提供してくれて、あらゆる組織レベルでの(自分の人種の)代表者をうまくまとめたものは存在しません」とウッドラフ氏はいう。「それだけでも、今まで誰も投資していなかった、または見せてこなかった情報がたくさんあるということで、当社の市場はその分、大きくなります」。

同社のコースは、特定の業界でどのように実績を上げ、成功するかを人々に教えるために設計されており、受講者たちはその業界のビジネス面をよりよく理解できるようになる。同時に「その部屋の中で(黒人または有色人種)唯一の存在であることにともなう社会経済的、人種的な不公平に対処する方法」も教えるという。「たとえばあなたがメイクアップ業界に入りたいと思っている黒人の男性または女性だったら、世間には必ずと言っていいほど偏見があります」。

BeGreatTVが数カ月後にローンチされると(4月に開始する予定)、同プラットフォームでは、アート、エンターテインメント、ビューティーなどに焦点を当てた少なくとも10種のコース(それぞれ15エピソード程度)が提供されることになる。開始時には、L’Oréal(ロレアル)のセレブメイクアップアーティストであり、Beyoncé(ビヨンセ)のパーソナルメイクアップアーティストでもあるSir John(サー・ジョン)氏、リル・ウェインやドレイクのマネージャーでもあるBeGreatTVの共同創設者Cortez Bryant(コルテス・ブライアント)氏、ゼンデイヤのスタイリストであるLaw Roach(ロー・ローチ)氏などがコースを提供する予定だ。

ウッドラフ氏によると、ハミルトン氏とハディッシュ氏は、それぞれビジネスとエンターテインメントに関するコースも教えることになるという。これまでにBeGreatTVは、3分間から15分間までの長さの40以上のエピソードを制作している。

画像クレジット:BeGreatTV

各コースの価格は64.99ドル(約6850円)で、同社はゆくゆくは、コースの数をもう少し増やした後、オールアクセスのサブスクリプションモデルを提供する計画だ。インストラクターに関しては、BeGreatTVは彼らとロイヤリティを共有しているという。

「最終的にはこのプラットフォームに、単にブラックとブラウンだけではない、より多様なインストラクターを含めることも考えています」とウッドラフ氏はいう。しかし今のところは、「『彼女 / 彼は私たちの最初の黒人インストラクターです』というパターンを『彼女/ 彼は私たちの最初の白人インストラクターです』という方向に、プラットフォーム上で反転させようとしているのです。

BeGreatTVのチームはわずか15人で構成されているが、音楽界の重鎮Cortez Bryant(コーテズ・ブライアント)氏や俳優のJesse Williams(ジェシー・ウィリアムズ)氏のような大物が含まれている。現在、BeGreatTVはシードラウンドの終了に向けて作業を進めており、年末までには6桁のユーザー数を見込んでいるという。

MasterClass(マスタークラス)が、おそらくBeGreatTVの最大のライバルとなるだろう。Gordon Ramsey(ゴードン・ラムゼイ)氏、Shonda Rhimes(ションダ・ライムズ)氏、David Sedaris(デイビッド・セダリス)氏などが講師を務めている前者が、8億ドル(約843億円)以上のバリュエーションを得たのも不思議ではない。MasterClassの場合、年間180ドル(約1万9000円)のサブスクリプションが、同社の収益のすべてを占めている。

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「もしあなたが(BeGreatTVを)MasterClassと比較するのなら、我々はそれぞれの業界で、世界で最も優れた仕事をしている人材というだけでなく、多くの場合、パイオニアとして壁を打ち破った人々を起用しています」とウッドラフ氏は語った。「彼らは、周りに自分と似たような人間が1人もいない環境でそれを達成したのです」。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:BeGreatTV資金調達オンライン学習

画像クレジット:BeGreatTV

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(文:Megan Rose Dickey、翻訳:Aya Nakazato)

オリジナル料理の仕込みや加工を行う飲食店向けサービス「ロカルメオーダー」が2億円調達

飲食店オリジナルメニューの仕込みや加工をネット経由で頼める「ロカルメオーダー」が2億円調達

セントラルキッチンサービス「ロカルメオーダー」を手がけるスパイスコードは2月8日、2億円の資金調達を発表した。引受先はSTRIVE、Coral Capital、食の未来ファンド(kemuri ventures)、個人投資家。累積資金調達額は2.75億円となった。

今後は、事業拡大・採用強化をさらに加速し、日本が誇るフード産業のサプライチェーン全体の最適化を推進していく。

スパイスコードは、飲食店オリジナルメニューの仕込みや加工をネット経由で頼めるセントラルキッチンサービスとして、ロカルメオーダーを提供。

フード産業においてこれまで障壁が高かった調理部分について、セントラルキッチンや食品工場をオンラインでネットワーク化することで、仕込み調理のアウトソース化やEコマース商品の製造といったサービスを小ロット・高品質で提供できるようになるという。

ロカルメオーダーを使用することで、シェフは毎朝の仕込み調理やクリエイティビティの低い業務から解放され、より生産性の高い業務に集中できるとしている。

今後も、シェフの負担を軽減し、より専門性の高い調理に専念する機会を創出したり、従業員の育成に注力したりするなど、新たなるチャレンジを推進していく。

飲食店オリジナルメニューの仕込みや加工をネット経由で頼める「ロカルメオーダー」が2億円調達

フード産業では、慢性的な人材不足や働き方改革など供給側の課題に加え、顧客ニーズの多様化や品質の安定化など需要の変化も顕在化しているという。また、新型コロナの影響も大きく、売上の激減に伴うコスト削減だけでなく、イートイン店舗の省力化、デリバリー提供時間の短縮、Eコマース商品開発・試作など業務負荷が増加し、調理現場の生産性アップの重要性がさらに高まっているそうだ。

飲食店オリジナルメニューの仕込みや加工をネット経由で頼める「ロカルメオーダー」が2億円調達
今後も、テクノロジーの力を使って消費者起点のなめらかで、無駄のない食料生産・供給ネットワークを社会実装し、飲食店、ひいては「食」の社会インフラを担う者が、より誇りと自信を持って価値を発揮できる環境を創出していく。

2019年8月設立のスパイスコードは、「フード産業を持続可能な仕組みへアップデートする」というビジョンを掲げ、テクノロジーの力を使い新たなビジネスモデルの確立を目指すスタートアップ企業。生産・製造・流通など各工程を最適化することで、サプライチェーン全体の最適化を図り、より多くの利益を還元するとしている。

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カテゴリー:フードテック
タグ:資金調達(用語)スパイスコードセントラルキッチン日本(国・地域)

自分でも何を求めているかわからない従業員のメンタルヘルスケアソリューションを提供するmoka.care

moka.careは、あなたの心理的な幸福度を向上させるための手助けとなるいくつかのサービスを構築しているフランスのスタートアップだ。同社はそのソリューションを企業に直接販売している。契約した企業は自社の従業員にmoka.careへのアクセスを提供することができる。

moka.careは資金調達ラウンドで、元AlvenのパートナーであるJeremy Uzan(ジェレミー・ウザン)氏とRaffi Kamber(ラフィ・カンバー)氏が設立したVC会社であるSingularから250万ユーロ(約3億2000万円)を調達した。この日の調達ラウンドには、多くのエンジェル投資家が参加しており、Algoliaの共同創立者でCEOのNicolas Dessaigne(ニコラス・デサイン)氏、Made. comとTypologyを起ち上げたNing Li(ニン・リー)氏、DataikuのCEOであるFlorian Douetteau(フロリアン・ドゥエトー)氏、 LeetchiとMANGOPAY創設者のCéline Lazorthes(セリーヌ・ラゾルテス)氏、OpenClassroomsのPierre Dubuc(ピエール・デュバック)氏、LeCabのMarc-Antoine de Longevialle(マーク・アントワン・ド・ロンジェヴィアル)氏、JobTeaserのAdrien Ledoux(
アドリアン・ルドゥー)氏、Station FのRoxanne Varza(ロクサーン・バルザ)氏、CASTALIEのThibault Lamarque(ティボー・ラマルク)氏、IndyのCôme Fouques(コモ・フークス)氏が名を連ねる。

メンタルヘルスに関して、企業は十分な対応をしていないとMoka.careは考えている。多くの企業では、従業員は会社から電話番号を教えられ、そこに電話すればメンタルサポートを受けることができると言われるが、実際にそのようなヘルプラインに電話をかけている従業員はほとんどいない。

だからこそ、このスタートアップはまったく違うアプローチを取っている。その最も重要な原則は、人が求めるものはさまざまだということ。そして気分が落ち込んでいるとき、何を求めているのかは、必ずしも自分でわかっていないということだ。moka.careに連絡すると、あなたが何を求めるのかを理解するために、同社は30分ほど話をする。

その後は、3つの主なオプションが用意される。1つ目は、moka.careが心理学者や認定を受けたアドバイザー、免許を持つセラピストなどの専門家を紹介すること。2つ目は、特定のトピックを中心としたグループセッションの開催。たとえばリモートワーク、ワークライフバランス、自分に対する自信などだ。そして3つ目として、moka.careではこれらのトピックに関するコンテンツも提供している。これらのコンテンツにアクセスして、自分のことをもっと知ることができる。

このようなきめ細かなアプローチにより、人々が手遅れになる前にメンタルヘルスの問題に取り組めることをmoka.careは望んでいる。従業員がすでに過剰なストレスや疲労、燃え尽き症候群などで苦むようになってから、セラピストを紹介したくはないだろう。

従業員は最初のセッションで料金を支払う必要はない。企業が契約するmoka.careのプランに含まれているからだ。このことによって、従業員は気軽にmoka.careのサービスを受けてみることができるはずだ。もちろん、その後も予約を取りたいと思えば、料金を支払わなくてはならなくなる。

雇用主にとっても、moka.careは新規参入時のハードルを下げようとしている。クライアントはいくつかの使用率に基づいて、従業員数と利用期間に応じたサブスクリプションプランに同意することになる。もし、従業員がそれ以上にmoka.careを利用しても、雇用主は追加金を支払う必要はない。もし、従業員がまったくmoka.careを利用しなかったら、同社は余剰金を企業に返還する。

現在は30社ほどの企業がmoka.careと契約しているが、これは合わせて数千人の従業員がアカウントを作成してこのサービスにアクセスする可能性があるということだ。moka.careは現在、約50人の開業医と提携を結んでいる。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:moka.careメンタルヘルスフランス資金調達

画像クレジット:moka.care

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(文:Romain Dillet、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

注文から15分でグローサリーを配達するCajooがパリでサービス開始

730万ドル(約7億7000万円)を調達したフランスのスタートアップCajoo(カジュー)を紹介しよう。同社は現地時間2月4日、携帯電話から注文したグローサリーを15分後に受け取れるサービスをパリで立ち上げた。

「私は2020年8月中旬にBolt(ボルト)を離れ、2人の創業者と一緒に15分で配達する会社を立ち上げました」と共同創業者でCEOのHenri Capoul(ヘンリ・カプル)氏は筆者に語った。Boltでの経験のおかげで、同氏はおそらくロジスティックとマーケットプレイス大規模運営について多少は知っている。他の創業者メンバーはGuillaume Luscan(ギヨーム・ラスカン)氏とJeremy Gotteland(ジェレミー・ゴッテランド)氏だ。

Cajooは他のサービスとどう違うのだろうか。フランスにはInstacart(インスタカート)もなければ、他のグローサリー配達専門サービスもない。その代わり、多くのスーパーチェーンが配達サービスを提供している。スーパーのウェブサイトやアプリからグローサリーを注文し、翌日か2日後に配達される。

一部の小売業者はより迅速な対応を試みている。CarrefourのLivraison ExpressやMonoprixのMonoprix Plusなどだ。AmazonもAmazon Prime Nowのサブサービスを通じて一部のグローサリーを配達できる。ただ注文品を受け取るまでに30分、1時間、あるいは2時間かかる。

しかしDeliverooやUber Eats、他の同様のサービスの成功が示すように、人々はいますぐ届けてほしいのだ。ユニットエコノミクス、労働法、小型店舗や自治体への影響のために性急さは持続不可能だと筆者は考える。それでも、Cajooにとっては十分な需要があるようだ。

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Cajooはフルスタックのアプローチで差別化を図りたいと考えている。同社は自前のマイクロフルフィルメントセンターを運営している。独自の製品棚卸表を持つ。できるだけたくさんの配達用車両を管理する。そしてもちろん顧客に直接販売する。

また、Glovo(グロボ)は顧客の地元のグローサリー店からの配達を提供している。しかし同社は数週間前にフランスから撤退した。店舗から直接購入することでは十分なマージンを生み出せなかったようだ。スペインでGlovoは自社運営するダークストアにフォーカスしている。

Cajooは、パスタやシャンプー、キャンディなど近くの店にあるようなあらゆるものを扱う。またワインやビール、スナックも注文できる。これらは儲けの多い部門であることが、Uberによる11億ドル(約1160億円)でのDrizly(ドリズリー)買収で証明されている。

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そしてCajooは現地時間2月4日、パリの9区とその周辺でサービスを開始した。パリ全体をカバーするのにマイクロフルフィルメントセンター10カ所が必要で、展開するのに数カ月かかると同社は考えている。

Cajooはまた、空き店舗、空きガレージ、新しいオーナー待ちの小型倉庫が数多くあるという現在の経済危機の恩恵も受けている。

「当社モデルの差異化要因は当社がマーケット価格で製品を提供するというところにあります。MonoprixやCarrefour Expressの店舗と同じ価格で、そして配達料金は2ユーロ(約250円)以下です」とカプル氏は話した。

Cajooは配達料金から売上高の大半を生み出そうとはしていない。配達料金は1回にアイテム1つだけ注文するということがないためにする、最低の設定になっている。その代わり同社は他の小売企業と同様、製品そのものからマージンを得る。

FrstとXAngeがCajooのシードラウンドをリードし、Chauffeur-Privé(のちにKaptenにブランド名を変更した)の2人の共同創業者も参加した。

筆者は配達スタッフに関する同社の計画について尋ねた。2020年Gurvan Kristanadjaja(グルヴァン・クリスタナジャジャ)氏がLibérationで報じたように、フランスではフードデリバリー企業で働く請負労働者に関して深刻な問題がある。たとえばFrichtiの配達スタッフのかなりの割合が不法移民だ。DeliverooやUber Eatsの一部の配達員は不法移民にアカウントを貸している。

Cajooは配達をさばく従業員を雇用し、彼らに電動自転車を貸与するつもりだとカプル氏は話した。しかし同社はまた請負業者やフリーランサーなどのパートナーとも協業する。

「当社はDeliverooやUber Eatsと同じスタンダードにしたくありません。適切な配達スタッフを雇用し、労働許可を持っていることを確かめることは重要なことです」と同氏は述べた。各マイクロフルフィルメントセンターにはトイレや次の注文を待機する場所も設置される。

人気が出るにつれてCajooが長期にわたって高品質を維持できるかどうかが今後重要になる。少なくとも、同社のサービスは正しい考え方で始まっている。

画像クレジット:Cajoo

カテゴリー:シェアリングエコノミー
タグ:グローサリーデリバリーCajoo資金調達パリ

画像クレジット:Cajoo

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(文:Romain Dillet、翻訳:Nariko Mizoguchi

信頼できるデータパイプラインの構築を支援するIterativelyが5.7億円を調達

企業が大量のデータを集めるようになると、データの信頼性を確保することがますます重要になる。データ分析のパイプラインの質は、集めてくるデータの質に依存し、混乱したデータや露骨なバグはそれだけで、下流の問題の原因になる。

シアトルのIterativelyは、企業による信頼できるデータパイプラインの構築を助ける。同社は米国時間2月4日、Google(グーグル)のAIを対象とするファンドGradient Venturesがリードするシードラウンドで540万ドル(約5億7000万円)を調達したことを発表した。Fika VenturesとIterativelyの初期の投資家であるPSL Venturesもこの投資に参加し、Gradient VenturesのパートナーZach Bratun-Glennon(ザック・ブラトン-グレノン)氏が同社取締役会に加わった。

Iterativelyの共同創業者でCEOのPatrick Thompson(パトリック・トンプソン)氏は、ちょうど2年前にIterativelyを立ち上げたが、以前はAtlassianやSyncplicityで後の共同創業者となるOndrej Hrebicek(オンドレイ・ヘレビチェク)氏と出会った。Iterativelyの創業後、チームは6カ月間を顧客探しに費やし、その過程で同社は自分たちが捕捉するデータを信頼していない、という基本テーマにたどり着いた。

「内部的なソリューションを作ってこの問題を解決しようとしている多くの企業にインタビューしました。実は私たちもAtlassianでそのようなものを開発したことがあるため、彼らの悩みを理解することができました。そこで私たち、データの信頼性という問題を解決するプロダクトを作って市場に出そうと決意したのです」とトンプソン氏は語る。

画像クレジット:Iteratively

多くの企業で、データのプロデューサーとデータのコンシューマーは対話をしていない。対話をするとしてもそれは、スプレッドシートやWiki上だ。Iteratively(何度も繰り返す、段階的に進歩する)の狙いは、コラボレーション環境を作って異なるグループを合わせて、すべての利害関係者にとって真で唯一のソースを作ることだ。それに対してトンプソン氏は「通常、JIRAのチケットでも、Confluenceのページやスプレッドシートでも手渡しの工程があり、さまざまな要件をリレー競争のバトンのように渡渡していきますが、一般的にその工程は決して正しく実装されていません。だからこそ、作業の下流へ行くほど厄介な問題になるのです」という。

現在、Iterativelyは、プロダクトとマーケティングの分析のためのイベントのストリーミングデータにフォーカスしている。通常それらは、プロダクト分析のMixpanelやAmplitudeやSegmentなどに流れていくものだ。しかしIteratively自身はデータをその原点、たとえばアプリで捉え、データを検査し、それを企業が利用しているサードパーティのソリューションへ渡す。つまりこのツールは、データの発生箇所で関所を務めるため、データがIterativelyのサーバーから出てこないこともありえる。

画像クレジット:Iteratively

「実際に個々のデータを詳しく見るわけではありません。Iterativelyは、データセットの整形などをするプロセッサーではない。むしろIterativelyはユーザー独自のデータ分析パイプラインやユーザー独自のサードパーティSaaSツールの上に位置するラッパーだ。Iterativelyは、そんなシステムのペイロードがクライアント上で私たちのSDKを通っていくときに検査します」とトンプソン氏は強調する。

しかし今後、Iteratively自身が何らかのデータ処理をすることもあるだろうが、それはメタデータと観察可能性が対象だろう、とトンプソン氏はいう。

現在、Iteratively自身がデータ処理をすることはないため、料金計算はユーザー数がベースとなっている。パイプラインを流れていくイベントの数は問わない。しかし上記のように、一部のデータ処理を行うようになったら、それも変わるかもしれない。

現在、Iterativelyは社員が約10名で、年内に20名にする予定だ。研究開発と営業、マーケティングを中心に雇用していくという。

Gradientのブラトン-グレノン氏に、投資家としての見解を聞いてみると、次のように答えた。「Iterativelyのソフトはユニークなやり方で全社的なコラボレーションを可能にし、データのクオリティを維持する。今後は必ず、インテリジェントなデータ分析とデータドリブンな意思決定が、企業の成功と製品の品質を左右するだろう。Iterativelyのミッションとプロダクトとチームには、彼らの顧客のそれぞれに対して、そのような能力を与える力がある」。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Iteratively資金調達

画像クレジット:chain45154/Getty Images

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(文:Frederic Lardinois、翻訳:Hiroshi Iwatani)

テキストアドベンチャー「AI Dungeon」のLatitudeが「無限の物語」を生み出すゲーム制作のために3.5億円調達

人工知能によって生成された「無限の物語」を持つゲームを開発しているスタートアップLatitude(ラチチュード)が、シードファンディングで330万ドル(約3億5000万円)の資金を調達したと発表した。

AIが生成したストーリーというと、短編映画「Sunspring」のような愉快で無茶苦茶な実験を思い浮かべるかもしれないが、Latitudeの最初のタイトルである「AI Dungeon」は、幅広いジャンルとキャラクターから選択できる印象的なオープンエンドの(そして首尾一貫した)テキストアドベンチャーゲームだ。

「Zork(ゾーク)」のような古典的なテキストアドベンチャーでは、デザイナーが意図していないことをプレイヤーが入力すると、すぐに「それはできません」というようなメッセージを頻発するが、AI Dungeonはそれらとは異なり、どんなコマンドにも反応することができる。たとえば勇敢な騎士が戦闘に突入している時に「get depressed(気落ちせよ)」と入力すると、彼はすぐに岩の上に座って頭を両手で抱えてしまった。

「AIはどうやって、何が良い話であるかを知るのでしょうか?」と、同社の共同創立者兼CEOであるNick Walton(ニック・ウォルトン)は言った。「それはたくさんの良い物語を読み、それに関わるパターンを知っているからです」。

AI Dungeonは、ウォルトン氏のハッカソンプロジェクトの1つとしてスタートした。最初のバージョンでは何の賞も獲得できなかったが、彼はOpenAIの言語生成モデル(最新バージョンは「GPT-3」)による改良に助けられて開発を続けた。

「AI Dungeon」(画像クレジット: Latitude)

「私が作ったAI Dungeonの最初のバージョンは、文章レベルでは首尾一貫していましたが、段落レベルでは意味をなしませんでした」とウォルトン氏はいう。「GPT-2が使えるようになると、より意味のあるものになりました。そしてGPT-3に達すると、ストーリーレベルでさらに首尾一貫したものになりました。このような首尾一貫性やストーリーが意味を成さないという問題は、AIが向上するにつれて解決されていくと私は思います」。

Latitudeによると、AI Dungeonは月間150万人のアクティブユーザーを集めているという。このスタートアップは今後もさらに多くのAIを使ったゲームを制作し、最終的には他のゲームデザイナーたちも同じようなことができるようになるプラットフォームのリリースを計画している。

ウォルトン氏は、AIがなければ、ビデオゲームは常にクリエイターの想像力によって制約されると指摘する。ランダムに生成された町や惑星が舞台となる「The Elder Scrolls II:Daggerfall」や「No Man’s Sky」のようなゲームでも、「似たようなコンセプトに同じ捻りを効かせたもの」と彼は主張する。

たとえばDaggerfallでは、「どの町に行っても、基本的にはすべて同じ。それがプロシージャルジェネレーション(手続き型生成)の問題点です。特異なものを作り出すことはできません」。これに対して、AIは「完全に特異で、毎回違うものを作る」ことができる。

Latitude CEOのニック・ウォルトン氏(画像クレジット:Latitude)

ビジネスの観点からは、これによりAAAゲームの開発コストを、現在の1億ドル(約105億円)以上から10万ドル(1050万円)以下に引き下げることが可能になると、ウォルトン氏は述べているが、まだLatitudeはグラフィックを使ったゲームをリリースしていないので、そのレベルに到達するには長い道のりがある。ウォルトン氏はまた、これが新たなレベルの没入感とインタラクティブ性につながる可能性があると語る。

「この技術を使えば、何万ものキャラクターがそれぞれの希望や願望、夢を持っている世界を作ることが可能です」と彼は語る。「World of Warcraft」のような、1000万人が同じクエストに参加しているような世界ではなく、ダイナミックで生き生きとした世界を実現できます」。

Latitudeの今回の資金調達は、NFXが主導し、Album VC(アルバムVC)とGriffin Gaming Partners(グリフィン・ゲーミング・パートナーズ)が参加した。

NFXのJames Currier(ジェームス・カーリア)氏は声明の中で、「Latitudeはゲームの作り方に革命を起こし、AIを燃料としてまったく新しいジャンルのエンターテインメントゲームを制作しています」と述べている。「世界がかつて見たことのないようなゲームを生み出すために、最高のAIの知性とエンジニアが集結しています。すでにLatitudeは圧倒的なAIゲームのリーディングカンパニーです」。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Latitude資金調達ゲームOpens AI

画像クレジット:aurielaki / Getty Images

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(文:Anthony Ha、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

電動自転車メーカーRad Power Bikesが新型コロナを追い風に約158億円調達

電動自転車は2020年にブームとなった。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックと、それによって引き起こされた消費者の日常生活の混乱による原動力となっている。

そして今、Rad Power Bikes(ラッドパワーバイクス)はそうした追い風を生かして従業員の倍増とグローバル展開に注力している。

シアトル拠点の同社は米国時間2月4日、Morgan StanleyのCounterpoint Global Fund、Fidelity Management & Research Company、TPGのグローバルインパクト投資プラットフォームThe Rise Fundといった機関投資家、そしてT. Rowe Price Associatesのアドバイスを受けたファンドや個人から1億5000万ドル(約158億円)を調達したと明らかにした。既存投資家のDurable Capital Partners LPとVulcan Capitalも参加した。

米国の電動自転車スタートアップとしては最大となるこの資金調達は、Rad Powerの事業モデルと2019年に1億ドル(約105億円)だった売上高の今後の成長を証明している。

Rad PowerはD2C(消費者直接取引)の電動自転車販売会社でファットタイヤ、大容量バッテリー、モーター、タッチスクリーン、さらには貨物運搬能力すらも組み合わせてしっかりとしたプロダクトを製造することで知られている。そして価格は競合相手よりも数百ドル(数万円)安い。

2007年創業の同社は当初、カスタム自転車を少量生産していた。それが変わったのは2015年だ。同社の創業者でCEOのMike Radenbaugh(マイク・ラデンボウ)氏が友人のTy Collins(ティ・コリンズ)氏とチームを組み、D2C事業として再ローンチした。その年、ラデンボウ氏とリンズ氏はクラウドファンディングIndigogoキャンペーンを通じてRadRover Electric Fat Tire自転車を立ち上げた。同社は大量販売者に進化し、今ではポートフォリオに11モデルの自転車をもち、30カ国で販売されている。

Rad Powerは自転車以外のものにも取り組んだ。オンライン販売プラットフォーム、購入前後の顧客サポートチーム、小売ショールーム、バンを使ったサービス、ローカルのサービスパートナーネットワークを立ち上げた。事業を拡大してもずっと利益を上げていた、とラデンボウ氏は話した。

同社はほとんど自己資金で事業を展開してきたが、2009年に数百万ドル(数億円)を、2020年に2000万ドル(約21億円)をプライベートラウンドで調達した。同社のこれまでの累計調達額は1億7500万ドル(約184億円)で、その大半は今回の新規ラウンドでのものだ。

「これは特別な機会だと考えました。というのも、すでに何年も試験し、うまくいうことがわかったさまざまなエリアの事業への投資を加速させることができるからです」とラデンボウ氏は述べた。

調達した資金は事業の全部門のスケール展開に使われる、と同氏は話した。Rad Powerは現在325人を雇用しており、2021年末までに倍増させる計画だ。また小売ショールームやサービスロケーションを増やし、サプライチェーンの多様化と、自転車カスタマイズのためのアクセサリーの増加を目的にメーカーとの契約も引き続き増やす計画だ。

今後最も急速に成長するチームは現在35人が所属するR&D部門だとラデンボウ氏はつけ加えた。

「中核となる戦略は今後も新しい乗り物のカテゴリーを開発することです。なので、当社が電動自転車の会社である間、そして当社は常にペダルとそうした種のエクスペリエンスを生み出そうとしていますが、電動自転車とスクーター、モペッド、さらには自動車産業との境目を真に曖昧なものにするものを作り出し続けます」。

関連記事:電動自転車人気急増の中、FuroSystemsは新車発表前に初のベンチャー投資を調達

カテゴリー:モビリティ
タグ:Rad Power Bikes資金調達電動自転車

画像クレジット:Rad Power

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(文:Kirsten Korosec、翻訳:Nariko Mizoguchi

Zoomアドオンのオンライン教育ソリューションを開発するClassが約31.7億円を調達

Blackboardの共同創業者であるMichael Chasen(マイケル・チェイスン)氏起業してからまだ1年に満たないClassは、柔軟にカスタマイズして生徒と教員が授業に利用できるZoomのアドオンを開発している。同社の初の製品となるClass for Zoomには管理ツールと指導用ツールがあり、ビデオ会議のエクスペリエンスを向上させる。

以前はClassEDUという名前だった同社は米国時間2月4日、3000万ドル(約31億7000万円)を調達し、調達金額の合計が4600万ドル(約48億6000万円)となったことを発表した。製品の公開前にこれほどの金額を調達したため、同社には製品を調整して改善する余裕があり検証もできる。Zoomにとって初めての小切手を書いたBill Tai(ビル・タイ)氏やEmergence Capitalなど、Zoomを早い時期に支援した多くの投資家がClassに投資している。

Classは調達した資金で現在60人の従業員を100人に増やす。また各国の需要に合うように製品を開発する。米国、ドバイ、日本、ヨーロッパの6000以上の教育機関がClassのウェイティングリストに名を連ねている。

教員はClass for Zoomの指導用ツールを使ってその場で課題やクイズ、テストを出し、リアルタイムで生徒たちに答えさせることができる。管理面では出席管理から生徒がアクティビティに参加した時間の把握まで、さまざまなツールがある。現在ClassEDUは有料のプライベートベータで、60校あまりが利用している。

画像クレジット:Class

現時点ではClassのソフトウェアはMacのみで動作するが、ベータ版は近々iPhone、Windows、Androidでも使えるようになる。今四半期末に公開の予定だ。

Classは完全にZoomプラットフォーム上で構築されているが、他のZoom用アプリのようなサードパーティ製品の統合ではなく独立した機能として動作する。Classはバックエンドのオーディオとビデオの機能には無料のZoom SDKを使い、フロントエンドのインターフェイスとエクスペリエンスは独自に開発している。他社に依存するアーリーステージのスタートアップはいずれもそうだが、プラットフォームのリスクには注意が必要だ。

一方で、リスクには価値がともなう。Zoomはなじみのある名前なので、Classを学校に販売する際のハードルは驚くほど下がるとチェイスン氏はいう。学校は2020年から使っているテクノロジーを置き換えることなく、Classを使うことで簡単により良いものにすることができると同氏は説明する。

チェイスン氏は「学校にはZoomの安定性とスケーラビリティがあり、その上に授業のツールを構築して大規模に展開していくつもりです」と述べる。同氏によれば12万5000校以上の学校がすでにZoomを使っており、十分大きいビジネスになる。Classは今のところTeamsやWebexとの統合は計画していない。

Udemyの新社長が数日前に述べた意見と同様に、ClassもEdTechの動向の変化が販売の違いに現れると見ている。

LMS(学習管理システム)の仕事に15年間携わってきたチェイスン氏は「Blackboardのセールスサイクルは6〜9カ月で、eラーニングとは何かを説明しなくてはなりませんでした。(Classでは)ピッチをする必要がありません。1カ月で商談がまとまります。セールスサイクルは製品を紹介している時間のみです」と語る。

Class、そしてeラーニングのソリューションを教育機関に販売するスタートアップにとっての高いハードルは、新型コロナ収束後の実用性だ。教育機関は昔から形式主義でソフトウェアの採用に時間がかかるが、チェイスン氏によればClassの顧客は高等教育でもK-12でも積極的に予算を取っているという。Classの価格は年間1万ドル〜6万5000ドル(約105万円〜680万円)で、クラスの人数により異なる。

チェイスン氏は「予算の問題にぶつかったことは一度もありません。高等教育機関はすでにオンライン学習への第一歩を踏み出して次に歩を進めようとしていますが、K-12は第一歩を踏み出しつつあるところです」と述べた。

関連記事:学校向けのZoomアドオンに数億円を賭けるZoom創生期の投資家たち

カテゴリー:EdTech
タグ:ClassZoom資金調達eラーニング

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Natasha Mascarenhas、翻訳:Kaori Koyama)

高齢者向けフィットネスプログラムのBoldがシードラウンドで約7.4億円を調達

コロナ禍でバーチャル健康&ウェルネスプラットフォームの人気が高まる中、ある新しいスタートアップが高齢者に特化した取り組みを始めている。デジタル健康&ウェルネスサービスのBoldは、加齢にともなう健康の問題を防ぐために、パーソナライズされたエクササイズプログラムを無料で提供する計画だ。Boldを創業したのはAmanda Rees(アマンダ・リース)氏とHari Arul(ハリ・アルル)氏で、同社は2月第1週にシリコンバレーを拠点とするAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)のJulie Yoo(ジュリー・ユー)氏が主導するシードラウンドで700万ドル(約7億4000万円)を調達した。

リー氏はインタビューで、自分の祖母が転倒したりしないように介助していたときにBoldを思いついたと語った。「転倒などの問題が起きるのをただ待つのではなく、長く健康でいるにはどうすればいいかをずっと考えていました」という同氏は、ダンスとヨガを学んだ自身の経験を生かしてBoldを始め、祖母がこの先転倒することのないようバランスを維持する訓練をサポートした。「高齢者向けに間口を広げ、利用しやすいソリューションを構築しようと情熱を注いできました」。

使い方はわかりやすい。ユーザーはウェブベースのプラットフォームでフィットネスに関する簡単な情報を入力し、目標と現在の状況を伝える。その情報をもとにBoldはプログラムをパーソナライズする。プログラムは週に1回座ったままでできる太極拳のクラスから、毎週数回実施する有酸素運動と筋トレのクラスまで幅広い。リー氏は「メンバーの現在の状況にぴったり合うクラスから始め、そこからこのプログラムを通じて短期間で効果が出るエクササイズに進んでいきます」と説明する。

現在、高齢者の医療費の増加が懸念され、現在と将来の両方の世代のために医療費をいかに削減するかが注目されている。転倒は医学的には必ずしも複雑な事故ではないが、骨折などの重傷につながる危険がある。Boldの転倒予防アプローチは、転倒を検知したときに救急に発信するネックレスやブレスレット型のモニタ機器よりも積極的なソリューションだ。バーチャルプログラムを提供すれば、リスクのある高齢者がジムで新型コロナウイルス(COVID-19)感染の危険にさらされることなくエクササイズをすることができる。

このようなエクササイズが有効だという研究結果がある。単純で強度の低いエクササイズであっても、バランスと筋力が強化され転倒を減らすという。転倒は現在、高齢者のケガと、ケガによる死亡の原因の第1位だ。

ケガを減らせば治療の機会が減り、病院や健康保険会社にとってもコスト削減につながるだろう。そのためBoldはシード資金に加え、メディケアアドバンテージ(訳者注:米連邦政府が運営する高齢者および障がい者のための健康保険がメディケアで、病院保険と医療保険、処方薬プランなどを含む「オールインワン」のプランがメディケアアドバンテージ)を扱う企業やリスク対策企業との連携を開始し、Boldのエクササイズプロブラムをユーザーが無料で利用できるようにする計画を立てている。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Bold資金調達エクササイズ高齢者

画像クレジット:Bold

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(文:Sophie Burkholder、翻訳:Kaori Koyama)

大手出身のベテランが集まった新進ゲームスタジオMountaintopが友人と家族から5.8億円調達

複数の大手ゲーム企業から集まったベテランのスーパーグループが創設したゲーム開発スタジオMountaintop(マウンテントップ)は、友人や家族からのシード投資550万ドル(約5億8000万円)を調達し、最初のタイトルはPvPシューターになると発表した。

同社は2020年夏、Oculus(オキュラス)の共同創設者Nate Mitchell(ネイト・ミッチェル)氏の下にゲーム業界の大物たちが集まり、自分たちで一発当てようと立ち上げられた。大手パブリッシャーや開発業者では広く常態化され、頻繁に目撃される(または報道される)クランチ(徹夜作業を強要する過酷な開発環境)と有害な文化から逃れて、独立したスタジオを作ろうというのが彼らの主旨だ。

独立とは、大手パブリッシャーからの手当てが受けられないことを意味する。そのため彼らは、運営資金を調達する必要があった。そしてそれは、人もうらやむ大きな懐を持つ彼らの家族や友人からもたらされた。思うに、投資する側からすれば成功した起業家として名を馳せ、業界を牽引し刺激してきた人たちの事業への投資ほど安心できるものはないだろう。

550万ドルのシード投資資金は、同社初タイトルの開発に投入される。それはPvPシューターになる予定だ。ここで少し不安に感じる方もいるだろう。PvPシューターといえば、「Overwatch(オーバーウォッチ)」「PUBG」「Fortnite(フォートナイト)」「Apex Legends(エーペックスレジェンズ)」といったこの5年間で大成功したものと、「Crucible」「Battleborn(バトルボーン)」「Paragon」「Gigantic」大失敗したものがひしめくジャンルだからだ。後者は前者の不毛な模倣の試みだった。

だが、日和見主義的な人まねの企業文化はMountaintopには見られない。彼らは、あれこれ指図する株主とは無縁の小さなチームだ。いるのは友人と家族だけ。行儀のいい彼らは指図などしない。おもしろくて商業的にも成功するPvPシューターを作れると彼らが思うのなら、ぜひ作ってほしい。他のゲームにはもう飽きてしまった。

このゲームが、クランチのない環境で作られるというのも嬉しい。各々が自分のスケジュールで働き本当に大切に思えるものを作れば、すばらしい結果が得られることを、我々はSupergiantGamesの「Hades」で知っている。

ミッチェル氏もこう話している。

すばらしいゲームや製品は、クランチ抜きでも作れます。それは、開発のあらゆる段階において、調査、計画、履行を入念に行うということです。クランチの排除は簡単だとはいえません。非常に大きな挑戦です。特に予期せぬボールが飛んでくることを思えばなおさらです。

しかし結果として、それはすべてリーダーとその決断にかかっています。Mountaintopでは、常にチームで適切な進め方をすることを約束しています。

創設チーム5人からスタートした同社は、今では20名にまで増えた。Mountaintopは当初からパンデミック対応を考えていたわけではないが、リモート優先のアプローチにより、新型コロナ禍においても雇用によって会社の運営計画が変更されることはなかった。現在、同社で働いてる人たちは、Epic、Blizzard、Naughty Dog、Respawn、Infinity Ward、Ubisoft、Raven、Turtle Rock、Double Fine、PopCap、 そしてもちろんOculusの出身者たちだ。

彼らが大切に思っているものの中には、多様性とインクルージョンがある。だが20人の従業員のうち19人が男性で、20人中の18人が白人という現状は、今後の大きな課題を示している。

「まだスタートしたばかりですが、誰もが自分の居場所だと感じられる、多様性とインクルージョンを核にしたスタジオを作りたいと私たちは考えています。長い道のりになりますが、それが実現するよう全力を尽くします」とミッチェル氏はいう。雇用者数の目標は50人。その約束が果たせる余地は十分にある。

ゲームに関して、詳しい情報はまだ何もないが、今の調子で行けば、夏には新情報が少し聞けるかも知れない。

カテゴリー:ゲーム / eSports
タグ:Mountaintop資金調達

画像クレジット:Mountaintop Studios

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(文:Devin Coldewey、翻訳:金井哲夫)

宇宙開発のFirefly Aerospaceが月面着陸船契約をNASAと98.4億円で結ぶ

NASA(米航空宇宙局)は、実験設備を搭載した月面着陸船モジュールを月面に運ぶために、9330万ドル(約98億4000万円)の契約をFirefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)と結んだ。Fireflyは打ち上げ自体は行わないが、2023年に予定されているミッションに対して宇宙船と着陸船「Blue Ghost」(ブルーゴースト)を提供する。

NASAは現在進行中であるCommercial Lunar Payload Services(CLIPS、商用月面ペイロードサービス)の一部としてこの契約を結んだ。このサービスにはBlue Origin(ブルーオリジン)、Astrobotic(アストロボティック)、Masten(マステン)といった、これまで主力ではなかった宇宙企業も選ばれて肩を並べている。

この契約の公募がCLIPSパートナーたちに対して行われたのは2020年9月である。Fireflyがそれを勝ち取ったわけだ。

NASAのThomas Zurbuchen(トーマス・ズルブチェン)科学副長官はこの契約を発表したリリースの中で「新しいCLIPSプロバイダーが、初のタスクを勝ち取ったことを喜んでいます」と語っている。ここ数年来、NASAは打ち上げサービスから衛星や宇宙船の製造に至るまでのすべての部門で、民間業者をますます新たに受け入れるようになってきている。

正確にいえば今回のNASAからの注文はFireflyにとっては初めてのものではない。その国家安全保障関連子会社であるFirefly Black(ファイアフライ・ブラック)が、Venture Class Launch Service Demo-2(ベンチャー・クラス・サービス・デモ2)ミッションのために2つのキューブサットを打ち上げることになっているからだ。しかし今回の契約は、比べるとはるかに大規模かつ複雑なものだ(高価なのはいうまでもない)。

これはFireflyのBlue Ghost着陸船にとって、初の月面着陸となる。同社は過去数年にわたり、月に対する新たな関心の下で準備を続けていた。BlueGhostは10個の科学実験装置を搭載する(詳細はNASAがここで説明している)が、その中にはたとえば新しいレーザー反射装置や、実験的な耐放射線コンピューターなどが含まれている。搭載されるものはたくさんあるのだが、BlueGhostはその他、月に運びたいもののために50kg分の場所を残してあるはずだ。

着陸が計画されているのは危難の海(または危機の海、Mare Crisium)である。これは月の「表側」にある盆地の1つだ。ここに送り込まれた機材たちは、将来の訪問や月面への入植に対する情報を提供するために、継続して貴重な観測や実験を行うことが期待されている。

また、Fireflyは着陸船を月面に運ぶ宇宙船を提供し、何よりもまず着陸船を地球から離陸させる責任を負うことになる。同社は私に現在そのためのオプションを評価中であると語った。2023年までには、たくさんの選択肢が生まれているはずで、実際Firefly自身のAlpha(アルファ)打ち上げ機もそれまでに稼働しているかもしれない。とはいえ同社は現時点では月軌道投入の準備は整っていない。同社は3月にAlphaの初飛行を予定している。

関連記事:NASAが月面ミッションを記録する革新的な新技術を一般に広く募集中

カテゴリー:宇宙
タグ:Firefly AerospaceNASA資金調達

画像クレジット:Firefly Aerospace

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

「ホリエ・ロイド・タカフミ」などバーチャルヒューマン事業を手がける1SECが累計約2.7億円を調達

「ホリエ・ロイド・タカフミ」などバーチャルヒューマン事業を手がける1SECが累計約2.7億円を調達

AIヒューマン事業「ONE AI」などを展開する1SEC(ワンセック)は2月5日、第三者割当増資よる累計約2億7000万円を創業から現在に至るまでに実施したと発表した。引受先はセレス、gumi venturesファンド、イグニス、East Ventures、國光宏尚氏、内藤裕紀氏、他複数の個人投資家、複数の著名人、同社代表。

同社は、AIヒューマンテクノロジー事業を全世界に向けて展開。国内に加えて、世界27カ国で手がけているという。調達した資金により、AIヒューマンのテクノロジー強化と技術革新にフォーカスし、さらなる成長を目指す。

また同社は設立2期目を終え、通期で黒字化を達成しており、月次売上2億5000万円を突破。さらなるテクノロジーの強化により、新型コロナウイルスなどの障壁に左右されない強固な事業を展開し、世界中のDXを加速させ、人々やビジネスをエンパワーしていくとしている。

ONE AIは物理ベースのリアルタイムグラフィックと、音声認識AI、映像認識AI、特化型対話AIなどの最先端AIを駆使したハイエンドなバーチャルヒューマンテクノロジー。日本初の男性バーチャルヒューマン「LIAM NIKURO」(リアム・ニクロ)を公開。世界初の取り組みとしてNBAワシントンウィザーズとのパートナーシップを締結するなどを行った。

バーチャルヒューマン事業などを手がける1SECが累計約2.7億円を資金調達

また2019年、俳優・起業家の水嶋ヒロ氏の分身として「Lewis Hiro Newman」を発表。デジタルツインとして、「かつて選択しなかったもうひとつの人生」を生き、そのストーリーを展開していく著名人バーチャル化プロジェクトの第1弾としている。

バーチャルヒューマン事業などを手がける1SECが累計約2.7億円を資金調達

第2弾としては、堀江貴文氏が好きなこと、やりたいことに全力を傾けるために、画像生成系AIを用いて作成した「AI×バーチャルヒューマン」として、「ホリエ・ロイド・タカフミ」を発表。音声のディープラーニングも取り入れ、「人」と「AI×バーチャルヒューマン」が共存する時代の象徴としての活動を精力的に行う予定。

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カテゴリー:フードテック
タグ:AI / 人工知能(用語)資金調達(用語)バーチャルヒューマン1SEC日本(国・地域)

ヘッドレスCMSの使いやすさを追求するStoryblokがシリーズAで約9億円調達

デベロッパーやマーケターのための「ヘッドレス」CMSであるStoryblokが、Mubadala CapitalがリードするシリーズAのラウンドで850万ドル(約9億円)を調達した。同社のこれまでの投資家であるfirstminute capitalと3VCもこのラウンドに参加した。

オーストリアで創業された同社のプラットフォームは、Pizza HutやAdidas、UPC、Greggs、Decathloなどのブランドをクライアントに抱え、他にも何千名もの個人デベロッパーがそのCMSを利用、同社によると6万あまりのプロジェクトを支えているという。

Storyblokによると、同社CMSは、開発者には柔軟だが実際の編集者が編集するにはそれほど柔軟ではないかもしれない他のヘッドレスCMSソリューションとは対照的に「高度にカスタマイズ可能なコンテンツブロックとビジュアル編集ツール」を提供するという。

「マーケティングの世界は過渡期にある。新型コロナウイルスの大流行の結果、チャネルが断片化し、消費者の行動が急速に変化しているため、複数のプラットフォーム間でブランドメッセージの一貫性を効率的かつ迅速に維持することはいっそう困難になっている。理論的には、ヘッドレスCMS技術はこれらの問題の多くを解決するが、実際には、ほとんどのプラットフォームは開発者のみを対象としているため、技術者以外の使用は非常に困難だ。Storyblokのソリューションは、編集者と開発者の両方のニーズに対応しており、市場で独自の地位を確立し、急速な成長をもたらしている」とStoryblokの共同創設者でCEOのDominik Angerer(ドミニク・アンジェラー)氏は、声明で述べている。

Mubadala CapitalのディレクターFatou Bintou Sagnangは、「広大だが比較的同質的な市場において、Storyblokは中小企業と大企業の両方に共鳴する真に差別化されたプロダクトで我々に感銘を与えました。利用者の自然な成長は、開発者とマーケターの両方に愛されている証拠です」と述べている。

Storyblokは、ContentStackやContentful、Sitecore、Adobe Experience Manager、Prismicなどの企業と競合している。

アンジェラー氏はTechCrunchに「多くのヘッドレスCMSプラットフォームは、レガシーシステムに簡単に統合されていますが、日常的にそれらを実際に使用することになると、マーケティング担当者や他の編集者は、それらを使用することは信じられないほど難しいと感じています。実際には、問題を解決したり、大きな変更を行ったりするためにITチームや開発チームに戻らなければならず、その結果、ヘッドレスCMSが節約すると主張している時間とコストを無駄にすることになります」と語った。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:Storyblok資金調達ヘッドレスCMS

画像クレジット:Storyblok

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(文:Mike Butcher、翻訳:Hiroshi Iwatani)

セールスフォースへのデータ入力をシンプルにするScratchpadがシリーズAで13.7億円獲得

Scratchpad(スクラッチパッド)は、Salesforce(セールスフォース)上にノーテーションのレイヤーを配置し、営業担当者がSalesforceに情報を簡単に入力できるようにするアーリーステージのスタートアップだ。米国時間2月3日、Accelが参加し、Craft Venturesが主導した1300万ドル(約13億7000万円)のシリーズAを発表した。

ScratchpadはTechCrunchが2020年10月に報じた360万ドル(約3億8000億円)のシードラウンドを含め、これまでに合計1660万ドル(約17億5000万円)を調達した。共同創業者でCEOのPouyan Salehi(プーヤン・サレイ)氏は資本を増やすつもりはなかったと述べているが、投資家は同氏のビジョンと資金が製品ロードマップの加速に役立つことを理解していた。

「正直なところ、再び資金調達することは本当に私たちのレーダーには入っていませんでした。実質的にシードと考えていたラウンドから時間が経っていませんでした。ランウェイはまだ大分残っていましたが、ボトムアップでユーザーの増加が見られ始めました。このボトムアップの動きが本当に定着し始めました」とサレイ氏は筆者に語った。

同氏は、リードインベスターのDavid Sacks(デイビッド・サックス)氏はやろうと考えていたことを本当に成し遂げ、取引はかなり簡単にまとまったと語った。サックス氏は複数のスタートアップを自ら成功に導いた。実際、ScratchpadがCraftの目を引いたのは、ポートフォリオ企業からScratchpadについて聞いたためだ。

ボトムアップアプローチは確かに開発者ツールやナレッジワーカー向けのソフトウェアで見られる。だが企業が営業担当者に特定のツールを直接利用させるのではなく、営業マネージャーを通じて販売を目指すことはよくある。エンドユーザーを早めに関与させるこのアプローチにより、エンドユーザーは有料バージョンについて管理職にアプローチする前に営業チームのメンバーとの関係を築くことができる。

通常、営業チームは自分たちに押しつけられたツールを好まない。そうしたツールは本質的にはデータベースであり、視覚的なインターフェイスを備えていても実際の仕事の進め方とは一致しない。Scratchpadは、営業チームがワークフローをうまくこなすためにいつも使っているスプレッドシートやメモアプリケーションのようなインターフェイスを提供するが、Salesforceに直接接続する。

有料で提供するのは、すべてのデータをまとめ営業チームで起こっていることの全体像を把握する方法だ。ScratchpadのデータはSalesforceデータベースに自動的にリンクするため、ユーザーは確実にSalesforceを使用することができる。

同社は、個々の営業担当者のワークスペースを構築する最初の作業を完了した。次のフェーズで、また今回の資本によって一部カバーされるのは、チームのワークスペースを構築すること、およびデータが個人からチームビューにどのように流せば、管理職が個々の担当者の仕事についてより多くの洞察を得ることができるかを検討することだ。これにはメモが含まれる。メモは通常Salesforceには含まれていないが、顧客とのやり取りに関する多くの情報を提供する。

これが何千人ものユーザーの共感を呼んでいる(ただし、サレイ氏はまだ正確な顧客数を共有したくないようだ)。顧客にはAutodesk、Brex、Lacework、Snowflake、Twilioが含まれる。

サックス氏は、プロダクトがウイルスのように広がっていく様子が好きだという。「営業担当者がScratchpadを使い始めると2つのことが起こるようになります。毎日の習慣になり、チームメートと共有するようになります。この『ウイルス拡散現象』は珍しいものであり、製品と市場の適合性が非常に高いことを示しています」と同氏は声明で述べている。

カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Scratchpad資金調達Salesforce

画像クレジット:sanjeri / Getty Images

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(文:Ron Miller、翻訳:Nariko Mizoguchi

ワークロードとレイテンシーを最適化するソフトウェアGranulateが31.5億円調達

ビデオストリーミング、ゲーム、メディア集約型広告、マーケティング技術などのサービスは、2020年からオンライントラフィックの急増により、これまで以上に帯域幅とバックエンドのレイテンシー(待ち時間)に負荷がかかっている。しかし現在のクラウドの世界では、ほとんどの組織にとって、その問題を解決するということは、計算機パワーに膨大なコストをかけるか、独自のレイテンシー解消技術に大々的な投資を行うことを意味する。

このような状況が、スタートアップに最適化ツールを開発する機会を与えた。米国時間2月3日、Granulate(グラニュレート)という企業が、資金調達ラウンドを発表した。同社は組織がそうした負荷をよりインテリジェントかつコスト効率よく処理できるソフトウェアを開発している会社で、過去10カ月間に顧客が360%、収益が570%増加している。

テルアビブを拠点とするこのスタートアップは、Red Dot Capital Partnersが主導するシリーズBで3000万ドル(約31億5000万円)を調達した。さらに以前の出資者であるInsight Partners、TLV Partners、Hetz Ventures、そして新しい出資者のDawn Capitalが参加している。

このタイミングのシリーズBは、現在の市場における需要を物語っている。Granulateは2020年4月に1200万ドル(約12億6000万円)のシリーズAを行ったばかりなのだ。投資家たちの間では、こんなにすぐに再調達が行われたのは、その事業の成長が後押ししたからだといわれている。

「Granulateのユニークな技術と前回の調達以降のすばらしい成長は、彼らの画期的な最適化ソリューションに対する、成長する市場の需要を反映しています」と声明で語るのは、Red Dot Capital PartnersのマネージングパートナーであるYaniv Stern(ヤニブ・スターン)氏だ。「インフラコストの上昇に直面している企業や、運用コストの削減に注力している企業にとって、Granulateはすでに導入している他のソリューションに関係なく、さらなる改善を促進できるソリューションを提供するのです」。

Granulate はこの最新ラウンドにおける評価額を開示していないが、スタートアップの調達総額はこれで4500万ドル(約47億3000万円)となる。

Granulateがターゲットとしている市場の機会増加は、メディアを多用するコンテンツや、eコマースのようにサイトやアプリ上での効率的な応答性を確保することでショッピングカートを放棄しないようにさせるサービスが増えていることに対応している。

しかし、企業はより質の高いサービスで顧客に満足度を与えようとしている一方で、同時に利益にも目配りをしている、そのためインフラやコンピューティングのコストを低く抑えようとしているのだ。

Granulateのソリューションは、クラウドもしくはオンプレミスのいずれかのサーバー層に設置されたソフトウェアである。それは顧客が重要と指定したワークロードをAIを使用して検出し、優先順位を上げてより効率的に動作するようにする。Granulateによれば、同社のソフトウェアは、レスポンスタイムを最大40%向上させ、スループットを最大5倍に引き上げながら、最大60%のコスト削減が可能だという。現在同社はAmazon(アマゾン)のAWSやMicrosoft(マイクロソフト)のAzureとパートナーシップを結んでおり、Google Cloud Platform(グーグルクラウドプラットフォーム)との協議が「初期段階」に入っているという。

通常、Netflix(ネットフリックス)、Google、Amazonなどの大手テック企業は、独自の最適化技術を構築するために巨額の投資を行っている。しかし小規模な組織には同じ手法をとりにくい領域のものだ(たとえGoogleなどよりも小さな組織だったとして、投資額は巨額になり得る)。

「私たちが開発したようなものと似たものが、Netflixの内部にも存在していることに私たちは気がついています」とGranulateの共同創業者でCEOのAsaf Ezra(アサフ・エズラ)氏はインタビューで語っている。「しかし私たちから見れば、それはこの問題に対処するためにはどれだけの規模が必要なのか、そして低レベルの問題に対処するためにどれだけ人材を雇う必要があるかの証拠なのです」。

同社の顧客には、少なくとも1つの大手小売店(名前は非公開)、AppsFlyer(アプスフライヤー)、Period(ピリオド)、PicsArt(ピクスアート)などがある。

興味深いのは、5Gの成長が大きな問題にどのように影響を与えるかということだ。エズラ氏が指摘するように、フロントエンドのレイテンシーは間違いなく改善されるだろう。

「5GとGranulateは共食いの関係にはありません」と彼はいう。「実際には、5Gが標準になればデータの往復時間は短縮されますが、フロントエンドに割かれる時間の割合が少なくなる一方で、バックエンドのレイテンシーが一層問題になることでしょう。5Gが解決するのはサーバーへのアクセスだけで、サーバー自身のレイテンシーは解決しないでしょう」。

エズラ氏は、長期的にGranulateは、レイテンシーのためにすでに提供しているものを中心に、より多くの最適化および管理ソリューションを追加していくことになるだろうと述べている。競合他社の中には統合されたものもある、2020年6月にNetApp(ネットアップ)に買収されたSpot(スポット)がその例だ。より幅広いプラットフォームに対応できることがこの先顧客の興味を維持するための重要な手段だ。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:Granulate資金調達

画像クレジット:Jon Feingersh Photography Inc / Getty Images

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:sako)

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

個人・法人向けにメンタルヘルスサービスを提供する313は2月4日、シードラウンドにおいて資金調達を実施したと発表した。金額は非公開。引受先はW venturesおよびEast Venturesなど。また、オンラインカウンセリングサービス「マイシェルパ」の提供を開始した。

マイシェルパは、精神医学および心理学の膨大な知見を基盤とし、確かな経験を持つ医師の監督の下、心の悩みを持つすべての者に信頼できるカウンセリングを届けるプラットフォーム。

マイシェルパを提供する313は医療博士・精神科専門医が運営しており、実際のカウンセリングも臨床心理士や公認心理師などプロフェッショナルが対応。また予約からカウンセリングまですべてオンラインで完結するため、好きな時に好きな場所でカウンセリングを受けられる。カウンセリング1回(50分)あたりの料金は、税込み6600円。追加で費用が発生することはない。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

カウンセリング予約の際は、まず予約サイトで臨床心理士や公認心理師の資格を持つカウンセラーを選択する。担当者を選ばず、おまかせ予約とすることも可能。最後に、カウンセリング希望日の2日前までの日付で、スケジュールを選択する。

精神科医によるオンラインカウンセリング「マイシェルパ」が資金調達とサービス開始発表

313によると、有病率から、何らかの精神疾患ないしメンタルヘルス不調を抱えている潜在的な人数を試算すると、日本では1386万人に上るという(「アメリカ精神医学界データ」から同社試算)。しかし、実際の通院者数は約350万人にとどまっており、その背景としては、既存メンタルクリニックの予約が常に困難なことや、メンタルクリニックを受診することへの心理的のハードルが高さが考えられるとしている。

また、日本の寿命・健康ロスの10%は、精神疾患(認知症を除く)によるものとされ、10代〜30代で見ると自殺が死因のトップとなっており、社会的な損失が大きいことが問題視されている(厚生労働省「平成30年(2018)人口動態統計月報年計(概数)の概況」:第7表 死亡数・死亡率(人口10万人対)、性・年齢(5歳階級)・死因順位別 )。

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カテゴリー:ヘルステック
タグ:医療(用語)自殺予防 / 自殺防止資金調達(用語)メンタルヘルス(用語)日本(国・地域)

評価額2170億円を超えるMambu、バンキングサービスを強化するSaaSプラットフォームに約140億円を調達

チャレンジャー銀行、既存の銀行、そしてあらゆる銀行サービスに参入してくる多くの企業には共通点がある。それは、クレジットラインや預金、当座預金などの新商品を立ち上げる際に、最近ではそうした多くの企業が一から作り上げるのではなく、サードパーティーのテクノロジーを利用してサービスを提供していることだ。米国時間1月7日、そのようなテクノロジーを提供する大手企業の1つが、事業拡大のための大規模な資金調達を発表し、この市場の成長を裏付けた。

Mambu(マンブー)は、ベルリンを拠点とするスタートアップで、SaaSバンキングプラットフォームを自称していて、銀行などにAPIを介して融資や預金などの銀行商品を強化するテクノロジーを提供している。マンブーは、1億1000万ユーロ(1月7日時点のレートで約1億3500万ドル、約140億円)のラウンドを終了し、この資金調達により、調達後の評価額は17億ユーロ(同20億ドル強、約2160億円)になることが確認された。

CEO兼共同創業者のEugene Danilkis(ユジーン・ダニルキス)氏は、この資金を利用して、すでに事業を展開している50の市場をより手厚く拡充し、南米やアジアなどの特定の地域にも力を入れていく予定だと述べている(「シリコンバレーは死んだのか?」という話題に注目している方へ。同社は、マイアミに米国オフィスを構える数多くのテック企業の1つだ)。

マンブーは前年比100%の成長を遂げているが、注目すべきは、同社が前回2019年に3000万ユーロ(当時のレートで約37億6000万円)を調達したときには50の市場をカバーしていたことだ。マンブーはそうした市場に投資し、事業を拡大していく予定だ。

今回のラウンドはTCV(ティーシーブイ)が主導しており、Tiger Global(タイガーグローバル)とArena Holdings(アリーナホールディングス)に加え、以前の出資者であるBessemer Venture Partners(ベッセマー・ベンチャー・パートナーズ)、Runa Capital(ルナキャピタル)、Acton Capital Partners(アクトン・キャピタル・パートナーズ)も参加している。Netflix(ネットフリックス)、Facebook(フェイスブック)、Spotify(スポティファイ)などに投資を行ってきたTCVは、大規模な成長ラウンドへの投資を行うことで知られ、最近ではRevolut(レボリュート)Spryker(スプライカー)Mollie(モリー)Relex(リレックス)などへの投資を行い、ヨーロッパのフィンテックやeコマースの大手企業を支援することでも名を馳せている。

マンブーが注力する市場では、スマートフォンやウェブの利用増加を活用する銀行や金融機関のサービスの新勢力に大きなチャンスがある。

預金の入出金、ローン申請書の記入、個人やビジネスへの融資を最終的に判断する審査役との面会のために銀行のリアル店舗に行く必要がある時代は遠い過去の話だ。実際、そのような従来型の店舗の多くはもはや存在さえしていない。その役割は、アプリやウェブサイト、オンデマンドサービスが取って代わり、人々が時間とお金を費やすオンライン上に存在している。

ダニルキス氏によると、マンブーのプラットフォームは現在、約7000種類の銀行商品をカバーしている。これらの商品は、融資、当座預金口座、普通預金口座の3つの主要なカテゴリーに大別されるが、商品の数の多さは、今日の銀行サービスがいかに多くの方法や形態で提供されているかを如実に物語っている(例えばクレジットを例にとると、さまざまな種類のカード、店頭販売のペイレイター商品、ストレートローンなどを介してサービスを利用できる)。また、独自の商品に加え、TransferWise(トランスファーワイズ)のようなサードパーティーの金融サービスへのリンク、セキュリティなどの追加サービス(銀行のプラットフォームとしては当然のことだろうが)、「プロセスオーケストレーション」(ビジネスプロセス管理ツールの提供に等しい)のためのプラットフォームも提供している。

Gartner(ガートナー)の推計(マンブーが引用)によると、銀行系ソフトウェア市場の規模は1000億ドル(約10兆4000億円)を超え、2桁台の成長率で拡大している。マンブーの顧客リストを見ると、最近そのシェアの一部を争っている企業の顔ぶれが見えてくる。N26やOakNorth(オークノース)のようなチャレンジャー銀行だけでなく、Santander(サンタンデール)やABN Amro(エービーエヌアムロ)のような大手の既存銀行、Orange(オレンジ)のような通信事業者も含まれており、これらを合わせて約2000万人の顧客と約120億ドル(1兆2500億円)が管理下にあるとマンブーは述べている。

そして当然のことながら、大きな好機があるということは、マンブーのような企業にとって競合他社の数も増加していることを意味している。Rapyd(ラピッド)やUnit(ユニット)のような新しい企業だけでなく、昨年大規模な資金調達を行ったThought Machine(ソートマシン)Temenos(テメノス)、イタリアのEdera(エデラ)などがそうだ。SaaS銀行プラットフォームの分野に新規参入した企業が、事実上「既存」となった企業とどのように対峙していくのか、興味深いところだ。2011年に創立したマンブーは設立から10年を迎えようとしている。こうした動きは統合につながる可能性もある。

顧客リストに立ち戻ると、通信会社やネオバンクのような実際には金融サービス事業を行っていない企業が、APIベースのサービスを銀行業務に活用するというロジックが理解できる。そうした企業は金融サービス自体を提供する代わりに、金融サービスを提供するための質の高いアルゴリズムと、金融サービスを使いやすくするための高速なインターフェースを構築することに重点を置いている。この顧客リストに大手銀行も載っていたことは興味深い。その理由は、大手銀行も新興勢力に対して対抗策を練っているということだ。

「確かに、銀行は機能と能力を持っているが、新しいことを立ち上げるには、スピードやコストが問題となることが多い」とダニルキス氏は言う。「第2世代のシステムを持っている銀行もあるかもしれないが、多くはもっと古いシステムだろう。そして、金融商品の動作を変更することは、小さな変更でも問題が起きる可能性があるため、非常に困難でありリスクが高い。また、APIを使って動作するように設計されていないシステムを、他のシステムに接続することは不可能ではないにしても非常に困難であり、リアルタイムでの接続などは到底無理だ。特定のソリューションやサービスを、独自に構築することは不可能であるか、現実的ではない」。

TCVのパートナーであるJohn Doran(ジョン・ドラン)氏は、今回のラウンドでマンブーの取締役会に参加している。またマンブーは、一部の人からは既存の企業と見られているかもしれないが、その早期参入者としての立場を活かしてマーケットシェアを獲得しただけでなく、投資家の間でも持続力のある企業の1つとして注目を集めている。

「マンブーは、銀行のソフトウェアをクラウドに移行する機会をいち早く活用した企業の1つだ」とドラン氏は声明の中で述べ、次のように続けている。「従来、市場は大規模で動きの鈍いオンプレミスのベンダーに支配されてきたが、マンブーのチームは、数十億ドル規模で急速に成長しているこの市場において、高度に構成可能で完全にクラウドネイティブな製品を構築した。長年にわたってマンブーの発展を見守ってきたが、ユジーン氏とマンブーのチーム全員が世界中の顧客にサービスを拡大するための過程でパートナーを組むことができたことを本当に嬉しく思っている」。

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カテゴリー:フィンテック
タグ:SaaS 資金調達

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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Dragonfly)

Duality Labsはハードウェアアクセラレーション利用の準同型暗号テクノロジーで15.3億円のDARPA契約を獲得

現在、AIに適切な学習をさせることはテクノロジービジネスにとって不可欠の要素だが、そのために個人情報等を含む大量データを処理することには本質的に危険がつきまとう。米国防省のDARPA(国防高等研究計画局)がDuality Labsと1450万ドル(約15億3000万円)の調達契約を結んだのはデータを復号化せず、暗号化されたまま大量のデータを処理する新しいハードウェアアクセラレーションを開発しようと考えているためだ。

Dualityは完全準同型暗号化を採用したシステムを提供している。技術的な詳細に踏み込むことは避けるが、現在の暗号化手法の大きな問題点は、暗号化されたデータはまったく読み取れなくなることだ。読み取れなくすることがそもそも暗号化の目的だから当然だが、復号化鍵がない限り暗号化されたデータは無意味なノイズとなってしまう。大規模なデータセットをAI学習のために復号化すると膨大な処理コストがかかる。さらに平文は、外部のハッカーからの攻撃その他の悪用の危険に対して脆弱になる。

ただしデータを復号化せずにAI学習や分析のための処理ができるようにする方法がいくつか存在する。その1つが完全準同型暗号化(FHE)だ。ところがFHEは、通常の暗号化よりもさらに計算量が多くなる。このためギガバイト、テラバイト級の大きなデータが必要なアプリケーションではFHEは利用できなかった。同様の目的を達成する方法は他にもあるが、FHEが突然10倍も効率化されれば大変な朗報だ。

当然DARPAもこの分野に強い興味を抱いているが、暗号化分野の他の企業や組織に比べて桁違いに資金が豊富だ。今回の調達契約は、DPRIVE(仮想環境でのデータ保護)と呼ばれる広範な取り組みの一部だ。FHEを10倍からそれ以上高速に実行できるASICチップ(コードネーム「TREBUCHET」)を開発するという目標が発表されている。

Dualityチームは南カリフォルニア大学、ニューヨーク大学、カーネギーメロン大学、ドレクセル大学およびSpiralGen、TwoSix Labから人材を集めており、 この分野での経験も長い。実際、以前にもDARPAと協力したことがあり、熟知した領域だという。

Duality Labsのディレクターで主席研究員のDavid Bruce Cousins(デビッド・ブルース・カズンズ)氏はプレスリリースで次のように述べている。

Dualityは過去10年以上にわたってDARPAが資金提供するFHEの革新と応用に協力してきました。我々のメンバーは2010年にはDARPAのPROCEEDプログラムにおいて最初の準同型暗号化シのためのハードウェアアクセラレータのプロトタイプを開発しています。また2015年にはDARPAのSAFEWAREプログラムで最初に開発されたPALISADEオープンソースFHEライブラリの開発責任者でした。

ご覧のとおりDualityとDARPA頭字語には不足していないようだ。

開発、実用化のスケジュールは今のところ明確ではないが、完全準同型暗号処理の高速化はAIの利用に影響するところが極めて大きい画期的なテクノロジーであることを考えると、なんらかの結果が出るには少なくとも2、3年はかかると思われる。

カテゴリー:人工知能・AI
タグ:Duality LabsDARPA機械学習暗号化資金調達

画像クレジット:Yuichiro Chino / Getty Images

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(文:Devin Coldewey、翻訳:滑川海彦@Facebook