電動キックボードのLimeが上陸へ「日本は参入が最も難しく、最もポテンシャルが大きい市場」

LimeのCEO、Brad Bao(ブラッド・バオ)氏

電動キックボード事業を展開するLime(ライム)は早ければ今年中に日本市場に参入する。同社のCEOのBrad Bao(ブラッド・バオ)氏がTechCrunch Japanとの取材で明かした。

日本といえば規制大国。電動キックボードを取り巻く環境についても例外なく厳しい。

Limeは出資を受けているデジタルガレージとともに日本展開に向け準備しているが、なぜ日本で電動キックボードのシェアリングサービスの展開を目指すのだろうか。「Limeは日本での電動キックボードの普及に大いに貢献できる」と意気込むバオ氏に、電動キックボードとマイクロモビリティーの日本における可能性について話を聞いた。

電動キックボードの“社会的な意義”

ライドシェアやカーシェアリング、自転車のシェアリングなど、近年、様々な移動のオプションが誕生してきた。だが、そんな中でも電動キックボードのシェアが圧倒的に拡大している理由は、混雑を緩和できる、時間を節約できる、環境に優しい、など、「他の乗り物にはない利点」が多く存在するからだとバオ氏は説明する。

バオ氏はKinzon Capitalの代表パートナーでもある。モビリティ領域を研究する中、Uberのようなライドシェアに注目していたが、「Uberにより交通渋滞や環境汚染が改善されるわけではない」と気付き、2017年にLimeを共同創業する。創業から約2年だが、同社はこれまでに7.77億ドル(約844億円)調達し、バリュエーションは24億ドル(約2600億円)だ。

「車やUberを使っても交通渋滞に引っかかってしまうので、毎日のように同僚と『今日も渋滞はヒドかった』と会話をすることになる。だからこそ、苦しみ続けながら繰り返し文句を言うのではなく、何らかのアクションを取る必要があった。単に『短距離移動』にビジネスチャンスを見出しただけではなく、社会的意義を感じてこの事業を立ち上げた」(バオ氏)。

LimeはこれまでにLime BikeやLime Transit Podなども展開しているが、現在注力しているのが電動キックボード。

Limeが4月に発表したレポートによると、「車でなくLimeを利用することで、ユーザーは1日26ドル節約でき、年間200kgものCO2を削減できる」。同社いわく、Limeはこれまで90万ガロンものガソリンを節約。これは1700台の車が一年間稼働しなかった際に節約できるガソリンの量と同等だ。

加えて、National Household Travel Surveyが2010年にリリースした調査結果によると、車や自転車の利用を含む全ての移動の40%が2マイル以下、そして1マイル以下の移動の60%は車、ピックアップトラックやSUVなどの自家用車によるもの。そのため、移動の多くは車でなく電動キックボードで済む、とも言えるだろう。

車以外の選択肢だと、電動キックボード以外にも自転車シェアリングなどがあるが、自転車はドックまで取りに行く必要があるうえ、最悪必要時にすべて貸し出されていることも。その点、アプリでその辺に転がっている電動キックボードを探すのは比較的楽だ。

また、電動キックボードは「自転車と違い、どんな服でも乗ることが可能」。バオ氏いわく、「性別や年齢を問わず乗りこなすことができるため、自転車と比べて女性の利用者の率が高い」。確かに、スカートを履いている場合やスーツをきている場合などには、自転車よりも電動キックボードのほうが乗りやすいだろう。

同社が3月にリリースしたレポートによると、Limeユーザーの33%は女性。一方、通勤で自転車を利用する人たちのうち28%が女性。大差ないように思えるが、バオ氏いわくこの差は今後も開いていく見込みだ。

電動キックボードの王者、Limeは日本をどう見ているのか

日本の規制が厳しいことはバオ氏も十分に理解している。だが、同氏はそれ以上に「可能性」を日本に見出しているようだった。

「日本は最も参入しにくい市場だが、最もポテンシャルのある市場でもある」(バオ氏)。

展開する場所は現段階では定かではないが、地方都市で実証実験を行なった末、いずれは「ビッグチャンス」である東京での展開も視野にある。

「日本は都心部の人口密度が非常に高く、交通機関は混雑しており、シェアリングサービスが活躍できる。加えて、我々はサービスを提供し利益を得るだけでなく、『新たなライフスタイル』を提案することが重要だと考えている。より環境に優しく、効率的で楽しく。そして東京のような街は文化的な影響力が強い。他の街や国へ文化が伝わっていく」(バオ氏)。

バオ氏いわく、東京では高いタクシーに金を出すか、駅で電車を待つしか選択肢がないため、Limeの電動キックボードは大いに活躍することができるという。東京、もとい日本にはUberなどのライドシェアもないも当然。

なぜ他社の日本参入よりもLimeの上陸のほうが「電動キックボードの普及・定着」に大きな意味があるのか。バオ氏は、それはこれまでLimeが都市と「データをシェア」することで業界をリードしてきたからだと話す。

「そのデータをもとに、都市はキックボードの設置エリアなどを検討する。このようなデータは街は持っていないし、プライベートカンパニーは従来、シェアすることを拒んできた」(バオ氏)。

Limeでは乗車位置や降車位置のほか、交通状況、ホットスポットなどに関するデータも蓄積している。

「プラニングのため、街と情報をシェアしたり、安全のためのキャンペーンや低所得層やスマホを持っていない人たち、クレジットカードを持っていない人たちでも利用できるようにしている。日本では現金がよく使われているが、すでにソリューションはある」(バオ氏)。

そして「Limeは世界中の地下鉄やバスなどの交通機関との連携してきた。そして我々はあくまでラストワンマイルに最も適したソリューションを提供している」と同氏は加えた。

現在は日本には電動キックボードに特化した規制はなく、道路交通法の規定により公道の走行には一定の制約がある。具体的には、国内では原付バイクと見なされるため、前照灯、番号灯、方向指示器などを搭載しないと公道は走れない。利用者は、原付バイクの免許の携帯とヘルメットの着用が必須となる。

だが、バオ氏は「我々が交渉した街や政府は変化に対し柔軟な姿勢だった」と話し、「UberLyft、そしてその他のサービスがあったからこそ、ライドシェアが盛り上がった」ように、他のローカルプレイヤーと連携することで電動キックボードの普及に貢献し、海外では実現してきた規制緩和を日本でも現実のものとすることを誓った。

現在、日本では、電動キックボードのシェアリングサービス「LUUP(ループ)」が、将来的な実装に向け「安全性・利便性を検証する実証実験」を7月1日より浜松市と開始したほか、同様の事業を展開するmobby rideが福岡市での実証実験に続き神戸市にて体験会を8月9日に開催するなどと発表している。

ユーザーの安全のために2018年11月より半年間で25万個ものヘルメットを世界中に無料配布すると宣言したり、飲酒運転を阻止するべく対策を練っているというLime。

バオ氏は「あくまでも規制は厳守する」と繰り返し、規制や他社の介入をディスラプトするのではなく、あくまでも「業界のリーダー」として日本での電動キックボードの普及に貢献すると誓った。

「デジタルガレージやローカルチームと協力し、ローンチまでに市場の分析を進めていく」(バオ氏)。

由比ヶ浜でWi-Fiと電源完備の海の家を1時間1000円でネット予約可能に

会議室のシェアリングサービスを提供しているスペイシーは、8月31日まで期間限定で神奈川県由比ヶ浜にネット予約できる海の家「真夏の会議室」をオープンした。

会議室というだけあって、電源やWi-Fiを完備しているのが特徴だ。最近ではネット予約できる海の家も増えているが、BBQなどの料理コースを選ぶことが必須の場合が多く、席だけを予約できる店舗は少ない。真夏の会議室では、10時~22時の間を30分あたり税別500円で席予約のみで利用できる。

海の家なので、通常のダイニングテーブルとイスだけでなく、ローテーブルとソファ席のエリアもある。もちろん、休憩時間に泳ぐ海で泳ぐことや、別料金でBBQなども楽しめる。

海の家で仕事がはかどるかどうかは本人次第だが、浜辺では潮風が吹くほか、海水がスマートフォンやPCにかかる恐れもある。塩分は精密機械には大敵なので、しっかりと対策を施したうえでネット予約で海の家を楽しみたいところだ。

ランチサブスクのPOTLUCKがクラウドキッチンのKitchen BASEと連携

RYM&CO.は7月29日、同社が運営する定額制テイクアウトサービス「POTLUCK」(ポットラック)とSENTOENが運営するシェア型クラウドキッチン「KitchenBASE」(キッチンベース)との連携を発表した。これにより、KichienBASE内で営業している店舗のメニューが、POTLUCKのサービス経由で定額テイクアウトが可能になる。

POTLUCKは、30日間有効のチケットを月額料金で購入し、登録されている店舗の中から好きな店を選んで事前にランチを注文。あらかじめ指定した時間に店舗まで足を運べば、行列に並ぶ必要なく食事を受け取れるというサービス。現在、東京都内の渋谷、恵比寿、代官山、表参道をサービスエリアとしている。料金プランは、ランチを3食ぶんを受け取れる1490円コース、12食ぶんの7800円コース、食べ放題の1万2000円コースの3種類。1日に2回まで利用可能なので、夜にランチメニューを選べる店舗であれば夕食もPOTLUCKでまかなえる。また一部の店舗では土日の利用も可能だ。

KitchenBASEは、オンラインデリバリーに特化した飲食店向けのシェア型クラウドキッチンとして、6月18日に東京・中目黒エリアにオープン。料理の仕込み場所を提供、配達要員の確保、開業後のマーケティングサポートなどをKitchenBASEに任せられるため、店舗側はメニュー考案と料理提供のみに専念できるのが特徴だ。調理設備や収納スペース、販売促進のサポートなどがKitchenBASEから提供されるため、通常1000万円以上すると言われる飲食店の開業資金を約95%抑えられるとのこと。これまではデリバリーのみだったが、POTLUCKとの提携によってテイクアウトでの飲食提供も可能になった。

定額でのランチのテイクアウトサービスが可能な店舗とメニューは以下のとおり。

  • わかめを練りこんだ満腹健康麺!つるもちヘルシーラーメン
    野菜たっぷりヘルシーわかめ麺
    ナスとキノコを載せた食物繊維が豊富のわかめラーメン。 冷たいスープを使ったヘルシーな一品。
  • 新感覚油そばハンディクラフトワークス
    クラシックビーフパレット
    肉と粗挽きフランク、野菜が豊富なメニュー。見た目よりもあっさりしているので女性人気が高いとのこと。自家製麺は保存料なしの北海道産春よ恋と埼玉県産ハナマンテンの小麦を使用。
  • タワンドンデリ&カリー×タピオカミルクティー
    マッサマンカレー
    タイ南部のイスラム教徒の影響を受けて生まれたと言われる人気メニュー。ジャスミンライス付き。

カナダの駐車場マーケットプレイス「Rover」がサブスクをテスト中

【この翻訳記事は、英語版記事を抄訳、編集したものです】

カナダのトロントに拠点を置くスタートアップのRoverは、空いている駐車スペースをリスティングしてほかの人にオンデマンドで貸すサービスを運営し、自社のサービスを「駐車場版のAirbnb」と説明している。駐車場の所有者にとっては受動的ではあるもののいくらかの収入が得られ、おそらく駐車スペースの稼働率が上がる。そのRoverが、サブスクリプションのテストをしている。

Roverはこれまで、プラットフォーム上のスポットを1回の利用ごとにオンデマンドで提供してきた。現在は初秋までの予定で、月額サブスクリプションのテストを実施している。オンデマンド価格より割引、事前予約、プレミアムな顧客サービスなど、いくつかの異なるサブスクリプションを試しているという。

Roverは現在、トロント、モントリオール、オタワで駐車スポットのサービスを提供しており、今後はカナダの西海岸へ、将来的にはカリフォルニアに進出する計画だ。

Uberは最近、配車サービス、Eats、自転車、スクーターのサブスクリプションのテストを開始した。Roverは、これはオンデマンドからサブスクリプションへという動きが広まっていることの一例だと述べている。サブスクリプションは、利用者にとっては何度も料金を支払うより便利な方法だ。しかしさまざまな業界でこのビジネスモデルが増えれば、利用者が便利さと引き換えに支払うコストの限界が試されることになるだろう。

画像:Harry How / Getty Image

[原文へ]

(抄訳、編集:Kaori Koyama)

家具サブスクの「airRoom」が約1億円を資金調達しパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

写真中央がElaly代表取締役の大薮雅徳氏

家具やインテリアのサブスクリプションサービス「airRoom(エアールーム)」運営のElalyは7月24日、オークファン、F Ventures 2号投資事業有限責任組合、名古屋テレビ・ベンチャーズ、コロプラネクスト 3号ファンド投資事業組合、Japan Angel Fund 1号投資事業組合、そして複数の個人投資家を引受先とした第三者割当増資により、総額約1億円の資金調達を実施したと発表。同社は2018年10月にも数千万円規模とみられる資金調達を発表している。

個人投資家には元メルカリ執行役員CTOの柄沢聡太郎氏、ラクサス・テクノロジーズ代表取締役社長の児玉昇司氏、Smartly.ioのSales Director(Japan)坂本達夫氏、そしてベクトル代表取締役社長の西江肇司氏が含まれる。

2018年10月にローンチしたairRoomは人気ブランドの家具を月額500円から利用できるサブスクリプションサービスだ。東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県と大阪府で利用可能なこのサービスでは、1万点以上におよぶ家具のラインナップを用意している。プロのインテリアコーディネーターによるコーディネート提案や配送料、返却料、組立、設置が無料となっており、「安心保証」付きのため、傷をつけても心配する必要はない。また、2018年12月には、物置きのシェアリングサービス「モノオク」との連携により、家具の一時預かりサービス「airRoomトランク」の提供を開始した。パッケージ商品のサブスクリプションも2018年11月に開始されている。

TechCrunch Japanでは、2018年5月設立のElalyで代表取締役を務める大薮雅徳氏に今回の資金調達とairRoomの今後の展開について話を聞いた。

家具サブスクのリーディングカンパニーを目指すための株主構成

大藪氏は、「今後、家具サブスクの2Cの市場を作り上げていく上で、まずは僕らがそこのリーディングカンパニーであるというところを市場に対して示していく必要がある。そのためには、上場がやはりかかせない。そして上場を成し遂げていくためには大規模資金は必要ではあるが、一方で得た資金で最大限のレバレッジを効かせていかなければならない。そのためには、そこに対する知見を持っているメンバーを入れる必要があった」と話す。

今回の調達ではモノのサブスクに知見のあるメンバーを株主として迎えた。児玉氏は月額制でブランドバッグが使い放題の「Laxus(ラクサス)」運営の代表取締役社長、Smartly.ioの坂本氏はカメラ、家電、ガジェットのレンタルサービス「Rentio(レンティオ)」に投資しており、コロプラネクストはLaxusの株主。加えて、既存株主のサムライインキュベートは定額制ファッションレンタルの「airCloset(エアークローゼット)」に出資している。

大藪氏は、これにより「国内におけるそれぞれのドメインにおいての第一線を走っているスタートアップの知見が手に入る」と述べた。

今後の全国展開を見据え、愛知県は名古屋テレビ・ベンチャーズ、九州は福岡が拠点のF Venturesに協力を仰ぐ。また、airRoomは当初より家具に留まらず、コマース領域を全方位的に包括していくことを考えているため、その面ではメルカリ元CTO柄沢氏の知見を活かす。

そして、家具のサブスク市場の構造が「クラウドワークスとランサーズの状況に類似している」ため、上場を目指すと言う意味でもクラウドワークスCOOの成田修造氏を株主として迎えた。

今後はパーソナライズを強化、C2C展開も視野に

今回調達した資金をもとに、Elalyは体制を強化、商品ラインナップを拡充し、人工知能やARなどのテクノロジーを利用したソリューション開発への投資や人材採用を行う予定だ。同社は顧客への家具のコーディネートの提案をウェブで展開中だが、ElalyではairRoomのアプリを開発し「部屋の写真をパシャっと1枚撮り『このような生活をしたい』と説明するだけで家具のコーディネートを提案されるというところを目指していく」(大藪氏)

airRoomはローンチしてから約半年。「解約率が見るからに減っている」そうだ。大藪氏いわく、その要因はコーディネート提案。家具の稼働率は現在90パーセントを超えており、「ほぼ在庫がない状況で、返却もわずか」なのだという。今後は強みである「パーソナライズ」をさらに強化していく予定だ。そのため、「顧客データは勿論のこと、加えて商品データと不動産データ、この3つのデータを取っていく」と大藪氏は説明。

「従来の家具メーカーが持っている顧客データは、性別や年齢、住んでいる場所など、本当に一般的なデータのみ。だが、適切にパーソナライズしようとするのであれば、そのデータだけでは不十分だ。例えば、ペットを飼う人と飼わない人では選ぶ家具には差がある。より洗練されたパーソナライズには顧客データだけでは足りていない」(大藪氏)

商品データに関して、大藪氏はairRoomでは「ID管理を11つの商品ごとに行なっている」と述べた。これにより、「どのようなユーザーに貸したらどの程度の傷などが付いた上で返却されるのかがわかる」(大藪氏)

不動産データは、部屋の間取りやデザインなどのデータだ。「例えば、床が白い部屋に住んでいる人と床が一般的な茶色なのとではやはり選ぶ家具は違う」(大藪氏)

大藪氏は、「顧客データ、商品データ、不動産データの3つの掛け合わせが重要」と説明した上で、「これを前提としてデータを取っていき、パーソナライズの精度を上げていくというのが短期的に目指しているところだ」と話した。

airRoomでは現在、比較的リーズナブルな値段の家具を揃えているが、ラインナップを増やしていく上で、「50万円、60万円の家具」も借りられるようにしていく。

「そうなった時に、貸し借りのトランザクションを通じて溜まる与信データをどんどん溜めていきたいと考えている。これによって、例えば、『この人は安定的に使ってくれる』、『綺麗な状態で返してくれる』、というのがわかれば、使える家具の値段の幅がもう少し上がる、というところをやっていきたい。サブスクは主にB2Cだが、airRoomでは徐々にC2C化していくことを検討している」(大藪氏)

ヘリコプターシェアのAirXが東京〜下田・箱根間の格安・超速直行便を夏季限定で運行

AirXは7月22日、西武鉄道やプリンスホテルなどを傘下に持つ西武ホールディングスとの協業を発表した。夏季限定で、東京~下田間東京~箱根間のヘリ直行便を格安で運行する。

ヘリコプターを利用するため、それぞれの所要時間は自動車の3分の1程度となり、下田までは55分、箱根までは35分。価格はそれぞれ、3万2900円、1万9800円。同社調べによると、ヘリコプターをチャーターした場合、下田までは12万円、箱根までは10万円の料金がかかるため、それぞれ3分の1、5分の1の料金で利用できる計算になる。

出発地は東京・新木場にある東京テレポートで、目的地は下田プリンスホテル、ザ・プリンス 箱根芦ノ湖となる。いずれも、期間は7月27日〜9月8日、最少催行人員は2名以上。詳細は以下のとおりだ。なお、盆期間は料金が1万円程度上がる。

【東京〜下田】
運行期間:7月27日~9月8日(最少催行人員2名以上、天候不順等で欠航あり)
往路出発地:東京ヘリポート〜下田プリンスホテル
復路出発地:下田プリンスホテル〜東京ヘリポート
税別料金:3万2900円(片道1人あたり、1機定員3名、3歳未満無料でひざ上搭乗可、8月10日~18日は4万3900円)
往路所要時間:午前9時30分出発〜午前10時25分到着予定
復路所要時間:午後3時30分出発〜午後4時25分到着予定

【東京〜箱根】
運行期間:7月27日~9月8日(最少催行人員2名以上、天候不順等で欠航あり)
往路出発地:東京ヘリポート〜ザ・プリンス 箱根芦ノ湖
復路出発地:ザ・プリンス 箱根芦ノ湖〜東京ヘリポート
税別料金:1万9800円(片道1人あたり、1機定員3名、3歳未満無料でひざ上搭乗可、8月10日~18日は2万7800円)
往路所要時間:午前9時30分出発〜午前10時5分到着予定
復路所要時間:午後4時出発〜午後4時35分到着予定

AirXは、ヘリコプターの座席を1席ずつ予約できるシェアリングサービス「CodeShare」やヘリコプターの遊覧プランを予約できる「AIROS Skyview」、ヘリコプターの貸し切り予約ができる「AIROS」などのサービスを手がけている2015年2月設立のスタートアップ。

CodeShareでは、東京・新木場にある東京ヘリポートから、20分で成田空港、35分で箱根、40分で初島にヘリコプターで移動できるサービスを提供中だ。価格はそれぞれ、5万9800円、6万9800円、7万9800円となっている。

家族で利用する場合はチャーターより割高になる可能性もあるが、価格がもう少しこなれてくれば、渋滞などに遭うこともなく目的地まで快適に過ごせる移動手段として有望だ。

インドのホテルスタートアップOyoが創業者の株式購入で企業価値1兆円超え

急成長中のインドのホテルスタートアップであるOyoが、同社の創業者Ritesh Agarwal(リテッシュ・アガーウォール)氏がベンチャーキャピタルSequoia CapitalとLightspeed Venture Partnersから20億ドル(約2150億円)の株式を購入し、企業価値が100億ドルになったと米国時間7月19日に発表した。

現在25才のアガーウォール氏はOyoを当時19才だった2013年に創業した。今やグローバルのホテルチェーンとしてかなりの成功を遂げ、 The Wall Street Journal(WSJ)によると、アガーウォール氏はRA Hospitality Holdingsというケイマン諸島の企業を通じて株式の持分を10%から30%に増やすことにした。このラウンドではソフトバンクも持分を増やし、Oyoの株式の半分近くを所有している。

Oyoはこれまでに自己資本で16億ドル(約1700億円)を調達し、直近のラウンドで企業価値は50億ドル(約5380億円)に達していた。他の出資者としては、Airbnb、Grab Holdings、そしてDidi Chuxingが名を連ねる。

Oyoは80カ国800都市でホテル2万3000軒を展開している。最近、同社は米国マーケットに3億ドル(約320億円)を投資する計画を明らかにした。米国では現在10州35都市でホテル50軒超を運営している。

インド・グルガオンを拠点とするOyoは今週はじめ、Oyo Worksplacesを発表した。この新事業は従業員200人超を抱えるコワーキングスタートアップのInnov8の買収で生まれた。TechCrunchのManish Singhの記事によると、この設立4年のスタートアップは約3000万ドル(約32億円)で買収された。

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(翻訳:Mizoguchi)

インドの急成長ホテルスタートアップ「OYO」がコワーキングに進出

ホテルチェーン事業を80カ国以上に拡大しているインドのOYOは、共同住居スペースの分野にも参入している。昨年9月以降、Airbnbなどのビッグネームからおよそ10億ドル(約1080億円)を調達したOYOは、新たにコワーキングスペース事業に乗り出す。

インドのグルガオンを拠点とする同社は、7月16日に「OYO Workplaces」を発表した。すでにインドの10都市で20以上の拠点が運営され、1万5000人以上が利用できる。Swiggy、Paytm、Pepsi、Nykaa、OLX、Lenskartなどの企業の6000人以上が、同社のサービスと契約している。

ニューデリーで開催された記者会見で、OYOのNew Real Estate Businesses(新規不動産部門)のCEO、Rohit Kapoor氏は「OYO Workspacesの拠点を年内に50カ所開設する計画で、来年末までにはアジアで最大のコワーキング事業にすることを目指している」と語った。

発表の中でOYOは、従業員200人以上、16カ所の拠点を持つコワーキングスペースのスタートアップ、Innov8を買収したことを明らかにした。4年前に起業したInnov8は、関係筋によると3000万ドル(約32億円)で買収された。

Innov8は、OYO Workspacesの3つのブランドのうちの1つだ。あとの2つ、WorkfloとPowerstationは安価なスペースを求める人を対象としていて、月額6999ルピー(約1万1000円)から利用できる。Innov8はプレミアムという位置づけだ。

インドのコワーキングスペースは、比較的新しい分野のビジネスではあるが、3億9000万ドル(約420億円)規模と見られている。それでもオフィスと事業用不動産のビジネスが300億ドル(約3兆2000億円)であることから見ればごくわずかだ。Kapoor氏は、OYOはコワーキングスペース市場でインドのリーダーになるだけでなく、市場規模そのものも拡大させていくだろうと述べている。OYO Workspacesはこれから、91Springboard、GoHive、Awfis、GoWork、そしてグローバルで成功しているWeWorkと戦っていくことになる。

OYO Workspacesはすべての拠点で、Wi-Fi接続、施設内キッチン、ハウスキーピング、倉庫、駐車場などのサービスを提供していく。価格は、現在もかなりディスカウントしているが、月単位または四半期単位のパスも提供して価格を下げる。

OYOのホテル事業は85万室以上を取り扱い、1日に50万人以上が利用している。各地のホテルと提携して積極的にビジネスを拡大し、世界第3位のホテルチェーンとなっている。TechCrunchが以前に報じた通り、同社は設立から6年で、最新の資金調達ラウンドでは50億ドル(約5400億円)以上と評価された。

OYOはリスティングと予約プラットフォームの両方を提供しており、売上の大半はフランチャイズと予約によるものだ。Kapoor氏は、OYOがインドと東南アジアの事業に今年投資する予定の2億ドル(約215億円)の一部がコワーキング事業に充てられる予定であると語った。

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(翻訳:Kaori Koyama)

オフィスと家具をまとめてサブスク、subsclifeとオフィスナビが提携

subsclifeオフィスナビは7月16日、subsclifeの家具・家具家電のサブスクリプションサービスとオフィスナビの賃貸オフィス検索サイト「サブスクオフィス」サービスを連携させることを発表した。具体的には、サブスクオフィスで借りた事務所に設置する家具や家電などを、subsclifeのサービスで調達できる。

subsclifeは、家具や家電を3〜24カ月の期間でレンタルできるサブスクリプションサービスを提供している2016年11月設立のスタートアップ。契約期間が終了するとレンタルした家具は返却する必要があるが、継続レンタル、別の家具や家電に交換、買取などのオプションを選べるのが特徴だ。家具や家電は51ブランドで計4万種をそろえている。

サブスクオフィスは、敷金・礼金無料の賃貸オフィス検索サイト。まず100物件からスタートし、年内に300物件まで増やす予定だ。今後は貸会議室事業者の短期貸しオフィスも選べるようになるとのこと。運営元のオフィスナビは、オフィス移転計画から入居後の諸手続きまでワンストップのサービスを提供している。これまでに9000件を超える仲介実績があるという。

シードやアーリーステージのスタートアップは、事業拡大に伴うスタッフの増員が激しく引っ越しも多い。中には、急激な人員増によってオフィスの契約期間が満了を待たずにに引っ越しを余儀なくされるケースもある。また、会社の顔でもあるオフィス、特にエントランスや来客スペースなどはきちんとコーディネートしたいところ。subsclifeとオフィスナビの提携は、このようなスタートアップ企業のニーズにマッチするではないか。

スキルシェアの「ココナラ」が総額12億円を調達

ココナラは7月10日、フィデリティ・インターナショナルへの第三者割当増資による総額12億円の資金調達を発表した。調達した資金は、中長期的な経営基盤の構築に投資するとのこと。具体的な目的は不明だ。

同社が運営する「ココナラ」は、個人のスキルや経験を商品として通販サイトのように売買できるスキルシェアサービス。現在100万人の会員が登録しており、累計300万件超のスキルが売買されているという。個人間だけでなく、法人への販売も可能だ。

売買されているスキルとしては、似顔絵・イラスト・漫画、美容・ファッション・健康、キャリア・就職・資格、ロゴ、チラシ、名刺のデザイン、ウェブサイト制作、音楽・ナレーション、集客・ウェブマーケティングなどがあり、プライベートからビジネスまで幅広い。サービスカテゴリは200種類、サービス出品数は25万件以上となっている。

フィデリティ・インターナショナルは、機関投資家や個人投資家向けに資産運用サービスを提供している資産運用会社。

会議室シェアのスペイシーがWi-Fiと電源付きで1時間100円のコワーキングスペースを開始

会議室シェアサービス「スペイシー」を展開するスペイシーは7月10日、1時間100円で利用できるワークスペース「100円スペイシー」のサービスを開始した。カフェなどよりも安価かつ電源が確保できるスペースを提供することで、働き方改革によるリモートワークを支援するのが狙いだ。同社では、都内のビジネス街を中心に年内に100カ所オープンさせたいとしている。

100円スペイシーは、スペイシーに掲載されている会議室の当日の空き時間、飲食店のアイドルタイムに発生する空席、オフィスの遊休スペースを活用することで1時間100円を実現。提供場所はJRや地下鉄の駅の最寄りで、東京、新宿、渋谷、新橋、品川、池袋、横浜、秋葉原、飯田橋、上野、六本 木、神田、有楽町、浜松町、高田馬場、青山一丁目、神保町、日本橋、大宮の19駅。

なお通常のスペイシーは、会議室を1時間500円、ワークスペースを1時間100円で貸し借りできるサービス。首都圏を中心とし約5000室の会議室や研修施設・イベントホール、約40カ所1000席のワークスペースが登録されており、会員数は20万人超だ。

月額4万円からの住み放題ADDressに新拠点、北鎌倉や伏見、屋久島も

多拠点コリビング(co-living)サービス「ADDress」を展開するアドレスは、京都、福岡、宮崎、熊本、鹿児島などの拠点を今夏から稼働させることを発表した。宮崎・日南では商店街、熊本・多良木では寝台特急をリニューアル、鹿児島・屋久島は離島など特徴的な拠点が増える。また9月末までに全国26拠点となる。同社としては、年内100拠点に向けて拠点開発を進めるとのこと。

ADDress は、同社が運営する拠点であればどこでも最長1週間住み放題になるサブスクリプション型の多拠点居住のシェアサービス。各拠点ともシェアハウスと同様に、個室を確保しつつリビングやキッチンなどは共有となる。空き家や別荘を活用することで、空き家問題の解消とコスト抑制を図っている。もちろん、老朽化している拠点はリノベーションが施される。

料金は、Wi-Fi、共有の家具やアメニティの利用、共有スペースの清掃も含めて月額4万円からの低価格を実現しているのが特徴だ。会員同士や地域住民との交流の機会も提供される。具体的な料金や条件は、個人会員は月額5万円もしくは年額48万円(月あたり4万円)、法人会員は月額8万円。同時に複数の拠点利用は不可で、1個室の連続予約は1週間まで。一度に予約できる上限日数は計14日間という制限がある。そのほか、一部の物件は光熱費が別途かかる。

【オープン予定の9拠点】

  • 宮崎・日南(7月下旬)
  • 福岡・八女(7月下旬)
  • 鹿児島・屋久島(7月下旬)
  • 熊本・多良木(7月下旬)
  • 熊本・宇城(7月下旬)
  • 東京・雑司が谷(8月上旬)
  • 京都・伏見(8月中旬)
  • 神奈川・北鎌倉(9月下旬)
  • 長野・伊那(9月下旬)


【オープン済みの17拠点(7月9日現在)】

  • 大分・別府
  • 東京・二子玉川
  • 神奈川・清川
  • 神奈川・鎌倉
  • 千葉・南房総
  • 千葉・一宮
  • 千葉・南房総
  • 群馬・長野原
  • 東京・西品川
  • 北海道・札幌
  • 徳島・美馬
  • 長野・小布施
  • 山梨・南部
  • 鳥取・岩美
  • 福井・美浜
  • 三好(徳島・
  • 宮崎・新富

今回の新拠点の発表に併せ、今夏オープンする拠点の応援プロジェクトをクラウドファンディングで実施。合わせてADDress会員も追加募集する。プロジェクトの期限は8月20日、達成金額200万円。

クラウドキッチンの大きな流れの中に見える大きな危機

個人経営のレストランは廃業に追い込まれる。もしかしたら食料品店も。

これは、勢いを増す新しい大きなトレンドを間近に見てきた人たちが、口を揃えて訴え始めている話の要点だ。そのトレンドとは、クラウドキッチン。レストラン経営者のための調理器具が完備された共有スペースで、ほとんどの利用者はクイックサーブを実践している。

この動きは局所的には面白く、また一部の企業には収益性の高い展開に見えるものの、それは仕事を奪い、さもなければ地域社会に代償を求める形で私たちの生活を変貌させてしまう恐れがある。Sequoia Capitalの著名なベンチャー投資家であるMichael Moritz(マイケル・モリッツ)氏は、ファイナンシャル・タイムズに先月掲載された「地元のレストランに嵐を巻き起こすクラウドキッチン」と題されたコラムで、まさにこのことを警告していたように思える。

モリッツ氏は冒頭で、ロンドンを拠点に、低料金の自営の配達業者に近所のレストランから客に食事を届けさせる出前サービスで華々しい成功を収めたDeliverooを取り上げている。対象となるレストランのなかには、Deliveroo自身がロンドンとパリで運営するシェアキッチンも含まれている。

先日、この企業にAmazonが投資したことに関して、彼はこう言っている。「かつては単に世界最大の本屋として知られていた企業が、世界最大のレストラン運営企業になる前触れかもしれない」。

これは、レンストランを経営する人にとっては悪い知らせだと彼は言う。「今のところ、この投資はDeliverooへの単純な肩入れに見える。しかし、小規模な自営のレストランは、エプロンの紐を引き締める必要があるだろう。Amazonは、マルチブランドのレストラン運営企業へあと一歩のところにまで迫っている。そしてそれは、晩餐の場を壊滅させてしまうことを意味する」

よい知らせと悪い知らせ

彼は誇張しているわけではない。シェアキッチンは、今はまだ、飲食系の起業家が新しい事業を立ち上げ成長させる有望な道筋として、とくに食事をテイクアウトする人が増えている昨今、好意的に受け止められてはいるが、困った点も少なくない。それは良い点を圧倒するどころか、悪い方向に作用する恐れもある。

たとえば、昨年、UBSは顧客に対して(キッチンは死んだのか?」と題した報告書を発表したが、DeliverooやUber Eatsといった出前アプリの人気の高まりは、家庭での料理、レストラン、スーパーマーケットの衰退を示唆するものだと述べている。

出前の経済学は、あまりに誘惑的になりすぎたと同行は指摘する。賃金が低いために最初から低コストであり、ドローンが出前を始めるようになれば、その原価中心点は完全に消えてなくなる。しかも、中央集中型のキッチンのお陰で、料理の原価も安くなろうとしている。Deliverooもそのような施設をオープンしようとしているし、Uber Eatsの参入計画も伝えられている(3月、ブルームバーグが報じたところによると、Uberは、調理器具が完備された業務仕様のキッチンを業者に貸し出し、Uber Eatsなどの出前アプリで食事を販売するプロジェクトをパリで試験中とのこと)。

Food Networkのテレビ番組に定期的に登場し、いくつものレストランを開業しては閉店させてきたシェフEric Greenspan(エリック・グリーンスパン)氏は、クラウド・キッチンに関するショートドキュメンタリー番組でこう話していた。「出前はレストラン業界のなかでも、もっとも急速に成長している市場です。売り上げの10%からスタートして、今では売り上げの30%に達しています。さらに(業界の予測では)クイックサーブ・レストランの売り上げは、今後3年から5年の間に50〜60%になるでしょう。これは買いです。しかも、クイックサーブ・ブランドは、1日の売り上げをたんまり増やしてくれる重要な鍵になります」。

グリーンスパン氏はさらに、人々がレストランに足を運ばなくなった時代では、レストラン経営の意味はどんどん失われていると話す。「近年では、実店舗のレストランを開くということは、自分で問題を背負い込むことを意味します。今や(中央集中型キッチンで)、強力な製品が作られている限り、私がそこに立っている必要はありません。品質の遠隔管理も可能です。インターネットなら(Uber EatsやPostmatesなどのマーケットプレイスからログアウトしても)お客さんを怒らせることはありません。実際のレストランをある日突然閉店して、そこへあなたが遠くから車で訪れたとしたら、怒るでしょう。でも、Uber Eatsで(私のレストランのひとつを)探したとき、そこを私がクローズしてしまったために見つからなかったとしても、まあ、そんなに怒らないはずです。他の店で注文すればいい」

大手様のみ歓迎

今のところこのモデルは、グリーンスパン氏にはうまく機能している。彼はロサンゼルスでクラウドキッチンを経営しているが、その所有者には、たまたまUberの共同創設者Travis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏が加わっている。彼は、今のシェアキッチンがもたらした好機を、いち早く掴んだ一人だ。実際、昨年の初め、カラニック氏はCity Storage Systemsというスタートアップに1億5000万ドル(約163億円)を投資したと発表した。この企業は、持てあまされている不動産を、食事の出前など、新しい産業のために再利用する事業に特化している。

同社はCloudKitchensを所有しており、フードチェーンの他にも、個人経営のレストランやフードトラックのオーナーを招き入れ、月額制で設備を貸し出している。追加料金を払えば、データ解析もやってもらえる。

レストラン経営者に向けた宣伝文句は、CloudKitchensは間接費を減らして売り上げを伸ばす、というものだ。しかし同社は、テナントに関するあらゆる種類のデータや顧客の好みなどを、知らぬ間に蓄積している。将来いろいろな形でCloudKitchensの役に立つと思われる情報だ。この業界にAmazonが参入を望んでいたとしても不思議ではない。また、少なくとも中国の強力な競合相手のひとつ(熊猫星厨)が今年の初めにTiger Global Management主導による5000万ドル(約54億円)の投資を受けたことも、驚くにはあたらない。

巨大なビジネスチャンスと思われるものを、抜け目ない起業家が黙って見ているはずがない。キッチンは、投資家の目からすればまったく理に適った対象ではあるものの、しかし、その他の者にとっては、今すぐ飛びついていい万能薬ではない。

波及効果

大変に気になる点は、中央集中型キッチンをうまく回すためには、適正な給与が支払われず、経済状況が大変に苦しいUberの配達員や出前を取り仕切る人たちに依存しなければならないことだ(昨年、Uberの配達員とともにDeliverooの従業員は、「労働者」としての地位とよりよい給与を求めて訴えを起こしたが敗訴した。最近になってEU議会は、いわゆるギグエコノミーの労働者を保護する新しい規則を通過させたが改善は見られない。一方、米国ではUberとLyftが従業員の地位を契約社員にする法律の制定を求める訴えを継続している)。

ニューヨーク出身の起業家で食通のMatt Newberg(マット・ニューバーグ)氏は、ロサンゼルスにあるCloudKitchensの2つの施設と、昨年秋にGVから1000万ドル(約10億8000万円)の資金を調達したKitchen Unitedと、年間契約で業務用キッチンを貸し出しているFulton Kitchensの2つのシェアキッチンを訪れたとき、不吉なものを感じたと話している。

ニューバーグ氏は、彼が見て聞いたことを録画したのだが(下に掲載したのでぜひ見てほしい)、サウス・ロサンゼルスにオープンしたCloudKitchensの最初の施設の状態に驚いたという。

レストランのキッチンといえば、ごった返しているものだ。だがそれは「食べ物と持続可能性を愛する人」によるものだとニューバーグ氏は言う。しかし、彼がシェアキッチンに足を踏み入れたとき、「そうした人間味」は感じられなかった。ひとつには、窓がないことがある(倉庫だから)。さらにニューバーグ氏が言うことには、見るからに低賃金の作業員で溢れていた。彼がざっと数えた限りで「おそらく7坪から8.5坪ほど」の場所に27のキッチンが詰め込まれており、多くの人たちがパニック状態だったという。

「叫び声が飛び交って、オーダーが遅れるごとにサイレンが鳴って、そこらじゅうにタブレットがある状態を想像してみてください」

そしてニューバーグ氏はこう付け加えた。「中に入ると、なんてことだ、ここがロサンゼルスだなんて誰も思わないぞ、てな感じ。まるで爆心地ですよ。軍事基地のようで、画期的に見えて、だけどクレイジーで」。

ニューバーグ氏によれば、CloudKitchensの新しい2番目の施設は、Kitchen UnitedやFulton Kitchensの施設と同じぐらいマトモだという。「あそこ(CloudKitchensの2つめの倉庫)は、WeWorkのキッチン版みたいな感じでした。めちゃくちゃきれいで、サーバーファームのように静かです。やっぱり窓はありませんが、キッチンは上等で大きくなっています」

成長の痛み

CloudKitchensに出したメールの返事は来ないままだが、どのスタートアップにも成長痛はある。おそらく、シェアキッチンの企業も例外ではない。ベンチャー投資家であるモリッツ氏も、レストラン経営者はそれを警戒し続けるべきだと忠告している。ファイナンシャル・タイムズのコラムで彼は、2000年代初頭に、彼の会社Sequoia CapitalがFaasosというケバブのレストランに投資したと書いている。このレストランは、料理を客の家まで出前する計画を立てていたのだが、高い家賃や売り上げなどの理由から頓挫してしまった。

そこで自らを救済する目的で、中央集中型のキッチンを開いてケバブを売ることにした。現在、Faasosはメニューの幅も広げ、インド料理の特別メニューや、中華やイタリアンも、それぞれ別のブランド名で扱うまでになったと彼は書いている。

それは、グリーンスパン氏が従っているものと同じ脚本だ。昨年、Food&Wine誌に語ったところによると、彼の目標は少なくとも6つの出前専用の構想を同時進行させることだという。メディアの有名人であるグリーンスパン氏だけに、Faasosのように、この予定が遅れても問題はないだろう。しかし、無名のフランチャイズや、スター性のあるセレブなシェフもいないレストランの場合、未来はそう明るくない。

モリッツ氏はこう書いている。「鍛えられたレストランやキッチンの運営企業、とくにソーシャルメディアをうまく使いこなせる企業なら、フォロワーを増やし、自分たちを刷新できれば、今でも一部の市場に好機がある。しかし、より規模が大きく動きの速い企業との競争にかかる費用が高騰する前に、素早く立ち回ることが必要だ。Amazonがクラウドキッチンを使って、あらゆる種類の料理のケータリングや、Deliverooなどのサービスを利用した出前を始めるらしいという、単なる予測だけでも、レストラン経営者には胃の痛い話だ。

これは、地域社会のことを気に掛ける人にとっても心配の種になる。

クラウドキッチンでは、これまでになく早く安くテイクアウトを注文できるようになる。しかし、それには代償がある。ほとんどの人間が、まだ想像も付かない代償だ。

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(翻訳:金井哲夫)

建設職人シェアの助太刀が5億円を追加調達、アプリ会員数増加や課金率向上に注力

建設現場と建設職人のマッチングサービスなどを提供する助太刀は7月2日、スパークス・グループが運営する「未来創生2号ファンド」から約5億円の第三者割当増資による資金調達を発表した。

既報のとおり同社は、4月23日にJA三井リースと工機ホールディングスから約2億円の資金調達を済ませており、総額で約7億円の資金調達となる。

関連記事:建設職人シェアの助太刀が工機ホールディングスとJA三井リースから資金調達

助太刀といえば、先日の山形沖地震を受けて特設ページを開設したことが記憶に新しい。災害発生後の対応について同社は「今後も災害発生時は、通常有料で提供している機能の開放や災害地域専用の緊急現場募集機能をできるようにしていく予定。すでに全国に7万人の登録者がいる職人のネットワークを活用し、被災地の人手不足の現場にすぐに駆けつけられるような仕組みを作っていきたい」としている。

関連記事:建設職人マッチングの「助太刀」が新潟・山形震災の特設現場募集ページを開設

今回の資金調達は、プロダクト開発、人材の採用、マーケティング活動に活用にするとのこと。助太刀は、社名と同じマッチングサービス「助太刀」だけでなく、その日の報酬の即時受け取りを可能にするペイメントサービス「助太刀Pay」、傷害保険が付帯する職人向けプリペイドカード「助太刀カード」、請求書払いなどに対応した法人向けマッチングサービス「助太刀ビジネス」などを展開している。

なおペイメント関連では、流通額などは非公開だが、セブン銀行とのアライアンスのおかげで全国で多くの職人に利用されているという。現在は、アプリのリニューアルと独自の与信システムを構築中で、秋ごろから大規模プロモーション打っていく予定と教えてくれた。

具体的にプロダクト開発について同社は、「助太刀と助太刀Pay、助太刀Ads(アプリ内広告)の3つの事業が、アプリリリースから約1年半を経て収益化が始まったところ。今後は調達した資金を生かしてさらなるアプリの改善を進め、アプリの会員数、課金率向上に注力する」。さらに「今後は職人さんを手配する工事会社など、法人向けのプロダクトを拡充させていき、建設業界で働くあらゆる人にとってなくてはならないサービスを目指す」という。

スタッフの増強については同社は、エンジニア、サービスグロースできる人材を強く求めている。加えて、セールス、CS、BizDev、マーケティング、バックオフィスなど全ポジションで人材が足りていない状況で、今後の事業の拡大のためにも全ポジションで採用を進めていきたいとしている。

今回のファンドからの資金調達は、顧客データの共有やファイナンス機能の強化などの狙いがあった前回の調達とは若干意味合いが異なる。この点について同社は次のようにコメントしている。「私たちは『建設現場を魅力ある職場に』をビジョンとして掲げ、IT によって業界構造を再定義し、業界の人手不足問題の解決を目指す。我々は目指すビジョンに共感いただいた投資家に応援してもらっている。今後も事業会社、ファンド問わずここは大事にしていきたい」。

なお、今回の資金調達先である未来創生ファンドとは、スパークスを運営者として、トヨタ自動車と三井住友銀行を加えた3社によるファンド。2015年11月より運用を開始した1号ファンドの規模は総額約135億円で、最終的にはこの3社を加えた計20社からの出資を受けた。

同ファンドは、「知能化技術」「ロボティクス」「水素社会実現に資する技術」を中核技術と位置付けて、米国、英国、イスラエル、シンガポール、日本の約50社に投資。2018年下半期には、新たに「電動化」「新素材」を投資対象とした2号ファンドの運用を開始している。2019年5月末時点の運用資産残高は、1号と2号を併せて1093億円となっているとのこと。

IoTとAIを活用したシェア型コミュニティファームのプランティオが1.5億円の資金調達

アグリテック領域のスタートアップ、プランティオは6月27日、ジェネシア・ベンチャーズ、東急不動産が運営する「SHIBUYA Innovation Program」、キャナルベンチャーズ、JA三井リースから、約1.5億円の資金調達を実施したことを発表した。

プランティオは、センサーや通信モジュールを搭載した野菜栽培用IoTプランターの「PLANTIO HOME」、そしてIoTプランターと専用アプリを活用したシェア型コミュニティファームを開発している。そして本日、プランティオは前述のIoTファームのプロトタイプ、「SUSTINA PARK EBISU PRIME」を恵比寿プライムスクエアタワーに7月28日にオープンするとも併せて発表。同ファームでは、種蒔きから収穫まで、ライトな農業体験を、田舎に行かずとも都会で、日常の範囲内で楽しめる。

プランティオの代表取締役、芹澤孝悦氏

プランティオの代表取締役、芹澤孝悦氏いわく、アーバンファーミング(都市型農園)は海外だとニューヨークやロンドンではスタンダードになってきている。例えばロンドンでは2012年ロンドンオリンピックに合わせ、2012ヵ所に農園を設置している。日本では2018年3月にNPO団体のUrban Farmers Clubが発足し、2020年までに2020ヵ所の市民農園を設置することを目標としている。プランティオはUrban Farmers Clubの一員として、ハイテクを用いて日本のアーバンファーミング文化の普及に貢献する。

SUSTINA PARK EBISU PRIMEでは、試験運用中のアプリをダウンロードすることでファームに入るためのスマートロックのキーを取得。収穫時期は植物栽培特化型AIの「Crowd Farming System」によって予測される。アプリはSNSのようにコミュニティーとして機能し、プランティオはユーザー同士がファームフレンドとなり、イベントなどをファームや近隣の飲食店で開催する。

ファームには土壌センサー、カメラ、外気温計などが実装されており、植物の生育をモニタリングすることで、水やりや間引き、人工授粉が必要なタイミングでユーザーコミュニティーに通知される。

プランティオのファームの利用はサブスク式となり、どこのファームへも行き放題、かつ、アプリでは近くのファームを探すほか、お気に入りのファームや野菜をフォローすることが可能。夕飯の食材に困った際にはすぐに近くのファームを探し、立ち寄り収穫することができる。

プランティオは「屋上にグリーンを増やしヒートアイランド現象対策」「ユーザーが育て、収穫することによる持続可能性のある食と農」「有事の際はファームを開放し、野菜を取り放題にし災害対応」「サブスクリプションに入ってさえいれば最低限野菜はもらえるという貧困対策」といった観点から、2015年9月の国連総会で採択されたSDGsの達成に向けても貢献する。

プランティオは今後、資金調達の引受先各社との事業連携を進めていく。東急不動産とは、同社が運営する施設やビルなどの屋上や遊休施設でのIoTファームの展開やマンションへのIoTプランターの展開、JA三井リースとは、同社のファイナンス機能や食農分野におけるノウハウの提供を通じ、プランティオの事業展開を加速させる。

僕もSUSTINA PARK EBISU PRIMEを訪れ巨大なズッキーニを収穫してきたので、その時の写真をいくつか共有しよう。ハーブやパクチーなども多く育てられていて、何よりも、都心にいることが忘れられる穏やかな空気感が印象的だった。イベントに参加するのはもとろんのこと、息抜きにそこで仕事をするのもアリだな、と思った。

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スキルシェアのミツモアがWiLやAngel Bridgeから5億円調達

ミツモアは6月26日、総額5億円の資金調達を発表した。第三者割当増資となり、引受先はWiL、Angel Bridge、東大創業者の会応援ファンド、個人投資家など。

同社が提供している社名と同名のサービス「ミツモア」は、カメラマンや税理士、弁理士、クリーニング業者など、主に対面型のサービスを提供する専門家と利用者をマッチングするサービス。190職種を超える専門家が同サービスに登録しており、2019年6月時点での累計依頼者数は​7万人以上、登録事業者数は2万人弱とのこと。クラウドソージングとは異なり、対面型のサービスを主軸にしているのが特徴だ。

今回の資金調達により、アルゴリズムの改善によるマッチング精度の向上と、現在は手動で作成している見積もりを自動化すること目指す。そのほか、エンジニアやプロダクトマネジャーなどの人材の増員による体制構築を進めるほか、サポートとカスタマーサクセスの強化も予定しているという。中期の目標としては、事業者への保険サービスや「集客以外の業務」の効率化も手がけるとしている。

ミツモアの具体的な依頼例としては、ホテルでのパーティー動画とスチール同時撮影、不動産会社から原状回復ハウスクリーニング、テレビ局からのドローン撮影などがある。依頼総額は、2017年6月のサービス開始から約24カ月で累​計60億円を突破したという。実際に仕事の依頼が多い業種は、カメラマン、税理士、動画制作、クリーニング、車のメンテナンスとのこと。

利用者はミツモアのウェブサイトから依頼したい仕事の内容を選ぶだけで、最大5人の専門家に相見積もりをとれるほか、仕事の正式依頼もウェブサイト内のチャット機能で済ませられるのが特徴だ。

ミツモアは、日本のローカルサービス市場の非効率を解消することをミッションとしており、ミツモアのプラットフォームによって営業活動かける時間や仲介業者にかけるコスト軽減を狙う。

Airbnb Luxeで泥棒男爵のように豪華な夜を体験する

Airbnbは混沌だ。写真は事実の半分しか伝えず、現地に到着しなければわからないこともある。しかし新たな高級サービスのLuxeでは、ユーザーが支払った金額に見合う価値を提供しようとしているようだ。

もちろん、依然としてこれは主観的な問題だ。The New York Times(ニューヨークタイムズ)紙によれば、Luxeの価格帯は幅広く、一晩600ドルのものから1週間で100万ドルに達するものまである。これはイベント「ドリームフォース」中のホテルの価格と、米国の平均年収18年ぶんに相当する。

そして、体験できるものもさまざまだ。Airbnbによれば、フランスでは城に滞在でき、ニュージーランドと南アフリカでは賞を受賞した家があるという。アメニティにはマッサージセラピストやパーソナルトレーナーが含まれる。以下は、Airbnbによる声明だ。

この新しいサービスでは、世界中の2000軒以上の厳選された住宅とともにローンチされ、それぞれの住宅はデザインと機能について300点以上の基準を満たしている。これには、高級な素材や仕上げ、珍しいユニークな特徴、グループに対応したスペース、高機能なデザイン、シェフ並みの調理機器、ベッドルームごとの適切な個数のバスルームまで、さまざまな要素に関する高度な設計基準が含まれる。

この高級サービスは、Airbnbが2017年にLuxury Retreatsを買収した結果だ。それぞれの場所は300以上の基準に準拠しており、24時間のトリップ・デザイナーによるサポートが受けられる。そして、金額に見合ったサービスが提供されるのだ。

[原文へ]

(翻訳:塚本直樹 Twitter

個人が法人に「時間」を販売できる「TimeTicket Pro」正式リリース

ユーザーの「時間」を30分単位で売買できるCtoC型のタイムシェアリングサービス「TimeTicket(タイムチケット)」から、個人から法人へ時間を販売できる新サービス「TimeTicket Pro」が登場。6月26日、正式にリリースされた。サービスを提供するのは、グローバルウェイから子会社として独立したタイムチケット。同社は9000万円の資金調達も明らかにしている。

再び独立した「TimeTicket」事業

TimeTicketは2014年7月、リクルート出身の山本大策氏が当時代表を務めていたレレレで開発・リリースした、個人間で時間を売買できるプラットフォームだ。「家を買うときの相談」「マッチングアプリ用の写真撮影」「インテリアコーディネート」「飲み会への参加」「副業のやり方指南」などなど、自分の得意な分野で、自分の時間を30分単位でチケットとして販売できる。

レレレは、2016年10月に企業口コミサイト「キャリコネ」などを運営するグローバルウェイ事業譲渡を行い、経営統合。TimeTicket事業は山本氏が中心となって、引き続きグローバルウェイで運営されていたが、2019年4月、再びグローバルウェイから子会社・タイムチケットとして分社化されることとなった。

タイムチケット代表取締役 各務正⼈氏

新しいタイムチケットの代表取締役社長は、グローバルウェイ代表取締役の各務正⼈氏が務め、サービスの生みの親である山本氏は、取締役としてサービス戦略・企画、サービス開発と運営組織統括を担当。各務氏は「ビジネスの部分は私が担当。大策さん(山本氏)にはクリエイティブに特化した役員として入ってもらい、それぞれが得意分野で分業する。プロダクトをつくることにかけて彼は天才的。TimeTicketの今後についても、2人でいろいろと話している」と新体制について語っている。

事業譲渡から2年間は「内部対策の強化やオンライン対応を行い、コミュニティを醸成してきた」と各務氏が言うTimeTicket。現在は、統合時と比べて事業規模を14倍に拡大したという。ユーザー数は約15万人。取引単価も直近1年間で約1.5倍に上がっている。

「ユニットエコノミクスが成立するように整備した結果、投資すれば事業が拡張できるという状況まで来た。こうなると上場会社であるグローバルウェイのPL(損益計算書)やキャッシュに、TimeTicket事業が左右されるのは得策ではない。成長のために投資するタイミングだと判断して、子会社として分割し、事業承継することにした」(各務氏)

6月には、グローバルウェイと複数の個人投資家を引受先とした9000万円の第三者割当増資も実施したタイムチケット。今回の投資ラウンドはシードと位置付け、今後も積極的に外部からのものを含む資金調達を行っていくという。

また、グローバルウェイのスイス子会社であるTimeTicket GmbHを通じて、IEO(Initial Exchange Offering:暗号通貨取引所が発行プラットフォームとなって行うICO)による調達も計画している。ブロックチェーン、暗号通貨、AI技術を活用して、個人の時間の価値を客観的に測り、時間の売買で個人が得た資金を有効活用できる仕組みを確立していくのが狙いだ。

情報可視化で「個人の信用を確立する」CtoBサービス

TimeTicketはこれまで、副業系のフリーランサーが売り手となるCtoCサービスとして展開されてきた。この分野は法人向けサービスと比較すると、売り手主導のマーケットだと各務氏はいう。これはすなわち「売り手が信用されなければ、マーケット自体も成立しないエリアでもある」(各務氏)。

「15万人のユーザーが存在していて、事業規模が14倍になったということは、売り手はチケットが販売できているということ。しかも取引単価も上がっている。これはレビュー数や取引数が増えたことで、売り手ユーザーの信用価値も上がったということを示している」(各務氏)

一方、今回リリースされたTimeTicket Proは、個人が法人ユーザーに対して時間を販売できるサービスだ。「スキマ時間に収入を、というだけではフリーランサーが求めるプラットフォームとしては不足しているのではないか、と思っている。個人が信用を形成し、収入を増やすことも必要だ。『次の“はたらく”を作る』というのがタイムチケットのミッション。好きなときに誰もが収入を上げられるようにするためには、企業の買い手が必要と考えた」(各務氏)

そうして生まれたTimeTicket Proは、副業としてだけではなく、独立して働くフリーランサーが法人向けに時間を提供する分野で展開される。競合となるのはクラウドワークスやランサーズといったサービスだ。

「このエリアは買い手主導のマーケット。企業は(フリーランスを募る際に)金額や仕事内容について、情報を出したがらない。これは派遣業でも、代理店やクラウドソーシングなどを通じた業務委託でも同じことで、企業名や案件の概要、金額などが公開されていない。するとフリーランスとしては、仕事は完了するけれども実績を公表できず、個人としての信用を確立しにくい」(各務氏)

TimeTicket Proでは、取引内容と取引の相互評価が保存され、実績が外部に公開されることでユーザーの信用力が蓄積され、個人が提供する時間の価値を適正化することができる。またタイムチケットがプラットフォーマーとして得る運営手数料も全て公開。これまでの人材業界や業務委託業界で不透明だった“時間”の取引情報に透明性を取り入れる。

「信用が確立できるかどうかで、働く人の価値は変わる」と各務氏は語る。「『個人の信用を確立する』ことは我々が提供するサービスとしての絶対条件。これに賛同して、取引情報の透明性を確保できる企業のみ、プラットフォームには参加してもらう」(各務氏)

TimeTicket Proでは、案件概要のほか、発注金額、手取額、稼働時間などの条件をすべて公開する。

はじめはスタートアップなどの小さな法人や、IT関連企業など、TimeTicket Proへの賛同のハードルが低い法人から参加してもらい、徐々に大手にも利用を広げたいと各務氏は述べている。同サービスで最初に公開されたのは「tech」をサブドメインとするエンジニア、デザイナーのためのサイトだ。今後TimeTicket Proでは「経理」「総務」など、順次対象を増やしていく予定だという。

仕事の案件公表や相互レビューに関しては「これまで公開してこなかったので、どう書けばいいか分からない」という企業担当者も多いはずだ。タイムチケットでは、そうした担当者のためのサポート体制も準備している。「個人向けと同じく、プラットフォーム課金による直接課金を基本としたいが、タイムチケットが企業と個人との間に入って業務委託や派遣の中間業者としての役割も担当することで、補助を行うメニューも用意する」(各務氏)

従来の業務委託や派遣業とタイムチケットが違うのは、マージンや仕事の内容を隠さない点だ。「情報の透明性が確保されれば、特定企業が人材を囲い込みすることもできなくなる。今までは中間業者と企業しか、個々のフリーランスの評価を知らなかった。それが公開されるようになり、いずれリファレンスを取ることも可能になる。正社員になりたい、という人には、我々が業務委託業者、派遣業者としての立ち位置から、人材紹介業者として転職支援もしていく」(各務氏)

親会社グローバルウェイの事業との親和性、シナジーについては各務氏はこう述べている。「働いている人を活性化したいという目的で始まったのが、口コミサービスのキャリコネだ。タイムチケットが運営するサービスはその延長線上にある。キャリコネは社会人が中心の登録ユーザー130万人、年間5000万UUを抱えており、その流入も期待できる」(各務氏)

親会社との利害を調整しながら、スピンアウトでタイムチケットの成功を目指す、と話す各務氏。エクイティファイナンスだけでなく、IEO調達なども取り入れることで、日本だけでなくアジアなど海外も舞台にサービスを展開し、働く人が自由に評価されるエコシステム形成を図りたい考えだ。

建設職人マッチングの「助太刀」が新潟・山形震災の特設現場募集ページを開設

建設職人と建設現場のマッチングサービス「助太刀」などを提供している助太刀は6月24日、6月18日に発生した最大震度6強の山形県沖地震の発生を受け、復旧支援に向けた特設現場募集ページを開設した。

同社が助太刀で構築した人のネットワークを活用して、新潟県と山形県の復旧現場の人手不足を支援する。具体的には、特設ページ上に現場情報を順次掲載するほか、助太刀アプリを使っていなくても入力フォームに現場情報を記入、もしくはサポートセンター(03-6774-0870、平日10時〜18時)に直接電話することで、新潟県と山形県の復旧現場の工事を職人に発注することができる。

建設職人側は、特設ページに掲載された情報を基に、前述のサポートセンターもしくは掲載者との電話のやり取りにより現場の仕事を受けられる。

タクシー相乗りアプリ「nearMe.」が新潟・長岡で実証実験を開始

NearMe(ニアミー)は7月1日から、新潟県長岡市と同市のハイヤー協会と共同で、タクシー相乗りサービスの実証実験を開始すること発表した。実証実験は2回に分けて実施予定で、第1クールは7月1日〜8月31日、第2クールは10月1日〜11月30日。

タクシーで同じ方向に移動する利用者同士をマッチングすることで、タクシーの待ち時間を減らし、タクシー料金を半額程度に抑えられるサービス。利用したタクシーへは後に降りる利用者が料金を支払うが、先に降りる利用者は後に降りる利用者にアプリ内決済で相乗り料金を支払う仕組みなので、相乗りした利用者同士での現金のやり取りは不要。現在のサービス提供エリアは、出発地が東京都と神奈川県、そして埼玉県の一部エリアとなっている。

日本国内では、UberXのように二種免許を取得していない一般人の営業運転(対価を支払う移動)は法律で禁じられている。また、東京や大阪などの大都市では「Uber」「JapanTaxi」「MOV」「DiDi」など、ハイヤーやタクシーの配車サービスはあるが、料金が高い、迎車料金が発生するなどコストがかかり、残念ながらプライベートで気軽に使える移動手段ではない。また、都市部でないとタクシーそのものの数が少ないため、配車まで時間がかかることも多い。

NearMeは、こういったタクシーのコストや配車時間の問題を相乗りというかたちで解消する、2017年7月設立のスタートアップ。昨年TechCrunch Japanが開催した「TechCrunch Tokyo 2018」のビッチコンテント「スタートアップバトル」で応募100社超の中から選ばれたファイナリスト20社のうちの1社でもある。ちなみにNearMeと異なるアプローチだが、ガソリン代などの実費と手数料、謝礼を支払うというかたちで一般人ドライバーの車とマッチングできる「Crew」というサービスもある。

今回の長岡市での実証実験は、高齢者のほか、スーパーマーケットなどが近隣にない、いわゆる買い物難民がタクシーを気軽に使えるようにする取り組み。相乗りによって低料金でタクシーを利用可能となることで、深刻な問題となっている高齢者の運転操作ミスによる自動車事故の軽減にも寄与するはずだ。

また長岡市には、国営越後丘陵公園や寺泊水族博物館、長岡城址などの観光スポットがあり、相乗りのって低価格になるタクシーを移動手段に使うという選択肢も生まれるだろう。