インドネシア拠点のクラウドキッチンスタートアップYummyがソフトバンク・ベンチャーズ・アジア主導で12.6億円調達

インドネシア拠点のYummy Corporationは9月24日、SoftBank Ventures Asia(ソフトバンク・ベンチャーズ・アジア)が主導するシリーズBの資金調達で1200万ドル(約12億6500万円)を調達した。同社は、インドネシア最大のクラウドキッチン管理会社をうたうスタートアップ。共同創業者兼最高経営責任者のMario Suntanu(マリオ・サンタヌ)氏は「調達した資金はより多くの主要都市への進出と、データ分析を含む技術プラットフォームの開発に充てる」とのこと。

このラウンドのほかの参加者には、Intudo VenturesとSovereign’s Capital、新規投資家としてVectr Ventures、AppWorks、Quest Ventures、Coca Cola Amatil X、Palm Drive Capitalが含まれる。シリーズBにより、Yummy Corporationのこれまでの調達総額は1950万ドル(約20億5600万円)になる。

2019年6月にサービスを開始したYummy Corporationのクラウドキッチンのネットワークは、Yummykitchenと呼ばれ、現在ジャカルタ、バンドン、メダンに70以上のHACCP認定施設が含まれている。Ismaya Group(イスマヤグループ)やSour Sally Group(サワーサリーグループ)などの現地の大手ブランドを含む50社以上の食品・飲料企業と提携している。

サンタヌ氏は「新型コロナウイルスの感染蔓延による移動制限の間、ほとんど自宅に閉じこもっている人々が食べ物を宅配するようになり、Yummykitchenのビジネスは『健全な成長』を示した」と述べた。調達した資金は、より多くのパートナー、特に新型コロナウイルスの継続的な影響に対応するために業務をデジタル化し、配達を拡大したいと考えているブランドを獲得するために投下するとのことだ。

東南アジアにおけるクラウドキッチンの数は、新型コロナウイルスの感染蔓延前から増加し始めた食材宅配の需要に牽引され、この1年で急速に増加している。しかし、収益の大部分をデリバリーに依存している食品・飲料ブランドにとって、自社のキッチンやスタッフを運営することはコスト面で不利になる可能性がある。クラウドキッチンをほかの企業と共有することで、利幅を拡大することができるという算段だ。

インドネシアでサービスを提供しているほかのクラウドキッチンのスタートアップには、HangryやEverplateなどがある。そして、これらの企業とYummy Corporationは、主要な2社のプレーヤーと戦っている。もちろんそれは「スーパーアプリ」を擁するGrabとGojekであり、どちらも大規模なクラウドキッチンのネットワークを運営し、オンデマンド配信サービスと統合できるという強みを持つ。

サンタヌ氏は、他のクラウドキッチンと比較したYummyの最大の強みは「キッチン設備に加えて、完全に管理されたロケーションやキッチン運営サービスを提供している点」を強調する。つまり、レストランやF&Bブランドを含むYummyのパートナーは、自分たちのチームを雇う必要がなく、料理の準備と配送はYummyの従業員が担当する。また同社は、クライアントにデータ分析プラットフォームを提供し、ターゲットを絞った広告キャンペーンや、フードデリバリーアプリ上でのリスティングをより目に見えるものにするための支援も実施している。

ソフトバンク・ベンチャーズ・アジアのSouteast AsiaアソシエイトであるHarris Yang(ハリス・ヤン)氏は声明の中で「同社のF&B業界における強力な専門知識とブランドへのユニークな価値提案を考えると、Yummyがこの分野のリーダーであり続けると確信している。Yummy のチームをサポートし、この新興セクターでの事業拡大を支援できることを嬉しく思います」とコメントしている。

画像クレジット:Yummy Corporation

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(翻訳:TechCrunch Japan)

“副業型クラウドキッチン”で飲食店のキッチン稼働率を上げる「クラウドフランチャイズ 」が資金調達

飲食店のアイドルタイムと人気のフードデリバリーブランドを繋ぐ「クラウドフランチャイズ」事業を展開するCLOUD FRANCHISEは2月26日、THE SEED、野口圭登氏、西尾健太郎氏を引受先とする資金調達を実施したことを明らかにした。具体的な金額は非公開だが、数千万円規模の調達になるという。

ここ数年、「クラウドキッチン」と呼ばれるネット注文特化型のキッチンしか保有しない店舗や、デリバリーに注力した「ゴーストレストラン」タイプの飲食店に注目が集まっている。日本国内でもUber Eatsを含むデリバリープラットフォームの広がりに伴い、デリバリー専業ないしデリバリーを主力とした飲食店が登場し始めた。

CLOUD FRANCHISEではその中でも人気を集めるフードデリバリーブランドと、キッチンの稼働率を上げたい飲食店をフランチャイズのスキームを用いて繋ぐことで双方の成長を後押しする。

飲食店の空き時間をクラウドキッチンに変える

具体的には飲食店の空き時間にフードデリバリーブランドを導入し、飲食店スタッフがデリバリーメニューを調理した上でUber Eatsなどを通じて顧客に届ける。たとえば夜だけ営業をしている焼肉屋や居酒屋が、お昼の空き時間を使って“副業的に”ゴーストレストランを経営するようなイメージだ。

デリバリー用のメニューは冷凍もしくは冷却(チル化)された状態で飲食店に届き、電子レンジで温めたりなど簡単な調理だけで完成するため飲食店側の負担が少ないのが特徴。飲食店は空き時間で新たな収益源を作れる。

一方のデリバリーブランドにとってはフランチャイズ形式を採用しているため、自社ブランドの店舗をコストを抑えながらスピーディーに拡大できるのがメリットだ。各飲食店が自社のクラウドキッチンとしてデリバリー拠点の役割を果たすため、複数のエリアに一気に進出することもできる。

CLOUD FRANCHISEは両者をマッチングする立場だが、マッチングといってもWeb上でプラットフォームを提供している訳ではなく、現在は1つ1つの飲食店とブランドを手動で繋いでいる。販売データやUber Eatsなどのプラットフォーム上で公開されているデータを分析し、エリアごとの特性などを見極めた上で、どの飲食店にどのブランド(メニュー)を導入するかを決めているそうだ。

「キッチンスペースや冷蔵庫などの大きさなど飲食店側の設備の特徴に加えて、たとえばカレーがよく売れるエリアなどエリアごとの特性も踏まえて提案している。あくまで本業に支障が出ない範囲という前提で、最初はだいたい5つのメニューで毎日20食の注文が入るようなイメージで導入してもらっている」(CLOUD FRANCHISE代表取締役の桑原竣亮氏)

年内に100店舗以上の出店目指す

現在ベースとなっている副業キッチンプランではCLOUD FRANCHISEが仕入れ費用(ブランド側からメニューを購入する費用)を負担するため、飲食店側の初期費用や手数料などはゼロ。実際に売れた金額の内15%が飲食店に支払われ、残りの85%からデリバリープラットフォームの手数料や仕入れコストを引いた金額が同社の収益となる仕組みだ。

仮に月の売上が100万円だったとすると、飲食店に入ってくるお金は15万円になる計算。これが大きいか小さいかは飲食店ごとによっても捉え方が変わってきそうだけれど、ある店舗では撤退を検討しているタイミングでサービスを導入したところ「導入初月で100万円の売上を達成できたために運営の継続に繋がった」事例もあるとのこと。

桑原氏の話では特に小規模な飲食店や一等地から少し離れた店舗などには相性が良い反面、大規模な駅近くの一等地などの飲食店とは合わずメインターゲットにはならないという。

現時点では究極のブロッコリーと鶏胸肉など複数のブランドと都内を中心に約10店舗の飲食店が集まっている状況。今回の資金調達では主に人材採用を強化し、飲食店数を年内に100店舗以上へ拡大することを目指す。

CLOUD FRANCHISEは2018年4月の創業。代表の桑原氏が最初にビジネスに触れたのは10代の頃にライフネット生命保険創業者の出口治明氏らの講演会を企画・運営したこと。その後インスタグラマーのアパレルブランド作りを支援する事業を立ち上げ、売却を経験した。

これまでの事業を通じて人のブランドやIPを適切な形で届けることができれば多くの人に喜んでもらえることを体感したそうで、それが今回の事業にも繋がっている。「強いIPを最大限活かせる事業を考えた時に行き着いたのがフランチャイズのモデル。中でも1番参入しやすいと感じたのがフードデリバリーだったため、クラウドキッチンやゴーストレストランの文脈からスタートした」(桑原氏)

クラウドキッチンの大きな流れの中に見える大きな危機

個人経営のレストランは廃業に追い込まれる。もしかしたら食料品店も。

これは、勢いを増す新しい大きなトレンドを間近に見てきた人たちが、口を揃えて訴え始めている話の要点だ。そのトレンドとは、クラウドキッチン。レストラン経営者のための調理器具が完備された共有スペースで、ほとんどの利用者はクイックサーブを実践している。

この動きは局所的には面白く、また一部の企業には収益性の高い展開に見えるものの、それは仕事を奪い、さもなければ地域社会に代償を求める形で私たちの生活を変貌させてしまう恐れがある。Sequoia Capitalの著名なベンチャー投資家であるMichael Moritz(マイケル・モリッツ)氏は、ファイナンシャル・タイムズに先月掲載された「地元のレストランに嵐を巻き起こすクラウドキッチン」と題されたコラムで、まさにこのことを警告していたように思える。

モリッツ氏は冒頭で、ロンドンを拠点に、低料金の自営の配達業者に近所のレストランから客に食事を届けさせる出前サービスで華々しい成功を収めたDeliverooを取り上げている。対象となるレストランのなかには、Deliveroo自身がロンドンとパリで運営するシェアキッチンも含まれている。

先日、この企業にAmazonが投資したことに関して、彼はこう言っている。「かつては単に世界最大の本屋として知られていた企業が、世界最大のレストラン運営企業になる前触れかもしれない」。

これは、レンストランを経営する人にとっては悪い知らせだと彼は言う。「今のところ、この投資はDeliverooへの単純な肩入れに見える。しかし、小規模な自営のレストランは、エプロンの紐を引き締める必要があるだろう。Amazonは、マルチブランドのレストラン運営企業へあと一歩のところにまで迫っている。そしてそれは、晩餐の場を壊滅させてしまうことを意味する」

よい知らせと悪い知らせ

彼は誇張しているわけではない。シェアキッチンは、今はまだ、飲食系の起業家が新しい事業を立ち上げ成長させる有望な道筋として、とくに食事をテイクアウトする人が増えている昨今、好意的に受け止められてはいるが、困った点も少なくない。それは良い点を圧倒するどころか、悪い方向に作用する恐れもある。

たとえば、昨年、UBSは顧客に対して(キッチンは死んだのか?」と題した報告書を発表したが、DeliverooやUber Eatsといった出前アプリの人気の高まりは、家庭での料理、レストラン、スーパーマーケットの衰退を示唆するものだと述べている。

出前の経済学は、あまりに誘惑的になりすぎたと同行は指摘する。賃金が低いために最初から低コストであり、ドローンが出前を始めるようになれば、その原価中心点は完全に消えてなくなる。しかも、中央集中型のキッチンのお陰で、料理の原価も安くなろうとしている。Deliverooもそのような施設をオープンしようとしているし、Uber Eatsの参入計画も伝えられている(3月、ブルームバーグが報じたところによると、Uberは、調理器具が完備された業務仕様のキッチンを業者に貸し出し、Uber Eatsなどの出前アプリで食事を販売するプロジェクトをパリで試験中とのこと)。

Food Networkのテレビ番組に定期的に登場し、いくつものレストランを開業しては閉店させてきたシェフEric Greenspan(エリック・グリーンスパン)氏は、クラウド・キッチンに関するショートドキュメンタリー番組でこう話していた。「出前はレストラン業界のなかでも、もっとも急速に成長している市場です。売り上げの10%からスタートして、今では売り上げの30%に達しています。さらに(業界の予測では)クイックサーブ・レストランの売り上げは、今後3年から5年の間に50〜60%になるでしょう。これは買いです。しかも、クイックサーブ・ブランドは、1日の売り上げをたんまり増やしてくれる重要な鍵になります」。

グリーンスパン氏はさらに、人々がレストランに足を運ばなくなった時代では、レストラン経営の意味はどんどん失われていると話す。「近年では、実店舗のレストランを開くということは、自分で問題を背負い込むことを意味します。今や(中央集中型キッチンで)、強力な製品が作られている限り、私がそこに立っている必要はありません。品質の遠隔管理も可能です。インターネットなら(Uber EatsやPostmatesなどのマーケットプレイスからログアウトしても)お客さんを怒らせることはありません。実際のレストランをある日突然閉店して、そこへあなたが遠くから車で訪れたとしたら、怒るでしょう。でも、Uber Eatsで(私のレストランのひとつを)探したとき、そこを私がクローズしてしまったために見つからなかったとしても、まあ、そんなに怒らないはずです。他の店で注文すればいい」

大手様のみ歓迎

今のところこのモデルは、グリーンスパン氏にはうまく機能している。彼はロサンゼルスでクラウドキッチンを経営しているが、その所有者には、たまたまUberの共同創設者Travis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏が加わっている。彼は、今のシェアキッチンがもたらした好機を、いち早く掴んだ一人だ。実際、昨年の初め、カラニック氏はCity Storage Systemsというスタートアップに1億5000万ドル(約163億円)を投資したと発表した。この企業は、持てあまされている不動産を、食事の出前など、新しい産業のために再利用する事業に特化している。

同社はCloudKitchensを所有しており、フードチェーンの他にも、個人経営のレストランやフードトラックのオーナーを招き入れ、月額制で設備を貸し出している。追加料金を払えば、データ解析もやってもらえる。

レストラン経営者に向けた宣伝文句は、CloudKitchensは間接費を減らして売り上げを伸ばす、というものだ。しかし同社は、テナントに関するあらゆる種類のデータや顧客の好みなどを、知らぬ間に蓄積している。将来いろいろな形でCloudKitchensの役に立つと思われる情報だ。この業界にAmazonが参入を望んでいたとしても不思議ではない。また、少なくとも中国の強力な競合相手のひとつ(熊猫星厨)が今年の初めにTiger Global Management主導による5000万ドル(約54億円)の投資を受けたことも、驚くにはあたらない。

巨大なビジネスチャンスと思われるものを、抜け目ない起業家が黙って見ているはずがない。キッチンは、投資家の目からすればまったく理に適った対象ではあるものの、しかし、その他の者にとっては、今すぐ飛びついていい万能薬ではない。

波及効果

大変に気になる点は、中央集中型キッチンをうまく回すためには、適正な給与が支払われず、経済状況が大変に苦しいUberの配達員や出前を取り仕切る人たちに依存しなければならないことだ(昨年、Uberの配達員とともにDeliverooの従業員は、「労働者」としての地位とよりよい給与を求めて訴えを起こしたが敗訴した。最近になってEU議会は、いわゆるギグエコノミーの労働者を保護する新しい規則を通過させたが改善は見られない。一方、米国ではUberとLyftが従業員の地位を契約社員にする法律の制定を求める訴えを継続している)。

ニューヨーク出身の起業家で食通のMatt Newberg(マット・ニューバーグ)氏は、ロサンゼルスにあるCloudKitchensの2つの施設と、昨年秋にGVから1000万ドル(約10億8000万円)の資金を調達したKitchen Unitedと、年間契約で業務用キッチンを貸し出しているFulton Kitchensの2つのシェアキッチンを訪れたとき、不吉なものを感じたと話している。

ニューバーグ氏は、彼が見て聞いたことを録画したのだが(下に掲載したのでぜひ見てほしい)、サウス・ロサンゼルスにオープンしたCloudKitchensの最初の施設の状態に驚いたという。

レストランのキッチンといえば、ごった返しているものだ。だがそれは「食べ物と持続可能性を愛する人」によるものだとニューバーグ氏は言う。しかし、彼がシェアキッチンに足を踏み入れたとき、「そうした人間味」は感じられなかった。ひとつには、窓がないことがある(倉庫だから)。さらにニューバーグ氏が言うことには、見るからに低賃金の作業員で溢れていた。彼がざっと数えた限りで「おそらく7坪から8.5坪ほど」の場所に27のキッチンが詰め込まれており、多くの人たちがパニック状態だったという。

「叫び声が飛び交って、オーダーが遅れるごとにサイレンが鳴って、そこらじゅうにタブレットがある状態を想像してみてください」

そしてニューバーグ氏はこう付け加えた。「中に入ると、なんてことだ、ここがロサンゼルスだなんて誰も思わないぞ、てな感じ。まるで爆心地ですよ。軍事基地のようで、画期的に見えて、だけどクレイジーで」。

ニューバーグ氏によれば、CloudKitchensの新しい2番目の施設は、Kitchen UnitedやFulton Kitchensの施設と同じぐらいマトモだという。「あそこ(CloudKitchensの2つめの倉庫)は、WeWorkのキッチン版みたいな感じでした。めちゃくちゃきれいで、サーバーファームのように静かです。やっぱり窓はありませんが、キッチンは上等で大きくなっています」

成長の痛み

CloudKitchensに出したメールの返事は来ないままだが、どのスタートアップにも成長痛はある。おそらく、シェアキッチンの企業も例外ではない。ベンチャー投資家であるモリッツ氏も、レストラン経営者はそれを警戒し続けるべきだと忠告している。ファイナンシャル・タイムズのコラムで彼は、2000年代初頭に、彼の会社Sequoia CapitalがFaasosというケバブのレストランに投資したと書いている。このレストランは、料理を客の家まで出前する計画を立てていたのだが、高い家賃や売り上げなどの理由から頓挫してしまった。

そこで自らを救済する目的で、中央集中型のキッチンを開いてケバブを売ることにした。現在、Faasosはメニューの幅も広げ、インド料理の特別メニューや、中華やイタリアンも、それぞれ別のブランド名で扱うまでになったと彼は書いている。

それは、グリーンスパン氏が従っているものと同じ脚本だ。昨年、Food&Wine誌に語ったところによると、彼の目標は少なくとも6つの出前専用の構想を同時進行させることだという。メディアの有名人であるグリーンスパン氏だけに、Faasosのように、この予定が遅れても問題はないだろう。しかし、無名のフランチャイズや、スター性のあるセレブなシェフもいないレストランの場合、未来はそう明るくない。

モリッツ氏はこう書いている。「鍛えられたレストランやキッチンの運営企業、とくにソーシャルメディアをうまく使いこなせる企業なら、フォロワーを増やし、自分たちを刷新できれば、今でも一部の市場に好機がある。しかし、より規模が大きく動きの速い企業との競争にかかる費用が高騰する前に、素早く立ち回ることが必要だ。Amazonがクラウドキッチンを使って、あらゆる種類の料理のケータリングや、Deliverooなどのサービスを利用した出前を始めるらしいという、単なる予測だけでも、レストラン経営者には胃の痛い話だ。

これは、地域社会のことを気に掛ける人にとっても心配の種になる。

クラウドキッチンでは、これまでになく早く安くテイクアウトを注文できるようになる。しかし、それには代償がある。ほとんどの人間が、まだ想像も付かない代償だ。

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(翻訳:金井哲夫)

有機無農薬にこだわったシンガポールのフードデリバリースタートアップが約11億円を調達

クラウドキッチンはフードデリバリーの重要分野だ、元Uber CEOのトラビス・カラニック氏が新たなビジネスでその分野に参入している、それはアジア、特に東南アジアに重点を置くものだ。そうした中で新参者にもかかわらず、よりしっかりとした事業を進めるシンガポール発のスタートアップが、地域拡大を目指して巨額の資金を調達した。

2014年に設立されたGrainは、クリーンフード(有機無農薬などの素材を使ったものを指す)に特化しており、カラニック氏のCloudKitchensや、Deliveroo、FoodPanda、GrabFoodなどのフードデリバリーサービスとは異なるアプローチを打ち出している。

人気のない不動産をキッチンとして活用し、配達にデリバリーサービスを使うクラウドキッチンモデルを採用してはいるが、それらを自分自身で運営しているのだ。CloudKitchensやその他の会社が、オンデマンドデリバリー顧客に向けて安価に調理を行うために、調理を行う会社に自社の作業所を賃貸している一方で、Grainは自社の調理人、メニューそしてデリバリーチームを使って運営している。もし陳腐になったテクノロジー用語を使うことをお許しいただけるなら、いわゆる「フルスタック」モデルということだ。

そしてなにより、Grainは利益を生み出している。新しい調達ラウンドは後述するように、成長を狙ったものだが、スタートアップ自身は昨年から利益を挙げていたと、CEOで共同創業者のイ・サン・ヨン(Yi Sung Yong)氏はTechCrunchに語った。

現在同社は、プロダクトをすべて支配下におくそのモデルの利点を享受している。他の会社がレストランや配達人を含む連携の複雑さを抱えている事情とは一線を画しているのだ。

私たちは以前、Grainが2016年にシリーズAで170万ドルを調達した件は報告していた。今回はタイのSingha Ventures(ビール会社の投資部門だ)が主導する1000万ドル(約11億円)のシリーズBを公表した。他にも多くの投資家たちが参加している。例えばGenesis Alternative Ventures、Sass Corp、K2 Global(Impossible Foods、Spotify、およびUberなどをサポートしているシリアル投資家Ozi Amanatが経営している)、FoodXervices、そしてMajuvenなどだ。既存の投資家であるOpenspace Ventures、Raging Bull(Thai Expressの創業者Ivan Leeの会社)、およびCento Venturesも参加している。

このラウンドには、株式だけではなくベンチャー融資も含まれているが、The Coffee Bean & Tea Leaf(Sassoon Investment Corporation)のオーナーの家族オフィスが関わっていることは注目に値する。

Grainはシンガポールの個人はもちろん、ビュッフェもカバーする。

前回と今回のラウンドの間の3年は長い年月だった、OpenspaceとCentoはその間にブランド名を変更している。そしてこの期間には非常に様々なことが起きていた。サン氏は、この期間のうちに、危うく資金がショートしそうになったこともあったが、資金が底をつく前にビジネスの基礎にテコ入れを行ったと語る。

事実、同氏によれば、現在100名を超えるスタッフを擁する同社は、自前で資金をまかなえるような準備を整えていたのだという。

「シリーズBでの調達は考えていませんでした」と彼はインタビューで説明した。「そうする代わりに、私たちは事業そのものと利益を挙げることに集中していました。私たちは投資家に完全に頼ることはできないと思っていたのです」。

それが、皮肉なことに、VCたちは自前で資金をまかなえる企業が大好きなのだ(なにしろビジネスモデルが上手く行くことが証明されているのだから)、そして資金調達を必要としないスタートアップに投資することは、魅力的な案件であり得る。

最終的には、利益を挙げられる力こそが魅力的に見える。特に食品分野では、無数の米国スタートアップが閉鎖に追い込まれていることを思えばなおさらである(MuncherySpigなどがその例だ)。だがこれまでの事業への集中はGrainにとってその拡大を棚上げすることを意味していた。だが同社は2017年に傷んだカレーによって20人の顧客に食中毒を起こしたことによって、内省する時間を得ることになる。

サン氏はこの事件について直接コメントすることは避けたが、現在会社はビジネスを全面的に拡大するための「インフラストラクチャ」を開発し、そこには厳しい品質管理も含まれていると述べている。

Grainの共同創業者兼CEOのイ・サン・ヨン氏(LinkedIn経由の画像)

Grainは現在、唯一の市場であるシンガポールで1日当たり「何千」もの食事を提供しており、その年間売上高は数千万ドルに及ぶと彼は言う。去年の成長率は200%だった、とサン氏は続け、いまや国外に目を向けるべきときだと語る。GrainのCEOによれば、Singhaと組むことで「バンコクで事業を立ち上げるために必要なすべてのもの」が手に入ると語る。

マレーシアを拠点とするライバルであるDahamakanが最初の拡大に選んだタイは、現在考えられている唯一の拡大先だが、サン氏は将来的には変わっていく可能性もあると語る。

「もし事態がより速く動くならば、私たちはより多くの都市へ、おそらく1年に1つのペースで拡大して行くでしょう」と彼は言う。「しかし、私たちは自分たちのブランド、私たちの食べ物、そして私たちのサービスをまず整える必要があります」。

その1つの要素は、供給者からの原材料や食品のより良い取引を確保することかもしれない。Grainは、街中で顧客になるべく速く提供を行えるように戦略的に配置された、その「ハブ」キッチンを拡大している。またデリバリーに用いる温蔵庫ならびに冷蔵庫を備えたトラック群の数も増やしている。

Grainの歴史は、この地域のスタートアップが試練と苦難を乗り越えることが可能なことを証明しているが、事態が悪化したときには基本に集中し、コストを削減することができることが大切なのだ。コストが積み上がったときに何が起きるかは、同じシンガポールに拠点を置いているHonestbeeに何が起きたかを見るといいだろう

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(翻訳:sako)