Zoom上でクリップサービスを提供するスタートアップのGrainが4億3000万円を調達

プラットフォームが急成長するときには、その勢いに便乗してその上のサービスや製品を構築しようとする企業が登場するものだ。Facebook、Twitter、そしてSlackでも同じことが起きた。同じことが現在、Zoom上でも起こっている。コロナウィルスが世界中の人びとを屋内の自主的な隔離に送り込んだために、テレビ会議会社のZoomが世界を席巻したのだ。

とはいえ、これはまったく新しいトレンドというわけではない。多くの企業が、現在提供社が18ページに及ぶZoom App Marketplace(2018年秋に開始)を通じて、自社製品を販売している。しかし、2018年にサンフランシスコで創業されたGrainは、Zoom上で(少なくとも設立時点では)全ビジネスを提供した最初の企業だろう。

さて、そのビジネスは何だろう?共同創業者でCEOのMike Adams(マイク・アダムス)氏によれば、基本的なアイデアは、Twitter、Discord、Notion、Slack、そしてiMessagesなどのプラットフォームをまたいで、保存/共有することができるコンテンツを、Zoom通話内でキャプチャすることだという。

たとえば学生がメモを取りたいとしよう。彼または彼女は、先生が話している内容の一部を録音して保存したり、クラスメートと共有したりすることができ、講義全体を見直す必要はないようにできる。仕事で使う場合も状況は同じだ。Grainを使用することで、仕事仲間は伝えられたものの中で、最も重要な情報にフラグを立てて、固有のURLを持つクリップを介してそれらの情報だけを共有することができる。

Grainはコンテンツをクリップの中に文字起こしして、ユーザーが選択した場合には、字幕を表示できるようにする。

ビデオクリップの長さは30秒から10分までとなる。それらを1本にまとめることで、重要部分のサマリーを作成することもできる(これには時間制限はない)。さらにユーザーは、記録後にそうしたハイライトの長さをトリミングしたり、調整したりすることができるだけでなく、ビデオクリップに悪質な改変が行われないように、編集権限のある人を管理することもできる。

アダムス氏は、彼と彼の兄弟のJake(ジェイク・アダムス氏。彼が以前一緒に会社を共同創業したBranch Metricsの元ソフトウェア エンジニア)は、Zoom上で姪や甥たちの貴重な瞬間のクリップを保存するためにもGrainを使っていると言う。もちろん力を注いでいるのはソフトウェアのユーザー単位に課金している企業や学校向けの用途だ。

実際Adamsは、Grainのアイデアは彼が共同創業した直前の会社であるMissionUから生まれたと語っている。MissionU は、伝統的な大学に代わるような授業を1年間受けられる、Zoomベースの仕組みで、学生は授業料を要求されない代わりに、もし年収5万ドル(約540万円)以上の職に就くことができたら、3年間収入の最大15%までを支払うことに同意するというものだ。

2016年に設立され、投資家から1150万ドル(約12億4000万円)を調達したMissionUは、学生たちが収入を得始める前に、2018年に株式交換でWeWorkに売却された(学生たちは収入分配契約から解放された)。それでも、この実験は十分に長く続いたため、売却時にMissionUを去ったアダムス氏は、学生がオンラインコンテンツの重要な部分を切る取るのに役立つ、より優れたツールの必要性を肌身で感じたのだと言う。

もちろん問題は、Zoom自身もその機会に注目しているかどうかだ。他会社に大きく依存していることは常にリスクとなる。(FacebookとTwitter、そして両社によって焼き払われたサードパーティ開発者の長いリストを考えてみると良い)。

もしVCのような投資を始めているZoomが、Grainにも出資するならば、将来的な競合を避けるための予防接種になるかもしれない。

それでも、Zoomが将来彼らの敵ではなく味方となることに、多くの投資家たちが賭けているようだ。実際、昨年末に2回のシードラウンドで400万ドル(約4億3000万円)以上の資金を調達した。投資家に名を連ねたのはAcrew Capital、Founder Collective、Peterson Partners、Slack Fund、Scott Belsky、Sriram Krishnan、Andreas Klinger、Scooter Braunなどだ。

その資本の一部を使ってベータ版を開発してきた11人のチームは、いまやそのベールをはがす準備が整った

まあ確かに、Grain(最終的には他の多くの企業を統合する計画をもつ)には、Zoomほどの飛躍的な伸びは期待できないかもしれない、何しろZoomは最近の記憶の中では珍しいほどの新たな大ブレークを果たしたプラットフォーム企業なのだ(今週初めにOracleの共同創業者であるラリー・エリソン氏が仕事のやり方を変える「必須サービス」とまで言ったほどだ)。

Zoomは長い間、エンドユーザーによる口コミ採用に支えられていたもので、企業間のビデオ会議という性質上、社内外でその成長を続けてきていた。現在、消費者向け企業としての急成長も、これまで同様の軌跡をたどっている。Zoomコールに招待された新しいユーザーの割合が高くなると、そうした人たちも最終的には自分で会議をホストできるように、サービスにサインアップするようになる。

もしGrainが幸運ならば、その中の一部の人たちがGrainにも気が付いてくれるだろう。

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(翻訳:sako)

有機無農薬にこだわったシンガポールのフードデリバリースタートアップが約11億円を調達

クラウドキッチンはフードデリバリーの重要分野だ、元Uber CEOのトラビス・カラニック氏が新たなビジネスでその分野に参入している、それはアジア、特に東南アジアに重点を置くものだ。そうした中で新参者にもかかわらず、よりしっかりとした事業を進めるシンガポール発のスタートアップが、地域拡大を目指して巨額の資金を調達した。

2014年に設立されたGrainは、クリーンフード(有機無農薬などの素材を使ったものを指す)に特化しており、カラニック氏のCloudKitchensや、Deliveroo、FoodPanda、GrabFoodなどのフードデリバリーサービスとは異なるアプローチを打ち出している。

人気のない不動産をキッチンとして活用し、配達にデリバリーサービスを使うクラウドキッチンモデルを採用してはいるが、それらを自分自身で運営しているのだ。CloudKitchensやその他の会社が、オンデマンドデリバリー顧客に向けて安価に調理を行うために、調理を行う会社に自社の作業所を賃貸している一方で、Grainは自社の調理人、メニューそしてデリバリーチームを使って運営している。もし陳腐になったテクノロジー用語を使うことをお許しいただけるなら、いわゆる「フルスタック」モデルということだ。

そしてなにより、Grainは利益を生み出している。新しい調達ラウンドは後述するように、成長を狙ったものだが、スタートアップ自身は昨年から利益を挙げていたと、CEOで共同創業者のイ・サン・ヨン(Yi Sung Yong)氏はTechCrunchに語った。

現在同社は、プロダクトをすべて支配下におくそのモデルの利点を享受している。他の会社がレストランや配達人を含む連携の複雑さを抱えている事情とは一線を画しているのだ。

私たちは以前、Grainが2016年にシリーズAで170万ドルを調達した件は報告していた。今回はタイのSingha Ventures(ビール会社の投資部門だ)が主導する1000万ドル(約11億円)のシリーズBを公表した。他にも多くの投資家たちが参加している。例えばGenesis Alternative Ventures、Sass Corp、K2 Global(Impossible Foods、Spotify、およびUberなどをサポートしているシリアル投資家Ozi Amanatが経営している)、FoodXervices、そしてMajuvenなどだ。既存の投資家であるOpenspace Ventures、Raging Bull(Thai Expressの創業者Ivan Leeの会社)、およびCento Venturesも参加している。

このラウンドには、株式だけではなくベンチャー融資も含まれているが、The Coffee Bean & Tea Leaf(Sassoon Investment Corporation)のオーナーの家族オフィスが関わっていることは注目に値する。

Grainはシンガポールの個人はもちろん、ビュッフェもカバーする。

前回と今回のラウンドの間の3年は長い年月だった、OpenspaceとCentoはその間にブランド名を変更している。そしてこの期間には非常に様々なことが起きていた。サン氏は、この期間のうちに、危うく資金がショートしそうになったこともあったが、資金が底をつく前にビジネスの基礎にテコ入れを行ったと語る。

事実、同氏によれば、現在100名を超えるスタッフを擁する同社は、自前で資金をまかなえるような準備を整えていたのだという。

「シリーズBでの調達は考えていませんでした」と彼はインタビューで説明した。「そうする代わりに、私たちは事業そのものと利益を挙げることに集中していました。私たちは投資家に完全に頼ることはできないと思っていたのです」。

それが、皮肉なことに、VCたちは自前で資金をまかなえる企業が大好きなのだ(なにしろビジネスモデルが上手く行くことが証明されているのだから)、そして資金調達を必要としないスタートアップに投資することは、魅力的な案件であり得る。

最終的には、利益を挙げられる力こそが魅力的に見える。特に食品分野では、無数の米国スタートアップが閉鎖に追い込まれていることを思えばなおさらである(MuncherySpigなどがその例だ)。だがこれまでの事業への集中はGrainにとってその拡大を棚上げすることを意味していた。だが同社は2017年に傷んだカレーによって20人の顧客に食中毒を起こしたことによって、内省する時間を得ることになる。

サン氏はこの事件について直接コメントすることは避けたが、現在会社はビジネスを全面的に拡大するための「インフラストラクチャ」を開発し、そこには厳しい品質管理も含まれていると述べている。

Grainの共同創業者兼CEOのイ・サン・ヨン氏(LinkedIn経由の画像)

Grainは現在、唯一の市場であるシンガポールで1日当たり「何千」もの食事を提供しており、その年間売上高は数千万ドルに及ぶと彼は言う。去年の成長率は200%だった、とサン氏は続け、いまや国外に目を向けるべきときだと語る。GrainのCEOによれば、Singhaと組むことで「バンコクで事業を立ち上げるために必要なすべてのもの」が手に入ると語る。

マレーシアを拠点とするライバルであるDahamakanが最初の拡大に選んだタイは、現在考えられている唯一の拡大先だが、サン氏は将来的には変わっていく可能性もあると語る。

「もし事態がより速く動くならば、私たちはより多くの都市へ、おそらく1年に1つのペースで拡大して行くでしょう」と彼は言う。「しかし、私たちは自分たちのブランド、私たちの食べ物、そして私たちのサービスをまず整える必要があります」。

その1つの要素は、供給者からの原材料や食品のより良い取引を確保することかもしれない。Grainは、街中で顧客になるべく速く提供を行えるように戦略的に配置された、その「ハブ」キッチンを拡大している。またデリバリーに用いる温蔵庫ならびに冷蔵庫を備えたトラック群の数も増やしている。

Grainの歴史は、この地域のスタートアップが試練と苦難を乗り越えることが可能なことを証明しているが、事態が悪化したときには基本に集中し、コストを削減することができることが大切なのだ。コストが積み上がったときに何が起きるかは、同じシンガポールに拠点を置いているHonestbeeに何が起きたかを見るといいだろう

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(翻訳:sako)