英国発の日本人スタートアップ・エネチェンジ、電力自由化に向けサービスを開始

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

エネチェンジ代表取締役の有田一平氏(右)と創業メンバーでアドバイザーの城口洋平氏(左)

先週僕は米国サンフランシスコで開催されたTechCrunchのイベント「Disrupt San Francisco 2015」に参加していた。そこで衝撃的だったことの1つは大麻に関する新メディア(ラッパーのSnoop Doggが10月に「Merry Jane」なるサイトを立ち上げる)や大麻ショップ向けのPOSシステム「Green Bits」が、そのステージで発表されていたことだ。

日本で生まれ育った僕としてはテック系のイベントでこういう話が出ること自体が驚きだが、米国では医療用に加えて娯楽用での大麻の使用を認めている州が複数存在しており、その数は増えつつあるという。その是非はさておき—1つはっきりと言えるのは、今まさに新しいマーケットが生まれており、スタートアップが活躍するチャンスがあるということだ。

では日本にはそんな新しいマーケットがあるのだろうか? 僕が最近よく聞くキーワードは2つ。2020年の東京五輪を見据えた「インバウンド」、そして2016年4月よりスタートする「電力自由化」だ。今回はその電力自由化のマーケットにチャレンジするスタートアップ、エネチェンジについて紹介する。同社は9月30日より、電力の価格比較サイト「エネチェンジ」において、専用ダイヤルでオペレーターが電力会社選択の相談・支援を行う「エネチェンジ優先予約」をスタート。電力自由化に向けてサービスを本格化する。2016年の年始にも各電力会社から価格等が発表されると見られるが、それ以降はより具体的な乗り換えプランの提案などを行う予定だ。

エネチェンジ優先予約

エネチェンジ優先予約

英国発の日本人スタートアップがそのルーツ

エネチェンジは2015年4月の設立。そのルーツは英国発のスタートアップだ。もともとは建築・エネルギー事業を手がけるJASDAQ上場のエプコの代表取締役 グループCEOの岩崎辰之氏や、英・ケンブリッジ大学の卒業生らが英国で2013年に電力関連の技術を研究する「Cambridge Energy Data Lab」を設立。そこで電力データの解析をはじめとして研究やサービス開発を進めていたが、そこから価格比較サービスを切り出す形で日本にエネチェンジを立ち上げた。

エネチェンジの代表には、同ラボの創業メンバーである有田一平氏が就任する。有田氏はJPモルガンで債権やトレーディングなどにかかわるシステムの開発に従事。その後グリーの海外向けプラットフォームの開発に携わった。

ところでこのエネチェンジ、なぜ英国発なのか? それは英国が2002年から電力自由化を進めており(ヨーロッパ各国は2008年までにすでにほとんどの国が電力を自由化している)、なおかつ経済規模が大きく、かつ地理的には島国という、日本のモデルとなる環境なのだそうだ。そこでの研究成果を日本の市場に生かす考えだ。

ミログ創業者の城口氏が創業メンバー・アドバイザーに

エネチェンジ創業メンバーの1人であり同社のアドバイザーを務めるのは、ケンブリッジ大学で電力データ解析の研究を行う城口洋平氏。同氏はかつてはAndroidのログ解析サービスを提供するミログを立ち上げた人物だ。ミログは2009年に創業したが、ユーザーの同意を得る前にデータを収集・送信するという仕様が問題となりサービスを終了。2012年に会社を解散した。城口氏はその後渡英し、現在はケンブリッジ大学で日本人唯一の電力データ研究者として活動している。

城口氏によると、英国では電力自由化に伴って、「『ライフネット生命』モデルと『ほけんの窓口』モデルの新会社が登場した」のだという。もちろん前述の2つのサービス名は例でしかないが、要は新興の電力会社と、その販売窓口が生まれたそうだ。前者は相当の資金力が必要となるし、競合となる既存の電力会社は巨大だが、後者はスタートアップでも比較的挑戦しやすいマーケット。2006年にスタートした価格比較サイト「uSwitch.com」は1億6000万ポンド(約291億円)で売却されるなど、イグジット実績も出ている。

ちなみに日本の電力市場は約7.7兆円。オール電化や電気自動車の登場を背景にしてオールドエコノミーながらまだまだ成長している領域でもある。すでに価格比較サービスの価格.comでも電力比較のサービスをスタートしているし、他にも競合サービスを準備中のスタートアップがあるとも聞いている。

エネチェンジはすでにエプコやB Dash Venturesから合計2億2000万円を調達している。今後は採用やカスタマーサポートの強化、電力自由化に関する啓蒙も含めた広報・宣伝活動などを進める。また本日より、タレントのデーブ・スペクター、京子スペクター夫妻が広報アドバイザーとして就任するという。

アメリカでVCのあり方は変わりつつある―、Scrum Venturesで宮田拓弥氏が目指すもの

「今でファンド設立2年ほどです。ようやく形になったので取材を受けるようになってきました」。そう笑いながらTechCrunch Japanの取材に応えるScrum Ventures創業者でゼネラルパートナーの宮田拓弥氏(@takmiyata)は、日本のネット業界、スタートアップ界ではよく知られた人物だ。

photo01

日米でエグジットを経験した起業家から投資家に

宮田氏は、サンフランシスコを拠点に米国のテック系スタートアップへの投資を行うVCを経営しているベンチャーキャピタリストだが、日本と米国でソフトウェア、モバイル関連のスタートアップを複数起業した元起業家でもある。顔認識技術を開発していた南カリフォルニア大学発のNeven Visionの創業に関わり、2006年にGoogleへ売却するというエグジットを経験。日本では自分に似た顔の有名人を教えてくれるサービス「顔ちぇき!」を提供するジェイマジックの創業者として知られていて、これは2009年にモバイルファクトリーに事業譲渡している。2009年にミクシィでアライアンス担当役員に就任し、その後はmixi America CEOを務めた。

アメリカを拠点とするようになって約10年、Y Combinatorを始めとする現地のテックコミュニティに人的ネットワークを持ち、これまでにコマース、ヘルスケア、SaaS、動画、IoTなどのスタートアップ39社に投資してきた。現在の投資テーマはライフスタイルとテクノロジーが重なる領域。投資対象はかなり幅が広く、金融やIoT、ドローン、ヘルスケアもファッションも含むという。技術トレンドとして、新しい価値が生まれるキーとなる、いわゆる「イネーブラー」としては人工知能、ビーコン、クラウドソース、API、ウェアラブルなどに注目しているそうだ。Scrum Venturesとして投資している39社は全部アメリカ企業で、7割がシリコンバレーベース。ただ、創業者の出身国は、韓国、イギリス、シンガポール、ロシア、中国、インド、フランス、オーストラリア、イスラエル、ベトナムなど、かなり多様だ。

VC関連の統計データを提供するCB Insightによれば、アメリカで投資している日本系のVCとしては、Scrum Venturesは投資件数で「最もアクティブ」と言えるという。アメリカで投資活動をしている日本系VCといえば、WiLDraper Nexusがある。

scrum

Scrum Venturesは日本企業からの出資が主

アメリカのVC界隈では付加価値のない資金の提供という投資だけでは、なかなかベンチャーキャピタリストとしてトップ・ティアのグループに入って行って良い投資ラウンドに参加できないという現実がある。宮田氏は自らがエグジットを経験している起業家であることや、多くのアメリカのスタートアップを日本市場や日本企業へと繋ぐ役割を果たすことで、一定の地歩を固めつつあるようだ。

2013年スタートのScrum Venturesのファンド規模は現在合計で約2500万ドル。出資しているLP(Limited Partners)は、RSPファンド(リクルートホールディングス100%出資ファンド)、富士通、博報堂、DeNA、mixi、リヴァンプ、マネックス証券、クロスカンパニーなどがあり、このほか企業名は非公開であるものの百貨店グループも参加しているそうだ。こうした日本企業がScrum Venturesのようなスタートアップへの投資ファンドの出資者となる背景には、単なる投資という以上に、宮田氏のように現地に入り込んでいる人物を通してテックビジネスのトレンドにキャッチアップするという意味や、シリコンバレーの技術を取り込むようなアライアンスを模索するという狙いもある。Scrum Venturesでは定期的にLP向けのネットワーキングイベントも開催している。

インキュベーションやコミュニティ運営、教育にも取り組む

日本企業を出資者としたファンドを通して、日米のスタートアップ企業や大企業を繋ぐことには価値があるだろう。ただ、そういう2国間をブリッジする役割よりも、宮田氏はもう少し大きな構図の中で自分や自身のVCが果たすべき役割を見据えているようだ。アメリカでVCのモデルが変化しつつあることと呼応して、設立2年になるScrum Venturesでは新しい取り組みを始めているという。

もともとVCの役割として、単に資金を提供するだけでなく、「バリュー・アッド」(value add)と、この業界の人たちが呼ぶ付加価値の提供が重要だ。お金は今やコモディティで、むしろ良いアイデアや技術、チーム、成功しそうに見えるプロダクトのほうが希少。男女関係と同じで、VCと起業家というのは相手を選んでもいるが、選ばれる関係でもある。イケてる起業家に選んでもらえるVCであるためには、かつては、ビズデブやエンジニアリング、人材採用、PRなどでスタートアップを手助けすることが重要だった。これらに加えて、今後はインキュベーションやコミュニティ運営、教育、データベースの提供といったこともカギとなっていくだろうと宮田氏は言う。

インキュベーションやコミュニティというのは、シードアクセラレーターの先駆けとなったY Combinatorのモデルがうまく行っているように見える。最近だと投資済みのポートフォリオ企業以外の超アーリーステージの起業家もコミュニティに巻き込むスタイルも増えていて、日本だとIncubate Fundが主催し、多くのVCが参加する合同合宿のIncubate Campや、East Venturesなどが若い起業家予備軍やVC予備軍を惹きつけて大きなコミュニティを形成している例がある。

Scrum Venturesでもインキュベーションに力を入れていくといい、インキュベーション案件1号として、「#LYVE」(ハッシュ・ライブ)という動画メディアに投資している。#LYVEは元TheBridgeのライターだった福家隆氏が始めたメディアで、30〜60秒程度でシリコンバレーのサービスの体験動画、イベント紹介動画、インタビュー動画などを日本向けに提供していく。中期的には他言語化してアジアを繋ぐような動画メディアに育てる構想だそうだ。

若手の教育にも力を入れるそうだ。

「これまでにも実はScrum Venturesでベンチャーキャピタリストとなるためのアソシエート教育をやってきています。ミニマム3カ月で即戦力というのを目指して、9カ月は実地でOJTということを3人くらいを対象に内部でやってきました。これをテンプレ化して企業向け、大学生向けとして外部化していきます。今はいろんな国の政府と話をしています」

このテンプレの元になっているのは、シンガポール国立大学からの学生が、スタンフォードとの交換プログラムでシリコンバレーにやってきたときに彼ら向けに作ったプログラムなのだという。

「ベンチャーキャピタリストになるというのは企業評価ができるということ。そのブートキャンプをやりたいんですよね。Scrum Venturesに来たシンガポール人は、1年間ですごく伸びました。ちゃんとした教育を受けてる人たちは、あっという間に企業評価ができるようになる。今どきのネットビジネスって、能力が高ければ10代や20代でもできる」

「私はいま42歳です。これから時代が根本的に変わると思います。英語とプログラミングができたら世界で勝負ができるんです。だから自分たちが持ってるナレッジやリソースを使って、若者たちに武器を与えたいんです。いまシリコンバレーで活躍してるのはインド人と中国人ですが、ほかのアジア人にも活躍してほしいと思っています」

“学生起業”の挫折乗り越えたアトコレ、メンバーズ傘下に——今後はインバウンド向けメディアを運営

アトコレの石田健氏(中央)、右からサムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

アトコレ(現:マイナースタジオ)の石田健氏(中央)、サムライインキュベートの榊原健太郎氏(右)、玉木諒氏(左)

2011年9月に設立された学生スタートアップのアトコレ(9月に社名をマイナースタジオに変更)。同社をメンバーズが買収することが明らかになった。買収額は非公開。関係者によると数億円程度になるという。

創業間もなくメンバーが会社を離れることに

同社は創業時にはサムライインキュベートからシードマネーを調達。アート作品に特化したまとめサイト「みんなの美術館 アトコレ(現:MUSEY)」を提供していた。だが1年ほど経った頃、当時の代表をはじめとしたメンバーが会社を離れ、サービスを企画した石田健氏だけが代表取締役として会社に残ることとなった。ちなみに当時の代表は、現在クラウドソーシングサービス運営のクラウドワークス取締役副社長兼COOを務める成田修造氏。ほかのメンバーは、女性向けメディア「MERY」運営のペロリ代表取締役・中川綾太郎氏、同社取締役の河合真吾氏。それぞれ新しい場所で活躍をしている。

創業から間もないタイミングでの挫折。「みんなで『互いのキャラが濃すぎるとダメなのか』ということまで話し合った。個人的な視点だが、オペレーションを回すのが得意な人間や市場の方向性に明るい人間がいて個性も違う。一方で僕は研究員をやりたいようなタイプ。みんながひと通り事業を経験した今ならまた違うのかも知れないが、それぞれの(事業への)体重のかけ方が違っていた」——石田氏は当時をそう振り返る。

結局アトコレは石田氏を残して実質的に活動を停止。石田氏も大学院に進学し、その一方で個人プロジェクトとしてニュース解説メディア「The New Classic」をスタートした。この反響が大きかったことからサービスをアトコレに移管して運営することになったが、「広告で月の売上が数十万円程度、それ以外は2年間ほとんど何もしていなかった」(石田氏)のだという。

サムライ榊原氏「環境をリセットしてもう一度挑戦を」

そんな状況だが、石田氏には会社をたたむという選択肢はなかった。「当時は学生起業ブーム。だからといって『学生は勝手』と言われるようなことはしたくなかった。榊原さん(株主であるサムライインキュベートの代表取締役・榊原健太郎氏)にも『自由にやりなよ』と言われたので、すぐにではなくても、勝負できるマーケットを見つけて結果を出そうと思った」(石田氏)。榊原氏も当時を振り返って「全員環境をリセットして、もう一度挑戦してもらうべきだと思った」と語る。

一念発起したのは2014年の春。新たに社内にメンバーを迎え、メディア事業を強化。おでかけをテーマにしたキュレーションメディア「Banq」をはじめとした複数の特化型メディアを立ち上げた。Banq、THE NEW CLSSICは、それぞれ現在MAU(月間アクティブユーザー)数百万人のサイトに成長している。

「Banq」のスクリーンショット

「Banq」のスクリーンショット

メディア運営を通じて、オウンドメディアの運用支援事業にも進出した。「単純にコンテンツを作って納品するのではなく、メディア運営ノウハウをもとにSEOなども支援する。ライターに価値に置くよりも、コンバージョンに価値を置いたメディア作りをしている」(石田氏)。売上高などは非公開だが、メディア運営とオウンドメディア運用支援で黒字化は達成しているという。

アトコレでは、メンバーズの買収に合わせて社名をマイナースタジオに変更している。今後はメンバーズのクライアントをターゲットにしたオウンドメディア運用支援・コンテンツマーケティングを行うほか、新たにインバウンド向けのメディアを立ち上げる予定だという。「Banqはただのキュレーションメディアに見えるかもしれないが、実は裏側で各記事にスポット情報が紐付いている。このスポット情報を生かして、新しい『シティガイド』を作っていきたい」(石田氏)

ソフトウェアの未来はAPIが支配する

destroypath

これからは、ユーザーインターフェースではなく、API ― ソフトウェアプログラム同志のやりとりを統治するルール ― がソフトウェアを支配する時代になる。

Intel CEO Brian Krzanichが8月に同社の年次デベロッパーフォーラムで、モノのインターネットに力を入れることを宣言した時、彼は既に多くの人々が知っていることを強調した ― ソフトウェアエンジニアリング新時代の夜明け。それはAPIファースト設計と呼ばれ、これを採用したデベロッパーは途方もない機会を得る ― そして、そうでないデベロッパー(および会社)は大きなリスクを負う。

Intelは、APIの重要性を認識している唯一の大企業ではない。最近IBMは、 IBM BluemixでAPI管理の分野に参入した。これは企業が自分たちのAPIをデベロッパーがどのように使っているかを知るためのサービスで、そのフィードバックに沿って設計できる。OracleはAPI管理スイートを6月に拡張し、成長する収益機会に乗じようとしている。他のプレーヤーたちも、API中心ソフトウェア開発の準備をここ数年着々と進めている。

通常、新しい製品や機能を設計する際、デベロッパーはまずUI画面をデザインし、ユーザー体験がどうなるかを示すよう求められる。このアプローチが一般的になった理由はいくらでもある。タッチスクリーンは新しい世代のコンピューター利用を可能にし、われわれがハードウェアと対話する方法を根本から変えた。

つながったデバイス、無人走行車、および高度な医療テクノロジーは、APIファースト設計が可能にする新技術のごくわずかな例にすぎない。

AppleとGoogleは、消費者にとっても企業にとっても使いやすさが優先事項であることを証明した。さらに、拡張/仮想現実プラットフォームの台頭は、人々がコンテンツを体験する新しい方法を常に探求していることを証明した。しかしデバイスが急増するにつれ、システム-システム間の対話が、人-システム間の対話を支配し始めた。システムは美しいインターフェースを必要とせず、必要なのは確実に定義された契約だ。彼らはAPIを必要としている。

モバイルだけでも、異なるインターフェースを10種類は思いつくことができる。さらにはウェブ、クライアント-サーバー、シンクライアントと挙げればキリがない。すべてを掌握する唯一の方法はAPIレイヤーに集中することだ。離散化したインターフェースレイヤーについて考えることすら無意味だ ― 特にサービスを提供する立場では。Netflixを見てほしい。あんなにシンプルなユーザーインターフェースを持つビデオストリーミングサービスが、一体どうやって6300万人以上のユーザーが世界中から何百種類ものデバイスを通じて彼らのビデオライブラリーをアクセスする規模を維持できているのか? 卓越したAPIだ。

モノのインターネット(IoT)― Business Insider Intelligenceによると近々テクノロジー世界の中心になる ― がこのパラダイムシフトを強く動かしている。このデバイスの多様性は、既に動き始めているトレンドをさらに後押しする。

デバイスが人々を数で上回るようになると、それらをつなぐシステムは驚くほど複雑化する。APIは、こうした接続の基盤を成す。デジタルハードウェア間のモルタルだ。この複雑さが、巨大エコシステムの中で既存レイヤーの上に部品を積み上げるフルスタックエンジニアリングからの、構造的移行を進める舞台を整えた。

APIファースト設計はそれを採用したデベロッパーに途方もない機会を与える ― そしてそうでないデベロッパーには大きなリスクを。

Apple、Googleを始めとする他のIT巨人たちも同じAPI中心の未来を推進している。新たな相互接続分野 ― 典型例を挙げるならApple Watch等のウェアラブルやGoogleの無人走行自動車 ― はわれわれの日常生活におけるAPIの重要性の高まり示している。部屋で一番賢い人たちが何か新しいことを始めた時は、注意を払った方が良い。それはコンピューターや画面がなくなるという意味ではなく、デベロッパーに全く新しい世界の機会が切り開かれる予兆だ。

API中心開発への移行に失敗した結末は、個人にとっても会社にとっても深刻だ。API周辺技術の習得に失敗したデベロッパーは、自身のスキル価値を急速に下げ、職の安定性は減少する。

企業にとって影響はさらに拡大されうる。この技術的革命に乗り損ったスタートアップは競争力を失う。劣った製品を作るかもしれないし、完全に撤退するスタートアップもいるだろう。革新の先端で生きられない会社は縮んでいくパイの一切れになる。

よりつながった世界に突入するにつれ、驚くような新しい可能性が出現する。デベロッパーは「一口大」のものを消費したがる。Amazonがこのアプローチを広めた ― 彼らはデベロッパーにシステムが何をするかを伝え、自らは脇へ退いた。IT企業にとって「伝える」とはAPIを渡すことだ。最善の組み合わせによるプラットフォームの繁栄を可能にするマイクロサービスに向かって、世界が動いてきたのは不思議ではない。

つながったデバイス、無人走行車、および高度医療技術は、APIファースト設計が可能にする新たなテクノロジーのごくわずかな例だ。こうした革新が起きるためには、強固な基盤の上に構築されなくてはならない。それはシステム設計を基盤レイヤー ― API ― から始めることを意味している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

Jukin Media、人気のバイラル動画 PizzaRatの権利を獲得

screen-shot-2015-09-24-at-3-24-18-pm

先週インターネットに旋風を巻き起こした愛すべきネズミ、PizzaRatがハリウッドに進出する。

エンターテイメント会社のJukin Mediaが権利を買ったこの15秒ビデオは、YouTubeで500万ビュー以上を記録し、小動物の動画をリツイートした多くのラットファンを驚かせた。動画を撮影したコメディアンのMatt Littleは、PizzaRat成功の報酬を受けとる。

Littleが投稿した後のJukinの行動は速かった。同社はヒデオがまだ2600ビューのうちに動画とYouTube広告の権利を確保し、PizzaRatを「過去数年間に数十億ビューを達成した2万本を超えるビデオコレクション」に追加することができたと、広報担当VPのMike Skogmoは語った。

「今Pizza Ratだけでなく、結婚式のエチケットをパパに説明する女の子や、病気の妻のために歌う老人のビデオが大きな話題を呼んでいる」とSkogmoは語った。「これは大切なことだが、われわれのライブラリーにあるビデオは、全権利を買う場合と収益分配する場合があり、ビデオの原所有者が権利を持ち続けているものが少なくない」。

Jukin Mediaはバイラル性を利用した独自のビジネスを展開している。何より動きが速い。Patch.comによると、Jukinはビデオが投稿された5分後にはクリエーターに接触する。ビデオ制作者は200ドルおよび広告収入の70%を手に入れる。その後Jukinはこれらのビデオを不法に使用する連中を追跡し、GIFやコピーを削除させる。

同社は他に、FailArmy、People Are Awssome、およびThe Pet Collectiveも所有している。

「ビジネスモデルは成功している。われわれは急速に成長し利益も上がっているので、ビデオ所有者のポケットに毎日本物のお金を入れている。ユーザー生成ビデオは一過性の流行ではない。これはエンターテイメント界の恒久的存在だ。私たちはバイラルビデオを見るのが大好きだ」とSkogmoは言った。

同社によると、2010年に投稿されたビデオにもクリックがあり、面白ビデオの継続力が実証されている。

「人気の窓がある限り、それが閉じることはない」とSkogmoは言う。

コンテンツ作者はJukinを利用して人気を金に代え、Jukinは平均的ブログ記事の値段で、人々が見たいものに簡単に賭けることができる。全部のコンテンツがPizzaRatのような人気を呼ぶわけではないが、集約的アプローチによってこの会社は何千もの個別のビデオから利益を上げている。

しかしもっと重要なのは、Jukinが買った後もそのビデオを隠さないことだ。殆どの場合、彼らはコピーをバイラル世界で成功しているサイトに送り込む ― あなたの遠い親戚がFacebookからリンクしているサイトだ。これがビデオのバイラル性を高め驚くほど幅広い視聴者に広まる。

そうそう、われわれにはまだミルクシェイク・リスがいる。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

日本のスタートアップ投資はバブル? JVCA会長に就任した仮屋薗氏に聞く

国内のスタートアップ投資は過熱気味で未公開企業のバリュエーションが高騰している。これはバブルではないか? ここ1、2年ほど、そういう意見をよく耳にした。一部のVCは、投資しようにもバリュエーションが上がりすぎて「パス」することが多く、もう半年間どこにも投資をしていないだとか、むしろ今はトルコのスタートアップに注目しているなんて話を聞くこともあった。

スタートアップ投資はバブルなのだろうか?

この質問をぶつけるのに最適な人物の1人が、グロービス・キャピタル・パートナーズのマネージング・パートナー仮屋薗聡一氏だ。

仮屋薗氏は、日本のネット業界でもっとも長くベンチャー投資をしてきたベテラン投資家の1人で、VC業界の中でも「仮さん」との愛称で一目置かれる存在だ。その仮屋薗氏が2015年7月10日に、発足14年になる日本ベンチャーキャピタル協会(JVCA)の第7代会長に就任した。いまの日本のスタートアップ投資は過熱気味なのか? いまの日本のスタートアップ投資の課題は何なのか? TechCrunch Japanでは仮屋薗氏に話を聞いた。

photo01

仮屋薗聡一(かりやぞの・そういち)氏。三和総合研究所での経営戦略コンサルティングを経て、1996年、グロービスのベンチャーキャピタル事業設立に参画。1号ファンド、ファンドマネジャーを経て、1999年エイパックス・グロービス・パートナーズ設立よりパートナー就任、現在に至る。慶應義塾大学法学部卒、米国ピッツバーグ大学MBA修了。著書に、「機関投資家のためのプライベート・エクイティ」(きんざい)、「ケースで学ぶ起業戦略」(日経BP社)、「MBAビジネスプラン」(ダイヤモンド社)、「ベンチャーキャピタリストが語る起業家への提言」(税務研究会)など。

加熱は一段落、しかしまだ資金量は少なすぎる

過熱気味のバブルかとの問いに対して仮屋薗氏は、現状をこう語る。

「一時期公的な資金が流れこんでバリュエーションをヒートアップさせたという話は2014年にはありましたけど、一段落したかなと考えています。むしろ大企業を始めとして、新規の予算が増えて投資が増えたことが背景にあるのでしょうね」

「ただそれも、きわめて細っていたベンチャーファイナンスに金額が加わっただけ。それが大いなる加熱だったかというと、そこは判断が分かれますよね。今年に入って新規IPO銘柄で上場後の下方修正等もあり資本市場が敏感に反応していますしね。それよりも今年と来年は、過去1、2年に大型資金調達をした企業がパフォーマンスを出せるかが重要です。パフォーマンスというのはエグジットのことだけではなく、追加資金調達を含めたマイルストーン、そうした進捗があるかどうかということです」

仮屋薗氏によれば、日本のベンチャー投資は、むしろ資金量がまだ全然足りていない。

VEC(一般財団法人ベンチャーエンタープライズセンター)によれば、2014年のベンチャー投資は国内で740億円程度です。年間1200億円程度と言われている日本のVC投資金額のうち国内企業を対象とした投資は、その程度です。VECの数字はVCのものだけなので、新設CVCや大企業の直接投資を入れると1000億円に到達しているかもしれません。それにしてもその程度です。これはアメリカの5兆円を超える数字を考えると非常に細く、過小です」

むしろ資金は余剰気味で、良い起業家の数が足りてないという声も聞くが、どうだろうか。

「ICTというジャンルだけで見れば、資金量は必要十分になってきているかもしれません。でも、ちょっと引いて見てみれば、もっと社会にはアタックするべき課題があって、バブルどころか、その手前ですよね。モノづくりやIoT系、ライフサイエンス系は圧倒的に資金が足りていません。研究開発分野の資金量の細さは変わっていないし、ここはリスクマネーが必要です」

アメリカでVC業界に機関投資家のお金が流れ込むようになったワケ

VC協会としては資金量を増やしたいものの、日本の場合、まだ機関投資家の資金がほとんど国内のVCに来ていないという現実があると言う。アメリカでは年金基金が運用資産の5〜10%をVCなどのプライベート・エクイティーと呼ばれるリスクマネーに割り当てている一方、日本ではこの部分が発展途上であり、ことVCに至ってはほぼゼロというのが現状だ。

「これには経緯があります。まず、日本ではVCのパフォーマンスが長らく十分なレベルに到達していなかったことがあります。アメリカだと1980年代後半に独立系VCが大きく成功を収めたのをきっかけにして機関投資家のお金がどっと流れ込むようになりました。ネットバブルの前のことですけど、KPCBとかセコイア・キャピタルといったVCが行なったアップルとかAOL、シスコシステムズ、オラクルといったIT企業への投資が大きなリターンを生みました。こうした企業を支援した投資家たちが機関投資家からの信頼を得て、より多くの資金を預かるようになっていきました。大学の基金ですとか企業年金、自治体の年金基金が、独立系VCの高いパフォーマンスに対して集まってきた」

シリコンバレーは文字通り、シリコンチップをベースにしてPC産業やIT産業が興隆し、そのプロダクトがグローバル市場へ広がっていく中で資金が流入するサイクルが生まれた。今やアメリカではベンチャーキャピタルの投資した会社が民間雇用の11%を生みだし、その売り上げはGDPの21%を占めるという統計もある。

日本でも銀行系VCから独立系VCへと比重が移りつつある

日本で機関投資家の資金がVCに流れてこなかった理由が、もう1つあると仮屋薗氏は指摘する。

「これまで日本のVCが、そもそも機関投資家のお金を必要としてなかったという事情もあります。多くのVCは銀行系だったので、ファンドを組成する際の資金調達に困らなかったのです。一方で機関投資家からの資金を集める独立系VCというのが育ってこなかった。機関投資家からすると、投資対象として明確にVCが認識されていなかったのですね」

日本の現状は、いわゆるニワトリと卵の状態。VCのパフォーマンスが良くなく、機関投資家からお金を集める必要がなかった銀行系VCが主流だった。いまは事情が変わりつあって、独立系VCが増えいる。こうした独立系VCは自力でファンド組成のための資金調達をやる必要がある。これは簡単なことではないという。

「独立系VCの現状はどうかといえば、ようやくパフォーマンスがでてきているところです。ですので、きちんと機関投資家に対してIRをやっていく必要があります。アカウンタビリティが欠かせません。お預かりした資金を、きちんと運用できていることを示していかないといけません。投資先企業のガバナンスなども、上場企業に求められていることが、未公開企業でも求められているようになってくるのではないかと思います」

「日本では年金基金におけるVCへの投資額は、ほぼゼロです。これが1%にでもなれば、かなり意味のある金額になります。例えば、GPIFみたいなところが本丸ですが、自治体とか企業の年金ですね、われわれ日本のVCは、こうした機関投資家の方々と、しっかりとお話をしていかないといけない。そう思っています」

VC養成講座を通してキャピタリストの教育も

JVCAという日本のベンチャー協会の発足は2002年11月。アメリカのNVCA(National Venture Capitarl Association)にならって作られたもので、こうしたVC協会はヨーロッパのEVCAなど各国にあって年に1度は協会同士で集まるという。そもそも日本では民間によるベンチャーキャピタルは1972年に京都からスタートしているが、長らく協会というものはなかったそうだ。

仮屋薗氏自身は設立当初から協会と関わってきていて、それが今回の会長就任に繋がっている。その関わりというのは協会の目玉プログラムである「VC養成講座」を企画し、講師をしてきたことだ。

「VCというのは日本だけでなく、世界的にも定まったカリキュラムがあるわけではありません。それでVC協会のほうで案件開発、ディールの交渉、投資条項の策定、実際の契約、投資先支援、エグジットという一連の流れをカリキュラムとして教えるということをやっています。入社2、3年目ですかね、VCの関連業務をひと通りやって現場にも出ていくなかで、体系的に習得してもらうためにどうすればいいかということです」

「2015年4月に前任の尾崎会長が亡くなられて、それで私がJVCAの会長を引き受けることになりました。JVCAは長らく金融機関系のVCが会員の中核だったのですが、今では独立系VCやCVC系会員も増えています。特に独立系VCは、アメリカのようにこの業界の根幹となっていくものだろうから、独立系が引っ張っていかなければならないのではないか、亡くなられた尾崎さんは、そうおっしゃっていました。そういう中で会長就任の打診を頂きました。尾崎さんは新体制に持って行こうと思ってらっしゃったんですが、志半ばでいらっしゃいました……」

現在、JVCAの協会のWebサイトを見ると、9月末現在でVC会員が47、CVC会員が10となっている。毎月のように新会員が増えていて、日本の主要なVCが揃いつつあるのではないかという。監査法人や法律事務所も賛助会社として会員名簿に名を連ねている。

業界としての意見の取りまとめ、ロビー活動も

JVCAでは「これまで活動範囲が限定的だった」(仮屋薗氏)が、今後は活動を増やしていくという。

「時代背景からして、内閣府や関係省庁、メディアなどとの関係を協会として作っていくことも1つです。ベンチャーは国の成長戦略の本丸で期待も大きいので、協会としてはVCが活動しやすくなる法整備のロビー活動だけではなくて、VC業界の全体のレベルアップもしていきます」

ここで言うロビー活動は、アメリカのような業界ごとのロビィストが特定企業群へ利益誘導するような話ではないようだ。

「例えば、2012年にAIJ事件がキッカケとなってファンド規制の話が出てきました。預かったお金を本来とは違う用途に流用して資金を溶かした、そういうファンドがあったから出てきた規制ですが、このとき、『ファンド』と一括りで呼んで規制をかけるのではなく、VCは成長産業を作るものなので特例を作ってください、と。それで特例措置をどうするのか具体的なお話を、VC協会としてさせていただきました」

「これは金融庁さん応対ですけど、ほかにも経産省さんとはストック・オプションだとか、のれんの問題とか、M&Aがうまく行くために何をすればいいのかなど、いろいろとありますが、JVCAとしてはVCの意見の取りまとめをやっています」

「2006年ごろは、官公庁も大企業も政府も、どこもベンチャーに対して決して支援的ではありませんでした。ベンチャー叩きというのもありましたしね。あの頃、起業の数は相当に減ったんじゃないですか? 堀江さんの一件で『虚業』という言い方も、ありましたよね」

資金の流れも細り、向かい風が続いたベンチャー投資も、2015年の今は追い風だという。

「2015年の今は、フォローしていただいていて、大企業がどうやってコラボするのか、M&Aするのかと積極的なスタンスに変わっています。企業も官庁も積極関与、積極フォローという感じです。どうやったら日本でベンチャーがうまくいくんですか、というのが官庁などの基本的なスタンスです。ただ、具体的なところはリクエストをもらわないとできないよということでヒアリングにいらっしゃるので、逆に、われわれもキチンとお答えしていくということです。ベンチャー企業が、より積極的に活動していけるようにと」

「JVCAとしての取り組みで言うと、ファンドマネジメント能力を上げていくのもミッションです。グローバルスタンダードとは何かというのを理解しながらVCの能力向上をはかる。それは先ほど申し上げた通り、まずアカウンタビリティーですね。出資者との対話やヒアリングというIRの点では、もう1つのオルタナティブ投資であるプライベート・エクイティー業界のほうが進んでいます。VC業界は、そこから比べると遅れているので、学べばいいんです」

「キャピタリスト向けの能力向上でいうと、初心者向けカリキュラムはあったものの、中堅からシニアについては、何ら能力向上やナレッジ共有のプラットフォームがなかったので、これも協会として作っていきたいですね。このレベルだと教科書というのはたぶん作れませんから意見交換という形になるでしょう。ただ、意見を交換するにしても、そもそも『何がナレッジの対象なのか』ということの定義ができているか、『誰がそういうナレッジを持っているか』を特定していくことが大切です。その上で、みんなで勉強会をやる。ここで共有するナレッジは広く拡散させられるものではなく、オフレコでやるってことだと思いますけどね」

メディアに身をおく人間としては、広くパブリックに共有できないナレッジというと、何か村社会的で談合的なニオイも感じる。情報の非対称性を利用して有利に話を進めようとするのは前時代的なアプローチではないのだろうか?

「成功した本当の理由というのはなかなか表に出て来ません。例えばM&Aのとき、最終的なバリュエーションが3、4割上がった経緯とか、そういうのは業界内で研究していく形です。M&Aには客観価値はありませんから。公開企業だと分かりやすいですけどね、例えばTOBなら市場価格の4割増しが一般的じゃないですか。M&Aはベースとなる価格がないので、そこはもうノウハウというのもありますし、交渉の経緯ですよね。買収する企業からしたらシナジーがあるなどの理由以外にもディフェンスのために欲しいという場合もありますよね、他の有力な買い手に行くと困るなど。買い手が1社だと交渉が不利になる、とか、そういうところにもノウハウがあるということです」

大企業のM&A戦略の成功のカギは「企業統合」の知見と技量にある

ナレッジの共有を進めていくとしても、そもそもまだ日本のどこにも存在しない知見というものがあるという。

「そもそもM&Aのエグジットがまだ少ないので、VCにも知見があるわけでもありません。ほかの業界で長けている方から学んでいくのがいいのでしょう。特にM&A後の企業統合、いわゆるPMI(Post Merger Integration)がどうあるべきか、ここの知見が薄いです。これは日本全体でまだありません。こうした知見を深めていくことで、より良いM&Aが増えていくのだと思います」

これはあまりに表立って語られることがないが、M&Aが失敗に終わるケースもある。例えば買収したスタートアップ企業の事業が属人的すぎるために組織として統合できないことがある。そうした中で事業を興した起業家が去ってしまうと買収した側の企業には何も残らない。これは日本でもアメリカでも聞く話だ。日本の企業文化では買収側の担当者が減点方式のサラリーマンだったりして、M&A後の失敗によって大きな「黒星」がつくと、その人の出世に響くこともあり得る。だからM&Aに慎重にならざるを得ないという事情がある。買収する大企業側もM&Aがどうあるべきかを学んで行くフェーズなのだろう。

「日本でもPMIが強いところがM&A戦略で勝てると思うんです。シスコやセールスフォースといった、PMIが上手な企業は、相応の額でスタートアップ企業を買っても、買収金額を上回るような価値を生み出しています」

「成熟した企業のPMIをやったことがある人材は日本にもいます。ただ、成長企業のPMIというのは、まだこれから。ここはVC業界として学んでいきたいですね」

Eブック定期購読サービスのOysterが閉鎖へ

oyster

E本の虫は選択肢を一つ失った。2年前「本のNetflix」としてスタートしたOysterは、2016年始めにサービスを閉鎖することをブログ記事で発表した。

このスタートアップは、CruncBaseによると1700億ドルの資金を調達している。Re/codeによると、共同ファウンダーのEric Stromberg、Andrew Brown、およびWillem Van Lanckerは、Googleに人材買収された。

Oysterはこの雇用についてコメントしていない。声明によると、ユーザーには近く追加情報がメールで送られる。

Oyster読者のみなさん、ご安心を。今のアカウントは何の変更もありません。現在のOysterサービスは2016年始めに終了します。これまでに本を購入したり、Oyster Unlimitedを定期購読している人にはアカウントに関するメールが数週間以内に送られます。購入済み書籍は永久にアクセスして読むことが可能です。もし、返金を希望する場合はいつでも refunds@oysterbooks.comにメールしてください。

TechCrunchはGoogleにもコメントを求めている。

Oyster Unlimitedは月額9.95ドルで2013年9月に開業した時の主要ライバルScribdだった。競争はAmazonが2014年7月に独自のEブック定期購読サービスを開始したことでいっそう厳しくなった。

Oysterはその後ビジネスモデルを拡張し、Unlimitedのカタログにな書籍の販売も開始した。

Oysterは、唯一無二の支配的プレーヤーのいる業界に挑戦的なビジネスモデルで参入したが、アプリはいくつかの機能でKindleと一線を画していた。私はすでに大きなKindleライブラリーを持っていたが、すぐにOysterのファンになり、それはユーザーインターフェイスがずっとよかったこと(特に、1日の時刻に合わせて画面の色を調整するLuminが導入されたから)および、同サービスの集めた作品、エッセイ、幅広い品揃えを気に入っていたからだった(Amazonの職業倫理への嫌悪感から、代替手段の存在が嬉しかったこともある)。

残念ながら、素晴らしいユーザー体験と正真正銘の本好きに違いないチームも、オンラインブック業界での成功を保証するには不足だった。Oysterのチームが今後もモバイル読書のファンを喜ばせる何か楽しいことを続けてくれることを願うばかりだ(あと、最近このアプリで整理し終わったばかりの作品リスト17本をエクスポートする方法も)。

原文へ
 
(翻訳:Nob Takahashi / facebook

iPhone 6sに搭載された3D Touchのユースケースを拡張する、写真共有ソフトのBumpn

img_34713

3D Touchの可能性を示すユースケースと考えることができるかもしれない。

その可能性を試そうとしているのは、現在も公開されているbumpnというアプリケーションだ。写真共有のためのアプリケーションなのだが、他の人の写真を評価(Like)する際に、3D Touchを使うことにしたのだ。

bumpnでは「いいね」のボタンをタップするのではなく、好きさ具合を1-100のレベルで表現できるようになっている。iPhone 6sで利用する場合、評価の高さをボタンタッチの「強さ」で評価するようにするのだ。ただし旧iPhoneでも利用できるよう、その場合は画面タッチの「長さ」で評価のレベルを決定する。

新しいインタフェースを利用した革命的なイノベーションというわけではない。ただ、どのようなことが可能であるのかを示すコンセプトモデルとしてはなかなか面白いのではないだろうか。

ちなみにこのbumpnが採用する評価システム自体もちょっと、他とはちょっと違って面白いと考える人もいるかもしれない。RedditやInstagramなどでは「気に入ったか、気に入らなかったか」を表現してコンテンツを評価するようになっている。このbumpnでは「ちょっと気に入った」から「だいぶ気に入った」というような評価基準を採用していて、これにより「よりあたたかい雰囲気」を出せるかもしれない。

bumpnをお使いでない方のために行っておくと、これは近くにいる人と写真を共有するためのアプリケーションだ。写真の投稿を行う際には25種類のフィルター(いまやこれなしには写真共有サービスを名乗れないほどだ)を利用することができる。

記事冒頭に記したように、bumpnは現在もAppStoreからダウンロードすることができる。iPhone 6sが届き始める金曜日に、3D Touch対応版にアップデートされるのだそうだ。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

アプリ操作の録画で定着率を上げる「Repro」が栄冠、B Dash Campピッチコンテスト

京都で開催中の「B Dash Camp」で18日、スタートアップのピッチコンテスト「ピッチアリーナ」が開催された。国内外23社が参加し、前日の予選を通過した10社が本戦でプレゼンを実施。本戦には韓国企業が7社と半数以上を占めたが、最優秀チームには、ユーザーのアプリ利用動画を使ってコンバージョン率や定着率を改善するサービス「Repro」が選ばれた。以下、賞を獲得したサービスを紹介する。

pa05

B Dash Venturesの渡辺洋行社長(左)とReproの平田祐介社長(右)

Repro(日本)※最優秀チーム/PayPal賞

ユーザーの画面操作を動画で取得し、モバイルアプリの課題発見から解決策までを提示する。Reproが提供するSDKを自社アプリに導入すると、例えば、アプリの起動からクラッシュまでのユーザー行動を記録。これを動画を見れば、簡単にクラッシュを再現し、効率的にバグを修正できる。

アプリ操作動画の再生画面。多くの動画を見るときは倍速、じっくり確認したいときはスロー再生ができる

アプリ操作動画の再生画面。多くの動画を見るときは倍速、じっくり確認したいときはスロー再生ができる

ユーザーの離脱率を把握するファネル分析と連携し、離脱しやすい場所を見つけられる。離脱してしまったユーザーと、コンバージョンしたユーザー行動の動画を見比べれば、離脱原因までわかるのが特徴だ。離脱したユーザーだけを抽出してプッシュ通知を送り、再訪やコンバージョンを促す機能もある。

「初回アクセス時にお気に入りを3回実行した」のように設定したユーザー抽出できる

「初回アクセス時にお気に入りを3回実行した」のように設定したユーザー抽出できる

リピーターを増やすためのリテンション分析とも連携。ユーザーが特定のアクションを「いつまでに何回すると定着しやすい」かを示す“マジックナンバー”を導き出せる。マジックナンバーとは、Twitterで言うと、新規ユーザーが5人以上フォローするとリピーターになりやすいといった数値だ。

利用料金は毎月1万2000円〜。4月22日に公開し、これまでに852アプリが導入している。

TALKEY(韓国)※特別賞

スマートデバイス向けの自然言語解析技術。スマートウォッチで「ランチでもどう?」というメッセージを受信した場合、その内容を解析したうえで「何時?」「もちろん」「お前のおごりな!」みたいな返信メッセージ候補を表示する。

現時点では英語版のみだが、日本語を含む多言語に対応する。将来的にはスマートデバイス以外にも、ネット対応の自動車やIoTへの技術提供も視野に入れている。

カバンやポケットからスマホを取り出さずに、スマートウォッチで受信したメッセージに返事できるのが便利そう。

カバンやポケットからスマホを取り出さずに、スマートウォッチで受信したメッセージに返事できるのが便利そう。

Vetpeer(日本)※エボラブルアジア賞

動物病院の獣医師を対象にしたコミュニティサイト。獣医師が読むべきニュースをキュレーションしたり、「パート獣医師の時給どうしてる?」「開業にかかったお金は?」といった同業者だからこそ相談できるQ&Aコーナーがある。2年前にローンチし、全国の獣医師の42%にあたる約6000人が登録している。

収益源は、動物病院に医薬品や療法食を販売するメーカー向けのマーケティング。具体的にはメーカーの獣医師向けセミナーをネット配信する。従来、この種のセミナーは首都圏を中心に開催していたので来場者が限られたが、全国の獣医師に向けて情報発信できるようになる。

獣医必読(?)のニュースをピックアップしたり、獣医師同士だからこそ聞けるQAコーナーなどがある

獣医必読(?)のニュースをピックアップしたり、獣医師同士だからこそ聞けるQAコーナーなどがある

CtoCコマースのメルカリが新会社「ソウゾウ」を設立、代表には元ヤフーの松本氏

CtoCコマースを提供するメルカリ。同社が9月17日、100%子会社となる新会社「ソウゾウ」を設立したことを明らかにした。資本金は非公開。代表にはメルカリ執行役員の松本龍祐氏が就任する。

松本氏は2800万ダウンロードの写真加工アプリ「DECOPIC」を手がけたコミュニティファクトリーの創業者で、同社をヤフーに売却したのち、ヤフーのアプリ開発室本部長などを務めた。2015年3月にヤフーを退職し、5月にメルカリに参画している。

ソウゾウはまだプロダクトのリリースをしておらず、Wantedlyなどを通じて人材募集を開始したところ。松本氏は「今後新しいアプリをどんどん作っていく」としている。同氏はDECOPIC以外にもTRILLなど女性向けのサービスやメディアにも関わってきているが、ソウゾウは特に女性にターゲットを限定したサービスを展開するという訳ではないという。

ちなみにメルカリの創業期の社名は「コウゾウ」。ソウゾウはこの名称にかけたもののようだ。まずは最初のプロダクトの提供を待ちたい。

エフルート創業者・佐藤崇氏の次なる挑戦はアプリ紹介メディア「AppCube」、事前登録を開始

appcube

モバイルサービスの黎明期、2003年にビットレイティングス(現:アクセルマーク)
を設立し、検索サービス「froute.jp(エフルート)」をはじめとしたサービスを提供した佐藤崇氏。2010年には同社を離れてモブキャストに参画。取締役としてプラットフォーム事業を推進した人物だ。

佐藤氏は2015年1月にモブキャストの役員を退任。再び起業家とし挑戦すべく、新会社のスマートアプリを設立した。6月にはEast Venturesおよび山田進太郎氏(メルカリ代表取締役社長)、藪考樹氏(モブキャスト代表取締役)などの個人投資家から合計3450万円の資金を調達したことを明らかにしている。

そんなスマートアプリの第1弾サービスが間もなくローンチする。同社は9月16日、「AppCube」のティザーサイトを公開し、サービスの事前登録を開始した。今秋中にもまずはAndroid向けにサービスを提供する。

AppCubeは、スマートフォン向けアプリの情報を集約したアグリゲーションサービス。国内のアプリストアに掲載された300万件以上のアプリの情報をクロールしてリアルタイムに収集。アプリの情報と、人工知能で分類した関連レビューやニュース、動画などを集約し、ユーザーの利用動向に合わせて表示する。デモを少し見せてもらっただけなので「人工知能云々…」というところは分からなかったのだけれども、1つのアプリに紐付いて、さまざまな媒体に分散されているレビューや動画などが一覧して閲覧できることは確認できた。特にゲームなど「濃い」アプリの情報収集に向いているだろう。自分がインストールしたアプリを把握し、最新情報を通知する機能なども用意する。

佐藤氏いわく、AppCubeは「アプリ紹介メディアとも言えるが、(コンテンツを作るのではなく)テクノロジーでストアにあるアプリの情報、アプリに紐付く外部の情報をすべて網羅する」のだという。Android、iOSあわせて300万以上もあると言われるスマートフォンアプリ。だがその99%はユーザーに発見されずに埋もれているのが現状だ。その理由は「広告で歪んだランキングや検索メニューからアプリを探す」(同社のリリースより)から。そこでAppCubeでは、アプリの関連情報を網羅。利用動向も把握することで、新しいアプリとの出会いを提案するとしている。

地域に根ざしたビデオを匿名でシェアするPanama

screen-shot-2015-09-14-at-10-24-05-pm

ビデオを扱うことのできるソーシャルネットワークも数多く存在している。しかし「ソーシャル」の面に力点をおき、「コンテンツ」側への意識が薄いものもあるように感じる。

そんな中で勝負しようと出てきたのがPanamaだ。Ochoの共同ファウンダーであるJonathan Swerdlinが、「コンテンツ」を第一に考えるサービスを作ろうと考えて産みだしたものだ。

Panamaでは「地域」に根ざした短いビデオがコンテンツとなる。各「地域」にいる利用者が投稿するものだが、投稿に際しては個人情報を一切必要としないというのが特徴となる。

「Panamaは自分のいる地域のできごとを映し出す鏡のようなものなのです。もちろん他の地域(外国など)にジャンプすることもできます。世界中の人々の心の距離を短くすることができるかもしれません」とSwerdlinは言っている。「皆が、自分のいる場所についての歴史を紡いでいくためのサービスなのです」。

投稿できるビデオは30秒までとなっていて、アプリケーション画面をタッチし続けることで録画・投稿を行うことができる。投稿したビデオは位置ごとに分類され、時系列で表示されるようになる。閲覧者はビデオを見て評価(肯定的および否定的の双方)することができる。

たくさんの肯定的評価を得たビデオは「トレンディング」セクションにまとめられることになる。これは地域に関係なく、まとめて表示されるようになっている。

この「トレンディング」セクションを除けば、基本的には「近所」(Nearby)のビデオが表示されることになる(場所を検索することはできる)。Panamaは現在、公開アプリケーションではあるが、公開前にニューヨークのコンテンツをテスト的に集めている。したがって現在のところはマンハッタンおよびウィリアムズバーグのコンテンツが多くなっている。

利用者はメイン画面から自分の投稿や、あるいは肯定的評価をしたビデオをまとめて閲覧することもできる。

自分でビデオを撮影して投稿する際、実際の音ではなくてBGMを流したいという人もいるだろう。そのような人はストリーミングアプリケーション(SpotifyやPandoraなど)を使うことができる。ビデオ撮影中に音楽を流し続けることで、スマートフォンのマイクがその音楽を拾うようになるのだ。

ビデオ投稿サービスは数多く存在するが、地域に特化して、また投稿者情報を完全に無視するところに新しさがある。

「ログインは無用で、ビデオコンテンツと個人情報が結び付けられることは一切ありません。個人のアイデンティティと結びつけてビデオを投稿する際のプレッシャーから開放されて、ストレートなリアルタイムビデオを投稿できるようになると考えているのです」とSwerdlinは言う。「フォロワーの多寡なども一切関係なく、まったく平等にコンテンツ勝負ができるという魅力もあります」。

もちろん匿名で投稿できるということには悪い面もあるだろう。しかしPanamaはさまざまな仕組みで「不適切」なコンテンツが広まることを防いでいるのだそうだ。

PanamaにはAndroid版とiOS版があり、こちらからダウンロードすることができる。

(訳注:訳者のGalaxy S3ではアプリケーションが異常終了してしまいました。訳者の環境によるものだとは思いますが念の為。iPad版は問題なく動作しています)

原文へ

(翻訳:Maeda, H

人工知能で入会審査する学生限定SNS「Lemon」が、社会人も参加可能に

人工知能による審査をクリアした大学生・大学院生のみが入会できるSNS、「Lemon」については2015年5月に紹介したが、今日から参加ユーザーの対象を大学生に加えて一般社会人にまで広げた。

lemon_v2_ss

「毎日、学校や職場の人としか会わない。もっといろんな人と交流したい」、「他の業界の友人を作り世界を広げたい」、「職場に出会いがなく、恋人ができない」といった声に応えるべく業界や学校といった枠を超えた交流ができる、というのがLemonの売りだそう。Lemon上でユーザーは、自分の仕事や活動内容を軸にして掲示板やメッセージのやり取りができる。オフ会などもあり、すでにビジネスパートナーになったとか、友人・恋人になったといったユーザーもいるのだという。プレスリリースから、具体的な声を抜き出すと、

「アフリカをテーマに事業立案したいと考えていたところ、Lemonのおかげで当時アフリカインターン中だった仲間と出会い、ビジコンに出場できました!」(京都大学理学部4年)

「イギリス留学に関しての掲示板がきっかけで、お互いの留学経験についてメッセージするうちによく会うようになり、今は付き合っています」(中央大学4年)

というものがある。ちょっと意識が高めだね。ちょっと甘酸っぱいね。

若い人が集まれば、そりゃ恋の1つも生まれるだろうから、これだけで何かが言える気がしないのだけど、ちょっと面白いのは当初想定していたのと異なる気づきがあったという話だ。親和性が高いユーザー同士でコミュニケーションが発生するのかとおもいきや、案外そうでもなかったという知見が出てきてるという。LIP代表社長の松村有祐氏は、次のように話す。

「審査という点では親和性を軸にしたアルゴリズムで入会審査をやってきました。開始時に話題になったこともあって、すごいプロフィールの方々が集まり、結果として審査通過率は思ったよりも高かったです。一方で定性的観点からみると、ちょっとユーザー層が偏ってしまうという結果が見えました。いろいろと目指す方向になるようにアルゴリズムは随時修正しています。で、そもそも親和性ベースでの審査がどうかという点については、Lemon内のユーザー間のコミュニケーションの発生について分析をしました。結果としては、親和性の高低とコミュニケーションの発生については必ずしも全てに相関があるというわけではなく、ユーザーへのヒアリングを続けたところ、むしろ、親和性が低いというか、あまり接点がないユーザーとの交流を求めている人も多いというインサイトが発見されました。それが今回社会人解禁するにあたって、普段接点のない人たちとの交流を推すことにもつながっています。おすすめユーザー紹介機能やメッセージの送受信などの動向を学習しており、もちろん引き続きもっと良いアルゴリズムの開発に取り組んでいきます」

これはアルゴリズムというよりもコミュニティー運営上の理念みたいなものかもしれないけど、もう1つLemonがユニークなのは、どんどん参加者の顔アイコンを小さくしていっている点だ。もともと松村氏は「顔面偏差値」で出会いの成否が決まることが多い、旧来のデーティング・サイトへのアンチテーゼを掲げて起業している面がある。リアルな出会いでは外見以外の内面がすぐ伝わるので、人柄やコミュニケーションの内容も出会いの成否に影響する。それをオンラインに持ち込むことができれば、よりリアルに近いパートナー探しの場が作れるのではないか、という発想だ。といっても、「最終的には異性との出会いというのもあるとは思いますが、Lemonでは最初からそこまで強い欲求を想定していません」といい、「知らない人とまずオンラインで知り合ってオンラインでお互いの内面を知り深める、そんなコミュニケーションを想定しています。だから、どちらかというとダイレクトな出会いのツールというよりは、Lemonの中でのコミュニケーションを楽しんで欲しいですね」と、松村氏は話している。

元アップル社員が手がける「まごチャンネル」は、テレビを使って実家と写真や動画を共有する

「まごチャンネル」のセットトップボックス

「まごチャンネル」のセットトップボックス

チカクは9月14日、テレビと接続して利用するIoTデバイス「まごチャンネル」を発表。あわせて、サイバーエージェント・クラウドファンディングの運営するクラウドファンディングサービス「Makuake」で販売の先行受付を開始した。2016年春にも製品を出荷。サービスを開始する予定。

まごチャンネルは、テレビを利用した動画・写真の共有サービス。その名の通りシニア世代とその孫の世代を結び付けることが主な目的。スマートフォンが利用できなかったり機械に苦手意識があるような、ITリテラシーの低い人であってもサービスを利用できるよう、テレビに「孫の写真・動画専用」のチャンネルができるような体験を提供するという。

サービスはテレビのHDMI端子に接続する「家」をデザインしたセットトップボックスと、専用のスマートフォンアプリ、写真などを保存するクラウドストレージで構成される。利用の準備は、ユーザーがアプリを通じて写真や動画を撮影し、クラウドにアップロードするだけ。写真などはセットトップボックスに自動的にダウンロードされ、そのタイミングで本体が光る(家型の筐体の窓の部分が光る)ので、テレビのリモコンでHDMI入力にチャンネルを合わせれば、最新の写真を閲覧できる。

まごチャンネルの利用イメージ

まごチャンネルの利用イメージ

セットトップボックスのサイズは幅140mm×奥行き140mm×高さ40mm、OSはAndroid。HDMI CECに対応し、テレビのリモコンですべての操作が可能。ストレージは当初8GBを想定すると聞いている。通信にはWi-Fiを利用。スマートフォンアプリはiOSとAndroid向けに用意している。Makuakeでは、30台限定で初期費用(セットトップボックス)と月額使用料3カ月無料(通常月額980円)をセットにして1万2800円から提供する。

チカクは2014年の設立。金額は非公開だが、著名経営者などがエンジェルとして投資を実施している。代表取締役社長の梶原健司氏は、新卒でアップルコンピューター(現:Apple Japan合同会社)に入社。コンシューマー製品のマーケティングなどを担当した人物だ。「アップルでの経験は12年。『ヘタしたら潰れるかもしれない』と言われている中で入社した。そこからiMacやiPodがでて再びアップルは成長を始めたが、その中でマーケティングやセールス、新規事業開発まで、日本で経験できることはすべてやった」(梶原氏)

Steve Jobsが亡くなった2011年に同社を退職した梶原氏。その後友人の会社を手伝うなどしたものの、自分のプロダクトを作りたいという思いが次第に強くなっていったという。

「最初は『アップルにいた人間が作るのだから……』とイノベーティブで格好いいプロダクトを作りたいと考えていた」——そう振り返る梶原氏だが、解決したい課題を考えたとき、真っ先に浮かんだのは、「実家と自分の子どもの写真や動画を共有できていない」ということだった。

勤めていたこともあってありとあらゆるアップル製品も実家に置いたが、リテラシーの高くないシニア世代には、MacやiPadですら操作が難しかった。せっかくDropboxで画像を共有しても、親は操作が分からず見ることができなかったという。周囲の知人に話を聞いてみると、専用機であるデジタルフォトフレームですら操作が難しく、使わなくなっていくシニア世代もいたのだという。

そんなところから、「普段利用する『テレビ』で、しかもリモコンで操作可能」「写真が送られてくると通知があり、自然なコミュニケーションができる」といったコンセプトを持つまごチャンネルの企画を進めていった。「親が孫の写真を見たいと思ったとき、(タブレットなどで)『アプリを立ち上げる』というのは実は大きな課題。それを乗り越えたい」(梶原氏)

チカクの創業メンバー。左から桑田健太氏(ソフト担当)、梶原健司氏、佐藤未知氏(ハード担当)

チカクの創業メンバー。左から桑田健太氏(ソフト担当)、梶原健司氏、佐藤未知氏(ハード担当)

【研究報告】ブロガーに高価な贈り物をしても好意的なレビューは書いてもらえない

how-to-get-free-stuff-as-a-blogger

昔々あるスタートアップがガソリンの缶にコーヒー豆をいっぱい詰めたやつを送ってきた。そのコーヒー豆はプラスチック容器の悪臭がしみついていて使えなかった。缶はかなり小さかったが使う機会もなく最後にはリサイクルに出した。結局のところPR会社がスタートアップに1万ドルを請求して、ぼくやそのほかのブロガー約200名にゴミを送ったのだ。その売り込みは記憶には残ったが、コーヒー豆を送ってきたやつの名前は言いたくないし、そのスタートアップについて記事を書いたこともない。

このことの教訓は、贈り物でブロガーの心を動かすことはできない、ということだ。ペンシルベニア州立大学の広報宣伝の准教授Marcia DiStasoも、そのことを証明している。彼女は約200名のブロガーとビデオのレビュワーについて研究し、その際、彼らにレビュー行為に関する基本的な質問をした。

企業からレビューに対する報酬をもらったブロガーはそのことを公表すべし、というFCCの規則が出たあと、DiStasoはブロガーたちに、レビューを期待する企業のPR部門から贈り物や現金をもらったらどうするか、と尋ねた。そして彼女が知ったのは、ブロガーが贈り物をもらってポジティブなレビューを書くことはほとんどないことと、PRとブロガーのそのような関係はむしろブロガーをより‘批判的’にすることだった。彼女が質問をしたブロガーの多くがテク系で、そこは贈り物が氾濫している業界だ。ぼくが会ったことのある、あるいは一緒に仕事をしたことのあるブロガー全員が、女性一人も含めて、すべての贈り物を返品していた。イベント会場で出されるフードや飲み物に、手を付けない者もいる。

“もちろん、iPhoneなど最新の製品そのものなら、ブロガーは喜んで受け取るだろうし、それらについて書くでしょう”、とDiStasoは言う。“テクノロジの分野では、それがふつうよね”。

しかし彼女がアンケートしたブロガーたちは異口同音に、“良くない製品についてポジティブなレビューを書いたらライターとしての信用を失うし、ブログの視聴率も下がる”、と語った。そして倫理的なPR企業は得意先企業に、“そんなやり方を勧めない”、と。

ぼくはブログを15年書いているし、レビューもしょっちゅう書いている。うちの地下室には返品を待つ製品の箱が山のようにあり、これから先もこんな箱が送られてくるのか、と考えるとぞっとする。だからぼくは、DiStasoに賛成する。ガラクタが無料でもらえるからブロガーになった人は、ブロガーとして成功しない。企業に対して公平で、PR会社に対して率直に物を言えて、冷静沈着なレビューを書ける人は、長続きするし、楽しいブロガー生活を送れる。そしてスタートアップのための家訓は、ガソリン缶にいっぱいのコーヒー豆のような無駄な物にお金を使わないことだ。ゴミを送るな。

[原文へ]
(翻訳:iwatani(a.k.a. hiwa

フリマアプリ「メルカリ」で匿名配送が可能に——配送事故や模倣品の補償プログラムも発表

匿名配送機能のイメージ

匿名配送機能のイメージ

 

ヤマト運輸と連携し、4月から全国一律料金の配送サービス「らくらくメルカリ便」を開始したフリマアプリ「メルカリ」。サービスを提供するメルカリは9月10日、そのらくらくメルカリ便において、出品者、購入者が互いの住所や氏名を相手に伝えることなく商品を送付できる匿名配送機能を提供することをTechCrunchに明かした。9月中旬より、希望者を抽選して試験的にサービスを開始。ユーザーの反応などを見て数カ月以内にも正式にサービスを開始する。

らくらくメルカリ便は、出品者がヤマト運輸の直営店に配送する商品を持ち込み、直営店にある端末「ネコピット」にQRコード(メルカリで契約成立した際にアプリ上で生成される)をかざすことで送り状が印刷され、サイズ・重さにより全国一律で195円から商品を送付できるというサービス。利用数などは非公開だが、「想定より多い。料金が全国一律で分かりやすく、しかも安い。ヤマト運輸でも新商品を提供するのと同じタイミングでスタートしたこともあって、ヤマト側としても一緒にやりやすかった」(メルカリ取締役の小泉文明氏)のだそう。

今回の匿名配送機能を利用する際も出品者のとるフローは同じだが、ネコピットで印刷される送り状は宛先欄・送付欄が空白のままになる。もちろんただ空白のままではヤマト運輸のドライバーが配送できないのだが、バックグラウンドでメルカリのデータベースとヤマト運輸のデータベースが連携しており、商品にはそれぞれドライバーだけが閲覧できるデータが紙で添付されるが、ドライバー以外が送付先の住所などの個人情報を知ることはないという。

またメルカリでは、この匿名配送機能と合わせて、補償サービス「あんしんメルカリケア」の提供も開始する。

これはらくらくメルカリ便利用時に限り、配送事故により商品が破損・紛失した際の商品代金を全額補償するほか、らくらくメルカリ便の使用に限らず、届いた商品が模倣品だと判明した場合に取引について調査し、その上で商品代金を全額補償するというもの。

メルカリいわく、こういった補償自体はカスタマーセンター(現在仙台約80人、東京約30人が24時間365日稼働し、問い合わせおよび規約違反への対応を行っている)への問い合わせベースで個別対応していたのだそうだ。だが「実質やっているのであればよりサービスへの安心感を持ってもらおうとなった。 2年サービスをやってきた中で財務的なノウハウもたまってきた」(小泉氏)ということで今回正式に発表することになったのだという。

メルカリのアプリダウンロード数は国内外2200万件以上(米国だけで400万ダウンロード以上)。月間の流通総額は数十億円で1日の出品数は数十万件と大きく成長した。そうなるとウェブサービスに不慣れなユーザーの割合も増え、「サービスが難しそう」「何かトラブルがあるんじゃないか」という不安が生まれることになる。前者に対してはアプリ自体の改善を進めるが、後者に対しては今回発表したような安心・安全に向けた取り組みをアピールしていくことで、さらなるサービスの利用に繋げる考えだ。

 

フランス発、個人間の「学び」(ウクレレや数学など)を仲介する「ココロエ」

elise-beatrice-raph-kokoroe

フランスのスタートアップである「ココロエ」(kokoroe)は、学習(レッスン)のマーケットプレイスを提供している。サイトにてギターやカメラの先生をみつけ、そして指導を申し込むことができるのだ。教える側も、生徒を発見するツールとして利用できるのはもちろん、指導予定などの管理も行えるようになっている。

現在のところ、人気のあるジャンルベスト10は英語、コンピューターおよびIT、ギター、料理、メーキャップ、ダンス、クチュール、数学、ピアノ、そして写真となっている。これをみてもおわかりの通り、「ココロエ」で提供しているのは「勉強」ばかりではない。

「ココロエ」がスタートしたのは5ヶ月前のことだが、既に2500人の「講師」が登録し、300以上のレッスンを提供している。講師側にとっては、サインアップして指導できる内容を登録すると、きちんとまとまったプロフィールページが作成されるのも魅力のひとつだろう。フリーで著述業をしている人のためのReedsy同様に、ネット上で有効に自分をアピールすることができる。

「ココロエ」はこれまでにKima Ventures、DeezerのDaniel Marhely、Cyril Aouizerate、Julien Codorniou、Olivier Gonzalez、およびRenaud Guillermから28万ドル(€250,000)のシード資金を獲得している。来年にはドイツや他のヨーロッパ諸国に対応し、モバイルアプリケーションも提供したい考えだ。

共同ファウンダーのBéatrice Gheraraは「DIY、創作、コンピューターなどを始めてみたいと考える大人を対象としています。学習者として登録する人は25歳から35歳が多いようです」と言っている。「ウクレレコースはもちろん、他にはなかなか見つけられない火食い術コースなどもあります」。

「ココロエ」側はコースの成約毎に€2.50ないしコース料金の10%を徴収する。Airbnbのように、支払いや予約管理、予定表などの機能も提供している。将来的には何らかのリワードを提供するゲーミフィケーションも行いたいと考えているそうだ。

個人間レッスンのニーズはかなり大きいと見られているが、今のところは標準的なサービスはまだ生まれていない。「ココロエ」も、もちろんその地位の獲得を狙っているわけだ。「オリガミ講座」なんてのがあれば、ちょっと学んでみたい気もする。

原文へ

(翻訳:Maeda, H

クールな暗号通貨コンバーター、ShapeShiftが160万ドルを調達

screen-shot-2015-09-08-at-11-43-19-am

Clamsが欲しいって? それともNucoin? ShapeShift.ioが助けてくれる。このやたらに単純なシステムは、万人が使える匿名仮想通貨コンバーターで、bitcoinのパイオニアの一人、Erik Voorheesが作った。しくみは? 任意の仮想通貨を選び ― 例えばLitecoin ― 入金アドレスを指定する。次に別の通貨を ― 例えばBitcoin ― 入金ウォレットに入金する。システムが通貨を自動的に変換し、ユーザーが個人情報を登録する必要はない。

なぜこれをやりたいか? つまりはサイトによって便利な通貨が違うからだ ― Clamsはゲームサイトでよく使われているが、NuBitsはドルに連動しているため揮発性が低い。こうした異なる通貨の間で両替するには個人情報が必要ないため、どんな通貨も瞬時にBTCに両替できる。

「私がこのプロジェクトを起こしたのは、通貨の両替をこれまでと全く異なる方法で行えることを示したかったからだ」とVoorheesは言う。「暗号通貨は管理されない交換が可能であり、ユーザーはサインアップやアカウントの作成が必要ない。これは法定通貨では不可能だ。ShapeShiftは、以前のSatoshiDICEと同じく、暗号通貨があれば古いヒジネスを全く新しい方法で運用できることを示した」。

Screen Shot 2015-09-08 at 11.45.15 AM

同社はDigital Currency GroupとRoger Ver、 およびエンジェル投資家のBruce Fenton、Trevor Koverko、Michael Terpinから計160万ドルを調達した。ShapeShiftは7月に200万ドル相当の通貨を取扱った。APIを提供しているのでプログラマーはこのサービスを使ってリアルタイムに変換できる。面白いのは、Voorheesがサイトに厳格な「ノーフィアット」ポリシーを定めていることで、これは従来の送金機構とは完全に別物であることを意味している。つまり、ドルをDogecoinに変えるようなことはできない。やりとりは完全に匿名なので、顧客が誰であるか、何をやっているかも彼は見ることができない。「ShapeShiftにはユーザーアカウントも、サインアップも、登録プロセスも何もない。その代り、伝統的両替よりずっと早くてずっと便利だ」と彼は言った。

というわけで、現在ユーザーは1300種類の通貨の組み合わせが利用できる。Voorheesいわく「外国為替の新記録」。日本で人気の暗号通貨、Monacoin(モナーコイン)の利用場面は今のところ限られているかもしれないが、Voorheesはあらゆる通貨の両替がShapeShiftのように早くなる日が来ることを期待している。

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook

「スタートアップの再生工房になる」家入氏の新会社キメラがHRサービス開発のハッチを買収

screenshot_406

paperboy&co.(現:GMOペパボ)創業者の家入一真氏、そしてそのpaperboy&co.のブランド戦略を担当した佐野一機氏による新会社キメラ。

8月にはEast Ventures、あすかホールディングス取締役会長の谷家衛氏、メルカリ代表取締役社長の山田進太郎氏、ドリコム代表取締役社長の内藤裕紀氏など複数の個人投資家、リブセンスを引受先とした総額約1億円の第三者割当増資を実施したと発表。自社でタレントマネジメントシステム「LEAN」を開発するとしていたが、新しい動きがあった。同社は9月9日、同じくタレントマネジメントシステムを開発するハッチを買収したことを明らかにした。買収額やスキームは非公開としている。

ハッチは2013年設立のスタートアップ。昨年ANRIおよびサイバーエージェント・ベンチャーズより資金調達した際に紹介したが、タレントマネジメントシステム「Talentio(タレンティオ)」を開発していた。2014年中にはプロトタイプが完成し、複数の企業に試験導入していたものの、代表取締役の二宮明仁氏と他の取締役および従業員で経営や事業の方針が折り合わず、文字通り組織が崩壊してしまったという。僕はこの件については複数関係者を取材しており、2015年春時点で代表を除く十数人の役員・社員がほぼ同時期に会社を去るという危機的な事態に陥っていたことを把握している。

はっきり言ってマネジメントという観点ではどうしようもない状態になってしまったハッチだが、導入企業や元役員・従業員、関係者などに聞く限りTalentioのプロダクト自体の評価は高かった(とは言えさらに開発できるような状況でもなかったが)。今回キメラは同社を買収することで、LEANの開発をストップ。すでにプロトタイプを提供する段階になっていたTalentioを自社サービスとして開発・展開していくという。なおハッチの代表だった二宮氏はキメラの執行役員となり、引き続きTalentioの事業を担当する。

キメラは「スタートアップの再生工房」になる

「マネジメントが弱いがプロダクトがいい、そんなことでビジネスに困っているスタートアップをどんどん買収する。我々はベンチャーの再生工房になる」——キメラの佐野氏はこう語る。

前回の記事でも紹介したが、キメラはその社名の元になったギリシャ神話に登場する怪物「キメラ」が獅子の頭、山羊の体、蛇の尾を持つように、独立した複数のサービスを持つ組織になるとしていた。それは、自らがプロダクトを立ち上げるだけでなく、企業・サービスを買収し(もしくは数カ月でのターンアラウンドを行う)、「経営」と「開発」の機能を提供して成長させるという意味なのだという。

こういうことができるのは、キメラの経営陣やアドバイザー、株主などが、それぞれ起業や経営の経験を持つ“大人”で構成されているからだと佐野氏は語る。

経営という点で言えば、佐野氏はコンサルとして活動した後、美容系スタートアップのファウンデーションズを立ち上げ、事業を売却した実績がある。また家入氏も上場経験のある起業家だ。開発という点では、今後家入氏が中心となり、エンジニアのネットワーク(ないし開発会社)を作り、キメラの傘下のサービスを開発していくのだという。2月にマザーズに上場したイードは、複数のメディアを買収してグロースさせるというビジネスを行っているが、イメージとしてはそれに近いだろうか。

「狭い業界なので『あのスタートアップはもうだめだよね』という話をよく聞くが、そういう話はもう聞きたくない。それをどうにか良くしようと考えたのがこの(再生)構想。起業家に対する敬意を最後まで崩さずにサービスを育て、IPOやバイアウトというイグジットを目指す」(佐野氏)

キメラでは今後、教育や金融、ヘルスケア領域のスタートアップの買収を検討する。またこの事業をさらに進めるため、2016年始にも大型の資金調達を行う計画だという。

スタートアップスタジオ、betaworksの内部を探る

betaworksは設立から10年近くが過ぎ、スタートアップスタジオの代表的存在となっている。

数年前、私はbetaworksのファウンダー、John Borthwickに、彼がbetaworksをどう定義するかを尋ねた。彼は気に入った言葉を見つけるのに苦労していた ― つまるところ、betaworksはシードファンドであり、統括会社であり、私がこれを言うと彼は嫌がるだろうが、インキュベーターである(育成するスタートアップに場所と学習環境を提供する)。

しかし、現在そのスタートアップスタジオモデルを、Expa、Science、さらに最近ではHuman Venturesといった数多くの会社が追従している。また一部の伝統的投資家は、スタートアップスタジオモデルは資金を薄く広げすぎると指摘するが、Giphy、Dots、bit.ly、Chartbeat等の大成功や、betaworksによるDiggやInstapaperの買収を見れば、結果は明らかだ。

betaworksの成功要因の一つは、Borthwitck自身がスタジオに目を配り、各スタートアップの成長を四半期あるいは年単位で測定し、チームとアイデアを話し合い、常駐ハッカーの選抜プロセスにも参加していることにある。

さらにBorthwickは、毎冬数ヵ月をかけて自分の心を捉えるトレンドを探している。

この一年に、Borthwickはエッセーを2本書いており、betaworksの書籍、BetaBookに掲載された。ここにアプリの形で公開されている。一つはメディアハッキング(betaworksにとってメディアは重要な分野)、もう一つはAIの未来について書かれており、将来betaworksがこの分野に力を入れていくかもしれないことが示唆されている。

本誌はbetaworksのあらゆる部署の人々から話を聞き、このスタートアップ・スタジオ・モデルが過去10年間成長してきた秘密を探った。

  1. betaworks-2015-bldg-sign.jpg

  2. betaworks-2015-door-sign-2.jpg

  3. betaworks-2015-hacker-poster.jpg

  4. betaworks-2015-office-row.jpg

  5. betaworks-2015-glitter.jpg

  6. betaworks-2015-logo-sign.jpg

  7. betaworks-2015-stickers.jpg

  8. betaworks-2015-office-staff.jpg

  9. betaworks-2015-instapaper-sign.jpg

  10. betaworks-2015-glitter-founder.jpg

  11. betaworks-2015-bldg-sign-2.jpg

  12. betaworks-2015-office-row-2.jpg

  13. betaworks-2015-sign.jpg

  14. betaworks-2015-pillows.jpg

  15. betaworks-2015-pillows-2.jpg

  16. betaworks-2015-door-sign.jpg

[原文へ]

(翻訳:Nob Takahashi / facebook