紛失・盗難対策トラッカーTileがモバイルアプリにストーカー対策安全機能を追加

貴重品の紛失・盗難対策トラッカーで AppleのAirTag(エアタグ)と競合するTile(タイル)は米国時間3月17日、初のストーカー対策機能「Scan and Secure(スキャン・アンド・セキュア)」を導入する。2021年10月に発表されたこの技術は、2022年初頭の導入が約束されていた。Tileのモバイルアプリを利用するユーザーは、一緒に移動している可能性のある未知のTileまたはTile対応デバイスをスキャンすることができるようになる。同社によると、この新技術を利用するためには、ユーザーがTileの所有者であったりTileの発見ネットワークに加入している必要はない。また、iOSとAndroidの両方で誰でもアクセス可能だ。

Scan and Secureを利用するには、最新バージョンのTileアプリが必要。また、Bluetooth、Location、Location Services、Precise Locationをモバイルデバイスで「オン」にしておく必要がある。Tileによると、この機能を使用するために、以上の設定やその他の許可設定を変更する必要がある場合は、モバイルアプリ内でそれを促す表示が出るという。

画像クレジット:Tile

アップデート後、新規ユーザーは、アプリのサインイン画面の右上にある「Scan」アイコンをタップすると、この機能にアクセスできるようになる。既存のユーザーも、アプリの設定から「Scan and Secure」にアクセスすることができる。

スキャンのプロセスには、ユーザーの近くにあるTileデバイスを見つけることを可能にするような「正確な場所を探す」ツールは含まれていない。Scan and Secureを機能させるためには、ユーザーは一定の距離を歩くか車で移動する必要がある。Tileによると、フルスキャンを完了し、正確な結果を出すには、連続でも最大10分かかる。家の中をただ歩いている場合や、公共交通機関の中など、近くにある他のTileを検知してしまうような人混みでは機能しない。

スキャンの結果は、完了するとアプリに表示される。ユーザーは、その結果を法執行機関に提出するために保存しておくことができるとTileは助言する。同社は、ユーザーが複数のスキャンを実行することが望ましいと指摘する。スキャン中に一時的に通過したデバイスや、実際に一緒に移動していたデバイスの可能性を排除するためだ。また、スキャンの画像を使って、見た目でデバイスの位置を特定することも提案している。残念ながら「正確な場所を探す」機能はないため、巧妙に隠れたデバイスを見つけられないユーザーもいるだろう。

画像クレジット:Tile

同社は、ストーカー行為などの犯罪行為に使われたデバイスの所有者を特定するために、裁判所命令を通じて法執行機関と協力するとしている。

TileのScan and Secure機能は、Apple(アップル)が提供するAirTagの安全性を確保するためのツール群ほど包括的なものではない。Appleは、AirTagがストーカー行為やカージャックに利用されたという多くの報告を受け、AirTagsとFind My networkをアップデートし、警告とアラートを強化した。これには、Appleがストーカーを特定し、そのデータを警察と共有することができるというストーカー予備軍への警告や、ストーカー被害者の可能性を示す詳細で先を見越したアラートなどが含まれている。さらにAppleは、今後のアップデートにより「正確な場所を探す」機能や大きな音が鳴るアラートを使って、一緒に移動しているAirTagの位置を特定できるようにすると述べた。ゆくゆくは、スピーカーを無効にしたデバイスを見つけることができるようになるという。

Scan and Secureは、Tileモバイルアプリのユーザーを対象に今後数週間かけて徐々に提供されるが、Tileアカウントの有無にかかわらず、iOSおよびAndroidのすべてのユーザーがアクセスできるようになる予定だ。

同社は、この新機能について、安全の専門家に相談したと述べている。専門家らは、ユーザーが自身でスキャンができることは有用な機能だと助言した。特に、ストーカー被害者の70%近くが加害者を知っており、その多くが被害者のパートナーであることもわかっている。

「例えば、家庭内暴力の被害者がパートナーと別れる準備をしている場合、最も安全な時間や場所を選んで、自分の位置を追跡できるデバイスがあるかどうかを前もって確認できるのは便利です」とドメスティック・バイオレンス撲滅全国ネットワークのセーフティ・ネット・プロジェクト・ディレクターであるErica Olsen(エリカ・オルセン)氏は話す。「安全性を高めるには、コントロールを彼らの手に委ねることが重要です」と同氏はいう。

ストーカー問題とは関係のないプライバシーに関する懸念が、ここ数カ月Tileを悩ませてきた。Tileの新しい親会社であるLife360が、顧客データを位置情報仲介業者に売っているとの報道があったからだ。調査の結果、Life360は販売を終了すると述べた

Tileは、他の専門家や支援団体と協力し、時間をかけて安全機能をさらに向上させていくとしている。

画像クレジット:Tile

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(文:Sarah Perez、翻訳:Nariko Mizoguchi

タンポポの種のように風に乗せてばら撒ける超軽量センサーをワシントン大学の研究者が開発

100平方マイル(約259平方キロメートル)の森林で温度、湿度、日射量をモニターしようとしたら、さまざまな機器を結びつけてシステムの森を構築するのに長い時間がかかる。しかし、タンポポやニレの種を撒くように、センサーをばら撒くことができたらどうだろう?ワシントン大学の研究者は、必要な機器を風で運べるほど軽いデバイスにまとめあげた

このプロジェクトは、小規模で特定の目的に特化したコンピューティングの境界を押し広げるものだ。まだごく初期の試作品に過ぎないが、組込み電子機器が進むべき興味深い方向性を示している。

「私たちの試作品は、ドローンを使ってこれらの数千個のデバイスを、一度に投下できる可能性を示唆しています。これらのデバイスは、すべて少しずつ異なる方へ風で運ばれていき、基本的にはこの1回の投下で、1000個のデバイスネットワークを構築することができます」と、ワシントン大学の教授であり、多くのデバイスを製作しているShyam Gollakota(シャム・ゴラコタ)氏は語る。

この電子機器はバッテリーを一切使用しないため、全体の質量を大幅に削減することができる。数個の小さなセンサーと無線トランシーバー、そして数個の小さな太陽電池を搭載したこのデバイス自体の重さは、30ミリグラムにも満たない。

風を受ける部分の構造は何十回も試行錯誤を繰り返し、最終的にこの自転車の車輪の形に辿り着いた。これによってデバイスは、出発地点から遠くまで移動できるだけでなく、95%の確率でソーラーパネルを上向きにして着地できるという。ドローンでばら撒く場合は、100メートルほど移動して着地する。

一度着地すれば、明るいうちは常に動作し、後方散乱高周波信号を利用して周囲や互いに信号を跳ね返し、制御装置で収集することができるアドホックネットワークを構成する。

重さ1ミリグラムの驚異的に軽いタンポポの種が何キロメートルも移動できるのに比べれば、今はまだそれほどの機動力はない。しかし、自然界ではその設計を完成させるのに測り知れないほど長い年月がかかったが、ワシントン大学のチームは最近始めたばかりだ。もう1つの課題は、もちろん、本物の種はやがてタンポポになるか、朽ちて無に帰すという事実である。これに対し、1000個のセンサーは、拾われるか粉々に砕かれるまで残るだろう。生分解性エレクトロニクスの分野はまだ新しいが、研究チームはこの点に取り組んでいるという。

もし、電子機器廃棄物という観点(そして、おそらくそれを食べる動物という観点)を解決できれば、絶滅の危機に瀕した生態系を監視しようとする人々にとって、非常に有益なものになるはずだ。

「これは最初の一歩であり、だからこそ、とてもエキサイティングなのです。ここから私たちが進むことのできる道はたくさんあります」と、筆頭研究者のVikram Iyer(ヴィクラム・アイヤー)氏は語っている。この研究成果を記した論文は、米国時間3月16日発行の「Nature(ネイチャー)」誌に掲載された。

画像クレジット:Mark Stone/University of Washington

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(文:Devin Coldewey、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

【レビュー】「静かさ」も魅力、Mac Studioは卓上のモンスターだ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

Mac Studio。今回テストしたのは、M1 Ultra(GPU64コア版)、メモリ128GB・ストレージ2TBのモデル。74万1800円(税込)とかなり高価な製品だ

最高性能のMacである「Mac Studio」のレビューをお届けする。

感想はシンプル。「重いがデカくない」「パワフルだが静か」もう、この2つに尽きる。

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

テストに使用したMac StudioとStudio Display。セットで総額98万4600円(税込)

Appleシリコン世代としてのハイエンドを目指した製品だが、それにふさわしい性能になっている印象だ。

Mac miniを「ハイパワー化するために巨大にした」ような設計

その昔、「Power Mac G4 Cube」という製品があった。

パワフルでコンパクト、ディスプレイとセットでクリエイターが使うことを想定したマシンだった。そうそう、あのディスプレイも「Studio Display」だった。

Mac Studioは立方体ではないが、パッケージが見事に「立方体」でちょっと昔を思い出させる。

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Mac Studioのパッケージ。ほぼ立方体だ

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

Studio Displayのパッケージと一緒に。流石にディスプレイが大きいので、パッケージサイズが霞む

中身はどちらかというとMac miniに近い。キーボードやマウスは付属せず、入っているのは本体と電源ケーブルくらいとシンプルだ。

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

パッケージはiMacなどと同じく紙。パカっと開く構造になっている

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の他に付属するのは電源ケーブルくらい。キーボードやマウスは別売だ

本体の設置面積はMac miniと同じだが、高さ9.5cmとかなり分厚くなっている。そして、意外なほどの重さに驚く。今回試用したM1 Ultra搭載のモデルは、重量が3.6kgもあるのだ。Mac miniが1.2kgなので、ちょうど3倍になる。

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

正面から。Thunderbolt 4端子が2つとSDカードスロットが前面に付いたのがありがたい。Mac miniと比べるとかなり厚みが増している

Mac Studioは、M1 Ultra搭載モデルとM1 Max搭載モデルとで重さが異なる。前者が3.6kgであるのに対して後者は2.7kg。その違いは、冷却に使われるファンやヒートシンクが銅製になっているからだという。

Appleの発表会映像を見る限り、Mac Studio内の3分の2程度が冷却機構で占められており、ボディの後ろ側にもかなりの面積の排気口がある。

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

Appleの発表会映像より。内部のかなりのスペースが、エアフローのための仕組みになっている

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

背面。上3分の2が排熱口。その下にインターフェースが並ぶ

底面にはロゴを囲むように吸気口がある。そういえば、MacBook Proの底面にもロゴが付いているのだが、Appleはこのパターンをハイエンド製品の定番デザインにするつもりだろうか。

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

底面。ロゴの周囲を吸気口が囲むようなデザインになっている

Mac miniから大きく変わったのがインターフェースだ。

Mac miniは背面に

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2
  • USB Type-A×2

だったが、

Mac Studioは

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×4
  • USB Standard-A×2

になり、さらに前面にも

  • Thunderbolt 4/USB Type-C×2(M1 Max搭載機ではUSB Type-C×2)
  • SDXCカードスロット(UHS-II)

が搭載されている。

「M1 MaxじゃMac Studioの意味が……」と思っている人もいそうだが、単純にインターフェースの増えたMacとして選んでもいいのかもしれない。

特に前面の端子は、今回も試用中にも大変お世話になった。当たり前の話だが、アクセスしやすい場所にあるインターフェースがあるのはとてもありがたい。

速さは圧倒的、コアの数だけ性能アップ

ではパフォーマンスをチェックしていこう。

今回は比較対象として、M1搭載のMacBook Pro・13インチモデル(2020年モデル)とM1 Pro搭載のMacBook Pro・14インチモデル(2021年モデル)も用意している。一部マルチプラットフォームで試せるものについては、自宅で使っているWindowsのゲーミングPC、ASUSの「ROG Zephyrus G14」(2021年モデル、CPUはAMD Ryzen 9 5900HS、GPUはNVIDIA GeForce RTX 3060 Max-Q)での結果も合わせて見ていただきたい。以下、「ROG Zephyrus G14」を便宜上「ゲーミングPC」と呼称する。

まずは定番の「Geekbench 5」から。

CPUについてはシンプルにわかりやすい結果だ。基本的にはCPUコアの数だけ速くなっている。1コアあたりの速度差は、M1とM1 Pro・Ultra、Ryzen 9で当然あるのだが、コア数による速度差を比較すると小さなもの。20コアを搭載したM1 Ultraが圧倒的に速い。

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

Geekcbench 5のCPUテスト。コア数の分だけ速い、というわかりやすい結果が出た

同じくCPUの速度をチェックするため、「Cinebench R23」も使ってみた。これはCG演算の速度を測るもので、主にCPUに依存する。

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

Cinebench R23。CPUでのCG演算の速度を計測するものだ

こちらの値も、基本的にはGeekbench 5のCPUテストと傾向が同じである。CPUコアの分だけスピードが出ている。

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

Cinebench R23の結果。こちらも、CPUコア数に応じたテスト結果になっている

他のCPUの結果と比較すると、上にいるのは32コアの「Ryzen Threadripper 2990WX」や24コアの「Xeon W-3265M」といったところであり、もはやコンシューマ向けとは言い難いレベルである。

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

Cinebench R23には過去にテストされたCPUごとの値も提示されているのだが、M1 Ultraより速いものは、よりコア数の多い超ハイエンド2つだけになった

GPUについてはどうだろう?

まず、Geekbench 5。こちらはマルチプラットフォーム性を考えて「OpenCL」でテストしている。M1 Ultraがかなり速いが、RTX 3060での値を超えてはいない。

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

Geekbench 5によるGPUテスト。OpenCLを使ってのテストだが、RTX3060を搭載したゲーミングPCの方が上と出ている

ただ、Geekbench 5のGPUテストはGPUの全ての要素を反映する訳ではないので、そちらを考慮して別のテストもしてみた。「3DMark」のマルチプラットフォーム対応テストである、「3DMark Wild Life Extreme」だ。Extremeとあるように、スマホまで想定したWild Lifeの中でもハイパフォーマンス向けである。それを、フレームレート制限をかけない「Unlimited」モードでチェックした。

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

マルチプラットフォームの3Dベンチマーク、「3DMark Wild Life Extreme」でもテストを行なった

結果は、M1 Ultraの圧勝だ。多くのビデオメモリを活用できることもあり、ソフトの作り方によって相当な差が出るのであろうことが予想できる。

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのテストスコア。Mac Studioの値は35159と他を圧倒している

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

「3DMark Wild Life Extreme」でのフレームレートスコア。Mac Studioが210フレーム、ゲーミングPCが75フレームと差がかなり開いている

じゃあ、実際の作業ではどのくらいの速度になるのか?

ここでは、Macのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDR撮影の映像をグレーディング・手ぶれ補正などの処理を施した上で2分51秒に編集した映像を、同じく4KのH.264形式で圧縮して書き出すまでの時間を計測した。これまでのグラフとは違い、「棒が短いほど性能がいい」のでその点ご注意を。また、アプリの関係上、Macのみでの比較になる点をご了承いただきたい。

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

Appleのビデオ編集ソフト「Final Cut Pro」を使い、4K/HDRのビデオを書き出すまでの時間を計測

こちらも、当然ながらM1 Ultraは速い。そこそこ重い処理なのだが、M1の半分の時間で終わっている。M1とM1 Proでは12%しか速度が変わっていないが、M1とM1 Ultraの比較では93%以上高速になっている。この差は大きい。

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

書き出し速度の比較。短いほど良い結果なのにご注意を。M1からM1 Proでは劇的な差にならなかったのに、M1 Ultraでは半分くらいまで時間が短縮されている

性能は重要、より重要なのは「速くてしかも静か」であること

ただ、テスト中に感じたのは「速さ」だけではない。

どのプロセッサも負荷の高い処理を長く行うと発熱が大きくなり、冷やすためのファンの動作も大きくなる。

M1シリーズはモバイル向けプロセッサが出自ということもあってか、比較的発熱が小さい傾向にあり、ファンなども回りにくい。だが、ベンチマークのようなことをすると、どうしてもアルミボディが熱くなってくる。

ゲーミングPCについてはいうまでもない。特に今回のテストは、パフォーマンス重視の「TURBOモード」設定で行なったため、発熱もファンの動作音も大きい。掃除機並み(55dB程度)の音になることも珍しくない。

一方、Mac Studioは全然音がしない。

アクティビティモニタで負荷を見ると処理負荷は天井に張り付いている状態なのに、ファンの回る音もほとんどしないし、排気もそこまで熱くはなっていない。手を排気に当てると、ほんの少し暖かい程度。これは、プロセッサの発熱が少ないだけでなく、相当に排熱機構が優秀ということだろう。

Mac Studioは高価な製品で、ここまでのパフォーマンスを必要とするのは一部のプロフェッショナル・ワークだろう、とは思う。

だが、高い負荷をかけてもこれだけ静かである、というのはそれだけで大きな魅力である。誰だって、作業を騒音や発熱で邪魔されたくないはずだ。

プロセッサとGPUの組み合わせによって、もっと高性能なPCを作ることもできると思う。PCアーキテクチャのサーバーなどではそうした機器が必要になる。だが、ここまで静かで「普通に卓上に置いて使えるのに、パワフル」な製品は少ない。Mac Studioが圧倒的に優れているのはその点だ。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】iPad Air(2022)はアップルのM1チップを入手するための最も手頃な方法

正直に言えば、このiPad Airには最初少し戸惑った。AppleのiPadのラインナップは、追加されるたびに、さらに多くの価格帯を埋め尽くし、競合他社が参入する余地を少なくしている。しかもそれだけではなく、ラインナップも複雑化させている。

適正なデバイスを買おうとしている消費者にとって、2022年のiPadは少し戸惑いを招く。もし安価なものが欲しいなら、普通のiPadを買えばよい。子ども用に買うものだ。ハイエンドならiPad Proを黙って選ぶだけだ。オフィスで使う人やクリエイティブな仕事をしている人、ノートパソコンの代わりとして使っている人などがその対象となる。

今回登場した、AppleのM1チップを搭載したiPad Airは、これまでの機種以上にパワフルなものになった。最も厳しいものを除くほぼすべての操作で、iPad Proに匹敵する性能を発揮する。ベンチマークの結果をみる限り、中間程度のグレードが欲しい人にとって、iPad Proより200ドル(約2万4000円)安い新しいiPad Air(日本では税込7万4800円から)は、最高のパフォーマンスオプションになる。では、200ドルと引き換えに何を失っているのか?(なお日本のストアでの価格差は2万円)。ディスプレイには、円滑な表示を行う120hz対応のProMotion(プロモーション)技術が搭載されていない。iPad Proの強化されたカメラアレイも搭載されていない。

また、ストレージ量もおおよそ半分だ。おそらくこれが、iPad Airをラインナップに並べる際の最大の弱点だろう。まあ次のiPadとの価格差がこれだけあれば、基本構成で64GBのストレージしか搭載していない理由も納得だ。しかし、基本構成より上を考え始めると、iPad Proに飛びつかない理由を見つけることはすぐに難しくなる。

そのことは後で少し考えることにして、まずは新しい機能と仕組みについて整理しておこう。

まず、Appleの第1世代「インハウス」シリコンであるM1が手に入る。これはすごい。2021年M1を採用したiPad Proのラインアップと基本的に同じ性能ということだ。そして従来のiPad Airと比較して、約60%のスピードアップ が果たされている。この性能は、M1版MacBook Airに匹敵するもので、それほど驚くべきことではない。だが、ミドルレンジのiPadで大きな性能ロスがないのはうれしい。

フロントカメラも12MPにアップグレードされ、以前のAirから確実に改善されている。FaceTime(フェイスタイム)には、2021年のiPad Proで採用されたセンターフレーム機能の強化が施されている。他のレビューでも書いたように、これはビデオチャットを頻繁にする人にとっては、かなりの改善につながる。iPad Airをランドスケープモードにしたときに、自動トリミング機能とトラッキング機能によって、カメラの片側が空く奇妙な配置が軽減されるからだ。全体的に角度が自然で、ぎこちない感じがしない。色合いやコントラストに関わるビデオ通話品質も向上している。

画像クレジット:Matthew Panzarino

以上のことから、iPad Airは、Appleが現在市場に出しているFaceTimeデバイスの中でも高性能で多機能なものの1つになった。

2022年のカラーも注目すべきだ。私はブルーモデルを試用したが、これまでのブルー仕上げの中でも特にきれいで良い仕上がりだった。明るく、きらびやかで、本当にきれいに仕上げられている。基調講演を見ていたときには色に少し疑問を感じたが、実際に見てみるととても良いものだ。

画像クレジット:Matthew Panzarino

Touch IDはこれまで同様に高速に動作し、起動時に2本の指を登録するよう促されるため、初めてのユーザーにとっては、縦向きでも横向きでも、腕を捻ることなしに簡単にiPadのロックを解除できるようになるはずだ。利便性やシームレスさではFace IDに勝てないが、Touch IDが電源ボタンに搭載されたことで、ほとんどのユーザーにとっては大きな違いを感じさせないものになった。

AppleのiPhone以外のポータブルラインナップでのUSB-Cへの切り替えは、2020年のiPad Airで行われた。USB-Cの普及にともない、必要ならどこでもiPadを充電することがこれまで以上に簡単にできるようになった。デスクトップとの同期・転送を試したところ、Lightning対応デバイスよりもはるかに速いことがわかった。でも、これを行うカジュアルな消費者の数は日々減っていると思う。それよりも、MDMソリューションを使用してメンテナンスと導入を行うために、ドッキングされたiPadを定期的に消去して再インストールする可能性のある法人顧客にとって、これははるかに重要な問題だ。そのような顧客は、今回のiPadがより速く、より汎用的なポートを手に入れたことを大いに喜ぶだろう。

最後のポイントは、iPad Airの位置付けに関する質問の核心を浮かび上がらせる。iPad Proを800ドル(日本では税込9万4800円)で買う代わりにiPad Airを600ドル(日本では税込7万4800円)で買う顧客は誰だろうか?

Creative Strategies(クリエイティブ・ストラテジーズ)のCEOで主席アナリストのBen Bajarin(ベン・バジャリン)氏は、iPad Airの市場について「iPad Airは、高等教育機関や最前線で働く人々や高度なモバイルワーク環境で働く人々が有能なタブレットを必要とする一部の企業で、良い市場を見つけたと思います」と語る。

「M1を搭載した新しいiPad Airは、性能の向上と優れたバッテリーライフによって、さらに多くの法人購入者にアピールするでしょう」。

画像クレジット:Matthew Panzarino

さて、200ドル(約2万4000円)が200ドルであるということも重要なポイントだと思う。これは決して少なくない金額だ。また、バジャリン氏が指摘するように、このデバイスの顧客の多くが大規模なデプロイメントのために購入するのであれば、その差額の累積はすぐに大きなものとなる。

また個人で購入する場合、予算が限られていて、Proとの価格差にどうしても抵抗がある場合には、これとキーボードがあれば、Proが提供する機能の9割は手に入れることができる。これまでProMotionを使ったことがなければ、おそらく物足りなく思うことはないだろう。しかし、もし使ったことがあるなら、大きな喪失を感じることになる。iPad Proと並べてテストしたところ、ProMotionは、特に長時間のブラウジングやゲーム、ドローイングなどを行う際の使い勝手で、明らかに優位であることがわかった。高級なディスプレイほど高価で、実現が難しいのには理由があるのだ。とにかく優れている。しかし、AppleのLiquid Retina(リキッドレティナ)ディスプレイの色再現性などは、ここでもしっかりと発揮されている。

iPad Airと11インチのiPad Proは価格も性能も近く、iPad Miniも価格的にはそれに続いているため、400ドル(約4万7000円)を超えるあたりから、ラインナップが少し混み合ってくる感じがする。しかし、価格的な位置付けはさておき、iPad Airは非常に高機能で、しっかりした感触があり、使い心地の良いデバイスだ。繰り返しになるが、ProMotionを搭載したスクリーン、特に10インチ以上のスクリーンを使う機会がない方は、ここでは違いを感じないかもしれない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

現在、iPadのラインナップが少し混雑していると感じる理由の1つは、AppleのiPad Proの2022年版モデルがどのようなものかまだ見えていないことだ。第3四半期になったら、新しいモデルが登場し、機能強化が図られ、小型のiPad ProとiPad Airの価格差が少し広がる可能性は十分にある。

2021年登場したiPad miniに、ヒントを見ることができるかもしれない。もちろんマジックキーボードはないが、主に本を読んだり、ビデオを見たり、メディア消費のための携行デバイスとして使ったりしている人にとっては、miniはすばらしい選択肢だ。iPad miniは最安のモデルではないので、低価格のiPadとまったく競合することなく、高価で高機能なものにすることができる境界に居るという点で興味深い。しかしiPad Airは、上のProと下のminiに同時に競合している。

そして2022年も、毎年と同じように、Appleのタブレット端末のラインナップは、市場で購入する価値のある唯一の製品であるという事実に立ち返ることになる。たとえ日頃はAndroidを中心とした携帯電話を使っていたとしても、他のプラットフォームを試してみたいと思っても、iPadのような機能、使い方、信頼性を提供するタブレット端末の選択肢は他にない。

そのためAirは、価格は似ているものの、(依然として売れ筋の)エントリーレベルの第9世代iPadを除けば、Appleのベストセラーの1つになる可能性があるので興味深い。とはいうものの、11インチiPad Proは、ストレージ容量とより良い画面を考えると、予算に敏感なユーザーの一部を誘惑するのに十分な価格に近い存在だ。

関連記事:【レビュー】iPhone SE(第3世代)は観念的なスマートフォンの理想像

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画像クレジット:FMatthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:sako)

アイドルの握手会で、握手の感触を遠隔化―モーションリブの感触伝送技術リアルハプティクス採用

アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

慶應義塾大学発スタートアップのモーションリブは3月17日、「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」(3月16日開催)における「さわれるVR握手会」において、リアルな感触が遠隔地に伝わるリアルハプティクス装置を提供し、アイドルとのソーシャルディスタンスを保ちつつ、握手の感触の双方向ライブ体験を実現したと発表した。コロナ禍で接触コミュニケーションの機会が減少する中、新時代の非対面接触コミュニケーション手段として期待される。

今回「スカパー!アイドルフェス! ~Think of SDGs~」では、モーションリブが提供するリアルハプティクスという感触伝送テクノロジーを用いて、離れた場所にいるアイドルと直接握手しているかのような感覚を得られる「さわれるVR握手会」を開催した。

リアルハプティクスとは、慶應義塾大学で発明された、人の力加減や物の感触を正確に遠隔地に伝送できる制御技術。アクチュエーターの⼒加減を⾃在に制御可能で、VRなどの画像技術・音声技術と組み合わせることで、より没入感のある体験を創造できるという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

モーションリブは、機械が力触覚を自在にコントロールするために必要なリアルハプティクスについて、機械への実装を可能にするための研究開発から、キーデバイスである「AbcCore」の製造販売まで行うスタートアップ。AbcCoreは、同社が開発した、リアルハプティクスの実装を簡便にする汎用力触覚ICチップにあたる。力センサーや特殊なモーターなどを必要とせず、市販モーターを使って力加減や力触覚伝送の制御を実現する点に技術的優位性を持つという。すでに70社ほどの企業に先行提供しており、共同研究や実用化が始まっているそうだ。

またモーションリブは、共同研究を行う「ソリューション事業」、AbcCoreを提供する「デバイス事業」、技術を提供する「ライセンス事業」の3事業を柱に、顧客企業の製品企画から量産販売までをサポートできる体制を構築している。

今後もモーションリブは、力触覚技術リアルハプティクスを通して、Withコロナ社会における新たなコミュニケーション手段を提供するという。アイドルの握手会で、握手の感触を双方向で遠隔化―モーションリブの感触伝送技術「リアルハプティクス」採用

 

【レビュー】第5世代のiPad Airと11インチiPad Proを比較してみた

iPad Air(第5世代)を発売に先立ってレビューした

iPad Air(第5世代)を発売に先立ってレビューした

第3世代のiPhone SEと同時に、第5世代のiPad Airが発売されます。iPad Airとしてはおよそ1年半ぶりのリニューアル。前回はiPhone 12に合わせたスケジュールで市場に投入されましたが、今回はiPhone SEと同タイミングでの発売になります。第4世代でProモデルの特徴を取り入れ、フルモデルチェンジを図ったiPad Airですが、第5世代では、その基本設計を踏襲しつつ、新たに「M1チップ」を搭載。高速通信規格の5Gにも対応しました。

筆者は、M1搭載の11インチiPad Proを真っ先に購入したクチですが、使い方を考えるとスペック的にはiPad Airで十分なのでは……と感じることも。ぶっちゃけると、M1チップの性能も引き出せているかどうか微妙なところではありますが(笑)、Magic KeyboardやApple Pencilが使えて、かつ処理能力がそれなりに高いiPadは必須アイテムではあります。そんな筆者が、M1搭載iPad Proユーザー目線で第5世代のiPad Airをチェックしていきます。

まずは外観から。iPad Proはよく言えばカラーリングを気にしないPro仕様、悪く言えば無難な2色展開でしたが、iPad Airはカラフルな5色展開。試用したブルーも、鮮やかな色合いがアルミの質感とマッチしていて、使っているとテンションが上がります。Magic Keyboardを付けてしまうと背面の違いがわかりづらいと思われるかもしれませんが、前面からもフレームがチラッと目に入るため、“Air感”は十分感じられます。

カラバリの豊富さはiPad Airならでは。今回試用したのはブルー

カラバリの豊富さはiPad Airならでは。今回試用したのはブルー

Magic Keyboardを装着しても、フレームからチラリとのぞく色でAir感を感じられる

Magic Keyboardを装着しても、フレームからチラリとのぞく色でAir感を感じられる

Proより0.1インチだけディスプレイは小さくなりますが、パッと見ではその差がよくわかりません。ただし、ベゼルが太いのはすぐにわかります。ここは好き嫌い分かれるところですが、筆者は狭額縁派。キーボードなどを装着せずに単体で使う場合、指をかける場所がほしいということで、Airの方が安心感がある人もいるでしょう。

次に処理能力ですが、M1を搭載していることもあり、レスポンスは非常によく、不満はほとんどありません。Apple Pencilで校正をするために使う「GoodNotes 5」や、「Lightroom」のような画像編集系のアプリもサクサク動きます。原稿はApple純正のPagesで作成して書き出すことが多いのですが、当然ながら動作には一切問題なし。何なら、この原稿もiPad Airで執筆しています。そもそもの話、原稿を書いたり、調べものをしたりという程度なら、M1である必要すらないのかもしれません。

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

日常的に業務に取り入れているアプリは、スムーズに動いた

Geekbench 5でのスコア。M1搭載のiPad Proに迫るスコアだ

Geekbench 5でのスコア。M1搭載のiPad Proに迫るスコアだ

個人的には、原稿執筆だけなら、PCよりもiPadの方が集中できます。これは、ディスプレイサイズが普段使っているPCより狭めで、iPadOSがPCと比べるとマルチウィンドウに制約があるためでしょう。もちろん、iPad AirでもSplit ViewやSlide Overで複数アプリを同時に使うことはできますが、それをするとメインの画面が小さくなってしまい、特に執筆作業には支障をきたします。

10.9インチとディスプレイが狭いぶん、画面に表示するアプリをどうしても厳選せざるをえなくなるため、目の前にある原稿に集中できるというわけです。作業中にTwitterで遊んだり、調べものをしていたつもりが、いつの間にかまったく関係のないサイトを読み込んでいたりということが減り、効率よく仕事ができます。文字入力のレスポンスがとにかくいいのもiPad Airの魅力で、テンポよく原稿を書いていけます。

本稿もiPad Airで執筆

本稿もiPad Airで執筆

iPad Proとの違いとして、画面のリフレッシュレートが60Hzという点は指摘しておきたいところですが、普段使いではあまり気にならないかもしれません。悲しいことに、筆者の動体視力が衰えている可能性は十分ありますが、自分の中では「これがないから絶対にPro」と断固主張するほどの差ではありませんでした。スクロールなどの滑らかさは確かにiPad Proの方が上ですが、仕事道具として使うぶんには、それほど気にならないと思います。

M1搭載iPad Pro使いとして少々気になったのは、Face IDに非対応なところ。Touch IDを統合したトップボタンも認証の速度は速く、iPad Air単体で使うだけならこれで十分なのですが、ことキーボード入力時はFace IDの方がUXとして自然。認証のために、指をいったんキーから離す必要がないからです。この点は画面表示の時間を長くするなどして、なるべくロックがすぐにかからないよう設定を工夫した方がいいかもしれません。

Touch ID対応は単体で使うぶんには便利だが、キーボード利用時には指を伸ばす必要があるのが難点

Touch ID対応は単体で使うぶんには便利だが、キーボード利用時には指を伸ばす必要があるのが難点

11インチのM1搭載iPad Proを購入した個人的な理由としては、5Gもありました。第4世代までのiPad Airは、4Gまでしか利用できなかったからです。筆者のiPadの利用シーンとして、取材時のメモ取りなどがありますが、発表会などで使われるメジャーな施設では5G対応エリアの場合も多く、せっかくなら高速通信がいいということでiPad Proを選んだことを記憶しています。第5世代のiPad Airは同モデルとして初めて5Gをサポートしたため、高速通信がマストというユーザーも買いやすくなったのではないでしょうか。

試しにドコモで「5Gデータプラス」を契約しているSIMカードを入れ、5Gエリアに行ってスピードテストをしてきましたが、第4世代のiPad Airまででは体感できなかったような速度を叩き出しました。これならば、動画のダウンロードやアプリのダウンロードなども快適にできます。ただし、高速通信が可能な新周波数帯の5Gエリアはまだまだ限定的なため、キャリアにももっとがんばってほしいと感じています。

5Gエリアで速度を測定。以前は1Gbps近く出ていた場所だが、対応端末が増えたこともあってか、500Mbps台にとどまっていた。それでも十分高速だ

5Gエリアで速度を測定。以前は1Gbps近く出ていた場所だが、対応端末が増えたこともあってか、500Mbps台にとどまっていた。それでも十分高速だ

11インチのM1搭載iPad Proユーザーとして第5世代のiPad Airを使ってみましたが、ビックリするほどこれで十分でした。無理をして最高峰のiPad Proを購入する必要はなかったのかもしれません(1年待てたかという問題はありますが)。ただし、上記のようにFace ID非対応なのが残念なポイント。Touch IDでロックを解除した後のキーボード利用時のみ、インカメラで簡易的な認証を行うなど、ソフトウェア的な工夫でなんとか解決してほしいところです。

(石野純也。Engadget日本版より転載)

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

第5世代のiPad Airは、最新のApple製品に取り入れられているカラーを踏襲しつつ、独自のブルーを加えた5色の展開。中核モデルであるiPad Airはカラーバリエーションが最も多く、プロのクリエイターに特化した機能と性能を重視したiPad Proとは異なるテイストの製品だ。

特に先代モデルからはiPad Proのエッセンスを取り入れ、同等スペックならドルベースで150ドル安価という「手を伸ばしやすい、しかしフル機能に近いiPad」という性格を備える。MacBookがそうであるように、Proはプロフェッショナルクリエイター、Airは洗練された使い方を求めるプレミアムな一般ユーザーという位置付けが明確化されている。

そのiPad AirにとうとうApple M1チップが搭載された。登場して1年半が経過しているM1だが、いまだにモバイルコンピュータ向けとしてはパフォーマンスと省電力性の両方で圧倒的。それが中核機に降りてきたというのが、第5世代の一番の注目点ということになるのだ。

M1搭載による利点は”爆速”ではなく”創造的”なこと

M1が搭載されたことで、単にCPUが高速になるだけではなくGPUやNeural Engineが強化され、機械学習処理を取り入れた写真修正、動画編集、3Dモデリングなど、さまざまなクリエイター向けアプリの応答性と処理の正確性が高まる。機械学習の最適動作が進めば、タッチ操作やApple Pencilで自動処理できる範囲も広がり、クリエイティブな作業へのハードルが下がる。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

結論から言えば、iPadシリーズの中でもっとも費用対効果が高い中核モデルという性格はそのままに、最高の性能を得た本機は引き続きiPadシリーズの中でも、注釈なしに薦められる製品だ。

第4世代からの変化では、超広角のインカメラに「センターフレーム」という最新の機能が取り入れられ、5Gモデムも内蔵するなど時代に合わせたリフレッシュも行われている。たとえ第4世代モデルを安価に入手できることがあったとしても、永く使いたいならばあえて旧モデルを選ぶ理由もない。

ただし、これまであったコストパフォーマンスの高さは、Appleの戦略とは関係ないものの、円安に振れた為替トレンドにより(日本の顧客にとっては)少々、微妙な価格設定になっていることは否めない。

同じストレージ容量の11インチiPad Proと第5世代iPad Airの価格差は、米ドルベースでは150ドルなのに対し、日本円では1万4000円に過ぎない。このことでどちらを選ぶのか、悩んでいる方は多いのではないだろうか。

その答えは人それぞれだろうが、言い換えるなら為替の影響で価格が近づいた11インチiPad Proとの間で選択を悩む以外に、本機についての懸念点はほとんどない。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

ではiPad Airと11インチiPad Proはどのような点が異なるのだろうか。わずかにiPad Airの画面が小さい一方、カラーバリエーションが多いことは承知しているだろうが、それ以外にも以下の点が異なる。

  • Face ID(TrueDepthカメラ)ではなくTouch IDで個人認証
  • ディスプレイの最大輝度が600nitsに対して500nits
  • 超広角含めた二眼カメラ+LiDARに対しLiDAR非搭載の広角一眼のアウトカメラ
  • 縦横自在の4スピーカーに対し横画面のみでステレオとなる2スピーカー
  • 5個のマルチマイクによる指向性制御に対しデュアルマイク構成
  • Pro Motion対応120Hz表示・タッチパネルスキャンに対し60Hz
  • 外部接続端子がThunderbolt 4(40Gbps)に対しUSB 3.0(10Gbps)

このように並べてみると意外に大きな違いだ。

150ドルの価格差ならば、この違いがあったとしても、多くの人にとってiPad Airの方が適切な選択肢だと明言できたが、1万4000円の違いとなれば迷うのも無理はない。

中でも体験レベルが大きく異なってくるのは、

  • 縦横自在の4スピーカーに対し横画面のみでステレオとなる2スピーカー
  • 5個のマルチマイクによる指向性制御に対しデュアルマイク構成
  • Pro Motion対応120Hz表示・タッチパネルスキャンに対し60Hz

の3点だろうか。【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル

縦横どちらでも使うiPadの場合、どの方向でもステレオ効果が得られる点は、2世代前のiPad Proが発表された時、随分と感心したポイントだった。その後、空間オーディオ再生に対応し、なおさら4スピーカーの良さが際立つようになったと思う。

マイクに関しては高音質の録音を求めない場合でも、ビームフォーミングに役立つ。オンライン会議時に生活音や背景ノイズを遮断するキーテクノロジでもあるだけに、iPadでオンライン会議をこなしたい人にとっては悩ましい違いだろう。

ProMotionに関しては、スクロール時などの”ヌルヌル感”や指にピッタリと吸い付いたようにドラッグする対象が動く感触的な違いはあるが、一般的な利用では大きな違いは出ない。しかし、絵を描くのであればApple Pencilの追従性向上は体感できるレベルにあると思う。

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデル個人認証に関しては、Face IDが良いのかTouch IDが良いのかは好みや使い方もある。iPhoneではマスクありの認証に対応したFace IDだが、iPadでは引き続きマスクありでのロック解除はできない。

またディスプレイの表示品質に関しても、スペック上の違いはあるものの、通常、その差を感じることはほとんどない。どちらを選んでも色再現範囲が広く、ホワイトバランスや諧調表現も的確。業界水準を大きく超える美しいディスプレイだ。

【レビュー】ついにM1搭載の第5世代iPad Air、コスパそのままに最高の性能を得たモデルなお、ベンチマーク結果などは誤差程度であり、両者の性能は”同じ”と思って差し支えないと思う。すなわち、タブレットとしても、モバイルパソコンと比較したとしても、ポータブルなコンピュータとしてはほかに比較対象のない、高性能で省電力な端末だ。

iPad Airを検討する際はこれらの違い、カラーバリエーションなどをどう考えるかだ。一方でiPad Pro以外にはライバル不在とも言い換えることができるだろう。

(本田雅一。Engadget日本版より転載)

【レビュー】Apple Studio Display、発売と同時に注文することにためらいはなかった

Apple(アップル)は同社の3月イベントで、Studio Displayを発表した。27インチの外部モニターで、価格は1599ドル(日本での価格は税込19万9800円)からと、これまで同社唯一のモニターだった、Pro Display XDR(5000ドル[税込58万2780円]から)から大きく引き下げられた。

Studio Displayの発表は、Appleが10年以上前に発売し、ディスプレイ事業を完全撤退した2016年に販売が中止された人気のThunderbolt Displayの後継機を待ちわびていた多くの人たちにとってビッグニュースだった。テック業界では多くのプロダクトデザイナーが、限られた解像度と時代遅れのポートにもかかわらずThunderbolt Displayを手放すことを拒み、いつかAppleが後継機を出すことを期待して使い続けていることを私は知っている。

AppleがThunderbolt Displayの販売を中止したとき、市場に大きなギャップを残した。当時、ウェブカム、マイクロホン、スピーカー、(プラス)USBポートをすべて備えたオールインワンのディスプレイは、事実上ゼロだった。LG(エルジー)のUltrafineは1つのソリューションとしてAppleも推奨していたが、製造品質、信頼性、接続性ともにThunderbolt Displayと比べて劣っていた。新しいUSB-Cポートを備えてはいたが。

2020年、パンデミックのためにテック業界がフルタイムのリモートワークに切り替えた時、新しいモニターを物色していた私は、オールインワン外部ディスプレイの選択肢が少ないことに驚かされた。ほとんどの新しいコンピューターにUSB-Cが装備され、高速通信とディスプレイ接続と充電が1本のケーブルでできるようになり、私はモニターメーカー各社がThunder Displayの成功の再現を狙うだろうと予測していた。しかし、私が探したなかで選択肢はごくわずかしかなく、結局単なる4Kモニターと、Logitech(ロジテック、日本ではロジクール)のウェブカム、USBハブ、マイクロフォンを別々に買うことになった。

Appleの新しいStudio Displayはその答えであり、10年待たされた結果の仕様はあらゆる期待に答えるものだった。5Kディスプレイ(5120×2880ピクセル)はリフレッシュレート60Hz、P3ワイドカラーガムートで、12メガピクセルのウェブカムと、あらゆる周辺機器をつなげるUSB-Cポートを3基備えている。MacBookと1本のThunderbolt 3 USB-Cケーブルで接続可能で、(さらに)使用中に充電もできる。

画像クレジット:Apple

ライバルとの差を際立たせているのは、現在購入可能な5K解像度の数少ない選択肢の1つであるからだけでなく、AppleがA13プロセッサーを搭載して、室内の周囲の照明に基づいて色温度を調整するTrue Toneや、人物の動きに合わせてウェブカムが被写体を追跡するセンターフレームなどの機能を付加していることだ。ありふれたことと思うかもしれないが、他にも輝度、音量、その他の機能はMacのキーボードからホットキーで直接制御可能であり、モニターに組み込まれた謎めいたオンスクリーンメニューをたどらなくてすむのは、クオリティー・オブ・ライフの大きな向上である。

ネットで最もよくみかけるこの新型モニターに対する不満は、最新のコンピューターに見られるApple ProMotionテクノロジーに対応しておらず、バターのようなとしか表現できない高い最大リフレッシュレート(120hz)が利用できないことだ。しかしこれは今後もサポートされる見込みはない、なぜならこの能力を引き出すために必要なポート・スループットがまだ存在していないからだ。5K解像度を120 hzでリフレッシュするには53.08Gbpsが必要だが、Thunderbolt 3/4は1本のケーブルで40Gpsしか扱えない。このレベルのスピードは、Thunderbolt 5標準に採用されるといわれているが、公式発表はされておらず、どのコンピューターにも搭載されていない。


1599ドルの基本価格にたじろぐ人も多いが、高解像度で忠実な色再現のディスプレイが必要で、一日のほとんどを画面の前で過ごす人、特に在宅勤務の人たちにとって十分な価値があると私は言いたい。私を含め、プロダクトデザインに携わる者にとっては特にそうだが、一日中オンライン・ミーティングに出席し、余計なアクセサリーを手放したい人にもおすすめだ。

ケーブル1本でつなげて、ビデオ通話のためにウェブカムとマイクロフォンとスピーカーの準備ができていることは、ノートパソコンを取り外すたびにあちこちいじりまわすのと比べて大きな改善だ。組み込み型マイクロフォンはノイズキャンセリングに最適化されているので、多人数のビデオ会議でスピーカーを使うのにもうれしい。リモートワークの社員を雇う会社にとって、買うべきアクセサリーが全部ついているモニターを1台送ればすむので、企業ユーザーにとっても人気の選択肢になる可能性が高い。

Studio Displayは高いか?そのとおり。しかしこれは1日中使う可能性の高い道具への投資であり、Thunderbolt Displayの歴史が参考になるとすれば、今後長らく使うことになるだろう。私も1599ドルを「スクリーン」につぎ込むことなど考えたことがなかったが、発売と同時に注文することにためらいはなかった。できの悪いスクリーンの上にウェブカムを不安定にとまらせ続けるには人生は短すぎる。

Read more about the Apple March 2022 event on TechCrunch

画像クレジット:Apple

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(文:Owen Williams、翻訳:Nob Takahashi / facebook

インテル、2.2兆円投じてドイツに半導体工場を建設

Intel(インテル)は今後10年間で欧州に最大800億ユーロ(約10兆3600億円)を投資する一環として、ドイツに半導体工場を建設する計画を明らかにした。ザクセン・アンハルト州の州都マグデブルクに建設する施設の初期費用は170億ユーロ(約2兆2020億円)だ。

「メガサイト」と呼ばれるこの施設は、実際には2つの工場で構成される。欧州委員会の承認が得られればIntelは直ちに企画を開始し、2023年前半には建設が開始される。同社が「シリコン・ジャンクション」と呼ぶこの工場での生産開始は2027年が見込まれている。このため、この工場がすぐに世界的なチップ不足を補う助けになることはない。

同社によると、この2つの工場では同社最高級のオングストローム世代のトランジスタ技術を使ったチップが製造される。工場建設期間中に建設従事者7000人の雇用、3000人の常用雇用、そしてパートナーやサプライヤー全体でさらに数千人の雇用を創出する見込みだ。

この他にも、Intelはアイルランドのレイクスリップにある工場の拡張に120億ユーロ(約1兆5550億円)を投資する予定だ。製造スペースが2倍になり、ファウンドリーサービスも拡大される。同社はまた、イタリアに最大45億ユーロ(5830億円)を投じて組立・梱包施設を建設することについても協議している。

Intelは、フランスのプラトー・ド・サクレー近郊に欧州の研究開発拠点を建設する計画だ。それにより、1000人の雇用を創出し、そのうち450人は2024年末までに募集が始まる。同社は、欧州の主要ファウンドリ設計センターもフランスに設置することを目指している。さらに、ポーランドとスペインにも投資を行う予定だ。

この計画は「欧州におけるIntelの生産能力の大幅な拡大により、グローバルの半導体サプライチェーンのバランスをとることを中心に据えている」と同社は話す。欧州連合は2月、将来のチップ不足を防ぎ、アジアで製造される部品への依存度を下げることを目的とした490億ドル(約5兆7970億円)の取り組みを発表した。

「EU半導体法は、民間企業と政府が協力して半導体分野における欧州の地位を飛躍的に向上させる力を与えます。この幅広い取り組みにより、欧州の研究開発のイノベーションが促進され、世界中の顧客とパートナーに利益をもたらす最先端の製造業がこの地域にもたらされます」とIntelのCEO、Pat Gelsinger(パット・ゲルシンガー)は述べた。

編集部注:本稿の初出はEngadget。執筆者のKris HoltはEngadgetの寄稿者。

画像クレジット:Intel

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(文:Kris Holt、翻訳:Nariko Mizoguchi

64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

Clockwork Techは3月16日、64ビットRISC-V(リスク・ファイブ)チップ版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」の発売を開始した。組み立てキットの体裁で販売しており、直販価格は239ドル(約2万8261円)。LinuxベースのOSおよびオープンソースソフトウェア関連の知識を必要とすることから実験的なモデルと位置付けており、初心者は他モデルを購入するよう呼びかけている。またサプライチェーンの状況から、納期は約60営業日を想定しているとのこと。64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

RISC-Vは、RISCベースおよびオープン標準の命令セットアーキテクチャ(ISA。instruction set architecture)。ISAには、x86アーキテクチャ、Armアーキテクチャなどがある。2010年にカリフォルニア大学バークレイ校においてプロジェクトが開始。オープンソース・ライセンス(BSDライセンス)として公開されており、使用料がかからない(ロイヤリティーフリー)。現在非営利団体のRISC-V Foundationが管理している。

DevTerm Kit R-01は、RV64IMAFDCVU(シングルコア、クロック周波数1GHz)、1GBのDDR3メモリーを搭載するR-01コアモジュールを採用。マザーボードにあたるClockworkPi v3.14メインボードにセットできる。

また6.8インチのIPS液晶ディスプレーを搭載するほか、別売のリチウムイオン二次電池「18650電池」をセットすることで、バッテリー駆動も可能。58mm感熱式(200dpi)サーマルプリンター付きの独自コアモジュール同梱。64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円64ビットRISC-V版のキーボード一体型PC「DevTerm Kit R-01」をClockwork Techが発売、組み立て式で価格約3万円

「DevTerm Kit R-01」同梱物

  • ClockworkPi v3.14メインボード
  • R-01コアモジュール(RISC-V 64bit Single-core RV64IMAFDCVU @ 1.0GHz、GPUなし、1GB DDR3メモリー)
  • Ext. モジュール(拡張モジュール)
  • 6.8インチIPSスクリーン(1280×480ピクセル) モジュール
  • clockwork QWERTYキーボード(67キー+ゲーム用キー、トラックボール)
  • バッテリーモジュール(「18650電池」は別売)
  • デュアル スピーカー
  • 58mm 200dpi サーマルプリンター(DevTerm Kit A06 series)
  • シェルおよびブラケットシステム(筐体など)
  • clockworkOS搭載32GB TFカード(microSDカード)

安価に大量生産が可能な6G通信の電波制御のための新規材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発

安価に大量生産が可能な6G通信の電波制御のための新規テラヘルツ光学材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発

東北大学は3月10日、6G通信を見据えたテラヘルツ光学材料「三次元バルクメタマテリアル」を開発し、液状樹脂に混合して任意の形に加工できる粉末状での提供を可能にしたと発表した。テラヘルツ領域での「光学特性をオーダーメイドで設計できる革新的な新素材」の基盤技術になるという。

2030年代の実用化を目指す6G通信では、ミリ波と赤外線の中間の、波長が非常に短いテラヘルツ波が使われることになっている。しかし現状では、テラヘルツの電波を自在に制御できるレンズ、プリズム、フィルターといった光学素子の材料が限られているため、加工が容易で、幅広い屈折率特性を有する新規素材が求められている。そこで注目されているのが、制御対象の電磁波の波長よりも小さな単位構造で構成される人工光学物質「メタマテリアル」だ。これは、「これまでの電磁波操作技術の限界を打ち破る革新的な人工構造体」として期待されている。東北大学大学院工学研究科の金森義明教授、岡谷泰佑助教らによる研究グループは、このメタマテリアルを含み、成形が自由で任意の屈折率特性を持たせられる「三次元バルクメタマテリアル」を安価に大量に提供できる製造技術の開発について、世界で初めて成功した。

これまでも、メタマテリアル単位構造を形成した立体的なメタマテリアルはあったが、厚みや構造の向きに制約があった。それに対して同研究グループが開発したものは、製造上の厚みの制約がなく、方向性の制限もない、どんな形にしても「三次元的に等方分散した真の三次元バルクメタマテリアル」とのこと。

研究グループが開発したメタマテリアルは、テラヘルツ波の波長よりも小さい数十から数百μm(マイクロメートル)ほどのメタマテリアルを含む樹脂製粉末だ。これを液状樹脂に入れて攪拌し、型に入れて固めることで、任意の形で、設計に応じた屈折率特性を持つ「三次元バルクメタマテリアル」ができあがる。実際に、直径12mm、厚さ1.6mmの三次元バルクメタマテリアルの製作を成功させている。これは、代表的なメタマテリアル単位構造であるスプリットリング共振器を内包した1辺100μmの立方体の粉末から作られている。マテリアルはランダムに分散配置されていて、周波数0.7THz付近で、屈折率を0.135変化させることができたという。

(a)三次元バルクメタマテリアル、(b)内包されているスプリットリング共振器

これまでメタマテリアルは平面的に形成されたものが多く、自由に加工できなかった。また、メタマテリアルを部材として入手することが困難で、メタマテリアル光学素子を作る際には、高度な微細加工技術が必要だった。それらが社会実装を妨げていたのだが、個体の粉末材料として提供される研究グループのメタマテリアルは、「自由に加工してテラヘルツ光学素子を実現できる点が画期的」と研究グループは話す。またこの技術は、医療、バイオ、農業、食品、環境、セキュリティーなど幅広い分野での応用が期待できるという。

【レビュー】iPhone 13/13 Proの新色グリーンを実機でチェック!iOS 15.4のマスクありFace IDも試した

iPhone 13/13 Proの新色グリーンを実機でチェック!iOS 15.4のマスクありFace IDも試した

第3世代iPhone SEの予約受付が開始されましたが、忘れてはいけないのがiPhone 13シリーズの新色。iPhone 13、13 miniには「グリーン」が、iPhone 13 Pro、13 Pro Maxには「アルパイングリーン」が追加されます。

グリーンと言えば、iPhone 11 Proで採用された「ミッドナイトグリーン」を思い出す人も多いのではないでしょうか。同色は、ロボットアニメファンから「むせる」など評され、話題になりました。

そんなグリーンですが、iPhone 12シリーズでは残念ながらテイストが大幅に変更され、ミッドナイトグリーンは廃止に。iPhone 12、12 miniには「グリーン」がありましたが、どちらかと言うと薄緑といった色合いで、ミッドナイトグリーンのような渋さはありませんでした。そんな中、満を持して登場したのが上記のグリーンとアルパイングリーンです。早速iPhone 13 miniのグリーンから、その実機を見ていきましょう。

iPhone 13 miniのグリーン

iPhone 13 miniのグリーン……と言っても、正面からだと違いはわかりづらい

iPhone 13 miniのグリーン……と言っても、正面からだと違いはわかりづらい

背面の写真は以下のとおり。同じグリーンという名称ですが、iPhone 12 miniのそれとは異なり、かなり深い緑色であることがわかります。光の当たり方によっては、黒にも見えるほど。強めの光を当てると少し鮮やかになりますが、蛍光灯下での実際の見た目としては、以下写真のフラッシュなしの方に近い色味です。

フラッシュありで撮影した背面。光沢感はこんなイメージ

フラッシュありで撮影した背面。光沢感はこんなイメージ

フラッシュなしで撮影。蛍光灯下での色味は、こちらが近い

フラッシュなしで撮影。蛍光灯下での色味は、こちらが近い

側面は以下に。iPhone 13 miniにはアルミフレームが採用されています。光沢感があるため、背面よりも少し緑が鮮やかめ。光を反射すると、緑の色合いが強調されてキレイ。カジュアルな印象の強い背面に対して、やや高級感が強くなっています。アルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されているアルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されている

アルミフレームもグリーンで統一されている

iPhone 13 Proのアルパイングリーン

次に、iPhone 13 Proに行ってみましょう。iPhone 13 Proの背面にはすりガラスのようなガラスが採用されており、アルパイングリーンでもそのデザインは踏襲されています。サラッとした質感で、光を美しく反射し、色合いがやや薄く鮮やかになるのが特徴です。蛍光灯下では深みが出ますが、iPhone 13 miniより繊細な処理で高級感は満点です。

iPhone 13 Pro、13 Pro Maxはアルパイングリーンという名称

iPhone 13 Pro、13 Pro Maxはアルパイングリーンという名称

深い緑で、iPhone 11 Pro、11 Pro Maxのミッドナイトグリーンよりほんの少しだけ緑の色合いが強い印象。こちらはフラッシュあり

深い緑で、iPhone 11 Pro、11 Pro Maxのミッドナイトグリーンよりほんの少しだけ緑の色合いが強い印象。こちらはフラッシュあり

フラッシュなしで撮影した背面

フラッシュなしで撮影した背面

続いてフレームは以下に。ProモデルのiPhoneはステンレススチールを採用するため、光沢感がかなり強め。色は背面同様、深めのグリーンで統一されています。

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わるフレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わるフレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

フレームもグリーンで統一されている。ステンレススチールのため、光沢感はかなり強め。光の当たり方で色合いが大きく変わる

ちなみに、筆者私物の「シエラブルー」との比較は以下のとおり。iPhone 13 Pro、13 Pro Maxは素材の光沢感を生かすためか、「グラファイト」以外は薄めのカラーリングになっていましたが、重めのカラーが好みの人にはいい選択肢になるのでは、と思いました。

シエラブルーとの比較。濃いめの色が好みの人にはオススメ

シエラブルーとの比較。濃いめの色が好みの人にはオススメ

iOS 15.4のマスクありFace IDも試してみた

試用したiPhone 13 mini、13 Proには最新の「iOS 15.4」がインストールされていたため、話題のマスクありFace IDも試してみました。

Face ID設定時にマスクあり用の顔登録を促されるため、そのまま登録。眼鏡をかけている場合は、眼鏡をつけたまま登録した後、眼鏡を外して顔を登録することが求められます。

iOS 15.4も試してみた。マスク着用時のFace ID用に、顔を改めて登録する仕組み

iOS 15.4も試してみた。マスク着用時のFace ID用に、顔を改めて登録する仕組み

眼鏡を着用したまま設定を進めたところ、眼鏡なしの顔の登録も求められた

眼鏡を着用したまま設定を進めたところ、眼鏡なしの顔の登録も求められた

結果として、顔登録をしたところ、マスクをつけたままでもスムーズにロックを解除することができました。

うれしいのは、Apple Watchでのロック解除とは異なり、Apple PayマスクありFace IDが有効なところ。これで、支払いのときにパスコードを入力したり、感染リスクを冒してマスクを少しズラしたりする必要がなくなります。iOS 15.4は来週配信予定ですが、登場が今から楽しみです。

マスクのままロック解除ができ、使用感が大幅に上がった印象

マスクのままロック解除ができ、使用感が大幅に上がった印象

ロック解除だけでなく、Apple PayなどのFace IDにも有効になる

ロック解除だけでなく、Apple PayなどのFace IDにも有効になる

(石野純也。Engadget日本版より転載)

企業はノートPCを購入するかわりに数分の手続きでレンタルすべきだと考える「Fleet」

フランスのスタートアップFleet(フリート)は、ハードウェアをサービスとして管理することで、IT部門のベストフレンドになろうとしている。Fleetの顧客は、パソコンやスマートフォンを月々定額でレンタルできる。ハードウェアに問題が発生した場合は、返品や修理に対応する。

また、更新時期には、古いノートパソコンやスマートフォンを新しいものと交換することができる。顧客は、現在保有しているデバイスを1つの管理画面で確認することができる。

同社は、幅広い種類のデバイスを提供している。例えば、M1 Proチップと16GBのRAMを搭載した14インチのMacBook Proは、現在1台あたり月額99.90ユーロ(約1万2930円)だ。M1 MacBook Airは1デバイスあたり月額54.90ユーロ(約7100円)から。128GBのストレージを搭載したiPhone 13は、月額44.90ユーロ(約5810円)になる。

Microsoft(マイクロソフト)のノートパソコン(Surface Laptop Go、Surface Laptop 4、Surface Pro 7)、Dell(デル)のパソコン、そしてChromebookも数モデル用意されている。端末が寿命を迎えてFleetに送り返されると、同社はその端末を非営利団体に譲渡したり、再生業者に売却したり、リサイクルしたりする。

Fleetはブートストラップしたスタートアップで、VCからの資金調達はしていない。しかし、現在のランレートで1200万ユーロ(約15億5300万円)の年間売上高が見込まれるなど、順調に成長している。

同社は現在、Ankorstore、Ornikar、Sunday、Matera、Cubyn、Wemaintain、Shineなど、フランスの有名なスタートアップ数社を含む600社の顧客を有している。そして中央ヨーロッパ時間3月14日、同社はスペインでDaaS(Device as a Service)の提供を開始する。そしてバルセロナにもオフィスを開設する予定だ。

Fleetのサプライヤーの多くはすでに欧州全域に配送可能であるため、同社の欧州での展開はまだまだ続く。ポルトガル、イタリア、ドイツ、ベルギーを次の市場として考えている。

多くの企業は、従業員用のデバイスを直接購入することを選択する。しかしそれには大きな初期費用がかかるし、ハードウェアの問題が発生したときに助けてくれるサプライヤーがいないことになる。

企業は、こうした大きな資本支出を運用コストに転化する方法を模索してきた。例えば、企業はハードウェアを購入するために、銀行とクレジットラインを交渉することができる。

そして、これがFleetのビジネスモデルを理解する鍵になる。同社は、金融機関やリース会社と直接交渉しているため、顧客はアカウントを作成し、いくつかの書類を提出するだけでよい。数分もあれば、ノートパソコンを注文することができる。そしてFleetは、顧客に代わってやっかいな仕事をこなす、もう1つのサービスプロバイダーとなるわけだ。

画像クレジット:Jeremy Bezanger / Unsplash

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(文:Romain Dillet、翻訳:Den Nakano)

【実機先行レビュー】iPhone SE 第3世代はやっぱり高品質

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

第三世代iPhone SE。カラーは「ミッドナイト」

「iPhone SE」第3世代モデルをいち早く使ってみた。本稿ではその模様をお伝えする。

デザインも変わっていないしハイエンドじゃないし……と思っていないだろうか。まあ確かに、そんなに「新しい」感じがするわけではない。

だが、触ってみるとなるほど、Appleの狙いが見えてくる製品でもあるのだ。

ロングセラーになった定番デザイン、色調は第2世代とは異なる

今回のiPhone SEは3世代目になるわけだが、2020年発売の2世代目と同様、デザインは「iPhone 8」(2017年9月発売)と同じになっている。

色も、第2世代・第3世代で同じ……と言いたいところなのだが、白・黒・赤というおおまかな色としては同じであるが、色合いがそれぞれ変わっている。

レビュー機材として貸し出されたのは「ミッドナイト」。黒にほんの少し青が混ざった「深夜の空の色」を感じさせる色合いだ。表側の黒い部分と比較すると、色の違いがわかりやすい。

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

背面。ちょっと光を強めに入れてみると、黒というより「極めて深い青」であることがわかる。まさに「ミッドナイト」

このデザインも、実際にはiPhone 6世代(2014年9月発売)をベースとしているわけで、なんとも息が長い。第2世代と同じく2年で次の「SE」だとすると、最低でも2024年まで使われる「10年選手」ということになる。

だからiPhone 13世代と比較すると、画面周囲の空白の大きさなど、さすがに古さを感じる。

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

左がiPhone 13 Pro Max、右がiPhone 13 Pro。中央のiPhone SE(第3世代)を比較すると、画面サイズはかなり違う

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

背面。左から、iPhone 13 Pro Maxの新色である「アルパイングリーン」、iPhone 13の新色「グリーン」、iPhone SE(第3世代)の「ミッドナイト」。アルパイングリーンのiPhone 13 Pro Maxはかなり「むせる」色合いだ

ただ、Appleの考えとして、ここで細かくデザインを変えていくのは「違う」と考えているのだろう。

ソフトウェア開発上、画面のバリエーションが増えるのは避けたいだろうし、大量に調達しているパーツを使ってコストを下げたい、という思惑もあるので、彼らとしては「この形でこういうパターンで出す」ことしかあり得ないのだ。

ここからの2年で供給価格はさらに下がり、携帯電話事業者による割引を組み合わせて、安価に提供するiPhoneになっていくのは間違いない。だとするなら、「機能や特質を変えず、できる限り長く、安価に提供できるバランス」のものを作ることを最優先にするというのはもっともだろう。

性能はiPhone 13並み、カメラも「日常的撮影」ならかなり良好

というわけで、ちょっと使ってみた感じはまさに「iPhone SE」だ。

価格だけでなくサイズ感含め「これがいい」という人もいるはず。そういう人があまり悩まずに買えるバランスになっている。

画面こそ(本体サイズの割には)狭いが、それでもiPhone 13シリーズと比較すれば、miniを除くとぐっと小さい。全体の作りの良さはさすがだ。

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

サイド部。アルミボディ+ガラスの仕上げは上質

第3世代iPhone SEはプロセッサーが「A15 Bionic」になった。そのため、性能はかなり上がっている。

「GeekBench 5」でのテスト結果では、CPU側の性能ではiPhone 13 Pro Maxとほとんど差がない。GPUについてはコア数が違うようで、iPhone 13 Pro Maxの方が流石に性能は高い。メモリ量も、6GBから4GBに減っていると推察される。

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのCPUベンチマーク結果。マルチコア性能が若干劣るが、差は小さい。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

SE(第3世代)と、13 Pro MaxのGPUベンチマーク結果。GPUコア数が違うためか明確に13 Pro Maxの方が速い。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

まあ、このあたりはそんなに問題ではない。画面サイズが小さい分、GPUへの負荷も小さいだろう。「フラッグシップのiPhoneとほとんど差がない性能」と考える方がわかりやすい。

そしてプロセッサー性能が効いてくるのがカメラだ。

iPhone SEは第2世代も第3世代も、まったく同じレンズ・全く同じセンサーを使っている。一方で、プロセッサーに搭載されたイメージシグナル・プロセッサ(ISP)やカメラ関連ソフトウェアが改良され、カメラに使える処理能力も高くなっているので、画質は上がってる……ようだ。

残念ながら手元には第2世代SEがないので、横並びでチェックすることはできていない。

だが、2020年にiPhone 11 ProとiPhone SE(第2世代)で撮り比べた写真の傾向と、今回、iPhone 13 Pro MaxとiPhone SE(第3世代)で撮り比べた写真の傾向を比べると違いが見えてくる。

第2世代SEはiPhone 11 Proに比べ、少し眠く、精細感に欠けた写真になる印象があった。だが今回、そこはあまり差を感じない。センサー特性の違いか、色の乗りは第3世代iPhone SEの方がまだ悪い気がするし、暗い場所の写りではiPhone 13 Pro Maxの方が良いが、一般的な撮影ではさほど問題なく快適に使えるのではないだろうか。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

iPhone 13 Pro Max

iPhone 13 Pro Max

とはいえ、光学での望遠や人間以外のポートレート撮影は搭載していないし、HDRでのビデオ撮影も、「シネマティックモード」でのビデオ撮影もできない。そこは上位機種との差別化点である。

iPhone SE(第3世代)

iPhone SE(第3世代)

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

光学での望遠撮影ができるiPhone 13 Pro Maxはやはり画質がいい。SEはデジタルズーム。iOSはデジタルズームが他社のハイエンドスマホに比べ、弱い傾向にある印象だ。こちらがiPhone 13 Pro Max

5Gの速度はSEが劣るが……?

今回は5Gに対応したこともポイントだ。iPhone SEのユーザー層を考えると「5Gになったから買う」というものではない、とは思う。むしろ「これから買うのだから5Gであるのが当たり前」「買ったら5Gだった」というところではないだろうか。スタンダードなスマホであるiPhone SEが5Gになるのは、そういう意味を持っている。

ただ、これは筆者の手元でのテストがたまたまそうだったのかもしれないが、iPhone 13 Pro Maxに比べ、5Gでの通信速度がちょっと劣る。サイズや設計の制約により、5Gの感度が少し弱いのかもしれない。

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

東京都・五反田駅近辺で、ソフトバンク回線を使って計測。iPhone SEは下り速度で最大25%程度遅い。何回か計測し、ばらつきもあるが、SEの方が遅めであることに変わりはなかった。左がSE、右が13 Pro Maxの結果

日常的な使い勝手で極端な速度差を感じたわけではなく、ベンチマークを測ったりすると「確かに違う」という感じだ。感度は良いに越したことはないが、これを問題だ、と思うなら「iPhone 13を買うべき」ということなのかもしれない。

「最高の性能ではないが、作りが良くて安価でちょうどいい」、iPhone SEの位置付けは第3世代でも変わっていないということか。

(西田宗千佳。Engadget日本版より転載)

【レビュー】iPhone SE(第3世代)は観念的なスマートフォンの理想像

私がiPhone SE派の人なら良かったのにと思う。2020年に再登場して以来、エントリーモデルのiPhoneであるSEは遺物のようなサイズ感から、「必要なものだけ、それ以上はなし」スマートフォンの代表格に変貌を遂げた。

Apple(アップル)は、4.7インチサイズの小型スクリーンとTouch ID認証システムを維持しながらも、SEモデルの内部を積極的に強化し、驚くほどコスパの高い製品に仕上げている。2022年モデルは、最上位機種のiPhone 13 Proにも搭載されているA15 Bionicチップで動作する。これは、基幹コンピューティングの観点から見ると、予備の部品を収納しておくもののようなiPhoneではない。

その代わり、ディスプレイ部門の技術を整頓するというアプローチをとっている。Retina HDスクリーンは美しく見えるが、iPhone 13 Proのユーザーなら誰でもAppleの120hz ProMotionディスプレイがないことにすぐに気がつくだろう。3つのカメラシステムの代わりに、背面カメラは有能だが比較にならない12メガピクセル広角レンズ1つだ。iPhone 8 Plusでマルチカメラ搭載のスマートフォン競争が始まる前に私たちが慣れ親しんでいたものだ。

思い返すと初代iPhone SEは、iPhone 5のスタイリングと小型サイズを復活させ、最後の砦とする「スペシャルエディション」という位置づけが強かった。それ以来、世界は非常に小さなスマホから離れた。しかし、使いやすさや必要性の欠如のために 4.7インチというフォームファクターをまだ好む人々がいる。2021年のデバイスと同様、4.7インチは筆者が今快適に入力しているものの下限のままだ。

ナイトモード用のLiDAR、超広角レンズ、望遠レンズ、シネマティックモード、ドルビービジョンもない。しかし、シンプルなカメラでありながら、スマホの中で最も優れた画像を撮影することができる。このiPhone SEのワイドレンズは2020年版のものと機能的には同じだが、ISPとA15のニューラルエンジンによって、低照度性能の向上、HDRの改善、写真スタイルのポートレートモード、ポートレート照明、ディープフュージョンなどの機能が強化されており、これらはSEの7メガピクセルのフロントカメラとしては初となる。

特に、iPhoneを写真撮影の道具としてではなく、最も便利な思い出づくりツールとしてとらえている人にとっては、非常に手堅いカメラだ。静止画にナイトモードがないことは全体としておそらく最も残念な点だが、それ以外はまったく問題のない小さなカメラシステムだ。

日中や明るい室内で撮影した画像は、一般ユーザーにとっては非常によく似ているものになり、その一方でフラッシュなしで撮影した画像は、ナイトモードを搭載したマルチレンズのiPhone 13のラインナップの驚くべき能力とは比較にならない。

筆者が見る限り、Appleは少なくともベンチマークや実用的な観点から、A15の性能を調整していない。このスマホは、日々の活動のドライバーとしてはiPhone 13と同じような速さに感じられるだろう。

筐体もハイエンドのスマホにはない心地よい薄さと軽さだ。密度が濃く、エッジと質感がシャープで、宝石のようだ。iPhone SEは、スリムなサンドブラスト加工された丸みを帯びたガラスの破片だ。持っていても、使っていても、非常に心地よく、自己主張してこない。それは、存在感を示すためではなく、役目を終えて消えていくためにある。

Touch IDが電話との関わり方を変えてしまうという問題は、2020年発売のSEについて筆者が書いたレビューからまだ続いている。筆者はiPhoneのトップエンドモデルを何年も使ってきて、シームレスなスワイプの仕組みとパラダイムを単純に気に入っている。多くの人は気にしておらず、偽のボタンを押すハプティックスと親指認証で問題ない。それはまた「良い」と「ひどい」の間ではなく、2つのまともなオプションの隙間にある妥協点だ。

429ドル(日本では税込5万7800円)という価格は前のSEからわずかに上がったが、それでもiPhoneのラインナップの中でははるかに手頃な価格だ。もっと安価なスマホも買えるが、SEをスマートフォン市場で最高のお手頃オプションとしてお勧めする要素がいくつかある。まず、Appleはこのデバイスに、上位機種のiPhoneと同じパワフルなチップを搭載した。2つ目は、発売から約5年間、セキュリティ、機能、クオリティ・オブ・ライフのアップデートをサポートするという、業界においては珍しい姿勢を見せていること。そして、3つ目は、ハイエンドな機能はないものの、デザインや素材に高級感があることだ。

エコノミークラスのシートで旅するように、高価格帯のシートを選ばないと不愉快な扱いを受けることに人々は慣れてしまっているのではないか。iPhone SEは、A地点からB地点まで移動するために選択することが、軽蔑されることに耐えなければならないということを意味しないという、稀有な状況を生み出している。

数日間このスマホを使ってみて、筆者はiPhone SE派でありたいと思った。残念ながら、筆者はハイエンドデバイスが画面やカメラ技術にもたらす最先端の進歩にこだわりすぎていて「最新」以外のものには心から満足できない。これは、筆者が写真に魅了され、限界に挑戦することの副産物であることは十分に承知している。そして、それが私の仕事のようなものだ。

もし私が違うタイプの人間で、シンプルで有能な携帯電話を持つことに興味があるなら、iPhone SEを使った生活は大いに魅力的なものとなる。もしあなたが、核の周りを回る電子のようにテクノロジーに振り回される人生ではなく、より充実した人生を送りたいのであれば、この選択肢はあなたのためのものかもしれない。

画像クレジット:Matthew Panzarino

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(文:Matthew Panzarino、翻訳:Nariko Mizoguchi

ダイヤモンドの「NV中心」による温度計測に成功、高空間分解能で高感度な温度センサーに応用できる可能性を発見

ダイヤモンドの「NV中心」による温度計測に成功、高空間分解能で高感度な温度センサーに応用できる可能性を発見

研究に用いた実験装置の概略。左下図は、ダイヤモンド結晶中の窒素-空孔(NV)中心の原子構造を示す

筑波大学(長谷宗明教授)と北陸先端科学技術大学院大学(安東秀准教授)からなる研究グループは3月9日、ダイヤモンドの結晶に作られる格子欠陥を用い、非線形光学効果に基づいた、高空間分解能かつ高感度な温度センサーが実現可能であることを発見したと発表した。ナノメートルの超高速時間領域での量子センシングの実現につながるという。

非接触型の温度センサーには、おもに量子センサーが使われている。なかでもダイヤモンドの中に不純物として含まれる窒素(N)と、その隣にできる炭素原子の抜け穴(V)が対になった「NV中心」の、周辺の温度や磁場を敏感に検知して量子状態が変化する特性を活かした非接触型量子センサーは、高い空間分解能と感度が求められる細胞内計測やデバイス評価装置のセンサーなどへの応用が期待されている。

研究グループは、NV中心を人工的に作りダイヤモンド結晶の対称性を壊すことで、2次の非線形効果であり、入射光に対して2倍の周波数の光を放出する第二高調波発生(SHG)が発現することを以前に突き止めていた。今回の研究では、それを踏まえ、NV中心を含むダイヤモンドに赤外域の超短パルスレーザーを照射し、SHGおよび、3倍の周波数の光を放出する第三高調波発生(THG)の発光強度の温度依存性を調べ、非線形光学効果に基づく温度センサーの可能性を探った。

その結果、NV中心を含むダイヤモンドのSHGから得られる温度センサーとしての感度は、高純度ダイヤモンドのTHGから得られるものの3倍以上も大きいことがわかり、新しい温度センシング技術開発の可能性が示された。

今後は、ここで得られた技術を深め、ナノスケールで超高速時間領域(時空間極限領域)での量子センシングの研究を進めるという。研究グループは、ダイヤモンドのNV中心から引き出される非線形光学効果が、電場や温度のセンシングに幅広く応用できることを示してゆくと話している。

視覚障がい者向けの触覚ディスプレイ「Dot Pad」

点字は視覚障がい者に広く利用されているが、ウェブやスマートデバイスのアクセシビリティが幅広く向上しているにもかかわらず、点字読書器のハードウェアの技術革新は基本的に滞っている。今回Dot(ドット)が開発したスマート点字デバイスは、文字を表示するだけでなく、画像を触覚で表現することができる。このことは教育や利用できるコンテンツにまったく新しい層を開く可能性がある。

同社のDot Pad(ドットパッド)2400本のピンが画素のように並んでおり、それらをすばやく上下させることで、点字文字や識別しやすい図形をかたち作ることができる。300文字分の点字表示領域を持ち、下部には20文字が表示できる従来のような直線領域がある。重要なことは、このデバイスがApple(アップル)の画面読み上げ機能VoiceOver(ボイスオーバー)に直接統合されていることで、この結果テキストやアイコンラベル、さらにはグラフや単純な画像をタップするだけで読み上げられるようになっていることだ。

韓国を拠点とする同社は、共同創業者のKi Kwang Sung(キ・クワン・ソン)氏とEric Ju Yoon Kim(エリック・ジュー・ユン・キム)氏によって創業された。彼らはコンピューターやインターフェースがこれだけ進化しているにもかかわらず、学習や読書のための選択肢がないことにうんざりしていたのだ。

デジタル点字ディスプレイはこれが初めてではない。このようなデバイスは何十年も前から存在していたが、その台数も機能も明らかに限られていた。デジタル文字を読むための点字ディスプレイが一般的だが、これは長年変わっていない古くさく不格好な1行表示機械で、他のやはり古くさいソフトウェアやハードウェアに依存したものであることが多い。

また、一般にこれらの機器は、子どもや学習を意識して作られていない。視覚障がいのある子どもたちは、教科書がなかったり、視覚障がいを考慮した活動が行われていないなどの、多くの社会的ハンディキャップに晒されている。そのため、ある子どもの両親は、幼児レベルで点字を教えることができる玩具BecDot(ベックドット)を開発した

ソン氏は「21世紀にもなって、視覚障がい者がグラフィカルな情報にデジタルな手段でアクセスできないのはおかしなことです」という。「教育、仕事、ソーシャルネットワークサービスなど、あらゆる業界でさまざまなイノベーションが起こり、グラフィック情報の要求が高くなっています。しかしそれが意味していることは視覚障がい者の切り捨てです。パンデミックの状況でも、障がい者のためのリモートワークや教育手段は必須だったのですが……そのためのソリューションがなかったのです」。

そこで2人は、一般人が当たり前のように使っているピクセルベースの画像や表現に、視覚障がい者がアクセスし、操作できるようなモニターを作ろうと考えたのだ。

画像クレジット:Dot

点字リーダーは一般に、ピンを必要に応じて上下させるために何百もの小さなヒンジとギアに依存しているので、非常に複雑な機械だ。また、継続的に触れることによる圧力に耐えられるような頑丈さも必要だ。これまでにも、権威ある研究機関からさまざまなイノベーションが生まれていたものの、実際に市場に出たものはなかった。Dotは、より優れた高性能のハードウェアを提供するだけでなく、スマートフォンやタブレット端末とのより深い連携によって、すべてを変革しようとしている。

Dot Padの革新性の核となるのは、やはり「ドット」そのものだ。この小さなピン(点字1文字につき6本)を何十本、何百本と、いかに確実に、すばやく(大きな音を立てずに)伸縮させるかにに対して、さまざまな解決策が生み出されてきたが、Dotのものはまったく新しい解だ。

画像クレジット:Dot

ソン氏は「スピーカーのメカニズムから発想しました」と説明する。彼らは、スマートフォンのスピーカーを振動させている小さな電磁アクチュエーターを、ピンの上下に利用することした。上下の位置で簡単にロックでき、すばやくロックを解除して引っ込めることができる磁気ボールローターを採用している。全体の大きさは、これまでの機構の数分の一で「既存の圧電点字アクチュエーターに比べて、10分の1ほどです」とソン氏はいう(Dotは、その仕組みを示す概略図やピンの断面図を私には見せてくれたが、それらを一般に公開することは拒否した)。

つまり、文字として読める大きさでありながら、画像を表すパターンを形成するのに十分な密度を持つピンを、わずかな間隔で何千本も並べたグリッドを作ることができたのだ。ドットパッドの下部には、伝統的な点字のための専用セクションがあるものの、メインのグリッド側は何よりも「触覚ディスプレイ」と表現した方がよいだろう。

私は量産前の試作機で遊ぶことができたが、それは非常にうまく機能し、画面全体を上から下へと約1秒でリフレッシュし(これも現在改善されていて、アニメーションも可能になりつつある)、ユーザーの手で容易にスキャンできるように思えた。どちらのディスプレイも、ピンの保護スクリーンを採用していて、簡単に交換することができる。ピンユニットそのものも簡単に交換できる。

Dotのもう1つの大きなアドバンテージは、Appleとの協力だ。Dot Padは、ジェスチャーで起動することが可能で、ハイライトされたものを瞬時にディスプレイ上に表示することができる。以下の動画で、その様子を見ることができる。

そして、iOS 15.2には開発者向けの新しい「触覚グラフィックスAPI」が用意されていて、アプリはこの機能を取り入れたり微調整したりできるようになっている(私はこのAPIについてAppleにコメントを求めたので、もし返信があればこの記事を更新する)。

キム氏は「世界中の多くの視覚障がい者がiPhoneやiPadを利用していますが、これは業界をリードする画面読み上げソフトVoiceOverのおかげです」という。「Dotの触覚技術がVoiceOverに最適化されたことで、デジタルアクセシビリティが拡大することを大変うれしく思っています。音声や文字として点字を超えて、ユーザーのみなさんが映像を感じ、理解を高めることができるようになりました」。

もちろん忠実度という意味では制約されているものの、アイコンや線画、グラフなどをうまく表示することができる。例えば、株の記事の中のグラフを想像して欲しい。目の見える人なら一目で理解できるが、そうでない人は、VoiceOverに組み込まれた、グラフを上昇と下降の音で表現するような、別の方法を見つけなければならない。ないよりはましだが、理想的でないことは確かだ。Dot Padは、VoiceOverと独自の画像解析アルゴリズムにより、ディスプレイ上の任意の画面領域や要素を表現しようとする。

文字も、1ページ分の点字(通常のように間隔をあけて並べる)か、文字そのものの形で表現することができる。これにより、ロゴの書体などをよりよく理解することができる(点字には当然セリフ[文字の端にある小さな飾り]はない)。実際、大型の活字を触感を使って体験するというのは、なかなか面白そうだ。

画像クレジット:Dot

さらに大切なのは、子どもたちにとってすばらしい材料となることだ。視覚障がいのある子どもは多くのことを見落としているが、Dot Padを使えば他の人たちが当たり前と思っている家や猫などの文字や形、単純なイメージなどを簡単に描くことができるようになる……視覚障がい者のコミュニティにおけるK-12教育(幼稚園から高校までの教育過程)に新たな変革が加わる可能性があるのだ。

これはもちろん、一般的なデバイスと密接に連携できるおかげだ。つまり特殊な状況だけで使えるリソースというわけではない。iPhoneやiPadは、現代のデジタル機器としてユビキタス(普遍的)なだけでなく、Dotが活用できる強固なアクセシビリティ機能群を備えている。

もちろん、音声を使ったインターフェースが大幅に改善されたことは、グラフィカルなインターフェースを使えない人々にとって非常に大きな力となったことは事実だが、特に読書や学習の場面ではいまでも点字が重要な選択肢であることに変わりはない。技術によって機会が阻害されることがないように、こうした手法はさらに 改善されなければならない。

コミュニティからのフィードバックは好意的であるという。ソン氏は「みなさん限界よりも可能性を中心に考えていらっしゃいます」という。彼らは早い段階から、画像のレンダリングを改善するために「ピクセル」数を増やしており、Dot Padに適したカスタムグラフィックスのライブラリに取り組んでいる。このため、たとえばTwitterのロゴがソフトウェアに認識された際に、毎回輪郭をスキャンするのではなく、代わりに独自のバージョンを使うことができる。

Dotは、2023年にローンチ予定のAmerican Printing House for the Blind(盲人のための米国印刷協会)とHumanWare(ヒューマンウェア)が率いるDynamic Tactile Device(動的触覚デバイス)プロジェクトで、その中核技術を利用できるようにする予定だ。開発者コミュニティにはAPIの経験に対する議論に加わる機会がある。

画像クレジット:Dot

将来の機能計画には、写真の触覚表現が含まれている。必ずしも画像そのものではなく、レイアウト、人物の位置と説明、その他の情報がディスプレイに表示される可能性がある。また、ピンを中間の高さで固定し、手触りのグラデーションなどに利用する方法も研究している。また、パッドは表示だけでなく、入力としても使える可能性がある。ピンを押して、画面の適切な部分にタッチ信号を送ることができれば、また別の便利な機能となるだろう。

もちろん、これまでの点字ディスプレイと同様、Dot Padも安くはないし、シンプルでもない。しかし、他の類似製品よりは安くてシンプルとなる可能性はある。製造や組み立ては簡単なことではないし、特に今はチップやその他の部品の価格が高騰しているため、トータルコストは口にしにくい(主に自動車の窓のコントロールスイッチに使われていた小さなICを数千個使っており、今その価格は高騰している最中だ)。

幸いなことに、これこそ誰もお金を払う必要のない機器であり、補助金などの制度も数多く用意されている。子どもたちは学校で使う机のような、どうしても必要なものにお金を払う必要はない。そして、障がい者が良い教育を受けられるようにすることは、すべての人の利益につながる。アクセシビリティの向上は、それ自体ももちろん歓迎すべきことだが、これまで学べなかった人、参加できなかった人が、ようやく仕事に参加できるようになるという大きな連鎖反応があるのだ。

Dotの創業者たちは、韓国政府や米国政府、盲人社会、支援団体と協力し、Dot Padをカリキュラムに組み入れ、既存の資金や方法を使って費用を賄っているという。触覚グラフィックスAPIの詳細については、こちらおよびAppleの開発者向けサイトで確認できる。

画像クレジット:Dot

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか5G対応のiPhone SE(第3世代)が、3月18日に発売となる。日本ではNTTドコモ、au、ソフトバンク、楽天モバイルが取り扱うが、今回はUQモバイルやワイモバイルといったサブブランドも同時に発売する。

速報:新 iPhone SE (第三世代)発表。初の5G対応・A15で高速化・バッテリー駆動時間延長

各キャリアとって、5G対応のiPhone SE(第3世代)は待望といえるだろう。5Gにおいては日本は世界から普及が遅れていると指摘されている。

2020年3月に3キャリアで5Gが始まったものの、これまで特に盛り上がることなく2年が経過してしまった。5Gエリアは、4G周波数帯を転用することで、広がりを見せている。しかし、5G対応スマートフォンが爆発的に売れることもなく、地味に普及している状態に過ぎない。

菅政権の圧力により、料金値下げが注目され、オンライン専用プランなど小・中容量プランが世間の注目を浴びた。キャリアとしては5Gスマートフォンに乗り換えてもらい、データをバカスカ使ってもらうことで、ARPUをあげ、さらに使い放題プランへの乗り換えを促したいというのが本音だ。

KDDI高橋誠社長は「5Gスマートフォンユーザーは4Gスマートフォンユーザーより2.5倍もデータトラフィックが多い」と語る。

iPhone SE(第3世代)が普及すれば、それだけデータ通信を多く使うユーザーが増え、結果として、キャリアの通信料収入の回復が見込まれるのだ。

今回のiPhone SE(第3世代)、5G対応と言ってもSub-6のみの対応となる。アメリカではiPhone 12シリーズ、さらにはiPhone 13シリーズはミリ波に対応していた。ベライゾンなどがミリ波の展開に積極的であったため、アップルとしてもiPhoneでミリ波の対応を余儀なくされたようだ。一方で日本で売られているiPhone 12シリーズやiPhone 13シリーズはSub-6のみの対応だ。

アメリカで売られるiPhone SE(第3世代)もSub-6のみであり、ミリ波には非対応だ。

第3世代iPhone SE、ついに5G対応もミリ波がない理由―iPhone 14シリーズ、日本でミリ波対応はありえるのか
画面サイズが4.7インチと筐体がコンパクトなiPhone SE(第3世代)であるため、ミリ波のアンテナなどが入れずらかったのかも知れない。また、本体が小さく手で全体を覆いやすくなりがちのため、ミリ波は受信しづらくなる可能性もある。

「なぜ、アップルはiPhone 12と13ではミリ波に対応したのにiPhone SE(第3世代)ではミリ波対応を見送ったのか」が気になって、取材を進めたところ、どうやら「アメリカでも4G周波数の転用が進んでいたり、Cバンド(3.7G~4.2GHz帯)の導入が見えてきたから」というのが理由にあるようだ。

ベライゾンは5Gスタート時には、ミリ波を中心にエリア展開を行っていた。しかし、その場合、5Gに期待される通信速度は出るものの、エリア展開の広がりは期待できない。そこで、ベライゾンではDSS(Dynamic Spectrum Sharing)という技術を投入し、4G周波数帯に5Gを混ぜるかたちでサービスを提供し、エリアを広げた。ミリ波の5Gほど通信速度は出なく、むしろ4Gよりも遅くなる傾向があるのだが、それでもエリアを広げたいという狙いがあった。

さらに昨年末から今年頭にかけて、一部報道で、アメリカのCバンド(3.7G~4.2GHz帯)が話題となった。

ベライゾンとAT&Tが共同でCバンド周波数の競売に共同で809億米ドルを出資。Cバンドによるサービスを開始しようとしたら、米国連邦航空局に警告を受けて、サービス開始時期の延期をせざるを得なくなったというものだ。Cバンドが民間航空会社の用いる高度計と干渉し、航空機運航に影響を及ぼす可能性を指摘されたのだ。

今後、Cバンドが本格運用できれば、そこそこ高速でありながら広いエリアで5Gサービスの提供が可能となる。

こうした背景からアップルとしてはiPhone SE(第3世代)で無理してミリ波に対応しなくてもいいという判断が下ったようだ。

ただ、先日、スペイン・バルセロナで行われたMWC22では、クアルコムのプレスカンファフェンスで「5G mmWave Accelerator Initiative」が紹介され、そこにはNTTドコモやVerizonの名前があった。世界的にミリ波の活用を盛り上げていこうというわけだ。

NTTドコモでは4Gユーザーが多く、4G周波数を5Gに転用するのが難しい。そのため、4G周波数帯の転用には消極的で、5G用に割り当てられた周波数帯でのサービス提供を重視している。また、楽天モバイルの三木谷浩史会長は「ミリ波は(日本で)うちだけががんばっているが、海外でミリ波を使っている人は本当にデータの使用量が多い」と語る。楽天モバイルのように従量制の料金プランを提供しているところは、一刻も早く5G、しかもミリ波で提供することでARPUをあげて収益を確保したいというのが本心だったりする。

メーカーとしてはミリ波対応といった面倒くさいことはせず、Sub-6だけで5G対応をしておきたい。一方で、キャリアとしてはミリ波対応であれば(ミリ波の基地局を設置しなくてはいけないが)ARPUの上昇が期待できる。

今秋、発表されるであろうiPhone 14シリーズは、日本でもミリ波対応はあり得るのか。アップルとキャリアの間で駆け引きが行われているかも知れない。

(石川温。Engadget日本版より転載)

なぜ27インチの新Studio DisplayはApple TVではないのか?

Apple(アップル)はついに、熱狂的なAppleファンのコミュニティの多くの人が求めていたもの、つまり最低価格が5000ドル(約58万円)もしない純正のディスプレイを発表した。新しい27インチのStudio Displayは1600ドル(日本での価格は税込19万9800円)で、これはまだ多くの人がモニターに払える金額よりもずっと高いものだが、それでも大半の人にとっては歓迎すべき新製品だろう。Appleは、現在4K Apple TVを動かしているチップよりもずっと強力なA13チップを丸ごと1つ搭載しさえしている。

そこで疑問が生じる。なぜStudio DisplayはApple TVではないのだろうか?

Studio Displayはすでにチップを搭載している。オンボードストレージは欠けているかもしれないが、それを追加するのは、tvOSといくつかのメディアアプリを実行するのに必要な量としてはかなりの作業になる。また、すでにこのようなことを行っている他企業の例もある。Samsung(サムスン)のMシリーズのSmart MonitorにはスマートTVモードがあり、ひどい自家製ソフトウェアが搭載されている。

筆者がTechCrunchのSlackで上記の疑問を投げかけたところ、それがなぜ意味をなさないのか、いくつかの穏やかな見解が返ってきた。例えば表向きはApple TVのすべての機能を持ち、他にも多くのことができるMacにStudio Displayをつなげているからというものだ。

しかしながら、実際のところmacOSのネイティブApple TVアプリは、ちょっとダメだ。Netflix、Disney+、Amazon Prime Videoなどを利用するには、ブラウザを使ってそれぞれのサイトに個別にアクセスする必要があり、簡素化されたホーム画面にアプリをインストールするよりもはるかに不便で、エレガントでもない。繰り返しになるが、Samsungがハイブリッド型スマートTVモニターのラインナップを作り、さらに時間をかけてモデルを追加していったのには理由がある。

加えて、Studio Displayは実際、テレビ単体としてかなり魅力的な買い物になることは間違いないだろう。そのデザインは際立っており、大半のモダンなテレビのデザインをはるかにしのぎ、たとえばSamsungのFrameやSerifのラインナップのように、リビングに置くと映える高価格帯のテレビの中でも群を抜くものだ。

これはストレッチゴールのようなものだが、Studio Displayはウェブカメラ、スピーカー、マイクを内蔵しているため「Apple TV殺し」にもなり得る。ゆったりと座って行うビデオ会議のための、すばらしいヘッドレスのZoom(またはそれに相当するもの)マシンになるかもしれない。

しかし、それは少し先の話だ。tvOSと、どんな種のアプリやサービスをサポートするかで再アーキテクチャを必要とするだろう。Appleは、興味深いA13チップの搭載により、このモニターに基本的に追加コストなしでApple TVの機能を追加し、消費者はそれを利用することも、ただ通常のモニターとして使うこともできたはずだ。

完璧な世界では、将来のファームウェアの更新はtvOSを含め、購入後にこれを実現する。現状では、Studio DisplayはApple TV用のOSやアプリを合理的に実行するためのストレージをまったく(あるいは十分?)搭載していないと思われる。少し惜しい気がする。

画像クレジット:Apple

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(文:Darrell Etherington、翻訳:Nariko Mizoguchi

トランジスタ以来の大発明?Menlo Microsystemsのスイッチはあなたが触れる全デバイスの電力供給を変える

従来の電気技術者は、信頼性が低くて遅い大電力スイッチか、大電力は扱えないが高速・高精度なスイッチのどちらかを選択しなければならなかった。Menlo Microsystems(メンロー・マイクロシステムズ)のIdeal Switch(アイデアル・スイッチ)は、そのような従来の電子設計のパラダイムを完全に覆す新しいタイプのスイッチだ。同社は、自らが「トランジスタ以来の大発明」と呼ぶものを開発し、さらなる変革を遂げるべく準備を進めている。ずいぶん大胆な主張だが、1億5千万ドル(約174億2000万円)の新規投資を集めたということは、少なくとも投資家の一部は同社が何かを掴んでいると考えているのだろう。

電気技術者でなければ、この会社の技術革新がどれほど大きなものかを理解するのは難しいだろうし、この技術がどれほど重要なものになるかを誇張して話すことも難しいだろう。このスイッチは、ある種の回路を100倍小さく100倍効率的にするという、非常に大きなインパクトを持っている。スマートライトのスイッチを自宅に設置したことがある人は、使われている電子機器が巨大で、力技とワセリンを使い悪態をつきながらでないと壁にスイッチを埋め込めないことにお気づきだと思う。これは、電源のON / OFFをリレーに頼っているためだ。同社の技術があれば、こうしたライトのスイッチを、大きさもコストもはるかに小さなものにすることができる。実際、同社の技術があと少し値下がりすれば、あなたが足を踏み入れるすべての設備、建物、車両に、同社のスイッチあるいはそれに相当するものが使われるようになる可能性がある。

フットプリントがはるかに小さいことに加え、Ideal Switchは作動に要する電力が大幅に少なく(1ミリワット未満)、通電時の消費電力も少なく、スイッチング速度がとても速く(10マイクロ秒未満)、数百万回の作動で故障することが多い通常のスイッチと比較して、数十億回の作動に耐えられるといわれている。つまり、これまでのコンポーネントとは大きく異なるタイプのコンポーネントなのだ。さらに同社は、それが数千ワット相当の電力を扱える部品であるとしている。

同社は米国時間3月9日、1億5000万ドル(約174億2000万円)のシリーズCを発表し、Menlo Microの累計資金調達額は2億2500万ドル(約261億3000万円)超に達した。Vertical Venture PartnersFuture Shapeが、このラウンドを主導し、既存投資家に加えて新規投資家としてFidelity Management & Research CompanyDBL PartnersAdage Capital Managementが参加した。今回の投資は、国内の製造とサプライチェーンの拡大に充てられる。

Menlo MicroのRuss Garcia(ラス・ガルシア)CEOは「今回の資金調達は、あらゆるものの電化を促進し、1000億ドルを超える21世紀のRF通信、電力スイッチング、保護デバイス市場を近代化する、Menlo Microの変革的技術に対する投資家のみなさまからの信頼を裏付けるものです」という。「今回の調達で、米国での生産を拡大し、世界の喫緊の課題を解決するためのパワーロードマップの開発を加速させることができるようになります。私たちは、世界の老朽化した電力網のアップグレード、スマートビルや工場の近代化、従来の電力インフラの非効率性を解消できる立場にいるのです」。

毎年200億台以上の配電盤が出荷されており、同社はこの広大な市場での変革を促進するための地位を得ようと躍起になっている。

「Ideal Switchは、電力を分配するすべてのスイッチに取って代わるものです」と、Future Shapeの立場でラウンド主導したTony Fadell(トニー・ファデル)氏は語る。彼はスイッチについては良く知っている。彼はしばしば「iPodの父」と呼ばれ、Nestの創業者および前CEOでもあった人物だ。「単純な話です。Ideal Switchは、都市、ビル、家庭、電気自動車から照明器具に至るまでの電力供給に関する基本的な計算を変えてしまうのです。また、エネルギー効率に優れているため、コスト削減、長寿命、スマートな動作、気候変動の原因となる排出物の削減が期待できます。Menlo Microは、現代最大の既存技術破壊者の1つなのです」。

世界が電化に向かう中、大幅な効率向上を約束する技術は、大きなインパクトを与えることができる。同社は、そのインパクトをある例で説明している:天井ファンは全世界に10億台以上ある。既存のファンコントローラーをIdeal Switchに置き換えることで、約17基の発電所が不要になるほどの省エネが実現できるのだ。

「ご想像の通り、これは最も普遍的なデバイスです。速度、コスト、性能の面で桁違いの向上が可能なデバイスを手にしたときには、スケーリングが最大の課題となります。今後2〜3年で非常に大きな成長を見込んでいます」とガルシア氏は予測する。「最初の成長は、ワイヤレスが中心に行われました。これはもっとも手を出しやすい分野でしたが、スマートな電力管理や制御の分野では、はるかに多くの普及が見込まれます」。

Menlo Micro CEOのラス・ガルシア氏。画像クレジット:Menlo Microsystems

このデバイスは、他のコンポーネントを単純に置き換えるものではないので、回路基盤は再考され再設計されなければならないが、同社の創業者たちは、そもそもサイズが違うために、既存の技術のピン配置に合わせて置き換えることには意味がないと主張している。

「Ideal Switchは、ほとんどの場合、大幅に小型化されたデバイスとなります。20アンペア、240ボルトの電気機械式デバイス、あるいは半導体デバイスと比較しても、かなり大きな違いがあることがわかります。同じ機能を10×20mmのプラスチックパッケージに組み込むことができるのです」とガルシア氏は説明する。「当社の製品を古いパッケージに入れて、エンドユーザーが信頼性と性能を活用できるようにしているお客様もいらっしゃいます」。

Menlo Microsystemsが生産を拡大し、競合他社が参入してくる中で、同社のボトルネックが何になるのかは興味深いところだが、1つだけ確かなことがある。それは消費者(ひいては環境)が最大の勝者になる可能性が高いということだ。

画像クレジット:Menlo Microsystems

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(文:Haje Jan Kamps、翻訳:sako)